説明

折畳み扉装置

【課題】バリアフリー構造であっても、外部との気密や水密を確保するとともに、内観の一体性も確保する。
【解決手段】扉枠の下枠1bの屋内側に沿って収納溝25を形成し、この収納溝の内側に、回転により上記収納溝の上方に突出可能なシール用部材26を収納する一方、上記折畳み扉には、閉扉時にシール用部材を回転させて収納溝から突出させる作動棒24を上下動可能に取り付け、シール用部材が収納溝から突出したときは折畳み扉の下部の屋内側面に連続させるとともに、折畳み扉を、屋外側の金属部pと屋内側の合成樹脂部qとを結合した構成とし、かつ回転により収納溝から突出したシール用部材の屋内側に露出する面を合成樹脂製カバー38で被覆して折畳み扉の下框9bの合成樹脂部に当接させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物躯体に設けた扉枠の内側に配置された複数の扉体を回動自在に連結した折畳み扉を配置し、上記扉体を折り畳んで開扉させることにより上記扉枠のほぼ全体を開口することができる折畳み扉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、折畳み扉は2つの扉体を継手框を介して回動自在に連結し、一方の自由端を建物開口部のガイドレールに沿って移動可能とすることによって構成される。扉体には把手が設けられ、上記把手を屋外又は屋内側に押し引きすることで折畳み扉を開閉することができる。閉扉時には全ての扉体が面一状に並び、開扉時には扉体が折畳み状態となる。
【0003】
ところで、最近は老人や幼児などが建物の開口部を通って屋外のデッキやバルコニーに出、又はデッキやバルコニーから屋内に入るときに、段差や仕切りをなくし、移動しやすくするバリアフリー構造が採用される傾向が強い。このため、サッシの下枠の上面と屋内側の床面と屋外側のデッキ面やバルコニーの床面とを略面一に連続するように設計される例が多くなってきている。
【0004】
ところが、このようなバリアフリー構造は、引き戸サッシの例がほとんどで、建物開口部に折畳み扉を設けた開閉構造にはバリアフリー構造はなかった。
【0005】
その理由は、折畳み扉と扉枠の下枠との間の気密、水密が困難だからである。すなわち、扉枠の下枠の上面と屋内側の床面と屋外側のデッキ面やバルコニーの床面とを略面一に連続させる構造では、屋外側からの風雨が屋内に入り込むのを防止するのが難しいのである。
【0006】
従来の折畳み扉の下枠は屋内側が高く、屋外側が低くなるように段差をつけた構造となっており、このように屋外側が低い構造では、開扉時に扉体が下枠から離れることになんの問題もない。また、閉扉時には扉枠の屋内側の面を下枠の段差面に当接させることにより、屋内外の気密や水密は容易に確保することができる。
【特許文献1】特開2003−27845公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、バリアフリー構造では、扉枠の下枠の上面は略水平状態となるように形成されるから、扉体と下枠との間には隙間がなければ扉体を折り畳むことができない。ところが、その逆に、隙間があると、折畳み扉と下枠との間の気密、水密を保持することができない、という問題が発生するのである。
【0008】
その改善策としては、開扉時には扉枠の下枠周辺の床面はフラットになるが、閉扉時には上記下枠と床面とをシールするシール用部材が突出するような構造が考えられる。
【0009】
このようなシール用部材は、開扉時には人体や車椅子などの負荷に耐えられる強度が要求されるから、アルミニウムなどの金属から構成されなければならない。しかしながら、シール用部材は室内側に、しかも下枠に沿って長く配置されるものであるから、これが金属である場合には室内に金属特有の硬くて冷たい質感のシール用部材が露出することになり、内観が損なわれるという欠点がある。特に、扉枠や折畳み扉が室内側が合成樹脂や木粉を含む合成樹脂が現れるようにして、内観が柔らかく温かみのある質感を重視するサッシには適しないという問題がある。
本発明は上記問題点を解消し、バリアフリー構造であっても、外部との気密や水密を確保することができるとともに、内観の一体性も確保することができる折畳み扉装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明に係る折畳み扉装置は、扉枠の下枠上面を床面と略面一とし、上記扉枠の内側に折畳み扉を折畳み展開自在に収納した折畳み扉装置において、上記下枠の屋内側に沿って収納溝を形成し、この収納溝の内側に、回転により上記収納溝の上方に突出可能なシール用部材を収納する一方、上記折畳み扉には、閉扉時に上記シール用部材を回転させて上記収納溝から突出させる作動棒を上下動可能に取り付け、シール用部材が収納溝から突出したときは上記折畳み扉の下部の屋内側面に連続させるとともに、上記折畳み扉を、屋外側の金属部と屋内側の合成樹脂部とを結合した構成とし、かつ回転により上記収納溝から突出したシール用部材の屋内側に露出する面を合成樹脂製カバーで被覆して上記折畳み扉の下框の合成樹脂部に当接させたことを特徴とする。
【0011】
なお、前記扉枠の上枠および左右の縦枠を、屋外側の金属部と屋内側の合成樹脂部とを結合した構成とするのが好ましい。
【0012】
また、前記収納溝の内側を合成樹脂で覆うとともに、この合成樹脂の一部を延出させて前記下枠の屋内側の床面に固定するためのアングル片とし、前記シール用部材の回転時には、前記カバーと上記アングル片と前記折畳み扉の合成樹脂部とを連続させるのが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、閉扉時には作動棒を作動させてシール用部材が回転して収納溝の上方に突出し、折畳み扉の下框の屋内側面に連続する。これにより、シール用部材が折畳み扉と屋内側の床面との間の隙間を塞ぐことになるので、バリアフリー構造であっても、外部との気密や水密を確保することができる。
【0014】
また、このときシール用部材の合成樹脂が屋内側に露出する。折畳み扉の屋内側面は合成樹脂部によって構成されるので、屋内側にはシール用部材の合成樹脂製カバーと折畳み扉の合成樹脂部と扉枠の合成樹脂部とが現れることになる。したがって、柔らかく暖かい質感が得られ、内観の一体性を確保することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、折畳み扉だけでなく扉枠の屋内側の合成樹脂部もシール用部材の合成樹脂製カバーとともに一体となるので、サッシとシール用部材とから自然なぬくもりを得ることができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、さらに、扉枠の下枠の合成樹脂製アングル片もシール用部材の合成樹脂製カバーとの一体感がさらに増す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は折畳み扉装置を含むサッシの内観図、図2は図1のX−X線上の断面図、図3は図1のY−Y線上の断面図であり、建物躯体の扉枠1の内側には左右一対の折畳み扉2、3が配置されている。
【0018】
扉枠1と折畳み扉2、3は、図2、図3等に示すように、屋外側の金属部pと屋内側の合成樹脂部qとからなる複合サッシであり、図4に示されるように、閉扉時には面状に展開し、また開扉時には屋外側に折り畳まれるように構成されている。
【0019】
なお、扉枠1の下枠の屋内側には室内の床面が、屋外側にはデッキやバルコニーの面がそれぞれほぼ面一に連続しているものとする。
【0020】
扉枠1は、上枠1a、下枠1b及び縦枠1cを方形に枠組みしてなり、図示しない建物躯体の扉開口部の内周にネジによって固定されている。扉枠1と折畳み扉2、3の基本部分はそれぞれアルミニウムから成り、折畳み扉2、3の閉止時に屋内側に面する部位は合成樹脂から構成されている。なお、上枠1aと下枠1bにはその長手方向に沿って折畳み扉用の案内レール5、6が形成されている。下枠1bの案内レール6は屋外側レール部6aと屋内側レール部6bとから構成されている。
【0021】
各折畳み扉2、3は、互いに離れた吊り元側の固定框7と互いに突合せ可能な戸先框8との間に2枚の扉体9を継手框10を介して回動自在に連結してなるものである。そして、上記各框7、8、10及び扉体9は、アルミニウムと合成樹脂とから構成されている。なお、固定框7と戸先框8の上部にはローラ金具11が取り付けられ、ローラ金具11を上記上枠1aの扉案内レール5に転動自在に係合させることにより、固定框7と戸先框8のほか、これらの框の間に連結された2枚の扉体9と継手框10が吊り下げられている。また、下部には、下枠1bの案内レール6の屋外側レール6aに沿って回転する回転ローラ20の取付金具21が固定されている。
【0022】
固定框7の屋外側には突縁を介して断面がC字形の軸状部13が形成されている。固定框7の下部には落とし棒14が設けられ、扉枠1の下枠1bに形成した受け部材15に係合可能に構成されている。
【0023】
戸先框8は固定框7と対称的形状をなすように形成され、屋外側には突縁を介して断面がC字形の軸状部13が形成されている。また、戸先框8の屋内側には引き手17が形成されている。
【0024】
扉体9は上下框9a、9bと左右の縦框9cとにより方形に框組みされ、内側には二重ガラス22が装着されている。扉体9の各框の屋内側に面する部位も合成樹脂部qによって被覆されている。
【0025】
また、扉体9の固定框7と戸先框8に連結される側の縦框9cの長手方向には、上記固定框7及び戸先框8に形成されたC字形の軸状部13を回動自在に係合する軸受け溝18が形成されている。
【0026】
次に、上記2つの扉体9を連結する継手框10の框本体10aの屋内側には軸受け溝19が形成されている。軸受け溝19には、上記扉体9の継手框10に連結される縦框9cの屋内側端部に形成された断面C字形の軸状部13が回動自在に係合されている。
【0027】
また、図3、図4および図5(a)(b)に示されるように、継手框10の内側にはロック棒22が上下動可能に収納されている。このロック棒22の下部は、図5(a)(b)に示されるように、屋外側のロック部23と屋内側の作動棒24との二股に分岐されている。ロック部23は下枠1bの屋外側レール部6aの内部に挿入可能に配置され、作動棒24は、屋内側レール部6bに挿入可能に配置されている。なお、継手框10の屋内側には、ロック棒22を室内側から上下動操作する操作手段(図示せず)が設けられている。
【0028】
次に、上記下枠1bの案内レール6の屋内側に沿って収納溝25が形成され、この収納溝25の内側に、折畳み扉2、3に対応して2つのシール用部材26が回転自在に収納されている。シール用部材26の長さは略収納溝25の長さと同じである。収納溝25の内側も合成樹脂部qによって覆われている。そして、合成樹脂部qの一部は延出され、下枠1bの屋内側の床面に固定するためのアングル片16が形成されている。なお、アングル片16は設けられない場合もある。
【0029】
収納溝25は上記屋内側レール部6bの屋内側に隔壁27を隔てて設けられている。隔壁27の上端には円形の膨突部28が形成されている。
【0030】
これに対し、シール用部材26は図6に示されるように、略扇形の断面形状を有する押出し型材によって構成され、略直角を成す2つの側面部29、30には気密材31とクッション材32の取付溝33が形成され、基部にはL字形の突縁部34が形成され、その屈曲部の内側には略半円形の凹部35が形成されている。また、円弧状曲面部37には合成樹脂製のカバー38が取り付けられている。なお、該カバー38の一側端には気密片39が突出形成されている。
【0031】
上記シール用部材26は、突縁部34の凹部35を上記収納溝25の隔壁27上端の膨突部28に係合し、この係合部を中心に回転自在になっている。シール用部材26は、通常は収納溝25内に収納され、この状態では突縁部34の先端は屋内側レール部6bに略水平の状態で突出している。
【0032】
シール用部材26は折畳み扉の数に応じて配置される。つまり、シール用部材26は展開時の長さに対応するように配置される。上記扉枠に2つの折畳み扉2、3が配置されているので、図3に示されるように2つのシール用部材26が配置されている。なお、40は各シール用部材26の端部のキャップである。
【0033】
上記構成において、折畳み扉2、3を折り畳んで開扉したときは、図5(a)に示されるように、シール用部材26は収納溝25の内部に納まっており、その上側の側面部29の一部と気密材31が屋内側に面している。折畳み扉9を展開して閉扉したときは、同図(b)のように、各折畳み扉のロック棒22を下げて屋外側のロック部23を下枠の屋外側案内レール6aの内部に挿入させる。これにより、折畳み扉2、3は折り畳むことができなくなる。同時に、作動棒24も下がり、下枠1cの屋内側レール部6bに挿入する。このとき、作動棒24がシール用部材26の突縁部34に係合し、突縁部34はロック棒22の荷重により、下方に押し下げられるので、シール用部材26は回転して収納溝25の上方に突出する。図7に示されるように、収納溝25に収まっていたときは上方に面していた側面部29が垂直になり、気密材31を介して折畳み扉の下框9bの屋内側面に当接して連続する。
【0034】
このように、閉扉時にはシール用部材26が回転して収納溝25の上方に突出して折畳み扉の下框9bの屋内側面に当接する。これにより、シール用部材26が折畳み扉と屋内側の床面との間の隙間を塞ぐことになるので、バリアフリー構造であっても、外部との気密や水密を確保することができる。
【0035】
また、このときシール用部材26の円弧状曲面部の合成樹脂製カバー38が屋内側に露出する。扉枠1も、折畳み扉も、屋内側面は上述のように合成樹脂部によって構成されるので、屋内側にはシール用部材26の合成樹脂製カバー38と折畳み扉2、3の合成樹脂部qと扉枠1の合成樹脂部qとが連続して現れることになる。下部では、シール用部材26のカバー38と上記アングル片16と前記折畳み扉2、3の合成樹脂部qとが一体的に連続する。したがって、柔らかく暖かい質感が得られ、内観の一体性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】折畳み扉装置に係るサッシの内観図である。
【図2】図1のX−X線上の断面図である。
【図3】図1のY−Y線上の断面図である。
【図4】継手框の周辺部分の拡大断面図である。
【図5】(a)(b)はシール用部材の作動態様を示す断面図である。
【図6】シール用部材の拡大側面図である。
【図7】シール用部材が突出した状態の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
p 金属部
q 合成樹脂部
1b 下枠
2、3 折畳み扉
24 作動棒
25 収納溝
26 シール用部材
38 合成樹脂製カバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉枠の下枠上面を床面と略面一とし、上記扉枠の内側に折畳み扉を折畳み展開自在に収納した折畳み扉装置において、
上記下枠の屋内側に沿って収納溝を形成し、この収納溝の内側に、回転により上記収納溝の上方に突出可能なシール用部材を収納する一方、上記折畳み扉には、閉扉時に上記シール用部材を回転させて上記収納溝から突出させる作動棒を上下動可能に取り付け、シール用部材が収納溝から突出したときは上記折畳み扉の下部の屋内側面に連続させるとともに、
上記折畳み扉を、屋外側の金属部と屋内側の合成樹脂部とを結合した構成とし、かつ回転により上記収納溝から突出したシール用部材の屋内側に露出する面を合成樹脂製カバーで被覆して上記折畳み扉の下框の合成樹脂部に当接させた
ことを特徴とする折畳み扉装置。
【請求項2】
前記扉枠の上枠および左右の縦枠を、屋外側の金属部と屋内側の合成樹脂部とを結合した構成とした、請求項1記載の折畳み扉装置。
【請求項3】
前記収納溝の内側を合成樹脂で覆うとともに、この合成樹脂の一部を延出させて前記下枠の屋内側の床面に固定するためのアングル片とし、前記シール用部材の回転時には、前記カバーと上記アングル片と前記折畳み扉の合成樹脂部とを連続させた、請求項1又は請求項2に記載の折畳み扉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−118196(P2006−118196A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306750(P2004−306750)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】