説明

抗細菌化合物

式(I)の酸化合物であって、式中、YはOおよびNHから選択され、XはCOおよびCH2から選択され、R2は分枝飽和炭化水素または分枝不飽和の炭化水素部分であり、C7〜C15から選択され、抗細菌化合物または悪臭抑制化合物として消費者製品中において有用なもの。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗細菌化合物、それらの消費者製品における使用ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、「抗細菌(anti-bacterial)」の語は本発明の化合物との関連において用いられている場合、静細菌性(bacteriostatic)もしくは殺細菌性(bactericidal)またはその両方を示す化合物を意味するものとし、それは予防もしくは処置の条件または用いる単一または複数の化合物の濃度に依存する。
【0003】
細菌類に起因する病症(conditions)、とくにヒトの皮膚上に存在するものに起因する病症には、体の悪臭である腋窩臭および足の臭い等、ならびににきびを包含する。体の悪臭の発生は、それ自体は本質的に無臭である新しい汗が、いずれの属もグラム陽性であるEubacteriaceaeに属するStaphylococciおよびCorynebacteriaのような細菌類によって分解されて起こる。足の臭いについていえば、この病症の主因はBrevibacteriaが高湿度および低給気条件に存在することである。にきびは別異な皮膚症状として、細菌類に起因するものとされる。原因菌と考えられているのはPropionibacterium acnesである。
【0004】
抗細菌剤が消費者製品において、これらの病症の予防または処置に用いられる。
【0005】
抗細菌組成物は、一般に、活性物質として、このような皮膚上または家庭内の細菌相を減少せしめるものを取り入れている。しかし、多くの既知の抗細菌物質の問題は、それらが、ターゲットである微生物のみならず細菌相全体に影響する可能性があることである。
【0006】
多くの抗細菌物質は、前記病症の1つまたは2つの処置に有用である。トリクロサンは、家庭製品およびパーソナル・ケア製品を含む多くの製品において用いられる。 しかしながら、塩素系物質(chlorinated product)であるため、その使用が消費者保護機関によって疑問視されている。さらに、臭気生成性が低い、Staphylococci細菌にとくに高い活性を示すため、問題がより大きいCorynebacteriaの繁茂に好ましい条件を与えかねない。
【0007】
多くの開示が、抗細菌性を有する香気成分の技術についてなされている。そのような天然化合物の1つはファルネソールである。しかし、香気成分を抗細菌剤として用いることによって生じる問題は、抗細菌効果を得るためには、一般に、フレグランス用途において用いる場合に慣用的に望ましいとされるものより高いレベルの量において用いなければならないことである。また、このような物質を用いて、香気に適した低いレベルの量で抗細菌効果を達成できる場合であっても、多くの場合揮発性が高すぎて短時間しか有効ではなく、すぐに気化して皮膚から逃散してしまう。
【0008】
非香気化合物が、抗細菌物質として家庭製品および消費者製品に用いられるところ、これらはパーソナル・ケア製品および皮膚に適用する製品も包含する。モノラウリン−グリセロールおよび他のグリセロールエステル類またはグリセロールモノエーテル類が、技術文献に記載されている。
【0009】
出願人はここに、新しいクラスの化合物として、無臭でありかつ使用者の皮膚において、ほどよい(reasonable)滞留時間を具備し、それによって望ましい抗細菌効果を発現するものを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の1つの側面において、式Iの化合物を与える。
【化1】

式中、YはOおよびNHから選択され、XはCOおよびCH2から選択され、R2は分枝飽和炭化水素または分枝不飽和の炭化水素部分であり、C7〜C15から選択される式IIで表され、
【化2】

式中、C1とC2との間の結合は単結合または二重結合であり、R3およびR4の選択は、独立してメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチル、ノニル、デシル、ウンデシルおよびドデシル、ならびに単環アラルキル残基であって、C1、C2、C3、C4またはC5アルキルによって任意に置換されていてもよいものからなされる;
ただし、以下の化合物は除外される:(2-エチル-ヘキシルオキシ)酢酸、2-ヘキシル-デカン酸カルボキシメチルエステル、2-(2-エチルヘキサンアミノ)酢酸、2-(2-プロピルペンタンアミド)酢酸、2-(2-プロピルペント-2-エンアミド)酢酸、および2-(2-エチルヘキサンアミド)酢酸。除外した化合物は既に記載がなされているものであるが、該化合物の抗細菌効果、抗真菌効果または悪臭抑制効果については知られていなかった。
【0011】
「単分枝」の意味は、炭化水素部分として、主炭素および1つの炭素鎖分枝を有するものである。
【0012】
C7〜C15には、具体的にはC7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14およびC15が包含される。
【0013】
R2の分枝炭化水素部分の意味には、脂肪族残基、任意にC1〜C5アルキルによって置換されていてもよい脂環式残基、および任意にC1〜C5アルキルによって置換されていてもよい単環式アラルキル残基を包含する。しかし、式Iの化合物のうちR2が脂肪族のものは好ましい。
【0014】
式Iの化合物は、以下のXおよびY残基の組み合わせを有してもよい: X = COおよびY = O、X = COおよびY = NH、X = CH2およびY = O、またはX= CH2、およびY=NH。
【0015】
その優れた抗細菌活性ゆえ、式Iの化合物のうちYがOであるか、またはXがCOであるものは好ましい; より好ましい化合物はYがOであり、XがCOであるものである。
【0016】
脂肪族のR3およびR4について、表1および2に示した組み合わせは許される。それぞれの二重カラムにおいて、R2を第1行に示し、R3およびR4の組み合わせとして可能な異なるものを各2重カラムの続く行に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
より好ましい式Iの化合物は、R2が式IIの炭化水素部分であり、R3およびR4が以下の組み合わせから選択されるものである:R3 = エチルおよびR4 = プロピル、R3 = ブチルおよびR4 = メチル、R3 = ブチルおよびR4 = ペンチル、R3 = ヘキシルおよびR4 = プロピル、R3 = ヘキシルおよびR4 = ヘプチル、R3 = オクチルおよびR4 = ペンチル。
【0020】
好ましい抗細菌効果は、ヒト皮膚細菌に対する効果であり、かかる細菌は、ヒトの腋に存在する典型的な悪臭生成細菌 (CorynebacteriumおよびStaphylococcusを包含する)、ならびにヒトの足に存在する典型的な悪臭生成細菌(Brevibacteriaを包含する) を包含する。
【0021】
本発明の化合物は、良好な抗微生物活性を、消費者製品、家庭に適用する製品または人体に適用する製品、とくに皮膚もしくは頭皮に適用する製品において用いたときに発現する。例えばパーソナル・ケア製品の部分として、頭皮に適用するシャンプー組成物の一部分として、または処置が必要な個人の足に適用する組成物の一部分としてである。
本発明の化合物は、公知の静細菌性物質と同等かまたはこれを上回る良好な抗微生物活性を発現する。かかる公知の静細菌性物質は、例えばトリクロサン、グルセロールエステル類、例えばモノラウリン−グルセロール、公知のグリセロールエステル類、例えばモノラウリン−グリセロール、公知のグリセロールエーテル類、または公知のフレグランスオイル類である。複数の試験において、本化合物の静細菌最小濃度(MIC)は、0.0004%〜0.5%以上(重量/体積)の範囲となり得るところ、これは処置の対象である微生物に依存する。これらの値は、多種の通常細菌に対する値、とくにCorynebacteriaに対する値を包含するところ、公知のグリセロールモノエステル類またはモノエーテル類、トリクロソン、および公知の抗細菌フレグランス化合物であるファルネソールのそれと同等以下である。MIC試験のデータの取得方法についての詳細は、下記の例14に示してある。
【0022】
また、本発明の化合物には、殺細菌効果を発現するものもある。複数の試験において、本化合物の抗細菌性の最小殺菌濃度(MBC)は、0.002%〜0.5%以上(重量/体積)の範囲となり得るところ、これは処置の対象である微生物に依存する。MBC試験のデータの取得方法についての詳細は、下記例15に示してある。
【0023】
本発明の化合物の生成は、以下のように行ってよい。式Iの化合物のうちY=OおよびX=CH2(I-a)であるもの、および式I の化合物のうちY=OおよびX=CO(I-b)であるものの最も至便な製造は、一工程で、ブロモ酢酸と相当するアルコールまたはカルボン酸とから塩基性条件下においてなされる (例1、スキーム1のI-aおよびI-bを比較されたい)。
式Iの化合物のうちY=NHおよびX=CO(I-c)であるものの最も至便な製造は、市販のグリシンエチルエステル塩酸塩を出発物質として縮合を行い、次にエステル保護基をアルカリ条件下において除去して製造される(スキーム1、例1を比較されたい)。
かかる反応の後、式Iの化合物(I-〜I-c)を蒸留し、クロマトグラフィもしくは再結晶によって精製するかまたは精製せずに単離する。
【0024】
製造方法についてのさらなる詳細は、本明細書中下記の例に示してある。
【0025】
本発明は、他の側面において、少なくとも1種の上記化合物の、消費者製品のような組成物における使用として、細菌性病症の予防または処置のための使用、および悪臭の除去または抑制のための使用、とくに病症または悪臭として人体上の悪臭生成細菌によるもの(例えば、腋窩臭、足の悪臭、およびにきび)に対する使用を提供する。
【0026】
また、本発明によって、抗細菌効果および悪臭抑制効果の少なくとも一方を有する製品の製造方法として、有効量の本願発明の化合物を混和して製品とすることによるもの、好ましくは消費者製品とすることによるものが提供される。
【0027】
消費者製品は、家庭製品、化粧およびパーソナル・ケア製品、人体上において用いる製品、ヒトの皮膚に適用する製品、ならびに香気付き消費者グッズを包含する。
【0028】
化粧およびパーソナル・ケア製品、とくに消臭および制汗の化粧およびパーソナル・ケア製品は、石鹸、ステッィク、ロール・オン、スプレー、ポンプ・スプレー、エアゾール、消臭石鹸、ソープ・バー、パウダー、溶液、ゲル、クリーム、バームおよびローション、オーデコロン、およびオード・トアレ、消臭石鹸、シャンプー、バス・ソルト、ザルベ、ローション、クリーム、および軟膏を含む。
【0029】
香気付き消費者製品は、スプレー、洗剤および固形フレグランス製品、パウダー、石鹸、洗剤パウダー、テッィシュ、繊維、部屋の消臭剤、部屋の消臭ゲル、およびロウソクを含む。
【0030】
このような組成物に用いられる化合物の量は、製品および性質および処置対象である病症に依存する。しかし、皮膚上に適用され、そこに残存する製品および場合、化合物または化合物の混合物の組成物中の好ましい量は組成物全体の約0.1〜約2.0重量%であり、好ましくは約0.1〜1重量%である。
【0031】
化合物または化合物の混合物を用いる組成物を、皮膚または頭皮に適用し、その後に洗い流すことが意図されている組成物中において用いる場合、例えばシャンプー組成物の場合には、化合物または化合物の混合物の組成物中の量はより多いことが好ましく、例えば組成物全体の約1.0〜約5.0重量%である。
【0032】
消費者製品の性質によっては、本発明の化合物は、本技術分野において知られている量の、他の賦形剤としてこれらの製品において普通に用いられているものと組み合わせてもよい。 有用な選択は <<CTFA Cosmetic Ingredient Handbook >>、J.M. Nikitakis (ed.)、1st ed.、The Cosmetic、Toiletry and フレグランス Association、Inc.、Washington、1988に見出されるところ、これを文献の特定によって本明細書に引用する。
【0033】
一般に、賦形剤は、例えば着色剤、フレグランス、溶媒、界面活性剤、着色剤、乳白剤、緩衝剤、抗酸化剤、ビタミン類、乳化剤、UV吸収剤、シリコーン類等であってよい。全ての製品は、中和して所望のpHとしてよく、これには普通に用い得る賦形剤を公知の方法によって用いる。
【0034】
デオドラントコロン中の賦形剤はエタノールとフレグランスを含んでよい。フレグランスは1〜10%で存在してよく、エタノールは全体を100重量%にする量であってよい。典型的なエタノール・フリーなデオドラントスティックは、ポリオール類としてプロピレングリコール等;その誘導体としてプロピレン−グリコール−3−ミリスチルエーテル(例えばWitconol(登録商標)APM)等;水;界面活性剤としてステアリン酸ナトリウム等;およびフレグランスを含んでよい。ポリオールの量は30〜40重量%の範囲であってよく;水の量は10〜20重量%であってよく; 界面活性剤の量は5〜10重量%であってよく;そしてフレグランスの量は上記の範囲であってよい。
【0035】
典型的な制汗スティックは、賦形剤として以下を含んでよい:エチレングリコールモノステアラート(例えば5〜10%);シアバター(例えば3〜5%);カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドとしてNeobee(登録商標)1053(PVO International)等 (例えば約12〜15%);ファイトステロールとしてGenerol(登録商標)122(Henkel)等(例えば約3〜7%);ジメチコン(DC 345)(例えば30〜40%);四塩化アルミニウム水和物(例えば約15〜20%);およびフレグランスを、例えば1〜10%。
【0036】
制汗エアゾールは、賦形剤として以下を含んでよい:エタノールを、典型的には10〜15%の範囲で;四塩化ジルコニウムアルミニウム水和物を、例えば3〜5%;Bentone 38を、例えば1〜2%;前記の量のフレグランス;および炭化水素推進剤としてS-31等を、例えば100%になるまで。
【0037】
制汗ポンプ組成物は、賦形剤として以下を含んでよい:四塩化アルミニウム水和物を、例えば15〜25%;水を、例えば50〜60%;オクチルフェノールエトキシラート非イオン性界面活性剤としてTriton X-102(Union carbide)等を、例えば1〜3%; ジメチルイソソルビド(ICI)を、例えば15〜25%;および前記の量のフレグランス。
【0038】
全ての上記したパーセントは重量%で示してある。
上記組成物の全てにおいて、 化合物またはその混合物を単一の活性剤として用いてよく、または他の活性物質、例えばトリクロサン(CAS 3380-34-5) もしくは他の市販の抗細菌物質あるいは抗真菌物質とともに、または公知のフレグランスオイルのうち抗細菌性 もしくは抗真菌性を有するものとともに、用いてもよい。
ここに、非限定的な一連の例として本発明の説明に資するものを続ける。
【0039】
例1
式Iの化合物の合成の概要
式I の化合物の極めて至便な製造方法は、スキームIに示した変換である。式I の化合物のうちY=OおよびX=CH2 (I-a)であるもの、および式I の化合物のうちY=OおよびX=CO (I-b) は、1工程による調製が、ブロモ酢酸および対応するアルコールまたはカルボン酸から塩基性条件下において可能である (スキーム1a、b)。式I の化合物のうちY=NHおよびX=CO (I-c)であるものの場合は、市販のグリシンエチルエステル塩酸塩を出発物質に用いて縮合を行い、続いて該エステルの保護基の除去をアルカリ条件下において行う (スキーム1c)。式I-a 〜I-cの酸を蒸留し、クロマトグラフィもしくは再結晶によって精製するかまたは精製せずに単離する。
【0040】
【化3】

【0041】
例2
化合物I-aの合成手順
THF (125 ml)中の攪拌したアルコール溶液(0.1 mol)に水素化ナトリウム (0.22 mol) を室温にて分注する。グレーな懸濁液を30分間攪拌し、次に0 °Cに冷却する。ブロモ酢酸 (0.1 mol)の分注を、5 °Cを越えないようにしながら行う。混合物を環流化にて6-8時間加熱した後、白色の懸濁液を室温まで冷まし、濃縮し、残渣を水およびtert-ブチルメチルエーテル中に取り出す。有機相の洗浄を水性炭酸水素ナトリウム、水およびブラインを用いて行う。乾燥させた (Na2SO4) エーテル相を真空中にて濃縮し、所望の式I の化合物としてY=OおよびX=CH2 (I-a)であるものを、無色のオイルとして得る。収率は15〜90%であるところ、これはアルコールの 鎖長によって変わる。
【0042】
例3
化合物 I-bの合成手順
炭酸カリウム(0.55 mol)およびヨウ化カリウム (0.025 mol)を1,2-ジメトキシエタン(600 ml)に懸濁せしめ、この攪拌した混合物に室温にてカルボン酸を添加する。30分間攪拌した後、0 °Cに冷却し、ブロモ酢酸 の分注を15分以内で行う。次に、白色のスラリーの加熱を環流化にて4〜8 時間行い、室温まで冷ます。反応混合物のクエンチを塩酸水(10%)を用いて行い、抽出をtert-ブチルメチルエーテルを用いて行う。合わせた有機相の洗浄を水およびブラインを用いて行い、硫酸ナトリウム上にて乾燥せしめ、溶媒を留去する。カルボン酸の性質に依存して、式I の化合物のうち Y=OおよびX=CO (I-b) であるものが得られる。収率は30〜75%であり、無色のオイルである。
【0043】
例4
化合物I-cの一般的な合成手順(C)
第一工程:カルボン酸 (0.39 mol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(0.5 g)へのチオニルクロリド (0.48 mol) の滴下添加を攪拌しながら15分以内で行う。混合物の攪拌を4 時間行い、TLCによって変換の完結を確認する。余剰のチオニルクロリドを留去して、カルボン酸塩化物を無色のオイルとして得る。
【0044】
第二工程:グリシンエチルエステル塩酸塩 (57 mmol)、N,N-ジメチアミノピリジン(5.7 mmol)およびピリジン (200 mmol) のトルエン(250 ml)中の攪拌した混合物を0 °Cに冷まし、上記カルボン酸塩化物の添加を10分以内で行う。2 時間の攪拌をアイスバス中にて行った後、混合物を室温まで温め、クエンチを塩酸水(5%)を用いて行う。水相の抽出をtert-ブチルメチルエーテルを用いて行い、合わせた有機相の洗浄を水およびブラインを用いて行い、硫酸ナトリウム上にて乾燥せしめる。溶媒を除去してグリシンエチルエステルアミドが得られる。収率は65〜100%であり、白色の固体である。
【0045】
第三工程:上記エステル (2.9 mmol)をテトラヒドロフラン/水(60 ml、3:1)に溶解せしめ、0°Cへの冷却をアイスバスを用いて行う。過酸化水素水 (30%、11.6 mmol)および水酸化リチウム(5.8 mmol) を添加し、アイスバスをはずす。混合物の攪拌を15 時間行い、クエンチを亜硫酸ナトリウム水溶液(飽和)を用いて、10分間行う。次に溶媒を除去し、残渣を塩酸水(10%))中に取り出し、酢酸エチルを用いて抽出を行う。有機相の洗浄を炭酸水素ナトリウム水溶液、水およびブラインを用いて行う。有機相の洗浄を水およびブラインを用いて行い、硫酸ナトリウム上にて乾燥せしめ、真空中にて濃縮せしめる。所望の式I の化合物としてY=NHおよびX=COのもの(I-c) が得られる。収率は80〜95%であり、白色の固体である。
【0046】
例5 - 8
以下に、式I の化合物のうちY=OおよびX=CH2 (I-a)であるものの分光分析データを示す。製造は例2に従って行われる。
【0047】
例5:
[3-(4-tert-ブチル-フェニル)-2-メチル-プロポキシ]酢酸
【化4】

【0048】
【表3】

【0049】
例6:
(2-エチル-ヘキシルオキシ)酢酸
【化5】

【0050】
【表4】

【0051】
例7:
(2-ブチル-オクチルオキシ)酢酸
【化6】

【0052】
【表5】

【0053】
例8:
(2-ヘキシル-デシルオキシ)酢酸
【化7】

【0054】
【表6】

【0055】
例9 - 11:
以下に、式I の化合物のうちY=OおよびX=CO (I-b)であるものの分光分析データを示す。製造は例3に従って行われる。
【0056】
例9:
2-エチル-ヘキサン酸カルボキシメチルエステル
【化8】

【0057】
【表7】

【0058】
例10:
【化9】

2-ブチル-オクタン酸カルボキシメチルエステル

【0059】
【表8】

【0060】
例11:
2-ヘキシル-デカン酸カルボキシメチルエステル
【化10】

【0061】
【表9】

【0062】
例12 -13:
以下に、式I の化合物のうちY=NHおよびX=CO (I-c)であるものの分光分析データを示す。製造は例4に従って行われる。
【0063】
例12:
(2-ブチル-オクタノイルアミノ)酢酸
【化11】

【0064】
【表10】

【0065】
例13:
(2-ヘキシル-デカノイルアミノ)酢酸
【化12】

【0066】
【表11】

【0067】
例14:
本発明の化合物の静細菌活性
本発明の化合物の静細菌効果の比較を、公知の抗細菌剤と、ヒト皮膚細菌について行う。典型的な細菌(CorynebacteriumおよびStaphylococcus strains)としてヒト頭皮から単離したもと市販のものを用いる。結果を下の表1に示す。
【0068】
異なる頭皮細菌の単離をヒト頭皮から、当技術分野において公知の方法、とくに標準的な微生物学的手法によって行う。分類学的な同定は、細胞形態、グラム反応および生化学的試験としてApi coryneテストキット(BioMerieux, France)に含まれるものによって行う。Staphylococcus epidermidis Ax25菌株の同定は、メチルエステル分析(FAME; German type strain collection DSMZ, Germany)によって行う。Escherichia coli DSM 682, Staphylococcus aureus DSM 799,およびCorynebacterium xerosis DSM 20170の入手は、ドイツ菌株コレクション(the German-type strain collection)より行う。
【0069】
菌株の保存は、トリプティック・ソイ培養液プレート上にて行うところ、この標準的な培地は1リットルあたり5 gポリオキシエチエンソルビタンモノオレアート(Tween(商品名)80)によって補強しておく。プレートのインキュベーションを36°Cにて48時間行う。次に細菌をプレートからかき取り、1リットルあたり100 mgの Tween(商品名)80(MH-Tween)によって補強した4 mlのミューラー・ヒントン培養液に懸濁し、再度インキュベーションを36°Cにて16時間行う。インキュベーションに続いて細菌懸濁液をMH-Tweenに希釈し、最終的に細胞密度が1mlあたり107のコロニー形成ユニットを得る。
【0070】
異なる試験生物を含むこれらの希釈懸濁液をマイクロタイタープレートの異なるカラムに、ウェルあたり100 mlで分注する。試験化合物を、種々の濃度にてジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解せしめ、これらの異なるDMSO溶液の2.5 mlをテストプレートの異なるウェルに入れる。プレートをプラスチックフィルムで覆い、インキュベーションを、36°Cにて24時間、250 rpmで振動させながら行う。次に、マイクロタイタープレートに生じたプレートの濁度の調査を24時間後に行い、微生物の増殖を測定する。試験化合物が生物の増殖を少なくとも80%阻害する最低濃度を最小阻害濃度(MIC)とする。
【0071】
表1 ヒト皮膚細菌およびスタンダードな細菌のレファレンス菌株に対する、本発明の化合物のMICを示す。データは%で表している(重量/体積)。
【表12】

1 = [3-(4-tert-ブチル-フェニル)-2-メチル-プロポキシ]酢酸
4 = (2-エチル-ヘキシルオキシ)酢酸
5 = (2-ブチル-オクチルオキシ)酢酸
6 = (2-ヘキシル-デシルオキシ)酢酸
7 = 2-エチル-ヘキサン酸カルボキシメチルエステル
8 = 2-ブチル-オクタン酸カルボキシメチルエステル
9 = 2-ヘキシル-デカン酸カルボキシメチルエステル
10 = (2-ブチル-オクタノイルアミノ)酢酸
11 = (2-ヘキシル-ドデカノイルアミノ)酢酸
C1 =ドデカン酸2,3-ジヒドロキシ-プロピルエステル: (1-モン-ラウロイル-グリセロール)、
C2 = 市販のグリセロールモノエーテル: 3-(2-エチル-ヘキシルオキシ)-プロパン-1,2-ジオール、
C3= ファルネソール、
C4= トリクロサン
【0072】
Ax 25はStaphylococcus epidermidisであるとFAME分析によって同定される。Ax 7はCorynebacterium group Gであると、そしてAx 15はCorynebacterium jeikeiumであると、Api Coryneテストキットによって同定される。後者の2菌株は、ヒトボランティアの頭皮から単離されたものであり、イン・ビトロでヒト頭皮の分泌物とともにインキュベートすると頭皮の悪臭を発生することができるものである。
【0073】
表1から、試験を行った全ての菌株において、大部分の本発明の化合物の活性は、前記モノエーテル(C2)を上回り、モノエステル (C1)およびファルネソール(C3)と同等以上であることがわかる。これらは香水、パーソナル・ケア製品および香気付き消費者製品によく用いられているものである。本化合物には、とくに臭気生成細菌に対して高活性であり、塩素系抗細菌化合物であるトリクロサンを上回る活性を、悪臭生成細菌であるAx7およびAx15に対する試験において示すものもある。
【0074】
例15:
本発明の化合物の殺細菌活性
さらに、本発明の化合物の殺細菌活性を試験する。結果を下の表2に示す。
細菌を培養し、集菌して上記の例において記載したものと同一の条件下において希釈し、マイクロタータープレートに入れる(ウェルあたり100 ml)。各ウェルは、上記のとおり2.5 mlの異なるDMSO溶液を含有する。60分のインキュベーションの後、それぞれのウェルから0.5 mlの細菌培養物(コントロール処置における5 x 103 cfuに相当) を、ウェルあたり100 mlのフレッシュな培地を含むフレッシュなマイクロタータープレートに移す。プレートをプラスチックフィルムで覆い、インキュベーションを、36°Cにて24時間、250 rpmで振動させながら行う。次に、マイクロタイタープレートに生じたプレートの濁度の調査を24時間後に行い、微生物の増殖を測定する。試験化合物が接種細菌を完全に死滅させる最低濃度を最小殺細菌濃度(MBC)とする。
【0075】
表2 ヒト皮膚細菌およびスタンダードな細菌のレファレンス菌株に対する、本発明の化合物のMBCを示す。データは%で表している(重量/体積)。
【表13】

1 = [3-(4-tert-ブチル-フェニル)-2-メチル-プロポキシ]酢酸
4 = (2-エチル-ヘキシルオキシ)酢酸
5 = (2-ブチル-オクチルオキシ)酢酸
6 = (2-ヘキシル-デシルオキシ)酢酸
7 = 2-エチル-ヘキサン酸カルボキシメチルエステル
8 = 2-ブチル-オクタン酸カルボキシメチルエステル
9 = 2-ヘキシル-デカン酸カルボキシメチルエステル
10 = (2-ブチル-オクタノイルアミノ)酢酸
11 = (2-ヘキシル-ドデカノイルアミノ)酢酸
【0076】
表2からわかるように、すべての菌株に対して、本発明の化合物のいくつかは静細菌活性のみならず、固有の潜在的特性(inherent potential)として、3 x 103 cfuの接種菌を60分の接触時間内に、極めて低い試験濃度において完全に死滅せしめる特性をも有する。本化合物はとくに、臭気生成皮膚細菌に対して高活性を示す。
【0077】
例16
エアゾールスプレー
【表14】

【0078】
混合した液体相をプロパン−ブタン(2:7)と39:61の割合でスプレー容器に充填する。
【0079】
例17
ロール・オンゲル
【表15】

【0080】
例18
制汗スティック:
【表16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物を含む組成物であって、
【化1】

式中、YはOおよびNHから選択され、XはCOおよびCH2から選択され、R2は分枝飽和炭化水素部分または分枝不飽和炭化水素部分であり、C7〜C15から選択される式IIで表され、
【化2】

式中、C1とC2との間の結合は単結合または二重結合であり、R3およびR4の選択は、独立してメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチル、ノニル、デシル、ウンデシルおよびドデシル、ならびに単環アラルキル残基であって、C1、C2、C3、C4またはC5アルキルによって任意に置換されていてもよいものからなされ、
前記化合物の量は抗細菌効果または悪臭抑制効果を十分に与える量である、前記組成物。
【請求項2】
R2が脂肪族である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
YがOである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
XがCOである、請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項5】
R2が飽和されている、請求項1、2、3または4に記載の組成物。
【請求項6】
R3 = エチルおよびR4 = プロピルである化合物、R3 = ブチルおよびR4 = メチルである化合物、R3 = ブチルおよびR4 = ペンチルである化合物、R3 = ヘキシルおよびR4 = プロピルである化合物、R3 = ヘキシルおよびR4 = ヘプチルである化合物、R3 = オクチルおよびR4 = ペンチルである化合物からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
消費者製品、家庭製品、化粧およびパーソナル・ケア製品、人体上において用いる製品、ヒトの皮膚に適用する製品、ならびに香気付き消費者グッズからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
化合物または化合物の混合物の含量が0.1〜5.0重量%である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
化合物または化合物の混合物の含量が0.1〜1.0重量%である、請求項10に記載の組成物。
【請求項10】
(2-エチル-ヘキシルオキシ)酢酸、2-ヘキシル-デカン酸カルボキシメチルエステル、2-(2-エチルヘキサンアミノ)酢酸、2-(2-プロピルペンタンアミド)酢酸、2-(2-プロピルペント-2-エンアミド)酢酸、および2-(2-エチルヘキサンアミド)酢酸からなる群からは選択されない、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の化合物の製造方法。
【請求項12】
抗細菌組成物または悪臭抑制組成物のための請求項1〜6のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項13】
消費者製品、家庭製品、化粧およびパーソナル・ケア製品、人体上において用いる製品、ヒトの皮膚に適用する製品、ならびに香気付き消費者グッズからなる群から選択される製品における抗細菌組成物または悪臭抑制組成物としての、請求項1〜6のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項14】
抗細菌組成物または悪臭抑制組成物の製造方法であって、有効量の請求項1〜6のいずれかに記載の化合物を混和することによる前記製造方法。

【公表番号】特表2008−512361(P2008−512361A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529309(P2007−529309)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000501
【国際公開番号】WO2006/026875
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】