説明

抗血管新生性ポリペプチド及び血管新生を抑制するための方法

【課題】癌、関節炎、黄斑変性、糖尿病性網膜症、原発性及び転移性固形腫瘍、がん腫、肉腫、リンパ腫、乾癬、及び血管腫などの血管新生性疾患を抑制するための組成物を提供する。
【解決手段】mPEG−SLLPD−K5又はmPEG−SEED−K5から成る複合クリングルペプチドフラグメントを含む組成物。(ただし、mPEG−SLLPD−K5は、特定の450−543のアミノ酸配列を含むペプチドであって、メトキシポリエチレングリコール及びセリンを該アミノ酸配列のN末端に結合させた前記ペプチドであり、mPEG−SEED−K5は、特定の458−543のアミノ酸配列を含むペプチドであって、メトキシポリエチレングリコールを該アミノ酸配列のN末端に結合させた前記ペプチドである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の交叉参照)
本出願は、参照してここに組み込まれる、2000年9月29日に出願された米国特許仮出願通し番号第60/236,550号の優先権を主張する。
【0002】
本発明はペプチド化学の分野に関する。より詳細には、本発明は、哺乳類プラスミノーゲンの対応する配列と実質的に類似するアミノ酸配列を含む複合ペプチドの調製と使用、該ペプチドを含む医薬組成物、及び血管新生から生じる又は血管新生によって増悪される疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
新しい血管が形成される過程である血管新生は、再生、成長及び創傷修復を含めた正常な身体活動にとって不可欠である。その過程は完全には理解されていないが、内皮細胞(毛細血管の一次細胞)の増殖を調節する分子の複雑な相互作用に関わると考えられている。正常条件下では、これらの分子は、数週間又は一部の場合には数十年間続くこともある長期間にわたって、微小血管系を静止状態(すなわち毛細管の増殖がない状態)に保持すると思われる。必要なときには(創傷修復の際など)、これらの同じ細胞が5日間以内に速やかな増殖と代謝回転を受けると考えられる(Folkman,J.とShing,Y.,The Journal of Biological Chemistry、267(16)、10931−10934、及びFolkman,J.とKlagsbrun,M.,Science、235、442−447(1987))。
【0004】
正常条件下では血管新生は高度に調節されたプロセスであるが、多くの疾患(血管新生性疾患として特徴付けられる)が持続的な正しく調節されない血管新生によって促進される。特に異なる記載がない限り、正しく調節されない血管新生は、直接特定疾患を引き起こしうるか又は既存の病的状態を増悪させうる。例えば、眼の新生血管形成は失明の最も一般的な原因として関係付けられており、約20の眼疾患を支配する。関節炎のようなある種の既存状態においては、新たに形成された毛細血管が関節に侵入して軟骨を破壊する。糖尿病では、網膜に形成された新しい毛細血管が硝子体に侵入し、出血を生じさせ、失明を引き起こす。固形腫瘍の増殖と転移も血管新生に依存する(Folkman,J.,Cancer Research,46、467−473(1986)、Folkman,J.,Journal of the National Cancer Institute,82、4−6(1989))。例えば,2mm以上に拡大する腫瘍はそれら自身の血液供給を得なければならず、新しい毛細血管の増殖を誘導することによって血液供給を確保する。ひとたびこれらの新しい血管が腫瘍内に取り込まれると、それらは、腫瘍細胞が循環に入り込み、肝臓、肺又は骨のような遠く離れた部位へと転移する手段を提供する(Weidner,N.ら、The New England Journal of Medicine,324(1):1−8(1991)。
【0005】
いくつかの血管新生抑制因子が、現在、血管新生性疾患を治療する際に使用するために開発されているが、これらの化合物に関連した難点が存在する。真菌Aspergillus fumigatis freseniusによって分泌される化合物、フマギリンは、血管新生抑制作用を示したが、長期暴露後に実験動物が呈した劇的な体重喪失により臨床開発は行われなかった。フマギリンの合成類似体、TNP−470も内皮細胞増殖を阻害するが、ヒトにおいて無力症及び神経皮質毒性を誘発することが明らかにされ、許容用量が制限された(J.Clin.Oncology 17、2541(1989))。
【0006】
現在までに、いくつかの血管新生因子、特にプラスミノーゲンのクリングルペプチドフラグメントが報告されている(例えば、その全体が参照してここに組み込まれる、米国特許第5,639,725号、米国特許第5,733,876号、米国特許第5,792,845号、米国特許第5,837,682号、米国特許第5,861,372号、米国特許第5,885,795号、米国特許第6,024,688号、米国特許第5,854,221号、米国特許第5,801,146号、米国特許第5,981,484号、米国特許第6,057,122号及び米国特許第5,972,896号参照)。これらのフラグメントの有望な抗血管新生作用にもかかわらず、それらの循環半減期は短い。それ故、改善された薬物動態作用を持つ、クリングルペプチドフラグメントのような抗血管新生性化合物がなお必要とされている。そのような化合物はまた、容易に且つコスト効果的に製造できなければならない。
【0007】
(発明の概要)
その原則実施形態において、本発明は、官能基化ポリマーに化学結合した官能基化クリングルペプチドフラグメントから成る複合クリングルペプチドフラグメントを開示する。好ましくは、官能基化クリングルペプチドフラグメントのN末端は、オキシム結合又は炭素−窒素単結合のいずれかを通して官能基化ポリマーに複合している。
【0008】
好ましい実施形態では、官能基化クリングルペプチドフラグメントは実質的に、プラスミノーゲンのクリングル1、プラスミノーゲンのクリングル5、プラスミノーゲンのクリングル4−5、及びプロトンビンのクリングル2から成る群より選択されるクリングルペプチドフラグメントから成る。好ましくは、クリングルペプチドフラグメントはプラスミノーゲンのクリングル5又はプラスミノーゲンのクリングル4−5である。最も好ましくは、クリングルペプチドフラグメントは、ヒト、マウス、ウシ、イヌ、ネコ、アカゲザル、及びブタプラスミノーゲンから成る群より選択されるプラスミノーゲンフラグメントに実質的な配列相同性を持つ、クリングル5ペプチドフラグメントである。
【0009】
もう1つの好ましい実施形態では、官能基化ポリマーは、基本的にポリアルキレングリコールであるポリマーから成る。好ましくは、ポリアルキレングリコールは、直鎖、分枝、二置換、又は非置換ポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコールホモポリマー、ポリプロピレングリコールホモポリマー、及びエチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマーから成る群より選択され、該ホモポリマー及びコポリマーは置換されていないか又は1つの末端においてアルキル基で置換されている。特に好ましいポリアルキレングリコールは、約5,000から約40,000までの分子量を持つポリエチレングリコール(PEG)及びメトキシポリエチレングリコール(mPEG)である。最も好ましくは、ポリアルキレングリコールは、約10,000から約20,000までの分子量を持つメトキシポリエチレングリコール(mPEG)である。
【0010】
もう1つの実施形態では、本発明は、治療上許容される担体と組み合わせて複合クリングルペプチドを含む医薬組成物を開示する。
【0011】
もう1つの実施形態では、本発明は、治療上有効な量の複合クリングルペプチドフラグメントをヒト又は動物に投与することを含む、抗血管新生治療を必要とする患者において疾患を治療する方法を開示する。好ましくは、疾患は、癌、関節炎、黄斑変性、及び糖尿病性網膜症から成る群より選択される。より好ましくは、疾患は癌であり、最も好ましくは、疾患は、原発性及び転移性固形腫瘍、癌、肉腫、リンパ腫、乾癬、及び血管腫から選択される。
【0012】
もう1つの実施形態では、本発明は、有効量の複合クリングルペプチドを個体に投与することを含む、該個体において内皮細胞増殖を抑制する方法を開示する。
【0013】
もう1つの実施形態では、本発明は、有効量の複合クリングルペプチドフラグメントを内皮細胞に投与することを含む、インビトロで内皮細胞増殖を抑制する方法を開示する。
【0014】
(発明の詳細な説明)
ここで使用するとき、単数形態の「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに命じない限り複数の指示を包含する。さらに、ここで言及されるすべての公表学術及び特許文献(特許出願を含む)は、その全体が参照してここに組み込まれる。
【0015】
ここで使用するとき、「K5」、「クリングル5」、「K1」、及び「クリングル1」はプラスミノーゲンのクリングル領域を指す。
【0016】
ここで使用するとき、「K2」はプロトロンビンのクリングル領域を指す。
【0017】
特に異なる記載がない限り、次の語は次のような意味を持つものとする:
「アシル基」の語は、カルボニル基を通して親分子部分に結合したC−C10アルキル基を意味する。
【0018】
「アシル化基(acylating group)」の語は、反応の経過においてアシル基を分子の窒素原子に供与することができる試薬を意味する。アシル化基の例は、無水酢酸、塩化アセチル、等を含む。
【0019】
「C−C10アルキル」の語は、直鎖又は分枝飽和炭化水素から1個の水素原子を除去することによって誘導される1から10個の炭素原子の一価の基を意味する。
【0020】
「C−C10アルキレン」の語は、直鎖又は分枝飽和炭化水素から誘導される1から10個の炭素原子の二価の基を意味する。
【0021】
「カルボニル基」の語は−C(O)−を意味する。
【0022】
「クリングルペプチドフラグメントの複合体」又は「複合クリングルペプチドフラグメント」の語は、官能基化ポリマーに化学結合した官能基化クリングルペプチドフラグメントを意味する。そのような複合体を作製する方法はこれまでに報告されている(例えば、WO96/41813号及びJ.Pharmaceut.Sci.87、1446−1449(1998)参照)。クリングルペプチドフラグメントの複合体の非制限的な例は、ポリエチレングリコールに結合したクリングル5ペプチドフラグメント、メトキシポリエチレングリコールに結合したクリングル5ペプチドフラグメント、メトキシポリエチレングリコールに結合したクリングル4−5ペプチド、等を含む。
【0023】
「官能基化クリングルペプチドフラグメント」の語は、反応基を含むように部位特異的に修飾された、ここで定義するようなクロマトグラフィーペプチドフラグメントを指す。官能基化クリングルペプチドフラグメントはまた、N末端に1個又はそれ以上の非天然アミノ酸を付加することによって修飾されたクリングルペプチドフラグメントを含むことが意図されている。付加アミノ酸は反応基として働くか、又は代替的にそれ自体が反応基を形成するように修飾されうる。例えば、アミノ酸450位からアミノ酸543位までの配列を持つクリングル5ペプチドフラグメントの450位のロイシン(Leu)残基のすぐ上流(すなわち直前)にセリン(Ser)を付加することができる。その後N末端のSer残基を、アルデヒドのような反応基を形成するように特異的に修飾することができる。N末端に1個又はそれ以上の非天然アミノ酸を持つクリングルペプチドフラグメントは、例えば組換えDNA法又は合成ペプチド化学のような、当該技術において既知の何らかの手段によって作製することができる。ポリペプチドを官能基化するための方法は当業者に既知である(例えばWO96/41813号及びJ.Pharmaceut.Sci.87、1446−1449(1998)参照)。
【0024】
「官能性又は官能基化ポリマー」の語は、ポリマーが官能基化クリングルペプチドフラグメントのような相補的官能基化標的に部位特異的に複合できるように、ここで定義するようなポリマー上のアミノ−オキシ基又はアルデヒドのいずれかの形成を意味する。例として、ポリマーを官能基化するための方法はまた、WO96/41813号及びJ.Pharmaceut.Sci.87、1446−1449(1998)においても提供される。
【0025】
「クリングル融合蛋白質」の語は、そのうちの1個がクリングルペプチドフラグメントである、2個又はそれ以上の個々のポリペプチドから導かれるアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。クリングル融合蛋白質は、クリングルペプチドフラグメントについてのコード配列が、2個(又はそれ以上の)リーディングフレームがインフレームであるように少なくとも1個の他のポリペプチドのコード配列と連結されているポリヌクレオチドの発現によって形成されうる。クリングル融合蛋白質の非制限的な例は、クリングル4−5(K4−5)のような2個又はそれ以上の個々のクリングルペプチドフラグメントの融合を含む。本発明のクリングル融合蛋白質の他の例は、生物学的標識に連結されている、単独の又はもう1つのポリペプチドに融合されたクリングルペプチドフラグメントを含む。そのようなクリングル融合蛋白質は、それらが由来する別々の蛋白質に開裂されうるか又は開裂されなくてもよい。
【0026】
「クリングルペプチドフラグメント」の語は、抗血管新生作用を持つプラスミノーゲン又はプロトロンビンのクリングル領域を指し、次の配列を含む:(a)プラスミノーゲンのクリングル1(K1)及びクリングル5(K5)のような個々のクリングルペプチド、(b)プロトロンビンのクリングル2(K2)のようなクリングルペプチド、(c)ここで定義するようなクリングル融合蛋白質、(d)(a)、(b)、又は(c)の配列に実質的な配列相同性を持つクリングルペプチド、及び(e)(a)、(b)、又は(c)で述べる配列に実質的な配列相同性を持つ(a)、(b)、又は(c)のペプチドセグメント。上述したクリングルペプチドフラグメント及び該フラグメントを作製し、使用するための方法は、特許資料(米国特許第5,639,725号、米国特許第5,733,876号、米国特許第5,792,845号、米国特許第5,837,682号、米国特許第5,861,372号、米国特許第5,885,795号、米国特許第6,024,688号、米国特許第5,854,221号、米国特許第5,801,146号、米国特許第5,981,484号、米国特許第6,057,122号及び米国特許第5,972,896号参照)ならびに学術文献において広汎に記述されている。好ましいクリングルペプチドフラグメントは、単独であるか、1個又はそれ以上のクリングルペプチドフラグメントと融合している、又はプラスミノーゲンの他のクリングル領域(例えばアンギオスタチン)及び/又はエンドスタチンのような抗血管新生因子と組み合わせて使用される、K5ペプチドフラグメントである。さらにもう1つの好ましいK5ペプチドフラグメントは、ここで述べるような、ヒトK5ペプチドフラグメントに実質的な配列相同性を持つものである。特に好ましいK5ペプチドフラグメントは、配列番号1のアミノ酸残基450から543及び配列番号1のアミノ酸残基458から543の配列を持つ。
【0027】
「ポリマー」の語は、反復非ペプチド構造単位から成る化学化合物を意味する。本発明の好ましいポリマーは水溶性である。最も好ましい水溶性ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)及びメトキシポリエチレングリコール(mPEG)である。
【0028】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「蛋白質」の語は、各々アミノ酸の分子鎖を指し、特定の鎖長を意味しない。この語はまた、ポリペプチド、ペプチド、及び蛋白質の発現後修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化等を指すことが意図されている。
【0029】
「精製ポリペプチド」の語は、目的とするポリペプチドが天然に結合している細胞成分を基本的に含まない、すなわち約50%未満、好ましくは約70%未満、より好ましくは約90%未満含む、目的とするポリペプチド又はそのフラグメントを意味する。ポリペプチドを精製するための方法は当該技術において既知である。
【0030】
「実質的な配列相同性」の語は、ヒト、マウス、ウシ、イヌ、ネコ、アカゲザル、又はサルプラスミノーゲンの対応するペプチド配列の約60%のアミノ酸同一性、望ましくは少なくとも約70%のアミノ酸同一性、より望ましくは少なくとも約80%のアミノ酸同一性、さらに一層望ましくは少なくとも約90%のアミノ酸同一性、最も望ましくは少なくとも約95%のアミノ酸同一性を意味する。ヒトプラスミノーゲンに実質的な配列相同性を持つ配列を「相同体」と称する。実質的な配列相同性を持つことに加えて、本発明の相同体は、ここで述べるクリングルペプチドフラグメントと同様の生物活性(すなわち抗血管新生作用)を示す。クリングルペプチドフラグメント内のアミノ酸配列又はアミノ酸の数は種によって又は生産方法によって異なることがあり、クリングルペプチドフラグメント内のアミノ酸の総数は、一部の場合、正確に定義することができない。これらの配列がそれらのアミノ酸の少なくとも73%において同一であると仮定すれば、クリングルペプチドフラグメントのアミノ酸配列が種間で実質的に同様であり、クリングルペプチドフラグメントの生産方法はヒトプラスミノーゲンの対応するアミノ酸配列に実質的な配列相同性を持つクリングルペプチドフラグメントを提供することは明白である。
【0031】
すべてのペプチド配列は一般的に認められている慣例に従って表記するものとし、α−N末端のアミノ酸残基は左側、α−C末端は右側である。ここで使用するとき、「α−N末端」の語はペプチド内のアミノ酸の遊離α−アミノ基を指し、「α−C末端」はペプチド内のアミノ酸の遊離α−アミノ酸カルボン酸末端を指す。
【0032】
本発明は、官能基化ポリマーに複合した官能基化クリングルペプチドフラグメントを含む、抗血管新生作用を備えた化合物を提供する。そのような複合体の形成により、それらは治療薬としてより適したものとなる。例えば、複合クリングルペプチドフラグメントの望ましい特性は、水溶液への高い溶解度、保存中の高い安定性、低い免疫原性、酵素分解に対する高い抵抗性、多様な薬剤投与システムとの適合性、及び長いインビボ半減期を含む。
【0033】
1つの実施形態では、本発明の官能基化ポリマーは次の式:
P−X−O−NH
[式中、Pはポリマー、好ましくは水溶性のポリマーを表わし、Xは任意に存在するスペーサー基を表わし、そして−O−NHはアミノ−オキシを表わす]
によって表わされる。ポリマーPは様々な量の多数の反復単位を含むので、Pの分子量が大きく変化しうることは理解されるであろう。Pが所与の分子量を持つというとき、その分子量は、分子中に存在するサブユニット数が互いに異なるP分子群の平均分子量を反映する、単なる近似値であると考えられる。一般に、Pは約5,000から約40,000まで、好ましくは約10,000から約20,000までの分子量を持つ。しかし、Pに適する分子量は修飾するクリングルペプチドフラグメントに依存して変化するであろうことは明白である。
【0034】
スペーサー基Xは存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合には、アミノ−オキシ基を目的とするポリマーに接続する役割を果たす。スペーサー基Xは、フェニル又はC−C10アルキレン部分、C−C10アルキル基、又はそれらの組合せのような置換又は非置換の分枝又は線状脂肪族又は芳香族基を含む非反応基、あるいはアミノ酸鎖(フレキシブルヒンジ又はループ配列など(例えばJ.Mol.Biol.,211、943−958(1990)参照))、ヌクレオチド鎖、糖鎖、脂質鎖、又はそれらの組合せを表わし、ヘテロ原子を含みうる。好ましい実施形態では、Xは−CH−又は−CHOH−又は−COCH−又は−NH−CO−CHを含む。アミノ−オキシ基が官能基化ポリマー上にあるとき、アミノ−オキシ官能基に隣接する付加的な接続構造(すなわちスペーサー基)中に存在する基は決定的に重要ではない;しかしながら、スペーサー基についての必要条件はアミノ−オキシ基とその相補的アルデヒド間のオキシム結合の形成に干渉しないことである。さらに、スペーサー基はアミノ−オキシ基に先んじてアルデヒドと結合すべきではなく、また反応に立体障害を与えてはならず、さらに反応基を不活性化してはならない。
【0035】
もう1つの実施形態では、二及び多ポリマー含有官能基化ポリマーを提供する。そのようなポリマーは一般式:
(P)−L−X−O−NH
[式中、P、X、及びO−NHは本文中で定義するとおりであり、mは2から10まで、より好ましくは2から5までの整数であり、そしてL各々のP(その数はm個)が別々に共有結合している多価リンキング基であって、Lの価数は少なくともm+1である]
を持つ。本発明の二及び多ポリマー官能基化ポリマーの場合には、標的巨大分子への官能基化ポリマーの部位特異的複合は、多価L構造に連結した−O−NH基による単オキシム結合を通して、2個又はそれ以上のポリマーの部位特異的な結合をもたらす。
【0036】
従って、二又は多ポリマー含有官能基化ポリマーは、同じか又は異なる、好ましくは同じである、2個又はそれ以上のポリマーを、標的巨大分子上のあらかじめ選択された単一部位に結合することができる。Lが三価の基である場合には、mは2である。好ましくは、Lの価数はm+1であり、その場合Lの1原子価は、場合によってはXを通して、オキシム−形成基によって占められ、Lの残りの原子価は1個又はそれ以上の(すなわちm個の)ポリマーによって占められる。Lがその後のオキシム反応に立体障害を与えず、反応基を不活性化しない限り、Lの構造は決定的に重要ではなく、またLをポリマーに連結する結合も重要ではない。Lは他の存在する機能と反応しない。官能基化ポリマー内のリンキング基Lの各々の腕又は原子価は、好ましくは、フェニル又はC−C10アルキレン部分、C−C10アルキル基、又はそれらの組合せのような置換又は非置換脂肪族又は芳香族基を含む非反応基、あるいはレキシブルヒンジ又はループ配列のようなアミノ酸鎖(フレキシブルヒンジ又はループ配列など(例えばJ.Mol.Biol.,211、943−958(1990)参照))、ヌクレオチド鎖、糖鎖、脂質鎖、又はそれらの組合せを含み、ヘテロ原子を含みうる。ポリマーとの複合前には、好ましくはLの1つを除くすべての腕又は原子価は、好ましくはポリマーの末端に位置する、ポリマー上の基と特異的に反応することができる官能基を含む。残りの原子価は、オキシム−形成官能基(該官能基は、所望する場合には脱保護可能な状態にある)を提供する化合物とのその後の反応のために保護されているか、又はさもなければかかる化合物によって占められている。ポリマー複合体を抗原性又は免疫原性のために使用する場合、それ自体強い免疫原性ではないリンカー基を選択することは当業者には明白である。ポリマー複合体を結合のために使用する場合には、好ましいリンカー基は、結合、アビディティー、生成物安定性、又は溶解度のような特性を高めるか又は少なくともそのような特性に干渉しない。リンキング構造はそれ自体、本発明の相補的官能基化ポリマーとのオキシム形成による平行構築を用いて(P)L構造を構築するように、オキシム形成基で占められた原子価を含みうる。従って、米国特許願通し番号第08/057,594号、同第08/114,877号、及び同第08/057,594号、ならびに国際特許願PCT/IB94/00093号に述べられているベースプレート構造はL構造としての使用に適する。ベースプレートのオキシム形成基は他の相補的反応基で置換することができる;しかし、最も好ましくはオキシム形成を構築のために使用する。好ましいL構造は、いずれか2個のアミノ基が各々ポリマーへのカップリングのために使用可能であり、残りのアミノ基がオキシム形成基の導入のために使用しうるトリアミン化合物から誘導される。好ましいトリアミンは式、N(R−NH[式中、いずれか2個のアミノ基(−NH)が各々ポリマーへのカップリングのために使用可能であり、残りのアミノ基がオキシム形成基の導入のために使用可能であって、Rは、フェニル又はC−C10アルキレン部分、C−C10アルキル基、又はそれらの組合せのような置換又は非置換脂肪族又は芳香族基を含む非反応基、あるいはアミノ酸鎖(フレキシブルヒンジ又はループ配列など(例えばJ.Mol.Biol.,211、943−958(1990)参照))、ヌクレオチド鎖、糖鎖、脂質鎖、又はそれらの組合せであり、ヘテロ原子を含みうる。Rは好ましくは−CH−CH−である。3個の第一アミノ基は好ましくは窒素から遠位である。最も好ましくはトリアミン化合物はトリス−(2−アミノエチル)アミンである。
【0037】
もう1つの実施形態では、二又は多ポリマー官能基化ポリマーは、最初に所望する多価の、通常は保護された一価を持つL構造を得、次に保護されたL構造を、典型的には当該技術において既知の結合化学を用いて適切に活性化されたポリマー中間体と、又はオキシム化学を通して本発明の化合物ポリマーと反応させることによって合成される。二又は多ポリマー産物を単離した後、Lの保護された残りの原子価を脱保護し、その後アシル化基を含む適当に保護されたアミノ−オキシと反応させる(例えばアミノ基の場合にはアシル化する)ことにより、本発明に従って産物を官能基化する。オキシム形成官能基を脱保護した後、最終産物である二又は多ポリマー官能基化ポリマーを得る。
【0038】
代替的には、最初に適切に保護されたアミノ−オキシ含有基でLを誘導体化し、次にモノ置換L誘導体を各々の残りの原子価においてポリマー中間体(LがNHを含むときにはCOOH又はLがCOOHを含むときにはNH基を有するもののような)又は本発明の官能基化ポリマー(PをLに構築するためにオキシム化学を使用するとき)と反応させる。例えば、mPEG−COOH中間体ポリマーを、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物)及びDCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)の存在下で、又はmPEG−COOHのスクシニミジル誘導体をあらかじめ調製する場合にはこれらの試薬なしで、L構造上の遊離アミノ基に結合することができる。オキシム形成官能基を脱保護した後、最終産物である二又は多ポリマー官能基化ポリマーを得る。
【0039】
アミノ酸からL基を形成するとき、L構造のペプチド配列は常套的な固相ペプチド合成法(「SPPS」)によって合成することができ、ペプチドがまだN−ヒドロキシスクシニミドエステルのような活性形態で固相PEG−COOHに結合している間に、新生ペプチド鎖に付加することができる。例えば、L構造は、5個のリシン残基と1個のN末端アミノ基のような6個の反応基を持つペプチドで構成されうる。PEG−COOSuヒドロキシスクシニミドエステルはリシン残基のε−アミノ基の各々と反応することができる(但しN末端α−アミノ基は保護されたままである)。次に完全にアシル化されたペプチドのN末端アミノ基を脱保護し、ポリマー含有構造をBoc−AoA含有活性エステルと反応させてAoA基を導入し、Bocを除去して樹脂から穏やかに開裂した後、本発明のペンタポリマー含有官能基化ポリマーを得る。この方法は、工程の間の保護とその後の脱保護を必要とする付加残基を排除するように設計することができるので、合成構造に関して(そしておそらく一部の組換え産物に関して)特に有用であることに注目すべきである。代替的には、N−ヒドロキシスクシニミドエステルのような活性形態のBoc−Ser(ベンジル)−OH又はBoc−Ser(t−ブチル)−OHをリシン残基のε−アミノ基に結合することができる。次にN末端α−アミノ基を脱保護してアミノ−オキシ基(例えばAoA)を導入し、Bocを除去した後、ε−Ser−ペンタリシンを含む前駆体L構造を得る。ひとたび蛋白質に複合した前駆体L構造をpH7の過ヨウ素酸塩のような弱酸化剤で処理して、ε−Ser−ペンタリシンをε−GXL−ペンタリシンに変換し、それによってペンタ−GXL L構造を生成して、その後それを本発明のアミノ−オキシ官能基化ポリマーと反応させることができる。エチレングリコールのような、1,2結合について比較的自由な回転を有する1,2−ジオール又は1−アミノ−2−オール又は1−オール−2−アミノ化合物を用いて酸化反応を終了することができる。代替的には、例えば逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)により、過ヨウ素酸塩を速やかに除去することによって酸化反応を終了することができる。酸化反応は第一アミノ基を含むセリン残基に関してのみ起こるので、ε−セリン残基だけがグリオキシルに変換される。保護を所望するときには、N末端セリンを酸化から化学的に保護するための方法は当業者に既知である。その後N末端アミン基を脱保護し、ポリマー含有構造をBoc−AoA含有活性エステルと反応させてAoA基を導入し、Bocを除去した後、本発明のペンタポリマー含有官能基化ポリマーを得る。Boc又はその後穏やかな条件下で除去することができる、ペプチド合成において使用される典型的なアミノ保護基が適する(例えばGreenとWuts(1991)「Protective Groups in Organic Synthesis」第2版、Wiley,New York,NY参照)。
【0040】
もう1つの実施形態では、本発明の官能基化ポリマーは次の式:
【0041】
【化1】

[式中、Pは先に定義したようなポリマーを表わし、Xは任意に存在するスペーサー基を表わす]
によって表わされる。スペーサー基Xは存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合には、アルデヒドを目的とするポリマーに接続する役割を果たす。スペーサー基Xは、フェニル又はC−C10アルキレン部分、C−C10アルキル基、又はそれらの組合せのような置換又は非置換の分枝又は線状脂肪族又は芳香族基を含む非反応基、あるいはアミノ酸鎖(フレキシブルヒンジ又はループ配列など(例えばJ.Mol.Biol.,211、943−958(1990)参照))、ヌクレオチド鎖、糖鎖、脂質鎖、又はそれらの組合せを表わし、ヘテロ原子を含みうる。好ましい実施形態では、Xは−CH−を含む。アミノ−オキシ基が官能基化ポリマー上にあるとき、アルデヒドに隣接する付加的な接続構造(すなわちスペーサー基)中に存在する基は決定的に重要ではない;しかしながら、スペーサー基についての必要条件は、アルデヒドとその相補的第一アミノ基間の炭素−窒素結合の形成に干渉しないことである。さらに、スペーサー基はアルデヒドに先んじて第一アミノ基と結合すべきではなく、また反応に立体障害を与えてはならず、さらに反応基を不活性化してはならない。
【0042】
本発明はまた、複合クリングルペプチドフラグメントを使用してインビトロ及びインビボで内皮細胞増殖を抑制するための方法、ならびに抗血管新生治療を必要とするヒト又は動物を治療するための方法であって、治療上有効な量のクリングルペプチドの複合体をそのような個体に投与することを含む方法を提供する。本発明はさらに、クリングルペプチドフラグメントの複合体と治療上許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0043】
実施例において特定するものを含むがそれらに限定されない本発明の化合物は、抗血管新生作用を有する。血管新生抑制因子として、そのような化合物は、原発性及び転移性固形腫瘍、及び下記の癌:乳癌;結腸癌;直腸癌;肺癌;口腔咽頭癌;下咽頭癌;食道癌;胃癌;膵癌;肝癌;胆嚢癌;胆管癌;小腸癌;腎、膀胱、及び尿路上皮を含めた尿路の癌;子宮頸、子宮、卵巣、絨毛癌及び妊娠期栄養膜疾患を含めた女性生殖管の癌;前立腺、精嚢、精巣及び生殖細胞腫瘍を含めた男性生殖管の癌;甲状腺、副腎及び下垂体を含めた内分泌腺の癌;血管腫、黒色腫、骨及び軟組織から生じる肉腫及びカポジ肉腫を含めた皮膚癌;脳、神経、眼、及び神経膠星状細胞腫、神経膠腫、神経膠芽細胞腫、網膜芽細胞腫、神経腫、神経芽細胞腫、神経鞘腫及び髄膜腫を含めた髄膜の癌;白血病のような造血に関する悪性疾患から生じる、緑色腫、プラスマ細胞腫、血小板、そして菌状息肉腫及び皮膚T細胞リンパ腫/白血病を含めた固形腫瘍;ホジキン及び非ホジキンリンパ腫を含めたリンパ腫;リウマチ、免疫性及び変形性関節炎を含めた自己免疫疾患の予防;糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、角膜移植拒絶反応、水晶体後線維増殖症、血管新生緑内障、ルベオーシス、黄斑変性及び低酸素症による網膜新生血管形成を含めた眼疾患;眼の異常新生血管形成状態;乾癬を含めた皮膚疾患;血管腫及びじゅく状斑内の毛細血管増殖を含めた血管疾患;オースラー−ウェーバー症候群;心筋血管新生;プラーク新生血管形成;毛細血管拡張症;血友病性関節;血管線維腫;創傷肉芽形成;腸癒着、クローン病、アテローム性動脈硬化症、強皮症及び過形成性瘢痕(すなわちケロイド)を含めた内皮細胞の過剰又は異常刺激を特徴とする疾患ならびにネコ引っ掻き病(Rochele minalia quintosa)及び潰瘍(Helicobacter pylori)を含めた病的結果として血管新生を有する疾患の治療において有用である。もう1つの用途は、排卵と胎盤の定着を抑制する産児制限剤としてである。
【0044】
本発明の化合物はまた、単独で又は放射線療法及び/又は血管新生性疾患を治療するために慣例的に患者に投与される他の化学療法治療と組み合わせて及び/又は他の抗血管新生性物質と組み合わせて使用するとき、上述した腫瘍からの転移を予防するために有用であると考えられる。例えば、固形腫瘍に治療において使用するとき、本発明の化合物は、αインターフェロン、COMP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、メトトレキセート及びプレドニゾン)、エトポシド、mBACOD(メトトレキセート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びデキサメタゾン)、PRO−MACE/MOPP(プレドニゾン、メトトレキセート(w/ロイコビンレスキュー)、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソール、エトポシド/メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン及びプロカルバジン)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アンギオインヒビン、TNP−470、ペントサンポリスルフェート、血小板第4因子、アンギオスタチン、LM−609、SU−101、CM−101、Techgalan、サリドマイド、SP−PG等のような化学療法剤と共に投与しうる。他の化学療法剤は、メクロレタミン、メルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド及びイフォスファミドを含めたナイトロジェンマスタードのようなアルキル化剤;カルムスチン、ロムスチン、セムスチン及びストレプトゾシンを含めたニトロソ尿素類;ブスルファンを含めたスルホン酸アルキル;ダカルバジンを含めたトリアジン;チオテパ及びヘキサメチルメラミンを含めたエチエニミン;メトトレキサートを含めた葉酸類似体;5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシドを含めたピリミジン同族体;6−メルカプトプリン及び6−チオグアニンを含めたプリン類似体;アクチノマイシンDを含めた抗腫瘍性抗生物質:ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトマイシンC及びメトラマイシンを含めたアントラサイクリン;タモキシフェン及びコルチコステロイドを含めたホルモン及びホルモン拮抗物質ならびにシスプラチン及びブレキナールを含めた種々の薬剤を含む。例えば、腫瘍は、手術、放射線療法又は化学療法と複合クリングル5の投与及び微小転移巣の静止を延長し、残存原発腫瘍を安定化させてその増殖を抑制するためのその後の複合クリングル5の投与によって慣例的に治療しうる。他の抗血管新生性物質は、K1及びK4−5のようなプラスミノーゲンの他のクリングルペプチドフラグメントならびにプロトロンビンのK2を含む。
【0045】
ここで使用するとき「非経口」の語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下及び関節内注射及び注入を含む投与様式を指す。非経口注射用の医薬組成物は、製薬上許容される無菌水性又は非水性溶液、分散、懸濁液又は乳剤ならびに使用の直前に無菌注射用溶液又は分散に還元するための無菌粉末を含む。適当な水性及び非水性担体、希釈剤、溶媒又は賦形剤の例は、水、エタノール、ポリオル(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のような)、カルボキシメチルセルロース及びそれらの適当な混合物、植物油(オリーブ油のような)及びオレイン酸エチルのような注射用有機エステルを含む。例えばレシチンのような被覆材料の使用によって、分散の場合には必要な粒子サイズの維持によって、また界面活性剤の使用によって適切な流動性を保持することができる。これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤のような補助薬を含みうる。微生物の作用の予防は、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等のような様々な抗菌及び抗真菌薬を含めることによって確保しうる。また、糖類、塩化ナトリウム等のような等張剤を含むことも望ましいと考えられる。吸収を遅延させるモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのような物質を含めることによって注射用製剤の持続的な吸収を生じさせることができる。注射用デポ製剤は、ポリアクチド−ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)のような生分解性ポリマー中に薬剤のミクロ被包マトリックスを形成することによって作製しうる。薬剤対ポリマーの比率及び使用する個々のポリマーの性質に依存して、薬剤放出の速度を調節することができる。デポ注射用製剤はまた、体組織と適合性のリポソーム又はミクロ乳剤中に薬剤を捕捉することによって調製される。注射用製剤は、例えば細菌捕獲フィルターを通してろ過によって又は使用の直前に無菌水又は他の無菌注射用媒質に溶解又は分散することができる無菌固形組成物の形態の殺菌薬を組み込むことによって滅菌することができる。
【0046】
局所投与は皮膚、粘膜及び肺の表面への投与を含む。局所投与用組成物は、加圧しうる又は加圧されない乾燥粉末として調製しうる。非加圧粉末組成物においては、微細に分割した形態の有効成分を、例えば直径100マイクロメートルまでの大きさを持つ粒子を含む、より大きなサイズの製薬上許容される不活性担体と混合して使用しうる。適当な不活性担体はラクトースのような糖類を含む。望ましくは、有効成分の粒子の少なくとも95重量%が0.01から10マイクロメートルの範囲の有効粒子サイズを持つ。代替的には、本発明の化合物は眼の硝子体及び房水に直接注入することができる。
【0047】
本発明の化合物はまた、リポソームの形態で投与することもできる。当該技術分野において既知であるように、リポソームは一般にリン脂質又は他の脂質物質から誘導される。リポソームは、水性媒質に分散する単層又は多重膜水和液晶によって形成される。リポソームを形成することができる、無毒性で生理的に許容される代謝可能ないかなる脂質も使用できる。リポソーム形態の本発明の組成物は、本発明の化合物に加えて、安定剤、防腐剤、賦形剤等を含みうる。好ましい脂質は、天然及び合成のリン脂質及びホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成する方法は当該技術において既知である。
【0048】
上記又は他の治療において使用するとき、治療上有効な量の本発明の化合物の1つを純粋な形態で、又は、そのような形態が存在する場合には、製薬上許容される塩の形態で製薬上許容される賦形剤と共に又は賦形剤なしで用いることができる。本発明の化合物の「治療上有効な量」とは、医学的処置に適用される妥当な利益/危険度比で血管新生性疾患を治療する(例えば腫瘍の増殖を抑えるあるいは腫瘍の転移を遅らせる又は遮断する)ために十分な化合物の量を意味する。しかし、本発明の化合物及び組成物の総一日量は、合理的な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることは明白であろう。個々の患者についての明細な治療上有効な用量レベルは、治療する疾患及び疾患の重症度、用いる特定化合物の活性、用いる特定組成物、患者の年齢、体重、全般的健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路、用いる特定化合物の排泄速度、治療期間、用いる特定化合物と組み合わせて又は同時に使用する薬剤及び医学技術において既知の同様の因子を含めて、様々な因子に依存するであろう。例えば、所望する治療効果を達成するために必要なレベルよりも低い用量レベルで化合物の投与を開始し、所望する効果が達成されるまで徐々に用量を高めていくことは十分に当該技術の範囲内である。単回又は分割投与でヒト又は他の哺乳類宿主に局所又は全身投与する複合クリングル5ペプチドフラグメントの総一日量は、例えば0.01から5mg/kg体重/日、より一般的には0.05から1mg/kg体重の量であると考えられる。所望する場合には、投与のために有効一日量を多回に分けてもよい。結果として、1回用量の組成物は、一日量を構成するような量又はその多回分割量を含みうる。
【0049】
血管新生性疾患の抑制、治療又は予防のために本発明の化合物と組み合わせることができる物質は、上記で列挙したものには限定されず、原則として、血管新生性疾患の治療又は予防のために有用ないかなる物質も含む。
【0050】
合成工程
【0051】
【化2】

【0052】
スキーム1は、他の複合クリングルペプチドフラグメントの合成に容易に拡大することができる、K5のポリアルキレングリコール複合体の1つのタイプの調製を示す。アミノメトキシポリエチレングリコール(2)(5−30kD)を(N−tert−ブトキシカルボニルアミノ)オキシ)アセチルN−ヒドロキシスクシニミドエステル(3)と縮合して、(アミノオキシ)アセチル−官能基化ポリエチレングリコール(4)を得る。これらをアルデヒド(6)(過ヨウ素酸ナトリウムによる(セリン459)K5(5)の酸化によって形成される)と縮合して、種々のポリエチレングリコール長を持つ所望する複合ペプチドフラグメント(7)を形成する。
【0053】
【化3】

【0054】
スキーム2は、他の複合クリングルペプチドフラグメントの合成に容易に拡大することができる、代替的なK5のポリアルキレングリコール複合体の調製を示す。メトキシポリエチレングリコールアルデヒド(8)(5−30kD)をシアノホウ水素化ナトリウムのような還元剤の存在下で(セリン459)K5と縮合して、種々のポリエチレングリコール長を持つ所望する複合ペプチドフラグメント(9)(LLPD−K5=ロイシン−ロイシン−プロリン−アスパラギン酸−K5)を形成する。
【0055】
下記の実施例は本発明の新規化合物の調製をさらに例示するものである。
【実施例1】
【0056】
pET32−Kan−Ek−SLLPD−K5、pET32−Kan−Ek−SEED−K5、pET32−Kan−Tev−SEED−K5の構築
PCRを用いて、クリングル5ペプチドフラグメントを含むクリングル融合蛋白質を作製した。エンテロキナーゼ開裂部位Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(配列番号2)をコードし、その後にSer残基及びプラスミノーゲンの残基450に始まり、配列番号1の残基453に及ぶK5 N末端コード配列が続く5’PCRプライマーを合成した:TGGGTACCGACGACGACGACAAGTCCCTGCTTCCAGATGTAGAGA(配列番号3)。エンテロキナーゼ開裂部位Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(配列番号2)をコードし、その後にプラスミノーゲンの残基458に始まり、配列番号1の残基461に及ぶK5 N末端コード配列が続く5’PCRプライマーを合成した:TGGTACCGACGACGACGACAAGTCCGAAGAAGACTGTATGTTTGGG(配列番号4)。タバコエッチウイルス(Tobacco Etch Virus、TEV)プロテアーゼ開裂部位Glu−Asn−Leu−Tyr−Phe−Gln(配列番号5)をコードし、その後にプラスミノーゲンの残基458に始まり、配列番号1の残基461に及ぶK5 N末端コード配列が続く5’PCRプライマーを合成した:TGGGTACCGAAAACCTGTATTTTCAGTCCGAAGAAGACTGTATGTTTGGG(配列番号6)。K5 C末端3’プライマーTTATTAGGCCGCACACTGAGGGA(配列番号7)も合成した。Pfu DNAポリメラーゼ緩衝液(Stratagene(登録商標)、La Jolla,CA)50μL、dNTP各々200μM、ATP 500μM、適切な5’プライマー及び3’プライマー及びT4ポリヌクレオチドキナーゼの1つを各々0.5μM使用して、別々にPCRフラグメントを作製した。37℃で15分間インキュベートした後、キナーゼとプライマーに、Pfu DNAポリメラーゼ及びK4−K5Aプラスミドを含むDraI消化したベクターpHIL−D8(先に米国特許第6,057,122号に記述されている)約10ngを加えた。配列番号4と配列番号7をプライマーとして使用して、94℃で1分間後、[94℃1秒間、40秒間;72℃1秒間;50℃1分間、30秒間;72℃1秒間、4分間]の20サイクルを使用するサーモサイクルファイルでPCRを実施し、Ek−SEED−K5をコードする産物を生じた。配列番号3と7及び配列番号6と7をプライマーセットとして使用して、94℃で1分間後、[94℃1秒間、40秒間;72℃1秒間;50℃2分間、30秒間;72℃1秒間、4分間]の20サイクルを使用するサーモサイクルファイルでPCRを実施し、それぞれEk−SLLPD−K5及びTev−SEED−K5をコードするPCR産物を生じた。次にS400−HRスピンカラム(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ)でPCR産物を精製した。
【0057】
pET32−Kan発現ベクターを次のようにして構築した:pET32a DNA(Novagen,Madison,WI)をBpu1102I+SapI(New England Biolabs,Beverly,MA)で切断し、3426bpフラグメント(マップ位置81−3507)をアガロースゲル電気泳動によって精製した。pET24d DNA(Novagen,Madison,WI)もBpu1102I+SapIで切断し、Kan遺伝子を含む2341bpフラグメント(マップ位置3047−81)をアガロースゲル電気泳動によって精製した。迅速ライゲーションキット(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN)を用いて2つのフラグメントをライゲートし、大腸菌(E.coli)BL21(DE3)コンピテント細胞(Novagen,Madison,WI)をライゲーション混合物で形質転換し、LB−Kan寒天平板(Micro Diagnostics,Lombard,IL)に塗布した。個々のコロニーをLB−Kan培地で増殖させ、ミディプレップキット(Quiagen,Valencia,CA)を用いてプラスミドDNAを精製した。T7プロモーターとT7ターミネーターを含むコード領域のDNA配列をDNA塩基配列分析によって確認した。
【0058】
pET32−Kan 1μgをBglII+XhoIで消化し、次に末端を充填して、先に述べられているように(米国特許第6,057,122号、前出)DNAをホスファターゼ処理し、精製した。このpET32−Kanベクター1μL(約10ng)とK5 PCR産物1μLを、先に述べたような迅速ライゲーションキットを用いて5.25μLの容量でライゲートした。次に各々のライゲーション混合物1μLをHMS174(DE3)コンピテント細胞(Novagen,Madison,WI)20μLに形質転換した。LB−カナマイシン寒天上で組換え細胞を選択した。先に述べられているように(米国特許第6,057,122号、前出)コロニーを正しいサイズと方向のインサートの存在に関してPCRによってスクリーニングした。その後正しいコロニーを、DNA塩基配列確認用のプラスミドDNAの単離のため、及び先に述べられているような(米国特許第6,057,122号、前出)小規模発現試験のために増殖させた。
【実施例2】
【0059】
pET32−Kan−Tev−SLLPD−K5及びpET32−Kan−Tev−LLPD−K5の構築
TEVプロテアーゼ開裂部位Glu−Asn−Leu−Tyr−Phe−Gln(配列番号5)をコードし、1個はSer残基を伴い、1個はSer残基を伴わず、その後にプラスミノーゲンの残基450に始まり、配列番号1の残基453に及ぶK5 N末端コード配列が続く、2個の5’PCRプライマーを合成した:
TGGGTACCGAAAACCTGTATTTTCAGTCCCTGCTTCCAGATGTAGAGA(配列番号8)及びTGGGTACCGAAAACGTCTATTTTCAGCTGCTTCCAGATGTAGAGACTC(配列番号9)。C末端3’プライマーを上記の実施例1で述べたように調製した。氷上で薄壁試験管においてPCR反応を実施し、その後直接、あらかじめ94℃に加熱しておいたPerkin−Elmer 480サーモサイクラーブロックに移した。配列番号8と7及び配列番号9と7をプライマーセットとして使用して、94℃で1分間後、[94℃1秒間、40秒間;80℃1秒間;45℃5分間、30秒間;72℃1秒間、8分間]の25サイクルを使用するサーモサイクルファイルでPCRを実施し、それぞれTev−SLLPD−K5及びTev−LLPD−K5をコードするPCR産物を生じた。クローニングは上記の実施例1で述べたように実施した。
【実施例3】
【0060】
融合蛋白質からのK5の単離と精製
(a)融合蛋白質の単離:実施例1及び2からのEk−SLLPD−K5、Ek−SEED−K5、Tev−SLLPD−K5、Tev−SEED−K5又はTev−LLPD−K5の細胞ペーストを−80℃保存から取り出し、溶解緩衝液(50mMトリス、300mM NaCl、1mM NaN、pH7.9、Hampton Research,Laguna Niguel,California)、プロテアーゼ阻害剤(87μg/mL PMSF、5μg/mLアプロチニン、78μg/mLベンズアミジン、1μg/mLロイペプチン、5μg/mLフェナントロリン)(SIGMA,St.Louis,Missouri)、及びBenzonase(20μL/100g細胞ペースト)(EM Industries,Hawthorne,New York)と混合した。懸濁液中の細胞を、Microfluidizer(Microfuidics,Newton,Massachusetts)を用いて11,000psiで溶解した。顕微鏡で確認したとき典型的な溶解は>90%であった。懸濁液を遠心分離によって(RCF=4℃、22000gで30分間)清澄化した。上清をデカントし、バッチ法でNi IMAC樹脂(Probond,Invitrogen Corporation,Carlsbad,California)と混合した。樹脂を溶解緩衝液で洗って非特異的結合蛋白質を除去した。溶解緩衝液中イミダゾールの階段勾配(50mM、100mM、250mM、及び500mM)で融合蛋白質を溶出した。純粋な融合蛋白質を濃縮し、緩衝液を透析によって開裂緩衝液(50mMトリス、1mM NaN、pH7.9)(Hampton Research,Laguna Niguel,California)に交換した。
【0061】
(b)エンテロキナーゼを用いた融合蛋白質の開裂:Ek融合蛋白質溶液を1mM CaClの最終濃度で作製した。280nmの吸光度で測定したとき融合蛋白質1グラム当たり0.8163から14.3単位のエンテロキナーゼ(EKMax、Invitrogen Corporation,Carlsbad,California)を融合蛋白質に加えた。溶液を37℃にして、開裂反応を20から24時間進行させた。開裂の進行を還元条件下でSDS−PAGEによって観察した。
【0062】
(c)TEVプロテアーゼを用いた融合蛋白質の開裂:Tev融合蛋白質溶液を1mM DTT(SIGMA,St.Louis,Missouri)の最終濃度で作製した。280nmの吸光度で測定したとき融合蛋白質1グラム当たり76.2から1330単位の組換えTEVプロテアーゼ(GibcoBRL Life Technologies,Gaithersburg,Maryland)を融合蛋白質に加えた。溶液を30℃にして、開裂反応を20から24時間進行させた。開裂の進行を還元条件下でSDS−PAGEによって観察した。
【0063】
(d)K5の単離:開裂溶液をバッチ法でNi IMAC樹脂(Probond,Invitrogen Corporation,Carlsbad,California)と混合することにより、開裂したK5を単離した。開裂フロースルーを収集し、樹脂を開裂緩衝液で洗った。K5を含む洗浄液を開裂フロースルーと一緒にして、陰イオン交換樹脂(Q Sepharose fast flow,SIGMA,St.Louis,Missouri)に適用した。開裂緩衝液中線状NaCl勾配(0mM−300mM)を用いて純粋なK5を単離した。
【0064】
適切な酵素で融合蛋白質を開裂して、以下SLLPD−K5、SEED−K5、及び組換えLLPD−K5と称する産物を得た。
【実施例4】
【0065】
SLLPD−K5のN末端の官能基化及びメトキシポリエチレングリコール(mPEG、分子量20,000)との複合
基本的にGaertnerらがBioconjugate Chem.,7、38−44(1996)で述べたようにして、クリングル5ペプチドフラグメントSLLPD−K5を官能基化し、メトキシポリエチレングリコール(5−30kD)と複合した。使用したプロトコールを下記に簡単に述べる。
【0066】
(a)BOC−AOAのN−ヒドロキシスクシニミドエステルの形成:室温の酢酸エチル(30mL)中のBOC−アミノオキシ酢酸(BOC−AOA、1.9g、Novabiochemより購入した)の溶液を、酢酸エチル(30mL)中のN−ヒドロキシスクシニミド(1.15g)の溶液で処理した。生じた混合物を酢酸エチル(5mL)中のN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(2.06g)の溶液で処理し、18時間攪拌してろ過し、濃縮した。濃縮物をジエチルエーテル(40mL)で粉砕し、ろ過して、生じた固体を真空下で乾燥して所望する生成物1.2gを得た。
MSm/e306(M+NH
H NMRδ1.48(9H),2.88(4H),4.78(2H)。
【0067】
(b)MeO−PEG20kd−NH−COCH−O−NH(AOA−PEG20kd)の形成:室温のアセトニトリル(4.5mL)のMeO−PEG20kd−NH(1.5g、Rapp Polymere Inc.,Tubingen,Germanyより購入した)の溶液を実施例3A(50mg)及び4−メチルモルホリン(0.1mL)で処理し、2時間攪拌して、濃縮した。濃縮物を水(9mL)に溶解し、β−アラニン(100mg)で処理して、2N NaOHでpH9.2に調整した。分子量3,500のカットオフ透析管を使用して混合物を水(4リットルずつ2回交換)に透析し、その後凍結乾燥して、BOC−AOA−PEG−OMeを1.4g得た。
【0068】
室温のトリフルオロ酢酸(TFA、2.5mL)中のBOC−AOA−PEG−OMe(1.4g)の溶液を3時間放置し、濃縮して、水(5mL)で処理し、再び濃縮した。濃縮物を水(7.5mL)に溶解し、2M NaOHでpH3.0に調整した。次に溶液を4℃の水に透析し(3.5kdカットオフ透析管)、凍結乾燥した。生じた固体の一部(29mg)を水(1mL)に溶解した。この溶液のアミノ−オキシ官能基を、50mM酢酸緩衝液、pH4.0中m−ニトロベンズアルデヒド(MNBA)と縮合して、分光測光法で評価した。過剰のAOA−PEG−OMeを含む、計量した量のMNBAの溶液からの定量的反応は、このアルデヒドの吸光度のモル上昇が、mPEG−オキシムに変換したとき255nmで12,400であることを示した。アルデヒドが1.0mMであるとき、AOA−PEG−OMeの完全な反応は60℃で15分後に達成され、後者の重量で評価したときAOA−PEG−OMeの濃度に対して1.5から2倍過剰であった。29mg/mL溶液は0.95mM(68%活性)であり、20,000の分子量に基づき、19mg/mLのアルデヒド反応性ポリマーに等しいことが認められた。
【0069】
(c)SLLPD−K5の酸化:100mM NaCl、pH7.8を含むトリス−Cl緩衝液に約1mg/mLの精製SLLPD−K5を加えた。K5、SLLPD−K5、及びK5のPEG複合体の蛋白質濃度を、1.0mg/mL溶液(1.0cm光路長、pH範囲4−8.5)がOD=1.70を持つ場合の、280nMでの光学密度から評価した。
【0070】
SLLPD−K5を0.1M NHCO(pH7.5−8)に透析し、次に3kdカットオフ膜を通してろ過して、3.3mg/mLに濃縮した。溶液(66.6mL、220mgクリングル5、分子量10,500)を1−メチオニン(50mg)で処理して、5mMの最終メチオニン濃度を得た。混合物を濃縮NHOHでpH8.6に調整し、過ヨウ素酸ナトリウム(18mg、4当量)で処理して、逆相HPLC(C−8 Waters Symmetry 4.6×250mm、0.1%TFAを含む水中アセトニトリル、CHCNを30分間かけて5%から40%まで上昇させる)によって観察した。1時間後、混合物をさらに13.5mgで処理して、さらに1時間攪拌し、プロパンジオール20μLで処理して、1時間攪拌し、1:1の氷酢酸/水でpH4.8に調整した。混合物を50mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.0(4L)に一晩透析し(3,500分子量カットオフ膜)、質量スペクトル分析によって分析した結果、グリオキシリルクリングル5(10,516)及びその水和物(10,534)の存在を示唆した。
【0071】
(d)グリオキシリル−LLPD−K5とAOA−PEGの縮合:1:1の氷酢酸/水を1滴ずつ加えて実施例4(c)の溶液(3mg/mL、66.7mL、19μmmol)をpH4.0に調整した。0.95mMの実施例4(b)(34mL、32μmmol、蛋白質に対して1.68倍過剰)で溶液を処理して、3,500分子量カットオフ膜と攪拌細胞を使用して、4時間かけてもとの容量の1/5に濃縮し、約10mg/mLの採集蛋白質濃度を得た。反応を24時間継続させ、エタノール(0.12mL)中の100mM m−ニトロベンズアルデヒドでクエンチングして、30分間攪拌し、2Mトリス塩基でpH7.8に調整して、所望する生成物を得た。
【0072】
またmPEGを基本的に上記で述べたようにしてSEED−K5に結合させた。メトキシポリエチレングリコールに結合したSLLPD−K5及びSEED−K5ペプチドを以下mPEG−SLLPD−K5及びmPEG−SEED−K5と称する。
【実施例5】
【0073】
PEG化クリングルペプチドフラグメントの作製
クリングルペプチドフラグメント及び/又は天然に生じる又は非天然に生じるN末端セリンを持つクリングルペプチドフラグメントを作製するための当該技術分野において既知の方法(例えば組換え及び合成手法のような)を用いて、及び/又は下記のスキーム1と上記の実施例によって、下記の化合物を調製することができる:
(a)(プラスミノーゲンの)クリングル1−メトキシポリエチレングリコール複合体、
(b)(プラスミノーゲンの)クリングル4−5−メトキシポリエチレングリコール複合体、及び
(f)プロトンビンクリングル2−メトキシポリエチレングリコール複合体。
【0074】
さらに、スキーム1と実施例1から5で概説する手順においてメトキシポリエチレングリコールを代替ポリアルキレングリコールに置き換えることにより、他のポリアルキレングリコールと上記のクリングルペプチドフラグメントの各々との複合体を合成することができる。
【実施例6】
【0075】
内皮細胞移動アッセイ
HMVEC(ヒト皮膚微小血管内皮細胞)の初代株を80から90%の集密度まで増殖させ、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗って、その後10%ウシ胎児血清(FCS)を含む最小培地(イーグルの平衡塩類溶液)中に18時間放置した。細胞をPBSで洗い、トリプシン処理して、2−5×10細胞/mLで再懸濁し、次に暗所でCalcein AM(商標)(MOLECULAR PROBES、Eugene,Oregon)と共にインキュベートすることにより発蛍光団を充填した。培地中の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を96穴プレートのウエルに入れ、次にこれらの溶液の上にフィルターを置いた。遠心分離し、再懸濁して、標識化の度合を評価した後、細胞を種々の量のrK5(配列番号1のアミノ酸450位からアミノ酸543位まで)、精製mPEG−SLLPD−K5又は精製mPEG−SEED−K5と共にこれらのウエルの上部に加えた。37℃で4時間後、遊離細胞(移動していない)を上部フィルターからふき取り、蛍光を測定した。阻害因子を含まない対照ウエルにおいて移動した細胞数の画分としてデータを誘導し、表1に%阻害として示している。Semは平均の標準誤差を表わす。
【0076】
【表1】

【0077】
表1が示すように、mPEG−SLLPD−K5及びmPEG−SEED−K5は、非PEG化rK5と同程度に、それよりも大きな度合ではないにしても、内皮細胞移動を阻害した。
【実施例7】
【0078】
サルの薬物動態
すべての試料をリン酸緩衝食塩水中で1.1mg/mLの濃度に希釈した。体重3から6kgの9匹のカニクイザルを投与の前に一晩絶食させたが、水は自由に摂取させた。投与の約3時間後にサルに食餌を与えた。試験期間中、動物は個体別に収容した。
【0079】
この試験は、3群のサルにおいて平行して実施した;各々の群は3匹の動物を含んだ。すべての動物に、1mg/kg(0.91mL/kg)の静脈内用量の化合物(mPEG−SLLPD−K5、mPEG−SEED−K5又は組換えLLPD−K5のいずれか)を伏在静脈中に緩徐なボーラスとして投与した。投与前、投与後0.1、0.25、0.5、1、2、3、4、6、9及び24時間後に、EDTA保存血液試料(約3mL)を各動物の大腿動脈又は静脈から採取した。結果を下記の表2及び図2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
表2に示すように、サルにおいて静脈内投与したとき、mPEG−SEED−K5及びmPEG−SLLPD−K5は、組換えLLPD−K5よりも27倍長い半減期(t1/2)と非PEG化K5よりも13倍緩やかなクリアランス速度(Clp)を示した。
【実施例8】
【0082】
SLLPD−K5のN末端とメトキシポリエチレングリコールアルデヒド(PEG−アルデヒド、分子量20,000の複合
基本的にJ.Pharmaceut.Sci.,87,1446−1449(1998)に述べられているように、クリングル5ペプチドフラグメントSLLPD−K5を官能基化し、メトキシポリエチレングリコール(5−30kd)と複合した。プロトコールを下記で簡単に述べる。
【0083】
(a)メトキシポリエチレングリコールアルデヒドの滴定:2mMメトキシポリエチレングリコールアルデヒドの混合物(200μL、HO中40mg/mL )を10mM p−ニトロフェニルヒドラジン(200μL、10mLエタノール中15.3mg)で処理し、室温で24時間インキュベートした。50μLアリコートを100mM HClで1.0mLに希釈し、t=0及びt=24時間目に405nmで吸光度を測定した。吸光度の変化(λ405=0.64、t=24時間目)を3−フェニルプロパノール中のp−ニトロフェニルヒドラジンの50μM標準品(λ405=0.67)と比較すると、予想されたものと比べて96重量%のアルデヒド含量を示した。
【0084】
(b)メトキシポリエチレングリコールアルデヒドとSLLPD−K5の縮合:50mM酢酸ナトリウム(21.7mL、pH4.7)中のSLLPD−K5(300mg)の混合物をメトキシポリエチレングリコールアルデヒド(1.14g、0.0572mmol、Shearwaterより購入した)及び1M NaOH中の5Mシアノホウ水素化ナトリウム(43.4μL、0.217mmol)で処理した。混合物を室温で48時間インキュベートし、反応の進行をHPLC(Waters C8 Symmetryカラム、4.6×150mm;溶媒勾配:30分間で5%から40%アセトニトリル/0.1%TFAを含むHO)によって観察した。混合物をさらなるメトキシポリエチレングリコールアルデヒド(200mg)とシアノホウ水素化ナトリウム(43.4μL)で処理し、室温でさらに24時間インキュベートした。
【0085】
(c)還元的アミノ化によって形成したmPEG化−K5の精製:mPEG化−K5を、pH7.7の50mMトリス緩衝液、100mM NaCl、及び1mM NaN中3−7mg/mLで保存した。PEG化K5反応混合物を約10mg/mLに濃縮し、クロマトグラフィーのためにpH5.0の25mM酢酸ナトリウムを含む緩衝液(緩衝液A)に透析した。pH5.0の25mM酢酸ナトリウム緩衝液を用いてTosoh Biosep(Montgomeryville,PA)TSK−SP5PWカラムでクロマトグラフィーを実施した。蛋白質を溶出するためにPharmacia FPLCシステムを用いてpH5.0の200mM NaClを含む緩衝液Aに対する勾配(緩衝液B)を作製した。様々な試料充填を行うために種々のサイズのカラムを使用したが、最も一般的に使用したのはTSK−SP5PW−HR(2×15cm)であった。流速はカラムサイズと適合するように調整され、1.0から2.5mL/分と異なっていた。カラムを緩衝液A中で平衡させ、あらかじめ緩衝液A中に透析した試料を充填した。次に3カラム容量までの緩衝液Aでカラムを洗って過剰のmPEG−アルデヒドを除去し、除去後280nmで吸光度を測定した。カラムを洗った後、緩衝液Aから25%緩衝液B(50mM NaCl)まで2から3カラム容量で勾配を開始した。吸光度が基線値に回復するまで50mM NaClに保持して勾配を適用した。その時点で勾配を100%緩衝液B(200mM NaClに上昇させて非反応K5を溶出した。3つのピークが50mM NaCl「保持勾配(hold gradient)」段階で溶出した。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)分析は、最初の(小さな)ピークが約90,000分子量(おそらくジ−mPEG化産物)であることを示唆した。2番目の小さなピークは約50,000Daで溶出し、やはり50,000Da付近でゲル上を移動する3番目の(主要な)ピークと分離された。主要ピークからの分画をSDS PAGEによってプールした。主要ピーク(全体の80から90%)を下記の方法によって純度と同一性に関してさらに特徴づけ、N末端モノ−PEG化K5であると判定した。
【0086】
N末端モノ−PEG化K5を特徴付けるために使用した方法:
1.質量分析法;
2.モノ−S(HR)での分析クロマトグラフィー;
3.モノ−Q(HR)での分析クロマトグラフィー;
4.TSKフェニル5PWでの疎水性相互作用;
5.Superdex 75(HR)でのゲルろ過;
6.臭化シアン開裂;
7.N−末端塩基配列決定法;及び
8.アミノ酸組成物分析。
【実施例9】
【0087】
mPEG化クリングルペプチドフラグメントの作製
クリングルペプチドフラグメント及び/又は天然に生じる又は非天然に生じるN末端セリンを持つクリングルペプチドフラグメントを作製するための当該技術において既知の方法(例えば組換え及び合成手法のような)を用いて、及び/又は下記のスキーム2と上記の実施例によって、下記の化合物を調製することができる:
(a)(プラスミノーゲンの)クリングル1−メトキシポリエチレングリコール複合体、
(e)(プラスミノーゲンの)クリングル4−5−メトキシポリエチレングリコール複合体、及び
(f)プロトンビンクリングル2−メトキシポリエチレングリコール複合体。
さらに、スキーム2と実施例8で概説する手順においてメトキシポリエチレングリコールを代替ポリアルキレングリコールに置き換えることにより、他のポリアルキレングリコールと上記のクリングルペプチドフラグメントの各々との複合体を合成することができる。
【実施例10】
【0088】
サルの薬物動態
カニクイザルにおいて1mg/kg(n=3)で静脈内投与を実施した。ウエスタンブロット分析によって血漿濃度を測定した。結果を表3に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
表3が示すように、20kDmPEGによるN末端でのmPEG化は、非mPEG化K5と比較してサルにおける血漿からのクリアランスを劇的に低下させる。還元的アミノ化を通して実現されるmPEG化は、オキシム形成によるmPEG化と比べてより緩やかなクリアランスをもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
mPEG−SLLPD−K5又はmPEG−SEED−K5から成る複合クリングルペプチドフラグメントを含む、抗血管新生治療による疾患治療のための医薬組成物であって、
ただし、mPEG−SLLPD−K5は、配列番号1の450−543のアミノ酸配列を含むペプチドであって、メトキシポリエチレングリコール及びセリンを該アミノ酸配列のN末端に結合させた前記ペプチドであって、
mPEG−SEED−K5は、配列番号1の458−543のアミノ酸配列を含むペプチドであって、メトキシポリエチレングリコールを該アミノ酸配列のN末端に結合させた前記ペプチドである、前記医薬組成物。
【請求項2】
疾患が、癌、関節炎、黄斑変性、及び糖尿病性網膜症から成る群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
疾患が癌である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
疾患が、原発性及び転移性固形腫瘍、がん腫、肉腫、リンパ腫、乾癬、及び血管腫から選択される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
mPEG−SLLPD−K5又はmPEG−SEED−K5から成る複合クリングルペプチドフラグメントを含む、個体において内皮細胞増殖を抑制するための医薬組成物であって、
ただし、mPEG−SLLPD−K5は、配列番号1の450−543のアミノ酸配列を含むペプチドであって、メトキシポリエチレングリコール及びセリンを該アミノ酸配列のN末端に結合させた前記ペプチドであって、
mPEG−SEED−K5は、配列番号1の458−543のアミノ酸配列を含むペプチドであって、メトキシポリエチレングリコールを該アミノ酸配列のN末端に結合させた前記ペプチドである、前記医薬組成物。
【請求項6】
有効量のmPEG−SLLPD−K5又はmPEG−SEED−K5から成る複合クリングルペプチドフラグメントを内皮細胞に投与することを含む、インビトロで内皮細胞増殖を抑制する方法であって、
ただし、mPEG−SLLPD−K5は、配列番号1の450−543のアミノ酸配列を含むペプチドであって、メトキシポリエチレングリコール及びセリンを該アミノ酸配列のN末端に結合させた前記ペプチドであって、
mPEG−SEED−K5は、配列番号1の458−543のアミノ酸配列を含むペプチドであって、メトキシポリエチレングリコールを該アミノ酸配列のN末端に結合させた前記ペプチドである、前記方法。

【公開番号】特開2008−231107(P2008−231107A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95692(P2008−95692)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【分割の表示】特願2002−531165(P2002−531165)の分割
【原出願日】平成13年9月27日(2001.9.27)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】