説明

所有者識別システム

【課題】無線端末の所有者を識別することができる所有者識別システムを提供する。
【解決手段】所有者識別システム100は、複数の人間が居るショッピングモールなどに設置された6台のLRF16a,16bと、AP14を有する中央制御装置10とを含む。中央制御装置10は、或る人間が所有する携帯端末12と、AP14との電波強度rを測定すると共に、LRF16a,16bによって検出される複数の人間の位置(x,y)からAP14までの距離dを算出する。また、中央制御装置10は、事前学習によって作成した分析テーブルから、電波強度rに対応する平均距離Dと標準偏差σを特定する。そして、中央制御装置10は、人間毎に、携帯端末12を所有する確率を求め、最大値かつ所定値以上である人間を携帯端末12の所有者として推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所有者識別システムに関し、特にたとえば複数の人間から無線端末を持っている任意の一人を識別することができる、所有者識別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、電波受信強度方式によって無線タグの位置を検出する技術が開示されている。無線タグが発した信号は、複数の無線ノードで受信され、無線ノード毎に電波受信強度(RSSI: Received Signal Strength Indicator)が測定される。そして、電波受信強度に基づいて無線タグの位置が検出される。
【0003】
また、非特許文献2には、人追跡システムが開示されており、LRF(レーザーレンジファインダ)によって人の位置と向きと連続的に推定することで、複数の人を同時に追跡する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】小野昌之,福井潔,柳原健太郎,福永茂,原晋介,北山研一 "無線を使った位置検出"(沖テクニカルレビュー 2005年10月/第204号Vol.72 No.4)
【非特許文献2】Dylan F. Glas, Takahiro Miyashita, Hiroshi Ishiguro, and Norihiro Hagita, “Laser Tracking of Human Body Motion Using Adaptive Shape Modeling”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に示す背景技術で、無線タグの代わりに携帯電話などを使用する場合に、次に示す問題点が発生する。通常、携帯電話は、1つのAP(アクセスポイント)にしか接続されないため、非特許文献1に示す背景技術を携帯電話に応用するためは、複数のAPと接続するための専用ソフトを携帯電話にインストールしなければならず、汎用性に欠けてしまう。また、非特許文献2に示す背景技術では、複数の人間を同時に追跡することはできるが、各人間が所有する携帯端末などに関わる情報を得ることはできない。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、所有者識別システムを提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、無線端末の所有者を識別することができる、所有者識別システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、この発明の理解を助けるために記述する実施形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0009】
第1の発明は、複数の人間の位置をそれぞれ検出する検出手段および無線端末との無線通信を確立する基地局を含む、所有者識別システムであって、無線端末と基地局との第1電波強度を測定する測定手段、複数の人間のそれぞれと基地局との距離を算出する距離算出手段、および複数の人間それぞれの距離と第1電波強度とから、無線端末の所有者を推定する推定手段を備える、所有者識別システムである。
【0010】
第1の発明では、所有者識別システム(100)は、複数の人間が居るショッピングモールなどに設置された検出手段(16)と、無線端末(12)との無線通信を確立できる基地局(10,14)を含む。また、たとえば、検出手段はLRFであり、基地局は1台のAP(14)を有する中央制御装置(10)である。
【0011】
測定手段(18,S75,S205)は、たとえば無線端末とAPとの無線通信の第1電波強度を測定する。距離算出手段(18,S123,S233)は、APと人間との位置(x,y)から距離を算出する。推定手段(18,S93,S221)は、複数の人間それぞれの距離と第1電波強度との関係から、無線端末の所有者を推定する。
【0012】
第1の発明によれば、人間の位置と無線通信の電波強度とに基づいて、無線端末の所有者を識別することができる。また、所有者識別システムでは、基地局を1か所にすることで、公共インフラストラクチャをそのまま利用して、複数の人間の中から無線端末の所有者を識別することができる。そのため、この所有者識別システムは、容易に様々な環境で実施することができ、汎用性が高い。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に従属し、基地局までの距離の平均値と標準偏差とを、第1電波強度の強度に応じて対応付けられたデータとして作成する作成手段、およびデータから、測定された第1電波強度に応じて距離の平均値と標準偏差とを特定する特定手段をさらに備え、推定手段は、特定手段によって特定された距離の平均値と標準偏差とから、無線端末の所有者を推定する。
【0014】
第2の発明では、事前学習として第1電波強度と距離とをデータベース(DB)化し、作成手段(18,S39)は、そのデータベースから、一定の幅(区間)で第1電波強度が取り得る値を区切り、その区間毎に、距離の平均値(D)と標準偏差(σ)とが対応付けられたデータ(分析テーブル)として作成する。特定手段(18,S77,S207)は、作成されたデータから、測定された第1電波強度と対応する区間を特定する。そして、推定手段は、特定された区間に対応する距離の平均値と標準偏差とを読み出すことで、無線端末の所有者を推定する。
【0015】
第2の発明によれば、電波強度に対応する平均値および標準偏差から、無線端末を所有する可能性が高い人間を推定できる。
【0016】
第3の発明は、第2の発明に従属し、複数の人間毎に、無線端末を所有する所有確率を算出する所有確率算出手段をさらに備え、推定手段は、所有確率算出手段によって算出された所有確率が第1所定値以上、かつ最大値である人間を所有者として推定する第1推定手段を含む。
【0017】
第3の発明では、所有確率算出手段(18,S81,S83,S87)は、複数の人間毎に、無線端末を所有する所有確率(P)を算出する。そして、第1推定手段(18,S93)は、算出された複数の所有確率のうち、最大値であり、かつ第1所定値(閾値tp)以上であれば、最大値の所有確率である人間を、無線端末の所有者であると推定する。
【0018】
第3の発明によれば、人間毎に無線端末を所有する確率を算出することで、無線端末の所有者を推定することができる。
【0019】
第4の発明は、第3の発明に従属し、所有確率算出手段は、第1所定時間毎に瞬間所有確率を算出する瞬間所有確率算出手段および瞬間所有確率算出手段によって算出された瞬間所有確率を記録する記録手段を含み、所有確率算出手段は、記録手段によって第2所定時間分の瞬間所有確率が記録されたとき、第2所定時間分の瞬間所有確率の総積から所有確率を算出する。
【0020】
第4の発明では、瞬間所有確率算出手段(18,S81)は、たとえば0.1秒の第1所定時間毎に、瞬間所有確率(p)を算出する。また、算出された瞬間所有確率は、記録手段(18,S83)によってメモリ(20)などに記録される。そして、所有確率算出手段は、瞬間所有確率が、たとえば3秒の第2所定時間、蓄積されると、蓄積された瞬間所有確率の総積を、所有確率として算出する。
【0021】
第4の発明によれば、所有者の推定において、瞬間所有確率を蓄積することで、ロバスト性のある所有者識別システムとすることができる。
【0022】
第5の発明は、第4の発明に従属し、第2所定時間の間に、検出手段によって新たな人間が検出された時の第2電波強度に基づいて、新たな人間の瞬間所有確率を設定する設定手段をさらに備える。
【0023】
第5の発明では、設定手段(18,S121)は、瞬間所有確率を蓄積している間に、新たに人間が検出されると、その時の第2電波強度に基づいて、新たに検出された人間に対しても瞬間所有確率を設定する。
【0024】
第5の発明によれば、所有者を推定するまでに変化する人間の位置や人数を考慮して、無線端末の所有者を識別することができる。
【0025】
第6の発明は、第2の発明に従属し、複数のパーティクルを散布する散布手段、特定手段によって特定された距離の平均値および標準偏差と、無線端末と基地局との第1電波強度および複数の人間の位置とに基づいて、各パーティクルの重みを算出する重み算出手段、および重みに応じて複数のパーティクルを比例配分する配分手段をさらに備え、推定手段は、比例配分され、対応するパーティクルの数が第2所定値以上、かつ最大値の人間を所有者として推定する第2推定手段を含む。
【0026】
第6の発明では、散布手段(18,S203)は、複数の人間がいる空間に対応する仮想空間に複数のパーティクルを散布する。重み算出手段(18,S213)は、たとえば関数(f)によって、特定手段によって特定された距離の平均値および標準偏差から算出される人間の重みと、無線端末と基地局との第1電波強度および複数の人間の位置とから、各パーティクルの重みを算出する。配分手段(18,S215)は、たとえば所有者である可能性が高い人間の近傍に、パーティクルが集まるように複数のパーティクルを比例配分する。そして、第2推定手段(18,S221)は、各人間に対応するパーティクルの数において、最大値かつ第2所定値(閾値tpa)以上である人間を所有者として推定する。
【0027】
第6の発明によれば、パーティクルフィルタを用いることで、所有者の識別においてロバスト性が高い、所有者識別システムとすることができる。
【0028】
第7の発明は、第1の発明ないし第6の発明のいずれかに従属し、無線端末は、携帯端末を含み、携帯端末に対して所有者の現在位置を確認する要求がされたとき、現在位置を通知する通知手段をさらに備える。
【0029】
第7の発明では、携帯端末(12)は、たとえばキー入力装置(152)およびLCD(154)を備えている。たとえば、所有者は、携帯端末によって現在位置を確認する確認要求を中央制御装置に対して送信すると、通知手段(18,S145)は、所有者の現在位置を示す地図画像データを携帯端末に対して送付(通知)する。
【0030】
第7の発明によれば、人間は、携帯端末を所持して、所有者識別システムが動作する環境に入るだけで、現在位置を確認できるようになる。
【発明の効果】
【0031】
この発明によれば、所有者識別システムは、公共インフラストラクチャをそのまま利用して、複数の人間の中から無線端末の所有者を識別することができるようになる。
【0032】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1はこの発明の所有者識別システムの構成の一例を示す図解図である。
【図2】図2は図1に示す中央制御装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】図3は図2に示す電波強度履歴DBおよび位置情報履歴DBの構成の一例を示す図解図である。
【図4】図4は図1に示す携帯端末の電気的な構成を示すブロック図である。
【図5】図5は図1および図2に示すLRFの計測領域を示す図解図である。
【図6】図6は図1および図2に示すLRFを利用して取得された人間の移動軌跡の一例を示す図解図である。
【図7】図7は図1に示す中央制御装置10が推定する所有者の一例を示す図解図である。
【図8】図8は図2に示す中央制御装置のメモリに記憶される区間テーブルおよび分析テーブルの一例を示す図解図である。
【図9】図9は図2に示す分析テーブルの或る区間における平均距離と標準偏差との詳細を示す図解図である。
【図10】図10は図2に示す中央制御装置のメモリに記憶される人間IDテーブル、瞬間所有確率テーブルおよび所有確率テーブルの一例を示す図解図である。
【図11】図11は図10に示す瞬間所有確率のガウス分布の一例を示す図解図である。
【図12】図12は図1および図2に示すLRFによって検出される人間からAPまでの距離およびその距離に対応する瞬間所有確率のガウス分布の一例を示す図解図である。
【図13】図13は図2に示すCPUによって設定される瞬間所有確率の変化を示すグラフである。
【図14】図14は図4に示すLCDに表示されるGUIの一例を示す図解図である。
【図15】図15は図2に示す中央制御装置のメモリのメモリマップの一例を示す図解図である。
【図16】図16は図15に示すメモリマップのデータ記憶領域の一例を示す図解図である。
【図17】図17は図2に示す中央制御装置のCPUの電波強度記録処理を示すフロー図である。
【図18】図18は図2に示す中央制御装置のCPUの位置情報記録処理を示すフロー図である。
【図19】図19は図2に示す中央制御装置のCPUの分析処理を示すフロー図である。
【図20】図20は図2に示す中央制御装置のCPUの所有者識別処理を示すフロー図である。
【図21】図21は図2に示す中央制御装置のCPUの第1実施例における推定処理を示すフロー図である。
【図22】図22は図2に示す中央制御装置のCPUの第1実施例における距離算出処理を示すフロー図である。
【図23】図23は図2に示す中央制御装置のCPUの現在位置案内処理を示すフロー図である。
【図24】図24は図2に示す中央制御装置のCPUの第2実施例における推定処理を示すフロー図である。
【図25】図25は図2に示す中央制御装置のCPUの第2実施例における距離算出処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1実施例>
図1を参照して、この実施例の所有者識別システム100は、中央制御装置10、携帯端末12、AP14および複数のLRF16a,16bを備える。無線端末である携帯端末12は、Bluetooth形式の近距離無線通信によってAP14と接続され、中央制御装置10とのデータ通信を行う。また、中央制御装置10は、検出手段であるLRF16a,16bを含む6台のLRFによって、人間A、人間Bおよび人間Cの位置を検出する。
【0035】
なお、ここでは簡単のため人間は3人しか示していないが、中央制御装置10は30人の位置を同時に検出することができる。また、中央制御装置10は31人以上の位置を同時に検出できるようにされてもよい。また、人間A,B,Cを区別する必要がない場合には、まとめて「人間」と言う。そして、中央制御装置10およびAP14は、まとめて「基地局」と呼ばれることがある。
【0036】
図2は中央制御装置10の電気的な構成を示すブロック図である。この図2を参照して、中央制御装置10は、AP14,LRF16a−16fおよびCPU18などを含む。このCPU18は、マイクロコンピュータ或いはプロセサとも呼ばれ、先述したLRF16aおよびLRF16bに加えて、LRF16c,LRF16d,LRF16eおよびLRF16fともそれぞれ接続される。さらに、CPU18は、メモリ20、電波強度履歴DB(データベース)22および位置情報履歴DB24ともそれぞれ接続される。なお、LRF16a−16fを区別する必要がない場合には、まとめて「LRF16」と言う。
【0037】
AP14は、図示しない近距離無線通信装置を含む。近距離無線通信装置は、Bluetooth形式の無線通信を確立するための装置であり、本実施例では環境内に存在する携帯端末12との無線通信を確立し、受信データを携帯端末12から受信したり、送信データを携帯端末12に送信したりする。たとえば、受信データとしては、携帯端末12を所有する所有者の現在位置の確認要求であったりし、AP14は、受信したデータをCPU18に与える。また、送信データとしては、携帯端末12の所有者の現在位置を示す地図データなどであったりする。そして、CPU18は、AP14と携帯端末12との無線通信における電波強度rを測定する。
【0038】
LRF16は、レーザーを照射し、物体(人間も含む)に反射して戻ってくるまでの時間から当該物体までの距離を計測するものである。たとえば、トランスミッタ(図示せず)から照射したレーザーを回転ミラー(図示せず)で反射させて、前方を扇状に一定角度(たとえば、0.5度)ずつスキャンする。ここで、LRF16としては、SICK社製のレーザーレンジファインダ(型式 LMS200)を用いることができる。このレーザーレンジファインダを用いた場合には、距離80mを±15mm程度の誤差で計測可能である。そして、LRF16は、ショッピングモール、会社のフロアまたはアトラクション会場などの様々な環境で設置され、人間の位置を検出する。なお、LRF16の計測距離はモードによって異なるため、中央制御装置10は他のモードの計測距離で人間の位置を検出するように設定されてもよい。
【0039】
メモリ20は、図示は省略をするが、ROM,HDDおよびRAMを含み、ROMおよびHDDには、近距離無線通信に必要な機器アドレスのデータや、中央制御装置10の動作を制御するための制御プログラムが予め記憶される。たとえば、LRF16による人間の検出に必要なプログラムや、携帯端末12との無線通信を確立するためのデータやコマンドを送受信するための通信プログラムなどが記録される。また、RAMは、ワークメモリやバッファメモリとして用いられる。
【0040】
電波強度履歴DB22は、AP14と携帯端末12との無線通信における電波強度rが測定された結果が逐次記録される、データベースである。また、位置情報履歴DB24は、LRF16によって検出された人間の位置を蓄積するためのデータベースであり、人間の位置はx−y座標で示される。なお、電波強度履歴DB22および位置情報履歴DB24のそれぞれは、HDDのような記録媒体を用いて構成される。
【0041】
図3は電波強度履歴DB22および位置情報履歴DB24の構成の一例を示す図解図である。図3(A)を参照して、電波強度履歴DB22は、一定の時間毎に、測定された時刻tsに対応付けられて電波強度rが記録される。たとえば、時刻tsには電波強度r、時刻tsには電波強度r、時刻tsには電波強度rが対応付けられて記録される。また、図3(B)を参照して、位置情報履歴DB24には、一定時間毎に、人間の位置が記録される。たとえば、人間Aでは、時刻Tsには位置(x,y)、時刻Tsには位置(x,y)、時刻Tsには位置(x,y)が対応付けられて、記録される。そして、人間Bおよび人間Cについても同様に記録される。
【0042】
なお、電波強度履歴DB22における時刻tsと、位置情報履歴DB24における時刻Tsとは、必ずしも同じ時刻を示すものではないため、約60秒毎に、同期処理が施される。また、本実施例で測定される電波強度rが取り得る値は、たとえば0〜10000である。
【0043】
図4は携帯端末12の電気的な構成を示すブロック図である。図4を参照して、携帯端末12は、CPU150を含む。CPU150は、中央制御装置10のCPU18と同様に、マイクロコンピュータ或いはプロセッサとも呼ばれ、キー入力装置152、LCD154、メモリ156および近距離無線通信装置158のそれぞれと接続される。
【0044】
キー入力装置152は、方向キーおよび決定キーなどから構成され、LCD154に表示されるGUIに対する、キー操作を受けつける。メモリ156は、中央制御装置10のメモリ20とは異なり、フラッシュメモリおよびRAMを含み、フラッシュメモリには、近距離無線通信を確立するために必要な機器アドレスのデータや、GUIを表示するための画像データなどが記憶されると共に、携帯端末12の動作を制御するための制御プログラムが予め記憶される。また、RAMは、ワークメモリやバッファメモリとして用いられる。
【0045】
また、近距離無線通信装置158は、同一環境内の中央制御装置10などとの無線通信を確立するために利用され、その構成はAP14に含まれる近距離無線通信装置と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0046】
次にLRF16について詳細に説明する。図5を参照して、LRF16の計測範囲は、半径R(R≒80m)の半円形状(扇形)で示される。つまり、LRF16は、その正面方向を中心とした場合に、左右90°の方向を所定の距離(R)以内で計測可能である。
【0047】
また、使用しているレーザーは、日本工業規格 JIS C 6802「レーザー製品の安全基準」におけるクラス1レーザーであり、人の眼に対して影響を及ぼさない安全なレベルである。また、この実施例では、LRF16のサンプリングレートを37Hzとした。これは、歩行などで移動する人間の位置を連続して検出するためである。
【0048】
さらに、先述したように、LRF16は、様々な環境に配置される。具体的には、LRF16a−16fの各々は、検出領域が重なるように配置され、図示は省略するが、床面から約90cmの高さに固定される。この高さは、被験者の胴体と腕(両腕)とを検出可能とするためであり、たとえば、日本人の成人の平均身長から算出される。したがって、中央制御装置10を設ける場所(地域ないし国)や被験者の年齢ないし年代(たとえば、子供,大人)に応じて、LRF16を固定する高さを適宜変更するようにしてよい。なお、本実施例では、設定されるLRF16は6台としたが、2台以上であれば、任意の台数のLRF16が設置されてもよい。
【0049】
このような構成の中央制御装置10では、CPU18がLRF16からの出力(距離データ)に基づいて、パーティクルフィルタを用いて、人間の現在位置の変化を推定する。そして、本実施例では、推定された現在位置の変化は移動軌跡と言う。
【0050】
図6は、LRF16a−16fが設置された或る環境の地図を示す図解図である。図6を参照して、地図が対応する場所は或るショッピングモールである。LRF16a,16c,16dの3台は地図の上側に設置されており、LRF16b,16e,16fの3台は地図の下側に設定されている。また、AP14は、LRF16c,LRF16dの近隣に設置されている。
【0051】
そして、2台以上のLRF16の検出領域が重なる領域は、検出領域Eとして示され、図6では斜線で塗りつぶされた領域である。たとえば、検出領域E内で、人間Aが左から右へ移動すると、移動軌跡Mが示される。
【0052】
ここで、本実施例では、携帯端末12とAP14との無線通信における電波強度r(第1電波強度)と、AP14と各人間の距離(以下、単に距離dと言う)とから、携帯端末12が存在する位置を推定し、その推定された位置に最も近い人物を携帯端末12の所有者と推定する。
【0053】
たとえば、図7を参照して、測定された電波強度rから携帯端末12が存在する位置が、推定領域SEで示される場合に、推定領域SE内に居る人間Aが携帯端末12の所有者であると推定される。つまり、所有者識別システム100は、人間A、人間Bおよび人間Cの中で、人間Aが携帯端末12の所有者であると識別することができる。
【0054】
まず、本実施例では、携帯端末12の所有者を推定するために、事前学習を行う。事前学習は、ショッピングモール内に大勢の人間が居る時間帯に実施し、5人の被験者にそれぞれ1台ずつ携帯端末12を持たせ、時速約3kmで定められたルートを3回ずつ移動させる。そして、被験者がルートを移動するときの電波強度rおよび位置のそれぞれを、電波強度履歴DB22および位置情報履歴DB24のそれぞれに約1分間、記録する。
【0055】
なお、上記事前学習の手法は一例に過ぎず、他の手法で事前学習が行われてもよい。さらに、上記事前学習の手法によって、所有者識別システム100の識別結果が左右されることはない。
【0056】
そして、事前学習によって得られた電波強度rおよび各被験者の位置を分析することで、所定の電波強度rに対応する、距離dの平均値(平均距離D)および標準偏差σから構成される分析テーブルを作成する。
【0057】
分析の前処理として、電波強度履歴DB22に記録されている時刻tsの数列{ts,ts,…}を作成し、時刻tsの数列に対応する電波強度数列{r,r,…}を作成する。また、位置情報履歴DB24に記録されている位置毎に、距離dを三平方の定理によって算出し、電波強度数列と同様に、時刻Tsの数列{Ts,Ts,…}に対応する距離数列{d,d,…}を作成する。
【0058】
また、図8(A)を参照して、電波強度rが取り得る値(0〜10000)を、所定値Rs(たとえば、100)毎に区切ることで決められる複数の区間(区間1,区間2,…,区間K,…)と、その区間に対応する距離dが格納される区間テーブルを作成する。区間テーブルには、複数の区間を示す複数の列が設定される。また、各区間に対応する列には、その区間内の電波強度rに対応する距離dがそれぞれ記録される。なお、変数Kは、任意の区間を指定するための変数である。
【0059】
ここで、記録される各距離dは、先述した電波強度数列と距離数列とから読み出される。また、本実施例では、或る時刻tsと最も近い時刻Tsと対応する電波強度rと距離dとを1つの対として読み出し、区間テーブルに記録する。
【0060】
たとえば、区間1が0〜99までの電波強度rに対応し、区間2が100〜199までの電波強度rに対応し、区間3が200〜299までの電波強度rに対応する。そして、区間1の列には、0〜99までの電波強度rに対応する距離dおよび距離dなどが記録される。同様に、区間2の列には、100〜199までの電波強度rに対応する距離dおよび距離dなどが記録される。そして、区間Kの列には、或る区間に属する電波強度rに対応する距離dおよび距離dなどが記録される。
【0061】
ここで、図9(A)を参照して、或る時刻tsにおける電波強度rtsが250であり、対応する距離dTsが470mmであれば、区間3に470mmが記録される。そして、事前学習によって得られた全ての距離dが区間テーブルに記録されると、区間毎に距離dの平均距離Dと標準偏差σとが算出される。たとえば、区間3では、平均距離Dが510、標準偏差σが100として算出され、区間3における電波強度r3に対する距離d3の確率分布は、図9(B)に示すグラフのようになる。つまり、平均距離Dを中心として、標準偏差σの幅で山なりとなるグラフで示される。なお、各平均距離Dの値については、簡単のため単位を省略して記述する。
【0062】
このようにして、区間毎に算出された平均距離Dと標準偏差σとは、図8(B)に示す分析テーブルに記録される。図8(B)を参照して、分析テーブルの各行には電波強度区間として、複数の区間が設定され、各区間に対応して、平均距離の列と標準偏差の列が設定される。たとえば、区間1には平均距離Dと標準偏差σとが対応するように記録され、区間2には平均距離Dと標準偏差σとが対応するように記録され、区間Kには平均距離Dと標準偏差σとが対応するように記録される。なお、図示はしていないが、区間3には平均距離D3と標準偏差σ3とが対応するように記録される。
【0063】
次に、所有者識別システム100は、事前学習によって得られた分析テーブルを利用して、複数の人間(A,B,C)の中から、携帯端末12の所有者を識別する。具体的な処理としては、検出領域E内で人間を検出し、かつ携帯端末12との無線通信が確立されると、連続変数taによって示される時刻taの電波強度rtaを測定し、分析テーブルから電波強度rtaに対応する平均距離Dと標準偏差σとを特定して読み出す。
【0064】
また、検出された複数の人間それぞれに人間IDを設定し、時刻taにおける人間毎の距離dを算出する。たとえば、図10(A)を参照して、複数の人間は人間IDテーブルによって管理され、人間IDの列には設定された複数の人間ID(1,2,3,…,N,…)が記録され、各人間IDには距離dtaが記録される。たとえば、人間ID:1には距離d1taが対応して記録され、人間ID:2には距離d2taが対応して記録され、人間ID:3には距離d3taが対応して記録され、人間ID:Nには距離dNtaが対応して記録される。そして、時刻taにおいて、各人間が携帯端末12を所有する確率(瞬間所有確率pta)は、数1に示す式によって算出される。なお、数1に示す変数xは、確率分布グラフの積分範囲の座標を示す変数であり、人間の位置(x,y)とは無関係である。
【0065】
【数1】

【0066】
たとえば、図11を参照して、数1によって算出される瞬間所有確率ptaは、斜線で示される積分領域で表される。
【0067】
このように算出された瞬間所有確率pは、人間ID毎に記録される。図10(B)を参照して、瞬間所有確率テーブルには、人間IDに対応して第1所定時間(たとえば、0.1)秒毎に算出された瞬間所有確率pが記録される。たとえば、人間ID:1に対応して、時刻taでは瞬間所有確率pが記録され、時刻taでは瞬間所有確率pが記録される。また、人間ID:2に対応して、時刻taでは瞬間所有確率pが記録され、時刻taでは瞬間所有確率pが記録される。そして、瞬間所有確率pは第2所定時間(たとえば、3秒)間、蓄積される。
【0068】
図12(A)を参照して、たとえば、時刻taにおいて、AP14に対する人間A,B,Cそれぞれの距離dが、距離(A)、距離(B)および距離(C)である場合に、瞬間所有確率P,瞬間所有確率Pおよび瞬間所有確率Pは、図12(B)に示す積分領域によって表わすことができる。図12(B)を参照して、瞬間所有確率P、瞬間所有確率Pおよび瞬間所有確率Pのうち、最も広い(大きい)のは瞬間所有確率Pであるため、或る時刻taでは所有確率Pに対応する人間Aが携帯端末12の所有者であると推定される。
【0069】
ここで、瞬間所有確率pを3秒間蓄積している間に、新たに検出された人間については、その時に測定された電波強度rに基づいて、瞬間所有確率pを設定する。具体的には、新たな人間が検出された時の電波強度r(第2電波強度)を測定し、数2に示す関数PEに基づいて、新たに検出された人間の瞬間所有確率pを設定する。なお、数2における定数Constは所有者管理システム100が適用される環境に依存する値であり、本実施例では電波強度rが約3000〜5000の値となるため、定数Constは100とする。
【0070】
[数2]
PEta(rta)=(Const/rta
ここで、関数PEが出力する値の変化を、図13のグラフに示す。図13を参照して、関数PEが出力する値の変化は反比例のグラフとなり、電波強度rの値が小さい場合に瞬間所有確率pが大きくなり、電波強度rの値が大きい場合に瞬間所有確率pが大きくなる。
【0071】
つまり、測定された電波強度rが大きい時には、AP14の近くに所有者が居ると考えられるため、新たに検出された人間の瞬間所有確率pが小さく設定される。一方、測定された電波強度rが小さい時には、AP14から遠くに所有者が居ると考えられるため、新たに検出された人間の瞬間所有確率pが大きく設定される。
【0072】
なお、閾値を設定し、新たに検出された時の電波強度rが閾値より小さければ、新たに検出された人間の瞬間所有確率pを大きく設定し、その電波強度rが閾値以上であれば、新たに検出された人間の瞬間所有確率pを小さく設定するようにしてもよい。
【0073】
これによって、所有者識別システム100は、所有者を推定するまでに変化する人間の位置や人数を考慮して、所有者を識別することができる。つまり、本実施例では、新たに人間が検出された時の電波強度rに基づいて、瞬間所有確率pを設定することができる。
【0074】
このように瞬間所有確率pが3秒間、蓄積されると、各人間IDに対応する瞬間所有確率pの総積を、所有確率Pとして算出する。たとえば、連続変数taをインクリメントすることで変化する時間が、たとえば0.1秒(第1所定時間)である場合に、各人間の所有確率Pは、数3に示す式によって算出される。なお、本実施例では、数3における定数TAは30となる。
【0075】
【数3】

【0076】
さらに、各人間の所有確率Pは、瞬間所有確率pと同様に、人間ID毎に記録される。図10(C)を参照して、所有確率テーブルには、人間IDに数3に基づいて算出された所有確率Pが記録される。たとえば、人間ID:1に対応して所有確率Pが記録され、人間ID:2に対応して所有確率Pが記録される。
【0077】
そして、所有確率テーブルに記録される所有確率Pにおいて、閾値tp(第1所定値)以上、かつ最大値となる所有確率Pと対応する人間を、携帯端末12の所有者として推定する。つまり、所有者識別システム100は、複数の人間の中から、携帯端末12の所有者を識別する。
【0078】
このようにして瞬間所有確率pを求める作業を、たとえば3秒間行うことで、他の人間が携帯端末12を所有する可能性を考慮することができ、所有者の識別においてロバスト性がある、所有者識別システム100とすることができる。たとえば、或る時刻において、人間Aの瞬間所有確率pと、人間Bの瞬間所有確率pとが近似している場合に、この瞬間にどちらか一方を所有者と推定しても、誤った推定である可能性が高い。ところが、3秒間、蓄積した瞬間所有確率p(p)から所有確率P(P)を算出すると、所有者の推定の精度が向上する。
【0079】
ここで、所有者である人間Aが、所有者識別システム100に対して、携帯端末12のキー入力装置152を利用して現在位置を確認する要求(確認要求)を行うと、中央制御装置10は、所有者が推定されていることを確認した後に、ショッピングモールを示す地図に、人間Aの現在位置を示すアイコンを含む画像データを作成し、携帯端末12に通知(送付)する。つまり、携帯端末12のLCD156には、図14に示すような地図が表示される。これによって、人間Aは、携帯端末12を持って検出領域E内に入るだけで、現在位置を確認できるようになる。
【0080】
また、所有者識別システム100は、所有者の現在位置を利用して、様々なサービスを所有者に提供することも可能である。たとえば、所有者識別システム100は、所有者から所定範囲内にある店舗の情報を携帯端末12に通知することで、使用者は店舗に近づくだけで、店舗の情報を得ることができるようになる。具体的には、ショッピングモールの店舗で特売セールを行っている場合に、所有者は、その店舗に近づくことで、特売セールの情報を得ることができる。
【0081】
なお、所有者が携帯端末12に自身の名前や、性別および趣味などのプロフィールを公開可能なデータとして設定できる場合に、所有者識別システム100は、所有者のプロフィールに基づいて、携帯端末12に情報を通知してもよい。たとえば、所有者識別システム100は、所有者の趣味に基づいて、所有者に情報を通知できるようになる。
【0082】
図15は、図2に示した中央制御装置10のメモリ20のメモリマップ300の一例を示す図解図である。図15に示すように、メモリ20は、プログラム記憶領域302およびデータ記憶領域304を含む。プログラム記憶領域302には、時刻同期プログラム312、電波強度記録プログラム314、位置情報記録プログラム316、分析プログラム318、所有者識別プログラム320および現在位置案内プログラム322などが記憶される。ただし、所有者識別プログラム320は、推定プログラム320aおよび距離算出プログラム320bを含む。
【0083】
時刻同期プログラム312は、電波強度記録プログラム314および位置情報記録プログラム316によって記録される電波強度rおよび人間の位置のそれぞれに対応する時刻を60秒毎に同期させるためのプログラムである。
【0084】
電波強度記録プログラム314は、一定時間毎に、AP14と携帯端末12との電波強度rを測定し、蓄積するためのプログラムである。位置情報記録プログラム316は、一定時間毎に、検出領域E内に居る各人間の位置を記録するプログラムである。
【0085】
分析プログラム318は、電波強度記録プログラム314および位置情報記録プログラム316によって記録された電波強度rおよび人間の位置から、分析テーブルを作成するためのプログラムである。
【0086】
所有者識別プログラム320は、所定時間毎に、サブルーチンである推定プログラム320aを実行し、携帯端末12の所有者を識別するためのプログラムである。また、距離算出プログラム320bは、推定プログラム320aのサブルーチンであり、検出領域E内に居る人間と、AP14との距離dをそれぞれ算出するプログラムである。
【0087】
また、現在位置案内プログラム322は、携帯端末12からの要求に応じて、携帯端末12の所有者の現在位置を通知するためのプログラムである。
【0088】
なお、図示は省略するが、中央制御装置10を動作させるためのプログラムは、近距離無線通信を確立するためのプログラムなども含む。
【0089】
また、図16を参照して、データ記憶領域304には、区間データ330、分析データ332、人間IDデータ334、瞬間所有確率データ336、所有確率データ338、所有者データ340および地図データ342が記憶される。さらに、データ記憶領域304には、所有者フラグ344が設けられる。
【0090】
区間データ330は、図8(A)に示す区間テーブルデータである。また、分析データ332は、図8(B)に示す分析テーブルデータである。そして、区間データ330および分析データ332のそれぞれは、分析プログラム318が実行されることで作成される。
【0091】
人間IDデータ334は、図10(A)に示す人間IDテーブルである。また、瞬間所有確率データ336は、図10(B)に示す瞬間所有確率テーブルである。さらに、所有確率データ338は、図10(C)に示す所有確率テーブルである。そして、人間IDデータ334は、距離算出プログラム320bが実行されることで作成(更新)される。また、瞬間所有確率データ336および所有確率データ338のそれぞれは、推定プログラム320aが実行されることで作成(更新)される。
【0092】
所有者データ340は、推定された所有者の人間IDと、現在位置とが対応付けられたデータである。地図データ342は、ショッピングモールを示す地図の画像データであり、たとえば図14に示す地図である。また、地図データ342は、携帯端末12から現在位置の確認要求がされたときに読み出される、
所有者フラグ344は、所有者が推定されたか否かを判断するためのフラグである。たとえば、所有者フラグ344は、1ビットのレジスタで構成される。所有者フラグ344がオン(成立)されると、レジスタにはデータ値「1」が設定される。一方、所有者フラグ344がオフ(不成立)されると、レジスタにはデータ値「0」が設定される。また、所有者フラグ344は、所有者が推定できればオンになり、所有者が推定できなければオフとなる。
【0093】
また、図示は省略するが、データ記憶領域304には、地図データ342に合成されるアイコン画像などが記憶されると共に、中央制御装置10の動作に必要な他のカウンタやフラグも設けられる。
【0094】
具体的には、中央制御装置10のCPU18は、図17−図23に示す処理を含む、複数の処理を並列的に実行する。
【0095】
図17に示すように、中央制御装置10のCUP18は、電波強度記録処理を実行すると、ステップS1で、測定した時刻tsを記録する。つまり、電波強度rを測定した時刻tsを記録する。続いて、ステップS3では、電波強度rを記録し、ステップS1に戻る。つまり、ステップS1で記録した時刻tsと対応付けて、測定した電波強度rを電波強度履歴DB22に記録する。
【0096】
図18は、位置情報記録処理のフロー図である。図18で示すように、CPU18は、ステップS11で検出した時刻Tsを記録する。つまり、人間の位置を検出した時刻Tsを記録する。続いて、ステップS13では、位置を記録する。つまり、ステップS11で記録した時刻Tsと対応付けて、検出した人間の位置を位置情報履歴DB24に記録する。
【0097】
なお、電波強度記録処理のステップS1で記録される時刻tsと、位置情報記録処理のステップS11で記録される時刻Tsとは、時刻同期プログラム312の処理によって、60秒毎に同期される。
【0098】
図19は、分析処理のフロー図である。図19で示すように、CPU18は、ステップS31で、時刻tsに対応する電波強度数列を作成する。つまり、電波強度履歴DB22から、電波強度rのデータを読み出し、読み出したデータ数を最大値として、時刻tsの変化に対応する電波強度数列を作成する。続いて、ステップS33では、時刻Tsに対応する距離数列を作成する。つまり、位置情報履歴DB24から、各時刻における人間の位置から距離dを算出し、時刻Tsの変化に対応する距離数列を作成する。
【0099】
続いて、ステップS35では、電波強度rが取り得る値(0〜10000)を区切り、各区間に対応する距離dが記録される区間テーブルを作成する。つまり、所定値Rsを区間幅として、図8(A)に示す、区間テーブルを作成する。続いて、ステップS37では、電波強度rと距離dとを対にし、区間テーブルに分類する。つまり、電波強度数列の電波強度rに対応する時刻tsに近い時刻Tsを求め、求めた時刻Tsと対応する距離dを選択する。また、選択された距離dと、電波強度rとを1つの対として読み出す。そして、読み出した電波強度rと距離dとを区間テーブルに分類(記録)する。たとえば、時刻tsに電波強度rが対応し、時刻Tsに距離dが対応する場合に、時刻tsに近い時刻が時刻Tsであれば、電波強度rと距離dとが1つの対となる。さらに、電波強度rが250であり、距離dが470mmであれば、区間テーブルにおける区間3の列に距離d(470mm)が記録される。
【0100】
ステップS39では、区間毎に平均距離Dと標準偏差σとを算出し、分析テーブルを作成して、分析処理を終了する。つまり、ステップS39では、区間テーブルから区間毎に距離dを読み出し、平均距離Dと標準偏差σとを算出する。たとえば、図8(B)に示すように、区間1に対応して平均距離Dおよび標準偏差σを算出し、区間2に対応して平均距離Dおよび標準偏差σを算出し、区間Kに対応して平均距離Dおよび標準偏差σを算出して、分析テーブルを作成する。なお、ステップS39の処理を実行するCPU18は、作成手段として機能する。
【0101】
図20は、所有者識別処理のフロー図である。図20で示すように、CPU18は、ステップS51で、携帯端末12とAP14とが無線接続され、LRF16によって人間が検出されたか否かを判断する。つまり、AP14が携帯端末12との無線通信を確立し、検出領域E内に居る複数の人間が検出されたか否かを判断する。ステップS51で“NO”であれば、つまり携帯端末12とAP14とが接続されず、LRF16によって人間が検出されなければ、ステップS55に進む。一方、ステップS51で携帯端末12とAP14とが無線接続され、LRF16によって人間が検出されれば、ステップS53で推定処理を実行する。また、このステップS53の処理については、後述するため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0102】
続いて、ステップS55では終了操作か否かを判断する。たとえば、所有者識別システム100の管理者が図示しない入力装置などによって所有者識別処理を終了させる操作がされたか否かを判断する。ステップS55で“NO”であれば、つまり終了操作がされていなければステップS51に戻る。一方、ステップS55で“YES”であれば、つまり終了操作がされると所有者識別処理を終了する。
【0103】
図21は、図20に示したステップS53の推定処理のフロー図である。図21で示すように、CPU18は、ステップS71で連続変数taを初期化する。つまり、推定処理では、時刻を表わす連続変数taが時間のカウンタとして用いられるため、時間のカウンタをリセットする。続いて、ステップS73では、第2所定時間が経過したか否かを判断する。つまり、ステップS73−S85の処理を実行して、たとえば3秒間経過したか否かを判断する。また、具体的には、連続変数taがインクリメントされる毎に0.1秒経過するため、連続変数taの値が30以上となったか否かを判断する。ステップS73で“YES”であれば、つまり3秒経過していれば、ステップS87に進む。
【0104】
一方、ステップS73で“NO”であれば、つまり3秒経過していなければステップS75で電波強度rtaを測定する。つまり、連続変数taが示す現時刻の電波強度rtaを測定する。なお、ステップS75の処理を実行するCPU18は、測定手段として機能する。続いて、ステップS77では、分析テーブルから電波強度rtaと対応する区間を特定する。つまり、電波強度rtaと対応する区間を特定することで、電波強度rtaに対応する距離平均Dと標準偏差σとを特定する。たとえば、電波強度rtaが150であれば、区間2が特定され、さらに距離平均Dと標準偏差σとが特定される。なお、ステップS77の処理を実行するCPU18は特定手段として機能する。
【0105】
続いて、ステップS79では距離算出処理を実行する。この距離算出処理については後述するため、ここでの詳細な説明は省略する。続いて、ステップS81では距離dが算出された人間毎に、連続変数taが示す時刻における瞬間所有確率ptaを算出する。つまり、連続変数taが示す現時刻の瞬間所有確率ptaを、ステップS77で特定された距離平均Dおよび標準偏差σと、ステップS79で人間IDテーブル(図10(A)参照)に記録された距離dとに基づいて、LRF16によって検出された人間毎に算出する。たとえば、人間A,B,Cの3人がLRF16によって検出されていれば、瞬間所有確率p,p,pのそれぞれが数1に示す式から算出される。なお、ステップS81の処理を実行するCPU18は、瞬間所有確率算出手段として機能する。
【0106】
続いて、ステップS83では、瞬間所有確率ptaを記録する。つまり、瞬間所有確率テーブル(図10(B)参照)に、検出された人間に対応する人間IDに基づいて、算出された瞬間所有確率ptaを記録する。なお、ステップS83の処理を実行するCPU18は記録手段として機能する。
【0107】
続いて、ステップS85では、連続変数taをインクリメントする。つまり、カウンタとして機能する連続変数taをインクリメント(ta=ta+1)する。なお、ステップS75−S83の処理時間を第1所定時間(0.1秒)とするために、ステップS83の処理の後に待機処理が実行されてもよい。
【0108】
ステップS87では、検出された人間毎に所有確率Pを算出し、所有確率テーブル(図10(C)参照)に記録する。つまり、瞬間所有確率テーブルから、人間ID毎に瞬間所有確率pを読み出し、数3に示す式に基づいて、3秒間分の瞬間所有確率pの総積を所有確率Pとして算出する。そして、算出された所有確率Pを対応する人間IDに基づいて、所有確率テーブルに記録する。なお、ステップS81,S83,S87の処理を実行するCPU18は所有確率算出手段として機能する。
【0109】
続いて、ステップS89では、所有確率Pの最大値を特定する。つまり、所有確率テーブルから、最大値となる所有確率Pを特定する。続いて、ステップS91では、所有確率Pの最大値が閾値tp(第1所定値)以上であるか否かを判断する。つまり、所有確率Pの最大値と対応する人間が、必ずしも所有者であるとは限らないため、閾値処理によって判断する。ステップS91で“NO”であれば、つまり、所有確率Pの最大値が閾値tp以上でなければ、検出された人間の中には携帯端末12の所有者が居ないと考え、推定処理を終了して、所有者識別処理に戻る。
【0110】
一方、ステップS91で“YES”であれば、つまり所有確率Pの最大値が閾値tp以上であれば、ステップS93で特定された所有確率Pと対応する人間が携帯端末12の所有者として推定される。所有確率Pが最大値であり、かつ閾値tp以上であれば、携帯端末12の所有者である可能性が高い。そのため、所有者として推定された人間の人間IDと、その人間の現在位置とが対応付けられて、所有者データ340として記憶される。なお、ステップS93の処理を実行するCPU18は、推定手段に含まれる第1推定手段として機能する。
【0111】
続いて、ステップS95では、所有者フラグ344をオンにして、推定処理を終了する。つまり、携帯端末12の所有者が推定されていることを示すために、所有者フラグ344をオンにする。
【0112】
図22は、図21に示したステップS79の距離算出処理のフロー図である。図22で示すように、CPU18は、ステップS111で連続変数taが初期値であるか否かを判断する。つまり、連続変数taがステップS71で初期化された値であるか否かを判断する。これにより、瞬間所有確率pを3秒間、記録する処理(ステップS73−S85)の処理がループしたかを判断することができる。
【0113】
ステップS111で“YES”であれば、つまり1度もループしていなければ、ステップS113で検出された人間に、人間IDを設定しステップS123に進む。一方、ステップS111で“NO”であれば、つまり1度でもループしていれば、ステップS115で人間が新たに検出されたか否かを判断する。つまり、検出領域E内に新たな人間が入ってきたか否かを判断する。ステップS115で“NO”であれば、つまり人間が新たに検出されなければ、ステップS123に進む。
【0114】
一方、ステップS115で“YES”であれば、つまり人間が新たに検出されれば、ステップS117で新たに検出された人間に人間IDを設定し、人間IDテーブルを更新する。つまり、新たに3人が検出されたときに、人間IDの最大値が3であれば、人間IDを6まで設定し、人間IDテーブルに対して人間ID:4,人間ID:5および人間ID6のそれぞれに対応する行を追加する。
【0115】
続いて、ステップS119では、瞬間所有確率テーブルに新たに検出された人間に対応する行を追加する。たとえば、人間IDの列が人間ID:3に対応する行までしかなければ、ステップS117の処理のように、人間ID:4,人間ID:5および人間ID6のそれぞれに対応する行を追加する。
【0116】
続いて、ステップS121では測定された電波強度rtaに基づいて、瞬間所有確率pを設定する。つまり、上述した数2に示す関数PEによって、新たに検出された人間の瞬間所有確率pを設定する。なお、ステップS121の処理を実行するCPU18は設定手段として機能する。
【0117】
続いて、ステップS123では、検出された人間毎に距離dを算出し人間IDテーブルに記録し、上位ルーチンである推定処理に戻る。たとえば、ステップS123では、人間A,B,Cが検出されていれば、距離dAta、距離dBtaおよび距離dCtaが算出され、それぞれの距離が人間IDテーブルに記録される。なお、ステップS123の処理を実行するCPU18は距離算出手段として機能する。
【0118】
図23は、現在位置案内処理のフロー図である。図23で示すように、CPU20は、ステップS141で、現在位置の確認要求があるか否かを判断する。たとえば、携帯端末12が送信する、現在位置の確認要求を含むデータを受信したか否かを判断する。ステップS141で“NO”であれば、つまり現在位置の確認要求がなければ、ステップS141の処理を繰り返し実行する。一方、ステップS141で“YES”であれば、つまり現在位置の確認要求を受信すれば、ステップS143で所有者フラグ344がオンであるか否かを判断する。つまり、携帯端末12の所有者が推定されているか否かを判断する。
【0119】
ステップ143で“NO”であれば、つまり携帯端末12の所有者が推定されていなければステップS141に戻る。一方、ステップS143で“YES”であれば、携帯端末12の所有者が推定されていれば、ステップS145で現在位置を携帯端末12に通知し、ステップS141に戻る。たとえば、図14に示すように、ショッピングモールを表わす地図に、所有者の現在位置を示すアイコンを合成した地図画像データを携帯端末12に送信(通知)する。なお、所有者の現在位置は、所有者データ340から得ることができる。また、ステップS145の処理を実行するCPU18は通知手段として機能する。
【0120】
このように、第1実施例では、所定の電波強度rに対応する距離平均Dおよび標準偏差σが記録される分析テーブルに基づいて、携帯端末12を所有する可能性が高い人間を推定できるようになる。つまり、所有者識別システム100は、携帯端末12を所有する瞬間所有確率pおよび所有確率Pを算出することで、携帯端末12の所有者を推定することができる。
【0121】
<第2実施例>
第1実施例では、複数の人間毎に算出される所有確率Pによって、所有者を推定したが、第2実施例では、パーティクルフィルタを用いて所有者を推定する。
【0122】
なお、第2実施例では、第1実施例における、図1に示す所有者識別システムの構成を示す図解図、図2に示す中央制御装置10の電気的な構成を示すブロック図、図3に示す電波強度履歴DB22および位置情報履歴DB24の構成の一例を示す図解図、図4に示す携帯端末12の電気的な構成を示すブロック図、図5に示すLRF16の計測領域を示す図解図、図6および図7に示すLRF16a−16fによる検出領域Eを示す図解図、図8に示す区間テーブルおよび分析テーブルの一例を示す図解図、図10(A)に示す人間IDテーブルの図解図、図14に示すLCD156の表示状態を示す図解図、図15および図16に示す中央制御装置10におけるメモリ20のメモリマップを示す図解図、図17に示す電波強度記録処理のフロー図、図18に示す位置情報記録処理のフロー図、図19に示す分析処理のフロー図、図20に示す所有者推定処理のフロー図および図23に示す現在位置案内処理のフロー図が同じであるため、重複した説明は省略する。
【0123】
第2実施例では、図20に示す所有者識別処理において、ステップS53の処理が実行されると、中央制御装置10のCPU18は、図21に示す推定処理のフロー図の代わりに、図24に示す推定処理のフロー図に基づいて処理を開始する。
【0124】
図24に示すように、CPU18は、ステップS201で散布済みか否かを判断する。つまり、すでに推定処理が実行されて、パーティクル(粒子)が散布さている状態か否かを判断する。ステップS201で“YES”であれば、つまりパーティクルが散布されていれば、ステップS205に進む。一方、ステップS201で“NO”であれば、つまりパーティクルがまだ散布されていなければ、ステップS203で、検出領域E内にパーティクルを散布する。たとえば、ステップS203では、実空間にパーティクルを散布するのではなく、検出領域Eに対応する仮想平面にPN(たとえば10000)個のパーティクルを散布する。
【0125】
なお、PN個のパーティクルは、相関のない2つの乱数Ran1および乱数Ran2に基づいて散布される。たとえば、或るパーティクルの座標(位置)は、(Ran1,Ran2)と表わすことができる。また、乱数Ran1および乱数Ran2は、ボックス・ミュラー法によって作成される。また、ステップS203の処理を実行するCPU18は散布手段として機能する。
【0126】
続いて、ステップS205では、Tk(たとえば、0.1)秒間、電波強度rを測定して、中央値rcを算出する。たとえば、本実施例では、0.1秒間に、100個の電波強度rのデータを取得することが可能であり、100個のデータから中央値rcを算出する。なお、電波強度rの平均値raでは、以下の問題が考えられるため、本実施例では中央値rcとした。たとえば、測定された100個の電波強度rの中に少数の外れ値があれば、平均値raでは、その外れ値に左右されてしまい、正確な値を得ることができない。ところが、中央値rcでは、外れ値に左右されないため、正確な値を得ることができる。
【0127】
続いて、ステップS207では、分析テーブルから中央値rcと対応する区間を特定する。たとえば、中央値rcと対応する区間を特定することで、中央値rcに対応する平均距離Dと標準偏差σを特定する。つまり、中央値rcが280であれば区間3が特定され、中央値rcに対応する平均距離D3と標準偏差σ3とが特定される。なお、第2実施例では、ステップS205の処理を実行するCPU18が測定手段として機能する。
【0128】
続いて、ステップS209では、距離算出手段を実行する。また、第2実施例では、CPU18は、図22に示す位置算出処理のフロー図の代わりに、図25に示す位置算出処理のフロー図に基づいて処理を行う。なお、図25に示す位置算出処理のフロー図について、後述するため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0129】
続いて、ステップS211では、人間までの距離が一定値以下のパーティクルを削除する。たとえば、或るパーティクルがどの人間と比べても遠い所にある場合に、そのパーティクルは誰にも属さずに消滅する。続いて、ステップS213では、パーティクルの重みを算出する。つまり、数4に示す関数fの式に基づいて、各パーティクルの重みを算出する。
【0130】
【数4】

【0131】
ここで、関数fにおける(x,y)は、或る位置(x,y)に存在するパーティクルの重さを表わし、変数Imは、検出された人間の総数を表わす。さらに、人間の位置は(x,y)で示され、Wは、各人間の重さである。また、関数f(x,y)は、確率分布を表わしており、Wが正規化される。
【0132】
なお、本実施例では、CPU18による計算のため、算出された各パーティクルの重みを正規化し、重みの浮動小数点が考慮されるようにしてもよい。また、ステップS213の処理を実行するCPU18は重み算出手段として機能する。
【0133】
続いて、ステップS215では、重みに応じてパーティクルを比例配分(リサンプリング)する。つまり、各パーティクルの重みの応じて、PN個のパーティクルが比例配分される。たとえば、所有者である可能性が高い人間の近傍には、多くのパーティクルが配分される。なお、ステップS215の処理を実行するCPU18は配分手段として機能する。
【0134】
続いて、ステップS217では、各人間に対応するパーティクルの数を計測する。つまり、各人間の近傍に有るパーティクルを、その人間に対応するパーティクルとし、人間毎に対応するパーティクルの数を計測する。
【0135】
続いて、ステップS219では、最も多いパーティクルの数は、閾値tpa(第2所定値)以上であるか否かを判断する。つまり、計測された各パーティクルの数のうち最大値を求め、その最大値が閾値tpa以上であるか否かを判断する。ステップS219で“NO”であれば、つまり閾値tpaより小さければステップS225に進む。一方、ステップS219で“YES”であれば、つまり閾値tpa以上であれば、ステップS221でパーティクルが最も多く対応する人間を所有者として推定する。つまり、携帯端末12の所有者として推定する。続いて、ステップS223では所有者フラグ344をオンにする。つまり、携帯端末12の所有者が推定されたことを示すため、所有者フラグ344をオンにする。なお、ステップS221の処理を実行するCPU18は、推定手段に含まれる第2推定手段として機能する。
【0136】
続いて、ステップS225では、人間の移動軌跡Mに基づいて各パーティクルを移動し、推定処理を終了して、所有者識別処理に戻る。つまり、各パーティクルを状態方程式によって移動させ、人間の動き方を予測する。たとえば、本実施例では、数5に示す状態方程式によって各パーティクルを移動させる。
【0137】
【数5】

【0138】
移動する人間は、おおよそは前回と同じ動き方をするであろうが、必ずしも前回と同じ行動をとるわけではない。そのため、数5に示す状態方程式では、乱数Ran1および乱数Ran2のそれぞれによって、x方向およびy方向にランダム要素を加えることで、ロバストに人間の移動に対応させる。
【0139】
また、状態方程式によって、移動したパーティクルの位置は、次の推定処理で反映される。つまり、次の推定処理で算出されるパーティクルの重みは、今回の推定処理で移動したパーティクルの位置に基づいて算出される。
【0140】
このように、第2実施例では、パーティクルフィルタを用いることで、瞬間的に所有者の推定を行うと共に、他の人間が所有者である可能性を残すことができる。これにより、次に推定処理が実行されるときは、他の人間が所有者である可能性も考慮して推定される。
【0141】
たとえば、第1実施例では、他の人間が所有者である可能性は、瞬間所有確率pを蓄積して残さなければならなかったが、第2実施例では、瞬間所有確率pを蓄積しなくて済む。つまり、第2実施例の所有者識別システムは、単純な構成で、ロバスト性の高い、所有者推定を行うことができる。
【0142】
図25は、図24のステップS209距離算出処理のフロー図である。CPU18は、ステップS231では、検出された人間に人間IDを設定する。つまり、ステップS113(図22参照)と同様に、人間IDを設定する。続いて、ステップS233では、検出された人間毎に距離dを算出し、人間IDテーブルに記録し、距離算出処理を終了して、推定処理に戻る。つまり、ステップS127(図22参照)と同様に、距離dを人間IDテーブルに記録する。なお、第2実施例では、ステップS233の処理を実行するCPU18が距離算出手段として機能する。
【0143】
なお、第2実施例の所有者識別システムでも、現在位置案内処理によって、所有者の現在位置を通知することができる。
【0144】
この実施例によれば、所有者識別システム100は、複数の人間が居るショッピングモールなどに設置されたLRF16と、AP14を有する中央制御装置10を含む。中央制御装置10では、或る人間が所有する携帯端末12と、AP14との電波強度rを測定すると共に、LRF16によって検出される複数の人間の位置(x,y)からAP14までの距離dを算出する。
【0145】
また、中央制御装置10は、事前学習によって作成した分析テーブルから、電波強度rに対応する平均距離Dと標準偏差σを特定する。そして、中央制御装置10は、人間毎に、携帯端末12を所有する確率分布を求め、最大値かつ所定値以上である人間を携帯端末12の所有者として推定する。
【0146】
このように、所有者識別システム100は、携帯端末12として市販の携帯電話と、その携帯電話と無線接続されるAP14とをそのまま利用することで、複数の人間の中から無線端末の所有者を識別することができる。そのため、この所有者識別システムは、容易に様々な環境で実施することができ、汎用性が高い。
【0147】
なお、本実施例では、所定値Rs、第1所定時間および第2所定時間のそれぞれを、100、0.1(秒)および3(秒)としたが、この数値はあくまで本実施例における数値であるため、所有者識別システム100が適用される環境や、システム構成などによって、所定値Rs、第1所定時間および第2所定時間が適宜変更されてもよい。さらに、定数Constについては、所有者識別システム100が適用される環境に基づいて、適宜変更されてもよい。
【0148】
また、本実施例では、LRF16を用いているが、LRF16に代えて超音波距離センサやミリ波レーダなどを用いて、人間の位置情報を取得してもよい。さらに、人間の位置は、GPS衛星を利用した位置推定技術が用いられてもよい。また、GPS衛星ではなく、任意に設置されたGPS基地局を利用して、高精度な位置推定がされてもよい。
【0149】
また、近距離無線通信の形式には、Bluetooth形式だけに限らず、ZigBee(登録商標)形式、Wi-Fi(登録商標)形式などの他の無線LAN規格などであってもよい。また、携帯端末12は、携帯電話および携帯音楽プレイヤなどであってもよいし、無線通信を確立できる携帯ゲーム機であってもよい。また、LRF16は、人間の位置だけなく、ロボットなどの移動体の位置も検出できるため、自律移動型のロボットが携帯端末12を所持していてもよい。
【符号の説明】
【0150】
10 …中央制御装置
12 …携帯端末
14 …AP
16a−16f …LRF
18 …CPU
20 …メモリ
22 …電波強度履歴DB
24 …位置情報履歴DB
100 …所有者識別システム
152 …キー入力装置
154 …LCD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の人間の位置をそれぞれ検出する検出手段および無線端末との無線通信を確立する基地局を含む、所有者識別システムであって、
前記無線端末と前記基地局との第1電波強度を測定する測定手段、
複数の人間のそれぞれと前記基地局との距離を算出する距離算出手段、および
前記複数の人間それぞれの距離と前記第1電波強度とから、前記無線端末の所有者を推定する推定手段を備える、所有者識別システム。
【請求項2】
前記基地局までの距離の平均値と標準偏差とを、前記第1電波強度の強度に応じて対応付けられたデータとして作成する作成手段、および
前記データから、測定された第1電波強度に応じて距離の平均値と標準偏差とを特定する特定手段をさらに備え、
前記推定手段は、前記特定手段によって特定された距離の平均値と標準偏差とから、前記無線端末の所有者を推定する、請求項1記載の所有者識別システム。
【請求項3】
前記複数の人間毎に、前記無線端末を所有する所有確率を算出する所有確率算出手段をさらに備え、
前記推定手段は、前記所有確率算出手段によって算出された所有確率が第1所定値以上、かつ最大値である人間を前記所有者として推定する第1推定手段を含む、請求項2記載の所有者識別システム。
【請求項4】
前記所有確率算出手段は、第1所定時間毎に瞬間所有確率を算出する瞬間所有確率算出手段および前記瞬間所有確率算出手段によって算出された瞬間所有確率を記録する記録手段を含み、
前記所有確率算出手段は、前記記録手段によって第2所定時間分の瞬間所有確率が記録されたとき、前記第2所定時間分の瞬間所有確率の総積から所有確率を算出する、請求項3記載の所有者識別システム。
【請求項5】
前記第2所定時間の間に、前記検出手段によって新たな人間が検出された時の第2電波強度に基づいて、前記新たな人間の瞬間所有確率を設定する設定手段をさらに備える、請求項4記載の所有者識別システム。
【請求項6】
複数のパーティクルを散布する散布手段、
前記特定手段によって特定された距離の平均値および標準偏差と、前記無線端末と前記基地局との第1電波強度および前記複数の人間の位置とに基づいて、各パーティクルの重みを算出する重み算出手段、および
前記重みに応じて前記複数のパーティクルを比例配分する配分手段をさらに備え、
前記推定手段は、前記比例配分され、対応するパーティクルの数が第2所定値以上、かつ最大値の人間を前記所有者として推定する第2推定手段を含む、請求項2記載の所有者識別システム。
【請求項7】
前記無線端末は、携帯端末を含み、
前記携帯端末に対して前記所有者の現在位置を確認する要求がされたとき、前記現在位置を通知する通知手段をさらに備える、請求項1ないし6のいずれかに記載の所有者識別システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−239331(P2010−239331A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83957(P2009−83957)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年4月1日付け、支出負担行為担当官 総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「ネットワーク・ヒューマン・インターフェースの総合的な研究開発(ネットワークロボット技術)」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】