説明

指向性の使用

本発明は、液体を含有し、送達の間に規定された方向に液体を指向させるためのマウスピースを有する送達デバイスを提供し;口の他の領域及び/又は口全体に比較して、活性物質の摂取の増加及び作用のより迅速な開始について特に適する対象の口の限局された領域に前記マウスピースを指向させ;前記送達デバイスを用いて、前記限局された領域に直接、液体の計測された量を送達する工程を含む、対象の血流中への改善された吸収のための、対象に活性物質を含有する液体を経口投与する方法、並びに活性物質を含有する液体を保持できる容器と、活性物質を含有する液体を、規定された方向に、口腔前庭である対象の口の限局された領域に直接分配するように構築されたマウスピースとを含む、対象の口腔に活性物質を投与するための噴霧デバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔を経て活性物質を投与する方法に関し、この方法により、活性物質の作用の迅速な開始及び取り込みの改善が可能になる。活性物質は、活性物質を含む液体組成物の液滴の形、又は活性物質を含むエアロソル若しくは霧化液体の形で投与される。活性物質を、口腔の比較的限定された部分、すなわち口腔前庭、特に唇側前庭及び/又は頬前庭に投与することにより、これらの改善が得られる。
【背景技術】
【0002】
口腔及び口腔前庭は、長年、活性物質の投与のために用いられている。この投与経路は、最初に受ける代謝を避けるため、又は迅速な摂取を得るための例えば舌下への投与(例えば狭心症に伴う症状を緩和するための硝酸グリセリンの舌下投与)に適する投与形態のために特に魅力的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、活性物質の迅速な取り込み及び利用可能性に関する改善が、まだ必要である。活性物質の限定しない例としてニコチンが用いられている以下の記載を参照されたい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、対象の血流中への改善された吸収のために、活性物質を含有する液体を対象に経口投与するためのシステム及び方法に関する。
上記の方法は、液体を含有し、送達の間に規定された方向に液体を指向させるためのマウスピースを有する送達デバイスを提供し;対象の口の他の領域及び/又は口全体と比較して活性物質の摂取の増大及び作用のより迅速な開始に特に適する対象の口の限局された領域に向かってマウスピースを指向させ;液体の計測された量を、前記送達デバイスを用いて、前記限局された領域に直接送達する工程を含む。
【0005】
本発明は、対象の血流中への改善された吸収のために、対象の口の内部に、活性物質を含有する液滴又は霧化液体を適用するためにも用いられ、該方法は、液体を含有し、規定された方向に液体を噴霧するためのマウスピースを有する噴霧装置を配置し、対象の口の口腔前庭に向けてマウスピースを指向させ、口腔前庭に前記液体の計測された量を噴霧する工程を含む。
【0006】
対象の口腔に活性物質を投与するための噴霧デバイスは、活性物質を含有する液体を保持し得る容器と、規定された方向に、対象の口の限局された領域に直接、活性物質を含有する液体を分配するように構築されたマウスピースとを含み、該限局された領域は、口腔前庭である。
【0007】
噴霧装置は、活性物質を含む液体を含有するキャニスタを含み、キャニスタは、液体を口腔前庭に噴霧するためのマウスピースを備える。
【0008】
以上の記載は、以下に続く発明の詳細な説明がよりよく理解されるために、本発明の特徴及び技術的利点を比較的広く概説している。本発明のさらなる特徴及び利点は、本発明の請求項の主題を形成する以下に記載される。開示される概念及び具体的な実施形態を、本発明の同じ目的を実行するための他の構成に改変又はそのような構成を設計するための基礎として容易に用い得ることが、当業者に認識されるはずである。このような等価な構成が、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の意図及び範囲から逸脱しないことも、当業者により認識されるはずである。本発明の機構及び操作の方法としての本発明に特徴的であると考えられる新規な特徴は、さらなる目的及び利点とともに、添付の図面との関連を考慮して、以下の記載からよりよく理解されるだろう。しかし、それぞれの図面は、説明の目的だけのためであり、本発明の限定の定義を意図しないことが、明確に理解される。
【0009】
本発明のより完全な理解のために、添付の図面に関連する以下の記載にここで言及する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】液体の計測された量を、口の限局された領域に噴霧として送達するように適合された霧化噴霧マウスピースを有するキャニスタの形の送達デバイスの例示的な実施形態を示す。送達デバイス10は、液体の容器20と、マウスピース40を有する霧化噴霧機構30とを含む。
【図2】デバイス40に対して折り畳まれ、及び使用50のために伸張された2つの交互の位置にある図1の送達デバイスのマウスピースを示す。
【図3】本明細書に開示される方法の例において用いられる図1及び2の例示的な送達デバイスを示す。伸張されたマウスピース40を有する送達デバイス10は、活性物質(例えばニコチン)を含有する液体を、霧化噴霧60の形で口腔前庭70に送達するために配置されている。
【図4】活性物質としてニコチンを含有する液体を噴霧する前、並びに噴霧後5、10、15、20、30、45及び60分での、挿入されたカニューレから採取された血液試料からの循環ニコチン濃度の測定を示す。四角のデータ点の点線は、口(オヴラ(ovula)に向かって)への直接の噴霧による循環ニコチン濃度を表す。菱形のデータ点の実線は、本明細書に開示される方法に従って、口腔前庭に向けられた噴霧による循環ニコチン濃度を表す。
【図5】本明細書に記載される方法に従って送達された液体ニコチン組成物の効率を、ニコレット(Nicorette) (登録商標)ガム又はプラセボのロゼンジと比較した臨床試験の結果を示す。*は、ニコレット(登録商標)ガムを用いる対応する結果に対する、本明細書に記載される方法により送達されたニコチン液体組成物の統計的有意差を示す。グラフは、左から右に1)本発明の方法に従って送達された液体ニコチン組成物、2) ニコレット(登録商標)ガム及び3)プラセボのロゼンジを表す、各基準について3つのバーの群として示す。
【図6】本明細書に記載される方法に従って送達された液体ニコチン組成物の効率を、ニコレット(Nicorette) (登録商標)ガム又はプラセボのロゼンジと比較した臨床試験の結果を示す。*は、ニコレット(登録商標)ガムを用いる対応する結果に対する、本明細書に記載される方法により送達されたニコチン液体組成物の統計的有意差を示す。グラフは、左から右に1)本発明の方法に従って送達された液体ニコチン組成物、2) ニコレット(登録商標)ガム及び3)プラセボのロゼンジを表す、各基準について3つのバーの群として示す。
【図7】時間の関数としての、挿入されたカニューレから採取された血液試料からの最大循環ニコチン濃度に相当する測定を示す。本明細書に記載される方法により送達されたニコチン液体組成物を、ニコレット(登録商標)ガムと比較する。
【図8】ニコノヴァムが注目しているニコチン血漿レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
今日入手可能なニコチン置換製品は、全て、喫煙又はウェットスナフ(wet snuff)を摂取するよりも著しく低いニコチン血中レベルをもたらす。例えば2 mgのニコチンガムを用いる喫煙者は、喫煙時のニコチン血液レベルの約35%しか置換されない。このレベルは、禁断症状を完全に廃止するには低すぎるので、喫煙の再発の危険性が増大する。
【0012】
ニコノヴァム エービーは、喫煙により匹敵するニコチン血中レベルを生じる製品を開発する。目的は、ニコチン血中レベルをあまり劇的に低減しないことにより、喫煙の停止をより容易にすることである。
【0013】
開発プログラムのある目的は、10分以内に、1ミリリットルあたり6 ngを超えるニコチン血漿レベルを達成できることである。このような製品は、特に、より依存性の大量喫煙者において、離脱症状を緩和するのにより有用であるだろう。
【0014】
このことが実際に事実であり得ることは、異なる放出プロファイルのニコチンガムの、禁煙者における欲求症状(craving symptoms)に対する影響を比較した研究の結果により示される。Niauraらは、即時放出ニコチンガムが、通常のニコチンガムよりも迅速に欲求を低減させたことを見出した。欲求の低減は、喫煙の停止の機会と肯定的に関係することが知られている。
即時摂取製品は、よって、市場での著しい医療上の必要性を充足することが期待できる。
【0015】
興味のある製品カテゴリーの1つは、口腔噴霧である。なぜなら、この投与形態は、投与の良好な柔軟性を可能にするからである。これは、消費者によく好まれる投与形態の型でもある。
【0016】
このために、本発明者らは、ニコチン離脱症状の緩和又は治療に関連する使用に適する口腔噴霧器であることだけでなく、口の特定の部位に投与されれば、作用の開始の増加及びニコチン取り込みの改善が観察されることを見出した。本発明は、これらの知見に基づき、対象の血流への改善された吸収のために、対象の口内へ活性物質を含有する液滴又は霧化液体を適用する方法を提供し、該方法は、
i) 液体を含有し、規定された方向に液体を噴霧するためのマウスピースを有する噴霧装置を配置し、
ii) 前記マウスピースを、対象の口の口腔前庭に向けて指向させ、
iii) 前記液体の計測された量を、口腔前庭に噴霧する
工程を含む。
【0017】
本明細書中の実施例からわかるように、ニコチン含有液体を口腔前庭に噴霧することは、作用の開始を増進するとともに、同じ液体(同量で、同様の条件下で)を口内に直接噴霧した後に得られる結果と比較して血漿レベルを増加させる。よって、本発明者らは、口腔粘膜を介して活性物質を投与するための特に適切な位置を見出した。この部位、すなわち口腔前庭、より精密には唇側前庭及び/又は頬前庭、さらにより具体的には頬側溝、特に下顎頬側溝への投与が、ニコチンだけでなく、治療的、予防的及び/又は診断的な活性物質のようなその他の活性物質についての作用の開始の増進及び/又は血漿レベルの改善を導くことが考えられる。つまり、本発明の記載におけるニコチンの使用は、説明の目的のためだけであり、本発明を限定することを意図しない。
【0018】
上述したことに従って、本発明は、対象の血流への改善された吸収のために、対象の口内へ活性物質を含有する液滴又は霧化液体を適用する方法を提供し、該方法は、
i) 液体を含有し、規定された方向に液体を噴霧するためのマウスピースを有する噴霧装置を配置し、
ii) 前記マウスピースを、対象の口の口腔前庭に向けて指向させ、
iii) 前記液体の計測された量を、口腔前庭に噴霧する
工程を含み、ここで、対象の血漿中の活性物質のピーク濃度を得るための時間(Tmax - 口腔前庭)が、他の全ての条件が同じで、噴霧を口に直接行って得られるもの(Tmax - 直接)よりも早い。
【0019】
この関係において、用語「Tmax - 直接」とは、液滴又は霧化液体を口に直接噴霧した後に最大血漿濃度を得るために要する時間のことである。用語「Tmax - 口腔前庭」とは、液滴又は霧化液体を口腔前庭に噴霧した後に最大血漿濃度を得るために要する時間のことである。用語「より迅速な」とは、Tmax (口腔前庭)が、約0.75 Tmax (直接)未満、例えば約0.7 Tmax (直接)未満、約0.6 Tmax (直接)未満、約0.55 Tmax (直接)未満又は約0.5 Tmax (直接)以下であることを意味する。
【0020】
作用の迅速な開始を達成するために、投与後の血漿濃度の迅速な上昇が通常要求され、血漿濃度は、いわゆる有効ウインドウ内でなければならず、すなわち、血漿濃度は、効果が見られないほど低くてはならず、一方、望ましくない効果が出現し得るほど高くてもならない。よって、Tmaxの減少は、作用の迅速な開始の指標である。本明細書の実施例からわかるように、口腔前庭への適用後の血漿レベルの上昇は、口内へ直接噴霧した後に得られるものよりもはるかにより迅速である。
【0021】
口腔前庭への適用後の血漿レベルの構想される増加に関して、本明細書の実施例は、それが事実であることを明確に示す。よって、本発明は、対象の血流への改善された吸収のために、患者の口内へ活性物質を含有する液滴又は霧化液体を適用する方法も提供し、該方法は、
i) 液体を含有し、規定された方向に液体を噴霧するためのマウスピースを有する噴霧装置を配置し、
ii) 前記マウスピースを、対象の口の口腔前庭に向けて指向させ、
iii) 前記液体の計測された量を、口腔前庭に噴霧する
工程を含み、ここで、対象の血漿中の活性物質のピーク濃度(Cmax - 口腔前庭)が、他の全ての条件が同じで、噴霧を口に直接行う場合に得られるもの(Cmax - 直接)よりも大きい。
【0022】
この関係において、用語「Cmax - 直接」は、液滴又は霧化液体を口に直接噴霧した後の最大血漿濃度のことである。用語「Cmax -口腔前庭」は、液滴又は霧化液体を口腔前庭に噴霧した後の最大血漿濃度のことである。用語「より大きい」とは、Cmax (口腔前庭)が、約1.05 Cmax (直接)より大きい、例えば約1.1 Cmax (直接)以上であることを意味する。
【0023】
以上の記載は、以下に続く発明の詳細な説明がよりよく理解されるために、本発明の特徴及び技術的利点を比較的広く概説している。本発明のさらなる特徴及び利点は、本発明の請求項の主題を形成する以下に記載される。開示される概念及び具体的な実施形態を、本発明の同じ目的を実行するための他の構成に改変又はそのような構成を設計するための基礎として容易に用い得ることが、当業者に認識されるはずである。このような等価な構成が、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の意図及び範囲から逸脱しないことも、当業者により認識されるはずである。本発明の機構及び操作の方法としての本発明に特徴的であると考えられる新規な特徴は、さらなる目的及び利点とともに、添付の図面との関連を考慮して、以下の記載からよりよく理解されるだろう。しかし、それぞれの図面は、説明の目的だけのためであり、本発明の限定の定義を意図しないことが、明確に理解される。
【0024】
長年にわたる特許法の協定と一致して、用語「a」及び「an」は、特許請求の範囲を含む本明細書において「含む」との語とともに用いられる場合、「1又は複数」を意味する。本明細書で用いられる場合、「別の」は、少なくとも2番目又はそれより多くのものを意味し得る。本発明のいくつかの実施形態は、1又は複数の要素、方法の工程及び/又は本発明の方法からなるか、或いはこれらから実質的になってよい。本明細書に記載される任意の方法又は組成物が、本明細書に記載される任意の他の方法又は組成物に関して行い得ることが意図される。
【0025】
上記のように、活性物質が、作用の迅速な開始が要求される状況で用いるのに適する物質である場合に、本発明の方法を用いるのが適する。文献では、鎮痛剤、救急薬(emergency drugs)などを含む多数の例が示されている。さらに、多数の薬物が、口腔送達のために設計された噴霧又はエアロソルに処方されており、これらの薬物の全ては、本発明の方法における使用に適すると考えられる。
【0026】
具体的な態様において、活性物質は、アルカロイドであり、それらの塩、溶媒和物及び錯体、又はそれらの混合物も含む。本発明による方法で用いるためのアルカロイドの例は、窒素含有塩基、例えばモルヒネ、コデイン、ヒドロモルフィン(hydromorphine)、トラマドールなどを含むモルヒネ−アルカロイド類、スコポラミン、ニコチンを含むニコチン−アルカロイド、ロベリン、メクロジン、ジフェンヒドラミン、シテリシン(cyterisine)並びにそれらのアナログ及び誘導体、並びにプロメタジンである。
好ましい態様において、活性物質は、ニコチン又はその塩、溶媒和物若しくは錯体、或いはそれらの混合物である。
【0027】
この関係において、用語「ニコチン」は、ニコチン、或いは任意の形のニコチン誘導体、例えば非晶質、結晶、多形などの物理的な形、又は異性体及び鏡像異性体などの化学的な形、並びにその任意の塩、錯体、誘導体又は溶媒和物を含む。ニコチンは、ニコチンベース(nicotine base)、ニコチン塩酸塩、ニコチン二塩酸塩、ニコチン一酒石酸塩、酒石酸水素ニコチン、ニコチン硫酸塩、ニコチン塩化亜鉛、例えばニコチン塩酸亜鉛一水和物及びニコチンサリチル酸塩から選択できるか、或いはニコチンは、ニコチンポラクリレックス(nicotine polacrilex)のようなニコチン樹脂、又は例えばニコチン−セルロース若しくはMCC-ニコチンを含むセルロース誘導体付加物(例えばWO 2004/056363に記載されるような微結晶セルロース上に吸着されたニコチン)から選択できる。
【0028】
本発明は、口腔前庭への投与用に適するニコチン含有液体組成物をまず提供し、そのような組成物は液体の形であるが、組成物及び/又は同じ様式での歯肉と頬の間の投与経路からのニコチンの吸収の増大に関する知見が、他の活性物質の投与にも当てはまることが考えられる。しかし、本発明の特に興味のある組成物は、口腔粘膜への投与に適する形であり、歯肉と頬又は歯肉と唇との間の適用部位への組成物の送達のために構築された送達デバイス中にある。このような組成物は、通常、溶液、懸濁液、エマルジョン、分散液などを含む液体の形である。
【0029】
ニコチンの適切な形が、本明細書に記載されるようなニコチン−担体付加物又は複合体の形でもあり得ることが意図される。よって、ニコチンは、セルロース物質又はイオン交換物質とともに存在してよい。
【0030】
活性物質を含有する液体を送達するための噴霧装置は、任意の適切な装置であり得る。つまり、通常用いられる噴霧デバイスを用いることができるが、正しい部位、すなわち口腔前庭への液体の送達を確実にするために、デバイスのマウスピース(又はアクチュエータ)の構造に関して改変するのが有利である。適切な噴霧デバイス又は噴霧装置は、液体を含むように適合された噴霧ボトルと、適切なマウスピース又はアクチュエータを含む上部分とを含む。よって、噴霧ボトルは、任意の既知の型、例えばポンプ噴霧器、又は噴霧を提供するための任意のその他の手段であり得る。噴霧は、加圧気体により提供され得る。噴霧ボトルは、任意の適切な形状を有してよく、ガラス、プラスチック及びアルミニウムを含む任意の適切な材料で作られてよい。アクチュエータは、噴霧ボトルに関して異なる形状、長さ及び方向を有し得、プラスチック材料又はこの型のデバイスに適切であると当該技術においてよく知られている任意のその他の材料から調製できる。適切なアクチュエータは、規定された軸を有し、噴霧を生じるための1又は複数のオリフィスを備えたアクチュエータ頭部を含む。興味のある実施形態において、生じる噴霧パターンは、比較的密なパターンであり、すなわち、噴霧された液体のほとんどは投与部位に適用され、もしあったとしてもわずか少量が、周囲の組織に広がる。適切なデバイス及び適切なアクチュエータの例を、図1及び2に示し、図3に、噴霧デバイスをどのように用いるかを示す。適切なデバイスは、本明細書に参照により組み込まれるEP-A 1 409 049号に記載される。マウスピースは、液体がそこから送達される1又は複数のオリフィスを含む。
【0031】
活性物質を含む液体は、1又は複数の許容される賦形剤も含み得る。
1又は複数の許容される賦形剤は、担体、希釈剤などの製薬分野で通常用いられるものであり得る。適切な例は、例えば、溶媒、粘度調整剤、pH調整剤、甘味料を含む添加剤、風味隠蔽剤、防腐剤、吸収増進剤、及びそれらの混合物である。
【0032】
適切な溶媒又は分散媒は、例えば、安全で、口腔粘膜に対して実質的に刺激を与えない溶媒である。その例は、水、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールを含むアルコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどを含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、液体の粘度は、例えば、液体をより粘性にして、適用部位への液体の噴霧を容易にするために調整できる。別の状況では、粘度を減少させて、液体をより濃稠にするか、又は液体が適用部位に残る時間を延長することが適切である。生物付着性を促進させることが知られている物質、又はそのままで生物付着性であることが知られている物質を用いることができる。
適切な粘度調整剤の例は、グリセリン、セルロース及びセルロース誘導体、アルギン酸塩、ペクチン類、ゴム類、植物抽出物、カラギーナンなどである。
【0034】
通常、活性物質が、溶解された形で液体中に存在することが有利である。これが事実であれば、活性物質は、全身の循環への吸収のために直ちに利用可能な形で存在する。しかし、活性物質の溶解が効果の開始に実質的に影響しない場合もあり、このような場合、活性物質は、液体中に分散され得る。よって、液体は、溶液、分散液、エマルジョン又は懸濁液などであり得る。これは、ナノ粒子、リポソーム、微粒子なども含み得る。
【0035】
緩衝剤
口腔内の吸収環境での塩基性pHが、ニコチンの吸収に影響することは、よく確立されている。よって、塩基性pHにするためのある方法は、液体中にpH調整剤を含むことである。
上記のように、口腔内のわずかにアルカリ性の反応(7と8の間)が、ニコチンの吸収を増進することが、通常、知られている。よって、わずかにアルカリ性の反応が提供されるように、組成物中に緩衝物質を混合することが有利であり得る。
【0036】
適切な緩衝剤は、典型的には、酢酸塩、グリシネート、リン酸塩、グリセロリン酸塩、アルカリ金属のクエン酸塩のようなクエン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、及びホウ酸塩、並びにそれらの混合物からなる群より選択されるものである。
【0037】
存在する場合、1又は複数種の緩衝剤は、約0.5重量%〜約10重量%、例えば約0.5重量%〜約7.5重量%、約0.5重量%〜約5重量%、約0.75重量%〜約4重量%、約0.75重量%〜約3重量%、又は約1重量%〜約2重量%の濃度で存在する。
【0038】
甘味料
本発明による組成物の感覚的特性を増加させるために、1又は複数種の甘味料、例えばキシリトール、ソルビトール及び/又はイソマルトを含む糖アルコール、或いはアスパルテーム、アセスルファム又はサッカリンのような人工甘味料を加え得る。
1又は複数種の甘味料の濃度は、存在する場合、通常、少なくとも約0.05%、例えば約0.075重量%〜約5重量%、又は約5%〜約35重量%、例えば約10重量%〜約35重量%、約15重量%〜約35重量%、又は約20重量%〜約30重量%である。
【0039】
抗酸化剤
ニコチンが酸化されることは公知であり、よって、1又は複数種の抗酸化剤、例えばアスコルビルパルミテート及び/又はアスコルビン酸ナトリウムを本発明による組成物に加えることが有利であり得る。
1又は複数種の抗酸化剤は、約0.05重量%〜約0.3重量%、例えば約0.1重量%〜約0.25重量%、又は約0.15重量%〜約0.2重量%の濃度で存在し得る。
【0040】
矯味矯臭剤
本発明による組成物の感覚刺激特性を向上するために、組成物は、約0.5重量%〜約12重量%、約1重量%〜約10重量%、約1.5重量%〜約9重量%、又は約2重量%〜約8重量%の濃度(矯味矯臭剤の合計濃度)で通常は存在する1又は複数種の矯味矯臭剤、例えばメントールフレーバ、ユーカリ、ミントフレーバ及び/又はL-メントールを含み得る。
【0041】
ある実施形態において、本発明において用いるための液体は、
i) 活性物質、特にニコチン又はその塩、錯体、誘導体若しくは溶媒和物、
ii) 溶媒又は分散媒、
iii) 任意に増粘剤、
iv) 任意に風味隠蔽剤、及び
v) 任意に甘味料
を含む。
【0042】
より具体的な実施形態において、液体は、
i) ニコチン又はその塩、錯体、誘導体若しくは溶媒和物、
ii) 溶媒又は分散媒、
iii) 任意に増粘剤、
iv) 任意に風味隠蔽剤、及び
v) 任意に甘味料
を含む。
具体的な実施形態において、1又は複数又は全ての任意成分、及びその他の適切な成分を含むことができる。
【0043】
液体中の活性物質、特にニコチン、又はその塩、錯体、誘導体若しくは溶媒和物の濃度は、通常、少なくとも0.1% (w/v)で、通常、90% (w/v)未満である。適切には、濃度は、約0.5 % (w/v)〜約85% (w/v)、例えば約0.5% (w/v)〜約75% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約60% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約50% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約40% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約30% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約25% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約20% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約15% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約10% (w/v)の範囲であり、約0.5% (w/v)〜約5% (w/v)、例えば約0.5% (w/v)〜約5% (w/v)、例えば約0.7% (w/v)〜約4% (w/v)、約0.9% (w/v)〜約3% (w/v)、約1.1% (w/v)〜約2% (w/v)、約1.3% (w/v)〜約1.7% (w/v)である。
【0044】
ある実施形態において、上記の項目ii)で述べた溶媒又は分散媒は、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノールからなる群より選択される任意のアルコール、好ましくはエタノールであり得る。溶媒、例えばアルコール又は水性媒体又はそれらの混合物の濃度は、通常、少なくとも約5% (v/v)、典型的には少なくとも約10% (v/v)、少なくとも約20% (v/v)、少なくとも約30 (v/v)、少なくとも約40 (v/v)、少なくとも約40% (v/v)、又は少なくとも約50% (v/v)である。つまり、この濃度は、約60% (v/v)〜約95% (v/v)、例えば約70% (v/v)〜約90% (v/v)、約75% (v/v)〜約85 % (v/v)であり得る。
【0045】
上記の項目iii)で述べた増粘剤は、流体組成物での使用に適する任意の増粘剤であり得る。好ましい実施形態において、増粘剤は、グリセリンである。増粘剤、例えばグリセリンの濃度は、少なくとも約5% (w/v)、例えば少なくとも10% (w/v)、少なくとも約15% (w/v)、又は少なくとも約20% (w/v)、例えば約5% (w/v)〜約50% (w/v)、約10% (w/v)〜約40% (w/v)、約10% (w/v)〜約30% (w/v)であり得る。
【0046】
本発明による組成物のいずれの可能性のある不快な味を緩和するために、風味隠蔽剤を任意に含め得る。このような風味隠蔽剤は、限定されないが、ペパーミント油、シナモン、カンゾウ、柑橘類及びスペアミントからなる群より選択でき、好ましくはペパーミント油である。風味隠蔽剤、例えばペパーミント油の濃度は、約1% (w/v)〜約5% (w/v)、例えば約2% (w/v)〜約5% (w/v)、約3% (w/v)〜約4% (w/v)、約3.5% (w/v)〜約3.6% (w/v)であり得る。
【0047】
本発明による噴霧装置に含まれる具体的な液体組成物を、以下に示す。
具体的な実施形態において、本発明は、以下のものを含む組成物を提供する。
i) 約1% (w/v)〜約20% (w/v)の濃度の活性物質、特にニコチン、
ii) 約5% (v/v)〜約50% (v/v)の濃度の1又は複数種の溶媒、特にエタノール、及び任意に、20% (w/v)〜75% (w/v)の濃度の、pH>7に任意に緩衝された水性媒体、
iii) 約5% (w/v)〜約35% (w/v)の濃度の増粘剤、特にグリセリン、
iv) 約0.1% (w/v)〜約2% (w/v)、特に約1% (w/v)〜約2% (w/v)の濃度の人工甘味料、特にサッカリンナトリウム、
v) 任意に、約2% (w/v)〜約5% (w/v)の濃度のペパーミント油、但し合計濃度は100% w/vである。
【0048】
別の具体的な実施形態において、本発明は、以下のものを含む組成物を提供する。
i) 約1% (w/v)〜約10% (w/v)、特に約1% (w/v)〜約2% (w/v)の濃度の活性物質、特にニコチン、
ii) 約15% (v/v)〜約25% (v/v)の濃度の1又は複数種の溶媒、特にエタノール、及び任意に、30% (w/v)〜60% (w/v) の濃度の、pH>7に任意に緩衝された水性媒体、
iii) 約25% (w/v)〜約35% (w/v)の濃度の増粘剤、特にグリセリン、
iv) 約0.1% (w/v)〜約2% (w/v)、特に約1% (w/v)〜約2% (w/v) の濃度の人工甘味料、特にサッカリンナトリウム、
v) 任意に、約2% (w/v)〜約5% (w/v)の濃度のペパーミント油、但し合計濃度は100% w/vである。
【0049】
別の具体的な実施形態において、本発明は、以下のものを含む組成物を提供する。
i) 約1% (w/v)〜約2% (w/v)の濃度のニコチン、
ii) 約75% (v/v)〜約90% (v/v)の濃度のエタノール、
iii) 約12% (w/v)〜約18% (w/v)の濃度のグリセリン、
iv) 約1% (w/v)〜約2% (w/v)の濃度のサッカリンナトリウム、
v) 任意に、約2% (w/v)〜約5% (w/v)の濃度のペパーミント油、但し、合計濃度は100% w/vである。
【0050】
別の具体的な実施形態において、本発明は、以下のものを含む組成物を提供する。
i) 約1.3% (w/v)〜約1.7% (w/v)の濃度のサッカリンナトリウム、
ii) 約1.3% (w/v)〜約1.7% (w/v)の濃度のニコチン、
iii) 約80% (v/v)〜約85% (v/v)の濃度のエタノール、
iv) 約14% (w/v)〜約16% (w/v)の濃度のグリセロール、
v) 任意に、約3% (w/v)〜約4% (w/v)の濃度のペパーミント油、但し、合計濃度は100% w/vである。
【0051】
上記の液体組成物は、本発明による方法において用いるための噴霧装置で用いるのに適する。通常、適用される適切な容量は、約50〜約150μl、例えば約50〜約100μlの範囲である。本明細書の実施例において、適用される容量は、70μlである。
【0052】
投与されるニコチンの通常の用量は、約1〜約2.5 mgの範囲、通常、2×70μlで提供される2 mgである。
推奨される1日投与量は、2×70μlの多くて約30用量である。
【0053】
上記のように、本発明は、その投与が血流中のニコチン吸収速度を改善する組成物を提供する。
提供される改善は、血流中のニコチン吸収速度、及び血流中のニコチンの達成される最大血漿濃度の両方に関係する。
【0054】
ニコチン担体
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、上記のようなニコチンについての担体を含む。担体は、微結晶性セルロース(「mcc」)のようなセルロースであり得る。微結晶性セルロースは、合成若しくは半合成セルロースであるか、又は天然セルロースに由来し得る。ある具体的な実施形態は、mccに加えて又はmccを含んで、その他の形の担体、例えば、限定されないが、セルロース(ヘミセルロースを含む)、結晶度及び構造が異なるセルロース(例えば、固体繊維を含む種々の構造、ウェブ様構造及び/又はその他の構造のような種々の構造中に付加又は包含(including)繊維を含む種々の構造)、クラドフォラ種(Cladophora sp.)の藻類のセルロースなどを含む天然セルロースを含む)、デキストラン、アガロース、寒天、ペクチン類、アルギン酸塩、キサンタン、キトサン、デンプン(バレイショデンプン、ショティ(shoti)デンプンを含む)など、又はそれらの混合物を含む繊維状物質又は炭水化物も用い得る。理論に関連付けられることを意図しないが、本出願時には、ニコチンが、担体(例えばmcc、又はその他のセルロース担体を含むその他の適切な担体)中に吸収されるか、及び/又は担体上に吸着されることにより、担体と相互作用し得ると考えられている。このような相互作用は、完全に又はほぼ完全に可逆性である。
【0055】
微結晶性セルロースは、AVICEL (登録商標)のグレードPH-100、PH-102、PH-103、PH-105、PH-112、PH-113、PH-200、PH-300、PH-302、VIVACEL (登録商標)のグレード101、102、12、20及びEMOCEL (登録商標)のグレード50M及び90Mなど、並びにそれらの混合物からなる群より選択できる。
適切な担体は、参照により本明細書に組み込まれるWO 2004/064811に開示されるものでもよい。
【0056】
より具体的には、適切に用いられる担体について、比較的高い表面積を有することが重要であり得ると考えられる。よって、適切な担体の比表面積は、通常、少なくとも0.7 m2/g、例えば1 m2/gである。ある使用において、比表面積は、約0.7 m2/gと少なくとも約100 m2/gの間の範囲であり得るか、及び/又はこの範囲内の任意のものでありえるか、及び/又はこの範囲内のサイズの任意の混合物であり得る。例えば、ある実施形態において、表面積は、約0.7 m2/g、約1 m2/g、約1.5 m2/g、約2.0 m2/g、約3.0 m2/g、約5 m2/g、約7 m2/g、約10 m2/g、約15 m2/g、約20 m2/g、約25 m2/g、約35 m2/g、約45 m2/g、約50 m2/g、約75 m2/g、約100 m2/g、及び約100 m2/gを超えるか、それらの組み合わせであり得る。このような適切な表面積を有する担体は、限定されないが、mcc、セルロース(ヘミセルロースを含む)、結晶度及び構造が異なるセルロース(例えば、固体繊維を含む種々の構造、ウェブ様構造及び/又はその他の構造のような種々の構造の付加又は包含繊維など、クラドフォラ種の藻類のセルロースなどを含む天然セルロースを含む)、デキストラン、アガロース、寒天、ペクチン類、アルギン酸塩、キサンタン、キトサン、デンプン(バレイショデンプン、ショティデンプンを含む)など、及び/又はそれらの混合物を含む繊維状物質又は炭水化物を含み得る。
具体的な実施形態において、ニコチンは、微結晶性セルロース上に吸着される。
【0057】
一般に、微結晶性セルロースのような担体の平均粒子径は、低すぎず、高すぎないもの、例えば最大で約500μm、最大で約450μm、最大で約300μm、若しくは最大で約200μm、又は約5〜約500μm、10〜約500μm、15〜約500μm、約20〜約500μm、約30〜約500μm、約40〜約500μm、約10〜約400μm、約20〜約400μm、約30〜約400μm、約40〜約400μm、約30〜約300μm、約40〜約300μm、約50〜約250μm、約50〜約200μm、若しくは約75〜約200μmである。具体的な実施形態において、用いられた粒子径は、約100μmであった。好ましい態様において、平均粒子径は、約15〜約250μm、例えば約20〜約200μmの範囲である。本明細書の実施例において、180μmの平均粒子径を有する微結晶性セルロースの質が、本発明の目的によく合致することが示されている。
【0058】
ある実施形態において、本発明による組成物は、ニコチンが、微結晶性セルロース上に少なくとも部分的にソーブ(sorb)されているか、及び/又は担体中に少なくとも部分的に吸収されているか、及び/又は少なくとも部分的に担体(例えばmcc)上に吸着されているか、又はそれらの混合物であるニコチン-微結晶性セルロース担体複合体としてニコチンを含有する。このような相互作用は、完全又はほぼ完全に可逆性である。
【0059】
よって、ある具体的な実施形態において、ニコチンは、微結晶性セルロース上にソーブされ、mcc中に吸収され、及び/又はmcc上に吸着され、及び/又はその組み合わせである。
【0060】
本発明の実施形態において、担体(例えば限定されないが、mcc及び/又はその他の天然セルロース)は、少なくとも部分的に多孔性である。この多孔性は、例えば、限定されないが、担体の構造、例えば分岐、繊維状又はウェブ様構造が孔を有し得ることによってよい。孔のサイズの範囲は、限定されないが、約0.01 cm3/gの孔容積を含み、必ずしも限定されないが、約0.003 cm3/g若しくはそれ未満から約0.025 cm3/gまで、約0.60 cm3/g若しくはそれより多くまでの孔容積範囲を含む。
【0061】
一般に、ニコチン担体複合体又はニコチン担体付加物は、本発明の組成物中に、少なくとも約2重量%、例えば約2重量%〜約98重量%、約2%〜約96重量%、約2重量%〜約95重量%、約3重量%〜約90重量%、約4重量%〜約85重量%、約5重量%〜約80重量%、約5重量%〜約75重量%、約5重量%〜約70重量%、又は約7.5重量%〜約65重量%の範囲の濃度で存在する。
【0062】
ある実施形態において、ソーブされたニコチン、例えば担体中に吸収されたか、及び/又は担体上に吸着されたニコチンの量は、組成物の合計重量の50%まで又はそれより多くであり得る。本発明における担体上にソーブされたニコチンの量の範囲は、組成物の合計重量の約1%未満から、組成物の約50%を超えるまでの範囲であり、この範囲内の全ての値を含む。本出願人は、本発明が理論と結び付けられることを意図しないが、本出願を準備した時期には、担体上及び/又は担体中にソーブされ得、それにより例えば合計組成物のニコチン重量パーセント(例えば最大パーセンテージ)の量に影響するニコチンの最大量が、限定されないが、担体の構造、担体の多孔度、及び担体の表面積を含む担体の特性により影響されると考えられている。
【0063】
ある実施形態において、本発明の組成物中のニコチン担体複合体、又はニコチン担体付加物の濃度は、例えば約80重量%〜約98重量%、例えば約85重量%〜約98重量%、約90重量%〜約98重量%、約92重量%〜約98重量%、約93重量%〜約97重量%、又は約94重量%〜約96重量%のような濃度で存在する。
【0064】
本発明のその他の態様
本発明は、活性物質を含む液体を含むキャニスタを含む噴霧装置にも関し、該キャニスタは、液体を口腔前庭に噴霧するためのマウスピースを備える。噴霧装置は、本発明による方法で用いるのに適する。
【0065】
本発明は、活性物質を含む液体の、本発明による方法で用いるための噴霧装置の製造のための使用でもある。
【0066】
さらに、本発明は、
i) 活性物質を含む液体と、
ii) 口腔前庭に液体を噴霧するためのマウスピースを備えるキャニスタを含む噴霧装置と、
iii) 任意にそれらの使用説明と
を含むキット、又は
i) 活性物質と、
ii) 液体と、
iii) 口腔前庭に液体を噴霧するためのマウスピースを備えるキャニスタを含む噴霧装置と、
iv) 任意にそれらの使用説明と
を含むキットに関する。
キットは、本発明の方法において用いるのに適する。
【0067】
本発明の主要な態様の下に記載される全ての詳細及び細目は、本発明のその他の態様に必要な変更を加えて当てはまる。
【0068】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実行において良好に機能することが本発明者により見出された技術を代表するものであり、その実行の好ましい態様を構成すると考えられ得ることが、当業者に理解されるはずである。しかし、当業者は、本開示に鑑みて、開示され、かつ本発明の範囲を逸脱することなく類似又は同様の結果が得られる具体的な実施形態に多くの変更を加えることができることを認識するはずである。
【実施例】
【0069】
実施例1
ニコチンを含む噴霧組成物
以下の成分から、組成物を作製した。
ニコチンベース 1.00 g
グリセリン 21.02 g
サッカリンナトリウム 1.00 g
ペパーミントフレーバ 2.50 g
エタノール99.5% 14.02 g
緩衝液pH 8 30.5 g (K2HPO4の1M溶液)
合計 70.0 g
【0070】
ニコチン以外の全ての成分を、ビーカー内で溶解するまで混合する。ニコチンを加え、撹拌をさらに15分間継続する。
液体組成物を、図1及び2に示すデバイスに充填した。
【0071】
実施例2
実施例1の組成物の適用
2つの処置計画を試験した。両方の処置計画において、実施例1の組成物を用いたが、一方の計画では、組成物を口腔前庭に送達する噴霧デバイスにより適用し、他方の計画では、組成物を口内に直接送達する通常の口腔噴霧により適用した(図3を参照)。
平均年齢33歳で、1日当たり10〜20本のタバコを喫煙する1人の男性及び3人の女性の4人の喫煙者が、両方の処置条件に参加した。両方の処置を、1晩の禁煙の後の同じ日に、一方を早朝に、他方を5時間後に行った。両方の処置を行うまで、喫煙は許可されなかった。処置の順序は、釣り合いをとった。
【0072】
歯と唇との間の条件では、歯肉と唇との間の口床(mouth floor)の前歯のすぐ左に、1回の噴霧を行った。2回目の噴霧は、前歯のすぐ右に、同様にして行った。各噴霧は、1 mgの用量を提供した。
【0073】
口への直接の条件では、噴霧瓶のノズル/マウスピースを、その末端部を歯の線(teeth line)に配置したときに2回作動させた。噴霧は、口の後ろのオヴラにほぼ向かって指向した。
【0074】
噴霧前、及び噴霧後5、10、15、20、30、45及び60分で、挿入したカニューレから血液試料を採取した。
結果を図4に示す。
【0075】
実施例3
組成物A
組成物Aを、組成物70μlが以下のものを含有するように調製した。
【表1】

【0076】
実施例4
組成物Aの調製手順
16リットルの組成物Aの調製のために、10190 gのエタノール99.5%、400 gの水、2440 gのグリセリン、230 gのサッカリンナトリウム及び570 gのペパーミント油を、ステンレス鋼容器中で混合し、完全に溶解するまで撹拌した。
次いで、230 gのニコチンを加え、得られた溶液を、さらに15分間撹拌した。
液体組成物を、図1に示すものと同様のデバイスに充填した。
【0077】
実施例5
組成物B
組成物Bを、組成物70μlが以下のものを含有するように調製した。
【表2】

【0078】
実施例6
組成物Bの調製手順
16リットルの組成物Bの調製のために、10190 gのエタノール99.5%、400 gの水、2440 gのグリセリン、115 gのサッカリンナトリウム及び570 gのペパーミント油を、ステンレス鋼容器中で混合し、完全に溶解するまで撹拌した。
次いで、230 gのニコチンを加え、得られた溶液を、さらに15分間撹拌した。
液体組成物を、図1に示すものと同様のデバイスに充填した。
【0079】
本発明及びその利点を詳細に記載したが、種々の変更、置換及び改変を、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書において行うことができる。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載される手順、機械、製造、物質の組成、手段、方法及び工程の具体的な実施形態に限定されることを意図しない。本発明の開示から当業者が容易に認識するように、現存するか又は本明細書に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能を発揮するか若しくは実質的に同じ結果を達成するこれから開発される手順、機械、製造、物質の組成、手段、方法又は工程は、本発明に従って利用できる。よって、添付の特許請求の範囲は、そのような手順、機械、製造、物質の組成、手段、方法又は工程をその範囲内に含むことを意図する。
【0080】
実施例7
ニコチン含有口腔噴霧
口腔噴霧製品は、以下の組成を有する。
14 mg/mlのニコチン口腔噴霧。
【0081】
【表3】

【0082】
組成物を、口腔前庭、特に下顎頬側溝に液体を指向させるためのマウスピースを有する送達デバイスに充填する。
【0083】
実施例8
本発明に従って用いられる送達デバイスの中枢の効力及び薬物動態学的研究
実施例7に記載される液体を含む送達デバイスを、第III相の単純盲検で無作為のクロスオーバー試験に供して、タバコ離脱症状の軽減、及び使用者の満足度に対する新規なニコチン置換療法の影響を研究した。研究センターは、Single-centre, Clinical Trials Research Unit, School of Population Health, The University of Aucklandであった。
【0084】
本研究の目的は、以下のとおりであった。
第1a部。
用量当たり2×1 mlのニコノヴァム口腔噴霧と、ニコレット (登録商標)ガム及びプラセボロゼンジの離脱軽減効果の比較
a) 離脱の不快感及び1晩の禁煙後の欲求に対するニコノヴァム口腔噴霧の効果を、ニコレットガム及びプラセボのロゼンジと比較する。
b) 対象の嗜好及び消費パターンを評価する。
【0085】
第1b部
ニコノヴァム口腔噴霧、ニコレットガム及びプラセボのロゼンジのニコチン血漿濃度の比較及び離脱軽減との相互関係
a) 血漿中への製品のニコチン吸収速度を評価する。
b) 血漿ニコチン濃度と離脱軽減との関係を評価する。
【0086】
方法論:
対象は、研究の開始前に、スクリーニングのための訪問を経た。この訪問時に、彼らは書面のインフォームドコンセントを受け、人口統計データを集める短い質問表に答え、医療スクリーニング(病歴、血圧、心拍数、尿のディップスティック)を受けた。適格な対象に、3日間のウォッシュアウト期間の間隔がある3〜5日間の実験日(第1部: 3日間; 第2a部: 4日間; 第2b部: 5日間)に出席するように依頼した。対象に、前日の夜8時から喫煙を断ち、実験日の間は禁煙を維持するように指示した。各実験日に、対象は、実験の投薬を無作為に割り当てられた。対象及び実験者には、噴霧及びプラセボの割り当てについてのみわからないようにした。対象は、実験の投薬を用い、次いで、最初の60分間にわたって欲求及び離脱のレベルについて評点された。このことを、実験の投薬の第1及び第2の用量の直後の別の60分の間に繰り返した。次いで、対象は実験場所を離れ、実験の投薬をその日の間用いるように指示された。彼らは、同じ日の夜に実験場所に戻って投薬を返却し、実験の投薬の有害事象及び満足度及び有用性について報告した。対象は、これらの測定事項を集めた後に喫煙を許可された。実験日の間の3日間に、対象は、通常通りに喫煙するように依頼された。
【0087】
対象の人数(計画及び分析)
計画:合計で52名の対象が、この研究に加わることが計画された。分析:合計で47名の対象が、少なくとも1日の実験に出席した。これらの人々のうち12名が、第1b)部の少なくとも1日に参加した。
【0088】
包含のための診断及び主な基準
ニコチンの嗜癖を有する対象。包含の基準は、(1) 年齢18〜70歳;(2) 前年に、1日当たり15本以上のタバコの喫煙;(3) 30分以内の歩行の間の喫煙;(4) 良好な健康状態であることの自己申告、及び短いスクリーニング検査によるその証明;(5) 実験期間中に実験場所に出席可能;(6) 英語の読み書きが可能;及び(7) 対象はインフォームドコンセントを受けることができることであった。
【0089】
試験製品及び投与の様式
各実験日の午前中に2回の投与、及び実験日の9時間にわたる自己投与の試験される全ての薬物は、頬側経路により送達される。第1部試験製品:ニコノヴァムニコチン口腔噴霧2×1 mg用量。用量は、下顎頬側溝への投与を促進する噴霧デバイスにより投与した。
【0090】
処置期間:
3、4又は5日間の実験について1週間当たり1日
【0091】
参照療法、用量及び投与の様式
参照製品:ニコレット4 mgニコチンガム及びプラセボのロゼンジ。
【0092】
統計学的方法:
1次的な結果(投薬の間の各訪問の間に自己申告された欲求のスコア)を、要約統計量(曲線の下の面積)を用いて分析した。このアプローチは、繰り返し測定の原因となり、情報の損失がないことをもたらす。このアプローチは、ベースラインの欲求スコア(投薬の5分前及び15分前の欲求スコアの平均)、及び期間を共変量として含む。1次終点の主要な分析について上記に概説したのと同じアプローチを、2次終点についても用い、ここでは、クロスオーバー測定を集めた。全ての入手可能なデータを用いる。混合モデルを用いて、全ての無作為化した患者がモデルに含まれることを確実にした。ベースライン及び各実験の訪問で集めた生データを表すために、記述統計学も用いた。
【0093】
結果:
60分の期間の間に、ニコレットガム群では26ユニットの減少、ニコノヴァム口腔噴霧の群では29ユニットの減少、及びプラセボロゼンジの群では9ユニットの減少があった。ニコノヴァム製品とプラセボとの間の差は、有意であることがわかった(p<0.001)。欲求の変化を、最初の30分の間の5分の時点で分析した場合、ニコノヴァム口腔噴霧は、5、10及び15分において、ニコレットガム及びプラセボロゼンジよりも著しく欲求を減少させた。ニコレットガムは、20分においてプラセボよりもより効果があり、ニコノヴァム製品は、25及び30分の時点にてプラセボロゼンジよりも優れたままである。ニコレットガム及びニコノヴァム口腔噴霧は、プラセボロゼンジと比較したときに、より有用である。さらに、ニコノヴァム口腔噴霧は、ニコレットガムよりも有用であると評価された。結果を、図5〜7に示す。
【0094】
上記の記載は、例示を意図し、限定することを意図しない。本発明は、本発明の変形、改変及び改良をカバーすることを意図する添付の特許請求の範囲において定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を含有し、送達の間に規定された方向に液体を指向させるためのマウスピースを有する送達デバイスを提供し、
口の他の領域及び/又は口全体と比較して活性物質の摂取の増大及び作用のより迅速な開始に特に適する対象の口の限局された領域に向かって前記マウスピースを指向させ、
前記送達デバイスを用いて、前記限局された領域に直接、液体の計測された量を送達する
ことを含む、対象の血流中への改善された吸収のために、活性物質を含有する液体を対象に経口投与する方法。
【請求項2】
活性物質を含有する液体を保持できる容器と、
前記活性物質を含有する液体を、規定された方向に、対象の口の限局された領域に直接分配するように構築されたマウスピースと
を含み、前記限局された領域が口腔前庭である、対象の口腔に活性物質を投与するための噴霧デバイス。
【請求項3】
i) 液体を含有し、規定された方向に液体を噴霧するためのマウスピースを有する噴霧装置を配置し、
ii) 対象の口の口腔前庭に向けて前記マウスピースを指向させ、
iii) 口腔前庭に前記液体の計測された量を噴霧する
工程を含む、対象の血流中への改善された吸収のために、対象の口の内部に、活性物質を含有する液滴又は霧化液体を適用する方法。
【請求項4】
前記口腔前庭が、唇側前庭及び/又は頬前庭である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記口腔前庭が、頬側溝である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記頬側溝が、下顎頬側溝である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記活性物質が、治療的、予防的及び/又は診断的な活性物質である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記活性物質が、作用の迅速な開始が必要とされる状況で用いるのに適する物質である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記活性物質が、アルカロイド並びにその塩、溶媒和物及び錯体、又はそれらの混合物である請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記活性物質が、ニコチン、又はその塩、溶媒和物若しくは錯体、又はそれらの混合物である請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ニコチンが、ニコチンベース、ニコチン塩酸塩、ニコチン二塩酸塩、ニコチン酒石酸塩、酒石酸水素ニコチン、ニコチン硫酸塩、ニコチン塩化亜鉛、ニコチンサリチル酸塩、及びそれらの混合物からなる群より選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ニコチンが、セルロース物質又はイオン交換物質とともに存在する請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記液体が、活性物質と、1又は複数の許容される賦形剤とを含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記1又は複数の許容される賦形剤が、溶媒、粘度調整剤、pH調整剤、甘味料を含む添加剤、風味隠蔽剤、防腐剤、吸収促進剤、並びにそれらの混合物からなる群より選択される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶媒が、水、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールを含むアルコール、グリセリン、並びにポリエチレングリコールからなる群より選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記粘度調整剤が、グリセリン、セルロース及びセルロース誘導体、アルギン酸塩、ペクチン類、ゴム類、植物抽出物及びカラギーナンからなる群より選択される請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記液体が、溶解された形の活性物質を含有する請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記活性物質が、前記液体中に分散されている請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
対象の血漿中の活性物質のピーク濃度(Tmax - 口腔前庭)を得るための時間が、他の条件は全て同じで、口内に直接噴霧を行う場合に得られる時間(Tmax - 直接)よりも早く得られる請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
Tmax (口腔前庭)が、約0.75 Tmax (直接)未満、例えば約0.7 Tmax (直接)未満、約0.6 Tmax (直接)未満、約0.55 Tmax (直接)未満、又は約0.5 Tmax (直接)若しくはそれ未満である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
対象の血漿中の活性物質のピーク濃度(Cmax - 口腔前庭)が、他の条件は全て同じで、口内に直接噴霧を行う場合に得られる濃度(Cmax - 直接)よりも大きい請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
Cmax (口腔前庭)が、約1.05 Cmax (直接)より大きい、例えば約1.1 Cmax (直接)又はそれより大きい請求項21に記載の方法。
【請求項23】
活性物質を含む液体を含むキャニスタを含む噴霧装置であって、キャニスタが、液体を口腔前庭に噴霧するためのマウスピースを備える噴霧装置。
【請求項24】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法において用いるための請求項23に記載の噴霧装置。
【請求項25】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法において用いるための噴霧装置の製造のための、活性物質を含む液体の使用。
【請求項26】
i) 活性物質を含む液体と、
ii) 液体を口腔前庭に噴霧するためのマウスピースを備えるキャニスタを含む噴霧装置と、
iii) 任意に、その使用説明と
を含むキット。
【請求項27】
i) 活性物質と、
ii) 液体と、
iii) 液体を口腔前庭に噴霧するためのマウスピースを備えるキャニスタを含む噴霧装置と、
iv) 任意に、その使用説明と
を含むキット。
【請求項28】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法における請求項26又は27に記載のキットの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−504931(P2010−504931A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529608(P2009−529608)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008420
【国際公開番号】WO2008/037470
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(509082341)ニコノヴァム エービー (2)
【氏名又は名称原語表記】NICONOVUM AB
【住所又は居所原語表記】Jarnvagsgatan 13, S−252 24 Helsingborg, Sweden
【Fターム(参考)】