説明

押釦スイッチ

【課題】 良好な動作感触を得ることができ、薄形、かつ、安価で組み立て容易な横押しタイプの押釦スイッチを提供する。
【解決手段】 スイッチ接点を底部に設置した収納部1aを有する絶縁性のハウジング1と、ハウジングの側部より外部へ突出する押圧部8a及び押圧部から収納部内に突出する片持ち梁構造の作動部8bを有する絶縁性の操作部材8と、収納部に収納されて操作部材を押圧部の押圧方向に移動案内する絶縁性のガイド部材9と、収納部を覆う金属板製の蓋体7とを備え、ガイド部材が作動部と向き合って突出する駆動部9dを有し、駆動部が作動部の先端側に蓋体側から当接して押圧部の押圧を可動接点方向に変換する傾斜部9gを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話,デジタルカメラ,携帯音楽プレーヤ,PDA等の携帯型電子機器に使用される薄形で横押しタイプの押釦スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、横方向(水平方向)からの押圧を縦方向(垂直方向)に変換する横押しタイプの押釦スイッチが知られている。この従来の押釦スイッチの一例として特許文献1に記載の押釦スイッチを図9〜図12に示す。図9は従来例の押釦スイッチを示す断面図、図10は従来例の押釦スイッチを示す平面図、図11は従来例の押釦スイッチの蓋体を外した状態を示す平面図、図12は従来例の押釦スイッチの動作状態を示す断面図である。
【0003】
図9〜図12において、符号11はハウジングで、合成樹脂等の絶縁材からなり、収納部11aを有する上面開口状の箱型に形成される。収納部11aの内底部には金属板からなる一対の固定接点12a、12bがインサート成形等の方法により一部が内底面に表出されて一体に埋設される。ハウジング11の対向する一対の側面の下方側には前記一対の固定接点12a、12bから導出された外部端子13a、13bが突出して形成される。ハウジング11の他の一側面には前記収納部11aに連通する窓口部11bが設けられる。また、ハウジング11の四角部には外方へ突出する係合凸部11cが形成される。
【0004】
前記収納部11aの一対の固定接点12a、12bの上には金属板でドーム状に湾曲して反転可能に形成された可動接点14が載置される。可動接点14は頂部下面が内底面に表出された一方の固定接点12aと一定の間隔を維持して対峙され、外周部が図では省略されているが収納部11aの内底面に表出された他方の固定接点12bと接触した状態で配置される。
【0005】
前記可動接点14の上面側にはポリアミド樹脂等の絶縁性の樹脂シート材からなる防塵シート15が配設される。防塵シート15は外周部が前記ハウジング11の収納部11a上面に載置されて収納部11aの開口を覆うように接着剤などで固着されており、収納部11a内に配設された各接点部へのゴミ、異物等の侵入を防止する。
【0006】
また、符号16は操作部材で、合成樹脂等の絶縁材からなり、前記ハウジング11の窓口部11bから突出する押圧部16aと、押圧部16aから前記収納部11a内に突出して形成された作動部16bと、作動部16bの周りに設けた開口部16cを介して前記作動部16bの両側部及び後部を囲むように押圧部16aに接続して形成されたスライド部16dとを有する。操作部材16は前記収納部11aに配設された防塵シート15の上面側に配置され、押圧部16aが前記ハウジング11の窓口部11bから突出されると共に、作動部16dの自由端である当接部16eが前記防塵シート15を挟んで前記可動接点14の頂部上面に対向して配設され、スライド部16dが前記収納部11a内に摺動可能に収納される。
【0007】
さらに、符号17は蓋体で、金属板を打ち抜き折り曲げることにより形成されており、前記ハウジング11の上部に取り付けられて収納部11aを覆うように平板状に形成された上板17aと、上板17aの四角部から略直角に折り曲げられ、L字状に下方に垂下された4個の取付脚とを有する。取付脚の先端には係止片が設けられ、この係止片を前記ハウジング11の四角部に設けられた前記係止凸部11cに係止することにより蓋体17が前記ハウジング11上部に取り付けられる。
【0008】
前記上板17aの中央部には前記作動部16bの当接部16eと当接してこの作動部16bを前記可動接点14の押圧方向へ案内する案内部が切り起こしで形成される。案内部は、上板17aの板面を前記ハウジング11の収納部11a内へ前記操作部材16の押圧方向に沿って折り曲げられた略45度の斜面からなる傾斜部17bと、傾斜部17bの両側部に連続して設けられると共に、上板17aと接続された略三角形状の一対の接続部17cとから形成される。前記蓋体17が前記ハウジング11の上部に取り付けられた際には前記傾斜部17b及び接続部17cが、前記操作部材16のスライド部16dに設けられた開口部16c内に位置して配置される。この時、前記傾斜部17bが操作部材16の作動部16bの当接部16eに対向して配置される。
【0009】
上記構成の従来例の押釦スイッチでは図9に示す自由状態において、操作部材16は作動部16bの当接部16eが防塵シート15を介して可動接点14の頂部上面に当接される。そして、可動接点14が有する上方への弾性付勢力と、蓋体17の傾斜部17bとの相乗作用により、紙面左方向(押圧部16aの押圧方向とは逆方向)に付勢されて押圧部16aが外方へ突出される。この時、可動接点14は外周部が固定接点12bと接触し、頂部下面が固定接点12aと離間しており、スイッチはオフ状態である。
【0010】
図9に示す自由状態から押圧部16aが紙面右方向へ押圧されると、図12に示すように、作動部16bの当接部16eが蓋体17の傾斜部17bに沿って紙面下方向(押圧部6aの押圧方向とは直交する下方向)に案内され、防塵シート15を介して可動接点14の頂部上面を押圧する。これにより、可動接点14が下方へ反転して頂部下面が固定接点12aと接触し、固定接点12aと12bが導通接続され、スイッチがオンになる。
【0011】
図12に示す動作状態から押圧部16aの押圧が解除されると、可動接点14は元の自由状態に戻って頂部下面が固定接点12aから離され、固定接点12aと12bの導通が断たれ、スイッチがオフになる。そして、この時に付勢力で作動部16bの当接部16eは蓋体17の傾斜部17bに沿って紙面左方向に付勢されて押圧部16aが外方へ突出し、図9に示す自由状態に戻る。
【特許文献1】特開2006−244977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の押釦スイッチでは操作部材の押圧部の押圧を可動接点方向に変換する傾斜部を蓋体の天板中央部を切り起こすことで形成しているため、傾斜部と可動接点との間に絶縁距離をとる必要があり、押釦スイッチの低背化が構造的に図りにくい。また、蓋体の天板中央部に孔が開き、ハウジングの収納部の開口を防塵シートで覆い、収納部内に配設された各接点部へのゴミ、異物等の侵入を防止する防塵措置をとる必要があり、防塵措置によって押釦スイッチの動作感触を損うと共に、部品点数が多くなりコスト及び組み立て性に問題があった。
【0013】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、良好な動作感触を得ることができ、薄形、かつ、安価で組み立て容易な横押しタイプの押釦スイッチを提供することにある。
【0014】
また、従来の押釦スイッチは1動作タイプであるが、近年、携帯型電子機器の小形・薄型化に加えて多機能化が進む中で2段動作タイプの押釦スイッチが強く求められている。そこで、本発明の他の目的は、良好な動作感触を得ることができ、薄形、かつ、安価で組み立て容易な2段動作の横押しタイプの押釦スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、収納部を有する絶縁性のハウジングと、前記収納部の底部に設けられた固定接点と、前記固定接点の上に設置された可動接点と、前記収納部に摺動可能に収納され、前記ハウジングの側部より外部へ突出する押圧部及びこの押圧部から前記収納部内に突出する片持ち梁構造の作動部を有する絶縁性の操作部材と、前記収納部に収納され、前記操作部材を前記押圧部の押圧方向に移動案内する絶縁性のガイド部材と、前記ハウジングに取り付けられて前記収納部を覆う金属板製の蓋体とを備えた押釦スイッチであって、前記ガイド部材が、前記作動部と向き合って突出する駆動部を有し、前記駆動部が、前記作動部の先端側に前記蓋体側から当接して前記押圧部の押圧を可動接点方向に変換する傾斜部を設けることを特徴とする。
【0016】
上記のように構成した請求項1に記載の発明では、操作部材の押圧部の押圧を可動接点方向に変換する傾斜部を絶縁性のガイド部材の駆動部に設けるので、傾斜部と可動接点との間の絶縁距離を可及的に小さくする又はなくすことも可能で、押釦スイッチの低背化を図ることができる。また、従来の押釦スイッチのような防塵措置をとる必要がなく、押釦スイッチの動作感触の向上を図ることができると共に、部品点数の削減によってコストの低下及び組み立て性の向上を図ることができる。さらに、蓋体にかかる押圧荷重を駆動部を介してより広い面積に分散させることができ、押圧荷重によって蓋体が変形しにくく、押釦スイッチの耐久性の向上を図ることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明に、前記ガイド部材が、前記押圧部の押圧方向に沿って延設するガイド部を有し、前記操作部材が、前記押圧部の押圧方向に沿って延設し、前記ガイド部の上で前記押圧部の押圧方向に摺動するスライド部を有する構成が付加されたものである。
【0018】
このような付加構成により、押釦スイッチの組み立てにあたり、蓋体をハウジングに取り付ける際、操作部材を押えてそのスライド部によってガイド部材のガイド部を押えることによって、操作部材とガイド部材の両者をハウジングの収納部に保持することができ、蓋体をハウジングに取り付けやすく、さらなる押釦スイッチの組み立て性の向上を図ることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明に、前記可動接点はドーム状金属板からなり、該可動接点が前記固定接点の上に上下2段に設置され、上側可動接点の外周部の底部側及び下側可動接点の外周部と中心部の底部側の3箇所に異なる固定接点を設けた構成が付加されたものである。
【0020】
このような付加構成により、2段動作の押釦スイッチを実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によれば、良好な動作感触を得ることができ、薄形、かつ、安価で組み立て容易な横押しタイプの押釦スイッチを提供することができる。また、良好な動作感触を得ることができ、薄形、かつ、安価で組み立て容易な2段動作の横押しタイプの押釦スイッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施の形態による押釦スイッチを示す断面図、図2は図1のA部拡大図、図3は本発明の一実施の形態による押釦スイッチの分解状態を示す斜視図、図4は本発明の一実施の形態による押釦スイッチを裏返しにした状態の分解状態を示す斜視図、図5は本発明の一実施の形態による押釦スイッチの外観を示す斜視図、図6は本発明の一実施の形態による押釦スイッチの蓋体を外した状態を示す平面図である。なお、以下の説明では図3における矢印a−b方向を押釦スイッチの前後方向、矢印c−d方向を押釦スイッチの左右方向、矢印e−f方向を押釦スイッチの上下方向として説明する。
【0023】
図1〜図6において、符号1はハウジングであり、合成樹脂等の絶縁材からなり、収納部1aを有する上面開口状の箱型に形成される。ハウジング1の内底面1bの4つの角部には一段下げられた浅い上側可動接点支え凹部1cが設けられ、各上側可動接点支え凹部1cより内側のハウジング1の内底面1bにはさらに深い略円形の下側可動接点収納凹部1dが設けられ、下側可動接点収納凹部1dの外周部には前後の上側可動接点支え凹部1cの間に突出する左右の曲げ部収納部1eが設けられる。また、前記ハウジング1の前後の側壁には切り欠き部1f,1gが設けられ、前記ハウジング1の4つの角部外面には係合凹部1hが設けられ、各係合凹部1hの上側には下に向かって漸次外側に拡がる傾斜状のガイド部1iが設けられる。さらに、前記ハウジング1の外底面の外周部には複数の浅い外部接続端子用凹部1jが設けられると共に、各外部接続端子用凹部1jの内側には実装時の位置決めピン1kが突設される。
【0024】
前記ハウジング1はインサート成形により第1,第2,第3の固定端子2,3,4と一体に成形される。第1,第2,第3の固定端子2,3,4は金属板を打ち抜き及び曲げ加工することによって形成され、ハウジング1の底部に絶縁状態で埋設固定される。第1固定端子2は一部を前記上側可動接点支え凹部1cに略面一に露出して第1固定接点としてのコモン接点2aを形成する。第2固定端子3はその一部を前記下側可動接点収納凹部1dの底面外周部で、ハウジング1の対角方向に配置された他の2つの前記上側可動接点支え凹部1cの内側の2箇所に略面一に露出して、第2固定接点としての第1選択接点3aを形成する。第3固定端子4は、その一部を前記下側可動接点収納凹部1dの底面中心部に略面一に露出して、第3固定接点としての第2選択接点4aを形成する。また、第1,第2,第3の固定端子2,3,4はそれぞれ、その他の一部を所定の前記外部接続端子用凹部1jに略面一に露出して、前記コモン接点2a,前記第1選択接点3a,第2選択接点4aと導通のある第1外部接続端子2b,第2外部接続端子3b、第3外部接続端子4bを形成する。
【0025】
図1〜図4において、符号5は上側可動接点、符号6は下側可動接点であり、上側可動接点5及び下側可動接点6は金属板を打ち抜き及び曲げ加工することによって形成された反転可能なドーム状金属板からなる。上面が凸、下面が凹となるドーム状の上側可動接点5は頂部(中心部)に上面が凸、下面が凹となる載頭円錐状で後述する蓋体方向(上方向)に突出するさらなる凸部5aを有すると共に、外周部から左右方向に突出する前後一対の脚部5bが設けられる。上面が凸、下面が凹となるドーム状の下側可動接点6には外周部から左右方向に突出する曲げ部6aが設けられる。各曲げ部6aは上方に向かって開口するコ字状に形成される。上側可動接点5は4本の前記各脚部5bを介して前記上側可動接点支え凹部1cで支持され、下側可動接点6は外周部が前記下側可動接点収納凹部1dの底面外周部で支持され、前記ハウジング1の収納部1aの底部に一定の隙間を設けて上側可動接点5及び下側可動接点6が上下2段に設置される。設置状態では上側可動接点5は脚部5bを介してコモン接点2aと常時接触し、下側可動接点6は外周部が第1選択接点3aと常時接触すると共に、中心部がその下側の前記第2選択接点4aと一定の隙間を設けて対向する。下側可動接点6の各曲げ部6aは前記曲げ部収納部1eに嵌り込み、上部をハウジング1の内底面1bに臨ませる。
【0026】
図1〜図5において、符号7は蓋体であり、金属板を打ち抜き及び曲げ加工することによって形成される。蓋体7は前記ハウジング1の上部に取り付けられ、前記収納部1aを覆うように矩形平板状に形成された上板7aと、上板7aの前後側縁の両端部から折り曲げで垂下されたL字状の取付脚7bと、後側の左右取付脚7bの間に一体に形成され、前記上板7aの後側縁から折り曲げで後側の左右取付脚7bの間に垂下され、前記ハウジング1の後側の切り欠き部1gを覆う後側板7cと、上板7aの左右側縁から折り曲げで垂下され、前記ハウジング1の左右外側面に重ね合わせる左右側板7dとを有する。前記各取付脚7bの先端側には係止片7fが設けられる。
【0027】
蓋体7は押釦スイッチの組み立て最終段階に上板7aをハウジング1の上部に取り付けて前記収納部1aを覆う際に、各取付脚7bの先端側(係止片7f)をハウジング1の各ガイド部1iに摺接させながら外側に押し広げた後、各ガイド部1iを乗り越えた時点で元に弾性復帰させ、ハウジング1の各係合凹部1hに各係止片7fを係合させることにより、ハウジング1に一体に結合される。
【0028】
図1〜図6において、符号8は操作部材(押釦)であり、合成樹脂等の絶縁材からなり、前記ハウジング1の前側の切り欠き部1fから外部へ突出する押圧部8aと、押圧部8aから前記収納部1a内に突出する片持ち梁構造の作動部8bと、前記押圧部8aから前記作動部8bの左右両外側で前記収納部1a内に突出する左右のスライド部8cとを有する。左右のスライド部8cは外側下角部が四角く切り欠かれてL形の断面形状を有する。操作部材8は前記ハウジング1の収納部1aの底部に上下2段で設置された前記可動接点5,6の上側に配置され、押圧部8aが前記ハウジング1の前側の切り欠き部1fから外部へ突出され、作動部8bと左右のスライド部8cの上面が前記蓋体7の上板7aに摺動自在に当接して、作動部8bの自由端側である先端側が前記上側可動接点5の頂部に対向して配置され、左右のスライド部8cが前記収納部1a内の左右両側部で押圧部8aの押圧方向に沿って延設されて収納される。
【0029】
前記作動部8bは先端側が固定端側(支点側)である根元側より幅広に形成され、作動部8bの先端側上部にはその先端側上角部を面取りて形成された略45°の傾斜面からなる第1傾斜部8dが設けられ、作動部8bの先端側下部にはその先端側下角部を面取りして形成された略25°の傾斜面でなる第2傾斜部8eが設けられ、第2傾斜部8eの中央部に可動接点押圧部8fを下向きに突出して形成する。可動接点押圧部8fの表面は前記上側可動接点5の凸部5aの周辺部上面から凸部5aの周側面に当接するよう円弧状に湾曲形成される。
【0030】
図1〜図4,図6において、符号9はガイド部材であり、合成樹脂等の絶縁材からなり、前記ハウジング1の収納部1a内の外周部に収納される周辺部9aを有する。周辺部9aはコ字形に形成され、前記ハウジング1の後側の側壁に沿って収納部1a内の後部に配置される連結部9bと、連結部9bの左右両端部から前記ハウジング1の左右側の側壁に沿って前方へ延設されて収納部1a内の左右両側部に配置される左右のガイド部9cを設ける。また、周辺部9aは下面がハウジング1の内底面1bに当接支持され、外周側面がハウジング1の側壁内面に当接され、上面が前記蓋体7の上板7aで押さえられて、前記収納部1b内の外周部に位置固定されて収納される。左右のガイド部9cは内側下角部が四角く切り欠かれてL形の断面形状を有する。左右のガイド部9cの下部水平部分の上に左右の前記スライド部8cの上部水平部分を重ね合わせて、左右のガイド部9cの垂直部分によって左右の前記スライド部8cの左右方向の移動を規制すると共に、左右のガイド部9cの下部水平部分とそれに対向する蓋体7の上板7aとによって左右の前記スライド部8cの上下方向の移動を規制し、左右の前記スライド部8cの前後方向の移動のみを許容して、周辺部9aの左右のガイド部9cによって前記操作部材8を前記押圧部8aの押圧方向に沿って前後方向に移動案内する。また、左右のガイド部9cは前記ハウジング1の各上側可動接点支え凹部1c及び左右の曲げ部収納部1eの開放上面を覆い、前記各脚部5aを押えて前記上側可動接点5の浮き上がりを防止すると共に、前記左右の曲げ部6aを押えて前記下側可動接点6の浮き上がりを防止する。
【0031】
前記ガイド部材9は前記作動部8bと向き合うように周辺部9aの連結部9bから左右のガイド部9cの間に突出する駆動部9dを有する。駆動部9dの左右方向の幅は前記作動部8bの幅広に形成された左右方向の幅と略同じに形成され、上下方向の厚みはハウジング1の内底面1bから上の高さすなわち前記収納部1aの高さと略同じに形成され、駆動部9dの上面が周辺部9aの上面と面一に形成されて前記蓋体7の上板7aで押さえられる。また、駆動部9dの下面には前記収納部1aの底部に突出する凸形状すなわち上側可動接点5のドーム形状とその頂部のさらなる凸形状を逃がすための(干渉をなくすための)凹部が設けられる。凹部には駆動部9dの基端側から先の下面全面に形成されて上側可動接点5のドーム形状を逃がす浅い第1凹部9eと、駆動部9dの先端側下面に形成されて上側可動接点5のドーム形状の頂部に有するさらなる凸形状すなわち凸部5aを逃がす深い第2凹部9fを設ける。第2凹部9fは下方と作動部方向(前方向)にも開放される。駆動部9dは上面が前記蓋体7の上板7aで押さえられて、上側可動接点5のドーム形状とその頂部のさらなる凸部5a形状を第1凹部9f及び第2凹部9gを介して自身(駆動部9d)の厚み内に逃がしながら、前記収納部1a内の後部から前方へ突出されて上側可動接点5の上側に配置され、駆動部9dの先端側が前記上側可動接点5の頂部に対向して配置される。
【0032】
そして、前記駆動部9dの先端側に前記作動部8bの第1傾斜部8dに蓋体7の上板7a側(上側)から当接して前記押圧部8aの押圧を可動接点方向(下方)に変換する第1傾斜部8dと略同じ傾きの第3傾斜部9gを設ける。
【0033】
本実施の形態による押釦スイッチの組み立ては、図3に示すように、ハウジング1の収納部1aの底部に上側可動接点5と下側可動接点6を上下2段に設置し、次に操作部材8とガイド部材9とをそれらの先端側を相対させた状態で相互に接近させて、作動部8bの第1傾斜部8dと駆動部9dの第3傾斜部9gを当接させると共に、左右のガイド部9cの下部水平部分の上に左右のスライド部8cの上部水平部分を重ね合わせた状態に組み合わせた操作部材8とガイド部材9を、操作部材8の押圧部8aをハウジング1の前側の切り欠き部1fに嵌め込みながら前記収納部1aに収納し、最後に蓋体7を上方から被せてハウジング1に取り付けて完了する。
【0034】
次に、図1,図2,図7,図8を参照して本実施の形態による押釦スイッチの動作を説明する。図7は本発明の一実施の形態による押釦スイッチの1段目の動作状態を示す断面図、図8は本発明の一実施の形態による押釦スイッチの2段目の動作状態を示す断面図である。
【0035】
操作部材8を操作しない動作前の自由状態では、図1,図2に示すように、上側可動接点5と下側可動接点6はそれぞれが上向きに膨らんだドーム形状の自由状態にあり離間し、上側可動接点5の駆動部9dと対向する部分がその駆動部9dの下面に有する第1凹部9e内に位置すると共に、上側可動接点5の頂部に有する凸部5aが駆動部9dの先端側に有する第2凹部9f内に位置し、下側可動接点6は中心部が第2選択接点4aに対し離間対向する。また、操作部材8は自由位置に位置して作動部8bが押圧部8aから略水平に収納部1a内に突出支持され、作動部8bの第1傾斜部8dが駆動部9dの第3傾斜部9gの上部に当接すると共に、作動部8bの可動接点押圧部8fが駆動部9dの第2凹部9f内に位置する上側可動接点5の凸部5aの周側面とその周囲の上側可動接点5の頂部上面に当接する。
【0036】
この自由状態から操作部材8の押圧部8aを横方向から前方へ押圧すると、図7に示すように、操作部材8が全体的に前方へ移動し、作動部8bの第1傾斜部8dが駆動部9dの第3傾斜部9gの上をその傾斜下端側に向かって摺動することにより、押圧部8aの横方向からの押圧が下直角方向に変換される。これにより、作動部8bの先端側が作動部8bの撓み変形を伴って押し下げられる。また、作動部8bの可動接点押圧部8fと駆動部9dの第2凹部9f内に位置する上側可動接点5の凸部5aの周側面が当接しているので、作動部8bの先端側の下降しながらの前方への移動に伴って、上側可動接点5の凸部5aの周側面が作動部8bの可動接点押圧部8fの表面を傾斜下端側に向けて摺動することにより、押圧部8aの横方向からの押圧が下直角方向に変換される。これにより、上側可動接点5の凸部5aが押し下げられる。したがって、上側可動接点5の頂部が、作動部8bの先端側の下がり量にさらに上側可動接点5の凸部5aの下がり量を加えた、押圧部8aの押圧ストロークよりも長い押圧ストローク(押し下げストローク)で押し下げられる。
【0037】
そして、上側可動接点5の頂部が押し下げられると、上側可動接点5は下向きに反転動作して、その下側にある下側可動接点6に接触するため、コモン接点2aと第1選択接点3aとが上下の可動接点5,6を通して電気的に導通接続され、1段目のスイッチがオンになるすなわち1段目の感触と電気信号を出力する。
【0038】
続いて、操作部材8の押圧部8aを横方向からさらに前向へ押圧すると、図8に示すように、操作部材8が全体的にさらに前方へ移動し、作動部8bの第1傾斜部8dが駆動部9dの第3傾斜部9gの上をその傾斜下端側に向かってさらに摺動することにより、作動部8bの先端側が作動部8bのさらなる撓み変形を伴ってさらに押し下げられると共に、作動部8bの先端側の下降しながらの前方への移動に伴って、上側可動接点5の凸部5aの周側面が作動部8bの可動接点押圧部8fの表面を傾斜下端側に向けてさらに摺動し、ついには上側可動接点5の凸部5aの上面が作動部8bの可動接点押圧部8fの表面を摺動し、作動部8bの先端側が上側可動接点5の凸部5aの上に乗り上げることにより、上側可動接点5の凸部5aがさらに押し下げられる。したがって、上側可動接点5の頂部が、作動部8bの先端側のさらなる下がり量にさらに上側可動接点5の凸部5aのさらなる下がり量を加えた、押圧部8aの押圧ストロークよりも長い押圧ストロークで押し下げられる。これにより、上側可動接点5の頂部で下側可動接点6の頂部が押し下げられる。
【0039】
そして、下側可動接点6の頂部が押し下げられると、下側可動接点6は下向きに反転動作して、その下側にある第2選択接点4aに接触するため、コモン接点2aと第2選択接点4aとが上下の可動接点5,6を通して電気的に導通接続され、1段目のスイッチに続いて2段目のスイッチがオンになるすなわち1段目の感触と電気信号の出力に続いて2段目の感触と電気信号を出力する。
【0040】
なお、操作部材8の押圧部8aが押圧されて下側可動接点6の頂部と第2選択接点4aが接触している間は、1段目のスイッチ及び2段目のスイッチのオン状態を保つ。
【0041】
1段目のスイッチ及び2段目のスイッチのオン状態で、操作部材8の横方向からの押圧を除くと、上下の可動接点5,6がそれぞれ弾性により上向きに反転動作して元の自由状態に戻ると共に、操作部材8の作動部8bもその弾性力により自由状態に戻り、これに伴って、操作部材8が自由位置に戻り、図1に示した元の操作部材8を操作しない動作前の自由状態に戻る。この自由状態への復帰時に、下側可動接点6と第2選択接点4aとの接触が断たれ時点で2段目のスイッチがオフになり、上側可動接点5と下側可動接点6との接触が断たれた時点で1段目のスイッチがオフになる。
【0042】
上記のように本実施の形態による押釦スイッチは、収納部を有する絶縁性のハウジングと、前記収納部の底部に設けられた固定接点と、前記固定接点の上に設置された可動接点と、前記収納部に摺動可能に収納され、前記ハウジングの側部より外部へ突出する押圧部及びこの押圧部から前記収納部内に突出する片持ち梁構造の作動部を有する絶縁性の操作部材と、前記収納部に収納され、前記操作部材を前記押圧部の押圧方向に移動案内する絶縁性のガイド部材と、前記ハウジングに取り付けられて前記収納部を覆う金属板製の蓋体とを備えた押釦スイッチであって、前記ガイド部材が、前記作動部と向き合って突出する駆動部を有し、前記駆動部が、前記作動部の先端側に前記蓋体側から当接して前記押圧部の押圧を可動接点方向に変換する傾斜部を設ける構成としたもので、操作部材の押圧部の押圧を可動接点方向に変換する傾斜部を絶縁性のガイド部材の駆動部に設けるので、傾斜部と可動接点との間の絶縁距離を可及的に小さくする又はなくすことも可能で、押釦スイッチの低背化を図ることができる。また、従来の押釦スイッチのような防塵措置をとる必要がなく、押釦スイッチの動作感触の向上を図ることができると共に、部品点数の削減によってコストの低下及び組み立て性の向上を図ることができる。さらに、蓋体にかかる押圧荷重(押圧反力)を駆動部を介してより広い面積に分散させることができ、押圧荷重によって蓋体が変形しにくく、押釦スイッチの耐久性の向上を図ることができる。
【0043】
さらに、前記可動接点がドーム状金属板からなり、頂部に前記蓋体方向に突出する凸部を有し、前記作動部方向と前記可動接点方向に開放され、前記可動接点の凸部を逃がす凹部を設け、前記作動部の先端側を前記駆動部の傾斜部と前記可動接点の凸部に当接させる構成としたもので、可動接点の頂部に有する凸部を駆動部に設けた凹部によって逃がすので、可動接点の凸部によって押釦スイッチの薄型を損なうこともない。さらに、作動部の先端側が傾斜部と凸部を摺動しながら押圧部の押圧ストロークより長い押圧ストロークで可動接点を押圧(押し下げ)するので、傾斜部の長さを小さくして必要な可動接点の押圧ストロークを確保することができ、さらなる押釦スイッチの低背化を実現することができる。
【0044】
また、前記ガイド部材が、前記押圧部の押圧方向に沿って延設するガイド部を有し、前記操作部材が、前記押圧部の押圧方向に沿って延設し、前記ガイド部の上で前記押圧部の押圧方向に摺動するスライド部を有する構成としたもので、押釦スイッチの組み立てにあたり、蓋体をハウジングに取り付ける際、操作部材を押えてそのスライド部によってガイド部材のガイド部を押えることによって、操作部材とガイド部材の両者をハウジングの収納部に保持することができ、蓋体をハウジングに取り付けやすく、さらなる押釦スイッチの組み立て性の向上を図ることができる。
【0045】
また、前記可動接点が前記固定接点の上に上下2段に設置され、上側可動接点の外周部の底部側及び下側可動接点の外周部と中心部の底部側の3箇所に異なる固定接点を設けた構成としたもので、2段動作の押釦スイッチを実現することができる。
【0046】
したがって、本実施の形態による押釦スイッチにおいては、良好な動作感触を得ることができ、薄形、かつ、安価で組み立て容易な横押しタイプの押釦スイッチを得ることができる。また、良好な動作感触を得ることができ、薄形、かつ、安価で組み立て容易な2段動作の横押しタイプの押釦スイッチを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態による押釦スイッチを示す断面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】本発明の一実施の形態による押釦スイッチの分解状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態による押釦スイッチを裏返しにした状態の分解状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施の形態による押釦スイッチの外観を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施の形態による押釦スイッチの蓋体を外した状態を示す平面図である。
【図7】本発明の一実施の形態による押釦スイッチの1段目の動作状態を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態による押釦スイッチの2段目の動作状態を示す断面図である。
【図9】従来例の押釦スイッチを示す断面図である。
【図10】従来例の押釦スイッチを示す平面図である。
【図11】従来例の押釦スイッチの蓋体を外した状態を示す平面図である。
【図12】従来例の押釦スイッチの動作状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 ハウジング
1a 収納部
2a コモン接点(固定接点)
3a 第1選択接点(固定接点)
4a 第2選択接点(固定接点)
5 上側可動接点(可動接点)
6 下側可動接点(可動接点)
7 蓋体
8 操作部材
8a 押圧部
8b 作動部
8c スライド部
9 ガイド部材
9c ガイド部
9d 駆動部
9g 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部を有する絶縁性のハウジングと、前記収納部の底部に設けられた固定接点と、前記固定接点の上に設置された可動接点と、前記収納部に摺動可能に収納され、前記ハウジングの側部より外部へ突出する押圧部及びこの押圧部から前記収納部内に突出する片持ち梁構造の作動部を有する絶縁性の操作部材と、前記収納部に収納され、前記操作部材を前記押圧部の押圧方向に移動案内する絶縁性のガイド部材と、前記ハウジングに取り付けられて前記収納部を覆う金属板製の蓋体とを備えた押釦スイッチであって、前記ガイド部材が、前記作動部と向き合って突出する駆動部を有し、前記駆動部が、前記作動部の先端側に前記蓋体側から当接して前記押圧部の押圧を可動接点方向に変換する傾斜部を設けることを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項2】
前記ガイド部材が、前記押圧部の押圧方向に沿って延設するガイド部を有し、前記操作部材が、前記押圧部の押圧方向に沿って延設し、前記ガイド部の上で前記押圧部の押圧方向に摺動するスライド部を有することを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ。
【請求項3】
前記可動接点はドーム状金属板からなり、該可動接点が前記固定接点の上に上下2段に設置され、上側可動接点の外周部の底部側及び下側可動接点の外周部と中心部の底部側の3箇所に異なる固定接点を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の押釦スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−70671(P2009−70671A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237538(P2007−237538)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】