説明

手指除菌装置

【課題】電解水で手指を手軽に除菌できる装置、特に、除菌効果が確実な濃度の電解水を使用できる手指除菌装置を提供する。
【解決手段】手指除菌装置1は、筐体10と、筐体10の一部に形成された洗浄空間11と、洗浄空間11に手が挿入されたことを検知する手指検知センサ12と、手指検知センサ12からの手の挿入検知信号に基づき、洗浄空間11に電解水を噴霧するノズル13と、電解水生成部40と、電解水生成部40で生成された電解水をノズル13に供給するポンプ16と、全体制御を司る制御部50を備える。制御部50は、電解水生成部40に接触する原水の塩化ナトリウム濃度を判定して、生成される電解水の濃度が所定レベルとなるように電解水生成部40を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手指除菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水を電気分解して次亜塩素酸を含む水(この水のことを本明細書では「電解水」と称する)を生成する技術は以前から良く知られている。電解水を生成する装置の例は、例えば特許文献1〜4に見ることができる。電解水は物品や空気の除菌に広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−328666号公報(国際特許分類:C02F1/46、C02F1/50)
【特許文献2】特開2002−153872号公報(国際特許分類:C02F1/46)
【特許文献3】特開平8−117752号公報(国際特許分類:C02F1/46)
【特許文献4】特開2005−138044号公報(国際特許分類:C02F1/46)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、インフルエンザ等の病原体が蔓延するのを防ぐため、日常生活のあらゆる場面で手指を清潔に保つことが求められている。本発明は、電解水で手指を手軽に除菌できる装置を提供することを目的とする。特に、除菌効果が確実な濃度の電解水を使用できる手指除菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好ましい実施形態によれば、手指除菌装置は、筐体と、前記筐体の一部に形成された洗浄空間と、前記洗浄空間に手が挿入されたことを検知する手指検知センサと、前記手指検知センサからの手の挿入検知信号に基づき、前記洗浄空間に電解水を噴霧するノズルと、電解水生成部と、前記電解水生成部で生成された電解水を前記ノズルに供給するポンプと、全体制御を司る制御部を備え、前記制御部は、前記電解水生成部に接触する原水の塩化ナトリウム濃度を判定して、生成される電解水の濃度が所定レベルとなるように当該電解水生成部を制御する。
【0006】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記制御部は、電解時間の長さ設定により、生成される電解水の濃度が所定レベルとなるように前記電解水生成部を制御する。
【0007】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記制御部は、電解中、前記電解水生成部の電極間電圧を検知し、所定の電圧変化率となったときに電解を停止させることにより、生成される電解水の濃度が所定レベルとなるように前記電解水生成部を制御する。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記制御部は、前記ノズルに供給される電解水の濃度が所定レベルに達するまでは、電解水噴霧の制御を行わない。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記制御部は、原水の塩化ナトリウム濃度が所定範囲から逸脱している場合、前記筐体の一部に設けられた表示部にその旨の警告表示を行わせるとともに、前記電解水生成部に電解水生成動作を行わせない。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記制御部は、前記ノズルに1回の噴霧で上限量までの電解水を消費させるものであり、前記ノズルに供給可能な電解水量が、前記ノズルに前記上限量の噴霧を規定回数行わせるに足る量を下回ったときは、前記筐体の一部に設けられた表示部にその旨の表示を行わせる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記制御部は、電解水生成用の原水と区別される比較用水に対しても塩化ナトリウム濃度の判定を行う。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記筐体には原水タンクが着脱可能に取り付けられるものであり、前記原水タンク内に設けられた電極より前記電解水生成部が構成される。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記原水タンクは水補充口を下にした倒立状態で前記筐体に取り付けられるものであり、前記水補充口を閉塞するキャップに前記電極が配置される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記電極の中で、一方の極となる電極に対応する受電用端子は前記キャップの外面に配置され、他方の極となる電極に対応する受電用端子は前記原水タンクの側に配置される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記原水タンクは水補充口を下にした倒立状態で前記筐体に取り付けられるものであり、倒立状態で天井部となる箇所に前記電極が配置される。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記原水タンクは水補充口を下にした倒立状態で前記筐体に取り付けられるものであり、前記水補充口に近接した内側壁に前記電極が配置される。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記筐体には受水槽が形成され、前記受水槽内に設けられた電極により前記電解水生成部が構成される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記電極は保護カバーで覆われている。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記受水槽を覆う蓋に塩化ナトリウム投入口が形成されている。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記受水槽に空気吹き込み装置が設けられている。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記筐体に着脱可能な原水タンクが設けられ、前記受水槽は前記原水タンクから原水の供給を受ける。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記制御部は、前記ノズルの電解水噴霧により前記受水槽中に水流が生じているときに前記電解水生成部に電解水生成動作を行わせる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記電解水生成部は、電極を配置したジグザグ状の流路を原水が流れる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記原水タンクは塩化ナトリウム溶解補助装置を備える。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記水補充口に嵌合する枠体であって、当該水補充口に注がれる水を通す開口部を有し、内部に塩化ナトリウムを保持可能なものが前記塩化ナトリウム溶解補助装置を構成する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記水補充口を閉塞するキャップに取付けたバスケットであって、内部に塩化ナトリウムを保持可能であり、且つ、当該原水タンクに所定レベルまで原水が入れられていれば少なくとも先端部が水没するものが前記塩化ナトリウム溶解補助装置を構成する。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記キャップから突き出す攪拌体であって、当該原水タンクに所定レベルまで原水が入れられていれば原水を攪拌することが可能なものが前記塩化ナトリウム溶解補助装置を構成する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、制御部は、電解水生成部に入れられた原水の塩化ナトリウム濃度を判定して、生成される電解水の濃度が所定レベルとなるように電解水生成部を制御するものであるから、除菌を的確に達成できる、過不足のない濃度の電解水で手指を除菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態に係る手指除菌装置の概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係る手指除菌装置のブロック構成図である。
【図3】電解特性のグラフである。
【図4】第1実施形態に係る手指除菌装置の動作を説明する第1のフローチャートである。
【図5】第1実施形態に係る手指除菌装置の動作を説明する第2のフローチャートである。
【図6】塩化ナトリウム濃度と電解水飽和濃度の関係を示す表である。
【図7】第1実施形態に係る手指除菌装置の動作を説明する第3のフローチャートである。
【図8】第2実施形態に係る手指除菌装置の垂直断面図である。
【図9】第2実施形態に係る手指除菌装置を図8と直角に断面した垂直断面図である。
【図10】電解水生成装置における電極配置の一例を示す斜視図である。
【図11】図10の電極の電気的接続の一例を説明する図である。
【図12】図10の電極の電気的接続の他例を説明する図である。
【図13】図10の電極の電気的接続の他例を説明する図である。
【図14】水流の速さと電解水濃度の関係を示す表である。
【図15】電解水生成装置における電極配置の他例を示す斜視図である。
【図16】図15の電極配置の正面図である。
【図17】第3実施形態に係る手指除菌装置の垂直断面図である。
【図18】第3実施形態に係る手指除菌装置の水平断面図である。
【図19】第4実施形態に係る手指除菌装置の垂直断面図である。
【図20】第4実施形態に係る手指除菌装置の水平断面図である。
【図21】第5実施形態に係る手指除菌装置の垂直断面図である。
【図22】第5実施形態に係る手指除菌装置の水平断面図である。
【図23】第6実施形態に係る手指除菌装置の垂直断面図である。
【図24】第6実施形態に係る手指除菌装置の水平断面図である。
【図25】第7実施形態に係る手指除菌装置の垂直断面図である。
【図26】第7実施形態に係る手指除菌装置の水平断面図である。
【図27】第8実施形態に係る手指除菌装置の垂直断面図である。
【図28】第8実施形態に係る手指除菌装置の水平断面図である。
【図29】第9実施形態に係る手指除菌装置の垂直断面図である。
【図30】原水タンクの一例を示す断面図である。
【図31】原水タンクの他例を示す断面図である。
【図32】原水タンクの他例を示す断面図である。
【図33】原水タンクの配置構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図1から図7までの図に基づき第1実施形態に係る手指除菌装置の構造と動作を説明する。
【0031】
手指除菌装置1は、台上に置かれたり、壁に掛けられたりする、直方体形状の筐体10を備える。筐体10の正面下部には大人の両手をゆとりを持って差し込める大きさの洗浄空間11が形成される。洗浄空間11の天井部には、そこに手が挿入されたことを検知する手指検知センサ12と、当該空間に電解水を噴霧するノズル13が配置される。
【0032】
手指除菌装置1は、筐体10に着脱可能に取り付けられる原水タンク20で持ち込まれる原水を、筐体10内に固定構造物として形成された受水槽30で電解水に変える。本明細書では、電解を行う前の水のことを「原水」と称する。原水は、清浄な淡水でありさえすれば、水道水、井戸水、雨水、河川湖沼の採取水のいずれであってもよい。それらに塩化ナトリウムを添加した塩化ナトリウム水溶液も原水である。
【0033】
原水タンク20内の原水は、第1電磁弁14を経由して受水槽30に送られる。受水槽30の内部には電解水生成部40を構成する電極41が配置されており、原水は電解水生成部40により電解水に変えられる。受水槽30の中の電解水は、第2電磁弁15を経由して、ポンプ16によりノズル13に圧送される。
【0034】
筐体10の内部には、原水タンク20の内部の水位を検知する原水タンク水位センサ17が設けられている。原水タンク水位センサ17は、ホール素子等により構成される。受水槽30の内部には、受水槽水位検知センサ18が配置される。受水槽水位検知センサ18は電極41とは別の電極により構成される。
【0035】
手指除菌装置1の制御システムを図2に示す。全体の制御を司るのは制御部50である。制御部50は、マイクロコンピュータを指令中枢とし、各制御要素に対する入出力インターフェースや駆動回路などをも含む。制御部50には、これまでに登場した手指検知センサ12、第1電磁弁14、第2電磁弁15、ポンプ16、原水タンク水位検知センサ17、及び受水槽水位検知センサ18の他、次の構成要素が接続されている。すなわち、筐体10の一部に形成された操作部51と表示部52である。操作部51は各種操作を行うための操作キー群を備え、表示部52は各種表示を行うためのLEDランプ、あるいは液晶表示パネル等を供える。53は各構成要素に電力を供給する商用電源である。
【0036】
手指除菌装置1の制御は、次の考えに基づいて行う。原水に浸った状態の電極41を直流電源に接続して定電流を流すと、電極間に電圧が生じる。これが印加電圧である。印加電圧の初期値は、原水中の塩化ナトリウム濃度に応じて上下する。塩化ナトリウム濃度が高ければ印加電圧は低くなり、塩化ナトリウム濃度が低ければ印加電圧は高くなる。この関係は図6の表に示す通りである。但し、同じ塩化ナトリウム濃度であれば必ず同じ印加電圧が観測されるかというと、そうではない。地点により、入手できる水の水質が異なるので、印加電圧にもばらつきが生じる。図6の表で「地点1の水」「地点2の水」と例示したようなばらつきがあることを認識しておく必要がある。
【0037】
上述のような、各地点で入手できる水(通常の場合、水道水)の水質差によるばらつきはさておき、塩化ナトリウム濃度に比例して印加電圧の初期値が上下することに間違いはないので、印加電圧の初期値から、原水の塩化ナトリウム濃度を判定することができる。これが考えの第1点である。
【0038】
電極41に定電流を流し続けると、原水が電気分解され、図6の表に示す塩化ナトリウム濃度毎の電解水飽和濃度に向かって、時間と共に電解水濃度が上昇する。従って、目標とする電解水濃度が得られる時点で電解を終わればよい。すなわち、原水の塩化ナトリウム濃度に応じて電解時間を設定すればよいということになる。これが考えの第2点である。なお、目標とする電解水濃度は、除菌効果が十分に発揮され、且つ手荒れ等を引き起こさないという観点から、50ppmから100ppmが適当とされる。また、一般に電極の寿命は、電流値と電解時間によって決まるため、電気分解において、電極に印加する電圧を定電流とすると、電極寿命の判定が容易になるという利点が知られている。
【0039】
電解を進めると、原水中の塩化物イオン量が減少する。これにより、印加電圧も上昇する。電解水濃度が飽和値に達すると、印加電圧の上昇も鈍化する。従って、電解水飽和濃度が目標とする電解水濃度範囲に収まっている場合は、印加電圧の変化率(上昇率)を観測し、所定の変化率となったことで電解水濃度が飽和したと判定し、電解を停止することにより、目標とする電解水濃度が得られることになる。これが考えの第3点である。
【0040】
上記の考えに基づき、制御部50の制御動作がプログラムされる。以下その制御動作を図4と図5のフローチャートに基づき説明する。
【0041】
図4は、手指除菌装置1に電解水が用意され、電解水による手指除菌が可能となるまでのフローを示す。ステップ#101では、原水タンク水位検知センサ17が、原水タンク20の中に所定量以上の原水が存在するかどうかの情報を制御部50に伝える。原水量が所定量未満であればステップ#102に進み、制御部50は、表示部52の中で、「渇水」を意味する表示(この通りの言葉が用いられるとは限らないが、その意味を伝える表示。これ以外の表示についても同様とする)をONにする。原水タンク20に原水が補充され、所定量以上の原水量になればステップ#103に進み、制御部50は「渇水」の表示をOFFにする。その後、ステップ#104に進む。
【0042】
ステップ#104では、制御部50は、それ以前の電解水生成及び消費の経緯と、受水槽水位検知センサ18からの情報に基づき、受水槽30の中に存在する水が電解水であるかどうか、またその量は十分かどうかを判定する。十分な量の電解水が存在するとの判定であれば、それ以後のステップには進まない。電解水であるが、量的には不足するとの判定であれば、ステップ#105に進む。
【0043】
ステップ#105では、制御部50は第1電磁弁14を開き、原水タンク20から受水槽30に原水を補給する。受水槽水位検知センサ18が所定の水位を検知した時点で、制御部50は第1電磁弁14を閉じる。そしてステップ#106に進む。
【0044】
ステップ#106では、制御部50は表示部52の中で「電解実行中」を意味する表示をONにする。また手指検知センサ12の動作をOFFにし、洗浄空間11に手が差し込まれても、ノズル13が水を噴霧しないようにする。続いてステップ#107に進む。
【0045】
ステップ#107では、制御部50は電極41に定電流を流し、印加電圧を計測する。その計測値から制御部50は、原水の塩化ナトリウム濃度を判定する。原水の塩化ナトリウム濃度が所定範囲を逸脱していた場合には、飽和するまで電解しても電解水濃度が目標値に届かない程度に塩化ナトリウム濃度が低い場合とか、電解水濃度が目標値に達したことをもって電解を打ち切った場合、手がベタつくほどの量の塩化ナトリウムが残存することになる程度に塩化ナトリウム濃度が高い場合には、ステップ#108に進む。ステップ#108では、制御部50は表示部52の中で「水異常」を意味する表示をONにし、電解を中止する。原水に塩化ナトリウムが添加される、原水が淡水で薄められるなどの改善措置がとられないかぎり、手指除菌装置1は動作を停止したままになる。
【0046】
ステップ#107において、印加電圧が所期の範囲の初期電圧であった場合は、ステップ#109に進む。ステップ#109で制御部50は、ステップ#107で判定した原水の塩化ナトリウム濃度に基づき、電解時間を設定する。そして本格的に電解を開始する。
【0047】
電圧の印加は、1対の電極41が断続的に(例えば1時間毎に)交互に逆極性となるように行われる。水が塩化物イオンを含む水道水であれば、次のような電気化学反応が生じる。
<陽極側>
4HO−4e→4H+O↑+2H
2Cl→Cl+2e
O+Cl←→HClO+H+Cl
<陰極側>
4HO+4e→2H↑+4OH
<電極間>
+OH→H
上記反応により、除菌作用と脱臭作用のある次亜塩素酸(HClO)や活性酸素を含む電解水が生まれる。
【0048】
電解の初期には、電解水の濃度は直線的に上昇する。原水として、清浄な淡水に塩化ナトリウムを添加した水を使用する場合、淡水の水質の影響はほとんどなく、水質差による飽和までの時間差が影響しないようにすることができる。
【0049】
ステップ#110で制御部50は、電解電圧(印加電圧)が所定値となっているかどうかをチェックする。所定値から大幅に逸脱していればステップ#111に進む。ステップ#111で制御部50は、表示部52の中で「異常発生」を意味する表示をONにし、電解を中止する。
【0050】
ステップ#110において、電解電圧が所定値を保っていれば、ステップ#112に進む。ステップ#112で制御部50は、設定した電解時間が経過したかどうかをチェックする。設定した電解時間が経過していなければステップ#110に戻り、設定した電解時間が経過していればステップ#113に進む。
【0051】
ステップ#113で制御部50は、電極41への通電を断ち、電解を停止すると共に、表示部52の「電解実行中」の表示をOFFにする。さらに、表示部52の「使用可能」を意味する表示をONにし、手指検知センサ12の動作をONにする。これにより、洗浄空間11に手が差し込まれれば電解水を噴霧する準備が整ったことになる。
【0052】
ステップ#107で判定した原水の塩化ナトリウム濃度が、それから生成した電解水の飽和濃度が目標とする電解水濃度範囲に収まる程度の値であれば、ステップ#109で、電解時間の設定に代え、「電圧変化率」をチェック対象として設定することができる。そしてステップ#110で所定の電圧変化率が観測されれば、電解水濃度が飽和値に達した、すなわち目標とする電解水濃度が得られたと判定し、ステップ#113に進む。
【0053】
このように、電解時間を定めるのでなく、電解が飽和したことを電解終了の判断基準とすることにより、塩化物イオンを過不足無く次亜塩素酸に変換でき、特に原水として、水道水を含む淡水に塩化ナトリウムを添加したものを使用する場合、添加する塩化ナトリウムを最小限にとどめることができ、この点において有効である。
水質差による飽和までの時間差の影響をゼロにすることができる。
【0054】
図5は、電解水による手指除菌が可能となってからのフローを示す。ステップ#121では、手指検知センサ12が、洗浄空間11に手が差し込まれたという情報を制御部50に伝える。これを受けて制御部50は、ステップ#122で第2電磁弁15を開く。続くステップ#123で制御部50は、ポンプ16を運転し、受水槽30の中の電解水をノズル13に圧送させる。これによりノズル13から洗浄空間11に電解水が噴霧されるので、使用者はそれを手に受け、手指をもみ合わせて、手指の除菌を行うことができる。
【0055】
ステップ#124で制御部50は、手指検知センサ12が手指を検知し続けているかどうかをチェックする。もはや手指を検知していなければステップ#126に進み、制御部50はポンプ16を停止する。第2電磁弁15も閉じる。
【0056】
ステップ#124で手指検知センサ12が手指を検知し続けていれば、ステップ#125に進む。ステップ#125で制御部50は、ポンプ16の運転開始以来所定時間が経過したかどうかをチェックする。所定時間が経過していなければステップ#124に戻り、所定時間が経過していればステップ#126に進む。所定時間が経過するまでポンプ16の運転を続けたときが、ノズル13の1回の噴霧で電解水が消費される量の上限ということになる。所定時間が経過するまでに洗浄空間11から手が引き抜かれれば、その時点で電解水の噴霧は停止するので、電解水の消費が上限量に満たなかったことになる。
【0057】
ステップ#126でポンプ16が停止した後、ステップ#127に進む。ステップ#127で制御部50は、受水槽水位検知センサ18からの情報に基づき、受水槽30の中の電解水の量を判定する。判定した電解水量が所定量を下回っていればステップ#128に進む。そして受水槽30に原水を補給するところから、図4のフローが再開される。
【0058】
ステップ#127で判定した電解水量が所定量以上であればステップ#129に進む。
ステップ#129で制御部50は、ノズル13に供給可能な電解水量、すなわち受水槽30に残存する電解水量が、ノズル13に上限量の噴霧を規定回数行わせるに足る量を下回っているかどうかを判定する。下回っていないとの判定であればステップ#121に戻り、下回ったとの判定であればステップ#130に進む。
【0059】
ステップ#130で制御部50は、表示部52の中で「電解水残量小」を意味する表示をONにする。そしてステップ#121に戻る。「電解水残量小」の表示を見た使用者は、原水タンク20への原水補給などの行動をとることができる。
【0060】
以上説明した構成では、塩化ナトリウム濃度の測定は、受水槽30の中の原水、すなわち電解水生成用の水についてのみ行うこととしていた。受水槽30以外の場所に比較用の水を用意しておき、その水の塩化ナトリウム濃度を比較対象として判定する制御を組み立てることも可能である。そのような制御の例を図7に基づき説明する。
【0061】
図7は、図4と同様、電解水による手指除菌が可能となるまでのフローを示すが、そのフローは図4に比べ簡略化された形になっている。ステップ#141で制御部50は、受水槽30の中の原水の塩化ナトリウム濃度を判定する。この場合の原水は、水道水等に塩化ナトリウムを添加して、塩化ナトリウム濃度を調整した水であるものとする。原水の塩化ナトリウム濃度が所定範囲を逸脱していた場合はステップ#143に進み、制御部50は電解を中止する。原水の塩化ナトリウム濃度が所定範囲内であればステップ#142に進む。
【0062】
ステップ#142で制御部50は、比較用水の印加電圧の初期値情報を測定する。比較用水は、塩化ナトリウムを添加しない、元のままの水道水等であるものとする。得られた印加電圧の初期値情報を原水のそれと比較し、差がなければ、必要な塩化ナトリウムが原水に添加されていないと判定し、ステップ#143に進む。ステップ#143では制御部50が電解を中止する。次いでステップ#144に進み、制御部50は表示部52の中で「異常発生」を意味する表示をONにする。
【0063】
ステップ#142で原水と比較用水の印加電圧の初期値同士の間に差があることが確認されれば、ステップ#145に進む。ステップ#145で制御部50は、原水の塩化ナトリウム濃度を正式に判定する。その後ステップ#146に進む。
【0064】
ステップ#146で制御部50は、電解を開始させる。続くステップ#147で制御部50は、印加電圧の変化率をチェックする。所定の電圧変化率が観測されなければステップ#146に戻る。所定の電圧変化率が観測されれば、電解水濃度が飽和値に達した、すなわち目標とする電解水濃度が得られたと判定し、ステップ#148に進む。ステップ#148で制御部50は、電極41への通電を断ち、電解を停止する。続くステップ#149で制御部50は、表示部52の中の「電解完了」を意味する表示をONにする。
【0065】
なお、ステップ#146で電解時間を設定し、ステップ#147では設定時間が経過したかどうかをチェックするという制御の流れにすることもできる。
【0066】
図8と図9に本発明の第2実施形態を示す。ここには手指除菌装置1がより具体的な形で示されている。第1実施形態の構成要素と機能的に共通する構成要素には第1実施形態の説明に用いた符号をそのまま付す。この符号の用い方は第3実施形態以降の実施形態でも踏襲し、それ以前の実施形態の構成要素と機能的に共通する構成要素には、以前の実施形態で用いた符号をそのまま付すものとする。
【0067】
第2実施形態の手指除菌装置1は、筐体10の中で、洗浄空間11より後ろの箇所に原水タンク収納区画10aが形成されている。原水タンク収納区画10aの底部に形成された受水槽設置凹部10bに受水槽30が据え付けられ、固定される。原水タンク収納区画10aには開閉自在な蓋10cが設けられる。
【0068】
原水タンク20は直方体形状であり、特定の面に水補充口21を有する。水補充口21の存在する面を原水タンク20の上面とし、水補充口21が上になっている状態を原水タンク20の正立状態、水補充口21が下になっている状態を原水タンク20の倒立状態とする。水補充口21はねじ式のキャップ22で閉塞される。キャップ22には、外から押すことで開放状態になるバルブ23が設けられている。
【0069】
原水タンク20を倒立状態で原水タンク収納区画10aに入れ、受水槽30に形成された受け口31にキャップ22を嵌合させると、すなわち図8、9に示す状態にすると、受水槽30の底に形成された突部32がバルブ23を押し、バルブ23は開放状態になる。これにより、原水タンク20の中の原水が受水槽30の中に流れ込む。大気圧により、受水槽30の中の水位は一定レベル以上に上昇することはない。このように、原水タンク20を受水槽30に直接接続することにより、第1実施形態で用いられた第1電磁弁14の削減が可能となった。
【0070】
ポンプ16には、容積型ポンプのような、停止時に流体の流れが遮断されるタイプのものが用いられている。これにより、第1実施形態で用いられた第2電磁弁15の削減が可能になった。なお、ポンプ16からノズル13までの管路には図示しない安全弁が設けられ、ノズル13が塞がれるようなことがあってもポンプ16に過大な圧力が生じないようになっている。
【0071】
図に示す通り、原水タンク20はシンプルな構造であり、容量を大きくしさえすれば、手指除菌装置1の使用可能回数を増大させることができる。また受水槽30をオープン構造にしておけば、電解時に発生する水素を逃がすために特殊な構造を設ける必要はない。
【0072】
第1実施形態と第2実施形態において、電極41の構成を工夫すれば、電解水を消費しながらでも電解水を生成することが可能になる。そのようにした例を図10から図16までの図に基づき説明する。
【0073】
図10及び図11に示す構成例では、電解水生成部40は1個のケーシング42を備え、その中に複数の電極41が、水平なジグザグ状の流路43を形成するように配置されている。原水は、ケーシング42の一方の端に設けられた入口44から他方の端に設けられた吐出口45へと、流路43をジグザグに通過する間に電解される。
【0074】
吐出口における電解水濃度は、電極41に流す電流と、ジグザグ流路43を流れる原水の流速によって左右される。その実測例を図14の表に示す。電流は80mA、160mA、200mAの3段階に設定し、流速は1.25cc/秒、2.5cc/秒、5cc/秒の3段階に設定した。対向する電極のセット数は5セットとした。電流値が大きく、流速が遅いほど吐出口の電解水濃度が高くなり、電流値が小さくなるほど、また流速が速くなるほど、電解水濃度が低くなることを、表から明瞭に読み取ることができる。
【0075】
図14からわかる通り、流速が速くなっても、電流を増大しさえすれば、高濃度の電解水を生成することが可能である。また、電極の枚数を増やすことで、流速が速くなっても、高濃度の電解水を生成することが可能である。つまり、流速、電解電流、電極枚数を適宜選択することで、任意の電解水濃度を得ることを可能とすることができる。このため、大量の電解水を生成して受水槽30に溜めておく方式を採用しなくても、1回の噴霧に使用されるだけの電解水をその時点で生成することで、電解水の需要に対応できることになる。これにより、受水槽30に大量の電解水が溜まるまで待つ必要がなくなり(特に、電解水が飽和濃度に達するまで電解を続けることとした場合には、飽和点に近づくにつれ電解の進み方が遅くなるので、時間がかかる)、手指除菌装置1の稼働率を向上させることができる。
【0076】
また、受水槽30に電解水を保持しておく方式では、保持期間中に電解水の濃度低下が起こるため、一定時間毎に補電解が必要であった。生成した電解水をその度毎に使い切る方式にすれば、補電解が不要となり、電力消費を削減できる。
【0077】
図11では、一方の極性となる電極41はそれら同士で、他方の極性となる電極41もそれら同士で、それぞれ並列接続している。この電極41の接続は、図12に示す方式に変えることもできる。図12では、少なくとも一方の極性となる電極群について、電極41の1枚毎にシャント抵抗46が接続されている。これにより、各電極41に流れる電流値を知ることができるので、全ての電極41に等しい電流が流れるように電流を制御して、電極41の寿命を揃えることができる。電極41の接続を、図13に示すようにすることもできる。
【0078】
図15及び図16に示す構成例では、2枚の垂直な矩形の電極41を向かい合わせ、少なくとも一方の電極41に絶縁物質製の仕切板47を複数個取付けて、垂直方向のジグザグ状流路43を形成した。原水はケーシング42の中を下から上に流れることになる。
【0079】
第1実施形態と第2実施形態では、電解水生成部40を備えた受水槽30に、原水タンク20から原水を供給する構成となっていた。原水タンク20に電解水生成部40を内蔵させる構成とすれば、受水槽30を省略できる。そのようにした実施形態を、図17から図24に、第3実施形態から第6実施形態として示す。
【0080】
図17及び図18に第3実施形態を示す。筐体10に形成された原水タンク収納区画10aの底部に受部10dが形成され、その中に、倒立状態で取り付けられる原水タンク20の水補充口21のキャップ22がはめ込まれている。キャップ22は、受部10dの中でポンプ16への管路に接続し、ポンプ16に向けて水を流し出す。
【0081】
キャップ22の内面には、原水タンク20の内部に突き出すように、電解水生成部40を構成する1対の電極41が取り付けられる。原水タンク20を倒立状態にすると、原水タンク20の底の箇所に電極41が位置することになり、原水は残らず電解水となる。
【0082】
キャップ22の外周面には、180°隔たった箇所に、それぞれの電極41に接続する受電用端子24が設けられている。受部10dの内面には、受電用端子24に接触する給電用端子10eが設けられている。給電用端子10eは制御部50に接続し、制御部50から直流電流の供給を受ける。
【0083】
図19及び図20に第4実施形態を示す。第4実施形態でもキャップ22に1対の電極41が設けられているが、電極41への給電の仕方が第3実施形態と異なる。すなわち、一方の電極はキャップ22の外面に受電用端子24aを有し、この受電用端子24aは受部10dの中で給電用端子10e1に接触する。他方の電極41は、キャップ22が原水タンク20にしっかりとねじ込まれたときに、原水タンク20の底面に設けられた受電用端子24bから延びる端子延長部25に原水タンク20の内部で接触し、電気的に接続される。受電用端子24bは蓋10cの内面に設けられた給電用端子10e2に接触し、制御部50からの給電を受ける。このように、電圧のかかる給電用端子10e1と10e2が高さ方向に離れた箇所に配置されていることにより、原水タンク収納区画10aの中に水がこぼれた場合に生じ得る、給電用端子間の短絡の可能性を排除することができる。
【0084】
また、第4実施形態の構成では原水タンク20を完全にセットしないかぎり電極41に給電することができないので、不完全なセット状態のまま給電が行われ、それが予期せぬ故障につながるといったことがない。
【0085】
図21及び図22に第5実施形態を示す。第5実施形態では、キャップ22でなく、倒立状態の原水タンク20の天井部となる箇所に、電解水生成部40を構成する1対の電極41が取り付けられる。原水タンク20の外面に露出する受電用端子24が、蓋10cの内面に設けられた給電用端子10eに接触し、制御部50からの給電を受ける。このように、電圧のかかる給電用端子10eが蓋10cの内面に配置されていることにより、原水タンク収納区画10aの中に水がこぼれた場合に生じ得る、給電用端子10e間の短絡の可能性を排除することができる。
【0086】
図23及び図24に第6実施形態を示す。第6実施形態では、水補充口21に近接した原水タンク20の内側壁に、電解水生成部40を構成する1対の電極41が取り付けられる。原水タンク20の外面に露出する受電用端子24が、原水タンク収納区画10aの内側壁に設けられた給電用端子10eに接触し、制御部50からの給電を受ける。給電用端子10eは、原水タンク収納区画10aの底部より高い位置にあるので、原水タンク収納区画10aの中に水がこぼれた場合に生じ得る、給電用端子10e間の短絡の可能性を排除することができる。
【0087】
第3実施形態から第6実施形態の構成によると、受水槽30が不要であることから、手指除菌装置1の構成が簡単になり、製造コストの削減を目論むことができる。また、電極41が原水タンク20内にあることから、原水タンク20に給水する度に新鮮な水で電極41が洗われる。これにより、電極41の「お手入れ効果」を見込むことができる。
【0088】
原水タンク20を用いず、受水槽30を原水タンク代わりにする構成も可能である。そのようにした実施形態を、図25から図29に、第7実施形態から第9実施形態として示す。
【0089】
図25及び図26に第7実施形態を示す。第7実施形態では、受水槽30の容積が原水タンク20に匹敵するほど大きくなっており、その上面は直接筐体10の外部に開口している。使用者はここから受水槽30に原水を注ぎ込むことができる。この開口には開閉自在な蓋33が設けられる。
【0090】
電解水生成部40を構成する電極41は、受水槽30の底部に設けられる。電極41の配置位置は、図26に示す通り、手指除菌装置1を正面から見たとき、受水槽30の左右方向の中央位置である。
【0091】
受水槽30の上面開口が広いことから、受水槽30に物品が落ち込んだり、手が差し込まれたりしやすい。それが電極41に触れて、電極41が短絡したり、損傷したりするそれがあるので、そのような危険を排除する必要がある。そこで受水槽30の内部には、電極41より少し上の箇所に、小開口を格子状に配置した保護カバー34が配置される。保護カバー34は平面状で、受水槽30にほぼぴったりとはまり込む平面形状を有する。保護カバー34が存在することにより、受水槽30の内部に物品が落下したり、手が差し込まれたりしても、それらが電極41に接触する危険を排除することができる。
【0092】
図27及び図28に第8実施形態を示す。第8実施形態は第7実施形態と次の点が異なる。すなわち電極41は、図28に示す通り、受水槽30の左右方向中央位置ではなく、左右どちらか一方に偏った位置(図では左側)に配置されている。蓋33には、電極41が存在する側と反対側(図では右側)に、塩化ナトリウム投入口35が設けられている。塩化ナトリウム投入口35にはそれ自身の蓋36が設けられる。
【0093】
使用者は、電解水生成前に、必要量の塩化ナトリウムを塩化ナトリウム投入口35から受水槽30に投入する。この場合、塩化ナトリウムをタブレット(錠剤)の形にしておけば、取り扱いが容易である。
【0094】
図29に第9実施形態を示す。第9実施形態は第8実施形態と次の点が異なる。すなわち電極41が受水槽30の底部から内側面へと移動し、保護カバー34も平面状から断面逆L字形状のへと形状変更されている。第9実施形態は、空気吹き込み装置37を備えることが特徴となっている。空気吹き込み装置37は、受水槽30の底部近くの、電極41に向き合う側壁に配置された空気噴出ノズル38と、空気噴出ノズル38に空気を圧送する空気ポンプ39により構成される。
【0095】
原水に塩化ナトリウムを投入した後に空気吹き込み装置37を稼動させる。空気ポンプ39から送られる空気が空気噴出ノズル38から噴出すると、受水槽30の中の原水が攪拌される。これにより、投入された塩化ナトリウムは速やかに原水に溶解する。
【0096】
第1実施形態から第6実施形態までの実施形態で用いられた原水タンク20には、塩化ナトリウム溶解補助装置を備えさせることができる。それを図30から図32に基づき説明する。
【0097】
図30に示す塩化ナトリウム溶解補助装置60は、水補充口21に嵌合する枠体61により構成される。枠体61は水補充口21に注がれる水を通す開口部61aを有し、内部に塩化ナトリウムを保持することができる。空になった原水タンク20に原水を補充する際、キャップ22を取り除いた後に枠体61をはめ込み、枠体61の中に塩化ナトリウムタブレットSを所定個数入れて上から原水を注げば、原水は塩化ナトリウムタブレットSを溶かしつつ原水タンク22に注ぎ込まれることになる。枠体61の中の塩化ナトリウムタブレットSに流水が当たることにより、塩化ナトリウムタブレットSは完全に溶解する。なお、枠体61の底部に塩化ナトリウムタブレットSが嵌合するポケット部を形成し、流水に当たっても塩化ナトリウムタブレットSが動かないようにしておくとよい。
【0098】
図31に示す塩化ナトリウム溶解補助装置60は、キャップ22に着脱可能に取付けられるバスケット62により構成される。バスケット62は内部に塩化ナトリウムを保持することができ、原水タンク20に所定レベルまで原水が入れられていれば、少なくとも下端が水没する。塩化ナトリウムタブレットSを入れたバスケット62をキャップ22に取り付け、原水が所定レベルまで入れられた原水タンク20にキャップ22をねじ込んで行けば、バスケット62が原水をかき回すときの水流で塩化ナトリウムタブレットSは溶解する。
【0099】
図32に示す塩化ナトリウム溶解補助装置60は、キャップ22から突き出す攪拌体63により構成される。攪拌体63はカヌーのパドルのような形状をしており、原水タンク20に所定レベルまで原水が入れられていれば、原水に水没する。原水タンク20の中に塩化ナトリウムタブレットSを投入し、キャップ22をねじ込んで行けば、攪拌体63が原水をかき回すときの水流で塩化ナトリウムタブレットSは溶解する。
【0100】
図示しないが、原水タンク20の中に、原水タンク20に注がれる原水が当たるスクリュー部材を入れておき、塩化ナトリウムタブレットSを投入しておいて原水を注いだとき、原水がスクリュー部材に当たって回転水流が生じ、それにより塩化ナトリウムタブレットSが溶解するように構成することも可能である。
【0101】
原水タンク20を用いる構成の場合、原水タンク20の数を1個に限定する必要はない。図33では、電解水生成部40を内蔵した原水タンク20(この構成は第3実施形態から第6実施形態に相当する)を2個並べ、それぞれ電磁弁19を介してポンプ16に接続している。この構成によると、一方の原水タンク20が空になっても、他方の原水タンク20から電解水を供給し続けることができる。また、個々の原水タンク20の容量を小さくできるので、原水補給後の原水タンク20を再度筐体10にセットする場合など、非力な使用者であっても容易に原水タンク20を取り扱うことができる。
【0102】
この構成の場合、どちらの原水タンク20で先に電解水の生成が行われたかを制御部50に記憶させておき、生成順序の古い電解水から先に使用する、いわゆる「先入れ・先出し」方式を採用するのがよい。このようにすることにより、古くなって濃度の低下した電解水が使用されるのを防ぐことができる。あるいは、補電解の回数を少なくすることができる。
【0103】
上記のように原水タンク20を2個用いる構成は、電解水生成部40を内蔵した受水槽30に原水タンク20を組み合わせる方式、すなわち第1実施形態と第2実施形態にも適用可能である。
【0104】
手指除菌装置1から離れた箇所に置いた原水タンク20の中で電解水を生成し、電解水生成後、原水タンク20を手指除菌装置1に取り付けて使用するという構成も可能である。このためには、原水タンク20を載置するクレードルを手指除菌装置1とは別個に用意し、そのクレードルに制御部50を備えさせればよい。手指除菌装置1に取り付けた第1の原水タンク20よりノズル13に電解水の供給を行っている間、クレードルには第2の原水タンク20を載せて電解水の生成を行い、第1の原水タンク20が空になったらすぐに第2の原水タンク20に交換するといった使い方が可能である。
【0105】
上述の「電圧変化率」をチェック対象として、電解水濃度を制御する方法は、原水タンク20に貯留されている原水が規定量に達していなかった場合等のエラー判定に使用することもできる。電解時間で所定の電解水濃度を得る制御において、原水タンク20に貯留されている原水が規定量より少ない場合、電解水濃度が飽和値に達するような原水の水量であると、生成される電解水の濃度は、50ppm〜100ppmの範囲から逸脱した濃度となる虞がある。このような電解水濃度が高い状態で使用させないように、電解時間による制御と「電圧変化率」による制御を同時に行うことで、電解時間が経過するより前に、電解水濃度が飽和値に達した場合、電解水を噴霧しないように制御することができる。
【0106】
また、水量を判定する手段をもつことで、(例えばホール阻止などで、その手段は限定されるものではない。)電解時間を制御し所定の濃度で電解を停止させることが可能である。電極が完全に水没している状態では、電極間に掛かる印加電圧は同じであるから、原水タンク内の所定水量が不足した場合、上述の通り、50ppm〜100ppmの範囲から逸脱した濃度となる虞がある。このような時、水量にあわせた電解時間に制御することで、所定濃度で電解を停止するよう制御することができる。また、電解水濃度が高くなる虞があるということで、電解を停止し、噴霧させないように制御することもできる。
【0107】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は電解水を用いる手指除菌装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 手指除菌装置
10 筐体
10a 原水タンク収納区画
10e 給電用端子
11 洗浄空間
12 手指検知センサ
13 ノズル
16 ポンプ
20 原水タンク
21 水補充口
22 キャップ
24 受電用端子
30 受水槽
33 蓋
34 保護カバー
35 塩化ナトリウム投入口
37 空気吹き込み装置
40 電解水生成部
41 電極
50 制御部
60 塩化ナトリウム溶解補助装置
61 枠体
62 バスケット
63 攪拌体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の一部に形成された洗浄空間と、
前記洗浄空間に手が挿入されたことを検知する手指検知センサと、
前記手指検知センサからの手の挿入検知信号に基づき、前記洗浄空間に電解水を噴霧するノズルと、
電解水生成部と、
前記電解水生成部で生成された電解水を前記ノズルに供給するポンプと、
全体制御を司る制御部を備え、
前記制御部は、前記電解水生成部に接触する原水の塩化ナトリウム濃度を判定して、生成される電解水の濃度が所定レベルとなるように当該電解水生成部を制御することを特徴とする手指除菌装置。
【請求項2】
前記制御部は、電解時間の長さ設定により、生成される電解水の濃度が所定レベルとなるように前記電解水生成部を制御することを特徴とする請求項1に記載の手指除菌装置。
【請求項3】
前記制御部は、電解中、前記電解水生成部の電極間電圧を検知し、所定の電圧変化率となったときに電解を停止させることにより、生成される電解水の濃度が所定レベルとなるように前記電解水生成部を制御することを特徴とする請求項1に記載の手指除菌装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ノズルに供給される電解水の濃度が所定レベルに達するまでは、電解水噴霧の制御を行わないことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の手指除菌装置。
【請求項5】
前記制御部は、原水の塩化ナトリウム濃度が所定範囲から逸脱している場合、前記筐体の一部に設けられた表示部にその旨の警告表示を行わせるとともに、前記電解水生成部に電解水生成動作を行わせないことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の手指除菌装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ノズルに1回の噴霧で上限量までの電解水を消費させるものであり、前記ノズルに供給可能な電解水量が、前記ノズルに前記上限量の噴霧を規定回数行わせるに足る量を下回ったときは、前記筐体の一部に設けられた表示部にその旨の表示を行わせることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の手指除菌装置。
【請求項7】
前記制御部は、電解水生成用の原水と区別される比較用水に対しても塩化ナトリウム濃度の判定を行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の手指除菌装置。
【請求項8】
前記筐体には原水タンクが着脱可能に取り付けられるものであり、前記原水タンク内に設けられた電極より前記電解水生成部が構成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の手指除菌装置。
【請求項9】
前記原水タンクは水補充口を下にした倒立状態で前記筐体に取り付けられるものであり、前記水補充口を閉塞するキャップに前記電極が配置されることを特徴とする請求項8に記載の手指除菌装置。
【請求項10】
前記電極の中で、一方の極となる電極に対応する受電用端子は前記キャップの外面に配置され、他方の極となる電極に対応する受電用端子は前記原水タンクの側に配置されることを特徴とする請求項9に記載の手指除菌装置。
【請求項11】
前記原水タンクは水補充口を下にした倒立状態で前記筐体に取り付けられるものであり、倒立状態で天井部となる箇所に前記電極が配置されることを特徴とする請求項8に記載の手指除菌装置。
【請求項12】
前記原水タンクは水補充口を下にした倒立状態で前記筐体に取り付けられるものであり、前記水補充口に近接した内側壁に前記電極が配置されることを特徴とする請求項8に記載の手指除菌装置。
【請求項13】
前記筐体には受水槽が形成され、前記受水槽内に設けられた電極により前記電解水生成部が構成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の手指除菌装置。
【請求項14】
前記電極は保護カバーで覆われていることを特徴とする請求項13に記載の手指除菌装置。
【請求項15】
前記受水槽を覆う蓋に塩化ナトリウム投入口が形成されていることを特徴とする請求項13または14に記載の手指除菌装置。
【請求項16】
前記受水槽に空気吹き込み装置が設けられていることを特徴とする請求項13から15のいずれか1項に記載の手指除菌装置。
【請求項17】
前記筐体に着脱可能な原水タンクが設けられ、前記受水槽は前記原水タンクから原水の供給を受けることを特徴とする請求項13に記載の手指除菌装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記ノズルの電解水噴霧により前記受水槽中に水流が生じているときに前記電解水生成部に電解水生成動作を行わせることを特徴とする請求項17に記載の手指除菌装置。
【請求項19】
前記電解水生成部は、電極を配置したジグザグ状の流路を原水が流れるものであることを特徴とする請求項18に記載の手指除菌装置。
【請求項20】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の手指除菌装置において、前記原水タンクは塩化ナトリウム溶解補助装置を備えることを特徴とする請求項8から12のいずれか1項または請求項17から19のいずれか1項に記載の手指除菌装置。
【請求項21】
前記水補充口に嵌合する枠体であって、当該水補充口に注がれる水を通す開口部を有し、内部に塩化ナトリウムを保持可能なものが前記塩化ナトリウム溶解補助装置を構成することを特徴とする請求項20に記載の手指除菌装置。
【請求項22】
前記水補充口を閉塞するキャップに取付けたバスケットであって、内部に塩化ナトリウムを保持可能であり、且つ、当該原水タンクに所定レベルまで原水が入れられていれば少なくとも先端部が水没するものが前記塩化ナトリウム溶解補助装置を構成することを特徴とする請求項20に記載の手指除菌装置。
【請求項23】
前記キャップから突き出す攪拌体であって、当該原水タンクに所定レベルまで原水が入れられていれば原水を攪拌することが可能なものが前記塩化ナトリウム溶解補助装置を構成することを特徴とする請求項20に記載の手指除菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2011−177321(P2011−177321A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43676(P2010−43676)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】