説明

排ガス再循環システム

【課題】舶用内燃機関の燃料消費率を向上させることができる排ガス再循環システムを提供すること。
【解決手段】効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上でコンプレッサ7が運転されるよう、第1のバイパスバルブ28の開度、第1のEGRバルブ22の開度、第2のEGRバルブ26の開度、およびブロワ27の回転数が、制御装置29から送られてきた制御信号に基づいて操作されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス再循環システム(排ガス再循環装置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ディーゼルエンジンの排気ガスには、NOx、SOxおよび煤塵等の有害物質や環境に負荷を与える物質が含まれている。特に、低質な燃料が使用される船舶用のディーゼルエンジンにあっては、排出される有害物質の含有量も多い。そのため、このような有害物質を排出しない種々の方式が提案されている。
【0003】
有害物質を低減させる代表的な方法としてNOxを低減できる排ガス再循環(EGR)方式(例えば、特許文献1参照)がある。これは、燃焼により発生した排気ガスの一部を燃焼用空気に混入して燃焼させ、燃焼温度を低下させることによりNOxの減少を図るものである。排気ガスで薄められた空気は通常の空気に比べて酸素濃度が低い。従って、燃料と酸素との反応である燃焼の速度を遅らせることができる。それに伴い、火炎の最高温度が低下するので、NOx生成(Thermal NOx)を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−332919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また近年では、環境保全の観点から、エンジン排ガス規制(IMO3次、EPA、Tier4等)が定められ、この環境規制域内においては、NOxの排出が今後さらに制限されることになる。
そこで、このようなエンジン排ガス規制に対応するため、図6に示すような排ガス再循環システム61が提案されている。
【0006】
図6に示す排ガス再循環システム61は、(第1の)EGRバルブ(流量制御弁)22と、(第1の)ブロワ(送風機)23と、スクラバ(煤塵およびSOx除去装置)24と、(第2の)エアクーラー(空気冷却器)25とを備えている。
ここで、従来の内燃機関では、コンプレッサを通過する空気流量が機関回転数により一意に決まる。しかしながら、排ガス再循環システム61では、排ガスの再循環量に応じてシステムのガス流量バランスが異なり、例えば、図7に示す効率曲線(コンプレッサマップ、特性曲線、輪形図)に符号L1で示す作動ライン上でコンプレッサ7が運転されることになる。このような場合に、コンプレッサの効率が著しく低下する領域に作動点が遷移すると、舶用内燃機関2の燃料消費率が悪くなってしまうといった問題点があった。
【0007】
なお、図6中の符号2は舶用内燃機関、符号3は(第1の)排気タービン過給機(以下、「過給機」という。)、符号4は(第1)のエアクーラー(空気冷却器)、符号5は過給機を構成するローター軸、符号6は過給機3を構成する(第1の)タービン、符号7は過給機3を構成する(第1の)コンプレッサ、符号8は(第1の)排気管、符号9は(第2の)排気管、符号10は(第1の)給気管、符号11は(第2の)給気管、符号12は(第3の)給気管であり、図7中の符号L2はサージラインである。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、舶用内燃機関の燃料消費率を向上させることができる排ガス再循環システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る排ガス再循環システムは、舶用内燃機関から排出された排気ガスの一部を、再循環管を介して前記舶用内燃機関の上流側に配置された排気タービン過給機のコンプレッサの吸込口側に戻し、前記舶用内燃機関の燃焼用空気に混入して燃焼させる排ガス再循環システムであって、前記舶用内燃機関の下流側に配置された前記排気タービン過給機のタービンに前記排気ガスを導く第1の排気管の途中にその上流端が接続され、前記タービンを通過した前記排気ガスを船外に導く第2の排気管の途中にその下流端が接続されて、前記タービンをバイパスする第1のバイパス管と、前記第1のバイパス管の途中に設けられた第1のバイパスバルブと、前記再循環管の途中に設けられた第1のEGRバルブと、前記第1のEGRバルブよりも下流側に位置する前記再循環管の途中にその上流端が接続され、前記コンプレッサを通過した燃焼用空気を前記舶用内燃機関に導く給気管の途中にその下端が接続された再循環バイパス管と、前記再循環バイパス管の途中に設けられた第2のEGRバルブと、前記第2のEGRバルブよりも下流側に位置する前記再循環バイパス管の途中に設けられたブロワと、前記コンプレッサの有する効率曲線が内部にデータベースとして記憶された制御装置と、を備え、前記効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上で前記コンプレッサが運転されるよう、前記第1のバイパスバルブの開度、前記第1のEGRバルブの開度、前記第2のEGRバルブの開度、および前記ブロワの回転数が、前記制御装置から送られてきた制御信号に基づいて操作される。
【0010】
本発明に係る排ガス再循環システムによれば、舶用内燃機関に燃焼用空気を供給する排気タービン過給機のコンプレッサが、当該コンプレッサの有する効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上で運転されることになるので、舶用内燃機関の燃料消費率を向上させることができる。
【0011】
本発明に係る排ガス再循環システムは、舶用内燃機関から排出された排気ガスの一部を、再循環管を介して前記舶用内燃機関の上流側に配置された第1の排気タービン過給機のコンプレッサの吸込口側に戻し、前記舶用内燃機関の燃焼用空気に混入して燃焼させる排ガス再循環システムであって、前記舶用内燃機関の下流側に配置された前記第1の排気タービン過給機の第1のタービンに前記排気ガスを導く第1の排気管の途中にその上流端が接続され、前記第1のタービンを通過した前記排気ガスを船外に導く第2の排気管の途中にその下流端が接続されて、前記第1のタービンをバイパスする第1のバイパス管と、前記第1のバイパス管の途中に設けられた第1のバイパスバルブと、前記第1の排気管の途中にその上流端が接続され、前記第2の排気管の途中にその下流端が接続されて、前記第1のタービンをバイパスする第2のバイパス管と、前記再循環管の途中に設けられた第1のEGRバルブと、前記第1のEGRバルブよりも下流側に位置する前記再循環管の途中にその上流端が接続され、前記コンプレッサを通過した燃焼用空気を前記舶用内燃機関に導く給気管の途中にその下端が接続された再循環バイパス管と、前記再循環バイパス管の途中に設けられた第2のEGRバルブと、前記第2のバイパス管の途中に設けられた第2のタービン、および前記再循環バイパス管の途中に設けられた第2のコンプレッサを備えた第2の排気タービン過給機と、前記第2のタービンよりも上流側に位置する第2のバイパス管の途中に設けられた第2のバイパスバルブと、前記第1のコンプレッサの有する効率曲線、前記第2のコンプレッサの有する効率曲線、前記第1のタービンが有するタービンカーブ、および前記第1のタービンが有するタービンカーブが内部にデータベースとして記憶された制御装置と、を備え、前記第1の効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上で前記第1のコンプレッサが運転され、前記第2の効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上で前記第2のコンプレッサが運転されるよう、前記第1のバイパスバルブの開度、前記第1のEGRバルブの開度、前記第2のバイパスバルブの開度、および前記第2のEGRバルブの開度が、前記制御装置から送られてきた制御信号に基づいて操作される。
【0012】
本発明に係る排ガス再循環システムによれば、舶用内燃機関に燃焼用空気を供給する第1の排気タービン過給機の第1のコンプレッサ、および第2の排気タービン過給機の第2のコンプレッサが、当該コンプレッサの有する効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上でそれぞれ運転されることになるので、舶用内燃機関の燃料消費率を向上させることができる。
【0013】
本発明に係る船舶は、上記いずれかの排ガス再循環システムを具備している。
このような船舶によれば、舶用内燃機関の燃料消費率を向上させることができる排ガス再循環システムを具備しているので、ランニングコストを低減させることができ、NOx、SOxおよび煤塵等の有害物質を低減させることができる。
【0014】
本発明に係る排ガス再循環システムの運転方法は、舶用内燃機関の下流側に配置された排気タービン過給機のタービンに排気ガスを導く第1の排気管の途中にその上流端が接続され、前記タービンを通過した前記排気ガスを船外に導く第2の排気管の途中にその下流端が接続されて、前記タービンをバイパスする第1のバイパス管と、前記第1のバイパス管の途中に設けられた第1のバイパスバルブと、前記舶用内燃機関から排出された前記排気ガスの一部を、前記舶用内燃機関の上流側に配置された前記排気タービン過給機のコンプレッサの吸込口側に戻す再循環管と、前記再循環管の途中に設けられた第1のEGRバルブと、前記第1のEGRバルブよりも下流側に位置する前記再循環管の途中にその上流端が接続され、前記コンプレッサを通過した燃焼用空気を前記舶用内燃機関に導く給気管の途中にその下端が接続された再循環バイパス管と、前記再循環バイパス管の途中に設けられた第2のEGRバルブと、前記第2のEGRバルブよりも下流側に位置する前記再循環バイパス管の途中に設けられたブロワと、を備え、前記舶用内燃機関から排出された前記排気ガスの一部を、前記再循環管を介して前記コンプレッサの吸込口側に戻し、前記舶用内燃機関の燃焼用空気に混入して燃焼させる排ガス再循環システムの運転方法であって、前記コンプレッサの有する効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上で前記コンプレッサが運転されるよう、前記第1のバイパスバルブの開度、前記第1のEGRバルブの開度、前記第2のEGRバルブの開度、および前記ブロワの回転数を操作するようにした。
【0015】
本発明に係る排ガス再循環システムの運転方法によれば、舶用内燃機関に燃焼用空気を供給する排気タービン過給機のコンプレッサが、当該コンプレッサの有する効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上で運転されることになるので、舶用内燃機関の燃料消費率を向上させることができる。
【0016】
本発明に係る排ガス再循環システムの運転方法は、舶用内燃機関の下流側に配置された第1の排気タービン過給機の第1のタービンに排気ガスを導く第1の排気管の途中にその上流端が接続され、前記第1のタービンを通過した前記排気ガスを船外に導く第2の排気管の途中にその下流端が接続されて、前記第1のタービンをバイパスする第1のバイパス管と、前記第1のバイパス管の途中に設けられた第1のバイパスバルブと、前記第1の排気管の途中にその上流端が接続され、前記第2の排気管の途中にその下流端が接続されて、前記第1のタービンをバイパスする第2のバイパス管と、前記舶用内燃機関から排出された前記排気ガスの一部を、前記舶用内燃機関の上流側に配置された前記第1の排気タービン過給機の前記第1のコンプレッサの吸込口側に戻す再循環管と、前記再循環管の途中に設けられた第1のEGRバルブと、前記第1のEGRバルブよりも下流側に位置する前記再循環管の途中にその上流端が接続され、前記コンプレッサを通過した燃焼用空気を前記舶用内燃機関に導く給気管の途中にその下端が接続された再循環バイパス管と、前記再循環バイパス管の途中に設けられた第2のEGRバルブと、前記第2のバイパス管の途中に設けられた第2のタービン、および前記再循環バイパス管の途中に設けられた第2のコンプレッサを備えた第2の排気タービン過給機と、前記第2のタービンよりも上流側に位置する第2のバイパス管の途中に設けられた第2のバイパスバルブと、を備え、前記舶用内燃機関から排出された前記排気ガスの一部を、前記再循環管を介して前記第1のコンプレッサの吸込口側に戻し、前記舶用内燃機関の燃焼用空気に混入して燃焼させる排ガス再循環システムの運転方法であって、前記第1の効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上で前記第1のコンプレッサが運転され、前記第2の効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上で前記第2のコンプレッサが運転されるよう、前記第1のバイパスバルブの開度、前記第1のEGRバルブの開度、前記第2のバイパスバルブの開度、および前記第2のEGRバルブの開度を操作するようにした。
【0017】
本発明に係る排ガス再循環システムの運転方法によれば、舶用内燃機関に燃焼用空気を供給する第1の排気タービン過給機の第1のコンプレッサ、および第2の排気タービン過給機の第2のコンプレッサが、当該コンプレッサの有する効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上でそれぞれ運転されることになるので、舶用内燃機関の燃料消費率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、舶用内燃機関の燃料消費率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排ガス再循環システムを、船舶に適用した場合の概略の構成を示す図である。
【図2】図1に示すコンプレッサが有する効率曲線を示す図表である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る排ガス再循環システムを、船舶に適用した場合の概略の構成を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】(a)は図3に示すコンプレッサが有する効率曲線を示す図表、(b)は図3に示すタービンが有するタービンカーブを示す図表である。
【図6】従来の排ガス再循環システムの概略の構成を示す図である。
【図7】図6に示すコンプレッサが有する効率曲線を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る排ガス再循環システムについて、図1および図2を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る排ガス再循環システムを、船舶に適用した場合の概略の構成を示す図、図2は図1に示すコンプレッサが有する効率曲線を示す図表である。
【0021】
図1に示すように、船舶1は、舶用内燃機関(舶用ディーゼルエンジン)2と、(第1の)過給機3と、(第1の)エアクーラー(空気冷却器)4と、排ガス再循環システム21とを備えている。
舶用内燃機関2は、図示しないプロペラ軸および推進用プロペラを駆動(回転)させる推進用の機関、いわゆる「主機」である。
【0022】
(第1の)過給機3は、ローター軸(回転軸)5の両端にそれぞれ取付けられた(第1の)タービン6および(第2の)コンプレッサ7を備え、(第1の)排気管8を介して舶用内燃機関2からタービン6に排気ガスが供給されて駆動(回転)されるようになっている。また、タービン6を通過してローター軸5およびコンプレッサ7を駆動(回転)させた排気ガスは、(第2の)排気管9を通って図示しない煙突(ファンネル)に導かれ、船外に排出されるようになっている。
【0023】
一方、コンプレッサ7には、(第1の)給気管10を介して空気(外気)が導かれる(供給される)とともに、(第4の)再循環管34を介して排気ガスが導かれ(供給され)、給気管10を介して導かれた空気、および再循環管34を介して導かれた排気ガスは、コンプレッサ7で圧縮された後、(第2の)給気管11を介してエアクーラー4に導かれるようになっている。エアクーラー4に導かれた空気および排気ガスは、エアクーラー4で冷却された後、(第3の)給気管12を介して舶用内燃機関2の図示しないシリンダ内(筒内)に導かれ、図示しない燃料噴射弁から噴射された燃料とともにシリンダ内で燃焼させられる。
【0024】
さて、本実施形態に係る排ガス再循環システム21は、(第1の)EGRバルブ(流量制御弁)22と、(第1の)ブロワ(送風機)23と、スクラバ(煤塵除去装置)24と、(第2の)エアクーラー(空気冷却器)25と、(第2の)EGRバルブ(流量制御弁)26と、(第2の)ブロワ(送風機)27と、(第1の)バイパスバルブ28と、制御装置(制御器)29と、(第1の)バイパス管30とを備えている。
【0025】
バイパスバルブ28は、その一端(上流端)が排気管8の途中に接続され、その他端(下流端)が排気管9の途中に接続されて、排気ガスの一部を、タービン6を通さずにタービン6の上流側から下流側に導く(バイパス(迂回)させる)バイパス管30の途中に接続されている。また、バイパスバルブ28は、制御装置29から送られてきた制御信号(指令信号)に基づいて開閉(操作)され、図2に示す効率曲線(コンプレッサマップ、特性曲線、輪形図)に符号L3で示す最も効率のよい作動ライン上でコンプレッサ7が運転されるよう、バイパス弁28を通過する排気ガスの流量が制御(調整)されるようになっている。
【0026】
EGRバルブ22は、その一端(上流端)が排気管9の途中に接続され、その他端(下流端)がブロワ23の吸込口に接続された(第1の)再循環管31の途中に接続されており、制御装置29から送られてきた制御信号(指令信号)に基づいて開閉(操作)され、舶用内燃機関2の出力(負荷)に対応した排気ガス量が舶用内燃機関2に戻されるよう、EGRバルブ22を通過する排気ガスの流量が制御(調整)されるようになっている。
【0027】
ブロワ23の吐出口(送出口)から吐出された排気ガスは、(第2の)再循環管32を介してスクラバ24に導かれ、スクラバ24で排気ガス中の煤塵が除去された後、(第3の)再循環管33を介してエアクーラー25に導かれるようになっている。エアクーラー25に導かれた排気ガスは、エアクーラー25で冷却された後、その一端(上流端)がエアクーラー25の排出口に接続された(第4の)再循環管34を介して給気管10の途中に導かれ、給気管10を通過する空気と混合されて(合流して)、給気管10を介してコンプレッサ7に導かれ、コンプレッサ7で圧縮される。
【0028】
EGRバルブ26は、その一端(上流端)が再循環管34の途中に接続され、その他端(下流端)がブロワ27の吸込口に接続された(第1の)再循環バイパス管41の途中に接続されており、制御装置29から送られてきた制御信号(指令信号)に基づいて開閉(操作)され、図2に示す効率曲線(コンプレッサマップ、特性曲線、輪形図)に符号L3で示す最も効率のよい作動ライン上でコンプレッサ7が運転されるよう、EGRバルブ26を通過する排気ガスの流量が制御(調整)されるようになっている。
【0029】
再循環バイパス管41の途中には、(第4の)給気管42の一端(下流端)が接続されており、ブロワ27には、再循環バイパス管41を介して排気ガスが導かれる(供給される)とともに、給気管42を介して空気(外気)が導かれ(供給され)、再循環バイパス管41を介して導かれた排気ガス、および給気管42を介して導かれた空気は、ブロワ27を通った後、その一端(上流端)がブロワ27の吐出口(送出口)に接続された(第5の)給気管43を介して給気管11の途中に導かれ、給気管11を通過する空気および排気ガスの混合気と混合されて(合流して)、給気管11を介してエアクーラー4に導かれ、エアクーラー4で冷却されるようになっている。
【0030】
また、ブロワ27は、制御装置29から送られてきた制御信号(指令信号)に基づいて運転(操作)され、図2に示す効率曲線(コンプレッサマップ、特性曲線、輪形図)に符号L3で示す最も効率のよい作動ライン上でコンプレッサ7が運転されるよう、その回転数が制御(調整)されるようになっている。
【0031】
本実施形態に係る排ガス再循環システム21によれば、舶用内燃機関2に燃焼用空気を供給する排気タービン過給機3のコンプレッサ7が、当該コンプレッサ7の有する効率曲線から得られた最も効率のよい作動ラインL3上で運転されることになるので、舶用内燃機関2の燃料消費率を向上させることができる。
【0032】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係る排ガス再循環システムについて、図3から図5を参照しながら説明する。
図3は本実施形態に係る排ガス再循環システムを、船舶に適用した場合の概略の構成を示す図、図4は本実施形態に係る制御装置の動作を説明するためのフローチャート、図5(a)は図3に示すコンプレッサが有する効率曲線を示す図表、図5(b)は図3に示すタービンが有するタービンカーブを示す図表である。
【0033】
図3に示すように、本実施形態に係る排ガス再循環システム51は、(第2の)バイパス管52を備えているとともに、ブロワ27の代わりに、(第2の)過給機53が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0034】
バイパス管52は、その一端(上流端)が排気管8の途中に接続され、その他端(下流端)が排気管9の途中に接続されて、排気ガスの一部を、タービン6を通さずにタービン6の上流側から下流側に導く(バイパス(迂回)させる)配管であり、その途中には、(第2の)バイパスバルブ54が接続されている。
【0035】
(第2の)過給機53は、ローター軸(回転軸)55の両端にそれぞれ取付けられた(第2の)タービン56および(第2の)コンプレッサ57を備え、バイパス管52を介して舶用内燃機関2からタービン56に排気ガスが供給されて駆動(回転)されるようになっている。また、タービン56を通過してローター軸55およびコンプレッサ57を駆動(回転)させた排気ガスは、バイパス管52を通って排気管9の途中に導かれるようになっている。
【0036】
一方、コンプレッサ57には、再循環バイパス管41を介して排気ガスが導かれる(供給される)とともに、給気管42を介して空気(外気)が導かれ(供給され)、再循環バイパス管41を介して導かれた排気ガス、および給気管42を介して導かれた空気(外気)は、コンプレッサ57で圧縮された後、給気管43を介して給気管11の途中に導かれ、給気管11を通過する空気および排気ガスの混合気と混合されて(合流して)、給気管11を介してエアクーラー4に導かれ、エアクーラー4で冷却されるようになっている。
【0037】
さて、本実施形態において、EGRバルブ22,26、バイパスバルブ28,54はそれぞれ、図4に示すフローチャートの手順にしたがって動作する制御装置29から送られてきた制御信号(指令信号)に基づいて開閉(操作)されるようになっている。
【0038】
つぎに、図4に示すフローチャートを、図4および図5を参照しながら説明する。
まず、図示しない回転計および出力計で検出(測定)された舶用内燃機関2のエンジン回転数および出力(負荷)から、舶用内燃機関2に必要な掃気圧力およびEGR率(舶用内燃機関2に戻す排気ガスの割合)が制御装置29において計算される。
舶用内燃機関2のエンジン回転数が小さく(低く)、出力が小さい(小さい)場合、過給機3のみを運転させる過給機1台での運転モードが選択される。
【0039】
つづいて、制御装置29の内部にデータベースとして予め記憶(保存)された、図5(a)に示すコンプレッサ7が有する効率曲線(コンプレッサマップ、特性曲線、輪形図)から、舶用内燃機関2に必要な掃気圧力を実現するコンプレッサ7の圧力比が求められ、この圧力比と図5(a)に符号L4で示す最も効率のよい作動ラインとの交点からコンプレッサ7に流すべき空気および排気ガスの(修正)流量(体積流量)が求められて、コンプレッサ7の作動点が決定される。
【0040】
つぎに、制御装置29の内部にデータベースとして予め記憶(保存)された、図5(b)に符号L5で示すタービン6が有するタービンカーブ(タービンマップ、特性曲線)から、上述の圧力比を得るためにタービン6に流すべき排気ガスの(修正)流量(体積流量)が求められ、タービン6の作動点が決定される。
【0041】
そして、コンプレッサ7およびタービン6を上述の作動点でそれぞれ運転させるためのEGRバルブ22、バイパスバルブ28の開度がそれぞれ決定され、その開度になるように、制御装置29から送られてきた制御信号(指令信号)に基づいてEGRバルブ22、バイパスバルブ28が開閉(操作)される。
【0042】
一方、舶用内燃機関2のエンジン回転数が大きく(高く)、出力が大きい(高い)場合、過給機3および過給機53の双方を運転させる過給機2台での運転モードが選択される。
【0043】
つづいて、制御装置29の内部にデータベースとして予め記憶(保存)された、図5(a)に示すコンプレッサ7,57がそれぞれ有する効率曲線(コンプレッサマップ、特性曲線、輪形図)から、舶用内燃機関2に必要な掃気圧力を実現するコンプレッサ7,57の圧力比がそれぞれ求められ、これら圧力比と図5(b)に符号L4で示す最も効率のよい作動ラインとの交点からコンプレッサ7,57それぞれに流すべき空気および排気ガスの(修正)流量(体積流量)がそれぞれ求められて、コンプレッサ7,57の作動点がそれぞれ決定される。
【0044】
つぎに、制御装置29の内部にデータベースとして予め記憶(保存)された、図5(b)に符号L5で示すタービン6,56がそれぞれ有するタービンカーブ(タービンマップ、特性曲線)から、上述の圧力比を得るためにタービン6,56それぞれに流すべき排気ガスの(修正)流量(体積流量)がそれぞれ求められ、タービン6,56の作動点がそれぞれ決定される。
【0045】
そして、コンプレッサ7,57およびタービン6,56を上述の作動点でそれぞれ運転させるためのEGRバルブ22,26、バイパスバルブ28,54の開度がそれぞれ決定され、その開度になるように、制御装置29から送られてきた制御信号(指令信号)に基づいてEGRバルブ22,26、バイパスバルブ28,54が開閉(操作)される。
【0046】
本実施形態に係る排ガス再循環システム51によれば、舶用内燃機関2に燃焼用空気を供給する第1の排気タービン過給機3の第1のコンプレッサ7、および第2の排気タービン過給機53の第2のコンプレッサ57が、当該コンプレッサ7,57の有する効率曲線から得られた最も効率のよい作動ラインL4上でそれぞれ運転されることになるので、舶用内燃機関2の燃料消費率を向上させることができる。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜必要に応じて変形・変更実施可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 船舶
2 舶用内燃機関
3 (第1の)排気タービン過給機
6 (第1の)タービン
7 (第1の)コンプレッサ
8 (第1の)排気管
9 (第2の)排気管
11 (第2の)給気管
12 (第3の)給気管
21 排ガス再循環システム
22 (第1の)EGRバルブ
26 (第2の)EGRバルブ
27 ブロワ
28 (第1の)バイパスバルブ
29 制御装置
30 (第1の)バイパス管
31 (第1の)再循環管
32 (第2の)再循環管
33 (第3の)再循環管
34 (第4の)再循環管
41 (第1の)再循環バイパス管
43 (第2の)再循環バイパス管
51 排ガス再循環システム
52 (第2の)バイパス管
53 (第2の)排気タービン過給機
54 (第2の)バイパスバルブ
56 (第2の)タービン
57 (第2の)コンプレッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舶用内燃機関から排出された排気ガスの一部を、再循環管を介して前記舶用内燃機関の上流側に配置された排気タービン過給機のコンプレッサの吸込口側に戻し、前記舶用内燃機関の燃焼用空気に混入して燃焼させる排ガス再循環システムであって、
前記舶用内燃機関の下流側に配置された前記排気タービン過給機のタービンに前記排気ガスを導く第1の排気管の途中にその上流端が接続され、前記タービンを通過した前記排気ガスを船外に導く第2の排気管の途中にその下流端が接続されて、前記タービンをバイパスする第1のバイパス管と、
前記第1のバイパス管の途中に設けられた第1のバイパスバルブと、
前記再循環管の途中に設けられた第1のEGRバルブと、
前記第1のEGRバルブよりも下流側に位置する前記再循環管の途中にその上流端が接続され、前記コンプレッサを通過した燃焼用空気を前記舶用内燃機関に導く給気管の途中にその下端が接続された再循環バイパス管と、
前記再循環バイパス管の途中に設けられた第2のEGRバルブと、
前記第2のEGRバルブよりも下流側に位置する前記再循環バイパス管の途中に設けられたブロワと、
前記コンプレッサの有する効率曲線が内部にデータベースとして記憶された制御装置と、を備え、
前記効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上で前記コンプレッサが運転されるよう、前記第1のバイパスバルブの開度、前記第1のEGRバルブの開度、前記第2のEGRバルブの開度、および前記ブロワの回転数が、前記制御装置から送られてきた制御信号に基づいて操作されることを特徴とする排ガス再循環システム。
【請求項2】
舶用内燃機関から排出された排気ガスの一部を、再循環管を介して前記舶用内燃機関の上流側に配置された第1の排気タービン過給機のコンプレッサの吸込口側に戻し、前記舶用内燃機関の燃焼用空気に混入して燃焼させる排ガス再循環システムであって、
前記舶用内燃機関の下流側に配置された前記第1の排気タービン過給機の第1のタービンに前記排気ガスを導く第1の排気管の途中にその上流端が接続され、前記第1のタービンを通過した前記排気ガスを船外に導く第2の排気管の途中にその下流端が接続されて、前記第1のタービンをバイパスする第1のバイパス管と、
前記第1のバイパス管の途中に設けられた第1のバイパスバルブと、
前記第1の排気管の途中にその上流端が接続され、前記第2の排気管の途中にその下流端が接続されて、前記第1のタービンをバイパスする第2のバイパス管と、
前記再循環管の途中に設けられた第1のEGRバルブと、
前記第1のEGRバルブよりも下流側に位置する前記再循環管の途中にその上流端が接続され、前記コンプレッサを通過した燃焼用空気を前記舶用内燃機関に導く給気管の途中にその下端が接続された再循環バイパス管と、
前記再循環バイパス管の途中に設けられた第2のEGRバルブと、
前記第2のバイパス管の途中に設けられた第2のタービン、および前記再循環バイパス管の途中に設けられた第2のコンプレッサを備えた第2の排気タービン過給機と、
前記第2のタービンよりも上流側に位置する第2のバイパス管の途中に設けられた第2のバイパスバルブと、
前記第1のコンプレッサの有する効率曲線、前記第2のコンプレッサの有する効率曲線、前記第1のタービンが有するタービンカーブ、および前記第1のタービンが有するタービンカーブが内部にデータベースとして記憶された制御装置と、を備え、
前記第1の効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上で前記第1のコンプレッサが運転され、前記第2の効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上で前記第2のコンプレッサが運転されるよう、前記第1のバイパスバルブの開度、前記第1のEGRバルブの開度、前記第2のバイパスバルブの開度、および前記第2のEGRバルブの開度が、前記制御装置から送られてきた制御信号に基づいて操作されることを特徴とする排ガス再循環システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排ガス再循環システムを具備していることを特徴とする船舶。
【請求項4】
舶用内燃機関の下流側に配置された排気タービン過給機のタービンに排気ガスを導く第1の排気管の途中にその上流端が接続され、前記タービンを通過した前記排気ガスを船外に導く第2の排気管の途中にその下流端が接続されて、前記タービンをバイパスする第1のバイパス管と、
前記第1のバイパス管の途中に設けられた第1のバイパスバルブと、
前記舶用内燃機関から排出された前記排気ガスの一部を、前記舶用内燃機関の上流側に配置された前記排気タービン過給機のコンプレッサの吸込口側に戻す再循環管と、
前記再循環管の途中に設けられた第1のEGRバルブと、
前記第1のEGRバルブよりも下流側に位置する前記再循環管の途中にその上流端が接続され、前記コンプレッサを通過した燃焼用空気を前記舶用内燃機関に導く給気管の途中にその下端が接続された再循環バイパス管と、
前記再循環バイパス管の途中に設けられた第2のEGRバルブと、
前記第2のEGRバルブよりも下流側に位置する前記再循環バイパス管の途中に設けられたブロワと、を備え、
前記舶用内燃機関から排出された前記排気ガスの一部を、前記再循環管を介して前記コンプレッサの吸込口側に戻し、前記舶用内燃機関の燃焼用空気に混入して燃焼させる排ガス再循環システムの運転方法であって、
前記コンプレッサの有する効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上で前記コンプレッサが運転されるよう、前記第1のバイパスバルブの開度、前記第1のEGRバルブの開度、前記第2のEGRバルブの開度、および前記ブロワの回転数を操作するようにしたことを特徴とする排ガス再循環システムの運転方法。
【請求項5】
舶用内燃機関の下流側に配置された第1の排気タービン過給機の第1のタービンに排気ガスを導く第1の排気管の途中にその上流端が接続され、前記第1のタービンを通過した前記排気ガスを船外に導く第2の排気管の途中にその下流端が接続されて、前記第1のタービンをバイパスする第1のバイパス管と、
前記第1のバイパス管の途中に設けられた第1のバイパスバルブと、
前記第1の排気管の途中にその上流端が接続され、前記第2の排気管の途中にその下流端が接続されて、前記第1のタービンをバイパスする第2のバイパス管と、
前記舶用内燃機関から排出された前記排気ガスの一部を、前記舶用内燃機関の上流側に配置された前記第1の排気タービン過給機の前記第1のコンプレッサの吸込口側に戻す再循環管と、
前記再循環管の途中に設けられた第1のEGRバルブと、
前記第1のEGRバルブよりも下流側に位置する前記再循環管の途中にその上流端が接続され、前記コンプレッサを通過した燃焼用空気を前記舶用内燃機関に導く給気管の途中にその下端が接続された再循環バイパス管と、
前記再循環バイパス管の途中に設けられた第2のEGRバルブと、
前記第2のバイパス管の途中に設けられた第2のタービン、および前記再循環バイパス管の途中に設けられた第2のコンプレッサを備えた第2の排気タービン過給機と、
前記第2のタービンよりも上流側に位置する第2のバイパス管の途中に設けられた第2のバイパスバルブと、を備え、
前記舶用内燃機関から排出された前記排気ガスの一部を、前記再循環管を介して前記第1のコンプレッサの吸込口側に戻し、前記舶用内燃機関の燃焼用空気に混入して燃焼させる排ガス再循環システムの運転方法であって、
前記第1の効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上で前記第1のコンプレッサが運転され、前記第2の効率曲線から得られた最も効率のよい作動ライン上で前記第2のコンプレッサが運転されるよう、前記第1のバイパスバルブの開度、前記第1のEGRバルブの開度、前記第2のバイパスバルブの開度、および前記第2のEGRバルブの開度を操作するようにしたことを特徴とする排ガス再循環システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−127205(P2012−127205A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276816(P2010−276816)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】