説明

成形品の外観検査方法およびその装置

【課題】成形むらを欠けと区別できるようにし、良品である成形むらの無駄ばねを抑制することを可能にする。
【解決手段】検査領域生成部16は、検査対象である物品Gの濃淡画像について指定した着目領域から検査領域を生成する。方向値画像生成部14は、検査領域に含まれる画素の濃度勾配に対応付けた方向値を各画素の画素値とする方向値画像を生成する。着目画素抽出部17は、方向値画像のうち物品の成形むらに相当する特定の方向値を持つ画素を着目画素として抽出する。演算部18は、検査領域において方向値を持つすべての画素の画素数に対する着目画素の画素数の割合を算出する。判定部19は、演算過程において求めた割合を欠けに対する範囲として規定した数値範囲と比較し前記割合が当該数値範囲を逸脱しているときには成形むらであると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象としての成形品である物品を撮像した画像に基づいて物品における成形むらを判別する外観検査方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、検査対象としての物品の画像を用い、画像処理技術により物品の欠け、ひび、汚れ、異物などの欠陥部を検出する外観検査方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、エッジ画像や微分2値画像から欠陥候補領域を抽出し、欠陥候補領域の近傍の濃度に基づいて設定した閾値による2値化を行って欠陥候補領域内の画素と他の領域の画素とを分離し、その後、欠陥候補領域内の画素に関する画素数や濃度の情報を用いて、欠陥候補領域が欠陥か否かの判定を行っている。
【特許文献1】特公平3−175343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、成形品においては、欠けがあれば不良品として扱われるが、多少の成形むらは良品と扱うことができるから、成形品の良否判定において成形むらと欠けとを区別することにより、いわゆる無駄ばねを抑制することができる。
【0005】
特許文献1においては、欠陥候補領域を絞り込んだ後に、画素数や濃度(濃淡値)の情報を用いて欠陥か否かを判定しているから、成形品の成形むらと欠けとが同程度の画素数の欠陥候補領域を形成している場合には、濃淡値の情報のみで判別しなければならない。しかしながら、成形むらと欠けとが同程度の濃淡値を持つことは、一般に起こりうることであるから、特許文献1の技術は、成形むらを欠けとは区別して認識するという目的の達成には不十分なものである。
【0006】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、成形むらを欠けと区別できるようにし、良品である成形むらの無駄ばねを抑制することを可能とした成形品の外観検査方法およびその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、検査対象としての成形品である物品の濃淡画像について指定した着目領域から検査領域を生成する検査領域生成過程と、検査領域に含まれる画素の濃度勾配に対応付けた方向値を各画素の画素値とする方向値画像を生成する方向値画像生成過程と、方向値画像のうち物品の成形むらに相当する特定の方向値を持つ画素を着目画素として抽出する着目画素抽出過程と、検査領域において方向値を持つすべての画素の画素数に対する着目画素の画素数の割合を算出する演算過程と、演算過程において求めた割合を欠けに対する範囲として規定した数値範囲と比較し前記割合が当該数値範囲を逸脱しているときに物品に成形むらが存在すると判定する判定過程とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記検査領域生成過程は、前記物品の輪郭線を含む予備検査領域を生成する第1過程と、予備検査領域に含まれる画素を2値化することにより抽出される特徴点の連結領域を囲む検査領域を生成する第2過程とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、前記検査領域は、前記連結領域に外接する矩形領域であることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明では、請求項2の発明において、前記検査領域は、前記連結領域の外周縁に沿って外周縁の外側に設定された境界線に囲まれる領域であることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明では、請求項1〜4のいずれかの発明において、前記物品は平面視において多角形状であって、前記着目画素抽出過程では、前記検査領域が前記物品の輪郭線のうちのコーナ部分を含む場合には、当該コーナ部分を挟む直線部分の方向値を物品の成形むらに相当する特定の方向値として用い、前記検査領域が前記物品の輪郭線のうち直線部分のみを含む場合には、前記直線部分の方向値を物品の成形むらに相当する特定の方向値として用いることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明では、請求項1〜5のいずれかの発明において、前記判定過程では、前記方向値画像において各方向値を持つ画素数の分布に偏りがなく、か各方向値を持つ画素数の総和が規定数未満である場合に、成形むらと判断することを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、検査対象としての成形品である物品の濃淡画像を撮像する撮像部と、検査対象である物品の濃淡画像について指定した着目領域から検査領域を生成する検査領域生成部と、 検査領域に含まれる画素の濃度勾配に対応付けた方向値を各画素の画素値とする方向値画像を生成する方向値画像生成部と、方向値画像のうち物品の成形むらに相当する特定の方向値を持つ画素を着目画素として抽出する着目画素抽出部と、検査領域において方向値を持つすべての画素の画素数に対する着目画素の画素数の割合を算出する演算部と、演算部において求めた割合を欠けに対する範囲として規定した数値範囲と比較し前記割合が当該数値範囲を逸脱しているときに物品に成形むらが存在すると判定する判定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、検査領域内において特定の方向値を持つ画素の画素数が、検査領域内において方向値を持つすべての画素の画素数に占める割合を用いて成形むらの有無を判別するから、成形むらと欠けのような欠陥とを分けることにより、良品である成形むらを不良品と判断する無駄ばねを抑制することができる。また、特定の方向値を持つ画素の画素数が検査領域において方向値を持つ画素の画素数に占める割合を用いて成形むらを良品として良否判定を行うから、不良品を良品と誤認することがない。
【0015】
請求項2の発明によれば、検査領域を特徴点の連結領域を囲む部位に絞り込んでいるから、検査対象となる画素数が少なくなり、短時間での処理が可能になる。
【0016】
請求項3の発明によれば、検査領域を連結領域に外接する矩形領域しているから、連結領域の座標を用いて検査領域を簡単に設定することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、検査領域の外周縁に沿って外周縁の外側に設定された境界線に囲まれる領域を検査領域に用いるから、検査領域が特徴点の連結領域の近傍のみになり、判定の精度を高めることになる。
【0018】
請求項5の発明によれば、成形むらの特徴を持つ方向値の画素に着目しているから、成形むらを他の欠陥と誤認することがなく、無駄ばねを抑制することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、検査領域の画素において各方向値を持つ画素数の分布に偏りがないことと、各方向値を持つ画素数の総和が規定数未満であることとを成形むらの特徴として判定を行うから、成形むらの判定精度が高くなる。
【0020】
請求項7の発明によれば、検査領域内において特定の方向値を持つ画素の画素数が、検査領域内において方向値を持つすべての画素の画素数に占める割合を用いて成形むらの有無を判別するから、成形むらと欠けのような欠陥とを分けることにより、良品である成形むらを不良品と判断する無駄ばねを抑制することができる。また、特定の方向値を持つ画素の画素数が検査領域において方向値を持つ画素の画素数に占める割合を用いて成形むらを良品として良否判定を行うから、不良品を良品と誤認することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に説明する実施形態では、図1に示す構成の検査装置を用いるものとする。この検査装置は、検査対象としての成形品である物品Gを撮像する撮像部2と、撮像部2から出力される濃淡画像に対する画像処理により着目する情報(すなわち、物品Gにおける成形むらと物品Gの欠け)を抽出する画像処理装置1とにより構成される。本実施形態で検査対象とする物品Gは、たとえば配線器具の器体などを想定している。
【0022】
画像処理装置1は、プロセッサを備える専用装置として構成することができるが、汎用のコンピュータに後述する機能を実現するプログラムを実行させる構成であってもよい。画像処理装置1には、処理過程において生成される画像を表示するモニタ装置3と、キーボードやマウスのような汎用の入力装置4とが接続される。モニタ装置3は画像出力部32を介して接続され、入力装置4は入力インターフェイス33を介して接続される。
【0023】
撮像部2は、図2に示すように、物品Gを撮像するTVカメラのような撮像装置21と、物品Gを照明する照明装置22と、撮像装置21と物品Gとの間に配置され照明装置22から出射した光線を物品Gの表面に対して撮像装置21の光軸と平行な方向に反射するとともに物体Gからの反射光を撮像装置21に入射させるハーフミラー23とにより構成される。
【0024】
撮像装置21は物品Gに正対して配置され、、ハーフミラー23は、撮像装置21の光軸上において、光軸に対して45度の角度で交差する形で撮像装置21と物品Gとの間に配置される。したがって、撮像装置21はハーフミラー23を通して物品Gを撮像する。
【0025】
一方、照明装置22は、光線の出射方向が撮像装置21の光軸に直交し、かつ出射光線がハーフミラー23によって直交方向に向きを変えられる位置に配置される。また、照明装置22は、物品Gの表面を一様に照明することができる面光源を備える。したがって、照明装置22からの光線により物品Gの表面を一様に照明した状態で、撮像装置21により物品Gを撮像することが可能になる。この照明技術は、同軸落射照明として知られている。
【0026】
撮像装置21で撮像された物品Gの画像は、画像処理装置1に設けた画像取込部11を通して画像記憶部12に濃淡画像として格納される。画像取込部11は、撮像装置11から出力された画像をフレーム単位で切り出す機能を有し、さらに撮像装置21がアナログ出力である場合には、アナログ−デジタル変換を行う機能を有する。画像記憶部12は、ハードディスク装置を含むが、以下の説明では半導体メモリを想定している。画像記憶部12には、画像処理装置1における各処理段階において生成される画像を記憶するとともに、画像処理に伴って生じるデータを一時的に保存する作業メモリとしても用いられる。
【0027】
画像処理装置1は、物品Gの欠けの有無と物品Gの成形むらの有無とを判別する目的で用いられる。欠けと成形むらとに関して考察したところ、成形品である物品Gに欠けが生じる場合にはエッジの方向が成形品の輪郭線とは異なる方向に偏在することが多く、成形むらの場合にはエッジの方向に偏在することが多いという知見が得られた。したがって、成形むらか欠けかの判断を要する領域について、画素の方向値を抽出し、エッジと同じ方向値を持つ画素が、エッジとは異なる方向値を持つ画素よりも多い場合には、欠けではなく成形むらであると判定することができる。本発明は、この知見に基づいて成形品の欠けと成形むらとを判別する技術を提供するものである。
【0028】
画像処理装置1において物品Gの欠けと成形むらとの判別を行うために、物品Gにおいて検査領域を設定する必要がある。検査領域を設定するには、まず画像記憶部12に格納された濃淡画像をモニタ装置3に表示し、物品Gにおいて欠けが存在すると考えられる着目領域A1(図4参照)を設定する。着目領域A1は、あらかじめ定めておくことができるが、モニタ装置3の画面を見ながら入力装置4を操作することによって設定することも可能である。着目領域A1は、物品Gにおける輪郭線(一般には、物品Gの外周縁となる輪郭線)の一部を含むように設定される。着目領域A1の設定には着目領域指定部13が用いられる。
【0029】
着目領域指定部13において着目領域A1が決められると、着目領域A1から物品Gの輪郭線を抽出するために、着目領域A1に含まれる画素について方向値が求められる。方向値は以下の手順で求める。
【0030】
濃淡画像内では、一般に、物品Gの輪郭線が存在する部位において濃淡値が大きく変化するから、濃淡値を二値化するか濃度勾配を二値化すれば輪郭線を抽出することができる。また、輪郭線の部位において濃度勾配の方向に直交する方向を輪郭線の方向として用いることが可能である。画像処理では、濃度勾配は微分絶対値として算出することができ、濃度勾配の方向に直交する方向は微分方向値として抽出することができる。
【0031】
いま、図3に示すように、着目画素P0について8近傍の画素を用いるとすれば、以下のように計算により微分絶対値および微分方向値を算出することができる。ただし、P1〜P8は8近傍の画素の濃淡値である。
微分絶対値=(ΔH+ΔV1/2
微分方向値=tan−1(ΔV/ΔH)+π/2
ΔH=(P4+P5+P6)−(P2+P1+P8)
ΔV=(P2+P3+P4)−(P6+P7+P8)
微分方向値は、0〜2πの間の任意の値を取り得るから、微分方向値をそのまま用いると処理が複雑になる。そこで、45度の角度区間ごとに右回りに増加する1〜8の整数値を対応付け、この整数値を方向値として用いる。図3に示す画素P0を着目画素とすれば、微分方向値が−22.5〜22.5度の範囲であるときに方向値を1とし、微分方向値が22.5〜67.5度の範囲であるときに方向値を2とするのである。簡略化して言えば、画素P0から画素P1に向かう微分方向値を持つときに方向値が1、画素P0から画素P2に向かう微分方向値を持つときに方向値が2になる。ここに、画素P0から他の画素に向かう向きは、明領域を右手として画素P0から輪郭線に沿って進む向きを意味する。なお、着目画素の周囲の濃度変化が小さい場合には、当該画素には方向値を与えない。つまり、方向値を求めるために微分絶対値を求め、微分絶対値が規定した閾値以下である画素については方向値を与えない。
【0032】
上述のようにして求めた方向値を各画素の画素値とした画像を方向値画像と呼ぶ。方向値画像では、方向値1〜8にそれぞれ特定色を対応付けてあり、モニタ装置3の画面に方向値画像を表示する際には、各画素の方向値ごとに色分けされた画像が表示される。たとえば、方向値1〜8に対して、それぞれ白、赤、橙、黄、緑、水色、青、紫などの色を対応付ける。方向値画像は、方向値画像生成部14において画像記憶部12に格納されている濃淡画像を用いて生成され、濃淡画像とともに画像記憶部12に格納される。
【0033】
着目領域A1に含まれる物品Gの輪郭線上の画素には方向値が付与されているから、輪郭線追跡部15において、方向値を追跡することにより輪郭線を抽出する。輪郭線追跡部15では、まず着目領域A1の内部でラスタスキャンを行うことにより方向値を持つ画素を抽出し、この画素を起点にする。起点の画素が抽出されると、輪郭線上での方向値の特性を利用し、着目画素の方向値に対する隣接画素の方向値がたとえば±2(方向値が負になる場合には9を加算する)の範囲内であるときに、隣接画素を次の着目画素とするという手順で着目領域A1の中で輪郭線を追跡する。なお、着目領域A1には物品Gの輪郭線以外のノイズも含まれる可能性があるから、連続した画素の画素数が規定数以下であるときには、輪郭線として採用しない。
【0034】
輪郭線追跡部15において着目領域A1の範囲における物品Gの輪郭線を抽出した後、検査領域生成部16において、着目領域A1の中で抽出した物品Gの輪郭線から規定したオフセット分の画素(たとえば、4〜5画素)だけ物品Gの外側を境界線とする予備検査領域A2(図4参照)を設定する。
【0035】
予備検査領域A2の設定に際しては、着目領域A1の中で抽出した輪郭線の概略形状を指定する。たとえば、物品Gの輪郭線が平面視において矩形状であり、かつ物品Gの輪郭線の直線部分の延長方向が、濃淡画像の水平方向と垂直方向とに略一致しているときには、輪郭線のうち直線部分かコーナ部分かを指定する。さらに、直線部分であれば、物品Gの上下左右のどの輪郭線を着目領域A1に含むのかを指定し、コーナ部分であれば、物品Gの4個のコーナ部分のどれを着目領域A1に含むのかを指定する。輪郭線の概略形状の指定には、検査領域生成部16において用意した選択肢をモニタ装置3の画面に表示し、入力装置4の操作により選択肢を選択する方法を採用すればよい。物品Gは平面視において矩形以外の多角形状であってもよいが、以下の説明では矩形状である場合を例として説明する。
【0036】
着目領域A1から予備検査領域A2を生成するには、まず、上述のようにして指定した物品Gの輪郭線に相当する方向値を着目領域A1から抽出し、当該方向値により区切られる領域のうち、指定した側の領域を含むように予備検査領域A2を生成する。
【0037】
たとえば、物品Gの右下のコーナ部分を指定した場合には、着目領域A1の中で方向値を持つ画素はL字状に並び、かつ着目領域A1において左上の領域が物品Gに相当するから、方向値を持つ画素で区切られる領域のうち左上側の領域に予備検査領域A2を設定する。
【0038】
予備検査領域A2は、着目領域A1よりも狭い領域であるから、着目領域A1について以下の処理を行う場合に比較すると処理対象となる画素数を低減させることができ、短時間で判定結果を得ることが可能になる。あるいはまた、処理時間を同程度とすれば、判定精度を高めることが可能になる。しかしながら、予備検査領域A2は、依然として欠けや成形むらに比較すれば大きい領域になるから、本実施形態では、予備検査領域A2からさらに絞り込んだ検査領域A3(図5参照)を設定している。
【0039】
そのため、本実施形態では、予備検査領域A2に含まれる画素の2値化を行うことにより2値画像を生成する2値画像生成部31を設けている。2値画像は、画像記憶部12に格納された濃淡画像のうち予備検査領域A2に含まれる画素から生成され、濃淡画像とともに画像記憶部12に格納される。また、2値画像を生成する際の閾値は、固定的に設定した閾値を用いることができるが、予備検査領域A2のうち物品Gもしくは背景であることが既知である部位の画素の濃淡値に基づいて設定した閾値(浮動閾値)を用いるのが望ましい。
【0040】
2値画像生成部31により生成された2値画像では、欠けあるいは成形むらの存在領域の画素が、他の画素とは区別される特徴点(たとえば、黒画素)として抽出されるから、特定点である画素の連結領域(2値画像において隣接する画素が同じ値である画素)D1を囲むように検査領域A3を設定する。検査領域A3は、図5(a)のように、連結領域D1に外接する矩形領域(ただし、各辺は画像の水平方向および垂直方向に一致する)として設定するか、図5(b)のように、連結領域D1の外周縁に沿って所定画素(2〜3画素)だけ外側の境界線に囲まれる領域として設定する。図5(b)のような検査領域A3を設定するには、ラスタスキャンを行って連結領域D1の輪郭線上の画素を抽出し、抽出した各画素の方向値に直交する方向に所定画素だけ離れた位置の画素を境界線上の画素とすればよい。
【0041】
検査領域A3として図5(a)のように矩形領域を採用する場合には、検査領域A3の設定が座標値のみで行えるから設定が簡単であり、図5(b)のように連結領域D1の外周縁に沿った領域を採用する場合には、矩形領域よりも検査領域A3に含まれる画素数を少なくすることができるから、後続する処理の高精度化が可能になる。
【0042】
検査領域A3を設定した後に、検査領域A3に含まれる画素について方向値画像を生成する。検査領域A3は、通常は着目領域A1の範囲内で設定されるから、着目領域A1について方向値画像生成部14で生成した方向値画像のうち検査領域A3に含まれる範囲の方向値画像を用いることができる。ただし、検査領域A3について、方向値画像生成部14においてあらためて方向値画像を生成してもよい。
【0043】
検査領域A3について方向値画像を生成した後には、成形むらを欠けと区別するために、着目画素抽出部17では検査領域A3の中で特定の方向値を持つ画素を抽出する。着目画素抽出部17で抽出する方向値は、検査領域A3が囲む物品Gの部位に応じて異なっている。
【0044】
上述したように、成形むらは、物品Gの輪郭線と同方向に偏在していることが多く、検査領域A3が物品Gの輪郭線のうちの直線部分に着目しているときには、着目画素は、直線部分の方向値を持つ画素になる。方向値の規定範囲の下限が負の値になる場合には9を加算する。たとえば、検査領域A3が物品Gの輪郭線のうち右縁に着目しているとき、右縁の方向値は7であるから、着目画素抽出部17では検査領域A3に含まれる画素のうち方向値が7である画素を抽出する。
【0045】
一方、検査領域A3が物品Gの輪郭線のうちコーナ部分に着目しているときには、物品Gの輪郭線のうち着目するコーナ部分を挟む2本の直線部分の方向値を持つ画素を着目画素とする。たとえば、物品Gの右下角のコーナ部分であれば、図6(a)のように、コーナ部分を挟む2本の直線部分の方向値はそれぞれ5、7であるから、方向値が5、7の方向値を持つ画素を抽出する。ちなみに、検査領域A3に欠けが存在する場合は、図6(b)のように、コーナ部分を挟む2本の直線部分の方向値5、7とは異なる方向値6が多く生じる。
【0046】
着目画素抽出部17において特定の方向値を持つ着目画素を抽出した後、演算部18では、検査領域A3において方向値を持つすべての画素の画素数に対する着目画素の割合を算出する。上述したように、成形むらの部位の画素を着目画素としていることにより、演算部18において求めた割合が大きいほど成形むらである可能性が高くなるから、判定部19では、あらかじめ欠けである場合の数値範囲を規定しておき、演算部18で求めた割合が規定した数値範囲を逸脱したときに(つまり、割合が数値範囲より大きいときに)、成形むらが存在すると判断する。
【0047】
上述した処理により、判定部19では成形むらの有無を判断することができる。すなわち、判定部19においてまた、判定部19では成形むらが検出されたときには、欠けではない良品と判断することになる。なお、上述の例では予備検査領域A2の2値画像に基づいて検査領域A3を設定しているが、予備検査領域A2を検査領域A3に代えて用いてもよい。この場合、処理対象の画素数は多くなるが、上述した処理により成形むらを抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上に用いる撮像部を示す側面図である。
【図3】同上における8近傍の概念を示す図である。
【図4】同上の動作例を示す図である。
【図5】同上における検査領域の設定例を示す図である。
【図6】(a)は同上において成形むらの方向値の例を示す図、(b)は同上において欠けの方向値の例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 画像処理装置
2 撮像部
3 モニタ装置
4 入力装置
11 画像取込部
12 画像記憶部
13 着目領域指定部
14 方向値画像生成部
15 輪郭線追跡部
16 検査領域生成部
17 着目画素抽出部
18 演算部
19 判定部
21 撮像装置
22 照明装置
23 ハーフミラー
31 2値画像生成部
G 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象としての成形品である物品の濃淡画像について指定した着目領域から検査領域を生成する検査領域生成過程と、検査領域に含まれる画素の濃度勾配に対応付けた方向値を各画素の画素値とする方向値画像を生成する方向値画像生成過程と、方向値画像のうち物品の成形むらに相当する特定の方向値を持つ画素を着目画素として抽出する着目画素抽出過程と、検査領域において方向値を持つすべての画素の画素数に対する着目画素の画素数の割合を算出する演算過程と、演算過程において求めた割合を欠けに対する範囲として規定した数値範囲と比較し前記割合が当該数値範囲を逸脱しているときに物品に成形むらが存在すると判定する判定過程とを有することを特徴とする成形品の外観検査方法。
【請求項2】
前記検査領域生成過程は、前記物品の輪郭線を含む予備検査領域を生成する第1過程と、予備検査領域に含まれる画素を2値化することにより抽出される特徴点の連結領域を囲む検査領域を生成する第2過程とを有することを特徴とする請求項1記載の成形品の外観検査方法。
【請求項3】
前記検査領域は、前記連結領域に外接する矩形領域であることを特徴とする請求項2記載の成形品の外観検査方法。
【請求項4】
前記検査領域は、前記連結領域の外周縁に沿って外周縁の外側に設定された境界線に囲まれる領域であることを特徴とする請求項2記載の成形品の外観検査方法。
【請求項5】
前記物品は平面視において多角形状であって、前記着目画素抽出過程では、前記検査領域が前記物品の輪郭線のうちのコーナ部分を含む場合には、当該コーナ部分を挟む直線部分の方向値を物品の成形むらに相当する特定の方向値として用い、前記検査領域が前記物品の輪郭線のうち直線部分のみを含む場合には、前記直線部分の方向値を物品の成形むらに相当する特定の方向値として用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形品の外観検査方法。
【請求項6】
前記判定過程では、前記方向値画像において各方向値を持つ画素数の分布に偏りがなく、各方向値を持つ画素数の総和が規定数未満である場合に、成形むらと判断することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形品の外観検査方法。
【請求項7】
検査対象としての成形品である物品の濃淡画像を撮像する撮像部と、検査対象である物品の濃淡画像について指定した着目領域から検査領域を生成する検査領域生成部と、 検査領域に含まれる画素の濃度勾配に対応付けた方向値を各画素の画素値とする方向値画像を生成する方向値画像生成部と、方向値画像のうち物品の成形むらに相当する特定の方向値を持つ画素を着目画素として抽出する着目画素抽出部と、検査領域において方向値を持つすべての画素の画素数に対する着目画素の画素数の割合を算出する演算部と、演算部において求めた割合を欠けに対する範囲として規定した数値範囲と比較し前記割合が当該数値範囲を逸脱しているときに物品に成形むらが存在すると判定する判定部とを有することを特徴とする成形品の外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−32334(P2010−32334A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194164(P2008−194164)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】