説明

抗菌性組成物、抗菌性樹脂組成物、及び、成型物

【課題】優れた抗菌性を有しながらも、変色を防止もしくは軽減するとともに、成型物(商品)の製造において使用する場合に、抗菌剤の添加量を抑制できることによって製造コストを低減でき、また生産性に優れ、さらには成型物の外観に悪影響を与えにくい抗菌効果の低下をも防止した抗菌性組成物、抗菌性樹脂組成物及び成形物を提供する。
【解決手段】有機銀系抗菌剤と着色防止剤とを含有することを特徴とした抗菌性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性組成物、抗菌性樹脂組成物、及び、成型物に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の生活環境中には多くの微生物が存在しており、近年指摘されている地球規模での温暖化の要因もあって、細菌などの原核生物、カビ、酵母などの真核生物、さらにはコケや藻類が多く繁殖しやすい環境(特に、高温多湿の地域)が増えている。
また、近年の省エネルギーの要求、法改正及び防犯ニーズに対し、複層ガラス化したアルミサッシなどの普及による室内の密閉化や、エアコンディショナーの普及による屋内温度ないし屋内湿度の維持といった住環境の変化は、結果として微生物に対して繁殖に適した環境を与えており、細菌やカビの発生の人体に対する悪影響や、近年のアレルギー症状の増加への影響も示唆されている。
従って、電気・電子分野、OA・家電分野、自動車分野、便座・台所・風呂場廻りなどのサニタリー分野、雑貨において、埃及び/または水分の多い場所にあっては、樹脂および樹脂表面を覆う有機物が細菌やカビの温床となることが多いため、これまでも様々な微生物対策がとられており、一般には、これらの分野に用いられる樹脂に対して種々の抗菌剤を配合することにより対処していた。
【0003】
銀イオンが抗菌性を有することは古くから知られており、例えば硝酸銀の水溶液の形態で消毒剤や殺菌剤として広く利用されている。しかしながら、銀イオンは、人体にも有害であるため、使用方法、保存方法及び廃棄方法等において種々の制限があり、用途にも限定されていた。
近年、適用対象に対して微量の銀イオンを作用させれば防かび及び抗菌性が発揮させられることが明らかとなり、使用時に溶出させるための銀イオンを担体に担持させた、防かび及び抗菌性を具備する種々の抗菌剤が提案されている(例えば特許文献1)。
その一つとして、特殊なリン酸塩系化合物に銀イオンを担持させた抗菌剤があるが(例えば特許文献2)、これらの抗菌剤は熱及び光の暴露に対して、担持する方法で安定性を付与させている。
また、他の抗菌剤として、吸着性を有する活性炭及び粘土鉱物等に銀イオンを担持させた抗菌剤があるが、活性炭を担体とする場合においては、溶解性の銀塩を物理的に吸着或は付着させているため、水分と接触させると銀イオンが急速に溶出してしまい、微量の銀イオンを経常的に長時間溶出させることが困難である。又、モンモリロナイト、ゼオライト等の粘土鉱物を担体とし、粘土鉱物中のナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンと銀イオンをイオン交換させたものの場合においては、銀イオンははイオン交換平衡により担体から溶出するため、接触させる液体中の銀イオン濃度が極めて低い場合には急速に溶出してしまい、やはり銀イオンの溶出を長時間にわたり極微量に保持させることはは困難である。
そこで、従来から、銀イオンを極少量使用することにより、長時間防かび及び抗菌性を発揮させるために、化学的及び物理的に安定でありかつ防かび及び抗菌に必要な極微量の銀イオンの溶出を長時間持続させることができる材料を提供することが課題とされてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3036901号公報
【特許文献2】特公平6−10126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抗菌効果を発現するためには菌と金属との直接接触が必要である。
このような系において十分な抗菌効果を得るためには、抗菌剤が材料中に緻密に分布されている必要がある。
しかしながら、これら無機系抗菌剤は抗菌性を示す銀と銅といった金属をリン酸ジルコウム、ゼオライトに担持させるために、用いられる無機系抗菌剤の形態は微粉末であり、粒径が0.5〜3μmに及ぶため、材料中に緻密に分布させることは困難であり、大量の無機系抗菌剤を添加する必要があった。
このため、例えば金属石鹸のような分散剤(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウムなど)を添加するような数々の手法が検討されているが、十分ではなく、抗菌性を発現する無機抗菌剤の添加量は、無機抗菌剤を樹脂に添加して樹脂組成物とする場合、樹脂組成物の全量に対して0.5〜3.0質量%程度が必要である。これにより、樹脂組成物を射出成型する際に無機抗菌剤の粗大粒子や二次凝集粒子が射出成型機のフィルターに堆積し、成型機の圧力が上昇することで、溶融樹脂の吐出量が変動したり、フィルターの交換頻度が増えたりするなどして、樹脂成型物の生産性が著しく悪化するという問題が発生する。
さらに、得られた樹脂成型物には、大きな粒径の無機抗菌剤が高い濃度で添加されるために、成型物には無機抗菌剤本体の色が残ったり、不透明になる等の外観上の不都合が生じることが多い。
【0006】
従って、本発明の目的は、適用時又は成形時におけるこれら樹脂成分の化学的変化を抑制し、樹脂組成物又は樹脂成形品の変色を防止もしくは軽減するとともに、抗菌効果の低下をも防止した抗菌性組成物、抗菌性樹脂組成物及び成形物を提供することにある。さらに、添加量を減少できることによりコスト上昇を抑制でき安価に提供でき、生産性に優れ、商品の外観に問題のない抗菌性組成物または抗菌性樹脂組成物を使用した成型物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の抗菌性組成物を用いることにより上記課題を解決できることを見出した。
即ち、本発明は以下のとおりである。
【0008】
〔1〕
有機銀系抗菌剤と着色防止剤とを含有することを特徴とする抗菌性組成物。
【0009】
上記〔1〕に記載の抗菌性組成物によれば、有機銀系抗菌剤と着色防止剤とを含有する構成を採用しているので、優れた抗菌性を有しながら、適用時又は成形時における成分の化学的変化を抑制し、樹脂組成物又は樹脂成形品の変色を防止もしくは軽減するとともに、抗菌効果の低下をも防止できる。
また、特に有機銀系抗菌剤が使用されているので、抗菌性組成物と樹脂とを用いて例えば射出成型法により成型物を得ようする場合、有機銀系抗菌剤が樹脂に溶融し、有機銀系抗菌剤が分子レベルで樹脂中に分散することになる。これにより、有機銀系抗菌剤を成型物の表面に緻密かつ均一に分布することができ、少ない抗菌剤の添加量で、優れた抗菌性を発現させることができる。また、抗菌剤の添加量が少ないことから、成型物の製造コストを低減できる。
さらには、有機銀系抗菌剤が分子レベルで樹脂中に分散するため、射出成型時に、抗菌剤が射出成型機のフィルターに堆積することがなく、溶融樹脂の吐出量が変動したり、フィルターの交換頻度が増えたりするなどの問題がなくなることから、成型物の生産性を優れたものとすることができる。
また、有機銀系抗菌剤が分子レベルで樹脂中に分散するため、成型物の透明性を優れたものにできるため、得られる成型物の外観に悪影響を与えにくい。
【0010】
〔2〕
前記有機銀系抗菌剤が、炭素数が10〜30の脂肪酸であることを特徴とする上記〔1〕に記載の抗菌性組成物。
〔3〕
前記着色防止剤が、ポリハロゲン化合物であることを特徴とする上記〔1〕または〔2〕に記載の抗菌性組成物。
〔4〕
前記着色防止剤が、下記一般式(H)で表される化合物であることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の抗菌性組成物。
Q−(Y)n−C(Z)(Z)X 一般式(H)
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Z及びZは各々独立してハロゲン原子を表し、Xは水素原子又は電子求引性基を表す。
〔5〕
上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の抗菌性組成物と、樹脂とを含有する抗菌性樹脂組成物。
〔6〕
前記抗菌性樹脂組成物の総量に対する、前記有機銀系抗菌剤の含有量が、0.01質量%以上70.0質量%以下であることを特徴とする上記〔5〕に記載の抗菌性樹脂組成物。
〔7〕
上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の抗菌性組成物、または、〔5〕または〔6〕に記載の抗菌性樹脂組成物を用いて得られた成型物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた抗菌性を有しながらも、適用時又は成形時におけるこれら樹脂成分の化学的変化を抑制し、樹脂組成物又は樹脂成形品の変色を防止もしくは軽減するとともに、抗菌効果の低下をも防止した抗菌性組成物、抗菌性樹脂組成物及び成形物を提供することにある。さらに、添加量を減少できることによりコスト上昇を抑制でき安価に提供でき、生産性に優れ、商品の外観に悪影響を与えにくい抗菌性組成物及び抗菌性樹脂組成物を提供できる。
また、本発明によれば、上記利点を有する抗菌性組成物または抗菌性樹脂組成物を使用した成型物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において、「抗菌性(抗菌効果)」とは、カビなどの真菌や、真正細菌なども含めた微生物に対して、生育や繁殖を阻止するといった抗菌効果そのものに加えて、防カビ・抗カビ効果や、防藻効果といったものも含むものであり、例えば、JIS Z2801に規定される細菌に対する抗菌、JIS Z2911に規定される抗カビ作用を包含するものである。
【0013】
〔抗菌性組成物〕
本発明の実施形態に係る抗菌性組成物は、有機銀系抗菌剤と着色防止剤とを含有している。以下、抗菌性組成物の各成分について説明する。
【0014】
(有機銀系抗菌剤)
抗菌性組成物に用いられる有機銀系抗菌剤としては、例えば酢酸銀、安息香酸銀、乳酸銀、ピロリン酸銀、クエン酸銀、ベヘン酸銀、ジエチルカルバミン酸銀、ステアリン酸銀、カルボン酸銀、酒石酸銀、メタスルホン酸銀、トリフルオロ酸銀、リン酸もしくは亜リン酸のアルキルエステル、フェニルエステルもしくはアルキルフェニルエステルの銀塩、リンフッ化銀、フタロシアニン銀、エチレンジアミンテトラ酢酸銀、プロテイン銀などを挙げることができる。このうち、好ましいものは、カルボン酸銀であり、その中でも、より好ましくは、炭素数10以上の高級脂肪酸銀である。
【0015】
カルボン酸銀としては、以下のカルボン酸の銀塩が挙げられる。
【0016】
(1)炭素数1〜30、好ましくは2〜22の脂肪族飽和モノカルボン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ドコサン酸、ベヘン酸
(2)炭素数2〜34、好ましくは2〜8の脂肪族飽和ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸
(3)炭素数1〜34、好ましくは2〜22の脂肪族不飽和カルボン酸、例えば、オレイン酸、エルカ酸、マレイン酸、フマル酸
(4)炭素環式カルボン酸、例えば、安息香酸、フタル酸、ケイ皮酸、ヘキサヒドロ安息香酸、アビエチン酸、水添アビエチン酸
(5)ヒドロカルボン酸、例えば、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸
(6)アミノカルボン酸、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸
【0017】
本発明において、好ましいカルボン酸の銀塩としては、例えば、(1)脂肪族飽和モノカルボン酸の銀塩、特にラウリン酸銀、ステアリン酸銀、ベヘン酸銀、(3)脂肪族不飽和カルボン酸の銀塩、特にオレイン酸銀、および、(4)炭素環式カルボン酸の銀塩、特に安息香酸銀、水添アビエチン酸銀である。
【0018】
前記リン酸または亜リン酸のアルキルエステル、フェニルエステルもしくはアルキルフェニルエステルの銀塩としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0019】
(a)リン酸モノアルキル(炭素数1〜22)のエステルの一銀塩または二銀塩
(b)亜リン酸モノアルキル(炭素数1〜22)のエステルの一銀塩または二銀塩
(c)リン酸ジアルキル(炭素数1〜22)のエステルの一銀塩
(d)リン酸モノフェニルエステルの一銀塩または二銀塩
(e)亜リン酸モノフェニルエステルの一銀塩または二銀塩
(f)リン酸ジフェニルエステルの一銀塩
(g)リン酸モノ〔アルキル(炭素数1〜22)フェニル〕エステルの一銀塩または二銀塩
(h)亜リン酸モノ〔アルキル(炭素数1〜22)フェニル〕エステルの一銀塩または二銀塩
(i)リン酸ジ〔アルキル(炭素数1〜22)フェニル〕エステルの一銀塩
【0020】
この中で、好ましい銀塩は、(1)リン酸モノアルキルエステルの一銀塩または二銀塩、特にアルキル基の炭素数が6〜22のもの、さらに好ましくはリン酸ステアリルの二銀塩、(3)リン酸ジアルキルエステルの一銀塩、特にアルキル基の炭素数が6〜22のもの、さらに好ましくはリン酸ジオクテルの一銀塩、および(9)リン酸ジ(アルキルフェニル)エステルの一銀塩、特にアルキル基の炭素数が4〜22のもの、さらに好ましくはリン酸ジ(4−t−ブチルフェニル)の一銀塩やリン酸ジ(ノニルフェニル)の一銀塩である。
【0021】
有機銀系抗菌剤は、抗菌性の点で炭素数が10〜30の脂肪酸銀であることが好ましい。炭素数が10以上であることによって、得られる成型物の耐熱性をより向上させることができる。また、製造容易性又は入手容易性の観点から、脂肪酸銀の炭素数は、上記したように30以下であることが好ましい。ここで、脂肪酸銀における脂肪酸基は直鎖状であることが好ましい。
【0022】
有機銀系抗菌剤の抗菌性組成物に対する含有量は、1質量%〜99質量%であることが好ましく、10質量%〜90質量%であることがより好ましい。
【0023】
(着色防止剤)
本発明に用いることのできる着色防止剤としては特開平10−62899号の段落番号0070、欧州特許公開第0803764A1号の第20頁第57行〜第21頁第7行に記載の特許のもの、特開平9−281637号、同9−329864号記載の化合物、米国特許6,083,681号、欧州特許1048975号に記載の化合物が挙げられる。
【0024】
着色防止剤としては、ポリハロゲン化合物(ハロゲン原子を複数有する化合物)が好ましく、より好ましくは有機ポリハロゲン化合物が挙げられる。
着色防止剤としては下記一般式(H)で表される化合物がより好ましい。
Q−(Y)n−C(Z)(Z)X 一般式(H)
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0又は1を表し、Z及びZは各々独立してハロゲン原子を表し、Xは水素原子又は電子求引性基を表す。
【0025】
一般式(H)においてQは好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は窒素原子を少なくとも一つ含むヘテロ環基(ピリジン、キノリン基等)である。
一般式(H)において、Qがアリール基である場合、Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子求引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207−1216 等を参考にすることができる。このような電子求引性基としては、例えばハロゲン原子、ヘテロ環基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基等、又はこれらの基で置換されたアルキル基若しくはアリール基があげられる。電子求引性基として特に好ましいのは、ハロゲン原子、カルバモイル基、アリールスルホニル基であり、特にカルバモイル基が好ましい。
Xは好ましくは電子求引性基である。Xにおける好ましい電子求引性基は、ハロゲン原子、脂肪族・アリール若しくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリール若しくは複素環アシル基、脂肪族・アリール若しくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、さらに好ましくはハロゲン原子、カルバモイル基であり、特に好ましくは臭素原子である。
及びZは好ましくは臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは臭素原子である。
nは、0又は1を表し、好ましくは1である。nが0の場合、−(Y)n−は単結合を表す。
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−、−SO−、−C(=O)N(R)−、又は−SON(R)−を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO−、又は−C(=O)N(R)−であり、特に好ましくは−SO−又は−C(=O)N(R)−である。ここでいうRとは水素原子、アリール基又はアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又はアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。
一般式(H)において、Qがアルキル基の場合、好ましいYは−C(=O)N(R)−であり、Qがアリール基又はヘテロ環基の場合、好ましいYは−SO−である。
一般式(H)において、該化合物から水素原子を取り去った残基が互いに結合した形態(一般にビス型、トリス型、テトラキス型と呼ぶ)も好ましく用いることができる。
一般式(H)において、解離性基(例えばCOOH基又はその塩、SOH基又はその塩、POH基又はその塩等)、4級窒素カチオンを含む基(例えばアンモニウム基、ピリジニウム基等)、ポリエチレンオキシ基、水酸基等を置換基に有するものも好ましい形態である。
【0026】
以下に本発明における一般式(H)の化合物の具体例を示す。
【0027】
【化1】

【0028】
【化2】

【0029】
上記以外の本発明に用いることができる着色防止剤としては、米国特許第3874946号、同4756999号、同5340712号、同5369000号、同5464737号、同6506548号、特開昭50−137126号、同50−89020号、同50−119624号、同59−57234号、特開平7−2781号、同7−5621号、同9−160164号、同9−244177号、同9−244178号、同9−160167号、同9−319022号、同9−258367号、同9−265150号、同9−319022号、同10−197988号、同10−197989号、同11−242304号、特開2000−2963、特開2000−112070、特開2000−284410、特開2000−284412、特開2001−33911、特開2001−31644、特開2001−312027号、特開2003−50441号明細書の中で当該発明の例示化合物として挙げられているポリハロゲン化合物が好ましく用いられるが、特に特開平7−2781号、特開2001−33911、特開2001−312027号に具体的に例示されている化合物が好ましい。
【0030】
着色防止剤の有機銀系抗菌剤に対する含有量は、0.01質量%〜1000質量%であることが好ましく、0.1質量%〜500質量%であることがより好ましい。0.01質量%以上とすることにより、成型物の黄変をより確実に抑制できるとともに、1000質量%以下であることにより、抗菌性組成物の抗菌性を損なうことを抑制したり、高温下で使用する場合の発煙、臭いを抑制することとなる。
【0031】
着色防止剤の有機銀系抗菌剤に対する含有量は、0.01質量%〜1000質量%であることが好ましく、0.1質量%〜500質量%であることがより好ましい。0.01質量%以上とすることにより、成型物の黄変をより確実に抑制できるとともに、1000質量%以下であることにより、抗菌性組成物の抗菌性を損なうことを抑制したり、高温下で使用する場合の発煙、臭いを抑制することとなる。
【0032】
(その他の添加剤)
抗菌性組成物は、必要に応じて、その他の添加剤を含有することができる。その他の添加剤としては、公知のカップリング剤、難燃剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、滑剤、帯電防止剤、シリコンオイルなどの添加剤や、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ガラスビーズ、ワラストナイト、ロックフィラー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、ガラスフレーリ、カオリン、硫酸バリウム、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛ウィスカー、チタン酸カリウムウィスカーなどの充填材を挙げることができ、1種あるいは2種以上で用いることができる。
充填材のうち、ガラス繊維、炭素繊維の形状としては、1〜100μmの平均繊維径と0.05mm〜10mmの平均繊維長を有するものが好ましい。
その他の添加剤の抗菌性組成物に対する含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、0.005質量%〜98質量%が好ましい。
特に、充填材の抗菌性組成物に対する含有量は、通常、0.04〜60質量%が好ましい。
【0033】
〔抗菌性樹脂組成物〕
本発明の実施形態に係る抗菌性樹脂組成物は、上記した抗菌性組成物と樹脂とを含有している。
【0034】
(樹脂)
樹脂としては、例えば、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック、熱可塑性エラストマーが挙げられる。
熱可塑性プラスチックとしては、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ナイロン、ポリアセタール、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリウレタンなど、熱硬化性プラスチックとしてはフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ケイ素樹脂(シリコーン)、エポキシ樹脂、ジアリルフタレートなど、熱可塑性エラストマーとしてはポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ブチルゴムグラフトポリエチレン、1,2−ポリブタジエン、トランスー1,4−ポリイソプレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、アイモノマー、熱可塑性NBRなど、さらにレーヨン、キュプラ、アセテート、天然ゴム、合成ゴム、EVA樹脂、微生物系のバイオポリエステル、バクテリアセルロース、微生物多糖、化学合成系の脂肪族ポリエステル(ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリ乳酸など)、ポリアミノ酸類、ポリウレタン、ナイロンオリゴマー、天然物系のキトサン、セルロース、澱粉などの生分解性プラスチックからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を挙げることができる。
また、要求される性能に応じて、他の重合体、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−酢酸ビニル共重合体などを適宜ブレンドすることができる。
【0035】
樹脂の抗菌性樹脂組成物に対する含有量は、30質量%〜99.99質量%であることが好ましく、30質量%〜99.95質量%であることがより好ましい。
【0036】
(着色防止剤)
抗菌性樹脂組成物は、前述した着色防止剤を含有することが好ましく、これにより、得られる成型物の、有機銀系抗菌剤に起因する変色(黄変)を抑制することができる。
抗菌性樹脂組成物中の有機銀系抗菌剤に対する着色防止剤の含有量の好ましい範囲は、抗菌剤組成物に関して前述したものと同様である。
【0037】
(その他の添加剤)
抗菌性樹脂組成物は、抗菌性組成物の項で前記したその他の添加剤を1種あるいは2種以上で含有することができる。
その他の添加剤の抗菌性樹脂組成物に対する含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、抗菌剤組成物に関して前述したものと同様である。
【0038】
有機銀系抗菌剤の抗菌性樹脂組成物に対する含有量は、0.01質量%〜70質量%であることが好ましく、0.05質量%〜70質量%であることがより好ましい。
【0039】
有機銀系抗菌剤の含有量は、抗菌性樹脂組成物の総量に対して0.01質量%以上70.0質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上70.0質量%以下であることがより好ましい。これにより、抗菌性樹脂組成物に、より確実に、抗菌、防黴及び防藻機能を付与できる。
【0040】
抗菌性樹脂組成物をそのまま利用して成型物を形成する場合、抗菌性樹脂組成物の総量に対する有機銀系抗菌剤の含有量は、樹脂の変色を実質的に防止できるという観点から、0.05質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0041】
一方、抗菌性樹脂組成物は、抗菌剤を高濃度で含有するマスターバッチの形態であっても良い。マスターバッチは、例えば、ペレット状物とされており、さらに、所望の樹脂とともに溶融混合して成型物を得ることができるものである。特に、このようなマスターバッチの形態となる場合、抗菌性樹脂組成物の総量に対する有機銀系抗菌剤の含有量は、0.1質量%以上70.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上50.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上20.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
〔成型物〕
本発明の実施形態に係る成型物は、上記した抗菌性組成物、または、上記した抗菌性樹脂組成物を用いて得られる。
有機銀系抗菌剤の成型物に対する含有量は、0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、0.05質量%〜10質量%であることがより好ましく、さらに、0.1質量%〜5質量%であることが好ましい。0.01質量%以上とすることにより、有機銀系抗菌剤が作用する抗菌性の効果をより発現でき、20質量%以下とすることにより、耐衝撃性をより良好なものにできるとともに、成型物の外観に与える影響をより抑制できる。
より具体的には、成型物は、例えば、以下の方法のいずれかで得ることができる。
(1)上記した抗菌性組成物と樹脂(具体的には、上記〔抗菌性樹脂組成物〕の項で例示したもの等)とを溶融混合し、射出成型法などによって成型物を得る。
(2)射出成型法などによって予め成型された成型物の表面に、上記した抗菌性組成物の液状物(例えば、抗菌性組成物と上記〔抗菌性樹脂組成物〕の項で例示した樹脂との溶融混合物)をコーティングして、成型物を得る。
(3)上記した抗菌性樹脂組成物を、そのまま溶融し、射出成型法などによって成型物を得る。
(4)上記した抗菌性樹脂組成物(特に、マスターバッチの場合)と、さらなる樹脂(具体的には、上記〔抗菌性樹脂組成物〕の項で例示したもの等を挙げることができる)とを溶融混合し、射出成型法などによって成型物を得る。
(5)射出成型法などによって予め成型された成型物の表面に、抗菌性樹脂組成物の溶融物をコーティングして、成型物を得る。
(6)乳化重合により、樹脂を球状の高分子粒子として水に分散しラテックスとしたあと、あらかじめビーズミル法などで微分散した抗菌性組成物を混合する。その液状物をコーティングしたあと、乾燥固化させ、120℃以上の熱をかけて成型物を得る。
【0043】
上記(1)の場合、抗菌性組成物と樹脂との質量比の範囲は、例えば、0.05:99.55〜10.0:90.0が好ましい。
上記(4)の場合、抗菌性樹脂組成物とさらなる樹脂との質量比の範囲は、例えば、5:95〜30:70が好ましい。
抗菌性組成物と樹脂とが混合してなる成型物である場合(上記においては、(1)、(3)、(4))、有機銀系抗菌剤の成型物に対する含有量は、0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、0.05質量%〜10質量%であることがより好ましい。0.01質量%以上であることにより、有機銀系抗菌剤が作用する抗菌性の効果をより発現できるとともに、20質量%以下であることにより、成型物の外観に与える影響をより抑制できる。
【0044】
本発明の実施形態に係る抗菌性組成物を使用すれば、有機銀系抗菌剤が樹脂に溶融し、有機銀系抗菌剤が分子レベルで樹脂中に分散することになる。これにより、有機銀系抗菌剤を成型物の表面に緻密かつ均一に分布することができるため、このような少ない抗菌剤の添加量でも、優れた抗菌性を発現させることができる。また、抗菌剤の添加量が少ないことから、製造コストが低減された成型物とすることができる。
【0045】
〔抗菌性組成物、抗菌性樹脂組成物及び成型物の製造方法〕
本発明の実施形態に係る抗菌性組成物、及び、抗菌性樹脂組成物は、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどを用い、各成分を混練りすることによって得られる。好ましい製造方法は、二軸押出機を用いる方法である。また、各成分混練りするに際して、各成分を一括して混練りしてもよく、多段添加方式で混練りしてもよい。
このようにして得られる抗菌性組成物、及び、抗菌性樹脂組成物を用いて、射出成形、シート押し出し、真空成形、異形成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形などによって各種成形品に成形することができる。射出成形により得る場合、射出速度を高くした方が抗菌性はよい方向にある。上記成形法によって得られる各種成形品は、その優れた性質を利用して、電気・電子分野、OA・家電分野、自動車分野、便座・台所・風呂場廻りなどのサニタリー分野、雑貨などの各パーツ、ハウジング等射出成型加工分野、及びフィルム、シート加工分野に使用することができる。
【0046】
本発明の実施形態に係る抗菌性組成物、抗菌性樹脂組成物及び成型物は、上記したように、電気・電子分野、OA・家電分野、自動車分野、便座・台所・風呂場廻りなどのサニタリー分野、雑貨などの各パーツ、ハウジング等射出成型加工分野、及びフィルム、シート加工分野に利用可能である他、一般細菌、真菌、藻などの微生物の発生、増殖の防止を必要とするあらゆる分野で利用可能である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
【0048】
<フィルムシート2(実施例)の作製>
低密度ポリエチレンのスミカセン L405−H(MFR 3.7(g/10分)、密度 924(kg/m))(住友化学株式会社製)99.875質量部にベヘン酸銀(有機銀系抗菌剤)を0.1質量部、前記着色防止剤(H−1[品名 BMPS(住友精化(株)製))を0.025質量部加え、混合した。混合物をラボプラストミル(MODEL 30C150[株式会社 東洋精機製作所製])の温度設定T1/T2/T3/Tダイ=150/180/200/200(℃)、フィルタープレート25孔、フィルター構成80/200/300/80(メッシュ)の条件下で100rpmで、溶融物として吐出した。この際のTダイ直下の膜面温度は195℃であった。吐出した溶融膜を四角形の金網で採取し、フィルムシート2(実施例)を作製した。作製したフィルムシートは8cm×30cm×約0.6mm厚みであった。
【0049】
<フィルムシート1(対照)、フィルムシート3〜10(実施例)、及び、フィルムシート1〜7(比較例)の作製>
フィルムシート2(実施例)で使用した有機銀系抗菌剤及び着色防止剤の種類・配合量を表1のように変更した以外は、同様にして、フィルムシート1(対照)、フィルムシート3〜10(実施例)、及び、フィルムシート1〜7(比較例)を作製した。
【0050】
<抗菌試験方法>
試験方法はJIS Z2801:2000抗菌加工製品−抗菌性試験方法に準じた、下記の(1)〜(4)により行った。
(1)試験品の調整
試験品(上記のフィルムシート)の全面を、エタノールを吸収させた脱脂綿で軽く2〜3回拭いた後、十分に乾燥させて試験品を清浄化した。
(2)試験菌液の調整
冷凍保存された菌株を前培養し、発育した集落をかきとり約10CFU/mLに調整した。
(3)試験菌液の接種と培養
滅菌シャーレに清浄化した試験品を置き、試験菌液0.4mLを接種し、40mm角の強化ポリエチレンエチレンフィルムを試験菌液上に被せて密着させた。これを湿度90%RH以上、温度35±1℃で、所定時間24時間、作用させた。
(4)試験品の回収および菌数測定
24時間作用後に試験品をストマッカー用滅菌袋に回収し、SCDLPブイヨン培地(栄研化学)10mLを加えて試験菌を洗い出した。これを試験原液として10倍段階希釈列を作製し、試料原液および希釈液の各1mLを無機的にシャーレに移し、寒天培地約20mLと混合して培養した。
各試験菌の所定条件で培養後の発育集落を数えて、試験品1枚あたりの試験菌数を求めた。また、低密度ポリエチレンのスミカセン L405−Hのみのフィルムシート(上記フィルムシート1(対照))を無加工試験品とし、これを基準に、各試験品の抗菌活性値を求めた。(菌数測定定量下限<10CFU/試験品)
尚、表中の指数表記は、たとえば1.0×103は1.0E+03のように表した。
【0051】
<フィルムシートの透明性評価>
フィルムシート1(対照)、フィルムシート2〜10(実施例)、及び、フィルムシート1〜7(比較例)を直読式ヘーズメーター(形式HGM−2DP スガ試験機株式会社製)でヘーズを測定した。フィルムシート1(対照)のヘーズと抗菌性組成物を含むフィルムシートのヘーズの差を求め、下記の基準で透明性を判断した。
【0052】
◎ : ヘーズの差が5%未満
○ : ヘーズの差が5%以上10%未満
△ : ヘーズの差が10%以上30%未満
× : ヘーズの差が30%以上
【0053】
<着色性の評価>
上記のように作成した各フィルムシートを分光測色計(形式CM−3600d(KONICA MINOLTA製)、色彩ソフトウェアCM−S100W Spectra Magic NXを用い、測定方法:反射、視野:10°、主光源:C光源、ジオメトリ:d/8、正反射光処理:SCI+SCE、測定径:LAV(25.4mm)、UV条件:100%の条件でb*(C)を測定した。測定値から下記の基準で着色性を判断した。
◎ : b*(C)が2未満
○ : b*(C)が2以上20未満
△ : b*(C)が20以上40未満
× : b*(C)が40以上
【0054】
<フィルター汚れの評価>
低密度ポリエチレンのスミカセン L405−H(MFR 3.7(g/10分)、密度 924(kg/m3))(住友化学株式会社製)に、表1に記載の実施例及び比較例の抗菌性組成物をそれぞれ分散させ、これをラボプラストミル(MODEL 30C150[株式会社 東洋精機製作所製])の温度設定T1/T2/T3/Tダイ=150/180/200/200(℃)、フィルタープレート25孔、フィルター構成80/200/1250/80(メッシュ)の条件下で100rpmで1時間吐出した。
吐出後、フィルタープレートからフィルターを外し、抗菌性樹脂組成物が通過した200メッシュフィルターと1250メッシュフィルターの間を剥離し、1250メッシュに堆積した汚れ(残渣)を目視で確認し、下記の基準で判定した。
【0055】
○ : フィルター汚れが殆どない
△ : フィルター汚れが少ない
× : フィルター汚れが多い
【0056】
【表1】

【0057】
表1から明らかなように、着色防止剤を有さない比較例1〜3、5〜7のフィルムシートは、着色が激しく、外観を損ねるものであった。
また、有機銀系抗菌剤を有さない比較例4は、抗菌性が不十分であった。
また、無機銀系抗菌剤を有する比較例5〜7のフィルムシートは、着色はしないものの、抗菌性が低く、また透明性に劣り外観を損ねるものであった。
それに対して実施例のフィルムシートは、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対して優れた抗菌性を有し、かつ、着色は少ないものの、防止し、効果の持続力も高いものである。
さらには、有機銀系抗菌剤が分子レベルで樹脂中に分散するため、成型物の透明性を優れたものにできた。
よって、本発明の抗菌性組成物は、得られる成型物の外観に悪影響を与えにくいという利点があることが分かった。
実施例のフィルムシートは、有機銀系抗菌剤が樹脂に溶融し、有機銀系抗菌剤が分子レベルで樹脂中に分散することで、有機銀系抗菌剤を成型物に緻密かつ均一に分布することができ、少ない抗菌剤の添加量で、優れた抗菌性を発現させることができることが分かった。このように抗菌剤の添加量が少ないことは、成型物の製造コストの低減に寄与できる。
また、実施例のフィルムシートは、有機銀系抗菌剤が分子レベルで樹脂中に分散するため、射出成型時に、抗菌剤が射出成型機のフィルターに堆積しなかった(フィルター汚れが無かった)。これにより、溶融樹脂の吐出量が変動したり、フィルターの交換頻度が増えたりするなどの問題がなくなることから、成型物の生産性を優れたものとすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機銀系抗菌剤と着色防止剤とを含有することを特徴とする抗菌性組成物。
【請求項2】
前記有機銀系抗菌剤が、炭素数が10〜30の脂肪酸であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性組成物。
【請求項3】
前記着色防止剤が、ポリハロゲン化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌性組成物。
【請求項4】
前記着色防止剤が、下記一般式(H)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌性組成物。
Q−(Y)n−C(Z)(Z)X 一般式(H)
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Z及びZは各々独立してハロゲン原子を表し、Xは水素原子又は電子求引性基を表す。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の抗菌性組成物と、樹脂とを含有する抗菌性樹脂組成物。
【請求項6】
前記抗菌性樹脂組成物の総量に対する、前記有機銀系抗菌剤の含有量が、0.01質量%以上70.0質量%以下であることを特徴とする請求項5に記載の抗菌性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の抗菌性組成物、または、請求項5または6に記載の抗菌性樹脂組成物を用いて得られた成型物。

【公開番号】特開2010−248125(P2010−248125A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99424(P2009−99424)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】