説明

抗菌性塗布層を有する二軸延伸ポリエステルフィルム

本発明は、少なくとも1つのベース層(B)と少なくとも1つの抗菌性塗布層を有するポリエステルフィルムであって、抗菌性塗布層が、a)以下の式(I)で示されるアンモニウムシランから成り、(b)厚さが1μm未満、好ましくは0.3μm未満、更に好ましくは0.15μm未満であることを特徴とするポリエステルフィルムに関する。
【化1】


(上記式(I)において、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して水素およびC〜Cのアルキル基から選択され、当該C〜Cのアルキル基は直鎖アルキル基であってもC〜Cの分岐アルキル基であってもよく、R及びRは好ましくは同一で且つCHであり、水性分散液において、1つ又は2つ或いは全てのRが水素であり;nは0より大きく10未満であり、好ましくは2〜5、更に好ましくは3であり;mは0より大きく30未満であり、好ましくは6〜25、更に好ましくは15〜20、特に好ましくは17であり;X−は塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンから選択される。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのベース層(B)と少なくとも1つの抗菌性塗布層から成るポリエステルフィルムであって、抗菌性塗布層が式(I)で示されるアンモニウムシランから成る二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。本発明は、更にその製造方法およびその使用にも関する。本発明のフィルム及びそれから製造される物品は、特に医療用装置および包装材、冷蔵庫の壁面(スチール上に積層)、大規模な厨房や病院などの壁面への使用に好適である。更に、本発明のフィルムは、被覆材として好適であり、ヒートシール又は接着剤を介して金属面の保護材として好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トリクロサンを使用した抗菌性ポリエステルフィルムが開示されている。PETからのトリクロサンの染出しは非常にゆっくりであるが、抗菌性効果があるのはトリクロサンを高担持させた場合のみである。加えて、トリクロサンは塩素化有機化合物であるため、例えばフィルム製造中に生じるフィルム端部の再利用の際、反応して有害な塩素化化合物を生じさせる可能性がある。トリクロサンは、更に、環境的な理由から、多くの分野において不適であり、耐性が生じる危険もある。
【0003】
特許文献2には、銀イオンを有するリン酸ジルコニウムが付与されたポリエステルフィルムが記載されている。しかしながら、このリン酸塩の層構造は、非常に小さな空隙のみ銀が漏れるのに利用可能であり、それ故細菌からの攻撃を防御するためには比較的多量に担持させる必要がある。
【0004】
特許文献3には、塗布用の抗菌性を有する好適な基質が数種類提案されている。塗布は、フィルムの製造後に溶媒を使用して行われるため、追加のコストがかかり、更に、溶媒による環境汚染の問題がある。特許文献3の実施例5〜8に記載されたシール性は、塗布層の機械的性質および耐熱性を悪化させる。これは、例えば家庭で通常使用する掃除機を使用した掃除中に、フィルムが容易に損傷し、更に、シール性が付与されているためにフィルムが粘着性を有する。防水性が改良されている特許文献3の実施例1〜4に記載のフィルムは、抗菌性フィルムとしては全く不適当である。これは、例えば、塗布層の下に位置しているようなフィルム層から表面への殺生物剤の漏出が、水の力を必要とするからである。この文献に記載の塗布層はサラン材に基づく物であるが、これは塩素化ポリマーであり、環境的に有害であり、ポリエステルフィルムの再利用、リサイクルに不適となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2002/062577号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/000755号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第1583793号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、抗菌性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することであり、当該フィルムは、インライン法によって設けられる抗菌性塗布層を有し、上記の従来技術における問題点を解決したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、厚さ5〜500μmのポリエステルベースフィルムの少なくとも片側に、インライン法により設けられた抗菌性塗布層を有するポリエステルフィルムであって、抗菌性塗布層が、a)以下の式(I)で示されるアンモニウムシランから成り、(b)厚さが1μm未満、好ましくは0.3μm未満、更に好ましくは0.15μm未満であることを特徴とするポリエステルフィルムに存する。
【0008】
【化1】

【0009】
上記式(I)において、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して水素およびC〜Cのアルキル基から選択され、当該C〜Cのアルキル基は直鎖アルキル基であってもC〜Cの分岐アルキル基であってもよく、R及びRは好ましくは同一で且つCHであり、水性分散液において、1つ又は2つ或いは全てのRが水素であり;nは0より大きく10未満であり、好ましくは2〜5、更に好ましくは3であり;mは0より大きく30未満であり、好ましくは6〜25、更に好ましくは15〜20、特に好ましくは17であり;Xは塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンから選択される。
【0010】
上記ベースフィルムは単層構造であっても多層構造であってもよい。
【0011】
特に、ベース層(B)に加えて、抗菌性塗布層の下に外層(A)を有することが好ましく、抗菌性塗布層はインライン法で塗布形成されており、塗布層は抗菌剤を含有しており、抗菌剤は、殺生物剤として銀/銀イオンから成ることが好ましい。外層(A)の厚さは10μm未満、好ましくは5μm未満、更に好ましくは3.5μm未満である。
【0012】
他の好ましい実施態様において、フィルムは少なくとも3層から成り、ベース層(B)の片側に上記外層(A)、外層(A)とは反対側に少なくとも1つの外層(C)を有し、当該外層(C)上には抗菌性塗布層を有しておらず、とりわけスチールシートや他のポリマー上に本発明のフィルムを積層できるようにシール性を有する。シール性層は、欧州特許出願公開第1138480号明細書、欧州特許出願公開第1097809号明細書、欧州特許出願公開第1471098号明細書、欧州特許出願公開第1165317号明細書などに例示されており、通常共重合ポリエステルから成る。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフィルムは、バクテリア、ウイルス、藻、菌類などに対して効果的である。更に、その効果は、数回の洗浄においても持続する。フィルムは容易に製造できる。シール性を付与した態様では、自己シールだけでなく、ポリアミド、ポリカーボネート等の種々のポリマー、金属(例えばアルミニウム、スチール等)、ラッカー塗装スチール、クロム又は錫メッキスチール等の種々の材料から成る基材に対してのシールも可能である。本発明のフィルムは多用途である。国際公開第2006/102858号パンフレット及び国際公開第2006/102957号パンフレットに記載の方法によって、金属や他の基材に接着させることにより、非シール性の態様も特に好ましい。
【0014】
特に、アンモニウムシラン塗布層および銀含有層の組合せにより、抗菌性が不十分である塗布層のみの場合またはフィルムのみの場合の何れに対しても(例えば、黒色アスペルギルス、シュードモナス菌などに対して)、微生物に対する活性が良好となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ポリエステルベースフィルム:
本発明のフィルムのベース層(B)は80重量%以上のポリエステルから成ることが好ましい。最大20重量%までポリアミド、ポリエーテルアミド及び/又は他のポリマーをポリエステルの他に配合してもよい。これらのポリマーの配合比率は好ましくは5重量%未満、更に好ましくは1重量%未満である。
【0016】
好ましいポリエステルは、エチレングリコールとテレフタル酸とから成るポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレングリコールとナフタレン−2,6−ジカルボン酸とから成るポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンとテレフタル酸とから成るポリ1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCDT)、エチレングリコールとナフタレン−2,6−ジカルボン酸とビフェニル−4,4−ジカルボン酸とから成るポリエチレン−2,6−ナフタレートビベンゾエイト(PENBB)等が挙げられる。中でも、エチレングリコール単位とテレフタル酸単位とが60モル%以上、好ましくは80モル%以上から成るポリエステルが好ましい。残余のモノマー単位は、他の脂肪族、脂環式または芳香族ジオール及び/又はジカルボン酸から誘導されたモノマーである。
【0017】
脂肪族ジオールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、HO−((CH−O)−(CH−OHの式で示されるポリエチレングリコール(n=3〜1000)、HO−(CH−OHの式で示される脂肪族グリコール(nは3〜6の整数を表し、具体的には、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる)、炭素数6までの分岐型脂肪族グリコールが例示される。脂環式ジオールとしては、シクロヘキサンジオール(具体的には、シクロヘキサン−1,4−ジオール)が挙げられる。芳香族ジオールとしては、HO−C−X−C−OHで示される芳香族ジオール(式中Xは−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−S−、−SO−を表す)が挙げられる。また、式:HO−C−C−OHで表されるビスフェノール類も好ましいが、これらの比率は5重量%を超えないことが好ましく、1重量%を超えないことが更に好ましい。
【0018】
芳香族ジカルボン酸としては、ベンゼンジカルボン酸(ナフタレン−1,4−又は−1,6−ジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸)、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸などのビフェニル−x,x’−ジカルボン酸、ジフェニルアセチレン−4,4’−ジカルボン酸などのジフェニルアセチレン−x,x−ジカルボン酸、スチルベン−x,x−ジカルボン酸などが挙げられる。脂環式ジカルボン酸としては、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などのシクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、C−C19のアルカンジカルボン酸が挙げられ、当該アルカンは直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0019】
熱成形の実施態様において、ベース層のポリエステルが、95モル%未満のエチレングリコール単位およびテレフタル酸単位から成ることが好ましく、90モル%未満のエチレングリコール単位およびテレフタル酸単位から成ることが更に好ましい。
【0020】
シール性層(C)を構成するポリマーは例えば、欧州特許出願公開第1138480号明細書、欧州特許出願公開第1097809号明細書、欧州特許出願公開第1471098号明細書、欧州特許出願公開第1165317号明細書などに記載の物が、ブレンド体への制限もなく使用できる。
【0021】
抗菌性外層(A):
抗菌性外層(A)に使用するポリマーは、基本的にはベース層(B)に使用されるポリマーを使用できる。好ましくは60モル%以上、更に好ましくは80モル%以上のエチレングリコール単位およびテレフタル酸単位から成るポリエステルが好ましい。しかしながら、エチレングリコール単位およびテレフタル酸単位が99モル%未満、好ましくは97モル%のエチレングリコール単位およびテレフタル酸単位から成るポリエステルが好ましい。ポリエステル中の共重合の比率が増加するにつれ、殺菌剤として好ましく使用される銀原子/銀イオンの媒体への放出が容易となり、抗菌性効果が改良される。その反面、層の抵抗性が減じ、これによって抗菌性効果の低下が生じ、特に溶剤から成る洗浄剤(エタノール、アセトン等)で洗浄した際に表面の光学特性の変化が生じる。従って、以下の範囲が好ましい。
【0022】
【表1】

【0023】
共重合ポリエステル成分はお互いに結合していてもよい。しかしながら、特に上記の理由により、2以上の共重合成分が選択されるべきであり、他の任意成分の量は好ましい範囲よりも低い方が好ましい。2成分の量は、如何なる組合せにおいても好ましい範囲の上限よりも大きくならないようにすべきである。もし、1つより大きい(2以上の)共重合モノマー成分を有する場合、それらの量は、理想的には、上記更に好ましい範囲内に入ることが好ましく、すなわち、IPAが4重量%、DEGが2重量%(両方とも更に好ましい範囲内)の場合、他のジオールは0.7重量%未満、その他のカルボン酸は1重量%未満(上記の好ましい範囲の下限より低い)であるべきである。
【0024】
外層(A)の殺菌剤としては、好ましくは元素銀および/銀イオンである。元素銀としては、例えば、ナノ粒子(例えばBio−Gate AG社(独国)から入手できるもの)の形状のものが使用できるが、銀イオンの形状のものが好ましい。これらのものとしては、好ましくは銀含有(Ag)ジルコニウムリン酸塩(市販品として、例えば、Milliken社(米国)製「AlphaSan」)、銀含有(Ag)ガラス(市販品として、例えば、Ciba Sc社(スイス)製「Irgaguard」 B7000シリーズ)、特に好ましくは銀含有(Ag)ゼオライトが挙げられる。銀含有(Ag)ゼオライトとしては、商品名Bactekiller(カネボウ社(日本))、Zeomic(Sinanen社(日本))が挙げられる。
【0025】
元素銀および/または銀イオンが担持された粒子(ガラス、ジルコニウムリン酸塩、ゼオライト等)は、外層(A)の重量を基準として0.5〜15重量%の濃度で配合する。
【0026】
上記の外層(A)に担持させる量は、好ましくは1〜6重量%、更に好ましくは1.5〜3.5重量%である。担持量が多すぎると表面品質が悪化し、フィルムの光学特性が悪化する。すなわち、表面粗度およびヘーズが増加する。ヘーズはしばしば最終製品(例えばスチールシート)の外観を悪化させ、通常好ましくない。高い表面粗度は、表面への細菌の付着を容易にするため、同様に好ましくない。表面粗度Raは通常1000nm未満、好ましくは600nm未満、更に好ましくは300nm未満である。
【0027】
殺菌剤粒子の平均粒径(d50)は、通常0.5〜15μm、好ましくは1.8〜6μm、特に好ましくは2.1〜3.5μmである。フィルム層中の担持量や銀濃度を同じとすれば、比較的粒径の小さい粒子(1.8μm未満)は銀をより急速に放出するため、より大きな粒子よりも初期活性がより良好であるが、より大きな粒子(1.8μmを超える)と比較して、その高い初期活性は数回の洗浄操作によってより急速に低下する(以下の実施例における試験方法に基づく)。これらは(比較的大きな粒子を使用する場合はより長期間の効果を確実なものにする。比較的粒径の大きい粒子(6μmを超える)を使用した場合、特に非常に大きい粒子(15μmを超える)場合は、表面上における分布が不均一となり、細菌に対する効果が十分でなくなる。これは担持量を増加させることにより相殺することが出来るが生産コストの上昇やフィルム製造能での不利な点もある。過剰な担持において、特に、大粒子を使用した場合は、フィルムの製造中における破断数が増加する。フィルムの摩耗は汚れの原因(通常好ましくない)と成るだけでなく、抗菌性の効力の低減となる。上記の好ましい範囲である2.1〜3.5μmの平均粒径(d50)は特に好適な範囲と言える。粒子の粒径分布を示すd50値は、粒子を含有する層の厚さの2倍を超える場合、耐摩耗性において不利となる。
【0028】
ゼオライトを使用する場合、ゼオライト中の銀の担持量は、好ましくは0.5〜20重量%、特に好ましくは3〜6重量%である。ゼオライトは、更に1〜20重量%の亜鉛および/または銅を含むことが好ましく、6重量%以上含むことが特に好ましい。ゼオライトは、公知の製法により製造でき、例えば、特開平11−193358号公報、欧州特許出願公開第0297538号明細書、米国特許出願公開第2004/147654号明細書に記載されている製法が例示できる。本発明で使用するゼオライトは、例えば、商品名Bactekiller(カネボウ社(日本))、Zeomic(Sinanen社(日本))として入手可能である。
【0029】
添加する銀の性状にかかわらず、抗菌性層の銀の含有量は、0.01〜2.5重量%、好ましくは0.1〜0.4重量%である。
【0030】
フィルム一般:
フィルムの全ての層において、ポリエステルは、例えば、エステル交換法によって製造される。この方法は、ジカルボン酸エステルとジオールを原料とし、亜鉛のカルシウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩などの公知のエステル交換反応触媒の存在下でこれらを反応させる。得られた中間体に対し、次いで、三酸化アンチモンやチタン塩などの重縮合触媒の存在下で重縮合を行う。また、ポリエステルは、重縮合触媒の存在下で直接重合法によって製造されてもよい。この方法はジカルボン酸とジオールとから直接製造する方法である。本発明のポリエステルは市販品を使用してもよい。
【0031】
本発明のフィルムは、更に、無機および/または有機粒子を含有していてもよい。具体的には、炭酸カルシウム、非晶シリカ、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、フッ化リチウム、ジカルボン酸のカルシウム、バリウム、亜鉛またはマンガン塩、カーボンブラック、二酸化チタン、カオリン、架橋ポリスチレン粒子や架橋メチルメタクリレート粒子などの架橋ポリマー粒子などが例示される。抗菌性外層へのこれらの粒子の配合量は2000ppmを超えないようにすべきであり、好ましくは1000ppm未満である。ただし、白色フィルムとしての態様の場合は例外であり、この場合、少なくとも抗菌性外層に使用する白色顔料(好ましくはTiO又はBaSO)については、表面粗度が過度に増加しないよう、平均粒径が1.8μm未満であることが好ましい。
【0032】
ある好ましい実施態様において、フィルムは、更に少なくとも1種のUV安定剤を含有する。ポリエステルに添加するUV安定剤としては、種々の有機および無機UV安定剤が使用できる。これらの好ましいUV安定剤は公知であり、詳細は、例えば国際公開第98/06575号パンフレット、欧州特許出願公開第0144878号明細書、欧州特許出願公開第0031202号明細書、欧州特許出願公開第0031203号明細書、欧州特許出願公開第0076582号明細書などに記載されている。化合物の例としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン類、2−ヒドロキシベンゾトリアゾール類、有機ニッケル化合物、サリチル酸エステル類、桂皮酸エステル誘導体、レゾルシノールモノベンゾエート類、オキサニリド類、ヒドロキシ安息香酸エステル類、ヒンダードアミン類および/またはトリアジン類が上げられ、好ましくはトリアジン類である。フィルムの光を受ける面側の層には、他の層の配合量より50重量%以上多くUV安定剤を添加することが好ましく、フィルム中の光安定剤の総配合量は、好ましくは0.2〜5.0重量%の範囲である。
【0033】
UV安定剤の添加は、特に屋外の使用における、時間の経過によるフィルムの機械的特性の悪化を防止する。これと平行して、UV安定剤はフィルムの経時変化としての黄変度の増加を減少させる。
【0034】
銀含有層が存在すると、製造過程や経時変化を受けなくても光の露光によって可視的に黄色から茶色がかった色を帯びる。そのため、UV安定剤と一緒に、銀化合物に誘発される黄色味を相殺するために少なくとも1種の青色染料を添加することが好ましい。染料と顔料では、同様の効果を達成するのに顔料の添加量を増やさなければいけなく、また、顔料を添加すると表面粗度が大きくなるので、使用するのは顔料ではなくポリエステルに可溶な染料が好ましい。青色染料としては、「Clariant Blue RBL」及び「Blue RLS」(何れもCiba社製(スイス))、「Lanxess」(以前Bayer社製)、「Blue 3R」及び「Gran Blue RR Gran」(Lanxess社製(独国))、「Ciba Filester type Blue GN」(Ciba社製(スイス))等が挙げられる。中間色を達成するためには、青色染料と一緒に、「Irgalite Green GFNP」)Ciba SC社製、Basle(スイス)等の緑色染料を加えることが好ましい。フィルム中の青色染料の含有量は、好ましくは200ppm未満であり、緑色染料の含有量は、好ましくは100ppm未満である。好ましい実施態様において、フィルムの黄変指数は7未満、好ましくは3未満である。色調安定性は、製造工程における再生品を再利用する場合に特に重要である。そして、再生品を抗菌性外層に再利用することが好適である。再生品の比率は、あまりにも高比率であると、特にゼオライトを使用した場合、吸湿性ゆえ走行性に問題が生じるため、如何なる層においても50重量%を超えないようにすべきである。
【0035】
これらの安定剤や染料と一緒に、フィルムは、更に、「Ciba Tinopal OB−One」(Ciba社製(スイス))等の光沢剤を添加してもよい。しかしながら、この添加は青色染料の添加よりも好ましくない。これは、光沢剤が十分なUV光の存在下でないと機能しないためである。
【0036】
本発明のポリエステルフィルムの総厚みは幅広く選択することが出来、好ましくは5〜500μm、更に好ましくは10〜51μm、特に好ましくは12〜23μmである。
【0037】
抗菌性塗布層は、以下の式(I)で示されるアンモニウムシランから成る。
【0038】
【化2】

【0039】
上記式(I)において、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して水素およびC〜Cのアルキル基から選択され、当該C〜Cのアルキル基は直鎖アルキル基であってもC〜Cの分岐アルキル基であってもよく、R及びRは好ましくは同一で且つCHであり、水性分散液において、1つ又は2つ或いは全てのRが水素である。nは0より大きく10未満であり、好ましくは2〜5、更に好ましくは3である。mは0より大きく30未満であり、好ましくは6〜25、更に好ましくは15〜20、特に好ましくは17である。Xは塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンから選択される。
【0040】
アンモニウムシランは正電荷を有する。対イオンは特に制限は無く、通常塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンであり、好ましくは塩素イオンである。
【0041】
これらの化合物はAegis社(米国)またはSanitized社(スイス)から入手可能である。
【0042】
アンモニウムシランは水溶液または水分散液として塗布される。水以外の溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン等の溶媒が挙げられ、これらの使用量は、塗布水溶液/塗布水分散液中20重量%未満、好ましくは10重量%未満、更に好ましくは6重量%未満である。特に、塗布水溶液/塗布水分散液中の有機溶媒の含有量が1重量%未満であることが好ましい。
【0043】
塗布水溶液/塗布水分散液中のアンモニウムシランの含有量は、好ましくは0.5〜75重量%、更に好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1.5〜5重量%である。
【0044】
本発明において、アンモニウムシランは、ポリエステルとの接着性を改良する他の塗布成分と組合せて使用することが好ましい。特に、耐洗浄性(実施例の評価方法を参照)を改良することが出来る。ある好ましい実施態様において、本発明で使用するアンモニウムシランは、例えば、Dow Corning社製(米国)「Z6020」又は「Z6040」、Union Carbide社製(米国)「A−1100」又は「A−187」、又は米国特許第5064722号公報に記載の他のシラン及び/又はアミノシランと組合せて使用してもよい。これらの他のシラン及び/又はアミノシランが存在する態様の場合、その含有量は、塗布液を基準として0.5〜35重量%、好ましくは1〜10重量%、特に好ましくは2〜7重量%である。
【0045】
本発明において、アンモニウムシランとアクリレートとを組合せて使用することが好ましい。好ましいアクリレートとしては、とりわけ米国特許第4571363号公報に記載されている。上記配合比率を有するアンモニウムシラン水性溶液を撹拌しながら添加し、アクリレート分散液を得る。塗布分散液にアクリレートが存在する場合、アクリレートの存在量は0.5〜25重量%、好ましくは1〜6重量%である。この実施態様において、同量のアンモニウムシランを使用した場合と比較して、塗布層の抗菌性は減少しないだけでなく、同じように向上する。
【0046】
シリコンコーティングとの組合せも好ましい。しかしながら、アンモニウムシラン塗布層下での銀含有層の実施態様においてはあまり好ましくない。好ましいシリコンコーティングとしては、とりわけ米国特許第5728339号公報および米国特許第5672428号公報に記載されている。
【0047】
製造方法:
塗布層は、片側または両側に設けてもよく、ポリエステルフィルムの製造工程中に「インライン」で形成される。塗布分散液は、通常長手方向の延伸後で横方向の延伸前に塗布される。同時延伸法を採用する場合(長手方向と横方向の延伸を1つの延伸フレームで行う場合)塗布液は延伸前に塗布される。
【0048】
塗布液を塗布する方法としては、公知の方法が使用でき、好ましくはリヴァースグラヴィアコーティング法、メイヤーバーコーティング法などが挙げられる。
【0049】
フィルムの最終状態における塗布量(乾燥塗布重量)は、0.005〜1.3g/m、好ましくは0.01〜0.3g/m、特に好ましくは0.02〜0.1g/mである。乾燥塗布量が大きすぎると抗菌性効果が改良されない。そのため、これらの範囲は抗菌性が良好な塗布量である。また、塗布量が増加すると、塗布均一性や耐摩耗性が悪化することから、上記の塗布量はこれらの性質に対しても良好な場合の塗布量である。
【0050】
乾燥塗布量は塗布される塗布液の量から以下の式で計算できる。
【0051】
乾燥塗布量(g/m)=[{塗布液重量(g/m)}−{水の重量および/または溶媒の重量(どちらの場合でも(g/m))}]/(塗布後の面積延伸比率)
【0052】
本発明は、更に、公知の押出法または共押出法による上記の本発明のポリエステルフィルムの製造方法にも関する。
【0053】
ある好ましい実施態様において、少なくとも1つの外層の原料である銀含有殺菌剤は、好ましくはマスターバッチ法で対応する層に導入する。この目的を達成するために、銀含有化合物およびポリエステルを多軸押出機内で混合し、ペレット化ダイを介して押出し、ペレット化させる。
【0054】
フィルムの製造方法は、押出機内で個々の層に対応し、必要に応じて添加剤を含むポリマーを溶融し、フラットフィルムダイを介して押出または共押出しする工程と、共押出しされたプレフィルムを一つ以上の引取ロール上に引取って固化してシートを得る工程と、得られたシートを二軸延伸してフィルムを得る工程と、得られたフィルムを熱固定し、巻取る工程とから成る。
【0055】
通常、二軸延伸は連続的に行われるが、同時に行ってもよく、このましくは逐次二軸延伸であり、初めに長手方向(機械方向)に延伸し、次いで横方向(機械方向に対し直角方向)に延伸するのが好ましい。これにより分子鎖が配向する。通常、長手方向の延伸は、延伸比に対応する異なる回転速度を有する2つのロールを使用して行われ、横手方向の延伸は、通常テンターフレームを使用し、フィルムの両端を把持して温度を上げた状態で引張して行われる。
【0056】
延伸時の温度は、所望とするポリエステルフィルムの物性によって決定され、広い範囲で選択できる。通常、長手方向の延伸は80〜130℃の温度で行われ、横方向の延伸は90〜150℃の温度で行われる。長手方向の延伸比は、通常2.5〜6であり、以下の所望とする機械的性質を得るためには3.0〜5.5であることが好ましい。横方向の延伸比は、通常3.0〜5.0であり、以下の所望とする機械的性質を得るためには3.5〜4.5であることが好ましい。
【0057】
熱固定は、通常150〜260℃で0.1〜10秒フィルムを保持して行う。次いで、通常の方法により、フィルムを巻取る。熱固定の温度を180℃以上、好ましくは220℃以上で行うことにより、アンモニウムシランの理想的な付着が達成できる。しかしながら、237℃を超える熱固定は、アンモニウムシラン塗布層の分解を引起すため、あまり好ましくない。
【0058】
上記方法により製造されたフィルムの弾性率は、両方向に対して通常2000N/mmより大きく、好ましくは3000N/mmより大きく、特に好ましくは4300N/mmより大きい。機械的負荷をかけた際にフィルムが過度に伸長すると、塗布層がダメージを受け、その結果、抗菌性効果が減少する。
【0059】
本発明のフィルム及びそれから製造される応用品は、その優れた性質の組合せによる利点から、種々の幅広い故となる応用可能であり、例えば、内装被覆材、家具被覆材、空気清浄機、住居フィルター、医療装置、冷蔵庫の壁、医療用包装、飲食品用包装、公衆衛生品、衛生用品、ばんそう膏薬、服飾および温室への使用が可能である。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を、実施例に基づいて詳細に説明する。原料およびフィルムの特性付けに使用された評価方法を以下に示す。
【0061】
(1)原料ポリマー中に添加する前の粒子の平均粒径d50
粒子の平均粒径d50は、「Master Sizer」(Malvern Instruments社製(英国))を使用して乗法により測定した。(「Horiba LA 500」(堀場製作所社製)又は「Helos」(Sympathec GmbH社製(独国))でも基本的に同一の測定である)。水を入れたセルにサンプルを入れ、試験装置にセットする。試験は自動的に行われ、粒径d50の数学的な計算も一緒に行われる。粒径d50の値は、累積粒径分布曲線から決定する。すなわち、縦軸50%と累積粒径分布曲線の交点を横軸上のd50の値とした。
【0062】
粒径d50の値は使用する粒子(粒子のままで入手可能な場合)において測定するのが好ましい。もし、これが不可能な場合(例えば、フィルムそれ自身として得られる場合や、最終的なマスターバッチ形式で得られる場合)、フィルムに対して使用できる方法を選択する。測定精度の範囲内で同じ結果が得られる2つの測定方法があり、穏やかな製造方法による場合は、確かにその通りとなる。もし、押出機内で高い剪断力を負荷している場合には、フィルム及びd50が既知の標準粒子における一連の測定を行い、粒子のままでのd50値とフィルム内での粒子のd50値との相関関係を作成し、フィルム内での測定値を外挿して粒子のままでのd50値を得るか、又はその逆を行う。
【0063】
(2)フィルムの機械的性質:
フィルムの機械的性質は、DIN EN ISO 527−1〜−3に従って測定した。
【0064】
(3)ヘーズ:
ヘーズは、ASTM D1003に従って測定した。
【0065】
(4)表面粗度:
フィルムの表面粗度RaはDIN 4768に準じて測定した。
【0066】
(5)黄変指数:
黄変指数(YID)は無色状態から黄色方向への色の偏差をDIN 6167に従って測定した。
【0067】
(6)抗菌性の測定:
抗菌性活性は、ASTM E2149−01に基づき測定した(サンプルを1g、0.3mM KHPOを50ml、1×10E.coli/ml、Q2−5211界面活性剤0.01%)。24時間後のEscherichia coliの減少数により評価した。
【0068】
(7)洗浄後の抗菌性の測定:
木綿布で5回、手動によりフィルムを拭き、一晩空気中で乾燥させた。木綿布は、水95%及びエタノール5%から成る混合物で湿らせてあった。この操作を30日間連続で繰返し行った。操作終了後、25℃、相対湿度50%で1日置いた後、上記の抗菌性の測定試験を行った。
【0069】
(8)フィルム製造中における破断:
所定時間の製造におけるフィルム破断の回数を従来技術のフィルムと比較し、その比率の偏差を測定した。
【0070】
以下で使用した原料MB−1〜MB−5はDEGを0.9〜1.3重量%それぞれ有する。RT−49は0.6重量%のDEGを有する。S1を除く全ての原料は、0.2重量%未満のIPA及び0.1重量%未満の他のジカルボン酸を有する。
【0071】
実施例1:
厚さ20μmの単層フィルムを製造した。原料を二軸押出機内で溶融し、フラットフィルムダイを介して押出した。供給原料を以下に示す。
【0072】
MB1(10重量%):Cyasorb(サイアソーブ:登録商標) 1164 UV安定剤(Cytec Inc社製(米国))10重量%と、ポリエチレンテレフタレート90重量%とから成る(二軸押出機内でポリエステル中にUV安定剤を添加して製造)。
【0073】
MB3(3重量%):SiO粒子(Sylysia(サイリシア:登録商標) 320(Fuji Sylysia社製(富士シリシア化学社製、日本)、粒径d50=2.5μm)10000ppmと、ポリエチレンテレフタレート99重量%とから成る。
【0074】
RT49(87重量%):ポリエチレンテレフタレート(Invista社製(独国))。
【0075】
プレフィルムは、102℃において長手方向に3.5倍に延伸され、リヴァースグラヴィア法により塗布分散液1を塗布した。
【0076】
塗布分散液1は、ジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(CAS 27668−52−6、Devan Chemicals社製(ベルギー))2重量%、メタノール0.3重量%及び残部が水から成っていた。上記の塗布分散液1の塗布量は、2g/mであった。
【0077】
次いでフィルムは、105℃において横方向に4.1倍に延伸された。フィルムは、最高温度232℃で熱固定した。得られたフィルムは、長手方向の弾性率が4650N/mm、横方向の弾性率が5050N/mm、黄変指数が2.8、表面粗度Raが55nmであった。抗菌性活性については、24時間後のEscherichia coliの減少数は99.5%であった。洗浄後の抗菌性活性については、24時間後のEscherichia coliの減少数は82%であった。
【0078】
実施例2:
以下の塗布分散液2を使用した以外は実施例1と同様の操作でフィルムを作成した。
【0079】
塗布分散液2は、ジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(CAS 27668−52−6、Devan Chemicals社製(ベルギー))2重量%、メタノール0.3重量%、Z6020(Dow Corning社製(アミノシラン))2重量%及び残部が水から成っていた。上記の塗布分散液2の塗布量は、2g/mであった。
【0080】
得られたフィルムは、長手方向の弾性率が4600N/mm、横方向の弾性率が5100N/mm、黄変指数が3.2、表面粗度Raが58nmであった。抗菌性活性については、24時間後のEscherichia coliの減少数は99.9%であった。洗浄後の抗菌性活性については、24時間後のEscherichia coliの減少数は90.8%であった。
【0081】
実施例3:
以下の塗布分散液3を使用した以外は実施例1と同様の操作でフィルムを作成した。
【0082】
塗布分散液3は、米国特許第4571363号公報の実施例1に記載に対応し、ジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(CAS 27668−52−6、Devan Chemicals社製(ベルギー))3重量%、メタノール0.3重量%及び残部が水から成っていた。上記の塗布分散液3の塗布量は、2g/mであった。
【0083】
得られたフィルムは、長手方向の弾性率が4550N/mm、横方向の弾性率が5060N/mm、黄変指数が2.9であった。抗菌性活性については、24時間後のEscherichia coliの減少数は99.9%であった。洗浄後の抗菌性活性については、24時間後のEscherichia coliの減少数は97.1%であった。
【0084】
実施例4:
厚さ20μmの3層フィルムを製造した。抗菌性外層Aの厚さは2.2μmであった。シール性外層Cの厚さは2.0μmであった。従って、ベース層(B)の厚さは15.8μmであった。各層の原料は二軸押出機で別々に溶融され、3層フラットフィルムダイを介して押出された。ベース層(B)の供給原料は、10重量%のMB1及び90重量%のRT49(ポリエチレンテレフタレート)から成っていた。
【0085】
外層Aは、20重量%のMB1、20重量%のMB2及び60重量%のRT49(ポリエチレンテレフタレート)から成っていた。上記MB2は、AK80H銀含有ゼオライト(Agion社製(米国)、d50=2μm、ゼオライト中に銀を5重量%、亜鉛を13重量%含有する)10重量%及びポリエチレンテレフタレート90重量%から成り、二軸押出機内でポリエステルにゼオライトを添加して製造した。
【0086】
外層Cは、97重量%のS1及び3重量%のMB3から成っていた。S1は、80モル%のエチレンテレフタレート単位と20モル%のエチレンイソフタレート単位とからなる非晶共重合ポリエステルであり、Mnをエステル交換反応触媒(Mn濃度:100ppm)としてエステル交換法により製造された。MB3は、SiO粒子(Sylysia 320(Fuji Sylysia社製(日本)、粒径d50=2.5μm)10000ppmと、ポリエチレンテレフタレート99重量%とから成る。
【0087】
共押出後、長手方向延伸および横方向延伸を順次行い、ABC構造を有する透明3層フィルムを製造した。長手方向に延伸したフィルムの外層(A)(抗菌性層)に、上記塗布分散液1をリヴァースグラヴィア法により塗布した。塗布量は2g/mであった。上記の各工程における製造条件を以下の表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
得られたフィルムは、長手方向の弾性率が4500N/mm、横方向の弾性率が5100N/mm、黄変指数が2.4、表面粗度Raが200nmであった。抗菌性活性については、24時間後のEscherichia coliの減少数は99.9%であった。洗浄後の抗菌性活性については、24時間後のEscherichia coliの減少数は99.7%であった。
【0090】
比較例1:
市販の標準型「RNK 23」ポリエステルフィルム(Mitsubishi Polyester Film GmbH社製(独国)、厚さ23μmの単層フィルム、塗布層無し)を使用して評価した。24時間後のEscherichia coliの減少数は0%であった。洗浄後の抗菌性活性については、24時間後のEscherichia coliの減少数は0%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのベース層(B)と少なくとも1つの抗菌性塗布層とから成るポリエステルフィルムであって、抗菌性塗布層が、a)以下の式(I)で示されるアンモニウムシランから成り、(b)厚さが1μm未満であることを特徴とするポリエステルフィルム。
【化1】

(上記式(I)において、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して水素およびC〜Cのアルキル基から選択され、当該C〜Cのアルキル基は直鎖アルキル基であってもC〜Cの分岐アルキル基であってもよく、R及びRは好ましくは同一で且つCHであり、水性分散液において、1つ又は2つ或いは全てのRが水素であり;nは0より大きく10未満であり、好ましくは2〜5、更に好ましくは3であり;mは0より大きく30未満であり、好ましくは6〜25、更に好ましくは15〜20、特に好ましくは17であり;Xは塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンから選択される。)
【請求項2】
抗菌性塗布層がインラインコーティングにより設けられる請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
多層構造を有する請求項1又は2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
ベース層(B)の他に抗菌性塗布層の下側に外層(A)を有し、当該外層(A)が抗菌剤を有する請求項1〜3の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
抗菌剤が、殺生物剤として元素銀および/または銀イオンである請求項4に記載のポリエステルフィルム。
【請求項6】
外層(A)の厚さが10μm未満である請求項4又は5に記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】
ベース層(B)及び外層(A)の他に、ベース層(B)を基準として外層(A)とは反対側に外層(C)を有し、当該外層(C)上には抗菌性塗布層を有しない請求項4〜6の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項8】
外層(C)がシール性層である請求項7に記載のポリエステルフィルム。
【請求項9】
抗菌剤が銀担持ゼオライトである請求項4〜8の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項10】
外層(A)中のゼオライトの含有量がゼオライトを含有する層の重量を基準として0.5〜15重量%である請求項4〜9の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項11】
ゼオライトの平均粒径(D50)が0.5〜15μmである請求項9又は10に記載のポリエステルフィルム。
【請求項12】
ゼオライト中に担持されている銀の量が、ゼオライトの重量を基準として0.5から20重量%である請求項9〜11の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項13】
ゼオライトが、ゼオライトの重量を基準として1〜20重量%の亜鉛および/または銅を含有する請求項9〜12の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項14】
ゼオライトの他に無機粒子および/または有機粒子を含有する請求項1〜13の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項15】
少なくとも1種のUV安定剤を含有する請求項1〜14の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項16】
UV安定剤がトリアジンである請求項15に記載のポリエステルフィルム。
【請求項17】
少なくとも1種のポリエステル可溶性染料を含有する請求項1〜16の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項18】
ポリエステルフィルムの総厚みが5〜500μmである請求項1〜17の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項19】
請求項1に記載のポリエステルフィルムの製造方法であって、押出機内で個々の層に対応したポリマーを溶融し、フラットフィルムダイを介して共押出しする工程と、共押出しされたプレフィルムを一つ以上の引取ロール上に引取って冷却し、固化してシートを得る工程と、得られたシートを二軸延伸してフィルムを得る工程と、得られたフィルムを熱固定し、巻取る工程とから成り、上記ポリエステルフィルムは、少なくとも1つの抗菌性塗布層が設けられ、抗菌性塗布層が、a)以下の式(I)で示されるアンモニウムシランから成り、(b)厚さが1μm未満であることを特徴とするポリエステルフィルムの製造方法。
【化2】

(上記式(I)において、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して水素およびC〜Cのアルキル基から選択され、当該C〜Cのアルキル基は直鎖アルキル基であってもC〜Cの分岐アルキル基であってもよく、R及びRは好ましくは同一で且つCHであり、水性分散液において、1つ又は2つ或いは全てのRが水素であり;nは0より大きく10未満であり、好ましくは2〜5、更に好ましくは3であり;mは0より大きく30未満であり、好ましくは6〜25、更に好ましくは15〜20、特に好ましくは17であり;X−は塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンから選択される。)
【請求項20】
請求項1に記載のポリエステルフィルムの、内装被覆材、家具被覆材、空気清浄機、住居フィルター、医療装置、冷蔵庫の壁、医療用包装、飲食品用包装、公衆衛生品、衛生用品、ばんそう膏薬、服飾および温室への使用。

【公表番号】特表2011−502828(P2011−502828A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533465(P2010−533465)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009307
【国際公開番号】WO2009/062617
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(596099734)ミツビシ ポリエステル フィルム ジーエムビーエイチ (29)
【Fターム(参考)】