説明

抗菌組成物

【課題】抗菌活性が長期にわたって維持され、人体にも安全な抗菌組成物を提供する。
【解決手段】メチルグリオキサール(MGO)またはMGOを含む素材とシクロデキストリン(CD)とを混ぜ合わせ、粉末化することで、マヌカハニーまたはMGOまたはMGOを含む素材本来の抗菌活性が維持され、または高められた抗菌組成物の提供を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌組成物に関する。特に、メチルグリオキサール(以下、MGOとする)とシクロデキストリン(以下、CDとする)とを含む抗菌組成物、MGOを含む素材とCDとを含む抗菌組成物に関する。さらには、MGOを含む素材としてマヌカハニーを含み、CDを含む抗菌組成物抗菌組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マヌカハニーはニュージーランドの奥地に植生するマヌカの木の花の蜜を餌とするミツバチより得られる希少なハチミツであり、熱や光、胃酸、酵素等に比較的安定な抗菌成分を有する。そして、黄色ブドウ球菌、ヘリコバクターピロリ菌、大腸菌等に有効であることが確認されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
このマヌカハニーの抗菌成分は特定が難しく、長い間、Unique Manuka Factor(以下、UMFとする)として扱われていた。しかし、近年、この抗菌成分の主要因がMGOであることが明らかとなった(例えば、非特許文献2参照)。
MGOはその抗菌活性より、食品添加物や内服液に使用するための洗浄用水溶性剥離液や工業用殺菌剤等の有効成分の1つとして用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。また、乳製品、ビール、ワイン等の発酵食品に3〜11mg/kg、ローストコーヒーに23〜47mg/kg程度含まれることが知られているが、特にマヌカハニーにおいて、38〜761mg/kgと高濃度で含まれていることが確認されている。
【0004】
従って、マヌカハニーを摂取し、この高い抗菌活性を利用することによって、黄色ブドウ球菌を原因菌とする皮膚感染症や、ヘリコバクターピロリ菌を原因菌とする十二指腸潰瘍、胃潰瘍、胃癌等の疾病の治療等に役立てることが期待されている。しかし、マヌカハニーは飲食品として摂取されており、その抗菌活性を生かすにはこまめな摂取が必要であった。そのためマヌカハニーの抗菌活性を利用しつつ、かつ、抗菌活性を持続的に維持できる物質の提供が望まれていた。
【非特許文献1】J. Roy. Soc. Med. 1994;87:9−12
【非特許文献2】Mol. Nutr. Food Res. 2008 Apr;52(4):483−489
【特許文献1】特開2008−7408号公報
【特許文献2】特開平8−239693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はMGOとCDとを含む抗菌組成物、MGOを含む素材とCDとを含む抗菌組成物の提供を課題とする。さらにはMGOを含む素材としてマヌカハニーを含み、CDを含む抗菌組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、MGOを含む素材とCDとを混ぜ合わせ、粉末化することで、MGOを含む素材本来の抗菌活性が維持され、または高められた抗菌組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は次の(1)〜(9)に記載の抗菌組成物等に関する。
(1)MGOとCDとを含む抗菌組成物。
(2)MGOを含む素材とCDとを含む抗菌組成物。
(3)MGOを含む素材がマヌカハニーである上記(2)に記載の抗菌組成物。
(4)CDがαCDおよび/またはγCDである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の抗菌組成物。
(5)CDが化学修飾CDである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の抗菌組成物。
(6)マヌカハニーの含有量が、抗菌組成物あたり10.0〜99.0%(w/w)である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の抗菌組成物。
(7)メチルグリオキサール(MGO)の含有量が、抗菌組成物あたり0.006%〜0.079%(w/w)である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の抗菌組成物。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の抗菌組成物を含む飲食品。
(9)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の抗菌組成物を含む医薬品。
(10)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の抗菌組成物を含む医薬用品。
(11)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の抗菌組成物を含む工業用品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の抗菌組成物はMGOまたはMGOを含む素材本来の抗菌活性が維持され、または高められている。従って、人体に安全な物質からなる抗菌組成物であれば、抗菌活性の高い飲食品や医薬品の製造等に利用できる。これらの飲食品や医薬品は、MGOまたはMGOを含む素材本来の抗菌活性が長期にわたって持続的に維持されていることから、摂取回数が少なくてすみ、しかも高い効果が期待できる。また、工業的に利用可能な物質からなる抗菌組成物であれば、工業用の冷却水や洗浄水等の工業用品の製造等にも利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の「抗菌組成物」は、MGOとCDとを含む抗菌組成物、MGOを含む素材とCDとを含む抗菌組成物であればいずれのものも含まれるが、特にMGOやMGOを含む素材本来の抗菌活性をそのまま維持し、またはさらに高められた抗菌組成物であることが望ましい。本発明の「抗菌組成物」には、さらに、目的に応じて一般的に知られている他の抗菌物質等を組み合わせることもできる。
【0010】
本発明の「抗菌組成物」に含まれるMGO、MGOを含む素材は、市販のものや、独自に採取したもの等のいずれのものも用いることができる。例えば、MGOであれば、メチルグリオキサール(水溶液)(ナカライテスク株式会社)等が挙げられる。MGOを含む素材としては、乳製品、ビール、ワイン等の発酵食品、ローストコーヒー、マヌカハニー等が挙げられる。これらのうち、MGOを600μg/g〜800μg/g含むマヌカハニー MGO550(株式会社コサナ)や、マヌカハニーとデキストリンの50%(w/w)混合パウダーであるMGOハニーパウダー(マヌカヘルス社)等を用いることが好ましい。
【0011】
本発明の「抗菌組成物」に含まれるCDは、市販のものや、独自に製造したもの等のいずれのものも用いることができる。
飲食品や医薬品等の製造を目的とする抗菌組成物においては、人体に安全なCDである、αCDやγCDを用いることが好ましく、αCDとγCDを組合せて用いることもできる。αCDを用いた場合は抗菌活性を特に高めることができる。また、γCDを用いた場合はαCDほど抗菌活性を高めることはできないが、マヌカハニーの甘味が維持される傾向が強く、甘味を重視した飲食品の製造に有用である。
また、工業用の冷却水や洗浄水等の工業用品等の製造を目的とする抗菌組成物においては、化学修飾CDを用いることもできる。 これらのCDは、市販のものや、独自に調整したCD等のいずれものも用いることができるが、例えば、αCDとしてCAVAMAX W6 Food(株式会社シクロケム)、γCDとしてCAVAMAX W8 Food(株式会社シクロケム)等を用いることが好ましい。
【0012】
本発明の「抗菌組成物」には、1)MGOまたはMGOを含む素材等とCDとを混ぜ合わせた後、水等を加えてホモジナイズして、噴霧乾燥等で粉末化させたものが含まれる。
また、本発明の「抗菌組成物」には抗菌組成物溶液も含まれる。このような抗菌組成物溶液としては、例えば、2)MGOまたはMGOを含む素材等とCDとを混ぜ合わせて水や培地等に溶かしたもの、3)MGOまたはMGOを含む素材等とCDとをそれぞれ水や培地等に加えて混ぜ合わせたもの、さらに4)1)の粉末化させた抗菌組成物と、さらにCDやMGOとを水や培地等に加えて混ぜ合わせたもの等が挙げられる。
上記1)の粉末化させた抗菌組成物は、上記2)〜4)のような抗菌組成物溶液に比べて抗菌活性が高く、また、抗菌活性が長期にわたって維持されることからより好ましい。
【0013】
本発明の「抗菌組成物」に含まれるMGOまたはMGOを含む素材とCDとの含有量は、期待する抗菌活性が発揮できる量であればいずれでもよいが、例えば、抗菌組成物に対してMGOであれば0.006〜0.079%(w/w)、MGOを含む素材(例えば、マヌカハニー等)であれば10.0〜99.0%(w/w)、CDであれば1.0〜90.0%(w/w)含まれることが好ましい。
また、これらを水や培地等に溶かしたり希釈したりして濃度を調製することもできる。例えば、下記の実施例で製造した抗菌組成物Aは、MGOを含む素材としてマヌカハニーを用いており、試験例においてこれを水等に溶かして濃度を調整している。そして、マヌカハニー7.14%(w/v)とαCD8.7%(w/v)とを含むように、黄色ブドウ球菌の培地に添加したものは、培養時間96時間経過後でも黄色ブドウ球菌等の菌の増殖が見られない、非常に好ましい濃度に調製されたものといえる。
また、同抗菌組成物Bにおいても、MGOを含む素材としてマヌカハニーを用いており、試験例においてこれを水等に溶かして濃度を調製している。そして、マヌカハニー3.27%(w/v)とγCD4.0%(w/v)とを含むように、黄色ブドウ球菌の培地に添加したものは、マヌカハニーのみを3.27%(w/v)含むように添加したものと比べて黄色ブドウ球菌の増殖が抑えられたことから、好ましい濃度に調製されたものといえる。
【0014】
本発明の「抗菌組成物を含む飲食品」としては、一般の食品、健康食品等が挙げられる。本発明の抗菌組成物は、マヌカハニーの甘味が維持されているため、ハチミツと同様に、そのまま直接舐めるか粉末として摂取しても良く、パン、クラッカーなどに塗ったり、ヨーグルト等に混合したりして摂取することができる。またケーキ、ビスケット、クッキー、チョコレート、ドロップ等の飴類またはガム等の原料として利用することもできる。
さらに、本発明の抗菌組成物を、抗菌活性を有する甘味料として、ミルク、紅茶、コーヒー、ココア等に混合したり、果汁飲料類またはスポーツ飲料等の原料として使用したりすることもできる。
【0015】
本発明の「抗菌組成物を含む医薬品」としては、黄色ブドウ球菌を原因菌とする皮膚感染症や、ヘリコバクターピロリ菌を原因菌とする十二指腸潰瘍、胃潰瘍、胃癌等の予防または治療のための医薬品が挙げられる。本発明の「医薬品」は、人体に安全な抗菌組成物を含むものであれば、経口投与または経皮投与できる。また、本発明の「抗菌組成物を含む医療用品」としては、医療機器や施設の殺菌、消毒剤等が挙げられる。
【0016】
本発明の「抗菌組成物を含む工業用品」としては、例えば、製紙工業における白水、各種工業用の冷却水や洗浄水、重油スラッジ、金属加工油、繊維油剤、ペイント、紙用塗工液、ラテックス、糊剤等が挙げられ、これらはスライム防除及び殺菌に使用できる。
以下、本発明の詳細を実施例等で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
<抗菌組成物の製造>
1.試料
1)マヌカハニー:マヌカハニー MGO550(株式会社コサナ)
2)MGOハニーパウダー(マヌカヘルス社)
3)αCD:CAVAMAX W6 Food(株式会社シクロケム)
4)γCD:CAVAMAX W8 Food(株式会社シクロケム)
【0018】
2.抗菌組成物の製造方法
<マヌカハニーを含む抗菌組成物>
1)抗菌組成物A
マヌカハニーが45.0%(w/w)、αCDが55.0%(w/w)となるように混ぜ合わせ、粉末化した抗菌組成物を調製した。即ち、マヌカハニー60.0gを入れた1LビーカーにαCD61.3gを加え、これに水を128.7ml加えて6,000rpmで5分間ホモジナイズした。その後、固形分が20.0%(w/w)になるように水を加えた後、噴霧乾燥機(東京理化器械株式会社)によって160℃で固形分20.0%(w/w)として噴霧乾燥を行うことで、粉末化させた抗菌組成物Aを製造した。
2)抗菌組成物B
マヌカハニーが45.0%(w/w)、γCDが55.0%(w/w)となるように混ぜ合わせ、上記抗菌組成物Aと同様の方法によって、粉末化させた抗菌組成物Bを製造した。
3)抗菌組成物溶液C
14.5454gの抗菌組成物Aに加え、8gのαCDを水に溶かし、全体を100mLとすることで、抗菌組成物溶液Cを製造した。抗菌組成物溶液Cに含まれるマヌカハニーは抗菌組成物A由来のもののみで6.55%(w/v)であり、αCDは抗菌組成物A由来のもので8.0%(w/v)、別途加えたものが8.0%(w/v)であった。
4)抗菌組成物溶液D
14.5454gの抗菌組成物Aに加え、6.54gのマヌカハニーを水に溶かし、全体を100mLとすることで、抗菌組成物溶液Dを製造した。抗菌組成物溶液Dに含まれるαCDは抗菌組成物A由来のもののみで8.0%(w/v)であり、マヌカハニーは抗菌組成物A由来のものが6.55%(w/v)、別途溶かしたものが6.55%(w/v)であった。
5)抗菌組成物溶液E
14.29gのマヌカハニーと17.4gのαCDを水に溶かし、全体を100mLとすることで抗菌組成物溶液Eを製造した。抗菌組成物溶液Fに含まれるマヌカハニーは14.29%(w/v)、αCDが17.4%(w/v)であった。
6)抗菌組成物溶液F
14.29gのMGOハニーパウダーと17.4gのαCDを水に溶かし、全体を100mLとすることで抗菌組成物溶液Fを製造した。抗菌組成物溶液Fに含まれるマヌカハニーは14.29%(w/v)、αCDが17.4%(w/v)であった。
【0019】
抗菌組成物の抗菌活性の測定
[試験例]
1.試薬
1)ハートインフュジョン・ブイヨン培地(栄研化学株式会社)
2)黄色ブドウ球菌(methicillin−sensitive Staphylococcus aureus:MSSA) IFO12732株(神戸学院大学より譲渡)をハートインフュジョン・ブイヨン培地(100mL中、ウシ心臓浸出液50g、ペプトン1g、塩化ナトリウム0.5g)で37℃・約15時間振倒培養し、OD約0.7まで前培養した。この菌液を25倍希釈して測定に用いた。
【0020】
3)試料
実施例で製造した抗菌組成物A、Bを用い、それぞれ29.09%(w/v)(マヌカハニー13.1%(w/v)、αCD15.9%(w/v))となるように100mLの水に溶かし、0.45μmフィルターでろ過滅菌後、2倍、4倍、8倍希釈したものを、2倍希釈となるように培地に添加した。添加後培地に含まれるマヌカハニーおよびαCDまたはγCDの濃度を以下に示した。
2倍希釈したもの:マヌカハニー3.27%(w/v)、αCDまたはγCD4.0%(w/v)、4倍希釈したもの:マヌカハニー1.64%(w/v)、αCDまたはγCD2.0%(w/v)、8倍希釈したもの:マヌカハニーは0.82%(w/v)、αCDまたはγCDは1.0%(w/v)。
また、抗菌組成物Aについては、マヌカハニー7.14%(w/v)、αCD8.7%(w/v)を含むように、実施例で製造した抗菌組成物Aを31.75%(w/v)となる様に水に溶かし、0.45μmフィルターでろ過滅菌後、2倍希釈となるように培地に添加したものも用いた。
抗菌組成物溶液C,D,E,Fは0.45μmフィルターでろ過滅菌後、2倍希釈となるように培地に添加して用いた。
【0021】
4)比較試料
a.マヌカハニー水溶液
マヌカハニー MGO550(株式会社コサナ)を水で溶かし、14.29%(w/v)のマヌカハニー水溶液を調製した。
b.CD水溶液
CAVAMAX W6 FoodまたはCAVAMAX W8 Foodを水で溶かし、8%(W/V)のCD水溶液を調製した。
c.MGOハニーパウダー水溶液
MGOハニーパウダー(マヌカヘルス社)を水で溶かし、14.29%(w/v)のMGOハニーパウダー水溶液を調製した。
a.〜c.をそれぞれ0.45μmフィルターでろ過滅菌後、2倍希釈となるように培地に添加して比較試料として用いた。
【0022】
2.抗菌活性測定方法
ハートインフュジョン・ブイヨン培地5gと水100mLを入れた200mL三角フラスコを120℃で20分間オートクレーブによって滅菌した。この滅菌培地2mlに、上記で調整した試料または比較試料をそれぞれ2ml追加した。コントロールはマヌカハニー水溶液の代わりに蒸留水を2mL加えた。
上記で調製した25倍希釈菌液50μLを試験管ごとに添加した後、37℃で振とう培養した。培養時間ごとに吸光度(610nm)を測定し、菌数の変化を調べた。
【0023】
3.結果
1)図1において、マヌカハニー7.14%(w/v)とαCD8.7%(w/v)またはマヌカハニー3.27%(w/v)とαCD4.0%(w/v)とを含む抗菌組成物AはαCDまたはマヌカハニーのみよりも高い抗菌活性を示した。また、マヌカハニー1.64%(w/v)とαCD2.0%(w/v)またはマヌカハニー0.82%(w/v)とαCD2.0%(w/v)とを含む抗菌組成物Aはマヌカハニーのみのものよりもマヌカハニーを含んでいる量が少ないにもかかわらず、マヌカハニーのみのものと同等の抗菌活性を保持していることが示された。
【0024】
2)図2において、マヌカハニー7.14%(w/v)とαCD8.7%(w/v)とを含む抗菌組成物Aは高い抗菌活性が100時間近く保持されることが示された、また、マヌカハニー3.27%(w/v)とαCD4.0%(w/v)とを含む抗菌組成物Aはマヌカハニーよりも抗菌活性の保持時間が長いことが示された。
これら図1、2に示された結果より、マヌカハニーとαCDを混ぜ合わせた抗菌組成物Aは同じ濃度のマヌカハニーのみのものと比較して高い抗菌活性を有し、マヌカハニーのみのものに含まれるマヌカハニーの濃度よりも低い濃度のマヌカハニーを含む抗菌組成物Aであっても,同等の抗菌活性が保持されることが示された。
【0025】
3)図3において、マヌカハニー3.27%(w/v)、γCD4.0%(w/v)を含む抗菌組成物Bは、マヌカハニーのみよりも比べて高い抗菌活性を示した。また、マヌカハニー1.64%(w/v)とγCD2.0%(w/v)またはマヌカハニー0.82%(w/v)とγCD2.0%(w/v)とを含む抗菌組成物Bはマヌカハニーのみのものよりもマヌカハニーを含んでいる量が少ないにもかかわらず、マヌカハニーのみのものと同等の抗菌活性を保持していることが示された。
従って、図3に示された結果より、マヌカハニーとγCDを混ぜ合わせた抗菌組成物Bは濃度依存的に抗菌活性を有していることが示された。
【0026】
4)図4において、マヌカハニー7.14%(w/v)とαCD8.7%(w/v)とを含む抗菌組成物Aと、同じ濃度のマヌカハニーおよびαCDを含む抗菌組成物溶液Eは高い抗菌活性を有することが示された。しかし、28時間以上の経過に伴い、抗菌組成物溶液Eの抗菌活性が低下することから、事前に粉末化した抗菌組成物Aの方がより持続性があり、高い抗菌活性を有することが示された。
またMGOハニーパウダー7.14%(w/v)とαCD8.7%(w/v)とを含む抗菌組成物溶液Fも、同じ濃度のマヌカハニーおよびαCDを含む抗菌組成物Aよりは抗菌活性が下がるものの、高い抗菌活性を有していることが示された。
【0027】
5)図5において、マヌカハニー7.14%(w/v)とαCD8.7%(w/v)とを含む抗菌組成物Aは60時間近くも高い抗菌活性を有していることが示された。また、抗菌組成物Aと同様に製造したものに、さらにαCDを加えた抗菌組成物溶液Cも、さらにマヌカハニーを混合した抗菌組成物溶液Dも高い抗菌活性を示すことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のMGOまたはMGOを含む素材本来の抗菌活性が維持され、または高められている抗菌組成物を用いることにより、抗菌活性の高い飲食品や医薬品、工業用品等が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】抗菌組成物Aの黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を示した図である(試験例)。
【図2】抗菌組成物Aの黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を示した図である(試験例)。
【図3】抗菌組成物Bの黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を示した図である(試験例)。
【図4】抗菌組成物A,抗菌組成物溶液E,Fの黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を示した図である(試験例)。
【図5】抗菌組成物A,抗菌組成物溶液C,Dの黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を示した図である(試験例)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルグリオキサール(MGO)とシクロデキストリン(CD)とを含む抗菌組成物。
【請求項2】
メチルグリオキサール(MGO)を含む素材とシクロデキストリン(CD)とを含む抗菌組成物。
【請求項3】
メチルグリオキサール(MGO)を含む素材がマヌカハニーである請求項2に記載の抗菌組成物。
【請求項4】
シクロデキストリン(CD)がαシクロデキストリン(αCD)および/またはγシクロデキストリン(γCD)である請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項5】
シクロデキストリン(CD)が化学修飾シクロデキストリン(CD)である請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項6】
マヌカハニーの含有量が、抗菌組成物あたり10.0〜99.0%(w/w)である請求項1〜5のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項7】
メチルグリオキサール(MGO)の含有量が、抗菌組成物あたり0.006%〜0.079%(w/w)である請求項1〜6のいずれかに記載の抗菌組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の抗菌組成物を含む飲食品。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の抗菌組成物を含む医薬品。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の抗菌組成物を含む医薬用品。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の抗菌組成物を含む工業用品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−95454(P2010−95454A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265342(P2008−265342)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(503065302)株式会社シクロケム (22)
【Fターム(参考)】