排ガス凝縮方法及び排ガス凝縮装置
【課題】反応排ガスに含まれる亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスを追反応を抑制しつつ液化し、且つ2液を分離して回収する。
【解決手段】傾斜角が10〜30度である本体部10には、450〜550℃の液体亜鉛が充填されている。ガス出口12側を真空ポンプで吸引して、ガス入口11側の液体亜鉛の液面とガス出口12側の液体亜鉛の液面にレベル差を生じさせ、ガス入口11から排ガスを取り込む。排ガスに含まれる亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスを、液体亜鉛内を通過させることにより気液混合させ、急冷凝縮させる。液化した亜鉛は湯溜り20から回収し、液化した塩化亜鉛は液体排出口21から回収する。
【解決手段】傾斜角が10〜30度である本体部10には、450〜550℃の液体亜鉛が充填されている。ガス出口12側を真空ポンプで吸引して、ガス入口11側の液体亜鉛の液面とガス出口12側の液体亜鉛の液面にレベル差を生じさせ、ガス入口11から排ガスを取り込む。排ガスに含まれる亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスを、液体亜鉛内を通過させることにより気液混合させ、急冷凝縮させる。液化した亜鉛は湯溜り20から回収し、液化した塩化亜鉛は液体排出口21から回収する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化シリコンを金属亜鉛で還元し、太陽電池用金属シリコン(SOG−Si)を製造するプロセスにおいて、還元工程で生じた排ガス中に含まれる亜鉛ガスと塩化亜鉛ガスを液化して回収するための排ガス凝縮方法及び排ガス凝縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池用シリコンは、半導体用シリコン製造法であるシーメンス法で製造されてきた。しかし、太陽電池の用途としては、半導体ほどの純度を必要としないことから、需要増加と低価格化要求に対応するため、シーメンス法に代わる安価で大量生産できる製造プロセス開発が求められている。本発明者等は、例えば特許文献1に示すように、亜鉛還元法による太陽電池用シリコン原料の製造方法を提案している。
【0003】
亜鉛還元法は、以下の式(1)に基づいて、シリコン原料として四塩化珪素ガス(SiCl4)を用い、ガス或いは液体金属亜鉛(Zn)により還元し、金属シリコンを得るものである。SiCl4、Zn、ZnCl2の融点及び沸点を表1に示す。
【数1】
【表1】
【0004】
上記の反応における理論反応率は、亜鉛がガス状の場合50〜80%、液体ではほぼ100%になり、反応速度は速く、生産性の高いシステムである。亜鉛還元法は、半導体用シリコン製造プロセスとしてデュポン社によって開発され、1950年代には商業生産を行っていたが、半導体用シリコンの高純度化の流れに対応できず、1960年代に中止されたものである。その後1970年代後半〜80年代初頭にかけて、米国政府機関の委託によりバッテルコロンバス研究所(BCL)が、太陽電池用シリコン製造法として研究を実施したが(非特許文献1)、発明者等の知る限りでは未だに実用化までには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008/153181
【特許文献2】米国特許第2070101
【特許文献3】米国特許第2766114
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Evaluation of Selected Chemical Processes for Production of Low-cost Silicon (PhaseIII)by BCL,DOE/JPL954339-81/21,March31.1981
【非特許文献2】講座・現代の金属学 製錬編2「非鉄金属製錬」日本金属学会pp112-113
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
亜鉛還元法の実用化を阻む要因の一つとして、反応排ガスの処理がある。前述した還元反応は反応炉において実行される(例えば、特許文献1の段落0052)。反応炉では、不活性ガスをキャリアガスとして、温度制御、流量制御を行いながら、亜鉛(Zn)ガスと四塩化珪素(SiCl4)ガスを還元反応させて、シリコン(Si)を連続的に生成する。反応炉における還元工程で生じる排ガスには、反応生成物である塩化亜鉛(ZnCl2)以外に、未反応の四塩化珪素ガスと亜鉛ガス、及び添加した不活性ガスが含まれる。また、この排ガスには、通常は製造されたシリコン粉末も一部混入している。この排ガスは反応炉から排出された後、成分毎に分離回収して再利用する必要がある。
【0008】
還元剤として亜鉛ガスを用いる場合、排ガス温度は亜鉛をガス状態で反応系外に排気するため907℃以上にする必要がある。一方、排ガスを成分毎に分離回収するためにはガス冷却を行う必要があるが、高温のガスを冷却する過程で未反応のガスが反応し、前述した式(1)に示したシリコン生成反応が追加的に生じてしまう(いわゆる追反応が生じてしまう。)という問題がある。このような追反応によって析出したシリコンが排ガスの流路を閉塞し、冷却回収した液体の亜鉛や塩化亜鉛に混入する等の問題が生じている。
【0009】
本発明は、このような技術背景のもとになされたものであり、その目的は反応排ガスに含まれる亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスの追反応を抑制しつつ液化し、且つ2液を分離して回収することが可能な排ガス凝縮方法及び排ガス凝縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、上記課題を解決するために以下の措置を採る。なお後述する発明を実施するための最良の形態の説明及び図面で使用した符号を参考のために括弧書きで付記するが、本発明の構成要素は該付記したものには限定されない。
本発明1の排ガス凝縮方法は、シリコン塩化物ガスと亜鉛ガスを反応させて固体のシリコンを製造するときに生じる、亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスが含まれる排ガスを、420℃以上732℃以下の液体亜鉛中を通過させ、前記亜鉛ガス及び前記塩化亜鉛ガスを前記液体亜鉛で冷却して液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛とすることを特徴とする。
本発明2のの排ガス凝縮方法は、本発明1のシリコン製造時に発生する排ガス凝縮方法において、前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛とした後、両液体を比重の相違によって分離することを特徴とする。
【0011】
本発明1の排ガス凝縮装置(1,1’)は、
本発明1又は2に記載したシリコン製造時に発生する排ガス凝縮方法に用いる排ガス凝縮装置であって、
中心線が水平面に対する傾斜角は5〜55度であり、内部が空洞である本体部と、
この空洞と連通し、前記本体部の下端部付近に配置され、前記シリコン製造時に反応炉から排出される前記排ガスを供給するためのガス入口と、
前記空洞と連通し、前記本体部の上端部付近に配置されたガス出口と、
前記本体部の内部には前記液体亜鉛を前記ガス入口を超える高さである第1のレベルまで満たし、前記ガス出口側から吸引することによって、前記液体亜鉛のレベルを前記第1のレベルから第2のレベルまで上昇させて、前記ガス入口と前記ガス出口間で前記液体亜鉛のレベル差を生じさせるための吸引手段とからなることを特徴とする。
【0012】
本発明2の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記空洞には、前記液体亜鉛を循環させるための循環機構が設けられていることを特徴とする。
本発明3の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明2の排ガス凝縮装置であって、前記循環機構は、前記空洞を上限に2分割し、前記本体の中心軸線を含む面を有する板材であることを特徴とする。
【0013】
本発明4の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記ガス出口の下方であって、前記本体部の内部上面には前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛が当該ガス出口に侵入することを防止するためのブロッカが設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明5の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記本体部の上端部付近には、前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛を抜き出すための液体排出口が設けられ、当該液体排出口の外部に配置され、液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛を比重の相違によって分離させるための比重分離装置を有することを特徴とする。
【0015】
本発明6の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記本体部の上端部付近には、前記液化した塩化亜鉛を抜き出すための液体排出口が設けられ、当該液体排出口には、前記液化した塩化亜鉛を回収するための回収装置が配置されてることを特徴とする。
【0016】
本発明7の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記傾斜角が10〜30度であることを特徴とする。
本発明8の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記本体部の液体亜鉛の温度を450〜550℃に制御するための温度調整機構を有することを特徴とする。
【0017】
本発明9の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記本体部の材質が炭化珪素、又は溶融シリカであることを特徴とする。
本発明10の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記シリコン塩化物がクロロシランであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、排ガスの急冷が可能であり、追反応を抑制しつつ、亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスを冷却して液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛として各々抽出可能な状態とすることができる。液体となった亜鉛と塩化亜鉛は互いに溶解せず、比重の相違(液体亜鉛:約6.5,液体塩化亜鉛:約2.4)によって分離することができる。
【0019】
また、排ガスを液化するときに生じる凝縮熱は充填されている液体亜鉛に吸収され、この液体亜鉛の温度は排ガス凝縮装置の本体部に設けられた温度調整機構によって制御可能である。従って、排ガスを液化する際に発生する凝縮熱を除熱することができる。また、この温度制御機構によって、還元反応を実行させる反応炉が反応を開始するに先だって排ガス凝縮装置を一定温度(450〜550℃)に加熱しておくことができる。これにより反応炉を含めたシステム全体の稼働を円滑に行うことができる。
【0020】
また、本発明は還元反応を実行させる反応炉から生じた排ガスを連続的に処理して、液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛を連続的に抽出(排ガス凝縮装置外に排出)可能である。従って、反応炉を含めたシステム全体としての連続稼働に対応することができる。このような連続処理が可能となるため、上流側の反応炉の負荷変動に柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の排ガス凝縮装置の実施の形態を表す外観図である。
【図2】図2(a)は、図1の排ガス凝縮装置(吸引装置の非稼働時の状態)の全断面図である。図2(b)は、図2(a)のA−A断面図である。
【図3】図3(a)は、図1の排ガス凝縮装置(吸引装置の稼働時の状態)の断面図である。図3(b)は、図3(a)のB−B断面図である。
【図4】図4は、図1の排ガス凝縮装置の排ガス経路の部分拡大図である。
【図5】図5は、図1の排ガス凝縮装置の排出部の部分拡大図である。
【図6】図6は、液化した塩化亜鉛の回収装置を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の排ガス凝縮装置の他の実施の形態を表す外観図である。
【図8】図8は、図7の排ガス凝縮装置の断面図である。
【図9】図9(a)は、図8のA−A断面図である。図9(b)は、図8のB−B断面図である。
【図10】図10は、液化した亜鉛及び塩化亜鉛の比重分離装置を示す断面図である。
【図11】図11は、液化した塩化亜鉛の他の回収方法を示す配管図である。
【図12】図12は、液化した亜鉛の他の回収方法を示す配管図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[1.排ガス凝縮装置の構成]
本発明は、塩化シリコンを亜鉛によって還元しSOG−Siを製造した際に発生する排ガスを、追反応を抑制しつつ冷却し、排ガス中に含まれる亜鉛ガスと塩化亜鉛ガスを同時に液化して回収するための排ガス凝縮装置に関する。本発明に係る排ガス凝縮装置によって、排ガスを連続的に処理することができ、SOG−Si製造において連続操業の実現に貢献することができる。
【0023】
本発明に係る排ガス凝縮装置は、亜鉛製錬の電熱蒸留法(St,Joseph process)において、金属亜鉛蒸気を大量に含む排ガスから亜鉛を液体亜鉛として回収する装置を応用したものである。この装置に関しては、特許文献2、3及び非特許文献2に開示されている。本発明は、この装置を応用して、亜鉛還元法でSOG−Siを製造する際に発生する亜鉛ガスと塩化亜鉛ガスを同時に液化し、分離回収可能としたものである。回収した亜鉛は、塩化シリコンの還元剤としてリサイクルし、塩化亜鉛は液体のまま溶融塩電解を行い、亜鉛を回収する。同時に発生する塩素ガスは塩化シリコンの製造に利用することができる。
【0024】
以下、本発明に係る排ガス凝縮装置の実施の形態を図面により説明する。図1の外観図及び図2(a)の断面図に示すように、本発明の排ガス凝縮装置1は、内部が空洞の断面が筒状の本体部10を有している。本例では、本体部10は円筒状であり、この下端面と有底で円筒状の湯溜り20の側面である外周面が連結されている。即ち、本体部10の端面と湯溜り20の側面が互い交わった相貫体を成している。この湯溜り20の上端部は、蓋によって開閉自在であり、この湯溜り20の中心軸線は鉛直方向である。本体部10と湯溜り20の内部の空洞は互いに連通している。
【0025】
本体部10の上端面は、有底で円筒状の排出部30の側面に連結され、この排出部30の中心軸線は鉛直方向に向いている。即ち、本体部10の端面と排出部30の側面が互い交わった相貫体を成している。本体部10の中心軸線と水平面との傾斜角は5〜55度であり、好ましくは10〜30度である。従って、図2(a)の断面図に示すように、これら本体部10、湯溜り20、及び排出部30の内部の空洞は互いに連続している。図2及び図3に示すように、稼働時には、この湯溜り20及び本体部10に液体亜鉛が充填される。
【0026】
本体部10の下端部付近で上部の壁面には、排ガスを供給するための円筒状の管であるガス入口11が配置されている。ガス入口11の上端部は開口しており、この中心線は鉛直方向である。反応炉(図示せず。)から排出された排ガスは、このガス入口11より排ガス凝縮装置1内に供給される。また、本体部10の内部空洞の中心部には、液体亜鉛の循環を促すための循環機構として、本体部10の中心軸線に沿って上下仕切板13が固定、配置されている。図3(a)に示すように、排ガス処理中は上下仕切板13の存在によって、充填された液体亜鉛が上下仕切板13の上下を自然、又は強制的に循環(対流)する。
【0027】
この循環により液体亜鉛が局所的に高温となることを防止している。排出部30の上部のガス出口12から排ガスをブロア等の吸引装置(図示せず)で吸引することにより、本体部10及び排出部30内が減圧される。なお、この吸引装置の吸引孔の位置は、本体部10又は排出部30の内壁面であれば、上下仕切板13より上方の位置であれば、どこに配置しても良い。一方、本体部10の内部の下面には、液体亜鉛の液面領域を画する堰部材14が設けられている。この堰部材14は、図3(b)に示すように、一方の壁面が低い断面形状が凹部状の形状物である。この堰部材14は、本体部10の内壁に固定されている。堰部材14の底部には、溶融している液体を流出入するための貫通孔14aが形成されている。貫通孔14aは、堰部材14を越えた溶融液体を本体部10の下方に還流させるためのものである。
【0028】
また、堰部材14への貫通孔の形成は、溶融液体が滞留しないように必要に応じて他の箇所に形成しても良い。本体部10内部壁面で、かつ堰部材14の斜め上部の位置にはブロッカ15が固定して配置されている。排出部30は、本体部10の上端に設けられ、その頂部には、ガス出口12が設けられており、このガス出口12からは、未反応の四塩化珪素ガスと、添加した不活性ガスが排出される。このためにこのブロッカ15は、後述する図4に示すように、四塩化珪素ガスと不活性ガスと共に、液体亜鉛及び液体塩化亜鉛の一部が亜鉛液面上で飛沫となって飛散(スプラッシュ)したときに、これらをブロッカ15に衝突させてガス出口12に飛散するのを防止するためのものである。
【0029】
また、図3(a)に示すガス出口12には、排ガスの吸引を行うための吸引ポンプ(図示せず。)が接続されており、このガス出口12から本体部10の内部を吸引することによって、液体亜鉛の液面レベルを第2のレベルまで上昇させる(図3(a)に示した状態)。即ち、ガス入口11よりガス出口12の圧力が低い状態を吸引ポンプで作り出して、液体亜鉛の液面レベルを第1のレベルから第2のレベルに高くするものである。また排出部30の底部付近には、液化した塩化亜鉛を取り出すための液体排出口21が設けられている。ここで液体排出口21から排出された塩化亜鉛は、図6に示すように回収装置50に回収される。
【0030】
(傾斜角度に関して)
排ガス凝縮装置1の本体部10の中心線は、水平から所定角度を成しており、いわゆる傾斜構造になっている。排ガスの凝縮率(蒸気が液体に変わる率)は、ガス入口11からガス出口12を通過するときの液体亜鉛中での通過距離、通過速度、温度等の影響を受ける。ガス入口11及びガス出口12の間の圧力差が一定、高低差(高さ)が一定のとき、本体部10の傾斜角度を大きく取った場合、排ガスの液体亜鉛中の通過距離が短くなり、通過時間も短くなるが、通過速度は大きくなる。排ガスの通過速度が速くなると、これによって発生する渦流、コアンダ効果等による撹拌による気液が接触する確率は増加する。
【0031】
逆に、本体部10の傾斜角度が小さい場合、排ガスの液体亜鉛中の通過距離が長く、通過時間も長くなるが、一方で通過速度が小さくなる。このために、これによって発生する渦流、コアンダ効果等による撹拌による気液が接触する確率は低下する。経験的に本体部10の水平面に対する傾斜角度θが、5〜55度であれば適正なガス凝縮率は得られる。この傾斜角度θが大きいと液の攪拌、振動が大きくなり、傾斜角度θが小さいと設備が大きくなることから一般的には10〜30度が好ましい。
【0032】
(加熱装置)
液体亜鉛を加熱するための機構として、本例では本体部10の外周に電気ヒータ(図示せず)を配置しておく。また、本例のように湯溜り20を設置している場合には、液体亜鉛に電気ヒータを浸漬させる構造のものでも良く、又はガスバーナーで加熱するようにしても良い。また、本体部10内の液体亜鉛を均一な温度分布にするために、液体亜鉛を強制的に循環させると安定的な運転が可能となる。この強制循環機構は、例えば、以下の方法を採ることができる。ガス出口12、又はこの近くの本体部10の下方で、液面下に液体亜鉛の抜出口を配置し、ガス入口11の下方には液体亜鉛の流入口を設けておき、これらの間を連通管で繋ぐ。液体亜鉛を電磁的に駆動する電磁ポンプを使用して、強制的に連通管と排ガス凝縮装置1との間で液体亜鉛を循環させ、その循環経路の途中に加熱器を設置しておき温度調整を行う。
【0033】
(冷却装置)
後述するように、液体亜鉛の温度は、塩化亜鉛の沸点(732℃)以下でなければならず、このために設定温度以上に加熱されたとき、液体亜鉛を冷却する必要がある。液体亜鉛を冷却するための機構として、本体部10の上面、又は外周面をフィン構造(図示せず)にしておき、外部からファンによって本体部10の液体亜鉛を空冷するようにする。また、本体部10の外周に着脱可能な水冷ジャケットを設置しておくようにしても良い。このとき加熱用の電気ヒータを外周部の下面に配置し、水冷ジャケットを上面に配置し、冷却と加熱を選択的にできるようにすると良い。
【0034】
また、湯溜り20内に水冷管を浸漬して冷却することも可能である。冷却の度合いは浸漬する水冷管の数、浸漬深さで調整できる。また、液体亜鉛を強制的に循環させるようにして冷却しても良い。例えば、以下の方法を採ることができる。前述した加熱装置と同様に、ガス出口12、又は本体10の下方で、液面下に液体亜鉛の抜出口を設けておき、ガス入口11の下方には液体亜鉛の流入口を設けておき、これらの間を連通管で繋ぐ。電磁ポンプを使用して強制的に連通管と排ガス凝縮装置1との間で液体亜鉛を循環させ、その循環経路の途中に冷却器を設置しておき、液体亜鉛の温度調整を行う。
【0035】
(材質)
排ガス凝縮装置1、回収装置50、比重分離装置80の内壁面を構成する材質は、少なくとも排ガス成分、液体亜鉛、及び液体塩化亜鉛と反応しないことが条件となる。この条件をクリアするものとして、セラミックス全般が使用可能であり、特に炭化珪素、溶融シリカが適する。
【0036】
[2.排ガス凝縮装置の作用]
次に、本発明の排ガス凝縮装置1の作用に関して説明する。まず、湯溜り20と本体部10の中に第1のレベルまで液体亜鉛を充填する。この第一のレベルとは、図2に示すように、液面が、ガス入口11と本体部10の内壁面の接合部分よりも上に位置しているレベルである。本例では、液体亜鉛の液面は上下仕切板13の上部先端よりやや下方に位置している。本実施の形態の排ガス凝縮装置を動作させるためには、この第1のレベル(図2(a))にある液面を第2のレベル(図3(a))まで上昇させる。このとき液体亜鉛の温度は、亜鉛の融点(420℃)以上で、塩化亜鉛の沸点(732℃)以下でなければならず、450〜550℃が好ましい。
【0037】
本実施の形態では、ガス出口12から排ガスを吸引ポンプ(図示せず。)によって吸引することにより、ガス入口11とガス出口12の間で、液体亜鉛のレベル差を作り出す(図3(a)に示した状態)。本実施の形態では、ガス入口11における圧力を96kPa〜106kPa(即ち大気圧±5kPa)、ガス出口12における圧力を、ガス入口11における圧力、即ち概ね大気圧より15〜40kPa低く制御することにより、液体亜鉛のレベルを第2のレベルまで上昇させる。
【0038】
図6は、液化した塩化亜鉛の回収装置を示す断面図である。図3に示すよう排出部30の液体排出口21から排出された液体塩化亜鉛は、回収装置50に回収される。図6に示すように、この液体排出口21に接続されてい配管の他端は、回収装置50に充填された液体塩化亜鉛に挿入された状態にあるる。このために回収装置50から大気が本体10内に侵入することはないので、吸引ポンプによる排ガスの吸引に支障は生じない。但し、図6に示すように、吸引されることにより、液体塩化亜鉛が液体排出口21である配管に入り込み、回収装置50内の液体塩化亜鉛の液面が下がる。このとき配管から外気を吸い込まず、液体塩化亜鉛に配管が浸漬された状態を維持できるように、配管の内径と浸漬深さに関しては留意する必要がある。
【0039】
これにより、ガス出口12側の液面は、上下仕切板13を超える位置、即ち堰部材14の底部を覆う程度の位置まで上昇する(図3(a))。一方、反応炉からの排ガスは、96kPa〜106kPaに維持されているので、ガス入口11内の液面は下がり、ガス入口11と本体部10の内壁面の接合部分よりも下に位置することになる。これにより、排ガスがガス入口11から本体部10の液体亜鉛内に供給される。即ち、排ガス凝縮装置1が反応炉からの排ガスを吸い込む。
【0040】
ガス入口11から本体部10の液体亜鉛内に供給された排ガスは、本体部10の内壁頂部を通過して液体亜鉛の液面まで達する。このとき、図4に示すように、ガス入口11から液面にかけて、本体部10の内壁頂部に沿って排ガスが通過する経路Xが形成される。排ガスが、この経路Xを高速で通過することによって、気−液のミキシングが発生し、亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスが急冷凝縮されて、液化される。即ち液体亜鉛の温度を、亜鉛の融点(420℃)以上で、塩化亜鉛の沸点(732℃)以下、好ましくは450〜550℃に保つことにより、亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスを同時に液化することができる。
【0041】
このようにして排ガスを冷却する際、排ガス凝縮装置1内で排ガスの保有熱と、亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスが液状に戻るときに熱を放出する凝縮熱が発生する。一方で、排ガス凝縮装置1自体からの熱放射、熱伝導も存在する。これらの熱バランスを図り、液体亜鉛の温度範囲を一定に保つためには、必須要件ではないが加熱機構と冷却機構の双方を有する温度調整機構が必要である。この温度調整機構は、液体亜鉛が循環しているので、本体部10内に温度調整機構を設けるようにしても良いし、湯溜り20に温度調整機構を設けるようにしても良い。また、排ガス凝縮装置1の外部に設けた液体亜鉛貯留槽(本発明者等はタッピングウェルと称している。)から、温度制御された液体亜鉛を排ガス凝縮装置1に循環させるようにしても良い。
【0042】
本体部10における気−液接触部(経路X)では、急激な熱交換が行われるため、部分的に液体亜鉛の温度が高くなる。また排ガスが高速で通過するため、液体亜鉛がガス流とともに上昇する。液体亜鉛の液面付近が局所的に高温になるのを防止すべく、液体亜鉛の循環機構として上下仕切板13が設けられている。液体亜鉛の上昇流と下降流の境界に上下仕切板13を配置することで、図3(a)示す方向に循環する安定した循環流を作り出している。図4に示したように、経路Xを通過することにより、液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛は、冷却用液体亜鉛と混合するが、一部は図4に示すように、液体亜鉛液面上でスプラッシュ(点線表示)する。
【0043】
このスプラッシュした液体Y(液体亜鉛と液体塩化亜鉛の混合液)は、堰部材14の上方を通過して、内壁頂部に設けられたブロッカ15に衝突して落下する。落下して静置された液体Yは、比重の高い液体亜鉛(約6.5)と比重の低い液体塩化亜鉛(約2.4)に分離し、上層が液体塩化亜鉛層、下層が液体亜鉛層となっている。図5に示すように、液体塩化亜鉛は、排出部30の底部に設けられた液体排出口21から排出され、図6に示すように回収装置50に回収される。なお、下層の液体亜鉛は、堰部材14の下面に設けられた貫通孔14aから本体の循環流と合流する。
【0044】
液化した亜鉛は、湯溜り20から回収可能であり、前述したように液化した塩化亜鉛は液体排出口21から回収される。この回収は、液体亜鉛が一定の高さを保つようにセンシングされて制御される。更に、ガス出口12からは、未反応の四塩化珪素ガスと、添加した不活性ガスが排出される。このようにして排ガスの処理が完了する。なお、この排ガスには通常シリコン粉末も混入しているが、液体亜鉛に混入したシリコン粉末は湯溜り20上に浮いてくるため、容易に回収することができる。また、液体塩化亜鉛に混入したシリコン粉末は、回収装置50から連続的に排出される塩化亜鉛と共に回収できる。以上説明したように、連続的に反応炉で生じた排ガスを、本実施の形態の排ガス凝縮装置に連続的に供給し、連続的に処理して排出させることが可能である。
【0045】
[3.排ガス凝縮装置の運転管理方法]
(温度管理)
本体10に充填されている液体亜鉛の許容温度範囲は、420〜732℃であるが、最適温度範囲は450〜550℃であり、液体亜鉛の温度がこの範囲内で推移するよう温度管理を行う。温度が高いと塩化亜鉛のガス分圧が大きくなり、塩化亜鉛の凝縮率が低下する。一方、温度が低いと液体亜鉛の流動性が悪化し、気液のミキシングが不十分となり、亜鉛、塩化亜鉛ともに凝縮率が低下する。これらの障害を解消するための温度管理方法を以下に示す。
【0046】
まず、運転開始までは、排ガス凝縮装置1からの放散熱に見合う熱量を外部から与え、液体亜鉛の許容温度範囲を維持する。この際、前述した加熱装置を単独、或いは組み合わせて使用する。運転を開始すると、亜鉛還元排ガスの保有熱と凝縮熱により、液体亜鉛が加熱される。加熱熱量が放散熱量を下回っている間は、加熱操作を継続する。処理ガス量が多くなると、加熱熱量が放散熱量を上回るようになるので、管理基準を逸脱しないよう冷却操作を開始する。この際、前述した冷却装置を単独あるいは組み合わせて使用する。
【0047】
(圧力管理)
ガス入口11とガス出口12との間に差圧を生じさせるために、ガス出口12を吸引ポンプで吸引する。本例では、この際、ガス入口11の圧力を96〜106kPa(大気圧±5kPa)とし、ガス出口12側の圧力を、ガス入口11の圧力より−15〜−40kPa低い圧力に制御する。前述した湯溜り20を設置しない場合(後述する排ガス凝縮装置1’のような場合)、排ガス凝縮装置内の差圧は、「ガス入口11の液体亜鉛液面と液体排出口21とのレベル差×液体亜鉛の比重」となる。反応炉の操業圧力(=ガス入口11の圧力)は「吸引ポンプの吸引圧力−排ガス凝縮装置内差圧」となるので吸引ポンプの吸引圧力を調整することで液面の高さを制御できる。
【0048】
一方、本例のように湯溜り20が設置されている場合、排ガス凝縮装置1内の液体亜鉛保有量を調整することによって、同装置内の液体塩化亜鉛の保有量を調整できる。そのため排ガス凝縮装置内の差圧は、厳密には、[((ガス入口11の液体亜鉛液面)と(液体亜鉛と液体塩化亜鉛の界面)とのレベル差×液体亜鉛比重)+((液体亜鉛と液体塩化亜鉛の界面)と(液体排出口21)の液体表面とのレベル差×液体塩化亜鉛比重)]となる。従って、排ガス凝縮装置1内の差圧は、同装置内の液体塩化亜鉛のレベルの指標となる。液体亜鉛が液体排出口21から排出されず、かつ気液接触部には液体亜鉛が常時存在するよう液体亜鉛の抜き出し量を調整することで差圧調整を行う。反応炉の操業圧力は「吸引ポンプの吸引圧力−排ガス凝縮装置内差圧」となるので吸引ポンプの吸引圧力を調整することで制御できる。
【0049】
上述した運転管理方法によって、亜鉛還元反応装置(反応炉)からの排ガスを連続的に排ガス凝縮装置で処理することが可能であり、反応炉と排ガス凝縮装置を含むシステムとしての連続操業が可能となる。
【0050】
[4.排ガス凝縮装置の他の構成]
図7には、本発明の排ガス凝縮装置の他の実施の形態を示す外観図である。図8は、図7に示した排ガス凝縮装置の断面図である。図7に示すように、この例では、排ガス凝縮装置1’に湯溜りが設けられておらず、代わりに、液体亜鉛が貯留されているタッピングウェル40が、本体10の側面の位置に配置されている。このタッピングウェル40から本体部10内に液体亜鉛が供給される。図8に示すように、本実施の形態の排ガス凝縮装置1’は、前述した排ガス凝縮装置1と同様に、本体部10は傾斜して設置されている。
【0051】
この本体部10の下端部近辺に、鉛直方向にガス入口11が配置されている。本体部10の上端部近辺には、鉛直方向にガス出口12が配置されている。ガス出口12の下方の、本体10の内面の底面21aは、水平(本体部10が傾斜している状態で水平面と平行)に形成されている。本体部10の上端面の下端部には、本体10の内面の底面21aに沿って貫通孔である液体排出口21が設けられている。この液体排出口21からは、排ガス凝縮装置1’内で液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛が排出される。
【0052】
本実施の形態の本体部10の内部には、前述した実施の形態の上下仕切板13が設けられておらず、代わりに第1バッフル16、第2バッフル17が配置されている。図9に示すように、これら第1バッフル16(図9(b))及び第2バッフル17(図9(a))は、本体部10の内壁面に本体部10の中心軸線と平行(中心軸線を含む面)に配置されている。前述した実施の形態と同様に、第1バッフル16及び第2バッフル17の上方、即ち、本体部10の内壁面の頂部に沿って排ガスの経路が形成される。
【0053】
ガス入口11に近い第1バッフル16は、気−液の乱流攪拌を促進する機能を有する。ガス出口12に近い第2バッフル17は、液体亜鉛の循環を維持する役割を果たす。本例では、第2バッフル17とガス出口12との間の亜鉛液面下にタッピングウェル40に液体亜鉛を排出する抜出口22を配置し、ガス入口11の下方には、タッピングウェル40から液体亜鉛を流入させるための流入口23を配置している。第2バッフル17は、液体亜鉛をタッピングウェル40へ導くと共に、排ガス凝縮装置1’内の液体亜鉛の循環を維持する役割を果たしている。
【0054】
このようにして、タッピングウェル40と本体部10との間で液体亜鉛を循環させる。大容量のタッピングウェル40を使用することで、液体亜鉛の急激な温度変動を抑制することが可能であり、一定範囲内に液体亜鉛の温度を制御しやすい。また、大容量のタッピングウェル40は、複数の水冷管(クーリングコイル)を、タッピングウェル40内の液体亜鉛に同時に浸漬させて除熱することが可能で除熱能力が大きく、また容量が大きいので温度変化が少ない。このような実施の形態の排ガス凝縮装置1’は、大規模な生産設備に適している。一方、前述した湯溜りを備えた排ガス凝縮装置1は、小規模な生産設備に適している。
【0055】
本実施の形態に係る排ガス凝縮装置1’は、前述した排ガス凝縮装置1と同様の方法で、排ガス中の亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスを液化するものである。但し、前述した排ガス凝縮装置1と異なり、堰部材やブロッカを有していない。また、液化した亜鉛を回収するための湯溜りも有していない。このように湯溜りを設置していない場合、液体排出口21からは、凝縮の開始に伴い、排ガス凝縮装置1’内で液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛の混合液が排出されることになる。この混合液は、液体排出口21から排出された後、比重の相違によって液体亜鉛と液体塩化亜鉛に分離することが可能である。減圧状態にある本体部10から大気圧下に連続的に混合液を抜き出すために、図10に示すような混合液を分離する比重分離装置80を使用する。
【0056】
図10は、液化した亜鉛及び塩化亜鉛の回収のための比重分離装置80を示す断面図である。比重分離装置80は、一部の上方が開口されたもので、液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛を比重の違いにより分離するための容器である。比重分離装置80には、上方から液体排出口21に連なる配管が挿入されている。また、上部壁面82の側壁には、オーバーフローした液体塩化亜鉛を抜き出すための管路である抜出口81が挿入されている。抜出口81は、外部空間、即ち、大気と連通している。比重分離装置80を構成する容器の底部は、略U字状の空間が形成されており、U字を構成する一方の壁面である下部壁面83は、比重分離装置80の上部壁面82よりも外周で突出した形状となっている。
【0057】
下部壁面83と上部壁面82との間には間隙が設けられ、上部壁面82と比重分離装置80底面との間にも間隙が設けられている。要するに、上部壁面82は、比重分離装置80の内部空間を2分割するように配置されているが、液体亜鉛は両空間を自由に流れることになる。下部壁面83の上部の縁部84の高さは、所定高さに形成されていて、抜出口81の下方の高さ位置である。この縁部84から、液体亜鉛がオーバーフローすることにより液体亜鉛のみが回収できる。図10に示すように、比重分離装置80の容器内部の下層には液体亜鉛が充填され、上層には液体塩化亜鉛が充填されていることになる。
【0058】
容器内の液体亜鉛層には、比重分離装置80の上部壁面82が上から突っ込んだような形で浸漬された状態となっている。この上部壁面82が邪魔板として機能し、略U字状の容器の底部は隙間無く液体亜鉛で満たされることになる。これにより、サイフォンの原理によって液体亜鉛が縁部84からオーバーフローする。即ち、上部壁面82内部の液体亜鉛の液面より高い位置にある突出部の縁部84から液体亜鉛のみを回収することが可能になる。なお、このような回収方法を採るためには、排ガス凝縮装置1の運転時に、予め加熱溶融した液体亜鉛を比重分離装置80に所定レベルまで注入しておく。
【0059】
次いで、液体塩化亜鉛を抜出口81からオーバーフローするまで注入する。その際、液体排出口21に連なる配管の先端は、液体塩化亜鉛の層のみに浸漬した状態となっている。本体内部が真空吸引されると、液体排出口21に連なる配管内部も減圧され、比重分離装置80内の液体塩化亜鉛が配管の先端から配管内部に一定量入り込む(逆流する)。これにより、比重分離装置80内の液体亜鉛の液面レベルが低下する。このとき、配管先端から空気を吸い込まず、液体塩化亜鉛に配管が浸漬された状態を維持できるように、配管の径と浸漬深さに関しては留意する必要がある。
【0060】
本体10内部で凝縮が開始されると、液体排出口21から配管を通じて比重分離装置80に混合液が流入する。混合液は比重の相違によって速やかに液体亜鉛と液体塩化亜鉛に分離され、液体塩化亜鉛は浮上し大気圧下の抜出口81からオーバーフローする。一方、液体亜鉛は底部に溜まり、大気圧下の縁部84からオーバーフローする。この比重分離装置80では、底部に溜まっている液体亜鉛の温度を450〜500℃、上層の液体塩化亜鉛の温度を450℃程度とすることで流動性を確保することができる。また、液体塩化亜鉛は、必要があれば塩化リチウム(LiCl)の添加によっても流動性を確保することができる。
【0061】
[5.液体亜鉛及び液体亜鉛の他の抜き取り方法]
液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛の抜き取り方法に関しては前述したが、以下に示す方法を用いることもできる。
(減圧下バッチ方式)
排ガスの凝縮が開始されて一定時間経過すると、排ガス凝縮装置1において、液化した塩化亜鉛が液体排出口21から流出する。このとき排出される液体塩化亜鉛を、排ガス凝縮装置1内部と同一圧力に保ったタンクに貯蔵し、バッチ方式で外部に取り出す方法も採ることができる。
【0062】
図11に示すように、吸引ポンプが接続されるガス出口12に連結されている配管からバイパスされた配管60を、密閉状態の貯蔵タンク51内に挿入することで、排出部30内が吸引されているときに、貯蔵タンク51内を減圧状態にする。このときガス出口12につながる配管のバルブ61及びバイパスされた配管60のバルブ62は、いずれも開いた状態にある。一方、液体排出口21につながる配管も、密閉状態の貯蔵タンク51内に挿入されており、このとき当該配管のバルブ63は、開いた状態にある。この状態で運転することで、液体塩化亜鉛が貯蔵タンク51に貯蔵されていく。運転中に、バルブ62、63を閉じ、貯蔵タンク51内を窒素ガスで加圧し、貯蔵タンク51底部に設けられたバルブ64を開いて、貯蔵された液体亜鉛を貯蔵タンク51から抜き出す。この処理を一定時間毎に行う。
【0063】
(亜鉛の抜出方法)
前述した排ガス凝縮装置1のように湯溜り20が設置されている場合、液体亜鉛はこの湯溜り20から汲み出すことができる。また、前述した排ガス凝縮装置1’のように、タッピングウェル40を有している場合には、このタッピングウェル40に設けた排出口から液体亜鉛を抜き出すことができる。
【0064】
(サイフォン方式)
液体亜鉛の抜き出し方法として、排ガス凝縮装置内の液体亜鉛のレベル差を一定に保つようサイフォン式亜鉛抜取管を設置するようにしても良い。図12に示すように、湯溜り20を有している排ガス凝縮装置に関して本手法を採ることができる。図12に示すように、湯溜り20内の液体亜鉛内に、二股状の亜鉛抜取管70の一方の管を浸漬させておき、他方の管は亜鉛受槽52の液体亜鉛内に浸漬させておく。これら二股状の管の間には水平部が設けられている。
【0065】
亜鉛抜取管70の上部(主管部)は、吸引ポンプがつながるガス出口12の配管にバイパス接続されており、吸引が開始されると、亜鉛抜取管70の二股状の管の双方に液体亜鉛が侵入する。このとき侵入した液体亜鉛の高さ(管内での液面レベル)は、本体内の液体亜鉛のレベル差と同じである。湯溜り20の液面から亜鉛抜取管70の水平部までの高さを、侵入する液体亜鉛の高さよりも低くすることにより、排ガス凝縮装置内から液体亜鉛を連続的に抜き出すことが可能である。
【0066】
[5.排ガス凝縮装置の運転実験]
以下、排ガス凝縮装置の運転実験を行った結果を示す。本実験で使用した装置は、図8に示した第1バッフル17と第2バッフル16を有し、ガス出口12側の底部が水平である排ガス凝縮装置1’である。本体部10の内径は、本実施の形態の実験例では0.5mφであり、長さは3.8mのものを使用した。この実験例ではタッピングウェル及び湯溜りを設けず、液体亜鉛及び液体塩化亜鉛は液体排出口21から排出させた。
【0067】
(運転開始)
まず、本体外周部に複数ブロックに分けて設置した電気ヒータにより、液体亜鉛注入前に本体部10内部の温度が500℃以上になるように加熱した。次に、亜鉛インゴッドを誘導炉で溶解し、本体部10の注入口(図示せず)から所定量を注ぎ込む。液体亜鉛の注入が完了したら、空気が侵入しないように注入口を密封する。液体亜鉛が所定温度になるように本体部10の外周に設置した電気ヒータの出力を自動調整する。次に、ガス出口12に接続された吸引ポンプによって本体部10内部の吸引を行う。これにより、反応炉から排出された排ガスが本体部10内部に吸引される。この際、吸引ポンプ入口に設けられたニードルバルブによってガス入口11側の圧力を大気圧(約101kPa)となるように調整する。その結果、本体部10内部の差圧が28kPaとなった。
【0068】
排ガスの吸引を開始すると、外部加熱ヒータの出力が低下してくる。亜鉛還元反応の負荷が上昇するのに伴い、排ガスの保有熱と凝縮熱による液体亜鉛の加熱が促進され、加熱熱量が放散熱量を上回るようになる。その結果、ヒータの出力は0になる。このときの反応炉の負荷を亜鉛蒸発量であらわすと、40kg/hであった。この時点から本体部10の複数箇所に埋め込んだ温度計の指示値を見ながら、送風ファンにより本体部10を空冷した。反応炉の亜鉛蒸発量を最大60kg/hに向上させたが、空冷機構によって本体部10の温度は所定範囲(450〜550℃)に維持することができた。
【0069】
(混合液の抜き出し)
本体部10に引き込んだ排ガスの凝縮が開始すると、内部の液体量が増加してくる。ガス入口11の圧力を所定の範囲に保つため、真空ポンプの吸引量を調整した。その結果、本体内部の差圧が32kPaまで上昇した時点で、液体排出口21から、液体亜鉛及び液体塩化亜鉛の混合液の流出が開始した。混合液は前述した図10に示した装置と方法で比重分離し、液体亜鉛と液体塩化亜鉛を分離して回収することができた。
【0070】
(凝縮率)
表2には、操業No毎に、排ガスに含まれる成分量を示した。これに示されるように、排ガスには亜鉛ガス、塩化亜鉛ガス、窒素ガス、及び四塩化珪素ガスが含まれる。また、各操業Noの操業時間(排ガス処理時間)と、ガス入口11における排ガスの温度も併記した。ここで反応炉における四塩化珪素と亜鉛との混合モル比は、四塩化珪素:亜鉛=1:1.8〜1:2.5の間で変動させた。排ガス凝縮装置1’に関しては、3.5〜11.5時間の連続運転を行い、液体亜鉛及び液体塩化亜鉛を回収することができた。表2に示す排ガス凝縮装置1’の運転時間は、反応炉内のシリコン取り出し作業のために中断したために一定時間に区切られているものであり、排ガス凝縮装置1’自体の要因で運転時間を区切ったものではない。
【0071】
【表2】
【0072】
これら各操業No毎に、亜鉛回収量及び塩化亜鉛回収量を計測し、その結果を表3に示した。亜鉛凝縮に際して、亜鉛製錬で発生するような金属亜鉛粉末(Blue Powder)の発生は見られなかった。表2の亜鉛ガス量と表3の亜鉛回収量との比較から、排ガス中の亜鉛ガスは、排ガス凝縮装置1’を通過させることで100%液化凝縮することが判明した。
【0073】
【表3】
【0074】
また、表2の塩化亜鉛ガス量と表3の塩化亜鉛回収量との比較から、排ガス中の塩化亜鉛ガスは、排ガス凝縮装置1’を通過させることで98%以上液化凝縮することが判明した。なお、ガス出口12付近と、本体部10と吸引ポンプとの間に設置しているバグフィルターに若干の塩化亜鉛の付着が見られたものの、凝縮率に影響を与える程度ではなかった。未反応四塩化珪素は、ガス出口12からガス状態で抜き出した後、液化温度(58℃)以下に冷却し、回収する。回収率は冷却温度とガス圧力に依存する。
【0075】
(湯溜り設置の効果に関して)
本実験例においては湯溜りを設置しなかったが、排ガス凝縮装置1’に湯溜りを設置することにより、以下の効果を期待することができる。まず、湯溜りにガスバーナーを設置することで、液体亜鉛注入前の排ガス凝縮装置1’の昇温時間を短縮することができる。また、液体亜鉛の保有量を増やすことができるため、操業中の液体亜鉛の温度変動を緩和することができる。また、湯溜りの表面を解放することで、液体亜鉛の取り扱いが容易になる。即ち、液体亜鉛の注入及び排出、液体亜鉛の温度調整、並びに混入シリコンの除去が容易となる。図2及び図3の例に示したように、湯溜り20の上面を解放しておくことで、混入したシリコンが液体亜鉛中に存在することを目視することができるので、これを容易に取り除くことができる。
(その他について)
前記実施の形態では、四塩化珪素の反応炉のための排ガス凝縮方法及び排ガス凝縮装置について説明した。しかしながら、これに限定されることはなく、シラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、ジブロモシラン、トリブロモシラン、シリコンテトラブロマイド、ジアイオドシラン、トリアイオドシラン、シリコンテトラアイオダイド等であっても良い。従って、クロロシランと呼ばれているトリクロロシラン、四塩化珪素等のような、シリコン、塩素及び/又は水素との化合物の反応炉にも使用できる。
【符号の説明】
【0076】
1…排ガス凝縮装置
10…本体部
11…ガス入口
12…ガス出口
13…上下仕切板
14…堰部材
15…ブロッカ
20…湯溜り
21…液体排出口
30…排出部
50…回収装置
80…比重分離装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化シリコンを金属亜鉛で還元し、太陽電池用金属シリコン(SOG−Si)を製造するプロセスにおいて、還元工程で生じた排ガス中に含まれる亜鉛ガスと塩化亜鉛ガスを液化して回収するための排ガス凝縮方法及び排ガス凝縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池用シリコンは、半導体用シリコン製造法であるシーメンス法で製造されてきた。しかし、太陽電池の用途としては、半導体ほどの純度を必要としないことから、需要増加と低価格化要求に対応するため、シーメンス法に代わる安価で大量生産できる製造プロセス開発が求められている。本発明者等は、例えば特許文献1に示すように、亜鉛還元法による太陽電池用シリコン原料の製造方法を提案している。
【0003】
亜鉛還元法は、以下の式(1)に基づいて、シリコン原料として四塩化珪素ガス(SiCl4)を用い、ガス或いは液体金属亜鉛(Zn)により還元し、金属シリコンを得るものである。SiCl4、Zn、ZnCl2の融点及び沸点を表1に示す。
【数1】
【表1】
【0004】
上記の反応における理論反応率は、亜鉛がガス状の場合50〜80%、液体ではほぼ100%になり、反応速度は速く、生産性の高いシステムである。亜鉛還元法は、半導体用シリコン製造プロセスとしてデュポン社によって開発され、1950年代には商業生産を行っていたが、半導体用シリコンの高純度化の流れに対応できず、1960年代に中止されたものである。その後1970年代後半〜80年代初頭にかけて、米国政府機関の委託によりバッテルコロンバス研究所(BCL)が、太陽電池用シリコン製造法として研究を実施したが(非特許文献1)、発明者等の知る限りでは未だに実用化までには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008/153181
【特許文献2】米国特許第2070101
【特許文献3】米国特許第2766114
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Evaluation of Selected Chemical Processes for Production of Low-cost Silicon (PhaseIII)by BCL,DOE/JPL954339-81/21,March31.1981
【非特許文献2】講座・現代の金属学 製錬編2「非鉄金属製錬」日本金属学会pp112-113
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
亜鉛還元法の実用化を阻む要因の一つとして、反応排ガスの処理がある。前述した還元反応は反応炉において実行される(例えば、特許文献1の段落0052)。反応炉では、不活性ガスをキャリアガスとして、温度制御、流量制御を行いながら、亜鉛(Zn)ガスと四塩化珪素(SiCl4)ガスを還元反応させて、シリコン(Si)を連続的に生成する。反応炉における還元工程で生じる排ガスには、反応生成物である塩化亜鉛(ZnCl2)以外に、未反応の四塩化珪素ガスと亜鉛ガス、及び添加した不活性ガスが含まれる。また、この排ガスには、通常は製造されたシリコン粉末も一部混入している。この排ガスは反応炉から排出された後、成分毎に分離回収して再利用する必要がある。
【0008】
還元剤として亜鉛ガスを用いる場合、排ガス温度は亜鉛をガス状態で反応系外に排気するため907℃以上にする必要がある。一方、排ガスを成分毎に分離回収するためにはガス冷却を行う必要があるが、高温のガスを冷却する過程で未反応のガスが反応し、前述した式(1)に示したシリコン生成反応が追加的に生じてしまう(いわゆる追反応が生じてしまう。)という問題がある。このような追反応によって析出したシリコンが排ガスの流路を閉塞し、冷却回収した液体の亜鉛や塩化亜鉛に混入する等の問題が生じている。
【0009】
本発明は、このような技術背景のもとになされたものであり、その目的は反応排ガスに含まれる亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスの追反応を抑制しつつ液化し、且つ2液を分離して回収することが可能な排ガス凝縮方法及び排ガス凝縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、上記課題を解決するために以下の措置を採る。なお後述する発明を実施するための最良の形態の説明及び図面で使用した符号を参考のために括弧書きで付記するが、本発明の構成要素は該付記したものには限定されない。
本発明1の排ガス凝縮方法は、シリコン塩化物ガスと亜鉛ガスを反応させて固体のシリコンを製造するときに生じる、亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスが含まれる排ガスを、420℃以上732℃以下の液体亜鉛中を通過させ、前記亜鉛ガス及び前記塩化亜鉛ガスを前記液体亜鉛で冷却して液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛とすることを特徴とする。
本発明2のの排ガス凝縮方法は、本発明1のシリコン製造時に発生する排ガス凝縮方法において、前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛とした後、両液体を比重の相違によって分離することを特徴とする。
【0011】
本発明1の排ガス凝縮装置(1,1’)は、
本発明1又は2に記載したシリコン製造時に発生する排ガス凝縮方法に用いる排ガス凝縮装置であって、
中心線が水平面に対する傾斜角は5〜55度であり、内部が空洞である本体部と、
この空洞と連通し、前記本体部の下端部付近に配置され、前記シリコン製造時に反応炉から排出される前記排ガスを供給するためのガス入口と、
前記空洞と連通し、前記本体部の上端部付近に配置されたガス出口と、
前記本体部の内部には前記液体亜鉛を前記ガス入口を超える高さである第1のレベルまで満たし、前記ガス出口側から吸引することによって、前記液体亜鉛のレベルを前記第1のレベルから第2のレベルまで上昇させて、前記ガス入口と前記ガス出口間で前記液体亜鉛のレベル差を生じさせるための吸引手段とからなることを特徴とする。
【0012】
本発明2の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記空洞には、前記液体亜鉛を循環させるための循環機構が設けられていることを特徴とする。
本発明3の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明2の排ガス凝縮装置であって、前記循環機構は、前記空洞を上限に2分割し、前記本体の中心軸線を含む面を有する板材であることを特徴とする。
【0013】
本発明4の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記ガス出口の下方であって、前記本体部の内部上面には前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛が当該ガス出口に侵入することを防止するためのブロッカが設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明5の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記本体部の上端部付近には、前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛を抜き出すための液体排出口が設けられ、当該液体排出口の外部に配置され、液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛を比重の相違によって分離させるための比重分離装置を有することを特徴とする。
【0015】
本発明6の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記本体部の上端部付近には、前記液化した塩化亜鉛を抜き出すための液体排出口が設けられ、当該液体排出口には、前記液化した塩化亜鉛を回収するための回収装置が配置されてることを特徴とする。
【0016】
本発明7の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記傾斜角が10〜30度であることを特徴とする。
本発明8の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記本体部の液体亜鉛の温度を450〜550℃に制御するための温度調整機構を有することを特徴とする。
【0017】
本発明9の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記本体部の材質が炭化珪素、又は溶融シリカであることを特徴とする。
本発明10の排ガス凝縮装置(1,1’)は、本発明1の排ガス凝縮装置であって、前記シリコン塩化物がクロロシランであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、排ガスの急冷が可能であり、追反応を抑制しつつ、亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスを冷却して液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛として各々抽出可能な状態とすることができる。液体となった亜鉛と塩化亜鉛は互いに溶解せず、比重の相違(液体亜鉛:約6.5,液体塩化亜鉛:約2.4)によって分離することができる。
【0019】
また、排ガスを液化するときに生じる凝縮熱は充填されている液体亜鉛に吸収され、この液体亜鉛の温度は排ガス凝縮装置の本体部に設けられた温度調整機構によって制御可能である。従って、排ガスを液化する際に発生する凝縮熱を除熱することができる。また、この温度制御機構によって、還元反応を実行させる反応炉が反応を開始するに先だって排ガス凝縮装置を一定温度(450〜550℃)に加熱しておくことができる。これにより反応炉を含めたシステム全体の稼働を円滑に行うことができる。
【0020】
また、本発明は還元反応を実行させる反応炉から生じた排ガスを連続的に処理して、液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛を連続的に抽出(排ガス凝縮装置外に排出)可能である。従って、反応炉を含めたシステム全体としての連続稼働に対応することができる。このような連続処理が可能となるため、上流側の反応炉の負荷変動に柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の排ガス凝縮装置の実施の形態を表す外観図である。
【図2】図2(a)は、図1の排ガス凝縮装置(吸引装置の非稼働時の状態)の全断面図である。図2(b)は、図2(a)のA−A断面図である。
【図3】図3(a)は、図1の排ガス凝縮装置(吸引装置の稼働時の状態)の断面図である。図3(b)は、図3(a)のB−B断面図である。
【図4】図4は、図1の排ガス凝縮装置の排ガス経路の部分拡大図である。
【図5】図5は、図1の排ガス凝縮装置の排出部の部分拡大図である。
【図6】図6は、液化した塩化亜鉛の回収装置を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の排ガス凝縮装置の他の実施の形態を表す外観図である。
【図8】図8は、図7の排ガス凝縮装置の断面図である。
【図9】図9(a)は、図8のA−A断面図である。図9(b)は、図8のB−B断面図である。
【図10】図10は、液化した亜鉛及び塩化亜鉛の比重分離装置を示す断面図である。
【図11】図11は、液化した塩化亜鉛の他の回収方法を示す配管図である。
【図12】図12は、液化した亜鉛の他の回収方法を示す配管図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[1.排ガス凝縮装置の構成]
本発明は、塩化シリコンを亜鉛によって還元しSOG−Siを製造した際に発生する排ガスを、追反応を抑制しつつ冷却し、排ガス中に含まれる亜鉛ガスと塩化亜鉛ガスを同時に液化して回収するための排ガス凝縮装置に関する。本発明に係る排ガス凝縮装置によって、排ガスを連続的に処理することができ、SOG−Si製造において連続操業の実現に貢献することができる。
【0023】
本発明に係る排ガス凝縮装置は、亜鉛製錬の電熱蒸留法(St,Joseph process)において、金属亜鉛蒸気を大量に含む排ガスから亜鉛を液体亜鉛として回収する装置を応用したものである。この装置に関しては、特許文献2、3及び非特許文献2に開示されている。本発明は、この装置を応用して、亜鉛還元法でSOG−Siを製造する際に発生する亜鉛ガスと塩化亜鉛ガスを同時に液化し、分離回収可能としたものである。回収した亜鉛は、塩化シリコンの還元剤としてリサイクルし、塩化亜鉛は液体のまま溶融塩電解を行い、亜鉛を回収する。同時に発生する塩素ガスは塩化シリコンの製造に利用することができる。
【0024】
以下、本発明に係る排ガス凝縮装置の実施の形態を図面により説明する。図1の外観図及び図2(a)の断面図に示すように、本発明の排ガス凝縮装置1は、内部が空洞の断面が筒状の本体部10を有している。本例では、本体部10は円筒状であり、この下端面と有底で円筒状の湯溜り20の側面である外周面が連結されている。即ち、本体部10の端面と湯溜り20の側面が互い交わった相貫体を成している。この湯溜り20の上端部は、蓋によって開閉自在であり、この湯溜り20の中心軸線は鉛直方向である。本体部10と湯溜り20の内部の空洞は互いに連通している。
【0025】
本体部10の上端面は、有底で円筒状の排出部30の側面に連結され、この排出部30の中心軸線は鉛直方向に向いている。即ち、本体部10の端面と排出部30の側面が互い交わった相貫体を成している。本体部10の中心軸線と水平面との傾斜角は5〜55度であり、好ましくは10〜30度である。従って、図2(a)の断面図に示すように、これら本体部10、湯溜り20、及び排出部30の内部の空洞は互いに連続している。図2及び図3に示すように、稼働時には、この湯溜り20及び本体部10に液体亜鉛が充填される。
【0026】
本体部10の下端部付近で上部の壁面には、排ガスを供給するための円筒状の管であるガス入口11が配置されている。ガス入口11の上端部は開口しており、この中心線は鉛直方向である。反応炉(図示せず。)から排出された排ガスは、このガス入口11より排ガス凝縮装置1内に供給される。また、本体部10の内部空洞の中心部には、液体亜鉛の循環を促すための循環機構として、本体部10の中心軸線に沿って上下仕切板13が固定、配置されている。図3(a)に示すように、排ガス処理中は上下仕切板13の存在によって、充填された液体亜鉛が上下仕切板13の上下を自然、又は強制的に循環(対流)する。
【0027】
この循環により液体亜鉛が局所的に高温となることを防止している。排出部30の上部のガス出口12から排ガスをブロア等の吸引装置(図示せず)で吸引することにより、本体部10及び排出部30内が減圧される。なお、この吸引装置の吸引孔の位置は、本体部10又は排出部30の内壁面であれば、上下仕切板13より上方の位置であれば、どこに配置しても良い。一方、本体部10の内部の下面には、液体亜鉛の液面領域を画する堰部材14が設けられている。この堰部材14は、図3(b)に示すように、一方の壁面が低い断面形状が凹部状の形状物である。この堰部材14は、本体部10の内壁に固定されている。堰部材14の底部には、溶融している液体を流出入するための貫通孔14aが形成されている。貫通孔14aは、堰部材14を越えた溶融液体を本体部10の下方に還流させるためのものである。
【0028】
また、堰部材14への貫通孔の形成は、溶融液体が滞留しないように必要に応じて他の箇所に形成しても良い。本体部10内部壁面で、かつ堰部材14の斜め上部の位置にはブロッカ15が固定して配置されている。排出部30は、本体部10の上端に設けられ、その頂部には、ガス出口12が設けられており、このガス出口12からは、未反応の四塩化珪素ガスと、添加した不活性ガスが排出される。このためにこのブロッカ15は、後述する図4に示すように、四塩化珪素ガスと不活性ガスと共に、液体亜鉛及び液体塩化亜鉛の一部が亜鉛液面上で飛沫となって飛散(スプラッシュ)したときに、これらをブロッカ15に衝突させてガス出口12に飛散するのを防止するためのものである。
【0029】
また、図3(a)に示すガス出口12には、排ガスの吸引を行うための吸引ポンプ(図示せず。)が接続されており、このガス出口12から本体部10の内部を吸引することによって、液体亜鉛の液面レベルを第2のレベルまで上昇させる(図3(a)に示した状態)。即ち、ガス入口11よりガス出口12の圧力が低い状態を吸引ポンプで作り出して、液体亜鉛の液面レベルを第1のレベルから第2のレベルに高くするものである。また排出部30の底部付近には、液化した塩化亜鉛を取り出すための液体排出口21が設けられている。ここで液体排出口21から排出された塩化亜鉛は、図6に示すように回収装置50に回収される。
【0030】
(傾斜角度に関して)
排ガス凝縮装置1の本体部10の中心線は、水平から所定角度を成しており、いわゆる傾斜構造になっている。排ガスの凝縮率(蒸気が液体に変わる率)は、ガス入口11からガス出口12を通過するときの液体亜鉛中での通過距離、通過速度、温度等の影響を受ける。ガス入口11及びガス出口12の間の圧力差が一定、高低差(高さ)が一定のとき、本体部10の傾斜角度を大きく取った場合、排ガスの液体亜鉛中の通過距離が短くなり、通過時間も短くなるが、通過速度は大きくなる。排ガスの通過速度が速くなると、これによって発生する渦流、コアンダ効果等による撹拌による気液が接触する確率は増加する。
【0031】
逆に、本体部10の傾斜角度が小さい場合、排ガスの液体亜鉛中の通過距離が長く、通過時間も長くなるが、一方で通過速度が小さくなる。このために、これによって発生する渦流、コアンダ効果等による撹拌による気液が接触する確率は低下する。経験的に本体部10の水平面に対する傾斜角度θが、5〜55度であれば適正なガス凝縮率は得られる。この傾斜角度θが大きいと液の攪拌、振動が大きくなり、傾斜角度θが小さいと設備が大きくなることから一般的には10〜30度が好ましい。
【0032】
(加熱装置)
液体亜鉛を加熱するための機構として、本例では本体部10の外周に電気ヒータ(図示せず)を配置しておく。また、本例のように湯溜り20を設置している場合には、液体亜鉛に電気ヒータを浸漬させる構造のものでも良く、又はガスバーナーで加熱するようにしても良い。また、本体部10内の液体亜鉛を均一な温度分布にするために、液体亜鉛を強制的に循環させると安定的な運転が可能となる。この強制循環機構は、例えば、以下の方法を採ることができる。ガス出口12、又はこの近くの本体部10の下方で、液面下に液体亜鉛の抜出口を配置し、ガス入口11の下方には液体亜鉛の流入口を設けておき、これらの間を連通管で繋ぐ。液体亜鉛を電磁的に駆動する電磁ポンプを使用して、強制的に連通管と排ガス凝縮装置1との間で液体亜鉛を循環させ、その循環経路の途中に加熱器を設置しておき温度調整を行う。
【0033】
(冷却装置)
後述するように、液体亜鉛の温度は、塩化亜鉛の沸点(732℃)以下でなければならず、このために設定温度以上に加熱されたとき、液体亜鉛を冷却する必要がある。液体亜鉛を冷却するための機構として、本体部10の上面、又は外周面をフィン構造(図示せず)にしておき、外部からファンによって本体部10の液体亜鉛を空冷するようにする。また、本体部10の外周に着脱可能な水冷ジャケットを設置しておくようにしても良い。このとき加熱用の電気ヒータを外周部の下面に配置し、水冷ジャケットを上面に配置し、冷却と加熱を選択的にできるようにすると良い。
【0034】
また、湯溜り20内に水冷管を浸漬して冷却することも可能である。冷却の度合いは浸漬する水冷管の数、浸漬深さで調整できる。また、液体亜鉛を強制的に循環させるようにして冷却しても良い。例えば、以下の方法を採ることができる。前述した加熱装置と同様に、ガス出口12、又は本体10の下方で、液面下に液体亜鉛の抜出口を設けておき、ガス入口11の下方には液体亜鉛の流入口を設けておき、これらの間を連通管で繋ぐ。電磁ポンプを使用して強制的に連通管と排ガス凝縮装置1との間で液体亜鉛を循環させ、その循環経路の途中に冷却器を設置しておき、液体亜鉛の温度調整を行う。
【0035】
(材質)
排ガス凝縮装置1、回収装置50、比重分離装置80の内壁面を構成する材質は、少なくとも排ガス成分、液体亜鉛、及び液体塩化亜鉛と反応しないことが条件となる。この条件をクリアするものとして、セラミックス全般が使用可能であり、特に炭化珪素、溶融シリカが適する。
【0036】
[2.排ガス凝縮装置の作用]
次に、本発明の排ガス凝縮装置1の作用に関して説明する。まず、湯溜り20と本体部10の中に第1のレベルまで液体亜鉛を充填する。この第一のレベルとは、図2に示すように、液面が、ガス入口11と本体部10の内壁面の接合部分よりも上に位置しているレベルである。本例では、液体亜鉛の液面は上下仕切板13の上部先端よりやや下方に位置している。本実施の形態の排ガス凝縮装置を動作させるためには、この第1のレベル(図2(a))にある液面を第2のレベル(図3(a))まで上昇させる。このとき液体亜鉛の温度は、亜鉛の融点(420℃)以上で、塩化亜鉛の沸点(732℃)以下でなければならず、450〜550℃が好ましい。
【0037】
本実施の形態では、ガス出口12から排ガスを吸引ポンプ(図示せず。)によって吸引することにより、ガス入口11とガス出口12の間で、液体亜鉛のレベル差を作り出す(図3(a)に示した状態)。本実施の形態では、ガス入口11における圧力を96kPa〜106kPa(即ち大気圧±5kPa)、ガス出口12における圧力を、ガス入口11における圧力、即ち概ね大気圧より15〜40kPa低く制御することにより、液体亜鉛のレベルを第2のレベルまで上昇させる。
【0038】
図6は、液化した塩化亜鉛の回収装置を示す断面図である。図3に示すよう排出部30の液体排出口21から排出された液体塩化亜鉛は、回収装置50に回収される。図6に示すように、この液体排出口21に接続されてい配管の他端は、回収装置50に充填された液体塩化亜鉛に挿入された状態にあるる。このために回収装置50から大気が本体10内に侵入することはないので、吸引ポンプによる排ガスの吸引に支障は生じない。但し、図6に示すように、吸引されることにより、液体塩化亜鉛が液体排出口21である配管に入り込み、回収装置50内の液体塩化亜鉛の液面が下がる。このとき配管から外気を吸い込まず、液体塩化亜鉛に配管が浸漬された状態を維持できるように、配管の内径と浸漬深さに関しては留意する必要がある。
【0039】
これにより、ガス出口12側の液面は、上下仕切板13を超える位置、即ち堰部材14の底部を覆う程度の位置まで上昇する(図3(a))。一方、反応炉からの排ガスは、96kPa〜106kPaに維持されているので、ガス入口11内の液面は下がり、ガス入口11と本体部10の内壁面の接合部分よりも下に位置することになる。これにより、排ガスがガス入口11から本体部10の液体亜鉛内に供給される。即ち、排ガス凝縮装置1が反応炉からの排ガスを吸い込む。
【0040】
ガス入口11から本体部10の液体亜鉛内に供給された排ガスは、本体部10の内壁頂部を通過して液体亜鉛の液面まで達する。このとき、図4に示すように、ガス入口11から液面にかけて、本体部10の内壁頂部に沿って排ガスが通過する経路Xが形成される。排ガスが、この経路Xを高速で通過することによって、気−液のミキシングが発生し、亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスが急冷凝縮されて、液化される。即ち液体亜鉛の温度を、亜鉛の融点(420℃)以上で、塩化亜鉛の沸点(732℃)以下、好ましくは450〜550℃に保つことにより、亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスを同時に液化することができる。
【0041】
このようにして排ガスを冷却する際、排ガス凝縮装置1内で排ガスの保有熱と、亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスが液状に戻るときに熱を放出する凝縮熱が発生する。一方で、排ガス凝縮装置1自体からの熱放射、熱伝導も存在する。これらの熱バランスを図り、液体亜鉛の温度範囲を一定に保つためには、必須要件ではないが加熱機構と冷却機構の双方を有する温度調整機構が必要である。この温度調整機構は、液体亜鉛が循環しているので、本体部10内に温度調整機構を設けるようにしても良いし、湯溜り20に温度調整機構を設けるようにしても良い。また、排ガス凝縮装置1の外部に設けた液体亜鉛貯留槽(本発明者等はタッピングウェルと称している。)から、温度制御された液体亜鉛を排ガス凝縮装置1に循環させるようにしても良い。
【0042】
本体部10における気−液接触部(経路X)では、急激な熱交換が行われるため、部分的に液体亜鉛の温度が高くなる。また排ガスが高速で通過するため、液体亜鉛がガス流とともに上昇する。液体亜鉛の液面付近が局所的に高温になるのを防止すべく、液体亜鉛の循環機構として上下仕切板13が設けられている。液体亜鉛の上昇流と下降流の境界に上下仕切板13を配置することで、図3(a)示す方向に循環する安定した循環流を作り出している。図4に示したように、経路Xを通過することにより、液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛は、冷却用液体亜鉛と混合するが、一部は図4に示すように、液体亜鉛液面上でスプラッシュ(点線表示)する。
【0043】
このスプラッシュした液体Y(液体亜鉛と液体塩化亜鉛の混合液)は、堰部材14の上方を通過して、内壁頂部に設けられたブロッカ15に衝突して落下する。落下して静置された液体Yは、比重の高い液体亜鉛(約6.5)と比重の低い液体塩化亜鉛(約2.4)に分離し、上層が液体塩化亜鉛層、下層が液体亜鉛層となっている。図5に示すように、液体塩化亜鉛は、排出部30の底部に設けられた液体排出口21から排出され、図6に示すように回収装置50に回収される。なお、下層の液体亜鉛は、堰部材14の下面に設けられた貫通孔14aから本体の循環流と合流する。
【0044】
液化した亜鉛は、湯溜り20から回収可能であり、前述したように液化した塩化亜鉛は液体排出口21から回収される。この回収は、液体亜鉛が一定の高さを保つようにセンシングされて制御される。更に、ガス出口12からは、未反応の四塩化珪素ガスと、添加した不活性ガスが排出される。このようにして排ガスの処理が完了する。なお、この排ガスには通常シリコン粉末も混入しているが、液体亜鉛に混入したシリコン粉末は湯溜り20上に浮いてくるため、容易に回収することができる。また、液体塩化亜鉛に混入したシリコン粉末は、回収装置50から連続的に排出される塩化亜鉛と共に回収できる。以上説明したように、連続的に反応炉で生じた排ガスを、本実施の形態の排ガス凝縮装置に連続的に供給し、連続的に処理して排出させることが可能である。
【0045】
[3.排ガス凝縮装置の運転管理方法]
(温度管理)
本体10に充填されている液体亜鉛の許容温度範囲は、420〜732℃であるが、最適温度範囲は450〜550℃であり、液体亜鉛の温度がこの範囲内で推移するよう温度管理を行う。温度が高いと塩化亜鉛のガス分圧が大きくなり、塩化亜鉛の凝縮率が低下する。一方、温度が低いと液体亜鉛の流動性が悪化し、気液のミキシングが不十分となり、亜鉛、塩化亜鉛ともに凝縮率が低下する。これらの障害を解消するための温度管理方法を以下に示す。
【0046】
まず、運転開始までは、排ガス凝縮装置1からの放散熱に見合う熱量を外部から与え、液体亜鉛の許容温度範囲を維持する。この際、前述した加熱装置を単独、或いは組み合わせて使用する。運転を開始すると、亜鉛還元排ガスの保有熱と凝縮熱により、液体亜鉛が加熱される。加熱熱量が放散熱量を下回っている間は、加熱操作を継続する。処理ガス量が多くなると、加熱熱量が放散熱量を上回るようになるので、管理基準を逸脱しないよう冷却操作を開始する。この際、前述した冷却装置を単独あるいは組み合わせて使用する。
【0047】
(圧力管理)
ガス入口11とガス出口12との間に差圧を生じさせるために、ガス出口12を吸引ポンプで吸引する。本例では、この際、ガス入口11の圧力を96〜106kPa(大気圧±5kPa)とし、ガス出口12側の圧力を、ガス入口11の圧力より−15〜−40kPa低い圧力に制御する。前述した湯溜り20を設置しない場合(後述する排ガス凝縮装置1’のような場合)、排ガス凝縮装置内の差圧は、「ガス入口11の液体亜鉛液面と液体排出口21とのレベル差×液体亜鉛の比重」となる。反応炉の操業圧力(=ガス入口11の圧力)は「吸引ポンプの吸引圧力−排ガス凝縮装置内差圧」となるので吸引ポンプの吸引圧力を調整することで液面の高さを制御できる。
【0048】
一方、本例のように湯溜り20が設置されている場合、排ガス凝縮装置1内の液体亜鉛保有量を調整することによって、同装置内の液体塩化亜鉛の保有量を調整できる。そのため排ガス凝縮装置内の差圧は、厳密には、[((ガス入口11の液体亜鉛液面)と(液体亜鉛と液体塩化亜鉛の界面)とのレベル差×液体亜鉛比重)+((液体亜鉛と液体塩化亜鉛の界面)と(液体排出口21)の液体表面とのレベル差×液体塩化亜鉛比重)]となる。従って、排ガス凝縮装置1内の差圧は、同装置内の液体塩化亜鉛のレベルの指標となる。液体亜鉛が液体排出口21から排出されず、かつ気液接触部には液体亜鉛が常時存在するよう液体亜鉛の抜き出し量を調整することで差圧調整を行う。反応炉の操業圧力は「吸引ポンプの吸引圧力−排ガス凝縮装置内差圧」となるので吸引ポンプの吸引圧力を調整することで制御できる。
【0049】
上述した運転管理方法によって、亜鉛還元反応装置(反応炉)からの排ガスを連続的に排ガス凝縮装置で処理することが可能であり、反応炉と排ガス凝縮装置を含むシステムとしての連続操業が可能となる。
【0050】
[4.排ガス凝縮装置の他の構成]
図7には、本発明の排ガス凝縮装置の他の実施の形態を示す外観図である。図8は、図7に示した排ガス凝縮装置の断面図である。図7に示すように、この例では、排ガス凝縮装置1’に湯溜りが設けられておらず、代わりに、液体亜鉛が貯留されているタッピングウェル40が、本体10の側面の位置に配置されている。このタッピングウェル40から本体部10内に液体亜鉛が供給される。図8に示すように、本実施の形態の排ガス凝縮装置1’は、前述した排ガス凝縮装置1と同様に、本体部10は傾斜して設置されている。
【0051】
この本体部10の下端部近辺に、鉛直方向にガス入口11が配置されている。本体部10の上端部近辺には、鉛直方向にガス出口12が配置されている。ガス出口12の下方の、本体10の内面の底面21aは、水平(本体部10が傾斜している状態で水平面と平行)に形成されている。本体部10の上端面の下端部には、本体10の内面の底面21aに沿って貫通孔である液体排出口21が設けられている。この液体排出口21からは、排ガス凝縮装置1’内で液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛が排出される。
【0052】
本実施の形態の本体部10の内部には、前述した実施の形態の上下仕切板13が設けられておらず、代わりに第1バッフル16、第2バッフル17が配置されている。図9に示すように、これら第1バッフル16(図9(b))及び第2バッフル17(図9(a))は、本体部10の内壁面に本体部10の中心軸線と平行(中心軸線を含む面)に配置されている。前述した実施の形態と同様に、第1バッフル16及び第2バッフル17の上方、即ち、本体部10の内壁面の頂部に沿って排ガスの経路が形成される。
【0053】
ガス入口11に近い第1バッフル16は、気−液の乱流攪拌を促進する機能を有する。ガス出口12に近い第2バッフル17は、液体亜鉛の循環を維持する役割を果たす。本例では、第2バッフル17とガス出口12との間の亜鉛液面下にタッピングウェル40に液体亜鉛を排出する抜出口22を配置し、ガス入口11の下方には、タッピングウェル40から液体亜鉛を流入させるための流入口23を配置している。第2バッフル17は、液体亜鉛をタッピングウェル40へ導くと共に、排ガス凝縮装置1’内の液体亜鉛の循環を維持する役割を果たしている。
【0054】
このようにして、タッピングウェル40と本体部10との間で液体亜鉛を循環させる。大容量のタッピングウェル40を使用することで、液体亜鉛の急激な温度変動を抑制することが可能であり、一定範囲内に液体亜鉛の温度を制御しやすい。また、大容量のタッピングウェル40は、複数の水冷管(クーリングコイル)を、タッピングウェル40内の液体亜鉛に同時に浸漬させて除熱することが可能で除熱能力が大きく、また容量が大きいので温度変化が少ない。このような実施の形態の排ガス凝縮装置1’は、大規模な生産設備に適している。一方、前述した湯溜りを備えた排ガス凝縮装置1は、小規模な生産設備に適している。
【0055】
本実施の形態に係る排ガス凝縮装置1’は、前述した排ガス凝縮装置1と同様の方法で、排ガス中の亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスを液化するものである。但し、前述した排ガス凝縮装置1と異なり、堰部材やブロッカを有していない。また、液化した亜鉛を回収するための湯溜りも有していない。このように湯溜りを設置していない場合、液体排出口21からは、凝縮の開始に伴い、排ガス凝縮装置1’内で液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛の混合液が排出されることになる。この混合液は、液体排出口21から排出された後、比重の相違によって液体亜鉛と液体塩化亜鉛に分離することが可能である。減圧状態にある本体部10から大気圧下に連続的に混合液を抜き出すために、図10に示すような混合液を分離する比重分離装置80を使用する。
【0056】
図10は、液化した亜鉛及び塩化亜鉛の回収のための比重分離装置80を示す断面図である。比重分離装置80は、一部の上方が開口されたもので、液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛を比重の違いにより分離するための容器である。比重分離装置80には、上方から液体排出口21に連なる配管が挿入されている。また、上部壁面82の側壁には、オーバーフローした液体塩化亜鉛を抜き出すための管路である抜出口81が挿入されている。抜出口81は、外部空間、即ち、大気と連通している。比重分離装置80を構成する容器の底部は、略U字状の空間が形成されており、U字を構成する一方の壁面である下部壁面83は、比重分離装置80の上部壁面82よりも外周で突出した形状となっている。
【0057】
下部壁面83と上部壁面82との間には間隙が設けられ、上部壁面82と比重分離装置80底面との間にも間隙が設けられている。要するに、上部壁面82は、比重分離装置80の内部空間を2分割するように配置されているが、液体亜鉛は両空間を自由に流れることになる。下部壁面83の上部の縁部84の高さは、所定高さに形成されていて、抜出口81の下方の高さ位置である。この縁部84から、液体亜鉛がオーバーフローすることにより液体亜鉛のみが回収できる。図10に示すように、比重分離装置80の容器内部の下層には液体亜鉛が充填され、上層には液体塩化亜鉛が充填されていることになる。
【0058】
容器内の液体亜鉛層には、比重分離装置80の上部壁面82が上から突っ込んだような形で浸漬された状態となっている。この上部壁面82が邪魔板として機能し、略U字状の容器の底部は隙間無く液体亜鉛で満たされることになる。これにより、サイフォンの原理によって液体亜鉛が縁部84からオーバーフローする。即ち、上部壁面82内部の液体亜鉛の液面より高い位置にある突出部の縁部84から液体亜鉛のみを回収することが可能になる。なお、このような回収方法を採るためには、排ガス凝縮装置1の運転時に、予め加熱溶融した液体亜鉛を比重分離装置80に所定レベルまで注入しておく。
【0059】
次いで、液体塩化亜鉛を抜出口81からオーバーフローするまで注入する。その際、液体排出口21に連なる配管の先端は、液体塩化亜鉛の層のみに浸漬した状態となっている。本体内部が真空吸引されると、液体排出口21に連なる配管内部も減圧され、比重分離装置80内の液体塩化亜鉛が配管の先端から配管内部に一定量入り込む(逆流する)。これにより、比重分離装置80内の液体亜鉛の液面レベルが低下する。このとき、配管先端から空気を吸い込まず、液体塩化亜鉛に配管が浸漬された状態を維持できるように、配管の径と浸漬深さに関しては留意する必要がある。
【0060】
本体10内部で凝縮が開始されると、液体排出口21から配管を通じて比重分離装置80に混合液が流入する。混合液は比重の相違によって速やかに液体亜鉛と液体塩化亜鉛に分離され、液体塩化亜鉛は浮上し大気圧下の抜出口81からオーバーフローする。一方、液体亜鉛は底部に溜まり、大気圧下の縁部84からオーバーフローする。この比重分離装置80では、底部に溜まっている液体亜鉛の温度を450〜500℃、上層の液体塩化亜鉛の温度を450℃程度とすることで流動性を確保することができる。また、液体塩化亜鉛は、必要があれば塩化リチウム(LiCl)の添加によっても流動性を確保することができる。
【0061】
[5.液体亜鉛及び液体亜鉛の他の抜き取り方法]
液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛の抜き取り方法に関しては前述したが、以下に示す方法を用いることもできる。
(減圧下バッチ方式)
排ガスの凝縮が開始されて一定時間経過すると、排ガス凝縮装置1において、液化した塩化亜鉛が液体排出口21から流出する。このとき排出される液体塩化亜鉛を、排ガス凝縮装置1内部と同一圧力に保ったタンクに貯蔵し、バッチ方式で外部に取り出す方法も採ることができる。
【0062】
図11に示すように、吸引ポンプが接続されるガス出口12に連結されている配管からバイパスされた配管60を、密閉状態の貯蔵タンク51内に挿入することで、排出部30内が吸引されているときに、貯蔵タンク51内を減圧状態にする。このときガス出口12につながる配管のバルブ61及びバイパスされた配管60のバルブ62は、いずれも開いた状態にある。一方、液体排出口21につながる配管も、密閉状態の貯蔵タンク51内に挿入されており、このとき当該配管のバルブ63は、開いた状態にある。この状態で運転することで、液体塩化亜鉛が貯蔵タンク51に貯蔵されていく。運転中に、バルブ62、63を閉じ、貯蔵タンク51内を窒素ガスで加圧し、貯蔵タンク51底部に設けられたバルブ64を開いて、貯蔵された液体亜鉛を貯蔵タンク51から抜き出す。この処理を一定時間毎に行う。
【0063】
(亜鉛の抜出方法)
前述した排ガス凝縮装置1のように湯溜り20が設置されている場合、液体亜鉛はこの湯溜り20から汲み出すことができる。また、前述した排ガス凝縮装置1’のように、タッピングウェル40を有している場合には、このタッピングウェル40に設けた排出口から液体亜鉛を抜き出すことができる。
【0064】
(サイフォン方式)
液体亜鉛の抜き出し方法として、排ガス凝縮装置内の液体亜鉛のレベル差を一定に保つようサイフォン式亜鉛抜取管を設置するようにしても良い。図12に示すように、湯溜り20を有している排ガス凝縮装置に関して本手法を採ることができる。図12に示すように、湯溜り20内の液体亜鉛内に、二股状の亜鉛抜取管70の一方の管を浸漬させておき、他方の管は亜鉛受槽52の液体亜鉛内に浸漬させておく。これら二股状の管の間には水平部が設けられている。
【0065】
亜鉛抜取管70の上部(主管部)は、吸引ポンプがつながるガス出口12の配管にバイパス接続されており、吸引が開始されると、亜鉛抜取管70の二股状の管の双方に液体亜鉛が侵入する。このとき侵入した液体亜鉛の高さ(管内での液面レベル)は、本体内の液体亜鉛のレベル差と同じである。湯溜り20の液面から亜鉛抜取管70の水平部までの高さを、侵入する液体亜鉛の高さよりも低くすることにより、排ガス凝縮装置内から液体亜鉛を連続的に抜き出すことが可能である。
【0066】
[5.排ガス凝縮装置の運転実験]
以下、排ガス凝縮装置の運転実験を行った結果を示す。本実験で使用した装置は、図8に示した第1バッフル17と第2バッフル16を有し、ガス出口12側の底部が水平である排ガス凝縮装置1’である。本体部10の内径は、本実施の形態の実験例では0.5mφであり、長さは3.8mのものを使用した。この実験例ではタッピングウェル及び湯溜りを設けず、液体亜鉛及び液体塩化亜鉛は液体排出口21から排出させた。
【0067】
(運転開始)
まず、本体外周部に複数ブロックに分けて設置した電気ヒータにより、液体亜鉛注入前に本体部10内部の温度が500℃以上になるように加熱した。次に、亜鉛インゴッドを誘導炉で溶解し、本体部10の注入口(図示せず)から所定量を注ぎ込む。液体亜鉛の注入が完了したら、空気が侵入しないように注入口を密封する。液体亜鉛が所定温度になるように本体部10の外周に設置した電気ヒータの出力を自動調整する。次に、ガス出口12に接続された吸引ポンプによって本体部10内部の吸引を行う。これにより、反応炉から排出された排ガスが本体部10内部に吸引される。この際、吸引ポンプ入口に設けられたニードルバルブによってガス入口11側の圧力を大気圧(約101kPa)となるように調整する。その結果、本体部10内部の差圧が28kPaとなった。
【0068】
排ガスの吸引を開始すると、外部加熱ヒータの出力が低下してくる。亜鉛還元反応の負荷が上昇するのに伴い、排ガスの保有熱と凝縮熱による液体亜鉛の加熱が促進され、加熱熱量が放散熱量を上回るようになる。その結果、ヒータの出力は0になる。このときの反応炉の負荷を亜鉛蒸発量であらわすと、40kg/hであった。この時点から本体部10の複数箇所に埋め込んだ温度計の指示値を見ながら、送風ファンにより本体部10を空冷した。反応炉の亜鉛蒸発量を最大60kg/hに向上させたが、空冷機構によって本体部10の温度は所定範囲(450〜550℃)に維持することができた。
【0069】
(混合液の抜き出し)
本体部10に引き込んだ排ガスの凝縮が開始すると、内部の液体量が増加してくる。ガス入口11の圧力を所定の範囲に保つため、真空ポンプの吸引量を調整した。その結果、本体内部の差圧が32kPaまで上昇した時点で、液体排出口21から、液体亜鉛及び液体塩化亜鉛の混合液の流出が開始した。混合液は前述した図10に示した装置と方法で比重分離し、液体亜鉛と液体塩化亜鉛を分離して回収することができた。
【0070】
(凝縮率)
表2には、操業No毎に、排ガスに含まれる成分量を示した。これに示されるように、排ガスには亜鉛ガス、塩化亜鉛ガス、窒素ガス、及び四塩化珪素ガスが含まれる。また、各操業Noの操業時間(排ガス処理時間)と、ガス入口11における排ガスの温度も併記した。ここで反応炉における四塩化珪素と亜鉛との混合モル比は、四塩化珪素:亜鉛=1:1.8〜1:2.5の間で変動させた。排ガス凝縮装置1’に関しては、3.5〜11.5時間の連続運転を行い、液体亜鉛及び液体塩化亜鉛を回収することができた。表2に示す排ガス凝縮装置1’の運転時間は、反応炉内のシリコン取り出し作業のために中断したために一定時間に区切られているものであり、排ガス凝縮装置1’自体の要因で運転時間を区切ったものではない。
【0071】
【表2】
【0072】
これら各操業No毎に、亜鉛回収量及び塩化亜鉛回収量を計測し、その結果を表3に示した。亜鉛凝縮に際して、亜鉛製錬で発生するような金属亜鉛粉末(Blue Powder)の発生は見られなかった。表2の亜鉛ガス量と表3の亜鉛回収量との比較から、排ガス中の亜鉛ガスは、排ガス凝縮装置1’を通過させることで100%液化凝縮することが判明した。
【0073】
【表3】
【0074】
また、表2の塩化亜鉛ガス量と表3の塩化亜鉛回収量との比較から、排ガス中の塩化亜鉛ガスは、排ガス凝縮装置1’を通過させることで98%以上液化凝縮することが判明した。なお、ガス出口12付近と、本体部10と吸引ポンプとの間に設置しているバグフィルターに若干の塩化亜鉛の付着が見られたものの、凝縮率に影響を与える程度ではなかった。未反応四塩化珪素は、ガス出口12からガス状態で抜き出した後、液化温度(58℃)以下に冷却し、回収する。回収率は冷却温度とガス圧力に依存する。
【0075】
(湯溜り設置の効果に関して)
本実験例においては湯溜りを設置しなかったが、排ガス凝縮装置1’に湯溜りを設置することにより、以下の効果を期待することができる。まず、湯溜りにガスバーナーを設置することで、液体亜鉛注入前の排ガス凝縮装置1’の昇温時間を短縮することができる。また、液体亜鉛の保有量を増やすことができるため、操業中の液体亜鉛の温度変動を緩和することができる。また、湯溜りの表面を解放することで、液体亜鉛の取り扱いが容易になる。即ち、液体亜鉛の注入及び排出、液体亜鉛の温度調整、並びに混入シリコンの除去が容易となる。図2及び図3の例に示したように、湯溜り20の上面を解放しておくことで、混入したシリコンが液体亜鉛中に存在することを目視することができるので、これを容易に取り除くことができる。
(その他について)
前記実施の形態では、四塩化珪素の反応炉のための排ガス凝縮方法及び排ガス凝縮装置について説明した。しかしながら、これに限定されることはなく、シラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、ジブロモシラン、トリブロモシラン、シリコンテトラブロマイド、ジアイオドシラン、トリアイオドシラン、シリコンテトラアイオダイド等であっても良い。従って、クロロシランと呼ばれているトリクロロシラン、四塩化珪素等のような、シリコン、塩素及び/又は水素との化合物の反応炉にも使用できる。
【符号の説明】
【0076】
1…排ガス凝縮装置
10…本体部
11…ガス入口
12…ガス出口
13…上下仕切板
14…堰部材
15…ブロッカ
20…湯溜り
21…液体排出口
30…排出部
50…回収装置
80…比重分離装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン塩化物ガスと亜鉛ガスを反応させて固体のシリコンを製造するときに生じる、亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスが含まれる排ガスを、420℃以上732℃以下の液体亜鉛中を通過させ、前記亜鉛ガス及び前記塩化亜鉛ガスを前記液体亜鉛で冷却して液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛とする
ことを特徴とするシリコン製造時に発生する排ガス凝縮方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコン製造時に発生する排ガス凝縮方法において、
前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛とした後、前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛を比重の相違によって分離することにより各々回収する
ことを特徴とするシリコン製造時に発生する排ガス凝縮方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載したシリコン製造時に発生する排ガス凝縮方法に用いる排ガス凝縮装置であって、
中心線が水平面に対する傾斜角は5〜55度であり、内部が空洞である本体部と、
この空洞と連通し、前記本体部の下端部付近に配置され、前記シリコン製造時に反応炉から排出される前記排ガスを供給するためのガス入口と、
前記空洞と連通し、前記本体部の上端部付近に配置されたガス出口と、
前記本体部の内部には前記液体亜鉛を前記ガス入口を超える高さである第1のレベルまで満たし、前記ガス出口側から吸引することによって、前記液体亜鉛のレベルを前記第1のレベルから第2のレベルまで上昇させて、前記ガス入口と前記ガス出口間で前記液体亜鉛のレベル差を生じさせるための吸引手段と
とからなることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項4】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記空洞には、前記液体亜鉛を循環させるための循環機構が設けられていることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項5】
請求項4に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記循環機構は、前記空洞を上限に2分割し、前記本体の中心軸線を含む面を有する板材であることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項6】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記ガス出口の下方であって、前記本体部の内部上面には前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛が当該ガス出口に侵入することを防止するためのブロッカが設けられていることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項7】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記本体部の上端部付近には、前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛を抜き出すための液体排出口が設けられ、当該液体排出口の外部に配置され、前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛を比重の相違によって分離させるための比重分離装置を有する
ことを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項8】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記本体部の上端部付近には、前記液化した塩化亜鉛を抜き出すための液体排出口が設けられ、当該液体排出口には、前記液化した塩化亜鉛を回収するための回収装置が配置されてることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項9】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記傾斜角が10〜30度であることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項10】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記本体部の液体亜鉛の温度を450〜550℃に制御するための温度調整機構を有することを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項11】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記本体部の材質が炭化珪素、又は溶融シリカであることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項12】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記シリコン塩化物がクロロシランであることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項1】
シリコン塩化物ガスと亜鉛ガスを反応させて固体のシリコンを製造するときに生じる、亜鉛ガス及び塩化亜鉛ガスが含まれる排ガスを、420℃以上732℃以下の液体亜鉛中を通過させ、前記亜鉛ガス及び前記塩化亜鉛ガスを前記液体亜鉛で冷却して液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛とする
ことを特徴とするシリコン製造時に発生する排ガス凝縮方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコン製造時に発生する排ガス凝縮方法において、
前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛とした後、前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛を比重の相違によって分離することにより各々回収する
ことを特徴とするシリコン製造時に発生する排ガス凝縮方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載したシリコン製造時に発生する排ガス凝縮方法に用いる排ガス凝縮装置であって、
中心線が水平面に対する傾斜角は5〜55度であり、内部が空洞である本体部と、
この空洞と連通し、前記本体部の下端部付近に配置され、前記シリコン製造時に反応炉から排出される前記排ガスを供給するためのガス入口と、
前記空洞と連通し、前記本体部の上端部付近に配置されたガス出口と、
前記本体部の内部には前記液体亜鉛を前記ガス入口を超える高さである第1のレベルまで満たし、前記ガス出口側から吸引することによって、前記液体亜鉛のレベルを前記第1のレベルから第2のレベルまで上昇させて、前記ガス入口と前記ガス出口間で前記液体亜鉛のレベル差を生じさせるための吸引手段と
とからなることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項4】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記空洞には、前記液体亜鉛を循環させるための循環機構が設けられていることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項5】
請求項4に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記循環機構は、前記空洞を上限に2分割し、前記本体の中心軸線を含む面を有する板材であることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項6】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記ガス出口の下方であって、前記本体部の内部上面には前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛が当該ガス出口に侵入することを防止するためのブロッカが設けられていることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項7】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記本体部の上端部付近には、前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛を抜き出すための液体排出口が設けられ、当該液体排出口の外部に配置され、前記液化した亜鉛及び液化した塩化亜鉛を比重の相違によって分離させるための比重分離装置を有する
ことを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項8】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記本体部の上端部付近には、前記液化した塩化亜鉛を抜き出すための液体排出口が設けられ、当該液体排出口には、前記液化した塩化亜鉛を回収するための回収装置が配置されてることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項9】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記傾斜角が10〜30度であることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項10】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記本体部の液体亜鉛の温度を450〜550℃に制御するための温度調整機構を有することを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項11】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記本体部の材質が炭化珪素、又は溶融シリカであることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【請求項12】
請求項3に記載した排ガス凝縮装置であって、
前記シリコン塩化物がクロロシランであることを特徴とする排ガス凝縮装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−25616(P2012−25616A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165326(P2010−165326)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(507199333)ソーラーシリコンテクノロジー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(507199333)ソーラーシリコンテクノロジー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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