説明

抗老化剤、保湿剤、美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、皮膚外用剤

【課題】 天然由来成分の中には、その効果が充分ではなく、より優れた成分の開発が求められていた。それ故、本発明は抗老化効果、保湿効果、美白効果、抗酸化効果、抗炎症効果を有する優れた皮膚外用剤を提供することにある。
【解決手段】 アカネ科フタバムグラ属ソナレムグラから得られる成分が、抗老化効果、保湿効果、美白効果、抗酸化効果、抗炎症効果に優れていることを見出し、抗老化剤、保湿剤、美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、皮膚外用剤を提供するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アカネ科(Rubiaceae)フタバムグラ属(Hedyotis)ソナレムグラ(Hedyotis strigulosa var. parvifolia)から得られる成分を含有することを特徴とする、抗老化剤、保湿剤、美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚の乾燥を防ぎ、皮膚にうるおいを与える保湿成分を提供するために、様々な有効成分の配合検討がなされてきた。また、加齢、疾患、ストレス、紫外線などによるシワ、シミ、皮膚の弾力低下といった皮膚症状の要因として、乾燥、細胞機能低下、紫外線によるメラニン産生や色素沈着、真皮マトリックス成分の減少や変性、紫外線などによる細胞の酸化障害などが挙げられる。このような皮膚症状を防止・改善するために、様々な有効成分の検索および配合検討がなされてきた。特に天然由来成分は、様々な薬理作用や美容効果を有することが知られ、これまでにも数多くの植物や菌類などの抽出物の皮膚外用剤への応用が検討されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
例えば、皮膚の老化防止、改善作用を有する皮膚外用剤を得るために、真皮線維芽細胞の賦活あるいは増殖促進作用を有する成分としてポンカンのエッセンス(特許文献1参照)等、皮膚の保湿効果と安全性に優れた保湿剤としてハリブキ属植物の抽出物(特許文献2参照)等、美白剤としては、白鶴霊芝の抽出物(特許文献3参照)等、抗酸化剤としてはサルオガセ科サルオガセ属植物の抽出物(特許文献4参照)等、抗炎症作用を有する植物エキスとして、蘇葉、カカオ及び茴香の乾燥物又はその熱水抽出エキス(特許文献5参照)、カンナ科植物の溶媒抽出物(特許文献6参照)等が開示されている。
【特許文献1】特開2001−131045号公報
【特許文献2】特開2007−77072号公報
【特許文献3】特開2003−89630号公報
【特許文献4】特開平10−182413号公報
【特許文献5】特開2003−201246号公報
【特許文献6】特開平4−270224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、これまで様々な天然由来成分が応用されてきた。しかしながら、天然由来成分の中には、その効果が充分ではなく、より優れた成分の開発が求められていた。それ故、本発明は抗老化効果、保湿効果、美白効果、抗酸化効果、抗炎症効果を有する優れた皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ソナレムグラから得られる成分が、抗老化効果、保湿効果、美白効果、抗酸化効果、抗炎症効果に優れていることを見出し、抗老化剤、保湿剤、美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、皮膚外用剤を提供するに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ソナレムグラから得られる成分を配合することにより、優れた効果を有する抗老化剤、保湿剤、美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明で用いるソナレムグラは、アカネ科、フタバムグラ属の双子葉植物で、草本または小低木であり、本州の千葉県以南、四国、九州、琉球に分布する。
【0008】
本発明でソナレムグラを使用する際は、その使用部位には特に制限はなく、葉、茎、花、根等の各部位および全草を用いることができるが、好ましくは全草を用いるのがよい。
【0009】
抽出の際は、ソナレムグラを生のまま用いてもよいが、抽出効率を考えると、細切、乾燥、粉砕等の処理を行った後に抽出を行うことが好ましい。
【0010】
抽出は、任意の抽出溶媒に所定時間浸漬して行うことができる。抽出溶媒は、必要に応じて加熱してもよい。抽出効率を上げるため、撹拌したり、抽出溶媒中でホモジナイズしたりしてもよい。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度とするのが適切である。抽出時間は、抽出溶媒の種類や抽出温度によっても異なるが、1時間〜14日間程度とするのが適切である。
【0011】
抽出溶媒としては、水の他、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル類;酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類などの溶媒を用いることができ、好ましくは、水、エタノールがよい。これらは単独で用いられるほか、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。さらに、水や二酸化炭素、エチレン、プロピレン、エタノール、メタノール、アンモニアなどの1種または2種以上の超臨界液体や亜臨界液体を用いてもよい。
【0012】
本発明で用いるソナレムグラの上記溶媒による抽出物は、そのままでも使用することができるが、一定期間そのまま静置して熟成させて用いてもよいし、濃縮、乾固した物を水や極性溶媒に再度溶解して使用することもできる。あるいは、これらの生理作用を損なわない範囲で、脱色、脱臭、脱塩等の精製処理や、カラムクロマトグラフィー等による分画処理を行った後に用いてもよい。植物および貝類の前記抽出物やその処理物および分画物は、各処理および分画後に凍結乾燥し、用時溶媒に溶解して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0013】
ソナレムグラまたはその抽出物は、優れた抗老化効果、保湿効果、美白効果、抗酸化効果、抗炎症効果を有し、抗老化剤、保湿剤、美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、皮膚外用剤として利用することができる。
【0014】
ソナレムグラまたはその抽出物を有効成分とする抗老化剤は、ヒト真皮線維芽細胞の賦活作用を有し、老化症状の防止・改善に優れた効果を発揮する。
【0015】
ソナレムグラまたはその抽出物を有効成分とする保湿剤は、ヒト真皮線維芽細胞のヒアルロン酸産生促進作用およびヒト表皮角化細胞のアルギナーゼ活性促進作用を有し、優れた保湿効果を発揮する。
【0016】
ソナレムグラまたはその抽出物を有効成分とする美白剤は、B16マウスメラノーマ細胞メラニン産生抑制作用を有し、色素沈着、シミ、そばかす等を予防・改善して、優れた美白効果を発揮する。
【0017】
ソナレムグラまたはその抽出物を有効成分とする抗酸化剤は、ラジカル消去作用、スーパーオキサイドアニオン消去作用を有し、優れた抗酸化効果を発揮する。
【0018】
ソナレムグラまたはその抽出物を有効成分とする抗炎症剤は、ホスホリパーゼA阻害作用を有し、優れた抗炎症効果を発揮する。
【0019】
ソナレムグラまたはその抽出物を含有する皮膚外用剤は、優れた抗老化効果、保湿効果、美白効果、抗酸化効果、抗炎症効果などを発揮する。
【0020】
これらの各剤は、ソナレムグラまたはその抽出物を有効成分として含む限り、その形態およびその他成分の配合の有無等については、何ら制限されない。形態については、液状、ペースト状、ゲル状、固体状または粉末状等の任意の形態を、その用途等に応じて選択でき、その形態とするために必要なビヒクル(賦形剤)、溶剤、またはその他の一般的な添加剤(酸化防止剤、着色剤または分散剤等)を任意に含むことができる。
【0021】
ここで皮膚外用剤とは、化粧料、医薬部外品または外用医薬品等の皮膚または毛髪に外用される全ての外用組成物を意味している。
【0022】
皮膚外用剤の剤型は任意であり、例えば、ローション等の可溶化系、カラミンローション等の分散系、またはクリームや乳液等の乳化系として提供することができる。さらに、噴射剤と共に充填するエアゾール形態、軟膏剤またはパップ剤等の種々の剤型で提供することもできる。
【0023】
具体的には、乳液、クリーム、ローション、化粧水、パック、美容液、洗浄料またはメイクアップ化粧料等の各種化粧料;液剤、軟膏、粉末、顆粒、エアゾール剤、貼付剤またはパップ剤等の様々な形態の化粧料、医薬部外品または外用医薬品などが例示できる。
【0024】
皮膚外用剤には、ソナレムグラまたはその抽出物の他に、その用途と必要に応じて、医薬品、医薬部外品、皮膚化粧料、毛髪用化粧料および洗浄料等に通常配合される任意の成分、例えば水、油性成分、保湿剤、粉体、色素、乳化剤、可溶化剤、ゲル化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、抗炎症剤、増粘剤、pH調整剤、キレート剤、薬剤(薬効成分)、香料、樹脂、防菌防かび剤、抗酸化剤、またはアルコール類等を適宜配合することができる。さらに、本発明の効果を損なわない範囲において、他の保湿剤、抗老化剤、抗酸化剤、痩身剤、美白剤、抗炎症剤、免疫賦活剤あるいはソナレムグラ以外の植物またはその抽出物との併用も可能である。
【0025】
ソナレムグラまたはその抽出物の皮膚外用剤への配合量は、種類や目的等によって調整することができるが、効果や安定性などの点から、全量に対して固形分換算で、好ましくは0.0001〜10.0質量%であり、より好ましくは0.001〜5.0質量%であり、さらに好ましくは0.01〜5.0質量%であり、一層好ましくは0.1〜5.0質量%である。
【0026】
以下にソナレムグラ抽出物の調製例、抗老化効果、保湿効果、美白効果、抗酸化効果、および抗炎症効果を評価するための試験方法、皮膚外用剤としての処方例についてさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらによってなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
[抽出物1]
ソナレムグラの全草の乾燥粉砕物100gに、50質量%エタノール水溶液を2.0Kg加え、撹拌しながら室温にて2時間抽出した。抽出液をろ過して回収し、減圧濃縮後、凍結乾燥を行い、抽出物1を得た。
【0028】
上記抽出物を用いて、各効果の評価を行った。なお各評価結果に記載した*および**は、t検定における有意確率P値に対し、有意確率5%未満(P<0.05)を*で、有意確率1%未満(P<0.01)を**でそれぞれ表したものである。
【0029】
[実施例1]
<抗老化効果(ヒト真皮線維芽細胞賦活作用の評価)>
クラボウ社(倉敷紡績株式会社)製正常ヒト真皮線維芽細胞を、1ウェル当たり2.0×10個となるように96穴マイクロプレート播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に1質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したものを用いた。24時間培養後、表1に示す各濃度となるように抽出物1を添加した1質量%FBS添加DMEM培地に交換し、さらに48時間培養した。上清を除いた後、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を400μg/mL含有する培地に交換して約2時間培養した。その後、テトラゾリウム環の開環により生じるフォルマザンを2−プロパノールにて抽出し、マイクロプレートリーダーにて550nmの吸光度を測定した。同時に、濁度として650nmにおける吸光度を測定し、両測定値の差により細胞賦活作用を評価した。評価では、試料を含む培地の他に、コントロールとして1質量%FBS添加DMEM培地を用いた。評価結果を、コントロールにおける細胞賦活作用を100とした場合の相対値として表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1の結果から明らかなように、ソナレムグラ(全草)50%エタノール抽出物(抽出物1)は有意な抗老化効果が認められた。
【0032】
[実施例2]
<保湿効果(ヒト真皮線維芽細胞ヒアルロン酸産生促進作用の評価)>
正常ヒト真皮繊維芽細胞を1ウェル当り2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、0.5質量%FBS添加DMEM培地にて表2に示す各濃度となるように抽出物1を添加したサンプル培養液に交換し、さらに3日間培養した。培養上清中に分泌されたヒアルロン酸の定量には、プロテオグリカンを用いた間接ELISA法を用い、最後は標識されたペルオキシダーゼに対し2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)および過酸化水素を添加し反応させた後、マイクロプレートリーダーにて405nmの吸光度を測定した。PIERCE社製BCAプロテインアッセイキットにて各ウェルのタンパク量を測定し、単位タンパク量当りのヒアルロン酸産生量を求めた。評価結果を試料無添加のコントロールにおける単位タンパク量当りのヒアルロン酸産生量を100とした相対値にて表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
[実施例3]
<保湿効果(ヒト表皮角化細胞アルギナーゼ活性促進作用の評価)>
ヒト表皮角化細胞HaCaTを1ウェル当り2.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地には5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後1.2mM CaClを含む5質量%FBS添加DMEM培地(分化誘導培地)にて表3に示す各濃度に抽出物1を添加したサンプル培養液に交換し、さらに9日間培養した。培地交換は3日に1回のペースで行った。培養上清中に分泌された尿素の定量には、尿素窒素 B−テストワコー(和光純薬)を用いた。アルギナーゼはアルギニンを加水分解し、オルニチン、尿素を生成する。尿素はウレアーゼによってアンモニアに分解され、アンモニアはペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム二水和物(ニトロプルシッドナトリウム)存在下でサリチル酸、次亜塩素酸と反応し、インドフェノールが生成する。アルカリ性条件下でインドフェノールに由来する570nmの吸光度を測定し、尿素濃度を求め、アルギナーゼ活性の定量を行った。PIERCE社製BCAプロテインアッセイキットにて各ウェルのタンパク量を測定し、単位タンパク量当りのアルギナーゼ活性を求めた。評価結果を試料無添加のコントロールにおける単位タンパク量当りのアルギナーゼ活性を100とした時の相対値にて表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
表2および3の結果から明らかなように、ソナレムグラ(全草)50%エタノール抽出物(抽出物1)は有意な保湿効果が認められた。
【0037】
[実施例4]
<美白効果(B16マウスメラノーマ細胞メラニン産生抑制作用の評価)>
B16マウスメラノーマ細胞(B16F0細胞)を1ディッシュ当り18000個となるように90mmディッシュに播種した。播種培地には5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間後、5%質量FBS添加DMEM培地にて表4に示す濃度になるように抽出物1を添加した培養液に交換し、さらに5日間培養した。培養終了後、トリプシン処理にて細胞をはがし、1.5mLマイクロチューブに移して遠心操作して細胞沈殿物を得た。得られた沈殿物は下記判定表を基にその黒化状況を肉眼判定した。評価ではネガティブコントロールに5%質量FBS添加DMEM培地、ポジティブコントロールに50mM乳酸ナトリウムを含有する5%質量FBS添加DMEM培地を用いた。これらの肉眼判定結果は判定5及び判定1とし、サンプル判定の指標とした。肉眼判定は下記に示す通り、5段階評価した。また同時に、沈殿物に組織溶解剤(商品名Solvable)を添加して煮沸し、室温に戻して分光光度計(HITACHI製分光光度計U−3010)により500nmの吸光度を測定し、総メラニン量を求めた。評価結果を表4に示す。
判定及び基準
判定 基準
1 ポジティブコントロールと同程度(ほぼ白)
2 ポジティブコントロールより僅かに黒化する(うすい褐色)
3 ポジティブコントロールとネガティブコントロールの中間(褐色)
4 ネガティブコントロールと比べやや黒化が抑制されている(黒褐色)
5 ネガティブコントロールと同程度(ほぼ黒)
【0038】
【表4】

【0039】
表4の結果から明らかなように、ソナレムグラ(全草)50%エタノール抽出物(抽出物1)は有意な美白効果が認められた。
【0040】
[実施例5]
<抗酸化効果(DPPHラジカル消去作用の評価)>
抽出物1を、50質量%エタノールを用いて表5に示した濃度に調整して試料溶液とし、96穴マイクロプレートに100μLずつ添加した。そこへ、0.2mMの1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジカル(DPPH)エタノール溶液を100μLずつ添加し、良く混合後、室温、暗所にて10分間静置した。その後、DPPHラジカルに由来する516nmの吸光度を測定した。試料を添加しなかった場合のコントロールの吸光度を(A)、試料を添加した場合の吸光度を(B)としたとき、DPPHラジカルの消去率を式(1)に導入して求めた。測定結果を表5に示す。
式(1):ラジカル消去率={1−(B)/(A)}×100(%)
【0041】
【表5】

【0042】
表5の結果から明らかなように、ソナレムグラ(全草)50%エタノール抽出物(抽出物1)は有意な抗酸化効果が認められた。
【0043】
[実施例6]
<抗炎症効果(ホスホリパーゼA阻害作用の評価)>
60ng/mLとなるよう調整したホスホリパーゼA(PLA)、表6に示した濃度に調製したサンプル、および10mMとなるよう調整したDTNB(5,5−ジチオ−ビス−(2−ニトロ安息香酸))を各10μLずつ混合し、室温で10分間静置した。さらに基質として1.66mM のジヘプタノイル チオ−PCを50μL添加し、室温で45分間反応させ、414nmの吸光度を測定した。また、PLA溶液にかえてバッファー添加時の吸光度を測定し、両測定値の差を求めた。試料無添加のコントロールの値を(A)、試料添加時の値を(B)とした時、PLA阻害作用は次式に定義される。
阻害率(%)={1−(B)/(A)}×100
【0044】
【表6】

【0045】
表6の結果から明らかなように、ソナレムグラ(全草)50%エタノール抽出物(抽出物1)は有意な抗炎症効果が認められた。
【0046】
続いて、上記各調製方法で得られたソナレムグラ抽出物を配合した皮膚外用剤の処方例を示す。
【0047】
[実施例7]
乳液
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)メチルフェニルポリシロキサン 4.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)モノステアリン酸ポリオキシエチレン
ソルビタン(20E.O.) 1.3
(6)モノステアリン酸ソルビタン 1.0
(7)グリセリン 4.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)カルボキシビニルポリマー 0.15
(10)精製水 100とする残部
(11)アルギニン(1質量%水溶液) 20.0
(12)抽出物1 5.0
製法:(1)〜(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)〜(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。冷却後40℃にて、(11)と(12)を順次加え、均一に混合する。
【0048】
[実施例8]
化粧水
(1)エタノール 15.0(質量%)
(2)ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 0.3
(3)香料 0.1
(4)精製水 100とする残部
(5)クエン酸 0.02
(6)クエン酸ナトリウム 0.1
(7)グリセリン 1.0
(8)ヒドロキシエチルセルロース 0.1
(9)抽出物1 1.0
製法:(1)に(2)及び(3)を溶解する。さらに(4)〜(8)を順次添加した後、十分に攪拌し、(9)を加え、均一に混合する。
【0049】
[実施例9]
クリーム
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)ステアリン酸 2.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)セタノール 3.6
(6)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(7)グリセリン 10.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)アルギニン(20質量%水溶液) 15.0
(10)精製水 100とする残部
(11)カルボキシビニルポリマー(1質量%水溶液) 15.0
(12)抽出物1 5.0
製法:(1)〜(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)〜(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。(11)を添加して攪拌後、冷却し40℃にて(12)を加え、均一に混合する。
【0050】
[実施例10]
美容液
(1)精製水 100とする残部(質量%)
(2)グリセリン 10.0
(3)ショ糖脂肪酸エステル 1.3
(4)カルボキシビニルポリマー(1質量%水溶液) 17.5
(5)アルギン酸ナトリウム(1質量%水溶液) 15.0
(6)モノラウリン酸ポリグリセリル 1.0
(7)マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 3.0
(8)N−ラウロイル−L−グルタミン酸
ジ(フィトステリル−2−オクチルドデシル) 2.0
(9)硬化パーム油 2.0
(10)スクワラン(オリーブ由来) 1.0
(11)ベヘニルアルコール 0.75
(12)ミツロウ 1.0
(13)ホホバ油 1.0
(14)1,3−ブチレングリコール 10.0
(15)L−アルギニン(10質量%水溶液) 2.0
(16)抽出物1 3.0
製法:(1)〜(6)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(7)〜(14)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化を行った後、ホモミキサーにて均一に乳化する。冷却後50℃にて(15)を、40℃にて(16)を加え、均一に混合する。
【0051】
[実施例11]
水性ジェル
(1)カルボキシビニルポリマー 0.5(質量%)
(2)精製水 100とする残部
(3)水酸化ナトリウム(10質量%水溶液) 0.5
(4)エタノール 10.0
(5)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(6)香料 0.1
(7)抽出物1 0.5
(8)ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 1.0
製法:(1)を(2)に加え、均一に攪拌した後、(3)を加える。均一に攪拌した後、(4)に予め溶解した(5)を加える。均一に攪拌した後、予め混合しておいた(6)〜(8)を加え、均一に攪拌混合する。
【0052】
[実施例12]
クレンジング料
(1)スクワラン 81.0(質量%)
(2)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 15.0
(3)精製水 100とする残部
(4)抽出物1 4.0
製法:(1)と(2)を均一に溶解する。これに、(3)と(4)を順次加え、均一に混合する。
【0053】
[実施例13]
洗顔フォーム
(1)ステアリン酸 16.0(質量%)
(2)ミリスチン酸 16.0
(3)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(4)グリセリン 25.0
(5)水酸化ナトリウム 7.5
(6)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 1.0
(7)精製水 100とする残部
(8)抽出物1 0.1
製法:(1)〜(4)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(5)〜(7)の水相成分を80℃にて加熱溶解し、油相成分と均一に混合撹拌する。冷却後40℃にて(8)を加え、均一に混合する。
【0054】
[実施例14]
メイクアップベースクリーム
(1)スクワラン 10.2(質量%)
(2)セタノール 2.0
(3)グリセリントリ−2−エチルヘキサン酸エステル 2.5
(4)親油型モノステアリン酸グリセリル 1.0
(5)プロピレングリコール 11.0
(6)ショ糖脂肪酸エステル 1.3
(7)精製水 100とする残部
(8)酸化チタン 1.0
(9)ベンガラ 0.1
(10)黄酸化鉄 0.4
(11)香料 0.1
(12)抽出物1 3.0
製法:(1)〜(4)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(5)〜(7)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解し、これに(8)〜(10)の顔料を加え、ホモミキサーにて均一に分散させる。この水相成分に前記油相成分を加え、ホモミキサーにて乳化する。冷却後40℃にて(11)と(12)の成分を加え、均一に混合する。
【0055】
[実施例15]
乳液状ファンデーション
(1)メチルポリシロキサン 2.0(質量%)
(2)スクワラン 5.0
(3)ミリスチン酸オクチルドデシル 5.0
(4)セタノール 1.0
(5)ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタンモノステアリン酸エステル 1.3
(6)モノステアリン酸ソルビタン 0.7
(7)1,3−ブチレングリコール 8.0
(8)キサンタンガム 0.1
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(10)精製水 100とする残部
(11)酸化チタン 9.0
(12)タルク 7.4
(13)ベンガラ 0.5
(14)黄酸化鉄 1.1
(15)黒酸化鉄 0.1
(16)香料 0.1
(17)抽出物1 0.5
製法:(1)〜(6)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(7)〜(10)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解し、これに(11)〜(15)の顔料を加え、ホモミキサーにて均一に分散する。油相成分を加え、乳化を行う。冷却後40℃にて(16)と(17)の成分を順次加え、均一に混合する。
【0056】
[実施例16]
油中水型エモリエントクリーム
(1)流動パラフィン 34.0(質量%)
(2)マイクロクリスタリンワックス 2.0
(3)ワセリン 5.0
(4)ジグリセリンオレイン酸エステル 5.0
(5)塩化ナトリウム 1.3
(6)塩化カリウム 0.1
(7)プロピレングリコール 3.0
(8)1,3−ブチレングリコール 5.0
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(10)精製水 100とする残部
(11)香料 0.1
(12)抽出物1 3.0
製法:(5)と(6)を(11)の一部に溶解して50℃とし、50℃に加熱した(4)に撹拌しながら徐々に加える。これを混合した後、70℃にて加熱溶解した(1)〜(3)に均一に分散する。これに(7)〜(9)を(10)の残部に70℃にて加熱溶解したものを撹拌しながら加え、ホモミキサーにて乳化する。冷却後40℃にて(11)と(12)を加え、均一に混合する。
【0057】
[実施例17]
パック
(1)精製水 100とする残部(質量%)
(2)ポリビニルアルコール 12.0
(3)エタノール 17.0
(4)グリセリン 9.0
(5)ポリエチレングリコール(平均分子量1000) 2.0
(6)抽出物1 1.0
(7)香料 0.1
製法:(2)と(3)を混合し、80℃に加温した後、80℃に加温した(1)に溶解する。均一に溶解した後、(4)と(5)を加え、攪拌しながら冷却する。40℃にて(6)と(7)を加え、均一に混合する。
【0058】
[実施例18]
入浴剤
(1)香料 0.3(質量%)
(2)抽出物1 3.0
(3)炭酸水素ナトリウム 50.0
(4)硫酸ナトリウム 46.7
製法:(1)〜(4)を均一に混合する。
【0059】
[実施例19]
ヘアーワックス
(1)ステアリン酸 3.0(質量%)
(2)マイクロクリスタリンワックス 2.0
(3)セチルアルコール 3.0
(4)高重合メチルポリシロキサン 2.0
(5)メチルポリシロキサン 5.0
(6)ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)
メチルポリシロキサン共重合体 1.0
(7)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(8)1,3−ブチレングリコール 7.5
(9)アルギニン 0.7
(10)精製水 100とする残部
(11)抽出物1 2.0
(12)香料 0.1
製法:(1)〜(6)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解後する。一方、(7)〜(10)の水相成分を75℃にて加熱溶解し、前記油相成分を加え、ホモミキサーにて乳化する。冷却後40℃にて(11)と(12)の成分を加え、均一に混合する。
【0060】
[実施例20]
ヘアートニック
(1)エタノール 50.0(質量%)
(2)精製水 100とする残部
(3)抽出物1 3.0
(4)香料 0.1
製法:(1)〜(4)の成分を混合、均一化する。
【0061】
実施例7〜実施例20に示した皮膚外用剤は、抗老化効果、保湿効果、美白効果、抗酸化効果、抗炎症効果を有する組成物であった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のソナレムグラから得られる成分は、皮膚化粧料、毛髪用化粧料または洗浄料等の皮膚外用剤、医薬品、医薬部外品に配合して用いるのに有用である。また、本発明に係る、ソナレムグラ抽出物は、天然由来成分であることから、安全性が高いことが容易に考えられ、皮膚外用剤としての意義も大きく、したがって本発明は、新たな皮膚外用剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソナレムグラ(Hedyotis strigulosa var. parvifolia)またはその抽出物を含有することを特徴とする、抗老化剤。
【請求項2】
ソナレムグラ(Hedyotis strigulosa var. parvifolia)またはその抽出物を含有することを特徴とする、保湿剤。
【請求項3】
ソナレムグラ(Hedyotis strigulosa var. parvifolia)またはその抽出物を含有することを特徴とする、美白剤。
【請求項4】
ソナレムグラ(Hedyotis strigulosa var. parvifolia)またはその抽出物を含有することを特徴とする、抗酸化剤。
【請求項5】
ソナレムグラ(Hedyotis strigulosa var. parvifolia)またはその抽出物を含有することを特徴とする、抗炎症剤。
【請求項6】
ソナレムグラ(Hedyotis strigulosa var. parvifolia)またはその抽出物を含有することを特徴とする、皮膚外用剤。

【公開番号】特開2010−229083(P2010−229083A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78727(P2009−78727)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】