説明

拡張機能障害または拡張期心不全の予防または処置のためのレニン阻害剤の使用

本発明は温血動物の拡張機能障害または拡張期心不全の予防、顕性になるまでの進行の遅延、または処置のための医薬品の製造のための治療上有効量のレニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩の単独でまたは(i)ACE阻害剤もしくはその薬学的に許容される塩;または(ii)アンギオテンシンII受容体遮断薬もしくはその薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
天然酵素レニンは腎臓から血液に入り、ここでそれはアンギオテンシノーゲンを切断し、デカペプチドアンギオテンシンIを放出し、これは次いで肺、腎臓およびその他の器官で切断されてオクタペプチドアンギオテンシノーゲンIIを形成する。オクタペプチドは動脈血管収縮により直接的に、および副腎からナトリウムイオン保持性ホルモンアルドステロンを遊離し、細胞外液容量の増加を伴うことにより間接的に、の双方で血圧を上昇させる。その増加はアンギオテンシンIIの作用に起因し得る。レニンの酵素活性の阻害剤はアンギオテンシンIの形成の低下をもたらす。結果的により少量のアンギオテンシンIIが生成される。活性ペプチドホルモンの濃度低下は例えばレニン阻害剤の血圧低下効果の直接原因である。
【0002】
さらなる評価によりレニン阻害剤を広範囲の治療適応に用いることもできることが示されている。
【0003】
今や驚くべきことに、血圧および血液容量を制御することによる拡張機能障害および拡張期心不全の処置にレニン阻害剤を用いることができることが見出されている。なおさらに驚くべきことに、レニン阻害剤は、プロフィブリン形成性(profibrogenic)アンギオテンシンIIのレベルを抑制することにより左心室(LV)肥大およびそれに付随する心線維症の亢進の発症を遅延させるかまたはさらには逆転させることが見出されている。
【0004】
したがって、本発明は温血動物に治療上有効量のレニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、拡張機能障害または拡張期心不全の予防、顕性になるまでの進行の遅延、または処置のための方法に関する。
【0005】
本明細書で用いる拡張機能障害は心臓筋肉(心筋)の機械的特性の異常を意味し、そしてLV拡張期伸展性の異常、充満障害、および駆出分画が正常であるか低下しているか、および患者が無症候性であるかまたは症候性であるかにかかわらず、緩徐なまたは遅延した弛緩を含む。無症候性拡張機能障害は駆出分画が正常で、そして例えば高血圧性心疾患の患者においてしばしば認められるLV充満のエコードップラーパターンが異常である無症候性の患者を意味する。
【0006】
このように、高血圧性左心室肥大であり、そして心エコー図が正常な駆出分画および異常な左心室充満を示す無症候性の患者は、拡張機能障害を有していると言うことができる。
【0007】
かかる患者が運動に耐えられないおよび呼吸困難の状態を呈するならば、特に静脈性うっ血および肺浮腫の徴候があれば、拡張期心不全なる用語を用いることがさらに適切である。この用語はLV収縮機能障害を有する無症候性および症候性患者において用いられる用語と同等であり、そしてそれにより患者が症候を有しても有さなくとも、LV機能障害の全患者を含む病態生理学的、診断的および治療的構想の使用が促進される(William H. Gaasch and Michael R. Zile, Annu. Rev. Med. 55:37394(2004);Gerard P. Aurigemma, William H. Gaasch, N. Engl. J. Med. 351:1097−105(2004))。
【0008】
換言すれば、心臓が効率よくポンピングするために、LVは続いて大動脈に送り出すために血液(左心房から来る)をその心室に受け入れることができなければならない。左心房からの血液の収容は1つには血液流入に応答してLVがどのくらい弛緩および膨張できるかに依存する。時にLVは左心房からの血液容量を収容するのに十分に膨張できず、結果的にLVの(血液での)充満障害に至る。これは心筋の機械的機能障害のために起こり得る。それは駆出分画、すなわち実際に送り出されるLVの血液分画の異常(低い)に至る。
【0009】
拡張機能障害または拡張期心不全に至る因子の中で、制御不能な高血圧および体液貯留が顕著である。レニン阻害剤は少なくともアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤およびアンギオテンシンII受容体遮断薬(ARB、AT受容体アンタゴニストとも称される)と同程度有効に血圧を低下させることが解っており、したがってこれはその抗高血圧効果のために拡張機能障害の進展の発症の遅延を示唆している。さらに、レニン阻害剤はアンギオテンシンIIの生成を有効に調整するので、アルドステロンレベルもまた低下すると予測され、そしてしたがってレニン阻害剤はまた体液貯留をも制限し得る。レニンアンギオテンシン系(RAS)の遮断薬、特にレニン阻害剤の抗線維化特性に基づいて、かかる薬剤はプロフィブリン形成性(profibrogenic)アンギオテンシンIIのレベルを抑制することによりLV肥大の進展およびそれに付随する心線維症の亢進を阻害し得る。
【0010】
さらにレニン阻害剤と(i)ACE阻害剤または(ii)アンギオテンシンII受容体遮断薬との組み合わせにより各々の単剤療法の構成成分単独を超える相加的または相乗的な治療効果が付与されることが本発明により示された。
【発明の開示】
【0011】
したがって、本発明はさらに温血動物にレニン阻害剤または、その薬学的に許容される塩と
(i)ACE阻害剤もしくはその薬学的に許容される塩;または
(ii)アンギオテンシンII受容体遮断薬もしくはその薬学的に許容される塩
との治療上有効量の組み合わせを投与することを含む、拡張機能障害または拡張期心不全の予防、顕性になるまでの進行の遅延、または処置のための方法に関する。
【0012】
本発明のその他の目的、特徴、利点および態様は以下の記載および添付の請求の範囲から当業者には明らかになろう。しかしながら、以下の記載、添付の請求の範囲および具体的な実施例は本発明の好ましい実施態様を示すものであるが、説明のためだけに提供されるものであると理解されるべきである。開示した本発明の精神および範囲内での種々の変更および修飾は下記を読むことにより当業者には容易に明らかになろう。略語は一般的に当分野において公知のものである。
【0013】
本発明の特定の態様を記載するために本明細書にて使用する種々の用語の定義を以下に列挙する。しかしながら、本明細書で用いる定義およびその略語は一般的に当分野において公知のものであり、そして具体例で特記しない場合は本明細書全体にわたって用いる用語に適用する。
【0014】
「予防」なる用語は本明細書で言及する状態の進展を予防するための健常な患者への防止的投与を意味する。さらに、「予防」なる用語は処置すべき状態の前段階にある患者への防止的投与を意味する。
【0015】
本明細書で用いる「顕性になるまでの進行の遅延」なる用語は、処置すべき対応する状態の前段階にある患者への投与を意味し、ここで、患者はその状態の前形態と診断されている。
【0016】
「処置」なる用語は疾患、状態または障害に対抗する目的での患者の管理および介護と理解される。
【0017】
「治療上有効量」なる用語は研究者または臨床医により求められている組織、系または動物(ヒトを含む)の望ましい生物学的または医学的応答を引き出す薬物または治療薬の量を意味する。
【0018】
本明細書で用いる「相乗的」なる用語は、本発明の方法、組み合わせおよび医薬組成物で得られる効果が、本発明の活性成分を別々に含む個々の方法および組成物の結果である効果の合計よりも大きいことを意味する。
【0019】
「温血動物または患者」なる用語は本明細書では互換的に用いられ、限定するものではないがヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、サル、ウサギ、マウスおよび実験動物を含む。好ましい哺乳動物はヒトである。
【0020】
「薬学的に許容される塩」なる用語は医薬産業において一般的に用いられる無毒性の、当分野において周知の方法に従って調製され得る塩を意味する。
【0021】
レニン阻害剤、とりわけアリスキレンおよびACE阻害剤もしくはアンギオテンシンII受容体遮断薬、または各々の場合のその薬学的に許容される塩の「組み合わせ」なる用語は、構成成分を医薬組成物としてまたは同一の単位投与形態の一部として一緒に投与できることを意味する。組み合わせはまたレニン阻害剤、とりわけアリスキレンもしくはその薬学的に許容される塩、およびACE阻害剤もしくはアンギオテンシンII受容体遮断薬、または各々の場合のその薬学的に許容される塩を各々別々であるが、同一の治療計画の一部として投与することを含む。構成成分は別々に投与されるとき、本質的に同時に投与される必要はないが、それが望ましいときはそのようにできる。したがって、組み合わせはまた例えばレニン阻害剤、とりわけアリスキレンもしくはその薬学的に許容される塩、およびACE阻害剤もしくはアンギオテンシンII受容体遮断薬、または各々の場合のその薬学的に許容される塩を別々の投与量または投与形態としてであるが、同時に投与することを意味する。組み合わせはまた異なる時間で、および任意の順序での別々の投与もまた含む。
【0022】
本発明が適用されるレニン阻害剤はインビボでレニン阻害活性を有する、したがって例えば拡張機能障害または拡張期心不全の予防、顕性になるまでの進行の遅延、または処置のための治療薬として医薬的有用性を有するいずれかのものである。とりわけ本発明は米国特許第5559111号;第6197959号;および第6376672号に開示されるレニン阻害剤に関し、その全内容は出典明示により本明細書の一部とする。
【0023】
レニン阻害剤には様々な構造上の特徴を有する化合物が含まれる。例えばジテキレン(化学名:[1S−[1R,2R,4R(1R,2R)]]−1−[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]−L−プロリル−L−フェニルアラニル−N−[2−ヒドロキシ−5−メチル−1−(2−メチルプロピル)−4−[[[2−メチル−1−[[(2−ピリジニルメチル)アミノ]カルボニル]ブチル]アミノ]カルボニル]ヘキシル]−N−アルファ−メチル−L−ヒスチジンアミド);テルラキレン(化学名:[R−(R,S)]−N−(4−モルホニリルカルボニル)−L−フェニルアラニル−N−[1−(シクロヘキシルメチル)−2−ヒドロキシ−3−(1−メチルエトキシ)−3−オキソプロピル]−S−メチル−L−システインアミド);およびザンキレン(化学名:[1S−[1R[R(R)],2S,3R]]−N−[1−(シクロヘキシルメチル)−2,3−ジヒドロキシ−5−メチルヘキシル]−アルファ−[[2−[[(4−メチル−1−ピペラジニル)スルホニル]メチル]−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−アミノ]−4−チアゾールプロパンアミド)、好ましくは各々の場合のその塩酸塩からなる群から選択される化合物に言及することができる。
【0024】
本発明の好ましいレニン阻害剤には各々式(I)および(II):
【化1】

および
【化2】

のRO66−1132およびRO66−1168または各々の場合のその薬学的に許容される塩が含まれる。
【0025】
とりわけ本発明は式:
【化3】

(式中、
はハロゲン、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;Rはハロゲン、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;RおよびRは独立して分岐したC3−6アルキルであり;そしてRはシクロアルキル、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルオキシ−C1−6アルキル、C1−6アミノアルキル、C1−6アルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6ジアルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルアミノ−C1−6アルキル、HO(O)C−C1−6アルキル、C1−6アルキル−O−(O)C−C1−6アルキル、HN−C(O)−C1−6アルキル、C1−6アルキル−NH−C(O)−C1−6アルキルまたは(C1−6アルキル)N−C(O)−C1−6アルキルである)またはその薬学的に許容される塩のδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド誘導体であるレニン阻害剤に関する。
【0026】
アルキルとしては、Rは直鎖状または分岐していてよく、そして好ましくは1から6個のC原子、特に1または4個のC原子を含んでよい。例はメチル、エチル、n−およびi−プロピル、n−、i−およびt−ブチル、ペンチルならびにヘキシルである。
【0027】
ハロゲンアルキルとしては、Rは直鎖状または分岐していてよく、そして好ましくは1から4個のC原子、特に1または2個のC原子を含んでよい。例はフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2−クロロエチルおよび2,2,2−トリフルオロエチルである。
【0028】
アルコキシとしては、RおよびRは直鎖状または分岐していてよく、そして好ましくは1から4個のC原子を含んでよい。例はメトキシ、エトキシ、n−およびi−プロピルオキシ、n−、i−およびt−ブチルオキシ、ペンチルオキシならびにヘキシルオキシである。
【0029】
アルコキシアルキルとしては、Rは直鎖状または分岐していてよい。アルコキシ基は好ましくは1から4個、および特に1または2個のC原子を含み、そしてアルキル基は好ましくは1から4個のC原子を含む。例はメトキシメチル、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、5−メトキシペンチル、6−メトキシヘキシル、エトキシメチル、2エトキシエチル、3−エトキシプロピル、4−エトキシブチル、5−エトキシペンチル、6−エトキシヘキシル、プロピルオキシメチル、ブチルオキシメチル、2−プロピルオキシエチルおよび2−ブチルオキシエチルである。
【0030】
1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシとしては、Rは直鎖状または分岐していてよい。アルコキシ基は好ましくは1から4個、および特に1または2個のC原子を含み、そしてアルキルオキシ基は好ましくは1から4個のC原子を含む。例はメトキシメチルオキシ、2−メエトキシエチルオキシ、3−メトキシプロピルオキシ、4−メトキシブチルオキシ、5−メトキシペンチルオキシ、6−メトキシヘキシルオキシ、エトキシメチルオキシ、2−エトキシエチルオキシ、3−エトキシプロピルオキシ、4−エトキシブチルオキシ、5−エトキシペンチルオキシ、6−エトキシヘキシルオキシ、プロピルオキシメチルオキシ、ブチルオキシメチルオキシ、2−プロピルオキシエチルオキシおよび2−ブチルオキシエチルオキシである。
【0031】
好ましい実施態様では、Rはメトキシ−またはエトキシ−C1−4アルキルオキシであり、そしてRは好ましくはメトキシまたはエトキシである。特に好ましいのは式(III)(式中、Rは3−メトキシプロピルオキシであり、そしてRはメトキシである)の化合物である。
【0032】
分岐アルキルとしては、RおよびRは好ましくは3から6個のC原子を含む。例はi−プロピル、i−およびt−ブチル、ならびにペンチルおよびヘキシルの分岐異性体である。好ましい実施態様では、式(III)の化合物のRおよびRは各々の場合でi−プロピルである。
【0033】
シクロアルキルとしては、Rは好ましくは3から8個の環炭素原子を含んでよく、3または5個が特に好ましい。いくつかの例はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロオクチルである。シクロアルキルは場合によっては、アルキル、ハロ、オキソ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオール、アルキルチオ、ニトロ、シアノ、ヘテロシクリル等のような1つまたはそれより多い置換基により置換されていてよい。
【0034】
アルキルとしては、Rはアルキルの形態で直鎖状または分岐していてよく、そして好ましくは1から6個のC原子を含んでよい。アルキルの例は前記で列挙した。メチル、エチル、n−およびi−プロピル、n−、i−およびt−ブチルが好ましい。
【0035】
1−6ヒドロキシアルキルとしては、Rは直鎖状または分岐していてよく、そして好ましくは2から6個のC原子を含んでよい。いくつかの例は2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、2−、3−または4−ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチルおよびヒドロキシヘキシルである。
【0036】
1−6アルコキシ−C1−6アルキルとしては、Rは直鎖状または分岐していてよい。アルコキシ基は好ましくは1から4個のC原子を、そしてアルキル基は好ましくは2から4個のC原子を含む。いくつかの例は2−メトキシエチル、2−メトキシプロピル、3−メトキシプロピル、2−、3−または4−メトキシブチル、2−エトキシエチル、2−エトキシプロピル、3−エトキシプロピルおよび2−、3−または4−エトキシブチルである。
【0037】
1−6アルカノイルオキシ−C1−6アルキルとしては、Rは直鎖状または分岐していてよい。アルカノイルオキシ基は好ましくは1から4個のC原子を、そしてアルキル基は好ましくは2から4個のC原子を含む。いくつかの例はホルミルオキシメチル、ホルミルオキシエチル、アセチルオキシエチル、プロピオニルオキシエチルおよびブチロイルオキシエチルである。
【0038】
1−6アミノアルキルとしては、Rは直鎖状または分岐していてよく、そして好ましくは2から4個のC原子を含んでよい。いくつかの例は2−アミノエチル、2−または3−アミノプロピルおよび2−、3−または4−アミノブチルである。
【0039】
1−6アルキルアミノ−C1−6アルキルおよびC1−6ジアルキルアミノ−C1−6アルキルとしては、Rは直鎖状または分岐していてよい。アルキルアミノ基は好ましくはC1−4アルキル基を含み、そしてアルキル基は好ましくは2から4個のC原子を有する。いくつかの例は2−メチルアミノエチル、2−ジメチルアミノエチル、2−エチルアミノエチル、2−エチルアミノエチル、3−メチルアミノプロピル、3−ジメチルアミノプロピル、4−メチルアミノブチルおよび4−ジチルアミノブチルである。
【0040】
HO(O)C−C1−6アルキルとしては、Rは直鎖状または分岐していてよく、そしてアルキル基は好ましくは2から4個のC原子を含む。いくつかの例はカルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシプロピルおよびカルボキシブチルである。
【0041】
1−6アルキル−O−(O)C−C1−6アルキルとしては、Rは直鎖状または分岐していてよく、そしてアルキル基は好ましくは互いに独立して1から4個のC原子を含む。いくつかの例はメトキシカルボニルメチル、2−メトキシカルボニルエチル、3−メトキシカルボニルプロピル、4−メトキシ−カルボニルブチル、エトキシカルボニルメチル、2−エトキシカルボニルエチル、3−エトキシカルボニルプロピルおよび4−エトキシカルボニルブチルである。
【0042】
N−C(O)−C1−6アルキルとしては、Rは直鎖状または分岐していてよく、そしてアルキル基は好ましくは2から6個のC原子を含む。いくつかの例はカルバミドメチル、2−カルバミドエチル、2−カルバミド−2,2−ジメチルエチル、2−または3−カルバミドプロピル、2−、3−または4−カルバミドブチル、3−カルバミド−2−メチルプロピル、3−カルバミド−1,2−ジメチルプロピル、3−カルバミド−3−エチルプロピル、3−カルバミド−2,2−ジメチルプロピル、2−、3−、4−または5−カルバミドペンチル、4−カルバミド−3,3−または−2,2−ジメチルブチルである。
【0043】
したがって、好ましいのは式:
【化4】

(式中、Rは3−メトキシプロピルオキシであり;Rはメトキシであり;そしてRおよびRはイソプロピルである)を有する式(III)のδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド誘導体またはその薬学的に許容される塩であり;化学的に2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(3−アミノ−2,2−ジメチル−3−オキソプロピル)−2,7−ジ(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)フェニル]−オクタンアミドとして定義され、アリスキレンとしても公知である。
【0044】
「アリスキレン」なる用語は、具体的に定義されない場合、遊離塩基として、およびその塩としての双方で、特にその薬学的に許容される塩、最も好ましくはそのヘミフマル酸塩として理解される。
【0045】
アンギオテンシンII受容体遮断薬はアンギオテンシンII受容体のAT受容体サブタイプに結合するが、結果的に受容体の活性化には至らないこれらの活性薬剤であると理解される。
【0046】
AT受容体の遮断の結果として、これらのアンタゴニストを例えば抗高血圧剤として用いることができる。
【0047】
本発明の組み合わせで用いることができる適当なアンギオテンシンII受容体遮断薬には異なる構造上の特徴を有するAT受容体アンタゴニストが含まれ、好ましいのは非ペプチド構造を有するものである。例えばバルサルタン(欧州特許第443983号)、ロサルタン(欧州特許第253310号)、カンデサルタン(欧州特許第459136号)、エプロサルタン(欧州特許第403159号)、イルベサルタン(欧州特許第454511号)、オルメサルタン(欧州特許第503785号)、タソサルタン(欧州特許第539086号)、テルミサルタン(欧州特許第522314号)、式:
【化5】

のE−4177と称される化合物、以下の式:
【化6】

のSC−52458と称される化合物、および式:
【化7】

の化合物ZD−8731と称される化合物、または各々の場合のその薬学的に許容される塩;からなる群から選択される化合物に言及することができる。
【0048】
好ましいAT受容体アンタゴニストは上市されているこれらの薬剤であり、最も好ましいのはバルサルタンまたはその薬学的に許容される塩である。
【0049】
ACE阻害剤でのアンギオテンシンIのアンギオテンシンIIへの酵素分解の妨害は血圧調節のための一種の成功例であり、そしてしたがって高血圧の処置のための利用可能な治療方法になる。
【0050】
本発明の組み合わせで用いられる適当なACE阻害剤は例えばアラセプリル、ベナゼプリル、ベナゼプリラート、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナプリラート、フォシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリル、テモカプリルおよびトランドラプリル、または各々の場合のその薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物である。
【0051】
好ましいACE阻害剤は市販されているこれらの薬剤であり、最も好ましいのはベナゼプリルおよびエナラプリルである。
【0052】
好ましくは本発明の組み合わせはレニン阻害剤、例えばアリスキレン、特にそのヘミフマル酸塩の形態、およびACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリルまたはアンギオテンシンII受容体遮断薬、例えばバルサルタン、または各々の場合のその薬学的に許容される塩を含む。
【0053】
最も好ましいのはアリスキレン、特にそのヘミフマル酸塩の形態およびバルサルタン、またはその薬学的に許容される塩を含む本発明の組み合わせである。
【0054】
本明細書前記で言及したような、組み合わせられた化合物はその薬学的に許容される塩として存在し得る。これらの化合物が例えばアミノ基のような少なくとも1つの塩基性中心を有するとき、それらはその酸付加塩を形成することができる。同様に、少なくとも1つの酸基(例えばCOOH)を有する化合物は塩基と塩を形成することができる。
【0055】
化合物が例えばカルボキシおよびアミノ基の双方を含むとき、対応する分子内塩がさらに形成され得る。
【0056】
対応する活性成分または薬学的に許容される塩はまた水和物のようなまたは例えばその結晶化において用いられたその他の溶媒を含む溶媒和物の形態で用いてよい。
【0057】
さらに本発明はレニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩、好ましくはそのヘミフマル酸塩の形態のアリスキレン、および薬学的に許容される担体を含む、拡張機能障害または拡張期心不全の予防、顕性になるまでの進行の遅延、または処置のための医薬組成物を提供する。
【0058】
別の態様では、本発明はさらに、
(i)ACE阻害剤、好ましくはベナゼプリルもしくはエナラプリル、または各々の場合のその薬学的に許容される塩;または
(ii)アンギオテンシンII受容体遮断薬、好ましくはバルサルタン、もしくはその薬学的に許容される塩;
と組み合わせたレニン阻害剤、またはその薬学的に許容される塩、好ましくはそのヘミフマル酸塩の形態のアリスキレン、および薬学的に許容される担体を含む拡張機能障害または拡張期心不全の予防、顕性になるまでの進行の遅延、または処置のための医薬組成物を提供する。
【0059】
本明細書前記に開示したとおり、レニン阻害剤、とりわけアリスキレン、好ましくはそのヘミフマル酸塩の形態を単独で、またはACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリル、またはアンギオテンシンII受容体遮断薬、例えばバルサルタン、または各々の場合のその薬学的に許容される塩と組み合わせて医薬組成物として同時投与することができる。構成成分を任意の従来の投与形態で、通常はまた薬学的に許容される担体または希釈剤と一緒に投与することができる。
【0060】
本発明の医薬組成物はヒトを含む哺乳動物への経口または経直腸のような経腸的、経皮的および非経腸的投与に適したものである。経口投与用にはレニン阻害剤、とりわけアリスキレン、好ましくはそのヘミフマル酸塩の形態を単独で、またはACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリル、またはアンギオテンシンII受容体遮断薬、例えばバルサルタン、または各々の場合のその薬学的に許容される塩と組み合わせて含む医薬組成物は溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、マイクロエマルジョン、単位用量の薬包等の形態を取ることができる。a)希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/もしくはグリシン;b)滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウムもしくはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;錠剤用にはまたc)結合剤、例えばケイ酸マグネシウムアルミニウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/もしくはポリビニルピロリドン;所望によりd)崩壊剤、例えばデンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または発泡混合物;ならびに/またはe)吸収剤、着色剤、着香剤および甘味剤と一緒に活性成分を含む錠剤およびゼラチンカプセルが好ましい。注射用組成物は好ましくは水性等張溶液または懸濁液であり、そして坐剤は脂肪エマルジョンまたは懸濁液から調製されるのが有利である。
【0061】
該組成物は滅菌されていてよく、そして/または保存剤、安定剤、湿潤剤もしくは乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調節のための塩および/またはバッファーのような佐剤を含有できる。加えてそれらはまたその他の治療上価値のある物質を含有することもできる。該組成物を各々従来の混合、造粒またはコーティング方法に従って調製し、そして約0.1−90%、好ましくは約1−80%の活性成分を含有する。
【0062】
活性成分の投与量は投与様式、恒温動物種、年齢および/または個々の状態のような種々の因子に依存し得る。
【0063】
本発明の医薬用の組み合わせの活性成分のための好ましい投与量は治療上有効な投与量、特に市販により利用可能なものである。
【0064】
通常経口投与の場合、例えばおよそ75kgの体重の患者で、約1mgから約360mgのおよその1日用量が概算される。
【0065】
例えば体重およそ75kgのヒトを含む温血動物に投与されるアリスキレンの用量は、特にレニン活性の阻害に、例えば血圧低下に有効な用量は約3mgから約3g、好ましくは約10mgから約1g、例えば20から200mg/ヒト/日であり、好ましくは、例えば同一の大きさでよい単回用量の1から4回に分割される。通常子供には成体用量の約半分が投与される。各個体に必要な用量を例えば活性成分の血清濃度を測定することによりモニタリングすることができ、そして最適レベルに調整することができる。単回用量は例えば成体患者あたり75mg、150mgまたは300mgを含む。
【0066】
ACE阻害剤の場合、ACE阻害剤の好ましい投与量単位は、例えばベナゼプリル約5mgから約20mg、好ましくは5mg、10mg、20mgもしくは40mg;カプトプリル約6.5mgから100mg、好ましくは6.25mg、12.5mg、25mg、50mg、75mgもしくは100mg;エナラプリル約2.5mgから約20mg、好ましくは2.5mg、5mg、10mgもしくは20mg;フォシノプリル約10mgから約20mg、好ましくは10mgもしくは20mg;ペリンドプリル約2.5mgから約4mg、好ましくは2mgもしくは4mg;キナプリル約5mgから約20mg、好ましくは5mg、10mgもしくは20mg;またはラミプリル約1.25mgから5mg、好ましくは1.25mg、2.5mg、もしくは5mgを含む錠剤またはカプセルである。好ましいのは1日3回投与である。
【0067】
アンギオテンシンII受容体遮断薬、例えばバルサルタンは適当な投与量単位形態、例えばカプセルまたは錠剤の形態で供給され、そして治療上有効量のアンギオテンシンII受容体遮断薬、例えばバルサルタン約20から約320mgを含み、それを患者に適用することができる。活性成分の適用を1日3回まで、例えばアンギオテンシンII受容体遮断薬、例えばバルサルタンの1日用量20mgまたは40mgで出発して、1日80mgを経て、そしてさらには1日160mgまで、そして最終的には1日320mgまで増量して行うことができる。好ましくはアンギオテンシンII受容体遮断薬、例えばバルサルタンを1日1回または1日2回、各々80mgまたは160mgの用量で適用する。対応する用量を例えば朝、昼または夕方に取ることができる。
【0068】
前記の用量は本発明の活性成分の治療上有効量を包含する。
【0069】
本発明は別々に投与することができる化合物の組み合わせでの予防、顕性になるまでの進行の遅延、または処置のための方法に関し、本発明はまたキットの形態での別々の医薬組成物を組み合わせることにも関する。キットは例えば別々の2つの医薬組成物:(1)レニン阻害剤、とりわけアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む組成物;ならびに(2)ACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリル、またはアンギオテンシンII受容体遮断薬、例えばバルサルタン、または各々の場合のその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む組成物を含み得る。(1)および(2)の量は、別々に同時投与したときに有益な治療効果が得られるような量である。キットは分かれたビンまたは分かれたホイルのような別々の組成物を含有する容器を含み、ここで各区画は例えば(1)または(2)を含む複数の投与形態(例えば錠剤)を含有する。これに代えて、活性成分を含有する投与形態を別々にするよりもむしろ、キットは別々の区画を含有でき、その各々が今度は別々の投与形態を含む全投与量を含有する。この型のキットの例はブリスターパックであり、ここで各個々のブリスターは2つ(またはそれより多い)錠剤、医薬組成物(1)を含む第1の(またはそれより多い)錠剤、および医薬組成物(2)を含む第2の(またはそれより多い)錠剤を含有する。典型的にはキットは別々の構成成分の投与のための指示書を含む。別々の構成成分が様々な投与形態(例えば経口および非経口)で投与されるのが好ましく、様々な投与間隔で投与されるか、または組み合わせの個々の構成成分のタイトレーションが処方医により望まれるとき、キット形態は特に有利である。したがって本発明の場合、キットは:
(1)第1の投与形態でレニン阻害剤、とりわけアリスキレン、好ましくはそのヘミフマル酸塩の形態、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む治療上有効量の組成物;
(2)第2の投与形態で、投与後に有益な治療効果が得られるような量のACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリル、またはアンギオテンシンII受容体遮断薬、例えばバルサルタン、または各々の場合のその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む組成物;ならびに
(3)該第1および第2投与形態を含有するための容器;
を含む。
【0070】
レニン阻害剤、例えばアリスキレンの作用を、とりわけインビトロ試験により実験的に実証することができ、種々の系で(ヒト血漿、精製ヒトレニンを合成または天然レニン基質と一緒に)アンギオテンシンIの形成の低下を測定する。
【0071】
レニンはその基質に対して種特異性を示すので、ヒトレニン阻害剤は従来のインビボ動物モデルにおいて効率よく試験することができない。この問題を回避するために、ヒトレニンまたはヒトアンギオテンシノーゲン遺伝子のいずれかを抱く遺伝子導入ラットが開発されている。ヒトレニンはラットアンギオテンシノーゲンを効率よく切断せず、そして同様にラットレニンはヒトアンギオテンシノーゲンをあまり切断しない。結果的に単一遺伝子導入ラット(すなわちヒトアンギオテンシノーゲンまたはレニンのいずれかのための遺伝子導入)が正常血圧である。しかしながら、異種交配させたとき、二重遺伝子導入(dTGR)の子孫は例えば高血圧および拡張機能障害を進展させ、そして7または8週齢を超えて生存しない。
【0072】
レニン阻害剤、例えばアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩を単独でまたはACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリル、またはアンギオテンシンII受容体遮断薬、例えばバルサルタン、または各々の場合のその薬学的に許容される塩と組み合わせて、種々の投与経路で投与することができる。各薬剤を広範な投与量にわたって試験して、各治療薬単独またはその具体的な組み合わせのための最適薬物レベルを決定して最大応答を引き出すことができる。これらの研究のために、群あたり少なくとも6匹の動物からなる処置群を用いることが好ましい。各研究は、組み合わせ処置群の効果が、個々の構成成分が評価されるのと同時に決定される方式で行われるのが最も良い。薬物効果は急性投与で観察され得るが、慢性の設定での応答を観察するのが好ましい。長期間研究は生ずる代償応答を完全に進展させるのに十分な期間であり、したがって観察された効果は、継続または持続効果を示す試験系の実際の応答を表す可能性が最も高い。
【0073】
したがって、レニン阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を単独でまたはACE阻害剤もしくはアンギオテンシンII受容体遮断薬、または各々の場合のその薬学的に許容される塩との組み合わせで、ヒトレニンおよびヒトアンギオテンシノーゲン(dTGR)を発現する二重遺伝子導入ラットの拡張機能障害または拡張期心不全に及ぼすその阻害効果に関して試験することができる。例えば拡張機能障害を進展させる前(予防計画)または拡張機能障害を進展させた後(処置計画)に動物をアリスキレン(1mg/kg/日−30mg/kg/日)で処置することができる。心機能の測定をインビボでラット心臓の組織ドップラー撮像により行うことができる。
【0074】
同様にレニン阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を単独でまたはACE阻害剤もしくはアンギオテンシンII受容体遮断薬、または各々の場合のその薬学的に許容される塩との組み合わせで、マウスren−2(レニン)遺伝子を発現するRen−2遺伝子導入ラットの拡張機能障害または拡張期心不全に及ぼすその阻害効果に関して試験することができる。これらのラットをストレプトゾトシンで注射することのより糖尿病にすることができ、そして冠動脈を結紮(糸で縛る)して心筋梗塞を誘起することにより拡張機能障害を誘起することができる。その後から1か月までにわたって心線維症および拡張機能障害が進展する。例えば拡張機能障害を進展させる前(予防計画)または拡張機能障害を進展させた後(処置計画)に動物をアリスキレン(1mg/kg/日−60mg/kg/日)で処置することができる。心機能の測定をインビボでラット心臓の組織ドップラー撮像により行うことができる。
【0075】
例としては、4週齢、雄dTGRに高血圧を進展させ、そして5.5週齢で代謝ケージに入れる。収縮期血圧(テールカフ)および24時間アルブミン排泄(ELISA、CellTrend, Germany)を Muller et al. Am J Pathol. 161:1679−93(2002)および Muller et al. Am J Pathol.164:521−32(2004)により先に記載されたように測定する。dTGRは24時間アルブミン排泄に関して6週目で一致させ、そして各19匹のラット5群に分配される。ラットが6週齢のときに処置を開始する。ラットにベヒクル処置、アリスキレン0.3mg/kg/日および3mg/kg/日(皮下ミニポンプによる)、バルサルタン1mg/kg/日、およびバルサルタン10mg/kg/日(食餌中で与える)を投与する。死亡率を低下させ、しかも血圧および器官損傷への影響は最低限にする閾値処置として低用量のバルサルタンを選択する。ベヒクル処置動物が8週齢を超えて生存しないことは先の研究から解っており、そしてしたがって、この低用量バルサルタン群が9週で対照群として提供される。心エコー検査(短軸のMモードトレーシングおよび組織ドップラー撮像;7および9週で群あたりn=5−6)をイソフルラン麻酔下で15MHzフェーズドアレイトランスデューサーを用いて実施した(Mazak et al. Circulation. 109:2792−800(2004))。心臓ごとのこれらの測定値を決定し、平均化し、そして統計分析する。LV短軸でMモードを実施し、そしてリーディングエッジ法に従って測定する。全壁厚を中隔+左心室後壁の合計として計算する。
【0076】
組織ドップラーは基底中隔での心臓の縦の動きの速度を測定して、拡張期充満の評価が可能になる。組織ドップラー測定は四腔像の基底中隔の試料容量で実施する。速度範囲、増幅率およびフィルター設定を最適化して低速度を検出し、そしてパルス波ドップラースペクトルを200mm/秒で表示する。測定値はピーク初期(Ea)および後期(Aa)拡張拡大速度の速度を示す。Ea/Aa比は拡張機能の指標として報告される。
【0077】
ラットを9週齢で屠殺する。腎臓および心臓を取り出し、そして氷冷食塩水で洗浄し、吸い取り乾燥し、そして重量測定する。組織調製および免疫組織学的技術をMuller et al. Am J Pathol.161:1679−93(2002)で以前に記載されたように実施する。切片をラット単球/マクロファージ(ED−1、Serotec, Germany)、MHC II+、CD4+およびCD86+細胞(全てBD Pharmingen, Germany)に対する一次抗体と共にインキュベートする。KS300 3.0(Zeiss, Germany)プログラムを用いて浸潤した細胞の採点を実施する。各腎臓の15の異なる部分(全群でn=5)を分析する。各動物の平均スコアを計算し、そして群平均スコアを導くために用いる。具体的な処置の知識なしに分析を行う。
【0078】
TRIZOL(Gibco Life Technology)を用いてRT−PCRのためのLV mRNAを単離する。α−ミオシン重鎖(α−MHC)およびβ−MHCならびに心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)のためのRT−PCRを0.3または0.9モル/lプライマーを含有する SybrGreen PCR Master Mix(Applied Biosystems, Germany)25μlおよび5700 Sequence Detection System(Applied Biosystems)中逆転写反応物1μl中で実施する。熱循環条件は95℃で10分の初期変性工程、続く95℃で15秒間および65℃で1分間の40サイクルを含む。ハウスキーピング遺伝子(要求に応じて利用可能なプライマー配列)としてヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子にmRNA発現を標準化する。
【0079】
屠殺時に、心臓肥大指標スコアはバルサルタン10mg/kg/日、アリスキレン0.3mg/kg/日およびアリスキレン3mg/kg/日群(p<0.05)で低下する。しかしながら、心臓肥大指標はバルサルタン10mg/kg/日処置したdTGRに比較してアリスキレン3mg/kg/日処置したもので有意に低い。心エコー検査によりバルサルタン1mg/kg/日の動物が求心性肥大を有することが示される。壁厚は約3.4mmで左心室拡張末期径は正常であることが見出される。アリスキレン(3mg/kg/日)またはバルサルタン10mg/kg/日での処置は壁厚を各々約2.2mmおよび約2.7mmまで低下させる。組織ドップラー測定により、バルサルタン1mg/kg/日群でEa/Aa比約0.68が示されるが、バルサルタン10mg/kg/日によりEa/Aaの商が約1.0まで改善される。高および低双方のアリスキレン用量によりEa/Aa値が各々約1.4および約1.5まで増加し、これは拡張期充満が改善されたことを実証している。未処置dTGRは7週で死亡直前にすでにLV厚みの増加(約3.5mm)を示し、そしてAaに対するEaの比率が約0.48であり、これは拡張機能障害を示している。
【0080】
RT−PCRを用いてα−MHC mRNAおよびβ−MHC発現を左心室で試験する。バルサルタン10mg/kg/日および双方のアリスキレン処置によりα−MHC発現から胎児β−MHCアイソフォームへのシフトが阻害される。この点でアリスキレン3mg/kg/日が最も有効である(p<0.05)。バルサルタン1mg/kg/日処置dTGRに比較して、LV ANP mRNA発現は双方のアリスキレン処置により低下する。バルサルタン10mg/kg/日はこの遺伝子の発現を低下させるが、有意な程度ではない。
【0081】
データによりバルサルタン1mg/kg/日の動物が顕著な拡張機能障害(拡張期心不全)を伴う重篤な左心室肥大を有することが示される。LV肥大はバルサルタン10mg/kg/日および双方のアリスキレン用量で顕著に良くなる。しかしながら、心臓肥大の退行にもかかわらず、高用量バルサルタンを投与されたdTGRでは拡張機能障害が依然存在する。双方のアリスキレン用量は拡張機能障害を顕著に改善し、アリスキレン3mg/kg/日により壁厚の値が結果的に最も低くなり、そして拡張期充満が最も良くなる。加えて、左心室αおよびβ−MHCアイソフォームならびに心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の遺伝子発現に及ぼすアリスキレンの影響はレニン阻害剤で観察される心臓保護効果と合致する。結果により、心筋に及ぼすレニン阻害剤の分子効果が実証される。
【0082】
図1:9週齢dTGRのLV中隔および後壁のMモード心エコー検査を示す。パネルAは重篤な中隔および後壁肥大を伴うバルサルタン(Val)1mg/kg/日のラットを示す。Val10mg/kg/日は中隔および後壁肥大を実質的に低下させる。アリスキレン(Alisk)0.3mg/kg/日およびAlisk 3mg/kg/日はまた左心室肥大を低下させ、そして3mg/kg/日用量はLVの大きさを正常化する。パネルBはLV壁厚の定量化を示す。結果は平均±SEMである(n=10−14;p<0.05 Val 1mg/kg/日対その他の群、$ Alisk 3mg/kg/日対その他の群)。
図2:9週齢dTGRの拡張期充満の組織ドップラー評価を示す:同一動物のEa波(初期拡張期充満)およびAa波(心房収縮)を同時に測定する。Val1mg/kg/日によりEa波よりも深いAaが示され、それは重篤な拡張機能障害を示している(Ee/Ae=0.66)。Val10mg/kg/日はさらに同様に深いEaおよびAa波を示し、これは拡張機能障害を示している(Ea/Aa1.0)。Alisk 0.3mg/kg/日およびAlisk 3mg/kg/日はAa波より深いEaを示し、これは適切な拡張期充満を示している(Ea/Aa1.5)。
【0083】
図3:9週齢dTGRの心臓肥大のマーカーに及ぼす処置の効果を示す:パネルAは各処置での、β−MHC(パネルB)mRNA発現の低下を伴うα−MHC mRNA発現の用量依存的な増加を示す。パネルCは各処置でのLV ANF mRNA発現の用量依存的な低下を示す。結果は平均±SEMである(各々n=6)。
【0084】
さらに、レニン阻害剤、例えばアリスキレン、特にそのヘミフマル酸塩の形態、およびACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリル、またはアンギオテンシンII受容体遮断薬、例えばバルサルタン、または各々の場合のその薬学的に許容される塩の組み合わせにより、レニン阻害剤単独の投与よりもより大きな治療効果が得られることが見出されている。より大きな効果を作用時間の延長によっても実証できる。次の投与の前に基線に戻る時間または曲線下面積(AUC)のいずれかとして作用期間をモニタリングすることができる。
【0085】
さらなる利益は本発明により組み合わされる個々の薬物の低用量を用いて投与量を減らすことができること、例えば投与量が少なくてよいだけでなく、低頻度で適用される、または副作用の発生を低減させるために用いることができるということである。レニン阻害剤、またはその薬学的に許容される塩およびACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリル、またはアンギオテンシンII受容体遮断薬、例えばバルサルタン、または各々の場合のその薬学的に許容される塩の組み合わせ投与の結果、処置された患者のより大きなパーセンテージで有意な応答、すなわち応答比率がより大きいという結果に至る。
【0086】
レニン阻害剤、例えばアリスキレン、特にそのヘミフマル酸塩の形態、およびACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリル、またはアンギオテンシンII受容体遮断薬、例えばバルサルタン、または各々の場合のその薬学的に許容される塩での組み合わせ治療は結果的に拡張機能障害または拡張期心不全の予防、顕性になるまでの進行の遅延、または処置のためのより有効な治療である。とりわけ、一層驚くべきことは、本発明の組み合わせの結果、有益な、特に相乗的な治療効果に至るが、驚くべき有効性の延長のような組み合わせ処置の結果である利益にも至る。
【0087】
本発明はさらに拡張機能障害または拡張期心不全の予防、顕性になるまでの進行の遅延、または処置のための医薬品の製造のための、レニン阻害剤、例えばアリスキレンの単独で、またはACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリル、またはアンギオテンシンII受容体遮断薬、例えばバルサルタン、または各々の場合のその薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用に関する。
【0088】
したがって、本発明の別の実施態様は拡張機能障害または拡張期心不全の予防、顕性になるまでの進行の遅延、または処置のための医薬品の製造のための、レニン阻害剤、例えばアリスキレンの単独で、またはACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリル、またはアンギオテンシンII受容体遮断薬、例えばバルサルタン、または各々の場合のその薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用に関する。
【0089】
前記の記載はその好ましい実施態様を含む本発明を十分に開示する。本明細書に具体的に開示した実施態様の修飾および改善は請求の範囲の範囲内である。さらなる詳述がなくとも、当業者は先行の記載を用いて本発明を最大限に利用できると考えられる。したがって、本明細書の実施例は本発明の特定の態様の単なる説明と解釈され、そして本発明の範囲をいかなるようにも限定するものではない。
【実施例】
【0090】
実施例1:
アリスキレン150mg(遊離塩基)素錠の組成(mg/単位)。
【表1】

【0091】
アリスキレン150mg(遊離塩基)素錠の組成(重量%)。
【表2】

【0092】
アリスキレン150mg(遊離塩基)素錠の組成(内相/外相に分割)(mg/単位)。
【表3】

【0093】
アリスキレン150mg(遊離塩基)素錠の組成(内相/外相に分割)(重量%)。
【表4】

【0094】
実施例2:
アリスキレン(投与形態3)フィルムコーティング錠の組成(mg/単位)。
【表5】

【0095】
例えば以下のように投与形態1、2および3を調製することができる:
1)活性成分および添加剤を混合し、そして該構成成分を造粒液と共に造粒し;
2)得られた顆粒を乾燥させ;
3)乾燥した顆粒を外相賦形剤と混合し;
4)得られた混合物を圧縮して核錠として固体経口投与量を形成し;そして
5)場合によっては得られた核錠をコーティングしてフィルムコーティング錠が得られる。
【0096】
造粒液はエタノール、エタノールおよび水の混合物、エタノール、水およびイソプロパノールの混合物、または前記した混合物中のポリビニルピロリドン(PVP)の溶液でよい。好ましいエタノールおよび水の混合物は約50/50から約99/1(重量/重量%)の範囲であり、最も好ましくはそれは約94/6(重量/重量%)である。好ましいエタノール、水およびイソプロパノールの混合物は約45/45/5から約98/1/1(重量/重量/重量%)、最も好ましくは約88.5/5.5/6.0から約91.5/4.5/4.0(重量/重量/重量%)の範囲である。前記の混合物中のPVPの好ましい濃度は約5から約30重量%、好ましくは約15から約25%、さらに好ましくは約16から約22%の範囲である。
【0097】
当分野において用いられる造粒、乾燥および混合の非常に多くの公知の方法、例えば流動床でのスプレー造粒、高剪断ミキサー中での湿式造粒、溶融造粒、流動床乾燥機中での乾燥、フリーフォールまたはタンブラーブレンダー中の混合、単発式またはロータリー式打錠機での錠剤への圧縮に留意する。
【0098】
顆粒の製造を有機造粒方法に適当な標準的な装置で実施することができる。最終混和および錠剤の圧縮の製造もまた標準的な装置で実施することができる。
【0099】
例えば工程(1)を高速剪断造粒機、例えばCollette Gralにより実施することができ;工程(2)を流動床乾燥機中で行うことができ;工程(3)をフリーフォールミキサー(例えば容器ブレンダー、タンブラーブレンダー)により実施することができ;そして工程(4)を乾燥圧縮法、例えばロータリー式打錠機を用いて実施することができる。
【0100】
実施例3(フィルムコーティング錠):
【表6】

)加工中に除去された
【0101】
フィルムコーティング錠を例えば下記のとおりに製造することができる。
バルサルタン、微結晶性セルロース、クロスポビドン、コロイド性無水シリカ/コロイド性二酸化ケイ素/Aerosile 200の一部、二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムの混合物を拡散ミキサー中で前もって混合し、そして次にスクリーニングミルを通してふるいにかける。得られた混合物を再度拡散ミキサー中で前もって混合し、回転圧縮機中で圧縮し、そして次にスクリーニングミルを通してふるいにかける。得られた混合物に残りのコロイド性無水シリカ/コロイド性二酸化ケイ素/Aerosile 200を加え、そして拡散ミキサー中で最終混和を行う。全混合物をロータリー打錠機中で圧縮し、そして有孔パン中でDiolackペールレッドを用いることにより錠剤をフィルムでコーティングする。
【0102】
実施例4(フィルムコーティング錠):
【表7】

例えば実施例3に記載するとおりにフィルムコーティング錠を製造する。
【0103】
実施例5(フィルムコーティング錠):
【表8】

)Opadry(登録商標)ブラウンOOF16711着色剤を以下に表にする。
**)加工中に除去される。
【0104】
Opadry(登録商標)組成物:
【表9】

例えば実施例3に記載するとおりにフィルムコーティング錠を製造する。
【0105】
実施例6(カプセル):
【表10】

【0106】
例えば下記のとおりにカプセルを製造できる:
造粒/乾燥:
流動床造粒機中で精製水に溶解したポビドンおよびラウリル硫酸ナトリウムからなる造粒液を用いてバルサルタンおよび微晶性セルロースをスプレー造粒する。得られた顆粒を流動床乾燥機中で乾燥させる。
【0107】
製粉/混和:
乾燥した顆粒をクロスポビドンおよびステアリン酸マグネシウムと一緒に製粉する。次いで塊をコニカルスクリュー型ミキサー中でおよそ10分間混和する。
【0108】
カプセル化:
制御された温度および湿度条件下で空の硬質ゼラチンカプセルを混和したバルク顆粒で充填する。充填されたカプセルを脱塵し、肉眼検査し、重量検査し、そして品質保証部が検疫する。
【0109】
実施例7(カプセル):
【表11】

例えば実施例5に記載するとおりにカプセルを製造する。
【0110】
実施例8(硬質ゼラチンカプセル):
【表12】

【0111】
実施例9(硬質ゼラチンカプセル):
【表13】

【0112】
構成成分(1)および(2)を構成成分(3)および(4)の水溶液で造粒する。構成成分(5)および(6)を乾燥顆粒に加え、そして混合物をサイズ1の硬質ゼラチンカプセルに充填する。
【0113】
本明細書で言及した全出版物および特許はその全てを出典明示により本明細書の一部とする。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】9週齢dTGRのLV中隔および後壁のMモード心エコー検査を示す。パネルAは重篤な中隔および後壁肥大を伴うバルサルタン(Val)1mg/kg/日のラットを示す。Val10mg/kg/日は中隔および後壁肥大を実質的に低下させる。アリスキレン(Alisk)0.3mg/kg/日およびAlisk 3mg/kg/日はまた左心室肥大を低下させ、そして3mg/kg/日用量はLVの大きさを正常化する。パネルBはLV壁厚の定量化を示す。結果は平均±SEMである(n=10−14;p<0.05 Val 1mg/kg/日対その他の群、$ Alisk 3mg/kg/日対その他の群)。
【図2】9週齢dTGRの拡張期充満の組織ドップラー評価を示す:同一動物のEa波(初期拡張期充満)およびAa波(心房収縮)を同時に測定する。Val1mg/kg/日によりEa波よりも深いAaが示され、それは重篤な拡張機能障害を示している(Ee/Ae=0.66)。Val10mg/kg/日はさらに同様に深いEaおよびAa波を示し、これは拡張機能障害を示している(Ea/Aa1.0)。Alisk 0.3mg/kg/日およびAlisk 3mg/kg/日はAa波より深いEaを示し、これは適切な拡張期充満を示している(Ea/Aa1.5)。
【図3】図3:9週齢dTGRの心臓肥大のマーカーに及ぼす処置の効果を示す:パネルAは各処置での、β−MHC(パネルB)mRNA発現の低下を伴う、α−MHC mRNA発現の用量依存的な増加を示す。パネルCは各処置でのLV ANF mRNA発現の用量依存的な低下を示す。結果は平均±SEMである(各々n=6)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温血動物に治療上有効量のレニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む拡張機能障害または拡張期心不全の予防、顕性になるまでの進行の遅延、または処置のための方法。
【請求項2】
レニン阻害剤がRO66−1132、RO66−1168および式(III):
【化1】

(式中、
はハロゲン、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;Rはハロゲン、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;RおよびRは独立して分岐したC3−6アルキルであり;そしてRはシクロアルキル、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルオキシ−C1−6アルキル、C1−6アミノアルキル、C1−6アルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6ジアルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルアミノ−C1−6アルキル、HO(O)C−C1−6アルキル、C1−6アルキル−O−(O)C−C1−6アルキル、HN−C(O)−C1−6アルキル、C1−6アルキル−NH−C(O)−C1−6アルキルまたは(C1−6アルキル)N−C(O)−C1−6アルキルである)の化合物;または各々の場合のその薬学的に許容される塩からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
レニン阻害剤が式:
【化2】

(式中、Rは3−メトキシプロピルオキシであり;Rはメトキシであり;そしてRおよびRはイソプロピルである)を有する式(III)の化合物;またはその薬学的に許容される塩である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式(IV)の化合物がそのセミフマル酸塩の形態である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
温血動物にレニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩と
(i)アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤もしくはその薬学的に許容される塩;または
(ii)アンギオテンシンII受容体遮断薬もしくはその薬学的に許容される塩;
との治療上有効量の組み合わせを投与することを含む拡張機能障害または拡張期心不全の予防、顕性になるまでの進行の遅延、または処置のための方法。
【請求項6】
レニン阻害剤がRO66−1132、RO66−1168および式(III):
【化3】

(式中、
はハロゲン、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;Rはハロゲン、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;RおよびRは独立して分岐したC3−6アルキルであり;そしてRはシクロアルキル、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルオキシ−C1−6アルキル、C1−6アミノアルキル、C1−6アルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6ジアルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルアミノ−C1−6アルキル、HO(O)C−C1−6アルキル、C1−6アルキル−O−(O)C−C1−6アルキル、HN−C(O)−C1−6アルキル、C1−6アルキル−NH−C(O)−C1−6アルキルまたは(C1−6アルキル)N−C(O)−C1−6アルキルである)の化合物;または各々の場合のその薬学的に許容される塩からなる群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
レニン阻害剤が式:
【化4】

(式中、Rは3−メトキシプロピルオキシであり;Rはメトキシであり;そしてRおよびRはイソプロピルである)を有する式(III)の化合物;またはその薬学的に許容される塩である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式(IV)の化合物がそのセミフマル酸塩の形態である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ACE阻害剤がベナゼプリルおよびエナラプリルからなる群から選択される請求項5から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
アンギオテンシンII受容体がバルサルタンまたはその薬学的に許容される塩である請求項5から8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
拡張機能障害または拡張期心不全の予防、顕性になるまでの進行の遅延、または処置のための
(i)ACE阻害剤もしくはその薬学的に許容される塩;または
(ii)アンギオテンシンII受容体遮断薬もしくはその薬学的に許容される塩;
と組み合わせたレニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項12】
レニン阻害剤がRO66−1132、RO66−1168および式(III):
【化5】

(式中、
はハロゲン、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;Rはハロゲン、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;RおよびRは独立して分岐したC3−6アルキルであり;そしてRはシクロアルキル、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルオキシ−C1−6アルキル、C1−6アミノアルキル、C1−6アルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6ジアルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルアミノ−C1−6アルキル、HO(O)C−C1−6アルキル、C1−6アルキル−O−(O)C−C1−6アルキル、HN−C(O)−C1−6アルキル、C1−6アルキル−NH−C(O)−C1−6アルキルまたは(C1−6アルキル)N−C(O)−C1−6アルキルである)の化合物;または各々の場合のその薬学的に許容される塩からなる群から選択される請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
レニン阻害剤が式:
【化6】

(式中、Rは3−メトキシプロピルオキシであり;Rはメトキシであり;そしてRおよびRはイソプロピルである)を有する式(III)の化合物;またはその薬学的に許容される塩である請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
式(IV)の化合物がそのセミフマル酸塩の形態である請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
ACE阻害剤がベナゼプリルおよびエナラプリルからなる群から選択される請求項11から14のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項16】
アンギオテンシンII受容体がバルサルタンまたはその薬学的に許容される塩である請求項11から14のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
拡張機能障害または拡張期心不全の予防、顕性になるまでの進行の遅延、または処置のための医薬品の製造のためのレニン阻害剤の使用。
【請求項18】
レニン阻害剤がRO66−1132、RO66−1168および式(III):
【化7】

(式中、
はハロゲン、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;Rはハロゲン、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;RおよびRは独立して分岐したC3−6アルキルであり;そしてRはシクロアルキル、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルオキシ−C1−6アルキル、C1−6アミノアルキル、C1−6アルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6ジアルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルアミノ−C1−6アルキル、HO(O)C−C1−6アルキル、C1−6アルキル−O−(O)C−C1−6アルキル、HN−C(O)−C1−6アルキル、C1−6アルキル−NH−C(O)−C1−6アルキルまたは(C1−6アルキル)N−C(O)−C1−6アルキルである)の化合物;または各々の場合のその薬学的に許容される塩からなる群から選択される請求項17に記載の使用。
【請求項19】
式(III)の化合物が式:
【化8】

(式中、Rは3−メトキシプロピルオキシであり;Rはメトキシであり;そしてRおよびRはイソプロピルである)を有するか;またはその薬学的に許容される塩である請求項6に記載の使用。
【請求項20】
式(IV)の化合物がそのセミフマル酸塩の形態である請求項19に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−515903(P2008−515903A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535795(P2007−535795)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/035914
【国際公開番号】WO2006/041974
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】