説明

抗ウイルス剤

【課題】抗ウイルス剤、特にヒトライノウイルス(rhinovirus、HRV)のようなピコルナウイルス科(Picornaviridae)に起因する感染の治療に有用な化合物、及びそれらの製造法の提供。
【解決手段】式Iの化合物、それらの塩、及び医薬的に許容可能なそれらの誘導体、それらの化合物を含む医薬組成物、及び哺乳動物に於けるピコルナウイルス感染の処置のためのそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス剤、特にヒトライノウイルス(rhinovirus、HRV)のようなピコルナウイルス科(Picornaviridae)に起因する感染の治療に有用な化合物、及びそれらの製造法に関する。又、本発明は、ピコルナウイルス感染症の治療におけるそれらの化合物の使用、及びそれらの化合物の製造において有用な中間体に関する。本発明の化合物は、HRVの治療における使用に特に適している。従って、便宜にそれらのウイルスに関連して本発明を記載する。しかしながら、本発明は、又、ピコルナウイルス科の別のウイルスにも適用されることを理解すべきである。
【背景技術】
【0002】
ヒトライノウイルスは、ピコルナウイルス科のライノウイルス属の一種であり、かぜ感染症の40から50%の原因であると考えられている。ヒトライノウイルスは、100以上の血清型的に異なる群を含み、従って複数の血清型に対する抗ウイルス活性及び力価は、薬物設計において同様に重要な因子であるとされてる。
【0003】
殆ど全ての型のHRVが結合する、二つの細胞受容体が同定された。100以上の型の血清型の内91を含む主要群は、細胞内接着分子−1(ICAM−1)に結合し、その一方HRV87を除く残りの型の血清型を含む少数群は、タンパク質である低密度リポタンパク質受容体ファミリーに結合する。
【0004】
ピコルナウイルス科の別の属は、エンテロウイルス属によって代表される。この属は、ポリオウイルス1〜3、コクザッキーウイルスA(23血清型)及びB(6血清型)、エコーウイルス(31血清型)及び付番されたエンテロウイルス68〜71を含む。エンテロウイルスに起因する臨床的な症候群には、小児麻痺、髄膜炎、脳炎、胸膜痛、ヘルパンギナ、手足口病、結膜炎、心筋炎及び新生児疾患、例えば呼吸器疾患及び熱病が含まれる。
【0005】
ピコルナウイルス科のウイルスは、擬似正二十面体対称のタンパク外殻(又はキャプシド)によって包まれた、一本鎖(+)RNAゲノムを特徴としている。キャプシドの表面は、正二十面体の5本の対象軸の各々を囲む「キャニオン」を含んでおり、細胞受容体はキャニオン床の残基に結合すると考えられている。
【0006】
疎水性のポケットがキャニオンのすぐ下に位置しており、その中に、いくつかの抗ウイルス化合物が結合することができ、その結果として、ときに構造変化を起こす。これら化合物のいくつかは、HRV類の脱外被を阻害することが示されており、主要な受容体群のウイルスのいくつかについては、細胞受容体結合の阻害が示されている。化合物が疎水性キャプシドのポケット内に結合すると、HRV類は、熱又は酸による変性に対して安定化することが示されている。
【0007】
ピコルナウイルスキャプシドの疎水性ポケット内に結合することによって作用すると信じられる抗ピコルナウイルス化合物の例は、米国特許第4,857,539号、第4,992,433号、第5,026,848号、第5,051,515号、第5,100,893号、第5,112,825号、第5,070,090号、及び豪州特許第628,172号に記載されている。近年ヒトでの臨床治験の主題となった一つの化合物は、4−[2−[1−(6−メチル−3−ピリダジニル)−4−ピペリジニル]−エトキシ]安息香酸エチル、別名「ピロダビル」である。[「リノウイルスかぜの鼻腔内ピロダビル(R77,975)治療(Intranasal Pirodavir(R77,975)Treatment of Rhinovirus Colds)」、F.G.Haydenら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy,39,290−294,1995]。
【0008】
この度、特に好ましい抗ピコナウイルス特性を示すことが見出された、新規な抗ウイルス化合物が発見された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,857,539号明細書
【特許文献2】米国特許第4,992,433号明細書
【特許文献3】米国特許第5,026,848号明細書
【特許文献4】米国特許第5,051,515号明細書
【特許文献5】米国特許第5,100,893号明細書
【特許文献6】米国特許第5,112,825号明細書
【特許文献7】米国特許第5,070,090号明細書
【特許文献8】豪州特許第628,172号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Intranasal Pirodavir(R77,975)Treatment of Rhinovirus Colds、F.G.Haydenら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy,39,290−294,1995
【発明の概要】
【0011】
(発明の概要)
従って、本発明は、式Iの化合物及びその塩並びに医薬的に許容可能なそれらの誘導体を提供するものである:
【0012】
【化1】

【0013】
上記式中、Hetは、任意に置換された5もしくは6員の単環式複素環基又は任意に置換された9もしくは10員の二環式複素環基であり;
Aは、O、S、NH、N(C1-6アルキル)、CH2O、直接の結合又は下記式の二価の複素環基:
【0014】
【化2】

【0015】
[上記式中、(b−1)乃至(b−4)基内の1個以上の炭素原子は、C1-6アルキルと任意に置換されていてもよく、或いは(b−1)乃至(b−4)基内の2個の炭素原子は、C2-4アルキレン基と橋かけされていてもよい;m及びnは各々独立に1乃至4の整数であるが、(b−1)乃至(b−4)基内のm及びnの和は3、4又は5である;
Zは、N又はCR6(Rは水素、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はアミノである)である;
Z’は、O、S、CHR7又はNR8(R7は水素、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はアミノであり、R8は水素又はC1-6アルキルである)である;
4は、水素又はC1-6アルキルである;
5は、水素、ヒドロキシ、C1-6アルキル、又はC1-6アルコキシである]
であり;
Alkは、C1-7アルキレン又は直接の結合であり;
Wは、O、S、OCH2、直接の結合又はNR9(R9は水素又はC1-6アルキルである)であり;
1、X2及びX3は、各々独立にN及びCR(Rは水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシである)から選択され;
Bは、R10,OR10,SR10,及びNR910(R10はC1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルケニル、ハロC1-6アルケニル、C1-6アルキニル又はハロC1-6アルキニルである)から選択される、少なくとも1種の置換基で置換された5もしくは6員の不飽和複素環である;
但し、Alkが直接の結合であり、AがO、S、CH2O、又は直接の結合であるときは、Wは、O、S、OCH2、又は直接の結合ではない。
【0016】
本明細書で使用される「複素環基」の用語は、N、S、及びOから選ばれる1個以上のヘテロ原子を含む単環又は二環、或いは多環系をいう。多環又は多環系は、一般にヘテロ原子に加えて1乃至9個の炭素原子を含み、飽和、不飽和、芳香族又は擬似芳香族であってよい。
【0017】
5員の単環式複素環類の例としては、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリルが挙げられ、6員の単環式複素環類の例としては、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル及びトリアジニルが挙げられるが、これらの各々は、任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-6アルキニル、C3-6アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、トリフルオロメチル、アミノ、シアノ、又はモノもしくはジ(C1-6アルキル)アミノ基で置換されてもよい。9もしくは10員の二環式複素環類の例としては、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、インダゾリル、イソキノリニル、キノリニル、キノキサリニル、シノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ベンゾトリアジリル等が挙げられるが、これらの各々は、任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-6アルキニル、C3-6アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、トリフルオロメチル、アミノ、シアノ、又はモノもしくはジ(C1-6アルキル)アミノ基で置換されてもよい。好ましい複素環基類の例としては、(任意に置換される)イソオキサゾール類、イソチアゾール類、1,3,4−オキサジアゾール類、1,3,4−チアジアゾール類、1,2,4−オキサジアゾール類、1,2,4−チアジアゾール類、オキサゾール類、チアゾール類、ピリジン類、ピリダジン類、ピリミジン類、ピラジン類、1,2,4−トリアジン類、1,3,5−トリアジン類、ベンゾオキサゾール類、ベンゾチアゾール類、ベンゾイソオキサゾール類、ベンゾイソチアゾール類、キノリン類及びキノキサリン類が挙げられる。Hetの特別の例は、下記の式(a−1)乃至(a−14)の基である:
【0018】
【化3−1】

【0019】
【化3−2】

【0020】
上記各式中、R1は、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、ハロC1-6アルキル、アミノ、モノもしくはジ(C1-6アルキル)アミノ、シアノ、フォルミル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシC1-4アルキル、C1-4アルコキシC1-4アルキル、C1-6ハロアルコキシ、アリールオキシ、C1-6アルキルチオ、アリールチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルフォニル、アリールスルフィニル、アリールスルフォニル、−CH=NO−C1-4アルキル、C1-6アルキルオキシカルボニル、C1-6アルキルカルボニル又はアリールであり;
2及びR3は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロゲンから各々独立に選択され、(a−1)、(a−4)、(a−7)及び(a−13)の基では、結合したR1及びR2、又はR2及びR3は、式−CH=CH−CH=CH−又は(CH2p(但し、pは2乃至4の整数である)の二価の基を表し;
Yは、O又はSであり;
Y’は、O、S、SO又はSO2である。
【0021】
本明細書で環Bに関して使用される「不飽和の5もしくは6員の複素環」の用語は、式Iに記述された6員環に結合された5もしくは6員の複素環基をいう。当該複素環は、N、S、及びOから選ばれる1個以上のヘテロ原子を含み、ヘテロ原子に加えて2乃至5個の炭素原子を含む。これらの炭素原子の内の2個は、それが付いている6員環に由来する。当該複素環は、部分的に又は完全に飽和していてよく、また芳香族であってもよい。当該複素環は、R10、OR10、SR10、及びNR910(R9及びR10は上記で定義されたものと同様である)から選択される少なくとも1種の置換基を含有しなければならない。不飽和の5員の複素環類の例としては、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピラゾール、フラン、チオフェン及びピロールが挙げられるが、これらの各々は、上で定義された置換基の他に、任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-6アルケニル、C3-6アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、トリフルオロメチル、アミノ、シアノ、又はモノもしくはジ(C1-6アルキル)アミノ基で置換されてもよい。不飽和の6員の複素環類の例としては、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、及び1,2,4−トリアジンが挙げられるが、これらの各々は、上で定義された置換基の他に、任意にC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-6アルケニル、C3-6アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、トリフルオロメチル、アミノ、シアノ、又はモノもしくはジ(C1-6アルキル)アミノ基で置換されてもよい。不飽和の5もしくは6員の複素環類の特別の例は、下記の式(c−1)乃至(c−11)の基である:
【0022】
【化4】

【0023】
上記式中、Yは、O、S又はNR9であり、R11は、R10、OR10、SR10、又はNR910(R9及びR10は先に定義されたものと同様である)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、以下の定義の一つ以上が適用される:
Hetは、式(a−1)、(a−2)又は(a−8)の基である;
1は、水素、メチル、エチル、塩素、メトキシ、又はトリフルオロメチルである;
2及びR3は、各々独立に水素、塩素又はメチルである;
Yは、O又はSである;
Aは、O、NH、NMe、直接結合又は式(b−1)の基である;
Zは、CH又はNである;
Alkは、C1-6アルキレン又は直接結合である;
WはOである;
1、X2及びX3は、各々CHである;
Bは、(c−1)又は(c−2)である。
【0025】
本明細書で使用される時、単独で又は「ジ(C1-6アルキル)アミノ」等のような基の一部として使用されている「C1-6アルキル」の用語は、1乃至6個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状又は環状、のアルキル基をいう。かかるアルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。同様に、C1-4アルキルは、1乃至4の炭素原子を有するアルキル基をいう。
【0026】
本明細書で使用される時、単独で又は「C3-6ハロアルケニル」等のような基の一部として使用されている「ハロ」又は「ハロゲン」の用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素の基をいう。
【0027】
本明細書で使用される時、「C1-6アルコキシ」及び「C1-6アルキロキシ」の用語は、1乃至6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルコキシ基をいう。C1-6アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、及び種々のブトキシの異性体が挙げられる。
【0028】
本明細書で使用される時、「C3-6アルケニル」の用語は、C3-6の直鎖状、分岐状又は環状のアルケンから形成される基をいう。C3-6アルケニルの例としては、アリル、1−メチルビニル、ブテニル、イソブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンチル、シクロペンチル、1−メチル−シクロペンチル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、シクロヘキセニル、1,3−ブタジエニル、1,4−ペンタジエニル、1,3−シクロペンタジエニル、1,3−ヘキサジエニル、1,4−ヘキサジエニル、1,3−シクロヘキサジエニル及び1,4−シクロヘキサジエニルが挙げられる。
【0029】
本明細書で使用される時、「C3-6アルキニル」の用語は、前に定義したようにC3-6の直鎖状又は分岐状の基から形成され、三重結合を含有する基をいう。C3-6アルキニルの例としては、2,3−プロピニル及び2,3−もしくは3,4−ブチニルが挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される「任意に置換される」の用語は、ある基が、式Iの化合物の結合活性を損なわない1個以上の置換基を含んでよいことを意味する。ある場合には、該置換基は、結合を促進するように選択することができる。任意の置換基の例としては、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシ、ハロC1-4アルキル、ヒドロキシC1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4アルキル、ヒドロキシ、アリール、アミノ、シアノ、メルカプト、C1-4アルキルアミノ、C1-4ジアルキルアミノ、アリールオキシ、フォルミル、C1-4アルキルカルボニル及びC1-4アルコキシカルボニルが挙げられる。
【0031】
本発明の化合物の特別の群は、式IIを有する:
【0032】
【化5】

【0033】
上記式中、R1は、水素、C1-4アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、トリフルオロメチル、アミノ、モノもしくはジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、ホルミル、−CH=NO−C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、アリールオキシ、C1-4アルキルチオ又はアリールであり;
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Zは、CH又はNであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである。)である。
【0034】
本発明の化合物の他の特別の組は、式IIIを有する:
【0035】
【化6】

【0036】
上記式中、Rは、水素、C1-4アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、トリフルオロメチル、アミノ、モノもしくはジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、ホルミル、−CH=NO−C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、アリールオキシ、C1-4アルキルチオ、又はアリールであり;
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Zは、CH又はNであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである)である。
【0037】
本発明の化合物の他の特別の組は、式IVを有する:
【0038】
【化7】

【0039】
上記式中、R1は、水素、C1-4アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、トリフルオロメチル、アミノ、モノもしくはジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、フォルミル、−CH=NO−C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4アルコキシC1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、アリールオキシ、C1-4アルキルチオ又はアリールであり;
Aは、結合又はCH2Oであり;
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Alkは、C1-7アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである)であり;
12及びR13は、各々独立に水素、ハロゲン、C1-4アルキル又はC1-4アルコキシである。
【0040】
本発明の化合物の特別の群は、式Vを有する:
【0041】
【化8】

【0042】
上記式中、R1は、水素、C1-4アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、トリフルオロメチル、アミノ、モノもしくはジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、ホルミル、−CH=NO−C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、アリールオキシ、C1-4アルキルチオ又はアリールであり;
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Zは、CH又はNであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである)である。
【0043】
本発明の化合物の特別の群は、式VIを有する:
【0044】
【化9】

【0045】
上記式中、R1は、水素、C1-4アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、トリフルオロメチル、アミノ、モノもしくはジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、ホルミル、−CH=NO−C1−4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、アリールオキシ、C1-4アルキルチオ又はアリールであり;
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Zは、CH又はNであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである)である。
【0046】
本発明の化合物の特別の群は、式VIIを有する:
【0047】
【化10】

【0048】
上記式中、Hetは、ピリジル、ピラジニル、チアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、1,3,5−トリアジニル、ピリミジニル又はキノキサリニルであり、それらの各々は、任意にハロゲン、トリフルオロメチル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ又はヒドロキシから選択される1乃至3個の置換基で置換されてもよく:
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Zは、CH又はNであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである)である。
【0049】
本発明の化合物の特別の群は、式VIIIを有する:
【0050】
【化11】

【0051】
上記式中、Hetは、ピリジル、ピラジニル、チアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、1,3,5−トリアジニル、ピリミジニル又はキノキサリニルであり、それらの各々は、必要に応じてハロゲン、トリフルオロメチル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ又はヒドロキシから選択される1乃至3個の置換基で置換されてもよく:
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Zは、CH又はNであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである)である。
【0052】
本発明の化合物の他の群は、式IXを有する:
【0053】
【化12】

【0054】
上記式中、Hetは、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、チアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、1,2,4−トリアジニル、1,3,5−トリアジニル、ピリミジニル又はキノキサリニルであり、それらの各々は、必要に応じてハロゲン、トリフルオロメチル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ又はヒドロキシから選択される1乃至3個の置換基で置換されてもよく:
Aは、直接結合、O、NH又はNMeであり;
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである)である。
【0055】
本発明の化合物の更に他の群は、式Xを有する:
【0056】
【化13】

【0057】
上記式中、Hetは、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、チアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、1,2,4−トリアジニル、1,3,5−トリアジニル、ピリミジニル又はキノキサリニルであり、それらの各々は、必要に応じてハロゲン、トリフルオロメチル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ又はヒドロキシから選択される1乃至3個の置換基で置換されてもよく:
Aは、直接結合、O、NH又はNMeであり;
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである)である。
【0058】
本発明の範囲内の具体的な化合物の例を以下の表1乃至5に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
【表5−1】

【0064】
【表5−2】

【0065】
本発明の化合物は、先行技術に記載されている方法に類似の方法を使用して調製することができる。例えば、Het基が式(a−1)の基である化合物は、米国特許第4,992,433号、第5,112,825号及び第5,100,893号に記載されている方法に類似の方法を使用して調製することができる。同様に、Hetが式(a−2)、(a−3)、(a−4)、(a−5)又は(a−6)である化合物は、米国特許第5,070,090号及び豪州特許第629,172号に記載されている方法と同様の方法論を使用して作成することができ、Hetが式(a−7)又は(a−8)である化合物は、米国特許第5,364,865号に記載されている方法論と同様の方法論に従って調製することができる。
【0066】
ある方法では、本発明の化合物は、式XIの中間体を経て調製される:
【0067】
【化14】

【0068】
式中、A、Alk、W、Ar、X1、X2、X3及びBは前述の通りである。
【0069】
この中間体は、米国特許第5,231,184号に記載されている方法と同様の方法を使用して調製することができる。一の例では、WがOであるとき、式XIの中間体は、式P−A−Alk−OH又はP−A−Alk−Lの化合物と式XIIのヒドロキシ芳香族化合物との反応によって調製される。
【0070】
【化15】

【0071】
ここでAr、X1、X2、X3及びBは前述の通りであり、PはH又は保護基、Lは脱離基である。反応生成物に於ける保護基Pの除去は、式XIの反応性中間体を生成する。
【0072】
式P−A−Alk−OH又はP−A−Alk−Lの化合物中の好適な保護基Pの例としては、一般的な方法によって導入且つ除去することができるベンジル部又はアシル部が挙げられる[Theodora Green著、「有機合成に於ける保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」、Wiley Interscience、1981を参照]。
【0073】
式XIの中間体は、式Het−Lの化合物と反応することができる(ここでHetは既に定義した通りであり、Lは、式Iの化合物を与える好適な脱離基である)。この反応がN−アルキル化反応である場合には、類似のN−アルキル化反応を実施するために、例えば、米国特許第5,231,184号に記載されている条件と同様の、従来技術で知られた手法を使用して実施し得る。上記の反応を遂行するためには、例えば、X1、X2、X3又はB等の基中の1個以上の置換基を保護する必要があり得る。
【0074】
式XI及びXIIの中間体のあるものは新規であり、本発明の更なる態様を提示する。
【0075】
好適な脱離基の例としては、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン、p−トルエンスルフォニルオキシ及びメタンスルフォニルオキシ等のハロゲン類似の基が挙げられる。
【0076】
式Ia(W=Oの場合の式Iの化合物)の本発明の一種の化合物を調製する他の方法は、「Mitsunobu反応」の条件(「化学合成」第42巻、335頁、1992を参照)を使用して、式XIIIの化合物を式XII:
【0077】
【化16】

【0078】
の好適な先駆体と縮合させることを含む。式中、Het、A、Alk、X1、X2、X3及びBは、式Iに対して定義したものと同じである。
【0079】
式XIIの中間体は、しばしばヒドロキシ化合物の保護体から調製される。例えば、X1〜X3がCHである式XIIの化合物[以後式(XIIa)の化合物という]は、HBr又はBBr3等の通常の脱保護剤によってOHに変換することができる、アルコキシ又はベンジルオキシ置換基を有する対応化合物から調製することができる。
【0080】
【化17】

【0081】
その化学文献としては、例えば、米国特許第5,919,807号及びJ.Org.Chem.、61、3289頁(1996)を含む、式(XIIb)の化合物の調製に関する多数の文献がある。式(XIIb)の化合物は、R11がOR10、SR10又はNR910である場合にR11によって置換される脱離基Lを有する、対応化合物(XIIc)から一般に調製される。文献には、例えば、米国特許第5,919,807号、第5,747,498号及びJ.Med.Chem.、第24巻、93頁(1981)等に於けるように、一般式(XIIc)の化合物の数例の調製に関するいくつかの言及がある。
【0082】
米国特許第5,112,825号及び第5,242,924号を含むいくつかの文献は、式XIIIの種々の化合物の調製方法を記載している。
【0083】
本発明の化合物は、哺乳類、特にヒトにおけるピコナウイルス感染の予防又は治療に有用である。
【0084】
従って、更なる態様において、本発明は、式Iの化合物の有効量を投与するステップを包含する、哺乳類におけるピコナウイルス感染の治療又は予防方法を提供する。
【0085】
ピコナウイルス感染は、ピコナウイルス科のいずれかのウイルスによって引き起こされる。科に属する代表的なウイルスは、ヒトライノウイルス、ポリオウイルス、コクザッキーウイルス及びエコーウイルスを包含するエンテロウイルス、ヘパトウイルス、カルヂオウイルス、アフタウイルス、A型肝炎及びこれらウイルスの一つ又はそれ以上の血清型を有する特定の属に未だ帰属していないその他のピコナウイルス、を包含する。好ましくは、本発明は、一つ乃至それ以上の血清型のライノウイルスに起因する感染の予防又は治療に使用される。
【0086】
理論に限定されるものではないが、式Iの化合物の縮合複素環部のヘテロ原子は、疎水性ポケットの開口部近くに一般的に存在するアスパラギン残基との水素結合に関係しており、この相互作用が、公知の化合物に比較してキャプシドポケットにおける化合物の結合を増強すると考えられている。更に、縮合複素環部は、ピロダビルのエステル結合よりも加水分解及びエステラーゼ活性に対しより抵抗性があり、このことは、容易に加水分解し得るピロダビルを利用するよりも、化合物の活性部位への投与方法において、より柔軟な使用を可能とすることができる。特に、このことは、化合物の経口投与を可能にし、又は、局所投与後の鼻粘膜での代謝を減少することを可能とする。
【0087】
式Iの化合物の塩は、好ましくは薬学的に許容可能なものであるが、しかしながら、薬学的に許容可能な塩の調製における中間体として有用であるので、薬学的に許容されない塩も、本発明の範囲内に包含されると判断される。薬学的に許容可能な塩は、これらの化合物の通常の非毒性塩又は第四級アンモニウム塩を包含し、これらは、例えば、有機又は無機酸或いは塩基から形成することができる。そのような酸付加塩類の例は、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、乳酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、アスコルビン酸、塩酸、オルトリン酸、硫酸及び臭化水素酸のような、薬学的に許容可能な酸類と形成されるものを包含するが、これらに限定されない。塩基塩類は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム及びアルキルアンモニウムのような、薬学的に許容可能な陽イオンと形成されるものを包含するが、これらに限定されない。又、塩基性窒素含有基は、塩化、臭化及びヨウ化されたメチル、エチル、プロピル、及びブチル等の低級ハロゲン化アルキル;ジメチル硫酸やジエチル硫酸のようなジアルキル硫酸等試薬で四級化することもできる。
【0088】
本発明の化合物は、結晶形態又は溶媒和物(例えば水和物)の形態をしており、両者の形態が本発明の範囲内であることを意図している。溶媒和の方法は、一般に業界内では公知である。
【0089】
医薬として許容可能な誘導体は、医薬として許容される、塩、水和物又は、他の化合物、或いは患者に投与すると、式Iの化合物又はその抗ウイルス活性代謝物若しくは残基を(直接的又は間接的に)与えることができるプロドラッグ(prodrug)を包含することができる。
【0090】
式Iの化合物のプロドラッグであるいずれの化合物も、本発明の範囲内のものである。用語「プロドラッグ」は、その最も広い意味で使用され、インビボで本発明の化合物に変換される誘導体を包含する。そのような誘導体は、当業者には容易に思い浮かぶであろうし、例えば、遊離ヒドロキシ基がエステル誘導体に変換された、或いは環状窒素原子がN−オキシドに変換された化合物を包含する。エステル誘導体の例としては、アルキルエステル、リン酸エステル及びアミノ酸、好ましくはバリン、から形成されたものを包含する。
【0091】
式Iの化合物のいくつかの誘導体は不斉中心を有しており、それ故、一つ以上の立体異性体の形で存在し得ることが理解される。本発明は、個別にそれら各異性体、及びラセミ化合物を含む混合物に拡張される。異性体は、クロマトグラフ法によって、或いは分割試薬を使用することによって、都合よく分離することができる。或いは又、個々の異性体は、キラル中間体を使用して不斉合成によって調製することができる。
【0092】
本発明は、又、ピコルナウイルス感染の治療又は予防のための医薬の製造における式Iの化合物の使用を提供する。
【0093】
治療用途で、本発明の化合物は、そのまま化学薬品として投与することが可能であるが、医薬製剤としての有効成分を与えるものが好ましい。
【0094】
一般的な化合物の親油特性を考慮すると、本発明の化合物は経口投与形態に特に適しているが、他の投与形態も考えられる。
【0095】
かくして、本発明は、本発明の化合物又はその薬学的に許容可能な塩或いはそれらの誘導体を、一以上の医薬として許容可能なそれらの担体、及び、任意の他の治療的及び/又は予防的成分と伴に含む医薬製剤を提供する。担体は、製剤の他の成分と両立し得るという意味で許容されなければならず、その受容者に有害であってはならない。
【0096】
本発明の化合物は、公知の抗ウイルス剤又は抗レトロウイルス剤又はウイルス感染の治療において使用される他の医薬と組み合わせて使用することもできる。これら追加の医薬の代表例は、免疫調節剤、免疫抑制剤、抗生物質及び抗炎症剤を含む。例示的な抗ウイルス剤は、ザナミビル、リマンチジン、アマンチジン、リバビリン、AZT、3TC、(−)FTC、アシクロビル、ファムシクロビル、ペンシクロビル、ddI、ddC、ガンシクロビル、サクアニビル、ロビリデ、他の非ヌクレオチド逆転写酵素(RT)阻害剤及びタンパク質阻害剤、抗ウイルス及び抗受容体抗体及び受容体類似体、例えばICAM−1を含む。例示的な免疫調節剤及び免疫促進剤は、種々のインターロイキン、サイトカイン及び抗体調製物を含む。例示的な抗生物質は、抗真菌剤及び抗菌剤を含む。例示的な抗炎症剤は、グルココルチコイド及び非ステロイド抗炎症化合物を含む。
【0097】
医薬処方は、経口、直腸、経鼻、局所(バッカル及び舌下を含む)、膣又は非経口(筋肉内、皮下及び静脈内を含む)投与に適した製剤、或いは吸入又は吹き込みによる投与に適した製剤を含む。それ故、本発明の化合物は、通常の補助薬、担体又は希釈剤と共に、医薬組成物及びその投与単位の形態に含有させることができ、そのような形態は、経口用としては、固体、例えば錠剤又は充填カプセル、或いは液体、例えば溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル、又は同様なものを充填したカプセルで;直腸投与用としては座薬の形態で;或いは非経口(皮下を含む)用としては滅菌注射溶液の形態で使用される。そのような医薬組成物及びその単位投与形態は、通常の成分を通常の比率で含み、追加の活性化合物又は成分を含有又は含有しない。そして、そのような単位投与形態は、使用される所定の一日投与量範囲を満たす適切な有効量の有効成分を含有する。従って、一錠当たり有効成分を10ミリグラム、より広くは0.1から200ミリグラム含有する処方は、適切な代表的単位投与形態である。本発明の化合物は、種々の経口及び非経口投与形態で投与することができる。以下の投与形態は、有効成分として、本発明の化合物又は本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩のいずれかを含む。
【0098】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するための医薬として許容可能な担体は、固体又は液体であり得る。固体形態の製剤は、粉末、錠剤、丸剤、カプセル、カシェ剤、座薬及び分散顆粒を包含する。固体の担体は、希釈剤、着香料、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、保存料、錠剤崩壊剤又はカプセル化物質として働く、一つ乃至それ以上の物質である。
【0099】
粉末においては、担体は細かく砕いた固体であり、細かく砕いた有効成分との混合物とされる。
【0100】
錠剤においては、有効成分は適当な比率の必要な結合容積を有する担体と混合され、所望の形及び大きさに成形される。
【0101】
粉末及び錠剤は、好ましくは、5又は10から約70パーセントの活性化合物を含有する。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバター等である。用語「調製」は、活性化合物と、担体がカプセルの役割をするカプセル化材料との処方を包含することを意図しており、そのカプセル中で、有効成分は、担体を使用してもしなくても、担体によって囲まれており、それ故担体は有効成分と会合している。同様に、カシェ剤及びトローチ剤が包含される。錠剤、粉末、カプセル、丸剤、カシェ剤及びトローチ剤は、経口投与用に適した固体形態として使用される。
【0102】
座薬を調製するためには、低融点ワックス、例えば脂肪酸グリセリンエステル又はココアバターの混合物を始めに融解し、そして例えば撹拌により、有効成分をその中に均一に分散する。融解した均一混合物を適当な大きさの型枠に注ぎ込み、放冷し、固形化する。
【0103】
膣投与用に適した処方は、有効成分に加えて業界で公知の適切な担体を含有した、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡沫又はスプレーとしてもたらされる。
【0104】
液体形態の製剤は、溶液、懸濁液及びエマルジョン、例えば、水又は水−プロピレングリコール溶液を包含する。例えば、非経口注射液剤は、水溶性ポリエチレングリコール溶液中の溶液として処方することができる。
【0105】
本発明に従う化合物は、このように(例えば、大量注射又は連続注入等の注射による)非経口投与用に処方され、アンプル、充填済みシリンジ、少量注入又は多投与容器の形態で、添加保存料と共に単位投与形態でもたらされる。組成物は、懸濁液、溶液、或いは油又は液体媒体中のエマルジョンのような形態をとることができ、そして懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤のような処方化剤を含有し得る。また、有効成分は、粉末形態で、滅菌固体を無菌的に単離することによって、或いは溶液から凍結乾燥によって得られ、使用前に好適な媒体、例えば滅菌したパイロジェンフリーの水を用いて処方される。
【0106】
経口使用に適した水溶液は、有効成分を水に溶解し、所望により、好適な着色剤、着香料、安定剤及び粘稠化剤を加えることによって調製することができる。
【0107】
経口使用に適した水性懸濁液は、細かく粉砕した有効成分を、粘性材料、例えば天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、或いは他の公知の懸濁剤と共に、水中に分散することによって作成することができる。
【0108】
他に包含されるものとしては、使用直前に、経口投与用の液体形態の製剤に変換されることを意図した固体形態の製剤である。そのような液体形態は、溶液、懸濁液及びエマルジョンを包含する。これらの製剤は、有効成分に加えて、着色料、着香料、安定化剤、バッファー、人工及び天然甘味剤、分散剤、粘稠剤、可溶化剤等を含有する。
【0109】
表皮に局所投与するためには、本発明に従う化合物は、軟膏、クリーム又はローションとして、或いは経皮パッチとして処方される。軟膏及びクリームは、例えば、好適な粘稠剤及び/又はゲル化剤を添加した水性又は油性基材と共に処方される。ローションは、水性又は油性基材と共に処方され、一般的には又、一つ乃至それ以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、粘稠剤又は着色料を含有する。
【0110】
口中への局所投与用に適した処方は、通常蔗糖及びアカシアゴム又はトラガカントゴムの着香基材中に有効成分を含むトローチ;ゼラチン及びグリセリン又は蔗糖及びアカシアゴムのような不活性基材中に有効成分を含む香錠;及び好適な液体担体中に有効成分を含むうがい薬を包含する。
【0111】
溶液又は懸濁液は、常法、例えば、滴瓶、ピペット又はスプレーにより鼻腔に直接適用される。処方は、単回又は複数回投与形態で提供される。滴瓶又はピペットによる後者の場合、適切な予め決められた容量の溶液又は懸濁液を患者に投与することによって達成される。スプレーの場合は、例えば、液体計量噴霧スプレーポンプによって達成される。鼻内への分布及び保持を改善するために、本発明の化合物は、シクロデキストリンでカプセル化され、或いは鼻粘膜での分布及び保持を増強することが期待される薬剤と共に処方される。
【0112】
気道への投与はエーロゾル処方の手段で達成され、この方法では、有効成分が、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン又はジクロロテトラフルオロエタンのようなクロロフルオロカーボン(CFC)、炭酸ガス又はその他の好適なガスのような好適な噴射剤と共に、加圧パックとして提供される。
【0113】
エーロゾルは、又、都合よくレシチンのような界面活性剤を含有する。薬物の投与量は、計量バルブを用意することによって制御される。
【0114】
代わりに、有効成分は、乾燥粉末、例えば乳糖、デンプン、デンプン誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)及びポリビニルピロリドン(PVP)のような、好適な粉末基材中に化合物を混合した、粉末の形態で提供される。
【0115】
都合よいことには、粉末担体は鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、例えば、ゼラチンのカプセル又はカートリッジ、或いは粉末が吸入器によって投与されるPTP包装を用いて、単位投与形態で提供される。
【0116】
鼻腔内投与処方を含む気道投与を意図した処方では、化合物は、一般的に、例えば1乃至10ミクロン又はそれ以下のオーダーの小粒子サイズを有している。そのような粒子サイズは、業界で公知の、例えば微粉末化手段によって得られる。
【0117】
所望により、有効成分の徐放を与えるように適応した処方が使用される。
【0118】
医薬製剤は、好ましくは、単位投与形態をしている。そのような形態では、製剤は、適切な量の活性成分を含有する単位投与量に小分けされる。単位投与形態は、パックした製剤にすることができ、そのパッケージは、例えばパックした錠剤、カプセル及びバイアル又はアンプル内の粉末のように分離量の製剤を含有する。又、単位投与形態は、カプセル、錠剤、カシェ又はトローチそれ自体とすることができ、或いはこれらのいずれかの適切な数をパッケージにした形態とすることができる。
【0119】
鼻内投与に対しては液体又は粉末が、経口投与に対しては錠剤又はカプセルが、そして静脈内投与に対しては液体が好ましい組成物である。
【0120】
本発明のいくつかの好ましい態様を例示した以下の実施例を参照しながら、本発明を説明する。しかしながら、本発明の以下に記載される特殊な条件は、本発明の前記の記載の一般的な条件に取って代わるものではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0121】
実施例1
6−{2−[1−(6−メチル−3−ピリダジニル)−4−ピペリジニル]エトキシ}−2−メチルチオベンゾオキサゾール(表1の化合物番号4)の調製
(a)2−メルカプト−6−ヒドロキシベンゾオキサゾールの調製(J.Org.Chem.,第19巻、758頁も参照)
アミノレゾルシノール塩酸塩(1.1g)、エチルキサントゲン酸カリウム(1.2g)及び炭酸カリウム(1.0g)の混合物をエタノール/水(1:1、20ml)に溶解し、(アルゴンの気球中)還流下で3時間加熱した。淡黄色の溶液を室温迄冷却し、次いで酢酸(2ml)を加え、溶液を僅かに酸性とした(ガスの発生)。クリーム色の沈殿物がまもなく形成され、密封したフラスコを冷蔵庫に一晩保管した。クリーム色の固体をろ過により収集し、湿潤した生成物(0.9g)を直ちに次の工程で使用した。
【0122】
(b)6−ヒドロキシ−2−メチルチオベンゾオキサゾールの調製
6−ヒドロキシ−2−メルカプトベンゾオキサゾール(165mg)、炭酸水素ナトリウム(84mg)、及び硫酸ジメチル(94μl)の混合物を攪拌下、アルゴンの雰囲気中で水(2ml)に溶解した。反応混合物を室温で一晩攪拌した結果、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)は、全ての出発物質が消失したことを示した。反応混合物を蒸発乾固し、暗褐色の固体を得た(或いは、反応混合物をクロロホルムで抽出し、粗生成物を得ることもできる)。10%酢酸エチル/ヘキサンを使用してのシリカゲルによるクロマトグラフィーで、ほぼ白色の結晶状の固体(45mg、25%)である純粋な生成物を得た。
【0123】
(c)2−メチルチオ−6−[N−(6−メチル−3−ピリダジニル)ピペリジニル−4−エトキシ]−ベンゾオキサゾール(化合物番号4)の調製
6−ヒドロキシ−2−メチルチオベンゾオキサゾール(100mg)、
3−[4−(2−クロロエチル)−1−ピペリジニル]−6−メチルピリダジン(130mg)及び炭酸カリウム(100ml)の混合物を加熱し、DMF(3ml)中、90乃至100℃、アルゴン雰囲気下で20時間攪拌した。TLC(薄層クロマトグラフィー)は、反応が実質的に完了したことを示した。DMFを減圧下で除去し、残渣を水とクロロホルム間に分配した。クロロホルム抽出物を蒸発し、残渣をシリカ/クロロホルム上でクロマトグラフィーにかけ、淡いクリーム色の固体(110mg、50%)である生成物を得た。1Hnmrスペクトルを下記の表6に示す。
【0124】
実施例2
2−エトキシ−6−{2−[N−(6−メチル−3−ピリダジニル)ピペリジニル]−4−エトキシ}−ベンゾオキサゾール(化合物番号5)の調製
金属ナトリウム(100mg)をエタノール(5ml)に溶解し、その溶液をメチルチオベンゾオキサゾール(化合物番号4)(74mg)のTHF(2ml)溶液中に添加した。その結果得られた溶液を室温で24時間攪拌した結果、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)は、全ての出発物質が消失したことを示した。反応混合物を蒸発乾固して、残渣を水とジクロロメタン間に分配した。粗有機生成物を、シリカ/CH2Cl2上でクロマトグラフィーにより精製し、淡いクリーム色の固体(46mg)である化合物番号5を得た。1Hnmr及びMS(マススペクトル)のデータを下記の表6に示す。
【0125】
実施例3
適切なHet−A−Alk−Cl又はHet−A−Alk−OHと、必要な2−置換の5−又は6−ヒドロキシベンズ−アゾール(ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール又はベンゾイミダゾール)を実施例1(c)項の記載と同様の条件で反応することによって、化合物番号1、2、3、6、7、8、9、17、19、22、25、26、及び27を調製した。1Hnmr及び/又はMSデータを下記の表6に示す。
【0126】
実施例4
本質的に実施例2の記載と同様の条件に従って適切なナトリウムアルコキシドとの反応によって、2−アルコキシベンズ−アゾール誘導体類、化合物番号10、11、12、13、14、15、18、20、21及び23を、対応する2−メチルチオ又は2−エチルチオベンゾオキサゾール又はベンゾチアゾールから調製した。1Hnmr及び/又はMSデータを下記の表6に示す。
【0127】
実施例5
2−エチルチオ−3−メチル−6−{2−[N−(6−メチル−3−ピリダジニル)ピペリジニル]−4−エトキシ}−ベンゾイミダゾール及び2−エチルチオ−3−メチル−5−{2−[N−(6−メチル−3−ピリダジニル)ピペリジニル]−4−エトキシ}−ベンゾイミダゾールの混合物(化合物番号16)の調製
2−エチルチオ−5−ヒドロキシベンゾイミダゾールのメチル化により、容易に分離し得ない、2−エチルチオ−3−メチル−5−ヒドロキシベンゾイミダゾール及び2−エチルチオ−3−メチル−6−ヒドロキシベンゾイミダゾールのほぼ1:1の混合物を得た。実施例1に記された方法に従って、このヒドロキシ化合物の混合物と3−[4−(2−クロロエチル)−1−ピペリジニル]−6−メチルピリダジンとの反応により、異性化生成物の1:1の混合物(化合物番号16)を得た。
【0128】
実施例6
6−{2−[1−(6−メチル−3−ピリダジニル)−4−ピペリジニル]エトキシ}−3−エトキシ−1,2−ベンゾイソオキサゾール(表3の化合物番号35)の調製
(a)2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾヒドロオキサミド酸の調製[文献、Chem.Ber.第100巻、954〜960頁(1967)の方法による]
水(3.5ml)中に塩酸ヒドロキシルアミン(292mg、4.21mmol)を含む攪拌溶液に、水(1.6ml)中に水酸化ナトリウム(393mg、9.82mmol)を含む溶液を添加することによってヒドロキシルアミン溶液を調製した。直ちに、1,4−ジオキサン(1.5ml)中に2−ヒドロキシ−4―メトキシ安息香酸メチル(511mg、2.81mmol)を含む溶液をゆっくりと添加した。得られた反応混合物を室温で18時間、アルゴン雰囲気中で攪拌した。反応混合物をロータリーエバポレーターを用いて当初の体積の半分迄濃縮し、濃塩酸を添加した後、フラスコを氷浴中で冷却することによって生成物を沈殿させた。懸濁液をろ過し、淡褐色の固体である2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾヒドロオキサミド酸(476mg、92%)を得た。
【0129】
1Hnmrスペクトル(CDCl3)δ(ppm):3.72(s,3H);6.36(m,2H);7.41(d,1H)。
【0130】
(b)3−ヒドロキシ−6−メトキシ−1,2−ベンゾイソオキサゾールの調製
THF(6ml)中にヒドロオキサミド酸(602mg、3.29mmol)を含む攪拌沸騰溶液に、カルボニルジイミダゾール(1.07mg、6.57mmol)を無水THF(8ml)中に含む溶液を添加した。得られた反応溶液を還流下でおよそ8乃至10時間加熱し、次いで室温迄冷却し、アルゴン雰囲気中で一晩攪拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)(シリカ、ヘキサン/酢酸エチル1:1)の結果は、最小の出発物質及び新たな非極性物質を示した。溶液をロータリーエバポレーターで蒸発し、橙色の油状物を得た。水(6ml)を加え、内容物を冷却(氷浴)し、濃塩酸でpH2迄酸性にした。クリーム状の橙色の固体である、未精製の湿潤した3−ヒドロキシ−6―メトキシ−1,2−ベンゾイソオキサゾール(645mg)が沈殿した。
【0131】
1Hnmrスペクトル(CDCl3)δ(ppm):3.82(s,3H);6.73(fd,1H);6.80(dd,1H);7.52(d,1H)。
LCMS(ESI)(M+1)+:166。
【0132】
(c)3−エトキシ−6−メトキシ−1,2−ベンゾイソオキサゾールの調製
(b)項からのベンゾイソオキサゾール(193mg、1.17mmol)、エタノール(75μl、1.29mmol)及びトリフェニルフォスフィン(460mg、1.75mmol)を無水THF(4ml)に溶解し、冷却(0℃)した。ジイソプロピルアゾジカルボン酸エステル(345μl、1.75mmol)をゆっくりと添加し、10乃至15分後に反応フラスコを氷浴から除去した。反応混合物を室温でアルゴン雰囲気中一晩攪拌した。溶液を蒸発乾個し、残渣をシリカ上に予備吸収させて、溶離剤としてヘキサン(300ml)、10〜30%酢酸エチル/ヘキサンを用いてシリカ(19g)のクロマトグラフィーにかけ、白い結晶である3−エトキシ−6−メトキシ−1,2−ベンゾイソオキサゾール(101mg、44%)を得た。
【0133】
1Hnmrスペクトル(CDCl3)δ(ppm):1.50(t,3H);3.87(s,3H);4.47(q,2H);6.86(m,2H);7.47(d,1H)。
LCMS(ESI)(M+1)+:194。
【0134】
(d)3−エトキシ−6−ヒドロキシ−1,2−ベンゾイソオキサゾールの調製
アルゴン雰囲気で、ジクロロメタン(4ml)に(c)項からのベンゾイソオキサゾール(179mg、928μmol)を攪拌し、−78℃に冷却した溶液に、三臭化ホウ素(ジクロロメタン中の1.0M溶液;1.39ml、1.39mmol)を添加した。反応混合物の温度を徐々におよそ2時間かけて室温迄上げ、一晩攪拌した。TLC(シリカ、2:1ヘキサン/酢酸エチル)は、未反応の出発物質の他に新たな極性物質を示した。水(5ml)及び氷を添加することにより反応を完了させた。水相に飽和NaHCO3溶液を添加して中和し、NaClを飽和させた。水相をジクロロメタン(3×60ml)で抽出し、有機相の抽出物を合わせてブライン(10ml)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)した。生成物は、シリカ(18g;溶離剤:ヘキサン2.5%、5%、次いで15%の酢酸エチル/ヘキサン)でクロマトグラフィーにより精製した。最初の溶離物は未反応の3−エトキシ−6−メトキシ−1,2−ベンゾイソオキサゾール(46mg)であり、続いて3−エトキシ−6−ヒドロキシ−1,2−ベンゾイソオキサゾール108mg(65%)を得た。
【0135】
1Hnmrスペクトル(CDCl3)δ(ppm):1.45(t,3H);4.40(q,2H);6.74(m,2H);7.38(m,1H)。
LCMS(ESI)(M+1)+:180。
【0136】
(e)化合物番号35の調製
2−[1−(6−メチル−3−ピリダジニル)−4−ピペリジニル]エタノール(42mg、188μmol)、(d)項からのベンゾイソオキサゾール(28mg、156μmol)及び重合体に担持されたトリフェニルフォスフィン(145mg、234μmol)の混合物の無水THF(3ml)溶液を冷却(0℃)し、アルゴン雰囲気中で攪拌した。純粋のジイソプロピルアゾジカルボン酸エステル(46μml、234μmol)をゆっくりと添加し、反応混合物の温度を室温迄上げ一晩攪拌した。反応混合物をろ過し、次いでシリカ上に予備吸着させてシリカ(およそ5g)上でクロマトグラフィーにかけた。溶離剤として、最初は2:1のヘキサン/酢酸エチルを使用し、その後徐々に70%酢酸エチル/ヘキサンに迄増加して、白い粉末の化合物番号35(44mg、73%)を得た。1Hnmr及びMSのデータを下記の表6に示す。
【0137】
実施例7
適切なHet−A−Alk−OH又はHet−A−Alk−OHと、必要な3−置換の6−ヒドロキシ−1,2−ベンゾイソオキサゾール(又は1,2−ベンゾチアゾール)を実施例6の記載と同様の条件に従って反応させることによって、化合物番号36、37、38、39、40、41、42、49、50、56及び57を調製した。1Hnmr及び/又はMSデータを下記の表6に示す。
【0138】
実施例8
対応する2−メトキシ−ベンゾチアゾール(化合物番号14)を過剰のn−プロピルアミンと加熱することにより、n−プロピルアミノベンゾチアゾール誘導体、化合物番号24を調製した。1Hnmr及び/又はMSデータを下記の表6に示す。
【0139】
実施例9
2−エトキシ−6−{2−[N−(5,6−ジメチル−3−ピリダジニル)ピペリジニル]−4−エトキシ}−ベンゾオキサゾール(化合物番号28)の調製
(a)2−エトキシ−6−ヒドロキシベンゾオキサゾールの調製
無水エタノール中4−アミノレゾルシノール塩酸塩と無水炭酸ナトリウムとの等量混合物を、僅かに過剰のオルト炭酸四エチルと共に16時間、室温で攪拌し、2−エトキシ−6−ヒドロキシベンゾオキサゾールを60%の収率で得た。
【0140】
(b)2−エトキシ−6−ヒドロキシベンゾキサゾールと2−[1−(5,6−ジメチル−3−ピリダジニル)−4−ピペリジニル]エタノールとの反応を、「Mitsunobuカップリング」及び実施例6(e)項に記載されたものと同様の条件を使用して行った。化合物番号28の1Hnmr及び/又はMSデータを下記の表6に示す。
【0141】
実施例10
適切なHet−A−Alk−Cl又はHet−A−Alk−OHと、2−エトキシ−6―ヒドロキシベンゾキサゾールを、実施例1(c)項又は実施例6(e)項の記載と同様の条件に従って反応させることによって、化合物番号29、30、31、32、33、34、47及び48を調製した。1Hnmr及び/又はMSデータを下記の表6に示す。
【0142】
実施例11
6−{2−[1−(6−メチル−3−ピリダジニル)−4−ピペリジニル]エトキシ}−4−エトキシシンノリン(表5の化合物番号53)の調製
(a)4−クロロ−6−メトキシシンノリンの調製
6−メトキシ−4−ヒドロキシシンノリン(Osborn,A.R.及びSchofield,K.,J.Chem.Soc.,1955,2,100頁)を、2−アミノ−6−メトキシアセトフェノンのジアゾ化によって調製した。
【0143】
オキシ塩化燐(5ml)を、ジメチルアニリン(157mg、1.3mmol)と6−メトキシ−4−ヒドロキシシンノリン(208mg、1.2mmol)の混合物に加えた。反応物を還流しながら15分間加熱し、次いで冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をクロロホルム(100ml)と水(30ml)の間に分配し、次いで有機相をブラインで洗浄し乾燥(Na2SO4)した。残渣をシリカゲル(3g)に吸着させ、溶離剤をCH2Cl2から10%酢酸エチル/CH2Cl2に変化させてのシリカゲル(15g)上でのクロマトグラフィーにより、黄白色の固体である6−メトキシ−4−クロロシンノリン(135mg、0.7mmol)を59%の収率で得た。δH(CDCl3)=4.03(s,3H);7.28(d,1H);7.51(dd,1H);8.41(d,1H)及び9.22(br s,1H)。MS(ESI)(M+H)+:195。
【0144】
(b)4−クロロ−6−ヒドロキシシンノリンの調製
6−メトキシ−4−クロロシンノリン(135mg、0.7mmol)のトルエン(7ml)溶液を、攪拌下で三塩化アルミニウム(231mg、1.73mmol)のトルエン(7ml)懸濁液に添加し、その赤褐色の懸濁液を1時間還流した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を水(20ml)と10%エタノール/クロロホルム(2×100ml)間に分配した。有機相をブラインで洗浄し乾燥(Na2SO4)した。減圧下で溶媒を除去し、TLC(1:1酢酸エチル/ヘキサン)により、6−ヒドロキシ−4−クロロシンノリン(154mg)を単一成分として得た。δH(CD3OD)=7.33(d,1H);7.56(dd,1H);8.32(d,1H)及び9.15(br s,1H)。
MS(ESI)(M+H):181。
【0145】
(c)6−{2−[1−(6−メチル−3−ピリダジニル)−4−ピペリジニル]エトキシ}−4−クロロシンノリンの調製
DIAD(42mg、0.21mmol)のTHF(0.4ml)溶液を、6−ヒドロキシ−4−クロロシンノリン(30mg、0.17mmol)、トリフェニルフォスフィン(65mg、0.25mmol)及び1−(6−メチル−3−ピリダジニル)−4−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジン(40mg、0.18mmol)のTHF(5ml)溶液を含む懸濁液にゆっくりと添加したところ、懸濁液は透明になった。反応は、一晩攪拌を続け、次いで反応生成物をシリカ(1.5g)に吸着させた。溶離剤として酢酸エチルを使用したシリカゲル(8g)上のクロマトグラフィーにより、生成物(50mg、0.13mmol)を72%の収率で得た。1Hnmr δH(CD3OD)=1.35(m,2H);1.9(m,5H);2.46(s,3H);2.95(m,2H);4.34(m,4H);7.19(d,1H);7.26(d,1H);7.42(d,1H);7.64(dd,1H);8.34(d1H)及び9.24(br s,1H)。MS(ESI)(M+H)+:384。
【0146】
(d)化合物番号53の調製
ナトリウムエトキシド(0.3mmol)のエタノール(0.15ml)溶液を、上記の(c)項の4−クロロシンノリン(23mg、60μmol)の乾燥エタノール(3ml)溶液に滴下しながら加えた。反応を攪拌しながら2時間続けた。飽和の塩化アンモニウム/ブライン(1ml)を加えて反応を停止し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をブライン(5ml)と5%エタノール/酢酸エチル(2×30ml)間に分配し、有機相を乾燥(Na2SO4)し、減圧下で溶媒を除去してシリカ(1g)に吸着させた。溶離剤として5%メタノール/酢酸エチルを使用したシリカゲル(8g)上のクロマトグラフィーにより、化合物番号53(15mg、38μmol)を63%の収率で得た。
【0147】
実施例12
7−{2−[1−(6−メチル−3−ピリダジニル)−4−ピペリジニル]エトキシ}−4−エトキシシンノリン(表5の化合物番号52)の調製
4−ヒドロキシ−7−メトキシシンノリン(Osborn,A.R.及びSchofield,K.,J.Chem.Soc.,1955,2,100頁)を、6−位の異性体に関する実施例11に記載された方法と同様の方法に従って調製した。この化合物を、6−位の異性体に関する実施例11に記載された方法と同様の方法に従って化合物番号52に転換した。1Hnmr及びMSデータを下記の表6に示す。
【0148】
実施例13
7−{2−[1−(6−メチル−3−ピリダジニル)−4−ピペリジニル]エトキシ}−4−エトキシ−キナゾリン(表5の化合物番号51)の調製
(a)7−ニトロキナゾリン−4−オンの合成
4−ニトロアントラニル酸(2.17g、11.91mmol)及びホルムアミド(1.5mL、38.43mmol)の混合物を、165℃で4時間加熱した。熱い反応混合物を氷/水(30mL)に注ぎ、得られた沈殿物をろ過によって収集し、P25上で乾燥して褐色の固体(2.16g、95%の収率)を得た。 この化合物を、更に精製せずに使用した。1Hnmr;8.24(d,1H);8.32(s,1H);8.34(s,1H);8.35(d,1H)。
【0149】
(b)7−アミノキナゾリン−4−オンの合成
脱ガスされフラッシュされた(3×Ar)7−ニトロキナゾリン−4−オン(1.15g、6.02mmol)のメタノール(150mL)懸濁液に、Pd/C(100mg)を一度に添加した。得られた黒い混合物を脱ガスし、水素でフラッシュした後4時間攪拌した。混合物をセライトを通してろ過し、メタノールで十分に洗浄し、ろ液を濃縮して黄褐色の固体を得た。これを、10%メタノール/酢酸エチルを溶離剤として使用したカラムクロマトグラフィー(シリカ)により精製した。画分を合わせてベージュ色の固体(949mg、98%の収率)を得た。
【0150】
1Hnmr;6.68(s,1H);6.87(d,1H);7.73(d,1H);7.83(s,1H);11.40(bs,1H)。
【0151】
(c)7−ヒドロキシキナゾリン−4−オンの合成
亜硝酸ナトリウム(1.40g、20.32mmol)の水(17mL)溶液を、温度をほぼ0℃に保ちながら、7−アミノキナゾリン−4−オン(712mg、4.42mmol)の硫酸/水(4.4mL/18mL)の冷却した懸濁液に滴下しながら添加した。混合物を室温で2時間攪拌した後、水(15mL)で希釈して還流下で15分間加熱した。冷却した混合物を中和し、沈殿物をろ過によって収集し、10%メタノール/酢酸エチルを溶離剤として使用したカラムクロマトグラフィー(シリカ)により精製した。画分を合わせて褐色の固体(541mg、76%)を得た。1Hnmr;6.85−6.91(m,2H);7.87(s,1H);7.92(s,1H)。
【0152】
(d)7−ヒドロキシ−4−エトキシキナゾリンの合成
7−ヒドロキシキナゾリン−4−オン(105mg、648μmol)、オキシ塩化燐(2mL)及びジメチルアニリン(85μl、671μmol)の混合物を、還流下で15分間アルゴン雰囲気中で加熱した。冷却した混合物を減圧下で濃縮し、加水分解を防ぐためにアルゴン雰囲気中に保った。この残渣をエタノール(無水、3mL)に溶解し、ナトリウム(283mg、12.34mmol)のエタノール(3mL)溶液を滴下しながら添加した。得られた黄色の混合物を、室温、アルゴン雰囲気中で2時間攪拌し、NaH2PO4を使用してpH6迄酸性にした後、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。抽出分を合わせて乾燥(MgSO4)し、ろ過した後濃縮した。白色の固体(156mg、)を、更に精製することなしに使用した。1Hnmr;1.49(t,3H);4.78(q,2H);7.26(d,1H);7.43(s,1H);8.11(d,1H);8.83(s,1H)。
【0153】
(e)化合物番号51の調製
3−[4−(2−クロロエチル)−1−ピペリジニル]−6−メチルピリダジン(76mg、318μmol)、7−ヒドロキシ−4−エトキシキナゾリン(100mg、526μmol)、炭酸カリウム(109mg、789μmol)及びヨウ化カリウム(53mg、319μmol)の混合物のDMF(5ml)溶液を、90℃でアルゴン雰囲気中で一晩加熱した。混合物を濃縮し、残渣を酢酸エチル(100ml)と水(20ml)の間に分配した。有機相を乾燥(MgSO)した後、ろ過し、濃縮し、勾配溶離法(酢酸エチル−メタノール/酢酸エチル)を使用したカラムクロマトグラフィー(シリカ)により精製した。画分を合わせて、白色の固体(22mg、18%)を得た。1Hnmrデータを下記の表6に示す。
【0154】
実施例14
3−[4−(2−クロロエチル)−1−ピペリジニル]−6−メチルピリダジンと適切な6−ヒドロキシキナゾリンとを、実施例13の(e)項に記載された条件と同様の条件に従って反応させることにより、化合物番号54及び55を調製した。1Hnmr及び/又はMSデータを下記の表6に示す。
【0155】
実施例15
6−{2−[1−(6−メチル−3−ピリダジニル)−4−ピペリジニル]エトキシ}−2−エトキシキノキサリン(表4の化合物番号43)の調製
(a)2−クロロ−6−ヒドロキシキノキサリンの調製
2−クロロ−6−メトキシキノキサリン(73mg、375μmol)と無水トルエン(3ml)との攪拌混合物に、三塩化アルミニウム(85mg、638μmol)をアルゴン雰囲気中で一度に添加した。反応混合物を還流下でおよそ1時間加熱し、次いで室温で一晩攪拌した。TLC(シリカ、ヘキサン/酢酸エチル2:1)は、残存する出発物質を示さず、新たな極性物質を示した。水(1ml)及び氷を添加して混合物を攪拌した。内容物を水(5ml)と酢酸エチル(100ml)との間に分配した。水相を酢酸エチル(50ml)で抽出し、次いで有機相の抽出物を合わせて、水(10ml)、次いでブライン(10ml)で洗浄し乾燥(Na2SO4)した。濃縮により褐色の固体を得、それをシリカ上に予備吸着させた。次いでシリカ(9g);溶離剤:ヘキサン中20%酢酸エチル、その後ヘキサン中25%酢酸エチル、でクロマトグラフィーにかけ、2−クロロ−6−ヒドロキシキノキサリン54mg(79%)を得た。
【0156】
(b)2−クロロ−6−{2−[1−(6−メチル−3−ピリダジニル)−4−ピペリジニル]エトキシ}−キノキサリンの調製
2−クロロ−6−ヒドロキシキノキサリン(52mg、288μmol)、3−[4−(2−クロロエチル)−1−ピペリジニル]−6−メチルピリダジン(76mg、317μmol)、ヨウ化カリウム(53mg、317μmol)及び炭酸カリウム(199mg、1.44mmol)の混合物の無水ジメチルホルムアミド(2ml)溶液を、90℃でアルゴン雰囲気中2日間加熱した。TLC(シリカ、酢酸エチル)は、新たな極性物質を示した。高真空下で溶媒を除去し、次いでシリカ(5g;溶離剤:酢酸エチル中30%ヘキサン)によるクロマトグラフィーにより、白色の固体68mg(61%)を得た。
【0157】
(c)化合物番号43の調製
ナトリウム(78mg、3.39mmol)を無水エタノール(2mL)に少しずつ添加した。得られたナトリウムエトキシド溶液を、(b)項のクロロキノキサリン(65mg、169μmol)の無水テトラヒドロフラン(2mL)の攪拌溶液に、アルゴン雰囲気中で添加した。反応混合物を還流下で数時間加熱し、次いで室温で一晩攪拌した。反応混合物に塩化アンモニウムの飽和溶液(1mL)を加えて反応を停止し、次いで内容物を水(3ml)とジクロロメタン(50ml)との間に分配した。水相をジクロロメタン(50ml)で抽出し、有機相の抽出物を合わせてブライン(10ml)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)した。粗生成物をシリカ上に予備吸着させ、次いでシリカ(11g;溶離剤2:1の酢酸エチル/ヘキサン)でクロマトグラフィーにかけ、白色の固体の化合物番号43(57mg、86%)を得た。
【0158】
実施例16
3−[4−(2−クロロエチル)−1−ピペリジニル]−6−メチルピリダジン又は2−[1−(6−メチル−3−ピリダジニル)−4−ピペリジニル]エタノールと適切な6−ヒドロキシキノキサリンとを、先の実施例に記載の条件と同様の条件に従って反応させることにより、化合物番号44、45及び46を調製した。1Hnmr及び/又はMSデータを下記の表6に示す。
【0159】
実施例17
表1乃至5に表示された本発明の化合物類は、一般にシリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製され、固体として単離され、1Hnmr及び質量分析により同定された。便宜のため、nmr及びmsデータを下記の表6に示す。
【0160】
【表6−1】

【0161】
【表6−2】

【0162】
【表6−3】

【0163】
【表6−4】

【0164】
実施例18
哺乳類細胞培養アッセイにおける抗HRV活性
ウイルス細胞変性効果(CPE)の阻害及び細胞毒性の測定
ウイルス複製を抑制し、それによってHRV誘導CPEから細胞を保護する化合物の能力は、HRV1A型に感染したヒト胚性肺(MRC−5)細胞を用いて測定された。ウシ胎仔血清を補足した通常の哺乳類組織培養培地(例えば最小必須培地)を用いた96穴組織培養プレート中で増殖した細胞を、Sidwell and Huffman(Applied Microiology,22,797−801,1971)に記載されたものと実質的に同様のアッセイにおいて使用した。化合物を100%無水ジメチルスルホキシドに溶解し、組織培養培地で段階的に希釈した。試験化合物の抗ウイルス力価は、同型組織培養穴をアッセイの間に有意なCPEをひき起こすのに十分な試験ウイルスの存在下に6乃至7化合物濃度の間の選択された希釈段階に曝すことによって評価した。対照細胞も又、ウイルスの不存在下で同じ濃度の化合物に曝すか、或いは化合物の不存在下である他は同じ条件でウイルスに感染させた。
【0165】
抗HRV効果の確立された化合物類(エンビロキシム、リバビリン及びピロダビル)を、試験化合物と平行して同じ手順によってアッセイした。組織培養培地は、アッセイの間に細胞の生存を維持し、ウイルスの増殖を支え、細菌の増殖を抑制するために均等に補充した(補充物:2%ウシ胎仔血清、0.01%重炭酸ナトリウム、50μg/mlゲンタマイシン、5μM塩化マグネシウム、10mM塩化亜鉛)。アッセイは、非処理HRV感染対照細胞を顕微鏡下で検査することによって有意なCPEが観察されるまで、37℃、5%CO2条件下でインキュベートした(一般的に、5乃至8日)。このとき、全ての感染培養は、光学顕微鏡を用いて肉眼で検査し、0(CPEなし)から4(最大CPE)のスケールでCPEをスコア付けした。非感染処理培養は、細胞毒性効果(例えば、細胞膨大、粒状度、丸まり、剥離)について同様にスコア付けした。これらのスコアは、それぞれ、化合物濃度対%CPE又は%細胞毒性のプロットから、線形回帰分析によってEC50(50%抗ウイルス効果を与える化合物の濃度)及びCC50(50%細胞毒性を与える化合物の濃度)を算出するのに使われた。CC50値の代わりとして、いくつかの例において細胞毒性を最大毒性濃度(MTC)として表した。MTCは、細胞毒性が観察された最低の化合物濃度に対応する。
【0166】
いくつかの例においては、上記した可視スコアリング系を、細胞生存を測るため生体染色によって評価した。使われた生体染色技術は、McManus(Appl.Environment.Microbiol.,31,35−38,1976)によって記載された方法の変形である。アッセイが顕微鏡を用いて肉眼によりスコア付けされた後、ニュートラルレッド(NR)100μl溶液(生理食塩リン酸バッファ(PBS)中0.34%NR)を各穴に加え、静かに撹拌した。アッセイを、生存細胞によるNRの取り込みを促進するため37℃インキュベーターに2時間戻した。培地/NR混合物を細胞の表面から吸引し、細胞をPBSで二度洗浄した。Sorensenのクエン酸バッファーIを含有した無水エタノール0.25mlをゆっくり撹拌しつつ加え、アッセイを室温、暗室で30分インキュベートし、NRを溶解した。生存細胞のNR染色を、BioTekEL−309マイクロプレートリーダーを用いて、540および405nmの二波長でNR溶液の色濃度を測定することによって、分光光度的に定量した。二つの読みの差は、バックグランド誤差を消去して自動的に定量された。EC50およびCC50値は、化合物濃度がNR染色に合った回帰分析によって決定された。
【0167】
結果を以下の表7及び8に示す。選択指標(SI)は、CC50又はMTCをEC50で割った値である。表7及び表8は、又、HRV株2及び14に対して本発明の化合物を試験するためのIC50データを示す。これらの結果は、HRV1Aについて上記に記載したものと同様のCPE法を用いて得られたものである。
【0168】
【表7】

【0169】
【表8−1】

【0170】
【表8−2】

【0171】
本明細書及び請求の範囲を通じて、文脈上別の意味を要求する場合でない限り、用語「含む(comprise)」、及び、「含む(comprises)」並びに「含んだ(comprising)」のような変形は、提示した整数又はステップ、或いは整数又はステップの群を包括することを意味するが、しかし、いかなる他の整数又はステップ、或いは整数又はステップの群を排除するものではないことが理解されるであろう。
【0172】
当業者は、本明細書に記載された本発明は、特異的に記載された以外の変形例及び改善例が可能であることを正しく認識するであろう。本発明は、全てのそのような変形例および改善例を包含することを理解すべきである。本発明は、又、本明細書に参照された又は示唆されたステップ、特徴、組成物及び化合物の全てを、個別に又は集合的に包含し、そして、該ステップ又は特徴の任意の二つ又はそれ以上の、全ての組合せを包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、その塩及び医薬的に許容可能な誘導体:
【化1】


上記式中、Hetは、任意に置換された5もしくは6員の単環式複素環基又は任意に置換された9もしくは10員の二環式複素環基であり;
Aは、O、S、NH、N(C1-6アルキル)、CH2O、直接の結合又は下記式の二価の複素環基:
【化2】


[(b−1)乃至(b−4)基内の1個以上の炭素原子は、C1-6アルキルで任意に置換されていてもよく、或いは(b−1)乃至(b−4)基内の2個の炭素原子は、C2-4アルキレン基で橋かけされていてもよい;m及びnは各々独立に1乃至4の整数であるが、(b−1)乃至(b−4)基内のm及びnの和は3、4又は5であり;
Zは、N又はCR6(R6は水素、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はアミノである)である;
Z’は、O、S、CHR7又はNR8(Rは水素、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はアミノであり、R8は水素又はC1-6アルキルである)である;
4は水素又はC1-6アルキルである;
5は水素、ヒドロキシ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシである]
であり;
Alkは、C1-7アルキレン又は直接の結合であり;
Wは、O、S、OCH2、直接の結合又はNR9(R9は水素又はC1-6アルキルである)であり;
1、X2及びX3は、各々独立にN及びCR(Rは水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシである)から選択され;
Bは、R10、OR10、SR10、及びNR910(R10はC1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルケニル、ハロC1-6アルケニル、C1-6アルキニル又はハロC1-6アルキニルである)から選択される、少なくとも1種の置換基で置換された5もしくは6員の不飽和複素環基である;
但し、Alkが直接結合であり、AがO、S、CH2O、又は直接結合であるときは、WはO、S、OCH2又は直接結合ではない。
【請求項2】
Hetが下記式を有する基から選択される、請求項に記載の化合物:
【化3−1】


【化3−2】


上記式中、R1は、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、ハロC1-6アルキル、アミノ、モノもしくはジ(C1-6アルキル)アミノ、シアノ、フォルミル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシC1-4アルキル、C1-4アルコキシC1-4アルキル、C1-6ハロアルコキシ、アリールオキシ、C1-6アルキルチオ、アリールチオ、C1-6アルキルスルフィニル、C1-6アルキルスルフォニル、アリールスルフィニル、アリールスルフォニル、−CH=NO−C1-4アルキル、C1-6アルキルオキシカルボニル、C1-6アルキルカルボニル又はアリールであり;
2及びR3は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロゲンから各々独立に選択され、(a−1)、(a−4)、(a−7)及び(a−13)の基では、結合したR1及びR2、又はR2及びR3は、式−CH=CH−CH=CH−又は(CH2p(但し、pは2乃至4の整数である)の二価の基を表し;
Yは、O又はSであり;
Y’は、O、S、SO又はSO2である。
【請求項3】
下記式で示す部分:
【化4】


が、下記式に示す基から選択される請求項に記載の化合物:
【化5】


上記式中、Yは、O、S又はNR9であり、R11は、R10、OR10、SR10、又はNR910(R9及びR10は、請求項1で定義されたものと同じである)である。
【請求項4】
Hetが式(a−1)、(a−2)又は(a−8)の基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
1が、水素、メチル、エチル、塩素、メトキシ、及びトリフルオロメチルから選択される請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
2及びR3が、独立に水素、塩素又はメチルである請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
Yが、O又はSである請求項2に記載の化合物。
【請求項8】
Aが、O、NH、NMe、直接の結合又は式(b−1)の基である請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
ZがCH又はNである請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
AlkがC1-6アルキレン又は直接の結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
WがOである請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
1、X2及びX3が、それぞれCHである請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
下記式:
【化6】


で示す部分が、式(c−1)又は(c−2)の基である請求項3に記載の化合物。
【請求項14】
(c−1)乃至(c−11)に於いて、R11が、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルアミノ及び塩素から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項15】
(c−1)又は(c−2)に於いて、Yが、O又はSである請求項3に記載の化合物。
【請求項16】
式IIの化合物:
【化7】


上記式中、R1は、水素、C1-4アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、トリフルオロメチル、アミノ、モノもしくはジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、ホルミル、−CH=NO−C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、アリールオキシ、C1-4アルキルチオ、又はアリールであり;
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Zは、CH又はNであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;そして
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである。)である。
【請求項17】
式IIIの化合物:
【化8】


上記式中、R1は、水素、C1-4アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、トリフルオロメチル、アミノ、モノもしくはジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、ホルミル、−CH=NO−C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、アリールオキシ、C1-4アルキルチオ、又はアリールであり;
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Zは、CH又はNであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである)である。
【請求項18】
式IVの化合物:
【化9】


上記式中、R1は、水素、C1-4アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、トリフルオロメチル、アミノ、モノもしくはジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、ホルミル、−CH=NO−C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4アルコキシC1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、アリールオキシ、C1-4アルキルチオ、又はアリールであり;
Aは、結合又はCH2Oであり;
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Alkは、C1-7アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである。)であり;
12及びR13は、各々独立に水素、ハロゲン、C1-4アルキル又はC1-4アルコキシである。
【請求項19】
式Vの化合物:
【化10】


上記式中、R1は、水素、C1-4アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、トリフルオロメチル、アミノ、モノもしくはジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、ホルミル、−CH=NO−C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、アリールオキシ、C1-4アルキルチオ、又はアリールであり;
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Zは、CH又はNであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである)である。
【請求項20】
式VIの化合物:
【化11】


上記式中、R1は、水素、C1-4アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、トリフルオロメチル、アミノ、モノもしくはジ(C1-4アルキル)アミノ、シアノ、ホルミル、−CH=NO−C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、アリールオキシ、C1-4アルキルチオ、又はアリールであり;
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Zは、CH又はNであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである)である。
【請求項21】
式VIIの化合物:
【化12】


上記式中、Hetは、ピリジル、ピラジニル、チアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、1,3,5−トリアジニル、ピリミジニル又はキノキサリニルであり、それぞれ、任意にハロゲン、トリフルオロメチル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ又はヒドロキシから選択される1乃至3個の置換基で置換されてもよく:
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Zは、CH又はNであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである)である。
【請求項22】
式VIIIの化合物:
【化13】


上記式中、Hetは、ピリジル、ピラジニル、チアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、1,3,5−トリアジニル、ピリミジニル又はキノキサリニルであり、それぞれ、必要に応じてハロゲン、トリフルオロメチル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ又はヒドロキシから選択される1乃至3個の置換基で置換されてもよく:
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Zは、CH又はNであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである)である。
【請求項23】
式IXの化合物:
【化14】


上記式中、Hetは、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、チアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、1,2,4−トリアジニル、1,3,5−トリアジニル、ピリミジニル又はキノキサリニルであり、それぞれ、必要に応じてハロゲン、トリフルオロメチル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ又はヒドロキシから選択される1乃至3個の置換基で置換されてもよく:
Aは、直接結合、O、NH又はNMeであり;
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC41-4アルキルである)である。
【請求項24】
式Xの化合物:
【化15】


上記式中、Hetは、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、チアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、1,2,4−トリアジニル、1,3,5−トリアジニル、ピリミジニル又はキノキサリニルであり、それらの各々は、必要に応じてハロゲン、トリフルオロメチル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ又はヒドロキシから選択される1乃至3個の置換基で置換されてもよく:
Aは、直接結合、O、NH又はNMeであり;
Yは、O、S、NH又はNMeであり;
Alkは、C1-6アルキレンであり;
11は、OR10又はSR10(但し、R10はC1-4アルキルである)である。
【請求項25】
表1乃至5のいずれかに記載された式Iの化合物。
【請求項26】
式XIの化合物:
【化16】


上記式中、A、Alk、W、Ar、X1、X2、X3及びBは、請求項1に定義されたものと同じである。
【請求項27】
医薬的に許容可能な担体及び請求項1に記載の式Iの化合物を含む組成物。
【請求項28】
医薬組成物である請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
式Iの化合物、その塩及び医薬的に許容可能なそれらの誘導体を含む医薬組成物:
【化17】


上記式中、Hetは、任意に置換された5もしくは6員の単環式複素環基又は任意に置換された9もしくは10員の二環式複素環基であり;
Aは、O、S、NH、N(C1-6アルキル)、CH2O、直接結合又は下記式の二価の複素環基:
【化18】


[(b−1)乃至(b−4)基内の1個以上の炭素原子は、C1-6アルキルで任意に置換されていてもよく、或いは(b−1)乃至(b−4)基内の2個の炭素原子は、C2-4アルキレン基と橋かけされていてもよい;m及びnは各々独立に1乃至4の整数であるが、(b−1)乃至(b−4)基内のm及びnの和は3、4又は5である;
Zは、N又はCR6(R6は水素、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はアミノである)である;
Z’は、O、S、CHR7又はNR8(R7は水素、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はアミノであり、R8は水素又はC1-6アルキルである)である;
4は水素又はC1-6アルキルである;
5は水素、ヒドロキシ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシである]
であり;
Alkは、C1-7アルキレン又は直接の結合であり;
Wは、O、S、OCH2、直接の結合又はNR9(R9は水素又はC1-6アルキルである)であり;
1、X2及びX3は、各々独立にN及びCR(Rは水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシである)から選択され;
Bは、R10、OR10、SR10、及びNR910(R10はC1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルケニル、ハロC1-6アルケニル、C1-6アルキニル又はハロC1-6アルキニルである)から選択される、少なくとも1種の置換基で置換された5もしくは6員の不飽和複素環基であり;
但し、Alkが直接結合であり、AがO、S、CH2O又は直接結合であるときは、Wは、O、S、OCH2又は直接結合ではない。
【請求項30】
式Iの化合物、その塩及び医薬的に許容可能なそれらの誘導体の有効量を投与するステップを含む、哺乳動物に於けるピコルナウイルス感染の処置又は予防の方法:
【化19】


上記式中、Hetは、任意に置換された5もしくは6員の単環式複素環基又は任意に置換された9もしくは10員の二環式複素環基であり;
Aは、O、S、NH、N(C1-6アルキル)、CH2O、直接結合又は下記式の二価の複素環基:
【化20】


[(b−1)乃至(b−4)基内の1個以上の炭素原子は、C1-6アルキルと任意に置換されていてもよく、或いは(b−1)乃至(b−4)基内の2個の炭素原子は、C2-4アルキレン基と橋かけされていてもよい;m及びnは各々独立に1乃至4の整数であるが、(b−1)乃至(b−4)基内のm及びnの和は3、4又は5である;
Zは、N又はCR(Rは水素、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はアミノである)である;
Z’は、O、S、CHR7又はNR8(R7は水素、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はアミノであり、R8は水素又はC1-6アルキルである)である;
4は水素又はC1-6アルキルである;
は水素、ヒドロキシ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシである]
であり;
Alkは、C1-7アルキレン又は直接の結合であり;
Wは、O、S、OCH2、直接の結合又はNR9(R9は水素又はC1-6アルキルである)であり;
1、X2及びX3は、各々独立にN及びCR(Rは水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシである)から選択され;
Bは、R10、OR10、SR10、及びNR910(R10はC1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C106アルケニル、ハロC1-6アルケニル、C1-6アルキニル又はハロC1-6アルキニルである)から選択される、少なくとも1種の置換基で置換された5もしくは6員の不飽和複素環基であり;
但し、Alkが直接結合であり、AがO、S、CH2O又は直接結合であるときは、Wは、O、S、OCH2又は直接結合でない。
【請求項31】
ピコルナウイルス感染が、一つ以上の血清型のライノウイルスによって引き起こされるものである請求項29の方法。
【請求項32】
式Iの化合物、その塩及び医薬的に許容可能なそれらの誘導体の使用:
【化21】


上記式中、Hetは、任意に置換された5もしくは6員の単環式複素環基又は任意に置換された9もしくは10員の二環式複素環基であり;
Aは、O、S、NH、N(C1-6アルキル)、CH2O、直接結合又は下記式の二価の複素環基:
【化22】


[(b−1)乃至(b−4)基内の1個以上の炭素原子は、C1-6アルキルで任意に置換されていてもよく、或いは(b−1)乃至(b−4)基内の2個の炭素原子は、C2-4アルキレン基と橋かけされていてもよい;m及びnは各々独立に1乃至4の整数であるが、(b−1)乃至(b−4)基内のm及びnの和は3,4又は5である;
Zは、N又はCR6(R6は水素、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はアミノである)である;
Z’は、O、S、CHR又はNR8(R7は水素、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はアミノであり、R8は水素又はC1-6アルキルである)である;
4は水素又はC1-6アルキルである;
5は水素、ヒドロキシ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシである]
であり;
Alkは、C1-7アルキレン又は直接の結合であり;
Wは、O、S、OCH2、直接の結合又はNR9(R9は水素又はC1-6アルキルである)であり;
1、X2及びX3は、各々独立にN及びCR(Rは水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシである)から選択され;
Bは、R10、OR10、SR10、及びNR910(R10はC1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルケニル、ハロC1-6アルケニル、C1-6アルキニル又はハロC1-6アルキニルである)から選択される、少なくとも1種の置換基で置換された5もしくは6員の不飽和複素環基であり;
但し、Alkが直接結合であり、AがO、S、CH2O、又は直接結合であるときは、Wは、O、S、OCH2、又は直接結合ではない。
【請求項33】
ピコルナウイルス感染が、一つ以上の血清型のライノウイルスによって引き起こされるものである、請求項32に記載の使用。

【公開番号】特開2010−189434(P2010−189434A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106686(P2010−106686)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【分割の表示】特願2002−551542(P2002−551542)の分割
【原出願日】平成13年12月18日(2001.12.18)
【出願人】(501488000)バイオウタ サイエンティフィック マネジメント プロプライエタリー リミテッド (8)
【Fターム(参考)】