説明

排ガス処理装置

【課題】排ガス中の揮発性有機化合物を少ないエネルギーで効率的に分解できると共にイニシャルコストおよびランニングコストを低減できる排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】この排ガス処理装置は、スクラバー部2によって排ガス中の揮発性有機化合物を洗浄水に吸収,移行させて上記排ガスから取り除く。そして、上記洗浄水は溶存酸素調整部22で溶存酸素濃度が高められると共にナノバブルを含有する洗浄水として、活性炭吸着塔44に導入される。活性炭吸着塔44ではナノバブルで活性化した好気性微生物により上記揮発性有機化合物を分解処理できる。また、活性炭吸着塔44の後段の溶存酸素等測定部51で洗浄水の溶存酸素濃度を計測し溶存酸素調節計55は上記洗浄水の溶存酸素濃度が最低で2ppm以上になるようにブロワー56の運転を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、揮発性有機化合物を含有する排ガス処理装置に関する。この発明は、例えば、半導体工場や液晶工場における揮発性有機化合物などの有機化合物を含有する排ガスを処理する排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体工場や液晶工場における揮発性有機化合物含有排ガスを処理する方法としては、特に、(1)活性炭による吸着法、(2)排ガスを空気と混合して直接的に燃焼させる直接燃焼法、(3)水、酸、アルカリ溶液などの液体に対象とするガスを吸収させる方法が採用されていた。
【0003】
しかし、(1)活性炭による吸着法は、ダストやミストを含む揮発性有機化合物含有排ガス処理方法は、前処理として、ダストやミストの除去装置(バグフィルター、ミストセパレーターなど)が必要になるので、活性炭の再生費用を含めて、ランニングコストが高い欠点があった。
【0004】
また、(2)排ガスを空気と混合して直接的に燃焼させる直接燃焼法においても、燃料が必要でランニングコストが高い欠点があった。よって、省エネルギーの推進が要求される時代では、課題の多い方法であった。
【0005】
また、(3)の水、酸、アルカリ溶液などの液体に対象とするガスを吸収させる方法は、液体に揮発性有機化合物を吸収させた後の工程で発生する排水に対する排水処理設備を要し、この排水処理設備のランニングコストが高い欠点がある。
【0006】
一方、従来技術としてのナノバブルの利用方法および装置が、特許文献1(特開2004−121962号公報)に開示されている。この特許文献1では、ナノバブルが有する浮力の減少、表面積の増加、表面活性の増大、局所高圧場の生成、静電分極の実現による界面活性作用と殺菌作用などの特性を活用することが開示されている。より具体的には、それらが相互に関連することによって、汚れ成分の吸着機能、物体表面の高速洗浄機能、殺菌機能によって各種物体を高機能、低環境負荷で洗浄することができ、汚濁水の浄化を行うことができることが特許文献1で開示されている。
【0007】
また、従来技術としてのナノ気泡の生成方法が、特許文献2(特開2003−334548号公報)に開示されている。この特許文献2では、液体中において、液体の一部を分解ガス化する工程、液体中で超音波を印加する工程、または、液体の一部を分解ガス化する工程及び超音波を印加する工程から構成されていることを開示している。
【0008】
また、従来技術としてのオゾンマイクロバブルを利用する廃液の処理装置が、特許文献3(特開2004−321959号公報)に開示されている。この特許文献3では、オゾン発生装置で生成されたオゾンガスをマイクロバブル発生装置に供給すると共に、処理槽の下部から抜き出された廃液を加圧ポンプを介して上記マイクロバブル発生装置に供給していることを開示している。また、特許文献3では、生成されたオゾンマイクロバブルをガス吹き出しパイプの開口部より処理槽内の廃液中に通気することを開示している。
【0009】
しかし、上述のナノバブルやオゾンマイクロバブルを利用する方法を用いても、排ガス中の揮発性有機化合物を少ないエネルギーで効率的に分解できていない。また、排ガス中の有機化合物、特に揮発性有機化合物に対しては、上述の従来の吸着法または燃焼法では、イニシャルコストやランニングコストが高いことに課題があった。そして、排ガス中の有機化合物濃度が高い場合、充分な除去率の確保ができないと共に洗浄水中の揮発性有機化合物を処理ができないことから、新たに大規模な排水処理設備を計画する必要があった。
【特許文献1】特開2004−121962号公報
【特許文献2】特開2003−334548号公報
【特許文献3】特開2004−321959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明の課題は、排ガス中の揮発性有機化合物を少ないエネルギーで効率的に分解できると共にイニシャルコストおよびランニングコストを低減できる排ガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明の排ガス処理装置は、揮発性有機化合物を含有する排ガスを洗浄水に接触させて、上記排ガス中の揮発性有機化合物を上記洗浄水に吸収,移行させるスクラバー部と、
上記スクラバー部から導入される洗浄水に酸素を溶存させると共にナノバブルを含有させる溶存酸素調整部と、
上記溶存酸素調整部から上記ナノバブルを含有した洗浄水が導入されると共にこの洗浄水が含有する揮発性有機化合物をナノバブルで活性化した好気性微生物で分解処理し、この分解処理した洗浄水を上記スクラバー部に返送する活性炭吸着塔と、
上記活性炭吸着塔で処理された洗浄水が導入されると共にこの洗浄水の溶存酸素濃度または全有機炭素濃度の少なくとも一方を測定する測定部と、
上記測定部が測定した上記洗浄水の溶存酸素濃度または全有機炭素濃度の少なくとも一方に基づいて、上記溶存酸素調整部の運転を制御する制御部と
を備えることを特徴としている。
【0012】
この発明の排ガス処理装置によれば、上記スクラバー部によって、上記排ガス中の揮発性有機化合物を洗浄水に吸収,移行させて、上記排ガスから取り除く。そして、上記洗浄水は、上記溶存酸素調整部で溶存酸素濃度が高められると共にナノバブルを含有する洗浄水となされて、活性炭吸着塔に導入される。この活性炭吸着塔では、ナノバブルで活性化した好気性微生物により上記揮発性有機化合物を分解処理できる。また、上記活性炭吸着塔から上記スクラバー部へ上記ナノバブルを含有すると共に上記揮発性有機化合物が分解処理された洗浄水が返送される。また、この発明では、上記制御部は、上記測定部が測定した上記洗浄水の溶存酸素濃度または全有機炭素濃度の少なくとも一方に基づいて、上記溶存酸素調整部の運転を制御するので、上記洗浄水の溶存酸素濃度,全有機炭素濃度を調整可能となり、上記揮発性有機化合物を分解処理する能力を調整できる。
【0013】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記溶存酸素調整部は、ナノバブル発生機と、ブロワーと、このブロワーから空気が供給される散気管とを有し、
上記制御部は、上記測定部が測定した上記洗浄水の溶存酸素濃度または全有機炭素濃度の少なくとも一方に基づいて上記ブロワーの運転を制御する。
【0014】
この実施形態によれば、上記制御部は、上記測定部が測定した上記洗浄水の溶存酸素濃度または全有機炭素濃度の少なくとも一方に基づいて上記ブロワーの運転を制御することによって、上記洗浄水の溶存酸素濃度を調整できる。この洗浄水の溶存酸素濃度を高めることで、後段の活性炭吸着塔に繁殖した好気性のバクテリアの活動を高めることができ、VOC(揮発性有機化合物)の分解効率を高めることができる。
【0015】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記制御部は、上記測定部が測定した上記洗浄水の溶存酸素濃度に基づき、上記活性炭吸着塔内の洗浄水の溶存酸素濃度が2ppm以上になるように上記溶存酸素調整部の運転を制御する。
【0016】
この実施形態によれば、上記活性炭吸着塔内の洗浄水中の溶存酸素濃度を、常時、2ppm以上に維持でき、上記活性炭吸着塔での洗浄水の溶存酸素濃度を高濃度に維持できる。なお、上記洗浄水中の溶存酸素濃度を4ppm以上に維持することがより望ましい。
【0017】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記溶存酸素調整部から上記ナノバブルを含有する洗浄水が導入されると共にこの洗浄水をろ過して上記活性炭吸着塔に導入する急速ろ過機を備える。
【0018】
この実施形態によれば、上記急速ろ過機によって、洗浄水中の浮遊物質が除去される。
【0019】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記制御部は、上記測定部が測定した上記洗浄水の溶存酸素濃度に基づき、上記活性炭吸着塔における洗浄水の溶存酸素濃度が5ppm以上になるように上記溶存酸素調整部の運転を制御する。
【0020】
この実施形態によれば、上記活性炭吸着塔内の洗浄水中の溶存酸素濃度を、常時、5ppm以上に維持でき、上記活性炭吸着塔での洗浄水の溶存酸素濃度を高濃度に維持できる。なお、上記洗浄水中の溶存酸素濃度を6ppm以上に維持することがより望ましい。
【0021】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記活性炭吸着塔の前段かつ上記溶存酸素調整部の後段に設置されていて上記洗浄水に酸素ガスと水素ガスによるマイクロバブルを発生させるフィールド変換器を有する。
【0022】
この実施形態によれば、上記フィールド変換器によって発生されるマイクロバブルによって、好気性のバクテリアを活性化でき、洗浄水中のVOCを分解する作用を一層高めることができる。
【0023】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記活性炭吸着塔は、上記洗浄水を下から上に向かって流す上向流方式である。
【0024】
この実施形態によれば、上記活性炭吸着塔が上向流方式であるので、自動バルブと空気抜き配管を設置して、タイマーで自動バルブを開に作動させて、塔内に溜まった空気を容易に抜き出せる。したがって、上記活性炭吸着塔の運転を円滑に行うことができる。
【0025】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記活性炭吸着塔は、
この活性炭吸着塔内を上下に延在していて下方から上記洗浄水が導入されると共に複数の孔が上下方向に配置されている導入配管と、
上記導入配管の周囲に配置された活性炭とを有し、
上記導入配管の上記複数の孔から上記活性炭へ上記洗浄水を導入する。
【0026】
この実施形態によれば、上記活性炭吸着塔は、上下に延在している導入配管の複数の小孔から洗浄水を活性炭層の全体に可能な限り均等に導入でき、好気性の条件でVOCの分解が可能となる。
【0027】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記活性炭吸着塔は、自動バルブ付きの空気抜き配管と、この自動バルブを定期的に開として空気抜きを定期的に行なうための計時を行なうタイマーとを有する。
【0028】
この実施形態によれば、上記活性炭吸着塔の塔内に溜まった空気を自動的に抜き出すことができ、上記活性炭吸着塔の運転に支障がないようにすることができる。なお、上記溶存酸素調整部から上記ナノバブルを含有する洗浄水が導入されると共にこの洗浄水をろ過して上記活性炭吸着塔に導入する急速ろ過機を備える場合は、この急速ろ過機も、自動バルブ付きの空気抜き配管とこの自動バルブを定期的に開として空気抜きを定期的に行なうための計時を行なうタイマーとを有することが望ましい。
【0029】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記排ガスは、水溶性成分を含有する排ガスだけでなく、非水溶性成分を含有する排ガスを含んでいる。
【0030】
この実施形態によれば、上記フィールド変換器を有しているので、上記フィールド変換器が有する界面活性作用により、非水溶性成分を含有する排ガスをも処理することができる。
【0031】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記制御部は、
上記測定部が測定した上記洗浄水の溶存酸素濃度または全有機炭素濃度の少なくとも一方に基づいて上記ブロワーの電動機の回転数を制御する。
【0032】
この実施形態によれば、上記制御部は、上記溶存酸素調整部が有するブロワーの電動機の回転数を制御することで、上記溶存酸素調整部が洗浄水に溶存させる酸素濃度を制御できる。よって、上記溶存酸素調整部の運転の最適化を図れ、省エネルギー運転が可能となる。
【発明の効果】
【0033】
この発明の排ガス処理装置によれば、スクラバー部によって排ガス中の揮発性有機化合物を洗浄水に吸収,移行させて上記排ガスから取り除き、上記洗浄水は溶存酸素調整部で溶存酸素濃度が高められると共にナノバブルを含有する洗浄水となされて、活性炭吸着塔に導入される。この活性炭吸着塔では、ナノバブルで活性化した好気性微生物により上記揮発性有機化合物を分解処理できる。また、上記活性炭吸着塔から上記スクラバー部へ上記ナノバブルを含有すると共に上記揮発性有機化合物が分解処理された洗浄水が返送される。また、この発明では、上記制御部は、上記測定部が測定した上記洗浄水の溶存酸素濃度または全有機炭素濃度の少なくとも一方に基づいて、上記溶存酸素調整部の運転を制御するので、上記洗浄水の溶存酸素濃度,全有機炭素濃度を調整可能となり、上記揮発性有機化合物を分解処理する能力を調整できる。
【0034】
よって、この発明の排ガス処理装置によれば、排ガス中の揮発性有機化合物を少ないエネルギーで効率的に分解できると共にイニシャルコストおよびランニングコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0036】
(第1の実施の形態)
図1は、この発明の揮発性有機化合物含有排ガス処理装置の第1実施形態を模式的に示す図である。
【0037】
この第1実施形態の揮発性有機化合物含有排ガス処理装置は、VOC処理装置をなしており、大きくはスクラバー部2とVOC分解部とから構成されている。このVOC分解部は、溶存酸素調整部22、急速ろ過機43、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44、ブロワー56等を備えている。
【0038】
まず、上記スクラバー部2を詳細に説明する。スクラバー部2は、概略、上から順に配置されたスクラバー上部4とスクラバー下部5とを有している。例えば、工場の生産設備から発生した揮発性有機化合物含有排ガスは、排気ファン7が運転されることにより、給気ダクト6を通って、気流8を形成して、スクラバー上部4の下部から導入される。
【0039】
上記スクラバー上部4は、網目状の支持網15と、この網目状の支持網15上に配置された充填材15とを有する。この充填材15の具体的一例としては、気液の接触効率の良いプラスチック製のテラレット(商品名)が挙げられる。
【0040】
上記充填材15には、散水配管9に取り付けられている散水ノズル10からナノバブルを含有している洗浄水が、水滴11となって散水される。これにより、上記排ガス中の揮発性有機化合物(具体的一例としてはイソプロピールアルコール)が、上記ナノバブルを含有している洗浄水といわゆる気液の接触をしている。この気液の接触によって、上記排ガス中の揮発性有機化合物が上記洗浄水中に吸収されて上記洗浄水に移行し、上記排ガスが処理されることになる。
【0041】
この揮発性有機化合物が処理された排ガスは、排気ダクト13を経て、気流14となって、スクラバー上部4から排出される。
【0042】
一方、上記洗浄水は、上記揮発性有機化合物を吸収したことで揮発性有機化合物含有洗浄水となって、スクラバー上部4の充填材15からスクラバー下部5のマイクロナノバブル確認部17へ落下する。このマイクロナノバブル確認部17では、洗浄水中のマイクロバブルとナノバブルのサイズとバブル量を肉眼で確認できるようになっている。上記マイクロバブルとナノバブルを含有した洗浄水は、オーバーフロー管16を経由して、マイクロナノバブル確認部17から沈澱部18へ重力で導入される。
【0043】
なお、ナノバブルを製造する場合、必ず付属的にマイクロバブルが発生する。ナノバブルは肉眼で確認することは、困難であるが、マイクロバブルは、サイズからして肉眼で確認することが可能である。すなわち、ナノバブルの発生量をマイクロバブルの発生量から推定できる。例えば、マイクロバブルの発生量に対するナノバブルの発生量を、予め別のナノバブル発生機のメーカー等から入手できるデータに基づいて想定しておくことで、ナノバブルの発生量を簡便的に管理できる。また、当然ながら、ナノバブルのサイズ毎の量は、洗浄水をサンプリングしてベックマン・コールター社にて測定することが好ましい。
【0044】
そして、長く運転していると、沈澱部18での揮発性有機物含有洗浄水にはスラッジが発生してくる。この発生したスラッジは、必要に応じて、バルブ19を開として、排水管20を通じて系外に排水される。こうして、沈澱部18で発生したスラッジが沈降分離された揮発性有機物含有洗浄水は、水配管21を経由して溶存酸素調整部22に導入される。
【0045】
この溶存酸素調整部22には、ブロワー56に接続された空気配管25,散気管23およびナノバブル発生機58が付属している。そして、この溶存酸素調整部22では、ブロワー56とナノバブル発生機58の駆動でもって、上記洗浄水中の溶存酸素が調整される。
【0046】
上記ナノバブル発生機58は、第1気体せん断部29を有する気液混合循環ポンプ30と、この気液混合循環ポンプ30に接続された第2気体せん断部28と、この第2気体せん断部28に接続された第3気体せん断部27およびそれらを連結する配管と、空気配管31で気液混合循環ポンプ30に接続されたニードルバルブ32とを備えている。
【0047】
そして、後述する溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44の後段に設置された溶存酸素等測定部51が有する溶存酸素計53が計測した溶存酸素濃度を表す信号が信号線54Aで溶存酸素調節計55に伝送され、この溶存酸素調節計55は上記信号が表す溶存酸素濃度に基づいて、信号線57Aから上記ブロワー56に駆動制御信号を出力してブロワー56の駆動を制御する。このブロワー56の駆動制御でもって、溶存酸素調整部22の後段の溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44のどの部分においても、溶存酸素濃度が最低で2ppm以上、好ましくは4ppm以上になされる。
【0048】
すなわち、ナノバブル発生機58から発生するナノバブル量やマイクロバブル量の絶対量では、溶存酸素調整部22内の溶存酸素濃度を充分に上昇させることができないので、ブラワー56から吐出する空気を散気管23から吐出させて溶存酸素調整部22内の溶存酸素濃度を高めている。
【0049】
この実施形態では、ナノバブル発生機85の一例として、株式会社協和機設のバビタスHYK−32型を採用した。ちなみに、現在存在しているナノバブル発生機としては、導入空気量が1リットル/分程度の機種が存在しているものの、極微量の空気量であることから、ブロワー56を溶存酸素調整部22に設置して空気を補給している。上述の如く、溶存酸素等測定部51に設置してある溶存酸素計53が出力する信号が信号線54Aで溶存酸素調節計55に伝送され、変換,調節されて信号線57Aから上記ブロワー56に入力されることで、ブロワー56が駆動,制御される。
【0050】
また、溶存酸素等測定部51に設置している全有機炭素計(TOC計)59が計測したTOCを表す信号が信号線54Bで全有機炭素調節計60に伝送され、変換,調節されて信号線57Bから上記ブロワー56に入力されることでブロワー56が駆動,制御される。この全有機炭素調節計60は、例えば、上記計測したTOCが所定値以下になるように、ブロワー56の運転を制御する。なお、52は、この溶存酸素等測定部51の蓋をなすカバーである。
【0051】
こうして、溶存酸素等測定部51では、上記溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44が水配管50に出力する洗浄水の溶存酸素濃度および全有機炭素濃度が測定される。そして、この測定された溶存酸素濃度が設定値よりも低下する、もしくは、上記測定された全有機炭素濃度が設定値よりも高くなると、溶存酸素調節計55,全有機炭素調節計60が制御信号をブロワー56に出力し、ブロワー56を運転するか、もしくはブロワー56の運転における電動機の回転数を増加させる。これにより、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44内部の溶存酸素を増加させて、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44の内部で繁殖すると共にナノバブルで活性化した好気性微生物のVOC分解作用を増加させる。なお、上記溶存酸素調節計55および全有機炭素調節計60が制御部を構成している。
【0052】
ところで、ナノバブル発生機58が発生するナノバブルは微生物の活性化には有効であるが、ナノバブル発生機58の使用空気量が1リットル/分であるので、ナノバブル発生機58が発生ナノバブルによる溶存酸素量の増加は比較的少ない。よって、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44の内部の溶存酸素を増加させるためには、ブロワー56を運転することが必要になる。ただし、ナノバブル発生機58を運転せずに、ブロワー56のみを運転した場合は、好気性微生物を格段に活性化することはできない。
【0053】
次に、溶存酸素が調整された溶存酸素調整部22での被処理水である洗浄水は、ナノバブル量と溶存酸素濃度を調整され、急速ろ過機送水ポンプ33により、吸込み配管34,バルブ35,水配管36,バルブ37を経由して、急速ろ過機43に導入される。この洗浄水が導入された急速ろ過機43の最下部には、支持網45が設置され、この支持網45の上に例えば砂や石炭系のアンスラサイト等のろ材67が載置されている。このろ材67によって、上記洗浄水中の浮遊物質を除去する。なお、急速ろ過機43の上部には自動バルブ41と空気抜き配管42が取付けられており、自動バルブ41を開とすることで急速ろ過機43の内部に溜まった空気を定期的に空気抜き配管42から抜くようにしている。この定期的な空気抜き動作は例えばタイマーを用いて実行できる。
【0054】
また、急速ろ過機43の上部の支持材67に溜まった浮遊物質は、逆洗工程で排出される。具体的には、定期的に、バルブ38を開とし、バルブ39を開とし、バルブ37を閉とし、バルブ40を閉とする条件において、上記浮遊物質が含有された逆洗水が逆洗配管63から排水される。一方、この急速ろ過機43の通常の運転においては、上記逆洗工程とは逆に、バルブ38を閉とし、バルブ39を閉とし、バルブ37を開とし、バルブ40を開とする。
【0055】
次に、急速ろ過機43で浮遊物質が除去された洗浄水は、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44内で縦に配置されて上下方向に延在している導入配管としての分散配管46の下部から導入され、この分散配管46に形成された複数の小孔47から溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44の内部に均等に行き渡ることになる。この分散配管46は、最上部が蓋となるフランジ48を有しており、長年使用することによって、上記分散配管46の小孔47が閉塞した場合は、上記フランジ48をはずして、分散配管46内部を洗浄することもできる。
【0056】
また、この溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44は、下部に設置された支持網45の上に活性炭49が充填されている。この活性炭49は特に限定しないが、この第1実施形態ではヤシガラ活性炭のうちでサイズが最も大きなタイプを使用した。また、このヤシガラ活性炭からなる活性炭49を溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44の全体容量の約60%充填した。その理由としては、活性炭49は、比重が1より大きく、水中では沈降するが、比重が1より少しだけ重いので、下部から洗浄水を導入すると水流による上昇流が発生し、活性炭49が存在するゾーンが上昇するからである。なお、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44の上部には自動バルブ65と空気抜き配管66が取り付けられており、自動バルブ65を開とすることで溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44の内部に溜まった空気を定期的に空気抜き配管66から抜くようにしている。
【0057】
そして、活性炭49が吸着した揮発性有機化合物は、活性炭49に繁殖したと共にナノバブルにより活性化した好気性微生物により分解処理される。特に、ナノバブルはサイズが小さいことにより、活性炭49の細孔まで入り込み、細孔に繁殖している好気性微生物の代表である好気性のバクテリアを活性化して、活性炭49が吸着した揮発性有機化合物を効果的に分解することになる。
【0058】
この実施形態では、一例として、上記溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44の入口における洗浄水の溶存酸素濃度が7.1ppmであり、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44の出口における洗浄水の溶存酸素濃度が6.4ppmであった。また、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44の出口における洗浄水の酸化還元電位は、プラス120mVであった。そして、この溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44の出口における洗浄水は、入口における洗浄水からのVOC除去率が60〜80%に達していた。
【0059】
これに対し、上述の溶存酸素等測定部51,溶存酸素調節計55,全有機炭素調節計60,ブロワー56等による溶存酸素調節機能を有さず、ブロワー56から溶存酸素調整部22に空気が供給されない比較例における活性炭吸着塔では、入口における洗浄水の溶存酸素濃度が7.2ppmであり、出口における洗浄水の溶存酸素濃度が1.2ppmであった。また、この比較例の活性炭吸着塔の出口での酸化還元電位はマイナス60mVであった。そして、この比較例の活性炭吸着塔の出口における洗浄水は、入口における洗浄水からのVOC除去率が30〜50%であった。
【0060】
したがって、この比較例では、活性炭吸着塔にVOC分解に有効な好気性のバクテリアが充分に繁殖できていないのに対して、この実施形態によれば、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44にVOC分解に有効な好気性のバクテリアが充分に繁殖できていることが分る。
【0061】
そして、この溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44において揮発性有機化合物を分解処理された洗浄水は、水配管50から溶存酸素等測定部51を経由して、散水配管9を通って、溶存酸素が設定値(例えば4ppm)以上でかつナノバブルを含有する洗浄水として、散水ノズル10から水滴11となってスクラバー上部4内で散水される。
【0062】
なお、上記したように、上記溶存酸素等測定部51において溶存酸素計53で溶存酸素濃度を測定し、全有機炭素計59で全有機炭素濃度を測定して、各々の調節計(溶存酸素調節計55,全有機炭素調節計60)によって、ブロワー56の運転と停止とを制御するか、もしくは、ブロワー56の電動機の回転数を制御している。
【0063】
ここで、3種類のバブルについて説明する。
【0064】
(1) 通常のバブル(気泡)は水の中を上昇して、ついには表面でパンとはじけて消滅する。
【0065】
(2) マイクロバブルは、その発生時において、10〜数10μmの気泡径を有する微細気泡で、発生後に収縮運動により「マイクロナノバブル」に変化する。
【0066】
(3) ナノバブルは、直径が数100nm以下の気泡である。
【0067】
そして、マイクロナノバブルとは、マイクロバブルとナノバブルとが混合したバブルと説明でき、10μmから数100nm前後の直径を有する気泡である。
【0068】
(第2の実施の形態)
次に、図2に、この発明の揮発性有機化合物含有排ガス処理装置の第2実施形態を示す。この第2実施形態は、前述の第1実施形態における溶存酸素調整部22に栄養剤を添加する栄養剤タンク61,栄養剤定量ポンプ62を備える点だけが、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第2実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1施形態と異なる部分を説明する。
【0069】
図2に示すように、この第2実施形態では、洗浄水の存酸素濃度を上昇させて調整する溶存酸素調整部22に、栄養剤タンク61から栄養剤定量ポンプ62で、好気性のバクテリアに対する栄養剤を添加している。
【0070】
そして、この栄養剤が添加された溶存酸素調整部22では、ブロワー56より吐出する曝気用の空気が散気管23より出て気泡24となり、上記栄養剤が撹拌,混合される。そして、上記栄養剤を含む洗浄水は、急速ろ過機43を経由して被処理水として溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44に導入される。この溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44では、上記洗浄水に含まれる栄養剤によって、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44内に繁殖していると共にナノバブルで活性化した好気性のバクテリアの繁殖を高めることができる。
【0071】
なお、上記栄養剤としては、窒素成分としての尿素、リン分としてのリン酸、およびそれらがバランス良く含まれているコーンスターチプリカー等が挙げられるが、上記栄養剤はこれらに限られるものではなく目的や実験結果から選定すればよい。
【0072】
(第3の実施の形態)
次に、図3に、この発明の揮発性有機化合物含有排ガス処理装置の第3実施形態を示す。この第3実施形態の排ガス処理装置は、前述の第1実施形態の溶存酸素等測定部51における全有機炭素計59と信号線54B,全有機炭素調節計60を取り去って、ブロワー56の制御は溶存酸素計53と溶存酸素調節計55で行なわれている点だけが、前述の第1実施形態と異なっている。よって、この第3実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0073】
この第3実施形態では、溶存酸素等測定部51では、溶存酸素濃度リッチ活性炭吸着塔44からの洗浄水の溶存酸素濃度を溶存酸素計53で測定し、この溶存酸素計53は、上記溶存酸素濃度を表す信号を信号線54Aから溶存酸素調節計55に入力する。この溶存酸素調節計55では、上記入力された溶存酸素濃度を表す信号に基づいて、ブロワー56を制御し、ブロワー56から送出される空気を散気管23から吐出させて溶存酸素調節部22内の溶存酸素濃度を高めている。
【0074】
この実施形態では、上記洗浄水中の溶存酸素濃度が高い場合(例えば4ppm以上の場合)は、ブロワー56は運転されない。そして、この実施形態では、上記溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44を出た洗浄水の全有機炭素濃度は測定していないので、上記洗浄水中の全有機炭素濃度が高い場合は、洗浄水中のVOC除去率は低下する。一方で、この実施形態では、全有機炭素調節計60および全有機炭素計59等の関連機器一式のイニシャルコストを削減できる。
【0075】
(第4の実施の形態)
次に、図4に、この発明の揮発性有機化合物含有排ガス処理装置の第4実施形態を示す。この第4実施形態の排ガス処理装置は、前述の第1実施形態の溶存酸素等測定部51における溶存酸素計53と信号線54A,溶存酸素調節計55が取り去られて、ブロワー56の制御が全有機炭素計59と全有機炭素調節計60で行われている点だけが、前述の第1実施形態と異なっている。よって、この第4実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0076】
この第4実施形態では、溶存酸素等測定部51では、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44からの洗浄水の全有機炭素濃度を全有機炭素計59で測定し、この全有機炭素計59は、上記全有機炭素濃度を表す信号を信号線54Bから全有機炭素調節計60に入力する。この全有機炭素調節計60では、上記入力された全有機炭素濃度を表す信号に基づいてブロワー56を制御する。例えば、上記測定された全有機炭素濃度が設定値よりも高くなると、全有機炭素調節計60はブロワー56に制御信号を出力してブロワー56を運転するか、もしくはブロワー56の運転における電動機の回転数を増加させる。
【0077】
なお、この第4実施形態では、溶存酸素計53および溶存酸素調節計55を有さず、上記洗浄水中の溶存酸素濃度を測定できないので、洗浄水中の溶存酸素濃度が低くなると、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44内の好気性バクテリアを十分に活性化できない可能性がある。一方で、この実施形態では、溶存酸素計53および溶存酸素調節計55等の関連機器一式のイニシャルコストを削減できる。
【0078】
(第5の実施の形態)
次に、図5に、この発明の揮発性有機化合物含有排ガス処理装置の第5実施形態を示す。この第5実施形態は、前述の第1実施形態における溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44の前段にフィールド変換器64を設置した点だけが、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第5実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0079】
この第5実施形態では、図5に示すように、急速ろ過機43と溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44との間にフィールド変換器64を設置した。
【0080】
このフィールド変換器64に水を通すと、マイクロバブルとしての酸素ガスと水素ガスが多量に発生するので、磁気活水器やナノバブル発生機と同様の効果がある。より詳しくは、このフィールド変換器64とは、六角柱状素片の配列物からなる構造を有する機器であり、具体的一例としては複数の正六角柱状の素片を当該素片の中心軸が相互に平行になるように配列したものである。この素片は、この素片の底面と表面を貫通すると共に断面円形の穴を有している。また、上記穴の内周面に溝を有する。上記素片は、ステンレス、チタン等の材質から作製されている。
【0081】
したがって、このフィールド変換器64を上記溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44の前段に設置したことで、急速ろ過機43から導入された洗浄水から気体としての酸素ガスと水素ガスを発生させてマイクロバブルを発生させる。なお、ナノバブル発生機58では、気体としての空気をナノバブルとしているのに対し、フィールド変換器64は水から気体としての酸素ガスと水素ガスを結果的に発生させてマイクロバブルを発生させている。この点が、ナノバブル発生機58とフィールド変換器64の差であるが、両方を組み合わせて使用することにより、洗浄水中のVOCを分解する作用を一層高めることができる。よって、このフィールド変換器64を通過させた洗浄水は、非水溶性の成分(例えば、キシレン、トルエン、酢酸ブチル等)を含む排ガスに対しても有効となる。
【0082】
ところで、このフィールド変換器64は、このフィールド変換器64の近傍を流体が通過することにより、流体の性状を変化させることもできる。例えば、フィールド変換器64を使用することによる効果の一例としては、次の(1)〜(3)の例がある。
【0083】
(1) 養豚場での豚にフィールド変換器にて処理した飲料水を飲ませると、豚の生育に関する効果があった。すなわち、一般に、15%程度である死亡率が、0.5%以下に改善した。
【0084】
(2) 養豚場での飲料水と豚舎の清掃にフィールド変換器で処理した水を使用すると、養豚排水の水質が改善され、生物学的酸素要求量が約30%改善され、化学的酸素要求量が約30%改善され、浮遊物質が約40%改善された。
【0085】
(3) 養豚場の給水管にフィールド変換器を取り付け、養豚場で発生する臭気を測定したところ、臭気濃度が約20%改善した。
【0086】
また、このフィールド変換器64に通常の水道水を通過させて、24時間後の水質を測定した結果、水質が変化したことが確認された。すなわち、通過前の水道水では、酸化還元電位が120mV、溶存水素が2ppb、溶存酸素が5ppmであるのに対して、フィールド変換器通過後24時間経過後の水道水では、酸化還元電位が480mV、溶存水素が170ppb、溶存酸素が8ppmであった。
【0087】
(第6の実施の形態)
次に、図6に、この発明の揮発性有機化合物含有排ガス処理装置の第6実施形態を示す。この第6実施形態は、前述の第1実施形態における急速ろ過機43を取り去って、溶存酸素調節部22を配管34,送水ポンプ33,バルブ35を経由して溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44に接続した点だけが、前述の第1実施形態と異なっている。よって、この第6実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0088】
この第6実施形態では、急速ろ過機43が削除されているので、洗浄水中に浮遊物質が含まれている場合は、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44における活性炭49を閉塞させる場合があるが、洗浄水中に浮遊物質が含まれていない場合は、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44における活性炭49を閉塞させることはない。
【0089】
したがって、洗浄水中に浮遊物質が含まれていない場合は、急速ろ過機43は不要となる。特に、排ガス中のVOC濃度が比較的低濃度(具体的には、VOCとして20ppm以下)の場合、この実施形態を採用可能である。
【0090】
一方、通常の半導体工場における排ガス中のVOC濃度は、各種様々であるが、VOCが100ppmの工場も多く存在している。
【0091】
(実験例)
図1の第1実施形態の揮発性有機化合物(VOC)処理装置に対応した実験装置を製作し、この実験装置の性能を確認する実験を行った。
【0092】
この実験装置は、スクラバー上部4とスクラバー下部5を含むスクラバー部2の容積を0.8mとし、溶存酸素調整部22の容量を0.1mとし、急速ろ過機43の容量を0.1mとし、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44の容量を0.3mとし、溶存酸素等測定部51の容量を0.05mとした。
【0093】
また、急速ろ過機43の容量の約90%にろ材として石炭系のアンスラサイトを充填し、溶存酸素リッチ活性炭吸着塔44の容量の約60%に使用済みの効力が無くなった活性炭(破過した活性炭)としてヤシガラ活性炭を充填した。このヤシガラ活性炭はクラレケミカル株式会社の商品を採用した。また、溶存酸素調整部22にナノバブル発生機58を設置した。このナノバブル発生機58は、株式会社 協和機設の商品(具体的商品名:バビダスHYK−32型)を採用した。
【0094】
本実験では、揮発性有機化合物(VOC)発生源として、半導体工場の有機系排ガスのダクトから一部を分岐して、排気ファンで500m/時の条件で、揮発性有機化合物(VOC)処理装置に揮発性有機化合物(VOC)含有排ガスを導入して実験を行った。そして、揮発性有機化合物(VOC)処理装置の機器を全て稼働し、2ヶ月の運転の後、洗浄水のTOC濃度が22ppmの条件でスクラバー上部4の給気ダクト6(入口)と排気ダクト13(出口)においてVOC濃度を測定した。この測定の結果は、給気ダクト6(入口)でのVOC濃度が82ppmであるのに対して、排気ダクト13(出口)でのVOC濃度が16ppmであり、除去率80%であった。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】この発明の揮発性有機化合物含有排ガス処理装置の第1実施形態を模式的に示す図である。
【図2】この発明の揮発性有機化合物含有排ガス処理装置の第2実施形態を模式的に示す図である。
【図3】この発明の揮発性有機化合物含有排ガス処理装置の第3実施形態を模式的に示す図である。
【図4】この発明の揮発性有機化合物含有排ガス処理装置の第4実施形態を模式的に示す図である。
【図5】この発明の揮発性有機化合物含有排ガス処理装置の第5実施形態を模式的に示す図である。
【図6】この発明の揮発性有機化合物含有排ガス処理装置の第6実施形態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0096】
2 スクラバー部
4 スクラバー上部
5 スクラバー下部
6 給気ダクト
7 排気ファン
8 気流
9 散水配管
10 散水ノズル
11 水滴
12 充填材(商品名テラレット)
13 排気ダクト
14 気流
15 支持網
16 オーバーフロー管
17 マイクロナノバブル確認部
18 沈澱部
19 バルブ
20 排水管
21 水配管
22 溶存酸素調整部
23 散気管
24 気泡
25 空気配管
26 バブル流
27 第3気体せん断部
28 第2気体せん断部
29 第1気体せん断部
30 気液混合循環ポンプ
31 空気配管
32 ニードルバルブ
33 急速ろ過機送水ポンプ
34 吸込み配管
35、37〜40 バルブ
36 水配管
41、65 自動バルブ
42、66 空気抜き配管
43 急速ろ過機
44 溶存酸素リッチ活性炭吸着塔
45 支持網
46 分散配管
47 小孔
48 フランジ
49 活性炭
50 水配管
51 溶存酸素等測定部
52 カバー
53 溶存酸素計
54A,54B,57A,57B 信号線
55 溶存酸素調節計
56 ブロワー
58 ナノバブル発生機
59 全有機炭素計(TOC計)
60 全有機炭素調節計
61 栄養剤タンク
62 栄養剤定量ポンプ
63 逆洗配管
64 フィールド変換器
67 ろ材
68 ナノバブル発生機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物を含有する排ガスを洗浄水に接触させて、上記排ガス中の揮発性有機化合物を上記洗浄水に吸収,移行させるスクラバー部と、
上記スクラバー部から導入される洗浄水に酸素を溶存させると共にナノバブルを含有させる溶存酸素調整部と、
上記溶存酸素調整部から上記ナノバブルを含有した洗浄水が導入されると共にこの洗浄水が含有する揮発性有機化合物をナノバブルで活性化した好気性微生物で分解処理し、この分解処理した洗浄水を上記スクラバー部に返送する活性炭吸着塔と、
上記活性炭吸着塔で処理された洗浄水が導入されると共にこの洗浄水の溶存酸素濃度または全有機炭素濃度の少なくとも一方を測定する測定部と、
上記測定部が測定した上記洗浄水の溶存酸素濃度または全有機炭素濃度の少なくとも一方に基づいて、上記溶存酸素調整部の運転を制御する制御部と
を備えることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス処理装置において、
上記溶存酸素調整部は、ナノバブル発生機と、ブロワーと、このブロワーから空気が供給される散気管とを有し、
上記制御部は、上記測定部が測定した上記洗浄水の溶存酸素濃度または全有機炭素濃度の少なくとも一方に基づいて上記ブロワーの運転を制御することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排ガス処理装置において、
上記制御部は、
上記測定部が測定した上記洗浄水の溶存酸素濃度に基づき、上記活性炭吸着塔における洗浄水の溶存酸素濃度が2ppm以上になるように上記溶存酸素調整部の運転を制御することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の排ガス処理装置において、
上記溶存酸素調整部から上記ナノバブルを含有する洗浄水が導入されると共にこの洗浄水をろ過して上記活性炭吸着塔に導入する急速ろ過機を備えることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の排ガス処理装置において、
上記制御部は、
上記測定部が測定した上記洗浄水の溶存酸素濃度に基づき、上記活性炭吸着塔における洗浄水の溶存酸素濃度が5ppm以上になるように上記溶存酸素調整部の運転を制御することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の排ガス処理装置において、
上記活性炭吸着塔の前段かつ上記溶存酸素調整部の後段に設置されていて上記洗浄水に酸素ガスと水素ガスによるマイクロバブルを発生させるフィールド変換器を有することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の排ガス処理装置において、
上記活性炭吸着塔は、上記洗浄水を下から上に向かって流す上向流方式であることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の排ガス処理装置において、
上記活性炭吸着塔は、
この活性炭吸着塔内を上下に延在していて下方から上記洗浄水が導入されると共に複数の孔が上下方向に配置されている導入配管と、
上記導入配管の周囲に配置された活性炭とを有し、
上記導入配管の上記複数の孔から上記活性炭へ上記洗浄水を導入することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の排ガス処理装置において、
上記活性炭吸着塔は、自動バルブ付きの空気抜き配管と、この自動バルブを定期的に開として空気抜きを定期的に行なうための計時を行なうタイマーとを有することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項10】
請求項6に記載の排ガス処理装置において、
上記排ガスは、
水溶性成分を含有する排ガスだけでなく、非水溶性成分を含有する排ガスを含んでいることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項11】
請求項2から10のいずれか1つに記載の排ガス処理装置において、
上記制御部は、
上記測定部が測定した上記洗浄水の溶存酸素濃度または全有機炭素濃度の少なくとも一方に基づいて上記ブロワーの電動機の回転数を制御することを特徴とする排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−165992(P2009−165992A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8916(P2008−8916)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】