説明

成膜方法、蒸着装置、有機EL製造装置

【課題】膜質の良い有機薄膜を効率良く成膜する。
【解決手段】第一、第二の薄膜を形成するために、第一、第二の蒸着装置10a、10bの蒸発室21内部に配置する有機材料39a、39bの必要量を予め求めておく。求めた必要量の有機材料39a、39bを蒸発室21に配置して蒸気を発生させ、基板81を放出装置50の放出口55上に配置してから、蒸気を放出口55から放出させる。蒸発室21に配置された有機材料39a、39bが消費されると、予め決められた膜厚の第一、第二の薄膜が基板81表面上に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成膜方法、蒸着装置、及び有機EL製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は近年最も注目される表示素子の一つであり、高輝度で応答速度が速いという優れた特性を有している。有機EL素子は、ガラス基板上に赤、緑、青の三色の異なる色で発色する発光領域が配置されている。発光領域は、アノード電極膜、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及びカソード電極膜がこの順序で積層されており、発光層中に添加された発色剤で、赤、緑、又は青に発色するようになっている。
ホール輸送層、発光層、電子輸送層等は一般に有機材料で構成されており、このような有機材料の膜の成膜には蒸着装置が広く用いられる。
【0003】
図4の符号203は、従来技術の蒸着装置であり、真空槽211の内部に蒸着容器212が配置されている。蒸着容器212は、容器本体221を有しており、該容器本体221の上部は、一乃至複数個の放出口224が形成された蓋部222で塞がれている。
【0004】
蒸着容器212の内部には、粉体の有機蒸着材料200が配置されている。
蒸着容器212の側面と底面にはヒータ223が配置されており、真空槽211内を真空排気し、ヒータ223が発熱すると蒸着容器212が昇温し、蒸着容器212内の有機蒸着材料200が加熱される。
【0005】
有機蒸着材料200が蒸発温度以上の温度に加熱されると、蒸着容器212内に、有機材料蒸気が充満し、放出口224から真空槽211内に放出される。
放出口224の上方にはホルダ210が配置されており、ホルダ210に基板205を保持させておけば、放出口224から放出された有機材料蒸気が基板205表面に到達し、ホール注入層やホール輸送層や発光層等の有機薄膜が形成される。
【0006】
有機材料蒸気を放出させながら、基板205を一枚ずつ放出口224上を通過させれば、複数枚の基板205に逐次有機薄膜を形成することができる。
しかし、複数枚の基板205に成膜するには、蒸着容器212内に多量の有機材料を配置する必要がある。実際の生産現場では、有機材料を350℃〜450℃に加熱しながら120時間以上連続して成膜処理を行うため、蒸着容器212内の有機蒸着材料200は長時間高温に曝されることになり、蒸着容器212中の水分と反応して変質したり、加熱による分解が進行する。
その結果、初期状態に比べて有機蒸着材料200が劣化し、有機薄膜の膜質が悪くなる。
【特許文献1】特開平10−204624号公報
【特許文献2】特開2006−307239号公報
【特許文献3】特開2003−293121号公報
【特許文献4】特開2007−70687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、その目的は、膜質の良い有機薄膜を効率良く汚染を起こさずに、発光層を成膜可能な蒸着装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、第一、第二の蒸発室内で第一、第二の有機材料の蒸気を発生させ、前記第一、第二の有機材料の蒸気を第一、第二の放出装置から放出させて、基板表面上に第一、第二の薄膜を形成する成膜方法であって、前記第一、第二の薄膜を形成するために、前記第一、第二の蒸発室内に配置すべき前記第一、第二の有機材料の配置量を求めておき、前記第一、第二の有機材料の前記配置量を、前記第一、第二の有機材料が収容された第一、第二の収容部から前記第一、第二の蒸発室に移動させ、前記基板を前記第一の放出装置上に配置した状態で、前記第一の放出装置から前記第一の有機材料の蒸気を放出させ、前記第一の薄膜を形成した後、前記基板を前記第一の放出装置上から前記第二の放出装置上に移動させ、前記基板を前記第二の放出装置上に配置した状態で、前記第二の放出装置から前記第二の有機材料の蒸気を放出させ、前記第二の薄膜を形成する成膜方法である。
本発明は、前記基板表面の複数の第一の領域に第一の色の前記第一の薄膜を形成し、前記基板表面の前記第一の領域とは異なる複数の第二の領域に、前記第一の色とは異なる第二の色の前記第二の薄膜を形成する成膜方法であって、前記第一、第二の収容部に、前記第一、第二の色の着色剤が含有された前記第一、第二の有機材料を配置しておき、複数の第一の開口を有し、前記第一の開口の相対位置が前記第一の領域の相対位置と等しい第一のマスクを、前記第一の開口が前記第一の領域と対面するように、前記基板を前記第一の放出装置上に配置し、複数の第二の開口を有し、前記第二の開口の相対位置が前記第二の領域の相対位置と等しい第二のマスクを、前記第二の開口が前記第二の領域と対面するように、前記基板を前記第二の放出装置上に配置する成膜方法である。
本発明は蒸着装置であって、成膜される基板が配置される成膜室と、前記基板に成膜する有機材料を加熱して蒸発させる蒸発部と、前記蒸発部と接続され、前記成膜室内に、前記基板に対向して配置され、前記基板に対して前記有機材料の蒸気を放出する放出部と、前記有機材料を収容する収容部と、前記収容部から前記蒸発部内に前記有機材料を所定量供給する供給手段とを具備する蒸着装置である。
本発明は蒸着装置であって、前記供給手段は、前記基板の処理枚数毎に前記有機材料を前記蒸発部に供給する制御手段を有する蒸着装置である。
本発明は蒸着装置であって、前記蒸発部は加熱板を有し、前記供給手段は前記加熱板の上に前記有機材料を供給する蒸着装置である。
本発明は蒸着装置であって、前記供給手段は、前記加熱板が加熱された状態で、前記有機材料を供給する蒸着装置である。
本発明は蒸着装置であって、前記供給手段は、螺旋状の溝を有する回転軸の回転により、前記有機材料の供給量を制御する蒸着装置である。
本発明は蒸着装置であって、前記蒸発部は前記成膜室の外部に配置され、前記蒸発部と前記放出部は管で接続される蒸着装置である。
本発明は蒸着装置であって、前記放出部は、加熱手段と、前記加熱手段と前記基板との間に設置され、蒸気通過孔を有する断熱部材とを有する蒸着装置である。
本発明は蒸着装置であって、前記放出部は、前記基板に対向する前面が前記基板よりも大きく、前記前面に蒸気を放出する放出口が概ね均一に配置された蒸着装置である。
本発明は蒸着装置であって、前記放出部は、筐体と、前記筐体内部に設置され、前記蒸発部に接続されたヘッダを有し、前記筐体は前記加熱手段で加熱され、前記ヘッダは前記筐体内部面に向けて蒸気を放出する孔を有する蒸着装置である。
本発明は有機EL製造装置であって、複数の蒸着装置と、前記複数の蒸着装置が接続された搬送室とを有し、前記複数の蒸着装置のうち、少なくとも1つ以上は、成膜される基板が配置される成膜室と、前記基板に成膜する有機材料を加熱して蒸発させる蒸発室と、前記蒸発室と接続され、前記成膜室内に前記基板に対向して配置され、前記基板に対して前記有機材料の蒸気を放出する放出部と、前記有機材料を収容する収容部と、前記収容部から前記蒸発室内に前記有機材料を所定量供給する供給手段とを具備する有機EL製造装置である。
本発明は有機EL装置であって、前記複数の蒸着装置は、前記収容部で異なる有機材料を収容し、前記蒸発室で該有機材料を蒸発させて成膜する有機EL製造装置である。
本発明は有機EL製造装置であって、前記蒸着装置は、前記基板と、前記基板に対して位置合わせされるマスクとのアライメントを行うアライメント手段を有する有機EL製造装置である。
【発明の効果】
【0009】
必要な量の有機材料を加熱するから、有機材料の劣化がおこり難い。1つの放出装置は同じ種類の有機材料の蒸気の放出だけに用いられるから、基板を交換する毎に放出装置内部を高真空排気する必要が無く、製造に係る時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1の符号1は本発明の成膜装置(有機EL製造装置)の一例を示している。
成膜装置1は複数の蒸着装置10a〜10cを有しており、ここでは、各蒸着装置10a〜10cは搬送室2に接続され、蒸着装置10a〜10cが接続された搬送室2には、搬入室3aと、搬出室3bと、処理室6〜8とがそれぞれ接続されている。
【0011】
真空排気系9により、搬送室2内部と、蒸着装置10a〜10cの内部と、処理室6〜8内部と、搬入室3a内部と、搬出室3b内部に真空雰囲気が形成される。搬送室2の内部には搬送ロボット5が配置されている。
【0012】
搬入室3aに搬入された基板は、搬送ロボット5によって真空雰囲気中を搬入室3aから搬送室2へ搬入され、処理室6で電荷注入層、電荷輸送層等の有機薄膜が形成され、蒸着装置10a〜10c内部で3色(例えば赤色、緑色、青色)の着色層を形成して発光層とし、他の処理室7、8に運ばれ、電子輸送層、上部電極膜等が形成された後、搬出室3bから外部に搬出されるようになっている。
【0013】
赤色、緑色、青色のうち、いずれか1色を第一の色、残りの二色のうち、一方の色を第二の色、他方の色を第三の色とし、第一の色の着色層を形成する蒸着装置10aを第一の蒸着装置、第二の着色層を形成する蒸着装置10bを第二の蒸着装置、第三の色の着色層を形成する蒸着装置10cを第三の蒸着装置として以下に説明する。
【0014】
図2は第一〜第三の蒸着装置10a〜10cを模式的に示す斜視図であり、図3は第一〜第三の蒸着装置10a〜10cの断面図である。
第一〜第三の蒸着装置10a〜10cは、後述するマスクの位置関係と、収容される有機材料(蒸着材料)が異なる以外は同じ構成を有しており、同じ部材には同じ符号を付して説明する。
【0015】
第一〜第三の蒸着装置10a〜10cは、真空槽11(成膜室)と、収容部31と、供給手段40と、蒸発部20と、放出装置50(放出部)と、基板ホルダ15と、アライメント手段60とをそれぞれ有している。図2では真空槽11a〜11cは省略している。
【0016】
収容部31は、例えばタンクであって、容器32と、容器32の開口を密閉可能な蓋34とを有しており、後述する有機材料39a〜39cは蓋34を開けた状態で外部から搬入され、蓋34を閉じると、搬入された有機材料39a〜39cが大気に曝されないようになっている。容器32の底部はすり鉢状になっており、容器32に搬入された有機材料39a〜39cはすり鉢状の底部に溜まる。
【0017】
蒸発部20は、収容部31の下方に配置された蒸発室21と、蒸発室21の内部に配置された加熱板(高温体)22とを有している。蒸発室21の天井と容器32の底部にはそれぞれ開口が設けられている。
【0018】
供給手段40は、接続管42と、回転軸35と、制御手段41とを有している。接続管42の上端と下端は、それぞれ容器32の開口と蒸発室21の開口に気密に接続されている。
【0019】
回転軸35の長さは、容器32の開口と蒸発室21の開口との間の距離よりも長くされており、回転軸35の外周には、容器32の開口と蒸発室21の開口との間の距離よりも長い範囲に凸条36が螺旋状に形成されている。凸条36と凸条36の間の溝も螺旋状になるから、この回転軸35は螺旋状の溝を有する。
【0020】
回転軸35は、凸条36が形成された部分が、容器32の開口よりも上方位置から、蒸発室21の開口よりも下方位置に亘るように、接続管42に挿入されている。従って、凸条36と凸条36との間の空間(溝)を介して収容部31の内部空間と蒸発室21の内部空間とが接続される。
【0021】
収容部31に収容される有機材料39a〜39cは粉体である。有機材料39a〜39cを構成する粉体の粒径は特に限定されないが、一例を述べると平均粒径が100μm〜200μmである。
【0022】
凸条36の表面と接続管42の内壁面との間の隙間は、有機材料39a〜39cの粒径と同じか、それよりも狭くなっており、有機材料39a〜39cは凸条36の表面と接続管42の内壁面の隙間に落下せず、回転軸35が静止した状態では、有機材料39a〜39cは収容部31底部の回転軸35周囲に溜まる。
【0023】
制御手段41は回転軸35に接続されており、制御手段41は不図示のモーターの動力を回転軸35に伝達させ、回転軸35を上昇も下降もせずに、接続管42に挿通された状態を維持しながら、接続管42の中心軸線を中心として回転させる。
【0024】
このときの回転方向は、回転軸35を螺合する雌ネジに挿入したと仮定した時に、回転によって先端が雌ネジから突き出る方向になっており、回転軸35が回転すると収容部31内の有機材料39a〜39cが、凸条36と凸条36の間の溝に入り込み、凸条36の斜面上を通って接続管42の内部を下方に移動する。
【0025】
有機材料39a〜39cは接続管42の下端に達すると、溝からこぼれ落ち、蒸発室21の内部に有機材料39a〜39cが供給される。回転軸35の回転量が増える程、収容部31から蒸発室21に移動する有機材料39a〜39cが増え、多量の有機材料39a〜39cが蒸発室21に供給されることになる。
【0026】
回転軸35の回転量と有機材料39a〜39cが蒸発室21に供給される量との関係を求めれば、その関係から、所望量の有機材料39a〜39cを蒸発室21に供給するための回転軸35の回転量が求められる。
【0027】
制御手段41に求めた供給量を入力しておけば、制御手段41はその供給量に対応する回転量だけ回転軸35を回転させ、所望量の有機材料39a〜39cを蒸発室21内部に供給する。
【0028】
接続管42の下端は蒸発室21の天井よりも下方に突き出されており、蒸発室21に配置される有機材料39a〜39cは飛散せずに、略鉛直下方に落下する。
【0029】
加熱板22は、板本体22cと、板本体22c表面に配置されたリング状の外周凸部22bと、板本体22c表面の外周凸部22bのリング略中央位置に配置された中心凸部22aとを有している。
外周凸部22bの内径は接続管42下端の内径よりも大きく、中心凸部22aの先端は接続管42下端の開口よりも小さくなっている。
【0030】
加熱板22は、外周凸部22bの開口を上側に向けた状態で、中心凸部22aの中心が、接続管42の中心軸線の鉛直下方に位置するように、蒸発室21内部に配置されている。
従って、接続管42の下端から落下する有機材料39a〜39cは、回転軸35の回転によって、中心凸部22aの外周と外周凸部22bの内壁面との間に、中心凸部22aを取り囲むように供給される。
【0031】
蒸発室21の周囲には材料加熱手段(例えばコイル)25が巻きまわされている。加熱板22はステンレス等高抵抗材料で構成されており、電源26から材料加熱手段25に高周波電圧を印加すると、加熱板22が誘導加熱される。
【0032】
制御手段41は加熱板22が所定温度(例えば300〜350℃)に加熱されてから、有機材料39a〜39cを加熱板22上に供給するように設定されており、加熱板22に供給された有機材料39a〜39cは加熱されて蒸発し、蒸発室21内部に有機材料の蒸気が発生する。
【0033】
上述したように有機材料39a〜39cは中心凸部22aと外周凸部22bの内壁面の間に、中心凸部22aを取り囲むように供給されるから、均一に加熱され、蒸気の発生効率が高い。
蒸発部20は真空槽11の外部に位置し、放出装置50の一部又は全部は真空槽11の内部に位置する。
【0034】
蒸発室21には管(配管)59の一端が接続され、配管59の他端は放出装置50に接続されている。従って、蒸発室21と放出装置50とは配管59によって接続される。配管59は、有機材料の蒸気が凝集しない様加熱されている。
蒸発室21に接続された真空排気系9のバルブを閉じた状態で、蒸気を発生させると、蒸発室21内部の圧力が高くなり、圧力差によって蒸気が蒸発室21から配管59に供給される。
【0035】
配管59の一端と他端の間にはバルブ57が設けられている。バルブ57を開状態にすると、蒸気は配管59を通って放出装置50へ移動し、バルブ57を閉状態にすると蒸気が放出装置50へ移動しなくなる。
【0036】
放出装置50(放出部)は、筐体51と、供給管52(ヘッダ)と、加熱手段68と、断熱部材57とを有している。
筐体51は壁面の一部又は全部が真空槽11の内部に配置されており、筐体51の真空槽11の内部に位置する部分(ここでは天井)に複数の放出口55が設けられている。
【0037】
供給管52は1又は複数の噴出口53(孔)が設けられている。供給管52は、噴出口53が放出口55とは対面せずに、筐体51の放出口55が設けられていない内部面(ここでは底面)と噴出口53が対面するように、筐体51の内部に配置されている。
【0038】
放出装置50へ移動した蒸気は供給管52に供給され、噴出口53から筐体51内部に噴出され、筐体51内部で充満してから放出口55を通って真空槽11の内部に放出される。
加熱手段68は筐体51の外壁面に取り付けられており、電源69から加熱手段68に通電すると、加熱手段68が昇温し、筐体51が加熱される。筐体51が加熱されると、筐体51内部に充満する蒸気は冷却されず、筐体51内部で析出しない。
【0039】
基板ホルダ15は真空槽11の内部の放出口55の上方位置に配置されている。ここでは、放出口55の周囲にも加熱手段68が設けられており、断熱部材57は基板ホルダ15と、筐体51との間の位置で、加熱手段68を覆うように配置されている。
【0040】
基板ホルダ15に基板81を配置した時には、その基板81と筐体51の間、及び該基板81と加熱手段68の間には断熱部材57が位置するから、基板81とマスク16は加熱手段68や、筐体51からの輻射熱で加熱されない。
【0041】
断熱部材57には放出口55の真上位置にそれぞれ蒸気通過孔67が設けられている。各蒸気通過孔67は、放出口55から真空槽11内に放出される蒸気が接触しない程大きくされているから、放出口55から放出される蒸気は断熱部材57で冷却されず、析出しない。
基板ホルダ15と放出口55との間であって、断熱部材57よりも基板ホルダ15に近い側にはマスク16が配置されている。
【0042】
マスク16は板状の遮蔽部18と、遮蔽部18を貫通する複数の開口17とを有している。基板81には、予め第一〜第三の色の着色層が形成されるべき領域(第一〜第三の領域)が複数ずつ決められている。第一〜第三の領域は互いに異なる位置にある。
【0043】
マスク16の開口17の間隔は、第一の蒸着装置10aでは第一の領域の間隔と略等しく、第二の蒸着装置10bでは第二の領域の間隔と略等しく、第三の蒸着装置10cでは第三の領域の間隔と略等しくなっている。
従って、第一〜第三の蒸着装置10a〜10cのマスク16の開口17の相対位置は、第一〜第三の領域の相対位置とそれぞれ等しい。
【0044】
アライメント手段60は、基板ホルダ15とマスク16のいずれか一方又は両方を移動可能であって、真空槽11に搬入された基板81は基板ホルダ15に配置され、基板ホルダ15とマスク16とが相対的に移動する時は、基板81は基板ホルダ15と一緒に移動する。
【0045】
基板81とマスク16には不図示のアライメントマークが形成され、アライメント手段60はアライメントマークを観察しながら、基板ホルダ15に配置された基板81と、マスク16とを相対的に移動させて、位置合わせを行い、第一の蒸着装置10aでは各開口17を第一の領域と対面させ、第二の蒸着装置10bでは各開口17を第二の領域と対面させ、第三の蒸着装置10cでは各開口17を第三の領域と対面させる。
【0046】
開口17と対面する以外の場所は、遮蔽部18と対面し、蒸気が到達しないから、位置合わせ後、放出口55から蒸気を放出させると、第一の蒸着装置10aでは第一の領域上に薄膜が形成され、第二の蒸着装置10bでは第二の領域上に薄膜が形成され、第三の蒸着装置10cでは第三の領域上に薄膜が形成される。
【0047】
筐体51の放出口55が形成された面(前面)の面積は、基板81表面の面積と同じか、それよりも大きくなっている。
放出口55は前面に所定間隔を空けて配置されており、前面の放出口55が配置された領域は、基板81表面の面積と同じか、それよりも大きくなっている。従って、基板81を放出装置50上で、移動させなくても、基板81表面の各領域に着色層を形成することができる。
【0048】
次に、本発明の有機EL装置を用いた製造工程について説明する。
第一〜第三の色の着色層の成膜すべき膜厚はそれぞれ決められている。予め各蒸着装置10a〜10cで予備試験を行っておく。
【0049】
予備試験は、真空槽11や蒸発室21の内部圧力、有機材料39a〜39cの組成、加熱板22及び筐体51の加熱温度等の条件を実際の製造工程と同じにし、放出装置50上に基板81を配置した状態で、蒸発室21で発生した蒸気を放出装置50から放出させ、決められた膜厚の着色層が形成されるために必要な、蒸発室21に供給する有機材料39a〜39cの供給量を、第一〜第三の色毎に求める。
【0050】
実際の製造工程では、求めた供給量の有機材料39a〜39cを加熱板22に供給し、発生した蒸気を、基板81を放出装置50上に配置した状態で放出装置50から放出させる。蒸発室21内に有機材料39a〜39cが無くなり、蒸気が放出されなくなった時に成膜が終了し、成膜が終了した時には基板81表面上に形成される着色層は決められた膜厚になる。例えば、放出口55から蒸気を放出し始めてから所定時間が経過した時、又は蒸発室21内部の圧力が所定圧力以下になった時に、成膜が終了したと判断する。
【0051】
次に、予備試験で求めた供給量を用いた実際の製造工程について説明する。
有機材料39a〜39cは、例えば発光性有機材料を含有するホストに、第一〜第三の色の着色剤(ドーパント)が添加されて、第一〜第三の色にそれぞれ着色されている。第一〜第三の蒸着装置10a〜10cの収容部31に、第一〜第三の色の有機材料39a〜39cをそれぞれ収容しておく。
【0052】
各真空槽11と各蒸発室21と各収容部31はそれぞれ真空排気系9に接続されており、各真空槽11内部と、各蒸発室21の内部と、各収容部31の内部を真空排気し、各蒸発室21、各収容部31、各真空槽11、各放出装置50及び各配管59の内部空間に所定圧力(例えば10-5Pa)の真空雰囲気を形成しておく。
【0053】
表面に予め下部電極や他の有機薄膜(電荷注入層、電荷移動層等)が形成された基板81を、真空槽11の真空雰囲気を維持したまま、先ず、第一の蒸着装置10aの真空槽11内に搬入する。
【0054】
予備試験で求めた供給量の第一の色の有機材料39aを所定温度に加熱された加熱板22に供給し、該有機材料39aが加熱された発生した蒸気を放出口55から放出させる。
【0055】
放出口55から蒸気が放出する前に、基板81を基板ホルダ15に配置し、マスク16と基板81を位置合わせして放出装置50上に配置しておき、少なくとも蒸気の放出開始から成膜が終了するまで、位置合わせした基板81とマスク16を放出装置50上に配置しておく。
【0056】
位置合わせした状態では、第一の蒸着装置10aではマスク16の各開口17が第一の領域と対面し、第二、第三の領域は遮蔽部18と対面するので、第一の領域上に決められた膜厚の第一の色の着色層が形成され、第二、第三の領域には第一の色の着色層は形成されない。
【0057】
第一の着色層の成膜終了後、基板81を基板ホルダ15から取り除いて放出装置50上から移動、第一の蒸着装置10aから第二の蒸着装置10bの真空槽11に搬入し、基板ホルダ15に配置して位置合わせをし、開口17を第二の領域と対面させると、第一の色の着色層と、第三の領域を遮蔽部18と対面する。
【0058】
予備試験で求めた供給量の第二の色の有機材料39bを所定温度に加熱された加熱板22に供給し、発生した蒸気を放出口55から放出させる。少なくとも放出口55から蒸気の放出が開始してから、成膜が終了するまで間、位置合わせした基板81とマスク16を放出装置50上に配置しておくと、第二の領域上に決められた膜厚の第二の色の着色層が形成されるが、第一の着色層上と、第三の領域上には第二の色の着色層が形成されない。
【0059】
第二の着色層の成膜終了後、基板81を基板ホルダ15から取り除いて放出装置50上から移動させる。その基板81を、第三の蒸着装置10cの真空槽11に搬入し、基板ホルダ15に配置して位置合わせをし、開口17を第三の領域に対面させると、第一、第二の色の着色層が遮蔽部18と対面する。
【0060】
予備試験で求めた供給量の第三の色の有機材料39cを所定温度に加熱された加熱板22に供給し、発生した蒸気を放出口55から放出させる。少なくとも放出口55から蒸気放出が開始してから、成膜が終了するまでの間、位置合わせした基板81とマスク16を放出装置50上に配置しておくと、第三の領域上に決められた膜厚の第三の色の着色層が形成されるが、第一、第二の色の着色層上には第三の色の着色層が形成されない。
【0061】
このように、着色層は同じ領域に積層されず、各色の着色層が予め決められた異なる領域に配置され、発光層となる。
例えば、各第一〜第三の領域にそれぞれ上記下部電極が位置し、下部電極上にそれぞれ着色層を形成し、発光層としてから、発光層上に上部電極を形成する。上部電極に通電した状態で、選択した下部電極に通電すれば、選択された下部電極上にある着色層だけが発光する。所望位置の所望色の着色層が発光するから、フルカラー表示が可能となる。
【0062】
本発明では、マスク16を放出装置50上に配置したまま複数の基板81の成膜を行うことができるが、成膜を繰り返すと、マスク16に有機材料が付着し、成膜精度が劣化するので、予め決めた所定枚数の基板81の成膜が終了したら、マスク16を交換することが望ましい。
【0063】
以上は、マスク16を放出装置50上に配置しておく場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、基板81をマスク16と一緒に、第一〜第三の蒸着装置10a〜10c間を搬送してもよい。
この場合、基板81とマスク16を第一〜第三の蒸着装置10a〜10cの各真空槽11に搬入してから、アライメント手段60で位置合わせをし、開口17が対応する領域と対面するように、マスク16の位置を移動させる。
【0064】
複数の放出装置50を同一の真空槽内部に離間して配置し、同一の真空槽内部で2色以上の着色層を形成してもよい。この場合、各色の蒸気が混合されないよう、放出装置50同士の距離を十分に離すか、真空槽内部に蒸気の流れを遮蔽する遮蔽板を設けることが望ましい。
【0065】
以上は、有機材料39a〜39cとしてホストとドーパントとが予め混合されたものを用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、蒸発室21と、蒸発室21に接続された収容部31とを一組の蒸発源とすると、1つの放出装置50に蒸発源を2組以上接続し、ホストとドーパントをそれぞれ異なる蒸発源の収容部31にそれぞれ収容しておく。
蒸発源からホストの蒸気とドーパントの蒸気を同じ放出装置50に供給すれば、蒸気は放出装置50内部で混合された後、放出口55から放出され、ホストとドーパントを両方含有する薄膜が成長する。
【0066】
放出装置50と、基板ホルダ15のいずれか一方又は両方を揺動手段58に接続しておき、着色層を成長させる間、基板81とマスク16を相対的に静止させたまま、放出装置50と基板ホルダ15のいずれか一方又は両方を水平面内で往復移動又は円運動させる。基板ホルダ15に配置された基板81は、基板ホルダ15と一緒に移動し、該基板81はマスク16に対して相対的に静止した状態で、放出装置50に対して相対的に移動し、着色層の膜厚が均一になる。
【0067】
基板ホルダ15と放出装置50との相対的な往復移動の方向は特に限定されないが、例えば、供給管52が、所定間隔を空けて離間して配置された複数本の分岐管を有する場合は、基板81と放出装置50を、該分岐管と交差する方向に水平面内で相対的に移動させる。
【0068】
加熱板22の加熱は誘導加熱に限定されず、材料加熱手段からの熱伝導で加熱してもよい。更に、有機材料39a〜39cにレーザービーム等を照射して、有機材料39a〜39cを直接加熱してもよい。加熱板22の形状は、有機材料が供給可能であれば特に限定されず、凸部が形成されていない板状であってもよい。
【0069】
蒸発室21を直接真空排気系9に接続せずに、蒸発室21を放出装置50に接続した状態で、真空槽11を真空排気することで、蒸発室21内部を真空排気してもよい。加熱板22の形状や設置場所も特に限定されず、有機材料を加熱板22に供給可能であれば、接続管42下端の斜め下方に配置してもよい。
【0070】
マスク16の開口17形状及び間隔は、各色毎に同じであってもよいし、異なってもよい。例えば、特定の色の着色層の成膜に用いるマスクの開口を、他の色の着色層の成膜に用いるマスクの開口よりも大面積にして、特定の色の着色層を、他の色の着色層よりも大面積に成膜することもできる。
【0071】
具体的には、青色の有機材料は、他の色(赤、緑等)に比べて化学的に劣化しやすいので、青色の着色層を他の色の着色層よりも大面積に形成すれば、有機EL装置全体の寿命が長くなる。
第一〜第三の色の組合わせは赤青緑に限定されず、例えば、赤青黄等他の組合わせであってもよい。また、着色層の色の数は2色に限定されず、2台又は4台以上の放出装置50を用いて、2色又は4色以上の着色層を形成してもよい。
【0072】
以上は、第一、第二の薄膜(着色層)を積層せずに異なる領域にそれぞれ形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、マスクを用いないか、マスクの開口と基板との位置関係を変えずに2種以上の有機薄膜(例えば、電荷移動層、電荷注入層、電子移動層、電子注入層等)を成膜し、各有機薄膜を同じ場所に積層させることもできる。
【0073】
本発明に用いる蒸着材料は有機材料に限定されず、無機材料を用いることもできる。
蒸発室21から蒸気を放出装置50に供給する際、蒸発室21にキャリアガス(例えばN2)を導入すれば、蒸気の供給効率が高くなる。
【0074】
以上は本発明の蒸着装置10a〜10cが搬送室2を介して互いに接続された有機EL製造装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の蒸着装置10a〜10cを直列的に接続したインライン型の有機EL製造装置も本発明には含まれる。
【0075】
以上は、収容部31と、供給手段40と、蒸発部20とが、真空槽11の外部に配置された場合について示したが、収容部31と、供給手段40と、蒸発部20が真空槽11内に配置されてもよい。この場合、収容部31の上部に、真空槽11の外から、収容部31内に有機材料を供給する為のロードロック室を設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】成膜装置の一例を説明するための模式的な平面図
【図2】本発明の蒸着装置の模式的な斜視図
【図3】本発明の蒸着装置の断面図
【図4】従来技術の蒸着装置を説明するための断面図
【符号の説明】
【0077】
1……成膜装置(有機EL製造装置) 10a、10b、10c……第一、第二、第三の蒸着装置 11……真空槽 15……基板ホルダ 16……マスク 20……蒸発部 21……蒸発室(第一、第二の蒸発室) 22……加熱板(加熱板) 31……収容部(第一、第二の収容部) 39a〜39c……有機材料 41……制御手段 50……放出装置 51……筐体 52……供給管(ヘッダ) 57……断熱部材 59……配管 60……アライメント手段 67……蒸気放出孔 81……基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一、第二の蒸発室内で第一、第二の有機材料の蒸気を発生させ、前記第一、第二の有機材料の蒸気を第一、第二の放出装置から放出させて、基板表面上に第一、第二の薄膜を形成する成膜方法であって、
前記第一、第二の薄膜を形成するために、前記第一、第二の蒸発室内に配置すべき前記第一、第二の有機材料の配置量を求めておき、
前記第一、第二の有機材料の前記配置量を、前記第一、第二の有機材料が収容された第一、第二の収容部から前記第一、第二の蒸発室に移動させ、
前記基板を前記第一の放出装置上に配置した状態で、前記第一の放出装置から前記第一の有機材料の蒸気を放出させ、前記第一の薄膜を形成した後、
前記基板を前記第一の放出装置上から前記第二の放出装置上に移動させ、
前記基板を前記第二の放出装置上に配置した状態で、前記第二の放出装置から前記第二の有機材料の蒸気を放出させ、前記第二の薄膜を形成する成膜方法。
【請求項2】
前記基板表面の複数の第一の領域に第一の色の前記第一の薄膜を形成し、
前記基板表面の前記第一の領域とは異なる複数の第二の領域に、前記第一の色とは異なる第二の色の前記第二の薄膜を形成する請求項1記載の成膜方法であって、
前記第一、第二の収容部に、前記第一、第二の色の着色剤が含有された前記第一、第二の有機材料を配置しておき、
複数の第一の開口を有し、前記第一の開口の相対位置が前記第一の領域の相対位置と等しい第一のマスクを、前記第一の開口が前記第一の領域と対面するように、前記基板を前記第一の放出装置上に配置し、
複数の第二の開口を有し、前記第二の開口の相対位置が前記第二の領域の相対位置と等しい第二のマスクを、前記第二の開口が前記第二の領域と対面するように、前記基板を前記第二の放出装置上に配置する成膜方法。
【請求項3】
成膜される基板が配置される成膜室と、
前記基板に成膜する有機材料を加熱して蒸発させる蒸発部と、
前記蒸発部と接続され、前記成膜室内に、前記基板に対向して配置され、前記基板に対して前記有機材料の蒸気を放出する放出部と、
前記有機材料を収容する収容部と、
前記収容部から前記蒸発部内に前記有機材料を所定量供給する供給手段と、
を具備する蒸着装置。
【請求項4】
前記供給手段は、前記基板の処理枚数毎に前記有機材料を前記蒸発部に供給する制御手段を有する請求項3記載の蒸着装置。
【請求項5】
前記蒸発部は加熱板を有し、
前記供給手段は前記加熱板の上に前記有機材料を供給する請求項3又は請求項4のいずれか1項記載の蒸着装置。
【請求項6】
前記供給手段は、前記加熱板が加熱された状態で、前記有機材料を供給する請求項5記載の蒸着装置。
【請求項7】
前記供給手段は、螺旋状の溝を有する回転軸の回転により、前記有機材料の供給量を制御する請求項3乃至請求項6のいずれか1項記載の蒸着装置。
【請求項8】
前記蒸発部は前記成膜室の外部に配置され、前記蒸発部と前記放出部は管で接続される請求項3乃至請求項7のいずれか1項記載の蒸着装置。
【請求項9】
前記放出部は、
加熱手段と、前記加熱手段と前記基板との間に設置され、蒸気通過孔を有する断熱部材とを有する
請求項3乃至請求項8のいずれか1項記載の蒸着装置。
【請求項10】
前記放出部は、前記基板に対向する前面が前記基板よりも大きく、
前記前面に蒸気を放出する放出口が概ね均一に配置された請求項3乃至請求項9のいずれか1項記載の蒸着装置。
【請求項11】
前記放出部は、筐体と、前記筐体内部に設置され、前記蒸発部に接続されたヘッダを有し、
前記筐体は前記加熱手段で加熱され、
前記ヘッダは前記筐体内部面に向けて蒸気を放出する孔を有する請求項3乃至請求項10のいずれか1項記載の蒸着装置。
【請求項12】
複数の蒸着装置と、前記複数の蒸着装置が接続された搬送室とを有し、
前記複数の蒸着装置のうち、少なくとも1つ以上は、
成膜される基板が配置される成膜室と、
前記基板に成膜する有機材料を加熱して蒸発させる蒸発室と、
前記蒸発室と接続され、前記成膜室内に前記基板に対向して配置され、前記基板に対して前記有機材料の蒸気を放出する放出部と、
前記有機材料を収容する収容部と、
前記収容部から前記蒸発室内に前記有機材料を所定量供給する供給手段とを具備する有機EL製造装置。
【請求項13】
前記複数の蒸着装置は、前記収容部で異なる有機材料を収容し、前記蒸発室で該有機材料を蒸発させて成膜する請求項12記載の有機EL製造装置。
【請求項14】
前記蒸着装置は、前記基板と、前記基板に対して位置合わせされるマスクとのアライメントを行うアライメント手段を有する請求項12又は請求項13のいずれか1項記載の有機EL製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−87931(P2009−87931A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226966(P2008−226966)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】