説明

成形装置の段取装置

【課題】省スペース化を目指し、工場敷地の拡大化の抑制を図った、成形装置の段取装置を提供する。
【解決手段】一対の成形装置10,10間に、共用の金型搬送手段11を配設する。
この金型搬送手段11としては、移動式金型搬送手段11A、または固定式金型搬送手段11Bがある。
前記成形金型部15には、周知の金型搬出入の検出手段18,18を設ける。
そして、一対の成形装置10,10間には、成形装置10間の間隔を調整する中間台19を設けて、現場に対応して、成形装置10間の間隔を調整する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置の段取装置において、省スペース化を目指し、工場敷地の広大化を抑制することが可能な、成形装置の段取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば射出成形装置は、多品種の製品を生産するために、製品毎の金型を用意しており、そのために、金型交換作業は不可欠であり、そのための設備は必須のものである。
そのような射出成形装置および金型交換装置としては、例えば、次のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2001−26039
【0004】
この文献における射出成形装置の金型交換装置および方法は、金型交換に要する労力の低減を装置自体を、大型化することなく、且つ別の動力を使用することを可能とするもので、可動盤の移動方向に対して、移動可能に支持された移動台と、移動台上に可動盤の移動方向に、所定の間隔をおいて配設され、金型を固定盤と可動盤間に側方から搬出入する複数の金型交換ステーションと、可動盤と移動台とを着脱自在に連結する連結手段とを備え、連結手段を介して移動台を、可動盤と一体移動させて、移動台上の金型交換ステーションを所定の金型交換位置まで移動させるようにしたというものである。
これによって、既設の射出成形装置における可動盤の移動力を利用して、金型を載置した移動台に、特別な動力源を設けることなく、移動台をシャトル移動することができる。従って、装置コストを大幅に増加させることなく、且つ、装置の大型化を伴うことなく、金型交換作業の労力を軽減することができるとしている。
【0005】
他方、図4に示すように、複数の成形装置1の両隣に、台車走行レール2を敷設して、金型搬送台車3を配置し、金型の交換作業を行うようにしてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように、成形装置1の両隣に、台車走行レール2を敷設して、金型搬送台車3を配置することから、専有面積が増大することは避けられず、この結果、前記のような設備を配備する工場は、敷地面積は広大なものとならざるを得ない。
本発明はこのような課題を改善するために提案されたものであって、成形装置の段取装置において、省スペース化を目指し、工場敷地の拡大化の抑制を図った、成形装置の段取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明における請求項1では、隣接する成形装置10,10間に、これら成形装置10に対し、それぞれ必要に応じて金型を交換するための、共用の金型搬送手段11を配設する構成としたことで、成形装置10,10間の寸法を小さくすることができる。
【0008】
また本発明における請求項2では、共用する金型搬送手段11に、移動式金型搬送手段11Aを用いることで、複数の金型を交換して、複数の製品を生産することができる。
【0009】
また本発明における請求項3では、共用する金型搬送手段11に、固定式金型搬送手段11Bを用いることで、少なくとも別の金型に交換することができ、設備もシンプルなものとすることができる。
【0010】
また本発明における請求項4では、隣接する成形装置10,10に対し、使用する金型数に対応して、移動式金型搬送手段11Aか、固定式金型搬送手段11Bかいずれかを選択配設して共用すると共に、前記成形装置10,10傍らに、前記移動式金型搬送手段11Aか固定式金型搬送手段11Bかいずれかを選択配設する構成としたことで、使用する金型数に対応することができ、多品種の製品の生産と共に生産性の向上、並びに、工場全体の省スペース化を促進することができる。
【0011】
また本発明における請求項5では、前記金型搬送手段11を配設した隣接する成形装置10,10間に、成形装置10間の間隔を調整する調整手段19を設けたことで、より現場に対応して、成形装置10間の間隔を調整することができ、一層、無駄なスペースの排除を可能となる。
【0012】
さらに本発明における請求項6では、成形装置10,10に、金型の搬出入を検出する検出手段18を設ける構成としたことで、成形装置10の成形金型部15の交換作業によって、他の成形装置10の金型交換作業が妨げられるというようなことはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明にかかる成形装置の段取装置につき、一つの実施の態様を示し、添付の図面に基づいて説明する。
図1に工場内に配設した、一対の成形装置10,10間に、成形装置10の段取装置としての金型搬送手段11を配設している。この金型搬送手段11としては、移動式金型搬送手段11Aとして、前記一対の成形装置10,10間に敷設した走行レール12と、この走行レール12上を走行可能とした、金型搬送台車13とで構成している。
なお、この金型搬送手段11としては、固定式金型搬送手段11Bとして、工場床面上、前記一対の成形装置10,10の外側傍らに、金型搬送台車13を配設して、金型の交換を行うこともできるようにしている。
【0014】
前記成形装置10は、周知の射出成形装置であり、ここでは、詳細には説明しないが、ホッパHから投入された材料である樹脂を加熱溶融させて、押し出す手段であるスクリューを内蔵したシリンダSを有する射出ユニットを備えた成形機14と、成形金型部15と、型締め機構部16とで実質的に構成している。
【0015】
前記金型搬送台車13は、複数、異なる金型を載置しており、随時交換用金型を提供できる構成としているが、その構成自体は適宜であり、ここでは細部の図示、および詳細な説明は省略する。
【0016】
前記成形金型部15は、タイバー17で囲う空間に配設した、固定型(図示省略)と可動型(図示省略)とを備えている。そして、前記成形金型部15には、周知の金型搬出入の検出手段18,18を設けている。これら検出手段18,18によって、双方の成形装置10のうち、いずれかの成形装置10の成形金型部15から、金型が取り出されて、どちらの方向に搬出され、また搬入されたかを検出し、この状態に応じて、他の成形装置10の成形金型部15の交換作業を行うか、交換作業待機状態とするかを構成である。
【0017】
また、前記型締め機構部16は、例えば周知のトグル機構(図示省略)で構成することができる。
【0018】
そして、一対の成形装置10,10間には、成形装置10間の間隔を調整する調整手段19(以下、中間台19)を設けて、現場に対応して、成形装置10間の間隔を調整するようにしている。この中間台19には、スペーサとしての機能を果す為に、異なる寸法W1と、W2とを有するものを備えている(図2参照)。
【0019】
本発明にかかる成形装置の段取装置は以上のように構成されるので、工場内の一対の成形装置10,10は、間に設けられた金型搬送手段11によって、金型の交換作業を行うことができる。従って、これまでのように、成形装置10ごとに金型搬送手段11を設ける必要はなく、設備費コスト削減は勿論、設置スペースを大幅に抑制することができ、工場内により多くの成形装置10を配置することができ、生産効率の向上につながる。
なお、成形装置10,10間は、前記金型搬送手段11の他、現場に対応して、成形装置10間の間隔を調整する中間台19によって、一層、無駄なスペースの排除が可能となる。
【0020】
以上のような双方の成形装置10,10の金型の交換作業を行うにあたり、双方の成形装置10のうち、いずれかの成形装置10の成形金型部15から、金型が取り出されて、どちらの方向に搬出され、また搬入されたかを、成形金型部15に設けた、検出手段18,18によって検出することができる。
従って、これに基づいて、もう一方の成形装置10の成形金型部15の交換作業を行うようにすれば、成形装置10の成形金型部15の交換作業によって、他の成形装置10の金型交換作業が妨げられるというようなことはない。
以上のことにより、双方の成形装置10,10が一つの金型搬送手段11を共用する構成としても、何ら双方の成形装置10,10の生産性の低下を来たすものではないことがわかる。
【0021】
本発明にかかる成形装置の段取装置は、以下のように構成することもできる。
なお、この成形装置の段取装置において、成形装置10は、前述の成形装置の段取装置で用いられるものと実質的に同構成であるので、詳細な説明は省略する。
この場合の成形装置の段取装置では、図3に示すように、対をなす成形装置10,10に対し、段取装置としての金型搬送手段11を共用する構成として、要求する金型数に応じて、移動式金型搬送手段11Aと固定式金型搬送手段11Bとを組み合わせて、配置する構成とすることができる。
例えば、
(1) 成形装置10,10間に、固定式金型搬送手段11Bとして、一種類載置した金型搬送台車13を配置したもの、
(2) 成形装置10,10間に、移動式金型搬送手段11Aとして、交換すべき金型を一種類載置した金型搬送台車13を2台用意して、走行レール12(図示省略)上を交換移動できるようにしたもの、
(3) 成形装置10,10間、並びに双方の成形装置10,10側方に、移動式金型搬送手段11Aとして、金型搬送台車13を2台用意して、走行レール12(図示省略)上を交換移動できるようにしたもの、
(4) 成形装置10,10間、並びに双方の成形装置10,10側方に、移動式金型搬送手段11Aとして、金型搬送台車13を2台用意して、走行レール12(図示省略)上を交換移動できるようにし、なお且つ、双方の成形装置10,10に、さらに交換用の金型を載置した金型交換台車13,13を用意したもの、
を考えることができる。
【0022】
このような構成とすることで、成形工程で必要な金型に応じて、対をなす成形装置10,10に対し、段取装置としての金型搬送手段11(11A,11B)を共用することができるので、これまでのように、成形装置10ごとに金型搬送手段11を設ける必要はなく、設備費コスト削減は勿論、設置スペースを大幅に抑制することができる。しかも、使用する金型数に対応することによって、多品種の製品の生産と共に生産性の向上、並びに、工場全体の省スペース化を促進することができる。
【0023】
なお、以上のような段取装置においても、成形装置10,10間には、前記金型搬送手段11の他、現場に対応して、成形装置10間の間隔を調整する中間台19(図示省略)を対応させることで、一層、無駄なスペースの排除が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかる成形装置の段取装置の、一つの実施の形態を示す、構成説明図である。
【図2】図1に示す成形装置の段取装置の機能を説明するための線図である。
【図3】本発明にかかる成形装置の段取装置の、別の実施の形態を示す、構成説明図である。
【図4】従来の成形装置の段取装置の一例を示す、構成説明図である。
【符号の説明】
【0025】
10 成形装置の段取装置
11 金型搬送手段
11A 移動式金型搬送手段
11B 固定式金型搬送手段
12 走行レール
13 金型搬送台車
14 成形機
15 成形金型部
16 型締め機構部
17 タイバー
18 検出手段
19 中間台
H ホッパ
S シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する成形装置(10,10)間に、これら成形装置(10)に対し、それぞれ必要に応じて金型を交換するための、共用の金型搬送手段(11)を配設する構成としたことを特徴とする成形装置の段取装置。
【請求項2】
前記金型搬送手段(11)は、走行レール(12)と、この走行レール(12)上を走行可能とした、少なくとも2つの金型搬送台車(13)とを有する移動式金型搬送手段(11A)であることを特徴とする請求項1記載の成形装置の段取装置。
【請求項3】
前記金型搬送手段(11)は、交換すべき金型を載置した金型搬送台車(13)を有する固定式金型搬送手段(11B)であることを特徴とする請求項1記載の成形装置の段取装置。
【請求項4】
隣接する成形装置(10,10)に対し、使用する金型数に対応して、成形装置(10,10)間に、金型搬送手段(11)のうち、走行レール(12)とこの走行レール(12)上を走行可能とした少なくとも2つの金型搬送台車(13)とを有する移動式金型搬送手段(11A)か、交換すべき金型を載置した金型搬送台車(13)を有する固定式金型搬送手段(11B)かいずれかを選択配設して共用すると共に、前記成形装置(10,10)傍らに、前記移動式金型搬送手段(11A)か固定式金型搬送手段(11B)かいずれかを選択配設する構成としたことを特徴とする成形装置の段取装置。
【請求項5】
前記金型搬送手段(11)を配設した隣接する成形装置(10,10)間に、成形装置(10)間の間隔を調整する調整手段(19)を設けたことを特徴とする請求項1または4記載の成形装置の段取装置。
【請求項6】
前記成形装置(10,10)に、金型の搬出入を検出する検出手段(18)を設ける構成としたことを特徴とする請求項1、4または5記載のうち、いずれか1記載の成形装置の段取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−62470(P2008−62470A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241550(P2006−241550)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】