手書き署名の取得、分析および認証のためのシステムと方法
本発明は手書き署名の取得、解析および認証のためのコンピュータを使用したシステムである。手書き署名をおこなう人は、平面にグラフィックな表記を残す一連の3次元動作をおこなう。動作は、署名する際に使った特殊なペンによって感知される運動情報を生成する。求心性のバイオ運動パターンに一致する情報はペン内に設けられたMEMSタイプ加速度センサによって収集される。システムは生成された情報(信号)を解析して、その情報のバイオメトリック単位次元に基づいてダイナミックなバイオメトリック特性を求める。特性はデータベクトルと不変量に変換されてデータベースに保存される。アルゴリズムタイプの方法に基づいて、システムはサンプル署名の空間的運動と入力署名の運動とを比較して、距離タイプの解答を得る。統計上の見地から、結果は解釈およびサンプリング法によって全対象個人のデータベースに関連づけられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
個人の身元を証明することは、いくつかの活動においては、その人の署名を認証することでもある。署名確認は人々の活動の多くの分野において、例えば、金融上の各種権利を取得したり、情報にアクセスしたり、特別な管理体制領域に物理的にアクセスしたり、公共あるいは個人的な場面で賛同の意思を表明する際に、短時間で処理すべき共通の問題である。
【0002】
本発明は手書き署名の取得、分析および認証のためのコンピュータを使用したシステムおよび方法に関するもので、個人認証手順におけるバイオメトリックリンクとして適用されることを意図したものである。
【0003】
このシステム(ハードウェア/ソフトウェアの組み合わせおよび識別方法)は、使用手順に関する不便が最小に抑えられておりかつ比較的低コストであることから、署名認証手順において大規模に使用することができる。従って本発明は複数の公共および個人的領域における情報技術分野での適用開発領域をつくり出すものである。
本システム適用領域には次の分野が含まれる:
− 財産や金融取引など。機能:検査システムへのリンク。
− 仮想または物理アクセス制御システムの分野におけるセキュリティ。機能:セキュリティシステムへのリンク。
− 企業や組織の管理。機能:多数の従業員や分散スタッフを抱える企業のために、文書管理/ワークフロー管理タイプのソフトウェアにおける署名の認証。電子文書の保護。
【0004】
本発明をこれら活動領域に適用することで、以下の効果が得られる:上記分野に対するユーザの信頼度が増し、なりすましによる損害を最小限に抑え、従来の手順で必要な署名チェックの時間を短縮し、ねつ造した身分を使った詐欺を防止する。
【0005】
本発明の説明において、以下の概念を使用する。
対象の個人:データベースにサンプル署名を登録するためのシステムを使用して、オリジナル署名を認証する個人またはねつ造した署名を認証しようと試みる個人。
【0006】
署名:自由意志でかつ本人の反射運動特性によって意識的に開始した行為であって、筆記具を手で使って所定のスペースに平面的でグラフィックな表記をする行為。対象の個人は空間的時間的観点からほぼこの行為を再現できなければならない。署名の目的は、サンプル署名とオリジナル署名を比較して、その署名が本物かどうかを第三者に判断させることによって当人を識別する。
【0007】
(署名の)(生体)運動パターン:署名する際に生体力学的に組み合わされた手書き筆記具が動く様。これらの動きは、公的あるいは私的な通常の文書フォーマットで通常の筆記用紙上に筆記具の実質的先端の動きによってグラフィックな署名の形態に部分的に置き換えられる。(生体)運動パターンは電子的に取得し記憶してもよい。(生体)運動署名パターンの概念は署名概念と一致する。
【0008】
サンプル署名(ここでは短くサンプルという):署名データベースに保存され、新しい署名(オリジナル署名)を行う個人を証明(認証)するために使用される署名。
【0009】
オリジナル署名(ここでは短くオリジナルという):本システムによって証明(認証)を受けるために個人が提供した署名であって、同一人物、すなわち対象の個人、によって以前に提供され署名データベースに保存されている他の署名(サンプル署名)と比較されるもの。
【0010】
ねつ造署名(ここでは短くねつ造という):個人Yを名乗りかつYの名で署名した個人Xによって提供された署名、あるいは強制的にXの名で署名させられた個人Xによって提供された署名。
【0011】
認証:現行データベースの生体運動パターンに適用される方法の集合であって、オリジナル署名を行った個人Xが確かに、当人Xに属するものとして登録された(署名データベースの)サンプルセットを署名した個人Xであるかどうかを判断する。
【0012】
現行データベース:最初のデータベースに対象の個人のサンプルと認証されたオリジナルの生体運動パターンを加えたもの。
【0013】
現行比較データベース:多数の対象の個人のサンプルからなる署名の集合であって、現行データベースの(無作為に抽出した)サンプルを表し、入力した署名によって指定される個人の複数の署名を加えたもの。
【0014】
初期データベース:確立されたパラメータでシステムが機能するために必要な最小限のデータベースであって、指定された文字文化(アルファベット)(例えば、ラテン文字、キリル文字、ヘブライ文字、中国文字等)に属するサンプル署名の生体運動パターンを含む。初期データベースはまた複数の文字文化が混合したものに属するサンプル署名の生体運動パターンも含むことができる。
【0015】
レベル:認証システム内の物理的および機能的階層構造であって、特定の複数の機能サブシステムおよびそれらサブシステム内の方法構造を含む。
【0016】
ペン:レベル1サブシステムのアンサンブルであって、筆記具および生体運動パターンを捕捉するために必要な高感度運動コンピュータを使用した要素から構成される。
【0017】
MEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム):ナノテクノロジーによって実現されたマイクロエレクトロメカニカルシステム。
【0018】
コンタクト情報:署名に組み込まれた生体情報で、署名の境界を定めるのに必要なもの。これはシナプス運動筋肉反射メカニズムによるもので、対象の個人が紙との間でペンを介して相互作用することによって生じるマイクロ振動の変調を表す。MEMSセンサはそれが現れている方向にそれを捕捉する。生体情報は、自発的または半反射運動的手書き動作に特有な他の生体運動情報が本質的に加えられている。
【0019】
コンテクスト情報:ペンが紙の近くにどのように位置しているかを示す情報。これは紙に対してペンがしきい値距離にあることを検知するもので、対象個人の他の動作から署名の境界を定めるのに必要なキーの一つである。
【0020】
署名を認証する必要がある場合、専門家が従来の手順を実行する。手書き署名の真贋に関する分析と判断は、筆跡技法の目的の一つである。署名が本物であることを証明するために、専門家は複雑な動きを行う署名をグラフィック的にかつ静的に紙に投影する。分析に続いて、署名した対象個人に特有な動的な動きが推定される。それらは特徴的な速度、加速度、圧力、書記順序や形などとして現れる。
【0021】
従来方法で手書き署名を認証する場合、次のような欠点がある。特に、
− 署名を調べる人の、特に瞬間的な分析能力によって統計的にある程度の誤差が生じる。
− 専門家としての利害や個人的好みなどの外的要因に影響される可能性がある。
− 測定、分析、比較および判定に比較的長い時間がかかる。
− 自由意志の表明を独断的に真実として推定する。
− 情報は紙の上のプランレベルからのみ抽出され、対象個人の動作のグラフィックな効果のみを一方的に反映する。
− 物理学単位の速度、加速度、圧力および特定の不変なグラフィック形状は、視覚による観察や推論によって間接的に推定される。これは高いレベルの近似法の手順である。
− 習得された反射ジェスチャー、特定の手の形状およびシナプスタイプの神経筋肉相互作用によって、筆記具に伝えられる複雑な運動動作に対応する空間情報は無視される。
− 筆跡技法の分野から得られる必要な経験と知識は多大な努力により習得されるもので、長い期間の後に洗練される。
− 署名認証のための伝統的な筆跡技法のコストは自動検査よりも数倍高く、実際上詐欺が表面化して追跡された後に初めて筆跡技法が用いられる。
【0022】
生体運動パターンに基づく自動認証の分野における研究と調査は最近研究されるようになったバイオメトリックのもう一つの領域である。この領域の努力は情報社会に必要な認証技術を開発することに注がれている。手書き署名はアルファベットを使う人々を識別し認証するためのほぼ世界的な方法として使用されている。従って署名の生体運動パターンに基づく認証方法は自然で、普通でしかも押しつけがましくない。
【0023】
生体運動パターンに基づく認証手順の研究で専門誌に公表されているものはほとんどない。このテーマに関しては主にいくつかの特許がある。今までは、MEMSナノテクノロジーによって実現された加速センサに基づきしかも本発明の原理と方法を用いた技術を、署名認証に商業的に適用したという情報は全くなかった。問題の取り組みは研究室内でのみ行われてきたし、今まではこのテーマに関しては世界的にもほとんど研究はなされてこなかった。
【0024】
手書き署名の静的および動的特徴を分析する認証システムに関して特許が与えられている。動的特性を解析するシステムは静的特性のみを解析する以前のものよりも性能がよい。
【0025】
現在、手書き署名解析認証分野において、本発明がここで提案したものとは異なる方法と技術を使った手法が商業的に実用化されている。すなわち、次のものを用いている:グラフィックステーブル、グラフィックスキャンと証明、CCDセンサによるグラフィック画像の動的捕捉、および静止マーカーに基づく「インテリジェントペーパ」上への書き込み、などである。これらの方法は人間グラフィック技術の場合に述べたいくつかの欠点を持っている。すなわち:
− 解析される情報はペーパ平面レベルからのみ抽出され、対象個人の動作のグラフィック効果のみを一方的に反映する。
− パラメータ:速度、加速度、圧力は、高度な近似法に似た手順によって間接的に推定される。
− 習得された反射ジェスチャー、特定の手の形状およびシナプスタイプの神経筋肉相互作用によって、筆記具に伝えられる複雑な運動動作に対応する空間情報は無視される。
【0026】
これらの欠点に加えて、上記の方法は専用の隣接装置を導入している:すなわちグラフィックステーブル、インテリジェントペーパ、スキャナを使用するのでコストを上昇させ複雑さが増す。
【0027】
手書き署名の生体運動パターンに基づくバイオメトリック認証の分野において、解析パラメータの性質や取得と処理方法が本発明と少しでも関連するシステムと方法を記述した特許は少ない。比較のためおよび本発明のクレーム定義のために、関係があると思われる特許のうち2つを引用する:米国特許No.4,128,829−(Herbstその他)と米国特許No.6,236,740−(Leeその他)
【0028】
米国特許No.4,128,829−(Herbstその他)において、ペンと軸方向圧力センサに互いに直角に配置した2つの加速度センサによって情報が作られる。情報はペンの外部モジュールにおいて8ビットの解像度でデジタル化される。署名間の比較は情報を分割しかつ最大相関関係を求めることによって行う。最終判断は、しきい値タイプに関するもので、許容または拒絶は任意に選んだしきい値(0.8)に対する相関関係の値の位置に依存する。入力署名と目的の対象個人のサンプル署名との比較を行った後に判定をおこなう。
【0029】
この特許には以下の欠点が残っている:
− 複数の加速センサは単一平面レベルにあるので、筆記具に伝えられる複雑な空間運動動作に対応する情報は無視される。
− シナプスタイプ神経筋肉相互作用に対応する情報は失われる。なぜならHerbstは神経筋肉フィードバックは遅い「筋肉−脳−筋肉」サイクルによって独占的に行われると主張しており、手の生体機能レベルにおいて局部シナプス反射の影響を無視している。他方で、そのシステム取得および後処理パラメータによってシナプス反射の特定の情報を取得することができない。
− 軸方向圧力センサを使用することで失われたシナプスタイプ神経筋肉相互作用に対応する情報を部分的かつ間接的に再取得できるが、同時にそれによって不利な点も発生する。例えば対象個人が紙と接触する瞬間の検出が安定しないことである。圧力は、書くときに対象個人がどのような体勢であるか、紙のタイプ等によって変わる。
− しきい値判定法は署名の自然な変動に対して融通が利かないしさらに、対象個人が変わると一般的に有効なしきい値を算出することは不可能である。
【0030】
米国特許No.6,236,740−(Leeその他)において、解析された入力情報は次の2つの動作を行っている間に作成される:対象個人が署名と定められた整数の集合を入力すること。サンプルの場合0から9の整数を、また認証しようとする署名の場合現在の日付を表す数字を入力する。ペンに配置した2つの圧力センサは解析する情報を捉え、書記圧力のピークに比例する電気信号が機械要素によって取得される。センサが発生した2つの信号は2つのペン方向、軸方向と横方向、における圧力変動を表す。ペンの外部モジュールにおいて情報がデジタル化される。情報解析は2つの圧力の瞬間的な比によって定義されるパラメータに対して行われる。この比は相対勾配角度と呼ばれ署名を区別するために重要と考えられる。判定と解析方法は、定められた整数を含む入力署名と対象個人のいくつかのサンプルとの比較の結果をしきい値適用可能タイプによって評価する。解析方法は情報分割とそれらの総合評価を組み合わせたものである。
【0031】
この特許には以下の欠点が残っている。
− ペンの動きを感知するセンサがないため、筆記具に伝えられる平面および空間運動動作に対応する情報が無視される。紙の上でのペンの動きを表す情報が間接的かつ大幅に圧力情報に置き換えられる。このためある機能性が維持されている。
− センサに対し直接の機能を有する機械的要素が解決策の信頼性を実質的に低減している。
− 解析された情報を含む電気信号をペン外部でデジタル化することは外部の変動によってそれらが影響を受ける可能性を意味する。
− 圧力センサを使用することでシナプスタイプ神経筋肉局部相互作用に対応する情報を近似的、部分的および間接的に区別するけれども、同時にそれによって欠点ももたらされる。例えば書いているときの姿勢、紙のタイプ等によって、紙に接触した瞬間の検出が安定しなかったり圧力が変動することである。
− 解析と判定方法は、入力署名と対象個人のサンプル署名との間のみで比較した結果を評価することによって行う。
【0032】
上記の発明の解析、比較および評価は、入力署名と対象個人のサンプル署名との間のみで行う。したがって他の個人のサンプルとそれぞれ比較、区別することによって他のカテゴリとの関連を見いだそうとする手法が無視されている。
【0033】
本発明は上記の欠点を新しい概念の情報取得装置によって取り除くものである。すなわちコンピュータを使用した認証装置に情報取得装置を構成するサブシステムを機能的に組み込むことによって、署名の過程において発生する複雑な情報の性質、表示および検出を行う。
【0034】
コンピュータ使用の認証システムにおいて特定のプログラムによって実現されたアルゴリズムと手順は、処理された入力情報と関連づけられており、本科学分野の未だ利用されていない原理を適用し、さらに既に適用されている原理を使った方法を大幅に改善する。
【0035】
空間生体運動解析の商業適用が依然なされていない主な障害としては、必要な技術が最近まで不足していたこと、すなわち使用中に手によって筆記具に伝えられる複雑な加速度を満足に捉えられるだけ十分に小型化した高性能のMEMS加速センサ(http://www.memsnet.org)がなかったことである。加速時計タイプのセンサによる情報取得のコストの点からみると、2002年までは、品質の良い情報を得るために必要な複数の取得チャネルの一つのコストは商業効率の限度を大きく超えるものであった。商業効率の観点から述べると、MEMS加速度センサによって情報取得装置/システムが競争できる価格で提供できるようになる。2001年の末に、MITのナノテクノロジーリサーチセンターとアナログデバイスはすぐれた品質−価格性能を有するMEMS加速度センサを実現し生産を開始した。したがって、この研究が開始され、その結果が本発明の目的である、この新しいタイプのセンサを利用することである。(使用されたセンサの観点から)同じ技術を使ったもう一つの研究プロジェクトXWPENがマイクロソフトハードウェアリサーチ研究所で行われ、別の応用(手書き入力と識別のための端末)を研究した。その技術要素に関しては公表されなかったが、この研究は2004年末までに適用可能な結果を出すことを目指している。
【0036】
MEMSナノテクノロジーセンサの感度はmgクラスでμg/√Hz(g=重力加速度)ノイズファクタークラスである。高い感度と周波数特性のおかげで、これらセンサは新しい情報捕捉装置/システムの構築において、手書き署名生体運動パターンの最も軽い情報コンポーネントのための条件を満たしている。さらにまた、本発明においてはMEMSセンサモジュールが使用されており、おのおのが構造上互いに直角に配置された2つの加速度センサを組み込んでいる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
本発明のシステムにおいて、筆記具に伝えられる手書き署名の複合的動きはその署名の運動パターンを定義し、しかも暗示的に、書いた本人を示す。運動パターンは署名した人に特有な情報構造を含む。これら情報構造がそれらを形成する物理的パラメータのために非常に複雑であること、それらの力学さらには状況が変動することによって、メトリック定義パターンを求める可能性が実質的に排除される。紙に押し付けられたグラフィック形状と軌跡は紙の平面におけるこれら複合的動きの不完全で推測による投影と考えてもよい。この投影は意図した行為、すなわち署名、を実行するのに必要な反射視覚フィードバックとして働く。
【0038】
書き込み用紙は特にセルロースマイクロファイバで作られる。ファイバがランダムに配置されることで顕微鏡レベルではで凹凸が生じる。マクロレベルでは、紙面でのざらつきは一定であり、この性質はこの分野の標準によれば紙を作る過程で付与される。筆記動作において、紙と筆記具の使用可能な先端との間での相互作用によって、機械的マイクロ振動によって機械的擬似共鳴現象が起きるようである。その周波数は書く速度に依存している。この現象がより調波共鳴の傾向を強く示すようになればなるほど、書く動作は容易になる。例えば、この現象は書記動作中に特定の音を放射したときに気づくことがある。「柔らかい」と「ひっかく」の両極端の間で書くことができるが、これは機械的擬似共鳴が発生しているかどうかを示すものである。
【0039】
筆記中、手のバイオメカニカル形状と組み合わせた、特定のグラフィックシンボルのメンタルモデルは瞬間的可変速度を与える。この速度変化は前に生じた擬似共鳴を鎮める効果がある。こういう背景において、シナプス神経筋肉反射(”Basal Ganglia&Motor Control for JA2084”,Malcom Lidierth,Nov 2004,University of London−Academic Department of Anatomy and Human Sciences JA 2084 Fundamentals of Neuroscience)はバイオメカニカルマイクロ動作を発生させることによって、擬似共鳴状態に再び入るという意味で、効果がある。この順応メカニズムはいかなる瞬間速度変化においても無意識におこる。シナプス神経筋肉サイクルはわずか数ミリ秒しか継続しない順応マイクロ動作を発生させる。この調節ループは瞬間的な擬似的安定を得るためには各々が20−60msのいくつかのサイクルが必要である。バイオメカニックスに対応する現象はフォースフィードバックと呼ばれる(http://www.hitl.washington.edu/scivw/scivw−ftp/citations/ForceFeedback−3.95)。
【0040】
シナプス反射によって生じるバイオメカニカルマイクロ動作はペン本体の先端に伝えられて、書記動作を容易にするのに必要な擬似共鳴マイクロ振動を再び得る。マイクロ振動は、特別に作られてこのペン動作のために配置されたペン要素によって伝達され、各MEMSモジュールに互いに直角に配置された2つの加速度センサによって捕捉される。バイオメカニカルマイクロ動作はマイクロ振動フィルタリング方法によって、書記動作に特有な他の運動によって明らかにされる。後で説明するアルゴリズム的手法によってマイクロ動作の変動を評価することで、すべての対象個人の署名について特定の「パターン」を生成する本質的不変量カテゴリが明らかになる。不変量はシナプス反射の神経筋肉バイオ電気信号に対する「パターン」表現である。圧力は前記現象のために導きだされたもので、圧力センサに特有なヒステリシスを介してその現象とともに組み込まれる。従って本発明では原則として使用されない。
【0041】
マイクロ振動は前記の役割を有するだけでなく、それ自体を検出する必要がある。アルゴリズム的手法において後で説明するように、署名の過程において署名の開始時点と終了時点および休止時点を特定するために、マイクロ振動を検出する。誤った開始時点の検出をさけるために、コンテクスト情報解析に必要な手順とメカニズムを導入する。光タイプの情報に基づき、ペンが書記位置にあるかどうかを検出することができ、これによって署名する前に偶然ペンを動かしたことによる振動を誤って検知することがさけられる。
【0042】
空間バイオ運動パターンは加速度の大きさを取得することによって物理的にサンプルする。すなわち加速度の大きさのサンプリングは、筆記具の主軸のいくつかの点において同時にサンプルし、それによってバランス空間求心コンポーネントの捕捉を容易にし、さらに筆記動作に必要なバランス動作の仮想およびダイナミック中心と比較することによって行う。情報デジタル化は、筆記動作(2−10Hz)に必要な「習得した反射」動作に対応する周波数と、局部神経筋肉サイクルに特有の周波数、すなわちシナプス反射(10−50Hz)、を捕捉するのに十分高いサンプル速度によって可能となる。振動に対応するコンポーネントのフィルタリングによって、シナプスサイクルに特有な形状がデジタル化信号に保持される。デジタル化したバイオ運動パターンは、習得した筆記動作や反射に特有な不変量、手の生理機能に特有な不変量、シナプス反射、および同様に重要な、署名をした本人の性格に特有な不変量の組み合わせを含む。
【0043】
これらの不変量のバイオメトリック特性は証明された事実である。なぜらな紙レベルでのそれらの投影は筆跡学での入門情報であるからである。空間バイオ運動パターンの取得および解析さらにはバイオ運動情報の組み合わせで決まる不変量は、署名認証の遥かに広範囲な解析を可能にする情報集合を生成する。従来の場合は、単一の情報カテゴリのみ、つまり従来では紙レベルからの痕跡のみ、が解析の対象となっていた。さらに後で説明する方法によって得られる不変量シリーズの潜在的または細分化した集合および最初のまたは導きだした信号の集合が初期署名情報構造の合成暗号解読を成す。暗号解読の精度は、情報取得サブシステムの感度と署名運動パターン純化プロセスを構成する信号解析の深さに依存する。システムの最終解は比較法の精度に反映され、署名安定性に依存する。
【0044】
他の認証方法やシステムと比較して、このシステムの長所は次の通り:
【0045】
−個人と解析される情報との間に緊密な相関関係がある(ダイナミック署名特徴はある個人に特有であり、それらは簡単にねつ造することはできない)。これらの特徴は、署名によってあるものに同意を与える個人の自由意志の表明と関連づけられる。人間が速いダイナミックな加速度を知覚する特化した感覚器官を生まれながら持っているのではないという事実をみれば、ねつ造するために意識的に分析や再現を試みてもそれはグラフィックな面のみに関わっているため、難しいことが分かる。
【0046】
− 心理学の研究によると、対象個人によって直ちに知覚できる動作、例えば署名など、を行うと第三者と比べてのその人の個人性の自然な自動投影メカニズムを引き起こすことが分かっている。したがって、正当な身元を有しまじめに認証する意志を持つ対象個人は本システムを押しつけがましいとは思わないであろう。
【0047】
− 手書き署名認証方法(グラフィックの観点に基づき、筆記圧力プロファイルを推定し、あるいはグラフィックシンボルの厚さ変化から加速度を推定する方法)は既に使用されており、これは他の認証方法(虹彩スキャン、指紋、DNAテスト)よりも押しつけがましさの点からより優しいと考えられる(http://www.biometricgroup.com)
【0048】
− バイオ運動情報が普通のペンと同じ形状や大きさを持つペンに対して考えられた装置によって取得される。バイオ運動情報は運動知覚構造とともに、データデジタル化のためおよびアルゴリズム処理を許容する各種物理レベルへの伝達のために、マイクロコントローラブロックを含む。
【0049】
− 本システムは特別に作られたサポート装置(グラフィックタブレット)またはナビゲータマーカー付きインテリジェントペーパ(例えばAnoto Pen)上に署名する必要はない。署名は自然に普通の任意の文書タイプ上に書くことができる。
【0050】
− 本システムへの情報の入力はナノテクノロジーを利用した知覚システム、すなわちMEMS加速度計、を使って行う。その利点は信頼性、高い精度、低コストおよび小さなサイズである。
【0051】
− 署名開始と完了検出方法は、コンテクスト情報とともに分析されるコンタクトマイクロ振動に対応する情報を利用する。
【0052】
− 認証を行う本システムは、初期データベースを動作させて実行すべき方法を実行し、他のすべてのカテゴリに対して区別や関連づけを調べることによってカテゴリの関連性を確立させる。この方法において、カテゴリは仮想対象個人のサンプルによって構成され、目標のつづり文化を代表するものである。
【0053】
− 情報を処理し、分析し、比較する方法(アルゴリズム)には2つある:SRA1とSRA2で、アルゴリズムとデータ前処理によって互いに独立している。これら2つの独立した方法の処理結果は最終判断法に対する入力となり、また現行署名データベース改善および更新に対してはフィードバックとなる。この情報は、空間運動情報、シナプス反射によって生成されたバイオメカニカルマイクロ動作を記述するコンタクト情報、および署名の境界を定める情報をを作成、前処理することによって得られるデータ構造を表す。
【0054】
− 本システムの信頼度を調節しシステム応答時間を低減させる方法であって、品質制御領域の統計誤差制御のための数学的手法をシフトさせて実行することによって行う。
【0055】
− システムの応答は現行比較データベース内に存在知るすべての署名サンプルに対し、使用された分析と比較方法によって、本質的に関連する。したがって、他のすべてのカテゴリに対して区別や関連づけを調べることによりカテゴリの関連性を確立させる手法は、入力署名を現行データベースの他のすべての対象個人のサンプルと比較し、システムが使用されている母集団の文化的つづりの特異性に対するシステムの依存度を低減させる。また、この方法によって、グローバルまたは順応可能なしきい値認証評価に基づく判定の欠点、すなわち他のドメイン関連の発明に特有な欠点、が取り除かれる。
【実施例】
【0056】
本システムは5つの情報処理サブシステムからなり、これらサブシステムは3つの物理レベルに階層化されて、手書き署名のバイオ運動パターンをデジタル化し、取得し、処理し、分析し、認証するように作られている。図1において、以下に説明するサブシステムの機能的関係を示す。
【0057】
レベル1(N1):サブシステム1−S1に対応する。これは2つの実体からなる:筆記具と運動解析コンピュータをベースとした集合体。
【0058】
サブシステム1−S1機能:
1.筆記具は普通のペンの機能を持つ。またプライマリ情報(署名の運動パターンやコンテクスト情報)を運動解析コンピュータをベースとした集合体に送る機能も持つ.
2.ペン内部に設けられた運動解析コンピュータは以下の機能を有する:情報取得、運動パターンおよびコンテクスト情報を電子フォーマットへデジタル変換、それを特定フォーマットに符号化し第2レベル−N2に送ること。
【0059】
レベル2(N2):「クライアントアプリケーション」がパーソナルコンピュータ内のサブシステム2−S2とサブシステム3−S3に組み込まれている。その性質上、コンピュータはハードウェアリソースをシーケンシャルまたは並列にレベル2内の方法やアルゴリズムに割り当てる。それによってサブシステム2とサブシステム3を形成する。サブシステム2とサブシステム3は次の機能を有する:
【0060】
サブシステム2−S2機能:
1.ペンから送信されたデータを取得し、チャネルごとに運動パターンとコンテクスト情報を復号化する。
2.署名開始と停止時点を決定する。
【0061】
サブシステム3−S3機能:
1.作業計画を選択する:管理、テスト、認証
2.選択した作業計画に特有な、ユーザとのインターフェイス
3.署名比較結果およびレベル3から送信された他の情報のローカルな管理
4.署名運動パターンのグラフィックモニタリング
5.一時的に記憶された情報のレベル3へのネットワークを介しての送信
【0062】
レベル3−N3はすべてのレベル2サブシステムに接続されているマルチプロセスコンピュータ(サーバ)ネットワークによって物理的に実現されている。その性質上、マルチプロセスコンピュータはハードウェアリソースをシーケンシャルにまたは並列にレベル3の方法やアルゴリズムに割り当てる。このようにしてサブシステム4−S4およびサブシステム5−S5を構成する。サブシステム4−S4およびサブシステム5−S5は次の機能を有する:
【0063】
サブシステム4−S4機能:
1.グローバリーにデータベースを作成管理する:対象個人、実際の個人、および特に比較アルゴリズムにしたがって処理された署名(サンプル、受け入れられたオリジナル、拒絶されたオリジナル)をテストし、比較結果とユーティリティフォルダとでマトリックスを構成する。
2.保存された履歴においてサンプルの更新を開始および管理する。確認されたオリジナルと以前のサンプルをそれらの分散に基づいて評価することによっておこなう。この更新機能が必要な理由は、署名のダイナミックな特徴は生物物理的また心理的要素によって影響を受けるかも知れないし、時間の経過にも影響されるからである.
【0064】
サブシステム5−S5機能:
1.フィルタリング、不変量抽出、計量、圧縮、その他の機能によってレベル2から取った運動情報を処理する。
2.専用の比較アルゴリズムを備え効果的に実行する。得られたマトリクスをレベル2から受け取った命令にしたがって評価する。
3.比較アルゴリズムの間で投票を行い、結果をサブシステム4に送って登録し、レベル2に送って表示させる.
【0065】
サブシステム/レベル間の機能的および物理的相互接続は、コンピュータを使用したシステムに特有の、既知の変換、転送およびダイナミック物理的リソース割当手法によって実現している。これらの方法を実現するために使われるオペレーティングシステム、言語プラットフォームおよび認証システムを構成するコンピュータに常駐するBIOS(Basic Input Output Systems)が、上記相互接続を実現し管理している。
【0066】
サブシステム1−S1,ペン、は通常のペンに合うサイズと機能を有する。さらに 追加要素および機能として、バイオ運動パターンとコンテクスト情報をデジタル化しレベル2にそれらを送る。ペン形状は図3に示す。ペンは次のもので構成される:
【0067】
1.特定の形状を持つ金属ケースで、ほぼ紙に使用されるもので以下の機能を確保する:
− PCB(Printed Circuit Boardプリント回路基板)2組み立てのための支持。PCBは運動解析コンピュータを使用したサブシステムのコンポーネントで、後者を説明する際に記述する。
− 運動解析コンピュータ利用システムの弱い電気信号を外部電磁変動から遮蔽する。
− 署名開始時での初期半静的位置決めを達成するためのエルゴノミクスで、紙のほぼ水平面上の直角軸に配置された加速度センサの−0.25g/+0.25gの領域内に位置決めする。
− インク詰め替えカートリッジリード部3に張力をかけて組み立てることによって機械的伝達経路を確保する構造。機械的伝達経路は、紙のセルロースマイクロファイバ上でペン先端を動かすことによって生じるマイクロ振動から、署名する人の手の動きの影響を受ける加速度センサまで延びる。筆記具の金属本体のリード部は、その特定の形状によって、詰め替えカートリッジリード部の案内チャネルおよびIR(Infra Red赤外線)4と受信IR Cの光学経路を実現するウィンドウを含む.
【0068】
2.ペン詰め替え3は通常の短い詰め替えである。タンクはプラスチックで作られ、筆記リード部側は金属である。詰め替えのリード部は機械的に張力がかけられて、金属本体内の空間に配置され、PCB(Printed Circuit Boardプリント回路基板)2によって支えられて、マイクロ振動をセンサまで伝達する。詰め替えカートリッジの頂部はMEMSセンサモジュールのセンターAとBによって形成される同じ軸上に配置される。同時に、この軸は金属本体組立て体の軸でもある。
【0069】
筆記用紙5は普通の紙である。セルロースファイバの微細な堆積物は、文字やグラフィックシンボルを書くことができるように表面に一様に分布している。ペンリード部と紙との接触によって発生する振動に含まれる情報は、ペンを使用する人の署名のバイオ運動を組み立てることに役立つ。
【0070】
サブシステム1の運動解析コンピュータをベースとした集合体はペンに埋め込まれている。5つの別々のチャネル(4つの加速度チャネルax,ay,bx,byとコンテクスト情報チャネル)によって、筆記用紙に対する運動および位置コンテクスト情報をリアルタイムに変換、取得およびレベル2へリアルタイムに転送することを空間的に実現するように特別に作られている。システム内のペンS1の数は1つ以上であってもよい。それはレベル3からの情報を処理する能力にのみ制約される。レベル1サブシステム(ペン)はレベル2サブシステムの唯一の周辺装置として機能する。
【0071】
運動解析コンピュータをベースとした集合体は次のものから構成される:
1.PCB(プリント回路基板)2。これは次の機能を達成するために特定の厚さとトポロジーを有する。すなわち個人が紙と相互作用することで発生する機械的マイクロ振動を受け取る機能、および手の動きの空間的変化を最適に加速度センサに転送する機能。
【0072】
2.MEMS−加速度センサマイクロシステムAとB
各MEMSマイクロシステムは互いに直角に配置された2つの加速度センサを有する。加速度センサマイクロシステムの配置は、仮定の動作中心および紙平面に対して加速度運動の求心および並進成分を取得するために、またマイクロ振動(コンタクト情報)を取得するために最適な感度を達成するようにおこなう。センサが生成したアナログ信号はフィルターがかけられて応答周波数バンドをおよそ100Hzに制限する。
【0073】
3.IR(Infra Red赤外線)トランスミッター4は波長が約800nmのビームを射出する。このビームは赤外線を書記用紙に照射する。赤外線レシーバーCは紙5から反射された赤外線を捉える。この反射光量は紙からの距離に比例する。マイクロコントローラ6のアナログ比較計器によって、ペンリード部と紙との距離に関してしきい値タイプの評価機能が得られる。
【0074】
4.センサから送られる情報を取得するためのマイクロコントローラ6。バイオ運動パターンに含まれる情報は、典型的なプログラム(ファームウェアASM)の制御のもとで捕捉され、デジタル化されそして転送される。このプログラムはマイクロコントローラに組み込まれた主要コンポーネントの機能を管理する。
− アナログ/デジタルコンバータタイプSAR(Successive−Approximation−Register),10バイト;
− アナログマルチプレクサ;
− RISC(Reduced Instruction Set Computer)タイプALU(Arithmetic/Logic Unit),8バイト/ワード;
− メモリ;
− アナログ比較器;
− UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)
【0075】
マイクロコントローラプログラムはバイオ運動神経筋肉と物理現象の変動間隔に最適に対応することにより、情報取得に必要な以下の一般的な電気パラメータを生成する。
− 加速度センサが提供する情報のために4つのアナログ情報取得チャネルが記述されたトポロジーに従って配置されている;
− アナログ情報の各チャネルでのサンプリング周波数は1000サンプル/秒である;
− ADCコンバータ解像度=10ビット;
− 電圧基準は比で表示;
− 加速度に相当する電気信号の振幅の許容変動間隔は0g=+/−1.5g;
− ALUクロック周波数=8MHz;
− 紙の場合、しきい値距離センサCが提供する情報のために設けられる取得チャネルの数=1;
− ボーレートUART=115.2KB
【0076】
5.取得したデータをUSBフォーマットとプロトコルに変換してレベル2に送信するための組み込まれたマイクロシステム7
【0077】
6.レベル1をレベル2に接続するためのUSB接続ケーブル8。ケーブル接続を選ぶ理由は3つある:レベル2に送られた情報を不当にスキャンされることを避けるため;公共で使用する場合、装置の保持のため;そしてメインテナンスが容易(バッテリー使用が不要)であるためである。署名バイオ運動パターンに対する影響を最小にするためにケーブルの厚さ(直径=2.5mm)と柔軟性(Rc=5mm)を選んだ。
【0078】
バイオ運動パターン情報構造とその変化を空間的に取得することは、4つの慣性MEMS加速度センサの信号を捉えることによって行う。センサは2つずつ互いに直角に組み込まれ、2つの特定位置A,BにPCB2トポロジーによって配置される。2つの位置は図3においてMEMS加速度センサA,Bそれぞれに一致する。MEMSグループAとMEMSグループBは以下に示すように配置される:
− Aグループのx感度軸は感知方向においてBグループのx感度軸と一致し、またAグループのy感度軸は感知方向においてBグループのy感度軸と一致する。xおよびy加速度計感度軸はそれらのキャプセルの形状軸に対応する。
− MEMS加速度センサA,Bの2つの対は、それぞれの対が詰め替えカートリッジの頂部と同じ共通軸上に慣性質量を保つように配置される;
− Aの中心とBの中心との距離Dsは30mmより大きい。これは空間動作の求心コンポーネントを増幅するためである;
− カートリッジの頂部とAグループとの距離dは15mm未満であるが、紙のレベルにおいて運動情報を区別するには十分である;
− MEMSグループA,Bはそれらの間の平行な平面に配置され、紙面とほぼ平行である。これによってペン軸の空間求心運動コンポーネントを増幅したり、引き算したり、抽出したりできる。
【0079】
ペン軸はAおよびBグループのxとy軸によって定められた平行面に対して固定角度α=45°で交差する。半静止位置において、署名行為を始める直前には、AとB MEMSモジュール感度平面はペン形状のために紙面にほぼ平行である。また、同じペン形状のために、異なる署名の間でもそれ自身の軸周りにペンが回転するのを最小限に抑えられる。したがって書記動作に対して最大のセンサ感度を確保できる。署名プロセスが開始されると、書記動作の性質上、瞬間的な軸のズレがどれかの方向に生じ、その大きさは最初の位置から+/−15°の角度β以下のズレである。
【0080】
加速度瞬間変化は重要な情報を含んでいる。したがって方向性をもつ構造によって生じる制約範囲内の異なるペン位置はバイオ運動パターンの本質を変えるものではない。センサ位置トポロジー、情報取得技法およびペンの形状によって、ペンの異なる位置は瞬間的変化に影響を与えることなく制限されるが、署名グローバルオフセットとして現れる。位置オフセットがバイオ運動パターンに及ぼす影響は、同じ個人の2つの署名の自然な差異よりも小さい。位置オフセットは、その方向における投影によって、重力場に相当する静的加速度を取り込むMEMSセンサの能力を表している。ペンの瞬間的傾きは、固定された書記平面と署名シンボルとの間の相互作用によって生じるが、これがセンサ軸上への重力場のダイナミックな投射によって加速度を発生する。この加速度はセンサ慣性質量において、運動メンタルパターンによって生じるバイオ運動加速度と本質的に組み合わされている。
【0081】
コンタクト情報の取得、これはシナプス反射に含まれる不変量の数列を特徴づけるものであるが、ペン要素構造によって確保される。したがって
− ペンリード部頂部とMEMSグループAとの距離dは15mm未満であり、これは紙レベルにおけるコンタクト情報を増幅するには十分である。
− PCB2(プリント回路基板)の厚さは0.5mm未満である。この薄さは、シナプス反射を特徴づける振動をMEMSセンサに送る機械的な経路を融通性と柔軟性とで確保するために必要である。
− 運動解析コンピュータをベースとした集合体は25グラム未満である。これはマイクロ振動をMEMSセンサへ送信する際に望ましくない慣性影響を抑えるためである。
− ペンリード部3はプリント回路基板に接しておりペン頂部とPCB2との間で拘束されている。詰め替えカートリッジはシナプス反射を特徴づける接触マイクロ振動の特定周波数バンドの送信を可能にする。
− 運動解析コンピュータをベースとした集合体は金属ケース内に4つの固定点において柔軟に支持されており、これによって接触マイクロ振動の特定周波数バンドがPCB2からMEMSセンサへ確実に送信される。固定された支持点は切削によりPCBに作った突起である。それらのPCB上での配置は、それぞれの長辺に2つずつ対称的に配置される。それぞれの辺におけるそれらの配置はペンリード部からの最初の支持点が距離Dsの半分の位置に、また第2の支持点が最初の支持点からペン配線端へ向かって距離Dsの位置にある。
【0082】
署名バイオ運動パターンはデジタル信号を取得することによって得られる。デジタル信号取得は以下のものが含まれる。
− 次の3つのカテゴリに相当する固有加速度:a)メンタル運動パターンによって生成される加速度、b)シナプス反射パターン(コンタクト情報)によって変調されるマイクロ振動によって生成される加速度、c)センサ軸上の重力場のダイナミック投射によって作られる加速度。これら加速度カテゴリの固有の構成が4つのセンサのそれぞれについて生成される。
− センサの特定の空間位置によって4つの加速度のセットが捉えられる。署名を開始した時点から終わった時点までの空間運動動作およびペンが紙に接触していないときの動作での加速度が捉えられる。
− 赤外線センサCによって捕捉されるコンテクスト情報。
【0083】
USBドライバ9を使って、サブシステム2(S2)はブロック10によってレベル1からデータを取得する。データは復号され11一時的にサーキュラーバッファ12に保存される。署名開始および終了時点がサーキュラーバッファに保存されたデータを分析(開始停止解析)13することによって検出される。グラフィックインターフェイス14によって、取得されたデータ、取得エラーおよび開始停止解析結果がグラフィックモニターに映し出される。正当な停止が検出されると、取得動作は自動的に停止し、取得された署名は一時的にブロック15に保存され、グラフィックインターフェイス16によって表示される.現在の署名モニターインターフェイスウィンドウを図6に示す。これは以下の要素からなる.
− 現行の個人と現行の取得フォルダ17を示す情報
− 現行の取得の状態インジケータ18
− センサグループAのモニターウィンドウ19
− コンタクト情報20の有無を知らせること
− MEMSグループAのxとy軸上の加速度のグラフィック表示21
− センサグループBのモニタリングウィンドウ22
− コンテクスト情報23の有無を知らせること
− MEMSグループBのxとy軸上の加速度のグラフィック表示24
− 制御コマンドと現行取得の管理コマンド25
【0084】
外部変動を除去するために、システムユーザが署名取得を確認した後に、署名をレベル3に送って解析をする。
【0085】
サブシステム1が紙に接した状態で動く際に動作区間を決定する方法、開始停止法、はサブシステム1(信号ax,ay)から得られた復号化されたプライマリ信号を分析することによって得られるコンタクト情報とコンテクスト情報(紙までの距離)との組み合わせを、評価することでおこなう。紙と接した状態でペンが動くと、書記動作に固有な周波数よりも遥かに高い周波数を有するコンポーネントの信号が生じる。これらのコンポーネントは微細な紙のでこぼこによって決まり、センサの感度やペンのサンプリング速度によって増幅されるが、センサAからの信号のコンポーネントの方が大きい(紙により近いため)。紙への接触を正確に検出するために、これらのコンポーネントをアナログ信号の変動によって生じるコンポーネントから分離しなければならない。同じ署名において、ペンが紙に接触している状態のいくつかの開始停止区間を増幅することができる。署名全体の開始停止を決定するには、取得した信号と検出した開始停止区間をグローバルに解析することによって行う。この方法は2つの主要コンポーネントを有する:データ処理コンポーネントと開始停止時検出コンポーネントである。
【0086】
MEMSセンサAから受け取ったデータは図7に示すように処理される。それぞれのサンプルグループ(ax,ay信号サンプル)はプライマリデータバッファ26と呼ばれるサーキュラーバッファに保存される.プライマリデータ解析を開始するには、バッファは最低数のサンプルグループ(およそ0.5秒に相当)27を蓄積しなければならない。プライマリデータは2つの平面でリアルタイムに処理される。ペンから受け取った信号のそれぞれのサンプルグループについてこの処理が行われる。
【0087】
a)コンタクト情報解析:
− プライマリデータバッファ28からの信号フィルタリング:プライマリデータバッファに保存されたax,ay信号はハイパスフィルタFFTタイプによってフィルタがかけられ、コンタクト情報(i1,i2)を表す2つの信号を取得する。
− コンタクト情報解析30:最後の20サンプル(経験的に決められた数)について、以前生成された2つの信号のそれぞれに対して統計的変動を求める。
− コンタクト情報レベル31の保存:以前求めた変動値は、現行サンプルグループに対応して、変動レベルアナライザサーキュラーバッファに保存される。
【0088】
b)コンテクスト情報解析:
− 書記位置29におけるペンの検出
− ペン位置アナライザサーキュラーバッファ32へのデータ保存
【0089】
変動アナライザサーキュラーバッファとペン位置アナライザサーキュラーバッファの寸法は経験的に決められる。
【0090】
開始停止時点の検出は、state machineの実施を示す図8のダイアグラムに従っている.
【0091】
状態記述:
a)Nサンプル33の取得:コンタクト情報を解析するためにN個のサンプル(Nの値は経験的に決められる開始停止パラメータによって影響される)を蓄積する。この状態から開始時点評価状態への変遷はN個のプライマリデータサンプルを取得した後におこなう。
b)開始時点評価34:これは変動レベルアナライザサーキュラーバッファとペン位置アナライザサーキュラーバッファを評価することによっておこなう。開始の検出は以下の条件によっておこなう。
− i1信号またはi2信号の変動レベルは、変動レベルアナライザサーキュラーバッファからの最低限のサンプル数について、前もって定められたレベル(コンタクト情報しきい値レベル)よりも高くなければならない。
− ペン位置アナライザサーキュラーバッファからの最低限のポイント数(書記位置における最低ポイント数)について、ペンは書記位置になければならない。
【0092】
開始を検出したら次の段階に移る。
c)停止時評価35:これはコンタクト情報アナライザバッファとペン位置アナライザサーキュラーバッファを評価することによっておこなう。i1信号とi2信号の変動レベルが解析バッファからの最低ポイント数(最低非接触ポイント数)についてあらかじめ定められたレベル(コンタクト情報しきい値レベル)よりも低いかどうかを調べる。あるいはペン位置アナライザサーキュラーバッファからの最低ポイント数(書記位置における最低ポイント数)について、ペンが書記位置にないかどうかを調べる.
【0093】
停止を検出すると次の段階に移る。決定された停止の時点は内部停止の時点であり、これはペンが紙に接触している区間の一つを定める。
【0094】
d)内部開始時点の評価36:これは開始時点評価と同等であるが、他のパラメータ(コンタクト情報しきい値レベル、最低コンタクトポイント数、書記位置における最低ポイント数)に関するものである。署名動作中ではペンが紙に接触していない瞬間がいくつかあり得ることを考慮すると、前に求めた停止が最終の停止なのか単に途中の停止(ペンが紙に接触している区間の一つを定義する)なのかを判断しなければいけない。経験的に定めた時間(署名中にペンが引き上げられたときの最大時間を測定することで求めた時間)に、内部開始が検出されなかった場合、前に検出された停止は最終の署名停止と考えられる。
【0095】
最小レイテンシー(以前説明した時間の長さ)の後に、あるいは内部開始が検出された後に、次の段階に移る。
【0096】
e)停止確認37:取得された署名は最低限のサンプル数を有していなければならない。そうでなければこのプロセスは開始時点評価遷移から再び始められることになる。最低限のサンプル数は経験的に決められ、不用意なペンと紙の接触を検出してしまうことを避けるために導入される。
f)署名の保存38:取得された署名を保存する。
【0097】
サブシステム3(S3):これはユーザインターフェイス、ローカル署名管理、署名結果比較およびレベル3管理からの他の情報について管理し、レベル3との通信をおこなっている(設定、署名送信など)。
レベル2の2−3のサブシステムの集合に対して、1つのレベル1サブシステムが対応している。
【0098】
レベル3のサブシステム4(S4):これは以下を含むデータベースを生成し管理する。テスト対象個人、本物の対象個人、比較法に従って処理された署名(サンプル、受け入れられたオリジナル、拒否されたオリジナル等)、認証結果と組み合わされた証拠、およびユーティリティフォルダ等を含む。このサブシステムは対象個人の身元データとサンプルを保存する。サンプルは対象個人を登録する過程で図9に示すようにシステムに導入される。システムデータベースからの対象個人サンプル数(spec.no.)は経験的に決められたパラメータであって、オリジナル識別レベル、ねつ造署名拒絶レベルおよび認証時間に影響を及ぼす。「変えられた」署名がサンプル(様々な外部要素によって影響される取得エラーや署名)としてシステムに入力されるのを防止するために、対象個人の登録プロセスにおいて取得した署名を解析し認証する方法を実現した。対象個人のデータを導入した後に、N個の対象個人の署名を取得する。これらは解析されて署名グループ分散(分散は識別法SRA1に基づいて計算する)を求める。N個の署名の中から、分散の見地から決めた最初のサンプル数の署名を保存する。これらは識別法の特定フォーマットに変換されシステムデータベースにサンプルとして保存される。
【0099】
このサブシステムはまたサンプル更新方法を実現する。これは長期間にわたって生物物理学的および心理的要因によって生じる署名の変化を判断するものである。サンプルは認証プロセスにおいて入力したオリジナルに基づいて更新され、対象個人に属するものとしてシステムによって認識される。この方法はオリジナルおよびデータベースに保存されているサンプルを分析し、それらの相対的ばらつきにしたがって、サンプルを最初のn個の分析された署名に取り替える。このメカニズムはデータベースに最低限の数のオリジナルが蓄積されたときに開始される。これはいくつかの不確かなオリジナルによって変更が導入されるのを防ぐためである。
【0100】
サブシステム5:これはレベル2からの署名を処理し、(データベースからランダムに対象個人を選ぶことにより)それらの署名を比較するするために対象個人の集合(集合の大きさは最適な対象個人数No)を決め、署名を識別方法の特定フォーマットに変換し、これらの方法を実行する(図10)。異なる識別方法の結果を組み合わせて解釈することによって最終的な認証結果を得て、それをレベル2に送る。このサブシステムはまたシステム内の対象個人登録プロセスにおいて導入された署名比較もおこなう(図9)。
【0101】
このサブシステムはオーブンアーキテクチャーを有し、新しい署名識別方法を実施できる。
【0102】
SRA1は2つのモジュールを有する。
a)入力データ処理モジュール:代表的な情報が一連の操作によって入力データから抽出され、その情報はサンプル署名に関するデータを保存するために使われまた識別される入力署名(オリジナルまたはねつ造された署名)が構成するデータを表す。この一連の動作は署名変換法39と呼ばれる。
【0103】
b)サンプルおよび入力署名比較モジュール
この一連の動作は署名比較法40と呼ばれる。
署名変換法と署名比較法を組み合わせたものが署名識別法SRA1(署名識別アルゴリズム1)と呼ばれる。
【0104】
サンプル署名は変換され署名データベースに保存される。その後、入力署名(オリジナルまたは偽造された署名)が現れたら、変換されてデータベースからの署名と比較されて、入力署名とサンプル署名との間の距離が計算され、入力署名の対象個人がサンプル署名の対象個人と同じ人物かどうかを判断する。
【0105】
後で比較処理に使用できるフォーマットに入力署名を変換する過程は以下のステップを含む:
a)入力署名を署名コンポーネントに変換する。
b)署名コンポーネントを不変量に変換する。
c)不変量数列を圧縮し重みをつける。
【0106】
S1において、ペンはサブシステム1で説明した通りに配置される加速度センサA,Bの2つのモジュールから信号を発信する。署名動作中に、それぞれのモジュールは2つの信号(2つの座標軸x、y上への加速度投影)を発生する。したがって次の入力署名は次の信号を生む。
−ax:ポイントAのx方向においてMEMS Aによって作られた信号
−ay:ポイントAのy方向においてMEMS Aによって作られた信号
−bx:ポイントBのx方向においてMEMS Bによって作られた信号
−by:ポイントBのy方向においてMEMS Bによって作られた信号
【0107】
実際それぞれの信号は正の整数として表されたサンプルベクトルである。ベクトルは波形の数値表現である。同じ署名のすべてのベクトルは同じ長さ(同じサンプル数)を有する。
【0108】
それぞれの入力信号グループax,ay,bx,byから次のコンポーネントが得られる:
【数1】
【0109】
それぞれのコンポーネントは入力署名と同じ長さを持つベクトルである。FFTF(x)は直接的でx信号とは逆の高速フーリエ変換によるフィルタリングに等しい。フィルタは低域通過フィルタである。フィルタリング係数は経験的に決められペンに特有なものである。
【0110】
サンプルコンポーネントの数列を解析することによってこれらコンポーネントを構成する不変量を求める。不変量とは信号振幅や周波数における不変な波形の要素である。信号が長さLを有す場合、不変量はn個の連続するポイントのグループを解析し、それぞれの信号ポイントから開始する(最新のポイントはもちろん除外するL−ENT(L/n)*n、ここでENT(L/n)はL/nの全体を表す)。
【0111】
不変量は多くの方法で定義できる。N−1個の線分はn個のポイントで定義される。ここでn=3を選ぶ。p0,p1を2つの線分の傾きとする。以下のm=13個の不変量タイプ(図11)が定義され、それらに0とm−1の間のコードが関連づけられる。
code0=0:p0>0,p1>p0
code1=1:p0>0,p1=p0
code2=2:p0>0,p1<p0,p1>0
code3=3:p0>0,p1=0
code4=4:p0>0,p1<0
code5=5:p0=0,p1>p0
code6=6:p0=0,p1=p0
code7=7:p0=0,p1<p0
code8=8:p0<0,p1>0
code9=9:p0<0,p1=0
code10=10:p0<0,p1<0,p1>p0
code11=11:p0<0,p1=p0
code12=12:p0<0,p1<p0
【0112】
これらの不変量タイプ/コードはベースタイプ/コードと呼ぶ。確かにこれらの不変量は信号周波数と大きさに依存しないことが分かる。信号が例えば2倍に増幅されるあるいはその周波数が2分の1に削減された場合、同じ不変量の数列が得られる。
【0113】
さらにすべての不変量数列が可能という訳ではないことも理解できる。例えば、0タイプ不変量の後には、0,1,2,3,4タイプの不変量のみが続くことになる。
不変量を決定することによって、すべてのコンポーネントが3重数列(invi,ari,tri)に変換できる。3重数列は以下を含む:
− 不変量ベーシックタイプinvi
− 不変量の基準振幅ari。基準振幅はいくつかの方法で定義できる。ここでは不変量を定義する最初のn個のサンプルの振幅が基準振幅と考える。
− 不変量の基準瞬間tri。不変量の基準瞬間はいくつかの方法で定義できる。ここでは波形が開始されてから最初のテストサンプル(不変量を定義するn個のサンプル)の出現の瞬間を基準瞬間と考える。
【0114】
波形に近い形を描くために、波形のそれぞれのari不変量の基準振幅を、同じベーシックタイプの最初の以前の不変量のark基準振幅と比較する:tip(ari)=tip(ark)=bi(同じタイプの以前の不変量が存在しない場合、ark=ariと考えられる)。3つのケースがある:
a) ari<ark この場合i不変量はbiコードを有する
b) ari=ark この場合i不変量はbi+mコードを有する
c) ari>ark この場合i不変量はbi+2*mコードを有する
【0115】
この操作によって、それぞれのコンポーネントは0と3*m−1の間の値を持つ拡張コード(または拡張タイプ)と呼ばれるコード列として表される。
ベースコードは拡張コードから推定できることが分かる。
【0116】
さらにすべての連続した拡張不変量数列が可能というわけではないことも分かる。例えば、3つの連続した不変量が同じベースコード(例えば0)を持つ場合、第2の不変量が第1の不変量よりも大きな基準振幅を持つことはあり得ないし、第3の不変量が第2の不変量より低い基準振幅を持つこともない。
【0117】
拡張コードで符号化した不変量数列によって表される波形を処理する次のステージは、不変量数列を圧縮し重み付けをすることである。本質的に、圧縮はあるタイプの単一不変量をこのタイプの不変量数列から除外することである。重み付けはいくつかの要素に依存する重み(またはコスト)をすべての不変量に付加することである。これは以下に説明する。
【0118】
圧縮と重み付け法は以下のステップを含む。
a) 不変量セクションチャートを決定する。セクションチャートのそれぞれのエントリは同じベースタイプの1つまたは複数の連続した不変量の数列に対応する。エントリには以下のものが含まれる:
−セクション拡張タイプ。これはセクションを構成する不変量の拡張タイプである。
− セクション基準振幅はいくつかの方法で定義できる。基準振幅はセクションを構成する複数の不変量の基準振幅の合計と考えられる。
− セクション基準時点はいくつかの方法で定義できる。基準時点は、セクションを構成する複数の不変量の基準時点の合計と考えられる。(これは署名の端部に位置する不変量の重みを大きくすることになり、実験結果と符合する)。
b) セクション拡張タイプから抽出したベースタイプとしてキーを使うことによってセクションチャートを並べ替える。
c) セクションチャートは同じベースコードを持つサブセクションに分割する。
d) セクションチャート内の入力番号が各サブセクションの長さを決める。
e) それぞれのサブセクションについて、サブセクション要素の基準振幅の平均が得られる(サブセクション要素の基準振幅をサブセクション長さで割ったものの合計)。
f) それぞれのサブセクションについて、要素の基準時点の平均が得られる(サブセクション要素の基準時点をサブセクション長さで割ったものの合計)。
g) 各サブセクション要素の基準振幅はサブセクション要素の平均基準振幅に取り替えられる。
h) 各サブセクション要素の基準時点はサブセクション要素の平均基準時点に取り替えられる。
i) セクションチャートは最初の順序で並べ替えられる。この時点で、セクションチャートの各要素は修正された基準振幅と修正された基準時点を有する。
j) セクションチャートのそれぞれの入力に対して、2組(invi,costi)の別の不変量数列が生成される:
− 不変量inviの拡張タイプ(セクション要素の拡張タイプに等しい)
− セクション要素の基準瞬間と基準振幅の合計に等しい重さ(コスト)costi
k) 得られた数列の不変量重みは調整カーブ(機能)に従って調整する。この曲線機能は多くの方法で定義できる。この瞬間においてコンポーネント波形の(不変量番号における)長さがLである場合、その曲線は次のように定義されると考える:
− 最初のL/4不変量は0.5を乗じた重みを有する。
− 次のL/2不変量は1を乗じた重みを有する。
− 残りの不変量は1.5を乗じた重みを有する。
【0119】
署名比較モジュールは2つの署名間の比較をおこなう。2つの署名を比較するには、それぞれの署名にコンポーネント集合を使う。各コンポーネントは不変量の連続である。それぞれの不変量は以下の情報を関連づけられている:不変量の拡張コード(そのベースコードはいずれ推定することができる)と重み(コスト)。
【0120】
2つのコンポーネント間の距離を求めるために、Levenshtein距離を用いる(Christian Charras,Thierry Lecroq:Sequence comparison,LIR(Laboratoire d’Informatique de Rouen)et ABISS(Atelier Biologie Informatique Statistique Sociolinguistique)Faculte des Sciences et des techniques Universite de Rouen 76821 Mont−Saint−Aignan Cedex France)。この距離は次のように説明できる。
a) Levenshtein距離によって比較されたシンボルのタイプは拡張不変量コードである。
b) シンボルコストは不変量重み(コスト)である。
c) (Levenshtein距離に従って)2つの同一タイプのシンボルを比較する場合、コストは2つのシンボルのコスト差のモジュールに等しい。
d) (Levenshtein距離に従って)2つの異なるタイプのシンボルを比較する場合、コストは以下のものに等しい:
i. 削除に関しては、コストは削除されたシンボルコストである。
ii. 挿入に関しては、コストは挿入されたシンボルコストである。
iii. 代入に関しては、コストは2つのシンボルコストの合計である。
e) 最後に、結果(Levenshtein距離)がDである場合、考慮される距離(正規化された)dは:
【数2】
ここでcostiとcostjは2つのコンポーネント不変量のコストを表す。
サンプル署名SAのmコンポーネントを入力署名SBのmコンポーネントとそれぞれ比較するとm個の距離が得られる。m個の距離を組み合わせるのにいくつかの方法がある。最終距離dSRA1はm個の距離の平均と考える:
【数3】
【0121】
SRA2法は4つのモジュールを含む:
a) 入力署名のためのフィルタリングモジュール
入力データは異なる周波数範囲を有する2つの情報タイプを含む:ペンリード部と紙との接触情報および複雑な手の動き情報を有する。この情報から後で処理される手の空間的動きに関する情報が得られる。紙との接触によって発生したマイクロ振動に関する情報を選択的に除去することによって、シナプス反射パターンに対応する情報を得る。この手順はフィルタリング法41と呼ぶ。
【0122】
b) 後処理および入力データ作成モジュール
一連の操作により、フィルターをかけた入力データから代表的な情報を抽出する。この情報を使ってサンプル署名に関するデータおよび識別すべきオリジナルとねつ造署名で構成されるデータとを保存する。これらの操作は後処理と信号生成法42と呼ぶ。
【0123】
c) 2つの信号、一つはサンプルもう一つはオリジナルまたはねつ造署名、を比較するためのモジュール。
これらの操作は信号比較法43と呼ぶ。
【0124】
d) コンポーネントの重さに基づいて署名距離を決定するモジュール。これらの操作はコンポーネント重さ要素に基づく署名距離決定モジュール44と呼ぶ。
【0125】
フィルタリング法、後処理および信号生成法、コンポーネント重さ要素に基づく署名距離決定モジュール、および信号比較法の集まりは署名識別法SRA2(署名識別2)と呼ぶ。
【0126】
フィルタリング法、後処理および信号生成法、コンポーネント重さ要素に基づく署名距離決定モジュール、および信号比較法の組み合わせモードを図13に示す。サンプル署名は変換されて署名データベースに保存される。
【0127】
続いて、新しい署名が表示されると、SRA2はこれを変換してデータベース内の署名と比較して、現行の比較データベースの他のすべての対象個人のサンプル署名と入力された署名との距離を計算する。得られた距離から、目標の対象個人を含む他のすべての対象個人のサンプル署名に対する入力署名のリレーショナルデータベクトルを求める。このデータベクトルはSRA1が生成した同じ入力に対応するベクトルとともに、結果組み合わせ法のための入力情報になる。
【0128】
フィルタリングモジュール(図14)はEMD手法(経験的モード分解)に基づいて作られた、フィルタソフトウェアによって構成される。これは、振幅/周波数変調されたキャリアに乗ってレベル1から送られてくるシナプス反射動作による半共鳴マイクロ振動の運動パターンを最適に分離する。瞬間的書記速度の変化はマイクロ振動周波数変調を発生する。また神経筋肉シナプス動作の変化は振幅変調を発生する。
【0129】
この方法は4つの信号のそれぞれに適用されて、加速度を表す(ax,ay,bx,by)
フィルタリングアルゴリズムに使われるベース機能は次の勾配を計算することである:
【数4】
これは以下に定義する間隔とステップで適用される。
n個の数値要素からなる最初の数列、V(1..n)1、はフィルターされるペンからのアナログ信号サンプル値を表す。
【0130】
フィルターは以下のステップからなる手順を複数回実行する(入力数列V、出力数列W):
Step1:W1j=V1j
Step2:C1=slope([Vi−1j,Vij],[i−1,i])
C2=slope([Vi−1j,Vij,Vi+1j],[i−1,i,i+1])
Wij=S=Vij−C1*k1+C2*K2,i=2…n−1
(k1とk2は経験的に決められた定数であり、それぞれ0.935と0.93である。)
これらの計算の結果Wはn−1個の要素を有する。
Step3:Vij+1=Wij,i=1…n−j
j=1…N,N=2*Z,Z>0,整数
この手順はN回繰り返す。
【0131】
数値Nはマイクロ振動に対応する高周波数減衰を決定する。フィルターは1:4から1:10の範囲でその比を最適化する。有用な周波数と減衰周波数の間で経験的に最適値はN=10である。
【0132】
フィルタリングした後に得られた信号は、シナプス反射動作によって生じる動作パターンにより手の空間動作の構成を表す。この技法はバイオ信号処理である本来的に変調されたAM−FM,すなわちEMD(“Empirical Mode Decomposition−The University of Birmingham School of Computer Science−MSc in Advanced Computer Scinece−EEG−Handbook 2004/2005”,“DETRENDING AND DENOISING WITH EMPIRICAL MODE DECOMPOSITIONS”Patrick Flandrin,Paulo Gonc,alves and Gabriel Rilling−Laboratoire de Physique(UMR 5672 CNRS),Ecole Normale Superieure de Lyon).
【0133】
それぞれのフィルターをかけられた入力信号グループax,ay,bx,byから信号構成および後処理モジュール42において以下のコンポーネントが得られる。
【数5】
【0134】
したがって、それぞれのコンポーネントは入力信号と同じ長さを持つベクトルであり、入力信号から導きだされた信号と考える。
最初の比較段階は以下の基準に従って信号を分割することである。
信号構成および後処理モジュールから得られた両方の署名(サンプル、オリジナルまたはねつ造署名)の信号を、極端な信号ポイント上で(極大および極小)マークする。4つのマーカーの値で複数のセクションを作成する。次のマーカーに移って同じ手順を繰り返す(図15に示すように)。
【0135】
入力署名とサンプル署名に対応する2つの信号の間の距離を算出するために、アルゴリズムタイプDTW(Dynamic Time Warping)を使用する。この説明は以下の通り。
a) このアルゴリズムは4つのマーカーの値で構成されるセクションに適用される。
b) 2つのセクション間の距離の評価のために、F−Test機能を使う。この機能は2つの数列が同一となる確率を出す。(Kishore Bubna Charles V.Stewart,Department of Computer Science,Rensselaer Polytechnic Institute Troy,NY 12180−3590“Model Selection Techniques and Merging Rules for Range Data Segmentation Algorithms”)
【0136】
次のチャートにおいて、水平な行にはQ信号が生成したセクションが配置され、縦の列にはW信号が生成したセクションが配置される。
【表1】
D(i,j)=min{D(i−1,j−1),D(i−1,j),D(i,j−1)}+d(qi,wj)
【数6】
ここで
qi: 信号1(Q)のiクラスのセクション
wi: 信号2(W)のjクラスのセクション
ni: セクションqiの長さ
nj: セクションwjの長さ
avei: セクションqiの中間2乗偏差
avej: セクションwjの中間2乗偏差
c) 最後に、ゴリスムで求めた距離がDqwの場合、署名間の距離Dは:
【数7】
ここで
Nq: Q信号におけるセクション数
Nw: W信号におけるセクション数
【0137】
min(Nq,Nw)がDqwよりも小さい可能性があるのでDが0よりも小さい確率がある。したがって得られた結果を[0…1]区間においてレートセッティングする必要がある。このレートセッティングは実験的に得られたデータおよび以下の式に基づくものである。
【数8】
ここでVminは実験的定められた最小のD値を表す。
【0138】
それぞれの署名コンポーネントは、署名距離決定モジュール内の大きなデータベース上で経験的に決定された重さに関連づけられる。これはコンポーネント重さファクタ43に基づいておこなわれる。
【0139】
サンプル署名SAのN個のコンポーネントを入力署名SB(オリジナルまたはねつ造)のN個のコンポーネントとそれぞれ比較することによってN個の距離が得られる。N個の距離を組み合わせるにはいくつかの方法がある。最終距離DSRA2はN個の距離の重み付け平均と考える:
【数9】
ここで
N: 署名のコンポーネント信号の数
pi: コンポーネントIの重さ
di: コンポーネント信号SA(i),SB(i)間の距離
【0140】
入力署名を現行の比較データベースと比較することによりSRA1とSRA2によって得られた2つのマトリックス(行)は組み合わされて最終結果のマトリックスを生成する。最終結果のマトリックスは大きい順に並べ替えられる。認証プロセスの最終回答は、入力署名と対応するサンプルとの比較をした位置で構成される。最終回答と許容リスク係数に基づき、システムは署名をオリジナルとして受け入れるか、ねつ造として拒絶するかを決定する(例:許容リスク係数が低いシステムの場合、最終回答において、入力署名と対応するサンプルとの間の最小距離に相当する最初の位置も存在する場合、署名はオリジナルとして受け入れられると考えられる)。
【0141】
アルゴリズムの性能を評価するために、いくつかのインジケータが導入される。
NOA=受け入れられたオリジナルの数
NFR=ねつ造として拒絶された数
NS=サンプル数
NF=ねつ造署名の数
NO=オリジナルの数
K=対象個人のサンプル数
N=対象個人の数
次のインジケータはほぼシステム性能を表している:
a)オリジナルの取り扱いにおけるシステムの成功率(RSSO)
RSSO=NOA/NO
b)ねつ造署名の取り扱いにおけるシステムの成功率(RSSF)
RSSF=NFR/NF
c)システムの成功率(RSS)
RSS=(NOA+NFR)/(NO+NF)
【0142】
インジケータは、各人がK個の署名サンプル(NS=N*K)を登録したN人の対象個人を有するデータベースを参照することによって得られる。高いシステム性能は3つのインジケータの最大値によって特徴づけられる。
【0143】
性能評価をおこなうには、適用領域とその領域の許容リスク係数によって大きさと重要性を選択した対象の集合に対して、実験することによっておこなう。ねつ造署名に対する性能に関して、システムはオリジナル署名の数とほぼ同じ数のねつ造署名を使ってテストされる。
【0144】
上記のインジケータが理想の値100%に達することは実際上あり得ないので、上記認証システムは複数の個人認証手順とシステムからなる鎖の一つの環(並列または直列に組み込まれた環)を成している。このシステムは自動的にまた遥かに客観的に署名チェック手順を実現する。この手順は普通難しく、多くの場合筆跡学の専門的知識や資格を持たない人、例えば銀行員、登録係、カードショッピングなどのレジ係、によっておこなわれている。
【0145】
前記の認証方法の一つの技法は次の通り:入力署名を、目標の個人のサンプル署名を含む複数の対象個人のサンプルグループに、関連づける。すべてのサンプルは入力署名と比較される。したがって、最初の対象個人が登録されるときにシステムが機能するためには、初期データベースを前もって作っておく必要がある。初期データベースは複数の仮想対象個人のサンプルを含む。これらサンプルは共通な特徴として、システムが適用される文化領域のつづり文化(アルファベット)と同じつづり文化に属する。認証システムが使用されるにつれて、新しい対象個人のサンプルが初期データベースに登録されていき、現行データベースを作り上げていく。このようにして、現行データベースの対象個人の数が数万あるいは数十万に達する。
【0146】
現行データベースが大きくなると、入力署名の比較や関連づけにかかる時間が長くなって回答が非効率的になる。同時に、データベース内の登録個人の数が大きくなり、署名によってはランダムに発生した類似点のため、判断がますます複雑になる。実験を繰り返すことによって判明したことは、全データベースにおいてアルゴリズムを実行することによって検出した不要な類似点は(課された)システム成功率(RSS)を変更するほどの数には達していないことである。したがって、統計制御分野の技法を認証システムの一般的な方法に適合させることによって、データベースのサイズの問題は解決される。
【0147】
上記の関係は目標個人を含む対象個人の集合に基づいている。したがって、自由意志による署名からなる全データベースにおける比較方法を実験し繰り返して解析した結果、次の結論に達した。
【0148】
1. システム成功率(RSS)、初期データベースの対象個人の数(N)、対象個人のサンプル数(K)、対象個人の集合の大きさ(Ne)、および入力署名の数(Ni)の間には相互依存関係がある。
【0149】
2. もちろん、同一個人の署名間の比較は例外として、実験で判明したことは、本発明の比較方法に関して、サンプルとオリジナルからなる全データベースの比較による値(距離)の分布は任意の対象個人に対して正規分布(ガウス分布)である。システム成功率(RSS)に一致する場合、オリジナルをそのサンプルの一つと比較したときの回答値(距離)は、入力を全サンプルデータベースと比較することによって得られた距離分布曲線上の最大ポイントを表す。
【0150】
3. 任意の対象個人のNiオリジナル入力署名に対応するすべての並べ替えられた回答値のすべての分布曲線上において、他の対象個人の回答の座標値は最大領域においてほぼ定数であり、比較回答値判定基準によって解析された各個人の特定配置を決定する。実際のシステムにおいてデータベースは安定でないため(対象個人の数は常に増え続けている)ので、この最後の結論は、集合の安定した署名に関してのみサブシステム5(判定)において利用される。この結論は上記方法の説明のためにある。
【0151】
4. 文化的帰属基準に従って作られた初期データベースには、他の個人の並べ替えられた回答値の分布曲線上に比較的一様に分布した回答を有する複数の個人が常に存在する。これら個人の分布曲線上での出現領域と相対的順序は、特に分布曲線の最大ポイントに近い値については、個人のサンプルと比較される入力署名の回答挙動を特徴づける。現行比較データベースに目標個人のサンプルとともにこれら仮想個人のサンプルが導入された場合、認証判定を補足的に改善できる可能性がある。
【0152】
これらの実験的結論と相互依存の統計的関係を利用することによって、回答時間を短縮し、バッチの標準制御チャートの従来パラメータに対して認証システムの特性をマッピングする。このバッチは正規分散バッチからのエラー制御パラメータ間の相互依存を定義するものである。マッピングの主な目的はRSSと相関関係にある対象個人集合の大きさを適切に決めることである。
【0153】
サンプリング統計制御チャートに特有な概念と認証システムで用いられる概念との間でマッピングすることは次のように定義される:
−「生成過程」において導入されたオブジェクトは署名と符合する。
− 制御基準を表す属性を生成する安定したプロセスはSRA1とSRA2法によって2つの署名を比較することに符合する。
− Etalon(エタロン)は、既知の入力署名と対象個人のサンプルとを比較する方法SRA1とSRA2によって生成された属性の値である。エタロンは入力署名に依存するので、それぞれの認証動作に固有である。
− 認証動作は全体のデータベースに適用されたとき、バッチを生成する。バッチサイズは現行データベースに一致する。
− サンプル集合のサイズは、現行データベースからランダムに選んだ署名と目標個人のサンプルを加えた数に符合する。合計で現行比較データベースを構成する。
− エラーは、現行比較データベースにおいて入力署名が既知で繰り返し比較によってシステムがテストされる場合に、オリジナルとねつ造署名の判定法の不正解回答に符合する。
− AQLはサンプリング法に対する信頼度に符合する。
【0154】
対象個人のサンプルのサイズを決めるのは次のようにしておこなう。初期データベースを現行データベースと数値的に永久に等しいと考え、実験的に2つのインジケータによって全データベースについてRSSを求める:RSSOとRSSFは比較法の分離特性によって実験的に決定される。
【0155】
例えば、正規統計制御チャート(SR3160/2−84)から最も評価が容易な条件を選ぶ:判定法はエラーの存在を評価するのに正しいカテゴリ(オリジナルまたはねつ造)に対するランク1の個人のつながり(最大類似)を評価する。その評価は、現在の入力と現行データベースとの比較から得られたサンプル解答に基づいておこなわれる。240個人に属する1200個サンプルのデータベース上の実験的に定められたRSSが単一入力について(Ni=1)、97%であり、サンプリング後の目標信頼度が99.9%である場合、制御チャートからNe=25個人に対応する125サンプル署名のサンプル集合のサイズが得られる。また同時に、AQL値の影響を考慮して、RSSは最悪の場合RSSinitial´AQLとなり、96.903%になる。したがってシステムの回答時間は10倍以上改善し、RSSの減少はわずか0.097%である。
【0156】
実験は次のことを強調している。すなわちNi=2において、理想的な状態(100%)を達成するのに必要なパーセントのほぼ半分でRSSは増大している。すなわち97%からほぼ98.5%へ増大し、またサンプリング後にはRSS(Ni=2,Ne=25)=98.303%である。システム回答時間は従って5倍以上も改善している。
【0157】
RSSFはサンプル集合の対象個人数に正比例している。これらの対象個人のサンプル署名に含まれるランダムなアトラクターがこの現象を生じさせている。サンプル集合がランダムに選んだ個人のサンプルと目標個人のサンプルを加えたもののみから構成されると仮定すると、ねつ造署名が認証される確率が高くなる。なぜならサンプル署名は他の個人サンプルよりもねつ造署名の方がより強いアトラクターを含む可能性が高いからである。
【0158】
ゼロ分離パワーと比較する方法(アルゴリズム)の概念が正式に導入された。分離パワーは任意の署名が現行データベースからランダムに選ばれる確率を示す。このアルゴリズムを使うと、システム成功率は:
RSS0=1/n
ここでnはデータベースの署名数(2000署名のRSSoは0.0005つまり0.05%に等しい)。
RSSは全初期データベースに対して実験的に定められるので(例えば2000署名のデータベースの場合97%)、システムが使用するこの方法(PSRA1,PSRA2)の識別パワーはRSS/RSSoと定義することができる。
【0159】
サンプル集合サイズ(Ne)は次の2つの条件を同時に満たすように統計制御チャートに従って選択される:
条件1:RSSOの観点からサンプル集合を最適化するために、選択されたサンプル集合の署名数の大きさは、本物の署名(RSSO)に関して1からシステム測定成功率を差し引いた値よりも遥かに低いRSSo解答を生成しなくてはならない。
RSSo<<(1−RSSO)
条件2:RSSFの観点からサンプル集合を最適化するために、選択されたサンプル集合の署名数の大きさは、サンプル集合のランダム署名(x)が含むアトラクターのために、高いランダム署名(x)の誤認識率(RRIF(x))を生じなければならない。この署名(x)は目標の対象個人のサンプルの1つではない。この観点から、サンプル集合のサイズは次の条件を満たすように実験的に決められる。
RRIF(x)RSSF
【数10】
統計的には認証プロセスは全対象個人データベースに関連づけられている。したがって、しきい値的判定をおこなう対象個人メトリックスシステムの欠点を解消している。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】図1は認証システムの物理構造である。
【図2】図2は認証システムの機能構造である。
【図3】図3はサブシステム1トポロジーで、書記および電子フォーマットへの運動パターンのデジタル変換を示す。(ペン)
【図4】図4はサブシステム1における情報フローを示す。
【図5】図5はサブシステム2による署名取得プロセスを示す。
【図6】図6は取得モニターインターフェイスウィンドウを示す。
【図7】図7は決定方法開始/停止によるデータ処理を示す。
【図8】図8は状態図で、開始/停止方法を示す。
【図9】図9は対象個人のシステム登録ステージのシナリオを示す。
【図10】図10は対象個人の認証ステージのシナリオを示す。
【図11】図11はSRA1における署名変換と比較を示す。
【図12】図12はSRA1におけるn=3に対する不変量定義を示す。
【図13】図13はSRA2における署名変換と比較を示す。
【図14】図14はSRA2のフィルタリング方法を示す。
【図15】図15はSRA2における信号分割を示す。
【技術分野】
【0001】
個人の身元を証明することは、いくつかの活動においては、その人の署名を認証することでもある。署名確認は人々の活動の多くの分野において、例えば、金融上の各種権利を取得したり、情報にアクセスしたり、特別な管理体制領域に物理的にアクセスしたり、公共あるいは個人的な場面で賛同の意思を表明する際に、短時間で処理すべき共通の問題である。
【0002】
本発明は手書き署名の取得、分析および認証のためのコンピュータを使用したシステムおよび方法に関するもので、個人認証手順におけるバイオメトリックリンクとして適用されることを意図したものである。
【0003】
このシステム(ハードウェア/ソフトウェアの組み合わせおよび識別方法)は、使用手順に関する不便が最小に抑えられておりかつ比較的低コストであることから、署名認証手順において大規模に使用することができる。従って本発明は複数の公共および個人的領域における情報技術分野での適用開発領域をつくり出すものである。
本システム適用領域には次の分野が含まれる:
− 財産や金融取引など。機能:検査システムへのリンク。
− 仮想または物理アクセス制御システムの分野におけるセキュリティ。機能:セキュリティシステムへのリンク。
− 企業や組織の管理。機能:多数の従業員や分散スタッフを抱える企業のために、文書管理/ワークフロー管理タイプのソフトウェアにおける署名の認証。電子文書の保護。
【0004】
本発明をこれら活動領域に適用することで、以下の効果が得られる:上記分野に対するユーザの信頼度が増し、なりすましによる損害を最小限に抑え、従来の手順で必要な署名チェックの時間を短縮し、ねつ造した身分を使った詐欺を防止する。
【0005】
本発明の説明において、以下の概念を使用する。
対象の個人:データベースにサンプル署名を登録するためのシステムを使用して、オリジナル署名を認証する個人またはねつ造した署名を認証しようと試みる個人。
【0006】
署名:自由意志でかつ本人の反射運動特性によって意識的に開始した行為であって、筆記具を手で使って所定のスペースに平面的でグラフィックな表記をする行為。対象の個人は空間的時間的観点からほぼこの行為を再現できなければならない。署名の目的は、サンプル署名とオリジナル署名を比較して、その署名が本物かどうかを第三者に判断させることによって当人を識別する。
【0007】
(署名の)(生体)運動パターン:署名する際に生体力学的に組み合わされた手書き筆記具が動く様。これらの動きは、公的あるいは私的な通常の文書フォーマットで通常の筆記用紙上に筆記具の実質的先端の動きによってグラフィックな署名の形態に部分的に置き換えられる。(生体)運動パターンは電子的に取得し記憶してもよい。(生体)運動署名パターンの概念は署名概念と一致する。
【0008】
サンプル署名(ここでは短くサンプルという):署名データベースに保存され、新しい署名(オリジナル署名)を行う個人を証明(認証)するために使用される署名。
【0009】
オリジナル署名(ここでは短くオリジナルという):本システムによって証明(認証)を受けるために個人が提供した署名であって、同一人物、すなわち対象の個人、によって以前に提供され署名データベースに保存されている他の署名(サンプル署名)と比較されるもの。
【0010】
ねつ造署名(ここでは短くねつ造という):個人Yを名乗りかつYの名で署名した個人Xによって提供された署名、あるいは強制的にXの名で署名させられた個人Xによって提供された署名。
【0011】
認証:現行データベースの生体運動パターンに適用される方法の集合であって、オリジナル署名を行った個人Xが確かに、当人Xに属するものとして登録された(署名データベースの)サンプルセットを署名した個人Xであるかどうかを判断する。
【0012】
現行データベース:最初のデータベースに対象の個人のサンプルと認証されたオリジナルの生体運動パターンを加えたもの。
【0013】
現行比較データベース:多数の対象の個人のサンプルからなる署名の集合であって、現行データベースの(無作為に抽出した)サンプルを表し、入力した署名によって指定される個人の複数の署名を加えたもの。
【0014】
初期データベース:確立されたパラメータでシステムが機能するために必要な最小限のデータベースであって、指定された文字文化(アルファベット)(例えば、ラテン文字、キリル文字、ヘブライ文字、中国文字等)に属するサンプル署名の生体運動パターンを含む。初期データベースはまた複数の文字文化が混合したものに属するサンプル署名の生体運動パターンも含むことができる。
【0015】
レベル:認証システム内の物理的および機能的階層構造であって、特定の複数の機能サブシステムおよびそれらサブシステム内の方法構造を含む。
【0016】
ペン:レベル1サブシステムのアンサンブルであって、筆記具および生体運動パターンを捕捉するために必要な高感度運動コンピュータを使用した要素から構成される。
【0017】
MEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム):ナノテクノロジーによって実現されたマイクロエレクトロメカニカルシステム。
【0018】
コンタクト情報:署名に組み込まれた生体情報で、署名の境界を定めるのに必要なもの。これはシナプス運動筋肉反射メカニズムによるもので、対象の個人が紙との間でペンを介して相互作用することによって生じるマイクロ振動の変調を表す。MEMSセンサはそれが現れている方向にそれを捕捉する。生体情報は、自発的または半反射運動的手書き動作に特有な他の生体運動情報が本質的に加えられている。
【0019】
コンテクスト情報:ペンが紙の近くにどのように位置しているかを示す情報。これは紙に対してペンがしきい値距離にあることを検知するもので、対象個人の他の動作から署名の境界を定めるのに必要なキーの一つである。
【0020】
署名を認証する必要がある場合、専門家が従来の手順を実行する。手書き署名の真贋に関する分析と判断は、筆跡技法の目的の一つである。署名が本物であることを証明するために、専門家は複雑な動きを行う署名をグラフィック的にかつ静的に紙に投影する。分析に続いて、署名した対象個人に特有な動的な動きが推定される。それらは特徴的な速度、加速度、圧力、書記順序や形などとして現れる。
【0021】
従来方法で手書き署名を認証する場合、次のような欠点がある。特に、
− 署名を調べる人の、特に瞬間的な分析能力によって統計的にある程度の誤差が生じる。
− 専門家としての利害や個人的好みなどの外的要因に影響される可能性がある。
− 測定、分析、比較および判定に比較的長い時間がかかる。
− 自由意志の表明を独断的に真実として推定する。
− 情報は紙の上のプランレベルからのみ抽出され、対象個人の動作のグラフィックな効果のみを一方的に反映する。
− 物理学単位の速度、加速度、圧力および特定の不変なグラフィック形状は、視覚による観察や推論によって間接的に推定される。これは高いレベルの近似法の手順である。
− 習得された反射ジェスチャー、特定の手の形状およびシナプスタイプの神経筋肉相互作用によって、筆記具に伝えられる複雑な運動動作に対応する空間情報は無視される。
− 筆跡技法の分野から得られる必要な経験と知識は多大な努力により習得されるもので、長い期間の後に洗練される。
− 署名認証のための伝統的な筆跡技法のコストは自動検査よりも数倍高く、実際上詐欺が表面化して追跡された後に初めて筆跡技法が用いられる。
【0022】
生体運動パターンに基づく自動認証の分野における研究と調査は最近研究されるようになったバイオメトリックのもう一つの領域である。この領域の努力は情報社会に必要な認証技術を開発することに注がれている。手書き署名はアルファベットを使う人々を識別し認証するためのほぼ世界的な方法として使用されている。従って署名の生体運動パターンに基づく認証方法は自然で、普通でしかも押しつけがましくない。
【0023】
生体運動パターンに基づく認証手順の研究で専門誌に公表されているものはほとんどない。このテーマに関しては主にいくつかの特許がある。今までは、MEMSナノテクノロジーによって実現された加速センサに基づきしかも本発明の原理と方法を用いた技術を、署名認証に商業的に適用したという情報は全くなかった。問題の取り組みは研究室内でのみ行われてきたし、今まではこのテーマに関しては世界的にもほとんど研究はなされてこなかった。
【0024】
手書き署名の静的および動的特徴を分析する認証システムに関して特許が与えられている。動的特性を解析するシステムは静的特性のみを解析する以前のものよりも性能がよい。
【0025】
現在、手書き署名解析認証分野において、本発明がここで提案したものとは異なる方法と技術を使った手法が商業的に実用化されている。すなわち、次のものを用いている:グラフィックステーブル、グラフィックスキャンと証明、CCDセンサによるグラフィック画像の動的捕捉、および静止マーカーに基づく「インテリジェントペーパ」上への書き込み、などである。これらの方法は人間グラフィック技術の場合に述べたいくつかの欠点を持っている。すなわち:
− 解析される情報はペーパ平面レベルからのみ抽出され、対象個人の動作のグラフィック効果のみを一方的に反映する。
− パラメータ:速度、加速度、圧力は、高度な近似法に似た手順によって間接的に推定される。
− 習得された反射ジェスチャー、特定の手の形状およびシナプスタイプの神経筋肉相互作用によって、筆記具に伝えられる複雑な運動動作に対応する空間情報は無視される。
【0026】
これらの欠点に加えて、上記の方法は専用の隣接装置を導入している:すなわちグラフィックステーブル、インテリジェントペーパ、スキャナを使用するのでコストを上昇させ複雑さが増す。
【0027】
手書き署名の生体運動パターンに基づくバイオメトリック認証の分野において、解析パラメータの性質や取得と処理方法が本発明と少しでも関連するシステムと方法を記述した特許は少ない。比較のためおよび本発明のクレーム定義のために、関係があると思われる特許のうち2つを引用する:米国特許No.4,128,829−(Herbstその他)と米国特許No.6,236,740−(Leeその他)
【0028】
米国特許No.4,128,829−(Herbstその他)において、ペンと軸方向圧力センサに互いに直角に配置した2つの加速度センサによって情報が作られる。情報はペンの外部モジュールにおいて8ビットの解像度でデジタル化される。署名間の比較は情報を分割しかつ最大相関関係を求めることによって行う。最終判断は、しきい値タイプに関するもので、許容または拒絶は任意に選んだしきい値(0.8)に対する相関関係の値の位置に依存する。入力署名と目的の対象個人のサンプル署名との比較を行った後に判定をおこなう。
【0029】
この特許には以下の欠点が残っている:
− 複数の加速センサは単一平面レベルにあるので、筆記具に伝えられる複雑な空間運動動作に対応する情報は無視される。
− シナプスタイプ神経筋肉相互作用に対応する情報は失われる。なぜならHerbstは神経筋肉フィードバックは遅い「筋肉−脳−筋肉」サイクルによって独占的に行われると主張しており、手の生体機能レベルにおいて局部シナプス反射の影響を無視している。他方で、そのシステム取得および後処理パラメータによってシナプス反射の特定の情報を取得することができない。
− 軸方向圧力センサを使用することで失われたシナプスタイプ神経筋肉相互作用に対応する情報を部分的かつ間接的に再取得できるが、同時にそれによって不利な点も発生する。例えば対象個人が紙と接触する瞬間の検出が安定しないことである。圧力は、書くときに対象個人がどのような体勢であるか、紙のタイプ等によって変わる。
− しきい値判定法は署名の自然な変動に対して融通が利かないしさらに、対象個人が変わると一般的に有効なしきい値を算出することは不可能である。
【0030】
米国特許No.6,236,740−(Leeその他)において、解析された入力情報は次の2つの動作を行っている間に作成される:対象個人が署名と定められた整数の集合を入力すること。サンプルの場合0から9の整数を、また認証しようとする署名の場合現在の日付を表す数字を入力する。ペンに配置した2つの圧力センサは解析する情報を捉え、書記圧力のピークに比例する電気信号が機械要素によって取得される。センサが発生した2つの信号は2つのペン方向、軸方向と横方向、における圧力変動を表す。ペンの外部モジュールにおいて情報がデジタル化される。情報解析は2つの圧力の瞬間的な比によって定義されるパラメータに対して行われる。この比は相対勾配角度と呼ばれ署名を区別するために重要と考えられる。判定と解析方法は、定められた整数を含む入力署名と対象個人のいくつかのサンプルとの比較の結果をしきい値適用可能タイプによって評価する。解析方法は情報分割とそれらの総合評価を組み合わせたものである。
【0031】
この特許には以下の欠点が残っている。
− ペンの動きを感知するセンサがないため、筆記具に伝えられる平面および空間運動動作に対応する情報が無視される。紙の上でのペンの動きを表す情報が間接的かつ大幅に圧力情報に置き換えられる。このためある機能性が維持されている。
− センサに対し直接の機能を有する機械的要素が解決策の信頼性を実質的に低減している。
− 解析された情報を含む電気信号をペン外部でデジタル化することは外部の変動によってそれらが影響を受ける可能性を意味する。
− 圧力センサを使用することでシナプスタイプ神経筋肉局部相互作用に対応する情報を近似的、部分的および間接的に区別するけれども、同時にそれによって欠点ももたらされる。例えば書いているときの姿勢、紙のタイプ等によって、紙に接触した瞬間の検出が安定しなかったり圧力が変動することである。
− 解析と判定方法は、入力署名と対象個人のサンプル署名との間のみで比較した結果を評価することによって行う。
【0032】
上記の発明の解析、比較および評価は、入力署名と対象個人のサンプル署名との間のみで行う。したがって他の個人のサンプルとそれぞれ比較、区別することによって他のカテゴリとの関連を見いだそうとする手法が無視されている。
【0033】
本発明は上記の欠点を新しい概念の情報取得装置によって取り除くものである。すなわちコンピュータを使用した認証装置に情報取得装置を構成するサブシステムを機能的に組み込むことによって、署名の過程において発生する複雑な情報の性質、表示および検出を行う。
【0034】
コンピュータ使用の認証システムにおいて特定のプログラムによって実現されたアルゴリズムと手順は、処理された入力情報と関連づけられており、本科学分野の未だ利用されていない原理を適用し、さらに既に適用されている原理を使った方法を大幅に改善する。
【0035】
空間生体運動解析の商業適用が依然なされていない主な障害としては、必要な技術が最近まで不足していたこと、すなわち使用中に手によって筆記具に伝えられる複雑な加速度を満足に捉えられるだけ十分に小型化した高性能のMEMS加速センサ(http://www.memsnet.org)がなかったことである。加速時計タイプのセンサによる情報取得のコストの点からみると、2002年までは、品質の良い情報を得るために必要な複数の取得チャネルの一つのコストは商業効率の限度を大きく超えるものであった。商業効率の観点から述べると、MEMS加速度センサによって情報取得装置/システムが競争できる価格で提供できるようになる。2001年の末に、MITのナノテクノロジーリサーチセンターとアナログデバイスはすぐれた品質−価格性能を有するMEMS加速度センサを実現し生産を開始した。したがって、この研究が開始され、その結果が本発明の目的である、この新しいタイプのセンサを利用することである。(使用されたセンサの観点から)同じ技術を使ったもう一つの研究プロジェクトXWPENがマイクロソフトハードウェアリサーチ研究所で行われ、別の応用(手書き入力と識別のための端末)を研究した。その技術要素に関しては公表されなかったが、この研究は2004年末までに適用可能な結果を出すことを目指している。
【0036】
MEMSナノテクノロジーセンサの感度はmgクラスでμg/√Hz(g=重力加速度)ノイズファクタークラスである。高い感度と周波数特性のおかげで、これらセンサは新しい情報捕捉装置/システムの構築において、手書き署名生体運動パターンの最も軽い情報コンポーネントのための条件を満たしている。さらにまた、本発明においてはMEMSセンサモジュールが使用されており、おのおのが構造上互いに直角に配置された2つの加速度センサを組み込んでいる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
本発明のシステムにおいて、筆記具に伝えられる手書き署名の複合的動きはその署名の運動パターンを定義し、しかも暗示的に、書いた本人を示す。運動パターンは署名した人に特有な情報構造を含む。これら情報構造がそれらを形成する物理的パラメータのために非常に複雑であること、それらの力学さらには状況が変動することによって、メトリック定義パターンを求める可能性が実質的に排除される。紙に押し付けられたグラフィック形状と軌跡は紙の平面におけるこれら複合的動きの不完全で推測による投影と考えてもよい。この投影は意図した行為、すなわち署名、を実行するのに必要な反射視覚フィードバックとして働く。
【0038】
書き込み用紙は特にセルロースマイクロファイバで作られる。ファイバがランダムに配置されることで顕微鏡レベルではで凹凸が生じる。マクロレベルでは、紙面でのざらつきは一定であり、この性質はこの分野の標準によれば紙を作る過程で付与される。筆記動作において、紙と筆記具の使用可能な先端との間での相互作用によって、機械的マイクロ振動によって機械的擬似共鳴現象が起きるようである。その周波数は書く速度に依存している。この現象がより調波共鳴の傾向を強く示すようになればなるほど、書く動作は容易になる。例えば、この現象は書記動作中に特定の音を放射したときに気づくことがある。「柔らかい」と「ひっかく」の両極端の間で書くことができるが、これは機械的擬似共鳴が発生しているかどうかを示すものである。
【0039】
筆記中、手のバイオメカニカル形状と組み合わせた、特定のグラフィックシンボルのメンタルモデルは瞬間的可変速度を与える。この速度変化は前に生じた擬似共鳴を鎮める効果がある。こういう背景において、シナプス神経筋肉反射(”Basal Ganglia&Motor Control for JA2084”,Malcom Lidierth,Nov 2004,University of London−Academic Department of Anatomy and Human Sciences JA 2084 Fundamentals of Neuroscience)はバイオメカニカルマイクロ動作を発生させることによって、擬似共鳴状態に再び入るという意味で、効果がある。この順応メカニズムはいかなる瞬間速度変化においても無意識におこる。シナプス神経筋肉サイクルはわずか数ミリ秒しか継続しない順応マイクロ動作を発生させる。この調節ループは瞬間的な擬似的安定を得るためには各々が20−60msのいくつかのサイクルが必要である。バイオメカニックスに対応する現象はフォースフィードバックと呼ばれる(http://www.hitl.washington.edu/scivw/scivw−ftp/citations/ForceFeedback−3.95)。
【0040】
シナプス反射によって生じるバイオメカニカルマイクロ動作はペン本体の先端に伝えられて、書記動作を容易にするのに必要な擬似共鳴マイクロ振動を再び得る。マイクロ振動は、特別に作られてこのペン動作のために配置されたペン要素によって伝達され、各MEMSモジュールに互いに直角に配置された2つの加速度センサによって捕捉される。バイオメカニカルマイクロ動作はマイクロ振動フィルタリング方法によって、書記動作に特有な他の運動によって明らかにされる。後で説明するアルゴリズム的手法によってマイクロ動作の変動を評価することで、すべての対象個人の署名について特定の「パターン」を生成する本質的不変量カテゴリが明らかになる。不変量はシナプス反射の神経筋肉バイオ電気信号に対する「パターン」表現である。圧力は前記現象のために導きだされたもので、圧力センサに特有なヒステリシスを介してその現象とともに組み込まれる。従って本発明では原則として使用されない。
【0041】
マイクロ振動は前記の役割を有するだけでなく、それ自体を検出する必要がある。アルゴリズム的手法において後で説明するように、署名の過程において署名の開始時点と終了時点および休止時点を特定するために、マイクロ振動を検出する。誤った開始時点の検出をさけるために、コンテクスト情報解析に必要な手順とメカニズムを導入する。光タイプの情報に基づき、ペンが書記位置にあるかどうかを検出することができ、これによって署名する前に偶然ペンを動かしたことによる振動を誤って検知することがさけられる。
【0042】
空間バイオ運動パターンは加速度の大きさを取得することによって物理的にサンプルする。すなわち加速度の大きさのサンプリングは、筆記具の主軸のいくつかの点において同時にサンプルし、それによってバランス空間求心コンポーネントの捕捉を容易にし、さらに筆記動作に必要なバランス動作の仮想およびダイナミック中心と比較することによって行う。情報デジタル化は、筆記動作(2−10Hz)に必要な「習得した反射」動作に対応する周波数と、局部神経筋肉サイクルに特有の周波数、すなわちシナプス反射(10−50Hz)、を捕捉するのに十分高いサンプル速度によって可能となる。振動に対応するコンポーネントのフィルタリングによって、シナプスサイクルに特有な形状がデジタル化信号に保持される。デジタル化したバイオ運動パターンは、習得した筆記動作や反射に特有な不変量、手の生理機能に特有な不変量、シナプス反射、および同様に重要な、署名をした本人の性格に特有な不変量の組み合わせを含む。
【0043】
これらの不変量のバイオメトリック特性は証明された事実である。なぜらな紙レベルでのそれらの投影は筆跡学での入門情報であるからである。空間バイオ運動パターンの取得および解析さらにはバイオ運動情報の組み合わせで決まる不変量は、署名認証の遥かに広範囲な解析を可能にする情報集合を生成する。従来の場合は、単一の情報カテゴリのみ、つまり従来では紙レベルからの痕跡のみ、が解析の対象となっていた。さらに後で説明する方法によって得られる不変量シリーズの潜在的または細分化した集合および最初のまたは導きだした信号の集合が初期署名情報構造の合成暗号解読を成す。暗号解読の精度は、情報取得サブシステムの感度と署名運動パターン純化プロセスを構成する信号解析の深さに依存する。システムの最終解は比較法の精度に反映され、署名安定性に依存する。
【0044】
他の認証方法やシステムと比較して、このシステムの長所は次の通り:
【0045】
−個人と解析される情報との間に緊密な相関関係がある(ダイナミック署名特徴はある個人に特有であり、それらは簡単にねつ造することはできない)。これらの特徴は、署名によってあるものに同意を与える個人の自由意志の表明と関連づけられる。人間が速いダイナミックな加速度を知覚する特化した感覚器官を生まれながら持っているのではないという事実をみれば、ねつ造するために意識的に分析や再現を試みてもそれはグラフィックな面のみに関わっているため、難しいことが分かる。
【0046】
− 心理学の研究によると、対象個人によって直ちに知覚できる動作、例えば署名など、を行うと第三者と比べてのその人の個人性の自然な自動投影メカニズムを引き起こすことが分かっている。したがって、正当な身元を有しまじめに認証する意志を持つ対象個人は本システムを押しつけがましいとは思わないであろう。
【0047】
− 手書き署名認証方法(グラフィックの観点に基づき、筆記圧力プロファイルを推定し、あるいはグラフィックシンボルの厚さ変化から加速度を推定する方法)は既に使用されており、これは他の認証方法(虹彩スキャン、指紋、DNAテスト)よりも押しつけがましさの点からより優しいと考えられる(http://www.biometricgroup.com)
【0048】
− バイオ運動情報が普通のペンと同じ形状や大きさを持つペンに対して考えられた装置によって取得される。バイオ運動情報は運動知覚構造とともに、データデジタル化のためおよびアルゴリズム処理を許容する各種物理レベルへの伝達のために、マイクロコントローラブロックを含む。
【0049】
− 本システムは特別に作られたサポート装置(グラフィックタブレット)またはナビゲータマーカー付きインテリジェントペーパ(例えばAnoto Pen)上に署名する必要はない。署名は自然に普通の任意の文書タイプ上に書くことができる。
【0050】
− 本システムへの情報の入力はナノテクノロジーを利用した知覚システム、すなわちMEMS加速度計、を使って行う。その利点は信頼性、高い精度、低コストおよび小さなサイズである。
【0051】
− 署名開始と完了検出方法は、コンテクスト情報とともに分析されるコンタクトマイクロ振動に対応する情報を利用する。
【0052】
− 認証を行う本システムは、初期データベースを動作させて実行すべき方法を実行し、他のすべてのカテゴリに対して区別や関連づけを調べることによってカテゴリの関連性を確立させる。この方法において、カテゴリは仮想対象個人のサンプルによって構成され、目標のつづり文化を代表するものである。
【0053】
− 情報を処理し、分析し、比較する方法(アルゴリズム)には2つある:SRA1とSRA2で、アルゴリズムとデータ前処理によって互いに独立している。これら2つの独立した方法の処理結果は最終判断法に対する入力となり、また現行署名データベース改善および更新に対してはフィードバックとなる。この情報は、空間運動情報、シナプス反射によって生成されたバイオメカニカルマイクロ動作を記述するコンタクト情報、および署名の境界を定める情報をを作成、前処理することによって得られるデータ構造を表す。
【0054】
− 本システムの信頼度を調節しシステム応答時間を低減させる方法であって、品質制御領域の統計誤差制御のための数学的手法をシフトさせて実行することによって行う。
【0055】
− システムの応答は現行比較データベース内に存在知るすべての署名サンプルに対し、使用された分析と比較方法によって、本質的に関連する。したがって、他のすべてのカテゴリに対して区別や関連づけを調べることによりカテゴリの関連性を確立させる手法は、入力署名を現行データベースの他のすべての対象個人のサンプルと比較し、システムが使用されている母集団の文化的つづりの特異性に対するシステムの依存度を低減させる。また、この方法によって、グローバルまたは順応可能なしきい値認証評価に基づく判定の欠点、すなわち他のドメイン関連の発明に特有な欠点、が取り除かれる。
【実施例】
【0056】
本システムは5つの情報処理サブシステムからなり、これらサブシステムは3つの物理レベルに階層化されて、手書き署名のバイオ運動パターンをデジタル化し、取得し、処理し、分析し、認証するように作られている。図1において、以下に説明するサブシステムの機能的関係を示す。
【0057】
レベル1(N1):サブシステム1−S1に対応する。これは2つの実体からなる:筆記具と運動解析コンピュータをベースとした集合体。
【0058】
サブシステム1−S1機能:
1.筆記具は普通のペンの機能を持つ。またプライマリ情報(署名の運動パターンやコンテクスト情報)を運動解析コンピュータをベースとした集合体に送る機能も持つ.
2.ペン内部に設けられた運動解析コンピュータは以下の機能を有する:情報取得、運動パターンおよびコンテクスト情報を電子フォーマットへデジタル変換、それを特定フォーマットに符号化し第2レベル−N2に送ること。
【0059】
レベル2(N2):「クライアントアプリケーション」がパーソナルコンピュータ内のサブシステム2−S2とサブシステム3−S3に組み込まれている。その性質上、コンピュータはハードウェアリソースをシーケンシャルまたは並列にレベル2内の方法やアルゴリズムに割り当てる。それによってサブシステム2とサブシステム3を形成する。サブシステム2とサブシステム3は次の機能を有する:
【0060】
サブシステム2−S2機能:
1.ペンから送信されたデータを取得し、チャネルごとに運動パターンとコンテクスト情報を復号化する。
2.署名開始と停止時点を決定する。
【0061】
サブシステム3−S3機能:
1.作業計画を選択する:管理、テスト、認証
2.選択した作業計画に特有な、ユーザとのインターフェイス
3.署名比較結果およびレベル3から送信された他の情報のローカルな管理
4.署名運動パターンのグラフィックモニタリング
5.一時的に記憶された情報のレベル3へのネットワークを介しての送信
【0062】
レベル3−N3はすべてのレベル2サブシステムに接続されているマルチプロセスコンピュータ(サーバ)ネットワークによって物理的に実現されている。その性質上、マルチプロセスコンピュータはハードウェアリソースをシーケンシャルにまたは並列にレベル3の方法やアルゴリズムに割り当てる。このようにしてサブシステム4−S4およびサブシステム5−S5を構成する。サブシステム4−S4およびサブシステム5−S5は次の機能を有する:
【0063】
サブシステム4−S4機能:
1.グローバリーにデータベースを作成管理する:対象個人、実際の個人、および特に比較アルゴリズムにしたがって処理された署名(サンプル、受け入れられたオリジナル、拒絶されたオリジナル)をテストし、比較結果とユーティリティフォルダとでマトリックスを構成する。
2.保存された履歴においてサンプルの更新を開始および管理する。確認されたオリジナルと以前のサンプルをそれらの分散に基づいて評価することによっておこなう。この更新機能が必要な理由は、署名のダイナミックな特徴は生物物理的また心理的要素によって影響を受けるかも知れないし、時間の経過にも影響されるからである.
【0064】
サブシステム5−S5機能:
1.フィルタリング、不変量抽出、計量、圧縮、その他の機能によってレベル2から取った運動情報を処理する。
2.専用の比較アルゴリズムを備え効果的に実行する。得られたマトリクスをレベル2から受け取った命令にしたがって評価する。
3.比較アルゴリズムの間で投票を行い、結果をサブシステム4に送って登録し、レベル2に送って表示させる.
【0065】
サブシステム/レベル間の機能的および物理的相互接続は、コンピュータを使用したシステムに特有の、既知の変換、転送およびダイナミック物理的リソース割当手法によって実現している。これらの方法を実現するために使われるオペレーティングシステム、言語プラットフォームおよび認証システムを構成するコンピュータに常駐するBIOS(Basic Input Output Systems)が、上記相互接続を実現し管理している。
【0066】
サブシステム1−S1,ペン、は通常のペンに合うサイズと機能を有する。さらに 追加要素および機能として、バイオ運動パターンとコンテクスト情報をデジタル化しレベル2にそれらを送る。ペン形状は図3に示す。ペンは次のもので構成される:
【0067】
1.特定の形状を持つ金属ケースで、ほぼ紙に使用されるもので以下の機能を確保する:
− PCB(Printed Circuit Boardプリント回路基板)2組み立てのための支持。PCBは運動解析コンピュータを使用したサブシステムのコンポーネントで、後者を説明する際に記述する。
− 運動解析コンピュータ利用システムの弱い電気信号を外部電磁変動から遮蔽する。
− 署名開始時での初期半静的位置決めを達成するためのエルゴノミクスで、紙のほぼ水平面上の直角軸に配置された加速度センサの−0.25g/+0.25gの領域内に位置決めする。
− インク詰め替えカートリッジリード部3に張力をかけて組み立てることによって機械的伝達経路を確保する構造。機械的伝達経路は、紙のセルロースマイクロファイバ上でペン先端を動かすことによって生じるマイクロ振動から、署名する人の手の動きの影響を受ける加速度センサまで延びる。筆記具の金属本体のリード部は、その特定の形状によって、詰め替えカートリッジリード部の案内チャネルおよびIR(Infra Red赤外線)4と受信IR Cの光学経路を実現するウィンドウを含む.
【0068】
2.ペン詰め替え3は通常の短い詰め替えである。タンクはプラスチックで作られ、筆記リード部側は金属である。詰め替えのリード部は機械的に張力がかけられて、金属本体内の空間に配置され、PCB(Printed Circuit Boardプリント回路基板)2によって支えられて、マイクロ振動をセンサまで伝達する。詰め替えカートリッジの頂部はMEMSセンサモジュールのセンターAとBによって形成される同じ軸上に配置される。同時に、この軸は金属本体組立て体の軸でもある。
【0069】
筆記用紙5は普通の紙である。セルロースファイバの微細な堆積物は、文字やグラフィックシンボルを書くことができるように表面に一様に分布している。ペンリード部と紙との接触によって発生する振動に含まれる情報は、ペンを使用する人の署名のバイオ運動を組み立てることに役立つ。
【0070】
サブシステム1の運動解析コンピュータをベースとした集合体はペンに埋め込まれている。5つの別々のチャネル(4つの加速度チャネルax,ay,bx,byとコンテクスト情報チャネル)によって、筆記用紙に対する運動および位置コンテクスト情報をリアルタイムに変換、取得およびレベル2へリアルタイムに転送することを空間的に実現するように特別に作られている。システム内のペンS1の数は1つ以上であってもよい。それはレベル3からの情報を処理する能力にのみ制約される。レベル1サブシステム(ペン)はレベル2サブシステムの唯一の周辺装置として機能する。
【0071】
運動解析コンピュータをベースとした集合体は次のものから構成される:
1.PCB(プリント回路基板)2。これは次の機能を達成するために特定の厚さとトポロジーを有する。すなわち個人が紙と相互作用することで発生する機械的マイクロ振動を受け取る機能、および手の動きの空間的変化を最適に加速度センサに転送する機能。
【0072】
2.MEMS−加速度センサマイクロシステムAとB
各MEMSマイクロシステムは互いに直角に配置された2つの加速度センサを有する。加速度センサマイクロシステムの配置は、仮定の動作中心および紙平面に対して加速度運動の求心および並進成分を取得するために、またマイクロ振動(コンタクト情報)を取得するために最適な感度を達成するようにおこなう。センサが生成したアナログ信号はフィルターがかけられて応答周波数バンドをおよそ100Hzに制限する。
【0073】
3.IR(Infra Red赤外線)トランスミッター4は波長が約800nmのビームを射出する。このビームは赤外線を書記用紙に照射する。赤外線レシーバーCは紙5から反射された赤外線を捉える。この反射光量は紙からの距離に比例する。マイクロコントローラ6のアナログ比較計器によって、ペンリード部と紙との距離に関してしきい値タイプの評価機能が得られる。
【0074】
4.センサから送られる情報を取得するためのマイクロコントローラ6。バイオ運動パターンに含まれる情報は、典型的なプログラム(ファームウェアASM)の制御のもとで捕捉され、デジタル化されそして転送される。このプログラムはマイクロコントローラに組み込まれた主要コンポーネントの機能を管理する。
− アナログ/デジタルコンバータタイプSAR(Successive−Approximation−Register),10バイト;
− アナログマルチプレクサ;
− RISC(Reduced Instruction Set Computer)タイプALU(Arithmetic/Logic Unit),8バイト/ワード;
− メモリ;
− アナログ比較器;
− UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)
【0075】
マイクロコントローラプログラムはバイオ運動神経筋肉と物理現象の変動間隔に最適に対応することにより、情報取得に必要な以下の一般的な電気パラメータを生成する。
− 加速度センサが提供する情報のために4つのアナログ情報取得チャネルが記述されたトポロジーに従って配置されている;
− アナログ情報の各チャネルでのサンプリング周波数は1000サンプル/秒である;
− ADCコンバータ解像度=10ビット;
− 電圧基準は比で表示;
− 加速度に相当する電気信号の振幅の許容変動間隔は0g=+/−1.5g;
− ALUクロック周波数=8MHz;
− 紙の場合、しきい値距離センサCが提供する情報のために設けられる取得チャネルの数=1;
− ボーレートUART=115.2KB
【0076】
5.取得したデータをUSBフォーマットとプロトコルに変換してレベル2に送信するための組み込まれたマイクロシステム7
【0077】
6.レベル1をレベル2に接続するためのUSB接続ケーブル8。ケーブル接続を選ぶ理由は3つある:レベル2に送られた情報を不当にスキャンされることを避けるため;公共で使用する場合、装置の保持のため;そしてメインテナンスが容易(バッテリー使用が不要)であるためである。署名バイオ運動パターンに対する影響を最小にするためにケーブルの厚さ(直径=2.5mm)と柔軟性(Rc=5mm)を選んだ。
【0078】
バイオ運動パターン情報構造とその変化を空間的に取得することは、4つの慣性MEMS加速度センサの信号を捉えることによって行う。センサは2つずつ互いに直角に組み込まれ、2つの特定位置A,BにPCB2トポロジーによって配置される。2つの位置は図3においてMEMS加速度センサA,Bそれぞれに一致する。MEMSグループAとMEMSグループBは以下に示すように配置される:
− Aグループのx感度軸は感知方向においてBグループのx感度軸と一致し、またAグループのy感度軸は感知方向においてBグループのy感度軸と一致する。xおよびy加速度計感度軸はそれらのキャプセルの形状軸に対応する。
− MEMS加速度センサA,Bの2つの対は、それぞれの対が詰め替えカートリッジの頂部と同じ共通軸上に慣性質量を保つように配置される;
− Aの中心とBの中心との距離Dsは30mmより大きい。これは空間動作の求心コンポーネントを増幅するためである;
− カートリッジの頂部とAグループとの距離dは15mm未満であるが、紙のレベルにおいて運動情報を区別するには十分である;
− MEMSグループA,Bはそれらの間の平行な平面に配置され、紙面とほぼ平行である。これによってペン軸の空間求心運動コンポーネントを増幅したり、引き算したり、抽出したりできる。
【0079】
ペン軸はAおよびBグループのxとy軸によって定められた平行面に対して固定角度α=45°で交差する。半静止位置において、署名行為を始める直前には、AとB MEMSモジュール感度平面はペン形状のために紙面にほぼ平行である。また、同じペン形状のために、異なる署名の間でもそれ自身の軸周りにペンが回転するのを最小限に抑えられる。したがって書記動作に対して最大のセンサ感度を確保できる。署名プロセスが開始されると、書記動作の性質上、瞬間的な軸のズレがどれかの方向に生じ、その大きさは最初の位置から+/−15°の角度β以下のズレである。
【0080】
加速度瞬間変化は重要な情報を含んでいる。したがって方向性をもつ構造によって生じる制約範囲内の異なるペン位置はバイオ運動パターンの本質を変えるものではない。センサ位置トポロジー、情報取得技法およびペンの形状によって、ペンの異なる位置は瞬間的変化に影響を与えることなく制限されるが、署名グローバルオフセットとして現れる。位置オフセットがバイオ運動パターンに及ぼす影響は、同じ個人の2つの署名の自然な差異よりも小さい。位置オフセットは、その方向における投影によって、重力場に相当する静的加速度を取り込むMEMSセンサの能力を表している。ペンの瞬間的傾きは、固定された書記平面と署名シンボルとの間の相互作用によって生じるが、これがセンサ軸上への重力場のダイナミックな投射によって加速度を発生する。この加速度はセンサ慣性質量において、運動メンタルパターンによって生じるバイオ運動加速度と本質的に組み合わされている。
【0081】
コンタクト情報の取得、これはシナプス反射に含まれる不変量の数列を特徴づけるものであるが、ペン要素構造によって確保される。したがって
− ペンリード部頂部とMEMSグループAとの距離dは15mm未満であり、これは紙レベルにおけるコンタクト情報を増幅するには十分である。
− PCB2(プリント回路基板)の厚さは0.5mm未満である。この薄さは、シナプス反射を特徴づける振動をMEMSセンサに送る機械的な経路を融通性と柔軟性とで確保するために必要である。
− 運動解析コンピュータをベースとした集合体は25グラム未満である。これはマイクロ振動をMEMSセンサへ送信する際に望ましくない慣性影響を抑えるためである。
− ペンリード部3はプリント回路基板に接しておりペン頂部とPCB2との間で拘束されている。詰め替えカートリッジはシナプス反射を特徴づける接触マイクロ振動の特定周波数バンドの送信を可能にする。
− 運動解析コンピュータをベースとした集合体は金属ケース内に4つの固定点において柔軟に支持されており、これによって接触マイクロ振動の特定周波数バンドがPCB2からMEMSセンサへ確実に送信される。固定された支持点は切削によりPCBに作った突起である。それらのPCB上での配置は、それぞれの長辺に2つずつ対称的に配置される。それぞれの辺におけるそれらの配置はペンリード部からの最初の支持点が距離Dsの半分の位置に、また第2の支持点が最初の支持点からペン配線端へ向かって距離Dsの位置にある。
【0082】
署名バイオ運動パターンはデジタル信号を取得することによって得られる。デジタル信号取得は以下のものが含まれる。
− 次の3つのカテゴリに相当する固有加速度:a)メンタル運動パターンによって生成される加速度、b)シナプス反射パターン(コンタクト情報)によって変調されるマイクロ振動によって生成される加速度、c)センサ軸上の重力場のダイナミック投射によって作られる加速度。これら加速度カテゴリの固有の構成が4つのセンサのそれぞれについて生成される。
− センサの特定の空間位置によって4つの加速度のセットが捉えられる。署名を開始した時点から終わった時点までの空間運動動作およびペンが紙に接触していないときの動作での加速度が捉えられる。
− 赤外線センサCによって捕捉されるコンテクスト情報。
【0083】
USBドライバ9を使って、サブシステム2(S2)はブロック10によってレベル1からデータを取得する。データは復号され11一時的にサーキュラーバッファ12に保存される。署名開始および終了時点がサーキュラーバッファに保存されたデータを分析(開始停止解析)13することによって検出される。グラフィックインターフェイス14によって、取得されたデータ、取得エラーおよび開始停止解析結果がグラフィックモニターに映し出される。正当な停止が検出されると、取得動作は自動的に停止し、取得された署名は一時的にブロック15に保存され、グラフィックインターフェイス16によって表示される.現在の署名モニターインターフェイスウィンドウを図6に示す。これは以下の要素からなる.
− 現行の個人と現行の取得フォルダ17を示す情報
− 現行の取得の状態インジケータ18
− センサグループAのモニターウィンドウ19
− コンタクト情報20の有無を知らせること
− MEMSグループAのxとy軸上の加速度のグラフィック表示21
− センサグループBのモニタリングウィンドウ22
− コンテクスト情報23の有無を知らせること
− MEMSグループBのxとy軸上の加速度のグラフィック表示24
− 制御コマンドと現行取得の管理コマンド25
【0084】
外部変動を除去するために、システムユーザが署名取得を確認した後に、署名をレベル3に送って解析をする。
【0085】
サブシステム1が紙に接した状態で動く際に動作区間を決定する方法、開始停止法、はサブシステム1(信号ax,ay)から得られた復号化されたプライマリ信号を分析することによって得られるコンタクト情報とコンテクスト情報(紙までの距離)との組み合わせを、評価することでおこなう。紙と接した状態でペンが動くと、書記動作に固有な周波数よりも遥かに高い周波数を有するコンポーネントの信号が生じる。これらのコンポーネントは微細な紙のでこぼこによって決まり、センサの感度やペンのサンプリング速度によって増幅されるが、センサAからの信号のコンポーネントの方が大きい(紙により近いため)。紙への接触を正確に検出するために、これらのコンポーネントをアナログ信号の変動によって生じるコンポーネントから分離しなければならない。同じ署名において、ペンが紙に接触している状態のいくつかの開始停止区間を増幅することができる。署名全体の開始停止を決定するには、取得した信号と検出した開始停止区間をグローバルに解析することによって行う。この方法は2つの主要コンポーネントを有する:データ処理コンポーネントと開始停止時検出コンポーネントである。
【0086】
MEMSセンサAから受け取ったデータは図7に示すように処理される。それぞれのサンプルグループ(ax,ay信号サンプル)はプライマリデータバッファ26と呼ばれるサーキュラーバッファに保存される.プライマリデータ解析を開始するには、バッファは最低数のサンプルグループ(およそ0.5秒に相当)27を蓄積しなければならない。プライマリデータは2つの平面でリアルタイムに処理される。ペンから受け取った信号のそれぞれのサンプルグループについてこの処理が行われる。
【0087】
a)コンタクト情報解析:
− プライマリデータバッファ28からの信号フィルタリング:プライマリデータバッファに保存されたax,ay信号はハイパスフィルタFFTタイプによってフィルタがかけられ、コンタクト情報(i1,i2)を表す2つの信号を取得する。
− コンタクト情報解析30:最後の20サンプル(経験的に決められた数)について、以前生成された2つの信号のそれぞれに対して統計的変動を求める。
− コンタクト情報レベル31の保存:以前求めた変動値は、現行サンプルグループに対応して、変動レベルアナライザサーキュラーバッファに保存される。
【0088】
b)コンテクスト情報解析:
− 書記位置29におけるペンの検出
− ペン位置アナライザサーキュラーバッファ32へのデータ保存
【0089】
変動アナライザサーキュラーバッファとペン位置アナライザサーキュラーバッファの寸法は経験的に決められる。
【0090】
開始停止時点の検出は、state machineの実施を示す図8のダイアグラムに従っている.
【0091】
状態記述:
a)Nサンプル33の取得:コンタクト情報を解析するためにN個のサンプル(Nの値は経験的に決められる開始停止パラメータによって影響される)を蓄積する。この状態から開始時点評価状態への変遷はN個のプライマリデータサンプルを取得した後におこなう。
b)開始時点評価34:これは変動レベルアナライザサーキュラーバッファとペン位置アナライザサーキュラーバッファを評価することによっておこなう。開始の検出は以下の条件によっておこなう。
− i1信号またはi2信号の変動レベルは、変動レベルアナライザサーキュラーバッファからの最低限のサンプル数について、前もって定められたレベル(コンタクト情報しきい値レベル)よりも高くなければならない。
− ペン位置アナライザサーキュラーバッファからの最低限のポイント数(書記位置における最低ポイント数)について、ペンは書記位置になければならない。
【0092】
開始を検出したら次の段階に移る。
c)停止時評価35:これはコンタクト情報アナライザバッファとペン位置アナライザサーキュラーバッファを評価することによっておこなう。i1信号とi2信号の変動レベルが解析バッファからの最低ポイント数(最低非接触ポイント数)についてあらかじめ定められたレベル(コンタクト情報しきい値レベル)よりも低いかどうかを調べる。あるいはペン位置アナライザサーキュラーバッファからの最低ポイント数(書記位置における最低ポイント数)について、ペンが書記位置にないかどうかを調べる.
【0093】
停止を検出すると次の段階に移る。決定された停止の時点は内部停止の時点であり、これはペンが紙に接触している区間の一つを定める。
【0094】
d)内部開始時点の評価36:これは開始時点評価と同等であるが、他のパラメータ(コンタクト情報しきい値レベル、最低コンタクトポイント数、書記位置における最低ポイント数)に関するものである。署名動作中ではペンが紙に接触していない瞬間がいくつかあり得ることを考慮すると、前に求めた停止が最終の停止なのか単に途中の停止(ペンが紙に接触している区間の一つを定義する)なのかを判断しなければいけない。経験的に定めた時間(署名中にペンが引き上げられたときの最大時間を測定することで求めた時間)に、内部開始が検出されなかった場合、前に検出された停止は最終の署名停止と考えられる。
【0095】
最小レイテンシー(以前説明した時間の長さ)の後に、あるいは内部開始が検出された後に、次の段階に移る。
【0096】
e)停止確認37:取得された署名は最低限のサンプル数を有していなければならない。そうでなければこのプロセスは開始時点評価遷移から再び始められることになる。最低限のサンプル数は経験的に決められ、不用意なペンと紙の接触を検出してしまうことを避けるために導入される。
f)署名の保存38:取得された署名を保存する。
【0097】
サブシステム3(S3):これはユーザインターフェイス、ローカル署名管理、署名結果比較およびレベル3管理からの他の情報について管理し、レベル3との通信をおこなっている(設定、署名送信など)。
レベル2の2−3のサブシステムの集合に対して、1つのレベル1サブシステムが対応している。
【0098】
レベル3のサブシステム4(S4):これは以下を含むデータベースを生成し管理する。テスト対象個人、本物の対象個人、比較法に従って処理された署名(サンプル、受け入れられたオリジナル、拒否されたオリジナル等)、認証結果と組み合わされた証拠、およびユーティリティフォルダ等を含む。このサブシステムは対象個人の身元データとサンプルを保存する。サンプルは対象個人を登録する過程で図9に示すようにシステムに導入される。システムデータベースからの対象個人サンプル数(spec.no.)は経験的に決められたパラメータであって、オリジナル識別レベル、ねつ造署名拒絶レベルおよび認証時間に影響を及ぼす。「変えられた」署名がサンプル(様々な外部要素によって影響される取得エラーや署名)としてシステムに入力されるのを防止するために、対象個人の登録プロセスにおいて取得した署名を解析し認証する方法を実現した。対象個人のデータを導入した後に、N個の対象個人の署名を取得する。これらは解析されて署名グループ分散(分散は識別法SRA1に基づいて計算する)を求める。N個の署名の中から、分散の見地から決めた最初のサンプル数の署名を保存する。これらは識別法の特定フォーマットに変換されシステムデータベースにサンプルとして保存される。
【0099】
このサブシステムはまたサンプル更新方法を実現する。これは長期間にわたって生物物理学的および心理的要因によって生じる署名の変化を判断するものである。サンプルは認証プロセスにおいて入力したオリジナルに基づいて更新され、対象個人に属するものとしてシステムによって認識される。この方法はオリジナルおよびデータベースに保存されているサンプルを分析し、それらの相対的ばらつきにしたがって、サンプルを最初のn個の分析された署名に取り替える。このメカニズムはデータベースに最低限の数のオリジナルが蓄積されたときに開始される。これはいくつかの不確かなオリジナルによって変更が導入されるのを防ぐためである。
【0100】
サブシステム5:これはレベル2からの署名を処理し、(データベースからランダムに対象個人を選ぶことにより)それらの署名を比較するするために対象個人の集合(集合の大きさは最適な対象個人数No)を決め、署名を識別方法の特定フォーマットに変換し、これらの方法を実行する(図10)。異なる識別方法の結果を組み合わせて解釈することによって最終的な認証結果を得て、それをレベル2に送る。このサブシステムはまたシステム内の対象個人登録プロセスにおいて導入された署名比較もおこなう(図9)。
【0101】
このサブシステムはオーブンアーキテクチャーを有し、新しい署名識別方法を実施できる。
【0102】
SRA1は2つのモジュールを有する。
a)入力データ処理モジュール:代表的な情報が一連の操作によって入力データから抽出され、その情報はサンプル署名に関するデータを保存するために使われまた識別される入力署名(オリジナルまたはねつ造された署名)が構成するデータを表す。この一連の動作は署名変換法39と呼ばれる。
【0103】
b)サンプルおよび入力署名比較モジュール
この一連の動作は署名比較法40と呼ばれる。
署名変換法と署名比較法を組み合わせたものが署名識別法SRA1(署名識別アルゴリズム1)と呼ばれる。
【0104】
サンプル署名は変換され署名データベースに保存される。その後、入力署名(オリジナルまたは偽造された署名)が現れたら、変換されてデータベースからの署名と比較されて、入力署名とサンプル署名との間の距離が計算され、入力署名の対象個人がサンプル署名の対象個人と同じ人物かどうかを判断する。
【0105】
後で比較処理に使用できるフォーマットに入力署名を変換する過程は以下のステップを含む:
a)入力署名を署名コンポーネントに変換する。
b)署名コンポーネントを不変量に変換する。
c)不変量数列を圧縮し重みをつける。
【0106】
S1において、ペンはサブシステム1で説明した通りに配置される加速度センサA,Bの2つのモジュールから信号を発信する。署名動作中に、それぞれのモジュールは2つの信号(2つの座標軸x、y上への加速度投影)を発生する。したがって次の入力署名は次の信号を生む。
−ax:ポイントAのx方向においてMEMS Aによって作られた信号
−ay:ポイントAのy方向においてMEMS Aによって作られた信号
−bx:ポイントBのx方向においてMEMS Bによって作られた信号
−by:ポイントBのy方向においてMEMS Bによって作られた信号
【0107】
実際それぞれの信号は正の整数として表されたサンプルベクトルである。ベクトルは波形の数値表現である。同じ署名のすべてのベクトルは同じ長さ(同じサンプル数)を有する。
【0108】
それぞれの入力信号グループax,ay,bx,byから次のコンポーネントが得られる:
【数1】
【0109】
それぞれのコンポーネントは入力署名と同じ長さを持つベクトルである。FFTF(x)は直接的でx信号とは逆の高速フーリエ変換によるフィルタリングに等しい。フィルタは低域通過フィルタである。フィルタリング係数は経験的に決められペンに特有なものである。
【0110】
サンプルコンポーネントの数列を解析することによってこれらコンポーネントを構成する不変量を求める。不変量とは信号振幅や周波数における不変な波形の要素である。信号が長さLを有す場合、不変量はn個の連続するポイントのグループを解析し、それぞれの信号ポイントから開始する(最新のポイントはもちろん除外するL−ENT(L/n)*n、ここでENT(L/n)はL/nの全体を表す)。
【0111】
不変量は多くの方法で定義できる。N−1個の線分はn個のポイントで定義される。ここでn=3を選ぶ。p0,p1を2つの線分の傾きとする。以下のm=13個の不変量タイプ(図11)が定義され、それらに0とm−1の間のコードが関連づけられる。
code0=0:p0>0,p1>p0
code1=1:p0>0,p1=p0
code2=2:p0>0,p1<p0,p1>0
code3=3:p0>0,p1=0
code4=4:p0>0,p1<0
code5=5:p0=0,p1>p0
code6=6:p0=0,p1=p0
code7=7:p0=0,p1<p0
code8=8:p0<0,p1>0
code9=9:p0<0,p1=0
code10=10:p0<0,p1<0,p1>p0
code11=11:p0<0,p1=p0
code12=12:p0<0,p1<p0
【0112】
これらの不変量タイプ/コードはベースタイプ/コードと呼ぶ。確かにこれらの不変量は信号周波数と大きさに依存しないことが分かる。信号が例えば2倍に増幅されるあるいはその周波数が2分の1に削減された場合、同じ不変量の数列が得られる。
【0113】
さらにすべての不変量数列が可能という訳ではないことも理解できる。例えば、0タイプ不変量の後には、0,1,2,3,4タイプの不変量のみが続くことになる。
不変量を決定することによって、すべてのコンポーネントが3重数列(invi,ari,tri)に変換できる。3重数列は以下を含む:
− 不変量ベーシックタイプinvi
− 不変量の基準振幅ari。基準振幅はいくつかの方法で定義できる。ここでは不変量を定義する最初のn個のサンプルの振幅が基準振幅と考える。
− 不変量の基準瞬間tri。不変量の基準瞬間はいくつかの方法で定義できる。ここでは波形が開始されてから最初のテストサンプル(不変量を定義するn個のサンプル)の出現の瞬間を基準瞬間と考える。
【0114】
波形に近い形を描くために、波形のそれぞれのari不変量の基準振幅を、同じベーシックタイプの最初の以前の不変量のark基準振幅と比較する:tip(ari)=tip(ark)=bi(同じタイプの以前の不変量が存在しない場合、ark=ariと考えられる)。3つのケースがある:
a) ari<ark この場合i不変量はbiコードを有する
b) ari=ark この場合i不変量はbi+mコードを有する
c) ari>ark この場合i不変量はbi+2*mコードを有する
【0115】
この操作によって、それぞれのコンポーネントは0と3*m−1の間の値を持つ拡張コード(または拡張タイプ)と呼ばれるコード列として表される。
ベースコードは拡張コードから推定できることが分かる。
【0116】
さらにすべての連続した拡張不変量数列が可能というわけではないことも分かる。例えば、3つの連続した不変量が同じベースコード(例えば0)を持つ場合、第2の不変量が第1の不変量よりも大きな基準振幅を持つことはあり得ないし、第3の不変量が第2の不変量より低い基準振幅を持つこともない。
【0117】
拡張コードで符号化した不変量数列によって表される波形を処理する次のステージは、不変量数列を圧縮し重み付けをすることである。本質的に、圧縮はあるタイプの単一不変量をこのタイプの不変量数列から除外することである。重み付けはいくつかの要素に依存する重み(またはコスト)をすべての不変量に付加することである。これは以下に説明する。
【0118】
圧縮と重み付け法は以下のステップを含む。
a) 不変量セクションチャートを決定する。セクションチャートのそれぞれのエントリは同じベースタイプの1つまたは複数の連続した不変量の数列に対応する。エントリには以下のものが含まれる:
−セクション拡張タイプ。これはセクションを構成する不変量の拡張タイプである。
− セクション基準振幅はいくつかの方法で定義できる。基準振幅はセクションを構成する複数の不変量の基準振幅の合計と考えられる。
− セクション基準時点はいくつかの方法で定義できる。基準時点は、セクションを構成する複数の不変量の基準時点の合計と考えられる。(これは署名の端部に位置する不変量の重みを大きくすることになり、実験結果と符合する)。
b) セクション拡張タイプから抽出したベースタイプとしてキーを使うことによってセクションチャートを並べ替える。
c) セクションチャートは同じベースコードを持つサブセクションに分割する。
d) セクションチャート内の入力番号が各サブセクションの長さを決める。
e) それぞれのサブセクションについて、サブセクション要素の基準振幅の平均が得られる(サブセクション要素の基準振幅をサブセクション長さで割ったものの合計)。
f) それぞれのサブセクションについて、要素の基準時点の平均が得られる(サブセクション要素の基準時点をサブセクション長さで割ったものの合計)。
g) 各サブセクション要素の基準振幅はサブセクション要素の平均基準振幅に取り替えられる。
h) 各サブセクション要素の基準時点はサブセクション要素の平均基準時点に取り替えられる。
i) セクションチャートは最初の順序で並べ替えられる。この時点で、セクションチャートの各要素は修正された基準振幅と修正された基準時点を有する。
j) セクションチャートのそれぞれの入力に対して、2組(invi,costi)の別の不変量数列が生成される:
− 不変量inviの拡張タイプ(セクション要素の拡張タイプに等しい)
− セクション要素の基準瞬間と基準振幅の合計に等しい重さ(コスト)costi
k) 得られた数列の不変量重みは調整カーブ(機能)に従って調整する。この曲線機能は多くの方法で定義できる。この瞬間においてコンポーネント波形の(不変量番号における)長さがLである場合、その曲線は次のように定義されると考える:
− 最初のL/4不変量は0.5を乗じた重みを有する。
− 次のL/2不変量は1を乗じた重みを有する。
− 残りの不変量は1.5を乗じた重みを有する。
【0119】
署名比較モジュールは2つの署名間の比較をおこなう。2つの署名を比較するには、それぞれの署名にコンポーネント集合を使う。各コンポーネントは不変量の連続である。それぞれの不変量は以下の情報を関連づけられている:不変量の拡張コード(そのベースコードはいずれ推定することができる)と重み(コスト)。
【0120】
2つのコンポーネント間の距離を求めるために、Levenshtein距離を用いる(Christian Charras,Thierry Lecroq:Sequence comparison,LIR(Laboratoire d’Informatique de Rouen)et ABISS(Atelier Biologie Informatique Statistique Sociolinguistique)Faculte des Sciences et des techniques Universite de Rouen 76821 Mont−Saint−Aignan Cedex France)。この距離は次のように説明できる。
a) Levenshtein距離によって比較されたシンボルのタイプは拡張不変量コードである。
b) シンボルコストは不変量重み(コスト)である。
c) (Levenshtein距離に従って)2つの同一タイプのシンボルを比較する場合、コストは2つのシンボルのコスト差のモジュールに等しい。
d) (Levenshtein距離に従って)2つの異なるタイプのシンボルを比較する場合、コストは以下のものに等しい:
i. 削除に関しては、コストは削除されたシンボルコストである。
ii. 挿入に関しては、コストは挿入されたシンボルコストである。
iii. 代入に関しては、コストは2つのシンボルコストの合計である。
e) 最後に、結果(Levenshtein距離)がDである場合、考慮される距離(正規化された)dは:
【数2】
ここでcostiとcostjは2つのコンポーネント不変量のコストを表す。
サンプル署名SAのmコンポーネントを入力署名SBのmコンポーネントとそれぞれ比較するとm個の距離が得られる。m個の距離を組み合わせるのにいくつかの方法がある。最終距離dSRA1はm個の距離の平均と考える:
【数3】
【0121】
SRA2法は4つのモジュールを含む:
a) 入力署名のためのフィルタリングモジュール
入力データは異なる周波数範囲を有する2つの情報タイプを含む:ペンリード部と紙との接触情報および複雑な手の動き情報を有する。この情報から後で処理される手の空間的動きに関する情報が得られる。紙との接触によって発生したマイクロ振動に関する情報を選択的に除去することによって、シナプス反射パターンに対応する情報を得る。この手順はフィルタリング法41と呼ぶ。
【0122】
b) 後処理および入力データ作成モジュール
一連の操作により、フィルターをかけた入力データから代表的な情報を抽出する。この情報を使ってサンプル署名に関するデータおよび識別すべきオリジナルとねつ造署名で構成されるデータとを保存する。これらの操作は後処理と信号生成法42と呼ぶ。
【0123】
c) 2つの信号、一つはサンプルもう一つはオリジナルまたはねつ造署名、を比較するためのモジュール。
これらの操作は信号比較法43と呼ぶ。
【0124】
d) コンポーネントの重さに基づいて署名距離を決定するモジュール。これらの操作はコンポーネント重さ要素に基づく署名距離決定モジュール44と呼ぶ。
【0125】
フィルタリング法、後処理および信号生成法、コンポーネント重さ要素に基づく署名距離決定モジュール、および信号比較法の集まりは署名識別法SRA2(署名識別2)と呼ぶ。
【0126】
フィルタリング法、後処理および信号生成法、コンポーネント重さ要素に基づく署名距離決定モジュール、および信号比較法の組み合わせモードを図13に示す。サンプル署名は変換されて署名データベースに保存される。
【0127】
続いて、新しい署名が表示されると、SRA2はこれを変換してデータベース内の署名と比較して、現行の比較データベースの他のすべての対象個人のサンプル署名と入力された署名との距離を計算する。得られた距離から、目標の対象個人を含む他のすべての対象個人のサンプル署名に対する入力署名のリレーショナルデータベクトルを求める。このデータベクトルはSRA1が生成した同じ入力に対応するベクトルとともに、結果組み合わせ法のための入力情報になる。
【0128】
フィルタリングモジュール(図14)はEMD手法(経験的モード分解)に基づいて作られた、フィルタソフトウェアによって構成される。これは、振幅/周波数変調されたキャリアに乗ってレベル1から送られてくるシナプス反射動作による半共鳴マイクロ振動の運動パターンを最適に分離する。瞬間的書記速度の変化はマイクロ振動周波数変調を発生する。また神経筋肉シナプス動作の変化は振幅変調を発生する。
【0129】
この方法は4つの信号のそれぞれに適用されて、加速度を表す(ax,ay,bx,by)
フィルタリングアルゴリズムに使われるベース機能は次の勾配を計算することである:
【数4】
これは以下に定義する間隔とステップで適用される。
n個の数値要素からなる最初の数列、V(1..n)1、はフィルターされるペンからのアナログ信号サンプル値を表す。
【0130】
フィルターは以下のステップからなる手順を複数回実行する(入力数列V、出力数列W):
Step1:W1j=V1j
Step2:C1=slope([Vi−1j,Vij],[i−1,i])
C2=slope([Vi−1j,Vij,Vi+1j],[i−1,i,i+1])
Wij=S=Vij−C1*k1+C2*K2,i=2…n−1
(k1とk2は経験的に決められた定数であり、それぞれ0.935と0.93である。)
これらの計算の結果Wはn−1個の要素を有する。
Step3:Vij+1=Wij,i=1…n−j
j=1…N,N=2*Z,Z>0,整数
この手順はN回繰り返す。
【0131】
数値Nはマイクロ振動に対応する高周波数減衰を決定する。フィルターは1:4から1:10の範囲でその比を最適化する。有用な周波数と減衰周波数の間で経験的に最適値はN=10である。
【0132】
フィルタリングした後に得られた信号は、シナプス反射動作によって生じる動作パターンにより手の空間動作の構成を表す。この技法はバイオ信号処理である本来的に変調されたAM−FM,すなわちEMD(“Empirical Mode Decomposition−The University of Birmingham School of Computer Science−MSc in Advanced Computer Scinece−EEG−Handbook 2004/2005”,“DETRENDING AND DENOISING WITH EMPIRICAL MODE DECOMPOSITIONS”Patrick Flandrin,Paulo Gonc,alves and Gabriel Rilling−Laboratoire de Physique(UMR 5672 CNRS),Ecole Normale Superieure de Lyon).
【0133】
それぞれのフィルターをかけられた入力信号グループax,ay,bx,byから信号構成および後処理モジュール42において以下のコンポーネントが得られる。
【数5】
【0134】
したがって、それぞれのコンポーネントは入力信号と同じ長さを持つベクトルであり、入力信号から導きだされた信号と考える。
最初の比較段階は以下の基準に従って信号を分割することである。
信号構成および後処理モジュールから得られた両方の署名(サンプル、オリジナルまたはねつ造署名)の信号を、極端な信号ポイント上で(極大および極小)マークする。4つのマーカーの値で複数のセクションを作成する。次のマーカーに移って同じ手順を繰り返す(図15に示すように)。
【0135】
入力署名とサンプル署名に対応する2つの信号の間の距離を算出するために、アルゴリズムタイプDTW(Dynamic Time Warping)を使用する。この説明は以下の通り。
a) このアルゴリズムは4つのマーカーの値で構成されるセクションに適用される。
b) 2つのセクション間の距離の評価のために、F−Test機能を使う。この機能は2つの数列が同一となる確率を出す。(Kishore Bubna Charles V.Stewart,Department of Computer Science,Rensselaer Polytechnic Institute Troy,NY 12180−3590“Model Selection Techniques and Merging Rules for Range Data Segmentation Algorithms”)
【0136】
次のチャートにおいて、水平な行にはQ信号が生成したセクションが配置され、縦の列にはW信号が生成したセクションが配置される。
【表1】
D(i,j)=min{D(i−1,j−1),D(i−1,j),D(i,j−1)}+d(qi,wj)
【数6】
ここで
qi: 信号1(Q)のiクラスのセクション
wi: 信号2(W)のjクラスのセクション
ni: セクションqiの長さ
nj: セクションwjの長さ
avei: セクションqiの中間2乗偏差
avej: セクションwjの中間2乗偏差
c) 最後に、ゴリスムで求めた距離がDqwの場合、署名間の距離Dは:
【数7】
ここで
Nq: Q信号におけるセクション数
Nw: W信号におけるセクション数
【0137】
min(Nq,Nw)がDqwよりも小さい可能性があるのでDが0よりも小さい確率がある。したがって得られた結果を[0…1]区間においてレートセッティングする必要がある。このレートセッティングは実験的に得られたデータおよび以下の式に基づくものである。
【数8】
ここでVminは実験的定められた最小のD値を表す。
【0138】
それぞれの署名コンポーネントは、署名距離決定モジュール内の大きなデータベース上で経験的に決定された重さに関連づけられる。これはコンポーネント重さファクタ43に基づいておこなわれる。
【0139】
サンプル署名SAのN個のコンポーネントを入力署名SB(オリジナルまたはねつ造)のN個のコンポーネントとそれぞれ比較することによってN個の距離が得られる。N個の距離を組み合わせるにはいくつかの方法がある。最終距離DSRA2はN個の距離の重み付け平均と考える:
【数9】
ここで
N: 署名のコンポーネント信号の数
pi: コンポーネントIの重さ
di: コンポーネント信号SA(i),SB(i)間の距離
【0140】
入力署名を現行の比較データベースと比較することによりSRA1とSRA2によって得られた2つのマトリックス(行)は組み合わされて最終結果のマトリックスを生成する。最終結果のマトリックスは大きい順に並べ替えられる。認証プロセスの最終回答は、入力署名と対応するサンプルとの比較をした位置で構成される。最終回答と許容リスク係数に基づき、システムは署名をオリジナルとして受け入れるか、ねつ造として拒絶するかを決定する(例:許容リスク係数が低いシステムの場合、最終回答において、入力署名と対応するサンプルとの間の最小距離に相当する最初の位置も存在する場合、署名はオリジナルとして受け入れられると考えられる)。
【0141】
アルゴリズムの性能を評価するために、いくつかのインジケータが導入される。
NOA=受け入れられたオリジナルの数
NFR=ねつ造として拒絶された数
NS=サンプル数
NF=ねつ造署名の数
NO=オリジナルの数
K=対象個人のサンプル数
N=対象個人の数
次のインジケータはほぼシステム性能を表している:
a)オリジナルの取り扱いにおけるシステムの成功率(RSSO)
RSSO=NOA/NO
b)ねつ造署名の取り扱いにおけるシステムの成功率(RSSF)
RSSF=NFR/NF
c)システムの成功率(RSS)
RSS=(NOA+NFR)/(NO+NF)
【0142】
インジケータは、各人がK個の署名サンプル(NS=N*K)を登録したN人の対象個人を有するデータベースを参照することによって得られる。高いシステム性能は3つのインジケータの最大値によって特徴づけられる。
【0143】
性能評価をおこなうには、適用領域とその領域の許容リスク係数によって大きさと重要性を選択した対象の集合に対して、実験することによっておこなう。ねつ造署名に対する性能に関して、システムはオリジナル署名の数とほぼ同じ数のねつ造署名を使ってテストされる。
【0144】
上記のインジケータが理想の値100%に達することは実際上あり得ないので、上記認証システムは複数の個人認証手順とシステムからなる鎖の一つの環(並列または直列に組み込まれた環)を成している。このシステムは自動的にまた遥かに客観的に署名チェック手順を実現する。この手順は普通難しく、多くの場合筆跡学の専門的知識や資格を持たない人、例えば銀行員、登録係、カードショッピングなどのレジ係、によっておこなわれている。
【0145】
前記の認証方法の一つの技法は次の通り:入力署名を、目標の個人のサンプル署名を含む複数の対象個人のサンプルグループに、関連づける。すべてのサンプルは入力署名と比較される。したがって、最初の対象個人が登録されるときにシステムが機能するためには、初期データベースを前もって作っておく必要がある。初期データベースは複数の仮想対象個人のサンプルを含む。これらサンプルは共通な特徴として、システムが適用される文化領域のつづり文化(アルファベット)と同じつづり文化に属する。認証システムが使用されるにつれて、新しい対象個人のサンプルが初期データベースに登録されていき、現行データベースを作り上げていく。このようにして、現行データベースの対象個人の数が数万あるいは数十万に達する。
【0146】
現行データベースが大きくなると、入力署名の比較や関連づけにかかる時間が長くなって回答が非効率的になる。同時に、データベース内の登録個人の数が大きくなり、署名によってはランダムに発生した類似点のため、判断がますます複雑になる。実験を繰り返すことによって判明したことは、全データベースにおいてアルゴリズムを実行することによって検出した不要な類似点は(課された)システム成功率(RSS)を変更するほどの数には達していないことである。したがって、統計制御分野の技法を認証システムの一般的な方法に適合させることによって、データベースのサイズの問題は解決される。
【0147】
上記の関係は目標個人を含む対象個人の集合に基づいている。したがって、自由意志による署名からなる全データベースにおける比較方法を実験し繰り返して解析した結果、次の結論に達した。
【0148】
1. システム成功率(RSS)、初期データベースの対象個人の数(N)、対象個人のサンプル数(K)、対象個人の集合の大きさ(Ne)、および入力署名の数(Ni)の間には相互依存関係がある。
【0149】
2. もちろん、同一個人の署名間の比較は例外として、実験で判明したことは、本発明の比較方法に関して、サンプルとオリジナルからなる全データベースの比較による値(距離)の分布は任意の対象個人に対して正規分布(ガウス分布)である。システム成功率(RSS)に一致する場合、オリジナルをそのサンプルの一つと比較したときの回答値(距離)は、入力を全サンプルデータベースと比較することによって得られた距離分布曲線上の最大ポイントを表す。
【0150】
3. 任意の対象個人のNiオリジナル入力署名に対応するすべての並べ替えられた回答値のすべての分布曲線上において、他の対象個人の回答の座標値は最大領域においてほぼ定数であり、比較回答値判定基準によって解析された各個人の特定配置を決定する。実際のシステムにおいてデータベースは安定でないため(対象個人の数は常に増え続けている)ので、この最後の結論は、集合の安定した署名に関してのみサブシステム5(判定)において利用される。この結論は上記方法の説明のためにある。
【0151】
4. 文化的帰属基準に従って作られた初期データベースには、他の個人の並べ替えられた回答値の分布曲線上に比較的一様に分布した回答を有する複数の個人が常に存在する。これら個人の分布曲線上での出現領域と相対的順序は、特に分布曲線の最大ポイントに近い値については、個人のサンプルと比較される入力署名の回答挙動を特徴づける。現行比較データベースに目標個人のサンプルとともにこれら仮想個人のサンプルが導入された場合、認証判定を補足的に改善できる可能性がある。
【0152】
これらの実験的結論と相互依存の統計的関係を利用することによって、回答時間を短縮し、バッチの標準制御チャートの従来パラメータに対して認証システムの特性をマッピングする。このバッチは正規分散バッチからのエラー制御パラメータ間の相互依存を定義するものである。マッピングの主な目的はRSSと相関関係にある対象個人集合の大きさを適切に決めることである。
【0153】
サンプリング統計制御チャートに特有な概念と認証システムで用いられる概念との間でマッピングすることは次のように定義される:
−「生成過程」において導入されたオブジェクトは署名と符合する。
− 制御基準を表す属性を生成する安定したプロセスはSRA1とSRA2法によって2つの署名を比較することに符合する。
− Etalon(エタロン)は、既知の入力署名と対象個人のサンプルとを比較する方法SRA1とSRA2によって生成された属性の値である。エタロンは入力署名に依存するので、それぞれの認証動作に固有である。
− 認証動作は全体のデータベースに適用されたとき、バッチを生成する。バッチサイズは現行データベースに一致する。
− サンプル集合のサイズは、現行データベースからランダムに選んだ署名と目標個人のサンプルを加えた数に符合する。合計で現行比較データベースを構成する。
− エラーは、現行比較データベースにおいて入力署名が既知で繰り返し比較によってシステムがテストされる場合に、オリジナルとねつ造署名の判定法の不正解回答に符合する。
− AQLはサンプリング法に対する信頼度に符合する。
【0154】
対象個人のサンプルのサイズを決めるのは次のようにしておこなう。初期データベースを現行データベースと数値的に永久に等しいと考え、実験的に2つのインジケータによって全データベースについてRSSを求める:RSSOとRSSFは比較法の分離特性によって実験的に決定される。
【0155】
例えば、正規統計制御チャート(SR3160/2−84)から最も評価が容易な条件を選ぶ:判定法はエラーの存在を評価するのに正しいカテゴリ(オリジナルまたはねつ造)に対するランク1の個人のつながり(最大類似)を評価する。その評価は、現在の入力と現行データベースとの比較から得られたサンプル解答に基づいておこなわれる。240個人に属する1200個サンプルのデータベース上の実験的に定められたRSSが単一入力について(Ni=1)、97%であり、サンプリング後の目標信頼度が99.9%である場合、制御チャートからNe=25個人に対応する125サンプル署名のサンプル集合のサイズが得られる。また同時に、AQL値の影響を考慮して、RSSは最悪の場合RSSinitial´AQLとなり、96.903%になる。したがってシステムの回答時間は10倍以上改善し、RSSの減少はわずか0.097%である。
【0156】
実験は次のことを強調している。すなわちNi=2において、理想的な状態(100%)を達成するのに必要なパーセントのほぼ半分でRSSは増大している。すなわち97%からほぼ98.5%へ増大し、またサンプリング後にはRSS(Ni=2,Ne=25)=98.303%である。システム回答時間は従って5倍以上も改善している。
【0157】
RSSFはサンプル集合の対象個人数に正比例している。これらの対象個人のサンプル署名に含まれるランダムなアトラクターがこの現象を生じさせている。サンプル集合がランダムに選んだ個人のサンプルと目標個人のサンプルを加えたもののみから構成されると仮定すると、ねつ造署名が認証される確率が高くなる。なぜならサンプル署名は他の個人サンプルよりもねつ造署名の方がより強いアトラクターを含む可能性が高いからである。
【0158】
ゼロ分離パワーと比較する方法(アルゴリズム)の概念が正式に導入された。分離パワーは任意の署名が現行データベースからランダムに選ばれる確率を示す。このアルゴリズムを使うと、システム成功率は:
RSS0=1/n
ここでnはデータベースの署名数(2000署名のRSSoは0.0005つまり0.05%に等しい)。
RSSは全初期データベースに対して実験的に定められるので(例えば2000署名のデータベースの場合97%)、システムが使用するこの方法(PSRA1,PSRA2)の識別パワーはRSS/RSSoと定義することができる。
【0159】
サンプル集合サイズ(Ne)は次の2つの条件を同時に満たすように統計制御チャートに従って選択される:
条件1:RSSOの観点からサンプル集合を最適化するために、選択されたサンプル集合の署名数の大きさは、本物の署名(RSSO)に関して1からシステム測定成功率を差し引いた値よりも遥かに低いRSSo解答を生成しなくてはならない。
RSSo<<(1−RSSO)
条件2:RSSFの観点からサンプル集合を最適化するために、選択されたサンプル集合の署名数の大きさは、サンプル集合のランダム署名(x)が含むアトラクターのために、高いランダム署名(x)の誤認識率(RRIF(x))を生じなければならない。この署名(x)は目標の対象個人のサンプルの1つではない。この観点から、サンプル集合のサイズは次の条件を満たすように実験的に決められる。
RRIF(x)RSSF
【数10】
統計的には認証プロセスは全対象個人データベースに関連づけられている。したがって、しきい値的判定をおこなう対象個人メトリックスシステムの欠点を解消している。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】図1は認証システムの物理構造である。
【図2】図2は認証システムの機能構造である。
【図3】図3はサブシステム1トポロジーで、書記および電子フォーマットへの運動パターンのデジタル変換を示す。(ペン)
【図4】図4はサブシステム1における情報フローを示す。
【図5】図5はサブシステム2による署名取得プロセスを示す。
【図6】図6は取得モニターインターフェイスウィンドウを示す。
【図7】図7は決定方法開始/停止によるデータ処理を示す。
【図8】図8は状態図で、開始/停止方法を示す。
【図9】図9は対象個人のシステム登録ステージのシナリオを示す。
【図10】図10は対象個人の認証ステージのシナリオを示す。
【図11】図11はSRA1における署名変換と比較を示す。
【図12】図12はSRA1におけるn=3に対する不変量定義を示す。
【図13】図13はSRA2における署名変換と比較を示す。
【図14】図14はSRA2のフィルタリング方法を示す。
【図15】図15はSRA2における信号分割を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手書き署名を取得、解析および認証するためのコンピュータ使用システムであって、金属ケース(1)を有するペンサブシステム(S1)からなり、前記ペンサブシステムは
2つのMEMS加速度センサグループ(A,B)と
厚さが0.5mm未満で、ペンの書記部分の頂部とセンサグループ(A)との間の距離(d)が紙(5)のレベルで発生したコンタクト情報を増幅するのに十分な15mm未満で、(A)と(B)のセンサブループ間の距離(Ds)が署名空間運動情報を増幅するには十分な30mmよりも大きく設定されたプリント回路基板(2)とからなり、
ペンリード部はプリント回路基板と常時接触しており、書記リード部(3)の本体はシナプス反射を特徴づける接触振動に特有な周波数バンドを送信できるプラスチック材で作られ、
当該サブシステム(S1)には
赤外線LED(4)と
紙までの距離に比例する反射光量を検出する赤外線光センサ(C)と
センサに補足された信号を取得/デジタル化/符号化するマイクロコントローラ(6)と
USBフォーマットでのデータ変換/送信マイクロシステム(7)と
を組み込んでおり、
前記ペンは、パーソナルコンピュータ(S2)からなる別のサブシステムへ情報を転送するのに十分な直径2.5mmのUSB接続ケーブル(8)を有し、前記パーソナルコンピュータ(S2)はサーバーからなるさらに別のサブシステム(S3)へネットワーク接続されており、他のパーソナルコンピュータ(S2)はペンサブシステム(S1)を周辺機器としてそれ自身に接続している、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
手書き署名を取得、解析および認証するための方法であって、
第1ステージおいて手書き署名を取得し、
第2ステージにおいて、データ処理フェーズ(コンタクトおよびコンテクスト情報分析)と開始/停止瞬間検出フェーズからなる取得信号の開始/停止解析をおこない、
第3ステージにおいて署名識別をおこなうが、これは署名変換フェーズ、比較フェーズ、結果解釈フェーズからなり、署名変換フェーズは信号フィルタリング、後処理および生成からなり、比較フェーズでは署名データベースにおいて、入力署名の対象個人がサンプル署名の対象個人と同じかどうかを署名間の距離を求めることによって調べ、これら2つのフェースはSRA1とSRA2法によって実行され、最後に結果解釈フェーズを実行する、ことを特徴とする方法
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
第1ステージにおいて、データ処理フェーズでコンタクト情報を分析するために、ハイパス周波数フィルターによってプライマリデータバッファからデータフィルタリングをおこないコンタクト情報を表す2つの信号(i1,i2)を得て、その後、それぞれの得られた信号に対して最後の20サンプルについて統計的変化を計算し、現在のサンプルグループに対応する以前に求めた変化の値を変化レベル解析のサーキュラーバッファに保存し、コンテクスト情報解析のために書記位置検出データをペン位置解析のためにサーキュラーバッファに保存する、ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、
開始/停止検出フェーズにおいてNプライマリデータサンプル集合の取得サブフェーズをおこない、
その後、別のサブフェーズにおいて開始瞬間を評価し、その際前記信号(i1,i2)の一つの変化レベルが変化レベル解析バッファの前もって定めたレベルよりも高くなければならず、前記ペンは最小数のポイントにおいて筆記位置になければならず、またそれら情報はペン位置解析サーキュラーバッファから取得され、開始が検出されたら直ちに次のステップとして遷移がおこなわれ、
その後、別のサブフェーズにおいて停止瞬間評価をおこない、(i1)または(i2)信号の変化レベルが解析バッファの最小数のポイントでの前もって定めたレベルよりも低いかどうか、あるいはペンがペン位置解析サーキュラーバッファの最小数ポイントで筆記位置にないかどうかを調べ、
停止が検出されたときに次のステップが実行され、この停止はペンが紙と接触している区間の一つを決める内部停止瞬間であり、
その後、別のサブフェーズにおいて内部開始瞬間を評価し、内部開始が実験的に決められた時間内に検出されない場合、以前に求めた停止が最終的な署名の停止であると捉え、レイテンシーの後または内部開始検出が次のステップに移行した後に、最終停止確認サブフェーズに移り、そこで取得された署名が最終サンプル数を有しているかどうかを調べ、そうでない場合、プロセスは開始瞬間評価へ移って再び実行される、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、
署名変換ステージの署名識別フェーズにおいて、直接および逆フーリエ変換とローバス種はすうフィルタを使って入力署名を署名コンポーネント(c0−c8)に変換し、
その後、不変量タイプ(c0−c12)を定義する不変量へのコンポーネント変換をおこなうが、ここでは各コンポーネントを、不変量ベーシックタイプ(invi)と、不変量基準振幅(ari)と不変量基準瞬間(tri)とからなる3組の数列に変換し、
その後、波形にできるだけ近い記述を得るために、各コンポーネントは拡張コード数列として表され、別のサブフェーズにおいて不変量数列を圧縮し重み付けをおこない、さらに比較フェーズにおいて2つの対応するコンポーネント間の距離を決定し、得られた距離を組み合わせる、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、圧縮および重み付けサブフェーズは以下を含む:
a) 不変量セクションチャートを決定すること;
b) 拡張セクションタイプから抽出したベーシックタイプをキーとして使ってセクションチャートを並べ替えること;
c) セクションチャートを同じベーシックコードを有するサブセクションに分割すること;
d) それぞれのサブセクションについて、サブセクション長さをセクションチャートでの入力数として求めること;
e) それぞれのサブセクションについて、サブセクション要素の基準振幅平均を求めること;
f) それぞれのサブセクションについて、その要素の基準瞬間平均を求めること;
g) 各サブセクション要素の基準振幅をサブセクション要素の平均基準振幅に取り替えること;
h) 各サブセクション要素の基準瞬間をサブセクション要素の平均基準瞬間に取り替えること;
i) 初期の順序でセクションチャートを並べ替えること;
j) 新しい不変量数列を2組タイプの数列(invi,costi)として作ることであり、その際に最初の項はセクション要素の拡張タイプであり、2番目の項はセクション要素の基準瞬間と基準振幅の合計に等しい;
k) 調整曲線にしたがって、得られた数列の不変量の重み付けを調整することであり、その際、曲線不変量の総数の最初の4分の1は重さに0.5を乗じ、次の不変量の半分は重さに1を乗じ、残りは重さに1.5を乗じる、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、
SRA1による比較フェーズにおいて、シンボルタイプが拡張不変量コードでありシンボルコストが不変量の重さであるようなLevenshtein距離を使って2つのコンポーネント間の距離を決定し、
2つのシンボルを比較したときに、同じである場合、得られたコストは2つのシンボルコストの引き算モジュールに等しく、またタイプが異なる場合、得られたコストは(削除が生じた場合)消されたシンボルのコストとなり、(挿入が生じた場合)挿入されたシンボルのコストとなり、あるいは(代入が生じた場合)2つのシンボルコストの合計となり、
その後、Levenshtein距離Dは正規化された距離として扱われ、最後に、SRA1に対応する最終距離dSRA1がサンプル署名コンポーネントと入力署名コンポーネントとの間のm個の距離の平均となるように、距離を組み合わせる、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法であって、署名データベースにおけるチェックステージ(SRA2)において、入力データ(ax,bx,ay,by)にフィルターをかけるフェーズで、紙との接触によるマイクロ振動にフィルターをかけることによって得られるシナプス反射に特有な手の空間運動と組み合わされる手の空間運動に関する情報を得て、
後処理および入力データ組み合わせフェーズにおいて、フィルターされた入力信号に基づいて、ポイントAに対応する瞬間加速度モジュール、ポイントBに対応する瞬間加速度モジュールおよびポイントAとBに対応する瞬間速度モジュールを計算し、ペン並進加速度を削除して求心加速度コンポーネントのみを保持し、ペン並進加速度を削除して求心コンポーネントのみを保持し、
信号比較フェーズにおいて、それぞれの信号をセクションに分割し、2つの信号間の距離をF−テストアルゴリズムを使って計算することによって2つのセクション間の距離を評価し、
その後、前記距離を信号長さにしたがって正規化し、そして前記距離を[0,1]区間内に正規化する、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項2に記載の方法であって、コンポーネント重み付けに基づいてSRA2によって署名間の距離を求めるフェーズが、実験的に定められた重さを各署名コンポーネントに割り当てて、サンプル署名のN個のコンポーネントを入力署名のN個のコンポーネントと比較することによりN個の距離を取得し、その重み付き平均を計算してDSRA2の距離を求める、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項2に記載の方法であって、結果解釈ステージが、入力署名を現行比較データベースと比較した後にSRA1とSRA2によって取得した結果のラインマトリックスを合計して最終結果のマトリックスを求め、最終結果マトリックスをを大きい順に並べ替え、並べ替えられたマトリックス内において入力署名と対応するサンプルとを比較した結果が配置される位置が、認証プロセスの最終回答を構成する、ことを特徴とする方法。
【請求項1】
手書き署名を取得、解析および認証するためのコンピュータ使用システムであって、金属ケース(1)を有するペンサブシステム(S1)からなり、前記ペンサブシステムは
2つのMEMS加速度センサグループ(A,B)と
厚さが0.5mm未満で、ペンの書記部分の頂部とセンサグループ(A)との間の距離(d)が紙(5)のレベルで発生したコンタクト情報を増幅するのに十分な15mm未満で、(A)と(B)のセンサブループ間の距離(Ds)が署名空間運動情報を増幅するには十分な30mmよりも大きく設定されたプリント回路基板(2)とからなり、
ペンリード部はプリント回路基板と常時接触しており、書記リード部(3)の本体はシナプス反射を特徴づける接触振動に特有な周波数バンドを送信できるプラスチック材で作られ、
当該サブシステム(S1)には
赤外線LED(4)と
紙までの距離に比例する反射光量を検出する赤外線光センサ(C)と
センサに補足された信号を取得/デジタル化/符号化するマイクロコントローラ(6)と
USBフォーマットでのデータ変換/送信マイクロシステム(7)と
を組み込んでおり、
前記ペンは、パーソナルコンピュータ(S2)からなる別のサブシステムへ情報を転送するのに十分な直径2.5mmのUSB接続ケーブル(8)を有し、前記パーソナルコンピュータ(S2)はサーバーからなるさらに別のサブシステム(S3)へネットワーク接続されており、他のパーソナルコンピュータ(S2)はペンサブシステム(S1)を周辺機器としてそれ自身に接続している、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
手書き署名を取得、解析および認証するための方法であって、
第1ステージおいて手書き署名を取得し、
第2ステージにおいて、データ処理フェーズ(コンタクトおよびコンテクスト情報分析)と開始/停止瞬間検出フェーズからなる取得信号の開始/停止解析をおこない、
第3ステージにおいて署名識別をおこなうが、これは署名変換フェーズ、比較フェーズ、結果解釈フェーズからなり、署名変換フェーズは信号フィルタリング、後処理および生成からなり、比較フェーズでは署名データベースにおいて、入力署名の対象個人がサンプル署名の対象個人と同じかどうかを署名間の距離を求めることによって調べ、これら2つのフェースはSRA1とSRA2法によって実行され、最後に結果解釈フェーズを実行する、ことを特徴とする方法
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
第1ステージにおいて、データ処理フェーズでコンタクト情報を分析するために、ハイパス周波数フィルターによってプライマリデータバッファからデータフィルタリングをおこないコンタクト情報を表す2つの信号(i1,i2)を得て、その後、それぞれの得られた信号に対して最後の20サンプルについて統計的変化を計算し、現在のサンプルグループに対応する以前に求めた変化の値を変化レベル解析のサーキュラーバッファに保存し、コンテクスト情報解析のために書記位置検出データをペン位置解析のためにサーキュラーバッファに保存する、ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、
開始/停止検出フェーズにおいてNプライマリデータサンプル集合の取得サブフェーズをおこない、
その後、別のサブフェーズにおいて開始瞬間を評価し、その際前記信号(i1,i2)の一つの変化レベルが変化レベル解析バッファの前もって定めたレベルよりも高くなければならず、前記ペンは最小数のポイントにおいて筆記位置になければならず、またそれら情報はペン位置解析サーキュラーバッファから取得され、開始が検出されたら直ちに次のステップとして遷移がおこなわれ、
その後、別のサブフェーズにおいて停止瞬間評価をおこない、(i1)または(i2)信号の変化レベルが解析バッファの最小数のポイントでの前もって定めたレベルよりも低いかどうか、あるいはペンがペン位置解析サーキュラーバッファの最小数ポイントで筆記位置にないかどうかを調べ、
停止が検出されたときに次のステップが実行され、この停止はペンが紙と接触している区間の一つを決める内部停止瞬間であり、
その後、別のサブフェーズにおいて内部開始瞬間を評価し、内部開始が実験的に決められた時間内に検出されない場合、以前に求めた停止が最終的な署名の停止であると捉え、レイテンシーの後または内部開始検出が次のステップに移行した後に、最終停止確認サブフェーズに移り、そこで取得された署名が最終サンプル数を有しているかどうかを調べ、そうでない場合、プロセスは開始瞬間評価へ移って再び実行される、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、
署名変換ステージの署名識別フェーズにおいて、直接および逆フーリエ変換とローバス種はすうフィルタを使って入力署名を署名コンポーネント(c0−c8)に変換し、
その後、不変量タイプ(c0−c12)を定義する不変量へのコンポーネント変換をおこなうが、ここでは各コンポーネントを、不変量ベーシックタイプ(invi)と、不変量基準振幅(ari)と不変量基準瞬間(tri)とからなる3組の数列に変換し、
その後、波形にできるだけ近い記述を得るために、各コンポーネントは拡張コード数列として表され、別のサブフェーズにおいて不変量数列を圧縮し重み付けをおこない、さらに比較フェーズにおいて2つの対応するコンポーネント間の距離を決定し、得られた距離を組み合わせる、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、圧縮および重み付けサブフェーズは以下を含む:
a) 不変量セクションチャートを決定すること;
b) 拡張セクションタイプから抽出したベーシックタイプをキーとして使ってセクションチャートを並べ替えること;
c) セクションチャートを同じベーシックコードを有するサブセクションに分割すること;
d) それぞれのサブセクションについて、サブセクション長さをセクションチャートでの入力数として求めること;
e) それぞれのサブセクションについて、サブセクション要素の基準振幅平均を求めること;
f) それぞれのサブセクションについて、その要素の基準瞬間平均を求めること;
g) 各サブセクション要素の基準振幅をサブセクション要素の平均基準振幅に取り替えること;
h) 各サブセクション要素の基準瞬間をサブセクション要素の平均基準瞬間に取り替えること;
i) 初期の順序でセクションチャートを並べ替えること;
j) 新しい不変量数列を2組タイプの数列(invi,costi)として作ることであり、その際に最初の項はセクション要素の拡張タイプであり、2番目の項はセクション要素の基準瞬間と基準振幅の合計に等しい;
k) 調整曲線にしたがって、得られた数列の不変量の重み付けを調整することであり、その際、曲線不変量の総数の最初の4分の1は重さに0.5を乗じ、次の不変量の半分は重さに1を乗じ、残りは重さに1.5を乗じる、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、
SRA1による比較フェーズにおいて、シンボルタイプが拡張不変量コードでありシンボルコストが不変量の重さであるようなLevenshtein距離を使って2つのコンポーネント間の距離を決定し、
2つのシンボルを比較したときに、同じである場合、得られたコストは2つのシンボルコストの引き算モジュールに等しく、またタイプが異なる場合、得られたコストは(削除が生じた場合)消されたシンボルのコストとなり、(挿入が生じた場合)挿入されたシンボルのコストとなり、あるいは(代入が生じた場合)2つのシンボルコストの合計となり、
その後、Levenshtein距離Dは正規化された距離として扱われ、最後に、SRA1に対応する最終距離dSRA1がサンプル署名コンポーネントと入力署名コンポーネントとの間のm個の距離の平均となるように、距離を組み合わせる、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法であって、署名データベースにおけるチェックステージ(SRA2)において、入力データ(ax,bx,ay,by)にフィルターをかけるフェーズで、紙との接触によるマイクロ振動にフィルターをかけることによって得られるシナプス反射に特有な手の空間運動と組み合わされる手の空間運動に関する情報を得て、
後処理および入力データ組み合わせフェーズにおいて、フィルターされた入力信号に基づいて、ポイントAに対応する瞬間加速度モジュール、ポイントBに対応する瞬間加速度モジュールおよびポイントAとBに対応する瞬間速度モジュールを計算し、ペン並進加速度を削除して求心加速度コンポーネントのみを保持し、ペン並進加速度を削除して求心コンポーネントのみを保持し、
信号比較フェーズにおいて、それぞれの信号をセクションに分割し、2つの信号間の距離をF−テストアルゴリズムを使って計算することによって2つのセクション間の距離を評価し、
その後、前記距離を信号長さにしたがって正規化し、そして前記距離を[0,1]区間内に正規化する、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項2に記載の方法であって、コンポーネント重み付けに基づいてSRA2によって署名間の距離を求めるフェーズが、実験的に定められた重さを各署名コンポーネントに割り当てて、サンプル署名のN個のコンポーネントを入力署名のN個のコンポーネントと比較することによりN個の距離を取得し、その重み付き平均を計算してDSRA2の距離を求める、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項2に記載の方法であって、結果解釈ステージが、入力署名を現行比較データベースと比較した後にSRA1とSRA2によって取得した結果のラインマトリックスを合計して最終結果のマトリックスを求め、最終結果マトリックスをを大きい順に並べ替え、並べ替えられたマトリックス内において入力署名と対応するサンプルとを比較した結果が配置される位置が、認証プロセスの最終回答を構成する、ことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2008−530685(P2008−530685A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555047(P2007−555047)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【国際出願番号】PCT/RO2006/000002
【国際公開番号】WO2006/085783
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507268411)エス.シー.ソフトウィン エスアールエル (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【国際出願番号】PCT/RO2006/000002
【国際公開番号】WO2006/085783
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507268411)エス.シー.ソフトウィン エスアールエル (1)
【Fターム(参考)】
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