説明

成形機及びその温度制御方法

成形機(10)は、加熱シリンダ(51)を誘導加熱により加熱する誘導加熱手段を備える。誘導加熱手段は加熱シリンダ(51)に配設された複数の誘導加熱用コイル(112−1〜112−4)と、これらのコイルに供給する電力を制御する複数の電力供給制御部とを含む。各電力供給制御部はそれぞれ、直流電源回路(40)から電力を供給される加熱部制御用インバータ(114−1〜114−4)を備える。各加熱部制御用インバータは供給する電力の周波数制御または電流制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形機に係り、特に加熱を必要とする部位、例えば加熱シリンダや金型に対する加熱手段として熱効率の良い誘導加熱手段を備えた成形機及びその温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機や押出し成形機(以下では、これらをまとめて成形機と呼ぶ)の加熱手段として、一般的にバンドヒータが用いられている。図1に示されるように、加熱シリンダ150は軸方向に関して複数のゾーン(図1では、4つのゾーンが図示されている)に分割され、各ゾーンにバンドヒータ151−1〜151−4が夫々配設されている。バンドヒータ151−1〜151−4は加熱シリンダの周囲を巻回するように設置され、夫々スイッチ手段152−1〜152−4を介して電源153に接続されている。スイッチ手段152−1〜152−4としてはSSRやコンタクタが用いられる。
【0003】
各ゾーンには、熱電対からなる温度センサが設置されてゾーン毎に温度が検出される。温度センサからの温度検出信号は温度制御装置54に送られる。表示設定器155は各ゾーンの温度を個別に設定することができ、各ゾーンの温度の設定情報は温度制御装置154に送られる。温度制御装置154は、表示設定器155からの設定情報と各温度センサからの温度検出信号とに基づいて制御演算を行ない、演算結果に応じて各スイッチ手段のオン時間を制御することにより、各ゾーンが設定された温度に加熱されるように制御する(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、バンドヒータ151−1〜151−4による加熱シリンダの加熱は熱伝導による加熱であるために熱効率が悪いという問題がある。加えて、温度制御はスイッチ手段のオン、オフ、すなわち電源オン・オフのデューティ比を変えることにより行われるので、精密な温度制御を行なうことが難しく、オーバシュートやアンダーシュートが発生し易いという問題点もある。
【特許文献1】特開平7−276458号公報(第1頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の総括的な目的は、上述の問題を解決した改良された有用な成形機を提供することである。
【0006】
本は発明のより具体的な目的は、被加熱部の温度制御を精密に行うことのできる成形機を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、加熱を必要とする被加熱部、例えば加熱シリンダや金型に対する加熱を熱効率良く行うことのできる成形機を提供することである。
【0008】
本発明の更に他の目的は、上述の問題を解決する成形機の温度制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、少なくとも1つの被加熱部を誘導加熱により加熱する誘導加熱手段を備えた成形機であって、前記誘導加熱手段は前記被加熱部に配設された誘導加熱部と、該誘導加熱部に供給する電力量を制御する電力供給制御部とを含み、前記電力供給制御部は、周波数制御及び電流制御のいずれか一方により、該誘導加熱部に供給する電力を制御することを特徴とする成形機が提供される。
【0010】
本発明による成形機において、前記被加熱部は加熱シリンダの複数箇所に相当し、 前記電力供給制御部は直流電源部から電力を供給される加熱部制御用インバータを備え、該加熱部制御用インバータが前記周波数制御または電流制御を行うことが好ましい。前記加熱部制御用インバータは数Hz〜数十KHzの範囲内で前記周波数制御を行うことが好ましい。あるいは、前記加熱部制御用インバータは数Hz〜数十KHzの範囲内の固定周波数を用いて前記電流制御を行うことが好ましい。
【0011】
上述の成形機において、該成形機は1つ以上のモータを備え、該モータはモータ制御用直流電源部からモータ制御用インバータを介して電力が供給されるように構成されており、前記モータ制御用直流電源部を前記直流電源部として兼用することとしてもよい。また、前記加熱部制御用インバータ及び前記モータ制御用インバータの少なくとも一方の入力側にスイッチを設けることとしてもよい。
【0012】
また、上述の成形機において、前記加熱部制御用インバータの入力側に電圧調整回路を備えることとしてもよい。
【0013】
また、本発明によれば、成形機における少なくとも1つの被加熱部を誘導加熱により加熱する成形機の温度制御方法であって、誘導加熱用の供給電力量を周波数制御または電流制御のいずれか一方で制御することにより該被加熱部の温度制御を行うことを特徴とする成形機の温度制御方法が提供される。
【0014】
本発明による成形機の温度制御方法において、前記周波数制御を数Hz〜数十KHzの範囲内で行なうことが好ましい。あるいは、数Hz〜数十KHzの範囲の固定周波数で前記電流制御を行なうことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、誘導加熱により加熱シリンダ、金型等の被加熱部を直接加熱するので熱効率の良い加熱を実現できる。
【0016】
本発明の一実施例によれば、誘導加熱コイルへの電力を周波数制御あるいは電流制御により制御することにより精密な温度制御を実現できる。
【0017】
また、本発明の一実施例によれば、誘導加熱コイルへの電力供給源としてモータ制御用直流電源部を兼用したことによりコスト削減を達成することができる。この場合、加熱部制御用インバータの入力側に電圧調整回路を備えることにより、モータの回生等によって電圧が変動するようなことがあっても加熱部制御用インバータの出力電圧を一定に維持することができる。したがって、電圧変動が温度制御に影響を及ぼすことが無い。
【0018】
さらに、本発明の一実施例によれば、加熱部制御用インバータ、モータ制御用インバータのうち少なくともモータ制御用インバータの入力側にスイッチ手段を設けることにより、誘導加熱コイルへの電力供給源としてモータ制御用直流電源部を兼用した場合に、被加熱部の加熱を維持した状態でモータ制御用インバータ以降のメンテナンス作業を行うことができる。これは、実運転を行った後にメンテナンス作業を行う場合、加熱シリンダ内の溶融樹脂の劣化を防ぐために、加熱シリンダの加熱は維持したいという要求を満足するうえで重要である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の射出成形機における加熱シリンダに備えられたバンドヒータを用いた加熱手段のブロク図である。
【図2】本発明が適用される加熱シリンダを有する射出成形機の側面図である。
【図3】図2に示す射出装置の拡大断面図である。
【図4】本発明による誘導加熱手段による温度制御を説明するための回路図である。
【図5】本発明の一実施例による射出成形機の加熱シリンダの誘導加熱手段を示すブロック図である。
【図6】本発明による誘導加熱手段による温度制御のために使用される加熱部制御用インバータの回路図である。
【図7A】図5に示す各加熱部制御用インバータに、電圧調整回路として昇圧/降圧回路を設けた場合の例を示すブロック図である。
【図7B】図7Aに示す昇圧/降圧回路の回路図である。
【図8A】図5に示す各加熱部制御用インバータに電圧調整回路として降圧回路を設けた場合の回路図である。
【図8B】図5に示す各加熱部制御用インバータに電圧調整回路として昇圧回路を設けた場合の回路図である。
【図9】図5に示す各加熱部制御用インバータ及び各モータ制御用インバータにスイッチを接続した場合の回路図である。
【図10】昇圧/降圧回路を複数の加熱部制御用インバータに対して一つ設けた場合の射出成形機の加熱シリンダの誘導加熱手段を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0020】
10 電動射出成形機
30 温度コントローラ
31 出力制御部
40 直流電源回路
41 整流回路
45,45−1〜45−4 昇圧/降圧回路
50 射出装置
51 加熱シリンダ
101 成形機コントローラ
102 表示設定器
111−1〜111−4 ゾーン
112−1〜112−4、IC20 誘導加熱コイル
113−1〜113−4、TS20 温度センサ
114−1〜114−4 加熱部制御用インバータ
IV1〜IV4 モータ制御用インバータ
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
まず、本発明が適用される射出成形機の一例について、図2を参照しながら説明する。図2は本発明が適用される射出成形機の一例としての電動射出成形機の全体構成を示す側面図である。
【0022】
図2に示す電動射出成形機10は、射出装置50及び金型装置70から構成される。
【0023】
射出装置50は、加熱シリンダを備え、加熱シリンダ51にはホッパ52が設けられる。加熱シリンダ内にはスクリュー53が進退自在かつ回転自在に設けられる。スクリュー53の後端は支持部材54によって回転自在に支持される。支持部材54にはサーボモータ等の計量モータ55が駆動部として取り付けられる。計量モータ55の回転は出力軸61に取り付けられたタイミングベルト56を介して被駆動部のスクリュー53に伝達される。出力軸61の後端には回転検出器62が接続されている。回線検出器62は、計量モータ55の回転数又は回転量を検出することで、スクリュー53の回転速度を検出する。
【0024】
射出装置50はスクリュー53に平行なねじ軸57を有する。ねじ軸57の後端は、サーボモータ等の射出モータ59の出力軸63に取り付けられたタイミングベルト58を介して、射出モータ59に連結されている。したがって、射出モータ59によってねじ軸57を回転させることができる。ねじ軸57の前端は支持部材54に固定されたナット60に係合している。射出モータ59を駆動し、タイミングベルト58を介してねじ軸57を回転させると、支持部材54は前後進可能となり、その結果、被駆動部のスクリュー53を前後移動させることができる。射出モータ59の出力軸63の後端には位置検出器64が接続されている。位置検出器64は射出モータ59の回転数又は回転量を検出することで、スクリュー53の駆動状態を示すスクリュー53の位置を検出する。
【0025】
型締装置70は、可動金型71が取り付けられる可動プラテン72と、固定金型73が取り付けられる固定プラテン74を有する。可動プラテン72と固定プラテン74とは、タイバー75によって連結される。可動プラテン72はタイバー75に沿って摺動可能である。また、型締装置70は、一端が可動プラテン72と連結し、他端がトグルサピート76と連結するトグル機構77を有する。トグルサポート76の中央部において、ボールねじ軸79が回転自在に支持される。ボールねじ軸79には、トグル機構77に設けられたクロスヘッド80に形成されたナット81が係合している。また、ボールねじ軸79の後端にはプーリー82が設けられ、サーボモータ等の型締モータ78の出力軸83とプーリー82との間には、タイミングベルトが設けられている。
【0026】
型締装置70において、駆動部たる型締モータ78を駆動すると、型締モータ78の回転がタイミングベルト84を介してボールねじ軸79に伝達される。そして、ボールねじ軸79及びナット81によって、回転運動から直線運動に変換され、トグル機構が作動する。トグル機構77の作動により、可動プラテン72はタイバー75に沿って移動し、型閉じ、型締め及び型開きが行なわれる。型締モータ78の出力軸83の後端には、位置検出器85が接続されている。位置検出器85は、型締モータ78の回転数又は回転量を検出することにより、ボールねじ軸79の回転に伴って移動するクロスヘッド80又はトグル機構77によってクロスヘッド80に連結された可動プラテン72の位置を検出する。
【0027】
次に、本発明に関連する部分である射出装置50の構成について、図3を参照しながら説明する。図3は射出装置50の拡大断面図である。
【0028】
射出装置50は、上述のように加熱シリンダ51と加熱シリンダ51の中で回転及び前後移動可能なスクリュー53を有する。加熱シリンダ51の先端には、ノズル口96が形成された射出ノズル95が設けられる。加熱シリンダ51の所定の位置に樹脂供給口86が形成される。樹脂供給口86には、接続筒87を介してホッパ52が接続され、ホッパ52内の樹脂ペレット88が接続筒87及び樹脂供給口86を通って加熱シリンダ51内に供給される。また、加熱シリンダ51の外周には、誘導加熱用コイル112−1〜112−4が取り付けられている。誘導加熱用コイル112−1〜112−4に通電することにより加熱シリンダ51内で樹脂ペレット88を加熱し、溶融させることができる。
【0029】
スクリュー53は、フライト部92、フライト部92の前端に設けられたスクリュヘッド97及びシール部98を有する。フライト部92は、スクリュー53本体の外周面に螺旋状に形成されたフライト93を有し、フライト93によって螺旋状の溝94が形成される。また、フライト部92には後方から前方にかけて順に、ホッパ52から落下した樹脂ペレット88が供給され前方に送られる送りゾーンS1、供給された樹脂ペレット88を圧縮しながら溶融させる圧縮ゾーンS2、及び溶融させられた樹脂を一定量計量する計量ゾーンS3が形成される。
【0030】
計量工程時にスクリュー53を正方向に回転させると、樹脂ペレット88は樹脂供給口86から送りゾーンS1に供給され、溝94内を前進(図における左方に移動)させられる。それに伴って、スクリュー53が後退(図のける右方に移動)させられ、樹脂がスクリュヘッド97の前方に蓄えられる。なお、溝94内の樹脂は、送りゾーンS1においてペレットの形状のままであり、圧縮ゾーンS2において半溶融状態になり、計量部S3において完全に溶融させられて液状になる。そして、射出工程時に、スクリュー53を前進させると、スクリュヘッド97の前方に蓄えられた液状の樹脂は、射出ノズル95から射出され、金型装置70の固定金型73のキャビティ空間に充填される。
【0031】
次に、本発明の本発明の概念について図4を参照しながら説明する。図4は、成形機の加熱シリンダや金型の特定の部分を被加熱部とし、この被加熱部を誘導加熱により温度制御する温度制御装置の回路図である。
【0032】
図4において、誘導加熱部として作用する誘導加熱用コイルIC20は、金属製の被加熱部に設置される。被加熱部には熱電対等の温度センサTS20が設置される。誘導加熱用コイルIC20には周波数制御部FC20から周波数制御された電力が供給される。平滑用コンデンサCC20は誘導加熱用コイルIC20に並列に設けられる。周波数制御部FC20は直流電源部(図示されていない)に接続される。周波数制御部FC20には、温度センサTS20からの温度検出信号と、温度設定器(図示されていない)からの温度設定値信号が入力される。
【0033】
以上のような回路構成とするのは以下の理由による。一般に、誘導加熱に必要な電力量Pは、I
・f (但し、Iは供給される電流、fは電流の周波数)に比例すると考えて良い。これは、誘導加熱用コイルIC20による被加熱部の発熱量は電流Iあるいは周波数fで制御可能であることを意味する。言い換えれば、電流Iあるいは周波数fで被加熱部の温度制御が可能であることを意味する。
【0034】
上述のような観点から、図4の回路では、誘導加熱用コイルIC20で被加熱部を直接発熱させて加熱を行ない、しかも供給される電流の周波数fを周波数制御部FC20により制御することで温度制御を行なう。適用される周波数の可変範囲は、数Hz〜数十KHzが可能であり、好ましくは400Hz〜50KHzである。なお、上述の理由で電流Iの大きさが制御されてもよく、従って周波数制御部FC20に代えて電流制御部が設けられていてもよい。この場合、周波数は上述の数Hz〜数十KHzの範囲内の固定値とされる。
【0035】
次に、本発明の一実施例による射出成形機の加熱シリンダの温度制御装置について、図5を参照しながら説明する。図5において、射出成形機本体の構成要素としては、加熱シリンダ51及びそのヘッド部とは反対側に設置された水冷シリンダ20のみが示されている。
【0036】
図5において、加熱シリンダ51は、複数のゾーン、ここでは4つのゾーン111−1、111−2、111−3、111−4に分割され、各ゾーンの周囲には誘導加熱用コイル112−1、112−2、112−3、112−4が巻回されている。各ゾーンには、熱電対等よりなる温度センサ113−1、113−2、113−3、113−4が設置されている。水冷シリンダ20にも温度センサ20−1が設置されている。
【0037】
温度センサ113−1〜113−4、温度センサ20−1からの検出温度信号は温度コントローラ30にフィードバックされる。温度コントローラ30は、成形機コントローラ101に接続されている。成形機コントローラ101には、表示設定器102が接続されている。表示設定器102は、各ゾーン111−1〜111−4の設定温度を個別に設定可能である。成形機コントローラ101は、表示設定器102で設定された各ゾーンの設定温度を示す温度設定値信号を温度コントローラ30に与える。
【0038】
誘導加熱用コイル112−1、112−2、112−3、112−4にはそれぞれ、上述した周波数制御機能もしくは電流制御機能を持つ加熱部制御用インバータ(HCI)114−1、114−2、114−3、114−4が接続され、個別に周波数制御された電力が供給される。
【0039】
温度コントローラ30は、温度センサ113−1〜113−4からの各ゾーン111−1〜111−4の温度検出信号とこれに対応する温度設定値信号とを比較し、比較結果に基づいて各ゾーン111−1〜111−4の温度制御を行うための制御信号を出力制御部31から各加熱部制御用インバータ114−1〜114−4に出力する。なお、温度センサ113−1〜113−4からの温度検出信号は成形機コントローラ101を経由して表示設定器102にも送られる。表示設定器102は、各ゾーン111−1〜111−4の設定温度と検出温度とを表示する。
【0040】
ところで、誘導加熱用コイル112−1〜112−4に電力を供給するために、加熱部制御用インバータ114−1〜114−4には、直流電源部から電力を供給する必要がある。本実施例では、射出成形機に備えられている各種モータに電力を供給するための直流電源回路40を上述の直流電源部としても用いている。
【0041】
直流電源回路40は、本実施例では、三相交流電源PSからの三相交流を整流するためのダイオードブリッジ回路による整流回路41と、整流回路41の出力側に接続された、スイッチS1と抵抗器R1とを並列接続して成るスタータ回路42と、平滑用コンデンサC1とを含む。平滑用コンデンサC1は、DCリンクから加熱部制御用インバータ114−1〜114−4及び後述のモータ制御用インバータIV1〜IV4の各に印加される電圧を平滑化するために設けられる。
【0042】
射出成形機に備えられるモータの代表的な例として、ここではエジェクタ用モータM1、型開閉用モータM2、計量用モータM3、射出用モータM4を示している。これらのモータM1〜M4にはそれぞれ、モータ制御用インバータ(MCI)IV1〜IV4を通して駆動用電力が供給される。モータ制御用インバータIV1〜IV4は直流電源回路40の出力に並列に接続されている。モータ加熱部制御用インバータ114−1〜114−4も直流電源回路40の出力に並列に接続されている。モータ制御用インバータIV1〜IV4の各の入力側には平滑化コンデンサC2が並列に接続される。平滑化コンデンサC2は、モータ制御用インバータIV1〜IV4の各々に印加される電圧を平滑化するために設けられる。また、平滑化コンデンサC2はモータ制御用インバータIV1〜IV4の各々から見たDCリンクのインピーダンスを下げる役割を果たす。
【0043】
なお、各モータM1〜M4に対しても制御対象部位に設置されたセンサと設定値との偏差に基づいて制御を行うフィードバック制御系が構成されてモータ制御用インバータIV1〜IV4に指令値が与えられることにより制御が実行される。この制御系の構成及び説明は省略する。
【0044】
上述の構成により、例えば加熱部制御用インバータ114−1について言えば、温度コントローラ30における温度センサ112−1からの温度検出信号による検出温度とゾーン111−1に対して設定された設定温度との比較結果に基づく制御信号が加熱部制御用インバータ114−1に与えられる。加熱部制御用インバータ114−1は、この制御信号に応じて誘導加熱用コイル112−1に供給する電流の周波数を調整してゾーン111−1の温度制御を行う。他の加熱部制御用インバータ114−2〜114−4も同様の制御動作を行なう。
【0045】
上述のように、加熱シリンダ51を誘導加熱により直接加熱するので、バンドヒータの熱伝導による加熱に比べて熱効率が向上する。そして、周波数制御によれば、誘導加熱用コイル112−1に供給する電力を連続して変化させることができるので、精密な温度制御を実現することができる。加えて、加熱シリンダ51を加熱するための電力供給源としてモータ駆動用の直流電源回路40を利用しているので、コスト削減を図ることができる。
【0046】
図6は、加熱部制御用インバータの構成を、加熱部制御用インバータ114−1について示した回路図である。加熱部制御用インバータ114−1は、ダイオードD14が並列接続されたトランジスタTr14及び出力用のコンデンサC14と、トランジスタTr14のベースに接続された制御回路114−11とを含む。制御回路114−11は、電流が一定の条件のもとで、あらかじめ求められた加熱シリンダ10への供給熱量と周波数の相関関係に従って、出力制御部31から出力される制御信号に応じてトランジスタTr14をスイッチング動作させて周波数制御を行なう。電流制御の場合にも、周波数が一定の条件のもとで、あらかじめ求められた加熱シリンダ51への供給熱量と電流の相関関係に従って、出力制御部31から出力される制御信号に応じてトランジスタTr14をスイッチング動作させて、誘導加熱用コイル112−1〜112−4に流れる電流の制御を行なう。他の加熱部制御用インバータ114−2〜114−4も同様の構成を有する。
【0047】
図7Aは、加熱部制御用インバータ114−1の入力側に電圧調整回路としての昇圧/降圧回路45−1を接続した例を示ブロック図である。昇圧/降圧回路45−1は、加熱部制御用インバータ114−1への電圧の昇圧と降圧とを制御する回路である。同様に、他の加熱部制御用インバータ114−2〜114−4の入力側にも昇圧/降圧回路45−2〜45−4が夫々設けられる。
【0048】
昇圧/降圧回路45−1〜45−4を使用するのは以下の理由による。すなわち、上述の実施例では誘導加熱用の直流電源部としてモータ駆動用の直流電源回路40を兼用しているが、導加熱用の電圧とモータ駆動電圧は異なる場合がある。このような場合に、昇圧/降圧回路45−1〜45−4は、モータ駆動電圧を誘導加熱用の電圧に適合するように調整して出力する。また、モータ制御用インバータIV1〜IV4の入力電圧はモータの回生動作により一時的に上昇したり、オーバロードにより一時的に低下することがある。これによって加熱部制御用インバータ114−1〜114−4の入力電圧が変動してしまうと、温度制御に影響を及ぼす。昇圧/降圧回路45−1〜45−4は、このような入力電圧の変動を抑制して常に良好な温度制御の実行を可能にしている。
【0049】
図7Bは昇圧/降圧回路45−1の回路図である。図7Bに示す昇圧/降圧回路45−1は、インダクタI45、平滑用コンデンサC45、ダイオードD45、トランジスタTr45を含む。ダイオードD45及びトランジスタTr45は電源ラインに直列に挿入接続され、インダクタI45及び平滑用コンデンサC45は電源ラインに並列に接続されている。トランジスタTr45は成形機コントローラ101からの指令により制御される。すなわち、平滑用コンデンサC45の両端電圧が検出されて成形機コントローラ101に送られ、成形機コントローラ1は平滑用コンデンサC45の両端電圧が表示設定器102であらかじめ設定された電圧となるようにトランジスタTr45を制御する。昇圧/降圧回路45−1と同じ構成を有する昇圧/降圧回路45−2〜45−4は他の加熱部制御用インバータ114−2〜114−4の入力側にも設けられる。
【0050】
図8A及び8Bは、加熱部制御用インバータ114−1〜114−4の入力側に、昇圧/降圧回路45−1〜45−4に代えて昇圧あるいは降圧のみの機能を持つ回路を設ける場合の例を示す。これは、例えばモータ制御用インバータは400V対応であるのに対し、加熱部制御用インバータは200V対応であるというように、モータ制御用インバータと加熱部制御用インバータの対応電圧が異なる場合を考慮している。
【0051】
図8Aは降圧回路の一例を示す。降圧回路は、例えばモータ制御用インバータが400V対応で、加熱部制御用インバータが200V対応であるというように、モータ制御用インバータの対応電圧が加熱部制御用インバータの対応電圧より高い場合に使用される。この場合、トランジスタTr45及びインダクタI45が電源ラインに直列に挿入接続される。ダイオードD45はインダクタI45の入力側において電源ラインに並列に接続され、平滑用コンデンサC45はインダクタ45−1の出力側において電源ラインに並列に接続される。
【0052】
図8Bは昇圧回路の一例を示す。昇圧回路は、例えばモータ制御用インバータが200V対応で、加熱部制御用インバータが400V対応であるというように、モータ制御用インバータの対応電圧が加熱部制御用インバータの対応電圧より低い場合に使用される。この場合、インダクタI45及びダイオードD45が電源ラインに直列に挿入接続される。トランジスタTr45はダイオードD45のアノード側において電源ラインに並列に接続され、平滑用コンデンサC45はダイオードD45のカソード側において電源ラインに並列に接続される。
【0053】
図8A及び8Bのいずれの例においても、トランジスタTr45は、上述のように成形機コントローラ101により制御される。
【0054】
図9は、モータ制御用インバータ(図1のIV1のみを示す)及び加熱部制御用インバータ(図5の114−1のみを示す)の入力側にスイッチS11、S22を夫々接続した例を示す。他のモータ制御用インバータIV2〜IV4、加熱部制御用インバータ114−2〜114−4についても同様にスイッチが接続される。このようにスイッチS11、S22を設けるのは以下の理由による。
【0055】
射出成形機は、実運転の終了後にメインの電源をオフとせずに、メンテナンス作業を行う場合がある。例えば、エジェクタ機構のメンテナンス作業を行う場合、エジェクタ用モータM1の電源のみをオフとしたいという要求がある。これは、実運転の終了後は加熱シリンダ51内に溶融樹脂が滞留しており、メインの電源をオフとした場合には、誘導加熱コイル112−1〜112−4への電力もすべてオフとなるので加熱シリンダ51内の樹脂が劣化するおそれがある。このため、成形機における1つ以上のモータ及びその周囲のメンテナンス作業を行う場合には、対応するモータ制御用インバータのスイッチS11のみをオフとし、スイッチS22はオンとする。一方、加熱シリンダ51内に溶融樹脂が滞留していない場合には、スイッチS11及びスイッチS22の両方をオフとする。なお、上述のスイッチは、モータ制御用インバータ及び加熱部制御用インバータの少なくとも一方に設けることとしてもよく、好ましくは加熱部制御用インバータ側に設けられるだけでもよい。
【0056】
上述の実施例では、加熱部制御用インバータ114−1〜114−4の各々に対して別個に昇圧/降圧回路45−1〜45−4を設けているが、図10に示すように、加熱部制御用インバータ114−1〜114−4の全てに対して、容量の大きな昇圧/降圧回路45を一つだけ設けることとしてもよい。そのような昇圧/降圧回路45の構成は上述の昇圧/降圧回路45−1〜45−4と同様であり、その説明は省略する。
【0057】
本発明は具体的に開示された実施例に限られず、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変形例及び改良例がなされるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、射出成形機のみならず、押出し成形機にも適用可能である。加熱の対象となる被加熱部は加熱シリンダのみならず、例えば加熱を必要とする金型にも適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの被加熱部を誘導加熱により加熱する誘導加熱手段を備えた成形機であって、
前記誘導加熱手段は前記被加熱部に配設された誘導加熱部と、該誘導加熱部に供給する電力量を制御する電力供給制御部とを含み、
前記電力供給制御部は、周波数制御及び電流制御のいずれか一方により、該誘導加熱部に供給する電力を制御することを特徴とする成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の成形機であって、
前記被加熱部は加熱シリンダの複数箇所に相当し、
前記電力供給制御部は直流電源部から電力を供給される加熱部制御用インバータを備え、該加熱部制御用インバータが前記周波数制御または電流制御を行うことを特徴とする成形機。
【請求項3】
請求項2に記載の成形機であって、
前記加熱部制御用インバータは数Hz〜数十KHzの範囲内で前記周波数制御を行うことを特徴とする成形機。
【請求項4】
請求項2に記載の成形機であって、
前記加熱部制御用インバータは数Hz〜数十KHzの範囲内の固定周波数を用いて前記電流制御を行うことを特徴とする成形機。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の成形機であって、
該成形機は1つ以上のモータを備え、該モータはモータ制御用直流電源部からモータ制御用インバータを介して電力が供給されるように構成されており、前記モータ制御用直流電源部を前記直流電源部として兼用することを特徴とする成形機。
【請求項6】
請求項5に記載の成形機であって、
前記加熱部制御用インバータ及び前記モータ制御用インバータの少なくとも一方の入力側にスイッチを設けたことを特徴とする成形機。
【請求項7】
請求項2〜4のいずれかに記載の成形機であって、
前記加熱部制御用インバータの入力側に電圧調整回路を備えたことを特徴とする成形機。
【請求項8】
成形機における少なくとも1つの被加熱部を誘導加熱により加熱する成形機の温度制御方法であって、
誘導加熱用の供給電力量を周波数制御または電流制御のいずれか一方で制御することにより該被加熱部の温度制御を行うことを特徴とする成形機の温度制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の成形機の温度制御方法であって、
前記周波数制御を数Hz〜数十KHzの範囲内で行なうことを特徴とする成形機の温度制御方法。
【請求項10】
請求項8に記載の成形機の温度制御方法であって、
数Hz〜数十KHzの範囲の固定周波数で前記電流制御を行なうことを特徴とする成形機の温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【国際公開番号】WO2005/065915
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【発行日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516844(P2005−516844)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019412
【国際出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】