説明

感覚改善剤

【課題】日常的な経口摂取、あるいは皮膚への直接塗布により、末梢での感覚の鈍化を改善する効果を示す感覚改善剤を提供することを課題とする。
【解決手段】リン脂質を感覚改善剤の有効成分とする。また、リン脂質を感覚改善用飲食品又は飼料の有効成分として配合する。リン脂質としては、化学的に合成されたもののほか、天然由来のものを使用可能であるが、大豆、卵黄等食品由来のものを使用することが好ましく、特に乳由来のリン脂質を使用することが望ましい。本発明により、経口摂取、あるいは皮膚への直接塗布により、末梢での感覚の鈍化を改善効果示す感覚改善剤、感覚改善用飲食品又は飼料、化粧品を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン脂質を有効成分とする、末梢の感覚の鈍化を改善する効果を有する感覚改善剤、及びこの感覚改善剤を配合した感覚改善用飲食品又は飼料、化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化にともない、骨粗しょう症や認知症等、加齢による疾患の増加が社会的問題となっている。そのため、このような加齢にともなう疾患を予防または改善するために、様々な医薬品が開発されている。しかしながら、医薬品は常に副作用を考慮に入れる必要があることから、近年では、食生活の見直しや、特定の食品成分の摂取によって、加齢にともなう疾患を予防または改善しようとする試みがなされている。例えば、骨粗しょう症に対しては、牛乳に含まれる塩基性タンパク質の摂取により、当該疾患を予防または改善することが知られている(特許文献1)。また、牛乳中に比較的多く含まれるリン脂質であるスフィンゴミエリンを有効成分とするアルツハイマー型記憶障害を予防あるいは改善する記憶障害予防治療剤が知られている(特許文献2)。
【0003】
加齢に伴う症状の一つとして、末梢での感覚の鈍化が挙げられるが、この末梢での感覚の鈍化は、加齢だけでなく、糖尿病等の疾患によっても生じる。末梢での感覚の鈍化は、例えば、熱いものに触れたときに、正しく熱いと感じることができず、火傷等の危険性が高まることや、痛覚の鈍化により怪我の発見が遅れるといった問題を生じさせる。近年、こういった危険性を回避するため、加齢や疾患による末梢での感覚の鈍化を改善させる研究が進められている。例えば、外因性のセラミドや内因性のセラミドの生合成を増加させる効果のある酵素であるスフィンゴミエリナーゼやホスファチジルコリン特異的ホスホリパーゼCは、株化繊維芽細胞3T3細胞を介した神経モデル細胞であるP-12細胞の分化を促進することが報告されている(非特許文献1)。神経モデル細胞の分化促進は、末梢での感覚鈍化の改善効果を示唆するものである。しかし、上述のセラミドや酵素は食品成分ではないことから、その使用に際しては安全性を検討する必要がある。このような状況の下、より安全で、日常的な摂取あるいは皮膚への塗布によって、末梢での感覚の鈍化を改善する効果のある剤が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、安全で、日常的に摂取あるいは皮膚への塗布により、末梢での感覚の鈍化を改善する効果を示す感覚改善剤を提供することを課題とする。また、本発明は、経口摂取や皮膚への塗布により末梢での感覚の鈍化を改善する効果を示す感覚改善用飲食品又は飼料、化粧品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの問題点を鑑み、安全で、感覚の鈍化に対して優れた改善効果を示す成分について鋭意探索を進めたところ、リン脂質を経口摂取、あるいは皮膚に直接塗布することにより、感覚、特に末梢での感覚の鈍化を改善できることを見出した。そこで、このリン脂質を有効成分として使用することによって感覚改善剤を完成させるに至った。また、この感覚改善剤を飲食品や飼料に配合して感覚改善用飲食品又は飼料、化粧品とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【特許文献1】特開平8-151331号公報
【特許文献2】特開2003−146883号公報
【非特許文献1】コスメトロジー研究報告 (2002) 第10号;中畑則道、大久保聡子:皮膚保護作用を有するセラミドの生理作用発現機構に関する研究
【発明の効果】
【0006】
本発明により、リン脂質を有効成分とする感覚改善剤や、リン脂質を配合した感覚改善用飲食品又は飼料、化粧品を提供することができる。本発明の感覚改善剤は、末梢での感覚の鈍化を改善する効果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の特徴は、リン脂質を有効成分とすることにある。リン脂質としては化学的に合成されたものや、天然由来のものを使用可能であるが、大豆や卵黄等の食品由来のものが好ましく、特に、乳由来であることが望ましい。乳由来のリン脂質としては、ウシやヤギ、ヒツジ、ヒト等の哺乳類の乳から調製したものを使用することができる。また、これらの哺乳類の乳から調製したバターセーラム、バターミルクなどの乳素材から調製することも可能である。これらは、必ずしもリン脂質として精製されている必要は無く、全固形中に30重量%以上のリン脂質を含むような乳由来リン脂質含有組成物を用いることもできる。実際に、牛乳から調製された乳由来リン脂質含有組成物として、リン脂質含量が30%重量以上と高濃度で安価なものが上市されており、このような素材を用いることもできる。また、その他のリン脂質としても、大豆レシチンや卵黄レシチンといったものが上市されている。本発明の感覚改善剤は、上記の乳由来リン脂質や乳由来リン脂質含有組成物、大豆レシチン、卵黄レシチン等をそのまま感覚改善剤として用いることも可能であるが、リン脂質の他に糖類や脂質、タンパク質、ビタミン類、ミネラル類、フレーバー等、他の医薬品、飲食品や飼料に通常使用する原材料等を混合することや、さらに常法に従い粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤などに製剤化することも可能である。また、塗布剤としては、乳液、クリーム、ローション、パックなど通常の塗布形態で用いることができる。これらの塗布剤は常法により製造し、本発明の有効成分であるリン脂質や、乳由来リン脂質含有組成物等のリン脂質含有組成物をその製造過程で適宜配合すればよく、化粧品としての使用も可能である。また、リン脂質に加えて、他の感覚改善効果を示す成分、例えばセラミドやスフィンゴミエリナーゼ等を共に使用することも可能である。本発明の感覚改善剤の有効量としては、後述するマウスでの試験において、体重1kgあたりリン脂質含有組成物を100mg以上、好ましくは250mg以上経口摂取させることにより、末梢での感覚が改善することから、通常、成人一人一日あたり、リン脂質含有組成物を100mg以上、好ましくは250mg以上摂取することにより感覚、特に、末梢での感覚の鈍化の改善が期待できるので、この必要量を確保できるようにすればよい。乳由来リン脂質含有組成物は、乳由来リン脂質を30%以上含むので、乳由来リン脂質としては、約30mg以上摂取することで、感覚改善効果を期待できる。また、皮膚へ塗布する場合、皮膚塗布剤の総量を基準として、0.01〜50 重量%、より好ましくは0.1〜20 重量%である。
【0008】
本発明の感覚改善用飲食品としては、通常の飲食品、例えばヨーグルト、乳飲料、ウエハース、デザート等にリン脂質を配合すればよい。これらの感覚改善用飲食品については、成人一人一日あたり、リン脂質含有組成物を100mg以上摂取させるために、飲食品の形態にもよるが飲食品100gあたりリン脂質含有組成物を1〜3000mg配合することが好ましい。また、本発明の感覚改善用飼料は、通常の飼料、例えば家畜用飼料やペットフード等にリン脂質を配合すればよい。たとえばこれらの飼料について、一日あたり、乳由来リン脂質含有組成物を配合する場合、リン脂質を30mg以上摂取させるために飼料100gあたり乳由来リン脂質含有組成物を1〜5000mg配合することが好ましい。
【0009】
本発明では、リン脂質含有組成物を配合する方法に特に制限はないが、例えば、溶液中で添加、配合するには、当該組成物を脱イオン水に懸濁あるいは溶解し、撹拌混合した後、医薬品、飲食品や飼料の形態に調製して使用する。撹拌混合の条件としては、当該組成物が均一に混合されればよく、ウルトラディスパーサーやTKホモミクサー等を使用して撹拌混合することも可能である。また、当該組成物の溶液は、医薬品、飲食品や飼料に使用しやすいように、必要に応じて、RO膜等での濃縮や、凍結乾燥して使用することができる。本発明では、医薬品、飲食品や飼料の製造に通常使用される殺菌処理が可能であり、粉末状であっては乾熱殺菌も可能である。従って、本発明のリン脂質含有組成物を含有する液状、ゲル状、粉末状、顆粒状等様々な形態の医薬品、飲食品や飼料を製造することができる。
【0010】
以下に、実施例及び試験例を示し、本発明についてより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0011】
バターセーラム粉(SM2、Corman社製)の25%溶液を調製し、5N塩酸を添加してpHを4.5に調整した。この溶液を50℃で1時間静置し、カゼインタンパク質を沈殿させた。フィルタープレスを用いてこの沈殿を除去し、得られた水溶液を孔径1.0μmのMF膜(SCT社製)で処理して濃縮液画分を得た。この濃縮液画分を凍結乾燥処理し、リン脂質含有組成物を得た。この乳由来リン脂質含有組成物は全固形当たり脂質を53%、リン脂質を31%、タンパク質を24%、糖質を15%、灰分を8%含有しており、本発明の感覚改善剤としてそのまま使用可能である。
【実施例2】
【0012】
バターミルク粉(雪印乳業社製)の20%溶液を調製し、2N塩酸を添加してpHを4.5に調整した。この溶液を45℃で30分間静置してカゼインタンパク質を沈殿させた。クラリファイヤーを用いてこの沈殿を除去した後、得られた上清を孔径0.1μmのMF膜(SCT社製)で処理し、濃縮液画分を得た。この濃縮液画分を凍結乾燥処理し、乳由来リン脂質含有組成物を得た。この乳由来リン脂質含有組成物は固形当たり脂質を62%、リン脂質を38%、タンパク質を15%、糖質を18%、灰分を5%含有しており、本発明の感覚改善剤としてそのまま使用可能である。
【0013】
[試験例1]
(細胞分化促進活性の確認)
皮膚に存在することが知られている繊維芽細胞の細胞株である3T3細胞を、実施例1および実施例2の乳由来脂質含有組成物を200μg/Lの濃度で添加した状態で、2日間培養した(実施例1:A群、実施例2:B群)。また、対照として、3T3細胞を、実施例1および実施例2の乳由来リン脂質含有組成物を添加しないで2日間培養した(C群)。それら培養上清を用いて神経のモデル細胞であるPC-12細胞を培養し、PC-12細胞の形態的な分化を観察した。その結果、A群およびB群の培養上清は、どちらもPC-12細胞を強く分化させた。また、この実験を数回繰り返し、分化の割合を光学顕微鏡下で観察した結果、A群、B群ともに95%以上の細胞に分化が認められた。一方、C群の培養上清は、PC-12細胞を分化させず、数回の繰り返し実験における光学顕微鏡下の観察において、まったく分化は認められなかった。このことから、実施例1および実施例2の乳由来リン脂質含有組成物が、神経のモデル細胞であるPC-12細胞の分化を促進することがわかった。
【0014】
[試験例2]
(動物実験による感覚改善効果の確認)
Woolfe, MacDonaldらが開発した熱刺激に対する行動学的研究法であるホットプレート試験にて熱刺激による感覚改善効果を評価した。24週齢のヘアレスマウス(HR-1)を10匹ずつ3群用いた。実施例1の乳由来リン脂質含有組成物をマウス体重1kgあたりそれぞれ0mg、100mg、250mgになるよう1日1回ゾンデで経口投与して4週間飼育した。飼料投与終了時に54℃のホットプレートにマウスを置き、マウスがホットプレートから足を離す、立ち上がる、ジャンプするなどの逃避行動までの時間を測定した。熱刺激の最大強度を30秒に設定し、このときの値は30秒とした。その結果を表1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
表1に示したように、実施例1の乳由来リン脂質含有組成物を100mg摂取することにより、逃避行動陽性反応時間が短縮する傾向が認められ、250mgでは短縮した。このことから、乳由来リン脂質含有組成物を摂取することにより感覚、特に、末梢での感覚の鈍化を予防・改善できることがわかった。
【0017】
[試験例3]
(経口摂取による感覚改善効果の確認)
手の感覚の鈍化を感じている健康な高齢者(平均年齢75±3歳)を10名ずつ、5群に分けた。それぞれを、リン脂質含有組成物を摂取しない群(A群)、実施例1の乳由来リン脂質含有組成物を100mg摂取する群(B群)、250mg摂取する群(C群)、市販の乳由来リン脂質濃縮物(PL−75、LACPRODAN製)を40mg摂取する群(D群)、100mg摂取する群(E群)、市販の大豆由来リン脂質(LP−20P、日清オイリオ株式会社製)を40mg摂取する群(F群)、100mg摂取する群(G群)とし、6週間摂取してもらった。摂取前と6週間の摂取終了後に表在知覚計アルゲジオメーター(インタークロス社製)を用い、上腕内側の痛覚を基準として手掌と足底土踏まずの痛覚を使用方法に基づき正常、低下I〜IIIの計4段階で測定した。また、6週間の摂取終了後に、それぞれの高齢者に、手の感覚の改善についてアンケート調査を実施した。その結果を表2、3に示す。
(測定方法)
・ 5種類の太さの違うピンと5つの支点位置で痛覚を評価した。まず、最も細い1pinを上腕内側に転がし、正常な痛覚の度合いを被験者に確認した。
・ 次に、手掌と足底に1pinにてホルダを持つ支点の位置を順に変えて転がし、最初に感じた痛覚と同程度の痛みを感じる支点の位置を探した。
(評価方法)
アルゲジオメーターは上腕内側で1pin(支点50g)を転がした場合と、手掌での2pin(50g)で同じ痛みを生じる用に設計されており、使用方法に基づき、以下のように評価した。また、痛みの評価に点数をつけ、平均値を算出した。

2pin(50g)で同じ痛みであれば、正常 (0点)
1pin(50g)で同じ痛みであれば、低下I(1点)
1pin(60g)で同じ痛みであれば、低下II(2点)
1pin(70g)で同じ痛みであれば、低下III(3点)
【0018】
【表2】

【0019】
【表3】

【0020】
表2、3に示したように、実施例1の乳由来リン脂質含有組成物を100mg 摂取することにより、手、足底の感覚が改善する傾向が認められ、250mgでは改善した。また、市販の乳由来リン脂質濃縮物および市販の大豆由来リン脂質濃縮物を摂取することで、手、足底の感覚が改善することが明らかとなった。通常、成人一人一日あたり、リン脂質含有組成物を100mg以上、好ましくは250mg以上摂取することにより感覚、特に、末梢での感覚の鈍化を改善の期待できる。また、より高純度のリン脂質濃縮物を用いた場合には、より少量で感覚改善効果が期待できることが分かった。
【実施例3】
【0021】
(感覚改善用化粧品(クリーム)の調製)
実施例1で得られた感覚改善剤(乳由来リン脂質含有組成物)を使用し、表4に記載される割合で原料を混合し、感覚改善用化粧品(クリーム)を製造した。
【0022】
【表4】

【0023】
[試験例4]
(皮膚への塗布による感覚改善効果試験)
手の感覚の鈍化を感じている健康な高齢者(平均年齢75±3歳)を15名ずつ、A群、B群の2群に分けた。A群では実施例3と同様の方法で製造した、感覚改善剤を含まない化粧品(クリーム)を、B群では、実施例3の感覚改善用化粧品(クリーム)を1日1回手と足の全体へ塗布した。塗布期間は6週間とし、塗布前と6週間の塗布終了後に表在知覚計アルゲジオメーター(インタークロス(株)社製)を用い、上腕内側の痛覚を基準として手掌と足底土踏まずの痛覚を使用方法に基づき正常、低下I〜IIIの計4段階で測定した。また、6週間の塗布終了後に、被験者それぞれに、手の感覚の改善についてアンケート調査を実施した。その結果を表5、6に示す。なお、測定方法については試験例3と同様に行った。
【0024】
【表5】

【0025】
【表6】

【0026】
表5、6に示したように、実施例3の感覚改善用化粧品(クリーム)を塗布することにより、手、足底の感覚が改善する傾向が認められた。このことから、本発明の感覚改善剤を含有するクリームを塗布することで、感覚、特に、末梢での感覚の鈍化を改善の期待できることがわかった。
【実施例4】
【0027】
(感覚改善用液状栄養組成物の調製)
実施例1の乳由来リン脂質含有組成物50gを4950gの脱イオン水に溶解し、50℃まで加熱後、TKホモミクサー(TK ROBO MICS;特殊機化工業社製)にて、6000rpmで30分間撹拌混合して乳由来リン脂質310mg/100gの乳由来リン脂質溶液を得た。この乳由来リン脂質含有組成物溶液4.0kgに、カゼイン5.0kg、大豆タンパク質5.0kg、魚油1.0kg、シソ油3.0kg、デキストリン18.0kg、ミネラル混合物6.0kg、ビタミン混合物1.95kg、乳化剤2.0kg、安定剤4.0kg、香料0.05kgを配合し、200mlのレトルトパウチに充填し、レトルト殺菌機(第1種圧力容器、TYPE:RCS−4CRTGN、日阪製作所社製)で121℃、20分間殺菌して、本発明の感覚改善用液状栄養組成物50kgを製造した。なお、この感覚改善用液状栄養組成物には、100gあたり、乳由来リン脂質が24.8mg含まれていた。
【実施例5】
【0028】
(感覚改善用ゲル状食品の調製)
実施例1の乳由来リン脂質含有組成物10gを700gの脱イオン水に溶解し、50℃まで加熱後、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、9500rpmで30分間撹拌混合した。この溶液に、ソルビトール40g、酸味料2g、香料2g、ペクチン5g、乳清タンパク質濃縮物5g、乳酸カルシウム1g、脱イオン水235gを添加して、撹拌混合した後、200mlのチアパックに充填し、85℃、20分間殺菌後、密栓し、本発明の感覚改善用ゲル状食品5袋(200g入り)を調製した。このようにして得られた感覚改善用ゲル状食品は、すべて沈殿等は認められず、風味に異常は感じられなかった。なお、この感覚改善用ゲル状食品には、100gあたり、乳由来リン脂質が310mg含まれていた。
【実施例6】
【0029】
(感覚改善用飲料の調製)
酸味料2gを700gの脱イオン水に溶解した後、実施例2の乳由来リン脂質含有組成物10gを溶解し、50℃まで加熱後、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、9500rpmで30分間撹拌混合した。マルチトール100g、還元水飴20g、香料2g、脱イオン水166gを添加した後、100mlのガラス瓶に充填し、90℃、15分間殺菌後、密栓し、感覚改善用飲料10本(100ml入り)を調製した。このようにして得られた感覚改善用飲料は、すべて沈殿は認められず、風味に異常は感じられなかった。なお、この感覚改善用飲料には、100gあたり、乳由来リン脂質が380mg含まれていた。
【実施例7】
【0030】
(感覚改善用飼料の調製)
実施例2の乳由来リン脂質含有組成物2kgを98kgの脱イオン水に溶解し、50℃まで加熱後、TKホモミクサー(MARKII 160型;特殊機化工業社製)にて、3600rpmで40分間撹拌混合して乳由来リン脂質760mg/100gの乳由来リン脂質溶液を得た。この乳由来リン脂質溶液10kgに大豆粕12kg、脱脂粉乳14kg、大豆油4kg、コーン油2kg、パーム油23.2kg、トウモロコシ澱粉14kg、小麦粉9kg、ふすま2kg、ビタミン混合物5kg、セルロース2.8kg、ミネラル混合物2kgを配合し、120℃、4分間殺菌して、本発明の感覚改善用イヌ飼育飼料100kgを製造した。なお、この感覚改善用イヌ飼育飼料には、100gあたり、乳由来リン脂質が76mg含まれていた。
【実施例8】
【0031】
(感覚改善剤(錠剤)の調製)
表7に示す配合で原料を混合後、常法1gに成型、打錠して本発明の感覚改善剤を製造した。なお、この感覚改善剤1g中には、乳由来リン脂質が31mg含まれていた。
【0032】
【表7】

【実施例9】
【0033】
(感覚改善用化粧品(ローション)の調製)
表8に記載される割合で原料を混合し、感覚改善用化粧品(ローション)を製造した。
【0034】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質を有効成分とする感覚改善剤。
【請求項2】
乳由来リン脂質を有効成分とする感覚改善剤。
【請求項3】
乳又は乳素材から得られる組成物であって、全固形中10重量%以上のリン脂質を含有する組成物(乳由来リン脂質含有組成物)を乳由来リン脂質として使用する請求項2記載の感覚改善剤。
【請求項4】
乳由来リン脂質含有組成物が、乳または乳素材を孔径0.1〜2.0μmの精密濾過(MF)膜処理または分画分子量5〜500kDaの限外濾過(UF)膜処理することにより得られる組成物である請求項2記載の感覚改善剤。
【請求項5】
乳由来リン脂質含有組成物が、乳または乳素材に酸を加えてpHを4.0〜5.0に調整し、カゼインタンパク質を沈殿として除去した後、孔径0.1〜2.0μmのMF膜処理または分画分子量5〜500kDaのUF膜処理することにより得られる組成物である請求項2記載の感覚改善剤。
【請求項6】
乳または乳素材が、バターセーラムまたはバターミルクである請求項3〜5のいずれかに記載の感覚改善剤。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の感覚改善剤を配合した感覚改善用飲食品又は飼料、化粧品。


【公開番号】特開2009−126788(P2009−126788A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299878(P2007−299878)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000006699)雪印乳業株式会社 (155)
【Fターム(参考)】