説明

抗菌剤、口腔用組成物及び義歯洗浄剤

【課題】カンジダ属真菌、特に口腔内カンジダ属真菌に対して優れた殺菌、静菌作用を有する抗菌剤を提供する。さらに、そのような抗菌剤を配合した口腔用組成物及び義歯洗浄剤を提供する。
【解決手段】サピンダス ララクの抽出物を有効成分として含む抗菌剤;サピンダス ララクから抽出されるサポニンを含む抗菌剤;上記抗菌剤を含む口腔用組成物及び義歯洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にカンジダ属真菌に対して優れた殺菌、静菌作用を有する抗菌剤に関し、さらに該抗菌剤を配合した組成物、特に口腔用組成物及び義歯洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
表在性真菌症の代表的なもののひとつにカンジダ症がある。カンジダ症は口腔カンジダ症、食道・腸管カンジダ症、外膣腔カンジダ症などの疾患がカンジダ属真菌の感染によって引き起こされるものである。とりわけ、口腔カンジダ症は、エイズ患者などの免疫不全患者の増加に伴って最近顕著に多くなっている。また、義歯装着者は、食後や就寝前などに義歯を取り外すと共にこれを洗浄し、義歯に付着した食餌かすの他、いわゆるデンチャープラークを完全に除去しておくのが好ましい。ところが義歯使用者による洗浄が不十分であったり、デンチャープラークが付着性の強いものであるときには、これらを十分に除去しきれないことがあり、口内炎発症の原因となっている。口内炎の発症に見舞われると義歯装着者でなくても食物を口に入れただけで激しい痛みが走り、本来楽しいはずの食事に苦痛が伴うものである。まして義歯装着者のように咀嚼に苦労しなければならない人達にとっては、その苦痛は一層大きなものとなり、食欲不振を招き全身状態の悪化を招くことすらある。
口内炎はかねてよりビタミンB類の不足によって起こると言われているが、最近の歯科・皮膚科学的研究の結果によると、上記デンチャープラーク中の真菌、とりわけカンジダ属真菌によっても発症することがわかってきた。従って、上記デンチャープラーク中のカンジダ菌を例えば洗浄剤などによって完全に除去しておくことは、上記口内炎の予防にとって極めて重要なことである。
【0003】
従来、抗菌成分として植物からの抽出物が注目されており、頭髪化粧料において、ムクロジ(Sapindus mukurossi GAERTN.)の果皮又は皮哨子(Sapindus delavayi RADLK.)の果皮からの抽出により得られるサポニンを抗菌性成分として配合することが提案され(特許文献1参照)、また、ムクロジ、皮哨子又はサピンダス・トリフォリアタス(Sapindus trifoliatus)の果皮からの抽出物を含む抗皮膚糸状菌剤が提案されている(特許文献2参照)。さらに育毛剤組成物の有効成分として、種々の植物由来の抽出物、例えばサピンダスララク(Sapindus rarak DC)の抽出物を配合することが知られている(特許文献3参照)。
一方、上述のとおり口腔カンジダ症、義歯使用者の口腔衛生の問題、さらに口内炎の原因を鑑みると、カンジダ属真菌、特に口腔内で問題となるカンジダ属真菌に対して、安全で、かつ、優れた殺菌、静菌作用を発揮する抗菌剤が強く求められている。
【0004】
【特許文献1】特許第2588723号明細書
【特許文献2】特許第2727096号明細書
【特許文献3】特開2001−220320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、カンジダ属真菌、特に口腔内カンジダ属真菌に対して優れた殺菌、静菌作用を有する抗菌剤を提供することを目的とする。本発明はまた、そのような抗菌剤を配合した口腔用組成物及び義歯洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、カンジダ属真菌、とりわけカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対して、特定の植物の抽出物が優れた殺菌、静菌作用を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、サピンダス ララクの抽出物を有効成分として含む抗菌剤である。サピンダス ララクの抽出物の中でも特にサポニンが有効成分であると考えられる。従って本発明はまた、サピンダス ララクから抽出されるサポニンを含む抗菌剤である。
上記抗菌剤の有効成分は毒性が極めて少なく安全性が高いものであって、該抗菌剤は口腔用組成物、義歯洗浄剤、化粧料、医薬品、食品、工業製品、家庭用品などの幅広い分野において利用することができる。
よって、本発明はさらに、上記抗菌剤を含む口腔用組成物、及び上記抗菌剤を含む義歯洗浄剤に向けられている。本発明はより具体的には、サピンダス ララクの抽出物を含む口腔用組成物、サピンダス ララクの抽出物を含む義歯洗浄剤、サピンダス ララクから抽出されるサポニンを含む口腔用組成物、及びサピンダス ララクから抽出されるサポニンを含む義歯洗浄剤である。
サピンダス ララクの抽出物としては、サピンダス ララクの果実、果肉、果皮又はその混合物の水、親水性有機溶媒又は含水親水性有機溶媒による抽出物が挙げられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の抗菌剤の有効成分は安全性が高く、口腔用組成物や義歯洗浄剤の成分とするのに適しており、また、その抗菌、静菌作用はカンジダ属真菌、特に口腔内カンジダ属真菌であるカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対して優れている。
該抗菌剤を含ませた口腔用組成物や義歯洗浄剤は、使用者の口腔内及び義歯を衛生的に良好に保つのに有用であり、カンジダ属真菌が原因となる症状や炎症を予防することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において用いられるサピンダス ララク(Sapindus rarak)は、東南アジアを起源とし、今では広くアジアとアフリカで生育しているムクロジ科ムクロジ属の双子葉植物である。その果実には茶色で柔らかい果皮があり、乾燥すると暗褐色になる。果皮は水中で泡立つ特性があり、天然の石鹸として伝統的に洗濯に使用されている。果実は年間を通じて利用可能かつ市場で売られている。サピンダスとはインドの石鹸の意である。果皮の石鹸性の性質による。インドでは古くから洗濯用に用いられていた。
本発明において、サピンダス ララクの抽出物を得るための抽出原料は、サピンダス ララクの果実全体(種子、果肉及び果皮を包含する)、果肉(種子を含んでもよい)、果皮、又はそれらの混合物を乾燥したものを適度な大きさに粉砕して用いるのが一般的である。
【0009】
抽出溶媒として、水、親水性有機溶媒、含水親水性有機溶媒又はそれらの混合物が挙げられ、その具体例として、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン及びジグリセリンから選ばれる1種単独または2種以上の併用がある。中でも好ましくはエタノール及び含水エタノール、例えばエタノールが70質量%以上である含水エタノールが抗菌作用の点から好ましく用いられる。
抽出の際のサピンダス ララク抽出原料と抽出溶媒との比率は特に限定されるものではないが、質量を基準にして抽出原料に対して2〜1000倍量の溶媒を用いるのが一般的であり、特に抽出操作、効率の点でサピンダス ララク抽出原料の5〜100倍量の抽出溶媒が好ましい。
抽出条件は特に限定されるものではないが、抽出温度は室温から抽出溶媒の沸点以下の温度で、例えば20〜35℃の範囲で、常圧下が好ましい。抽出方法としては浸漬抽出が適当であり、浸漬中に攪拌操作を行ってもよい。抽出時間は抽出温度によっても異なるが、一般的に10〜60時間の範囲で、例えば一昼夜程度、24時間の浸漬が採用される。抽出操作の後、適当な方法で固液分離して抽出液を得る。これらの抽出操作は、1回目の抽出操作を終えた原料残留物で繰り返して実施することもできる。
【0010】
このようにして得られたサピンダス ララクの抽出物は、得られた抽出液のまま用いることができるし、公知の手段で濃縮し、例えば減圧下で濃縮して濃縮抽出液を得てもよい。あるいは、該抽出液に、抗菌作用を失わない範囲で脱臭、精製などの操作を加えて脱臭抽出物や精製物を得てもよく、また、カラムクロマトグラフィーなどを用いて分画物を得てもよい。さらに、上記抽出液、脱臭抽出物、精製物及び分画物から溶媒を蒸発させて固形乾燥物を得てもよい。さらに、該固形乾燥物をアルコールなどの溶媒に可溶化した液状の形態、あるいは乳剤の形態にしてもよく、ゲル状や粒状に加工してもよい。
本発明の抗菌剤の有効成分となるサピンダス ララクの抽出物は、上述の抽出液、濃縮抽出液、脱臭抽出物、精製物、分画物、固形乾燥物、液状、乳剤の形態、ゲル状や粒状などのいずれの形態で使用してもよい。
【0011】
本発明の抗菌剤は、口腔用組成物、義歯洗浄剤、化粧料、医薬品、食品、工業製品、家庭用品などの幅広い分野において利用することが可能であり、本発明は特に口腔用組成物及び義歯洗浄剤に向けられている。
本発明の抗菌剤は、有効成分である上記サピンダス ララクの抽出物単独の組成としてもよいし、該有効成分以外に他の成分を含ませてもよい。
【0012】
本発明の抗菌剤を配合した口腔用組成物の剤形は、外用剤として口腔内で作用するものであれば特に限定されず、種々の成分を配合して、医薬品、医薬部外品及び食品などの種々の形態として提供できる。具体的には練歯磨剤、液体歯磨剤、液状歯磨剤、潤製歯磨剤、粉歯磨剤などの歯磨剤、洗口剤、洗口液、口腔用ゲル剤、口腔用パスタ剤、口腔用スプレー、トローチ、タブレット、チュアブル、カプセル、フィルム剤、顆粒、粉末ジュース、飴、チューインガム、キャンディ、グミキャンディなどの形態として提供できる。
本発明の口腔用組成物において、上記抗菌剤の有効成分であるサピンダス ララクの抽出物を0.01〜50質量%の範囲で配合することができ、好ましくは0.01〜40質量%、より好ましくは0.05〜25質量%の範囲である。
【0013】
本発明の口腔用組成物は、通常の製造方法によって製造することができる。本発明の口腔用組成物には、目的とする口腔用組成物の形態に応じ、他の成分、例えば研磨剤、湿潤剤、有機溶剤、粘結剤、香料、賦形剤、甘味剤、pH調整剤、防腐剤、乳化剤、可溶化剤、界面活性剤、結合剤、滑沢剤、油、色素などを適宜配合することができる。これらの添加剤は、医薬品組成物、口腔用組成物または食品処方設計に通常用いられ、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができ、また、適当な配合量で配合することができる。このような添加剤の例として、下記のものが挙げられる。
【0014】
研磨剤として、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、第2リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、不溶性メタリン酸カルシウム、無水ケイ酸、酸化チタン、非晶質シリカ、結晶質シリカ、アルミノシリケケート、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、レジン、ハイドロキシアパタイトなどを、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
湿潤剤として、例えば、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトールなどの多価アルコールを、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0015】
有機溶剤としてはアルコールが好ましく、例えば、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどが挙げられ、特にエタノールが好ましい。これらアルコールは単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
粘結剤として、例えば、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルギネート、キサンタンガム、トラガカントガム、アラビアガムなどのガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムなどの合成粘結剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガムなどの無機粘結剤などが挙げられる。
【0016】
香味剤としては、例えば、アネトール、メントール、ペパーミント油、スペアミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、シソ油、冬緑油、丁字油、ユーカリ油、ピメント油、カルボン、シンナミックアルデヒド、シネオール、メントン、リモネン、サリチル酸メチルなどを本発明の効果を損なわない範囲で、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は口腔用組成物全量に対して一般的に0.0001〜1.0質量%である。
甘味剤としては、例えば、パラチニット、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルミン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、ρ―メトキシシンナミックアルデヒドなどが挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、口腔用組成物全体に対して0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0017】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、パントテン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウムなどが挙げられ、これらは、組成物のpHが適切な範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、口腔用組成物全体に対して0.01〜2質量%である。
賦形剤としては、例えばショ糖、乳糖、デンプン、ブドウ糖、結晶性セルロース、マンニット、ソルビット、キシリトール、エリスリトール、パラチニット、パラチノース、マルチトール、トレハロース、ラクチトール、ラクチュロース、還元澱粉糖、還元イソマルトオリゴ糖、カップリングシュガー、ガムベース、アラビアガム、ゼラチン、セチルメチルセルロース、軽質無水ケイ酸、アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0018】
防腐剤としてはパラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸及びその塩、サリチル酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなどが挙げられる。
発泡剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸モノグリセリンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、N−アシルグルタメート等のN−アシルアミノ酸塩、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、マルチトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0019】
可溶化剤としては、エステル類、ポリエチレングリコール誘導体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタンの脂肪酸エステル類、硫酸化脂肪アルコール類などが挙げられる。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、硬化油などが挙げられる。
油としては、ココナッツ油、オリーブ油、ごま油、落花生油、パセリ油、パセリ種子オイル、紅花油などが挙げられる。
【0020】
さらに、本発明の口腔用組成物には、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロールなどのビタミンE類、アスコルビン酸などのビタミンC類、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)などの酵素、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸の抗プラスミン剤、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン塩類、グリチルリチン酸、グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、水溶性無機リン酸化合物、塩化セチルピリジニウム、トリクロサン、ヒノキチオール、塩酸クロルヘキシジンなどを、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
本発明の口腔用組成物は、これらの成分を混合し、通常の方法に従って製造することができる。
【0021】
本発明の抗菌剤を配合した義歯洗浄剤は、種々の形状とすることができ、例えば、液体(乳化形、可溶化形)、液状、ゲル状、ペースト状、錠剤、発泡錠、粉末状、顆粒状などとすることができる。これらの剤型への調製は、常法に従って行うことができる。
本発明の義歯洗浄剤において、上記抗菌剤の有効成分であるサピンダス ララクの抽出物を0.01〜50質量%の範囲で配合することができ、好ましくは0.01〜40質量%、より好ましくは0.05〜25質量%の範囲である。
【0022】
本発明の義歯洗浄剤には、さらに、サピンダス ララクの抽出物に加えて、目的とする剤型に応じて適宜添加物を含ませることができ、例えば、溶剤、防腐剤、香料、さらに、義歯洗浄剤に通常使用される洗浄成分などを使用することができる。例えば、形状を液体とするならば、湿潤剤、界面活性剤、防腐剤などの成分と混合して製造することができる。これらの添加物は、通常使用されている配合量で使用することができる。
上記添加物の具体例としては、以下の成分が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液、2−アルキル−N−カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの界面活性剤;グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの湿潤剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ポリビニルピロリドン、カラギーナンなどの増粘剤;水、エタノールなどの溶剤;過酸化ナトリウム、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩;無水クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸などの酸剤;パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウムなどの防腐剤;香料、色素、イソプロピルメチルフェノール、塩化ナトリウム、クロルヘキシジン類、ロルヘキシジングルコン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、エデト酸塩、トリポリリン酸塩など。
【0023】
本発明の義歯洗浄剤の使用方法は、その剤型に応じてそのまま、あるいは用時、適量の水に溶解して義歯に使用することができる。例えば、2〜3g程度の錠剤あるいは顆粒などを水200g程度に溶解させて使用する。また、本発明の義歯洗浄剤は、通常の義歯洗浄剤と同様に使用することができる。
【実施例】
【0024】
さらに本発明について、実施例及び実験例により詳細に説明する。
[実施例1]
サピンダス ララク果実の抽出物
以下の操作により、サピンダス ララクの果実(種子、果肉及び果皮を含む)から抽出物を得た。
乾燥して粉砕したサピンダス ララク実10gと含水エタノール(エタノール濃度70質量%)100mLを混合し、室温(25℃)で24時間静置した。フィルターでろ過してサピンダス ララク実を除去し、サピンダス ララク実抽出物とした。
【0025】
[実験例1]
Candida albicansに対するMIC測定
倍数希釈法により、表1記載の濃度で実施例1のサピンダス ララク実抽出物を配合したGP培地(和光純薬製)にCandida albicans (ATCC 10231)を接種して、32.5℃で2日間培養し、その生育状況の目視における確認から、抗菌剤の最小発育阻止濃度(MIC)を求めた。なお、サピンダス ララク果抽出物に代えて、比較のための試料として、ユッカ1%溶液(粉末状ユッカ抽出物(ミツバ貿易の製品、商品名:ユッカサラサポニン50-M)の水溶液)、及び含水エタノール(エタノール濃度70質量%)を用い、同様に試験した。
表1:サピンダス ララク実抽出物のC.albicansに対するMIC
(−:非生育 +:生育)

【0026】
[実験例2]
各種菌に対するMICおよびMBC測定
実施例1で得たサピンダス ララク実抽出物の各種菌に対するMICおよび最小殺菌濃度(MBC)を、下記の培地を用いて倍数希釈法により求めた。
各種菌として、Candida albicans (ATCC 10231)<GP培地使用>、Escherichia coli (ATCC 8739)、Pseudomonas aeruginosa (ATCC 9027)、Staphyrococcus aureus (ATCC 6538P)<BHI培地使用>、Streptococcus mutans (ATCC 25175)<SCD培地使用>、Propionibacterium acnes (ATCC 6919)、Porphyromonas gingivalis (ATCC 33277)<GAM培地使用>を用いた。
結果を表2に示す。
【0027】
表2:サピンダス ララク実抽出物の各種菌に対するMIC/MBC

表2の結果より、サピンダス ララク抽出物は、Candida albicansに対して低濃度で抵抗性を示し、これは他種菌への抗菌力と比べて顕著であり、抗菌力に選択性があることがわかった。
【0028】
[実験例3]
Candida albicansに対する阻止円形成確認
ポテトデキストロース顆粒寒天培地(日水製薬製)で作製した平板寒天培地にCandida albicans (ATCC 10231)を0.1mLを接種、塗抹し、ペーパーディスク抗生物質検定用(ADVANTEC社製)を実施例1のサピンダス ララク実抽出物に浸漬したものを置き、32.5℃で2日間培養後、の阻止円の形成を確認した。なお、サピンダス ララク果実抽出物に代えて、比較のための試料として、ユッカ1%溶液(粉末状ユッカ抽出物(ミツバ貿易の製品、商品名:ユッカサラサポニン50-M)の水溶液)、及び含水エタノール(エタノール濃度70質量%)を用い、同様に試験した。
各試料による阻止円の直径は次のとおりであった。
表3

【0029】
[実験例4]
andida albicans浮遊菌に対する殺菌力試験
実施例1で得たサピンダス ララク実抽出物のCandida albicans(ATCC 10231)浮遊菌に対する殺菌力試験を行った。
サピンダス ララク実抽出物の3.13%溶液20mLを作製し、生理食塩水を用いたCandida albicans(ATCC 10231)懸濁液1.0×107cfu/mLを20μL接種した。25℃にて8時間インキュベートし、1、2、4、8時間後の生菌数をポテトデキストロース顆粒寒天培地を用い、混釈培養法により測定した。なお、比較のための試料として、エタノールの2.19%溶液を用い、同様に試験した。
結果を表4に示す。
【0030】
表4:Candida albicans生菌数の経時変化(単位:cfu/mL)

表4から明らかなように、サピンダス ララク抽出物との接触により、Candida albicans生菌数は経時的に減少し、8時間後には30cfu/mL以下となった。
【0031】
[実験例5]
歯垢(Denture plaque)洗浄試験
実施例1で得たサピンダス ララク実抽出物を用いて、下記の通り試験を行った。
24穴マイクロプレートの底面に重合レジンを成型し、生理食塩水を用いたCandida albicans(ATCC 10231)懸濁液1.0×107cfu/mLを50μL接種した。32.5℃にて2時間インキュベートし、菌をレジンプレートに付着させた。これにBHI培地2mLを加え、32.5℃にて4日間インキュベートし、Denture plaqueモデルを作製した。
得られたDenture plaqueモデルの培地を除去し、滅菌精製水にて洗浄後、サピンダス ララク実抽出物の3.13%溶液を25℃にて8時間接触、除去後、滅菌精製水で洗浄し、化学発光法によりATP量を測定した。サピンダス ララク実抽出物によるDenture plaque洗浄力を下記の式によって百分率(%)で表した。なお、比較のための試料として、エタノールの2.19%溶液を用い、同様に試験した。
洗浄力(%)=100−{(サピンダス ララク抽出物8時間接触後のATP量/サピンダス ララク抽出物接触前のATP量)×100}
結果を表5に示す。
【0032】
表5:Denture plaque洗浄力(%)

表5の結果より、サピンダス ララク抽出物が優れた菌体洗浄力を有し、8時間で99.33%のDenture plaqueを洗浄したことがわかる。
【0033】
[実験例6]
義歯付着菌に対する殺菌力試験
実施例1で得たサピンダス ララク実抽出物の義歯付着菌に対する殺菌力試験を行った。
生理食塩水を用いたCandida albicans (ATCC 10231)懸濁液200mL(1.0×107cfu/mL)に、義歯を25℃にて1時間浸漬した。取り出した義歯をサピンダス ララク実抽出物3.13%溶液100mLに、25℃にて8時間浸漬した。取り出した義歯に付着している生菌数を拭き取り法により測定した。培養は32.5℃で2日間行った。なお、比較のための試料として、エタノールの2.19%溶液を用い、同様に試験した。
拭き取り法により、Candida albicans懸濁液による1時間浸漬後の義歯からのサンプル、及び2.19%エタノール溶液による8時間浸漬後の義歯からのサンプルを培養した寒天培地には、それぞれ1.0×103cfu/mLの生菌数が認められた。一方サピンダス ララク抽出物溶液による8時間浸漬後の義歯からのサンプルを培養した寒天培地には、<30cfu/mLの生菌数が認められた。この結果から、サピンダス ララク抽出物により義歯付着菌が殺菌されたことがわかる。
【0034】
以下に上記実施例1で得たサピンダス ララク実抽出物を配合し、常法により調製した本発明の口腔用組成物及び義歯洗浄剤の処方例を示す。配合量の単位は質量%である。
[実施例2]
歯磨剤(練歯磨)
成分 配合量
サピンダス ララク実抽出物 0.7
無水ケイ酸 20.0
グリセリン 28.0
二酸化チタン 0.3
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.3
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
サッカリンナトリウム 0.1
キシリトール 9.0
酢酸dl−トコフェロール 0.05
ペパーミント香料 0.6
精製水 残部
合計 100.0
【0035】
[実施例3]
洗口剤
成分 配合量
サピンダス ララク実抽出物 1.6
エタノール 10.0
トラネキサム酸 0.05
グリセリン 5.0
クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
ミント香料 適量
精製水 残部
合計 100.0
【0036】
[実施例4]
口腔用ゲル
成分 配合量
サピンダス ララク実抽出物 1.3
カルボキシメチルセルロース 0.2
グリセリン 40.0
精製水 残部
合計 100.0
【0037】
[実施例5]
タブレット
成分 配合量(%)
サピンダス ララク実抽出物 20.0
マルチトール 42.0
乳糖 20.0
ラクチュロース 15.0
ショ糖脂肪酸エステル 3.0
合計 100.0
【0038】
[実施例6]
キャンディ
成分 配合量
サピンダス ララク実抽出物 6.2
ビタミンC 5.0
キシリトール 8.0
マルチトール 10.0
アスパルテーム 0.1
香料 0.2
パラチニット 残部
合計 100.0
【0039】
[実施例7]
チュアブル
成分 配合量
サピンダス ララク実抽出物 46.2
マルチトール 30.0
キシリトール 20.0
ショ糖脂肪酸エステル 3.0
香料 0.8
合計 100.0
【0040】
[実施例8]
チューインガム
成分 配合量
サピンダス ララク実抽出物 13.5
炭酸カルシウム 5.0
ビタミンE 0.1
ガムベース 27.0
エリスリトール 10.0
キシリトール 残部
マルチトール 12.0
香料 0.5
合計 100.0
【0041】
[実施例9]
トローチ
成分 配合量
サピンダス ララク実抽出物 16.6
マルチトール 21.0
アラビアガム 1.5
ショ糖脂肪酸エステル 2.5
粉末香料 1.0
クエン酸 4.0
ビタミンC 10.0
キシリトール 残部
合計 100.0
【0042】
[実施例10]
義歯洗浄剤(液剤)
成分 配合量
サピンダス ララク抽出物 2.0
ラウロイルサルコシン酸ナトリウム 20.0
クロルヘキシジングルコン酸ナトリウム 2.0
EDTAナトリウム 6.0
エタノール 60.0
精製水 10.0
香料 残部
合計 100.0
上記成分をよく混合し液剤した。その0.5〜1.5gを100〜150mLの水に溶解して使用する。
【0043】
[実施例11]
義歯洗浄剤(散剤)
成分 配合量
サピンダス ララク抽出物 23.0
炭酸水素ナトリウム 31.0
クエン酸 25.0
ラウリル硫酸ナトリウム 6.0
トリポリリン酸ナトリウム 13.0
ポリエチレングリコール 2.0
香料 残部
合計 100.0
上記成分をよく混合し散剤とした。その1.0〜2.5gを100〜150mLの水に溶解して使用する。
【0044】
[実施例12]
義歯洗浄剤(錠剤)
成分 配合量
サピンダス ララク抽出物 10.0
炭酸水素ナトリウム 30.0
酒石酸 27.0
ココイルサルコシン酸ナトリウム 5.0
ラウリル硫酸ナトリウム 5.0
塩化ベンザルコニウム 2.0
EDTAナトリウム 5.0
トリポリリン酸ナトリウム 14.0
ポリエチレングリコール 2.0
香料 残部
合計 100.0
上記成分をよく混合し、その2〜3gを打錠機で打錠した。その1錠を100〜150mLの水に溶解して使用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サピンダス ララクの抽出物を有効成分として含む抗菌剤。
【請求項2】
サピンダス ララクから抽出されるサポニンを含む抗菌剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の抗菌剤を含む口腔用組成物。
【請求項4】
請求項1又は2記載の抗菌剤を含む義歯洗浄剤。

【公開番号】特開2010−18544(P2010−18544A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180266(P2008−180266)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年2月1日 http://nenkai.pharm.or.jp/128/web/における発表
【出願人】(391066490)日本ゼトック株式会社 (31)
【Fターム(参考)】