説明

振動発生器

【課題】小型化が可能な振動発生器を提供する。
【解決手段】振動発生器は、軸105を支点として回動可能な振動子109と、振動子109を回動させるための磁石113およびコイル111とを備える。振動子109の重心は、軸105から外れており、振動発生器は、電気信号をコイル111に供給することで、振動子109を軸105を支点として往復運動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動によって携帯電話や目覚ましなどの無音報知源として用いられる振動発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話や目覚ましなどの無音報知源として用いられる小形直流モータ(振動発生器の一種)が知られている。モータを振動源とするために、モータの軸に偏心錘が配置される。この錘により、モータ回転時の遠心力により振動を発生させることができる。
【0003】
下記特許文献1には、一般的なDCモータで構成される4極6スロットの構成を、ロータの機械角で180度側の3スロットで構成する小型直流モータが開示されている。この小型直流モータにおいては、鉄心にコイルを巻回したアマチュア組立のスロットを60度等分で片側に3スロット構成することで死点なく回転し、アンバランスを発生させる構成にし、振動を発生させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−59322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の特許文献1には、以下の様な問題がある。すなわち、回転体が回転することで振動を発生させる構成であるため、正常に回転させるためには、3相構造とする必要がある。これにより、最低3スロットが必要となる。更に、接点部においては、死点なく回転させるためには、一般的なDCモータで構成される4極6スロットのモータと同じく、6セグメントで構成された整流子が必要となる。
【0006】
このため従来の振動発生器は、小型化に不向きであるという問題がある。また、振動発生器(モータ)の厚みや断面積としては、通常のモータと同じ厚みや断面積が必要であり、薄型化に適さない構成となっている。
【0007】
この発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、小型化が可能な振動発生器を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、振動発生器は、軸を支点として回動可能な振動子と、振動子を回動させるための磁石およびコイルとを備え、振動子の重心は、軸から外れており、振動発生器は、電気信号をコイルに供給することで、振動子を軸を支点として往復運動させる。
【0009】
好ましくは振動子は、アマチュアコアを含み、アマチュアコアは1つである。
【0010】
好ましくは振動発生器は、振動子の往復運動により、振動子の衝撃を受けて吸収するダンパをさらに備える。
【0011】
好ましくは振動発生器は、コイルに交番電流を供給する端子または交番電流発生器を備える。
【0012】
好ましくは振動発生器は、振動子の往復運動により振動する被振動体をさらに備え、被振動体の共振周波数と、交番電流の周波数とを合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小型化が可能な振動発生器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態における振動発生器の構造を示す断面図である。
【図2】図1の振動発生器の内部構造を示す断面図である。
【図3】図1の振動発生器のブラシ117a,117bと整流子の電極115a,115bとの関係を説明するための図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態における振動発生器の構造を示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態における振動発生器の構造を示す断面図である。
【図6】振動発生器を駆動するための電気回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態における振動発生器の構造を示す断面図であり、図2は、図1の振動発生器の内部構造を示す断面図である。また図3は、図1の振動発生器のブラシ117a,117bと整流子の電極115a,115bとの関係を説明するための図である。図1では、振動発生器を軸に直交する方向から見ており、図2および図3では、振動発生器を軸方向から見ている。
【0017】
図を参照して振動発生器は、ケース101と、軸受103,121と、軸受103,121により回動可能に支持される軸105と、スラストホルダー107と、軸105に取り付けられているアマチュアコア109と、アマチュアコア109に巻回されるコイル111と、コイル111との間で磁界を作用させることでアマチュアコア109を回動させる磁石113と、軸105に取り付けられる整流子115と、整流子115と接触することが可能なブラシ117a,117bと、ブラシ117a,117bのそれぞれに電気的に接続され、交番電流の供給を受ける給電端子119a,119bと、ケース101と共に振動発生器の外形を成す樹脂ハウジング123と、アマチュアコア109と衝突したときにその衝撃を受け吸収するダンパ125a,125bとを備えている。
【0018】
給電端子119a,119bは、樹脂ハウジング123の内部を通り、振動発生器の外部と内部とを電気的に接続する。
【0019】
整流子115は、図3に示されるように、軸105の軸周りに形成された2つの電極115a,115bを含んでいる。電極115a,115bのそれぞれは、コイル111の巻線の両端部に接続される。
【0020】
スラストホルダー107は、軸105にアマチュアコア109を固定するとともに、軸105がケース101から軸方向に飛び出すことを防ぐストッパーの役目も兼ねている。また、アマチュアコア109は、全体を樹脂等によりコーティングされることでコイル111と絶縁されている。
【0021】
スロットの腕部にコイル111が巻回されたアマチュアコア109は、軸105を支点とした振り子部分(振動子)を構成する。給電端子119a,119b、ブラシ117a,117b、および整流子115を介して、コイル111に交番電流を流すことにより交番磁界が発生する。これにより、振り子部分とギャップを介して配置された磁石113の磁界との間で、振り子部分は吸引と反発とを繰り返す。結果として、振り子部分の往復運動よって振動が発生する。
【0022】
すなわち交番電流がコイル111の巻線を第1の方向に流れるときには、図2において、アマチュアコア109は時計回りに回動し、その左端部がダンパ125aに衝突する。その後、交番電流がコイル111の巻線を第2の方向に流れるときには、図2において、アマチュアコア109は反時計回りに回動し、その右端部がダンパ125bに衝突する。このようなアマチュアコア109の移動とダンパへの衝突が繰り返されることで、振動が発生する。
【0023】
なおコイル111に流す電流の波形は、正弦波、矩形波、三角波、のこぎり波のいずれであってもよい。
【0024】
アマチュアコア109の重心は、軸105の位置から外れている。すなわち、図では、アマチュアコア109の重心は、軸105の位置より下に位置する。通常のモータであれば、アマチュアコアの重心は軸上に位置するが、本実施の形態によると、このように重心を偏心させることで、発生する振動を大きくすることができる。
【0025】
図2に示されるように、磁石113の着磁は2極である。アマチュアコア109の回動可能な方向に沿って、磁石113のN極とS極とが分極されている。
【0026】
本実施の形態においては、通常のモータのようにアマチュアコア109は回転せず、振り子のように往復運動をするだけである。このため整流子115の電極115a,115bは、2弧片で必要角度(移動範囲)のみに形成されていればよい。図3では各電極はそれぞれ、軸105の軸周り(1周360°)の160〜170°程度をカバーしているが、各電極が軸105の軸周りをカバーする角度は、アマチュアコア109の回動角以上であればよい。
【0027】
本実施の形態における振り子型の構造を用いた振動発生器は、DCモータのアマチュア組立に相当する回転体を振り子型の揺動体(振動子)としている。軸を支点としてアマチュアコア109を振り子のように往復運動させることで、アンバランスによる振動を発生させることができる。振動発生の要因は、アマチュアコア109の振り子運動によるものが主であるが、アマチュアコア109がダンパ125a,125bに衝突する衝撃も、振動発生の要因となる。ダンパ125a,125bの硬度は、振動が発生しやすいものとすることが望ましい。
【0028】
さらに、コイル111に流す交番電流(駆動電流)の周波数を変化させることで、被振動体を共振させると、より大きな振動を発生させることができる。すなわち振動子の往復運動により振動する被振動体(例えばケース101、樹脂ハウジング123など)の共振周波数と、交番電流の周波数とを合わせるものである。
【0029】
以上の構成により、振動発生器の構成部品を簡素化することができる。また、振動を発生させるために回転体を回転させる必要がないため、振動発生器の厚みをモータ構造のものと比較して7割程度とすることができる。
【0030】
[第2の実施の形態]
図4は、本発明の第2の実施の形態における振動発生器の構造を示す断面図である。
【0031】
図4では特に給電端子119a,119bとコイル111との電気的な接続を行うための構成が示されている。図4では、振動発生器を軸が伸びる方向から見ている。
【0032】
アマチュアコア109は一般的なモータのように回転しないので、ブラシや整流子が無くても振動発生器を構成することができる。
【0033】
図4に示されるように、軸105には4つの電極203a,203b,205a,205bを持つ連結基板201が接続される。電極203aと電極205aとが接続される。電極203bと電極205bとが接続される。電極203a,203bのそれぞれは、コイル111の巻線の両端に接続される。電極205a,205bのそれぞれは、配線207a,207bによって給電端子119a,119bのそれぞれに接続される。すなわち、振り子のように往復運動をするアマチュアコア109のコイル111と給電端子119a,119bとを結ぶ配線に撓みを設けて、その撓みにより往復運動をするアマチュアコア109の移動を容易に行うことができる。配線207a,207bは撚り線やフレキシブルリード線、網線など柔軟性のある材料で接続することで、断線や接触不良等に対する信頼性を高めることができる。
【0034】
[第3の実施の形態]
図5は、本発明の第3の実施の形態における振動発生器の構造を示す断面図である。
【0035】
図5は、図2と同様に、振動発生器を軸が伸びる方向から見たときの内部構造を示している。
【0036】
本実施の形態においては図2の構造と比較して、ダンパ125a,125bが設けられていない。その部分の容積を小さくすることができるため、図5のケース101は、左右の上部の高さを、図1よりも低くすることが可能となっている。
【0037】
[他の実施の形態]
磁石の形状やケースの形状は、上記の実施の形態に限定されず、任意の形状としてもよい。例えば、図2および図5における磁石113は、コーナー部(図における右下部および左下部)で厚く偏肉した形状であるが、このような偏肉のない磁石113としてもよい。その場合、フレーム101の底部は、図2および図5のようにフラットにせずに、R形状(下に凸となる断面が円弧形状)とすることも可能である。但し、底面にフラット部分を有すると、印刷基板等に振動発生器を取り付けやすいというメリットがある。
【0038】
[回路構成]
図6は、上述の振動発生器を駆動するための電気的構成を示す図である。
【0039】
図を参照して、振動発生器100は交番電流発生器300に接続される。交番電流発生器300は、直流を交流に変換する装置であってもよいし、交流発電機などであってもよい。
【0040】
上述のように、交番電流発生器300が発生させる交番電流の周波数を、被振動体(ケースなど)の共振周波数と合わせることで、より大きな振動を生じさせることができる。
【0041】
[実施の形態における効果]
以上のように、電気信号を供給することで振動を発生させる振動発生器は、回転軸を支点とした、振り子のような往復運動をする振動子を有する。このような構成により、振動発生器の薄型化が可能で、振動発生器を組み込んだセットの薄型化にも対応できる。具体的には、通常のモータの高さの7割程度の高さで振動発生器が構成できる。
【0042】
振動子は、複数のアマチュアコアを備えていてもよいが、小型化を図るためには1つのアマチュアコアにコイルを巻回して構成することが望ましい。
【0043】
コイルの巻線には交番電流が印加される。交番電流を使用することで、整流子を2セグメントで構成することができる。
【0044】
さらに、モータケースなどの被振動体の共振周波数と交番電流の周波数とを合わせることが望ましい。被振動体と共振周波数を合わせることで、体感振動を大きくできるからである。
【0045】
上述の実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
101 ケース
103,121 軸受
105 軸
107 スラストホルダー
109 アマチュアコア
111 コイル
113 磁石
115 整流子
115a,115b 整流子の電極
117a,117b ブラシ
119a,119b 給電端子
123 樹脂ハウジング
125a,125b ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸を支点として回動可能な振動子と、
前記振動子を回動させるための磁石およびコイルとを備え、
前記振動子の重心は、前記軸から外れており、
電気信号を前記コイルに供給することで、前記振動子を前記軸を支点として往復運動させる、振動発生器。
【請求項2】
前記振動子は、アマチュアコアを含み、
前記アマチュアコアは1つである、請求項1に記載の振動発生器。
【請求項3】
前記振動子の往復運動により、前記振動子の衝撃を受けて吸収するダンパをさらに備えた、請求項1または2に記載の振動発生器。
【請求項4】
前記コイルに交番電流を供給する端子または交番電流発生器を備えた、請求項1から3のいずれか一項に記載の振動発生器。
【請求項5】
前記振動子の往復運動により振動する被振動体をさらに備え、
前記被振動体の共振周波数と、前記交番電流の周波数とを合わせることを特徴とする、請求項4に記載の振動発生器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−10074(P2013−10074A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144318(P2011−144318)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(504257302)ミネベアモータ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】