説明

抗菌活性を有するRumCペプチド

本発明は、抗菌活性を有するRumC1ペプチド、RumC2ペプチド及びRumC3ペプチドに関し、また、これらのペプチドをコードし、Ruminococcus gnavus E1から単離された遺伝子にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌活性を有するRumC1ペプチド、RumC2ペプチド及びRumC3ペプチドに関し、また、これらのペプチドをコードし、Ruminococcus gnavus E1から単離された遺伝子にも関する。
【背景技術】
【0002】
特定の菌株は、これらの競合者に対し、静菌作用又は殺菌作用を有する物質を放出する能力を持っている。これらの抗菌物質は、例えば有機酸のような有機物、過酸化水素(Ross等.,Int.J.Food Microbiol.79,3-16,2002)、又はペプチドからなり得る。抗生物質の種類に分類される酵素学的に生産された抗菌ペプチド(Mootz等.,Curr.Opin.Chem.Biol.1,543-551,1997; Keating等.,Curr.Opin.Chem.Biol.3,598-606,1999)、及びバクテリオシンの種類に分類されるリボソーム性に生産されたペプチド(Jacob等.,Ann.Inst.Pasteur(Paris)84,222-224,1953)は、区別される。
【0003】
バクテリオシンは、研究界及び産業界における関心を増大させている。それらの使用は、特に、養殖業において、抗生物質の使用に代わる解決法となるかもしれない(Luchansky,Antonie Van Leeuwenhoek 76,335,1999;O'Sullivan等.,Biochimie 84,593-604,2002)。
【0004】
バクテリオシンの多くの異なる発現法は、近年に開発された。特に、Morriset等(Morisset等.,Appl.Environ.Microbiol.,70,4672-4680,2004)は、Leuconostoc mesenteroidesの亜種のdextranicum DSM20484の中において、Leuconostoc mesenteroidesの亜種のmesenteroides Y105により産生されたクラスIIaのバクテリオシンであるメセンテリシンY105の変種を発現させた。同様に、Flynn等(Microbiol.,148,973-984,2002)は、Lactobacillus plantarum、Lactococcus lactis及びBacillus cereusの中において、Lactobacillus salivariusの亜種のsalivarius UCC118により、クラスIIbのバクテリオシンであるABP-118の発現を最初に成し遂げた。
【0005】
さらに、いくつかの試験がバクテリオシンを発現するために、Escherichia coli細菌において(McCormic等.,Appl.Environ.Microbiol.,69,1352-1358,2003; Biet等.,Microbiol.,144,2845-2854,1998; Miller等.,Appl.Environ.Microbiol.,64,14-20,1998; Richard等.,J.Bacteril.,186,4276-4284,2004; Kloche等.,Appl.Microbiol.Biotechnol.,67:532-538,2005)、Saccharomyces cerevisiae酵母において(Schoeman等.,Yeast,15,647-656,1999; Van Reene等.,Int.J.Food Microbiol.,81,29-40,2003)及び乳酸菌において(Rodriguez等.,Int.J.Food Microbiol.,80,101-116,2003)行われた。
【0006】
多くの研究は、新規のバクテリオシンを同定することを目的とし、また、これらのバクテリオシンを生産するために行われた。
【0007】
消化器の生態系には、細菌、酵母及び古細菌が連合している大量で且つ非常に複合的なミクロフローラが形成されている。このミクロフローラは、基本的に嫌気性であり、Bacteroides属、Eubacterium属、Clostridium属、Ruminococcus属、Bifidobacterium属及びFusobacterium属が主に見られる(Suau等.,Appl.Environ.Microbiol.65,4799-4807,1999)。ミクロフローラは宿主の健康に大きな影響を及ぼす。特に、食品由来の代謝合成物の毒化及び解毒に関する(Hughes及びRowland Microbial Ecology Health Disease 2,179-185,2000)。また、それは、腸細胞の機能の発現を調整することも可能である(Bry等.,Science 273,1380-1383,1996; Hooper等.,Science 291,881-884,2001)。また、それは、病原性外因の細菌の侵入に対して、宿主を保護する役割を果たす(Ducluzeau等.,Microbial Ecology and Intestinal Infections 2,240-246,2000)。
【0008】
周知の腸の病原菌の1つとして、絶対嫌気性グラム陽性菌であるClostridium perfringensがあり、これは胞子形成することができ、自然環境において、非常に広範に存在する。この病原菌は食品から生じるが、腸内にも少し存在し、ストレスの影響により増殖及び毒素の分泌を開始できる。Clostridium perfringens菌株は、これらが産生する毒素の機能により5つのトキシノタイプに分類される(Petit等.,Trends Microbiol.7,104-110,1999)。タイプAのC.perfringens菌株は、ヒトの消化器疾患の原因となる。1997年に、アメリカにおいて、245000件以上のC.perfringensの感染が記録された。これにより、41人が入院し、そのうち7人が死亡した(Mead等.,Emerg.Infect.Dis.5,607-625,1999)。タイプA及びタイプCのC.perfringens菌株は、それぞれブタ及び家禽の壊死性腸炎の原因となり得る。家禽において、壊死性腸炎は、進行の速い急性の病態であり、死亡率は1日に1%〜2%に達する。健康な動物における壊死性腸炎の発生率に加えて、その病態は、かなりの経済的影響をもつ。1999年まで、この病気は成長因子のような抗生物質を用いることにより十分に制御されていた。しかしながら、欧州連合は耐性菌の選択及びこれによるヒトへの抗生物質の効果の減少を恐れ、飼料にそれらを用いることを禁止した。この禁止以来、ブタ及び家禽において、Clostridium perfringensにより生じる壊死性腸炎は、欧州において、もはや制御できていない。Reseau National d'Observations Epidemiologiques en Aviculture (RNOEA) (AFSSA Ploufragan)により公表されたその件数は、1999年及び2000年においてかなり増加している(Valancony,Bulletin des GTV 12,9-12,2001)。
【0009】
現在、この病気の制御及び治療のための代替の解決策の探索が、最も重要なことである。
【0010】
Ruminococcus gnavusは、Clostridiales目のLachnospiraceae科に属する絶対嫌気性細菌である。Dabard等は、ヒトの優占フローラから単離したRuminococcus gnavus E1菌株がruminococcin A又はRumAとして知られる抗菌物質を産生でき、この物質は培養上清に蓄積されることを示した(Appl.Environ.Microbiol.,67,4111-4118,2001)。それは、lantibioticsの系統群に属するバクテリオシンであり、病原菌のClostridium菌種の種々の菌株に対し有効である。Gomez等は、Ruminococcin Aの生合成に関する遺伝子の発現がトリプシンがある場合には誘導されることを示した(J.Bacteriol.,184,18-28,2002)。また、これと同一の著者等は、特定の消化酵素がRumAの産生の誘導を阻害する可能性を示した。
【0011】
従って、発明者は他のバクテリオシンに関心をもった。
【0012】
本発明は、Clostridium perfringensに対する抗菌活性を有するRumC1ペプチド、RumC2ペプチド及びRumC3ペプチドに関し、また、これらのペプチドをコードする遺伝子に関する。
【発明の概要】
【0013】
(配列表の説明)
配列番号1:Ruminococcus gnavus E1のRumCペプチドの保存された配列
配列番号2:エドマン分解法により試験的に決定されたRuminococcus gnavus E1のRumCペプチドのペプチド配列
配列番号3:エドマン分解法により試験的に決定されたRuminococcus gnavus E1のRumCペプチドのペプチド配列
配列番号4:配列番号7から推定されたRuminococcus gnavus E1のRumC1ペプチドのペプチド配列
配列番号5:配列番号8から推定されたRuminococcus gnavus E1のRumC2ペプチドのペプチド配列
配列番号6:配列番号9から推定されたRuminococcus gnavus E1のRumC3ペプチドのペプチド配列
配列番号7:Ruminococcus gnavus E1のrumC1遺伝子のヌクレオチド配列
配列番号8:Ruminococcus gnavus E1のrumC2遺伝子のヌクレオチド配列
配列番号9:Ruminococcus gnavus E1のrumC3遺伝子のヌクレオチド配列
配列番号10〜12:試験的に決定されたペプチド配列
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、配列番号1の配列のペプチド、配列番号1のポリペプチドと少なくとも80%の相同性を有するペプチドを含んでいるペプチド、配列番号2の配列のペプチド、及び配列番号2のポリペプチドと少なくとも80%の相同性を有するペプチドを含んでいるペプチドのうちから選択されるペプチドを含んでいることを特徴とする抗菌活性を有するペプチドに関する。本発明の一実施形態によると、このペプチドは、配列番号3の配列のペプチドをさらに含んでいる。本発明の他の実施形態によると、このペプチドは配列番号4、5又は6の配列のペプチドから選択されるペプチドを含んでいる。
【0015】
本発明は、配列番号7、8又は9の配列のうちの1つを有するポリヌクレオチド、配列番号7、8又は9の配列のうちの1つを有するポリヌクレオチドとハイブリッド形成するポリヌクレオチド、及び前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのうちから選択されるポリヌクレオチドを含んでいることを特徴とする抗菌活性をコードするポリヌクレオチドに関する。
【0016】
本発明は、転写方向に、宿主生物において機能するプロモータ、前記ポリヌクレオチド及び前記の宿主生物と同一の宿主生物におけるターミネータ配列を含んでいることを特徴とする発現カセットに関する。
【0017】
さらに、本発明は、前記ポリヌクレオチド及び/又は発現カセットを含んでいるベクターに関する。
【0018】
本発明は、前記ポリヌクレオチド、発現カセット及び/又はベクターを用いて形質転換された宿主生物に関する。
【0019】
本発明は、2006年12月19日にCNCM I−3705番として、CNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25 rue du Docteur Roux, F-75015 Paris)に寄託されたRuminococcus gnavus菌株に関する。また、前記ペプチドを産生する単離された形態の遺伝的に改変されていない菌株に関する。
【0020】
本発明は、宿主生物又は前記菌株により得られるタンパク質混合物又は発酵マストに関する。
【0021】
本発明は、前記ペプチド、前記宿主生物、前記菌株、前記宿主生物の発酵マスト又は前記菌株の発酵マストを含んでいる組成物に関する。本発明の一実施形態によると、前記組成物は液状又は粉末状である。
【0022】
本発明は、前記ペプチド、前記宿主細胞、前記菌株、前記宿主細胞の発酵マスト又は前記発酵マストを含んでいる栄養性添加物に関する。本発明の一実施形態によると、前記添加物は液状又は粉末状である。
【0023】
本発明は、動物のための栄養基礎成分及び前記栄養性添加物を含んでいることを特徴とする飼料に関する。
【0024】
本発明は、薬物、栄養性添加物又は飼料を製造するための、前記ペプチド、前記宿主細胞、前記菌株、前記宿主細胞の発酵マスト又は前記菌株の発酵マストの用途に関する。本発明の一実施形態によると、前記薬物又は前記栄養性添加物は、家禽又はブタの壊死性腸炎の予防又は治療を目的とされている。本発明の他の実施形態によると、前記薬物又は前記栄養性添加物は、ヒトの消化器疾患の予防又は治療を目的とされている。
【0025】
本発明は、動物に処理するための前記ペプチドの非治療的用途に関する。本発明の一実施形態によると、前記ペプチドは、その動物に内在的な菌株又はその動物に外因的な菌株から得られる。本発明の他の実施形態によると、前記ペプチドは、その動物に内在的な菌株から得られ、また、前記内在的な菌株によりペプチドの産生は促進される。本発明のさらなる他の実施形態によると、前記ペプチドは動物に内在的な菌株から得られ、また、前記内在的な菌株の成長は促進される。
【0026】
(ペプチド)
従って、本発明は、抗菌活性を有するペプチドに関する。好ましくは、これらのペプチドは、Ruminococcus gnavus、例えばRuminocuccus gnavusの変異株から単離される。参考として、これらのペプチドは、2006年12月19日にCNCM I−3705番として、CNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25 rue du Docteur Roux, F-75015 Paris)に寄託されたRuminococcus gnavus菌株、すなわち、LEM 9-17菌株から単離され得る。
【0027】
「抗菌活性」という用語は、標的細菌の成長若しくは発生を阻害する又は標的細菌を殺す能力を意味する。抗菌活性を測定する方法は、当業者に知られている。本発明においては、抗菌活性は寒天培地で培養されたClostridium perfringens CpA菌株に対する活性試験により示される。本発明のペプチドのうちの1つを含む検体は、寒天培地に形成されたウェルに置かれる。抗菌活性は、成長抑制によるハローがウェルの周囲に形成されることにより示される。
【0028】
Ruminococcus gnavus E1のRumC1ペプチド、RumC2ペプチド及びRumC3ペプチドのペプチド配列は、それぞれ配列番号4、配列番号5及び配列番号6の配列により表される。これらの配列は、それぞれ配列番号7、配列番号8及び配列番号9の配列により表されるrumC1遺伝子、rumC2遺伝子及びrumC3遺伝子のヌクレオチド配列から推定される。
【0029】
本発明は、抗菌活性を有するRuminococcus gnavus E1のRumC1ペプチド、RumC2ペプチド及びRumC3ペプチドの断片に関する。「ペプチド断片」という用語は、それが由来するペプチドの全てでなく、その一部からなるペプチドを意味する。従って、本発明は、配列番号1、配列番号2及び配列番号3の配列のペプチドに関する。
【0030】
これらの断片は、抗菌活性を保存する。本発明は、生物学的活性断片に関する。「生物学的活性断片」という用語は、それが由来するポリペプチドの機能を保存するポリペプチドの断片を意味する。
【0031】
本発明は、配列番号1、2又は3の配列のペプチドのいずれかと同一のアミノ酸の少なくとも80%、90%、95%、98%及び好ましくは少なくとも99%を備え、抗菌活性を有するペプチドに関する。
【0032】
配列番号1、配列番号2及び配列番号3の配列のペプチドを調製する方法は、当業者に知られている。
【0033】
RumCペプチドは、細胞外の環境において、細菌により分泌(又は放出)される。配列番号4、5及び/又は6の配列のペプチドのいずれかが所与のアミノ酸によるシグナルペプチドを含むことも可能である。この場合、本発明は、シグナルペプチドの切断の後に得られた成熟ペプチドに関する。本発明の一実施形態によると、配列番号4、5及び6の配列の20番目〜63番目のペプチド配列に関する。
【0034】
他の実施形態において、配列番号4、5又は6のペプチドの潜在的なシグナルペプチドは、異種の宿主生物により、このペプチドの発現及び分泌を行うために異種のシグナルペプチドに置換されてもよい。
【0035】
本発明の対象は、配列番号4、5及び6のペプチドと少なくとも80%の相同性を有し、抗菌活性を備えるペプチドである。本発明の一実施形態によると、このペプチドは、Ruminococcus gnavus菌株から単離される。本発明の他の実施形態によると、このペプチドは、Ruminococcusのその他の菌株又は他の細菌から単離される。また、このペプチドは、化学合成を介して得られる。
【0036】
本発明の一対象は、配列番号4、5及び6の配列のペプチドのいずれかと同一のアミノ酸の少なくとも90%、95%、98%及び好ましくは少なくとも99%を有するペプチドである。
【0037】
「同一のアミノ酸」という用語は、2つの配列の間で不変であるアミノ酸を意味する。これらのペプチドは、配列番号4、5及び6の配列により表されるペプチドに関連する少なくとも1つのアミノ酸の除去、付加又は置換されてもよい。転写の後に、例えば脱水、硫化物橋の形成又はランチオニン等により修飾されたアミノ酸は、2つの配列の間で不変であるアミノ酸としてみなされる。
【0038】
本発明の対象は、配列番号4、5及び6の配列のペプチドのいずれかと少なくとも80%、90%、95%、98%及び好ましくは少なくとも99%の類似性を有するペプチドである。
【0039】
「類似性」という用語は、互いのタンパク質又は核酸の配列の類似点の程度を意味する。これらのペプチドは、配列番号4、5及び6の配列により表されるペプチドに関する少なくとも1つのアミノ酸の除去、付加又は置換されてもよい。スコアにより定量化された2つの配列の間の類似性の度合いは、互いの配列の相同性及び/又は保存している置換の割合に基づく。
【0040】
ポリペプチド同士の間の同一性及び類似性の程度の測定及び同定の方法は、当業者に知られている。配列の比較は、例えばVector NTi 9.1.0の手段、配列比較プログラムのAlignX (Clustal W algorithm) (Invitrogen INFORMAX, http://www.invitrogen.com)又はCLUSTAW (http://www.ebi.ac.uk/clustalw/) のツールを用いることにより行われる。
【0041】
本発明に係るペプチドは、それらの自然環境から単離又は精製され得る。前記ペプチドは異なる工程を介して調製される。これらの工程は、特に、これらのペプチドを自然発現する細菌のような自然原料からの精製、適した宿主細胞による組み換え型ペプチドの産生及びこれらの後の精製、化学合成を介した生産、又はこれらの異なる方法の組み合わせである。従って、本発明の配列番号1〜6の配列のペプチドは、2006年12月19日にCNCM I−3705番として、CNCMに寄託されたRuminococcus gnavus菌株から単離され得る。他の実施形態において、本発明のペプチドは、本発明に係るRumCペプチド又は抗菌活性を有するRumCペプチドの断片を発現する組み換え型宿主生物から単離される。
【0042】
本発明の対象は、本発明に係るペプチドを含む融合タンパク質、組み換えタンパク質又はキメラタンパク質である。
【0043】
本発明のペプチドは、Ruminococcus gnavus E1菌株を宿しているモノゼニックラットの盲腸の内容物から単離され、また、Ruminococcus gnavus変異株、さらに特異的には2006年12月19日にCNCM I−3705番として、CNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25 rue du Docteur Roux, F-75015 Paris)に寄託されたRuminococcus gnavus菌株から単離され得る。これらのペプチドは、Clostridium perfringensに対する活性試験により実証される抗菌活性を有する。
【0044】
質量分析法は、本発明に係るRumCペプチドのおおよその分子量の決定を可能とした。その分子量は、4000Daから4600Daまでであり、より具体的には、4100Daから4500Daまでである。
【0045】
本発明の一実施形態によると、前記ペプチドは、栄養的又は医薬的用途、例えば動物の栄養摂取のために用いるのに適する。
【0046】
「栄養的又は医薬的用途に適するペプチド」という用語は、栄養物又は医薬に適することを特徴とするペプチドを意味する。栄養的又は医薬的用途に必須の特徴は、特にそのペプチドが耐えることができるpHである。具体的に、ヒト及び動物の消化器系のpHは酸性であり、従って、前記ペプチドがこのpHに耐えることは重要である。栄養的用途のための他の必須の特徴は、抗菌物質が活性する温度である。具体的に、薬物、栄養性添加物又は飼料に含まれる抗菌物質の加工は、例えば処理温度及び室温以上の温度を含む。従って、用いられる抗菌剤の活性は、加工の条件、特に前記の温度条件において安定でなければならない。
【0047】
本発明の一実施形態によると、本発明に係るペプチド又はペプチド混合物は、中性pHにおいて抗菌活性を有し、また、酸性pH、例えば7未満、好ましくは4.4未満において、抗菌活性を維持する。
【0048】
本発明の一実施形態によると、本発明に係るペプチド又はペプチド混合物は、37℃において抗菌活性を有し、室温以上及び未満、例えば50℃以上の温度においてこの活性を維持する。
【0049】
本発明は、モノゼニックラットの盲腸の内容物又はRuminococcus gnavus変異株から単離され、Clostridium perfringens菌株に対して活性を有し、質量分析法により測定された4000Daから4600Daまでの分子量を有し、pH7未満のpHに耐え、抗菌活性を備えるペプチドに関する。一実施形態によると、前記ペプチドは、配列番号1の配列及び/又は配列番号2の配列を含む。他の実施形態によると、前記ペプチドは、配列番号3の配列のペプチドを含む。好ましくは、前記ペプチドは、配列番号4、5又は6の配列を有するペプチドのいずれかから選択されるペプチドを含む。
【0050】
本発明は抗菌活性を有するペプチドに関し、それは、Ruminococcus gnavus変異株、例えば2006年12月19日にCNCM I−3705番として、CNCMに寄託されたRuminococcus gnavus菌株から得られる。一実施形態によると、前記ペプチドは、Clostridium perfringens菌株に対する抗菌活性を有する。他の実施形態によると、前記ペプチドは、質量分析法により測定された4000Daから4600Daまで、好ましくは4100Daから4500Daまでの分子量を有する。他の実施形態によると、前記ペプチドは、中性pHにおいて抗菌活性を有し、酸性pH、例えばpH7未満、好ましくは4.4未満において、抗菌活性を維持する。一実施形態によると、前記ペプチドは、配列番号1の配列及び/又は配列番号2の配列を含む。他の実施形態によると、前記ペプチドは、配列番号3の配列のペプチドをさらに含む。好ましくは、前記ペプチドは、配列番号4、5又は6の配列を有するペプチドのいずれかから選択されるペプチドを含む。
【0051】
本発明は、モノゼニックラットの盲腸の内容物から単離された抗菌能力を有するペプチドに関し、これは、逆相HPLCの214nmにおいて検出された図4Aのクロマトグラムに対応し、種々のClostridium perfringens菌株、特に、トキシノタイプAに対して活性を有する。
【0052】
(ポリヌクレオチド)
本発明は、抗菌活性をコードするポリヌクレオチドに関する。好ましくは、これらのポリヌクレオチドは、Ruminococcusの抗菌活性をコードする。
【0053】
本発明によると、「ポリヌクレオチド」という用語は、1本鎖ポリヌクレオチド、そのDNA型若しくはRNA型の相補鎖又は相補的DNA型若しくはゲノムDNA型の2本鎖を意味する。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、DNA型、特に2本鎖DNAの型である。また、「ポリヌクレオチド」という用語は、修飾ポリヌクレオチドも意味する。
【0054】
本発明のポリヌクレオチドは、それらの自然環境から単離又は精製され得る。また、本発明のポリヌクレオチドは、化学合成を介し、又は「分子クローニング:研究室マニュアル」(コールドスプリングハーバー研究所出版、コールドスプリングハーバー、NY、1989)において、Sambrook、Fristsch及びManiatisにより述べられている標準的な分子生物学的方法を介して調製され得る。
【0055】
本発明は、配列番号7、8又は9の配列のいずれかのポリヌクレオチドに関する。また、本発明は、配列番号7、8又は9の配列のいずれかのポリヌクレオチドとハイブリッド形成するポリヌクレオチドに関する。また、本発明は、前記の抗菌活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0056】
本発明は、配列番号7、8又は9の配列のいずれか1つのポリヌクレオチドと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%及び好ましくは少なくとも99%の同一性を有するポリヌクレオチドに関する。このポリヌクレオチドは、抗菌活性をコードしている。一実施形態によると、前記ポリヌクレオチドは、Clostridium perfringens菌株に対する抗菌活性をコードしている。
【0057】
「同一のヌクレオチド」という用語は、不変又は2つの配列の間で不変であるヌクレオチドを意味する。このポリヌクレオチドは、基準のポリヌクレオチドに関する少なくとも1つのヌクレオチドを除去、付加又は置換してもよい。
【0058】
本発明は、配列番号7、8又は9の配列のいずれか1つのポリヌクレオチドと、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%及び好ましくは少なくとも99%の類似性を有するポリヌクレオチドに関する。このポリヌクレオチドは、抗菌活性をコードする。一実施形態によると、前記ポリヌクレオチドは、Clostridium perfringens菌株に対する抗菌活性をコードする。
【0059】
「類似性」という用語は、タンパク質配列同士又は核酸配列同士の類似点の程度を意味する。このポリヌクレオチドは、基準のポリヌクレオチドに関する少なくとも1つのヌクレオチドを除去、付加又は置換してもよい。スコアにより定量化された2つの配列の間の類似性の度合いは、同一性の割合及び/又は配列の保存されている置換の割合に基づく。
【0060】
核酸の配列同士の同一性の度合い及び類似性の度合いの測定及び同定の方法は当業者に知られている。配列の比較は、例えばVector NTi 9.1.0の手段、配列比較プログラムのAlignX (Clustal W algorithm) (Invitrogen INFORMAX, http://www.invitrogen.com)又はCLUSTAW (http://www.ebi.ac.uk/clustalw/) のツールを用いることにより行われる。
【0061】
本発明は、配列番号7、8又は9の配列のいずれか1つのポリヌクレオチドと選択的にハイブリッド形成できるポリヌクレオチドに関する。好ましくは、選択的なハイブリッド形成は、中程度に厳しい条件下で、さらに好ましくは、非常に厳しい条件下で行われる。本発明によると、「選択的にハイブリッド形成ができる配列」という用語は、バックグラウンドのノイズよりも著しく高いレベルに基準の配列とハイブリッド形成する配列を意味する。選択的にハイブリッド形成できる配列と基準の配列との相互作用により発生する信号のレベルは、通常、バックグラウンドノイズが発生する他のDNA配列同士の相互作用の信号よりも10倍、好ましくは100倍の強さである。選択的なハイブリッド形成が可能なハイブリッド形成の厳しい条件は、当業者に知られている。一般に、ハイブリッド形成及び洗浄の温度は、所与のpH及び所与のイオン強度における基準の配列のTmよりも少なくとも5℃低い。概して、ハイブリッド形成の温度は、15塩基〜50塩基のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドでは少なくとも30℃であり、50塩基よりも多くのヌクレオチドからなるポリヌクレオチドは少なくとも60℃である。一例として、ハイブリッド形成は、以下の緩衝液中で行われる。6×SSC、50mM Tris−HCl(pH7.5)、1mM EDTA、0.02% PVP、0.02% Ficoll、0.02% BSA及び500μg/ml 変性サーモン精液DNA。洗浄は、例えば、2XSSC、0.1%SDS緩衝液で軽度の厳しい条件下において、0.5×SSC、0.1%SDS緩衝液で中程度の厳しい条件下において、及び0.1×SSC、0.1%SDS緩衝液で非常に厳しい条件下において連続的に行われる。当然に、ハイブリッド形成は、当業者に知られている一般的な他の方法により行われてもよい(特に、Sambrook、Fristsch及びManiatisの「分子クローニング:研究室マニュアル」(コールドスプリングハーバー研究所出版、コールドスプリングハーバー、NY、1989)を参照)。好ましくは、基準のポリヌクレオチドと選択的にハイブリッド形成するポリヌクレオチドは、基準の配列の機能を保存する。本発明の場合、配列番号7、8又は9の配列のいずれか1つのポリヌクレオチドと選択的にハイブリッド形成するポリヌクレオチドは、抗菌活性をコードする。
【0062】
本発明は、一般に、本発明に係るペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。遺伝子コードの縮重のため、異なるポリヌクレオチドが同一のペプチドをコードすることもある。
【0063】
(発現カセット)
本発明の一実施形態によると、本発明に係るペプチドをコードしているポリヌクレオチドは、当業者に知られているクローニング技術を用いて発現カセットに挿入される。この発現カセットは、本発明に係るペプチドをコードしている配列の転写及び翻訳に必要な配列を含む。
【0064】
好ましくは、この発現カセットは、宿主細胞を介してペプチドを生産するための配列、及びこの発現を制御するのに必要な配列の両方を含む。
【0065】
これらの発現カセットは、転写方向に、宿主生物において機能するプロモータ、本発明に係るポリヌクレオチド、及び前記宿主生物において機能するターミネータ配列を含む。
【0066】
全ての型のプロモータ配列は、本発明に係る発現カセットに用いられることができる。プロモータの選択は、特に、所望の遺伝子の発現のために選択された宿主生物に依存する。特定のプロモータは、恒常的な発現を可能とするが、他のプロモータは誘導性である。
【0067】
真菌類の機能的プロモータにおいて、Aspergillus nidulansからのグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素のプロモータが特に言及されている(Roberts等.,Current Genet.15,177-180,1989)。
【0068】
細菌の機能的プロモータにおいて、バクテリオファージT7からのRNAポリメラーゼのプロモータが特に言及されている(Studier等.,Methods in Enzymology,185,60-89,1990)。
【0069】
酵母の機能的プロモータにおいて、GAL1遺伝子のプロモータ(Elledge等.,Proc.Natl Acad.Science,USA.88,1731-1735,1991)、又はGal4のプロモータについて言及され、また、S.cerevisiaeのADHプロモータについても言及されている。これら全てのプロモータは、文献に記載され、当業者に知られている。
【0070】
Penicillium funiculosumにおける発現のために、例えば、H4Bヒストンプロモータ、アスパラギン酸プロテアーゼプロモータ又はcs113プロモータ(WO00/68401)を含む発現カセットが選択される。
【0071】
pichia pastoris酵母における発現のために、例えば、メタノール誘導性AOX1プロモータ(Tschopp等.,Biotechnology,5,1305-1308,1987)又はGAPの強い恒常性プロモータ(Waterham等.,Gene 186,37-44,1997)を含む発現カセットが選択される。
【0072】
Schizosaccharomyces pombeにおける発現のために、例えば、チアミンにより抑制され、チアミンの非存在下において活性されるNtm1制御プロモータ(Maundrell,J.Biol.Chem.265,10857-10864,1989)を含む発現カセットが選択される。
【0073】
本発明に係る発現カセットは、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現に必要な他の配列を含んでもよい。それは、例えば、宿主細胞により産生されたポリペプチドの分泌を可能とする制御配列又はシグナル配列である。特に、発現カセットに挿入されたコード配列の発現レベルを増大させる制御配列を用いることも可能である。本発明によると、特に、プロモータ制御配列、及び転写活性因子(エンハンサ)のようなプロモータとコード配列との間に位置する他のプロモータ制御配列の組み合わせを用いることもできる。
【0074】
さらに、本発明に係る発現カセットは、シグナル配列のような宿主生物により産生されるポリペプチドの分泌に必要な配列を含んでもよい。Pichia Pastorisによる分泌のために、例えば、分泌シグナルとしてα因子配列を用いることができる。
【0075】
多種多様なターミネータ配列は、本発明に係る発現カセットに用いることができ、これらの配列は、転写の終結及びmRNAのポリアデニル化を引き起こす。選択された宿主生物において機能的である全てのターミネータ配列が用いられ得る。
【0076】
Penicillium funiculosumにおける発現のために、例えば、H4.Bヒストンターミネータ、アスパラギン酸プロテアーゼターミネータ又はcs113ターミネータ(WO00/68401)を含む発現カセットが選択される。
【0077】
本発明の対象は、本発明に係る発現カセットを含むポリヌクレオチドであり、本発明に係る発現カセットはベクターに挿入されていることが好ましい。
【0078】
(ベクター)
本発明は、本発明に係る少なくとも1つのポリヌクレオチド又は発現カセットを含み、宿主生物を形質転換させるクローニングベクター又は発現ベクターに関する。このベクターは、特に、本発明に係るポリヌクレオチド又は発現カセットが挿入されているプラスミド、コスミド、バクテリオファージ又はウイルスに相当する。これらのベクターを構築し、これらのベクターに本発明のポリヌクレオチドを挿入するための技術は、当業者に知られている。特に、ポリヌクレオチド又はペプチドの発現誘導のために、宿主細胞において自己で維持、自己複製又は自己増殖できるベクターが、一般に用いられ得る。当業者は、形質転換させるための宿主生物の機能、及び用いられる形質転換技術の作用から適切なベクターを選択する。
【0079】
本発明のベクターは、特に、宿主生物における本発明に係るベクターの複製及び/又は本発明に係るペプチドの発現のために、宿主生物の形質転換に用いられる。
【0080】
本発明は、本発明に係る発現カセットを含む発現ベクター及び/又は本発明に係るポリヌクレオチドを用いて、宿主生物を形質転換させる工程、及び前記宿主生物により産生されたペプチドを単離させる工程を含んでいる本発明に係るペプチドの調製方法に関する。
【0081】
(宿主生物)
本発明の対象は、本発明に係る少なくとも1つのポリヌクレオチド、少なくとも1つの発現カセット又は少なくとも1つのベクターの宿主生物への組み込みにより、該宿主生物を形質転換させる方法である。ポリヌクレオチドは、宿主生物のゲノムに組み込まれてもよく、また、宿主生物において安定に複製されてもよい。宿主生物の形質転換の方法は、当業者に知られ、文献に広く記載されている。
【0082】
本発明は、本発明に係るポリヌクレオチド、発現カセット又はベクターを用いて形質転換された宿主生物に関する。
【0083】
本発明によると、「宿主生物」という用語は、特に、細菌、酵母又は真菌から選択される、特に、高等又は下等な単細胞又は多細胞生物のいずれも意味する。特に、「宿主生物」はヒトでない生物を意味する。好ましくは、酵母は、例えば、Piachia pastoris、Saccharomyces cervisiae、Yarrowia lipolytica及びSchwanniomyces occidentalisから選択される。真菌は、例えば、Aspergillus、Trichoderma及びPenicilliumsから選択され、好ましくは、Penicillium funiculosum、Trichoderma reesei、Aspergillus niger、Aspergillus awamori、Aspergillus kawachii及びTrichoderma koningiiから選択される。本発明の一実施形態において、宿主生物は、本発明に係るペプチドを発現又は過剰発現させるPenicillium funiculosum菌株である。他の実施形態において、宿主生物は、本発明に係るペプチドを発現又は過剰発現させるDebaromyces castellii菌株である。さらに他の実施形態において、宿主生物は、本発明に係るペプチドを発現又は過剰発現させるRuminococcus gnavus菌株である。
【0084】
ベクターの構築、宿主生物の形質転換及びこれらの生物における異種のタンパク質の発現を行う技術は、文献に広く記載されており、特に、Sambrook、Fristsch及びManiatisの「分子クローニング:研究室マニュアル」(コールドスプリングハーバー研究所出版、コールドスプリングハーバー、NY、1989)又はAusubel等の「分子生物学における現代のプロトコール」(Greene Publishing Associates,Inc.,及びJohn Wiley and Sons,NY,1992)に記載されている。
【0085】
(菌株)
Ruminococcus gnavusの新規の菌株は、2006年12月19日にCNCM I−3705番として、CNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25 rue du Docteur Roux, F-75015 Paris)に寄託された。CNCMは、ブダペスト条約第7条に従う国際寄託当局である。
【0086】
前記の新規の菌株は、R.gnavus L14菌株の無作為の変異誘発により得られた。この菌株は、インビトロではRumAを産生する能力を失い、インビボではRumCを合成できるR.gnavusの自然変異型である。強力なアルキル化剤であるN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NG)は変異誘発のために用いられた。遺伝子組み換えは、他の起源のDNA又はRNAを用いる組み換え技術により成されなかった。
【0087】
LEM9-17菌株の培養培地は、好ましくは、酵母抽出物及びヘミンを加えたBHI培地(BHI-YH)である。
【0088】
(タンパク質混合物、発酵マスト)
本発明は、本発明に係る抗菌活性を有するペプチドの調製方法に関し、該方法は以下の工程を含んでいる。
【0089】
a)Ruminococcus gnavus菌株を培養する、又は、前記ペプチドの発現を誘導する条件下で本発明に係る宿主生物の形質転換を行う、
b)前記ペプチドを含む培養上清を回収する。
【0090】
培養上性からのペプチドの分離は、電荷、大きさ及び/又は疎水性を利用して行われる。当業者は、培地の種々の構成物の電荷、大きさ及び/又は疎水性により分離する種々の技術を知っている。
【0091】
この培養上清又は発酵マストは、食品添加物又は飼料の剤形のために濃縮又は凍結乾燥され得る。この方法は、培養上清から抗菌物質を精製する付加的工程を含んでもよい。
【0092】
宿主生物が培養培地に抗菌物質を分泌しない場合、細胞の溶解及び細胞抽出物の精製といった付加的工程が必要となり得る。
【0093】
本発明のペプチドは、モノゼニックラットの盲腸の内容物から得られてもよい。
【0094】
(組成物)
本発明に係る組成物は、本発明に係るペプチド、本発明に係る宿主生物、本発明に係る菌株、本発明に係る発酵マスト又は本発明に係る菌株の発酵マストを含む。前記組成物は、液体状又は粉末状である。これらの組成物は、種々の成分を含む。
【0095】
液体の組成物は、例えば他の抗菌剤、例えばソルビン酸、ソルビン酸塩、安息香酸、安息香酸塩、フマル酸又はフマル酸塩を含んでもよい。本発明の組成物は、ソルビトールを含んでもよい。ソルビトールは、安定化剤であり、製剤化に関わる物質である。本発明の組成物は、凍結防止剤、例えば、エチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール及び1,2−プロパンジオールを含んでもよい。
【0096】
粉末状の組成物は、担体を含む。この担体は、小麦粉、デンプン、マルトデキストリン、石膏及びコーンコブから選択され得る。
【0097】
本発明に係る組成物は、抗菌活性を有する。それらは、抗生物質の使用に代わる方法を提供する。それらは、例えば、動物の飼育において又はヒトに対する薬物として用いられ得る。
【0098】
本発明の組成物は、本発明に係る少なくとも1つのペプチドを含み、また、それらは、他の物質、例えばビタミン、他の活性源、アミノ酸又は無機塩類を含んでもよい。
【0099】
本発明に係る組成物は、例えば、ブタ又は家禽の壊死性腸炎の予防又は治療、及びヒトの消化器疾患の予防又は治療を可能とする。
【0100】
本発明の組成物は、例えば、飼料に加えられ、又は、例えば栄養基礎成分と組み合わされる。従って、本発明は、本発明に係る組成物を含む飼料に関する。通常、この飼料は、抗菌活性を有する組成物が組み込まれた粉末又は顆粒の形状である。本発明の対象は、本発明に係るペプチド、本発明に係る宿主生物又は本発明に係る宿主生物の発酵マスト若しくは培養上清を含んでいる飼料である。
【0101】
「飼料」という用語は、動物の食べ物として用いられ得る全てのものを意味する。「栄養基礎成分」という用語は、例えば、穀類とタンパク質と動物及び/又は植物由来の脂質との混合により構成された動物の食料の必須の要素を構成する全てのものを意味する。通常、これらの栄養基礎成分は、例えばトウモロコシ、小麦、エンドウ豆及び大豆を含む。これらの栄養基礎成分は、それらが意図する種々の動物種のニーズに適応される。それらは、例えば、家禽(産卵鶏、ブロイラ鶏、シチメンチョウ及びカモ)又はブタ(成長が終了したブタ又は子豚)であってもよい。
【0102】
(ペプチドの用途)
本発明は、薬物の製造のための本発明に係るペプチド、本発明に係る宿主生物、本発明に係る菌株、本発明に係る宿主生物の発酵マスト又は本発明に係る菌株の発酵マストの用途に関する。
【0103】
また、本発明は、飼料において他の組成物と組み合わせる栄養性添加物とする本発明に係るペプチド、本発明に係る宿主生物、本発明に係る菌株、本発明に係る宿主生物の発酵マスト又は本発明に係る菌株の発酵マストの用途に関する。
【0104】
本発明の一実施形態によると、この薬物又は栄養性添加物は、ブタ又は家禽の壊死性腸炎の予防又は治療に用いられる。
【0105】
本発明の一実施形態によると、この薬物又は栄養性添加物は、ヒトの消化器疾患の予防又は治療に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】R.gnavus E1菌株を宿しているモノゼニックラットの盲腸の10gの内容物に含まれる可溶性画分のセファデックスG−75における分子ふるいにより得られたクロマトグラムであり、x軸は溶出量をmLで示し、y軸は280nmの吸光度を示し、陰影の付いた領域は、C.perfringensに対する活性を有する分画(325分画〜358分画)に相当する。
【図2A】セファデックスG−75における標準タンパク質の分子ふるいにより得られたクロマトグラムであり、x軸は溶出量をmLで示し、y軸は280nmの吸光度を示し、aは67kDaのアルブミンであり、bは43kDaのオボアルブミンであり、cは25kDaのキモトリプシンであり、dは13.7kDaのリボヌクレアーゼAである。
【図2B】図2Aのクロマトグラムから得られた対数検量線(MM)=f(Ve)であり、x軸は溶出量をmLで示し、y軸は分子量の対数を示す。
【図3】活性GF分画の陽イオン交換カラムにおけるHPLCにより得られたクロマトグラムであり、y軸の左側は214nmの吸光度を示し、y軸の右側はNaClの濃度をMで示し、x軸は時間を分で示している。
【図4】Aは活性CM分画の逆相HPLCにより得られたクロマトグラムであり、y軸の左側は214nmの吸光度を示し、y軸の右側はアセトニトリル溶出液の割合を示し、x軸は時間を分で示している。B及びCは逆相HPLCから得られた分画の質量スペクトルであり、x軸は質量/電荷を示し、y軸は信号強度を示している。
【図5】R.gnavus E1菌株を宿しているモノゼニックラットの盲腸の内容物からRumCを精製するためのプロトコールである。
【図6】脱塩されたSN 9−17分画の陽イオン交換樹脂におけるFPLCにより得られたクロマトグラムであり、x軸は時間を分で示し、y軸は214nmの吸光度を示し、aは214nmの吸光度であり、bはNaClの濃度であり、cは伝導率であり、dは流速をmL/分で示している。
【図7】RumCの精製の間の種々の分画の質量スペクトルであり、x軸は質量/電荷を示し、y軸は信号強度を示し、AはSN 9−17であり、Bは活性CM分画であり、CはR 10kDaである。
【図8】GF 47−50の分画の質量スペクトルであり、x軸は質量/電荷を示し、y軸は信号強度を示している。
【図9】LEM 9-17変異株からRumCを精製するためのプロトコールである。
【発明を実施するための形態】
【0107】
(材料及び方法)
1.細菌株及び培養培地
RumCを産生するRuminococcus gnavus E1は、健常な成人の糞便の優位な微生物叢から単離された(Dabard等.,Appl.Environ.Microbiol.,67,4111-4118,2001)。R.gnavus L14菌株は、インビトロにおいてRumAを産生する能力を失い、インビボにおいてRumCを合成できるR.gnavus E1の自然変異体である。
【0108】
2006年12月19日にCNCM I−3705番として、CNCMに寄託されたRuminococcus gnavus菌株は、L14菌株の無作為の変異誘発により得られた。これは、トリプシンが添加された寒天培地(500μg/ml、しかしながら液体培地には入っていない)において、インビトロでRumCを産生できる。それは、LEM 9-17菌株である。
【0109】
活性試験のための標的として用いられる菌株は、Clostridium perfringens CpA菌株である(Dabard等.,Appl.Environ.Microbiol.,67,4111-4118,2001)。
【0110】
これらの4つの菌株は、制御された環境下(85% N、10% H、5% CO)でフレター型のチャンバーにおいて嫌気的に培養される。それらは、酵母抽出物及びヘミンが加えられたBHI培地(BHI−YH)において37℃で培養される。
【0111】
液体BHI−YH:37g/LのBHI(Brain Heart Infusion,Difco Laboratories)
5g/Lの酵母抽出物(Yeast Extract,Fluka)
5mg/Lのヘミン(Hemin,Sigma)
寒天BHI−YH:上記の材料+15g/Lの寒天(BACTO agar,Difco Laboratories)
2.液体検体を用いる抗菌活性試験
液体検体を用いる抗菌活性試験を行うために、10個〜10個のC.perfringens CpA細胞を寒天培地に播く。30分間室温に置いた後に、パスツールピペットを用いて、寒天培地に直径が6mmのウェルを形成する。形成したウェル及び培養シャーレに100μL以下の検体を播き、37℃で16時間〜24時間培養する。検体がC.perfringens CpAに対する直接的な抗菌物質を含む場合、細菌の成長は阻害されて、ウェルの周囲に成長抑制によるハローの形成が引き起こされる。
【0112】
この活性試験は、C.perfringensが予め播種された寒天培地に、10μLの検体を直接播くことにより行われてもよい。
【0113】
3.寒天培地における成長コロニーを用いる抗菌活性試験
抗菌物質を潜在的に産生する菌株を50μg/mLのトリプシンを追加する又は他の方法により含む寒天培地において、24時間培養した後に、抗菌物質を潜在的に産生する菌株を標的菌株を含む軟寒天培地(7.5g/Lの寒天を含む)に播く。この軟寒天培地は、10個〜10個の標的菌株の細胞を含む5mLの液体培地で灌流された5mLの寒天培地を即座に混合することにより調製される。その培養シャーレを、16時間〜24時間、37℃で再び保温する。成長抑制によるハローは、抗菌物質を産生するコロニーの周囲に見られる。
【0114】
4.盲腸の内容物における壊死細胞片及び食物の残留物の除去
10gの盲腸の内容物を30mLのPBS(NaCl 137mM, KCl 2.68mM, Na2HPO4 8.1mM, KH2PO4 1.47mM, pH7.4)により希釈し、10000×g、4℃の条件で15分間遠心分離を行う。これにより、壊死細胞片及び食物の残留物を含む沈殿物が除去される。
【0115】
5.遠心分離ろ過装置
遠心分離ろ過装置は、遠心分離を用いて分子量により、2つの分画にタンパク質を分離するろ過膜である。これは、検体の濃縮又は脱塩のために用いることもできる。
【0116】
いくつかの製造業者は、これらの型の製品を販売している。ほとんどの場合、膜は再生セルロースにより作られているが、それらは、ポリエーテルスルホンにより作られていてもよい。それらの選択は、処理される検体の容量及び膜の分離許容限界による(表1)。ローターの型及び遠心分離の速度の選択のために製造業者により設けられている説明書に従って、これらのろ過装置を用いた。しかしながら、遠心分離の時間は、検体の粘性により変更できた。
【0117】
表1:RumCの精製試験において用いられるろ過装置の特性
【0118】
【表1】

【0119】
6.セファデックスG−75による分子ふるい
盲腸の内容物の上清の分子ふるいは、セファデックスG−75(2.4×187cm)のカラムにより行われる。検体(容量はカラムの容積の約2%とする)をカラムに吸着させ、PBSを用い、流速を1mL/分とし、4℃で溶出を行い、2mLの600分画が回収する。それぞれの分画の280nmの吸光度を検出することによりクロマトグラムが得られる。
【0120】
7.FPLCによる分子ふるい
活性CM分画の分子ふるいは、FPLCにより行われる。検体をHiLoad 26/60 Superdex 30pgカラム(GEヘルスケア)に吸着させる。PBSを用いて、2.5mL/分の流速で溶出を行う。溶出されたタンパク質を、280nmの吸光度の変化を測定することにより検出する。2分の溶出に相当する分画は自動的に回収される。
【0121】
8.陽イオン交換CMカラムによるHPLC
陽イオン交換HPLCは、Waters 616 Pump注入器を備えるWaters 600S Contorollerにより行われる。検体(0.5mL)をTSKのCM-3SW Spherogel分取用カラムに吸着させる。20mMの酢酸ナトリウム緩衝液によるpH5とした条件下において、0M〜1Mの濃度勾配をつけたNaClを用いて0.8mL/分の流速で溶出を行う。初めの20分間は、NaClの非存在下で均一濃度において溶出を行い、その後の30分間は、0Mから0.5MにリニアにNaClの濃度勾配がつけられた条件下で行う。その後の5分間は、均一濃度の条件下で溶出を行い、その後の1分間でNaClの濃度を1Mにし、均一濃度で15分間続け、最後に開始時の条件に戻す。溶出されたタンパク質を、Waters 486 Tunable Absorbance Detectorを用いて280nm又は214nmの吸光度を測定することにより検出する。分画は自動的に回収され、それをAmicon Ultra PL-5装置を用いて脱塩する。
【0122】
9.陽イオン交換カラムによるFPLC
陽イオン交換クロマトグラフィは、FPLCの連鎖により行われる。検体をHi-Prep 16/10 CM FFカラム(GEヘルスケア)に吸着する。20mM酢酸ナトリウム緩衝液によりpH5とした条件下において、0M〜0.4Mの濃度勾配をつけたNaClを用いて溶出を行う。NaClの非存在下の均一濃度で2mL/分の流速の条件により、溶出を50分間行う。その後に、40分間かけて0Mから0.4MにリニアにNaClの濃度を変化させ、5mL/分の流速で溶出を続ける。溶出されたタンパク質を、280nmの吸光度の変化を測定することにより検出する。1mLの分画は、自動的に回収され、それをSep-Pak C18カートリッジにより脱塩する。
【0123】
10.逆相HPLC
逆相HPLCは、Alliance Waters 1690 Separations Moduleにより行われる。0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を用いて事前に酸性化された検体(100μL)を、Vydac 218TP52 250×2分析用カラムに吸着する。一定の流速(0.5mL/分)で溶出を行う。15%のアセトニトリルの均一濃度で10分間の溶出を行った後に、60分かけてアセトニトリルの濃度を15%から30%にリニアに濃度を変化させる。1分間でアセトニトリルの濃度を70%に変更し、溶出を均一濃度で19分間続けた後に、開始時の条件に戻す。溶出されたタンパク質を、Waters 996 Photodiode Array Detectorを用いて214nmにおける吸光度の変化を測定することにより検出する。アセトニトリルは、Speed Vac Concentrator(Savant)を用いて蒸発させる。
【0124】
11.質量分析
質量分析は、Timone proteomic plateau(薬科大学、マルセイユ、フランス)において行われた。
【0125】
Maldi型の質量スペクトルは、遅延抽出を有する正の線形モードにおいて用いられるEttan Maldi-Tof Pro spectrometer(GEヘルスケア、ウプサラ、スウェーデン)により得られる。液滴乾燥の方法を介してMaldiの標的において、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸の5mg/mLの溶液を用いて検体を共結晶化する。良好な信号を得るために、20kVの加速電位及び最小のレベルに設定されたレーザによりスペクトルを得る。質量が知られているペプチドの標準混合物(Pepmix4,Laserbiolabs, ニース, フランス)を取得し、これを用いて外部のモードにおいてスペクトルの較正を行う。
【0126】
結晶化させることが困難である特定の検体の場合、共結晶化を2,5−ジヒドロキシ安息香酸溶液を用いて行う。
【0127】
12.エドマン法
この技術は、フェニルイソチオシアネート(CN=C=S)を有するタンパク質の遊離末端アミノ酸の反応に基づく。この環状化合物は、基本的な媒体において、タンパク質の第1のアミノ酸残基に求核的に攻撃を行う。ペプチドのフェニルチオカルボミル(PTC)誘導体は、その後に、加水分解により切断される。第1のアミノ酸のアニリノ−チアゾリノン(ATZ)及びこのアミノ酸を失ったタンパク質が得られる。AZT−アミノ酸は、フェニルチオヒダントイン−(PTH)アミノ酸に転換される。
【0128】
連続的に得られたPTH−アミノ酸を280nmにおける吸光度の測定及び溶出時間の比較によるRP−HPLCにより分離及び同定する。反応サイクルは繰り返すことが可能であるため、タンパク質の配列を検出できる。
【0129】
13.無作為の変異誘導
37℃で24時間培養されたL14菌株の14mLの培養液を2mLチューブに7つに分け、その後に、これらのチューブに対して5800×gで10分間遠心分離を行う。細胞の沈殿物に対して、2mLの0.1Mクエン酸塩緩衝液(クエン酸21mg/mL、NaOH8.8mg/mL、pH5.5)を用いて、2度の洗浄を行い、その後に、強力な変異誘発剤であるN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NG)の濃度が増大するように変化させているクエン酸塩緩衝液をそれぞれに加える。
【0130】
表2:Sep-Pakによる脱塩に用いられる溶液の量
【0131】
【表2】

【0132】
その後に、37℃で30分間、それぞれのチューブを保温し、5800×gで10分間遠心分離する。沈殿物を0.1Mのリン酸緩衝液(KH2PO4 13.6mg/mL, NaOH 2.32mg/mL, pH7)を用いて洗浄し、その後に、それを液体BHI−YH培地に入れる。
【0133】
14.Sep-Pak C18カートリッジ(Waters)における脱塩
本モデルによると、これらのカラムは、相が流されるシリンジ形状の中にあり、又は、シリンジの端に固着されたミニカラムである。緩衝液の流動は、蠕動型ポンプにより保証される。第1段階において、カラムにHOを通過させ、その後にCHCNを通過させ、最後に0.05%TFAを含むHOを通過させるにより、カラムは平衡化される。その後に、0.05%TFAを用いて事前に酸性化された検体を吸着させる。HO−0.05%TFA、40%CHCN−0.05%TFA及びCHCN−0.05%TFAを連続的に加えることにより、3つの工程において溶出を連続的に行う。
【0134】
従って、3つの分画が回収される。それらは、カラムにより保持されないタンパク質及び塩に相当する分画(分画NR)、40%CHCNにより希釈されたタンパク質を含む分画(40%ACN分画)及び100%CHCNにより希釈されたタンパク質を含む分画(100%ACN分画)である。溶媒を容量に依存して、Speed Vac Concentrator又はRotavaporを用いて蒸発させる。
【0135】
表3はRumCの精製から得られる分画の脱塩のために用いられる溶液の容量を示している(結果及び考察を参照)。これらの容量は、Sep-Pakの相の容量に依存する。
【0136】
表3:Sep-Pakによる脱塩に用いられる溶液の容量
【0137】
【表3】

【0138】
15.温度耐性試験
RumCを含む分画を分割し、ヒートブロックを用いて5分〜15分間それぞれを異なる温度で熱し、その後に4℃で保存する。その後に、それらを用いて抗菌活性試験を行う。
【0139】
16.pH耐性試験
RumCを含む分画を分割し、それぞれを所望の緩衝液により約10倍に希釈する。室温で10分間置いた後に、それぞれの溶液をVivaspin 500 3kDaろ過装置に吸着し、その後に製造業者の説明書に従って遠心分離を行う。Vivaspin 500により保持されている分画に緩衝液を加え、そのろ過装置に対して再び遠心分離を行う。Vivaspin 500 3kDaにより保持された、すなわち、RumCを含む分画のそれぞれの容量は、開始時の容量と一致するように緩衝液を用いて調節する。これらの分画を4℃で保存し、その後に、それらを用いて抗菌活性試験を行う。
【0140】
Vivaspin 500 3kDaろ過装置は、pH9以上には耐えられない。従って、酸性又は中性のpHの緩衝液のみを用いた。構成は以下の通りである。
【0141】
pH2緩衝液:50mM KCl−13mM HCl
pH4.4緩衝液:0.2M pH4.4 酢酸ナトリウム緩衝液
pH7緩衝液:50mM KHPO−39mM NaOH。
【0142】
(結果及び考察)
1.盲腸の内容物からのRumCの精製
Ruminococcus gnavus E1菌株は培養可能であるにもかかわらず、RumCは、試験された培養条件下のインビトロにおいて産生されない。RumCを精製するために、E1菌株を宿しているモノゼニックラットの盲腸の内容物を用いること、又は、インビトロにおいてRumCを産生できるR.gnavus変異株を作製することが必要である(第2節を参照)。
【0143】
1.1.モノゼニックラットの盲腸の内容物の希釈
第1工程として、PBSにより盲腸の内容物を希釈した。
【0144】
1.2.壊死細胞片の除去
精製の第2工程において、盲腸の内容物を遠心分離することにより、細菌、壊死細胞片及び食物の残留物を除去する。
【0145】
1.3.濃縮
前記のように調製された溶液をAmicon Ultra-15 PL-5システムにより濃縮し、その後に、分子ふるいカラムにかける。
【0146】
1.4.抗菌活性試験
得られた全ての分画をC.perfringens CpA菌株に対して試験した。これは、モノゼニックラットの盲腸の内容物中に抗C.perfringens物質が存在するかどうか確認する試験であった。
【0147】
陰性対照としてアゼニックラット(微生物を含まない)の盲腸の内容物を用いた。抗C.perfringens活性は検出されなかった。従って、モノゼニックラットの盲腸の内容物に含まれる抗C.perfringens物質は、実際にR.gnavus E1に特異的である。
【0148】
その後は、それぞれの精製試験の後に、抗C.perfringens活性試験を続けた。第1段階において、負の結果がこの試験の感度の許容限界と関連しないことが確実であることに注意し、活性があるかどうかのみを調べた。第2段階において、確立されていたプロトコールを用いて定量試験を行った。
【0149】
1.5.セファデックスG−75カラムによる分子ふるい
分子ふるいは、セファデックスG−75カラム(2.4×187cm)により行われた。回収した2mLの600分画のそれぞれの280nmにおける吸光度を検出することにより、溶出をモニタリングした。
【0150】
事前にMicrocon YM-3を用いて濃縮された分画を用いて、抗菌活性試験を行った。
【0151】
325分画〜358の分画は、C.perfringensに対して活性があることを証明し、新規の活性GF分画を構成するためにこれらを貯えた(図1の陰影領域)。
【0152】
アゼニックラットの盲腸の内容物を用いた対照群の溶出プロファイルは、モノゼニックラットの盲腸の内容物を用いて得られた検体の溶出プロファイルと比較されたが、抗C.perfringens活性は検出されなかった。
【0153】
1.6.RumCの大きさの評価
活性GF分画にあるRumCの大きさを評価するために、分子量が知られている標準タンパク質を前記と同一のセファデックスG−75カラムに吸着させ、それぞれの溶出容量を測定した(図2A)。その後に、物質の分子量の対数(log(MM))とその溶出容量(Ve)との釣り合いを定義する較正曲線を描いた(図2B)。683mLの溶出容量の平均値を用いると、外挿であるが、抗菌物質は選択された標準タンパク質の範囲内にあり、その分子量は、約5200Daであると評価された。
【0154】
1.7.陽イオン交換樹脂によるクロマトグラフィ
カルボキシメチル(CM)−Sepherogelカラムによる陽イオン交換クロマトグラフィに活性GF分画をかける場合、HPLC法を用いることが予測された。pH5においてNaClの濃度勾配を用いて溶出を行い、これを214nmにおいてモニタリングした(図3)。
【0155】
活性は32分〜38分に見られ(活性CM分画)、これはNaClの濃度が0.2M〜0.3Mに対応する。この技術によると、保持されていない分画、特に全ての黄色の色素の混入を除去することができた。
【0156】
質量分析法による活性CM分画の分析により、約4200kDaの単一のペプチドを含むことが示される(結果は示さず)。
【0157】
この分画に対してN末端の配列決定法を行った。初めの11アミノ酸は、AGVIX(N/S)GXAV(配列番号10)と決定された。この配列は、周知のタンパク質との強い相同性は示されていない。
【0158】
また、配列決定法は2つの主要でない配列を明らかにした。
【0159】
1.8.逆相HPLCクロマトグラフィ
214nmにおける種々の吸収ピークが得られた。
【0160】
活性はa(又は2重ピーク)及びb(又は単一ピーク)として示されている2つの分画において明らかにされた(図4)。これら2つの分画の質量分析法による分析により、3つの主要なペプチドの存在が明らかとなり、それぞれのペプチドの分子量は4230Da〜4460Daである。(図4B及び図4C)。
【0161】
盲腸の内容物からのRumCの精製を、3つのクロマトグラフィ、すなわち、分子ふるい、陽イオン交換クロマトグラフィ及び逆相クロマトグラフィを用いて再び行った。得られた溶出プロファイルは、第1の試験の溶出プロファイルと同等である。従って、RumCの精製法は、再現性があるため採用できる。
【0162】
盲腸の内容物からRumCを精製する方法を要約した模式図を図5に示す。
【0163】
1.9.精製収率及び精製因子
慣習により、溶液中の任意の活性単位(AAU)の数値は、活性のある最終希釈度の逆数となるように定義される。従って、精製により得られたそれぞれの活性分画の希釈系列液(2倍)に対して抗C.perfringens活性の試験を行った。
【0164】
精製因子は、それぞれの分画のタンパク質のAAU/mgで表される特異的活性との比較により得られる。種々の分画におけるタンパク質の量の評価は、質量吸光係数E0.1%である1.8を用いて、280nmにおけるそれらの測定値から推定された。
【0165】
表4はモノゼニックラットの盲腸の内容物からRumCを精製するためのプロトコールの工程における活性収率及び精製因子を示す。
【0166】
表4:10gのモノゼニックラットの盲腸からインビボにおいてRumCを精製するときの活性収率及び精製因子
【0167】
【表4】

【0168】
1.10.ペプチド配列の決定
2重ピーク分画及び単一ピーク分画における生成物の分子量は異なるが、エドマン法により、AGXIXSGSVAV(配列番号3)である単一の主要なN末端配列を決めることが可能である。
【0169】
関連する2つの分画において、AGPAYXVGYXGNNGAVT(配列番号2)である17残基の主要でない配列も明らかにされた。
【0170】
2.無作為の変異誘導による変異株の作製
用いられた技術は、R.gnavus L14菌株の無作為の変異誘導であった。この菌株は、インビトロでRumAを産生する能力を失ったが、インビボでRumCを合成できるR.gnavus E1の自然発生的な変異体である。この菌株は、強力なアルキル化剤であるN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NG)処理を受けた。
【0171】
同一のL14菌株培養液を分割したそれぞれに、NGの濃度を増やしていくように処理した(0μg/mL〜1000μg/mL)。処理後に、種々の細胞懸濁液を懸濁し、培養シャーレに播いた。培養後に、コロニーを数えることにより、細胞懸濁液中の生細胞の濃度を推定することができた。
【0172】
対照濃度(NG処理をしていないチューブ1)と比較することにより、それぞれの処理における死亡率が決定できた。NGによる処理が効果的であったと思える。死亡率は50%〜99%であり、濃度と共に増大する。
【0173】
所望の変異体を見つけるために、種々の処理において生存したクローンから無作為に選択された約860のコロニーを、トリプシンが添加された寒天培地において2次培養し、その後に、それらに対し抗C.perfringens活性試験を行った。
【0174】
83クローンはトリプシンの存在下で寒天培地において、抗C.perfringens物質を産生できることを見いだした。
【0175】
これらのクローンのうち20クローンを、より厳密な特徴付けのために選択した。
【0176】
第1段階において、クローンに影響している変異に対して、PCRによりrumAの染色体組織を復元しないことを確認した。
【0177】
その後に、選択された20クローンに対して、トリプシンの存在下又は非存在下で寒天培地及び液体培地において、抗Clostridium perfringens活性試験を行った。
【0178】
トリプシンを添加した寒天培地において、試験した20クローンのうちの7つの周囲に成長抑制によるハローが認められた。
【0179】
その一方で、トリプシンを添加していない寒天培地において、抗C.perfringens物質を産生したクローンは無かった。従って、トリプシンはバクテリオシンの合成において常に重要である。トリプシンを含んでいる液体培地において培養されたクローンは、抗C.perfringens物質を産生しない。
【0180】
3.変異株を用いる精製
産生及び精製試験は、産生能を有する7つのクローンのうちの1つのクローンである変異体9−17に対して行った。
【0181】
その試験を種々の細胞濃度及びトリプシン濃度を含む軟寒天培地において行った。変異体の培養の後に、その寒天培地を細かく砕き、上清(SN9−17)を回収するために遠心分離した。この上清をC.perfringensに対して試験し、活性を実証した。質量分析法による分析をこの活性上清に対して行った(図7A)。
【0182】
3.1.FPLC法を用いた陽イオン交換樹脂によるクロマトグラフィ
イオン交換クロマトグラフィを行う前に、検体を脱塩する必要がある。
【0183】
第1の試験は、AmiconによるSN9−17の脱塩が不十分であることを示した。従って、Sep-Pakによる検体の脱塩は、予備的な精製工程として考えられるべきである。
【0184】
Sep-Pakからのタンパク質の溶出は、40%アセトニトリル溶液を用いて行われる。Rotavaporによりアセトニトリルを蒸発させた後に、その溶液は、pH5の20mM酢酸ナトリウム緩衝液により希釈されることにより、pH5に平衡化される。65mLのSN9−17からpH5に平衡化された50mLの脱塩化SN9−17が得られ、これをカルボキシメチル−セファロース陽イオン交換カラムに吸着させる。
【0185】
0M〜0.4MのNaClの濃度勾配を40分間かけて変化させた。対照が280nmの吸収において変動させるとき、ほんのわずかなタンパク質が、0.2M〜0.3MのNaClを用いて溶出された分画に存在するにもかかわらず、抗C.perfringens活性は、この分画において認められた。(図6)。盲腸の内容物からRumCを精製する間に、それはすでに見られた。活性分画を蓄積した後に、Sep-Pakにより脱塩及び濃縮を行った。この分画(活性CM分画)に対する質量分析法により、陽イオン交換クロマトグラフィによってなされた精製において実質的に得られたものを確認し、2500Da未満の分子量を有する全ての混入物を示す(図7B)。
【0186】
3.2.CM分画の分子ふるい
活性CM分画の分子ふるいは、10kDa未満の質量を有するペプチドの分離ができるカラムを用いたFPLC法により行われた。溶出は280nmの吸光度の変動を検出することによりモニターされる。タンパク質の量は少なく、分離は不十分であることがわかる(図示せず)。それにもかかわらず、選択された分画において抗C.perfringens活性を試験した。吸着された活性の5%のみがふるいの後に認められた。従って、この技術を精製のために採用しなかった。その一方で、活性分画(GF47−50)は、質量分析法により分析され、4235Daのペプチドに対して実質的に純粋であることが証明された(図8)。
【0187】
3.3.CM分画のろ過
活性CM分画から混入物を除去する他の試みは、ろ過装置を用いて行われた。RumCは5kDaフィルターにより(わずかに小さな分子量を有するにもかかわらず)保持されるため、第1の試験を、分離限界が5kDaであるVivaspin 500を用いて行った。残念ながら、不純物もそのフィルターに保持される。但し、それらの分子量は2.5kDa未満である。具体的に、質量分析法において、精製により得られたいかなるものも認められなかった(結果は示さず)。従って。第2の試験を、分離限界が10kDaであるMicroconろ過装置を用いて試みた。具体的に、その分子量にもかかわらず、RumCが10kDaフィルターにより保持される(10kDa R分画)ことが以前に述べられていた。質量分析法は以前の結果を確認し、混入物の多くの割合が保持されない分画において除去されることを可能とする(図7C)。
【0188】
3.4.10kDa R分画のHPLC法による逆相クロマトグラフィ
3つのRumCのピーク(4235Da、4324Da及び4456Da)を含む10kDa R分画を逆相クロマトグラフィにかけた。流速及び勾配の条件は、盲腸の内容物からRumCを精製するための条件と同一であり、得られた結果は同等である。2つの異なる分画は、C.perfringensに対する活性がある2重ピーク分画及び単一ピーク分画である。
【0189】
3.5.精製収率及び精製因子
精製プロトコールを評価するために、定量的活性試験をそれぞれの活性分画の2倍の系列希釈液を用いて行った。それぞれの分画に含まれる任意活性単位(AAU)の数値を算出し、精製収率が推定した(表5)。活性物質の相当な損失は、培養上清の脱塩の工程において見られ、陽イオン交換クロマトグラフィの後に、さらなる脱塩工程が続く。その損失は、陽イオン交換クロマトグラフィにおいて起こるおそれは十分にありそうだが、これはプロトコールの正当性における疑いを認めない。
【0190】
表5:変異体9−17の培養上清からのRumCの精製における収率
【0191】
【表5】

【0192】
精製プロトコールを評価するための他の重要な判断基準は、それぞれの工程により設けられている精製において得られたものの実証である。精製因子は、それぞれの工程における特異的活性(タンパク質のAAU/mg)を比較することにより決定される。しかし、これを行うためには、それぞれの分画に含まれるタンパク質の質量を測定しなければならない。精製モニタリングは、感度が理由で質量分析法により行われ、あまりにも多くの生体材料の消費を避けることを可能とした。この方法は定量的でないが、精製されたものは非常に明らかに示された。
【0193】
3.6.質量分析法
2重ピーク及び単一ピークの分画を質量分析法により分析した。得られた結果は、盲腸の内容物を用いる精製から得られた分画を用いて得られた結果と同一である。2重ピーク分画は、4324Da及び4456Daのペプチドを含むが、単一ピーク分画は、4235Daのペプチドを含む。
【0194】
3.7.配列決定
これらの分画に対して配列決定を行った。
【0195】
単一ピーク分画において、得られた配列は、すでに決定された配列であるAGXIXSGSVAV(配列番号3)と同一である。主要でない配列は、AGPAY(配列番号11)として第5のサイクルに現れる。
【0196】
2重ピーク分画に関しては、AGXVXSGSTAV(配列番号12)でありわずかに異なる。主要でない配列は、AGPAY(配列番号11)であり同一である。
【0197】
変異株からのRumCの精製を要約した模式図を図9に示している。
【0198】
精製されたRumCの生産は、非常に単純化されている。
【0199】
4.RumCペプチドの特徴付け
4.1.異なる菌株に関する抗菌活性
RumCの抗菌活性について、R.gnavus E1(SN CCE1)菌株を宿すモノゼニックラットの盲腸の内容物の上清を濃縮した第1段階を用いて、異なるグラム陽性病原菌株及びグラム陰性病原菌株に対して試験した。他の試験として、SN CCE1に感受性のある菌株に対して、2つの精製された分画を用いて行った。その結果は表6に示す。
【0200】
表6:異なる病原菌株に対するRumCの活性試験の結果
【0201】
【表6】

【0202】
試験された全てのClostridium perfringens菌株は、RumCペプチドに感受性がある。
【0203】
4.2.C.perfringensに対する抗菌力
RumCの抗菌力について、精製されたRumC分画のそれぞれの最低阻害濃度をインビボで測定すること、及びC.perfringensに対して用いられる対照抗生物質であるメトロニダゾールの最小阻害濃度と比較することにより評価した。
【0204】
これを行うために、2重ピーク及び単一ピークの分画の2倍系列希釈液を調製した(1/512希釈まで)。これらの種々の希釈液及び異なる濃度のメトロニダゾール溶液を用いて、抗C.perfringens活性試験を行った(結果は示さず)。この試験において、メトロニダゾールの最小阻害濃度は25μg/mLである。この結果は、以前にDabard等により得られた結果(Dabard等.,Appl.Environ.Microbiol.,67,4111-4118,2001)と一致している。
【0205】
2重ピーク及び単一ピークの分画に関して、濃縮溶液(希釈液1)のみは活性である。これらの溶液の濃度は正確に分かっていないが、エドマン法により約40μg/mLと推定できる。
【0206】
C.perfringensに対するRumCの抗菌力は、メトロニダゾールの抗菌力と同等であると考えられる。
【0207】
4.3.温度耐性
熱に対するRumCの耐性についての第1の予備試験を、同一のペプチド量を異なる温度で15分間置くことにより行った。インビボの2つのRumC分画(2重ピーク及び単一ピーク分画)において、75℃で15分間の処理は活性に影響はなかった。しかしながら、100℃では、ペプチドは15分以内に完全に不活性化される。
【0208】
9−17株の培養上清から精製されたRumC検体を用いて、これらの試験を完了した。種々の温度における保温時間を5分とした。100℃における保温時間を15分とした。
【0209】
試験した第1の温度を80℃とした。3つのペプチドを含む精製された分画である活性CM分画を用いて、第1の試験を行った。
【0210】
2重ピーク及び単一ピーク分画と対照的に、活性CM分画は100℃で15分間の処理に耐える。
【0211】
その後に、GF47−50分画について試験した。4235Daのペプチドのみを含むこの純粋な分画は、100℃で15分間の処理に影響を受ける。また、それは、90℃で5分間の処理にも影響を受ける(表7)。
【0212】
表7:温度耐性試験の要約表
【0213】
【表7】

【0214】
4.4.pH耐性
活性CM分画に含まれているペプチドのpH耐性を、pH2、pH4.4及びpH7において試験した。
【0215】
pH2において見られた活性は、pH7において見られた活性と同等である。4℃で24時間置いた後に、pH2において活性の損失は見られない。
【0216】
従って、本発明のペプチドは、酸性pHに対する耐性を有し、特に動物の栄養又は薬物の分野において用いるのに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の配列のペプチド、
配列番号1のポリペプチドと少なくとも80%の相同性を有するペプチドを含んでいるペプチド、
配列番号2の配列のペプチド、
及び配列番号2のポリペプチドと少なくとも80%の相同性を有するペプチドを含んでいるペプチドのうちから選択されるペプチドを含んでいることを特徴とする抗菌活性を有するペプチド。
【請求項2】
配列番号3の配列のペプチドをさらに含んでいる請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
配列番号4、配列番号5又は配列番号6の配列のペプチドから選択されるペプチドをさらに含んでいる請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
質量分析法により測定された分子量が4000Daから4600Daまでである請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項5】
Ruminococcus gnavus変異株から単離された請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項6】
2006年12月19日にCNCM I−3705番として、CNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25 rue du Docteur Roux, F-75015 Paris)に寄託されたRuminococcus gnavus菌株から単離された請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
配列番号7、配列番号8又は配列番号9の配列のポリヌクレオチド、
配列番号7、配列番号8又は配列番号9の配列のポリヌクレオチドとハイブリッド形成するポリヌクレオチド、
及び請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドのうちから選択されるポリヌクレオチドを含んでいることを特徴とする抗菌活性をコードしているポリヌクレオチド。
【請求項8】
転写方向に、
宿主生物において機能するプロモータ、
請求項7に記載のポリヌクレオチド、
及び前記宿主生物におけるターミネータ配列を含んでいることを特徴とする発現カセット。
【請求項9】
請求項7に記載のポリヌクレオチド及び/又は請求項8に記載の発現カセットを含んでいるベクター。
【請求項10】
請求項7に記載のポリヌクレオチド、請求項8に記載の発現カセット及び/又は請求項9に記載のベクターを用いて形質転換された宿主生物。
【請求項11】
2006年12月19日にCNCM I−3705番として、CNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25 rue du Docteur Roux, F-75015 Paris)に寄託されたRuminococcus gnavus菌株。
【請求項12】
請求項10に記載の宿主生物又は請求項11に記載の菌株によって得られるタンパク質混合物又は発酵マスト。
【請求項13】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載のペプチド、請求項10に記載の宿主生物、請求項11に記載の菌株、請求項10に記載の宿主生物の発酵マスト又は請求項11に記載の菌株の発酵マストを含んでいる組成物。
【請求項14】
液体状又は粉末状である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載のペプチド、請求項10に記載の宿主生物、請求項11に記載の菌株、請求項10に記載の宿主生物の発酵マスト又は請求項11に記載の菌株の発酵マストを含んでいる栄養性添加物。
【請求項16】
液体状又は粉末状である請求項15に記載の栄養性添加物。
【請求項17】
動物のための栄養基礎成分及び請求項15又は16に記載の栄養性添加物を含んでいることを特徴とする飼料。
【請求項18】
薬物、栄養性添加物又は飼料の製造のための、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載のペプチド、請求項10に記載の宿主生物、請求項11に記載の菌株、請求項10に記載の宿主生物の発酵マスト又は請求項11に記載の菌株の発酵マストの用途。
【請求項19】
ブタ又は家禽の壊死性腸炎の予防又は治療を目的とする薬物又は栄養性添加物の製造のための請求項18に記載の用途。
【請求項20】
ヒトの消化器疾患の予防又は治療を目的とする薬物又は栄養性添加物の製造のための請求項18に記載の用途。
【請求項21】
動物に処理するための請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載のペプチドの非治療的用途。
【請求項22】
前記ペプチドは、前記動物に内在的な菌株又は前記動物に外因的な菌株から得られる請求項21に記載の用途。
【請求項23】
前記ペプチドは前記動物に内在的な菌株から得られ、前記動物に内在的な菌株による前記ペプチドの産生は促進される請求項21に記載の用途。
【請求項24】
前記ペプチドは前記動物に内在的な菌株から得られ、前記動物に内在的な菌株の成長は促進される請求項21に記載の用途。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−527625(P2010−527625A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509860(P2010−509860)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000683
【国際公開番号】WO2008/152252
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(507200961)アディッソ・フランス・エス.エー.エス. (12)
【氏名又は名称原語表記】ADISSEO FRANCE S.A.S.
【Fターム(参考)】