説明

成形金型の段替え方法及び装置

【課題】発泡樹脂製品を製造するサーキットラインにおける成形金型の段替えを、ラインの運転を停止させずに行え、ライン停止のロスをなくし、生産効率の向上を図る。
【解決手段】サーキットラインCLで成形金型1の段替えの際、サーキットラインCLにおける1方向の直進移動部CL1から転回移動部CL3への方向変換部で、金型搬出装置20の作動により段替え対象の成形金型1を転回移動部CL3へ進入させずに直進移動させてライン外へ搬出し、これに続く転回移動部CL3から他方向の直進移動部CL2への方向変換部で、金型挿入装置30の作動により段替え用の成形金型1をライン外から直進移動させて金型搬出による空間部分に挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート用クッションパッド等の発泡樹脂製品を製造するサーキットラインにおける成形金型の段替え方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン製のシートクッションパッド等の発泡樹脂製品は、通常、上型と下型とよりなる成形金型を用い、上型を下型に対して型開きした状態で発泡樹脂材料(発泡樹脂原液)を下型に注入し、続いて下型に対して上型の型閉めし、次に、加熱ゾーンを通過させて加熱発泡成形を行い、その後、型開きして成形品(製品)を取り出す各工程を経て製造される。
【0003】
通常は、前記成形金型を台車に搭載し、これを、前記の一連の工程を配置してなる所定の製造ライン、特には、長手方向両端部が大きく転回(Uターン)して環状に連続している所謂サーキットラインに沿って連続して走行移動させながら、各台車の成形金型毎に発泡樹脂製品を成形して製造するのが一般的である。
【0004】
ところで、前記発泡樹脂製品を製造するサーキットラインにおいては、製造対象となる製品の品種変更等に応じて、前記ライン上の成型金型を交換する所謂段替え作業が必要になる。特に、多品種小ロットの生産の場合には前記の段替えの頻度も多くなる。
【0005】
従来、前記サーキットラインでの段替えは、ラインを一旦ストップさせ、クレーン、ホイスト、フォークリフト等を使用して、図11のように、段替え対象の成形金型101を台車110毎、あるいは当該金型101のみをラインから降ろし、空いた個所に段替え用の新しい成形金型101を台車110毎、あるいは該金型101のみを挿入することとしていた。すなわち、この段替えのために、ラインを一時的に停止させる製造上のロスが発生することになった。特に、段替え数が多くなればなるほど、ラインの停止時間も長くなり、生産効率が低下するものであった。
【0006】
また、下記の特許文献1のように、成形金型のうちの汎用部を残して、キャビティを形成する専用部分の全部又は一部を取り換えることにより、段替え時間の短縮を図る提案がなされているが、この場合にも、段替えのためにラインを一時的に停止させることには変わりがなく、やはり製造上のロスが発生することになり、生産効率を低下させるものとなっている。
【特許文献1】特開2003−191063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなしたものであり、シート用クッションパッド等の発泡樹脂製品を製造するサーキットラインにおいて、連続して移送される成形金型の段替えを、ラインの運転を停止させることなく行えるようにして、一時的なライン停止のロスをなくし、生産効率の向上を図ることができ、また段替え作業を自動化できる成形金型の段替え方法及び段替え装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する本発明の成形金型の段替え方法は、複数の成形金型を所定の間隔で移動させ、発泡樹脂材料の注入、型閉め、加熱、型開き及び製品取り出し等の各工程を順次通過させて、発泡樹脂製品を成形し製造するサーキットラインにおいて、成形金型の段替えの際、前記サーキットラインにおける1方向の直進移動部から転回移動部への方向変換部で、段替え対象の成形金型を転回移動部へ進入させずに直進移動させてライン外へ搬出し、これに続く該転回移動部から他方向の直進移動部への方向変換部で、段替え用の成形金型をライン外から直進移動させて前記金型搬出による空間部分に挿入することを特徴とする。
【0009】
これにより、サーキットラインにおける段替え対象の成形金型のライン外への搬出、及び段替え用の新たな成形金型の挿入を、サーキットラインの直進移動部と転回移動部との方向変換部を利用して、ラインを停止させずに直進移動により容易に行うことができる。
【0010】
また、本発明の段替え方法は、前記のサーキットラインの作動を制御する制御部において、段替え対象の成形金型を番号等により事前登録しておき、該成形金型が前記直進移動部から前記転回移動部への方向変換部の位置まできたときに、金型搬出装置の作動により前記成形金型を直進移動させてライン外へ自動的に搬出し、さらに前記金型搬出による空間部分が前記転回移動部から直進移動部への方向変換部に達したときに、金型挿入装置の作動により段替え用の成形金型をライン外より直進移動させて前記空間部分に自動的に挿入することを特徴とする。これにより、成形金型の段替えをラインを停止させずに自動的に行うことができる。
【0011】
前記の段替え方法において、各成形金型を台車に搭載し、各台車を、前記サーキットラインに沿うガイドレールに沿って移動させるとともに、成形金型の段替えの際、前記ガイドレールにおける前記金型搬出側の方向変換部付近及び金型挿入側の方向変換部付近のそれぞれ一部のレール部分を直進方向に切り替えて、前記走行台車毎に搬出及び挿入を行うようにすることにより、段替え作業をさらに簡略化、自動化できる。
【0012】
また、本発明は、前記の段替え方法を実施するための段替え装置として、複数の成形金型を所定の間隔で移動させ、発泡樹脂材料の注入、型閉め、加熱、型開き及び製品取り出し等の各工程を順次通過させて、発泡樹脂製品を成形し製造するサーキットラインにおいて、前記サーキットラインの1方向の直進移動部から転回移動部への方向変換部の近傍に、段替え対象の成形金型を転回移動部へ進入させずに直進移動させてライン外へ搬出する金型搬出装置を設けるとともに、該転回移動部から他方向の直進移動部への方向変換部の近傍に、段替え用の成形金型をライン外から直進移動させて前記金型搬出による空間部分に挿入する金型挿入装置を設け、前記金型搬出装置及び前記金型挿入装置の作動により成形金型の段替えを行うようにしたことを特徴とする。これにより、前記の段替え方法を好適に実施できる。
【0013】
前記金型搬出装置及び前記金型挿入装置は、それぞれサーキットラインの作動を制御する制御部と接続され、前記制御部において事前登録された段替え対象の成形金型が前記直進移動部から前記転回移動部への方向変換部の位置まできたときに前記制御部からの指令で前記金型搬出装置が作動し、また前記金型搬出による空間部分が前記転回移動部から直進移動部への方向変換部に達したときに前記制御部からの指令で前記金型挿入装置が作動するように構成されてなるものとすることができる。これにより、前記成形金型の移動に合わせて、段替え対象の成形金型の搬出、及び段替え用の新たな成形金型の挿入を行え、段替え作業をスムーズにかつ自動的に行うことができる。
【0014】
また、本発明は、前記各成形金型が台車に搭載されるとともに、各台車が前記サーキットラインに沿うガイドレールに沿って移動するように設けられるとともに、前記ガイドレールは、前記金型搬出側の方向変換部付近及び金型挿入側の方向変換部付近のそれぞれ一部のレール部分が直進移動部と同列の直進方向に切り替え可能に設けられており、前記金型搬出時及び前記金型挿入時に前記レール部分が直進方向に切り替えられて、前記金型搬出装置及び金型挿入装置のそれぞれの作動により、前記台車毎に成形金型の搬出及び挿入を行うように構成されてなるものとすることができる。
【0015】
前記サーキットラインには、該ラインに沿って環状に連続して回動し、かつ前記成形金型を搭載した前記台車の一側部に有する突起部に係合して該台車を押動する係合部が長手方向の一定間隔毎に付設されてなる移動手段を備え、各台車を非連接状態で移動させるように構成されてなるものとすることができる。これにより、前記台車を移動手段に結合せずに移動させることができ、段替え時の自動搬出、自動挿入を可能にできる。
【0016】
前記金型搬出装置及び前記金型挿入装置として、それぞれ前記サーキットラインの直進移動部の延長上に沿って直進方向に往復移動する移動手段を備えるとともに、各移動手段には前記台車に対し係合自在な係合手段が設けられており、段替え時に、前記段替え対象の成形金型あるいは段替え用の成形金型を搭載した台車を直進移動させるように設けられてなるものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
上記したように本発明の成形金型の段替え方法及び段替え装置によれば、シート用クッションパッド等の発泡樹脂製品を製造するサーキットラインにおいて、連続して移送される成形金型の段替えを、ラインの運転を停止させることなく、つまり運転を継続しながら行え、従来のような段替えのための一時的なライン停止のロスをなくし、生産効率の向上を図ることができ、また段替えを自動化することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明におけるサーキットラインの概略を模式的に示す示す略示平面図、図2は同サーキットラインでの段替え方法の略示説明図、図3は同サーキットラインにおいて、成形金型を搭載した台車の移動手段と台車移動用の軌道とガイドレールを示す(台車を省略)略示平面図である。図4は同上のサーキットラインの台車移動状態の一部の拡大略示平面図、図5は同上の一の台車部分の拡大平面図、図6は前後の台車の間隔部分の一部の側面図、図7は同上のサーキットラインにおける台車の正面図である。図8は金型搬出装置の部分の略示拡大平面図、図9は金型挿入装置の部分の略示拡大平面図、図10はガイドレールの切り替え機構の概略説明図である。
【0020】
図1のサーキットラインCLは、例えば自動車シート用のクッションパッド等の発泡樹脂製品を成形し製造するためのラインであり、長手方向両端部が転回移動部として平面略長方形の環状に連続している。すなわち、平行をなす往復の直進移動部CL1,CL2が長手方向両端部の転回移動部CL3,CL3を介して連続状をなしている。
【0021】
基本的に、前記のサーキットラインCLにおいては、型閉めにより製造対象の発泡樹脂製品に対応する所定のキャビティを形成する上型1aと下型1bとよりなる成形金型1を、例えば図示するように移送用の台車10に2組ずつ搭載して、成形サイクル等に応じて製造上において必要とされる台数の台車10を所定の間隔で連続的に走行移動させるように設け、前記サーキットラインCLに沿って、特には前記直進移動部CL1,CL2に沿って設けられている製造上の各工程、すなわち、発泡樹脂材料(ポリウレタン等の原液)を型開き状態の下型に注入する注入工程A、上型を下型に対し型閉めする型閉め工程B、発泡樹脂材料を加熱発泡させる加熱工程C、上型を開いて発泡成形された成形品(製品)を取り出す型開き及び製品取り出し工程D等の各工程を順次通過させて、所定の発泡樹脂製品を成形し製造するように構成されている。通常、図1のように、前記注入工程Aとこれに続く前記型閉め工程Bは、一方の直進移動部CL1に、また、前記加熱工程Cと前記型開き及び製品取り出し工程Dは、他方の直進移動部CL2に配置される。
【0022】
前記成形金型1を搭載する台車10は、図5及び図7に拡大して示すように、基台となる台プレート11上に、下型用の台枠12が設けられて、該台枠12に前記下型1bが固定され、また、前記下型用の台枠12に対しピン連結構造により開閉動作可能に設けられた上型用の台枠13に前記上型1aが固定されており、前記台枠13が下型用の台枠12に対し開閉動作することにより、前記上型1aが下型1bに対して開閉動作するように構成されている。前記上型1aを下型1bに対して型閉めした状態において、製品に対応するキャビティ1cを形成する。
【0023】
前記台車10の台プレート11の下面には、四隅部近傍にそれぞれ走行用のタイヤ構造やゴムローラ構造をなす走行用の車輪14が設けられている。さらに前記台プレート11の前記サーキットラインCLの内縁側の側部より突出する走行移動用の突起部15が設けられている。また、前記台プレート11の下面には前記車輪14の位置を外して下方向きに突出するガイドローラ16が設けられており、該ガイドローラ16が後述する前記サーキットラインCLの床面上に設けられたガイドレールによりガイドされることにより所定の軌道上をずれなく安定性よく走行移動できるように設けられている。
【0024】
また、前記台車10の一側部、特には前記サーキットラインCLの外側になる一側部には、外方に突出して後述する段替えのための金型搬出装置20および金型挿入装置30の後述する係合手段が作用する係合突起17,17が前後に間隔をおい突設されている。
【0025】
一方、前記台車10を走行移動させるサーキットラインCLの床面には、前記台車10の下面に有する車輪14が乗載する平行な2条の環状の軌道2が設けられている。また、この軌道2の前記サーキットラインCLの内縁側に沿って、平行な内外2本のレール体3a,3bを1組として、両レール体3a,3b間にガイド溝部3cを形成するガイドレール3が設けられており、前記台車10は、その下面に有する前記ガイドローラ16が前記ガイド溝部3cに嵌入して、前記車輪14が横ずれなく前記軌道2上を走行できるようになっている。
【0026】
また、前記サーキットラインCLには、前記台車10の走行移動する部分の内周に沿って無端で回動する移動手段としての移動用のチェーン4が配置され、該チェーン4の長手方向の所定間隔毎に、前記台車10の側部より突出する前記突起部15に対し係合し押動できる係合部材5が付設されている。これにより、前記台車10を一定間隔に保持して連続して走行移動させるようになっている。
【0027】
図中の6a,6b,6c,6dは前記両転回移動部CL3,CL3においてそれぞれ前記移動手段としての無端の移動用のチェーン4を所定の高さ位置で回動可能に支持するスプロケットであり、そのうち一方の転回移動部CL3おける2つのスプロケット6a,6bの一方のスプロケット6aは、モータなどの駆動源7と伝動チェーン8により連結されて所定の回転が付与されるように設けられており、該スプロケット6aの回転により、前記移動用チェーン4が所定の速度の回動するように設けられている。前記台車10は、この移動用チェーン4の回動によって走行移動させられる。
【0028】
前記各台車10は、これに搭載される2つの成形金型1,1の間隔と前後の台車10,10の成形金型1,1の間隔とが略同間隔になるように、前記係合部材5の位置が設定されている。また、前記台車10の前後部には、図5及び図6のように、その一方に当接時の衝撃を緩和するスプリング9aが、また他方に前記スプリング9aと当接するボルト等の突起9bが付設されている。これにより、前記突起部15が後方から係合部材5により押動されて移動する、相互に連接されていない各台車10,10同士の当接時の衝撃を緩和して、かつ所定の間隔を保有するようになっている。
【0029】
そして、本発明の段替え方法においては、上記のサーキットラインCLにおいて、成形金型1の段替えの際に、前記サーキットラインCLにおける1方向の直進移動部CL1から一方の転回移動部CL3への方向変換部で、段替え対象の成形金型1を転回移動部CL3へ進入させずに直進移動させてライン外へ搬出し、これに続く前記転回移動部CL3から他方向の直進移動部CL2への方向変換部で、段替え用の新しい成形金型1をライン外から直進移動させて前記金型搬出による空間部分Sに挿入する。
【0030】
前記成形金型1の段替えのための搬出及び挿入を可能にするために、前記サーキットラインCLの1方向の直進移動部CL1から一方の転回移動部CL3への方向変換部(コーナー部)の近傍に、段替え対象の成形金型1を転回移動部CL3へ進行させずに直進移動させてライン外へ搬出する金型搬出装置20を設けている。さらに、これに続いて該転回移動部CL3から他方向の直進移動部CL2への方向変換部(コーナー部)の近傍に、段替え用の新たな成形金型1をライン外から直進移動させて前記金型搬出による空間部分Sに挿入する金型挿入装置30を設けている。
【0031】
前記金型搬出装置20として、図示する実施例の場合は、図8に示すように、サーキットラインCLにおける直進移動部CL1と少なくとも1台の台車10の長さ分が対応する位置から、その延長方向に直進方向に延びる補助の軌道22が設けられるとともに、前記サーキットラインCLの外側で前記補助の軌道22に沿って両端位置のスプロケット21a,21bに架渡されて直進方向に往復移動する移動手段としてのチェーン24が設けられている。前記チェーン24には、前記の台車10の外側縁より突出する前記係合突起17,17に対して係脱自在なチャックアーム等の一対の係合手段25,25が取設されており、該係合手段25,25が、前記直進移動部CL1との対応位置で前記係合突起17,17に対し係合して、前記チェーン24の作動で搬出方向に移動することより、前記台車10を回転移動部CL3に進ませずに直進移動させライン外へ搬出できるように設けられている。
【0032】
前記の係合手段25,25は、例えば、前記チェーン24に取着した基部材26に対し適宜手段により上下動可能に設けられるとともに、相互に接近方向に変位可能に設けられており、通常時(非段替え時)は前記台車10の係合突起17,17の位置より上方位置に保持されており、段替えの際、段替え対象の成形金型1を搭載した台車10が直進移動部CL1から一方の転回移動部CL3への方向変換部の所定の位置まで移動してきたときに、前記係合手段25,25が、前記係合突起17,17の高さ位置まで降下して、かつ相互に接近方向に変位することにより該係合突起17,17を前後から挟持して係合状態に保持でき、搬出後に離脱できるようになっている。もちろん、前記以外の係合手段により前記係合突起17,17に対し係脱可能に設けることもできる。図中の27は前記チェーン24の駆動用モータである。
【0033】
さらに、前記台車10の搬出を可能にするために、前記サーキットラインCLにおけるガイドレール3は、図10に拡大して示すように、前記搬出部になる方向変換部の個所では、該サーキットラインCLに沿って設けられたガイドレール3の一部、特には外側のレール体3bの一部のレール部分が、他の主レール部分と切り離された切り替え用レール部材3d2により構成されて、前記レール部材3d2が、直進移動部CL1に近い枢支軸部28を中心に外側(図の10の鎖線参照)に拡開可能に設けられており、成形金型1を搭載した台車10を搬出する際に、前記レール部材3d2を前記のように拡開させることにより、前記台車10を問題なく直進移動させることができるようになっている。
【0034】
前記のレール部材3d2を回動させる手段として、前記レール部材3d2に油圧シリンダー等の進退手段29の出力部材29aが連結され、該進退手段29の作動により開閉回動するように設けられている。また、前記レール部材3d2の拡開時に、内側のレール体3aの直進方向の延長上に補助のガイドレール部材23が軌道2を避けて配設され、前記のように搬出される台車10をずれなく直進移動させることができるようになっている。
【0035】
また、前記金型挿入装置30においては、上記の金型搬出装置20の場合と同様に、図9に示すように、前記の転回移動部CL3から他方の直進移動部CL2に連続する方向変換部(コーナー部)において、該直進移動部CL2の移動方向後方から前記直進移動部CL2の部分にまで直進方向に延びる補助の軌道32が設けられるとともに、該補助の軌道32の外側に沿って両端位置のスプロケット31a,31bに架渡されて直線方向に往復移動する移動手段としてのチェーン34が設けられている。そして、前記チェーン34には、前記の台車10の外側縁より突出する前記係合突起17,17に対して係脱自在なチャックアーム等の一対の係合手段35、35が取設されており、該係合手段35,35を、後方の待機位置において段替え用の新たな成形金型1を搭載した台車10に有する係合突起17,17に対し係合させて、前記チェーン34を作動させることにより、新たな前記台車10を、直進移動部CL2の部分に直進移動させ、前記の金型搬出による空間部分Sに挿入できるように設けられている。
【0036】
前記の係合手段35、35は、金型搬出装置20の側と同様に、前記チェーン34に取着した基部材36に対し適宜手段により上下動可能に設けられるとともに、相互に接近方向に変位可能に設けられており、通常時(非段替え時)は前記台車10の係合突起17,17の位置より上方位置に保持されて、段替えの際にのみ、前記係合手段35,35が、前記係合突起17,17の高さ位置まで降下して、かつ相互に接近方向に変位することにより、該係合突起17,17を前後から挟持して係合状態に保持でき、かつ挿入後に離脱できるようになっている。もちろん、前記以外の係合手段により前記係合突起17,17に対し係脱可能に設けることもできる。図中の37は前記チェーン34の駆動用モータである。
【0037】
また、この金型挿入装置30の部分においても、前記台車10の挿入を可能にするために、前記サーキットラインCLにおけるガイドレール3については、金型搬出装置20の部分と同様に、特に外側のレール体3bの一部のレール部分が、他の主レール部分と切り離された切り替え用レール部材3d3により構成されて、該レール部材3d3が、直進移動部CL2に近い枢支軸部38を中心に外側に拡開可能に設けられており、この拡開により前記台車10を問題なく直進移動させることができるようになっている。前記のレール部材3d3を回動させる手段についても、上記と同様であり、油圧シリンダー等の進退手段39の出力部材39aが連結され、該進退手段39の作動により開閉回動するように設けられている。また、前記レール部材3d3の拡開時に、内側のレール体3aの直進方向の延長上に補助のガイドレール部材33が軌道2を避けて配設されている。
【0038】
前記金型搬出装置20及び前記金型挿入装置30は、それぞれサーキットラインCLの作動を制御するコンピュータ等よりなる制御部(図示せず)と接続されている。そして、前記制御部において金型番号あるいは台車番号等により事前登録しておいて、この登録された段替え対象の成形金型1もしくは該成型金型1を搭載した台車10が前記直進移動部CL1から前記転回移動部CL3への方向変換部の位置まできたときに、前記制御部からの指令で前記金型搬出装置20が作動して、段替え対象の成形金型1を搭載する台車10の搬出動作を行ない、また、前記金型搬出による空間部分Sが前記転回移動部CL3から直進移動部CL2への方向変換部に達したときに、前記制御部からの指令で前記金型挿入装置30が作動して、前記新たな成形金型1を搭載する新たな台車10の挿入動作を行うように設定され、接続構成されている。
【0039】
なお、前記搬出動作及び挿入動作は、前記台車10の走行移動に合わせて行われるが、この動作のために、前記直進移動部CL1から前記転回移動部CL3への方向変換部に前記台車10の移動位置を検出するセンサを設け、また前記転回移動部CL3から直進移動部CL2への方向変換部に前記空間部分Sの有無を検出するセンサを設けておき(いずれも図示省略)、該センサの検出信号を前記制御部に入力するようにして、該信号により前記制御部から指令を発するように構成することができる。
【0040】
上記の構成、装置を備えるサーキットラインCLにおいて、段替え時の方法を各装置の作動状態とともに説明する。サーキットラインCLでは、所定数の成形金型1をそれぞれ二組ずつ台車10に搭載して、必要台数の台車10を、移動用のチェーン4の回動により所定の間隔を保持するようにして走行移動させ、発泡樹脂材料の注入工程A、上型1aを下型に1b対し型閉めする型閉め工程B、発泡樹脂材料を加熱発泡させる加熱工程C、上型を開いて発泡成形された成形品(製品)を取り出す型開き及び製品取り出し工程D等の各工程を順次通過させて、発泡樹脂製品を成形し製造する。
【0041】
そして、製造対象の発泡樹脂製品の品種変更等のために、成型金型1の段替えを行う場合は、段替え対象の成型金型1を搭載している台車10が、前記サーキットラインCLにおける1方向の直進移動部CL1から転回移動部CL3への方向変換部、つまり段替えのための搬出部の位置まで移動してきたとき、金型搬出装置20を例えば制御部からの指令で作動させ、図2の実線のように、前記台車10を転回移動部CL3に進入させずにそのまま直進移動させてライン外へ搬出する。
【0042】
すなわち、前記金型搬出装置20の移動用チェーン24に取設されている係合手段25,25を、前記直進移動部CL1から前記転回移動部CL3に進入する直前の台車10と対応位置させておいて、前記のように移動してきた前記台車10の側部の係合突起17,17に対し該係合手段25,25を係合させる。また、これと同時に、ガイドレール3の外側のレール体3bの一部のレール部材3d2を拡開させ、台車10の直進移動を可能にする。こうして、図2及び図8の実線のように、前記移動用チェーン24の駆動により前記台車10を補助の軌道22の上をそのまま直進移動させてライン外の位置へ搬出する。
【0043】
また、前記の金型搬出に続く前記転回移動部CL3から他方向の直進移動部CL2への方向変換部では、図9のように前記金型搬出による空間部分Sが前記転回移動部CL3から直進移動部CL2への方向変換部、つまり段替えのための挿入部の位置に達したとき、金型挿入装置30を例えば制御部の指令で作動させ、段替え用の新たな成形金型1を搭載した台車10をライン外より直進移動させて前記空間部分Sに挿入する。
【0044】
すなわち、前記金型挿入装置30の移動用チェーン34に取設されている係合手段35,35を、図9のように補助の軌道32上の待機位置にあって段替え用の成形金型1を搭載した台車10と対応位置させて、該台車10の側部の係合突起17,17に対し該係合手段35,35を係合させておく。そして、前記金型搬出による空間部分Sが段替えのための挿入部になる方向変換部の位置に達したとき、ガイドレール3の外側のレール体3bの一部のレール部材3d3を拡開させて台車10の直進移動を可能にするとともに、前記移動用チェーン34の駆動により前記台車10をライン外の補助の軌道32上を直進移動部CL2に向かって直進移動させて前記空間部分Sに挿入する。この挿入後、前記係合手段35,35は、前記係合突起17,17に対する係合を解除し、元の待機位置に戻しておく。
【0045】
このように、前記サーキットラインCLにおける段替え対象の成形金型1のライン外への搬出、及び段替え用の新たな成形金型1の挿入を、前記サーキットラインCLにおける直進移動部CL1から一方の転回移動部CL3への方向変換部、及び前記転回移動部CL3から直進移動部CL1への方向変換部を利用して、台車10の走行移動に合わせて制御される金型搬出装置20及び金型挿入装置30の作動により、ラインの運転を停止させずに容易にかつ自動的に行うことができる。
【0046】
また、図示する実施例のように、前記サーキットラインCLのうち、前記型閉め工程Bと前記加熱工程Cとの間の転回移動部CL3の部分で、すなわち該転回移動部CL3とこれと連続する両直進移動部CL1及びCL2との方向変換部の位置で、成形金型の段替えを行うようにしたことにより、段替えにより新たに挿入された台車10上の成形金型1は、前記挿入位置より該直進移動部CL2の後続に配された加熱工程Cを通過することで空の状態で予備的に加熱されることになるため、次に直進移動部CL1の側に回って各工程を通過する次回の成形が問題なく可能になる。
【0047】
なお、上記した実施例においては、成形金型を台車に搭載し、各台車を前記サーキットラインに沿って移動させる場合において、前記台車毎に成形金型の搬出及び挿入を行うようにした場合について説明したが、本発明は、各成形金型を他の移送手段により走行移動させるように設けた場合においても、上記同様に、サーキットラインの1方向の直進移動部から転回移動部への方向変換部の近傍に、段替え対象の成形金型を転回移動部へ進入させずに直進移動させてライン外へ搬出する金型搬出装置を設けるとともに、該転回移動部から他方向の直進移動部への方向変換部の近傍に、段替え用の成形金型をライン外から直進移動させて前記金型搬出による空間部分に挿入する金型挿入装置を設け、前記金型搬出装置及び前記金型挿入装置の作動により成形金型の段替えを行うように構成して実施することができる。実施上は、図示するように成形金型を台車に搭載してガイドレールに沿って移動させるように設けて実施するのが、段替え作業の簡略化や自動化が容易になり好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の成型金型の段替え方法及び段替え装置は、シート用クッションパッド等の発泡樹脂製品を製造するサーキットラインにおいて、製造する発泡樹脂製品の品種変更のための成型金型の段替えに特に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明におけるサーキットラインの概略を模式的に示す示す略示平面図である。
【図2】同上のサーキットラインでの段替え方法の略示説明図である。
【図3】同上のサーキットラインにおいて、成形金型を搭載した台車の移動手段と台車移動用の軌道とガイドレールを示す略示平面図である。
【図4】同上のサーキットライン上の台車移動状態の一部の拡大略示平面図である。
【図5】同上の一の台車部分の拡大平面図である。
【図6】前後の台車の間隔部分の一部の側面図である。
【図7】同上のサーキットラインにおける台車の正面図である。
【図8】金型搬出装置の部分の略示拡大平面図である。
【図9】金型挿入装置の部分の略示拡大平面図である。
【図10】ガイドレールの切り替え機構の概略説明図である。
【図11】従来の成型金型の段替え方法の略示説明図である。
【符号の説明】
【0050】
CL サーキットライン
CL1,CL2 直進移動部
CL3,CL3 転回移動部
A 注入工程
B 型閉め工程
C 加熱工程
D 型開き及び製品取り出し工程
S 金型搬出による空間部分
1 成形金型
1a 上型
1b 下型
1c キャビティ
2 軌道
3 ガイドレール
3a,3b レール体
3d2,3d3 切り替え用レール部材
4 移動用のチェーン
5 係合部材
6a,6b,6c,6d スプロケット
7 駆動源
8 伝動チェーン
9a スプリング
9b 突起
10 台車
11 台プレート
12 下型用の台枠
13 上型用の台枠
14 車輪
15 突起部
16 ガイドローラ
17,17 係合突起
20 金型搬出装置
21a,21b スプロケット
22 補助の軌道
23 補助のガイドレール部材
24 移動手段としてのチェーン
25,25 係合手段
26 基部材
28 枢支軸部
29 進退手段
30 金型挿入装置
31a,31b スプロケット
32 補助の軌道
33 補助のガイドレール部材
34 移動手段としてのチェーン
35,35 係合手段
36 基部材
38 枢支軸部
39 進退手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の成形金型を所定の間隔で移動させ、発泡樹脂材料の注入、型閉め、加熱、型開き及び製品取り出し等の各工程を順次通過させて、発泡樹脂製品を成形し製造するサーキットラインにおいて、
成形金型の段替えの際、前記サーキットラインにおける1方向の直進移動部から転回移動部への方向変換部で、段替え対象の成形金型を転回移動部へ進入させずに直進移動させてライン外へ搬出し、これに続く転回移動部から他方向の直進移動部への方向変換部で、段替え用の新たな成形金型をライン外から直進移動させて前記金型搬出による空間部分に挿入することを特徴とする成形金型の段替え方法。
【請求項2】
サーキットラインの作動を制御する制御部において、段替え対象の成形金型を番号等により事前登録しておき、該成形金型が前記直進移動部から前記転回移動部への方向変換部の位置まできたときに、金型搬出装置の作動により前記成形金型を直進移動させてライン外へ自動的に搬出し、さらに前記金型搬出による空間部分が前記転回移動部から直進移動部への方向変換部に達したときに、金型挿入装置の作動により段替え用の成形金型をライン外より直進移動させて前記空間部分に自動的に挿入することを特徴とする請求項1に記載の成形金型の段替え方法。
【請求項3】
各成形金型を台車に搭載し、各台車を、前記サーキットラインに沿うガイドレールに沿って移動させるとともに、成形金型の段替えの際、前記ガイドレールにおける前記金型搬出側の方向変換部付近及び金型挿入側の方向変換部付近のそれぞれ一部のレール部分を直進方向に切り替えて、前記台車毎に搬出及び挿入を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の成形金型の段替え方法。
【請求項4】
複数の成形金型を所定の間隔で移動させ、発泡樹脂材料の注入、型閉め、加熱、型開き及び製品取り出し等の各工程を順次通過させて、発泡樹脂製品を成形し製造するサーキットラインにおいて、
前記サーキットラインの1方向の直進移動部から転回移動部への方向変換部の近傍に、段替え対象の成形金型を転回移動部へ進入させずに直進移動させてライン外へ搬出する金型搬出装置を設けるとともに、該転回移動部から他方向の直進移動部への方向変換部の近傍に、段替え用の成形金型をライン外から直進移動させて前記金型搬出による空間部分に挿入する金型挿入装置を設け、前記金型搬出装置及び前記金型挿入装置の作動により成形金型の段替えを行うようにしたことを特徴とする成形金型の段替え装置。
【請求項5】
前記金型搬出装置及び前記金型挿入装置は、それぞれサーキットラインの作動を制御する制御部と接続され、前記制御部において事前登録された段替え対象の成形金型が前記直進移動部から前記転回移動部への方向変換部の位置まできたときに前記制御部からの指令で前記金型搬出装置が作動し、また前記金型搬出による空間部分が前記転回移動部から直進移動部への方向変換部に達したときに前記制御部からの指令で前記金型挿入装置が作動するように構成されてなる請求項4に記載の成形金型の段替え装置。
【請求項6】
前記各成形金型が台車に搭載されるとともに、各台車が前記サーキットラインに沿うガイドレールに沿って移動するように設けられるとともに、前記ガイドレールは、前記金型搬出側の方向変換部付近及び金型挿入側の方向変換部付近のそれぞれ一部のレール部分が直進移動部と同列の直進方向に切り替え可能に設けられており、前記金型搬出時及び前記金型挿入時に前記レール部分が直進方向に切り替えられて、前記金型搬出装置及び金型挿入装置のそれぞれの作動により、前記台車毎に成形金型の搬出及び挿入を行うように構成されてなる請求項4または5に記載の成形金型の段替え装置。
【請求項7】
前記サーキットラインには、該ラインに沿って環状に連続して回動し、かつ前記成形金型を搭載した前記台車の一側部に有する突起部に係合して該台車を押動する係合部が長手方向の一定間隔毎に付設されてなる移動手段を備え、各台車を非連接状態で移動させるように構成されてなる請求項6に記載の成形金型の段替え装置。
【請求項8】
前記金型搬出装置及び前記金型挿入装置として、それぞれ前記サーキットラインの直進移動部の延長上に沿って直進方向に往復移動する移動手段を備えるとともに、各移動手段には前記台車に対し係合自在な係合手段が設けられており、段替え時に、前記段替え対象の成形金型あるいは段替え用の成形金型を搭載した台車を直進移動させるように設けられてなる請求項4〜7のいずれか1項に記載の成形金型の段替え装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−62205(P2006−62205A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247527(P2004−247527)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】