説明

成膜装置、システム及び成膜方法

【課題】分散安定剤を使用せずに金属ナノ粒子を成膜する。
【解決手段】内部が真空状態に保持され、ウエハWが載置された処理容器150と、金属含塩溶液を超音波により霧化し、霧化された金属塩溶液の液滴Mbを処理容器150内に放出する超音波噴霧器110と、放出された金属塩溶液の液滴Mbが処理容器150の内部をウエハWに向けて移動する際に通過する空間Aに配設され、放出された金属塩溶液の霧状の液滴Mbを熱分解する温度調整器152とを備える。これにより、熱分解により金属塩溶液の霧状の液滴Mbから生成された金属ナノ粒子MaをウエハWに成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子を生成する成膜装置、該成膜装置及びナノ構造体を製造するナノ構造体製造装置を含むシステム、及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルオーダの直径を有する金属ナノ粒子は、量子サイズ効果により、それ以上の大きさを有する金属粒子に比べて、新しい化学的、光学的、電磁気的機能を有することが知られており、様々な分野での利用が期待されている。このため、金属ナノ粒子を生成するために様々な研究が行われている。
【0003】
金属ナノ粒子を製造する方法としては、化学的合成方法、機械的製造方法、電気的製造方法がある。このうち、機械的な力を用いて粉砕する機械的製造方法は、工程上不純物の混入により高純度の粒子を合成しにくく、ナノサイズの均一な粒子の形成ができない。
【0004】
電気分解による電気的製造方法の場合、製造時間が長く、かつ濃度が低くて効率が悪い。
【0005】
化学的合成方法には、大きく気相法と液相法(液相還元法)がある。気相法では、気相中、高温より蒸発させた金属の蒸気を供給してガス分子と衝突させ、これを急冷することにより金属ナノ粒子を抽出する。プラズマや気体蒸発法を使用する気相法の場合、装置が高価になるため、低費用で均一な金属ナノ粒子の合成が可能な液相法が主に用いられている。
【0006】
液相法では、電子線を用いて液相にて還元反応を利用する(たとえば、特許文献1参照)。具体的には、例えば、液相法では、撹拌器を備えた反応容器内に金属陽イオン溶液と還元剤溶液とを添加し、これにより核の形成、成長を促して金属ナノ粒子を得る。その他、アーク放電やレーザーアブレーションにより金属ナノ粒子を得る方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−299354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の製造方法では、触媒と担体との分離や、金属ナノ粒子を安定した分散状態で保持することが要求される。よって、金属ナノ粒子からカーボンナノチューブやシリコンナノワイヤを成長させるために、金属ナノ粒子が分散した状態で成膜チャンバ内に金属ナノ粒子を導入する必要があった。
【0009】
一方で、通常の大気中(酸素雰囲気中)では金属ナノ粒子は表面積が広く、激しく酸化するため取り扱いが難しく、金属ナノ粒子を分散安定剤に混ぜて分散状態を安定化させる必要がある。よって、金属ナノ粒子をPVP(ポリビニルピロリドン)等の分散安定剤に混ぜて分散状態を安定化させることが行われていた。したがって、金属ナノ粒子に混ぜ合わされた分散安定剤を除去してから、金属ナノ粒子を種にカーボンナノチューブやシリコンナノワイヤの成長プロセスを開始する必要があった。しかしながら、金属ナノ粒子から分散安定剤を除去するには、分散安定剤を燃やす等多くの手間がかかっていた。
【0010】
上記課題に対して、本発明の目的とするところは、分散安定剤を使用せずに金属ナノ粒子を成膜することが可能な、新規かつ改良された成膜装置、システム及び成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、内部が真空状態に保持され、基板が載置された処理容器と、金属含有原料溶液を超音波により霧化し、霧化された金属含有原料溶液の液滴を前記処理容器内に放出する超音波噴霧器と、前記放出された金属含有原料溶液の液滴が前記処理容器の内部を前記基板に向けて移動する際に通過する空間に配設され、前記放出された金属含有原料溶液の霧状の液滴を熱分解する温度調整器と、を備え、前記熱分解により前記金属含有原料溶液の霧状の液滴から生成された金属ナノ粒子を前記基板に成膜することを特徴とする成膜装置が提供される。
【0012】
かかる構成によれば、超音波噴霧器を用いて金属含有原料溶液を霧化し、霧化された金属含有原料溶液の液滴を処理容器内に放出する。放出された金属含有原料溶液の霧状の液滴は、前記処理容器の内部に設けられた温度調整器により熱分解される。これにより、金属含有原料溶液の霧状の液滴から金属ナノ粒子を生成することができ、生成された金属ナノ粒子をそのまま基板に成膜することができる。以上から、本発明によれば、分散安定剤を使用せずに金属ナノ粒子を成膜することができる。
【0013】
前記超音波噴霧器は、超音波により前記金属含有原料溶液をナノサイズの金属含有原料溶液の液滴に霧化させてもよい。
【0014】
前記処理容器内に還元性ガスを導入し、前記温度調整器の熱及び前記導入された還元性ガスを用いて前記金属含有原料溶液の霧状の液滴を還元反応させて前記金属ナノ粒子を取り出してもよい。
【0015】
前記金属含有原料溶液の液滴は、不活性ガスからなるキャリアガスにより運搬するようにしてもよい。
【0016】
前記温度調整器は、触媒となるタングステンと還元性ガスとを用いて温度調整器化学蒸着法により前記金属ナノ粒子を取り出してもよい。
【0017】
前記基板上に付着する金属ナノ粒子は、単層膜であってもよい。
【0018】
前記超音波噴霧器は、前記処理容器の上部又は内部に配置され、真空状態に保持されていてもよい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、金属含有原料溶液から金属ナノ粒子を生成する成膜装置と、前記成膜装置に連結され、前記成膜装置から搬出された基板を真空搬送する真空搬送機構と、前記真空搬送機構に連結され、前記真空搬送機構を真空搬送された基板を搬入し、前記基板上の金属ナノ粒子からナノ構造体を製造するナノ構造体製造装置と、を備えたシステムであって、前記成膜装置は、内部が真空状態に保持され、基板が載置された処理容器と、金属含有原料溶液を超音波により霧化し、霧化された金属含有原料溶液の液滴を前記処理容器内に放出する超音波噴霧器と、前記放出された金属含有原料溶液の液滴が前記処理容器の内部を前記基板に向けて移動する際に通過する空間に配設され、前記放出された金属含有原料溶液の霧状の液滴を熱分解する温度調整器と、を有し、前記熱分解により前記金属含有原料溶液の霧状の液滴から生成された金属ナノ粒子を前記載置された基板に成膜することを特徴とするシステムが提供される。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、金属含有原料溶液を、超音波噴霧器から出力された超音波により霧化し、霧化された金属含有原料溶液の液滴を内部が真空状態に保持された処理容器内に放出するステップと、前記放出された金属含有原料溶液の液滴が前記処理容器に載置された基板に向けて移動する際に通過する前記処理容器内の空間に配設された温度調整器により、前記放出された金属含有原料溶液の霧状の液滴を熱分解するステップと、前記熱分解により前記金属含有原料溶液の霧状の液滴から生成された金属ナノ粒子を前記載置された基板に成膜するステップと、を含む成膜方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、分散安定剤を使用せずに金属ナノ粒子を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るシステムの全体構成図である。
【図2】同実施形態に係る成膜装置を模式的に示した縦断面図である。
【図3】同実施形態に係るナノチューブ製造装置を模式的に示した縦断面図である。
【図4】同実施形態に係るナノチューブの成長過程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
[システムの全体構成]
まず、本発明の一実施形態に係るシステムの全体構成について、図1を参照しながら説明する。システム10は、成膜装置100、真空搬送機構200及びナノチューブ製造装置300を有する。
【0025】
成膜装置100の内部は真空雰囲気に保持されている。成膜装置100は、金属含有原料溶液から金属ナノ粒子を生成し、この金属ナノ粒子の単層膜をウエハWに成膜する。
【0026】
真空搬送機構200は、成膜装置100とナノチューブ製造装置300との間にて各装置と連結する。ウエハWは、搬送バルブV1を開いて成膜装置100から搬出され、図示しない搬送アーム等の搬送機構を用いて真空搬送機構200内を真空搬送され、搬送バルブV2を開いてナノチューブ製造装置300に搬入される。
【0027】
ナノチューブ製造装置300は、真空搬送機構200から搬入されたウエハW上の金属ナノ粒子を成長させてナノチューブを製造する。ナノチューブ製造装置300はナノ構造体製造装置の一例であり、ナノチューブはナノ構造体の一例である。ナノ構造体の種類としては、金属ナノ粒子の成長物としてナノチューブやナノワイヤ、酸化金属ナノ粒子の成長物、カーボンナノ構造体などが挙げられる。
【0028】
[成膜装置の内部構成]
次に、本実施形態に係る成膜装置100の内部構成について、図2を参照しながら説明する。成膜装置100は、超音波噴霧器110及び処理容器150を有している。超音波噴霧器110は、処理容器150の上部にて処理容器150と一体化している。超音波噴霧器110は、金属含有原料溶液の一例としての金属塩122を超音波により霧化し、霧化された金属塩122の液滴を処理容器150の内部に放出する。本実施形態では、超音波噴霧器110は、処理容器150の上部に配置されているが、処理容器150の内部に配置されていてもよい。
【0029】
超音波霧化装置110は、下部に開口部を有する液タンク112と、この開口部に超音波振動子114とホーン状の金具116とを接続した振動子ユニット118を接合シール用弾性体120によって液密に接合したものである。超音波霧化装置110は、真空状態になっている。液タンク112には、金属塩122及びキャリアガスとしてヘリウムガスが充填されている。
【0030】
金属塩溶液としては、例えば塩化銀、塩化金等の金属ナノ粒子の元となる金属が含まれた溶液が挙げられる。キャリアガスとしては、例えばヘリウムガス等の不活性ガスを使用することができる。ただし、後述する温度調整器152の配置された空間Aを金属塩の液滴が通過する際に熱伝導率がよいキャリアガスとしてヘリウムを用いることが好ましい。
【0031】
超音波霧化装置110は、超音波振動子114に接続された駆動用回路122によって超音波振動子114を振動させ、ホーン状の金具116によって振動を増幅し、金属塩用溶液122の液面を霧化する。これにより、金属塩の液滴が、超音波霧化装置110の底面側からその下部に位置する処理容器150の真空内部に放出され、下方に拡散していく。このようにして、本実施形態では、超音波により金属塩溶液をナノサイズの液滴Mbに霧化することができる。
【0032】
処理容器150の底部には載置台156が設けられている。載置台156の上にはウエハWが載置されている。処理容器150の底部には排気口160が形成されている。排気口160には真空ポンプ等の排気装置158が連結されている。内部は、排気装置158により処理容器150の内部を排気することにより、処理容器150内は真空状態に保たれている。
【0033】
処理容器150の内部中央には、温度調整器152が設置されている。温度調整器152は、触媒反応のある金属のタングステンから形成されたワイヤWirから主に形成されている。ワイヤWirは、タングステンに限られず高温に耐えられる金属(高融点材料)であればよい。ワイヤWirは、処理容器150の内部の空間Aの横方向全体に這い回されている。温度調整器152の配置位置は処理容器150の中央に限られず、処理容器150内に放出された金属塩の液滴Mbが、処理容器150の内部をウエハWに向けて移動する際に通過する空間に配設されていればよい。ただし、温度調整器152の配置が、あまりにウエハWに近いと金属ナノ粒子の成膜の均一性が保たれなくなる。
【0034】
これにより、金属塩の液滴Mbは、温度調整器152の表面近傍を通過するようになっている。ワイヤWirには電源154が接続されている。電源154には、通常、直流電源又は交流電源が用いられる。温度調整器152には電源154から電力が供給される。ワイヤWirは、電源154から出力された電力により所望の高温(例えば、1000℃程度)に加熱され、その温度を維持するように調整される。
【0035】
温度調整器152は、触媒となるタングステンと還元性ガスとを用いて温度調整器化学蒸着法により金属ナノ粒子Maを取り出す。具体的には、高温になっているワイヤWirの近傍を金属塩の液滴Mbが通過すると、金属塩の液滴Mbは、ワイヤWirからの熱により熱分解し、ワイヤWirを形成するタングステンによる触媒反応により酸化反応や還元反応が生じる。例えば、本実施形態では、還元性ガスとして水素ガスHが導入される。そうすると、温度調整器152が配置された空間Aでは、還元反応が起こり、金属塩(塩化銀、塩化金等)が水素と反応して金属となり、金属塩の液滴Mbに含まれるC成分やO成分が分解されて揮発性物質となって金属塩の液滴Mbから分離される。これにより、金属塩の液滴MbからC成分やO成分を取り除き、金属ナノ粒子Maだけを抽出することができる。
【0036】
抽出された金属ナノ粒子Maは、拡散しながら温度調整器152の下方に載置されたウエハWまで到達する。これにより、ウエハW上には、金属ナノ粒子Maが成膜される。これにより、本実施形態では、各金属ナノ粒子Maが上から下へと移動する際の各粒子の拡散を生かして成膜を行う。これにより成膜の均一性を図ることができる。
【0037】
ウエハW上に成膜される金属ナノ粒子Maは、単層膜である。複数層を成膜すると金属ナノ粒子Ma同士がつながってしまい、せっかく超音波噴霧器110を用いてナノサイズの粒子まで小さくしたにもかかわらず、大きな粒子となってウエハW上に成膜されたことになり、後工程でのナノチューブやナノワイヤの種付けという役割を果たさなくなる。よって、ウエハW上に成膜される金属ナノ粒子Maは一層であればよい。よって、本実施形態の成膜装置100にて実施されるプロセスは、通常の成膜プロセスに比べてレートに関して考慮する必要がほとんどないプロセスといえる。したがって、本実施形態の成膜装置100では、その内部構成によって成膜レートが低くなる可能性があったとしても問題はない。
【0038】
なお、還元性ガスは水素ガスH以外の他の還元性ガスを用いることができる。また、キャリアガスは不活性ガスであればどのガスでもよい。ただし、前述の通り、キャリアガスにヘリウムガスを用いることが好ましい。これは、金属塩の液滴Mbをキャリアガスとしてのヘリウムガスにより運搬させ、高温で触媒反応のある金属のワイヤWir近傍の空間Aを通過させるとき、ヘリウムガスは熱伝導率がよいので金属塩の液滴Mbの化学反応を促進しやすいためである。
【0039】
金属ナノ粒子Maとしては例えば、金、銀に限られず、銅、ニッケル、また、複数の金属の合金など金属のナノ粒子体であればいずれであってもよい。酸化金属ナノ粒子であってもよい。酸化金属ナノ粒子としては例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化イリジウム、酸化亜鉛、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。
【0040】
[ナノチューブ製造装置の内部構成]
次に、本実施形態に係るナノチューブ製造装置300の内部構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、本実施形態に係るナノチューブ製造装置としてのRLSA(Radial Line Slot Antenna)プラズマCVD装置である。なお、ナノチューブ製造装置300は、RLSAプラズマCVD装置に限られず、容量結合型(平行平板型)プラズマ処理装置、誘導結合型(ICP:Inductive Coupling Plasma)プラズマ処理装置、電子サイクロトロン方式(ECR:Electron Cyclotron Resonance)のプラズマ処理装置など種々のプラズマ処理装置を使用することができる。
【0041】
前述したように、金属ナノ粒子Maが成膜されたウエハWは、真空状態を維持したまま、真空搬送機構200を通ってRLSAプラズマCVD装置(ナノチューブ製造装置300)内の載置台315まで搬送される。RLSAプラズマCVD装置では、搬入されたウエハW上の金属ナノ粒子を成長させてナノチューブを製造する。
【0042】
RLSAプラズマCVD装置は、天井面が開口された円筒状の反応容器302を有している。天井面の開口には、シャワープレート305が嵌め込まれている。反応容器302とシャワープレート305とは、反応容器302の内壁の段差部とシャワープレート305の下面外周部との間に配設されたOリング310により密閉され、これにより、プラズマ処理を施す処理室Uが形成される。たとえば、反応容器302はアルミニウム等の金属からなり、シャワープレート305はアルミニウム等の金属または誘電体からなり、電気的に接地されている。
【0043】
反応容器302の底部には、ウエハWを載置するサセプタ(載置台)315が絶縁体320を介して設置されている。サセプタ315には、整合器325aを介して高周波電源325bが接続されていて、高周波電源325bから出力された高周波電力により反応容器302の内部に所定のバイアス電圧を印加するようになっている。また、サセプタ315の内部には冷却ジャケット335が設けられ、ウエハWを冷却するために冷却水を供給する。
【0044】
シャワープレート305は、その上部にてカバープレート340により覆われている。カバープレート340の上面には、ラジアルラインスロットアンテナ345が設けられている。ラジアルラインスロットアンテナ345は、多数の図示しないスロットが形成されたディスク上のスロット板345aと、スロット板345を保持するディスク上のアンテナ本体345bと、スロット板345aとアンテナ本体345bとの間に設けられ、アルミナなどの誘電体から形成される遅相板345cと、から構成されている。ラジアルラインスロットアンテナ345には、同軸導波管350を介してマイクロ波発生器355が設置されている。
【0045】
反応容器302には、真空ポンプ(図示せず)が取り付けられていて、ガス排出管360を介して反応容器302内のガスを排出することにより、反応容器302内の圧力を10-4〜10-1Paに保持する。また、載置台315に配設されている図示しない電気加熱部材及び冷却ジャケット335を用いて、ウエハWの板温度を500〜850℃程度に保持する。
【0046】
ガス供給源365は、バルブVの開閉およびマスフローコントローラMFCの開度をそれぞれ制御することにより、所望の濃度のガスを反応容器302の内部に供給するようになっている。
【0047】
この状態で、導波管350を介してマイクロ波を反応容器302内に導入する。また、ガス供給源365からナノチューブ生成用のガスを反応容器302内に導入する。供給されたガスは、マイクロ波のエネルギーにより分解され、プラズマとなる。生成されたプラズマは、ウエハWに衝突し、ウエハW表面で反応する。これにより、図4に示したように、ウエハW上の金属ナノ粒子MaをシードとしてナノチューブMcを成長させることができる。
【0048】
なお、金属ナノ粒子の成長物は、チューブ状であってもワイヤ状であってもよい。これにより、ウエハW上の金属ナノ粒子Maを種として、ナノチューブ又はナノワイヤを成長させることができる。
【0049】
このようにして、本実施形態に係るナノチューブ製造装置300により、図4に示したようにナノチューブMc等のナノ構造体が成長する。ナノ構造体としては、フラーレン、フラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノワイヤ等が主として挙げられる。
【0050】
以上に説明したように、本実施形態に係る成膜装置100では、金属塩溶液にキャリアを混ぜ、超音波噴霧器110にて金属塩溶液を霧化させ、その液滴Mbを処理容器150の内部に放出する。放出された金属塩溶液の霧状の液滴Mbは、処理容器150の内部に設けられた温度調整器152により熱分解される。これにより、金属塩の液滴Mbに含まれるC成分やO成分が分解されて揮発性物質となって処理容器外に排出される。これにより、金属塩の液滴MbからC成分やO成分を取り除き、金属ナノ粒子Maだけを抽出することができる。
【0051】
通常の大気中(酸素雰囲気中)では金属ナノ粒子は表面積が広く、激しく酸化するため取り扱いが難しく、金属ナノ粒子を分散安定剤に混ぜて分散状態を安定化させる必要がある。しかしながら、本実施形態に係るシステム10では、ウエハW上の金属ナノ粒子Maを大気中に暴露することなく、成膜装置100から真空搬送機構200を介してナノチューブ製造装置300まで搬送する。
【0052】
さらに、ナノチューブ製造装置300においても真空雰囲気にて金属ナノ粒子MaからナノチューブMcを成長させる。このように本実施形態ではすべての処理を真空雰囲気中で行うため、金属ナノ粒子用の分散安定剤を不要とすることができる。これにより、成長プロセスを開始する前に分散安定剤を除去する工程をなくすことができる。
【0053】
上記実施形態に係る成膜装置において、各部の動作は互いに関連しており、互いの関連を考慮しながら、一連の動作及び一連の処理として置き換えることができる。これにより、成膜装置の実施形態を、成膜方法の実施形態とすることができる。
【0054】
これにより、金属含有原料溶液を、超音波噴霧器から出力された超音波により霧化し、霧化された金属含有原料溶液の液滴を内部が真空状態に保持された処理容器内に放出するステップと、前記放出された金属含有原料溶液の液滴が前記処理容器に載置された基板に向けて移動する際に通過する前記処理容器内の空間に配設された温度調整器により、前記放出された金属含有原料溶液の霧状の液滴を熱分解するステップと、前記熱分解により前記金属含有原料溶液の霧状の液滴から生成された金属ナノ粒子を前記載置された基板に成膜するステップと、を含む成膜方法の実施形態が実現可能となる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
例えば、上記実施形態では、ナノ構造体製造装置の一例としてのナノチューブ製造装置によりナノチューブを成長させたが、本発明はかかる例に限定されない。本発明に係るナノ構造体製造装置では、ナノ構造体として、フラーレン、フラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノワイヤ等を製造することができる。
【0057】
また、例えば、上記実施形態では、ウエハ上に金属ナノ粒子を成膜したが、本発明はかかる例に限定されず、基板上に金属ナノ粒子を成膜してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 システム
100 成膜装置
110 超音波噴霧器
112 液タンク
114 超音波振動子
116 ホーン状の金具
118 振動子ユニット
120 接合シール用弾性体
122 駆動回路
150 処理容器
152 温度調整器
154 電源
156 載置台
158 排気装置
160 排気口
200 真空搬送機構
300 ナノチューブ製造装置
304 反応容器
306 導波管
308 マイクロ波源
310 ガス供給源
312 ガスライン
314 排気口
316 排気装置
318,320,322 マグネットコイル
Ma 金属ナノ粒子
Mb 金属塩の液滴
Mc ナノチューブ
W ウエハ
Wir ワイヤ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が真空状態に保持され、基板が載置された処理容器と、
金属含有原料溶液を超音波により霧化し、霧化された金属含有原料溶液の液滴を前記処理容器内に放出する超音波噴霧器と、
前記放出された金属含有原料溶液の液滴が前記処理容器の内部を前記基板に向けて移動する際に通過する空間に配設され、前記放出された金属含有原料溶液の霧状の液滴を熱分解する温度調整器と、を備え、
前記熱分解により前記金属含有原料溶液の霧状の液滴から生成された金属ナノ粒子を前記基板に成膜することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記超音波噴霧器は、超音波により前記金属含有原料溶液をナノサイズの金属含有原料溶液の液滴に霧化することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記処理容器内に還元性ガスを導入し、
前記温度調整器の熱及び前記導入された還元性ガスを用いて前記金属含有原料溶液の霧状の液滴を還元反応させて前記金属ナノ粒子を取り出すことを特徴とする請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記金属含有原料溶液の液滴は、不活性ガスからなるキャリアガスにより運搬されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記温度調整器は、触媒となるタングステンと還元性ガスとを用いて温度調整器化学蒸着法により前記金属ナノ粒子を取り出すことを特徴とする請求項3又は4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記基板上に付着する金属ナノ粒子は、単層膜であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記超音波噴霧器は、前記処理容器の上部又は内部に配置され、真空状態に保持されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項8】
金属含有原料溶液から金属ナノ粒子を生成する成膜装置と、
前記成膜装置に連結され、前記成膜装置から搬出された基板を真空搬送する真空搬送機構と、
前記真空搬送機構に連結され、前記真空搬送機構を真空搬送された基板を搬入し、前記基板上の金属ナノ粒子からナノ構造体を製造するナノ構造体製造装置と、を備えたシステムであって、
前記成膜装置は、
内部が真空状態に保持され、基板が載置された処理容器と、
金属含有原料溶液を超音波により霧化し、霧化された金属含有原料溶液の液滴を前記処理容器内に放出する超音波噴霧器と、
前記放出された金属含有原料溶液の液滴が前記処理容器の内部を前記基板に向けて移動する際に通過する空間に配設され、前記放出された金属含有原料溶液の霧状の液滴を熱分解する温度調整器と、を有し、
前記熱分解により前記金属含有原料溶液の霧状の液滴から生成された金属ナノ粒子を前記載置された基板に成膜することを特徴とするシステム。
【請求項9】
金属含有原料溶液を、超音波噴霧器から出力された超音波により霧化し、霧化された金属含有原料溶液の液滴を内部が真空状態に保持された処理容器内に放出するステップと、
前記放出された金属含有原料溶液の液滴が前記処理容器に載置された基板に向けて移動する際に通過する前記処理容器内の空間に配設された温度調整器により、前記放出された金属含有原料溶液の霧状の液滴を熱分解するステップと、
前記熱分解により前記金属含有原料溶液の霧状の液滴から生成された金属ナノ粒子を前記載置された基板に成膜するステップと、を含む成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−178635(P2011−178635A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46426(P2010−46426)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】