説明

成膜装置

【課題】位置合わせ精度を確保しつつ省スペースを実現し、第4世代以上の大型基板にも対応可能な極めて実用性に秀れた成膜装置の提供。
【解決手段】真空槽1内で直立状態に保持された基板2にマスク3を介して成膜材料を付着せしめて成膜を行う成膜装置であって、マスク3を直立状態に取り付けたアライメント枠4を基板2に対して調整移動して、マスク3が基板2に対して適正位置となるようにマスク3と前記基板2との位置合わせを行うアライメント駆動機構を備え、このアライメント駆動機構は、真空槽1の外部にしてその上部側に設けられる上部側駆動機構か若しくは真空槽1の外部にしてその下部側に設けられる下部側駆動機構で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、有機EL表示パネルの製造装置における搬送方式は、基板サイズが例えば第4世代のハーフカットサイズ以下で、重力によるガラス基板のたわみが小さく問題にならないため、フェースダウンの水平搬送が主流となっている。
【0003】
ところで、将来、基板サイズが大きくなる(第4世代以上となる)のは明らかであり、この場合、水平搬送では基板のたわみにより、基板とマスクとの位置合わせに問題が生じることが懸念される。
【0004】
そこで、重力による基板のたわみを軽減するため、基板を垂直状態(直立状態)で搬送する垂直搬送方式を採用することが考えられる。
【0005】
しかしながら、従来の垂直搬送を採用した有機EL表示パネルの製造装置においては、垂直状態で基板(基板トレイ)とマスク(マスクトレイ)とを位置合わせするアライメント駆動機構として、例えば特許文献1に開示されるような水平搬送で使用されていたものと同様の、位置合わせ用の駆動部が基板・マスク面と直角方向に配置されるアライメント駆動機構が採用されており、この駆動機構がチャンバ外方(搬送方向と水平方向に直交する方向)に大きく突出するため、それだけ大きな設置スペースが必要となり好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3789857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、アライメント駆動機構を上下2分割にして剛体としてのチャンバに設置することで、位置合わせ精度を確保しつつ省スペースを実現し、第4世代以上の大型基板にも対応可能な極めて実用性に秀れた成膜装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
真空槽1内で直立状態に保持された基板2にマスク3を介して成膜材料を付着せしめて成膜を行う成膜装置であって、前記マスク3を直立状態に取り付けたアライメント枠4を前記基板2に対して調整移動して、前記マスク3が前記基板2に対して適正位置となるように前記マスク3と前記基板2との位置合わせを行うアライメント駆動機構を備え、このアライメント駆動機構は、前記真空槽1の外部に設けられこの真空槽1の上部側に固定される上部側固定ベース部5と、この上部側固定ベース部5に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な上部側移動ベース部6と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記上部側移動ベース部6に支持され、他端が前記真空槽1の上部に設けた上部貫通孔7を通じて前記真空槽1内の前記アライメント枠4の上部に連結する上部側連結体8とから成る上部側駆動機構か若しくは、前記真空槽1の外部に設けられこの真空槽1の下部側に固定される下部側固定ベース部9と、この下部側固定ベース部9に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な下部側移動ベース部10と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記下部側移動ベース部10に支持され、他端が前記真空槽1の下部に設けた下部貫通孔11を通じて前記真空槽1内の前記アライメント枠4の下部に連結する下部側連結体12とから成る下部側駆動機構で構成し、前記上部側連結体8及び前記下部側連結体12の前記アライメント枠4との連結部は前記上部貫通孔7及び前記下部貫通孔11を夫々気密状態で封止するベローズ34,35を介して前記真空槽1内に設けたことを特徴とする成膜装置に係るものである。
【0010】
また、真空槽1内で直立状態に保持された基板2にマスク3を介して成膜材料を付着せしめて成膜を行う成膜装置であって、前記マスク3を直立状態に取り付けたアライメント枠4を前記基板2に対して調整移動して、前記マスク3が前記基板2に対して適正位置となるように前記マスク3と前記基板2との位置合わせを行うアライメント駆動機構を備え、このアライメント駆動機構は、前記真空槽1の外部に設けられこの真空槽1の上部側に固定される上部側固定ベース部5と、この上部側固定ベース部5に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な上部側移動ベース部6と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記上部側移動ベース部6に支持され、他端が前記真空槽1の上部に設けた上部貫通孔7を通じて前記真空槽1内の前記アライメント枠4の上部に連結する上部側連結体8とから成る上部側駆動機構と、前記真空槽1の外部に設けられこの真空槽1の下部側に固定される下部側固定ベース部9と、この下部側固定ベース部9に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な下部側移動ベース部10と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記下部側移動ベース部10に支持され、他端が前記真空槽1の下部に設けた下部貫通孔11を通じて前記真空槽1内の前記アライメント枠4の下部に連結する下部側連結体12とから成る下部側駆動機構とで構成し、前記上部側連結体8及び前記下部側連結体12の前記アライメント枠4との連結部は前記上部貫通孔7及び前記下部貫通孔11を夫々気密状態で封止するベローズ34,35を介して前記真空槽1内に設けたことを特徴とする成膜装置に係るものである。
【0011】
また、真空槽1内で直立状態に保持された基板2にマスク3を介して成膜材料を付着せしめて成膜を行う成膜装置であって、前記マスク3を直立状態に取り付けたアライメント枠4を前記基板2に対して調整移動して、前記マスク3が前記基板2に対して適正位置となるように前記マスク3と前記基板2との位置合わせを行うアライメント駆動機構を備え、このアライメント駆動機構は、前記真空槽1の外部に設けられこの真空槽1の上部側に固定される上部側固定ベース部5と、この上部側固定ベース部5に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な上部側移動ベース部6と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記上部側移動ベース部6に支持され、他端が前記真空槽1の上部に設けた上部貫通孔7を通じて前記真空槽1内の前記アライメント枠4の上部に連結する上部側連結体8とから成る上部側駆動機構か若しくは、前記真空槽1の外部に設けられこの真空槽1の下部側に固定される下部側固定ベース部9と、この下部側固定ベース部9に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な下部側移動ベース部10と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記下部側移動ベース部10に支持され、他端が前記真空槽1の下部に設けた下部貫通孔11を通じて前記真空槽1内の前記アライメント枠4の下部に連結する下部側連結体12とから成る下部側駆動機構で構成し、前記上部側駆動機構若しくは前記下部側駆動機構に、X方向用駆動装置若しくはY方向用駆動装置またはその双方を設け、このX方向用駆動装置及びY方向用駆動装置により前記上部側移動ベース部6若しくは前記下部側移動ベース部10を上部側固定ベース部5若しくは下部側固定ベース部9に対してX方向及びY方向に移動せしめることで、前記上部側連結体8若しくは前記下部側連結体12を介して前記アライメント枠4をX,Y及びθ方向に調整移動し得るように構成し、前記上部側連結体8及び前記下部側連結体12の前記アライメント枠4との連結部は前記上部貫通孔7及び前記下部貫通孔11を夫々気密状態で封止するベローズ34,35を介して前記真空槽1内に設けたことを特徴とする成膜装置に係るものである。
【0012】
また、真空槽1内で直立状態に保持された基板2にマスク3を介して成膜材料を付着せしめて成膜を行う成膜装置であって、前記マスク3を直立状態に取り付けたアライメント枠4を前記基板2に対して調整移動して、前記マスク3が前記基板2に対して適正位置となるように前記マスク3と前記基板2との位置合わせを行うアライメント駆動機構を備え、このアライメント駆動機構は、前記真空槽1の外部に設けられこの真空槽1の上部側に固定される上部側固定ベース部5と、この上部側固定ベース部5に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な上部側移動ベース部6と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記上部側移動ベース部6に支持され、他端が前記真空槽1の上部に設けた上部貫通孔7を通じて前記真空槽1内の前記アライメント枠4の上部に連結する上部側連結体8とから成る上部側駆動機構と、前記真空槽1の外部に設けられこの真空槽1の下部側に固定される下部側固定ベース部9と、この下部側固定ベース部9に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な下部側移動ベース部10と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記下部側移動ベース部10に支持され、他端が前記真空槽1の下部に設けた下部貫通孔11を通じて前記真空槽1内の前記アライメント枠4の下部に連結する下部側連結体12とから成る下部側駆動機構とで構成し、前記上部側駆動機構及び前記下部側駆動機構に、夫々X方向用駆動装置若しくはY方向用駆動装置またはその双方を設け、このX方向用駆動装置及びY方向用駆動装置により前記上部側移動ベース部6及び前記下部側移動ベース部10を上部側固定ベース部5及び下部側固定ベース部9に対してX方向及びY方向に移動せしめることで、前記上部側連結体8及び前記下部側連結体12を介して前記アライメント枠4をX,Y及びθ方向に調整移動し得るように構成し、前記上部側連結体8及び前記下部側連結体12の前記アライメント枠4との連結部は前記上部貫通孔7及び前記下部貫通孔11を夫々気密状態で封止するベローズ34,35を介して前記真空槽1内に設けたことを特徴とする成膜装置に係るものである。
【0013】
また、前記マスク表面に平行な上下方向であるY方向に前記下部側移動ベース部10を移動せしめる前記下部側駆動機構に設けられる前記Y方向用駆動装置は、前記各下部側移動ベース部10を夫々独立して移動可能に構成し、前記上部側駆動装置には前記Y方向用駆動機構を設けないことを特徴とする請求項4に記載の成膜装置に係るものである。
【0014】
また、前記上部側移動ベース部6は、前記上部側固定ベース部5に対し前記上部側移動ベース部6をX方向及びY方向に案内する直動案内部を介して前記上部側固定ベース部5に連結し、前記上部側連結体8は、前記各上部側移動ベース部6に対し前記上部側連結体をθ方向に案内する回動案内部を介して前記各上部側移動ベース部6に連結し、前記下部側移動ベース部10は、前記下部側固定ベース部9に対し前記下部側移動ベース部10をX方向及びY方向に案内する直動案内部を介して前記下部側固定ベース部9に連結し、前記下部側連結体12は、前記各下部側移動ベース部10に対し前記下部側連結体12をθ方向に案内する回動案内部を介して前記各下部側移動ベース部10に連結したことを特徴とする請求項4,5のいずれか1項に記載の成膜装置に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、位置合わせ精度を確保しつつ省スペースを実現し、第4世代以上の大型基板にも対応可能な極めて実用性に秀れた成膜装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施例の要部の概略説明斜視図である。
【図2】本実施例の要部の概略説明正面図である。
【図3】本実施例の要部の概略説明断面図である。
【図4】本実施例の要部の概略説明断面図である。
【図5】本実施例のガイドローラの拡大概略説明図である。
【図6】本実施例の上部側駆動機構及び下部側駆動機構の概略説明図である。
【図7】本実施例のアライメント操作例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0018】
真空槽1から成る成膜室(チャンバ)内に直立状態で搬送される基板2とマスク3との位置合わせを、上部側移動ベース部6若しくは下部側移動ベース部10を夫々上下の各固定ベース部5,9に対して移動せしめ、この各移動ベース部6,10に設けられる上部側連結体8若しくは下部側連結体12を介してアライメント枠4及びこのアライメント枠4と一体に移動するように取り付けられるマスク3を基板2に対してX,Y及びθ方向に調整移動することで行う。
【0019】
ここで、本発明は、真空槽1(チャンバ)の外部にして上部側若しくは下部側に配置した上部側駆動機構若しくは下部側駆動機構の上部側固定ベース部5若しくは下部側固定ベース部6に対して上部側移動ベース部6若しくは下部側移動ベース部10を、これらを駆動させる駆動装置を用いて移動させることでマスク3と基板2との位置合わせを行うため、従来のようにアライメント駆動機構を搬送方向と水平方向に直交する方向に突出させることなく、真空槽1の上方若しくは下方またはその双方にコンパクトに配置することが可能となり、それだけ平面レイアウト上の設置スペースを可及的に小さくすることができる。
【0020】
また、剛体としてのチャンバに各固定ベース部5,9を設けるため、位置合わせ精度も十分確保することができる。また、中央の空間部分を大きくすることができ、基板冷却機構、マスク冷却機構若しくはマスク吸着機構等の設置がそれだけ容易となる。更に、マスク3の保持モーメントが小さくなり、位置合わせ精度に対する影響を少なくでき、それだけ基板サイズの大型化に対応できるものとなる。従って、駆動機構をそれだけコンパクトにでき、また、この駆動機構と各連結体8,12のアライメント枠4との連結部との距離を短くできるため、それだけ精密な位置合わせ調整移動が可能となる。
【0021】
また、上下の各移動ベース部6,10を移動させるための駆動装置を、真空槽1の上部及び下部に夫々分割して設けることができ、例えば、所定間隔をおいて設けた一対(2つ)の下部側移動ベース部10を下部側固定ベース部9に対してX方向に移動させるボールねじ装置(1軸)及びY方向に移動させるボールねじ装置(各移動ベース部に夫々計2軸)を下部側に設け、上部側移動ベース部6を上部側固定ベース部5に対してX方向に移動させるボールねじ機構(1軸)を上部側に設けるなどすることもできる(各上部側移動ベース部6及び下部側移動ベース部10は、上部側連結体8及び下部側連結体12により連結されるため、連動して移動する)。
【0022】
これにより、各駆動装置による各移動ベース部の移動量を調整設定することで、アライメント枠4をX,Y及びθ方向に自在に調整移動させることができ、しかも、上部側の駆動装置を少なくしてより安定的に真空槽にアライメント駆動機構を設けることなどが可能となる。
【0023】
更に、真空槽1内(真空側)に配置されるのは各連結体8,12のアライメント枠4との連結部のみであり、アライメント駆動機構の摩擦接触部位が全て真空槽1の外部(大気側)に設けられるため、それだけ真空槽1の内部を清浄な雰囲気に保持することができ、成膜される薄膜をより高品質なものとすることが可能となる。
【0024】
よって、本発明は、位置合わせ精度を確保しつつ省スペースを実現し、第4世代以上の大型基板にも対応可能な極めて実用性に秀れたものとなる。
【実施例】
【0025】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0026】
本実施例は、水平方向に対して垂直に立てた垂直直立状態で基板及びマスクを搬送(縦型搬送)する搬送機構を備えた成膜装置(真空蒸着装置)の成膜室に本発明を適用したものである。
【0027】
即ち、本実施例は、真空槽1内で直立状態に保持された基板2にマスク3を介して成膜材料を付着せしめて成膜を行う成膜装置であって、前記マスク3を直立状態に取り付けたアライメント枠4を前記基板2に対して調整移動して、前記マスク3が前記基板2に対して適正位置となるように前記マスク3と前記基板2との位置合わせを行うアライメント駆動機構を備え、このアライメント駆動機構は、前記真空槽1の外部に設けられこの真空槽1の上部側に固定される上部側固定ベース部5と、この上部側固定ベース部5に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な上部側移動ベース部6と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記上部側移動ベース部6に支持され、他端が前記真空槽1の上部に設けた上部貫通孔7を通じて前記真空槽1内の前記アライメント枠4の上部に連結する上部側連結体8とから成る上部側駆動機構と、前記真空槽1の外部に設けられこの真空槽1の下部側に固定される下部側固定ベース部9と、この下部側固定ベース部9に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な下部側移動ベース部10と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記下部側移動ベース部10に支持され、他端が前記真空槽1の下部に設けた下部貫通孔11を通じて前記真空槽1内の前記アライメント枠4の下部に連結する下部側連結体12とから成る下部側駆動機構とで構成し、前記上部側連結体8及び前記下部側連結体12の前記アライメント枠4との連結部は前記上部貫通孔7及び前記下部貫通孔11を夫々気密状態で封止するベローズ34,35を介して前記真空槽1内に設けたものである。
【0028】
各部を具体的に説明する。
【0029】
真空槽1(成膜室)は搬入側及び搬出側の各室と気密状態を保持するようにゲートバルブを介して一直線状に連結されるものであり、適宜な減圧機構を有するものである。
【0030】
また、基板2と対向するように成膜材料の蒸発源が配置されており、成膜する際に、基板2とマスク3とを適正位置に位置合わせした状態で重合させるため、アライメント駆動機構を設けている。
【0031】
本実施例においては、図1に図示したようにガラス基板2は基板トレイ41に取り付けられており、マスク3は枠状のマスクフレーム(図示省略)に取り付けられ、このマスクフレームは枠状のマスクトレイ42に取り付けられている(基板サイズが第5世代、第5.5世代の場合)。
【0032】
尚、基板サイズによっては(例えば第6世代の場合)、マスク3をマスクフレームに取り付けたもの(マスクトレイなしのもの)を採用しても良い。
【0033】
図1〜4に図示したように、マスクトレイ42の上部には断面視略U字状の上部ガイド体43が設けられている。
【0034】
この上部ガイド体43の内部には、真空槽1の内部上面側に設けられるガイドローラ40,44が当接する。また、上部ガイド体43の底面には嵌入孔37が設けられ、後述する位置決めピン36を嵌入することで、アライメント時にマスク3を固定できるように構成している。
【0035】
マスクトレイ42の下部には丸棒状の下部ガイド体45が設けられている。
【0036】
この下部ガイド体45によりマスク3は真空槽1の内部下面側に設けられる搬送ローラ46(Vローラ)にガイドされつつ搬送される。具体的には搬送ローラ46は真空槽1の底面に立設される。下部ガイド体45の底面には嵌入孔39が設けられ、後述する位置決めピン38を嵌入することで、アライメント時にマスク3を固定できるように構成している。
【0037】
また、基板トレイ41にも同様にガイドローラ47が当接する断面視略U字状の上部ガイド体48と、搬送ローラ49(Vローラ)にガイドされつつ搬送される下部ガイド体50が設けられている。この上部ガイド体48の底面及び下部ガイド体50の底面には、基板トレイロックピンが嵌入する嵌入孔が設けられている。
【0038】
また、基板トレイ41の基板2がクランプ固定されるクランプ固定面の反対側(裏面)には、基板トレイ41を冷却する冷却板及びマスク3(インバーなどの磁性材料からなる)と基板2とを密着させるマグネット板を備えた板体51を設けるための凹部が形成されている。
【0039】
また、基板2の表面側角部及びマスク3の裏面側角部(対角位置の一対の角部)には、アライメントマークが夫々設けられている。
【0040】
このアライメントマークは、基板トレイ41及び板体51に設けたアライメントマーク視認用穴52,53を通じてCCDカメラ、レンズ及び照明から成るアライメントカメラ54により視認できるように構成している。アライメントは、このアライメントカメラ54からの映像を元にアライメント駆動機構を制御して行う。
【0041】
アライメント駆動機構について詳述する。
【0042】
前記上部側移動ベース部6は、前記上部側固定ベース部5に対し前記上部側移動ベース部6をX方向及びY方向に案内する直動案内部を介して前記上部側固定ベース部5に連結し、前記上部側連結体8は、前記各上部側移動ベース部6に対し前記上部側連結体をθ方向に案内する回動案内部を介して前記各上部側移動ベース部6に連結し、前記下部側移動ベース部10は、前記下部側固定ベース部9に対し前記下部側移動ベース部10をX方向及びY方向に案内する直動案内部を介して前記下部側固定ベース部5に連結し、前記下部側連結体12は、前記各下部側移動ベース部10に対し前記下部側連結体12をθ方向に案内する回動案内部を介して前記各下部側移動ベース部10に連結している。
【0043】
本実施例においては、上部側固定ベース部5を真空槽1(チャンバ)の上壁面外側に固定状態に設けている。
【0044】
図6,7に図示したように、この上部側固定ベース部5のマスク表面と平行な取付面に、X方向(左右方向)に延設されるレール15に断面視コ字状のガイドブロック16を被嵌して成る2つのLM(Linear Motion)ガイドを介して板状の上部側X方向移動ベース14を設け、この上部側X方向移動ベース14のマスク表面と平行な取付面に、Y方向(上下方向)に延設されるレール18にガイドブロック19を被嵌して成る2つのLMガイドを介して板状の上部側Y方向移動ベース17を設けて上部側移動ベース部6を構成している。
【0045】
上部側X方向移動ベース14の上部側固定ベース部5の前記取付面との対向面はマスク表面と平行な面に設定され、この面にガイドブロック16の取付平坦面が取付固定される。また、上部側Y方向移動ベース17の上部側X方向移動ベース14の前記取付面との対向面はマスク表面と平行な面に設定され、この面にガイドブロック19の取付平坦面が取付固定される。
【0046】
下部側も同様に、下部側固定ベース部9を真空槽1の下壁面外側に固定状態に設けている。
【0047】
この下部側固定ベース部9のマスク表面と平行な取付面に、Y方向に延設されるレール21にガイドブロック22を被嵌して成る2つのLMガイドを介して板状の下部側Y方向移動ベース20を設け、この下部側Y方向移動ベース20のマスク表面と平行な取付面に、X方向に延設されるレール24にガイドブロック25を被嵌して成る2つのLMガイドを介して板状の下部側X方向移動ベース23を設けて下部側移動ベース部10を構成している。
【0048】
下部側Y方向移動ベース20の下部側固定ベース部9の前記取付面との対向面はマスク表面と平行な面に設定され、この面にガイドブロック22の取付平坦面が取付固定される。また、下部側X方向移動ベース23の下部側Y方向移動ベース20の前記取付面との対向面はマスク表面と平行な面に設定され、この面にガイドブロック25の取付平坦面が取付固定される。
【0049】
尚、本実施例においては、バランスを考慮して、上下の駆動機構でX方向移動ベースとY方向移動ベースの上下配置関係を逆にしているが、一致させても良い。
【0050】
また、上部側移動ベース部6及び下部側移動ベース部10は夫々、左右一対ずつ(2つずつ)設けている。
【0051】
この各上部側移動ベース部6のマスク表面と平行な取付面には、内輪に対して外輪を旋回可能に設けたクロスローラベアリング13を介して上部側連結体8の断面視L字状の板材から成る1つの基部27の垂直面を夫々設け、この基部27は各上部側移動ベース部6に架設状態に設けている。
【0052】
下部側も同様に、各下部側移動ベース部10のマスク表面と平行な取付面には、内輪に対して外輪を旋回可能に設けたクロスローラベアリング26を介して下部側連結体12の断面視L字状の板材から成る1つの基部29の垂直面を夫々設けて、この基部29を各下部側移動ベース部6に架設状態に設けている。
【0053】
上部側移動ベース部6に設けた上部側連結体8の基部27の前記垂直面と直交する水平面の左右端部(クロスローラベアリング13に対応する位置)には夫々、マスク3を直立状態で取り付けるアライメント枠4に連結される連結筒体28を立設している。
【0054】
この各連結筒体28の先端部は真空槽1の上部貫通孔7を通じて真空槽1内に導入され、この先端部にはマスク搬送ガイド用の(マスク位置決め固定位置における)ガイドローラ44が設けられアライメント枠4と連結される水平板体30が架設状態に連結される。このガイドローラ44は、図5に図示したように、上部ガイド体43の内底面に当接するローラ体70と、内側面に当接するローラ体71と、これらのローラ体70,71が回転自在に保持されるローラ保持体72と、ローラ保持体72を水平板体30の表面に対して接離動自在に支持する一対のスライドブッシュ73とで構成されている。また、このローラ保持体72はスプリング等の付勢機構により水平板体30から離反する方向に付勢されている。
【0055】
また、水平板体30には、先端にマスク3の嵌入孔37に嵌入される嵌入部を有する位置決めピン36が設けられている。この位置決めピン36は、ガイドローラ44のスライドブッシュ73間に設けられ、また、その先端部がガイドローラ44のローラ保持体72の中央部に設けられる挿通孔から突出するように設けられる。また、位置決めピン36の先端の嵌入部は、常態ではローラ体70,71より突出しないように構成され、ローラ保持体72が付勢機構による付勢力に抗して押し上げられた場合にはローラ体70,71より突出して(露出して)上部ガイド体43の嵌入孔37に嵌入できるように構成されている。
【0056】
従って、後述する位置決めピン38によりマスク3(マスクトレイ42)が上方に押し上げられ、上部ガイド体43によりローラ体70を介してローラ保持体72が押し上げられると位置決めピン36の先端の嵌入部が露出し、上部ガイド体43の嵌入孔37に嵌入されることになる。
【0057】
また、この連結筒体28を覆うように金属製のベローズ34(伸縮管)が設けられる。ベローズ34の一端は上部貫通孔7の周縁部に配置され、他端は水平板体30の上面側に配置され、これにより上部貫通孔7は気密状態で封止される。
【0058】
下部側は、下部側移動ベース部10に設けた下部側連結体12の基部29の前記垂直面と直交する水平面の左右端部(クロスローラベアリング26に対応する位置)には夫々、マスク3を直立状態で取り付けるアライメント枠4に連結される連結筒体31を立設している。
【0059】
この各連結筒体31の先端部は真空槽1の下部貫通孔11を通じて真空槽1内に導入され、この先端部にはアライメント枠4と連結される水平板体33が架設状態に連結される。
【0060】
この連結筒体31の先端部は水平板体33を(隙間がない気密を保持できる状態で)貫通して上方に突出するように設け、この連結筒体31内に連結筒体31の先端から隙間がない気密を保持できる状態で突出する筒状体60を設け、この筒状体60の内部には位置決めピン38が偏心カム機構等の適宜な突没駆動機構61により先端から突没動自在に設けられている。また、位置決めピン38の突出量は、嵌入孔39に嵌入して少なくともマスクトレイ42の下部ガイド体50が搬送ローラ46から離反するように押し上げられ、マスクトレイ42の上部ガイド体43によりローラ体70を介してローラ保持体72を押し上げて位置決めピン36の先端の嵌入部が露出し得る程度に設定する。
【0061】
尚、位置決めピン38の外周面と筒状体60の先端内周面とは気密を保持した状態で突没摺動し得るように構成している。
【0062】
従って、この位置決めピン38を筒状体60の先端から突出せしめてマスク3の嵌入孔39に嵌入すると共に、マスク3(マスクトレイ42)を押し上げて上部ガイド体43によりローラ保持体72を押し上げて露出した位置決めピン36の先端の嵌入部を嵌入孔37に嵌入することで、マスク3を上部側連結体8及び下部側連結体12に対して位置決め固定することができ、マスク3をアライメント枠4と一体に固定することができる。
【0063】
また、この連結筒体31を覆うように金属製のベローズ35が設けられる。ベローズ35の一端は下部貫通孔11の周縁部に配置され、他端は水平板体33の下面側に配置され、これにより下部貫通孔11は気密状態で封止される。
【0064】
また、アライメント枠4はその上下端部が夫々水平板体30,33に連結されている。従って、アライメント枠4と各連結体8,12とは一体で移動することになる。即ち、アライメント枠4は、左右の移動ベース部6,10夫々の移動の影響を受けてX,Y及びθの各方向へ移動する各連結体8,12と共にX,Y及びθの各方向へ移動する。尚、アライメント枠4にはマスク冷却用の冷却機構が設けられている。
【0065】
各移動ベース部6,10を移動させる駆動機構について詳述する。
【0066】
本実施例においては、上部側駆動機構及び下部側駆動機構に、夫々X方向用駆動装置若しくはY方向用駆動装置またはその双方を設け、このX方向用駆動装置及びY方向用駆動装置により前記上部側移動ベース部6及び前記下部側移動ベース部10を上部側固定ベース部5及び下部側固定ベース部9に対してX方向及びY方向に移動せしめることで、前記上部側連結体8及び前記下部側連結体12を介して前記アライメント枠4をX,Y及びθ方向に調整移動し得るように構成している。
【0067】
具体的には、X方向用駆動装置及びY方向用駆動装置としては公知のボールねじ装置を採用している。ボールねじ装置は、正逆回転自在のモーター55及びモーター55により回動するボールねじ56(固定部)と、ボールねじ56に螺合してこのボールねじ56の回動によりボールねじ56の軸方向に移動するナット57(移動部)とで構成される。
【0068】
本実施例においては、図6に図示したように、下部側固定ベース部9(の取付面)の左右端部にモーター55及びボールねじ56を、このボールねじ56が前記Y方向に延設されるレール21同士の間に該レール21と平行となるように固定し、下部側固定ベース部9の左右端部に設けた下部側移動ベース部10の下部側Y方向移動ベース20の下部側固定ベース部9との対向面に夫々前記ボールねじ56と螺合するナット57を取り付けて、Y方向に駆動せしめるように構成している。
【0069】
また、右端部に設けた下部側移動ベース部10の下部側Y方向移動ベース20にモーター55及びボールねじ56を、このボールねじ56が前記X方向に延設されるレール24同士の間に該レール24と平行となるように固定し、下部側X方向移動ベース23の下部側Y方向移動ベース20との対向面に前記ボールねじ56と螺合するナット57を取り付けて、X方向に駆動せしめるように構成している。
【0070】
また、上部側固定ベース部5(の取付面)の一端部(右端部)にモーター55及びボールねじ56を、このボールねじ56が前記X方向に延設されるレール15同士の間に該レール15と平行となるように固定し、上部側固定ベース部5の右端部に設けた上部側移動ベース部6の上部側X方向移動ベース14の上部側固定ベース部5との対向面に夫々前記ボールねじ56と螺合するナット57を取り付けて、X方向に駆動せしめるように構成している。
【0071】
従って、上部側連結体8及び下部側連結体12とアライメント枠4とは一体に移動することから、上記4つのボールねじ装置(以下、下部側X方向用駆動装置をA,下部左側Y方向用駆動装置をB,下部右側Y方向用駆動装置をC,上部側X方向駆動用装置をDとする。)による各移動ベースの移動量を調整することで、上部側連結体8及び下部側連結体12とアライメント枠4とをX,Y及びθ方向に自在に移動させることができる。
【0072】
例えば、図7に図示したように、Aにより下部側X方向移動ベース23を左方向に送り、Dにより上部側X方向移動ベース14を右方向に送り、Bにより左側の下部側Y方向移動ベース20を上方向に送り、Cにより右側の下部側Y方向移動ベース20を下方向に送ることで、クロスローラベアリングを介してアライメント枠4(マスク3)を回転させることもでき、これらA〜Dによる送り方向及び送り量を夫々独立して制御することで、アライメントマークに基づいてマスク3を精密に基板2に対する位置合わせを行うことが可能となる。
【0073】
また、本実施例においては、下部側駆動機構でアライメント枠4及びマスク3の質量を支持する必要があるため、負荷に見合ったエアー圧を供給することで質量をキャンセルしてY軸の駆動負荷を低減させるバランサーシリンダ62を設けている。尚、下部側駆動機構との結合部はアライメント動作を制限しないようにLMガイド63を介して結合している。
【0074】
また、本実施例において、基板2のロック機構及びマスク3に対する往復移動機構は、以下のように構成している。
【0075】
基板2のロック機構は、図3,4に図示したように、基板2(基板トレイ41)を上昇させる偏心カム32と、偏心カム32により上昇させた基板トレイ41の下部ガイド体50の底面の嵌入孔に嵌入する基板トレイロックピン(偏心カム32と共にマスク3に対して往復移動する)と、基板トレイ41が上昇した際、上部ガイド体48の底面に設けたV字溝に嵌入するガイドローラ47のテーパ状ローラ体とで構成している。
【0076】
また、マスク3に対する往復移動機構は、図3,4に図示したように、偏心カム32を支持する支持体66と、ガイドローラ47を支持する支持体69と、これら支持体66,69を真空槽1に対してマスク3の面方向と水平方向に直交する方向にスライド自在に支持するLMガイド67と、これら支持体66,69をスライド移動させるスライド移動機構75とで構成している。このスライド移動機構75は、サーボモーター及びこのサーボモーターにより駆動するボールねじユニットと、このボールねじユニットによりLMガイド76に沿ってマスク3の面方向と水平方向に直交する方向に移動する移動ベース78と、この移動ベース78と支持体66,69とを連結する連結部74とで構成している。
【0077】
図中、符号64は偏心カム32を回転させる回転軸、65は回転軸64を駆動する駆動モーター、68は往復移動機構によりマスク3に対して基板2を押し付けた際の過度の密着を防止するためのスプリング、77はベローズである。
【0078】
以上の構成の本実施例によるアライメント動作を説明する。
【0079】
成膜室にマスク3及び基板2を搬送機構(搬送ローラ及びガイドローラ)により夫々搬送する。尚、本実施例においてはこれらの搬送ローラ及びガイドローラを搬送方向と水平方向に直交する方向にマスク搬送用及び基板搬送用2列並設している。勿論3列以上並設しても良い。
【0080】
成膜室に搬送されたマスク3及び基板2を夫々、マスク3及び基板2をアーム等で機械的に仮位置決めするプリアライメント機構により、位置決めピン36,38及び基板トレイロックピンが夫々嵌入孔に嵌入し得る位置に調整移動する。
【0081】
プリアライメントされたマスク3の嵌入孔37,39に、位置決めピン36,38を嵌入せしめ、マスク3(マスクトレイ42)を各連結体8,12に対して固定する。
【0082】
また、基板2については基板トレイロックピンを上昇させつつ搬送ローラのうちの一部の偏心カム32の回転により基板トレイ41を上昇させてアライメント位置(マスク3と基板2のアライメントマークがある程度重なる位置)に移動せしめ(図3)、このアライメント位置で基板トレイロックピンを嵌入孔に嵌入せしめ、真空槽1に対して固定する。
【0083】
基板2を計測位置に移動させた後、CCDカメラにて取得したアライメントマークの位置情報をもとに駆動制御装置内でマスクトレイ42の位置補正量を算出し、この位置補正量からアライメント枠4及びマスク3の移動量(各X方向用駆動装置及びY方向用駆動装置による送り量)を算出し、この算出した移動量を元に各駆動装置を駆動せしめてアライメント(マスク3の基板2に対する位置合わせ)を行う。
【0084】
アライメント終了後、基板2をマスク3に近接するように往復移動機構により移動せしめ(図4)、基板2とマスク3とを密着させて基板トレイ41の凹部に冷却板及びマグネット板を備えた板体51を設け、この状態でCCDカメラにてアライメントマークの位置情報を取得し、位置合わせが基準寸法内に収まっているかを駆動制御装置で判定し、アライメントマークのズレが基準寸法内であればそのまま成膜を開始し、基準寸法内でなければ前記位置補正量及び前記移動量を算出して基準寸法内になるまで繰り返しアライメントを行う。
【0085】
尚、本実施例においては、マスク3側を動かすことでアライメントを行っているが、基板2側を動かすように同様に構成しても良い。また、本実施例においては、真空槽1の上下に夫々上部側駆動機構及び下部側駆動機構を設けた構成であるが、X方向用駆動装置及びY方向用駆動装置を備えた上部側駆動機構若しくは下部側駆動機構のみを設ける構成としても良い。
【0086】
本実施例は上述のように構成したから、真空槽1から成る成膜室(チャンバ)内に直立状態で搬送される基板2とマスク3との位置合わせを、上部側移動ベース部6及び下部側移動ベース部10を夫々上下の各固定ベース部5,9に対して移動せしめ、この上下の各移動ベース部6,10に設けられる上部側連結体8及び下部側連結体12を介してアライメント枠4及びこのアライメント枠4と一体に移動するように取り付けられるマスク3を基板2に対してX,Y及びθ方向に調整移動することで行うため、従来のようにアライメント駆動機構を搬送方向と水平方向に直交する方向に突出させることなく、真空槽1の上下にコンパクトに分割配置することが可能となり、それだけ平面レイアウト上の設置スペースを可及的に小さくすることができる。
【0087】
また、剛体としてのチャンバに各固定ベース部5,9を設けるため、位置合わせ精度も十分確保することができる。また、中央の空間部分を大きくすることができ、マスク冷却機構や基板吸着機構等の設置がそれだけ容易となる。更に、マスク3の保持モーメントが小さくなり、位置合わせ精度に対する影響を少なくでき、それだけ基板サイズの大型化に対応できるものとなる。従って、駆動機構を上下に分割してそれだけコンパクトにでき、また、この駆動機構と各連結体8,12のアライメント枠4との連結部との距離を短くできるため、それだけ精密な位置合わせ調整移動が可能となる。
【0088】
また、上下の各移動ベース部6,10を移動させるための駆動装置を、真空槽1の上部及び下部に夫々分割して設けることができ、所定間隔をおいて設けた一対(2つ)の下部側移動ベース部10を下部側固定ベース部9に対してX方向に移動させるボールねじ装置(1軸)及びY方向に移動させるボールねじ装置(各移動ベース部に夫々計2軸)を下部側に設け、上部側移動ベース部6を上部側固定ベース部5に対してX方向に移動させるボールねじ機構(1軸)を上部側に設け、各駆動装置による各移動ベース部の移動量を調整設定することで、アライメント枠4をX,Y及びθ方向に自在に調整移動させることができ、しかも、上部側の駆動装置を少なくしてより安定的に真空槽にアライメント駆動機構を設けることなどが可能となる。
【0089】
更に、真空槽1内(真空側)に配置されるのは各連結体8,12のアライメント枠4との連結部のみであり、アライメント駆動機構の摩擦接触部位が全て真空槽1の外部(大気側)に設けられるため、それだけ真空槽1の内部を清浄な雰囲気に保持することができ、成膜される薄膜をより高品質なものとすることが可能となる。
【0090】
よって、本実施例は、位置合わせ精度を確保しつつ省スペースを実現し、第四世代以上の大型基板にも対応可能な極めて実用性に秀れたものとなる。
【符号の説明】
【0091】
1 蒸発源
2 基板
3 マスク
4 アライメント枠
5 上部側固定ベース部
6 上部側移動ベース部
7 上部貫通孔
8 上部側連結体
9 下部側固定ベース部
10 下部側移動ベース部
11 下部貫通孔
12 下部側連結体
34,35 ベローズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽内で直立状態に保持された基板にマスクを介して成膜材料を付着せしめて成膜を行う成膜装置であって、前記マスクを直立状態に取り付けたアライメント枠を前記基板に対して調整移動して、前記マスクが前記基板に対して適正位置となるように前記マスクと前記基板との位置合わせを行うアライメント駆動機構を備え、このアライメント駆動機構は、前記真空槽の外部に設けられこの真空槽の上部側に固定される上部側固定ベース部と、この上部側固定ベース部に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な上部側移動ベース部と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記上部側移動ベース部に支持され、他端が前記真空槽の上部に設けた上部貫通孔を通じて前記真空槽内の前記アライメント枠の上部に連結する上部側連結体とから成る上部側駆動機構か若しくは、前記真空槽の外部に設けられこの真空槽の下部側に固定される下部側固定ベース部と、この下部側固定ベース部に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な下部側移動ベース部と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記下部側移動ベース部に支持され、他端が前記真空槽の下部に設けた下部貫通孔を通じて前記真空槽内の前記アライメント枠の下部に連結する下部側連結体とから成る下部側駆動機構で構成し、前記上部側連結体及び前記下部側連結体の前記アライメント枠との連結部は前記上部貫通孔及び前記下部貫通孔を夫々気密状態で封止するベローズを介して前記真空槽内に設けたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
真空槽内で直立状態に保持された基板にマスクを介して成膜材料を付着せしめて成膜を行う成膜装置であって、前記マスクを直立状態に取り付けたアライメント枠を前記基板に対して調整移動して、前記マスクが前記基板に対して適正位置となるように前記マスクと前記基板との位置合わせを行うアライメント駆動機構を備え、このアライメント駆動機構は、前記真空槽の外部に設けられこの真空槽の上部側に固定される上部側固定ベース部と、この上部側固定ベース部に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な上部側移動ベース部と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記上部側移動ベース部に支持され、他端が前記真空槽の上部に設けた上部貫通孔を通じて前記真空槽内の前記アライメント枠の上部に連結する上部側連結体とから成る上部側駆動機構と、前記真空槽の外部に設けられこの真空槽の下部側に固定される下部側固定ベース部と、この下部側固定ベース部に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な下部側移動ベース部と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記下部側移動ベース部に支持され、他端が前記真空槽の下部に設けた下部貫通孔を通じて前記真空槽内の前記アライメント枠の下部に連結する下部側連結体とから成る下部側駆動機構とで構成し、前記上部側連結体及び前記下部側連結体の前記アライメント枠との連結部は前記上部貫通孔及び前記下部貫通孔を夫々気密状態で封止するベローズを介して前記真空槽内に設けたことを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
真空槽内で直立状態に保持された基板にマスクを介して成膜材料を付着せしめて成膜を行う成膜装置であって、前記マスクを直立状態に取り付けたアライメント枠を前記基板に対して調整移動して、前記マスクが前記基板に対して適正位置となるように前記マスクと前記基板との位置合わせを行うアライメント駆動機構を備え、このアライメント駆動機構は、前記真空槽の外部に設けられこの真空槽の上部側に固定される上部側固定ベース部と、この上部側固定ベース部に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な上部側移動ベース部と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記上部側移動ベース部に支持され、他端が前記真空槽の上部に設けた上部貫通孔を通じて前記真空槽内の前記アライメント枠の上部に連結する上部側連結体とから成る上部側駆動機構か若しくは、前記真空槽の外部に設けられこの真空槽の下部側に固定される下部側固定ベース部と、この下部側固定ベース部に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な下部側移動ベース部と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記下部側移動ベース部に支持され、他端が前記真空槽の下部に設けた下部貫通孔を通じて前記真空槽内の前記アライメント枠の下部に連結する下部側連結体とから成る下部側駆動機構で構成し、前記上部側駆動機構若しくは前記下部側駆動機構に、X方向用駆動装置若しくはY方向用駆動装置またはその双方を設け、このX方向用駆動装置及びY方向用駆動装置により前記上部側移動ベース部若しくは前記下部側移動ベース部を上部側固定ベース部若しくは下部側固定ベース部に対してX方向及びY方向に移動せしめることで、前記上部側連結体若しくは前記下部側連結体を介して前記アライメント枠をX,Y及びθ方向に調整移動し得るように構成し、前記上部側連結体及び前記下部側連結体の前記アライメント枠との連結部は前記上部貫通孔及び前記下部貫通孔を夫々気密状態で封止するベローズを介して前記真空槽内に設けたことを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
真空槽内で直立状態に保持された基板にマスクを介して成膜材料を付着せしめて成膜を行う成膜装置であって、前記マスクを直立状態に取り付けたアライメント枠を前記基板に対して調整移動して、前記マスクが前記基板に対して適正位置となるように前記マスクと前記基板との位置合わせを行うアライメント駆動機構を備え、このアライメント駆動機構は、前記真空槽の外部に設けられこの真空槽の上部側に固定される上部側固定ベース部と、この上部側固定ベース部に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な上部側移動ベース部と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記上部側移動ベース部に支持され、他端が前記真空槽の上部に設けた上部貫通孔を通じて前記真空槽内の前記アライメント枠の上部に連結する上部側連結体とから成る上部側駆動機構と、前記真空槽の外部に設けられこの真空槽の下部側に固定される下部側固定ベース部と、この下部側固定ベース部に対してマスク表面に平行なX方向及びY方向に移動可能な下部側移動ベース部と、一端が前記マスク表面上の回転方向であるθ方向に回転自在に前記下部側移動ベース部に支持され、他端が前記真空槽の下部に設けた下部貫通孔を通じて前記真空槽内の前記アライメント枠の下部に連結する下部側連結体とから成る下部側駆動機構とで構成し、前記上部側駆動機構及び前記下部側駆動機構に、夫々X方向用駆動装置若しくはY方向用駆動装置またはその双方を設け、このX方向用駆動装置及びY方向用駆動装置により前記上部側移動ベース部及び前記下部側移動ベース部を上部側固定ベース部及び下部側固定ベース部に対してX方向及びY方向に移動せしめることで、前記上部側連結体及び前記下部側連結体を介して前記アライメント枠をX,Y及びθ方向に調整移動し得るように構成し、前記上部側連結体及び前記下部側連結体の前記アライメント枠との連結部は前記上部貫通孔及び前記下部貫通孔を夫々気密状態で封止するベローズを介して前記真空槽内に設けたことを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
前記マスク表面に平行な上下方向であるY方向に前記下部側移動ベース部を移動せしめる前記下部側駆動機構に設けられる前記Y方向用駆動装置は、前記各下部側移動ベース部を夫々独立して移動可能に構成し、前記上部側駆動装置には前記Y方向用駆動機構を設けないことを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記上部側移動ベース部は、前記上部側固定ベース部に対し前記上部側移動ベース部をX方向及びY方向に案内する直動案内部を介して前記上部側固定ベース部に連結し、前記上部側連結体は、前記各上部側移動ベース部に対し前記上部側連結体をθ方向に案内する回動案内部を介して前記各上部側移動ベース部に連結し、前記下部側移動ベース部は、前記下部側固定ベース部に対し前記下部側移動ベース部をX方向及びY方向に案内する直動案内部を介して前記下部側固定ベース部に連結し、前記下部側連結体は、前記各下部側移動ベース部に対し前記下部側連結体をθ方向に案内する回動案内部を介して前記各下部側移動ベース部に連結したことを特徴とする請求項4,5のいずれか1項に記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−72478(P2012−72478A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220263(P2010−220263)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(591065413)キヤノントッキ株式会社 (57)
【Fターム(参考)】