抗癌剤として有用な21−デオキシマクベシン類似体
本発明は、例えば、癌、B細胞腫瘍、マラリア、真菌感染、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患、血管形成に依存する疾患、自己免疫疾患の治療に、又は癌のための予防的前処置として有用である21-デオキシマクベシン類似体に関する。本発明はまた、これらの化合物の産生、及び特に癌又はB細胞腫瘍の治療及び/又は予防における医薬品でのその使用のための方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
90kDa熱ショックタンパク質(Hsp90)は、タンパク質の折りたたみ及び会合に関与する豊富な分子シャペロンであり、その多くはシグナル伝達経路に関与する(総説については、Neckersの文献, 2002; Sreedharらの文献, 2004a; Wegeleらの文献, 2004、及び本明細書中の引用文献を参照のこと)。これまで、こうしたいわゆるクライアントタンパク質のうちの約50種が同定されており、これには、ステロイド受容体、非受容体チロシンキナーゼ(例えばsrcファミリー)、サイクリン依存性キナーゼ(例えばcdk4及びcdk6)、嚢胞性膜貫通調節因子(cystic transmembrane regulator)、一酸化窒素合成酵素などが含まれる(Donze及びPicardの文献, 1999; McLaughlinらの文献, 2002; Chiosisらの文献, 2004; Wegeleらの文献, 2004;http://www.picard.ch/downloads/Hsp90interactors.pdf)。さらに、Hsp90は、ストレス応答、及び突然変異の影響に対する細胞の防御において重要な役割を果たす(Bagatell及びWhitesellの文献, 2004; Chiosisらの文献, 2004)。Hsp90の機能は、複雑であり、それには、動的な多酵素複合体の形成が関与する(Bohenの文献, 1998;Liuらの文献, 1999;Youngらの文献, 2001;Takahashiらの文献, 2003;Sreedharらの文献, 2004;Wegeleらの文献, 2004)。Hsp90は、クライアントタンパク質の分解、細胞周期調節不全/又は正常化、及びアポトーシスをもたらす阻害因子(Fangらの文献, 1998; Liuらの文献, 1999; Blagosklonnyの文献, 2002; Neckersの文献, 2003; Takahashiらの文献, 2003; Beliakoff及びWhitesellの文献, 2004; Wegeleらの文献, 2004)の標的である。より最近、Hsp90は、腫瘍浸潤のための重要な細胞外メディエーターと特定された(Eustaceらの文献, 2004)。Hsp90は、癌治療のための新規の主要な治療標的と特定され、これは、Hsp90機能についての精力的かつ詳細な研究(Blagosklonnyらの文献, 1996; Neckersの文献, 2002; Workman及びKayeの文献, 2002; Beliakoff及びWhitesellの文献, 2004; Harrisらの文献, 2004; Jezらの文献, 2003; Leeらの文献, 2004)、及びハイスループットスクリーニング分析の開発(Carrerasらの文献, 2003; Rowlandsらの文献, 2004)に反映されている。Hsp90阻害因子としては、アンサマイシン、マクロライド、プリン、ピラゾール、クマリン抗生物質などの化合物クラスが挙げられる(総説については、Bagatell及びWhitesellの文献, 2004; Chiosisらの文献, 2004, 及び本明細書中の引用文献を参照のこと)。
【0002】
ベンゼノイドアンサマイシンは、芳香族環構造の側鎖に連結された可変長の脂肪族環によって特徴付けられる、広いクラスの化学構造である。天然に存在するアンサマイシンとしては、マクベシン及び18,21-ジヒドロマクベシン(それぞれ、別名マクベシンI及びマクベシンII)(1及び2; Tanidaらの文献, 1980)、ゲルダナマイシン(3; DeBoerらの文献, 1970; DeBoer及びDietzの文献, 1976; WO 03/106653, 及び本明細書中の引用文献)、及びハービマイシンファミリー(4; 5, 6, Omuraらの文献, 1979、Iwaiらの文献, 1980, 及びShibataらの文献, 1986a, WO 03/106653, 及び本明細書中の引用文献)が挙げられる。
【化1】
【0003】
アンサマイシンは元々、その抗菌及び抗ウイルス活性について同定されたが、最近、抗癌剤としてのその潜在的有用性が、より大きな関心になりつつある(Beliakoff及びWhitesellの文献, 2004)。多くのHsp90阻害因子が、目下、臨床試験において評価されている(Csermely及びSotiの文献, 2003; Workmanの文献, 2003)。特に、ゲルダナマイシンは、ナノモル効力と、異所性のプロテインキナーゼ依存性の腫瘍細胞に対する明らかな特異性とを有する(Chiosisらの文献, 2003; Workmanの文献, 2003)。
【0004】
Hsp90阻害因子を用いる治療が、放射線による腫瘍細胞死の誘発を増強することが示されており、Hsp90阻害因子の細胞傷害性薬剤との組み合わせによる細胞殺滅能力の増大(例えば乳癌、慢性骨髄性白血病、及び肺非小細胞癌)も実証されている(Neckersの文献, 2002; Beliakoff及びWhitesellの文献, 2004)。抗血管新生活性に対する潜在的可能性も、関心が持たれている:Hsp90クライアントタンパク質HIF-1αは、固形腫瘍の進行において重要な役割を果たす(Hurらの文献, 2002; Workman及びKayeの文献, 2002; Kaurらの文献, 2004)。
【0005】
Hsp90阻害因子はまた、免疫抑制剤としても機能し、Hsp90抑制後のいくつかのタイプの腫瘍細胞の補体誘発性溶解(complement-induced lysis)に関与する(Sreedharらの文献, 2004)。
潜在的な抗マラリア薬としてのHsp90阻害因子の使用も論じられている(Kumarらの文献, 2003)。さらに、ゲルダナマイシンが、グリコシル化哺乳動物プリオンタンパク質PrPc複合体の形成を妨げることが示されている(Winklhoferらの文献, 2003)。
【0006】
上で述べた通り、アンサマイシンは、潜在的な抗癌及び抗B細胞腫瘍化合物として関心が持たれているが、現在利用できるアンサマイシンは、不十分な薬理学的又は医薬品特性を示す。例えば、これらは、不十分な水溶性、不十分な代謝安定性、不十分な生体利用効率、又は不十分な製剤能を示す(Goetzらの文献, 2003; Workmanの文献 2003; Chiosisの文献 2004)。ハービマイシンA及びゲルダナマイシンは、その強い肝毒性に起因して、臨床試験の候補としては不十分であると特定され(総説 Workmanの文献, 2003)、ゲルダナマイシンは、肝毒性に起因して、第1相臨床試験から取り下げられた(Supkoらの文献, 1995, WO 03/106653)。
【0007】
ゲルダナマイシンは、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)の培養濾液から単離され、原生動物に対するインビトロでの強い活性と、細菌及び真菌に対する弱い活性を示す。1994年に、ゲルダナマイシンのHsp90との会合が示された(Whitesellらの文献, 1994)。ゲルダナマイシンの生合成遺伝子クラスターが、クローン化及び配列決定された(Allen及びRitchieの文献, 1994; Rascherらの文献, 2003; WO 03/106653)。DNA配列は、NCBI受入番号AY179507で入手できる。S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)亜種ドゥアマイセティカス(duamyceticus)から得られる遺伝子操作されたゲルダナマイシン産生株の単離、及び4,5-ジヒドロ-7-O-デスカルバモイル−7-ヒドロキシゲルダナマイシン及び4,5-ジヒドロ-7-O-デスカルバモイル-7-ヒドロキシ-17-O-デメチルゲルダナマイシンの単離は、最近記載されている(Hongらの文献, 2004)。ハービマイシン産生株ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)AM-3672にゲルダナマイシンを供給することによって、化合物15-ヒドロキシゲルダナマイシン、三環系ゲルダナマイシン類似体KOSN-1633、及びメチル-ゲルダナマイシネート(methyl-geldanamycinate)が単離された(Huらの文献, 2004)。S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)K279-78からは、2つの化合物17-ホルミル-17-デメトキシ-18-O-21-O-ジヒドロゲルダナマイシン及び17-ヒドロキシメチル-17-デメトキシゲルダナマイシンが単離された。S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)K279-78は、ハービマイシン産生株ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)AM-3672由来の様々な遺伝子を含有する44kbpインサートを有するコスミドpKOS279-78を含有するS.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)NRRL 3602である(Huらの文献, 2004)。アシル基転移酵素(AT)ドメインの置換は、ゲルダナマイシン生合成クラスターのポリケチド合成酵素の4つのモジュールにおいて行われている(Patelらの文献, 2004)。AT置換は、モジュール1、4、及び5において実施され、十分にプロセシングされた類似体14-デスメチル-ゲルダナマイシン、8-デスメチル-ゲルダナマイシン、及び6-デスメトキシ-ゲルダナマイシン、並びに十分にはプロセシングされていない4,5-ジヒドロ-6-デスメトキシ-ゲルダナマイシンがもたらされる。モジュール7 ATの置換は、3つの2-デスメチル化合物、KOSN1619、KOSN1558、及びKOSN1559の産生をもたらし、このうちの1つ(KOSN1559)であるゲルダナマイシンの2-デメチル-4,5−ジヒドロ-17-デメトキシ-21-デオキシ誘導体は、ゲルダナマイシンよりも4倍大きな結合親和性、また17-AAGよりも8倍大きな結合親和性で、Hsp90と結合する。しかし、これは、SKBr3を使用するIC50測定の改善には反映されない。別の類似体である、KOS-1806と呼ばれる新規の非ベンゾキノイドゲルダナマイシンは、モノフェノール構造を有する(Rascherらの文献, 2005)。KOS-1806については、活性データは示されなかった。
【0008】
1979年に、アンサマイシン系抗生物質のハービマイシンAが、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)株No. AM-3672の培養液から単離され、その強力な殺草力に従って命名された。抗腫瘍活性は、ラウス肉腫ウイルス(RSV)の温度感受性突然変異体で感染させたラット腎臓系統の細胞を、こうした細胞の形質転換された形態を戻す薬物をスクリーニングするために用いて立証された。(総説については、Ueharaの文献, 2003を参照のこと)。ハービマイシンAは、主として、Hsp90シャペロンタンパク質との結合を介して作用するとみなされたが、保存されたシステイン残基に対する直接的な結合及びそれに続くキナーゼの不活性化も論じられている(Ueharaの文献, 2003)。
【0009】
化学的誘導体が単離され、ベンゾキノン核のC19に、変更された置換基を有する化合物及び環(ansa)鎖におけるハロゲン化化合物は、ハービマイシンAよりも低い毒性と高い抗腫瘍活性を示した(Omuraらの文献, 1984; Shibataらの文献, 1986b)。ハービマイシン生合成遺伝子クラスターの配列は、WO 03/106653中、及び最近の刊行物中に特定されている(Rascherらの文献, 2005)。
【0010】
その抗真菌及び抗原虫活性によって特定されるアンサマイシン化合物であるマクベシン(1)及び18,21-ジヒドロマクベシン(2)(C-14919E-1及びC-14919E-1)は、ノカルジア(Nocardia)種No. C-14919(アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum) ATCC 31280)の培養上清から単離された(Tanidaらの文献, 1980; Muroiらの文献, 1980; Muroiらの文献, 1981; 米国特許第4,315,989号, 及び米国特許第4,187,292号)。18,21-ジヒドロマクベシンは、ジヒドロキノン形の芳香核を含有することによって特徴付けられる。マクベシンと18,21-ジヒドロマクベシンは、マウス白血病P388細胞株などの癌細胞株に対して、類似の抗菌及び抗腫瘍活性を持つことが示された(Onoらの文献, 1982)。逆転写酵素及び末端デオキシヌクレオチド転移酵素活性は、マクベシンによって阻害されなかった(Onoらの文献, 1982)。マクベシンのHsp90抑制機能は、文献中に報告されている(Bohenの文献, 1998; Liuらの文献, 1999)。マクベシン及び18,21-ジヒドロマクベシンを、微生物の培養液に加えた後、特定の位置(1又は複数)にメトキシ基ではなくヒドロキシ基を有する化合物に転換することは、米国特許第4,421,687号及び米国特許第4,512,975号に記載されている。
【0011】
化合物TAN-420AからEは、多種多様な土壌微生物のスクリーニング中に、ストレプトマイセス属に属する産生株から特定された(7-11, EP 0 110 710)。
【化2】
【0012】
2000年に、ストレプトマイセス種S6699の細胞培養株からの、ゲルダナマイシンに関連する非ベンゾキノンアンサマイシン代謝産物レブラスチン(reblastin)の単離、及び慢性関節リウマチの治療におけるその潜在的治療的価値が記載された(Steadらの文献, 2000)。
化学的に無関係なベンゾキノンアンサマイシンとは異なるさらなるHsp90阻害因子は、Radicicol(ラディシコール)(モノルデン(monorden))である。これは当初、真菌モノスポリウム・ボノルデン(Monosporium bonorden)からその抗真菌活性について発見され(総説については、Ueharaの文献, 2003を参照のこと)、その構造は、ネクトリア・ラディシコラ(Nectria radicicola)から単離される14員のマクロライドと同一であることが判明した。その抗真菌、抗菌、抗原生動物、及び細胞毒性活性に加えて、これは、その後、Hsp90シャペロンタンパク質の阻害因子として同定された(総説については、Ueharaの文献, 2003; Schulteらの文献, 1999を参照のこと)。ラディシコール(Hurらの文献, 2002)及びその半合成誘導体(Kurebayashiらの文献、2001)の抗血管新生活性も記載されている。
【0013】
最近の関心は、アンサマイシン抗癌化合物の新規産生物としての、ゲルダナマイシンの17-アミノ誘導体(Bagatell及びWhitesellの文献、2004)、例えば17-(アリルアミノ)-17-デスメトキシゲルダナマイシン(17AAG, 12)(Hosteinらの文献, 2001; Neckersの文献, 2002; Nimmanapalliらの文献, 2003; Vasilevskayaらの文献, 2003; Smith-Jonesらの文献, 2004)、及び17-デスメトキシ-17-N,N-ジメチルアミノエチルアミノ-ゲルダナマイシン(17-DMAG, 13)(Egorinらの文献, 2002; Jezらの文献, 2003)に集中している。近年、ゲルダナマイシンを17位で誘導体化し、17-ゲルダナマイシンアミド、カルバメート、尿素、及び17-アリールゲルダナマイシンがもたらされた(Le Brazidecらの文献, 2003)。60種以上の17-アルキルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン類似体のライブラリが報告されており、Hsp90に対するその親和性、及び水溶性について試験されている(Tianらの文献, 2004)。ゲルダナマイシンの毒性を低下させるさらなる手法は、腫瘍ターゲティングモノクローナル抗体への結合による、悪性細胞への活性なゲルダナマイシン化合物の選択的標的化及び送達である(Mandlerらの文献, 2000)。
【化3】
【0014】
こうした誘導体の多くは、低下させられた肝毒性を示すが、水溶性は、依然として限られている。例えば、17-AAGは、可溶化担体(例えばCremophore(登録商標)、DMSO-卵レシチン)の使用を必要とするが、これ自体は、患者によっては副作用をもたらす可能性がある(Huらの文献, 2004)。
【0015】
アンサマイシンクラスのHsp90阻害因子の大部分は、共通構造部分:タンパク質、グルタチオンなどの求核分子と容易に共有結合を形成することができるMichael受容体であるベンゾキノンを有する。ベンゾキノン部分はまた、ジヒドロキノンとの酸化還元平衡を受け、その間、活性酸素が形成され、それによって、さらに不特定の毒性が生じる(Dikalovらの文献, 2002)。例えば、ゲルダナマイシンを用いる治療によって、誘発性スーパーオキシド産生が誘導される可能性がある(Sreedharらの文献, 2004a)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、癌及び/又はB細胞腫瘍の治療において有用であり得る、ベンゾキノン部分を欠く新規のアンサマイシン誘導体を特定する必要性が残されている。こうしたアンサマイシンは、投与のために、水溶性が向上され、薬理学的プロフィールが向上され、副作用プロフィールが低下されていることが好ましい。本発明は、親の産生株を遺伝子操作することによって産生される新規のアンサマイシン類似体を開示する。特に、本発明は、現在入手できるアンサマイシンと比較すると、概して医薬品特性が向上された21-デオキシマクベシン類似体を開示する。特に、これらは、以下の特性のうちの1以上に対する改善を示す:毒性、グルタチオンなどの求核分子との結合、水溶性、代謝安定性、生体利用効率、及び製剤能。21-デオキシマクベシン類似体は、改善された毒性及び/又は水溶性を示すことが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
本発明の発明者らは、マクベシンの生合成を担う遺伝子クラスターをクローン化し、解明するために、意義深い研究を行った。この見通しを伴って、ベンゾキノン部分を欠く新規の誘導体を産生するために、ベンゾキノン部分の産生を担う遺伝子を、例えばmbcMへの組込み、mbcM遺伝子の全部又は一部を含めたマクベシンクラスターの領域の標的化された欠失、任意にそれに続く遺伝子(1又は複数)の挿入によって、あるいはMbcMを非機能的にする他の方法(例えば化学的な阻害、部位特異的突然変異誘発、又は例えばUVによる細胞の突然変異誘発)によって、特異的に標的化した。任意に、マクベシンのpost-PKS改変を担うさらなる遺伝子の標的化された不活化又は欠失を行うこともできる。さらに、mbcMでないいくつかのこうした遺伝子を、細胞に再導入することもできる。post-PKS遺伝子の任意の標的化は、様々な機構を介して、例えば、組込み、post-PKS遺伝子のすべて又はいくつかを含めたマクベシンクラスター領域の標的化された欠失、任意にそれに続く遺伝子(1又は複数)の挿入、あるいはpost-PKS遺伝子又はそのコードされる酵素を非機能的にする他の方法(例えば、化学的な阻害、部位特異的突然変異誘発、又は例えばUV放射の使用による細胞の突然変異誘発)によって、行うことができる。その結果、本発明は、21-デオキシマクベシン類似体、こうした化合物の調製のための方法、及びこうした化合物を医薬品中で、あるいは、さらなる化合物の産生における中間体として使用するための方法を提供する。
したがって、第1の態様では、本発明は、C21位置に通常存在する酸素原子を欠くマクベシンの類似体を提供する。マクベシンでは、この酸素原子は、ケト基として存在し、18,21-ジヒドロマクベシンでは、この酸素原子は、ヒドロキシル基として存在する。
【0018】
より具体的な態様では、本発明は、下記式(I)の21-デオキシマクベシン類似体、又は医薬として許容し得るその塩を提供する:
【化4】
(式中:
R1は、H、OH、又はOCH3を表し、
R2は、H又はCH3を表し、
R3及びR4は、どちらもHを表す、又は共に結合を表し(すなわち、C4からC5は、二重結合であり)、
R5は、H又は-C(O)-NH2を表す)。
【0019】
21-デオキシマクベシン類似体は、本明細書では「本発明の化合物」とも称され、こうした用語は、本明細書では同義的に使用される。
上記の構造は、代表的な互変異性体を示し、本発明は、式(I)の化合物のすべての互変異性体(例えば、エノール化合物が示される場合にはケト化合物、その逆も同様)を包含する。
上に示した通り、本発明は、構造(I)によって定義される化合物のすべての立体異性体を包含する。
さらなる態様では、本発明は、医薬としての使用のための、式(I)の化合物などの21-デオキシマクベシン類似体、又は医薬として許容し得るその塩を提供する。
【0020】
(定義)
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、1つ又は2つ以上の(すなわち少なくとも1つの)文法的対象の冠詞を指すために使用される。例えば、「an類似体」は、1つの類似体又は2つ以上の類似体を意味する。
本明細書では、用語「類似体(1又は複数)」は、(ある原子の別の原子による置換において、又は特定の官能基の存在又は非存在において見られるような)、もう片方と構造的に類似であるが、組成がわずかに異なる化合物を指す。
【0021】
本明細書では、用語「相同体(1又は複数)」は、異なるマクベシン産生株由来の別のマクベシン生合成クラスター由来の本明細書で開示される遺伝子の相同体又は遺伝子によってコードされるタンパク質の相同体、あるいは別のアンサマイシン生合成遺伝子クラスター由来の(例えばゲルダナマイシン、ハービマイシン、又はレブラスタチン(reblastatin)由来の)相同体を指す。こうした相同体(1又は複数)は、マクベシン又は関連するアンサマイシンポリケチドの合成において、同じ機能を果たすタンパク質をコードする、あるいは、それ自体で前記遺伝子又はタンパク質と同じ機能を果たすことができる。好ましくは、こうした相同体(1又は複数)は、本明細書で開示される特定の遺伝子の配列(表3、配列番号:17 これは、該クラスターにおけるすべての遺伝子の配列であり、ここから特定の遺伝子の配列を推測することができる)と、少なくとも40%配列同一性、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%配列同一性を有する。同一性(%)は、NCBIウェブサイト上で入手できるBLASTn又はBLASTpなどの当業者に知られている任意のプログラムを使用して算出することができる。
【0022】
本明細書では、用語「癌」は、皮膚における、又は人体器官(例えば、限定されるものではないが、乳房、前立腺、肺、腎臓、膵臓、脳、胃、又は腸)における、細胞の良性又は悪性の新生物を指す。癌は、近接組織に浸潤し、遠くの器官に、例えば骨、肝臓、肺、又は脳に拡散する(転移する)傾向がある。本明細書では、用語「癌」には、転移性の腫瘍細胞型(これらに限定されないが、黒色腫、リンパ腫、白血病、線維肉腫、横紋筋肉腫、及び肥満細胞腫など)と、組織癌の型(これらに限定されないが、結腸直腸癌、前立腺癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌、乳癌、膵臓癌、膀胱癌、腎癌、胃癌、神経膠芽腫、原発性肝癌、及び卵巣癌など)のどちらも含まれる。
【0023】
本明細書では、用語「B細胞腫瘍」には、慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄腫、及び非ホジキンスリンパ腫(NHL)を含めた一群の障害が含まれる。これらは、血液及び造血臓器の腫瘍疾患である。これらは、骨髄及び免疫系の機能不全を引き起こし、これによって宿主は、感染や出血を非常に起こしやすくなる。
【0024】
本明細書では、用語「生体利用効率」は、薬物又は他の物質が、投与後に吸収される、又は生物活性部位で利用可能になる、程度又は割合を指す。この特性は、化合物の溶解度、腸内での吸収速度、タンパク質結合や代謝などの程度を含めた、いくつかの因子に依存する。当業者によく知られているであろう生体利用効率に関する様々な試験は、本明細書に記載されている(Egorinらの文献, 2002も参照のこと)。
【0025】
本出願において使用される用語「水溶性」は、水性媒体(例えばpH 7.3のリン酸緩衝生理食塩水(PBS))における溶解度を指す。水溶性に関する試験は、「水溶性分析」として以下の実施例に示す。
本明細書では、用語「post-PKS遺伝子(1又は複数)」は、例えば、限定はされないが、モノオキシゲナーゼ、O-メチルトランスフェラーゼ、及びカルバモイルトランスフェラーゼなどの、ポリケチドのpost-ポリケチド合成酵素改変に必要とされる遺伝子を指す。特に、マクベシン系では、こうした改変遺伝子としては、mbcM、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450が挙げられる。
【0026】
式(I)の化合物などの本発明の化合物の医薬として許容し得る塩には、医薬として許容し得る無機又は有機酸あるいは塩基から形成される従来の塩、並びに四級アンモニウム酸付加塩が含まれる。適切な酸塩の、より具体的な例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、ギ酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、パルモ(palmoic)酸塩、マロン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、フェニル酢酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、フマル酸塩、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン-2スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化水素酸塩、リンゴ酸塩、ステロ(steroic)酸塩、タンニン酸塩などが挙げられる。シュウ酸などの他の酸は、それ自体では薬学的に許容し得るものではないが、本発明の化合物及び医薬として許容し得るその塩を得る際の中間体として有用な塩の調製に有用である可能性がある。適切な塩基塩の、より具体的な例としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、コリン塩、ジエタノールアミン塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、及びプロカイン塩が挙げられる。本発明による化合物に対する下記の言及には、式(I)の化合物と、医薬として許容し得るその塩との両方が含まれる。
本明細書では、用語「18,21-ジヒドロマクベシン」と「マクベシンII」(マクベシンのジヒドロキノン形)は、同義的に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(本発明の説明)
本発明は、上で述べた通りの21-デオキシマクベシン類似体、これらの化合物の調製のための方法、医薬品中でのこれらの化合物の使用のための方法、及びさらなる半合成的誘導体化又は生体内変換方法による誘導体化のための中間体又は鋳型としてのこれらの化合物の使用を提供する。
【0028】
好ましくはR1は、H又はOHを表す。本発明の一実施態様では、R1は、Hを表す。本発明の別の実施態様では、R1は、OHを表す。
好ましくはR2は、Hを表す。
好ましくはR3とR4は、どちらもHを表す。
好ましくはR5は、-C(O)-NH2を表す。
本発明の好ましい一実施態様では、R1はHを表し、R2はHを表し、R3とR4はどちらもHを表し、R5は-C(O)-NH2を表す。
本発明の別の好ましい実施態様では、R1はOHを表し、R2はHを表し、R3とR4はどちらもHを表し、R5は-C(O)-NH2を表す。
【0029】
環(ansa ring)に対する非水素側鎖の好ましい立体化学は、下記の構造(15)に、また、下の図1及び2に示す通りである(すなわち、好ましい立体化学は、マクベシンの立体化学に従う)。
本発明はまた、医薬として許容し得る担体と共に、21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩を含む医薬組成物も提供する。
本発明はまた、生体内変換による、又は合成化学によるさらなる改変のための基質としての21-デオキシマクベシン類似体の使用も提供する。
【0030】
臨床試験中である、又は臨床試験が行われた、ある種の既存のアンサマイシンHsp90阻害因子(ゲルダナマイシン及び17AAGなど)は、不十分な薬理学的プロフィール、不十分な水溶性、及び不十分な生体利用効率を有する。本発明は、水溶性などの特性が改善された新規の21-デオキシマクベシン類似体を提供する。当業者であれば、標準の方法を使用して、本発明の所与の化合物の水溶性を容易に決定することができるであろう。代表的な方法は、本明細書の実施例に示す。
【0031】
一態様では、本発明は、医薬品の製造における21-デオキシマクベシン類似体の使用を提供する。さらなる実施態様では、本発明は、癌及び/又はB細胞腫瘍の治療のための医薬品の製造における21-デオキシマクベシン類似体の使用を提供する。さらなる実施態様では、本発明は、マラリア、真菌感染、中枢神経系の疾患、血管形成に依存する疾患、自己免疫疾患の治療のための、及び/又は癌のための予防的前処置としての、医薬品の製造における21-デオキシマクベシン類似体の使用を提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、医薬品における21-デオキシマクベシン類似体の使用を提供する。さらなる実施態様では、本発明は、癌及び/又はB細胞腫瘍の治療における21-デオキシマクベシン類似体の使用を提供する。さらなる実施態様では、本発明は、マラリア、真菌感染、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患、血管形成に依存する疾患、自己免疫疾患の治療のための、及び/又は癌のための予防的前処置としての、医薬品の製造における21-デオキシマクベシン類似体の使用を提供する。
【0033】
さらなる実施態様では、本発明は、投与の必要のある患者に、治療有効量の21-デオキシマクベシン類似体を投与することを含む、癌及び/又はB細胞腫瘍の治療の方法を提供する。さらなる実施態様では、本発明は、投与の必要のある患者に、治療有効量の21-デオキシマクベシン類似体を投与することを含む、マラリア、真菌感染、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患の疾患、血管形成に依存する疾患、自己免疫疾患の治療、及び/又は癌のための予防的前処置の方法を提供する。
【0034】
上記の通り、本発明の化合物は、癌及び/又はB細胞腫瘍の治療に有用であることを期待できる。本発明の化合物、特に、Hsp90に対する優れた選択性及び/又は優れた毒物学プロフィール及び/又は優れた薬物動態を有する可能性があるものはまた、他の適応症(例えば、それだけには限らないが、マラリア、真菌感染、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患、血管形成に依存する疾患、関節リウマチなどの自己免疫疾患)の治療において、あるいは癌のための予防的前処置として有効である可能性がある。
【0035】
中枢神経系の疾患及び神経変性疾患には、それだけには限らないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン疾患、脊髄及び延髄性筋萎縮症(SBMA)、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)が含まれる。
血管形成に依存する疾患には、それだけには限らないが、加齢性黄斑部変性、糖尿病性網膜症及び様々な他の眼の障害、アテローム性動脈硬化症、並びに慢性関節リウマチが含まれる。
自己免疫疾患には、それだけには限らないが、関節リウマチ、多発性硬化症、I型糖尿病、全身性エリテマートーデス、及び乾癬が含まれる。
【0036】
「患者」は、ヒト及び他の動物(特に哺乳動物)対象、好ましくはヒトの対象を包含する。したがって、本発明の21-デオキシマクベシン類似体の方法及び使用は、ヒト及び家畜の医薬品(好ましくはヒトの医薬品)に有用である。
本発明の上述の化合物又はその製剤は、任意の従来方法によって投与することができる。例えば、限定はされないが、これらは、(静脈内投与を含めて)非経口的に、経口的に、(口腔内、舌下、又は経皮を含めて)局所的に、医療器具(例えばステント)を介して、吸入によって、あるいは注射(皮下又は筋肉内)を介して投与することができる。治療は、単回投与又は一定期間にわたる多回投与から構成され得る。
【0037】
本発明の化合物は、単独で投与することが可能であるが、1種以上の許容し得る担体と共に、医薬製剤として与えることが好ましい。したがって、1種以上の医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に本発明の化合物を含む医薬組成物が提供される。希釈剤(1種又は複数)又は担体(1種又は複数)は、本発明の化合物と適合するという意味で「許容し得」なければならず、かつそのレシピエントに対して有害であってはならない。適切な担体の例は、以下により詳細に述べる。
【0038】
本発明の化合物は、単独で、あるいは他の治療薬と組み合わせて投与することができる。2種(又はそれ以上)の薬剤の同時投与によって、使用されるそれぞれの用量を有意に低くし、それによって、現れる副作用を低下させることが可能になる。これはまた、疾患が耐性となってしまっている従来の治療の効果に対して、癌などの疾患の再感作を可能にすることが可能である。1種以上の医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に、本発明の化合物及びさらなる治療薬を含む医薬組成物も提供される。
さらなる態様では、本発明は、第2の薬剤(例えば、細胞毒性又は細胞増殖抑制性薬剤などの、癌又はB細胞腫瘍の治療のための第2の薬剤)を用いる併用療法における本発明の化合物の使用を提供する。
【0039】
一実施態様では、本発明の化合物は、別の治療薬(例えば、癌又はB細胞腫瘍の治療のための、細胞毒性又は細胞増殖抑制性薬剤などの治療薬)と共に同時投与される。例示的なさらなる薬剤としては、アルキル化剤並びに(トポイソメラーゼII阻害剤及びチューブリン阻害剤を含めた)分裂抑制剤などの細胞傷害性薬剤が挙げられる。他の例示的なさらなる薬剤としては、DNA結合剤、代謝拮抗剤、及び細胞増殖抑制性薬剤(プロテインキナーゼ阻害剤及びチロシンキナーゼ受容体ブロッカーなど)が挙げられる。適切な薬剤としては、それだけには限らないが、メトトレキセート、ロイコボリン、プレニゾン、ブレオマイシン、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、タモキシフェン、トレミフェン、酢酸メゲストロール、アナストロゾール、ゴセレリン、抗HER2モノクローナル抗体(例えばトラスツズマブ、商品名Herceptin(商標))、カペシタビン、ラロキシフェン塩酸塩、EGFR阻害剤(例えばゲフィチニブ、商品名Iressa(登録商標)、エルロチニブ、商品名Tarceva(商標)、セツキシマブ、商品名Erbitux(商標))、VEGF阻害剤(例えばベバシズマブ、商品名Avastin(商標))、プロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブ、商品名Velcade(商標))、又はイマチニブ、商品名Glivec(登録商標)が挙げられる。さらなる適切な薬剤としては、それだけには限らないが、シスプラチン、シタラビン、シクロヘキシルクロロエチルニトロソウレア、ゲムシタビン、イホスファミド、ロイコボリン、マイトマイシン、ミトキサントン、オキサリプラチン、タキソールを含めてタキサン、及びビンデシンなどの従来の化学療法剤;ホルモン療法薬;モノクローナル抗体療法薬; ダサチニブ、ラパチニブなどのプロテインキナーゼ阻害剤; ボリノスタットなどのヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤;スニチニブ、ソラフェニブ、レナリドマイドなどの血管形成阻害剤;並びにテムシロリムスなどのmTOR阻害剤が挙げられる。さらに、本発明の化合物は、それだけには限らないが放射線療法又は手術を含めた他の治療法と組み合わせて投与することができる。
【0040】
該製剤は、単位剤形中に好都合に提供することもできるし、薬学分野でよく知られた方法のいずれかによって調製することもできる。こうした方法は、活性成分(本発明の化合物)を、1種以上の補助成分を構成する担体と混合するステップを含む。一般に、該製剤は、活性成分を、液体担体又は微粉固体状担体あるいはその両方と、均一かつ十分に混合し、必要に応じて、生成物を成形することによって調製される。
【0041】
本発明の化合物は通常、活性成分を含む医薬製剤の形で、あるいは任意に、非毒性有機又は無機の酸あるいは塩基、付加塩を医薬として許容し得る剤形中に入れた形で、経口的に、又は任意の非経口的経路によって投与されることとなる。治療されるべき障害及び患者、並びに投与経路に応じて、組成物は、様々な用量で投与することができる。
例えば、本発明の化合物は、即時放出、遅延放出、又は徐放用途のための、錠剤、カプセル、腔坐剤(ovule)、エリキシル、液剤、又は懸濁剤(これらは、香味料又は着色剤を含有することができる)の形で、経口的に、口腔内に、又は舌下的に投与することができる。
【0042】
こうした錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム及びグリシンなどの賦形剤、デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ、又はタピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、及び特定の複合ケイ酸塩などの崩壊剤、並びにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン、及びアカシアなどの造粒結合剤を含有することが可能である。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、及びタルクなどの滑沢剤を含めることも可能である。
【0043】
また、類似のタイプの固体組成物を、ゼラチンカプセル中の充填剤として用いることができる。その際、好ましい賦形剤としては、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖、又は高分子量のポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁剤及び/又はエリキシル剤については、様々な甘味料又は香味剤、着色料又は色素と、また、乳化剤及び/又は懸濁剤と、また、水、エタノール、プロピレングリコール、及びグリセリンなどの希釈剤、並びにこれらの組み合わせと、本発明の化合物を組み合わせることができる。
【0044】
錠剤は、任意に1種以上の補助成分と共に、圧縮又は成形によって作製することができる。圧縮錠剤は、適切な機械内で、粉末又は顆粒などの自由に流動できる形の活性成分を、結合剤(例えばポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えばデンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、界面活性又は分散剤と任意に混合し、圧縮することによって調製することができる。成型錠剤は、不活発な液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を適切な機械内で成型することによって作製することができる。錠剤は、任意にコーティングすることも、刻み目をつけることも可能であり、また、例えば、所望の放出プロフィールを提供するために、様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、その中の活性成分の持続放出又は制御放出を提供するように調製することも可能である。
【0045】
経口投与に適した本発明による製剤は、それぞれ所定の量の活性成分を含有するカプセル、カシェ剤、又は錠剤などの個別単位として;粉末又は顆粒として;液剤、あるいは水性液体又は非水性液体中の懸濁剤として;あるいは水中油型液体エマルジョン又は油中水型液体エマルジョンとして提供することができる。活性成分はまた、大型丸薬、舐剤、又はペースト剤として提供することもできる。
【0046】
口腔中の局所投与に適した製剤としては、風味付けされたベース(通常スクロース及びアカシア又はトラガカント)中に活性成分を含むロゼンジ;不活性ベース(ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアなど)中に活性成分を含む香錠;及び適切な液体担体中に活性成分を含む洗口液が挙げられる。
上で特に述べた成分に加えて、本発明の製剤が、当該の製剤のタイプを踏まえた当分野で通常の他の薬剤を含むことが可能であり、例えば、経口投与に適したものは、香味剤を含むことが可能であることを理解するべきである。
【0047】
局所投与に適合された医薬組成物は、軟膏、クリーム、懸濁剤、ローション、粉剤、液剤、ペースト剤、ゲル剤、含浸(impregnated)包帯、スプレー、エアロゾル又はオイル、経皮装具、散布剤などとして調製することができる。これらの組成物は、活性剤を含有する従来方法を介して調製することができる。したがって、これらはまた、保存剤、薬剤浸透を助ける溶媒、クリーム又は軟膏中の皮膚軟化剤、及びローション用のエタノール又はオレイルアルコールなどの、適合性のある従来の担体及び添加剤も含むことができる。こうした担体は、組成物の約1%から約98%として存在することができる。より通常、これらは、組成物の最高約80%を構成する。例示目的に過ぎないが、クリーム又は軟膏は、所望の稠度を有するクリーム又は軟膏を生産するのに十分な量の、約5〜10重量%の化合物を含有する、十分な量の親水性材料と水を混合することによって調製される。
【0048】
経皮投与に適合された医薬組成物は、レシピエントの表皮と長時間密接に接触したままであることが意図される、個別パッチとして提供することができる。例えば、活性剤は、イオン導入によってパッチから送達させることができる。
外部組織(例えば口腔及び皮膚)への適用のためには、組成物は、局所用軟膏又はクリームとして適用されることが好ましい。軟膏中に調製される場合、活性剤を、パラフィン又は水溶性軟膏基剤と共に用いることができる。
あるいは、活性剤は、水中油型クリーム基剤又は油中水型基剤を伴うクリーム中に調製することができる。
【0049】
非経口投与については、流体単位剤形は、活性成分と、例えば、限定されないが、水、アルコール、ポリオール、グリセリン、及び植物油(水が好ましい)などの滅菌したビヒクルとを利用して調製される。活性成分は、使用されるビヒクル及び濃度に応じて、ビヒクル中に懸濁又は溶解させることができる。液剤を調製する際には、活性成分を、注射用水に溶解し、濾過滅菌し、その後、適切なバイアル又はアンプルに充填して密封することができる。
【0050】
好都合なことに、局部麻酔薬、保存剤、及び緩衝剤などの薬剤を、ビヒクル中に溶解させることができる。安定性を高めるために、バイアルに充填した後、組成物を凍結させ、真空中で水を除去することができる。次いで、乾いた凍結乾燥粉末をバイアル中に密閉し、さらに、使用前に液体を再構成するための注射用水の添付のバイアルを提供することができる。
【0051】
非経口懸濁剤は、活性成分がビヒクル中に溶解されるのではなく懸濁されることと、滅菌を濾過によって達成されることができないことを除いては、液剤と実質的に同じ方式で調製される。活性成分は、滅菌したビヒクルに懸濁させる前に、エチレンオキシドに暴露させることによって滅菌することができる。好都合なことに、活性成分の均一分布を容易にするために、組成物中に界面活性剤又は湿潤剤が含められる。
【0052】
本発明の化合物はまた、当技術分野で知られた医療用具を使用して投与することができる。例えば、一実施態様では、本発明の医薬組成物は、米国特許第5,399,163号;米国特許第5,383,851号;米国特許第5,312,335号;米国特許第5,064,413号;米国特許第4,941,880号;米国特許第4,790,824号;又は米国特許第4,596,556号に開示されている器具などの無針皮下注射器具を用いて投与することができる。本発明に有用な、よく知られたインプラント及びモジュールの例としては、以下が挙げられる:米国特許第4,487,603号(制御された割合で薬品を分配するための、植込み型マイクロ注入ポンプを開示している);米国特許第4,486,194号(皮膚を介して医薬品を投与するための治療用装具を開示している);米国特許第4,447,233号(正確な注入速度で薬品を送達するための薬剤注入ポンプを開示している);米国特許第4,447,224号(連続薬物送達のための流量変動式(variable flow)植込み型注入装置を開示している);米国特許第4,439,196号(マルチチャンバー区画を有する浸透圧薬物送達システムを開示している);及び米国特許第4,475,196号(浸透圧薬物送達システムを開示している)。他の多くのこうしたインプラント、送達システム、及びモジュールが、当業者に知られている。
【0053】
本発明の化合物の投与されるべき用量は、特定の化合物、関与する疾患、対象、並びに疾患の性質及び重症度、及び対象の体調、並びに選択される投与経路に応じて変動する。適切な用量は、当業者によって容易に決定することができる。
該組成物は、投与の方法に依存して、0.1重量%から、好ましくは5〜60%、より好ましくは10〜30重量%の本発明の化合物を含有することができる。
【0054】
本発明の化合物の最適な量及び個々の投薬の間隔が、治療される状態の性質及び程度、投与の形、経路、及び部位、並びに治療される特定の対象の年齢及び状態によって決定されること、また、医師が、使用される適切な投薬を最終的に決定することが、当業者には認識されるであろう。この投薬は、適切な回数繰り返すことができる。副作用が生ずる場合、正常な臨床診療に従って、投薬の量及び/又は頻度を変化させる、あるいは減らすことができる。
【0055】
さらなる態様では、本発明は、21-デオキシマクベシン類似体の産生のための方法を提供する。
マクベシンは、2つの段階で生合成されると考えることができる。第1段階では、core-PKS遺伝子が、2-炭素単位の繰り返し集合体によるマクロライドコアが構築され、次いで、これが環化されて、酵素を含まない第1の中間体「マクベシン前駆体」が形成される(図1参照)。第2段階では一連の「post-PKS」仕上げ(tailoring)酵素(例えばP450モノオキシゲナーゼ、メチルトランスフェラーゼ、FAD依存性オキシゲナーゼ、及びカルバモイルトランスフェラーゼ)が、マクベシン前駆体鋳型にさらなる様々な基を加えるように作用し、最終の親化合物構造がもたらされる(図2参照)。21-デオキシマクベシン類似体も、同様の方式で生合成することができる。
【0056】
この生合成的産生を、新規の化合物を産生させるのに適した産生株を遺伝子操作することによって利用することができる。特に、本発明は、以下を含む、21-デオキシマクベシン類似体を産生する方法を提供する:
a)適切な条件下で培養される場合にマクベシン又はその類似体を産生する第1の宿主株を提供することと、
b)1種以上のpost-PKS遺伝子を欠失又は不活化させることと(ただし、該post-PKS遺伝子のうちの少なくとも1つは、mbcM又はその相同体である)、
c)21-デオキシマクベシン類似体の産生に適した条件下で、前記改変された宿主株を培養することと、
d)産生された化合物を任意に単離すること。
【0057】
ステップ(a)では、「マクベシン又はその類似体」は、R1〜R5の定義によって包含されるマクベシン又はマクベシンの類似体を意味する。
ステップ(b)では、1種以上のpost-PKS遺伝子(ただし、これらのpost-PKS遺伝子のうちの少なくとも1つは、mbcM又はその相同体である)を欠失又は不活化させることは、選択的に、適切に行われることとなる。
【0058】
さらなる実施態様では、ステップb)は、mbcM遺伝子(又はその相同体)へのDNAの組込みによって、mbcM(又はその相同体)を不活化させ、機能性のmbcMタンパク質が産生されないようにすることを含む。別の実施態様では、ステップb)は、mbcM遺伝子又はその相同体の、標的化された欠失を行うことを含む。さらなる実施態様では、mbcM又はその相同体は、部位特異的突然変異誘発によって不活化させられる。さらなる実施態様では、ステップa)の宿主株は、突然変異誘発にかけられ、改変された株が選択される(ここでは、post-PKS酵素の1つ以上は、機能性でなく、これらのうちの少なくとも1つは、MbcMである)。本発明はまた、mbcM又はその相同体の発現を制御する調節因子の突然変異体を包含し、当業者は、調節因子の欠失又は不活化が、遺伝子の欠失又は不活化と同じ結果を有する可能性があることを理解するであろう。
【0059】
本発明の特定の実施態様では、post PKS遺伝子を選択的に欠失又は不活化させる方法は、以下を含む:
(i)縮重するオリゴを当該の遺伝子の相同体(1種又は複数)に基づいて(例えば、ゲルダナマイシンPKS生合成クラスターから、及び/又はリファマイシン生合成クラスターから)設計し、PCR反応においてこれらのプライマーを用いて、適切なマクベシン産生株から当該の遺伝子(例えばmbcM)の内部フラグメントを単離することと、
(ii)このフラグメントを含有するプラスミドを、同じ又は異なるマクベシン産生株に組み込み、それに続いて相同的組み換えを行うことと(これによって、標的化された遺伝子(例えばmbcM又はその相同体)の破壊がもたらされる)、
(iii)このようにして産生された株を、マクベシン類似体、すなわち21-デオキシマクベシン類似体の産生に適した条件下で培養すること。
特定の実施態様では、ステップ(i)におけるマクベシン産生株は、アクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum)(A.ミルム(A. mirum))である。さらなる具体的実施態様では、ステップ(ii)におけるマクベシン産生株は、A.プレティオスム(A. pretiosum)である
【0060】
当業者は、例えば以下の代替法を使用して、上で述べたのと同等の株を提供できることを理解するであろう:
・縮重するオリゴを使用して、他のマクベシン産生株(例えば、それだけには限らないが、A.プレティオスム(A.pretiosum)又はA.ミルム(A.mirum))から、当該の遺伝子を増幅することができる。
・マクベシン産生株のmcbM遺伝子又はその相同体の適切な領域を首尾よく増幅することとなる、様々な縮重するオリゴを設計することができる。
・A.プレティオスム(A. pretiosum)株のmbcM遺伝子の配列を、A.プレティオスム(A. pretiosum)のmbcM遺伝子に特異的であり得るオリゴを産生するために使用することができ、その後、内部フラグメントを、任意のマクベシン産生株、例えばA.プレティオスム(A.pretiosum)又はアクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum) (A.ミルム(A.mirum))から増幅することができる。
・A.プレティオスム(A. pretiosum)のmbcM遺伝子に対する縮重するオリゴを産生するために、A.プレティオスム(A. pretiosum)株のmbcM遺伝子の配列を、相同遺伝子の配列と共に使用することができ、その後、内部フラグメントを、任意のマクベシン産生株、例えばA.プレティオスム(A. pretiosum)又はA.ミルム(A.mirum)から増幅することができる。
【0061】
本発明のさらなる態様では、mbcMに加えて、さらなるpost-PKS遺伝子も、欠失又は不活化させることができる。図2は、マクベシン生合成クラスターにおけるpost-PKS遺伝子の活性を示す。したがって、当業者であれば、当該の化合物(1種又は複数)を産生することとなる株に至るためには、さらなるpost-PKS遺伝子のどれが、欠失又は不活化される必要があるかを特定することが可能であろう。
本発明のさらなる態様では、mbcMを含めた1種以上のpost-PKS遺伝子が上の通りに欠失又は不活化させられた操作された株が、例えば別のマクベシン産生株由来、又は同じ株由来の、mbcM又はその相同体を含まない1種以上の同じpost PKS遺伝子に再導入される。
【0062】
したがって、本発明のさらなる態様では、以下を含む、21-デオキシマクベシン類似体の産生のための方法が提供される。
a)適切な条件下で培養される場合にマクベシンを産生する第1の宿主株を提供することと、
b)1以上のpost-PKS遺伝子を欠失又は不活化させることと(ただし、該post-PKS遺伝子のうちの少なくとも1つは、mbcM又はその相同体である)、
c)mbcMを含まないpost-PKS遺伝子のいくつか又はすべてを再導入することと、
d)改変された前記宿主株を、21-デオキシマクベシン類似体の産生に適した条件下で培養することと、
e)産生された化合物を任意に単離すること。
【0063】
さらなる実施態様では、mbcMを含めた1種以上のpost-PKS遺伝子が欠失又は不活化させられた操作された株が、それだけには限らないがリファマイシン、アンサミトシン、ゲルダナマイシン、又はハービマイシンの生合成を誘導するクラスターを含めた異種PKSクラスター由来の1種以上のpost PKS遺伝子によって補充される。
具体的には、宿主株は、mbcMが欠失又は不活化させられたマクベシン産生株に基づく操作された株であり得る。あるいは、宿主株は、mbcM、mbcMT1、mbcMT2、mbcP、及びmbcP450が欠失又は不活化させられたマクベシン産生株に基づく操作された株であり得る。
【0064】
こうした系では、不活化又は欠失を含めた記載した方法の1つの結果として、mbcM又はその相同体が機能しない株が産生される場合、2つ以上のマクベシン類似体が、産生され得ることを観察することができる。これについては、当業者によって理解されるであろういくつかの考えられ得る原因が存在する。例えば、post-PKSステップの好ましい順序が存在する可能性があり、単一の活性を取り除くことによって、関与する酵素に対して天然ではない基質上で実施されるすべてのその後のステップがもたらされる。これは、post-PKS酵素に対して提供される新規の基質に対する効率の低下に起因して、又は、おそらくステップの順序が変化させられたことにより、もはや残留する酵素に対する基質ではない生成物を回避するために、培養液中での中間体築造をもたらす可能性がある。
【0065】
混合物中で観察される化合物の比は、振盪培養器における毎分回転数(rpm)及び振盪培養器の振幅の設定などの、増殖条件の変化を用いることによって操作することができる。実施例に述べる通り、より小さい振幅(2.5cm)、より大きいrpm(300)を用いる培養器内でのBIOT-3806の産生培養株の保温によって、よりプロセシングされていない類似体への偏りがもたらされるのに対して、より広い振幅(5cm)とより小さいrpm(200又は250)を用いる培養器における並行実験では、よりプロセシングされた中間体への偏りがもたらされる。
【0066】
当業者は、生合成クラスター中では、ある種の遺伝子は、オペロンで組織され、1つの遺伝子の破壊は、同じオペロンにおけるその後の遺伝子の発現に対する影響をしばしば有することになることを理解するであろう。
化合物の混合物が観察される場合、これらは、標準の技術(そのうちのいくつかは、以下の実施例に述べる)を使用して容易に分離することができる。
【0067】
21-デオキシマクベシン類似体は、本明細書に記述する通りのいくつかの方法によってスクリーニングすることができ、単一化合物が、好ましいプロフィールを示すような状況で、この化合物が好ましく作成されるように、株を操作することができる。これが可能ではない通常でない状況では、中間体を産生することができ、これを生体内変換させて、所望の化合物を産生することができる。
【0068】
本発明は、マクベシンPKS遺伝子集団由来の1種以上のpost-PKS遺伝子の選択された欠失又は不活化によって産生される新規のマクベシン類似体を提供する。特に、本発明は、マクベシン生合成遺伝子クラスター由来の、少なくともmbcM又はその相同体の、選択された欠失又は不活化によって産生される新規の21-デオキシマクベシン類似体に関する。一実施態様では、mbcM又はその相同体は、単独で、欠失又は不活化させられる。別の実施態様では、mbcMに加えて他のpost-PKS遺伝子が、さらに欠失又は不活化させられる。ある特定の実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択されるさらなる遺伝子が、宿主株中で欠失又は不活化させられる。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択されるpost-PKS遺伝子のうちのさらに1つ以上が、欠失又は不活化させられる。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択されるpost-PKS遺伝子のうちのさらに2つ以上が、欠失又は不活化させられる。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択されるpost-PKS遺伝子のうちのさらに3つ以上が、欠失又は不活化させられる。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択されるpost-PKS遺伝子のうちのさらに4つ以上が、欠失又は不活化させられる。
【0069】
当業者は、遺伝子が非機能性になるためには、それが完全に欠失させられる必要はなく、結果として、本明細書では、用語「欠失又は不活化させられる」は、それだけには限らないが以下を含めて、それによって遺伝子が非機能性になるいずれの方法も包含することを理解するであろう:遺伝子全体の欠失、標的遺伝子への挿入による不活化、発現されない又は不活性化状態で発現される遺伝子をもたらす部位特異的突然変異誘発、発現されない又は不活性化状態で発現される遺伝子をもたらす宿主株の突然変異誘発(例えば放射線、又は突然変異誘発性化学薬品への暴露、プロトプラスト融合、又はトランスポゾン変異)。さらに、これには、遺伝子の内部のフラグメントの欠失が含まれる。あるいは、活性な遺伝子の機能を、阻害剤、例えばメタピロン(metapyrone)(別名2-メチル-1,2-ジ(3-ピリジル-1-プロパノン)、EP 0 627 009)を用いて化学的に弱めることができる。アンシミドールは、オキシゲナーゼの阻害剤であり、これらの化合物を、産生媒体に加えて、類似体を産生することができる。さらに、シネフンギンは、インビボでのメチル基転移酵素活性の抑制以外は同様に使用することができるメチル基転移酵素阻害剤である(McCammon及びParksの文献 1981)。
【0070】
別の実施態様では、post-PKS遺伝子のすべてを、欠失又は不活化することができ、その後、それだけには限らないがmbcM又はその相同体を含めた1種以上の遺伝子を、相補性によって(例えば、att部位に、自己増殖するプラスミド上に、又は染色体の相同領域への挿入によって)再導入することができる。したがって、特定の実施態様では、本発明は、以下を含む、21-デオキシマクベシン類似体の産生のための方法に関する:
a)適切な条件下で培養される場合にマクベシンを産生する第1の宿主株を提供することと、
b)すべてのpost-PKS遺伝子を選択的に欠失又は不活化させることと、
c)21-デオキシマクベシン類似体の産生に適した条件下で、前記改変された宿主株を培養することと、
d)産生された化合物を任意に単離すること。
【0071】
別の実施態様では、mbcMが、再導入される遺伝子の1つでないことが条件で、1以上の欠失させられたpost-PKS遺伝子が再導入される。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択される1以上のpost-PKS遺伝子が再導入される。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択される2以上のpost-PKS遺伝子が再導入される。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択される3以上のpost-PKS遺伝子が再導入される。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択される4以上のpost-PKS遺伝子が再導入される。さらなる別の実施態様では、mbcNとmbcPとmbcMT1とmbcMT2とmbcP450が再導入される。
【0072】
さらに、mbcM又はその相同体を含めたpost-PKS遺伝子の亜集団を、欠失又は不活化させることができ、mbcMを含まない前記post-PKS遺伝子の、より小さな亜集団を再導入し、21-デオキシマクベシン類似体を産生する株に至らしめることができることは、当業者には明白であろう。
当業者は、マクベシンに対する生合成遺伝子クラスターを含有するが、少なくともmbcM又はその相同体を欠いている株を産生するいくつかの方法が存在することを理解するであろう。
【0073】
ポリケチド遺伝子クラスターを、異種宿主中で発現させることができることは、当業者によく知られている(Pfeifer及びKhoslaの文献, 2001)。したがって、本発明は、mbcMを含まない又はmbcMの非機能性の突然変異体を含む、あるいは耐性及び調節遺伝子を含む又は含まない、あるいは完全又はさらなる欠失を含有するマクベシン生合成遺伝子クラスターの、異種宿主への移入を含む。あるいは、耐性及び調節遺伝子を含む又は含まない完全なマクベシン生合成クラスターを、異種宿主に移入することができ、次いで、これを、mbcMを欠失又は不活化させるための本明細書で記述される方法によって操作することができる。DNAのこうした大きな断片の上で定義した通りの移入のための方法及びベクターは、当分野でよく知られている(Rawlingsの文献, 2001; Staunton及びWeissmanの文献, 2001)、あるいは、開示された方法において、本明細書で提供される。この文脈において、好ましい宿主細胞株は、原核生物、より好ましくは、放線菌又は大腸菌(Escherichia coli)であり、さらに好ましくは、好ましい宿主細胞株としては、それだけには限らないが、アクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum) (A.ミルム(A.mirum))アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)(A.プレティオスム(A. pretiosum))、S.ハイグロスコピカス(S.hygroscopicus)、S.ハイグロスコピカス(S.hygroscopicus)種、S.ハイグロスコピカス(S.hygroscopicus)変種アスコミケティクス(ascomyceticus)、ストレプトマイセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)、ストレプトマイセス・コエリコル(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・リウィダンス(Streptomyces lividans)、サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora erythraea)、ストレプトマイセス・フラディアエ(Streptomyces fradiae)、ストレプトマイセス・アヴェルミティリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・キンナモネンシス(Streptomyces cinnamonensis)、ストレプトマイセス・リモスス(Streptomyces rimosus)、ストレプトマイセス・アルブス(Streptomyces albus)、ストレプトマイセス・グリセオフスクス(Streptomyces griseofuscus)、ストレプトマイセス・ロンギスポロフラウス(Streptomyces longisporoflavus)、ストレプトマイセス・ヴェネズアラエ(Streptomyces venezuelae)、ストレプトマイセス・アルブス(Streptomyces albus)、ミクロモノスポラ(Micromonospora)種、ミクロモノスポラ・グリセオルビダ(Micromonospora griseorubida)、アミコラトプシス・メディテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)、又はアクチノプラネス(Actinoplanes)種N902-109が挙げられる。さらなる例としては、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)亜種ゲルダヌス(geldanus)及びストレプトマイセス・ヴィオラケウスニゲル(Streptomyces violaceusniger)が挙げられる。
【0074】
一実施態様では、全生合成クラスターが移入される。別の実施態様では、mbcMを含まない全PKSが移入される。別の実施態様では、全PKSは、mbcMを含めて、関連するpost-PKS遺伝子のいずれも含まずに移入される。
さらなる実施態様では、全マクベシン生合成クラスターが移入され、次いで、本明細書の説明に従って操作される。
【0075】
本発明の別の態様では、本発明の21-デオキシマクベシン類似体は、適切な株を用いる生体内変換によってさらにプロセシングすることができる。適切な株は、利用可能な野生株(例えば、それだけには限らないが、アクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum)、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)、S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)、S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)種)である。あるいは、適切な株を、特定のpost-PKS酵素(例えば、それだけには限らないが、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、mbcP450(本明細書で定義する通り)、gdmN、gdmM、gdmL、gdmP、(Rascherらの文献, 2003)、ゲルダナマイシン17-O-メチルトランスフェラーゼ、asm7、asm10、asm11、asm12、asm19、及びasm21(Cassadyらの文献, 2004, Spitellerらの文献, 2003)によってコードされるものを用いた生体内変換を可能にするように操作することができる。遺伝子がまだ特定されていない、又は配列が公共のドメイン内にない場合、標準の方法によってこうした配列を獲得することは、当業者にとっては通常である。例えば、ゲルダナマイシン17-O-メチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の配列は、公共のドメインにはないが、当業者は、生体内変換システムをもたらすために、プローブ(類似のO-メチル基転移酵素を使用する非相同プローブ、又は利用可能な相同遺伝子から縮重するプライマーを設計することによる相同プローブ)を産生し、ゲルダナマイシン産生株に対してサザンブロットを行うことによって、この遺伝子を獲得することができる。
【0076】
特定の実施態様では、該株は、前記天然のポリケチドクラスターによって産生されるポリケチドの産生を妨げるために、その天然の1以上のポリケチドクラスターを、完全又は部分的に欠失あるいは不活化させることができる。前記操作された株は、例えば、それだけには限らないが、アクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum)、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)、S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)、S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)種、S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)変種アスコミケティクス(ascomyceticus)、ストレプトマイセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)、ストレプトマイセス・コエリコル(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・リウィダンス(Streptomyces lividans)、サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora erythraea)、ストレプトマイセス・フラディアエ(Streptomyces fradiae)、ストレプトマイセス・アヴェルミティリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・キンナモネンシス(Streptomyces cinnamonensis)、ストレプトマイセス・リモスス(Streptomyces rimosus)、ストレプトマイセス・アルブス(Streptomyces albus)、ストレプトマイセス・グリセオフスクス(Streptomyces griseofuscus)、ストレプトマイセス・ロンギスポロフラウス(Streptomyces longisporoflavus)、ストレプトマイセス・ヴェネズアラエ(Streptomyces venezuelae)、ミクロモノスポラ(Micromonospora)種、ミクロモノスポラ・グリセオルビダ(Micromonospora griseorubida)、アミコラトプシス・メディテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)、又はアクチノプラネス(Actinoplanes)種N902-109を含めた群から選択することができる。さらなる可能な株としては、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)亜種ゲルダヌス(geldanus)及びストレプトマイセス・ヴィオラケウスニゲル(Streptomyces violaceusniger)が挙げられる。
【0077】
さらなる態様では、本発明は、mbcM遺伝子又はその相同体が、それによって21-デオキシマクベシン又はその類似体(例えば式(I)の化合物によって定義される通りの21-デオキシマクベシン類似体)が産生されるように欠失又は不活化させられた、マクベシン又はその類似体を天然に産生する宿主株、及び21-デオキシマクベシン又はその類似体の産生におけるその使用を提供する。
【0078】
したがって、一実施態様では、本発明は、欠失された、マクベシンPKS遺伝子クラスター由来の1以上のpost-PKS遺伝子を有する、その変更されていない状態でマクベシンを天然に産生する遺伝子操作された株を提供する。ここでは、前記欠失又は不活化させられたpost-PKS遺伝子の1つは、mbcM又はその相同体である。
本発明は、本明細書に記述される発明の方法のすべての生成物を包含する。
上で述べた通りの本発明の21-デオキシマクベシン類似体の調製のための方法は、実質的又は完全に生合成的であるが、標準の化学的合成法を含む方法によって本発明の21-デオキシマクベシン類似体を産生又は相互転換することも除外されない。
【0079】
マクベシン生合成遺伝子クラスターの遺伝子操作を可能にするために、最初に、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)から、遺伝子クラスターが配列決定されたが、当業者は、マクベシンを産生する別の株(例えば、限定されないがアクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum))が存在することを理解するであろう。これらの株からのマクベシン生合成遺伝子クラスターは、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)、及び同等の株を産生するために使用される情報について本明細書に記述する通りに配列決定することができる。
【0080】
本発明のさらなる態様には、以下が含まれる:
−mbcM、及び任意にさらなるpost-PKS遺伝子が欠失又は不活化させられたマクベシン産生株に基づく操作された株、具体的には、mbcMが欠失又は不活化させられたこうした操作された株、あるいはmbcM、mbcMT1、mbcMT2、mbcP、及びmbcP450が欠失又は不活化させられたこうした操作された株である。適切には、マクベシン産生株は、A プレティオスム(A pretiosum)又はA ミルム(A mirum)である。
−21-デオキシマクベシン類似体の調製におけるこうした操作された株の使用。
【0081】
本発明の化合物は、以下の特性の1以上を有することが期待できるという点で、好都合である:Hsp90への結合の固さ、Hsp90への結合速度の早さ、優れた溶解度、優れた安定性、優れた製剤能、優れた経口生体利用効率、優れた薬物動態学的特性(それだけには限らないが、低いグルクロン酸化を含む)、優れた細胞取り込み、優れた脳薬物動態、赤血球に対する結合の低さ、好適な毒物学プロフィール、好適な肝毒性プロフィール、好適な腎毒性、副作用の低さ、及び心臓への副作用の低さ。
【実施例】
【0082】
(一般方法)
(培養株の発酵)
菌株アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum) ATCC 31280(米国特許第4,315,989号)及びアクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum) DSM 43827(KCC A-0225, Watanabeらの文献, 1982)を増殖するために使用される条件は、米国特許第4,315,989号及び米国特許第4,187,292号に記載されている。本明細書で使用する方法は、これらの特許から適合させたものであり、振盪培養器中のチューブ又はフラスコ中でブロスを培養することについては、以下の通りである。公開されたプロトコルに対する変化形は、実施例中に示す。両株を、ISP2寒天(Medium 3, Shirling, E.B.及びGottlieb,D.らの文献, 1966)上で28℃で2〜3日間増殖させ、シード培地(Medium 1, 出典米国特許第4,315,989号及び米国特許第4,187,292号, 下記参照)に接種するために使用する。次いで、接種されたシード培地を、5又は2.5cmの振幅で、200rpmと300rpmとの間で振盪しながら、28℃で48時間保温した。マクベシン、18,21-ジヒドロマクベシン、及び21-デオキシマクベシンなどのマクベシン類似体の産生については、発酵培地(Medium 2, 下記及び米国特許第4,315,989号及び米国特許第4,187,292号を参照)に、2.5%〜10%の種培養物を接種し、5又は2.5cmの振幅で、200rpmと300rpmとの間で振盪しながら、最初に28℃で24時間、それに続いて26℃で4〜6日間保温した。次いで、培養株を抽出のために採取した。
【0083】
【表1】
20分間121℃での高圧蒸気殺菌法による殺菌。
高圧蒸気殺菌法の後、適宜、50mg/lの最終濃度を与えるように、アプラマイシンを加えた。
【0084】
【表2】
20分間121℃での高圧蒸気殺菌法による殺菌。
【0085】
【表3】
20分間121℃での高圧蒸気殺菌法による殺菌。
【0086】
【表4】
20分間121℃での高圧蒸気殺菌法による殺菌。
【0087】
(LCMS分析のための培養ブロスの抽出)
培養ブロス(1ml)と酢酸エチル(1ml)を加えて15〜30分間混合し、それに続いて10分間の遠心分離を行った。0.5mlの有機層を収集し、蒸発させて乾燥し、次いで、0.25mlのメタノール中に再溶解させた。
(培養ブロス分析のためのLCMS分析手順、及びインビボでの形質転換研究)
LCMSは、陽及び/又は陰イオンモードで作動するBruker Daltonics Esquire 3000+エレクトロスプレー質量分析計と組み合わせた、統合型Agilent HP1100 HPLCシステムを使用して実施した。クロマトグラフィーは、アセトニトリル+ 0.1%ギ酸/水+ 0.1%ギ酸(40/60)から、アセトニトリル+ 0.1%ギ酸/水+ 0.1%ギ酸(80/20)までの直線濃度勾配を用いて、流速1ml/分で、11分かけて溶出する、Phenomenex Hypercloneカラム(C18 BD、3u、150×4.6mm)を通して達成した。190nmと400nmの間のUVスペクトルを記録し、クロマトグラムを210、254、及び276nmで抽出した。質量スペクトルは、100amuと1500amuとの間で記録した。
【0088】
(抗癌活性に関するインビトロのバイオアッセイ)
単層増殖分析における38のヒト腫瘍細胞株のパネルにおける抗癌活性に関する化合物のインビトロの評価は、Oncotest Testing Facility, Institute for Experimental Oncology, Oncotest社, Freiburgで実施した。選択された細胞株のうちの9つの特性を、表1にまとめて示す。
【表5】
【0089】
Rothらの文献, (1999)に記載される通り、ヒト腫瘍異種移植片から、Oncotest細胞株を樹立する。供与異種移植片の起源は、Fiebigらの文献, (1999)によって記載されている。他の細胞株は、NCI(H460、SF-268、OVCAR-3、DU145、MDA-MB-231、MDA-MB-468)から得る、あるいはDSMZ, Braunschweig, Germany(LNCAP)から購入する。
すべての細胞株は、特に明記しない限り、RPMI 1640培地、10 %ウシ胎児血清、及び0.1mg/mlのゲンタマイシンを含有する「調合済み(ready-mix)」培地(PAA, Colbe, Germany)中で、加湿雰囲気(95 %空気、5 % CO2)中、37℃で増殖させた。
ヒトの腫瘍細胞株の増殖に対する試験化合物(1種又は複数)の効果を評価するために、改変されたヨウ化プロピジウム分析を使用した(Denglerらの文献, 1995)。
【0090】
簡単に言うと、細胞を、トリプシン処理によって指数増殖期培養株から採取し、計数し、細胞株に応じた細胞密度(5〜10.000生細胞/ウェル)で、96ウェル平底マイクロタイタープレートに蒔く。回収の24時間後、細胞の指数増殖を再開させるために、0.010mlの培地(6対照ウエル/プレート)又は21-デオキシマクベシン類似体を含有する培地を、ウェルに加えた。それぞれの濃度を、三重に蒔いた。化合物は、5種の濃度(100; 10; 1; 0.1及び0.01μM)で適用した。4日間の連続的暴露の後、試験化合物を含む又は含まない細胞培養培地を、0.2mLのヨウ化プロピジウム(PI)水溶液(7mg/l)によって置き換えた。生細胞の割合を測定するために、細胞を、プレートを凍結することによって透過処理した。プレートを解凍した後、Cytofluor 4000マイクロプレートリーダーを使用して蛍光(生細胞の合計と直接的な関係を示す)を測定した(励起530nm、発光620nm)。
増殖阻害率は、処理/対照×100(% T/C)として表された。活性な化合物については、IC70値は、細胞生存率に対する化合物濃度をプロットすることによって推定した。
【0091】
(組み合わせられた抗癌活性に関するインビトロバイオアッセイ)
上で述べた通りのDU145細胞の増殖に対する、化合物の組み合わされた適用の影響を評価するために、各標準の薬剤について4枚のプレート:標準の薬剤単独のための1枚と、それぞれ3つの異なる固定された濃度の化合物14を伴う標準の薬剤の組み合わせのための3枚のプレートを調製したことを除き、改変されたヨウ化プロピジウム分析を同様に使用した。標準の薬剤は、3.2倍(half-log)増分で、6重に、10濃度で適用した。未処理の細胞、並びに化合物14単独と共に保温される細胞を、それぞれ、6ウェル/プレートでカバーした。増殖阻害率は、処理/対照×100(%T/C)として表され、各組み合わせに対するIC70値は、細胞生存率に対する化合物濃度をプロットすることによって決定した。
【0092】
(実施例1−マクベシン生合成遺伝子クラスターの配列決定)
ゲノムDNAは、Kieserらの文献, (2000)に記載される標準のプロトコルを使用して、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)(ATCC 31280)及びアクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum)(DSM 43827、ATCC 29888)から単離した。DNA塩基配列決定は、標準の手順を使用して、Biochemistry Department, University of Cambridge, Tennis Court Road, Cambridge CB2 1QWの配列決定設備によって実施した。
【0093】
プライマーBIOSG104 5'-GGTCTAGAGGTCAGTGCCCCCGCGTACCGTCGT-3'(配列番号:7)及びBIOSG105 5'-GGCATATGCTTGTGCTCGGGCTCAAC-3'(配列番号:8)を用いて、標準の技術を使用して、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)NRRL 3602(配列:AY179507の受入番号)のゲルダナマイシン生合成遺伝子クラスター由来のカルバモイルトランスフェラーゼコード遺伝子gdmNを増幅した。サザンブロット実験は、DIG Reagents and Kits for Non-Radioactive Nucleic Acid Labelling and Detectionを使用して、製造業者の指示書(Roche)に従って実施した。DIG標識されたgdmN DNAフラグメントを、非相同プローブとして使用した。gdmNから産生されたプローブ及びA.プレティオスム(A. pretiosum) 2112から単離されたゲノムDNAを使用して、サザンブロット分析において、約8kbのEcoRIフラグメントが特定された。このフラグメントを、標準の手順を適用して、Litmus 28にクローン化し、コロニーハイブリダイゼーションによって形質転換体を同定した。クローンp3を単離し、約7.7kbのインサートを配列決定した。クローンp3から単離されたDNAを、EcoRI及びEcoRI/SacIで消化し、それぞれ、約7.7kb及び約1.2kbのバンドが単離された。標識化反応は、製造業者のプロトコルに従って実施した。上で名づけられた2つの株のコスミドライブラリは、ベクターSuperCos 1及びGigapack III XLパッケージングキット(Stratagene)を使用して、製造業者の指示書に従って構築した。これらの2つのライブラリを、標準のプロトコルを使用してスクリーニングし、プローブとして、クローンp3から得られる7.7kbのEcoRIフラグメントのDIG標識されたフラグメントを使用した。コスミド52は、A.プレティオスム(A. pretiosum)のコスミドライブラリから同定し、配列決定のために、University of CambridgeのBiochemistry Departmentの配列決定設備にかけた。同様に、コスミド43及びコスミド46を、A.ミルム(A.mirum)のコスミドライブラリから同定した。3つのコスミドはすべて、サザンブロット分析で示される通り、7.7kbのEcoRIフラグメントを含有する。
【0094】
コスミド43のPKS領域の約0.7kbpフラグメントを、プライマーBIOSG124 5'-CCCGCCCGCGCGAGCGGCGCGTGGCCGCCCGAGGGC-3’(配列番号:9)及びBIOSG125 5'-GCGTCCTCGCGCAGCCACGCCACCAGCAGCTCCAGC-3’(配列番号:10)を使用して、標準のプロトコルを適用して増幅させ、クローン化し、オーバーラッピングクローンのためのA.プレティオスム(A. pretiosum)コスミドライブラリをスクリーニングするためのプローブとして使用した。また、コスミド52の配列情報を使用して、プライマーBIOSG130 5'-CCAACCCCGCCGCGTCCCCGGCCGCGCCGAACACG-3’(配列番号:11)及びBIOSG131 5'-GTCGTCGGCTACGGGCCGGTGGGGCAGCTGCTGT-5’(配列番号:12)、並びにBIOSG132 5'-GTCGGTGGACTGCCCTGCGCCTGATCGCCCTGCGC-3’(配列番号:13)及びBIOSG133 5'-GGCCGGTGGTGCTGCCCGAGGACGGGGAGCTGCGG-3’(配列番号:14)(これらは、A.プレティオスム(A. pretiosum)のコスミドライブラリをスクリーニングするために使用された)によって増幅されるDNAフラグメントから得られるプローブを構築した。コスミド311及び352を単離し、コスミド352を、配列決定のために起用した。コスミド352は、コスミド52との約2.7kbのオーバーラップを含有する。さらなるコスミドをスクリーニングするために、プライマーBIOSG136 5'-CACCGCTCGCGGGGGTGGCGCGGCGCACGACGTGG CTGC-3’(配列番号:15)及びBIOSG 137 5'-CCTCCTCGGACAGCGCGATCAGCGCCGCGC ACAGCGAG-3’(配列番号:16)、及び鋳型としてのコスミド311を使用して、標準のプロトコルを適用して、約0.6kbのPCRフラグメントを増幅した。A.プレティオスム(A. pretiosum)のコスミドライブラリをスクリーニングし、コスミド410を単離した。これは、コスミド352と約17kbオーバーラップし、配列決定のために起用した。3つのオーバーラッピングコスミド(コスミド52、コスミド352、及びコスミド410)の配列を構築した。配列決定された領域は、約100kbpにおよび、マクベシン生合成遺伝子クラスターを構成する可能性がある23のオープンリーディングフレームを同定した(配列番号:17)。配列番号:17内での各々のオープンリーディングフレームの位置を、表3に示す。
【0095】
【表6】
【0096】
【表7】
【0097】
(実施例2−株BIOT-3806:gdmM相同体mcbMがプラスミドの挿入によって遮断されたアクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)株の産生)
pLSS308の構築の概要を、図3に示す。
(2.1. プラスミドpLSS308の構築)
ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)株NRRL 3602(AY179507)のゲルダナマイシン生合成遺伝子クラスター由来のgdmM遺伝子のDNA配列と、アミコラトプシス・メディテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)(AF040570 AF040571)のリファマイシン生合成遺伝子クラスター由来のorf19を、VectorNTI配列アラインメントプログラムを使用して整列配置した(図4)。このアラインメントによって、アクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum)(BIOT-3134; DSM43827; ATCC29888)由来の相同遺伝子のフラグメントを増幅するために使用される、縮重するオリゴの設計に適した相同領域を同定した。縮重するオリゴは、以下の通りである
FPLS1:5':ccscgggcgnycngsttcgacngygag 3';(配列番号:18)
FPLS3:5':cgtcncggannccggagcacatgccctg 3';(配列番号:19)
(ここでは、n= G、A、T、又はC; y= C又はT; s= G又はC)
【0098】
PCR増幅のための鋳型は、アクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum)コスミド43とした。コスミド43の産生は、上の実施例に記載される。
オリゴFPLS1及びFPLS3を使用して、鋳型としてのコスミド43及びTaq DNAポリメラーゼを使用する標準のPCR反応において、アクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum)からのgdmM相同体の内部フラグメントを増幅する。得られた793bp PCR産物を、SmaIを用いて線状にされたpUC19にクローン化し、プラスミドpLSS301をもたらした。クローン化された領域を、配列決定すると、gdmMに対して有意な相同性を有することが示された。(図5)。コスミド43(A.ミルム(A.mirum))から増幅された遺伝子フラグメントを、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種pretiosumのマクベシン生合成遺伝子クラスターのmbcM遺伝子の配列とアラインメントさせると、これらの配列の間の1bpのみの違いが示された(縮重するオリゴの配列によって決定される領域を除外する)(図5参照)。増幅された配列は、A.ミルム(A.mirum)のマクベシンクラスターのmcbM遺伝子由来のであると仮定された。プラスミドpLSS301を、EcoRI/HindIIIで消化し、このフラグメントを、EcoRI/HindIIIで消化されたプラスミドpKC1132(Biermanらの文献, 1992)にクローン化した。得られたプラスミド(pLSS308と呼ばれる)は、アプラマイシン耐性であり、A.ミルム(A.mirum) mbcM遺伝子の内部フラグメントを含有する。
【0099】
(2.2 アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)の形質転換)
プラスミドpUZ8002を内在する大腸菌(Escherichia coli)ET12567を、電気穿孔法によってpLSS308で形質転換し、接合のための大腸菌(E.coli)供与株を産生した。この株を使用して、無性生殖的接合によってアクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)を形質転換した(Matsushimaらの文献, 1994)。接合完了体を、Medium 4上に蒔き、28℃で保温した。24時間後、プレートを、50mg/Lのアプラマイシン及び25mg/Lのナリジクス酸で覆った。pLSS308は、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)中で複製することができないので、いずれのアプラマイシン耐性のコロニーも、プラスミドによって運ばれるmcbM内部フラグメントを介する相同的組み換えによって染色体のmbcM遺伝子に組み込まれたプラスミドを含有する形質転換体であることが予想された(図3)。これは、染色体上のmbcM遺伝子の先端を切り取られた2つのコピーをもたらす。形質転換体をPCR分析によって確認し、増幅されたフラグメントを配列決定した。
【0100】
コロニーを、Medium 4(50mg/Lのアプラマイシン及び25mg/Lのナリジクス酸を含む)上にパッチとして植えた。各パッチからの6mmの円形のプラグを使用して、10mLシード培地(Medium1の改変−1〜2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%コーンスティープソリッド、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)プラス50mg/Lのアプラマイシンを含有する個々の50mLファルコンチューブに接種した。これらの種培養物を、5cmの振幅で、200rpmで、28℃で2日間保温した。次いで、これらを使用して発酵培地(Medium 2)に接種し(5% v/v)、28℃で24時間、その後さらに26℃で5日間増殖させた。これらから、上述の標準のプロトコルに従って、代謝産物を抽出した。サンプルを、上述の標準のプロトコルを使用して、HPLCによって、マクベシン類似体の産生について評価した。
選択された生産的な分離株を、BIOT-3806と名付けた。
【0101】
(2.3 BIOT-3806由来の化合物の同定)
LCMSは、陽及び/又は陰イオンモードで作動するBruker Daltonics Esquire 3000+エレクトロスプレー質量分析計と組み合わせた、Agilent HP1100 HPLCシステムを使用して実施した。クロマトグラフィーは、以下のグラジエント溶離プロセスを使用して1mL/分の流速で溶出する、Phenomenex Hypercloneカラム(C18 BDS、3u、150×4.6mm)を通して達成した:T=0, 10%B; T=2, 10%B ;T=20, 100%B ;T=22, 100%B ;T=22.05, 10%B; T=25, 10%B。移動相A=水+0.1%ギ酸; 移動相B= 0.1%アセトニトリル+ギ酸。190nmと400nmとの間のUVスペクトルを記録し、クロマトグラムを210、254、及び276nmで抽出した。質量スペクトルは、100amuと1500amuとの間で記録した。
【0102】
【表8】
【0103】
(実施例3−新規化合物の産生及び単離)
(3.1 7-O-カルバモイルマクベシン前駆体の発酵及び単離)
50mg/Lのアプラマイシンを含むMedium 1で増殖させた後、BIOT-3806の増殖(vegetative)ストックを調製し、20% w/vグリセロール:10% w/vラクトース(蒸留水中)中に保存し、-80℃で保管した。増殖ストックを、50mg/Lアプラマイシンで補充したISP2培地(Medium 3)のプレート上へ戻し、28℃で48時間保温した。増殖培養株を、ISP2プレートから2つの寒天プラグ(直径5mm)を取り出すことによって調製し、これらを、50mg/Lのアプラマイシンを含有する250mLの振とうフラスコ内の30mL Medium 1に接種した。フラスコは、28℃、200rpm(振幅5cm)で48時間保温した。
増殖培養株を、2Lの振とうフラスコ中の200mlの産生培地(Medium 2)に、5% v/vで接種した。培養は、28℃で1日、それに続いて26℃、300rpm(振幅2.5cm)で5日行った。
【0104】
BIOT-3806(1 L、ピンク色)の発酵ブロスを、等体積の酢酸エチル(EtOAc)を用いて3回抽出した。合わせたEtOAc抽出物から、溶媒を真空中で取り除き、2.34gの褐色のオイルを得た。次いで、抽出物を、シリカゲル60を通したクロマトグラフィーにかけ、CHCl3とMeOHとの混合物(95:5)で最初に溶出し、それに続いてMeOH濃度を10%まで増大させ、いくつかの分画(分画あたり約250mL)を収集した。これらの分画を、HPLCを使用して、代謝物質の存在について分析した。新規化合物を含有する特定の分画(分画5; 溶媒の除去後の334mgの粗質量)を、水:アセトニトリル(80:20)から(50:50)の勾配を用いて21mL/分の流速で25分間にわたって溶出する、Phenomenex Luna C18-BDSカラム(21.2×250mm; 粒径5um)を通したクロマトグラフィーによってさらに精製した。分画を、分析用HPLCによって分析し、新規化合物を含有するものを合わせ、溶媒を取り除き、オフホワイトの固体(86mg)を得た。LCMS/MS、及びアセトン-d6中で行われた1D及び2D NMR実験による分析によって、この化合物は、7-O-カルバモイルマクベシン前駆体(14)と同定された。
【化5】
【0105】
(3.2 7-O-カルバモイル-15-ヒドロキシ-マクベシン前駆体の発酵及び単離)
50mg/Lアプラマイシンを含有するmedium 1中での増殖の後、BIOT-3806の増殖ストックを調製し、20% w/vグリセロール:10% w/vラクトース(蒸留水中)中に保存し、-80℃で保管した。増殖ストックを、50mg/Lアプラマイシンで補充したISP2培地(Medium 3)のプレート上へ戻し、28℃で48時間保温した。ISP2プレートから2つの寒天プラグ(直径5mm)を取り出し、50mg/Lアプラマイシンを含有する250mL振とうフラスコ中の30ml Medium 1にそれらを接種することによって、増殖培養株を調製した。フラスコは28℃、200rpm(振幅5cm)で48時間保温した。
増殖培養株を、2Lの振とうフラスコ中の200mL産生培地(medium 2)に、5% v/vで接種した。培養は、28℃で1日、それに続いて26℃、200rpm(振幅5cm)で5日行った。
【0106】
BIOT-3806(1.3L、クリーム色)の発酵ブロスを、等体積の酢酸エチル(EtOAc)を用いて3回抽出した。合わせた抽出物から、溶媒を真空中で取り除き、2.87gの褐色のオイルを得た。次いで、抽出物を、シリカゲル60を通したクロマトグラフィーにかけ、CHCl3及びMeOH混合物(95:5)で最初に溶出し、それに続いてMeOH濃度を10%まで増大させ、いくつかの分画(分画あたり約250mL)を収集した。これらの分画を、HPLCを使用して、代謝物質の存在について分析した。新規化合物を含有する特定の分画(分画7; 溶媒の除去後の752mgの粗質量)を、水:アセトニトリル(85:15)から(55:45)の勾配を用いて、21mL/分の流速で25分間にわたって溶出する、Phenomenex Luna C18-BDSカラム(21.2×250mm; 粒径5um)を通したクロマトグラフィーによってさらに精製した。分画を、分析用HPLCによって分析し、新規化合物を含有するものを合わせ、溶媒を取り除き、オフホワイトの固体(245.5mg)を得た。同定及び特徴付けのためにMS、及び1及び2D NMR実験を、アセトン-d6中で行った。LCMS/MSによる、及びアセトン-d6中で行われた1D及び2D NMRによる分析によって、この化合物は、7-O-カルバモイル-15ヒドロキシ-マクベシン前駆体(15)と同定された。
【化6】
【0107】
(3.3 同定及び特徴付け:)
様々なMS及びNMR実験、すなわちLCMS, MSMS, 1H, 13C, APT, COSY-45, HMQC, HMBCを実施した。これらのデータの完全かつ網羅的な参照によって、マクベシン前駆体の2つの類似体の大部分のプロトン及び炭素を帰属することができた。NMRの帰属を、表5に記載する。
【化7】
【表9】
【0108】
(実施例4−gdmM相同体mbcMがインフレーム欠失を有するアクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)株の産生)
(4.1 mbcMの下流の隣接領域と相同なDNAのクローニング)
オリゴBV145(配列番号:22)及びBV146(配列番号:23)を使用し、鋳型としてのコスミド52(実施例1から)及びPfu DNAポリメラーゼを使用する標準のPCR反応で、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum) (ATCC 31280)由来のDNAの1421bp領域を増幅する。増幅されたフラグメントのクローニングを助けるために、制限部位を導入するように、5'伸長を各オリゴ中に設計した(図7)。増幅されたPCR産物(PCRwv308、配列番号:20、図8A)は、mbcMの3'末端の33bp及びさらに下流の相同性の1368bpをコードしていた。この1421bpフラグメントを、SmaIを用いて線状にされたpUC19にクローン化し、プラスミドpWV308をもたらした。
【0109】
(4.2 mbcMの上流の隣接領域と相同なDNAのクローニング)
オリゴBV147(配列番号:24)及びBV148(配列番号:25)を使用して、鋳型としてのコスミド52(実施例1から)及びPfu DNAポリメラーゼを使用する標準のPCR反応で、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)(ATCC 31280)由来のDNAの1423bp領域を増幅した。増幅されたフラグメントのクローニングを助けるために、制限部位を導入するように、5'伸長を、各オリゴ中に設計した(図7)。増幅されたPCR産物(PCRwv309、配列番号:21、図8B)は、mbcMの5'末端の30bp及びさらに上流の相同性の1373bpをコードしていた。この1423bpフラグメントを、SmaIを用いて線状にされたpUC19にクローン化し、プラスミドpWV309をもたらした。
【0110】
【化8】
【0111】
次のクローニングステップのためのpUC19ポリリンカー中のPstI部位を利用するために、産物PCRwv308とPCRwv309を、同じ方向でpUC19にクローン化した。
pWV309由来の1443bp AvrII/PstIフラグメントを、pWV308の4073bp AvrII/PstIフラグメントにクローン化して、pWV310を作製した。したがって、pWV310は、AvrII部位で融合されたmbcMの隣接領域と相同なDNAをコードするSpeI/XbaIフラグメントを含有していた。この2816bp SpeI/XbaIフラグメントを、SpeIを用いて線状にされたpKC1132(Biermanらの文献, 1992)にクローン化し、pWV320を構築した。
【0112】
(4.3 アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)の形質転換)
プラスミドpUZ8002を内在する大腸菌(Escherichia coli)ET12567を電気穿孔法によってpWV320で形質転換し、接合のための大腸菌(E. coli)供与株を産生した。この株を使用して、無性生殖的接合によってアクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)を形質転換した(Matsushimaらの文献、1994)。接合完了体を、Medium 4上に蒔き、28℃で保温した。24時間後、プレートを、50mg/Lアプラマイシン及び25mg/Lナリジクス酸で覆った。pWV320は、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)中で複製することができないので、アプラマイシン耐性のコロニーは、プラスミドによって運ばれる、mbcMに隣接する相同領域の1つを介する相同的組換えによって染色体に組み込まれたプラスミドpWV320を含有する形質転換体であることが予想された。
【0113】
6つの接合完了体からゲノムDNAを単離し、消化し、サザンブロットによって分析した。このブロットによって、6つの分離株のうちの4つでは、組込みは、上流の相同領域内に生じ、6つの分離株のうちの2つでは、相同的組込みは、下流領域内に生じることが示された。上流領域内の相同的組込みから生じる1つの株(BIOT-3831と呼ばれる)を、二次交差のスクリーニングのために選択した。下流領域中の相同的組込みから生じる1つの株(BIOT-3832)も、二次交差のスクリーニングのために選択した。
【0114】
(4.4 二次交差のスクリーニング)
各株を、(50mg/Lのアプラマイシンで補充された)medium 4上にパッチとして植え、28℃で4日間増殖させた。各パッチの1cm2断片を使用して、50mLのファルコンチューブ内の、抗生物質を含まない、7mLの改変されたISP2(1L蒸留水中の、0.4%酵母エキス、1%麦芽エキス、0.4%デキストロース)に接種した。培養株を、2〜3日間増殖させ、次いで、(5%接種材料に対して)50mLファルコンチューブ内の別の7mlの改変されたISP2(上記参照)で継代培養させる。4〜5代の継代後、培養株を超音波処理し、連続的に希釈し、Medium 4上に蒔き、28℃で4日間保温した。次いで、単一のコロニーを、アプラマイシンを含有するMedium 4上と、抗生物質を含有しないMedium 4上へ、二重にパッチとして植え、プレートを、28℃で4日間保温した。抗生物質を含まないプレート上で増殖したが、アプラマイシンプレート上では増殖しなかったパッチを、+/-アプラマイシン・プレート上へ再びパッチとして植え、それらが抗生物質マーカーを失ったことを確認した。すべてのアプラマイシン感受性株からゲノムDNAを単離し、サザンブロットによって分析した。このステージでは、二次交差株の半分は、野生型に戻ったが、半分は、所望のmbcM欠失変異株を産生した。この突然変異株は、502アミノ酸のインフレーム欠失を伴うmbcMタンパク質をコードする(図9)。
【0115】
mbcM欠失変異体を、Medium 4上へパッチとして植え、28℃で4日間増殖させた。各パッチからの6mmの円形のプラグを使用して、10mLシード培地(medium 1を変更したもの−2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%コーンスティープソリッド、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)を含有する個々の50mLファルコンチューブに接種した。これらの種培養物を、2インチの振幅で200rpmで、28℃で2日間保温した。次いで、これらを使用して、産生培地(medium 2−5%グリセロール、1%コーンスティープソリッド、2%酵母エキス、2%リン酸二水素カリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.1%炭酸カルシウム)に接種した(10mlに0.5ml)。28℃で24時間、その後、さらに26℃で5日間増殖させた。等しい体積の酢酸エチルを加えることによって、これらの培養物から二次代謝産物を抽出した。遠心分離によって壊死組織片を取り除いた。上清を、清潔な管に移し、真空中で溶媒を取り除いた。サンプルを0.23mlのメタノール中で、それに続いて0.02mLの1%(w/v)FeCl3溶液を加えることによって再構成した。サンプルを、マクベシン類似体の産生について評価した。
上の実施例2.3に述べた方法を使用するLCMSによる化学分析によって、それらが同一の保持時間及び質量スペクトルを有することに基づいて、化合物14及び15の存在が明確に同定された。
【0116】
(4.5 BIOT-3872のプロトプラストを産生することによる個々のコロニーの選択)
プロトプラストは、以下の培地変更を伴うWeber及びLosickの文献 1988を適合させた方法を使用して、BIOT-3872から産生された;アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum) 培養株を、28℃で3日間、ISP2プレート(medium 3)上で増殖させ、5mm2の部分をこそげ取り、2mLの滅菌10%(w/v)グリシン水溶液で補充された40mlのISP2ブロスに接種した。プロトプラストは、Weber及びLosickの文献 1988に記載される通りに産生し、次いで、R2プレート上で再生させた(R2製法−スクロース103g、K2SO4 0.25g、MgCl2.6H2O 10.12g、グルコース10g、Difco Casaminoacids 0.1g、Difco Bacto寒天22g、800mLまでの蒸留水)。この混合物を、121℃で20分間、高圧蒸気殺菌法によって滅菌した。高圧蒸気殺菌法の後、高圧蒸気殺菌した以下の溶液を加えた;0.5% KH2PO4 10ml、3.68% CaCl2.2H2O 80ml、20% L-プロリン15ml、5.73% TES緩衝液(pH7.2)100mL、微量元素溶液(ZnCl2 40mg、FeCl3.6H2O 200mg、CuCl2.2H2O 10mg、MnCl2.4H2O 10mg、Na2B4O7.10H2O 10mg、(NH4)6Mo7O24.4H2O 10mg、1リットルまでの蒸留水)2mL、NaOH(1N)(非滅菌)5mL)。
【0117】
80の個々のコロニーを、MAMプレート(Medium 4)上へパッチとして植え、上の実施例2.3で述べた通りにマクベシン類似体の産生について分析した。大多数のプロトプラストは、親株と類似のレベルで産生されるパッチを産生した。試験された80のサンプル中15は、親株よりも有意に多い14及び15を産生した。最も優れた産生株、WV4a-33(BIOT-3870)は、親株よりも有意に高いレベルで14及び15を産生することが観察された。
【0118】
(実施例5−生物学データ−マクベシン類似体の抗癌活性のインビトロ評価)
単層増殖分析におけるヒトの腫瘍細胞株のパネルにおける試験化合物の抗癌活性に対するインビトロ評価を、改変されたヨウ化プロピジウム分析を使用する一般方法に記載される通りに実施した。
9つの細胞株についての結果を、下の表6に示す;それぞれの結果は、二重実験の中央値を表す。表7は、試験された38の細胞株パネル全体の化合物に対する平均IC70を示す(参照としてマクベシンが示される)。
【表10】
【表11】
【0119】
(実施例6−溶解度分析)
試験化合物の溶液(25mM)を、3〜5mgの一定分量を適切な量のDMSOに溶解することによって調製した。
一定分量(0.01mL)を、ガラスバイアル中の0.490mLのpH 7.3 PBSに加えた。各時点に対して、3つのPBSバイアルを、アンバーガラスバイアル中に調製した。6時間の時点については、DMSO中の三重の一定分量も、調製した。
【0120】
1、3、及び6時間で、分析のためにバイアルを取り出し、得られた0.5mMの溶液を、最高6時間振盪した。サンプルを、HPLC(0.025mL注入)によって分析した。化合物を、274nmでのピーク面積測定によって定量化した。
各時点での2% DMSO(PBS中)中の溶解度を、各クロマトグラムの総ピーク面積を、相当する6時間のDMSO溶液から作成されるクロマトグラムの平均総ピーク面積と比較することによって決定した。(DMSO溶液における平均の総ピーク面積は、0.5mM溶液と同等であるとみなされた)。これらの結果を、表8に示す。
【表12】
【0121】
(実施例7−Hsp90結合)
(等温滴定熱量測定及びKd決定)
酵母Hsp90を、1mM EDTA及び5mM NaClを含有する20mM Tris pH 7.5に対して透析し、次いで、同じ緩衝液(ただし2% DMSOを含有する)で0.008mMに希釈した。試験化合物を、50mMの濃度で、100% DMSOに溶解し、続いて、同じ緩衝液(Hsp90に関しては2% DMSOを含む)で0.1mMに希釈した。相互作用の熱は、MSCシステム(Microcal)で、30℃で測定し、細胞容積が1.458mLである0.100mMの各試験化合物の0.027mlの10の一定分量を、0.008mM酵母Hsp90に注入した。希釈熱は、2% DMSOを含有する緩衝液に試験化合物を注入することによって、別々の実験で決定され、補正データを非線形最小二乗曲線適合アルゴリズム(Microcal Origin)を使用して、3つの浮動的な変数:化学量論、結合定数及び相互作用のエンタルピーの変化と適合させた。これらの結果を表9に示す。
【表13】
【0122】
(実施例8−mbcMがインフレーム欠失を有し、それに加えてmbcMT1、mbcMT2、mbcP、及びmbcP450が欠失させられたアクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)株の産生)
(8.1 mbcMT2の下流の隣接領域と相同なDNAのクローニング)
オリゴls4del1(配列番号:29)及びls4del2a(配列番号:30)を使用して、鋳型としてのコスミド52(実施例1から)及びPfu DNAポリメラーゼを使用する標準のPCR反応で、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)(ATCC 31280)由来のDNAの1595bp領域を増幅した。増幅されたフラグメントのクローニングを助けるために、AvrII部位を導入するように、5'伸長を、オリゴls4del2a中に設計した(図10)。増幅されたPCR産物(1+2a、図11 配列番号:31)は、mbcMT2の3'末端の196bp及びさらに下流の相同性の1393bpをコードしていた。この1595bpフラグメントを、SmaIを用いて線状にされたpUC19にクローン化し、プラスミドpLSS1+2aをもたらした。
【化9】
【0123】
(8.2 mbcMの上流の隣接領域と相同なDNAのクローニング)
オリゴls4del3b(配列番号:32)及びls4del4(配列番号:33)を使用して、鋳型としてのコスミド52(実施例1から)及びPfu DNAポリメラーゼを使用する標準のPCR反応で、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)(ATCC 31280)由来のDNAの1541bp領域を増幅した。増幅されたフラグメントのクローニングを助けるために、AvrII部位を導入するように、5'伸長を、オリゴls4del3b中に設計した(図10)。増幅されたPCR産物(3b+4、図12、配列番号:34)は、mbcPの5'末端の~100bp及びさらに上流の相同性の~1450bpをコードしていた。この~1550 bpフラグメントを、SmaIを用いて線状にされたpUC19にクローン化し、プラスミドpLSS3b+4をもたらした。
【化10】
【0124】
次のクローニング・ステップのためのpUC19ポリリンカー中のHindIII及びBamHI部位を利用するために、産物1+2a及び3b+4を、pUC19にクローン化した。
pLSS1+2a由来の1621bp AvrII/HindIIIフラグメント及びpLSS3b+4由来の1543bp AvrII/BamHIフラグメントを、pKC1132の3556bp HindIII/BamHIフラグメントにクローン化して、pLSS315を作製した。したがって、pLSS315は、AvrII部位で融合された所望の4つのORF欠失領域の隣接領域と相同なDNAをコードするHindIII/BamHIフラグメントを含有していた(図7)。
【0125】
(8.3 pLSS315を用いるBIOT-3870の形質転換)
プラスミドpUZ8002を内在する大腸菌(Escherichia coli)ET12567を、電気穿孔法によってpLSS315で形質転換させ、接合のための大腸菌(E. coli)供与体株を産生した。この株を、無性生殖的接合によってBIOT-3870を形質転換するために使用した(Matsushimaらの文献, 1994)。接合完了体を、MAM培地(1%小麦デンプン、0.25%コーンスティープソリッド、0.3%酵母エキス、0.3%炭酸カルシウム、0.03%硫酸鉄、2%寒天)上に蒔き、28℃で保温した。24時間後、プレートを、50mg/Lアプラマイシン及び25mg/Lナリジクス酸で覆った。pLSS315は、BIOT-3870中で複製することができないので、アプラマイシン耐性のコロニーは、プラスミドによって運ばれる相同領域を介する相同的組換えによって染色体に組み込まれたプラスミドを含有する形質転換体であることが予想された。
【0126】
(8.4 二次交差についてのスクリーニング)
BIOT-3870:pLSS315の3つの一次形質転換体を、二次交差についてスクリーニングをするために継代培養するために選択した。
各株を、(50mg/Lのアプラマイシンで補充された)MAM培地上にパッチとして植え、28℃で4日間増殖させた。2つの6mmの円形のプラグを使用して、250mlコニカルフラスコ中の30mLのISP2(0.4%酵母エキス、1%麦芽エキス、0.4%デキストロース(抗生物質で補充されない))に接種した。培養株を、2〜3日間増殖させ、次いで、(5%接種材料を)250mlコニカルフラスコ内の30mLのISP2で継代培養させた。4〜5代の継代培養の後、培養株を、実施例3.6に記載される通りにプロトプラスト化し、プロトプラストを連続的に希釈し、再生培地(実施例3.6参照)に蒔き、28℃で4日間保温した。次いで、単一のコロニーを、アプラマイシンを含有するMAM培地上と、抗生物質を含有しないMAM培地上へ、二重にパッチとして植え、プレートを、28℃で4日間保温した。抗生物質を含まないプレート上で増殖したが、アプラマイシンプレート上では増殖しなかった、クローン番号1(番号32〜37)から得られる7つのパッチ及びクローン番号3から得られる4つのパッチ(番号38〜41)を、+/-アプラマイシン・プレート上へ再びパッチとして植え、それらが抗生物質のマーカーを失ったことを確認した。
【0127】
マクベシン類似体の産生を、一般方法で記載した通りに実施した。分析は、一般方法及び実施例2で記載した通りに実施した。パッチ33、34、35、37、39、及び41については、化合物14は、親株BIOT-3870に匹敵する収率で産生され、化合物15の産生は、観察されなかった。この結果は、所望の突然変異株が、mbcMの本来の欠失に加えて、遺伝子mbcP、mbcP450、mbcMT1、及びmbcMT2を含有するマクベシンクラスターの3892bpの欠失を有することを示す。
【0128】
(実施例9−生物学データ−化合物14の、標準の細胞傷害性薬剤マイトマイシンC、イホスファミド、シクロヘキシルクロロエチルニトロソウレア(CCNU)、ミトキサントロン、及びビンデシンとの抗癌的組み合わせのインビトロ評価)
単層増殖分析における、腫瘍細胞株DU145に対する、標準の細胞傷害性薬剤と組み合わせられる場合の、抗癌活性に関する14のインビトロ評価を、改変されたヨウ化プロピジウム分析を使用する一般方法に記載される通りに実施した。4つの別々の濃度の14(マイトマイシンCについては0〜80nM、イホスファミド、CCNU、ミトキサントロン、及びビンデシンについては0〜160nM)を、10種の濃度の標準の薬剤と共に使用した。相対的な細胞増殖割合である処理/対照(%T/C)をプロットし、これを使用して、図13〜17に示されるグラフを描いた。次いで、これらのグラフを使用して、表10〜11に示されるIC70値を算出した。
【0129】
【表14】
【表15】
このデータは、標準の細胞傷害性薬剤(アルキル化剤マイトマイシンC、イホスファミド、及びCCNU、トポイソメラーゼII阻害剤ミトキサントロン、並びに分裂抑制剤ビンデシンなど)の効果を、化合物14の添加によって向上させることができることを示す。マイトマイシンC、イホスファミド、CCNU、ミトキサントロン、及びビンデシンなどの細胞傷害性薬剤の有用性は、その毒性によって、限られることが知られており、これらは通常、その最大耐量に近い高レベルで治療に用いられる。したがって、本発明の化合物14及び他の化合物は、治療に使用される細胞傷害性薬剤(マイトマイシンC、イホスファミド、CCNU、ミトキサントロン、ビンデシンなど)の量を控えることにおいて有用な効果を有するはずであると推測することができる。したがって、細胞傷害性薬剤単独又は細胞傷害性薬剤の別の細胞傷害性薬剤との組み合わせを用いて達成されるよりも、より大きな治療有効性、又はより小さな副作用を伴う有効性を達成することが可能であり得る。
【0130】
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【0143】
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Takahashi, A., Casais, C., Ichimura K. 及びShirasu, K.の文献 (2003)「HSP90は、RAR1及びSGT1と相互作用し、アラビドプシスにおけるRPS2介在性の耐病性に不可欠である (HSP90 interacts with RAR1 and SGT1 and is essential for RPS2-mediated disease resistance in Arabidopsis)」(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 20:11777-11782)
Tanida, S., Hasegawa, T. 及びHigashide E.の文献 (1980)「マクベシンI及びII、新規の抗腫瘍抗生物質、I.産生生物、発酵及び抗菌活性 (Macbecins I and II, New Antitumor antibiotics. I. Producing organism, fermentation and antimicrobial activities)」(J Antibiotics 33:199-204)
Tian, Z.-Q., Liu, Y., Zhang, D., Wang, Z.らの文献 (2004)「新規の17-アミノゲルダナマイシン誘導体の合成及び生物的活性 (Synthesis and biological activities of novel 17-aminogeldanamycin derivatives)」(Bioorganic and Medicinal Chemistry 12:5317-5329)
Uehara, Y.の文献 (2003)「天然物起源のHsp90阻害剤 (Natural product origins of Hsp90 inhibitors)」(Current Cancer Drug Targets 3:325-330)
【0144】
Vasilevskaya, I.A., Rakitina, T.V. 及びO'Dwyer, P.J.の文献 (2003)「ゲルダナマイシン及びその17-アリルアミノ-17-デメトキシ類似体は、ヒトの大腸腺癌細胞におけるシスプラチンの作用:相互作用のベースとしての差別的なカスパーゼ活性化に拮抗する (Geldanamycin and its 17-Allylamino-17-Demethoxy analogue antagonize the action of cisplatin in human colon adenocarcinoma cells: differential caspase activation as a basis of interaction)」(Cancer Research 63: 3241-3246)
Watanabe, K., Okuda, T., Yokose, K., Furumai, T. 及びMaruyama, H.H.の文献 (1982)「アクチノシンネマ・ミルム、ノカルジシン抗生物質の新規産生株 (Actinosynnema mirum, a new producer of nocardicin antibiotics)」(J. Antibiot. 3:321-324)
Weber, J.M., Losick, R.の文献 (1988)「マップエリスロマイシン耐性に対する染色体組込み型ベクター及びサッカロポリスポラ・エリスラエア(ストレプトマイセス・エリスラエウス)の産生遺伝子の使用 (The use of a chromosome integration vector to a map erythromycin resistance and production genes in Sacharopolyspora erythraea (Streptomyces erythraeus))」(Gene 68(2), 173-180)
Wegele, H., Muller, L. 及びBuchner, J.の文献 (2004)「Hsp70及びHsp90-タンパク質の折畳みのための中継チーム (Hsp70 and Hsp90-a relay team for protein folding)」(Rev Physiol Biochem Pharmacol 151:1-44)
Wenzel, S.C., Gross, F, Zhang, Y., Fu, J., Stewart, A.F. 及びMuller, Rの文献 (2005)「シュードモナスにおけるRed/ETリコンビニアリングを介する粘液細菌の天然物構築系統の異種発現 (Heterologous expression of a myxobacterial natural products assembly line in Pseudomonads via Red/ET recombineering)」(Chemistry & Biology 12: 249-356)
【0145】
Whitesell, L., Mimnaugh, E.G., De Costa, B., Myers, C.E. 及びNeckers, L.M.の文献 (1994)「ベンゾキノン・アンサマイシンによる熱ショックタンパク質HSP90-pp60v-src異種タンパク質複合体形成の抑制:腫瘍化転換におけるストレスタンパク質の不可欠な役割 (Inhibition of heat shock protein HSP90-pp60v-src heteroprotein complex formation by benzoquinone ansamycins: Essential role for stress proteins in oncogenic transformation)」(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 8324-8328)
Winklhofer, K.F., Heller, U., Reintjes, A. 及びTatzelt J.の文献 (2003)「複雑な糖鎖形成の抑制は、PrPscの形成を増大させる (Inhibition of complex glycosylation increases the formation of PrPsc)」(Traffic 4:313-322)
Workman P.の文献 (2003)「Hsp90分子シャペロン阻害剤の薬理学的評価を検査すること:薬物動態と薬力学との間の関係を明らかにすること (Auditing the pharmacological accounts for Hsp90 molecular chaperone inhibitors: unfolding the relationship between pharmacokinetics and pharmacodynamics)」(Molecular Cancer Therapeutics 2:131-138)
Workman, P. 及びKaye, S.B.の文献 (2002)「基礎的癌研究を新規の癌治療に置き換えること (Translating basic cancer research into new cancer therapeutics)」(Trends in Molecular Medicine 8: S1-S9)
Young, J.C.; Moarefi, I. 及びHartl, U.の文献 (2001)「Hsp90:特化されてはいるが本質的なタンパク質折りたたみツール (Hsp90: a specialized but essential protein folding tool)」(J. Cell. Biol. 154:267-273)
【0146】
本出願に引用された特許及び特許出願を含めたすべての引用文献は、可能な限り最大の範囲まで、参照により本明細書に組み込むものとする。
本明細書及びこれに続く特許請求の範囲全体を通して、文脈が他に必要としない限り、単語「含む(comprise)」、並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変化形は、所定の整数又はステップあるいは整数の群の包含を意味するが、他のいずれの整数又はステップ、あるいは整数又はステップの群も除外されないことが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】第1の推定上の酵素を含まない中間体、マクベシン前駆体、及びマクベシンへのpost-PKSプロセシングを示す、マクベシンの生合成の表示。この図におけるPKSプロセシングステップの列挙は、事象の順序を表すことを意図するものではない。以下の略語は、クラスター内の特定の遺伝子に対して使用される:AL0−AHBAローディングドメイン; ACP−アシルキャリアータンパク質; KS−β-ケトアシルシンターゼ; AT−アシルトランスフェラーゼ; DH−デヒドラターゼ; ER−エノイルレダクターゼ; KR−β-ケトレダクターゼ。
【図2】マクベシンを与えるマクベシン前駆体の、post-PKSプロセシングの部位の描写。
【図3】mbcM遺伝子破壊をもたす相同的組み換えによって、プラスミドpLSS308が、その染色体に組み込まれる、操作された株BIOT-3806の産生の図示。
【0148】
【図4】gdmM(配列番号:1)及びriforf19(配列番号:2)の配列アラインメント。縮重するオリゴの結合領域には、下線を引いてある。
【図5】gdmM(配列番号:1)、mbcMフラグメント(配列番号:3, A.ミルム(A.mirum))、及びmbcM遺伝子(配列番号:4, A.プレティオスム(A. pretiosum))の配列アラインメント。縮重するオリゴの結合領域には、下線を引いてある。
【図6】A:gdmMの翻訳によって産生されるGdmMのタンパク質配列(配列番号:5)、B:riforf19の翻訳によって産生されるRiforf19のタンパク質配列(配列番号:6);これは、タンパク質配列間の類似性を実証する。
【図7】実施例4に記載したmbcMのインフレーム欠失の構築の図示。
【図8】A−PCR産物PCRwv308の配列(配列番号:20)を示す。B−PCR産物PCRwv309の配列(配列番号:21)を示す
【0149】
【図9】A:実施例4に記載した通りにmbcM内の502アミノ酸のインフレーム欠失から得られるDNA配列(配列番号:26及び27)を示す。キー:1〜21bpは、3-アミノ5-ヒドロキシ安息香酸生合成のホスファターゼの3'末端をコードし、136〜68bpは、mbcM欠失タンパク質をコードし、161〜141bpは、mbcFの3'末端をコードする。B:タンパク質のアミノ酸配列(配列番号:28)を示す。このタンパク質配列は、図9Aに示される相補鎖から産生される。
【図10】mbcP、mbcP450、mbcMT1、及びmbcMT2遺伝子が、mbcMの欠失に伴ってインフレーム欠失させられたアクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)株の産生の図示。
【図11】増幅されたPCR産物1+2aの配列(配列番号:31)。
【図12】増幅されたPCR産物3b+4の配列(配列番号:34)。
【0150】
【図13】0〜80nMの化合物14と、0〜3μg/mlのマイトマイシンCとの組み合わせの、インビトロにおける、癌細胞株DU145の増殖に対する効果を示すグラフ。
【図14】0〜160nMの化合物14と、0〜100μg/mlのシクロヘキシルクロロエチルニトロソウレア(CCNU)との組み合わせの、インビトロにおける、癌細胞株DU145の増殖に対する効果を示すグラフ。
【図15】0〜160nMの化合物14と、0〜100μg/mlのイホスファミドとの組み合わせの、インビトロにおける、癌細胞株DU145の増殖に対する効果を示すグラフ。
【図16】0〜160nMの化合物14と、0〜10μg/mlのミトキサントロンとの組み合わせの、インビトロにおける、癌細胞株DU145の増殖に対する効果を示すグラフ。
【図17】0〜160nMの化合物14と、0〜1のμg/mlのビンデシンとの組み合わせの、インビトロにおける、癌細胞株DU145の増殖に対する効果を示すグラフ。
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
90kDa熱ショックタンパク質(Hsp90)は、タンパク質の折りたたみ及び会合に関与する豊富な分子シャペロンであり、その多くはシグナル伝達経路に関与する(総説については、Neckersの文献, 2002; Sreedharらの文献, 2004a; Wegeleらの文献, 2004、及び本明細書中の引用文献を参照のこと)。これまで、こうしたいわゆるクライアントタンパク質のうちの約50種が同定されており、これには、ステロイド受容体、非受容体チロシンキナーゼ(例えばsrcファミリー)、サイクリン依存性キナーゼ(例えばcdk4及びcdk6)、嚢胞性膜貫通調節因子(cystic transmembrane regulator)、一酸化窒素合成酵素などが含まれる(Donze及びPicardの文献, 1999; McLaughlinらの文献, 2002; Chiosisらの文献, 2004; Wegeleらの文献, 2004;http://www.picard.ch/downloads/Hsp90interactors.pdf)。さらに、Hsp90は、ストレス応答、及び突然変異の影響に対する細胞の防御において重要な役割を果たす(Bagatell及びWhitesellの文献, 2004; Chiosisらの文献, 2004)。Hsp90の機能は、複雑であり、それには、動的な多酵素複合体の形成が関与する(Bohenの文献, 1998;Liuらの文献, 1999;Youngらの文献, 2001;Takahashiらの文献, 2003;Sreedharらの文献, 2004;Wegeleらの文献, 2004)。Hsp90は、クライアントタンパク質の分解、細胞周期調節不全/又は正常化、及びアポトーシスをもたらす阻害因子(Fangらの文献, 1998; Liuらの文献, 1999; Blagosklonnyの文献, 2002; Neckersの文献, 2003; Takahashiらの文献, 2003; Beliakoff及びWhitesellの文献, 2004; Wegeleらの文献, 2004)の標的である。より最近、Hsp90は、腫瘍浸潤のための重要な細胞外メディエーターと特定された(Eustaceらの文献, 2004)。Hsp90は、癌治療のための新規の主要な治療標的と特定され、これは、Hsp90機能についての精力的かつ詳細な研究(Blagosklonnyらの文献, 1996; Neckersの文献, 2002; Workman及びKayeの文献, 2002; Beliakoff及びWhitesellの文献, 2004; Harrisらの文献, 2004; Jezらの文献, 2003; Leeらの文献, 2004)、及びハイスループットスクリーニング分析の開発(Carrerasらの文献, 2003; Rowlandsらの文献, 2004)に反映されている。Hsp90阻害因子としては、アンサマイシン、マクロライド、プリン、ピラゾール、クマリン抗生物質などの化合物クラスが挙げられる(総説については、Bagatell及びWhitesellの文献, 2004; Chiosisらの文献, 2004, 及び本明細書中の引用文献を参照のこと)。
【0002】
ベンゼノイドアンサマイシンは、芳香族環構造の側鎖に連結された可変長の脂肪族環によって特徴付けられる、広いクラスの化学構造である。天然に存在するアンサマイシンとしては、マクベシン及び18,21-ジヒドロマクベシン(それぞれ、別名マクベシンI及びマクベシンII)(1及び2; Tanidaらの文献, 1980)、ゲルダナマイシン(3; DeBoerらの文献, 1970; DeBoer及びDietzの文献, 1976; WO 03/106653, 及び本明細書中の引用文献)、及びハービマイシンファミリー(4; 5, 6, Omuraらの文献, 1979、Iwaiらの文献, 1980, 及びShibataらの文献, 1986a, WO 03/106653, 及び本明細書中の引用文献)が挙げられる。
【化1】
【0003】
アンサマイシンは元々、その抗菌及び抗ウイルス活性について同定されたが、最近、抗癌剤としてのその潜在的有用性が、より大きな関心になりつつある(Beliakoff及びWhitesellの文献, 2004)。多くのHsp90阻害因子が、目下、臨床試験において評価されている(Csermely及びSotiの文献, 2003; Workmanの文献, 2003)。特に、ゲルダナマイシンは、ナノモル効力と、異所性のプロテインキナーゼ依存性の腫瘍細胞に対する明らかな特異性とを有する(Chiosisらの文献, 2003; Workmanの文献, 2003)。
【0004】
Hsp90阻害因子を用いる治療が、放射線による腫瘍細胞死の誘発を増強することが示されており、Hsp90阻害因子の細胞傷害性薬剤との組み合わせによる細胞殺滅能力の増大(例えば乳癌、慢性骨髄性白血病、及び肺非小細胞癌)も実証されている(Neckersの文献, 2002; Beliakoff及びWhitesellの文献, 2004)。抗血管新生活性に対する潜在的可能性も、関心が持たれている:Hsp90クライアントタンパク質HIF-1αは、固形腫瘍の進行において重要な役割を果たす(Hurらの文献, 2002; Workman及びKayeの文献, 2002; Kaurらの文献, 2004)。
【0005】
Hsp90阻害因子はまた、免疫抑制剤としても機能し、Hsp90抑制後のいくつかのタイプの腫瘍細胞の補体誘発性溶解(complement-induced lysis)に関与する(Sreedharらの文献, 2004)。
潜在的な抗マラリア薬としてのHsp90阻害因子の使用も論じられている(Kumarらの文献, 2003)。さらに、ゲルダナマイシンが、グリコシル化哺乳動物プリオンタンパク質PrPc複合体の形成を妨げることが示されている(Winklhoferらの文献, 2003)。
【0006】
上で述べた通り、アンサマイシンは、潜在的な抗癌及び抗B細胞腫瘍化合物として関心が持たれているが、現在利用できるアンサマイシンは、不十分な薬理学的又は医薬品特性を示す。例えば、これらは、不十分な水溶性、不十分な代謝安定性、不十分な生体利用効率、又は不十分な製剤能を示す(Goetzらの文献, 2003; Workmanの文献 2003; Chiosisの文献 2004)。ハービマイシンA及びゲルダナマイシンは、その強い肝毒性に起因して、臨床試験の候補としては不十分であると特定され(総説 Workmanの文献, 2003)、ゲルダナマイシンは、肝毒性に起因して、第1相臨床試験から取り下げられた(Supkoらの文献, 1995, WO 03/106653)。
【0007】
ゲルダナマイシンは、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)の培養濾液から単離され、原生動物に対するインビトロでの強い活性と、細菌及び真菌に対する弱い活性を示す。1994年に、ゲルダナマイシンのHsp90との会合が示された(Whitesellらの文献, 1994)。ゲルダナマイシンの生合成遺伝子クラスターが、クローン化及び配列決定された(Allen及びRitchieの文献, 1994; Rascherらの文献, 2003; WO 03/106653)。DNA配列は、NCBI受入番号AY179507で入手できる。S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)亜種ドゥアマイセティカス(duamyceticus)から得られる遺伝子操作されたゲルダナマイシン産生株の単離、及び4,5-ジヒドロ-7-O-デスカルバモイル−7-ヒドロキシゲルダナマイシン及び4,5-ジヒドロ-7-O-デスカルバモイル-7-ヒドロキシ-17-O-デメチルゲルダナマイシンの単離は、最近記載されている(Hongらの文献, 2004)。ハービマイシン産生株ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)AM-3672にゲルダナマイシンを供給することによって、化合物15-ヒドロキシゲルダナマイシン、三環系ゲルダナマイシン類似体KOSN-1633、及びメチル-ゲルダナマイシネート(methyl-geldanamycinate)が単離された(Huらの文献, 2004)。S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)K279-78からは、2つの化合物17-ホルミル-17-デメトキシ-18-O-21-O-ジヒドロゲルダナマイシン及び17-ヒドロキシメチル-17-デメトキシゲルダナマイシンが単離された。S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)K279-78は、ハービマイシン産生株ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)AM-3672由来の様々な遺伝子を含有する44kbpインサートを有するコスミドpKOS279-78を含有するS.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)NRRL 3602である(Huらの文献, 2004)。アシル基転移酵素(AT)ドメインの置換は、ゲルダナマイシン生合成クラスターのポリケチド合成酵素の4つのモジュールにおいて行われている(Patelらの文献, 2004)。AT置換は、モジュール1、4、及び5において実施され、十分にプロセシングされた類似体14-デスメチル-ゲルダナマイシン、8-デスメチル-ゲルダナマイシン、及び6-デスメトキシ-ゲルダナマイシン、並びに十分にはプロセシングされていない4,5-ジヒドロ-6-デスメトキシ-ゲルダナマイシンがもたらされる。モジュール7 ATの置換は、3つの2-デスメチル化合物、KOSN1619、KOSN1558、及びKOSN1559の産生をもたらし、このうちの1つ(KOSN1559)であるゲルダナマイシンの2-デメチル-4,5−ジヒドロ-17-デメトキシ-21-デオキシ誘導体は、ゲルダナマイシンよりも4倍大きな結合親和性、また17-AAGよりも8倍大きな結合親和性で、Hsp90と結合する。しかし、これは、SKBr3を使用するIC50測定の改善には反映されない。別の類似体である、KOS-1806と呼ばれる新規の非ベンゾキノイドゲルダナマイシンは、モノフェノール構造を有する(Rascherらの文献, 2005)。KOS-1806については、活性データは示されなかった。
【0008】
1979年に、アンサマイシン系抗生物質のハービマイシンAが、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)株No. AM-3672の培養液から単離され、その強力な殺草力に従って命名された。抗腫瘍活性は、ラウス肉腫ウイルス(RSV)の温度感受性突然変異体で感染させたラット腎臓系統の細胞を、こうした細胞の形質転換された形態を戻す薬物をスクリーニングするために用いて立証された。(総説については、Ueharaの文献, 2003を参照のこと)。ハービマイシンAは、主として、Hsp90シャペロンタンパク質との結合を介して作用するとみなされたが、保存されたシステイン残基に対する直接的な結合及びそれに続くキナーゼの不活性化も論じられている(Ueharaの文献, 2003)。
【0009】
化学的誘導体が単離され、ベンゾキノン核のC19に、変更された置換基を有する化合物及び環(ansa)鎖におけるハロゲン化化合物は、ハービマイシンAよりも低い毒性と高い抗腫瘍活性を示した(Omuraらの文献, 1984; Shibataらの文献, 1986b)。ハービマイシン生合成遺伝子クラスターの配列は、WO 03/106653中、及び最近の刊行物中に特定されている(Rascherらの文献, 2005)。
【0010】
その抗真菌及び抗原虫活性によって特定されるアンサマイシン化合物であるマクベシン(1)及び18,21-ジヒドロマクベシン(2)(C-14919E-1及びC-14919E-1)は、ノカルジア(Nocardia)種No. C-14919(アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum) ATCC 31280)の培養上清から単離された(Tanidaらの文献, 1980; Muroiらの文献, 1980; Muroiらの文献, 1981; 米国特許第4,315,989号, 及び米国特許第4,187,292号)。18,21-ジヒドロマクベシンは、ジヒドロキノン形の芳香核を含有することによって特徴付けられる。マクベシンと18,21-ジヒドロマクベシンは、マウス白血病P388細胞株などの癌細胞株に対して、類似の抗菌及び抗腫瘍活性を持つことが示された(Onoらの文献, 1982)。逆転写酵素及び末端デオキシヌクレオチド転移酵素活性は、マクベシンによって阻害されなかった(Onoらの文献, 1982)。マクベシンのHsp90抑制機能は、文献中に報告されている(Bohenの文献, 1998; Liuらの文献, 1999)。マクベシン及び18,21-ジヒドロマクベシンを、微生物の培養液に加えた後、特定の位置(1又は複数)にメトキシ基ではなくヒドロキシ基を有する化合物に転換することは、米国特許第4,421,687号及び米国特許第4,512,975号に記載されている。
【0011】
化合物TAN-420AからEは、多種多様な土壌微生物のスクリーニング中に、ストレプトマイセス属に属する産生株から特定された(7-11, EP 0 110 710)。
【化2】
【0012】
2000年に、ストレプトマイセス種S6699の細胞培養株からの、ゲルダナマイシンに関連する非ベンゾキノンアンサマイシン代謝産物レブラスチン(reblastin)の単離、及び慢性関節リウマチの治療におけるその潜在的治療的価値が記載された(Steadらの文献, 2000)。
化学的に無関係なベンゾキノンアンサマイシンとは異なるさらなるHsp90阻害因子は、Radicicol(ラディシコール)(モノルデン(monorden))である。これは当初、真菌モノスポリウム・ボノルデン(Monosporium bonorden)からその抗真菌活性について発見され(総説については、Ueharaの文献, 2003を参照のこと)、その構造は、ネクトリア・ラディシコラ(Nectria radicicola)から単離される14員のマクロライドと同一であることが判明した。その抗真菌、抗菌、抗原生動物、及び細胞毒性活性に加えて、これは、その後、Hsp90シャペロンタンパク質の阻害因子として同定された(総説については、Ueharaの文献, 2003; Schulteらの文献, 1999を参照のこと)。ラディシコール(Hurらの文献, 2002)及びその半合成誘導体(Kurebayashiらの文献、2001)の抗血管新生活性も記載されている。
【0013】
最近の関心は、アンサマイシン抗癌化合物の新規産生物としての、ゲルダナマイシンの17-アミノ誘導体(Bagatell及びWhitesellの文献、2004)、例えば17-(アリルアミノ)-17-デスメトキシゲルダナマイシン(17AAG, 12)(Hosteinらの文献, 2001; Neckersの文献, 2002; Nimmanapalliらの文献, 2003; Vasilevskayaらの文献, 2003; Smith-Jonesらの文献, 2004)、及び17-デスメトキシ-17-N,N-ジメチルアミノエチルアミノ-ゲルダナマイシン(17-DMAG, 13)(Egorinらの文献, 2002; Jezらの文献, 2003)に集中している。近年、ゲルダナマイシンを17位で誘導体化し、17-ゲルダナマイシンアミド、カルバメート、尿素、及び17-アリールゲルダナマイシンがもたらされた(Le Brazidecらの文献, 2003)。60種以上の17-アルキルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン類似体のライブラリが報告されており、Hsp90に対するその親和性、及び水溶性について試験されている(Tianらの文献, 2004)。ゲルダナマイシンの毒性を低下させるさらなる手法は、腫瘍ターゲティングモノクローナル抗体への結合による、悪性細胞への活性なゲルダナマイシン化合物の選択的標的化及び送達である(Mandlerらの文献, 2000)。
【化3】
【0014】
こうした誘導体の多くは、低下させられた肝毒性を示すが、水溶性は、依然として限られている。例えば、17-AAGは、可溶化担体(例えばCremophore(登録商標)、DMSO-卵レシチン)の使用を必要とするが、これ自体は、患者によっては副作用をもたらす可能性がある(Huらの文献, 2004)。
【0015】
アンサマイシンクラスのHsp90阻害因子の大部分は、共通構造部分:タンパク質、グルタチオンなどの求核分子と容易に共有結合を形成することができるMichael受容体であるベンゾキノンを有する。ベンゾキノン部分はまた、ジヒドロキノンとの酸化還元平衡を受け、その間、活性酸素が形成され、それによって、さらに不特定の毒性が生じる(Dikalovらの文献, 2002)。例えば、ゲルダナマイシンを用いる治療によって、誘発性スーパーオキシド産生が誘導される可能性がある(Sreedharらの文献, 2004a)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、癌及び/又はB細胞腫瘍の治療において有用であり得る、ベンゾキノン部分を欠く新規のアンサマイシン誘導体を特定する必要性が残されている。こうしたアンサマイシンは、投与のために、水溶性が向上され、薬理学的プロフィールが向上され、副作用プロフィールが低下されていることが好ましい。本発明は、親の産生株を遺伝子操作することによって産生される新規のアンサマイシン類似体を開示する。特に、本発明は、現在入手できるアンサマイシンと比較すると、概して医薬品特性が向上された21-デオキシマクベシン類似体を開示する。特に、これらは、以下の特性のうちの1以上に対する改善を示す:毒性、グルタチオンなどの求核分子との結合、水溶性、代謝安定性、生体利用効率、及び製剤能。21-デオキシマクベシン類似体は、改善された毒性及び/又は水溶性を示すことが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
本発明の発明者らは、マクベシンの生合成を担う遺伝子クラスターをクローン化し、解明するために、意義深い研究を行った。この見通しを伴って、ベンゾキノン部分を欠く新規の誘導体を産生するために、ベンゾキノン部分の産生を担う遺伝子を、例えばmbcMへの組込み、mbcM遺伝子の全部又は一部を含めたマクベシンクラスターの領域の標的化された欠失、任意にそれに続く遺伝子(1又は複数)の挿入によって、あるいはMbcMを非機能的にする他の方法(例えば化学的な阻害、部位特異的突然変異誘発、又は例えばUVによる細胞の突然変異誘発)によって、特異的に標的化した。任意に、マクベシンのpost-PKS改変を担うさらなる遺伝子の標的化された不活化又は欠失を行うこともできる。さらに、mbcMでないいくつかのこうした遺伝子を、細胞に再導入することもできる。post-PKS遺伝子の任意の標的化は、様々な機構を介して、例えば、組込み、post-PKS遺伝子のすべて又はいくつかを含めたマクベシンクラスター領域の標的化された欠失、任意にそれに続く遺伝子(1又は複数)の挿入、あるいはpost-PKS遺伝子又はそのコードされる酵素を非機能的にする他の方法(例えば、化学的な阻害、部位特異的突然変異誘発、又は例えばUV放射の使用による細胞の突然変異誘発)によって、行うことができる。その結果、本発明は、21-デオキシマクベシン類似体、こうした化合物の調製のための方法、及びこうした化合物を医薬品中で、あるいは、さらなる化合物の産生における中間体として使用するための方法を提供する。
したがって、第1の態様では、本発明は、C21位置に通常存在する酸素原子を欠くマクベシンの類似体を提供する。マクベシンでは、この酸素原子は、ケト基として存在し、18,21-ジヒドロマクベシンでは、この酸素原子は、ヒドロキシル基として存在する。
【0018】
より具体的な態様では、本発明は、下記式(I)の21-デオキシマクベシン類似体、又は医薬として許容し得るその塩を提供する:
【化4】
(式中:
R1は、H、OH、又はOCH3を表し、
R2は、H又はCH3を表し、
R3及びR4は、どちらもHを表す、又は共に結合を表し(すなわち、C4からC5は、二重結合であり)、
R5は、H又は-C(O)-NH2を表す)。
【0019】
21-デオキシマクベシン類似体は、本明細書では「本発明の化合物」とも称され、こうした用語は、本明細書では同義的に使用される。
上記の構造は、代表的な互変異性体を示し、本発明は、式(I)の化合物のすべての互変異性体(例えば、エノール化合物が示される場合にはケト化合物、その逆も同様)を包含する。
上に示した通り、本発明は、構造(I)によって定義される化合物のすべての立体異性体を包含する。
さらなる態様では、本発明は、医薬としての使用のための、式(I)の化合物などの21-デオキシマクベシン類似体、又は医薬として許容し得るその塩を提供する。
【0020】
(定義)
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、1つ又は2つ以上の(すなわち少なくとも1つの)文法的対象の冠詞を指すために使用される。例えば、「an類似体」は、1つの類似体又は2つ以上の類似体を意味する。
本明細書では、用語「類似体(1又は複数)」は、(ある原子の別の原子による置換において、又は特定の官能基の存在又は非存在において見られるような)、もう片方と構造的に類似であるが、組成がわずかに異なる化合物を指す。
【0021】
本明細書では、用語「相同体(1又は複数)」は、異なるマクベシン産生株由来の別のマクベシン生合成クラスター由来の本明細書で開示される遺伝子の相同体又は遺伝子によってコードされるタンパク質の相同体、あるいは別のアンサマイシン生合成遺伝子クラスター由来の(例えばゲルダナマイシン、ハービマイシン、又はレブラスタチン(reblastatin)由来の)相同体を指す。こうした相同体(1又は複数)は、マクベシン又は関連するアンサマイシンポリケチドの合成において、同じ機能を果たすタンパク質をコードする、あるいは、それ自体で前記遺伝子又はタンパク質と同じ機能を果たすことができる。好ましくは、こうした相同体(1又は複数)は、本明細書で開示される特定の遺伝子の配列(表3、配列番号:17 これは、該クラスターにおけるすべての遺伝子の配列であり、ここから特定の遺伝子の配列を推測することができる)と、少なくとも40%配列同一性、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%配列同一性を有する。同一性(%)は、NCBIウェブサイト上で入手できるBLASTn又はBLASTpなどの当業者に知られている任意のプログラムを使用して算出することができる。
【0022】
本明細書では、用語「癌」は、皮膚における、又は人体器官(例えば、限定されるものではないが、乳房、前立腺、肺、腎臓、膵臓、脳、胃、又は腸)における、細胞の良性又は悪性の新生物を指す。癌は、近接組織に浸潤し、遠くの器官に、例えば骨、肝臓、肺、又は脳に拡散する(転移する)傾向がある。本明細書では、用語「癌」には、転移性の腫瘍細胞型(これらに限定されないが、黒色腫、リンパ腫、白血病、線維肉腫、横紋筋肉腫、及び肥満細胞腫など)と、組織癌の型(これらに限定されないが、結腸直腸癌、前立腺癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌、乳癌、膵臓癌、膀胱癌、腎癌、胃癌、神経膠芽腫、原発性肝癌、及び卵巣癌など)のどちらも含まれる。
【0023】
本明細書では、用語「B細胞腫瘍」には、慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄腫、及び非ホジキンスリンパ腫(NHL)を含めた一群の障害が含まれる。これらは、血液及び造血臓器の腫瘍疾患である。これらは、骨髄及び免疫系の機能不全を引き起こし、これによって宿主は、感染や出血を非常に起こしやすくなる。
【0024】
本明細書では、用語「生体利用効率」は、薬物又は他の物質が、投与後に吸収される、又は生物活性部位で利用可能になる、程度又は割合を指す。この特性は、化合物の溶解度、腸内での吸収速度、タンパク質結合や代謝などの程度を含めた、いくつかの因子に依存する。当業者によく知られているであろう生体利用効率に関する様々な試験は、本明細書に記載されている(Egorinらの文献, 2002も参照のこと)。
【0025】
本出願において使用される用語「水溶性」は、水性媒体(例えばpH 7.3のリン酸緩衝生理食塩水(PBS))における溶解度を指す。水溶性に関する試験は、「水溶性分析」として以下の実施例に示す。
本明細書では、用語「post-PKS遺伝子(1又は複数)」は、例えば、限定はされないが、モノオキシゲナーゼ、O-メチルトランスフェラーゼ、及びカルバモイルトランスフェラーゼなどの、ポリケチドのpost-ポリケチド合成酵素改変に必要とされる遺伝子を指す。特に、マクベシン系では、こうした改変遺伝子としては、mbcM、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450が挙げられる。
【0026】
式(I)の化合物などの本発明の化合物の医薬として許容し得る塩には、医薬として許容し得る無機又は有機酸あるいは塩基から形成される従来の塩、並びに四級アンモニウム酸付加塩が含まれる。適切な酸塩の、より具体的な例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、ギ酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、パルモ(palmoic)酸塩、マロン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、フェニル酢酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、フマル酸塩、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン-2スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化水素酸塩、リンゴ酸塩、ステロ(steroic)酸塩、タンニン酸塩などが挙げられる。シュウ酸などの他の酸は、それ自体では薬学的に許容し得るものではないが、本発明の化合物及び医薬として許容し得るその塩を得る際の中間体として有用な塩の調製に有用である可能性がある。適切な塩基塩の、より具体的な例としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、コリン塩、ジエタノールアミン塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、及びプロカイン塩が挙げられる。本発明による化合物に対する下記の言及には、式(I)の化合物と、医薬として許容し得るその塩との両方が含まれる。
本明細書では、用語「18,21-ジヒドロマクベシン」と「マクベシンII」(マクベシンのジヒドロキノン形)は、同義的に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(本発明の説明)
本発明は、上で述べた通りの21-デオキシマクベシン類似体、これらの化合物の調製のための方法、医薬品中でのこれらの化合物の使用のための方法、及びさらなる半合成的誘導体化又は生体内変換方法による誘導体化のための中間体又は鋳型としてのこれらの化合物の使用を提供する。
【0028】
好ましくはR1は、H又はOHを表す。本発明の一実施態様では、R1は、Hを表す。本発明の別の実施態様では、R1は、OHを表す。
好ましくはR2は、Hを表す。
好ましくはR3とR4は、どちらもHを表す。
好ましくはR5は、-C(O)-NH2を表す。
本発明の好ましい一実施態様では、R1はHを表し、R2はHを表し、R3とR4はどちらもHを表し、R5は-C(O)-NH2を表す。
本発明の別の好ましい実施態様では、R1はOHを表し、R2はHを表し、R3とR4はどちらもHを表し、R5は-C(O)-NH2を表す。
【0029】
環(ansa ring)に対する非水素側鎖の好ましい立体化学は、下記の構造(15)に、また、下の図1及び2に示す通りである(すなわち、好ましい立体化学は、マクベシンの立体化学に従う)。
本発明はまた、医薬として許容し得る担体と共に、21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩を含む医薬組成物も提供する。
本発明はまた、生体内変換による、又は合成化学によるさらなる改変のための基質としての21-デオキシマクベシン類似体の使用も提供する。
【0030】
臨床試験中である、又は臨床試験が行われた、ある種の既存のアンサマイシンHsp90阻害因子(ゲルダナマイシン及び17AAGなど)は、不十分な薬理学的プロフィール、不十分な水溶性、及び不十分な生体利用効率を有する。本発明は、水溶性などの特性が改善された新規の21-デオキシマクベシン類似体を提供する。当業者であれば、標準の方法を使用して、本発明の所与の化合物の水溶性を容易に決定することができるであろう。代表的な方法は、本明細書の実施例に示す。
【0031】
一態様では、本発明は、医薬品の製造における21-デオキシマクベシン類似体の使用を提供する。さらなる実施態様では、本発明は、癌及び/又はB細胞腫瘍の治療のための医薬品の製造における21-デオキシマクベシン類似体の使用を提供する。さらなる実施態様では、本発明は、マラリア、真菌感染、中枢神経系の疾患、血管形成に依存する疾患、自己免疫疾患の治療のための、及び/又は癌のための予防的前処置としての、医薬品の製造における21-デオキシマクベシン類似体の使用を提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、医薬品における21-デオキシマクベシン類似体の使用を提供する。さらなる実施態様では、本発明は、癌及び/又はB細胞腫瘍の治療における21-デオキシマクベシン類似体の使用を提供する。さらなる実施態様では、本発明は、マラリア、真菌感染、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患、血管形成に依存する疾患、自己免疫疾患の治療のための、及び/又は癌のための予防的前処置としての、医薬品の製造における21-デオキシマクベシン類似体の使用を提供する。
【0033】
さらなる実施態様では、本発明は、投与の必要のある患者に、治療有効量の21-デオキシマクベシン類似体を投与することを含む、癌及び/又はB細胞腫瘍の治療の方法を提供する。さらなる実施態様では、本発明は、投与の必要のある患者に、治療有効量の21-デオキシマクベシン類似体を投与することを含む、マラリア、真菌感染、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患の疾患、血管形成に依存する疾患、自己免疫疾患の治療、及び/又は癌のための予防的前処置の方法を提供する。
【0034】
上記の通り、本発明の化合物は、癌及び/又はB細胞腫瘍の治療に有用であることを期待できる。本発明の化合物、特に、Hsp90に対する優れた選択性及び/又は優れた毒物学プロフィール及び/又は優れた薬物動態を有する可能性があるものはまた、他の適応症(例えば、それだけには限らないが、マラリア、真菌感染、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患、血管形成に依存する疾患、関節リウマチなどの自己免疫疾患)の治療において、あるいは癌のための予防的前処置として有効である可能性がある。
【0035】
中枢神経系の疾患及び神経変性疾患には、それだけには限らないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン疾患、脊髄及び延髄性筋萎縮症(SBMA)、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)が含まれる。
血管形成に依存する疾患には、それだけには限らないが、加齢性黄斑部変性、糖尿病性網膜症及び様々な他の眼の障害、アテローム性動脈硬化症、並びに慢性関節リウマチが含まれる。
自己免疫疾患には、それだけには限らないが、関節リウマチ、多発性硬化症、I型糖尿病、全身性エリテマートーデス、及び乾癬が含まれる。
【0036】
「患者」は、ヒト及び他の動物(特に哺乳動物)対象、好ましくはヒトの対象を包含する。したがって、本発明の21-デオキシマクベシン類似体の方法及び使用は、ヒト及び家畜の医薬品(好ましくはヒトの医薬品)に有用である。
本発明の上述の化合物又はその製剤は、任意の従来方法によって投与することができる。例えば、限定はされないが、これらは、(静脈内投与を含めて)非経口的に、経口的に、(口腔内、舌下、又は経皮を含めて)局所的に、医療器具(例えばステント)を介して、吸入によって、あるいは注射(皮下又は筋肉内)を介して投与することができる。治療は、単回投与又は一定期間にわたる多回投与から構成され得る。
【0037】
本発明の化合物は、単独で投与することが可能であるが、1種以上の許容し得る担体と共に、医薬製剤として与えることが好ましい。したがって、1種以上の医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に本発明の化合物を含む医薬組成物が提供される。希釈剤(1種又は複数)又は担体(1種又は複数)は、本発明の化合物と適合するという意味で「許容し得」なければならず、かつそのレシピエントに対して有害であってはならない。適切な担体の例は、以下により詳細に述べる。
【0038】
本発明の化合物は、単独で、あるいは他の治療薬と組み合わせて投与することができる。2種(又はそれ以上)の薬剤の同時投与によって、使用されるそれぞれの用量を有意に低くし、それによって、現れる副作用を低下させることが可能になる。これはまた、疾患が耐性となってしまっている従来の治療の効果に対して、癌などの疾患の再感作を可能にすることが可能である。1種以上の医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に、本発明の化合物及びさらなる治療薬を含む医薬組成物も提供される。
さらなる態様では、本発明は、第2の薬剤(例えば、細胞毒性又は細胞増殖抑制性薬剤などの、癌又はB細胞腫瘍の治療のための第2の薬剤)を用いる併用療法における本発明の化合物の使用を提供する。
【0039】
一実施態様では、本発明の化合物は、別の治療薬(例えば、癌又はB細胞腫瘍の治療のための、細胞毒性又は細胞増殖抑制性薬剤などの治療薬)と共に同時投与される。例示的なさらなる薬剤としては、アルキル化剤並びに(トポイソメラーゼII阻害剤及びチューブリン阻害剤を含めた)分裂抑制剤などの細胞傷害性薬剤が挙げられる。他の例示的なさらなる薬剤としては、DNA結合剤、代謝拮抗剤、及び細胞増殖抑制性薬剤(プロテインキナーゼ阻害剤及びチロシンキナーゼ受容体ブロッカーなど)が挙げられる。適切な薬剤としては、それだけには限らないが、メトトレキセート、ロイコボリン、プレニゾン、ブレオマイシン、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、タモキシフェン、トレミフェン、酢酸メゲストロール、アナストロゾール、ゴセレリン、抗HER2モノクローナル抗体(例えばトラスツズマブ、商品名Herceptin(商標))、カペシタビン、ラロキシフェン塩酸塩、EGFR阻害剤(例えばゲフィチニブ、商品名Iressa(登録商標)、エルロチニブ、商品名Tarceva(商標)、セツキシマブ、商品名Erbitux(商標))、VEGF阻害剤(例えばベバシズマブ、商品名Avastin(商標))、プロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブ、商品名Velcade(商標))、又はイマチニブ、商品名Glivec(登録商標)が挙げられる。さらなる適切な薬剤としては、それだけには限らないが、シスプラチン、シタラビン、シクロヘキシルクロロエチルニトロソウレア、ゲムシタビン、イホスファミド、ロイコボリン、マイトマイシン、ミトキサントン、オキサリプラチン、タキソールを含めてタキサン、及びビンデシンなどの従来の化学療法剤;ホルモン療法薬;モノクローナル抗体療法薬; ダサチニブ、ラパチニブなどのプロテインキナーゼ阻害剤; ボリノスタットなどのヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤;スニチニブ、ソラフェニブ、レナリドマイドなどの血管形成阻害剤;並びにテムシロリムスなどのmTOR阻害剤が挙げられる。さらに、本発明の化合物は、それだけには限らないが放射線療法又は手術を含めた他の治療法と組み合わせて投与することができる。
【0040】
該製剤は、単位剤形中に好都合に提供することもできるし、薬学分野でよく知られた方法のいずれかによって調製することもできる。こうした方法は、活性成分(本発明の化合物)を、1種以上の補助成分を構成する担体と混合するステップを含む。一般に、該製剤は、活性成分を、液体担体又は微粉固体状担体あるいはその両方と、均一かつ十分に混合し、必要に応じて、生成物を成形することによって調製される。
【0041】
本発明の化合物は通常、活性成分を含む医薬製剤の形で、あるいは任意に、非毒性有機又は無機の酸あるいは塩基、付加塩を医薬として許容し得る剤形中に入れた形で、経口的に、又は任意の非経口的経路によって投与されることとなる。治療されるべき障害及び患者、並びに投与経路に応じて、組成物は、様々な用量で投与することができる。
例えば、本発明の化合物は、即時放出、遅延放出、又は徐放用途のための、錠剤、カプセル、腔坐剤(ovule)、エリキシル、液剤、又は懸濁剤(これらは、香味料又は着色剤を含有することができる)の形で、経口的に、口腔内に、又は舌下的に投与することができる。
【0042】
こうした錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム及びグリシンなどの賦形剤、デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ、又はタピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、及び特定の複合ケイ酸塩などの崩壊剤、並びにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン、及びアカシアなどの造粒結合剤を含有することが可能である。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、及びタルクなどの滑沢剤を含めることも可能である。
【0043】
また、類似のタイプの固体組成物を、ゼラチンカプセル中の充填剤として用いることができる。その際、好ましい賦形剤としては、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖、又は高分子量のポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁剤及び/又はエリキシル剤については、様々な甘味料又は香味剤、着色料又は色素と、また、乳化剤及び/又は懸濁剤と、また、水、エタノール、プロピレングリコール、及びグリセリンなどの希釈剤、並びにこれらの組み合わせと、本発明の化合物を組み合わせることができる。
【0044】
錠剤は、任意に1種以上の補助成分と共に、圧縮又は成形によって作製することができる。圧縮錠剤は、適切な機械内で、粉末又は顆粒などの自由に流動できる形の活性成分を、結合剤(例えばポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えばデンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、界面活性又は分散剤と任意に混合し、圧縮することによって調製することができる。成型錠剤は、不活発な液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を適切な機械内で成型することによって作製することができる。錠剤は、任意にコーティングすることも、刻み目をつけることも可能であり、また、例えば、所望の放出プロフィールを提供するために、様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、その中の活性成分の持続放出又は制御放出を提供するように調製することも可能である。
【0045】
経口投与に適した本発明による製剤は、それぞれ所定の量の活性成分を含有するカプセル、カシェ剤、又は錠剤などの個別単位として;粉末又は顆粒として;液剤、あるいは水性液体又は非水性液体中の懸濁剤として;あるいは水中油型液体エマルジョン又は油中水型液体エマルジョンとして提供することができる。活性成分はまた、大型丸薬、舐剤、又はペースト剤として提供することもできる。
【0046】
口腔中の局所投与に適した製剤としては、風味付けされたベース(通常スクロース及びアカシア又はトラガカント)中に活性成分を含むロゼンジ;不活性ベース(ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアなど)中に活性成分を含む香錠;及び適切な液体担体中に活性成分を含む洗口液が挙げられる。
上で特に述べた成分に加えて、本発明の製剤が、当該の製剤のタイプを踏まえた当分野で通常の他の薬剤を含むことが可能であり、例えば、経口投与に適したものは、香味剤を含むことが可能であることを理解するべきである。
【0047】
局所投与に適合された医薬組成物は、軟膏、クリーム、懸濁剤、ローション、粉剤、液剤、ペースト剤、ゲル剤、含浸(impregnated)包帯、スプレー、エアロゾル又はオイル、経皮装具、散布剤などとして調製することができる。これらの組成物は、活性剤を含有する従来方法を介して調製することができる。したがって、これらはまた、保存剤、薬剤浸透を助ける溶媒、クリーム又は軟膏中の皮膚軟化剤、及びローション用のエタノール又はオレイルアルコールなどの、適合性のある従来の担体及び添加剤も含むことができる。こうした担体は、組成物の約1%から約98%として存在することができる。より通常、これらは、組成物の最高約80%を構成する。例示目的に過ぎないが、クリーム又は軟膏は、所望の稠度を有するクリーム又は軟膏を生産するのに十分な量の、約5〜10重量%の化合物を含有する、十分な量の親水性材料と水を混合することによって調製される。
【0048】
経皮投与に適合された医薬組成物は、レシピエントの表皮と長時間密接に接触したままであることが意図される、個別パッチとして提供することができる。例えば、活性剤は、イオン導入によってパッチから送達させることができる。
外部組織(例えば口腔及び皮膚)への適用のためには、組成物は、局所用軟膏又はクリームとして適用されることが好ましい。軟膏中に調製される場合、活性剤を、パラフィン又は水溶性軟膏基剤と共に用いることができる。
あるいは、活性剤は、水中油型クリーム基剤又は油中水型基剤を伴うクリーム中に調製することができる。
【0049】
非経口投与については、流体単位剤形は、活性成分と、例えば、限定されないが、水、アルコール、ポリオール、グリセリン、及び植物油(水が好ましい)などの滅菌したビヒクルとを利用して調製される。活性成分は、使用されるビヒクル及び濃度に応じて、ビヒクル中に懸濁又は溶解させることができる。液剤を調製する際には、活性成分を、注射用水に溶解し、濾過滅菌し、その後、適切なバイアル又はアンプルに充填して密封することができる。
【0050】
好都合なことに、局部麻酔薬、保存剤、及び緩衝剤などの薬剤を、ビヒクル中に溶解させることができる。安定性を高めるために、バイアルに充填した後、組成物を凍結させ、真空中で水を除去することができる。次いで、乾いた凍結乾燥粉末をバイアル中に密閉し、さらに、使用前に液体を再構成するための注射用水の添付のバイアルを提供することができる。
【0051】
非経口懸濁剤は、活性成分がビヒクル中に溶解されるのではなく懸濁されることと、滅菌を濾過によって達成されることができないことを除いては、液剤と実質的に同じ方式で調製される。活性成分は、滅菌したビヒクルに懸濁させる前に、エチレンオキシドに暴露させることによって滅菌することができる。好都合なことに、活性成分の均一分布を容易にするために、組成物中に界面活性剤又は湿潤剤が含められる。
【0052】
本発明の化合物はまた、当技術分野で知られた医療用具を使用して投与することができる。例えば、一実施態様では、本発明の医薬組成物は、米国特許第5,399,163号;米国特許第5,383,851号;米国特許第5,312,335号;米国特許第5,064,413号;米国特許第4,941,880号;米国特許第4,790,824号;又は米国特許第4,596,556号に開示されている器具などの無針皮下注射器具を用いて投与することができる。本発明に有用な、よく知られたインプラント及びモジュールの例としては、以下が挙げられる:米国特許第4,487,603号(制御された割合で薬品を分配するための、植込み型マイクロ注入ポンプを開示している);米国特許第4,486,194号(皮膚を介して医薬品を投与するための治療用装具を開示している);米国特許第4,447,233号(正確な注入速度で薬品を送達するための薬剤注入ポンプを開示している);米国特許第4,447,224号(連続薬物送達のための流量変動式(variable flow)植込み型注入装置を開示している);米国特許第4,439,196号(マルチチャンバー区画を有する浸透圧薬物送達システムを開示している);及び米国特許第4,475,196号(浸透圧薬物送達システムを開示している)。他の多くのこうしたインプラント、送達システム、及びモジュールが、当業者に知られている。
【0053】
本発明の化合物の投与されるべき用量は、特定の化合物、関与する疾患、対象、並びに疾患の性質及び重症度、及び対象の体調、並びに選択される投与経路に応じて変動する。適切な用量は、当業者によって容易に決定することができる。
該組成物は、投与の方法に依存して、0.1重量%から、好ましくは5〜60%、より好ましくは10〜30重量%の本発明の化合物を含有することができる。
【0054】
本発明の化合物の最適な量及び個々の投薬の間隔が、治療される状態の性質及び程度、投与の形、経路、及び部位、並びに治療される特定の対象の年齢及び状態によって決定されること、また、医師が、使用される適切な投薬を最終的に決定することが、当業者には認識されるであろう。この投薬は、適切な回数繰り返すことができる。副作用が生ずる場合、正常な臨床診療に従って、投薬の量及び/又は頻度を変化させる、あるいは減らすことができる。
【0055】
さらなる態様では、本発明は、21-デオキシマクベシン類似体の産生のための方法を提供する。
マクベシンは、2つの段階で生合成されると考えることができる。第1段階では、core-PKS遺伝子が、2-炭素単位の繰り返し集合体によるマクロライドコアが構築され、次いで、これが環化されて、酵素を含まない第1の中間体「マクベシン前駆体」が形成される(図1参照)。第2段階では一連の「post-PKS」仕上げ(tailoring)酵素(例えばP450モノオキシゲナーゼ、メチルトランスフェラーゼ、FAD依存性オキシゲナーゼ、及びカルバモイルトランスフェラーゼ)が、マクベシン前駆体鋳型にさらなる様々な基を加えるように作用し、最終の親化合物構造がもたらされる(図2参照)。21-デオキシマクベシン類似体も、同様の方式で生合成することができる。
【0056】
この生合成的産生を、新規の化合物を産生させるのに適した産生株を遺伝子操作することによって利用することができる。特に、本発明は、以下を含む、21-デオキシマクベシン類似体を産生する方法を提供する:
a)適切な条件下で培養される場合にマクベシン又はその類似体を産生する第1の宿主株を提供することと、
b)1種以上のpost-PKS遺伝子を欠失又は不活化させることと(ただし、該post-PKS遺伝子のうちの少なくとも1つは、mbcM又はその相同体である)、
c)21-デオキシマクベシン類似体の産生に適した条件下で、前記改変された宿主株を培養することと、
d)産生された化合物を任意に単離すること。
【0057】
ステップ(a)では、「マクベシン又はその類似体」は、R1〜R5の定義によって包含されるマクベシン又はマクベシンの類似体を意味する。
ステップ(b)では、1種以上のpost-PKS遺伝子(ただし、これらのpost-PKS遺伝子のうちの少なくとも1つは、mbcM又はその相同体である)を欠失又は不活化させることは、選択的に、適切に行われることとなる。
【0058】
さらなる実施態様では、ステップb)は、mbcM遺伝子(又はその相同体)へのDNAの組込みによって、mbcM(又はその相同体)を不活化させ、機能性のmbcMタンパク質が産生されないようにすることを含む。別の実施態様では、ステップb)は、mbcM遺伝子又はその相同体の、標的化された欠失を行うことを含む。さらなる実施態様では、mbcM又はその相同体は、部位特異的突然変異誘発によって不活化させられる。さらなる実施態様では、ステップa)の宿主株は、突然変異誘発にかけられ、改変された株が選択される(ここでは、post-PKS酵素の1つ以上は、機能性でなく、これらのうちの少なくとも1つは、MbcMである)。本発明はまた、mbcM又はその相同体の発現を制御する調節因子の突然変異体を包含し、当業者は、調節因子の欠失又は不活化が、遺伝子の欠失又は不活化と同じ結果を有する可能性があることを理解するであろう。
【0059】
本発明の特定の実施態様では、post PKS遺伝子を選択的に欠失又は不活化させる方法は、以下を含む:
(i)縮重するオリゴを当該の遺伝子の相同体(1種又は複数)に基づいて(例えば、ゲルダナマイシンPKS生合成クラスターから、及び/又はリファマイシン生合成クラスターから)設計し、PCR反応においてこれらのプライマーを用いて、適切なマクベシン産生株から当該の遺伝子(例えばmbcM)の内部フラグメントを単離することと、
(ii)このフラグメントを含有するプラスミドを、同じ又は異なるマクベシン産生株に組み込み、それに続いて相同的組み換えを行うことと(これによって、標的化された遺伝子(例えばmbcM又はその相同体)の破壊がもたらされる)、
(iii)このようにして産生された株を、マクベシン類似体、すなわち21-デオキシマクベシン類似体の産生に適した条件下で培養すること。
特定の実施態様では、ステップ(i)におけるマクベシン産生株は、アクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum)(A.ミルム(A. mirum))である。さらなる具体的実施態様では、ステップ(ii)におけるマクベシン産生株は、A.プレティオスム(A. pretiosum)である
【0060】
当業者は、例えば以下の代替法を使用して、上で述べたのと同等の株を提供できることを理解するであろう:
・縮重するオリゴを使用して、他のマクベシン産生株(例えば、それだけには限らないが、A.プレティオスム(A.pretiosum)又はA.ミルム(A.mirum))から、当該の遺伝子を増幅することができる。
・マクベシン産生株のmcbM遺伝子又はその相同体の適切な領域を首尾よく増幅することとなる、様々な縮重するオリゴを設計することができる。
・A.プレティオスム(A. pretiosum)株のmbcM遺伝子の配列を、A.プレティオスム(A. pretiosum)のmbcM遺伝子に特異的であり得るオリゴを産生するために使用することができ、その後、内部フラグメントを、任意のマクベシン産生株、例えばA.プレティオスム(A.pretiosum)又はアクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum) (A.ミルム(A.mirum))から増幅することができる。
・A.プレティオスム(A. pretiosum)のmbcM遺伝子に対する縮重するオリゴを産生するために、A.プレティオスム(A. pretiosum)株のmbcM遺伝子の配列を、相同遺伝子の配列と共に使用することができ、その後、内部フラグメントを、任意のマクベシン産生株、例えばA.プレティオスム(A. pretiosum)又はA.ミルム(A.mirum)から増幅することができる。
【0061】
本発明のさらなる態様では、mbcMに加えて、さらなるpost-PKS遺伝子も、欠失又は不活化させることができる。図2は、マクベシン生合成クラスターにおけるpost-PKS遺伝子の活性を示す。したがって、当業者であれば、当該の化合物(1種又は複数)を産生することとなる株に至るためには、さらなるpost-PKS遺伝子のどれが、欠失又は不活化される必要があるかを特定することが可能であろう。
本発明のさらなる態様では、mbcMを含めた1種以上のpost-PKS遺伝子が上の通りに欠失又は不活化させられた操作された株が、例えば別のマクベシン産生株由来、又は同じ株由来の、mbcM又はその相同体を含まない1種以上の同じpost PKS遺伝子に再導入される。
【0062】
したがって、本発明のさらなる態様では、以下を含む、21-デオキシマクベシン類似体の産生のための方法が提供される。
a)適切な条件下で培養される場合にマクベシンを産生する第1の宿主株を提供することと、
b)1以上のpost-PKS遺伝子を欠失又は不活化させることと(ただし、該post-PKS遺伝子のうちの少なくとも1つは、mbcM又はその相同体である)、
c)mbcMを含まないpost-PKS遺伝子のいくつか又はすべてを再導入することと、
d)改変された前記宿主株を、21-デオキシマクベシン類似体の産生に適した条件下で培養することと、
e)産生された化合物を任意に単離すること。
【0063】
さらなる実施態様では、mbcMを含めた1種以上のpost-PKS遺伝子が欠失又は不活化させられた操作された株が、それだけには限らないがリファマイシン、アンサミトシン、ゲルダナマイシン、又はハービマイシンの生合成を誘導するクラスターを含めた異種PKSクラスター由来の1種以上のpost PKS遺伝子によって補充される。
具体的には、宿主株は、mbcMが欠失又は不活化させられたマクベシン産生株に基づく操作された株であり得る。あるいは、宿主株は、mbcM、mbcMT1、mbcMT2、mbcP、及びmbcP450が欠失又は不活化させられたマクベシン産生株に基づく操作された株であり得る。
【0064】
こうした系では、不活化又は欠失を含めた記載した方法の1つの結果として、mbcM又はその相同体が機能しない株が産生される場合、2つ以上のマクベシン類似体が、産生され得ることを観察することができる。これについては、当業者によって理解されるであろういくつかの考えられ得る原因が存在する。例えば、post-PKSステップの好ましい順序が存在する可能性があり、単一の活性を取り除くことによって、関与する酵素に対して天然ではない基質上で実施されるすべてのその後のステップがもたらされる。これは、post-PKS酵素に対して提供される新規の基質に対する効率の低下に起因して、又は、おそらくステップの順序が変化させられたことにより、もはや残留する酵素に対する基質ではない生成物を回避するために、培養液中での中間体築造をもたらす可能性がある。
【0065】
混合物中で観察される化合物の比は、振盪培養器における毎分回転数(rpm)及び振盪培養器の振幅の設定などの、増殖条件の変化を用いることによって操作することができる。実施例に述べる通り、より小さい振幅(2.5cm)、より大きいrpm(300)を用いる培養器内でのBIOT-3806の産生培養株の保温によって、よりプロセシングされていない類似体への偏りがもたらされるのに対して、より広い振幅(5cm)とより小さいrpm(200又は250)を用いる培養器における並行実験では、よりプロセシングされた中間体への偏りがもたらされる。
【0066】
当業者は、生合成クラスター中では、ある種の遺伝子は、オペロンで組織され、1つの遺伝子の破壊は、同じオペロンにおけるその後の遺伝子の発現に対する影響をしばしば有することになることを理解するであろう。
化合物の混合物が観察される場合、これらは、標準の技術(そのうちのいくつかは、以下の実施例に述べる)を使用して容易に分離することができる。
【0067】
21-デオキシマクベシン類似体は、本明細書に記述する通りのいくつかの方法によってスクリーニングすることができ、単一化合物が、好ましいプロフィールを示すような状況で、この化合物が好ましく作成されるように、株を操作することができる。これが可能ではない通常でない状況では、中間体を産生することができ、これを生体内変換させて、所望の化合物を産生することができる。
【0068】
本発明は、マクベシンPKS遺伝子集団由来の1種以上のpost-PKS遺伝子の選択された欠失又は不活化によって産生される新規のマクベシン類似体を提供する。特に、本発明は、マクベシン生合成遺伝子クラスター由来の、少なくともmbcM又はその相同体の、選択された欠失又は不活化によって産生される新規の21-デオキシマクベシン類似体に関する。一実施態様では、mbcM又はその相同体は、単独で、欠失又は不活化させられる。別の実施態様では、mbcMに加えて他のpost-PKS遺伝子が、さらに欠失又は不活化させられる。ある特定の実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択されるさらなる遺伝子が、宿主株中で欠失又は不活化させられる。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択されるpost-PKS遺伝子のうちのさらに1つ以上が、欠失又は不活化させられる。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択されるpost-PKS遺伝子のうちのさらに2つ以上が、欠失又は不活化させられる。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択されるpost-PKS遺伝子のうちのさらに3つ以上が、欠失又は不活化させられる。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択されるpost-PKS遺伝子のうちのさらに4つ以上が、欠失又は不活化させられる。
【0069】
当業者は、遺伝子が非機能性になるためには、それが完全に欠失させられる必要はなく、結果として、本明細書では、用語「欠失又は不活化させられる」は、それだけには限らないが以下を含めて、それによって遺伝子が非機能性になるいずれの方法も包含することを理解するであろう:遺伝子全体の欠失、標的遺伝子への挿入による不活化、発現されない又は不活性化状態で発現される遺伝子をもたらす部位特異的突然変異誘発、発現されない又は不活性化状態で発現される遺伝子をもたらす宿主株の突然変異誘発(例えば放射線、又は突然変異誘発性化学薬品への暴露、プロトプラスト融合、又はトランスポゾン変異)。さらに、これには、遺伝子の内部のフラグメントの欠失が含まれる。あるいは、活性な遺伝子の機能を、阻害剤、例えばメタピロン(metapyrone)(別名2-メチル-1,2-ジ(3-ピリジル-1-プロパノン)、EP 0 627 009)を用いて化学的に弱めることができる。アンシミドールは、オキシゲナーゼの阻害剤であり、これらの化合物を、産生媒体に加えて、類似体を産生することができる。さらに、シネフンギンは、インビボでのメチル基転移酵素活性の抑制以外は同様に使用することができるメチル基転移酵素阻害剤である(McCammon及びParksの文献 1981)。
【0070】
別の実施態様では、post-PKS遺伝子のすべてを、欠失又は不活化することができ、その後、それだけには限らないがmbcM又はその相同体を含めた1種以上の遺伝子を、相補性によって(例えば、att部位に、自己増殖するプラスミド上に、又は染色体の相同領域への挿入によって)再導入することができる。したがって、特定の実施態様では、本発明は、以下を含む、21-デオキシマクベシン類似体の産生のための方法に関する:
a)適切な条件下で培養される場合にマクベシンを産生する第1の宿主株を提供することと、
b)すべてのpost-PKS遺伝子を選択的に欠失又は不活化させることと、
c)21-デオキシマクベシン類似体の産生に適した条件下で、前記改変された宿主株を培養することと、
d)産生された化合物を任意に単離すること。
【0071】
別の実施態様では、mbcMが、再導入される遺伝子の1つでないことが条件で、1以上の欠失させられたpost-PKS遺伝子が再導入される。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択される1以上のpost-PKS遺伝子が再導入される。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択される2以上のpost-PKS遺伝子が再導入される。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択される3以上のpost-PKS遺伝子が再導入される。さらなる実施態様では、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450からなる群から選択される4以上のpost-PKS遺伝子が再導入される。さらなる別の実施態様では、mbcNとmbcPとmbcMT1とmbcMT2とmbcP450が再導入される。
【0072】
さらに、mbcM又はその相同体を含めたpost-PKS遺伝子の亜集団を、欠失又は不活化させることができ、mbcMを含まない前記post-PKS遺伝子の、より小さな亜集団を再導入し、21-デオキシマクベシン類似体を産生する株に至らしめることができることは、当業者には明白であろう。
当業者は、マクベシンに対する生合成遺伝子クラスターを含有するが、少なくともmbcM又はその相同体を欠いている株を産生するいくつかの方法が存在することを理解するであろう。
【0073】
ポリケチド遺伝子クラスターを、異種宿主中で発現させることができることは、当業者によく知られている(Pfeifer及びKhoslaの文献, 2001)。したがって、本発明は、mbcMを含まない又はmbcMの非機能性の突然変異体を含む、あるいは耐性及び調節遺伝子を含む又は含まない、あるいは完全又はさらなる欠失を含有するマクベシン生合成遺伝子クラスターの、異種宿主への移入を含む。あるいは、耐性及び調節遺伝子を含む又は含まない完全なマクベシン生合成クラスターを、異種宿主に移入することができ、次いで、これを、mbcMを欠失又は不活化させるための本明細書で記述される方法によって操作することができる。DNAのこうした大きな断片の上で定義した通りの移入のための方法及びベクターは、当分野でよく知られている(Rawlingsの文献, 2001; Staunton及びWeissmanの文献, 2001)、あるいは、開示された方法において、本明細書で提供される。この文脈において、好ましい宿主細胞株は、原核生物、より好ましくは、放線菌又は大腸菌(Escherichia coli)であり、さらに好ましくは、好ましい宿主細胞株としては、それだけには限らないが、アクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum) (A.ミルム(A.mirum))アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)(A.プレティオスム(A. pretiosum))、S.ハイグロスコピカス(S.hygroscopicus)、S.ハイグロスコピカス(S.hygroscopicus)種、S.ハイグロスコピカス(S.hygroscopicus)変種アスコミケティクス(ascomyceticus)、ストレプトマイセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)、ストレプトマイセス・コエリコル(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・リウィダンス(Streptomyces lividans)、サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora erythraea)、ストレプトマイセス・フラディアエ(Streptomyces fradiae)、ストレプトマイセス・アヴェルミティリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・キンナモネンシス(Streptomyces cinnamonensis)、ストレプトマイセス・リモスス(Streptomyces rimosus)、ストレプトマイセス・アルブス(Streptomyces albus)、ストレプトマイセス・グリセオフスクス(Streptomyces griseofuscus)、ストレプトマイセス・ロンギスポロフラウス(Streptomyces longisporoflavus)、ストレプトマイセス・ヴェネズアラエ(Streptomyces venezuelae)、ストレプトマイセス・アルブス(Streptomyces albus)、ミクロモノスポラ(Micromonospora)種、ミクロモノスポラ・グリセオルビダ(Micromonospora griseorubida)、アミコラトプシス・メディテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)、又はアクチノプラネス(Actinoplanes)種N902-109が挙げられる。さらなる例としては、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)亜種ゲルダヌス(geldanus)及びストレプトマイセス・ヴィオラケウスニゲル(Streptomyces violaceusniger)が挙げられる。
【0074】
一実施態様では、全生合成クラスターが移入される。別の実施態様では、mbcMを含まない全PKSが移入される。別の実施態様では、全PKSは、mbcMを含めて、関連するpost-PKS遺伝子のいずれも含まずに移入される。
さらなる実施態様では、全マクベシン生合成クラスターが移入され、次いで、本明細書の説明に従って操作される。
【0075】
本発明の別の態様では、本発明の21-デオキシマクベシン類似体は、適切な株を用いる生体内変換によってさらにプロセシングすることができる。適切な株は、利用可能な野生株(例えば、それだけには限らないが、アクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum)、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)、S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)、S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)種)である。あるいは、適切な株を、特定のpost-PKS酵素(例えば、それだけには限らないが、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2、mbcP450(本明細書で定義する通り)、gdmN、gdmM、gdmL、gdmP、(Rascherらの文献, 2003)、ゲルダナマイシン17-O-メチルトランスフェラーゼ、asm7、asm10、asm11、asm12、asm19、及びasm21(Cassadyらの文献, 2004, Spitellerらの文献, 2003)によってコードされるものを用いた生体内変換を可能にするように操作することができる。遺伝子がまだ特定されていない、又は配列が公共のドメイン内にない場合、標準の方法によってこうした配列を獲得することは、当業者にとっては通常である。例えば、ゲルダナマイシン17-O-メチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の配列は、公共のドメインにはないが、当業者は、生体内変換システムをもたらすために、プローブ(類似のO-メチル基転移酵素を使用する非相同プローブ、又は利用可能な相同遺伝子から縮重するプライマーを設計することによる相同プローブ)を産生し、ゲルダナマイシン産生株に対してサザンブロットを行うことによって、この遺伝子を獲得することができる。
【0076】
特定の実施態様では、該株は、前記天然のポリケチドクラスターによって産生されるポリケチドの産生を妨げるために、その天然の1以上のポリケチドクラスターを、完全又は部分的に欠失あるいは不活化させることができる。前記操作された株は、例えば、それだけには限らないが、アクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum)、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)、S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)、S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)種、S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)変種アスコミケティクス(ascomyceticus)、ストレプトマイセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)、ストレプトマイセス・コエリコル(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・リウィダンス(Streptomyces lividans)、サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora erythraea)、ストレプトマイセス・フラディアエ(Streptomyces fradiae)、ストレプトマイセス・アヴェルミティリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・キンナモネンシス(Streptomyces cinnamonensis)、ストレプトマイセス・リモスス(Streptomyces rimosus)、ストレプトマイセス・アルブス(Streptomyces albus)、ストレプトマイセス・グリセオフスクス(Streptomyces griseofuscus)、ストレプトマイセス・ロンギスポロフラウス(Streptomyces longisporoflavus)、ストレプトマイセス・ヴェネズアラエ(Streptomyces venezuelae)、ミクロモノスポラ(Micromonospora)種、ミクロモノスポラ・グリセオルビダ(Micromonospora griseorubida)、アミコラトプシス・メディテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)、又はアクチノプラネス(Actinoplanes)種N902-109を含めた群から選択することができる。さらなる可能な株としては、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)亜種ゲルダヌス(geldanus)及びストレプトマイセス・ヴィオラケウスニゲル(Streptomyces violaceusniger)が挙げられる。
【0077】
さらなる態様では、本発明は、mbcM遺伝子又はその相同体が、それによって21-デオキシマクベシン又はその類似体(例えば式(I)の化合物によって定義される通りの21-デオキシマクベシン類似体)が産生されるように欠失又は不活化させられた、マクベシン又はその類似体を天然に産生する宿主株、及び21-デオキシマクベシン又はその類似体の産生におけるその使用を提供する。
【0078】
したがって、一実施態様では、本発明は、欠失された、マクベシンPKS遺伝子クラスター由来の1以上のpost-PKS遺伝子を有する、その変更されていない状態でマクベシンを天然に産生する遺伝子操作された株を提供する。ここでは、前記欠失又は不活化させられたpost-PKS遺伝子の1つは、mbcM又はその相同体である。
本発明は、本明細書に記述される発明の方法のすべての生成物を包含する。
上で述べた通りの本発明の21-デオキシマクベシン類似体の調製のための方法は、実質的又は完全に生合成的であるが、標準の化学的合成法を含む方法によって本発明の21-デオキシマクベシン類似体を産生又は相互転換することも除外されない。
【0079】
マクベシン生合成遺伝子クラスターの遺伝子操作を可能にするために、最初に、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)から、遺伝子クラスターが配列決定されたが、当業者は、マクベシンを産生する別の株(例えば、限定されないがアクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum))が存在することを理解するであろう。これらの株からのマクベシン生合成遺伝子クラスターは、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)、及び同等の株を産生するために使用される情報について本明細書に記述する通りに配列決定することができる。
【0080】
本発明のさらなる態様には、以下が含まれる:
−mbcM、及び任意にさらなるpost-PKS遺伝子が欠失又は不活化させられたマクベシン産生株に基づく操作された株、具体的には、mbcMが欠失又は不活化させられたこうした操作された株、あるいはmbcM、mbcMT1、mbcMT2、mbcP、及びmbcP450が欠失又は不活化させられたこうした操作された株である。適切には、マクベシン産生株は、A プレティオスム(A pretiosum)又はA ミルム(A mirum)である。
−21-デオキシマクベシン類似体の調製におけるこうした操作された株の使用。
【0081】
本発明の化合物は、以下の特性の1以上を有することが期待できるという点で、好都合である:Hsp90への結合の固さ、Hsp90への結合速度の早さ、優れた溶解度、優れた安定性、優れた製剤能、優れた経口生体利用効率、優れた薬物動態学的特性(それだけには限らないが、低いグルクロン酸化を含む)、優れた細胞取り込み、優れた脳薬物動態、赤血球に対する結合の低さ、好適な毒物学プロフィール、好適な肝毒性プロフィール、好適な腎毒性、副作用の低さ、及び心臓への副作用の低さ。
【実施例】
【0082】
(一般方法)
(培養株の発酵)
菌株アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum) ATCC 31280(米国特許第4,315,989号)及びアクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum) DSM 43827(KCC A-0225, Watanabeらの文献, 1982)を増殖するために使用される条件は、米国特許第4,315,989号及び米国特許第4,187,292号に記載されている。本明細書で使用する方法は、これらの特許から適合させたものであり、振盪培養器中のチューブ又はフラスコ中でブロスを培養することについては、以下の通りである。公開されたプロトコルに対する変化形は、実施例中に示す。両株を、ISP2寒天(Medium 3, Shirling, E.B.及びGottlieb,D.らの文献, 1966)上で28℃で2〜3日間増殖させ、シード培地(Medium 1, 出典米国特許第4,315,989号及び米国特許第4,187,292号, 下記参照)に接種するために使用する。次いで、接種されたシード培地を、5又は2.5cmの振幅で、200rpmと300rpmとの間で振盪しながら、28℃で48時間保温した。マクベシン、18,21-ジヒドロマクベシン、及び21-デオキシマクベシンなどのマクベシン類似体の産生については、発酵培地(Medium 2, 下記及び米国特許第4,315,989号及び米国特許第4,187,292号を参照)に、2.5%〜10%の種培養物を接種し、5又は2.5cmの振幅で、200rpmと300rpmとの間で振盪しながら、最初に28℃で24時間、それに続いて26℃で4〜6日間保温した。次いで、培養株を抽出のために採取した。
【0083】
【表1】
20分間121℃での高圧蒸気殺菌法による殺菌。
高圧蒸気殺菌法の後、適宜、50mg/lの最終濃度を与えるように、アプラマイシンを加えた。
【0084】
【表2】
20分間121℃での高圧蒸気殺菌法による殺菌。
【0085】
【表3】
20分間121℃での高圧蒸気殺菌法による殺菌。
【0086】
【表4】
20分間121℃での高圧蒸気殺菌法による殺菌。
【0087】
(LCMS分析のための培養ブロスの抽出)
培養ブロス(1ml)と酢酸エチル(1ml)を加えて15〜30分間混合し、それに続いて10分間の遠心分離を行った。0.5mlの有機層を収集し、蒸発させて乾燥し、次いで、0.25mlのメタノール中に再溶解させた。
(培養ブロス分析のためのLCMS分析手順、及びインビボでの形質転換研究)
LCMSは、陽及び/又は陰イオンモードで作動するBruker Daltonics Esquire 3000+エレクトロスプレー質量分析計と組み合わせた、統合型Agilent HP1100 HPLCシステムを使用して実施した。クロマトグラフィーは、アセトニトリル+ 0.1%ギ酸/水+ 0.1%ギ酸(40/60)から、アセトニトリル+ 0.1%ギ酸/水+ 0.1%ギ酸(80/20)までの直線濃度勾配を用いて、流速1ml/分で、11分かけて溶出する、Phenomenex Hypercloneカラム(C18 BD、3u、150×4.6mm)を通して達成した。190nmと400nmの間のUVスペクトルを記録し、クロマトグラムを210、254、及び276nmで抽出した。質量スペクトルは、100amuと1500amuとの間で記録した。
【0088】
(抗癌活性に関するインビトロのバイオアッセイ)
単層増殖分析における38のヒト腫瘍細胞株のパネルにおける抗癌活性に関する化合物のインビトロの評価は、Oncotest Testing Facility, Institute for Experimental Oncology, Oncotest社, Freiburgで実施した。選択された細胞株のうちの9つの特性を、表1にまとめて示す。
【表5】
【0089】
Rothらの文献, (1999)に記載される通り、ヒト腫瘍異種移植片から、Oncotest細胞株を樹立する。供与異種移植片の起源は、Fiebigらの文献, (1999)によって記載されている。他の細胞株は、NCI(H460、SF-268、OVCAR-3、DU145、MDA-MB-231、MDA-MB-468)から得る、あるいはDSMZ, Braunschweig, Germany(LNCAP)から購入する。
すべての細胞株は、特に明記しない限り、RPMI 1640培地、10 %ウシ胎児血清、及び0.1mg/mlのゲンタマイシンを含有する「調合済み(ready-mix)」培地(PAA, Colbe, Germany)中で、加湿雰囲気(95 %空気、5 % CO2)中、37℃で増殖させた。
ヒトの腫瘍細胞株の増殖に対する試験化合物(1種又は複数)の効果を評価するために、改変されたヨウ化プロピジウム分析を使用した(Denglerらの文献, 1995)。
【0090】
簡単に言うと、細胞を、トリプシン処理によって指数増殖期培養株から採取し、計数し、細胞株に応じた細胞密度(5〜10.000生細胞/ウェル)で、96ウェル平底マイクロタイタープレートに蒔く。回収の24時間後、細胞の指数増殖を再開させるために、0.010mlの培地(6対照ウエル/プレート)又は21-デオキシマクベシン類似体を含有する培地を、ウェルに加えた。それぞれの濃度を、三重に蒔いた。化合物は、5種の濃度(100; 10; 1; 0.1及び0.01μM)で適用した。4日間の連続的暴露の後、試験化合物を含む又は含まない細胞培養培地を、0.2mLのヨウ化プロピジウム(PI)水溶液(7mg/l)によって置き換えた。生細胞の割合を測定するために、細胞を、プレートを凍結することによって透過処理した。プレートを解凍した後、Cytofluor 4000マイクロプレートリーダーを使用して蛍光(生細胞の合計と直接的な関係を示す)を測定した(励起530nm、発光620nm)。
増殖阻害率は、処理/対照×100(% T/C)として表された。活性な化合物については、IC70値は、細胞生存率に対する化合物濃度をプロットすることによって推定した。
【0091】
(組み合わせられた抗癌活性に関するインビトロバイオアッセイ)
上で述べた通りのDU145細胞の増殖に対する、化合物の組み合わされた適用の影響を評価するために、各標準の薬剤について4枚のプレート:標準の薬剤単独のための1枚と、それぞれ3つの異なる固定された濃度の化合物14を伴う標準の薬剤の組み合わせのための3枚のプレートを調製したことを除き、改変されたヨウ化プロピジウム分析を同様に使用した。標準の薬剤は、3.2倍(half-log)増分で、6重に、10濃度で適用した。未処理の細胞、並びに化合物14単独と共に保温される細胞を、それぞれ、6ウェル/プレートでカバーした。増殖阻害率は、処理/対照×100(%T/C)として表され、各組み合わせに対するIC70値は、細胞生存率に対する化合物濃度をプロットすることによって決定した。
【0092】
(実施例1−マクベシン生合成遺伝子クラスターの配列決定)
ゲノムDNAは、Kieserらの文献, (2000)に記載される標準のプロトコルを使用して、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)(ATCC 31280)及びアクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum)(DSM 43827、ATCC 29888)から単離した。DNA塩基配列決定は、標準の手順を使用して、Biochemistry Department, University of Cambridge, Tennis Court Road, Cambridge CB2 1QWの配列決定設備によって実施した。
【0093】
プライマーBIOSG104 5'-GGTCTAGAGGTCAGTGCCCCCGCGTACCGTCGT-3'(配列番号:7)及びBIOSG105 5'-GGCATATGCTTGTGCTCGGGCTCAAC-3'(配列番号:8)を用いて、標準の技術を使用して、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)NRRL 3602(配列:AY179507の受入番号)のゲルダナマイシン生合成遺伝子クラスター由来のカルバモイルトランスフェラーゼコード遺伝子gdmNを増幅した。サザンブロット実験は、DIG Reagents and Kits for Non-Radioactive Nucleic Acid Labelling and Detectionを使用して、製造業者の指示書(Roche)に従って実施した。DIG標識されたgdmN DNAフラグメントを、非相同プローブとして使用した。gdmNから産生されたプローブ及びA.プレティオスム(A. pretiosum) 2112から単離されたゲノムDNAを使用して、サザンブロット分析において、約8kbのEcoRIフラグメントが特定された。このフラグメントを、標準の手順を適用して、Litmus 28にクローン化し、コロニーハイブリダイゼーションによって形質転換体を同定した。クローンp3を単離し、約7.7kbのインサートを配列決定した。クローンp3から単離されたDNAを、EcoRI及びEcoRI/SacIで消化し、それぞれ、約7.7kb及び約1.2kbのバンドが単離された。標識化反応は、製造業者のプロトコルに従って実施した。上で名づけられた2つの株のコスミドライブラリは、ベクターSuperCos 1及びGigapack III XLパッケージングキット(Stratagene)を使用して、製造業者の指示書に従って構築した。これらの2つのライブラリを、標準のプロトコルを使用してスクリーニングし、プローブとして、クローンp3から得られる7.7kbのEcoRIフラグメントのDIG標識されたフラグメントを使用した。コスミド52は、A.プレティオスム(A. pretiosum)のコスミドライブラリから同定し、配列決定のために、University of CambridgeのBiochemistry Departmentの配列決定設備にかけた。同様に、コスミド43及びコスミド46を、A.ミルム(A.mirum)のコスミドライブラリから同定した。3つのコスミドはすべて、サザンブロット分析で示される通り、7.7kbのEcoRIフラグメントを含有する。
【0094】
コスミド43のPKS領域の約0.7kbpフラグメントを、プライマーBIOSG124 5'-CCCGCCCGCGCGAGCGGCGCGTGGCCGCCCGAGGGC-3’(配列番号:9)及びBIOSG125 5'-GCGTCCTCGCGCAGCCACGCCACCAGCAGCTCCAGC-3’(配列番号:10)を使用して、標準のプロトコルを適用して増幅させ、クローン化し、オーバーラッピングクローンのためのA.プレティオスム(A. pretiosum)コスミドライブラリをスクリーニングするためのプローブとして使用した。また、コスミド52の配列情報を使用して、プライマーBIOSG130 5'-CCAACCCCGCCGCGTCCCCGGCCGCGCCGAACACG-3’(配列番号:11)及びBIOSG131 5'-GTCGTCGGCTACGGGCCGGTGGGGCAGCTGCTGT-5’(配列番号:12)、並びにBIOSG132 5'-GTCGGTGGACTGCCCTGCGCCTGATCGCCCTGCGC-3’(配列番号:13)及びBIOSG133 5'-GGCCGGTGGTGCTGCCCGAGGACGGGGAGCTGCGG-3’(配列番号:14)(これらは、A.プレティオスム(A. pretiosum)のコスミドライブラリをスクリーニングするために使用された)によって増幅されるDNAフラグメントから得られるプローブを構築した。コスミド311及び352を単離し、コスミド352を、配列決定のために起用した。コスミド352は、コスミド52との約2.7kbのオーバーラップを含有する。さらなるコスミドをスクリーニングするために、プライマーBIOSG136 5'-CACCGCTCGCGGGGGTGGCGCGGCGCACGACGTGG CTGC-3’(配列番号:15)及びBIOSG 137 5'-CCTCCTCGGACAGCGCGATCAGCGCCGCGC ACAGCGAG-3’(配列番号:16)、及び鋳型としてのコスミド311を使用して、標準のプロトコルを適用して、約0.6kbのPCRフラグメントを増幅した。A.プレティオスム(A. pretiosum)のコスミドライブラリをスクリーニングし、コスミド410を単離した。これは、コスミド352と約17kbオーバーラップし、配列決定のために起用した。3つのオーバーラッピングコスミド(コスミド52、コスミド352、及びコスミド410)の配列を構築した。配列決定された領域は、約100kbpにおよび、マクベシン生合成遺伝子クラスターを構成する可能性がある23のオープンリーディングフレームを同定した(配列番号:17)。配列番号:17内での各々のオープンリーディングフレームの位置を、表3に示す。
【0095】
【表6】
【0096】
【表7】
【0097】
(実施例2−株BIOT-3806:gdmM相同体mcbMがプラスミドの挿入によって遮断されたアクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)株の産生)
pLSS308の構築の概要を、図3に示す。
(2.1. プラスミドpLSS308の構築)
ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)株NRRL 3602(AY179507)のゲルダナマイシン生合成遺伝子クラスター由来のgdmM遺伝子のDNA配列と、アミコラトプシス・メディテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)(AF040570 AF040571)のリファマイシン生合成遺伝子クラスター由来のorf19を、VectorNTI配列アラインメントプログラムを使用して整列配置した(図4)。このアラインメントによって、アクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum)(BIOT-3134; DSM43827; ATCC29888)由来の相同遺伝子のフラグメントを増幅するために使用される、縮重するオリゴの設計に適した相同領域を同定した。縮重するオリゴは、以下の通りである
FPLS1:5':ccscgggcgnycngsttcgacngygag 3';(配列番号:18)
FPLS3:5':cgtcncggannccggagcacatgccctg 3';(配列番号:19)
(ここでは、n= G、A、T、又はC; y= C又はT; s= G又はC)
【0098】
PCR増幅のための鋳型は、アクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum)コスミド43とした。コスミド43の産生は、上の実施例に記載される。
オリゴFPLS1及びFPLS3を使用して、鋳型としてのコスミド43及びTaq DNAポリメラーゼを使用する標準のPCR反応において、アクチノシンネマ・ミルム(Actinosynnema mirum)からのgdmM相同体の内部フラグメントを増幅する。得られた793bp PCR産物を、SmaIを用いて線状にされたpUC19にクローン化し、プラスミドpLSS301をもたらした。クローン化された領域を、配列決定すると、gdmMに対して有意な相同性を有することが示された。(図5)。コスミド43(A.ミルム(A.mirum))から増幅された遺伝子フラグメントを、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種pretiosumのマクベシン生合成遺伝子クラスターのmbcM遺伝子の配列とアラインメントさせると、これらの配列の間の1bpのみの違いが示された(縮重するオリゴの配列によって決定される領域を除外する)(図5参照)。増幅された配列は、A.ミルム(A.mirum)のマクベシンクラスターのmcbM遺伝子由来のであると仮定された。プラスミドpLSS301を、EcoRI/HindIIIで消化し、このフラグメントを、EcoRI/HindIIIで消化されたプラスミドpKC1132(Biermanらの文献, 1992)にクローン化した。得られたプラスミド(pLSS308と呼ばれる)は、アプラマイシン耐性であり、A.ミルム(A.mirum) mbcM遺伝子の内部フラグメントを含有する。
【0099】
(2.2 アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)の形質転換)
プラスミドpUZ8002を内在する大腸菌(Escherichia coli)ET12567を、電気穿孔法によってpLSS308で形質転換し、接合のための大腸菌(E.coli)供与株を産生した。この株を使用して、無性生殖的接合によってアクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)を形質転換した(Matsushimaらの文献, 1994)。接合完了体を、Medium 4上に蒔き、28℃で保温した。24時間後、プレートを、50mg/Lのアプラマイシン及び25mg/Lのナリジクス酸で覆った。pLSS308は、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)中で複製することができないので、いずれのアプラマイシン耐性のコロニーも、プラスミドによって運ばれるmcbM内部フラグメントを介する相同的組み換えによって染色体のmbcM遺伝子に組み込まれたプラスミドを含有する形質転換体であることが予想された(図3)。これは、染色体上のmbcM遺伝子の先端を切り取られた2つのコピーをもたらす。形質転換体をPCR分析によって確認し、増幅されたフラグメントを配列決定した。
【0100】
コロニーを、Medium 4(50mg/Lのアプラマイシン及び25mg/Lのナリジクス酸を含む)上にパッチとして植えた。各パッチからの6mmの円形のプラグを使用して、10mLシード培地(Medium1の改変−1〜2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%コーンスティープソリッド、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)プラス50mg/Lのアプラマイシンを含有する個々の50mLファルコンチューブに接種した。これらの種培養物を、5cmの振幅で、200rpmで、28℃で2日間保温した。次いで、これらを使用して発酵培地(Medium 2)に接種し(5% v/v)、28℃で24時間、その後さらに26℃で5日間増殖させた。これらから、上述の標準のプロトコルに従って、代謝産物を抽出した。サンプルを、上述の標準のプロトコルを使用して、HPLCによって、マクベシン類似体の産生について評価した。
選択された生産的な分離株を、BIOT-3806と名付けた。
【0101】
(2.3 BIOT-3806由来の化合物の同定)
LCMSは、陽及び/又は陰イオンモードで作動するBruker Daltonics Esquire 3000+エレクトロスプレー質量分析計と組み合わせた、Agilent HP1100 HPLCシステムを使用して実施した。クロマトグラフィーは、以下のグラジエント溶離プロセスを使用して1mL/分の流速で溶出する、Phenomenex Hypercloneカラム(C18 BDS、3u、150×4.6mm)を通して達成した:T=0, 10%B; T=2, 10%B ;T=20, 100%B ;T=22, 100%B ;T=22.05, 10%B; T=25, 10%B。移動相A=水+0.1%ギ酸; 移動相B= 0.1%アセトニトリル+ギ酸。190nmと400nmとの間のUVスペクトルを記録し、クロマトグラムを210、254、及び276nmで抽出した。質量スペクトルは、100amuと1500amuとの間で記録した。
【0102】
【表8】
【0103】
(実施例3−新規化合物の産生及び単離)
(3.1 7-O-カルバモイルマクベシン前駆体の発酵及び単離)
50mg/Lのアプラマイシンを含むMedium 1で増殖させた後、BIOT-3806の増殖(vegetative)ストックを調製し、20% w/vグリセロール:10% w/vラクトース(蒸留水中)中に保存し、-80℃で保管した。増殖ストックを、50mg/Lアプラマイシンで補充したISP2培地(Medium 3)のプレート上へ戻し、28℃で48時間保温した。増殖培養株を、ISP2プレートから2つの寒天プラグ(直径5mm)を取り出すことによって調製し、これらを、50mg/Lのアプラマイシンを含有する250mLの振とうフラスコ内の30mL Medium 1に接種した。フラスコは、28℃、200rpm(振幅5cm)で48時間保温した。
増殖培養株を、2Lの振とうフラスコ中の200mlの産生培地(Medium 2)に、5% v/vで接種した。培養は、28℃で1日、それに続いて26℃、300rpm(振幅2.5cm)で5日行った。
【0104】
BIOT-3806(1 L、ピンク色)の発酵ブロスを、等体積の酢酸エチル(EtOAc)を用いて3回抽出した。合わせたEtOAc抽出物から、溶媒を真空中で取り除き、2.34gの褐色のオイルを得た。次いで、抽出物を、シリカゲル60を通したクロマトグラフィーにかけ、CHCl3とMeOHとの混合物(95:5)で最初に溶出し、それに続いてMeOH濃度を10%まで増大させ、いくつかの分画(分画あたり約250mL)を収集した。これらの分画を、HPLCを使用して、代謝物質の存在について分析した。新規化合物を含有する特定の分画(分画5; 溶媒の除去後の334mgの粗質量)を、水:アセトニトリル(80:20)から(50:50)の勾配を用いて21mL/分の流速で25分間にわたって溶出する、Phenomenex Luna C18-BDSカラム(21.2×250mm; 粒径5um)を通したクロマトグラフィーによってさらに精製した。分画を、分析用HPLCによって分析し、新規化合物を含有するものを合わせ、溶媒を取り除き、オフホワイトの固体(86mg)を得た。LCMS/MS、及びアセトン-d6中で行われた1D及び2D NMR実験による分析によって、この化合物は、7-O-カルバモイルマクベシン前駆体(14)と同定された。
【化5】
【0105】
(3.2 7-O-カルバモイル-15-ヒドロキシ-マクベシン前駆体の発酵及び単離)
50mg/Lアプラマイシンを含有するmedium 1中での増殖の後、BIOT-3806の増殖ストックを調製し、20% w/vグリセロール:10% w/vラクトース(蒸留水中)中に保存し、-80℃で保管した。増殖ストックを、50mg/Lアプラマイシンで補充したISP2培地(Medium 3)のプレート上へ戻し、28℃で48時間保温した。ISP2プレートから2つの寒天プラグ(直径5mm)を取り出し、50mg/Lアプラマイシンを含有する250mL振とうフラスコ中の30ml Medium 1にそれらを接種することによって、増殖培養株を調製した。フラスコは28℃、200rpm(振幅5cm)で48時間保温した。
増殖培養株を、2Lの振とうフラスコ中の200mL産生培地(medium 2)に、5% v/vで接種した。培養は、28℃で1日、それに続いて26℃、200rpm(振幅5cm)で5日行った。
【0106】
BIOT-3806(1.3L、クリーム色)の発酵ブロスを、等体積の酢酸エチル(EtOAc)を用いて3回抽出した。合わせた抽出物から、溶媒を真空中で取り除き、2.87gの褐色のオイルを得た。次いで、抽出物を、シリカゲル60を通したクロマトグラフィーにかけ、CHCl3及びMeOH混合物(95:5)で最初に溶出し、それに続いてMeOH濃度を10%まで増大させ、いくつかの分画(分画あたり約250mL)を収集した。これらの分画を、HPLCを使用して、代謝物質の存在について分析した。新規化合物を含有する特定の分画(分画7; 溶媒の除去後の752mgの粗質量)を、水:アセトニトリル(85:15)から(55:45)の勾配を用いて、21mL/分の流速で25分間にわたって溶出する、Phenomenex Luna C18-BDSカラム(21.2×250mm; 粒径5um)を通したクロマトグラフィーによってさらに精製した。分画を、分析用HPLCによって分析し、新規化合物を含有するものを合わせ、溶媒を取り除き、オフホワイトの固体(245.5mg)を得た。同定及び特徴付けのためにMS、及び1及び2D NMR実験を、アセトン-d6中で行った。LCMS/MSによる、及びアセトン-d6中で行われた1D及び2D NMRによる分析によって、この化合物は、7-O-カルバモイル-15ヒドロキシ-マクベシン前駆体(15)と同定された。
【化6】
【0107】
(3.3 同定及び特徴付け:)
様々なMS及びNMR実験、すなわちLCMS, MSMS, 1H, 13C, APT, COSY-45, HMQC, HMBCを実施した。これらのデータの完全かつ網羅的な参照によって、マクベシン前駆体の2つの類似体の大部分のプロトン及び炭素を帰属することができた。NMRの帰属を、表5に記載する。
【化7】
【表9】
【0108】
(実施例4−gdmM相同体mbcMがインフレーム欠失を有するアクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)株の産生)
(4.1 mbcMの下流の隣接領域と相同なDNAのクローニング)
オリゴBV145(配列番号:22)及びBV146(配列番号:23)を使用し、鋳型としてのコスミド52(実施例1から)及びPfu DNAポリメラーゼを使用する標準のPCR反応で、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum) (ATCC 31280)由来のDNAの1421bp領域を増幅する。増幅されたフラグメントのクローニングを助けるために、制限部位を導入するように、5'伸長を各オリゴ中に設計した(図7)。増幅されたPCR産物(PCRwv308、配列番号:20、図8A)は、mbcMの3'末端の33bp及びさらに下流の相同性の1368bpをコードしていた。この1421bpフラグメントを、SmaIを用いて線状にされたpUC19にクローン化し、プラスミドpWV308をもたらした。
【0109】
(4.2 mbcMの上流の隣接領域と相同なDNAのクローニング)
オリゴBV147(配列番号:24)及びBV148(配列番号:25)を使用して、鋳型としてのコスミド52(実施例1から)及びPfu DNAポリメラーゼを使用する標準のPCR反応で、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)(ATCC 31280)由来のDNAの1423bp領域を増幅した。増幅されたフラグメントのクローニングを助けるために、制限部位を導入するように、5'伸長を、各オリゴ中に設計した(図7)。増幅されたPCR産物(PCRwv309、配列番号:21、図8B)は、mbcMの5'末端の30bp及びさらに上流の相同性の1373bpをコードしていた。この1423bpフラグメントを、SmaIを用いて線状にされたpUC19にクローン化し、プラスミドpWV309をもたらした。
【0110】
【化8】
【0111】
次のクローニングステップのためのpUC19ポリリンカー中のPstI部位を利用するために、産物PCRwv308とPCRwv309を、同じ方向でpUC19にクローン化した。
pWV309由来の1443bp AvrII/PstIフラグメントを、pWV308の4073bp AvrII/PstIフラグメントにクローン化して、pWV310を作製した。したがって、pWV310は、AvrII部位で融合されたmbcMの隣接領域と相同なDNAをコードするSpeI/XbaIフラグメントを含有していた。この2816bp SpeI/XbaIフラグメントを、SpeIを用いて線状にされたpKC1132(Biermanらの文献, 1992)にクローン化し、pWV320を構築した。
【0112】
(4.3 アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)の形質転換)
プラスミドpUZ8002を内在する大腸菌(Escherichia coli)ET12567を電気穿孔法によってpWV320で形質転換し、接合のための大腸菌(E. coli)供与株を産生した。この株を使用して、無性生殖的接合によってアクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)を形質転換した(Matsushimaらの文献、1994)。接合完了体を、Medium 4上に蒔き、28℃で保温した。24時間後、プレートを、50mg/Lアプラマイシン及び25mg/Lナリジクス酸で覆った。pWV320は、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレティオスム(pretiosum)中で複製することができないので、アプラマイシン耐性のコロニーは、プラスミドによって運ばれる、mbcMに隣接する相同領域の1つを介する相同的組換えによって染色体に組み込まれたプラスミドpWV320を含有する形質転換体であることが予想された。
【0113】
6つの接合完了体からゲノムDNAを単離し、消化し、サザンブロットによって分析した。このブロットによって、6つの分離株のうちの4つでは、組込みは、上流の相同領域内に生じ、6つの分離株のうちの2つでは、相同的組込みは、下流領域内に生じることが示された。上流領域内の相同的組込みから生じる1つの株(BIOT-3831と呼ばれる)を、二次交差のスクリーニングのために選択した。下流領域中の相同的組込みから生じる1つの株(BIOT-3832)も、二次交差のスクリーニングのために選択した。
【0114】
(4.4 二次交差のスクリーニング)
各株を、(50mg/Lのアプラマイシンで補充された)medium 4上にパッチとして植え、28℃で4日間増殖させた。各パッチの1cm2断片を使用して、50mLのファルコンチューブ内の、抗生物質を含まない、7mLの改変されたISP2(1L蒸留水中の、0.4%酵母エキス、1%麦芽エキス、0.4%デキストロース)に接種した。培養株を、2〜3日間増殖させ、次いで、(5%接種材料に対して)50mLファルコンチューブ内の別の7mlの改変されたISP2(上記参照)で継代培養させる。4〜5代の継代後、培養株を超音波処理し、連続的に希釈し、Medium 4上に蒔き、28℃で4日間保温した。次いで、単一のコロニーを、アプラマイシンを含有するMedium 4上と、抗生物質を含有しないMedium 4上へ、二重にパッチとして植え、プレートを、28℃で4日間保温した。抗生物質を含まないプレート上で増殖したが、アプラマイシンプレート上では増殖しなかったパッチを、+/-アプラマイシン・プレート上へ再びパッチとして植え、それらが抗生物質マーカーを失ったことを確認した。すべてのアプラマイシン感受性株からゲノムDNAを単離し、サザンブロットによって分析した。このステージでは、二次交差株の半分は、野生型に戻ったが、半分は、所望のmbcM欠失変異株を産生した。この突然変異株は、502アミノ酸のインフレーム欠失を伴うmbcMタンパク質をコードする(図9)。
【0115】
mbcM欠失変異体を、Medium 4上へパッチとして植え、28℃で4日間増殖させた。各パッチからの6mmの円形のプラグを使用して、10mLシード培地(medium 1を変更したもの−2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%コーンスティープソリッド、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)を含有する個々の50mLファルコンチューブに接種した。これらの種培養物を、2インチの振幅で200rpmで、28℃で2日間保温した。次いで、これらを使用して、産生培地(medium 2−5%グリセロール、1%コーンスティープソリッド、2%酵母エキス、2%リン酸二水素カリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.1%炭酸カルシウム)に接種した(10mlに0.5ml)。28℃で24時間、その後、さらに26℃で5日間増殖させた。等しい体積の酢酸エチルを加えることによって、これらの培養物から二次代謝産物を抽出した。遠心分離によって壊死組織片を取り除いた。上清を、清潔な管に移し、真空中で溶媒を取り除いた。サンプルを0.23mlのメタノール中で、それに続いて0.02mLの1%(w/v)FeCl3溶液を加えることによって再構成した。サンプルを、マクベシン類似体の産生について評価した。
上の実施例2.3に述べた方法を使用するLCMSによる化学分析によって、それらが同一の保持時間及び質量スペクトルを有することに基づいて、化合物14及び15の存在が明確に同定された。
【0116】
(4.5 BIOT-3872のプロトプラストを産生することによる個々のコロニーの選択)
プロトプラストは、以下の培地変更を伴うWeber及びLosickの文献 1988を適合させた方法を使用して、BIOT-3872から産生された;アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum) 培養株を、28℃で3日間、ISP2プレート(medium 3)上で増殖させ、5mm2の部分をこそげ取り、2mLの滅菌10%(w/v)グリシン水溶液で補充された40mlのISP2ブロスに接種した。プロトプラストは、Weber及びLosickの文献 1988に記載される通りに産生し、次いで、R2プレート上で再生させた(R2製法−スクロース103g、K2SO4 0.25g、MgCl2.6H2O 10.12g、グルコース10g、Difco Casaminoacids 0.1g、Difco Bacto寒天22g、800mLまでの蒸留水)。この混合物を、121℃で20分間、高圧蒸気殺菌法によって滅菌した。高圧蒸気殺菌法の後、高圧蒸気殺菌した以下の溶液を加えた;0.5% KH2PO4 10ml、3.68% CaCl2.2H2O 80ml、20% L-プロリン15ml、5.73% TES緩衝液(pH7.2)100mL、微量元素溶液(ZnCl2 40mg、FeCl3.6H2O 200mg、CuCl2.2H2O 10mg、MnCl2.4H2O 10mg、Na2B4O7.10H2O 10mg、(NH4)6Mo7O24.4H2O 10mg、1リットルまでの蒸留水)2mL、NaOH(1N)(非滅菌)5mL)。
【0117】
80の個々のコロニーを、MAMプレート(Medium 4)上へパッチとして植え、上の実施例2.3で述べた通りにマクベシン類似体の産生について分析した。大多数のプロトプラストは、親株と類似のレベルで産生されるパッチを産生した。試験された80のサンプル中15は、親株よりも有意に多い14及び15を産生した。最も優れた産生株、WV4a-33(BIOT-3870)は、親株よりも有意に高いレベルで14及び15を産生することが観察された。
【0118】
(実施例5−生物学データ−マクベシン類似体の抗癌活性のインビトロ評価)
単層増殖分析におけるヒトの腫瘍細胞株のパネルにおける試験化合物の抗癌活性に対するインビトロ評価を、改変されたヨウ化プロピジウム分析を使用する一般方法に記載される通りに実施した。
9つの細胞株についての結果を、下の表6に示す;それぞれの結果は、二重実験の中央値を表す。表7は、試験された38の細胞株パネル全体の化合物に対する平均IC70を示す(参照としてマクベシンが示される)。
【表10】
【表11】
【0119】
(実施例6−溶解度分析)
試験化合物の溶液(25mM)を、3〜5mgの一定分量を適切な量のDMSOに溶解することによって調製した。
一定分量(0.01mL)を、ガラスバイアル中の0.490mLのpH 7.3 PBSに加えた。各時点に対して、3つのPBSバイアルを、アンバーガラスバイアル中に調製した。6時間の時点については、DMSO中の三重の一定分量も、調製した。
【0120】
1、3、及び6時間で、分析のためにバイアルを取り出し、得られた0.5mMの溶液を、最高6時間振盪した。サンプルを、HPLC(0.025mL注入)によって分析した。化合物を、274nmでのピーク面積測定によって定量化した。
各時点での2% DMSO(PBS中)中の溶解度を、各クロマトグラムの総ピーク面積を、相当する6時間のDMSO溶液から作成されるクロマトグラムの平均総ピーク面積と比較することによって決定した。(DMSO溶液における平均の総ピーク面積は、0.5mM溶液と同等であるとみなされた)。これらの結果を、表8に示す。
【表12】
【0121】
(実施例7−Hsp90結合)
(等温滴定熱量測定及びKd決定)
酵母Hsp90を、1mM EDTA及び5mM NaClを含有する20mM Tris pH 7.5に対して透析し、次いで、同じ緩衝液(ただし2% DMSOを含有する)で0.008mMに希釈した。試験化合物を、50mMの濃度で、100% DMSOに溶解し、続いて、同じ緩衝液(Hsp90に関しては2% DMSOを含む)で0.1mMに希釈した。相互作用の熱は、MSCシステム(Microcal)で、30℃で測定し、細胞容積が1.458mLである0.100mMの各試験化合物の0.027mlの10の一定分量を、0.008mM酵母Hsp90に注入した。希釈熱は、2% DMSOを含有する緩衝液に試験化合物を注入することによって、別々の実験で決定され、補正データを非線形最小二乗曲線適合アルゴリズム(Microcal Origin)を使用して、3つの浮動的な変数:化学量論、結合定数及び相互作用のエンタルピーの変化と適合させた。これらの結果を表9に示す。
【表13】
【0122】
(実施例8−mbcMがインフレーム欠失を有し、それに加えてmbcMT1、mbcMT2、mbcP、及びmbcP450が欠失させられたアクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)株の産生)
(8.1 mbcMT2の下流の隣接領域と相同なDNAのクローニング)
オリゴls4del1(配列番号:29)及びls4del2a(配列番号:30)を使用して、鋳型としてのコスミド52(実施例1から)及びPfu DNAポリメラーゼを使用する標準のPCR反応で、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)(ATCC 31280)由来のDNAの1595bp領域を増幅した。増幅されたフラグメントのクローニングを助けるために、AvrII部位を導入するように、5'伸長を、オリゴls4del2a中に設計した(図10)。増幅されたPCR産物(1+2a、図11 配列番号:31)は、mbcMT2の3'末端の196bp及びさらに下流の相同性の1393bpをコードしていた。この1595bpフラグメントを、SmaIを用いて線状にされたpUC19にクローン化し、プラスミドpLSS1+2aをもたらした。
【化9】
【0123】
(8.2 mbcMの上流の隣接領域と相同なDNAのクローニング)
オリゴls4del3b(配列番号:32)及びls4del4(配列番号:33)を使用して、鋳型としてのコスミド52(実施例1から)及びPfu DNAポリメラーゼを使用する標準のPCR反応で、アクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)(ATCC 31280)由来のDNAの1541bp領域を増幅した。増幅されたフラグメントのクローニングを助けるために、AvrII部位を導入するように、5'伸長を、オリゴls4del3b中に設計した(図10)。増幅されたPCR産物(3b+4、図12、配列番号:34)は、mbcPの5'末端の~100bp及びさらに上流の相同性の~1450bpをコードしていた。この~1550 bpフラグメントを、SmaIを用いて線状にされたpUC19にクローン化し、プラスミドpLSS3b+4をもたらした。
【化10】
【0124】
次のクローニング・ステップのためのpUC19ポリリンカー中のHindIII及びBamHI部位を利用するために、産物1+2a及び3b+4を、pUC19にクローン化した。
pLSS1+2a由来の1621bp AvrII/HindIIIフラグメント及びpLSS3b+4由来の1543bp AvrII/BamHIフラグメントを、pKC1132の3556bp HindIII/BamHIフラグメントにクローン化して、pLSS315を作製した。したがって、pLSS315は、AvrII部位で融合された所望の4つのORF欠失領域の隣接領域と相同なDNAをコードするHindIII/BamHIフラグメントを含有していた(図7)。
【0125】
(8.3 pLSS315を用いるBIOT-3870の形質転換)
プラスミドpUZ8002を内在する大腸菌(Escherichia coli)ET12567を、電気穿孔法によってpLSS315で形質転換させ、接合のための大腸菌(E. coli)供与体株を産生した。この株を、無性生殖的接合によってBIOT-3870を形質転換するために使用した(Matsushimaらの文献, 1994)。接合完了体を、MAM培地(1%小麦デンプン、0.25%コーンスティープソリッド、0.3%酵母エキス、0.3%炭酸カルシウム、0.03%硫酸鉄、2%寒天)上に蒔き、28℃で保温した。24時間後、プレートを、50mg/Lアプラマイシン及び25mg/Lナリジクス酸で覆った。pLSS315は、BIOT-3870中で複製することができないので、アプラマイシン耐性のコロニーは、プラスミドによって運ばれる相同領域を介する相同的組換えによって染色体に組み込まれたプラスミドを含有する形質転換体であることが予想された。
【0126】
(8.4 二次交差についてのスクリーニング)
BIOT-3870:pLSS315の3つの一次形質転換体を、二次交差についてスクリーニングをするために継代培養するために選択した。
各株を、(50mg/Lのアプラマイシンで補充された)MAM培地上にパッチとして植え、28℃で4日間増殖させた。2つの6mmの円形のプラグを使用して、250mlコニカルフラスコ中の30mLのISP2(0.4%酵母エキス、1%麦芽エキス、0.4%デキストロース(抗生物質で補充されない))に接種した。培養株を、2〜3日間増殖させ、次いで、(5%接種材料を)250mlコニカルフラスコ内の30mLのISP2で継代培養させた。4〜5代の継代培養の後、培養株を、実施例3.6に記載される通りにプロトプラスト化し、プロトプラストを連続的に希釈し、再生培地(実施例3.6参照)に蒔き、28℃で4日間保温した。次いで、単一のコロニーを、アプラマイシンを含有するMAM培地上と、抗生物質を含有しないMAM培地上へ、二重にパッチとして植え、プレートを、28℃で4日間保温した。抗生物質を含まないプレート上で増殖したが、アプラマイシンプレート上では増殖しなかった、クローン番号1(番号32〜37)から得られる7つのパッチ及びクローン番号3から得られる4つのパッチ(番号38〜41)を、+/-アプラマイシン・プレート上へ再びパッチとして植え、それらが抗生物質のマーカーを失ったことを確認した。
【0127】
マクベシン類似体の産生を、一般方法で記載した通りに実施した。分析は、一般方法及び実施例2で記載した通りに実施した。パッチ33、34、35、37、39、及び41については、化合物14は、親株BIOT-3870に匹敵する収率で産生され、化合物15の産生は、観察されなかった。この結果は、所望の突然変異株が、mbcMの本来の欠失に加えて、遺伝子mbcP、mbcP450、mbcMT1、及びmbcMT2を含有するマクベシンクラスターの3892bpの欠失を有することを示す。
【0128】
(実施例9−生物学データ−化合物14の、標準の細胞傷害性薬剤マイトマイシンC、イホスファミド、シクロヘキシルクロロエチルニトロソウレア(CCNU)、ミトキサントロン、及びビンデシンとの抗癌的組み合わせのインビトロ評価)
単層増殖分析における、腫瘍細胞株DU145に対する、標準の細胞傷害性薬剤と組み合わせられる場合の、抗癌活性に関する14のインビトロ評価を、改変されたヨウ化プロピジウム分析を使用する一般方法に記載される通りに実施した。4つの別々の濃度の14(マイトマイシンCについては0〜80nM、イホスファミド、CCNU、ミトキサントロン、及びビンデシンについては0〜160nM)を、10種の濃度の標準の薬剤と共に使用した。相対的な細胞増殖割合である処理/対照(%T/C)をプロットし、これを使用して、図13〜17に示されるグラフを描いた。次いで、これらのグラフを使用して、表10〜11に示されるIC70値を算出した。
【0129】
【表14】
【表15】
このデータは、標準の細胞傷害性薬剤(アルキル化剤マイトマイシンC、イホスファミド、及びCCNU、トポイソメラーゼII阻害剤ミトキサントロン、並びに分裂抑制剤ビンデシンなど)の効果を、化合物14の添加によって向上させることができることを示す。マイトマイシンC、イホスファミド、CCNU、ミトキサントロン、及びビンデシンなどの細胞傷害性薬剤の有用性は、その毒性によって、限られることが知られており、これらは通常、その最大耐量に近い高レベルで治療に用いられる。したがって、本発明の化合物14及び他の化合物は、治療に使用される細胞傷害性薬剤(マイトマイシンC、イホスファミド、CCNU、ミトキサントロン、ビンデシンなど)の量を控えることにおいて有用な効果を有するはずであると推測することができる。したがって、細胞傷害性薬剤単独又は細胞傷害性薬剤の別の細胞傷害性薬剤との組み合わせを用いて達成されるよりも、より大きな治療有効性、又はより小さな副作用を伴う有効性を達成することが可能であり得る。
【0130】
(引用文献)
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【0131】
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Neckers, Lの文献 (2003)「小分子Hsp90阻害剤の開発:薬物同定のためのフォワード及びリバース化学的ゲノム研究の利用 (Development of small molecule Hsp90 inhibitors: utilizing both forward and reverse chemical genomics for drug identification)」(Current Medicinal Chemistry 9:733-739)
Neckers, L.の文献 (2002)「新規癌化学療法剤としてのHsp90阻害剤 (Hsp90 inhibitors as novel cancer chemotherapeutic agents)」(Trends in Molecular Medicine 8: S55-S61)
Nimmanapalli, R., O'Bryan, E., Kuhn, D., Yamaguchi, H., Wang, H.-G. 及びBhalla, K.N.の文献 (2003)「17AAG誘発性アポトーシスの調節:Akt、Raf-1、及びSrcキナーゼの17AAG介在性下方制御の、BCL-2、BCL-xL、及びBax下流部の役割 (Regulation of 17-AAG-induced apoptosis: role of Bcl-2, Bcl-xL, and Bax downstream of 17-AAG-mediated down-regulation of Akt, Raf-1, and Src kinases)」(Neoplasia 102:269-275)
【0139】
Omura, S., Iwai, Y., Takahashi, Y., Sadakane, N., Nakagawa, A., Oiwa, H., Hasegawa, Y., Ikai, T.の文献 (1979)「ハービマイシン、ストレプトマイセスの株によって産生される新規の抗生物質 (Herbimycin, a new antibiotic produced by a strain of Streptomyces)」(The Journal of Antibiotics, 32(4), pp255-261)
Omura, S., Miyano, K., Nakagawa, A., Sano, H., Komiyama, K., Umezawa, I., Shibata, K, Satsumabayashi, S.の文献 (1984)「ハービマイシンA、8,9-エポキシド、7,9-カルバメート、及び17又は19-アミノ誘導体の化学修飾及び抗腫瘍活性 (Chemical modification and antitumor activity of Herbimycin A. 8,9-epoxide, 7,9-carbamate, and 17 or 19-amino derivatives)」(The Journal of Antibiotics, 37(10), pp1264-1267)
Ono, Y., Kozai, Y. and Ootsu, K.の文献 (1982)「新たに単離されたベンゼン系アンサマイシン、マクベシンIの抗腫瘍及び細胞破壊活性 (Antitumor and cytocidal activities of a newly isolated benzenoid ansamycin, Macbecin I)」(Gann.73:938-44)
Patel, K., M. Piagentini, Rascher, A., Tian, Z. Q., Buchanan, G. O., Regentin, R., Hu, Z., Hutchinson, C. R. 及びMcDaniel, R.の文献 (2004)「hsp90阻害のためのゲルダナマイシン類似体の操作された生合成 (Engineered biosynthesis of geldanamycin analogs for hsp90 inhibition)」(Chem Biol 11(12): 1625-33)
Pfeifer, B. A. 及びC. Khoslaの文献 (2001)「異種宿主におけるポリケチドの生合成 (Biosynthesis of polyketides in heterologous hosts)」(Microbiology and Molecular Biology Reviews 65(1): 106-118)
【0140】
Rascher, A., Hu, Z., Viswanathan, N., Schirmer, A.らの文献 (2003)「ストレプトマイセス・ハイグロスコピカスNRRL 3602におけるゲルダナマイシン産生のための遺伝子クラスターのクローニング及び特徴付け (Cloning and characterization of a gene cluster for geldanamycin production in Streptomyces hygroscopicus NRRL 3602)」(FEMS Microbiology Letters 218:223-230)
Rascher, A., Z. Hu, Buchanan, G. O., Reid, R. 及びHutchinson, C. R.の文献 (2005)「遺伝子配列及び破壊によって得られる、ベンゾキノンアンサマイシンであるゲルダナマイシン及びハービマイシンの生合成に対する洞察 (Insights into the biosynthesis of the benzoquinone ansamycins geldanamycin and herbimycin, obtained by gene sequencing and disruption)」(Appl Environ Microbiol 71(8): 4862-71)
Rawlings, B. J.の文献 (2001)「細菌におけるI型ポリケチド生合成(Part B) (Type I polyketide biosynthesis in bacteria (Part B))」(Natural Product Reports 18(3): 231-281)
Roth T., Burger A.M., Dengler W., Willmann H. 及びFiebig H.H.の文献「抗癌剤スクリーニングのための有用なモデルとして患者の腫瘍の特性を実証しているヒトの腫瘍株 (Human tumor cell lines demonstrating the characteristics of patient tumors as useful models for anticancer drug screening)」(In: Fiebig HH, Burger AM (編))「抗癌剤開発のための腫瘍モデルの妥当性(Relevance of Tumor Models for Anticancer Drug Development)」(Contrib. Oncol. 1999、54:145-156)
Rowlands, M.G., Newbatt, Y.M., Prodromou, C., Pearl, L.H., Workman, P. 及びAherne, W.の文献 (2004)「ヒートショックタンパク質90 ATPアーゼ活性の阻害剤に対するハイスループットスクリーニング分析 (High-throughput screening assay for inhibitors of heat-shock protein 90 ATPase activity)」(Analytical Biochemistry 327:176-183)
【0141】
Schulte, T.W., Akinaga, S., Murakata, T., Agatsuma, T.らの文献 (1999)「分子シャペロンの熱ショックタンパク質90ファミリーのメンバーとのラディシコールの相互作用 (Interaction of radicicol with members of the heat shock protein 90 family of molecular chaperones)」(Molecular Endocrinology 13:1435-1488)
Shibata, K., Satsumabayashi, S., Nakagawa, A., Omura, S.の文献 (1986a)「ハービマイシンCの構造及び細胞破壊活性 (The structure and cytocidal activity of herbimycin C)」(The Journal of Antibiotics, 39(11), pp1630-1633)
Shibata, K., Satsumabayashi, S., Sano, H., Komiyama, K., Nakagawa, A., Omura, S.の文献 (1986b)「ハービマイシンAの化学修飾:ハービマイシンAのハロゲン化誘導体及び他の関連する誘導体の合成及びインビボ抗腫瘍活性 (Chemical modification of Herbimycin A: synthesis and in vivo antitumor activities of halogenated and other related derivatives of herbimycin A)」(The Journal of Antibiotics, 39(3), pp415-423)
Shirling, E.B. 及びGottlieb, D.の文献 (1966)「インターナショナル・ジャーナル・オブ・システマティック・バクテリオロジー (International Journal of Systematic Bacteriology)」(16:313-340)
Smith-Jones, P.M., Solit, D.B., Akhurst, T., Afroze, F., Rosen, N. 及びLarson, S.M.の文献 (2004)「Hsp90阻害剤に応答するHER2分解の薬物動態のイメージング (Imaging the pharmacodynamics of HER2 degradation in response to Hsp90 inhibitors)」(Nature Biotechnology 22:701-706)
【0142】
Spiteller, P., Bai, L., Shang, G., Carroll, B.J., Yu, T.-W. 及びFloss, H. G.の文献 (2003)「アクティノシンネマ・プレティオスムによる抗癌剤アンサミトシンの生合成におけるpost-ポリケチド合成酵素改変ステップ (The post-polyketide synthase modification steps in the biosynthesis of the antitumor agent ansamitocin by Actinosynnema pretiosum)」(J Am Chem Soc 125(47):14236-7)
Sreedhar A.S., Nardai, G. 及びCsermely, P.の文献 (2004)「補体誘発性細胞溶解の増強:Hsp90阻害剤の抗癌効果のための新規の機構 (Enhancement of complement-induced cell lysis: a novel mechanism for the anticancer effects of Hsp90 inhibitors)」(Immunology letters 92:157-161)
Sreedhar, A.S., Soti, C. 及びCsermely, P.の文献 (2004a)「Hsp90の阻害:プロテインキナーゼを阻害するための新規の戦略 (Inhibition of Hsp90: a new strategy for inhibiting protein kinases)」(Biochimica Biophysica Acta 1697:233-242)
Staunton, J. 及びK. J. Weissmanの文献 (2001)「ポリケチド生合成:ミレニアムレビュー (Polyketide biosynthesis: a millennium review." Natural Product Reports)」(Natural Product Reports 18(4): 380-416)
Stead, P., Latif, S., Blackaby, A.P.らの文献 (2000)「細胞ベースのオンコスタチンMシグナル伝達アッセイにおいて強力な阻害活性を有する新規のアンサマイシンの発見 (Discovery of novel ansamycins possessing potent inhibitory activity in a cell-based oncostatin M signalling assay)」(J Antibiotics 53:657-663)
【0143】
Supko, J.G., Hickman, R.L., Grever, M.R. 及びMalspeis, Lの文献 (1995)「抗癌剤としてのゲルダナマイシンの前臨床薬理学的評価 (Preclinical pharmacologic evaluation of geldanamycin as an antitumor agent)」(Cancer Chemother. Pharmacol. 36:305-315)
Takahashi, A., Casais, C., Ichimura K. 及びShirasu, K.の文献 (2003)「HSP90は、RAR1及びSGT1と相互作用し、アラビドプシスにおけるRPS2介在性の耐病性に不可欠である (HSP90 interacts with RAR1 and SGT1 and is essential for RPS2-mediated disease resistance in Arabidopsis)」(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 20:11777-11782)
Tanida, S., Hasegawa, T. 及びHigashide E.の文献 (1980)「マクベシンI及びII、新規の抗腫瘍抗生物質、I.産生生物、発酵及び抗菌活性 (Macbecins I and II, New Antitumor antibiotics. I. Producing organism, fermentation and antimicrobial activities)」(J Antibiotics 33:199-204)
Tian, Z.-Q., Liu, Y., Zhang, D., Wang, Z.らの文献 (2004)「新規の17-アミノゲルダナマイシン誘導体の合成及び生物的活性 (Synthesis and biological activities of novel 17-aminogeldanamycin derivatives)」(Bioorganic and Medicinal Chemistry 12:5317-5329)
Uehara, Y.の文献 (2003)「天然物起源のHsp90阻害剤 (Natural product origins of Hsp90 inhibitors)」(Current Cancer Drug Targets 3:325-330)
【0144】
Vasilevskaya, I.A., Rakitina, T.V. 及びO'Dwyer, P.J.の文献 (2003)「ゲルダナマイシン及びその17-アリルアミノ-17-デメトキシ類似体は、ヒトの大腸腺癌細胞におけるシスプラチンの作用:相互作用のベースとしての差別的なカスパーゼ活性化に拮抗する (Geldanamycin and its 17-Allylamino-17-Demethoxy analogue antagonize the action of cisplatin in human colon adenocarcinoma cells: differential caspase activation as a basis of interaction)」(Cancer Research 63: 3241-3246)
Watanabe, K., Okuda, T., Yokose, K., Furumai, T. 及びMaruyama, H.H.の文献 (1982)「アクチノシンネマ・ミルム、ノカルジシン抗生物質の新規産生株 (Actinosynnema mirum, a new producer of nocardicin antibiotics)」(J. Antibiot. 3:321-324)
Weber, J.M., Losick, R.の文献 (1988)「マップエリスロマイシン耐性に対する染色体組込み型ベクター及びサッカロポリスポラ・エリスラエア(ストレプトマイセス・エリスラエウス)の産生遺伝子の使用 (The use of a chromosome integration vector to a map erythromycin resistance and production genes in Sacharopolyspora erythraea (Streptomyces erythraeus))」(Gene 68(2), 173-180)
Wegele, H., Muller, L. 及びBuchner, J.の文献 (2004)「Hsp70及びHsp90-タンパク質の折畳みのための中継チーム (Hsp70 and Hsp90-a relay team for protein folding)」(Rev Physiol Biochem Pharmacol 151:1-44)
Wenzel, S.C., Gross, F, Zhang, Y., Fu, J., Stewart, A.F. 及びMuller, Rの文献 (2005)「シュードモナスにおけるRed/ETリコンビニアリングを介する粘液細菌の天然物構築系統の異種発現 (Heterologous expression of a myxobacterial natural products assembly line in Pseudomonads via Red/ET recombineering)」(Chemistry & Biology 12: 249-356)
【0145】
Whitesell, L., Mimnaugh, E.G., De Costa, B., Myers, C.E. 及びNeckers, L.M.の文献 (1994)「ベンゾキノン・アンサマイシンによる熱ショックタンパク質HSP90-pp60v-src異種タンパク質複合体形成の抑制:腫瘍化転換におけるストレスタンパク質の不可欠な役割 (Inhibition of heat shock protein HSP90-pp60v-src heteroprotein complex formation by benzoquinone ansamycins: Essential role for stress proteins in oncogenic transformation)」(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 8324-8328)
Winklhofer, K.F., Heller, U., Reintjes, A. 及びTatzelt J.の文献 (2003)「複雑な糖鎖形成の抑制は、PrPscの形成を増大させる (Inhibition of complex glycosylation increases the formation of PrPsc)」(Traffic 4:313-322)
Workman P.の文献 (2003)「Hsp90分子シャペロン阻害剤の薬理学的評価を検査すること:薬物動態と薬力学との間の関係を明らかにすること (Auditing the pharmacological accounts for Hsp90 molecular chaperone inhibitors: unfolding the relationship between pharmacokinetics and pharmacodynamics)」(Molecular Cancer Therapeutics 2:131-138)
Workman, P. 及びKaye, S.B.の文献 (2002)「基礎的癌研究を新規の癌治療に置き換えること (Translating basic cancer research into new cancer therapeutics)」(Trends in Molecular Medicine 8: S1-S9)
Young, J.C.; Moarefi, I. 及びHartl, U.の文献 (2001)「Hsp90:特化されてはいるが本質的なタンパク質折りたたみツール (Hsp90: a specialized but essential protein folding tool)」(J. Cell. Biol. 154:267-273)
【0146】
本出願に引用された特許及び特許出願を含めたすべての引用文献は、可能な限り最大の範囲まで、参照により本明細書に組み込むものとする。
本明細書及びこれに続く特許請求の範囲全体を通して、文脈が他に必要としない限り、単語「含む(comprise)」、並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変化形は、所定の整数又はステップあるいは整数の群の包含を意味するが、他のいずれの整数又はステップ、あるいは整数又はステップの群も除外されないことが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】第1の推定上の酵素を含まない中間体、マクベシン前駆体、及びマクベシンへのpost-PKSプロセシングを示す、マクベシンの生合成の表示。この図におけるPKSプロセシングステップの列挙は、事象の順序を表すことを意図するものではない。以下の略語は、クラスター内の特定の遺伝子に対して使用される:AL0−AHBAローディングドメイン; ACP−アシルキャリアータンパク質; KS−β-ケトアシルシンターゼ; AT−アシルトランスフェラーゼ; DH−デヒドラターゼ; ER−エノイルレダクターゼ; KR−β-ケトレダクターゼ。
【図2】マクベシンを与えるマクベシン前駆体の、post-PKSプロセシングの部位の描写。
【図3】mbcM遺伝子破壊をもたす相同的組み換えによって、プラスミドpLSS308が、その染色体に組み込まれる、操作された株BIOT-3806の産生の図示。
【0148】
【図4】gdmM(配列番号:1)及びriforf19(配列番号:2)の配列アラインメント。縮重するオリゴの結合領域には、下線を引いてある。
【図5】gdmM(配列番号:1)、mbcMフラグメント(配列番号:3, A.ミルム(A.mirum))、及びmbcM遺伝子(配列番号:4, A.プレティオスム(A. pretiosum))の配列アラインメント。縮重するオリゴの結合領域には、下線を引いてある。
【図6】A:gdmMの翻訳によって産生されるGdmMのタンパク質配列(配列番号:5)、B:riforf19の翻訳によって産生されるRiforf19のタンパク質配列(配列番号:6);これは、タンパク質配列間の類似性を実証する。
【図7】実施例4に記載したmbcMのインフレーム欠失の構築の図示。
【図8】A−PCR産物PCRwv308の配列(配列番号:20)を示す。B−PCR産物PCRwv309の配列(配列番号:21)を示す
【0149】
【図9】A:実施例4に記載した通りにmbcM内の502アミノ酸のインフレーム欠失から得られるDNA配列(配列番号:26及び27)を示す。キー:1〜21bpは、3-アミノ5-ヒドロキシ安息香酸生合成のホスファターゼの3'末端をコードし、136〜68bpは、mbcM欠失タンパク質をコードし、161〜141bpは、mbcFの3'末端をコードする。B:タンパク質のアミノ酸配列(配列番号:28)を示す。このタンパク質配列は、図9Aに示される相補鎖から産生される。
【図10】mbcP、mbcP450、mbcMT1、及びmbcMT2遺伝子が、mbcMの欠失に伴ってインフレーム欠失させられたアクティノシンネマ・プレティオスム(Actinosynnema pretiosum)株の産生の図示。
【図11】増幅されたPCR産物1+2aの配列(配列番号:31)。
【図12】増幅されたPCR産物3b+4の配列(配列番号:34)。
【0150】
【図13】0〜80nMの化合物14と、0〜3μg/mlのマイトマイシンCとの組み合わせの、インビトロにおける、癌細胞株DU145の増殖に対する効果を示すグラフ。
【図14】0〜160nMの化合物14と、0〜100μg/mlのシクロヘキシルクロロエチルニトロソウレア(CCNU)との組み合わせの、インビトロにおける、癌細胞株DU145の増殖に対する効果を示すグラフ。
【図15】0〜160nMの化合物14と、0〜100μg/mlのイホスファミドとの組み合わせの、インビトロにおける、癌細胞株DU145の増殖に対する効果を示すグラフ。
【図16】0〜160nMの化合物14と、0〜10μg/mlのミトキサントロンとの組み合わせの、インビトロにおける、癌細胞株DU145の増殖に対する効果を示すグラフ。
【図17】0〜160nMの化合物14と、0〜1のμg/mlのビンデシンとの組み合わせの、インビトロにおける、癌細胞株DU145の増殖に対する効果を示すグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩:
【化1】
(式中、
R1は、H、OH、又はOCH3を表し、
R2は、H又はCH3を表し、
R3及びR4は、どちらもHを表すか、又は共に結合を表し(すなわち、C4からC5は二重結合であり)、
R5は、H又は-C(O)-NH2を表す)。
【請求項2】
R1がH又はOHを表す、請求項1記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項3】
R1がHを表す、請求項1記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項4】
R1がOHを表す、請求項1記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項5】
R2がHを表す、請求項1から4のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項6】
R3とR4がどちらもHを表す、請求項1から5のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項7】
R5が-C(O)-NH2を表す、請求項1から6のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項8】
R1がHを表し、R2がHを表し、R3とR4がどちらもHを表し、R5が-C(O)-NH2を表す、請求項1記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項9】
R1がOHを表し、R2がHを表し、R3とR4がどちらもHを表し、R5が、-C(O)-NH2を表す、請求項1記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項10】
下記式
【化2】
又は医薬として許容し得るその塩である、請求項1記載の21-デオキシマクベシン類似体。
【請求項11】
下記式
【化3】
又は医薬として許容し得るその塩である、請求項1記載の21-デオキシマクベシン類似体。
【請求項12】
1以上の医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に、請求項1から11のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩を含む、医薬組成物。
【請求項13】
医薬品としての使用のための請求項1から11のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体。
【請求項14】
癌、B細胞腫瘍、マラリア、真菌感染、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患、血管形成に依存する疾患、自己免疫疾患の治療のための、及び/又は癌のための予防的前処置としての、医薬品の製造における請求項1から11のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体の使用。
【請求項15】
癌、B細胞腫瘍、マラリア、真菌感染、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患、血管形成に依存する疾患、自己免疫疾患の治療のための、及び/又は癌のための予防的前処置としての、医薬品としての使用のための請求項1から11のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体。
【請求項16】
投与の必要のある患者に、請求項1から11のいずれか1項記載の有効量の21-デオキシマクベシン類似体を投与することを含む、癌、B細胞腫瘍、マラリア、真菌感染、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患、血管形成に依存する疾患、自己免疫疾患の治療の、及び/又は癌のための予防的前処置としての方法。
【請求項17】
21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩が、別の治療と組み合わせて投与される、請求項1から16のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩、組成物、使用、又は方法。
【請求項18】
別の治療が、メトトレキセート、ロイコボリン、プレニゾン、ブレオマイシン、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ドキソルビシン、タモキシフェン、トレミフェン、酢酸メゲストロール、アナストロゾール、ゴセレリン、抗HER2モノクローナル抗体、カペシタビン、ラロキシフェン塩酸塩、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、プロテアソーム阻害剤、放射線療法、及び手術からなる群から選択される、請求項17記載の21-デオキシマクベシン類似体、組成物、使用、又は方法。
【請求項19】
別の治療が、シスプラチン、シタラビン、シクロヘキシルクロロエチルニトロソウレア、シクロホスファミド、ゲムシタビン、イホスファミド、ロイコボリン、マイトマイシン、ミトキサントン、オキサリプラチン、並びにタキソール及びビンデシンを含めてタキサンなどの従来の化学療法剤;アナストロゾール、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、及びプレニゾンなどのホルモン療法薬;セツキシマブ(抗EGFR)などのモノクローナル抗体療法薬;ダサチニブ、ラパチニブなどのプロテインキナーゼ阻害剤;ボリノスタットなどのヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤;スニチニブ、ソラフェニブ、レナリドマイドなどの血管形成阻害剤;並びにテムシロリムスなどのmTOR阻害剤からなる群から選択される、請求項17記載の21-デオキシマクベシン類似体、組成物、使用、又は方法。
【請求項20】
別の治療が細胞傷害性薬剤である、請求項17記載の21-デオキシマクベシン類似体、組成物、使用、又は方法。
【請求項21】
別の治療が、マイトマイシンC、イホスファミド、CCNU、ミトキサントロン、及びビンデシンから選択される、請求項20記載の21-デオキシマクベシン類似体、組成物、使用、又は方法。
【請求項22】
請求項1から11のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体の産生のための方法であって、
a)適切な条件下で培養される場合にマクベシンを産生する第1の宿主株を提供することと、
b)1以上のpost-PKS遺伝子を欠失又は不活化させることと(ただし、該post-PKS遺伝子のうちの少なくとも1つは、mbcM又はその相同体である)、
c)改変された前記宿主株を21-デオキシマクベシン類似体の産生に適した条件下で培養することと、
d)産生された化合物を任意に単離すること、
を含む、前記方法。
【請求項23】
請求項1から11のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体の産生のための方法であって、
a)適切な条件下で培養された場合にマクベシンを産生する第1の宿主株を提供することと、
b)1以上のpost-PKS遺伝子を欠失又は不活化させることと(ただし、該post-PKS遺伝子のうちの少なくとも1つは、mbcM又はその相同体である)、
c)mbcMを含まないpost-PKS遺伝子のいくつか又はすべてを再導入することと、
d)改変された前記宿主株を、21-デオキシマクベシン類似体の産生に適した条件下で培養することと、
e)産生された化合物を任意に単離すること、
を含む、前記方法。
【請求項24】
ステップ(a)において、前記株がマクベシン産生株である、請求項23又は24記載の方法。
【請求項25】
21-デオキシマクベシン類似体の産生のために培養される操作された株が、mbcMを含めたpost-PKS遺伝子のうちの1以上が欠失又は不活化させられたマクベシン産生株に基づくものである、請求項22から24記載の方法。
【請求項26】
21-デオキシマクベシン類似体の産生のために培養される操作された株が、mbcMが欠失又は不活化されたマクベシン産生株に基づく操作された株である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
21-デオキシマクベシン類似体の産生のために培養される操作された株が、mbcM、mbcMT1、mbcMT2、mbcP、及びmbcP450が欠失又は不活化されたマクベシン産生株に基づく操作された株である、請求項25記載の方法。
【請求項28】
mbcM遺伝子又はその相同体が、21-デオキシマクベシン又はその類似体が産生されるように欠失又は不活化させられた、マクベシン及びその類似体を天然に産生する宿主株。
【請求項29】
mbcM及び任意にさらなるpost-PKS遺伝子が欠失又は不活化させられた、マクベシン産生株に基づく操作された株。
【請求項30】
mbcMが欠失又は不活化させられた、請求項29記載の操作された株。
【請求項31】
mbcMと、mbcN、mbcP mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450から選択される1以上の遺伝子とが、欠失又は不活化させられた、請求項29記載の操作された株。
【請求項32】
mbcMと、mbcN、mbcP mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450から選択される2以上の遺伝子とが、欠失又は不活化させられた、請求項29記載の操作された株。
【請求項33】
mbcMと、mbcN、mbcP mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450から選択される3以上の遺伝子とが、欠失又は不活化させられた、請求項29記載の操作された株。
【請求項34】
mbcMと、mbcN、mbcP mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450から選択される4以上の遺伝子とが、欠失又は不活化させられた、請求項29記載の操作された株。
【請求項35】
マクベシン産生を開始する株が、A プレティオスム(A pretiosum)又はA ミルム(A mirum)である、請求項29から34のいずれか1項記載の操作された株。
【請求項36】
21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩の調製における、請求項29から34のいずれか1項記載の操作された株の使用。
【請求項37】
21-デオキシマクベシン類似体が、請求項1から11のいずれか1項によって定義されるものである、請求項36記載の使用。
【請求項38】
21-デオキシマクベシン又はその類似体の産生のための請求項28記載の宿主株の使用。
【請求項39】
癌及び/又はB細胞腫瘍の治療のための請求項14から16のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体、使用、又は方法。
【請求項40】
請求項22から27のいずれか1項記載の方法によって産生可能な21-デオキシマクベシン類似体。
【請求項1】
下記式(I)の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩:
【化1】
(式中、
R1は、H、OH、又はOCH3を表し、
R2は、H又はCH3を表し、
R3及びR4は、どちらもHを表すか、又は共に結合を表し(すなわち、C4からC5は二重結合であり)、
R5は、H又は-C(O)-NH2を表す)。
【請求項2】
R1がH又はOHを表す、請求項1記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項3】
R1がHを表す、請求項1記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項4】
R1がOHを表す、請求項1記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項5】
R2がHを表す、請求項1から4のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項6】
R3とR4がどちらもHを表す、請求項1から5のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項7】
R5が-C(O)-NH2を表す、請求項1から6のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項8】
R1がHを表し、R2がHを表し、R3とR4がどちらもHを表し、R5が-C(O)-NH2を表す、請求項1記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項9】
R1がOHを表し、R2がHを表し、R3とR4がどちらもHを表し、R5が、-C(O)-NH2を表す、請求項1記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩。
【請求項10】
下記式
【化2】
又は医薬として許容し得るその塩である、請求項1記載の21-デオキシマクベシン類似体。
【請求項11】
下記式
【化3】
又は医薬として許容し得るその塩である、請求項1記載の21-デオキシマクベシン類似体。
【請求項12】
1以上の医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に、請求項1から11のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩を含む、医薬組成物。
【請求項13】
医薬品としての使用のための請求項1から11のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体。
【請求項14】
癌、B細胞腫瘍、マラリア、真菌感染、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患、血管形成に依存する疾患、自己免疫疾患の治療のための、及び/又は癌のための予防的前処置としての、医薬品の製造における請求項1から11のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体の使用。
【請求項15】
癌、B細胞腫瘍、マラリア、真菌感染、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患、血管形成に依存する疾患、自己免疫疾患の治療のための、及び/又は癌のための予防的前処置としての、医薬品としての使用のための請求項1から11のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体。
【請求項16】
投与の必要のある患者に、請求項1から11のいずれか1項記載の有効量の21-デオキシマクベシン類似体を投与することを含む、癌、B細胞腫瘍、マラリア、真菌感染、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患、血管形成に依存する疾患、自己免疫疾患の治療の、及び/又は癌のための予防的前処置としての方法。
【請求項17】
21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩が、別の治療と組み合わせて投与される、請求項1から16のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩、組成物、使用、又は方法。
【請求項18】
別の治療が、メトトレキセート、ロイコボリン、プレニゾン、ブレオマイシン、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ドキソルビシン、タモキシフェン、トレミフェン、酢酸メゲストロール、アナストロゾール、ゴセレリン、抗HER2モノクローナル抗体、カペシタビン、ラロキシフェン塩酸塩、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、プロテアソーム阻害剤、放射線療法、及び手術からなる群から選択される、請求項17記載の21-デオキシマクベシン類似体、組成物、使用、又は方法。
【請求項19】
別の治療が、シスプラチン、シタラビン、シクロヘキシルクロロエチルニトロソウレア、シクロホスファミド、ゲムシタビン、イホスファミド、ロイコボリン、マイトマイシン、ミトキサントン、オキサリプラチン、並びにタキソール及びビンデシンを含めてタキサンなどの従来の化学療法剤;アナストロゾール、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、及びプレニゾンなどのホルモン療法薬;セツキシマブ(抗EGFR)などのモノクローナル抗体療法薬;ダサチニブ、ラパチニブなどのプロテインキナーゼ阻害剤;ボリノスタットなどのヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤;スニチニブ、ソラフェニブ、レナリドマイドなどの血管形成阻害剤;並びにテムシロリムスなどのmTOR阻害剤からなる群から選択される、請求項17記載の21-デオキシマクベシン類似体、組成物、使用、又は方法。
【請求項20】
別の治療が細胞傷害性薬剤である、請求項17記載の21-デオキシマクベシン類似体、組成物、使用、又は方法。
【請求項21】
別の治療が、マイトマイシンC、イホスファミド、CCNU、ミトキサントロン、及びビンデシンから選択される、請求項20記載の21-デオキシマクベシン類似体、組成物、使用、又は方法。
【請求項22】
請求項1から11のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体の産生のための方法であって、
a)適切な条件下で培養される場合にマクベシンを産生する第1の宿主株を提供することと、
b)1以上のpost-PKS遺伝子を欠失又は不活化させることと(ただし、該post-PKS遺伝子のうちの少なくとも1つは、mbcM又はその相同体である)、
c)改変された前記宿主株を21-デオキシマクベシン類似体の産生に適した条件下で培養することと、
d)産生された化合物を任意に単離すること、
を含む、前記方法。
【請求項23】
請求項1から11のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体の産生のための方法であって、
a)適切な条件下で培養された場合にマクベシンを産生する第1の宿主株を提供することと、
b)1以上のpost-PKS遺伝子を欠失又は不活化させることと(ただし、該post-PKS遺伝子のうちの少なくとも1つは、mbcM又はその相同体である)、
c)mbcMを含まないpost-PKS遺伝子のいくつか又はすべてを再導入することと、
d)改変された前記宿主株を、21-デオキシマクベシン類似体の産生に適した条件下で培養することと、
e)産生された化合物を任意に単離すること、
を含む、前記方法。
【請求項24】
ステップ(a)において、前記株がマクベシン産生株である、請求項23又は24記載の方法。
【請求項25】
21-デオキシマクベシン類似体の産生のために培養される操作された株が、mbcMを含めたpost-PKS遺伝子のうちの1以上が欠失又は不活化させられたマクベシン産生株に基づくものである、請求項22から24記載の方法。
【請求項26】
21-デオキシマクベシン類似体の産生のために培養される操作された株が、mbcMが欠失又は不活化されたマクベシン産生株に基づく操作された株である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
21-デオキシマクベシン類似体の産生のために培養される操作された株が、mbcM、mbcMT1、mbcMT2、mbcP、及びmbcP450が欠失又は不活化されたマクベシン産生株に基づく操作された株である、請求項25記載の方法。
【請求項28】
mbcM遺伝子又はその相同体が、21-デオキシマクベシン又はその類似体が産生されるように欠失又は不活化させられた、マクベシン及びその類似体を天然に産生する宿主株。
【請求項29】
mbcM及び任意にさらなるpost-PKS遺伝子が欠失又は不活化させられた、マクベシン産生株に基づく操作された株。
【請求項30】
mbcMが欠失又は不活化させられた、請求項29記載の操作された株。
【請求項31】
mbcMと、mbcN、mbcP mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450から選択される1以上の遺伝子とが、欠失又は不活化させられた、請求項29記載の操作された株。
【請求項32】
mbcMと、mbcN、mbcP mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450から選択される2以上の遺伝子とが、欠失又は不活化させられた、請求項29記載の操作された株。
【請求項33】
mbcMと、mbcN、mbcP mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450から選択される3以上の遺伝子とが、欠失又は不活化させられた、請求項29記載の操作された株。
【請求項34】
mbcMと、mbcN、mbcP mbcMT1、mbcMT2、及びmbcP450から選択される4以上の遺伝子とが、欠失又は不活化させられた、請求項29記載の操作された株。
【請求項35】
マクベシン産生を開始する株が、A プレティオスム(A pretiosum)又はA ミルム(A mirum)である、請求項29から34のいずれか1項記載の操作された株。
【請求項36】
21-デオキシマクベシン類似体又は医薬として許容し得るその塩の調製における、請求項29から34のいずれか1項記載の操作された株の使用。
【請求項37】
21-デオキシマクベシン類似体が、請求項1から11のいずれか1項によって定義されるものである、請求項36記載の使用。
【請求項38】
21-デオキシマクベシン又はその類似体の産生のための請求項28記載の宿主株の使用。
【請求項39】
癌及び/又はB細胞腫瘍の治療のための請求項14から16のいずれか1項記載の21-デオキシマクベシン類似体、使用、又は方法。
【請求項40】
請求項22から27のいずれか1項記載の方法によって産生可能な21-デオキシマクベシン類似体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2009−521423(P2009−521423A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546645(P2008−546645)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050476
【国際公開番号】WO2007/074347
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(505012977)バイオチカ テクノロジー リミテッド (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050476
【国際公開番号】WO2007/074347
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(505012977)バイオチカ テクノロジー リミテッド (14)
【Fターム(参考)】
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