説明

成膜方法、色要素膜付き基板、電気光学装置、および電子機器

【課題】高品質な色要素膜付き基板を高い生産効率で製造することができる成膜方法、色要素膜付き基板、電気光学装置、および電子機器を提供すること。
【解決手段】基体10A上に設けられたバンク16により画成された区画18(18R、18G、18B)に、色要素膜であるフィルタ層の構成材料が溶媒中に溶解または分散されてなる液状材料111を付与する液状材料付与工程と、区画18(18R、18G、18B)に付与された液状材料111から溶媒を除去しつつ液状材料を硬化または固化して、フィルタ層を形成する色要素膜形成工程とを有し、液状材料付与工程で区画18(18R、18G、18B)に付与された液状材料の体積をV[pl]とし、バンク16によって囲まれた領域の容積をV[pl]としたときに、V/V≦3なる関係を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法、色要素膜付き基板、電気光学装置、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット装置を用いて、色要素膜になるべき多数の区画が形成された基体上の各区画にインク等の液状材料を付与し、これを硬化または固化して色要素膜を形成する成膜方法が知られている。例えば、インクジェット装置を用いてカラーフィルタ基板のフィルタエレメントや、マトリクス型表示装置においてマトリクス状に配置された発光部を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このような方法においては、基体上に設けられたバンクにより画成された区画に、色要素膜の構成材料を含む液状材料を付与し、前記区画に付与された液状材料を硬化または固化することにより、色要素膜を形成する。
【0003】
特許文献1では、区画に液状材料を付与するに際し、固形分濃度15vol%程度の液状材料を用い、バンクに囲まれた領域の容積に対し3〜10倍の体積の液状材料を区画に付与する。そして、区画に付与された液状材料を硬化または固化させると、バンクの高さとほぼ同等の厚さの色要素膜を基体上に形成することができる。
しかしながら、特許文献1にかかる方法において、バンクの高さとほぼ同等の厚さの色要素膜を基体上に形成するには、区画に液状材料を付与するに際し、バンクに囲まれた領域の容積の3〜10倍の体積の液状材料を区画に付与する必要があるため、区画から液状材料が溢れ出す場合があった。その結果、色要素膜付きの基板を製造する際に歩留まりが低下するという問題があった。
【0004】
【特許文献1】米国特許第6022647号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高品質な色要素膜付き基板を高い生産効率で製造することができる成膜方法、色要素膜付き基板、電気光学装置、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の成膜方法は、基体上に色要素膜を形成する成膜方法であって、
前記基体上に設けられたバンクにより画成された区画に、前記色要素膜の構成材料が溶媒中に溶解または分散されてなる液状材料を付与する液状材料付与工程と、
前記区画に付与された液状材料から前記溶媒を除去しつつ該液状材料を硬化または固化して、前記色要素膜を形成する色要素膜形成工程とを有し、
前記液状材料付与工程で前記区画に付与された前記液状材料の体積をV[pl]とし、前記バンクによって囲まれた領域の容積をV[pl]としたときに、
/V≦3なる関係を満たすことを特徴とする。
これにより、液状材料付与工程において、液状材料がバンクを超えて区画から溢れ出すのを防止しつつ、所望の膜厚の色要素膜を形成することができる。その結果、高品質な色要素膜付き基板を高い生産効率で製造することができる。
【0007】
本発明の成膜方法は、基体上に色要素膜を形成する成膜方法であって、
前記基体上に設けられたバンクにより画成された区画に、前記色要素膜の構成材料が溶媒中に溶解または分散されてなる液状材料を付与する液状材料付与工程と、
前記区画に付与された液状材料から前記溶媒を除去しつつ該液状材料を硬化または固化して、前記色要素膜を形成する色要素膜形成工程とを有し、
前記バンクの高さをh[μm]とし、前記色要素膜の平均膜厚をh[μm]とし、前記液状材料中における前記色要素膜の構成材料の濃度をD[vol%]としたときに、
D≧(h/h)×(100/3)なる関係を満たすことを特徴とする。
これにより、液状材料付与工程において、液状材料がバンクを超えて区画から溢れ出すのを防止しつつ、所望の膜厚の色要素膜を形成することができる。その結果、高品質な色要素膜付き基板を高い生産効率で製造することができる。
【0008】
本発明の成膜方法では、前記バンクの高さhは、0.1〜5μmであることが好ましい。
これにより、液状材料付与工程において、液状材料がバンクを超えて区画から溢れ出すのをより確実に防止することができるので、所望の膜厚の色要素膜をより簡単に得ることができる。
【0009】
本発明の成膜方法では、前記色要素膜の平均膜厚hは、0.1〜5μmであることが好ましい。
これにより、用いる液状材料の材料の選択の幅を大きなものとしつつ、所望の特性を有する色要素膜を形成することができる。
本発明の成膜方法では、前記液状材料中における前記色要素膜の構成材料の濃度Dは、25〜50vol%であることが好ましい。
これにより、液状材料付与工程において区画に付与される液状材料の体積を抑えつつ、所望の膜厚の色要素膜をより簡単に得ることができる。
【0010】
本発明の成膜方法では、前記液状材料付与工程で前記区画に付与された前記液状材料の体積Vは、0.1〜1500plであることが好ましい。
これにより、液状材料付与工程において、液状材料がバンクを超えて区画から溢れ出すのをより確実に防止することができる。
本発明の成膜方法では、前記バンクによって囲まれた領域の容積Vは、0.1〜500plであることが好ましい。
これにより、液状材料付与工程において、液状材料がバンクを超えて区画から溢れ出すのをより確実に防止することができる。
【0011】
本発明の成膜方法では、前記液状材料の粘度は、20mPa・S以下であることが好ましい。
これにより、液状材料付与工程において、液状材料を区画により円滑に付与することができる。
本発明の成膜方法では、前記溶媒は、多価アルコールのエーテルであることが好ましい。
これにより、液状材料の粘度を抑えつつ、液状材料中における色要素膜の構成材料の濃度(固形分濃度)を高めることができる。
【0012】
本発明の成膜方法では、前記液状材料は、エマルションであることが好ましい。
これにより、より均一な特性を有する色要素膜を形成することができる。
本発明の成膜方法では、前記液状材料付与工程において、前記液状材料をノズルから液滴として吐出して前記区画に付与することが好ましい。
これにより、液状材料付与工程において、液状材料を区画に所望量だけより正確に付与することができる。
【0013】
本発明の色要素膜付き基板は、本発明の成膜方法によって製造されたことを特徴とする。
これにより、高品質な色要素膜付き基板を提供することができる。
本発明の電気光学装置は、本発明の色要素膜付き基板を備えることを特徴とする。
これにより、高品質な電気光学装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の電気光学装置を備えることを特徴とする。
これにより、高品質な電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の成膜方法、色要素膜付き基板、画像表示装置、および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の成膜方法は、色要素膜付き基板を製造する方法であり、本実施形態では、色要素膜付き基板の一例として、液晶表示装置の構成要素であるカラーフィルタ基板10を製造する場合を代表して説明する。
【0015】
(液滴吐出装置の全体構成)
まず、本発明の成膜方法に用いる液滴吐出装置を図1ないし図6に基づき説明する。
図1に示すように、液滴吐出装置1は、複数の液滴吐出ヘッド2をキャリッジ105に搭載してなるヘッドユニット103と、ヘッドユニット103を水平な一方向(以下、「X軸方向」と言う)に移動させるキャリッジ移動機構(移動手段)104と、後述する基体10Aを保持するステージ106と、ステージ106をX軸方向に垂直であって水平な方向(以下、「Y軸方向」と言う)に移動させるステージ移動機構(移動手段)108と、制御手段112とを備えている。
【0016】
また、液滴吐出装置1の近傍には、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の液状材料111をそれぞれ貯留する3個のタンク101が設置されている。各タンク101と、ヘッドユニット103とは、液状材料111を送液する流路となるチューブ110を介して接続されている。各タンク101に貯留された液状材料111は、例えば圧縮空気の力によって、ヘッドユニット103の各液滴吐出ヘッド2に送液(供給)される。
【0017】
本発明において「液状材料」は、色要素膜付き基板の色要素膜を形成するための材料を含み、液滴吐出ヘッド2のノズル25から吐出可能な粘度を有するものである。この場合、材料が水性であると油性であるとを問わない。また、ノズル25から吐出可能な流動性(粘度)を備えていれば十分で、固体物質が分散していても全体として流動体であればよい。すなわち、液状材料は、色要素膜の構成材料が溶媒中に溶解または分散されてなるものであって、溶液であっても分散液(サスペンションやエマルション)であってもよい。
本実施形態における液状材料111は、カラーフィルタ基板10の区画のフィルタ層を形成するための顔料が有機溶剤中に溶解または分散してなる有機溶剤インクである。なお、液状材料については後に詳述する。
なお、以下の説明では、赤、緑、青の液状材料111を区別して言うときには、111R、111G、111Bの符号を付し、色を区別しないで総称して言うときには、単に「液状材料111」と言う。
【0018】
キャリッジ移動機構104の作動は、制御手段112により制御される。本実施形態のキャリッジ移動機構104は、ヘッドユニット103をZ軸方向(鉛直方向)に沿って移動させ、高さを調整する機能も有している。さらに、キャリッジ移動機構104は、Z軸に平行な軸の回りでヘッドユニット103を回転させる機能も有しており、これにより、ヘッドユニット103のZ軸回りの角度を微調整することができる。
【0019】
ステージ106は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ106は、カラーフィルタ基板10を製造するための基体10Aをその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
ステージ移動機構108は、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させ、その作動は、制御手段112により制御される。さらに、本実施形態のステージ移動機構108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有しており、これにより、ステージ106に載置された基体10AのZ軸回りの傾斜を微調整して真っ直ぐになるように補正することができる。
【0020】
上述のように、ヘッドユニット103は、キャリッジ移動機構104によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ106は、ステージ移動機構108によってY軸方向に移動させられる。つまり、キャリッジ移動機構104およびステージ移動機構108によって、ステージ106に対するヘッドユニット103の相対位置が変わる。
なお、制御手段112の詳細な構成および機能は、後述する。
【0021】
(ヘッドユニット)
図2は、図1に示す液滴吐出装置1におけるヘッドユニット103、および基体10Aを示す平面図である。
図2に示すヘッドユニット103は、複数の液滴吐出ヘッド2がキャリッジ105に搭載された構成となっている。図2中では、キャリッジ105を仮想線(二点鎖線)で表している。また、液滴吐出ヘッド2を示す実線は、液滴吐出ヘッド2のノズル面(ノズルプレート128)の位置を示している。
【0022】
ヘッドユニット103には、赤色の液状材料111Rを吐出する第1ヘッド21R、第2ヘッド22R、第3ヘッド23R、第4ヘッド24Rの4個の液滴吐出ヘッド2と、緑色の液状材料111Gを吐出する第1ヘッド21G、第2ヘッド22G、第3ヘッド23G、第4ヘッド24Gの4個の液滴吐出ヘッド2と、青色の液状材料111Bを吐出する第1ヘッド21B、第2ヘッド22B、第3ヘッド23B、第4ヘッド24Bの4個の液滴吐出ヘッド2との、計12個の液滴吐出ヘッド2が設置されている。
以下の説明では、これらの液滴吐出ヘッド2を総称する場合には、「液滴吐出ヘッド2」と言い、個々を区別して説明する必要がある場合には、「第1ヘッド21R、第2ヘッド22R、・・・」のように言う。
【0023】
図2に示す基体10Aは、ストライプ配列のカラーフィルタ基板10を製造するためのものである。この基体10Aには、赤の区画(吐出領域)18Rと、緑の区画(吐出領域)18Gと、青の区画(吐出領域)18Bとがそれぞれ多数設けられている。液滴吐出装置1は、区画18Rには赤色の液状材料111Rを付与し、区画18Gには緑色の液状材料111Gを付与し、区画18Bには青色の液状材料111Bを付与するように作動する。
【0024】
各区画18R、18G、18Bは、ほぼ長方形をなしている。基体10Aは、区画18R、18G、18Bの長軸方向がX軸方向に平行になり、短軸方向がY軸方向に平行になるような姿勢でステージ106上に保持される。基体10A上には、Y軸方向に沿っては区画18R、18G、18の順に3色の区画が繰り返し配列され、X軸方向に沿っては同色の区画が配列されている。Y軸方向に並ぶ一組の区画18R、18G、18Bは、製造されたカラーフィルタ基板10の一区画分に相当する。
【0025】
(液滴吐出ヘッド)
図3は、液滴吐出ヘッド2のノズル面(ノズルプレート128)の一部と、基体10Aの区画とを拡大して示す平面図である。なお、液滴吐出ヘッド2のノズル面は、基体10Aに対向する方向、すなわち鉛直下方に向いて設けられているが、図3中では、見易くするために、液滴吐出ヘッド2のノズル面を実線で示す。
液滴吐出ヘッド2のノズル面には、多数のノズル(ノズル孔)25がX軸方向に沿って等間隔に直線的に並んで形成されており、ノズル列を形成している。本実施形態では、一つの液滴吐出ヘッド2には、2列のノズル列が半ピッチずれて並行して形成されているが、一つの液滴吐出ヘッド2が有するノズル列の数は、1列でも、3列以上でもよい。また、一つの液滴吐出ヘッド2に形成されるノズル25の数は、特に限定されないが、通常、数十〜数百個程度とされる。
【0026】
図4(a)および(b)に示すように、液滴吐出ヘッド2は、インクジェットヘッドである。より具体的には、液滴吐出ヘッド2は、振動板126と、ノズルプレート128とを備えている。振動板126と、ノズルプレート128との間には、タンク101から孔131を介して供給される液状材料111が常に充填される液たまり129が位置している。
【0027】
また、振動板126と、ノズルプレート128との間には、複数の隔壁122が位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、1対の隔壁122とによって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル25に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル25の数とは同じである。キャビティ120には、1対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129から液状材料111が供給される。
【0028】
振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、キャビティ120内に充填された液状材料111の圧力を変化させる駆動素子としての振動子124が位置する。振動子124は、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む1対の電極124A、124Bと、を含む。この1対の電極124A、124Bとの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル25から液状材料111が吐出される。なお、ノズル25からZ軸方向に液状材料111が吐出されるように、ノズル25の形状が調整されている。
【0029】
制御手段112(図1)は、複数の振動子124のそれぞれに互いに独立に信号を与えるように構成されていてもよい。つまり、ノズル25から吐出される材料111の体積が、制御手段112からの信号に応じてノズル25毎に制御されてもよい。
なお、液滴吐出ヘッド2は、図示のような圧電アクチュエータを駆動素子とするものに限らず、静電アクチュエータを用いるものや、電気熱変換素子を用いて液状材料111の熱膨張を利用して液滴を吐出する構成のものであってもよい。
【0030】
(制御手段)
次に、制御手段112の構成を説明する。図5に示すように、制御手段112は、入力バッファメモリ200と、記憶手段202と、処理部204と、走査駆動部206と、ヘッド駆動部208と、キャリッジ位置検出手段302と、ステージ位置検出手段303とを備えている。
【0031】
バッファメモリ200と処理部204とは相互に通信可能に接続されている。処理部204と記憶手段202とは、相互に通信可能に接続されている。処理部204と走査駆動部206とは相互に通信可能に接続されている。処理部204とヘッド駆動部208とは相互に通信可能に接続されている。また、走査駆動部206は、キャリッジ移動機構104およびステージ移動機構108と相互に通信可能に接続されている。同様にヘッド駆動部208は、複数の液滴吐出ヘッド2のそれぞれと相互に通信可能に接続されている。
【0032】
入力バッファメモリ200は、外部情報処理装置から、液状材料111の液滴を吐出する位置に関するデータ、すなわち描画パターンデータを受け取る。入力バッファメモリ200は、この描画パターンデータを処理部204に供給し、処理部204は、描画パターンデータを記憶手段202に格納する。記憶手段202は、RAM、磁気記録媒体、光磁気記録媒体等で構成される。
【0033】
キャリッジ位置検出手段302は、キャリッジ105、すなわちヘッドユニット103のX軸方向の位置(移動距離)を検出し、その検出信号を処理部204へ入力する。
ステージ位置検出手段303は、ステージ106、すなわち基体10AのY軸方向の位置(移動距離)を検出し、その検出信号を処理部204へ入力する。
キャリッジ位置検出手段302、ステージ位置検出手段303は、例えばリニアエンコーダ、レーザー測長器等で構成される。
【0034】
処理部204は、キャリッジ位置検出手段302およびステージ位置検出手段303の検出信号に基づき、走査駆動部206を介して、キャリッジ移動機構104およびステージ移動機構108の作動を制御(クローズドループ制御)し、ヘッドユニット103の位置と、基体10Aの位置とを制御する。
さらに、処理部204は、ステージ移動機構108の作動を制御することにより、ステージ106すなわち基体10Aの移動速度を制御する。
【0035】
また、処理部204は、前記描画パターンデータに基づいて、吐出タイミング毎のノズル25のオン・オフを指定する選択信号SCをヘッド駆動部208へ与える。ヘッド駆動部208は、選択信号SCに基づいて、液状材料111の吐出に必要な吐出信号ESを液滴吐出ヘッド2に与える。この結果、液滴吐出ヘッド2における対応するノズル25から、液状材料111が液滴として吐出される。
制御手段112は、CPU、ROM、RAMを含んだコンピュータであってもよい。この場合には、制御手段112の上記機能は、コンピュータによって実行されるソフトウェアプログラムによって実現される。もちろん、制御手段112は、専用の回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。
【0036】
次に制御手段112におけるヘッド駆動部208の構成と機能を説明する。
図6(a)に示すように、ヘッド駆動部208は、1つの駆動信号生成部203と、複数のアナログスイッチASとを有する。図6(b)に示すように、駆動信号生成部203は、駆動信号DSを生成する。駆動信号DSの電位は、基準電位Lに対して時間的に変化する。具体的には、駆動信号DSは、吐出周期EPで繰り返される複数の吐出波形Pを含む。ここで、吐出波形Pは、ノズル25から1つの液滴を吐出するために、対応する振動子124の一対の電極間に印加されるべき駆動電圧波形に対応する。
駆動信号DSは、アナログスイッチASのそれぞれの入力端子に供給される。アナログスイッチASのそれぞれは、ノズル25のそれぞれに対応して設けられている。つまり、アナログスイッチASの数とノズル25の数とは同じである。
【0037】
処理部204は、ノズル25のオン・オフを表す選択信号SCを、アナログスイッチASのそれぞれに与える。ここで、選択信号SCは、アナログスイッチAS毎に独立にハイレベルおよびローレベルのどちらかの状態を取り得る。一方、アナログスイッチASは、駆動信号DSと選択信号SCとに応じて、振動子124の電極124Aに吐出信号ESを供給する。具体的には、選択信号SCがハイレベルの場合には、アナログスイッチASは電極124Aに吐出信号ESとして駆動信号DSを伝播する。一方、選択信号SCがローレベルの場合には、アナログスイッチASが出力する吐出信号ESの電位は基準電位Lとなる。振動子124の電極124Aに駆動信号DSが与えられると、その振動子124に対応するノズル25から液状材料111が吐出される。なお、それぞれの振動子124の電極124Bには基準電位Lが与えられている。
【0038】
図6(b)に示す例では、2つの吐出信号ESのそれぞれにおいて、吐出周期EPの2倍の周期2EPで吐出波形Pが現れるように、2つの選択信号SCのそれぞれにおいてハイレベルの期間とローレベルの期間とが設定されている。これによって、対応する2つのノズル25のそれぞれから、周期2EPで液状材料111が吐出される。また、これら2つのノズル25に対応する振動子124のそれぞれには、共通の駆動信号生成部203からの共通の駆動信号DSが与えられている。このため、2つのノズル25からほぼ同じタイミングで液状材料111が吐出される。
【0039】
このような液滴吐出装置1では、ステージ移動機構108の作動により、ステージ106上に保持された基体10AをY軸方向に移動させ、ヘッドユニット103の下を通過させつつ、ヘッドユニット103の各液滴吐出ヘッド2のノズル25から液状材料111の液滴を吐出して、基体10A上の各区画18R、18G、18Bに付与する(着弾させる)ように作動する。以下、この動作を「ヘッドユニット103と基体10Aとの主走査」と言うことがある。
【0040】
ヘッドユニット103全体として基体10Aに対し液状材料111を吐出可能なX軸方向の長さ(後述する全吐出幅W)よりも、基体10AのX軸方向の幅が小さいものである場合には、ヘッドユニット103と基体10Aとの主走査を1回行うことにより、基体10Aの全体に対して液状材料111を付与することができる。
これに対し、ヘッドユニット103の全吐出幅Wよりも、基体10AのX軸方向の幅が大きいものである場合には、ヘッドユニット103と基体10Aとの主走査と、キャリッジ移動機構104の作動によるヘッドユニット103のX軸方向の移動(これを「副走査」と呼ぶ)とを交互に繰り返し行うことにより、基体10Aの全体に対して液状材料111を付与することができる。
【0041】
(本発明の成膜方法)
次に、本発明の成膜方法の一例として、上述したような液滴吐出装置1を用いてカラーフィルタ基板10を製造する方法ついて、詳細に説明する。
図7は、カラーフィルタ基板10の製造方法を示す断面図である。図7に示すように、基体10Aは、光透過性を有する支持基板12と、支持基板12上に形成されたブラックマトリクス14と、ブラックマトリクス14上に形成されたバンク16とを含む。ブラックマトリクス14は、遮光性を有する材料で形成されている。ここで、ブラックマトリクス14は、バンク16の機能の一部を果たすものである。なお、ブラックマトリクス14は、バンク16と一体的に形成して、バンクの一部としてもよい。
【0042】
そして、ブラックマトリクス14とブラックマトリクス14上のバンク16とは、支持基板12上にマトリクス状の複数の光透過部分、すなわちマトリクス状の複数の区画18R、18G、18Bが規定されるように位置している。すなわち、支持基板12、ブラックマトリクス14およびバンク16によって、区画18R、18G、18Bが区画形成されている。区画18Rは、赤の波長域の光線のみを透過する色要素膜であるフィルタ層111FRが形成されるべき領域であり、区画18Gは、緑の波長域の光線のみを透過する色要素膜であるフィルタ層111FGが形成されるべき領域であり、区画18Bは、青の波長域の光線のみを透過する色要素膜であるフィルタ層111FBが形成されるべき領域である。
【0043】
カラーフィルタ基板10を製造する際には、まず、以下の手順にしたがって基体10Aを作成する。まず、スパッタ法または蒸着法によって、支持基板12上に金属薄膜を形成する。その後、フォトリソグラフィー工程によってこの金属薄膜から格子状のブラックマトリクス14を形成する。ブラックマトリクス14の材料の例は、金属クロムや酸化クロムである。なお、支持基板12は、可視光に対して光透過性を有する基板、例えばガラス基板である。続いて、支持基板12およびブラックマトリクス14を覆うように、ネガ型の感光性樹脂組成物からなるレジスト層を塗布する。そして、そのレジスト層の上にマトリクスパターン形状に形成されたマスクフィルム密着させながら、このレジスト層を露光する。その後、レジスト層の未露光部分をエッチング処理で取り除くことで、バンク16が得られる。以上の工程によって、基体10Aが得られる。
なお、バンク16に代えて、樹脂ブラックからなるバンクを用いても良い。その場合は、金属薄膜(ブラックマトリクス14)は不要となり、バンク層は、1層のみとなる。
【0044】
次に、大気圧下の酸素プラズマ処理によって、基体10Aを親液化する。この処理によって、支持基板12と、ブラックマトリクス14と、バンク16とで規定されたそれぞれの凹部(区画の一部)における支持基板12の表面と、ブラックマトリクス14の表面と、バンク16の表面とが親液性を呈するようになる。さらに、その後、基体10Aに対して、4フッ化メタンを処理ガスとするプラズマ処理を行う。4フッ化メタンを用いたプラズマ処理によって、それぞれの凹部におけるバンク16の表面がフッ化処理(撥液性に処理)され、このことで、バンク16の表面が撥液性を呈するようになる。なお、4フッ化メタンを用いたプラズマ処理によって、先に親液性を与えられた支持基板12の表面およびブラックマトリクス14の表面は若干親液性を失うが、それでもこれら表面は親液性を維持する。
なお、支持基板12の材質、ブラックマトリクス14の材質、およびバンク16の材質によっては、上記のような表面処理を行わなくても、所望の親液性および撥液性を呈する表面が得られることもあり、そのような場合には、上記表面処理を施さなくてもよい。
【0045】
前述したような基体10Aを用いて、カラーフィルタ基板10を製造する。
具体的には、基体10A上に設けられたバンク16およびブラックマトリクス14により画成された区画18R、18G、18Bに、色要素膜であるフィルタ層111FB、111FB、111FBの構成材料が溶媒中に溶解または分散されてなる液状材料111R、111G、111Bを付与し(以下、液状材料付与工程という)、区画18R、18G、18Bに付与された液状材料111R、111G、111Bから前記溶媒を除去しつつ該液状材料を硬化または固化して、色要素膜であるフィルタ層111FB、111FB、111FBを形成する(以下、色要素膜形成工程という)。以下、液状材料付与工程、色要素膜形成工程を順次詳細に説明する。
【0046】
−液状材料付与工程−
上記のようにして区画18R、18G、18Bが形成された基体10Aは、液滴吐出装置1のステージ106上に運ばれ、ステージ106に保持される。液滴吐出装置1は、ステージ移動機構108を作動させて基体10AをY軸方向に移動させてヘッドユニット103の下を通過させながら、各液滴吐出ヘッド2から液状材料111の液滴を吐出して、各区画18R、18G、18Bに付与する。
【0047】
より具体的には、図7(a)〜(c)に示すように、区画18Rに対しては、赤色の液状材料(カラーフィルタ材料)111Rを吐出し、区画18Gに対しては、緑色の液状材料(カラーフィルタ材料)111Gを吐出し、区画18Bに対しては、青色の液状材料(カラーフィルタ材料)111Bを吐出する。これにより、図8(d)に示すように、区画18Rに液状材料111R、区画18Gに液状材料111G、区画18Bに液状材料111Bがそれぞれ付与される。このとき、液状材料111をノズル25から液滴として吐出して区画18に付与するので、液状材料付与工程において、液状材料111を区画18に所望量だけより正確に付与することができる。
【0048】
液状材料111R、111G、111Bは、前述したように、カラーフィルタ基板10の区画のフィルタ層111FR、111FG、111FBの構成材料である顔料が有機溶剤中に溶解または分散してなる有機溶剤インクである。
液状材料111中の溶媒としては、カラーフィルタ基板10のフィルタ層を形成することができるものであれば、特に限定されないが、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCTAC)、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル等の多価アルコールのエーテルを用いるのが好ましい。これにより、液状材料111の粘度を抑えつつ、液状材料111中におけるフィルタ層111Fの構成材料の濃度(固形分濃度)を高めることができる。
【0049】
液状材料111中の顔料としては、カラーフィルタ基板10のフィルタ層を形成することができるものであれば、特に限定されず、各種顔料を用いることができる。
また、液状材料111R、111G、111Bには、色要素膜であるフィルタ層111FR、111FG、111FBの構成材料として、樹脂が含まれていてもよい。
液状材料111中に樹脂が含まれる場合、樹脂としては、カラーフィルタ基板10のフィルタ層を形成することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0050】
特に、この液状材料付与工程では、区画18に付与される液状材料の体積をV[pl]とし、バンク16およびブラックマトリクス14によって囲まれた領域の容積をV[pl]としたときに、V/V≦3なる関係を満たしている。
また、バンクの高さ、すなわち、バンク16の高さとブラックマトリクス14の高さとの合計をh[μm]とし、色要素膜であるフィルタ層111Fの平均膜厚をh(この工程においては目標平均膜厚h’)[μm]とし、液状材料111中におけるフィルタ層111Fの構成材料の濃度(固形分濃度)をD[vol%]としたときに、D≧(h/h)×(100/3)なる関係を満たしている。
【0051】
これらのことにより、液状材料付与工程において、液状材料111がバンク16を超えて区画18から溢れ出すのを防止しつつ、所望の膜厚のフィルタ層111Fを形成することができる。その結果、高品質なカラーフィルタ基板10を高い生産効率で製造することができる。
また、バンクの高さ、すなわち、バンク16の高さとブラックマトリクスの高さとの合計hは、0.1〜5μmであるのが好ましく、0.1〜3μmであるのがより好ましい。これにより、液状材料付与工程において、液状材料111がバンク16を超えて区画18から溢れ出すのをより確実に防止することができるので、所望の膜厚のフィルタ層111Fをより簡単に得ることができる。
【0052】
また、フィルタ層111Fの平均膜厚hは、0.1〜5μmであるのが好ましく、0.1〜3μmであるのがより好ましい。これにより、用いる液状材料111の材料の選択の幅を大きなものとしつつ、所望の特性を有するフィルタ層111Fを形成することができる。
また、液状材料111中におけるフィルタ層111Fの構成材料の濃度(固形分濃度)Dは、25〜50vol%であるのが好ましく、25〜40vol%であるのがより好ましい。これにより、液状材料付与工程において区画18に付与される液状材料111の体積を抑えつつ、所望の膜厚のフィルタ層111Fをより簡単に得ることができる。
【0053】
また、液状材料付与工程で区画18に付与された液状材料111の体積Vは、0.1〜1500plであるのが好ましく、1〜900plであるのがより好ましい。これにより、液状材料付与工程において、状材料111がバンク16を超えて区画18から溢れ出すのをより確実に防止することができる。
また、バンク16およびブラックマトリクス14によって囲まれた領域の容積Vは、0.1〜500plであるのが好ましく、1〜300plであるのがより好ましい。これにより、液状材料付与工程において、液状材料111がバンク16を超えて区画18から溢れ出すのをより確実に防止することができる。
【0054】
また、液状材料111の粘度は、20mPa・S以下であるのが好ましく、5〜20mPa・Sであるのがより好ましい。これにより、液状材料付与工程において、液状材料111を区画18により円滑に付与することができる。ここで、液状材料111の粘度は、23℃の環境下で計測されたものである。
また、液状材料111は、エマルションであるのが好ましい。これにより、より均一な特性を有するフィルタ層111Fを形成することができる。
【0055】
−色要素膜形成工程−
次に、各区画18R、18G、18Bに液状材料111R、111G、111Bが付与されたら、基体10Aを図示しない乾燥装置へ搬送し、各区画18R、18G、18B内の液状材料111R、111G、111Bを乾燥させる。これにより、図8(e)に示すように、各区画18R、18G、18B上にフィルタ層111FR、111FG、111FBが得られる。なお、液滴吐出装置1での液状材料111R、111G、111Bの付与と、乾燥装置での乾燥とを繰り返し行って積層することによって最終的なフィルタ層111FR、111FG、111FBを形成してもよい。
【0056】
その後、基体10Aを図示しないオーブン内に搬送し、このオーブンにて、フィルタ層111FR、111FG、111FBを再加熱(ポストベーク)する。
次いで、基体10Aを図示しない保護膜形成装置へ搬送し、この保護膜形成装置にて、図8(f)に示すように、フィルタ層111FR、111FG、111FB、およびバンク16を覆う保護膜(オーバーコート)20を形成する。
フィルタ層111FR、111FG、111FB、およびバンク16を覆う保護膜20が形成された後に、乾燥装置にて保護膜20を完全に乾燥させる。さらに、図示しない硬化装置にて保護膜20を加熱して完全に硬化することで、基体10Aはカラーフィルタ基板10となる。
【0057】
以上説明したような本発明は、カラーフィルタ基板10の製造に限らず、例えばエレクトロルミネッセンス表示装置等の他方式の画像表示装置の製造にも適用することができる。
図9および図10は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置30の製造方法を示す断面図である。以下、本発明により有機エレクトロルミネッセンス表示装置30を製造する場合について説明するが、前述したカラーフィルタ基板10を製造する場合との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0058】
図9および図10に示す基体30Aは、有機エレクトロルミネッセンス表示装置30を製造するための基板である。この基体30Aは、マトリクス状に配置された複数の区画(吐出領域)38R、38G、38Bが形成されている。
具体的には、基体30Aは、支持基板32と、支持基板32上に形成された回路素子層34と、回路素子層34上に形成された複数の区画電極36と、複数の区画電極36の間に形成されたバンク40とを有している。支持基板32は、可視光に対して光透過性を有する基板であり、例えばガラス基板である。複数の区画電極36のそれぞれは、可視光に対して光透過性を有する電極であり、例えば、ITO(Indium-Tin Oxide)電極である。また、複数の区画電極36は、回路素子層34上にマトリクス状に配置されており、それぞれが区画を規定する。そして、バンク40は、格子状の形状を有しており、複数の区画電極36のそれぞれを囲む。また、バンク40は、回路素子層34上に形成された無機物バンク40Aと、無機物バンク40A上に位置する有機物バンク40Bとからなる。ここで、主として有機物バンク40Bが区画38R、38G、38Bを区画形成するバンクとしての機能を果たす。
【0059】
回路素子層34は、支持基板32上で所定の方向に延びる複数の走査電極と、複数の走査電極を覆うように形成された絶縁膜42と、絶縁膜42上に位置するともに複数の走査電極が延びる方向に対して直交する方向に延びる複数の信号電極と、走査電極および信号電極の交点付近に位置する複数のスイッチング素子44と、複数のスイッチング素子44を覆うように形成されたポリイミドなどの層間絶縁膜45とを有する層である。それぞれのスイッチング素子44のゲート電極44Gおよびソース電極44Sは、それぞれ対応する走査電極および対応する信号電極と電気的に接続されている。層間絶縁膜45上には複数の区画電極36が位置する。層間絶縁膜45には、各スイッチング素子44のドレイン電極44Dに対応する部位にスルーホール44Vが設けられており、このスルーホール44Vを介して、スイッチング素子44と、対応する区画電極36との間の電気的接続が形成されている。また、バンク40に対応する位置にそれぞれのスイッチング素子44が位置している。つまり、図10中の上側から観察すると、複数のスイッチング素子44のそれぞれは、バンク40に覆われるように位置している。
【0060】
基体30Aの区画電極36とバンク40とで規定される凹部は、区画38R、区画38G、区画38Bに対応する。区画38Rは、赤の波長域の光線を発光する発光層211FRが形成されるべき領域であり、区画38Gは、緑の波長域の光線を発光する発光層211FGが形成されるべき領域であり、区画38Bは、青の波長域の光線を発光する発光層211FBが形成されるべき領域である。
【0061】
このような基体30Aは、公知の製膜技術とパターニング技術とを用いて製造することができる。
次に、大気圧下の酸素プラズマ処理によって、この基体30Aを親液化する。この処理によって、区画電極36とバンク40とで規定された区画38R、38G、38Bにおける区画電極36の表面、無機物バンク40Aの表面、および有機物バンク40Bの表面が、親液性を呈するようになる。さらに、その後、基体30Aに対して、4フッ化メタンを処理ガスとするプラズマ処理を行う。4フッ化メタンを用いたプラズマ処理によって、それぞれの凹部における有機物バンク40Bの表面がフッ化処理(撥液性に処理)されて、このことで有機物バンク40Bの表面が撥液性を呈するようになる。なお、4フッ化メタンを用いたプラズマ処理によって、先に親液性を与えられた区画電極36の表面および無機物バンク40Aの表面は、若干親液性を失うが、それでも親液性を維持する。
【0062】
なお、区画電極36の材質、無機バンク40Aの材質、および有機バンク40Bの材質によっては、上記のような表面処理を行わなくても、所望の親液性および撥液性を呈する表面が得られることもある。そのような場合には、上記表面処理を施さなくてもよい。
また、表面処理が施された複数の区画電極36のそれぞれの上に、対応する正孔輸送層37R、37G、37Bを形成してもよい。正孔輸送層37R、37G、37Bが、区画電極36と、後述の発光層211FR、211FG、211FBとの間に位置すれば、エレクトロルミネッセンス表示装置の発光効率が高くなる。
【0063】
−液状材料付与工程−
上記のようにして区画38R、38G、38Bが形成された基体30Aに対し、図9(a)〜(c)に示すように、前述したカラーフィルタ基板10の場合と同様に、本発明の液滴吐出装置1を用いて、図10(d)に示すように、各区画38R、38G、38Bに対し、それぞれ、液状材料211R、211G、211Bを付与する。
【0064】
液状材料211Rは、赤色の有機発光材料を含むものであり、液状材料211Gは、緑色の有機発光材料を含むものであり、液状材料211Bは、青色の有機発光材料を含むものである。
液状材料211R、211G、211Bは、前述したように、有機エレクトロルミネッセンス表示装置30の区画の発光層211FR、211FG、211FBの構成材料である発光材料が有機溶剤中に溶解または分散してなるものである。
【0065】
液状材料211中の溶媒としては、有機エレクトロルミネッセンス表示装置30の発光層211FR、211FG、211FBを形成することができるものであれば、特に限定されないが、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCTAC)、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル等の多価アルコールのエーテルを用いるのが好ましい。これにより、液状材料211の粘度を抑えつつ、液状材料211中における発光層211Fの構成材料の濃度(固形分濃度)を高めることができる。
【0066】
液状材料211中の発光材料としては、有機エレクトロルミネッセンス表示装置30の発光層211FR、211FG、211FBを形成することができるものであれば、特に限定されず、各種発光材料を用いることができる。
また、液状材料211R、211G、211Bには、色要素膜である発光層211FR、211FG、211FBの構成材料として、樹脂が含まれていてもよい。
【0067】
液状材料211中に樹脂が含まれる場合、樹脂としては、有機エレクトロルミネッセンス表示装置30の発光層211FR、211FG、211FBを形成することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂等が挙げられる。
特に、この液状材料付与工程では、区画38に付与される液状材料の体積をV[pl]とし、バンク40の有機バンク40Bによって囲まれた領域の容積をV[pl]としたときに、V/V≦3なる関係を満たしている。
また、バンクの高さ、すなわち、バンク40の有機バンク40Bの高さをh[μm]とし、色要素膜である発光層211Fの平均膜厚をh[μm]とし、液状材料211中における発光層211Fの構成材料の濃度(固形分濃度)をD[vol%]としたときに、D≧(h/h)×(100/3)なる関係を満たしている。
【0068】
これらのことにより、液状材料付与工程において、区画38に付与された液状材料211の表面張力が効果的に作用するので、液状材料211がバンク40を超えて区画38から溢れ出すのを防止しつつ、所望の膜厚の発光層211Fを形成することができる。その結果、高品質な有機エレクトロルミネッセンス表示装置30を高い生産効率で製造することができる。
【0069】
また、バンクの高さ、すなわち、バンク40の有機バンク40Bの高さhは、0.1〜5μmであるのが好ましく、0.1〜3μmであるのがより好ましい。これにより、液状材料付与工程において、液状材料211がバンク40を超えて区画38から溢れ出すのをより確実に防止することができるので、所望の膜厚の発光層211Fをより簡単に得ることができる。
【0070】
また、発光層211Fの平均膜厚hは、0.1〜5μmであるのが好ましく、0.1〜3μmであるのがより好ましい。これにより、用いる液状材料211の材料の選択の幅を大きなものとしつつ、所望の特性を有する発光層211Fを形成することができる。
また、液状材料211中における発光層211Fの構成材料の濃度(固形分濃度)Dは、25〜50vol%であるのが好ましく、25〜40vol%であるのがより好ましい。これにより、液状材料付与工程において区画38に付与される液状材料211の体積を抑えつつ、所望の膜厚の発光層211Fをより簡単に得ることができる。
【0071】
また、液状材料付与工程で区画38に付与された液状材料211の体積Vは、0.1〜1500plであるのが好ましく、1〜900plであるのがより好ましい。これにより、液状材料付与工程において、区画38に付与された液状材料211の表面張力をより効果的に作用させて、液状材料211がバンク40を超えて区画38から溢れ出すのをより確実に防止することができる。
【0072】
また、バンク40の有機バンク40Bによって囲まれた領域の容積Vは、0.1〜500plであるのが好ましく、1〜300plであるのがより好ましい。これにより、液状材料付与工程において、液状材料211がバンク40を超えて区画38から溢れ出すのをより確実に防止することができる。
また、液状材料211の粘度は、20mPa・S以下であるのが好ましく、5〜20mPa・S以下であるのがより好ましい。これにより、液状材料付与工程において、液状材料211を区画38により円滑に付与することができる。ここで、液状材料111の粘度は、23℃の環境下で計測されたものである。
また、液状材料211は、エマルションであるのが好ましい。これにより、より均一な特性を有する発光層211Fを形成することができる。
【0073】
−色要素膜形成工程−
その後、基体30Aを乾燥装置へ移送して、各区画38R、38G、38Bに付与された液状材料211R、211G、211Bを乾燥させることにより、図10(e)に示すように、各区画38R、38G、38B上に発光層211FR、FG、FBが得られる。
次に、発光層211FR、211FG、211FB、およびバンク40を覆うように対向電極46を設ける。対向電極46は陰極として機能する。
【0074】
その後、封止基板48と基体30Aとを、互いの周辺部で接着することで、図10(f)に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置30が得られる。なお、封止基板48と基体30Aとの間には不活性ガス49が封入されている。
有機エレクトロルミネッセンス表示装置30において、発光層211FR、211FG、211FBから発光した光は、区画電極36と、回路素子層34と、支持基板32と、を介して射出する。このように回路素子層34を介して光を射出するエレクトロルミネッセンス表示装置は、ボトムエミッション型の表示装置と呼ばれる。
【0075】
以上、本発明を液晶表示装置(カラーフィルタ基板)の製造や、エレクトロルミネッセンス表示装置の製造に適用した場合について説明したが、本発明は、これらに限定されず、例えば、プラズマ表示装置の背面基板の製造や、電子放出素子を備えた画像表示装置(SED(Surface-Conduction Electron-Emitter Display)またはFED(Field Emission Display)と呼ばれることもある)の製造にも適用することができる。
【0076】
<本発明の電子機器の実施形態>
前述したような方法で製造されたカラーフィルタ基板10を備えた液晶表示装置や、前述したような方法で製造されたエレクトロルミネッセンス表示装置等の画像表示装置1000は、各種電子機器の表示部に用いることができる。
図11は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
【0077】
このパーソナルコンピュータ1100においては、表示ユニット1106が画像表示装置1000を備えている。
図12は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、画像表示装置1000を表示部に備えている。
【0078】
図13は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、画像表示装置1000が表示部に設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
【0079】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0080】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0081】
なお、本発明の電子機器は、上述したパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、携帯電話機、ディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
以上、本発明の成膜方法、色要素膜付き基板、電気光学装置、および電子機器を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。液滴吐出装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の液滴吐出装置の実施形態を示す斜視図。
【図2】図1に示す液滴吐出装置におけるヘッドユニット、および基体を示す平面図。
【図3】液滴吐出ヘッドのノズル面(ノズルプレート)の一部と、基体の区画とを拡大して示す平面図。
【図4】図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図。
【図5】図1に示す液滴吐出装置のブロック図。
【図6】(a)はヘッド駆動部を示す模式図、(b)はヘッド駆動部における駆動信号、選択信号および吐出信号を示すタイミングチャート。
【図7】カラーフィルタ基板の製造方法を示す断面図。
【図8】カラーフィルタ基板の製造方法を示す断面図。
【図9】有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を示す断面図。
【図10】有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を示す断面図。
【図11】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図12】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図。
【図13】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図。示す平面図。
【符号の説明】
【0083】
1……液滴吐出装置 2……液滴吐出ヘッド 21R、21G、21B……第1ヘッド 22R、22G、22B……第2ヘッド 23R、23G、23B……第3ヘッド 24R、24G、24B……第4ヘッド 25……ノズル 31R、31G、31B、32R、32G、32B……ヘッド列 51、52、53、54……ヘッド群 91、92……液滴 101……タンク 103、……ヘッドユニット 104……キャリッジ移動機構 105……キャリッジ 106……ステージ 108……ステージ移動機構 110……チューブ 111、111R、111G、111B、211R、211G、211B……液状材料 112……制御手段 120……キャビティ 122……隔壁 124……振動子 124A、124B……電極 124C……ピエゾ素子 126……振動板 128……ノズルプレート 129……液たまり 130……供給口 131……孔 200……バッファメモリ 202……記憶手段 203……駆動信号生成部 204……処理部 206……走査駆動部 208……ヘッド駆動部 AS……アナログスイッチ DS……駆動信号 SC……選択信号 EP……吐出周期 ES……吐出信号 10A、30A……基体 10……カラーフィルタ基板 12、32……支持基板 14……ブラックマトリクス 16、40……バンク 20……保護膜 18(18R、18G、18B)、38(38R、38G、38B)……区画 111F(111FR、111FG、111FB)……フィルタ層 30……有機エレクトロルミネッセンス表示装置 34……回路素子層 36……区画電極 40A……無機物バンク 40B……有機物バンク 42……絶縁膜 44……スイッチング素子 44G……ゲート電極 44S……ソース電極 44D……ドレイン電極 44V……スルーホール 45……層間絶縁膜 46……対向電極 48……封止基板 49……不活性ガス 302……キャリッジ位置検出手段 303……ステージ位置検出手段 1000……画像表示装置 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ 37R、37G、37B……正孔輸送層 211F(211FR、211FG、211FB)……発光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に色要素膜を形成する成膜方法であって、
前記基体上に設けられたバンクにより画成された区画に、前記色要素膜の構成材料が溶媒中に溶解または分散されてなる液状材料を付与する液状材料付与工程と、
前記区画に付与された液状材料から前記溶媒を除去しつつ該液状材料を硬化または固化して、前記色要素膜を形成する色要素膜形成工程とを有し、
前記液状材料付与工程で前記区画に付与された前記液状材料の体積をV[pl]とし、前記バンクによって囲まれた領域の容積をV[pl]としたときに、
/V≦3なる関係を満たすことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
基体上に色要素膜を形成する成膜方法であって、
前記基体上に設けられたバンクにより画成された区画に、前記色要素膜の構成材料が溶媒中に溶解または分散されてなる液状材料を付与する液状材料付与工程と、
前記区画に付与された液状材料から前記溶媒を除去しつつ該液状材料を硬化または固化して、前記色要素膜を形成する色要素膜形成工程とを有し、
前記バンクの高さをh[μm]とし、前記色要素膜の平均膜厚をh[μm]とし、前記液状材料中における前記色要素膜の構成材料の濃度をD[vol%]としたときに、
D≧(h/h)×(100/3)なる関係を満たすことを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
前記バンクの高さhは、0.1〜5μmである請求項1または2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記色要素膜の平均膜厚hは、0.1〜5μmである請求項1ないし3のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項5】
前記液状材料中における前記色要素膜の構成材料の濃度Dは、25〜50vol%である請求項1ないし4のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項6】
前記液状材料付与工程で前記区画に付与された前記液状材料の体積Vは、0.1〜1500plである請求項1ないし5のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項7】
前記バンクによって囲まれた領域の容積Vは、0.1〜500plである請求項1ないし6のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項8】
前記液状材料の粘度は、20mPa・S以下である請求項1ないし7のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項9】
前記溶媒は、多価アルコールのエーテルである請求項1ないし8のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項10】
前記液状材料は、エマルションである請求項1ないし9のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項11】
前記液状材料付与工程において、前記液状材料をノズルから液滴として吐出して前記区画に付与する請求項1ないし10のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の成膜方法によって製造されたことを特徴とする色要素膜付き基板。
【請求項13】
請求項12に記載の色要素膜付き基板を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項14】
請求項13に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−175307(P2006−175307A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368869(P2004−368869)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】