説明

抜型用面版

【課題】一度剥がした際に、貼着面が塵埃や水分等で汚れても清掃によって貼着力を復原でき、長期保存も可能で、貼着面が破損しなければ、貼着力が弱まることなく何度でも再利用できるようにする。
【解決手段】シート素材に切断線、折目用の罫線を形成するように、ダイ型と共に使用されるカッティングプレート20上に面版1を固着する。この面版1の貼着面側には、カッティングプレート20に対する貼り付け、剥離、再貼り付けが可能な非粘着性吸着層5を形成する。この非粘着性吸着層5は、無数の微細陥没穴6を有するミクロ吸盤構造の厚さ50〜150ミクロンのアクリル系樹脂層によって形成する。これにより、貼着面に糊等の接着剤を塗布しなくても、単に圧着するだけで、微細陥没穴6内が負圧状態となることで一定の固着能力を有し、何度でも貼り剥がしができる面版1を形成可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種物品を包装収納する包装容器を組立構成する容器素材を形成するとき、打抜機におけるカッティングプレートに固着されることで、これの上方に設置された切断刃および罫線刃を有するダイ型と共に包装容器の容器素材外形を所定のシート素材から裁断分離すると同時にその折目線を形成できるようにした抜型用面版に係り、カッティングプレート上に固着されるときに接着剤を使わずに、ダイ型の切断刃および罫線刃に対応してカッティングプレート上に正確に位置決め固着でき、しかも繰り返しの再使用が可能となるようにした抜型用面版に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば板紙、段ボール、プラスチック等の各種のシート素材から包装容器の容器素材を切り抜くと同時に折り曲げ部分および裁断分離部分を形成する場合には、打ち抜き加工を行うための例えばオートン等の打抜機械において、容器素材に折り曲げ部分を形成する所謂面彫りを行うための罫線溝と、シート素材の切り抜き切断を行うための部分である切断用外縁部とを備えた面版を、例えば鉄板またはステンレス板製等のカッティングプレート上に貼り付け、それに相対向する切断刃および罫線刃を有する木板製のダイ型によってシート素材を打ち合わせることにより、当該シート素材から容器素材を切り抜くようにして、その折り曲げ部分と裁断分離部分とを形成する。
【0003】
この折り曲げ部分および裁断分離部分を形成する上記の面版として、例えばベークライト、PP等の樹脂製板の他に、重量性のあるステンレス板製等のプレートをNC加工して成るいわゆるCAD面版等が使用され、この面版をオートン等の打抜機械等のカッティングプレートの上に貼り付け、その溝部にダイ型の罫線刃を入り込ませると共に、周囲を切断刃にて切り抜くようにする。
【0004】
また、面版表面の罫線形成用の溝部は、例えば組み立てるべき包装容器の容器素材を、その折り込み線を備えた外形等に対応した展開形態としてコンピュータグラフィックス技術によって作図するとき、そのCADデータを元にエンドミルによるルーター採掘加工およびレーザー光線による溝切り加工等によって形成される。また、面版の裏面には、カッティングプレート面に接着固定させるための例えば接着剤等が塗布されており、この接着剤表面は剥離自在な離型紙によって保護されている。
【0005】
このような面版をカッティングプレート面に固着する際には、離型紙を剥がしてから、当該面版の裏面に塗布されている接着剤面側をカッティングプレートに当接させて固着している。ただ、この面版を使用する毎にカッティングプレート上に固着して使用し、使用後には廃棄するようにすると無駄が生じることになるから、例えば、接着剤を再度塗布することで再利用するものとし、あるいは特許文献1に開示されているような繰り返し使用可能なCAD面版なるものが提案されている。
【0006】
すなわち、この特許文献1に示すCAD面版は、裏面側に貼付け、剥離、再貼付けが可能なリユース糊を塗布し、このリユース糊面は塵埃や紙粉などが付着しないように剥離自在な離型紙で保護されている。そして、CAD面版をカッティングプレート上に固着する場合には、ダイ型に取り付けたセットピンに取り付けるなど適宜方法により行い、該CAD面版の離型紙を取り、打抜機の厚い高硬度のカッティングプレート上にリユース糊面によって接着するものとされている。また、利用後は打抜機における厚い高硬度のカッティングプレートから剥がし取り、リユース糊面を離型紙で保護することにより一時保管を行なうとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3137395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この特許文献1に示すCAD面版は、カッティングプレート上に固着、使用した後にCAD面版を剥がしてから再利用する際に、粘着材表面に塵埃や水分等が付着したり、保存によって粘着材自体が劣化したり等して固着力が低下し、また破損しやすくなってしまう。そのため、再利用可能であるとしても何回か使用すればCAD面版を廃棄する以外になく、その後に別の新たなCAD面版を製作使用する必要があるため、コストが掛かってしまう。しかも、この廃棄にあたって時には有毒な汚染物質を発する危険性もあり、環境に対して悪影響をもたらす結果になるという問題点を有していた。
【0009】
そこで、本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、一度剥がした際に、貼着面側に塵埃や水分等で汚れても清掃によって貼着力を復原でき、且つ長期保存も可能で、貼着力が弱まることなく何度でも再利用可能とし、また繰り返しの使用にも耐え得る強度性を備えた抜型用面版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明にあっては、シート素材Pに切断線、折目用の罫線を形成させるよう打抜機のカッティングプレート20上に固着配置される抜型用面版であって、該面版1の貼着面側に、カッティングプレート20面に対する貼り付け、剥離、再貼り付けが可能な非粘着性吸着層5を形成したものである。
また、非粘着性吸着層5は、無数の微細陥没穴6を有するミクロ吸盤構造の厚さ50〜150ミクロンのアクリル系樹脂層によって形成して成るものとすることができる。
【0011】
以上のように構成された本発明に係る抜型用面版にあって、面版1の貼着面側に形成された非粘着性吸着層5は、その表面に無数の微細陥没穴6が形成されたミクロ吸盤構造と成っているから、貼着面をカッティングプレート20に圧着した際には、非粘着性吸着層5が若干潰れ、無数の微細陥没穴6が負圧状態の真空状態となって、感圧吸着力を生起させる。
無数の微細陥没穴6の負圧状態の感圧吸着力は、面版1自体をカッティングプレート20上に確実に固着保持させ、繰り返されるダイ型10によるプレス圧力でも位置ずれを生じさせない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、打抜機におけるカッティングプレート20上に固着使用後で一度剥がした際に、これの貼着面側が塵埃や水分等で汚れても、清掃によってその貼着力が復原できるから、貼着力が弱まることなく何度でも再利用可能となり、且つ長期保存も可能であり、また、非粘着性吸着層5によって面版1自体の強度が増加し、繰り返しの使用にも耐え得る強度性を得ることができる。
【0013】
すなわち、これは本発明が、面版1の貼着面側に、カッティングプレート20に対する貼り付け、剥離、再貼り付けが可能な非粘着性吸着層5を形成したからであり、これにより、従来のように貼着面に糊等の接着剤を塗布しなくても、単に圧着するだけで一定の固着能力を有し、何度でも貼り剥がしができる。
【0014】
また、非粘着性吸着層5は、無数の微細陥没穴6を有するミクロ吸盤構造の厚さ50〜150ミクロンのアクリル系樹脂層によって形成して成るので、横ズレにも強くなり、打ち抜き加工時のプレス圧力によって面版1が何れの方向にもズレることがない。
【0015】
さらに、非粘着性吸着層5自体は、塵埃で汚れても軽く拭き取ることで吸着力が回復するから、再使用することができる。再使用に際し、非粘着性吸着層5自体が破損されなければ、非粘着性であるために、貼着力が弱まることがなく、これにより長期間の繰り返し使用が可能となる。
【0016】
尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項それぞれにおいて付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付したもので、図面中の符号によって示された構造・形状に本発明が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を実施するための一形態を示す面版の一例における平面図である。
【図2】同じく一部切欠背面図である。
【図3】同じく面版の貼着面に形成された非粘着性吸着層の一例を示し、(a)は貼着面をカッティングプレートに圧着する前の状態の拡大断面図、(b)は貼着面をカッティングプレートに圧着した状態の拡大断面図である。
【図4】同じくカッティングプレートへの面版の貼着例を説明するもので、(a)は面版から保護シートを剥がしてカッティングプレート上に載せる状態の断面図、(b)は面版を非粘着性吸着層を介してカッティングプレート上に固着させた状態の断面図、(c)は面版の上方に設置された切断刃および罫線刃を有するダイ型を使って包装容器の容器素材をシート素材から裁断分離した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態を詳細に説明すると、図において示される符号1は、打抜機における切り抜き切断と同時に折り込み罫線を形成するために使用される例えばCADにて形成された面版である。該面版1自体は、図1に示すように、該面版1の表面には例えば包装容器における折目線位置に対応した溝状の罫線溝2が形成されており、また面版1自体の外縁は、シート素材Pから包装容器の展開された必要な外形部分を切り抜くための、後述するダイ型10における切断刃11の配置形態に対応している切断用外縁部3となっている。
【0019】
面版1自体としては、折り込み組み立てられる包装容器の容器素材である例えば板紙、段ボール紙、プラスチックシート等のシート素材Pに比し、このシート素材Pとの硬度差を小さくした素材である例えばPP、PVC、PET、アクリル、ベークライト(登録商標)等のプラスチックシート材、更にはグラス繊維材等によって形成される他に、例えば重量性のあるステンレス板製等のプレートをNC加工したものでも良い。
【0020】
また、図2および図3に示すように、面版1の貼着面となる裏面には、カッティングプレート20面に接着固定させるための非粘着性吸着層5が形成されており、これの表面は剥離自在な例えば透明な所定肉厚の合成樹脂フィルム材等による保護シート4によって保護されている。この非粘着性吸着層5は、直径が5〜40ミクロンの無数の微細な気泡を内包するアクリル酸エステル共重合体エマルジョン液を面版1の貼着面側に塗工し、乾燥して成膜される厚さ約50〜150ミクロンのアクリル系樹脂層によるものであって、その表面は無数の微細陥没穴6を有するミクロ吸盤構造と成っている。
【0021】
この非粘着性吸着層5を形成する具体的な方法としては、例えばアクリル共重合樹脂DICNAL MEP−20WO 100KG、整泡剤DICNAL、 M−40 10KG、増粘剤DICNAL MX 10KG、架橋剤としてメラミン樹脂5KG(何れも大日本インキ化学工業製品)を混合してできたアクリルエマルジョンを、機械的発泡機オークスミキサーを通して空気混入させて調薬することで、直径が約5〜40ミクロンの無数の微細な気泡を内包する泡状微細発泡アクリルエマルジョン液を生成し、これを平滑面状に研磨処理された面版1の貼着面となる裏面に任意の厚さに均一に塗工し、その後、約110℃〜140℃の乾燥炉にて7分間乾燥することで、厚さ50〜150ミクロンのアクリル系樹脂層とすることによって形成される。
【0022】
一方、図4(c)に示すように、組み立てるべき例えばパッケージとされる板紙、段ボール紙、プラスチックシート等のシート素材Pによる包装容器に対応して、これの展開形態形状の外形に沿う切断刃11を例えば肉厚合板製のダイ型10に埋め込み状に配設する。また、包装容器となる容器素材の折目線となる折り込み罫線を形成する罫線刃12も同様にしてダイ型10に埋め込み状に配設し、罫線刃12の高さを切断刃11の高さに比し若干低く設定する。このとき、罫線刃12は、面版1の罫線溝2に対応して配置されている。
【0023】
尚、図中の符号7は、面版1を平板ディスク形状となるように、位置決め用の取付治具8を刳り抜くことで形成された面版位置決め用の開口部である。すなわち、カッティングプレート20面に面版1を位置決め固着するに際し、ダイ型10における切断刃11、罫線刃12それぞれに対応する罫線溝2、切断用外縁部3に合わせるように、ダイ型10面に面版1自体を位置合わせして仮止めし、その状態でダイ型10を例えば下降移動させてカッティングプレート20上に面版1を移し替える。この移し替え時に、取付治具8のみをカッティングプレート20上に固着貼り付けて、ダイ型10の上昇移動によって面版1を取り外し、その後、非粘着性吸着層5表面を露出した面版1自体をカッティングプレート20上に取り付けてある取付治具8の位置に面版1の開口部7を合致させるようにして、当該面版1をカッティングプレート20上に固着させるのである。こうすることで、ダイ型10の切断刃11の位置に切断用外縁部3が、罫線刃12の位置に罫線溝2がそれぞれ確実に合致された状態となってカッティングプレート20上面に面版1が正確に位置決め固着されるものとしている。尚、このような開口部7、取付治具8自体は、必要に応じて形成されるもので、これの形成、使用は任意であるのは、勿論である。
【0024】
次に、以上のように構成された形態についての使用の一例について説明すると、カッティングプレート20上面への面版1の固着設置に際し、図4(a)および図4(b)に示すように、ダイ型10をカッティングプレート20上方へ上昇移動させておく一方、面版1の裏面から保護シート4を剥離して非粘着性吸着層5表面を露出しておき、カッティングプレート20上に取り付けてある例えば取付治具8を利用し、その位置に面版1の開口部7を合致させるようにして当該面版1をカッティングプレート20上に固着させる。
【0025】
このとき、面版1の貼着面側に形成されている非粘着性吸着層5は、図3(a)に示すように、その表面に無数の微細陥没穴6が形成されたミクロ吸盤構造と成っているから、貼着面をカッティングプレート20に圧着した際には、図3(b)に示すように、非粘着性吸着層5が若干潰れて、この無数の微細陥没穴6が負圧状態の真空状態となり、この負圧空気の吸引力によって感圧吸着力を生起させるのである。
【0026】
シート素材Pに対する打ち抜き加工は従前と同様に行われ、図4(c)に示すように、例えば下方位置に配したカッティングプレート20に対し、上下方向で昇降する上方位置のダイ型10によってカッティングプレート20上の面版1上にセットされたシート素材Pを打ち抜く。このとき、ダイ型10は、切断刃11よりも低い罫線刃12によってシート素材Pを罫線溝2内に押し込ませると同時に、切断刃11によりシート素材Pの周囲を切り抜き切断する。
【0027】
こうして包装容器に対応する展開形態の容器素材をシート素材Pから得ると同時に、表面部分が凹み、裏部分へ出っ張った折り込み罫線が展開形態の折目として形成される。この容器素材には、その折目位置で溝状の折り込み罫線があるから、その罫線に沿って折り込むことで所定の包装容器が構成されるのである。
【符号の説明】
【0028】
P…シート素材
1…面版 2…罫線溝
3…切断用外縁部 4…保護シート
5…非粘着性吸着層 6…微細陥没穴
7…開口部 8…取付治具
10…ダイ型 11…切断刃
12…罫線刃
20…カッティングプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート素材に切断線、折目用の罫線を形成させるよう打抜機のカッティングプレート上に固着配置される抜型用面版であって、該面版の貼着面側に、カッティングプレートに対する貼り付け、剥離、再貼り付けが可能な非粘着性吸着層を形成したことを特徴とする抜型用面版。
【請求項2】
非粘着性吸着層は、無数の微細陥没穴を有するミクロ吸盤構造の厚さ50〜150ミクロンのアクリル系樹脂層によって形成して成る請求項1記載の抜型用面版。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−260112(P2010−260112A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110447(P2009−110447)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(303018034)明和抜型株式会社 (6)
【Fターム(参考)】