排ガス浄化触媒および排ガス浄化装置
【課題】より低い温度域でPMを燃焼することができ、かつ耐熱性に優れた排ガス浄化触媒を提供する。
【解決手段】内燃機関から排出される排出ガスに含まれるカーボンを主成分とする粒子状物質を浄化するための排ガス浄化触媒であって、酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持した。
【解決手段】内燃機関から排出される排出ガスに含まれるカーボンを主成分とする粒子状物質を浄化するための排ガス浄化触媒であって、酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒および排ガス浄化装置に係り、特に、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる粒子状物質(PM)を効率良く浄化、低減させる排ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる粒子状物質を除去するために、ディーゼル微粒子除去装置(DPF)を用いている。この粒子状物質は、主として燃料に由来して生成されるものであり、易燃性成分である有機成分(SOF)と、難燃性成分であるすす(soot)等から構成されている。このような粒子状成分の燃焼温度は、有機成分で200〜550℃、およびsootで550〜700℃と非常に高い温度を必要としている。有機成分はキャタライズドスートフィルタ(CSF)のように、DPFに貴金属系触媒を担持することで早期浄化を行っているが、sootに対する浄化性能は低い。このため、特許文献1および2に記載されているように、DPFの再生中のsootをセリアを有する触媒で酸化促進する技術が提案されている。
【0003】
しかしながら、DPFによりPMを捕集する技術では、排気ガスの圧損となるとともに、強制的にDPFのを行うために燃費のロスやPMの燃焼熱によるDPFの溶損や触媒の劣化を引き起こす。このため、sootを含めたPMをより低温で燃焼させることで自動車の排気系への負担を軽減する技術が望まれている。
【0004】
自動車の排気系への負担を軽減する方法として、再生頻度を低減することやsootの燃焼効率を向上させること、さらには、DPFを使用せずに触媒コンバータの触媒のみでPMを連続的に燃焼させることが考えられる。最近では、特許文献3および4に開示されているように、PMの低温燃焼触媒として貴金属や複合酸化物を用いることが提案されている。しかしながら、それら文献に開示された触媒では、sootの燃焼には効果はあるが、燃焼温度は450〜600℃と高温である。
【0005】
また、従来よりPMの燃焼には二酸化窒素(NO2)が高活性であることが知られている。特許文献5には、DPFの上流側にNO2生成触媒を配置することが提案され、特許文献6には、DPFにNO2生成触媒を塗布することが提案されるなど、通常ではPMが自己燃焼しない温度域でNO2を利用して燃焼除去する方法が提案されている。しかしながら、そのような方法にあっては、NOxが少ない条件においては、PMの燃焼を促進する効果が少なく、また、温度が高くなるとNOとNO2の濃度平衡がNO側へ偏るため、NO2によるPM燃焼促進効果は極めて小さくなる。
【0006】
特許文献7では、NO2によるPM燃焼効率をさらに高めるために、NO2生成触媒とPM燃焼触媒とを組み合わせることが提案されている。この技術は、NO2生成用の第1触媒と、転化されたNO2をPMと反応させる第2触媒とを、2層もしくは混合層の状態でコートすることにより、第1触媒で生成したNO2とPMとを第2触媒で反応させることにより、PMを効率的に除去するというものである。しかしながら、この技術では、第2触媒が第1触媒に被覆されているか混合されている状態でコートされているため、実際にはPMと第2触媒との接触確率が非常に低い状態になっている可能性があり、効果が低くなっているおそれがある。
【0007】
特許文献8では、遷移金属を含む遷移金属触媒層を下層として塗布し、この下層の表面に、貴金属を無機酸化物に担持させた貴金属触媒層を上層として塗布した3次元構造体が提案されている。しかしながら、この技術では、PMは固体−固体反応であるため上層とPMは接触できるが、下層触媒とPMとは接触できないため、下層触媒の性能を充分に発揮することができない。
【0008】
【特許文献1】特開2004−42021号公報(要約)
【特許文献2】特開2001−73748号公報(要約)
【特許文献3】特表2000−502598号公報(特許請求の範囲1)
【特許文献4】特開平8−173770号公報(要約)
【特許文献5】特開平1−318715号公報(要約)
【特許文献6】特開2003−293730号公報(要約)
【特許文献7】特開2001−263051号公報(要約)
【特許文献8】特開2001−157845号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス温度は200〜450℃と低いことことから、sootの燃焼は再生処理等を行わずに排気ガス温度域で連続燃焼させることは難しい。したがって、より低い温度域でsootを燃焼させる技術が強く要望されている。また、ディーゼルエンジンの排ガス浄化のための触媒については、今後の大排気量化および高出力化を想定すると、さらなる耐熱性が要求される。ディーゼル排ガスではガソリン排ガス雰囲気よりは触媒の耐熱性に対する要求は緩和されているものの、エンジン直下において高温の排気ガスをも浄化可能な性能まで求めると、従来の貴金属系触媒ではガソリン排気ガスの場合と同様に貴金属の凝集は生じる上、担体として用いられる酸化物等は構造破壊により性能が低下するため、触媒の耐熱性は充分と言うことはできない。一方、複合酸化物は、それ自体が高温焼成により構造を形成するために耐熱性能の問題はないが、いずれにしてもsootに対する低温燃焼の性能が必要である。したがって、本発明は、より低い温度域でPMを燃焼することができ、かつ耐熱性に優れた排ガス浄化触媒および排ガス浄化装置を提供することを目的としている。
【0010】
また、運転条件によっては、sootが全く燃焼しない条件もある。このようなときに蓄積したPMはDPFの目詰まりを引き起こし、PMの蓄積量の増加に伴いDPFによる圧力損失が増加するため、定期的に除去する必要がある。このため、外部エネルギーによりDPFの温度を600℃付近まで上昇させて燃焼除去することにより、DPFの再生を行っている。この再生処理により、燃費悪化やエミッション悪化、システムの複雑化など多くのデメリットが生じているのが現状である。このデメリットを低減するためには、再生時の温度を低下させること、あるいは、再生の時間を短くすることが必要である。したがって、本発明は、より低温でPMを燃焼させるとともに、高温でのPM燃焼速度が大きい排ガス浄化触媒および排ガス浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の排ガス浄化触媒は、内燃機関から排出される排出ガスに含まれるカーボンを主成分とする粒子状物質を浄化するための排ガス浄化触媒であって、酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持したことを特徴としている。
【0012】
また、本発明の排ガス浄化装置は、内燃機関から排出される排出ガスに含まれるカーボンを主成分とする粒子状物質を捕集可能なフィルタの内部に、上記排ガス浄化触媒と、排ガス中に含まれるNOをNO2に変換するNO2生成触媒が同時に担持されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、酸素放出能を有する複合酸化物にPMに対して活性の高いAgを担持することにより、複合酸化物の酸素放出能をより低温で引き出すことができるため、PMの燃焼をより低温下することができる。また、複合酸化物にAgを担持しているため、活性種であるAgをPMとの接触界面に配置することができ、PMとの反応性がより向上する。さらに、複合酸化物は耐熱性が高く、Agを複合酸化物に担持したことの相互作用効果により、Agの凝集および揮発を抑制することができるから、本発明の触媒は耐熱性の優れたものとなる。このように、本発明の排ガス浄化触媒は、より低い温度域でPMを燃焼することができ、かつ耐熱性に優れるから、今後さらなる大排気量、高出力エンジンを想定した高耐熱条件においても、排気レイアウトに左右されることなく床下は勿論のことエンジン直下においても使用可能である。また、PMを低温で燃焼することができるので、強制再生による燃費ロス、触媒劣化を抑制することができ、自動車の排気系への負担を軽減できるとともに、PMの捕集再生を行わない場合では、触媒によるPMの連続燃焼を行うことも可能となる。
【0014】
また、酸素放出能を有する複合酸化物はNO2吸収能も高いことが分かっており、NO2生成触媒と共存させることにより、生成したNO2が酸素放出能を有する複合酸化物表面に吸着されることにより、表面のNO2濃度が高く保たれるため、AgによるNO2とPMとの反応がより促進され、PM燃焼速度が向上する。また、Ag担持複合酸化物触媒とNO2生成触媒との2層コートとし、NO2生成触媒層内の気孔の大きさを平均1μm以上にすることにより、Agが担持された複合酸化物触媒へPMが接触することが容易となり、燃焼速度がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
複合酸化物は、ペロブスカイト型、スピネル型、ルチル型、デラフォサイト型、マグネトプランバイト型、イルメナイト型、およびフルオライト型から選択することができる。中でも耐熱性の観点からペロブスカイト型、フルオライト型が好ましい。また、複合酸化物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、遷移金属、貴金属の中から選択される2以上の元素の組み合わせからなり、原子の価数を変化させて酸素の吸収及び放出を行うものである。複合酸化物が酸素放出能を有するためには、多原子価を持つ元素が1種類は含まれている方が好ましい。遷移金属ではV,Cr,Mn,Fe,Co,Cu,Nb,Ta,Mo,W、希土類金属ではCe,Pr,Sm,Eu,Tb,Ybである。酸素放出は、構成原子の価数の変化に応じて電荷のバランスを保つために、複合酸化物の格子中の酸素が離脱する現象である。また、アルカリ金属であるNa,K,Cs、貴金属であるPt,Pd,Rh,Ir,Ruは酸化物dとして不安定なため、メタル化することにより酸素放出する特性を付与することができる。さらに、構造安定性の観点から価数変化がなくイオン半径の比較的大きなLa,Nd,Sc,Hf,Ca,Sr,Baが含まれることが好ましい。なお、耐熱性の優れた複合酸化物とは、ある程度高温の耐熱条件に対してPM燃焼特性が変化しないか変化が少ない複合酸化物であり、PM燃焼特性の変化は、実用排ガス温度域で充分にPMを燃焼可能な領域内での変化を言う。
【0016】
複合酸化物の調製方法については限定するものではないが、硝酸塩分解法、有機酸錯体重合法などを好適に用いることができる。また、複合酸化物にAgを担持させる方法は限定するものではないが、含浸法や析出沈殿法などを好適に用いることができる。
【0017】
次に、本発明の具体的な使用例について、例えば、ディーゼルエンジンの排気通路に排ガス中のPMを捕集するフィルタを設置した場合について説明する。フィルタは三次元網目構造を有し、充分なPM捕集機能を有する発泡金属や発泡セラミックス、金属やセラミックス繊維を重ね合わせた不織布、ウォールフロータイプのフィルタなど、どのような形態でも充分な効果を発揮するが、ウォールフロータイプのフィルタが捕集効率と、PMと触媒との接触性の観点から好ましい。図10及び図11にディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFと略す。)を模式的に示す。このDPFは、ハニカム構造をなしており、互いに平行に延在する多数の排気ガス流路2,3を備えている。DPFの下流端が栓4により閉塞された排気ガス流入路2と、上流端が栓4により閉塞された排気ガス流出路3とが前後左右に交互に設けられ、排気ガス流入路2と排気ガス流出路3とは薄肉の隔壁5を介して隔てられている。なお、図10においてハッチングを付した部分は下流端の栓4を示している。DPFは、そのフィルタ本体が炭化珪素やコージライトなどのような多孔質材料から形成されており、排気ガス流入路2内に流入した排気ガスは図11において矢印で示したように周囲の隔壁5を通って隣接する排気ガス流出路3内に流出する。すなわち、図12に示すように、隔壁5は排気ガス流入路2と排気ガス流出路3とを連通する微細な細孔6を有し、この細孔6を排気ガスが通る。上記DPFのフィルタ本体の排気ガス流路(排気ガス流入路2、排気ガス流出路3及ぴ細孔)の壁面には触媒コート層7が形成されている。このコート層7は、例えぱ実施例の触媒粉を、水及びバインダと混合してスラリーとし、このスラリーをフィルタ本体にウォッシュコートし、焼成することによって形成されている。
【0018】
次に、本発明の排ガス浄化装置の実施形態について説明する。図14は実施形態のDPFのフィルタ10の断面構造を示すものである。図14に示すように、フィルタ10は、フィルタ基材11の表面に前述のAg担持複合酸化物層12をコートし、その上にNO2生成触媒層13をコートしたものである。Ag担持複合酸化物層12は、高比表面積のアルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、チタニア、セリアなどにPt,Pd,Rh等の貴金属を担持させた触媒により構成されている。排ガス中の窒素酸化物の殆どがNOで排出されるため、フィルタ基材11の表面にAgを担持した酸素放出能を有する複合酸化物を塗布し、その上層にNO2生成触媒層13を重ねて塗布することにより、下層のAg担持複合酸化物層12にNO2を供給することができる。
【0019】
ただし、Ag担持複合酸化物層12の上層にNO2生成触媒層13を均一に塗布すると、PMがAg担持複合酸化物層12に接触することができなくなるので、NO2生成触媒層13内に1μm以上の大きさの気孔を設ける。これにより、PMをAg担持複合酸化物層12に接触させることができ、PMを効率よく燃焼させることができる。図15は、各種条件における排ガス中のPMの粒子径分布を示すものである。この図に示すように、PMの大半が1μm以下に分布していることから、気孔の平均の大きさは1μm以上であることが望ましい。空隙を生成する方法としては以下の方法がある。一つは、NO2生成触媒の平均粒子径を10μm以上にすることである。平均粒子径が10μm以上であれば、粒子間に生成される空隙の平均粒径は1μm以上となる。また、NO2生成触媒をコートする際、スラリー中に炭素を主成分とする造孔剤を添加し、コートした後、高温熱処理することにより焼き飛ばし、気孔を生成する方法も有効である。造孔剤としてはでんぷん、カーボンブラック、樹脂などを使用することができる。
【0020】
また、本発明者等の検討によれば、高い温度(600℃付近)になる程2層化の効果が大きくなることが判明している。すなわち、特許文献6のようなNO2生成触媒のみの構成であると、600℃付近の温度になると平衡の関係でNO2濃度が極端に低くなるため、NO2とPMの反応は進行し難くなるが、NO2生成触媒とPM燃焼触媒の2層構造を採用することにより、生成したNO2がNOに戻る前にPM燃焼触媒の酸素放出能を有する複合酸化物に吸着されることにより、触媒近傍にNO2が多く存在する状態となってPM燃焼が進行し易くなる。
【0021】
触媒の塗布量は、下層のAg担持複合酸化物層12ではフィルタ1L当たり20〜60gがよい。20g以下であると、フィルタの気孔内部の表面を充分に覆うことができず、PMとの接触性が悪くなる。また、塗布量が60gを超えると、気孔の目詰まりによる圧力損失が大きくなる。また、上層のNO2生成触媒層13では、フィルタ1L当たり10〜30gがよい。塗布量が10g以下であると、NO2生成能力が不充分となり、塗布量が30gを超えると、NO2生成触媒層13の厚さが厚くなってPMがPM燃焼触媒に接触し難くなる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明の作用および効果さらに具体的に説明する。
[試料の作製]
以下の容量で実施例17および比較例1〜19の触媒試料を作製した。
<実施例1>
市販の特級試薬である硝酸ランタン、硝酸マンガンを0.01molずつと蒸留水を適量秤量し混合溶液Aとした。次に、炭酸ナトリウムを3.6g、蒸留水を適量秤量し混合溶液Bとした。混合溶液Bを60℃、300rpmで回転させながら混合し、そこに混合溶液Aを7ml/minで滴下した(逆共沈法)。沈殿物をpHが中性になるまで蒸留水で濾過洗浄し、200℃で2時間乾燥し、その後に350℃で3時間乾燥固化し。これを整粒し、2μm以下とした後、800℃で10時間焼成を行ったものを触媒Aとした。触媒Aを9g、硝酸銀を1.57gおよび蒸留水を適量秤量して混合溶液Cとした。混合溶液Cをエバポレータで蒸発乾固したものを200℃で2時間乾燥した後、600℃で2時間焼成した(含浸法)。これを整粒し、2μm以下としたものを触媒Bとした。この触媒B9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを実施例1とした。
【0023】
<実施例2>
市販の特級試薬である硝酸コバルトを0.01molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Dとした。次に、酸化タンタル0.01mol、炭酸ナトリウムを1.3gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Eとした。混合溶液Dおよび混合溶液Eを上記と同様に逆共沈法にて調製し、触媒Cとした。触媒Cを9.9g、硝酸銀を0.16gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Dとした。この触媒D9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを実施例2とした。
【0024】
<実施例3>
市販の特級試薬である硝酸コバルトを0.01mol、ジニトロニアンミン硝酸白金を0.01molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Fとする。次に、炭酸ナトリウムを2.5gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Gとした。混合溶液Fおよび混合溶液Gを上記と同様に逆共沈法にて沈殿物を調製し、触媒Eとした。触媒Eを9.9g、硝酸銀を0.16gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Fとした。この触媒F9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを実施例3とした。
【0025】
<実施例4>
市販の特級試薬である硝酸コバルトを0.02mol、硝酸亜鉛を0.01molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Hとした。次に、炭酸ナトリウムを3.8gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Iとした。混合溶液Hおよび混合溶液Iを上記と同様に逆共沈法にて調製し、触媒Gとした。触媒Gを9.9g、硝酸銀を0.16gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Hとした。
この触媒H9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを実施例4とした。
【0026】
<実施例5>
市販の特級試薬であるタングステン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸マンガンをそれぞれ0.0067molずつおよび蒸留水を適量秤量し、混合溶液Jとした。次に、炭酸ナトリウムを3.8g、蒸留水を適量秤量し混合溶液Kとした。混合溶液Jおよび混合溶液Kを上記と同様に逆共沈法にて調製し、触媒Iとした。触蝶Iを9.9g、硝酸銀を0.16gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触蝶Jとした。この触媒J9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを実施例5とした。
【0027】
<実施例5>
上記触媒Bを800℃×6Hrで大気中でエージングをしたものを触媒Kとした。この触媒K9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを実施例5とした。
【0028】
<実施例6>
上記触媒Bを850℃×6Hrで大気中でエージングをしたものを触媒Lとした。この触媒L9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを実施例6とした。
【0029】
<比較例1>
ディーゼル発電機より収集したPM粉末を比較例1の試料とした。
【0030】
<比較例2>
市販の特級試薬であるジニトロジアミン白金硝酸溶液を1.51g、Al2O3を9.92gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Lとした。これらをエバポレータにて蒸発乾固させ、Al2O3に銀を担持した。200℃で乾燥後、600℃で2時間焼成し、これを触媒Mとした。この触媒M9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例2とした。
【0031】
<比較例3>
上記触媒A9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例3とした。
【0032】
<比較例4>
市販の特級試薬の酸化銀(触媒N)9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例4とした。
【0033】
<比較例5>
市販の特級試薬である硝酸ランタンを0.01mol、硝酸アルミニウムを0.01molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Mとした。次に、炭酸ナトリウムを3.4gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Nとした。混合溶液Mおよび混合溶液Nを上記と同様に逆共沈法にて調製し、触媒Oとした。触媒Oを9g、硝酸銀を1.57gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Pとした。この触媒P9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例5とした。
【0034】
<比較例6>
市販の特級試薬である硝酸ランタンを0.02molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Oとした。次に、炭酸ナトリウムを2.1gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Pとした。混合溶液Oおよび混合溶液Pを上記と同様に逆共沈法にて調製し、触媒Qとした。触媒Qを9g、硝酸銀を1.57gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Rとした。この触媒R9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例6とした。
【0035】
<比較例7>
市販の特級試薬である硝酸マンガンを0.02molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Qとした。次に、炭酸ナトリウムを2.1gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Rとした。混合溶液Qおよび混合溶液Rを上記と同様に逆共沈法にて調製し、触媒Sとした。触媒Sを9g、硝酸銀を1.57gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Tとした。この触媒T9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例7とした。
【0036】
<比較例8>
上記触媒Qを1gおよび触媒Sを1gを乳鉢乳棒にて粉砕混合し、800℃、10Hrで焼成し触媒Uとした。触媒Uを9g、硝酸銀を1.57gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Vとした。この触媒V9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例8とした。
【0037】
<比較例9>
上記触媒Aを9g、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液を19.9gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Wとした。この触媒W9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例9とした。
【0038】
<比較例10>
上記触媒Aを9g、硝酸パラジウムを2.5gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Xとした。この触媒X9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例10とした。
【0039】
<比較例11>
市販の特級試薬である硝酸銀、硝酸ランタン、硝酸マンガンをそれぞれ0.04mol、0.01mol、0.05molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Sとした。混合溶液Sを250℃,300回転で混合しながら蒸発乾固し、その後200℃で2時間乾燥した後、350℃で3時間仮焼し、その後、粒径が2μm以下となるように整粒し、800℃で1O時間焼成を行ったものを触媒Yとした。この触媒Y9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例11とした。
【0040】
<比較例12>
上記触媒Aを9g、上記触媒Nを1g秤量し、乳鉢乳棒にて物理混合した。これを800℃で10時間焼成し固相反応させたものを触媒Zとした。この触媒Z9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例12とした。
【0041】
<比較例13>
上記触媒C9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例13とした。
【0042】
<比較例14>
上記触媒E9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例14とした。
【0043】
<比較例15>
上記触媒G9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例15とした。
【0044】
<比較例16>
上記触媒I9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例16とした。
【0045】
<比較例17>
市販の特級試薬である硝酸セリウムを0.02molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Tとした。次に、炭酸ナトリウム3.2gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Uとする。混合溶液Tおよび溶液Uを上記と同様に逆共沈法にて調製し、触媒AAとした。触媒AAを9.0g、硝酸銀を1.57gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒ABとした。この触媒AB9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例17とした。
【0046】
<比較例18>
上記触媒ABを800℃で6時間大気中でエージングをしたものを触媒ACとした。この触媒AC9.5mgを0.5mgのPMと混合乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕し、タイトコンタクト化したものを比較例18とした。
【0047】
<比較例19>
上記触媒ABを850℃×6Hrで大気中でエージングをしたものを触媒ADとした。この触媒AD9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例19とした。
【0048】
以上の実施例1〜7および比較例1〜19の試料の成分、担体の種類、担体に担持されている金属の種類、および担体の結晶構造を表1に示す。また、以上の試料に対してPMの燃焼試験を実施し、PMの発熱特性(DTA)を調査した。燃焼試験では、セイコーインスツルメンツ社製、EXSTER6000TG/DTAを使用し、10mgの試料を試験装置に装填し、乾燥空気を空間速度(SV)が60000h−1となる流量で供給し、かつ乾燥空気の温度を20℃/minで昇温させた。各試料の発熱特性を図1〜図8に示すとともに、PMの燃焼における発熱量がピークになる際の温度を表1に併記する。
【0049】
【表1】
【0050】
図1にPMのみからなる試料(比較例1)、0.76wt%Pt/Al2O3+PM(5wt%)からなる試料(比較例2)、およびペロブスカイト型複合酸化物のLaMnO3+PM(5wt%)(比較例3)の燃焼特性を示す。PMのみからなる試料の燃焼ピーク温度は668℃である。これに対し、0.76wt%Pt/Al2O3+PM(5wt%)(比較例2)のような貴金属系材料では、最初のピークは247℃、2回目のピークは561℃とピークが二つに分かれる。それぞれの燃焼ピークは発生ガス分析から最初のピークが有機成分、2回目のピークがsootに由来することが判っている。このことから、貴金属系材料は、有機成分の燃焼には効果があるが、sootに関してはそれほど低温で燃焼できないことが判る。これらのメカニズムに関しては、HCガスと同様に活性種表面での酸化反応であるためsootより熱的に不安定な有機成分は早期に活性種への解離吸着が起こりやすいことが推定される。また、これらPtやPd等の貴金属系触媒の場合、性能は貴金属量の影響をほとんど受けない。
【0051】
一方、LaMnO3+PM(5wt%)(比較例3)のような遷移金属系複合酸化物では、貴金属系材料のように燃焼ピークの分離をほとんど起こさない。このような複合酸化物においては有機成分は早期燃焼せず、sootとともに燃焼する。また、複合酸化物の場合は貴金属系材料とは異なり、sootの燃焼は比較的低温で可能である。このため遷移金属系複合酸化物はsoot燃焼に対して効果的といえる。これらのメカニズムに関しては、複合酸化物の価数変化に伴う酸素放出能に依存していると考えられるため、酸素放出しない低温側での有機成分の燃焼はなく、燃焼がsootと同時に起こる。つまり酸素放出能が高いほど低温でPMを燃焼することが可能となる。
【0052】
ところで、現状の内燃機関から排出される排気ガス温度は200℃〜450℃と低いことから、有機成分は貴金属系材料を用いることで排ガス温度域内での燃焼は十分に可能であるが、sootの燃焼は上記触媒材料などによりいくらか低温で燃焼可能であり、効率を多少高めることはできるが、やはり再生処理等を行わずして排ガス温度域で連続燃焼することは難しい。
【0053】
この点、本発明は、酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持することにより、複合酸化物の酸素放出能を向上させることができ、PM燃焼特性を向上させることに成功したものである。図2に10wt%Ag/LaMnO3+PM(5wt%)(実施例1)の燃焼特性を示す。図2から判るように、実施例1では、比較例3と比べPM燃焼特性が低温化していることがわかる。表1に示すように、PM燃焼ピーク温度は、454℃から417℃へと大幅に低温化している。これは、酸素放出能を持つ複合酸化物にAgを担持したことによる効果と考えられる。
【0054】
表1に示す比較例4のPM燃焼ピーク値から判るように、Ag2Oは、PMに対して非常に高活性である。Ag2Oは還元剤としてのPMと接触することで酸化反応を起こすと考えられる。しかしながら、Ag2Oは揮発する特性を有しているため耐熱性の観点では単独で用いることができない。
【0055】
本発明のように複合酸化物にAgを担持することにより、AgはAgもしくはAg2Oとして存在すると考えられる。反応により還元されたAgは複合酸化物に担持されていることにより効果的に作用する。つまり、還元されたAgの揮発を抑制しつつ、Agは再び活性化するために複合酸化物の価数を変化させ、強制的に酸素を取り込もうとする。これらを繰り返すことにより、触媒全休の酸素放出能を高め、その結果、PM燃焼温度を低温化することができると推察される。言い換えれば、酸素放出能を有する複合酸化物に、PMに対して活性の高いAgを担持することにより、複合酸化物の酸素放出能をより低温で引き出すことが可能となったといえる。
【0056】
Ag担持複合酸化物のメカニズムによれば、酸素過剰雰囲気(リッチ状態)においては酸素を吸収保持し、酸素濃度が低下すると(リーン状態)、酸素を放出する性質をもつ。排気ガス中に過剰酸素が含まれているときには排気ガス中の含炭素浮遊微粒子を捕集し、排気ガス中の酸素濃度が低下、あるいは触媒上に含炭素浮遊微粒子が堆積して周囲の酸素濃度が低下すると、活性酸素を放出して触媒上の含炭素浮遊微粒子を燃焼させることが可能である。
【0057】
ここで、酸素放出能がない複合酸化物(比較例5)、酸素放出能を有する単独酸化物およびその物理混合酸化物(比較例6〜8)についてそれぞれAgを担持した場合の性能を図3により比較する。比較例5はPM燃焼ピーク値が521℃と性能は悪く、この性能はAgのみによると考えられる。比較例6,7もそれぞれPM燃焼ピーク値が468℃、435℃と実施例1と比べて性能が劣るが、これは担体である単独酸化物の酸素放出能が低いためと考えられ、さらにこれらを物理混合した比較例8はPM燃焼ピーク値が445℃であり、それほど燃焼温度を低温化することができていない。
【0058】
ディーゼル排気ガス温度域でのsootの燃焼を考えた場合、酸素放出能を持たない複合酸化物、酸素放出能の低い単独酸化物および単独酸化物の物理的な組み合わせでは期待する性能を得ることができない。よって酸素放出能を有する複合酸化物を用いることが重要と考えられる。
【0059】
ここで、酸素放出能を有する酸化物の定義について具体的に説明する。まず、He雰囲気での酸素の昇温脱離試験(TPD)と水素による酸素の昇温還元試験(TPR)において、脱離開始温度あるいは脱離がピークに達する温度を脱離し易さとし、ピーク面積を放出量とする。これら脱離し易さおよび放出量を放出能とし、特に、複合酸化物などのような酸化物が雰囲気の変化によって価数変化を引き起こし、酸化物中の酸素が吸放出されるものを酸素放出能を有する酸素放出能を有する複合酸化物と定義する。
【0060】
図13に、La2O3、MnO2、LaMnO3、およびLaAlO3の酸素放出能をO2−TPDで測定した結果を示す。図13において横軸は温度、縦軸は酸素離脱量であり、He雰囲気中での熱的な酸素の離脱し易さを示している。La2O3は360℃付近で酸素を放出するが、ピーク面積は小さく、酸素放出量は少ない。一方、MnO2は400℃付近から酸素放出を開始し、そのまま高温になるに従って放出量が多くなる。また、これらの複合酸化物であるペロブスカイト構造のLaMnO3では、酸素放出開始温度がさらに低下し、250℃付近からとなる。これらに対してLaAlO3では、全温度域において酸素放出能を持たないことが判る。
【0061】
このように、各酸化物、複合酸化物は酸素放出能を持つものと持たないものがあり、また、それぞれの酸素放出能は異なる。ここで、MnO2は600℃付近から酸素放出能が大幅に向上しているのに対して、La2O3は600℃以上で酸素放出能を持たない。これから比較例6,7の結果を考慮すると、PM燃焼特性に600℃以上の酸素放出能が寄与していないことが推測される。これは、触媒における酸素の放出量よりは、低温での酸素の離脱し易さ、つまり、酸素脱離エネルギーがPM燃焼において重要なファクターとなっているからと推測される。以上から、He雰囲気での昇温脱離試験(TPD)において、600℃以下で酸素脱離開始するものを酸素放出能を有する、と定義することができる。
【0062】
次に、酸素放出能を有する複合酸化物にAg以外の貴金属を担持した場合(特許文献4)について検討する。図4はLaMnO3にPtおよびPdを担持した場合(比較例9,10)の燃焼特性を示すものである。図4から、特許文献4に記載のものでは、実施例1と比べ性能が劣ることが判る。
【0063】
PM活性において、貴金属元素ではAgは特異的に性能が高いと言える。複合酸化物との相互作用を考えた場合、比較例3からの性能向上効果という観点では、より複合酸化物の価数変化を引き出すことが可能なのはAgであると考えられるが、メカニズムに関しての詳細は不明である。
【0064】
次に、複合酸化物へのAgの添加方法を変えた場合について述べる。比較例11は複合酸化物にAgを固溶した場合(特許文献1)であり、比較例12は複合酸化物にAgを固相反応させた場合(特許文献3)である。その結果を図5に示す。図5から、比較例11および12は、実施例1と比べて性能が悪いことがわかる。まず、比較例11に関しては、同じAg量(10wt%)であっても、LaMnO3の結晶構造にAgが固溶しているために活性種が埋没し、還元剤となるPMと接触することができずに上記したようなAgの価数変化を引き出すことができない。このため、実施例1のようにAgを担持した場合と比べ性能が劣ると考えられる。比較例12に関しては、耐熱性がないため活性種が揮発してしまい、LaMnO3のみの性能となっていると考えられる。よって実施例1のように、LaMnO3の最表面に活性種を露出しつつ、複合酸化物との相互作用により酸素放出能を低温化する必要があり、さらにAgの擬集および揮発を抑制するため、複合酸化物へのAgの添加は、担持でなくてはならないと考えられる。
【0065】
次に、ペロブスカイト構造のほかにも酸素放出能を持つ複合酸化物でのAg担持効果を確認した。比較例13はルチル型複合酸化物、比較例14はデラフォサイト型複合酸化物、比較例15はスピネル型複合酸化物、比較例16は単純な元素を混合しただけの複合酸化物である。これらにAgを1wt%担持したものが実施例2〜5となるが、その結果を図6および表1に示す。図6及び表1から、どの複合酸化物でもAgを担持したことによりPM燃焼ピーク温度が低温化していることが判る。よって、酸素放出能をもつあらゆる結晶構造、あらゆる元素で構成された複合酸化物にAgを担持することによりPM燃焼特性を向上させることができると言える。
【0066】
次に、Ag担持複合酸化物における耐熱性の観点でエージング処理(大気中)を行った結果について図7および図8を参照して説明する。図7において、比較例17および19は、CeO2にAgを担持した場合のエージング処理前(特許文献2)と850℃のエージング処理後の結果を示すものである。CeO2は酸素放出能では非常に優れた酸化物であることが広く知られているため、酸素放出能の高いCeO2へのAg担持も効果があると考えられる。比較例17では、エージング前はPM燃焼ピーク温度が388℃と良好な性能を示している。しかし、比較例17にエージングを施した比較例19では、PM燃焼ピーク温度が445℃と大幅に劣化している。これはベース酸化物であるCeO2の熱的構造破壊およびAg凝集および揮発によるものと推測される。これに対し、図8に実施例1と実施例7を対比して示すように、10wt%Ag/LaMnO3のエージング前後でのPM燃焼特性は変化しないことがわかる。これは複合酸化物の構造形成温度が600℃〜1000℃の高温であるためにエージング温度域で構造破壊が起きない上、複合酸化物とAgの相互作用によりAgの凝集および揮発が起こりにくいためと推察される。
【0067】
図9は、Ag/CeO2およびAg/LaMnO3のエージング前、800℃および850℃のエージング処理後の燃焼特性(実施例1,6,7、比較例17,18,19)の比較を示す。図9において横軸は大気中でのエージング処理温度であり、各例のエージング前における処理温度は、試料を調整した際の焼成温度を用いた。図9から、エージング条件によってはAg/Ce02は性能が劣化して実用排ガス温度域で十分にPMを燃焼できなくなることが判る。よって、耐熱性を有する複合酸化物へのAg担持でなければ期待する性能を発揮することができない。
【0068】
このように、本発明は、今後さらなる大排気量/高出力ENGを想定した場合の高耐熱条件においても、排気レイアウトに左右されることなく、自動車の床下はもちろんエンジン直下での使用にも耐えうるものである。
【0069】
<実施例8>
(触媒粉末の調整)
実施例1で用いた触媒Bの粉末を調整し、酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持した触媒を必要量調整した。この場合の最終焼成温度は700℃とした。
【0070】
所定量の硝酸パラジウムと硝酸白金を含有する水溶液を調整した。この水溶液とγアルミナとをナスフラスコに入れ、ロータリーエバポレータにて含浸担持を行った。得られた生成物を200℃で1時間乾燥した後、700℃で2時間の焼成を行い、NO2生成触媒粉末としてのPt/Al2O3を調整した。
【0071】
(DPFへの担持)
上記Ag担持複合酸化物粉末、水、SiO2ゾル、アルミナボールを容器に入れ、ボールミルにて湿式粉砕を一晩行い、触媒スラリーとした。この触媒スラリーにDPFを浸漬した後に引き上げ、エアーブローで余剰スラリーを除去した。次いで、DPFを200℃で2時間乾燥し、DPFの重量を測定を行った。触媒がDPFに所定量担持されるまでこの操作を繰り返した後、700℃で2時間の焼成を行った。こうして、DPFの表面の下層にAg担持複合酸化物層を形成した。
【0072】
上記NO2生成触媒粉末、水、SiO2ゾル、アルミナボール、および造孔剤として粒子径が1μmのでんぷんを容器に入れ、ボールミルにて湿式粉砕を一晩行い、触媒スラリーとした。この触媒スラリーにDPFを浸漬した後に引き上げ、エアーブローで余剰スラリーを除去した。次いで、DPFを200℃で2時間乾燥し、DPFの重量を測定を行った。触媒がDPFに所定量担持されるまでこの操作を繰り返した後、700℃で2時間の焼成を行った。こうして、DPFの表面の上層にNO2生成触媒層を形成した。
【0073】
(酸化触媒のハニカム担持)
表2に示す酸化物触媒粉末、水、SiO2ゾル、アルミナボールを容器に入れ、ボールミルにて湿式粉砕を一晩行い、触媒スラリーとした。この触媒スラリーにコージェライトハニカムを浸漬した後に引き上げ、エアーブローで余剰スラリーを除去した。次いで、コージェライトハニカムを200℃で2時間乾燥し、コージェライトハニカムの重量を測定を行った。触媒がコージェライトハニカムに所定量担持されるまでこの操作を繰り返した後、700℃で2時間の焼成を行った。
【0074】
【表2】
【0075】
(コンバータ作製)
図16に本実施例で作製したコンバータ20を示す。このコンバータ20には、排ガスの流れの上流側から、上記のようにして酸化触媒を担持したコージェライトハニカム21と、上記のようにして下層にAg担持複合酸化物層、上層にNO2生成触媒層を形成したDPF22が設けられている。この実施例では、コージェライトハニカム21の容量は1L、DPF22の容量は2Lとした。
【0076】
<比較例20>
DPFにNO2生成触媒層を形成しなかった以外は実施例8と同じ条件で図16に示すコンバータ20を作製した。
【0077】
<比較例21>
DPFにAg担持複合酸化物層を形成せずにDPFに直接NO2生成触媒層を形成した以外は実施例8と同じ条件で図16に示すコンバータ20を作製した。
【0078】
<比較例22>
DPFにNO2生成触媒層を形成する際に造孔剤を用いなかった以外は実施例8と同じ条件で図16に示すコンバータ20を作製した。
【0079】
<比較例23>
DPFに触媒を担持させなかった以外は実施例8と同じ条件で図16に示すコンバータ20を作製した。
【0080】
(評価方法)
上記のようにして作製したコンバータ20を用い、実用条件に近い評価が可能なエンジンベンチテストを実施した。図17は、テストレイアウトを示すもので、2.2Lのディーゼルエンジン30の直下の位置にコンバータ20を配置し、運転試験を行った。
【0081】
(低温連続燃焼性能)
コージェライトハニカム21の直前の排ガス温度が350℃程度となる条件で8時間ディーゼルエンジン30の運転を続けた。運転終了後のコンバータ20の重量増加量をPM堆積量とした。その結果を図18に示す。図18に示すとおり、実施例8ではPM堆積量が最も少なかったことから、運転中に排出されるPMを最も良く燃焼除去したことが分かる。
【0082】
(強制再生性能)
DPF22の直前の排ガス温度が150℃程度となる条件でディーゼルエンジン30の運転を続けてPMを堆積させた。次いで、DPF22の直前の排ガス温度が600℃程度となる条件でディーゼルエンジン30の運転を行い、コンバータ20の強制再生を行った。強制再生では、ポストインジェクションにより燃料添加を行い、酸化触媒を担持したコージェライトハニカム21での燃焼反応熱でDPF22を目的温度まで上昇させ、所定時間毎に停止して重量測定を行った。そして、PMの燃焼が終了するまでの時間を測定し、その結果を図19に示した。図19に示すとおり、600℃における強制再生では、再生終了までに要する時間が実施例8で格段に短く、再生時の燃焼速度が最も速いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の排ガス浄化触媒および排ガス浄化装置は、排ガスに含まれるPMを低温で浄化することが可能であるとともにPMの燃焼速度が速く、今後さらなる大排気量/高出力ENGを想定したディーゼルエンジンにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との他の関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との他の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との他の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との他の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との他の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との他の関係を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との他の関係を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例における加熱温度(耐熱温度)とPM燃焼ピーク時の温度との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の実施形態における触媒コンバータを示す正面図である。
【図11】本発明の実施形態における触媒コンバータを示す側断面図である。
【図12】本発明の実施形態における触媒コンバータを示す一部拡大側断面図である。
【図13】本発明における酸素放出能を説明するためのグラフである。
【図14】本発明の実施例におけるDPFの一部を示す断面図である。
【図15】排ガス中のPMの粒度分布を示すグラフである。
【図16】実施例で作製したコンバータを示す側面図である。
【図17】実施例におけるテストレイアウトを示す側面図である。
【図18】実施例における低温燃焼でのPMの堆積量を示すグラフである。
【図19】実施例における強制再生での再生時間を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒および排ガス浄化装置に係り、特に、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる粒子状物質(PM)を効率良く浄化、低減させる排ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる粒子状物質を除去するために、ディーゼル微粒子除去装置(DPF)を用いている。この粒子状物質は、主として燃料に由来して生成されるものであり、易燃性成分である有機成分(SOF)と、難燃性成分であるすす(soot)等から構成されている。このような粒子状成分の燃焼温度は、有機成分で200〜550℃、およびsootで550〜700℃と非常に高い温度を必要としている。有機成分はキャタライズドスートフィルタ(CSF)のように、DPFに貴金属系触媒を担持することで早期浄化を行っているが、sootに対する浄化性能は低い。このため、特許文献1および2に記載されているように、DPFの再生中のsootをセリアを有する触媒で酸化促進する技術が提案されている。
【0003】
しかしながら、DPFによりPMを捕集する技術では、排気ガスの圧損となるとともに、強制的にDPFのを行うために燃費のロスやPMの燃焼熱によるDPFの溶損や触媒の劣化を引き起こす。このため、sootを含めたPMをより低温で燃焼させることで自動車の排気系への負担を軽減する技術が望まれている。
【0004】
自動車の排気系への負担を軽減する方法として、再生頻度を低減することやsootの燃焼効率を向上させること、さらには、DPFを使用せずに触媒コンバータの触媒のみでPMを連続的に燃焼させることが考えられる。最近では、特許文献3および4に開示されているように、PMの低温燃焼触媒として貴金属や複合酸化物を用いることが提案されている。しかしながら、それら文献に開示された触媒では、sootの燃焼には効果はあるが、燃焼温度は450〜600℃と高温である。
【0005】
また、従来よりPMの燃焼には二酸化窒素(NO2)が高活性であることが知られている。特許文献5には、DPFの上流側にNO2生成触媒を配置することが提案され、特許文献6には、DPFにNO2生成触媒を塗布することが提案されるなど、通常ではPMが自己燃焼しない温度域でNO2を利用して燃焼除去する方法が提案されている。しかしながら、そのような方法にあっては、NOxが少ない条件においては、PMの燃焼を促進する効果が少なく、また、温度が高くなるとNOとNO2の濃度平衡がNO側へ偏るため、NO2によるPM燃焼促進効果は極めて小さくなる。
【0006】
特許文献7では、NO2によるPM燃焼効率をさらに高めるために、NO2生成触媒とPM燃焼触媒とを組み合わせることが提案されている。この技術は、NO2生成用の第1触媒と、転化されたNO2をPMと反応させる第2触媒とを、2層もしくは混合層の状態でコートすることにより、第1触媒で生成したNO2とPMとを第2触媒で反応させることにより、PMを効率的に除去するというものである。しかしながら、この技術では、第2触媒が第1触媒に被覆されているか混合されている状態でコートされているため、実際にはPMと第2触媒との接触確率が非常に低い状態になっている可能性があり、効果が低くなっているおそれがある。
【0007】
特許文献8では、遷移金属を含む遷移金属触媒層を下層として塗布し、この下層の表面に、貴金属を無機酸化物に担持させた貴金属触媒層を上層として塗布した3次元構造体が提案されている。しかしながら、この技術では、PMは固体−固体反応であるため上層とPMは接触できるが、下層触媒とPMとは接触できないため、下層触媒の性能を充分に発揮することができない。
【0008】
【特許文献1】特開2004−42021号公報(要約)
【特許文献2】特開2001−73748号公報(要約)
【特許文献3】特表2000−502598号公報(特許請求の範囲1)
【特許文献4】特開平8−173770号公報(要約)
【特許文献5】特開平1−318715号公報(要約)
【特許文献6】特開2003−293730号公報(要約)
【特許文献7】特開2001−263051号公報(要約)
【特許文献8】特開2001−157845号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス温度は200〜450℃と低いことことから、sootの燃焼は再生処理等を行わずに排気ガス温度域で連続燃焼させることは難しい。したがって、より低い温度域でsootを燃焼させる技術が強く要望されている。また、ディーゼルエンジンの排ガス浄化のための触媒については、今後の大排気量化および高出力化を想定すると、さらなる耐熱性が要求される。ディーゼル排ガスではガソリン排ガス雰囲気よりは触媒の耐熱性に対する要求は緩和されているものの、エンジン直下において高温の排気ガスをも浄化可能な性能まで求めると、従来の貴金属系触媒ではガソリン排気ガスの場合と同様に貴金属の凝集は生じる上、担体として用いられる酸化物等は構造破壊により性能が低下するため、触媒の耐熱性は充分と言うことはできない。一方、複合酸化物は、それ自体が高温焼成により構造を形成するために耐熱性能の問題はないが、いずれにしてもsootに対する低温燃焼の性能が必要である。したがって、本発明は、より低い温度域でPMを燃焼することができ、かつ耐熱性に優れた排ガス浄化触媒および排ガス浄化装置を提供することを目的としている。
【0010】
また、運転条件によっては、sootが全く燃焼しない条件もある。このようなときに蓄積したPMはDPFの目詰まりを引き起こし、PMの蓄積量の増加に伴いDPFによる圧力損失が増加するため、定期的に除去する必要がある。このため、外部エネルギーによりDPFの温度を600℃付近まで上昇させて燃焼除去することにより、DPFの再生を行っている。この再生処理により、燃費悪化やエミッション悪化、システムの複雑化など多くのデメリットが生じているのが現状である。このデメリットを低減するためには、再生時の温度を低下させること、あるいは、再生の時間を短くすることが必要である。したがって、本発明は、より低温でPMを燃焼させるとともに、高温でのPM燃焼速度が大きい排ガス浄化触媒および排ガス浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の排ガス浄化触媒は、内燃機関から排出される排出ガスに含まれるカーボンを主成分とする粒子状物質を浄化するための排ガス浄化触媒であって、酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持したことを特徴としている。
【0012】
また、本発明の排ガス浄化装置は、内燃機関から排出される排出ガスに含まれるカーボンを主成分とする粒子状物質を捕集可能なフィルタの内部に、上記排ガス浄化触媒と、排ガス中に含まれるNOをNO2に変換するNO2生成触媒が同時に担持されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、酸素放出能を有する複合酸化物にPMに対して活性の高いAgを担持することにより、複合酸化物の酸素放出能をより低温で引き出すことができるため、PMの燃焼をより低温下することができる。また、複合酸化物にAgを担持しているため、活性種であるAgをPMとの接触界面に配置することができ、PMとの反応性がより向上する。さらに、複合酸化物は耐熱性が高く、Agを複合酸化物に担持したことの相互作用効果により、Agの凝集および揮発を抑制することができるから、本発明の触媒は耐熱性の優れたものとなる。このように、本発明の排ガス浄化触媒は、より低い温度域でPMを燃焼することができ、かつ耐熱性に優れるから、今後さらなる大排気量、高出力エンジンを想定した高耐熱条件においても、排気レイアウトに左右されることなく床下は勿論のことエンジン直下においても使用可能である。また、PMを低温で燃焼することができるので、強制再生による燃費ロス、触媒劣化を抑制することができ、自動車の排気系への負担を軽減できるとともに、PMの捕集再生を行わない場合では、触媒によるPMの連続燃焼を行うことも可能となる。
【0014】
また、酸素放出能を有する複合酸化物はNO2吸収能も高いことが分かっており、NO2生成触媒と共存させることにより、生成したNO2が酸素放出能を有する複合酸化物表面に吸着されることにより、表面のNO2濃度が高く保たれるため、AgによるNO2とPMとの反応がより促進され、PM燃焼速度が向上する。また、Ag担持複合酸化物触媒とNO2生成触媒との2層コートとし、NO2生成触媒層内の気孔の大きさを平均1μm以上にすることにより、Agが担持された複合酸化物触媒へPMが接触することが容易となり、燃焼速度がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
複合酸化物は、ペロブスカイト型、スピネル型、ルチル型、デラフォサイト型、マグネトプランバイト型、イルメナイト型、およびフルオライト型から選択することができる。中でも耐熱性の観点からペロブスカイト型、フルオライト型が好ましい。また、複合酸化物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、遷移金属、貴金属の中から選択される2以上の元素の組み合わせからなり、原子の価数を変化させて酸素の吸収及び放出を行うものである。複合酸化物が酸素放出能を有するためには、多原子価を持つ元素が1種類は含まれている方が好ましい。遷移金属ではV,Cr,Mn,Fe,Co,Cu,Nb,Ta,Mo,W、希土類金属ではCe,Pr,Sm,Eu,Tb,Ybである。酸素放出は、構成原子の価数の変化に応じて電荷のバランスを保つために、複合酸化物の格子中の酸素が離脱する現象である。また、アルカリ金属であるNa,K,Cs、貴金属であるPt,Pd,Rh,Ir,Ruは酸化物dとして不安定なため、メタル化することにより酸素放出する特性を付与することができる。さらに、構造安定性の観点から価数変化がなくイオン半径の比較的大きなLa,Nd,Sc,Hf,Ca,Sr,Baが含まれることが好ましい。なお、耐熱性の優れた複合酸化物とは、ある程度高温の耐熱条件に対してPM燃焼特性が変化しないか変化が少ない複合酸化物であり、PM燃焼特性の変化は、実用排ガス温度域で充分にPMを燃焼可能な領域内での変化を言う。
【0016】
複合酸化物の調製方法については限定するものではないが、硝酸塩分解法、有機酸錯体重合法などを好適に用いることができる。また、複合酸化物にAgを担持させる方法は限定するものではないが、含浸法や析出沈殿法などを好適に用いることができる。
【0017】
次に、本発明の具体的な使用例について、例えば、ディーゼルエンジンの排気通路に排ガス中のPMを捕集するフィルタを設置した場合について説明する。フィルタは三次元網目構造を有し、充分なPM捕集機能を有する発泡金属や発泡セラミックス、金属やセラミックス繊維を重ね合わせた不織布、ウォールフロータイプのフィルタなど、どのような形態でも充分な効果を発揮するが、ウォールフロータイプのフィルタが捕集効率と、PMと触媒との接触性の観点から好ましい。図10及び図11にディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFと略す。)を模式的に示す。このDPFは、ハニカム構造をなしており、互いに平行に延在する多数の排気ガス流路2,3を備えている。DPFの下流端が栓4により閉塞された排気ガス流入路2と、上流端が栓4により閉塞された排気ガス流出路3とが前後左右に交互に設けられ、排気ガス流入路2と排気ガス流出路3とは薄肉の隔壁5を介して隔てられている。なお、図10においてハッチングを付した部分は下流端の栓4を示している。DPFは、そのフィルタ本体が炭化珪素やコージライトなどのような多孔質材料から形成されており、排気ガス流入路2内に流入した排気ガスは図11において矢印で示したように周囲の隔壁5を通って隣接する排気ガス流出路3内に流出する。すなわち、図12に示すように、隔壁5は排気ガス流入路2と排気ガス流出路3とを連通する微細な細孔6を有し、この細孔6を排気ガスが通る。上記DPFのフィルタ本体の排気ガス流路(排気ガス流入路2、排気ガス流出路3及ぴ細孔)の壁面には触媒コート層7が形成されている。このコート層7は、例えぱ実施例の触媒粉を、水及びバインダと混合してスラリーとし、このスラリーをフィルタ本体にウォッシュコートし、焼成することによって形成されている。
【0018】
次に、本発明の排ガス浄化装置の実施形態について説明する。図14は実施形態のDPFのフィルタ10の断面構造を示すものである。図14に示すように、フィルタ10は、フィルタ基材11の表面に前述のAg担持複合酸化物層12をコートし、その上にNO2生成触媒層13をコートしたものである。Ag担持複合酸化物層12は、高比表面積のアルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、チタニア、セリアなどにPt,Pd,Rh等の貴金属を担持させた触媒により構成されている。排ガス中の窒素酸化物の殆どがNOで排出されるため、フィルタ基材11の表面にAgを担持した酸素放出能を有する複合酸化物を塗布し、その上層にNO2生成触媒層13を重ねて塗布することにより、下層のAg担持複合酸化物層12にNO2を供給することができる。
【0019】
ただし、Ag担持複合酸化物層12の上層にNO2生成触媒層13を均一に塗布すると、PMがAg担持複合酸化物層12に接触することができなくなるので、NO2生成触媒層13内に1μm以上の大きさの気孔を設ける。これにより、PMをAg担持複合酸化物層12に接触させることができ、PMを効率よく燃焼させることができる。図15は、各種条件における排ガス中のPMの粒子径分布を示すものである。この図に示すように、PMの大半が1μm以下に分布していることから、気孔の平均の大きさは1μm以上であることが望ましい。空隙を生成する方法としては以下の方法がある。一つは、NO2生成触媒の平均粒子径を10μm以上にすることである。平均粒子径が10μm以上であれば、粒子間に生成される空隙の平均粒径は1μm以上となる。また、NO2生成触媒をコートする際、スラリー中に炭素を主成分とする造孔剤を添加し、コートした後、高温熱処理することにより焼き飛ばし、気孔を生成する方法も有効である。造孔剤としてはでんぷん、カーボンブラック、樹脂などを使用することができる。
【0020】
また、本発明者等の検討によれば、高い温度(600℃付近)になる程2層化の効果が大きくなることが判明している。すなわち、特許文献6のようなNO2生成触媒のみの構成であると、600℃付近の温度になると平衡の関係でNO2濃度が極端に低くなるため、NO2とPMの反応は進行し難くなるが、NO2生成触媒とPM燃焼触媒の2層構造を採用することにより、生成したNO2がNOに戻る前にPM燃焼触媒の酸素放出能を有する複合酸化物に吸着されることにより、触媒近傍にNO2が多く存在する状態となってPM燃焼が進行し易くなる。
【0021】
触媒の塗布量は、下層のAg担持複合酸化物層12ではフィルタ1L当たり20〜60gがよい。20g以下であると、フィルタの気孔内部の表面を充分に覆うことができず、PMとの接触性が悪くなる。また、塗布量が60gを超えると、気孔の目詰まりによる圧力損失が大きくなる。また、上層のNO2生成触媒層13では、フィルタ1L当たり10〜30gがよい。塗布量が10g以下であると、NO2生成能力が不充分となり、塗布量が30gを超えると、NO2生成触媒層13の厚さが厚くなってPMがPM燃焼触媒に接触し難くなる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明の作用および効果さらに具体的に説明する。
[試料の作製]
以下の容量で実施例17および比較例1〜19の触媒試料を作製した。
<実施例1>
市販の特級試薬である硝酸ランタン、硝酸マンガンを0.01molずつと蒸留水を適量秤量し混合溶液Aとした。次に、炭酸ナトリウムを3.6g、蒸留水を適量秤量し混合溶液Bとした。混合溶液Bを60℃、300rpmで回転させながら混合し、そこに混合溶液Aを7ml/minで滴下した(逆共沈法)。沈殿物をpHが中性になるまで蒸留水で濾過洗浄し、200℃で2時間乾燥し、その後に350℃で3時間乾燥固化し。これを整粒し、2μm以下とした後、800℃で10時間焼成を行ったものを触媒Aとした。触媒Aを9g、硝酸銀を1.57gおよび蒸留水を適量秤量して混合溶液Cとした。混合溶液Cをエバポレータで蒸発乾固したものを200℃で2時間乾燥した後、600℃で2時間焼成した(含浸法)。これを整粒し、2μm以下としたものを触媒Bとした。この触媒B9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを実施例1とした。
【0023】
<実施例2>
市販の特級試薬である硝酸コバルトを0.01molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Dとした。次に、酸化タンタル0.01mol、炭酸ナトリウムを1.3gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Eとした。混合溶液Dおよび混合溶液Eを上記と同様に逆共沈法にて調製し、触媒Cとした。触媒Cを9.9g、硝酸銀を0.16gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Dとした。この触媒D9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを実施例2とした。
【0024】
<実施例3>
市販の特級試薬である硝酸コバルトを0.01mol、ジニトロニアンミン硝酸白金を0.01molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Fとする。次に、炭酸ナトリウムを2.5gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Gとした。混合溶液Fおよび混合溶液Gを上記と同様に逆共沈法にて沈殿物を調製し、触媒Eとした。触媒Eを9.9g、硝酸銀を0.16gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Fとした。この触媒F9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを実施例3とした。
【0025】
<実施例4>
市販の特級試薬である硝酸コバルトを0.02mol、硝酸亜鉛を0.01molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Hとした。次に、炭酸ナトリウムを3.8gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Iとした。混合溶液Hおよび混合溶液Iを上記と同様に逆共沈法にて調製し、触媒Gとした。触媒Gを9.9g、硝酸銀を0.16gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Hとした。
この触媒H9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを実施例4とした。
【0026】
<実施例5>
市販の特級試薬であるタングステン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸マンガンをそれぞれ0.0067molずつおよび蒸留水を適量秤量し、混合溶液Jとした。次に、炭酸ナトリウムを3.8g、蒸留水を適量秤量し混合溶液Kとした。混合溶液Jおよび混合溶液Kを上記と同様に逆共沈法にて調製し、触媒Iとした。触蝶Iを9.9g、硝酸銀を0.16gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触蝶Jとした。この触媒J9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを実施例5とした。
【0027】
<実施例5>
上記触媒Bを800℃×6Hrで大気中でエージングをしたものを触媒Kとした。この触媒K9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを実施例5とした。
【0028】
<実施例6>
上記触媒Bを850℃×6Hrで大気中でエージングをしたものを触媒Lとした。この触媒L9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを実施例6とした。
【0029】
<比較例1>
ディーゼル発電機より収集したPM粉末を比較例1の試料とした。
【0030】
<比較例2>
市販の特級試薬であるジニトロジアミン白金硝酸溶液を1.51g、Al2O3を9.92gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Lとした。これらをエバポレータにて蒸発乾固させ、Al2O3に銀を担持した。200℃で乾燥後、600℃で2時間焼成し、これを触媒Mとした。この触媒M9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例2とした。
【0031】
<比較例3>
上記触媒A9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例3とした。
【0032】
<比較例4>
市販の特級試薬の酸化銀(触媒N)9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例4とした。
【0033】
<比較例5>
市販の特級試薬である硝酸ランタンを0.01mol、硝酸アルミニウムを0.01molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Mとした。次に、炭酸ナトリウムを3.4gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Nとした。混合溶液Mおよび混合溶液Nを上記と同様に逆共沈法にて調製し、触媒Oとした。触媒Oを9g、硝酸銀を1.57gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Pとした。この触媒P9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例5とした。
【0034】
<比較例6>
市販の特級試薬である硝酸ランタンを0.02molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Oとした。次に、炭酸ナトリウムを2.1gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Pとした。混合溶液Oおよび混合溶液Pを上記と同様に逆共沈法にて調製し、触媒Qとした。触媒Qを9g、硝酸銀を1.57gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Rとした。この触媒R9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例6とした。
【0035】
<比較例7>
市販の特級試薬である硝酸マンガンを0.02molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Qとした。次に、炭酸ナトリウムを2.1gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Rとした。混合溶液Qおよび混合溶液Rを上記と同様に逆共沈法にて調製し、触媒Sとした。触媒Sを9g、硝酸銀を1.57gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Tとした。この触媒T9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例7とした。
【0036】
<比較例8>
上記触媒Qを1gおよび触媒Sを1gを乳鉢乳棒にて粉砕混合し、800℃、10Hrで焼成し触媒Uとした。触媒Uを9g、硝酸銀を1.57gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Vとした。この触媒V9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例8とした。
【0037】
<比較例9>
上記触媒Aを9g、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液を19.9gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Wとした。この触媒W9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例9とした。
【0038】
<比較例10>
上記触媒Aを9g、硝酸パラジウムを2.5gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒Xとした。この触媒X9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例10とした。
【0039】
<比較例11>
市販の特級試薬である硝酸銀、硝酸ランタン、硝酸マンガンをそれぞれ0.04mol、0.01mol、0.05molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Sとした。混合溶液Sを250℃,300回転で混合しながら蒸発乾固し、その後200℃で2時間乾燥した後、350℃で3時間仮焼し、その後、粒径が2μm以下となるように整粒し、800℃で1O時間焼成を行ったものを触媒Yとした。この触媒Y9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例11とした。
【0040】
<比較例12>
上記触媒Aを9g、上記触媒Nを1g秤量し、乳鉢乳棒にて物理混合した。これを800℃で10時間焼成し固相反応させたものを触媒Zとした。この触媒Z9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例12とした。
【0041】
<比較例13>
上記触媒C9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例13とした。
【0042】
<比較例14>
上記触媒E9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例14とした。
【0043】
<比較例15>
上記触媒G9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例15とした。
【0044】
<比較例16>
上記触媒I9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例16とした。
【0045】
<比較例17>
市販の特級試薬である硝酸セリウムを0.02molおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Tとした。次に、炭酸ナトリウム3.2gおよび蒸留水を適量秤量し混合溶液Uとする。混合溶液Tおよび溶液Uを上記と同様に逆共沈法にて調製し、触媒AAとした。触媒AAを9.0g、硝酸銀を1.57gおよび蒸留水を適量秤量し、上記と同様に含浸法にて調製し、触媒ABとした。この触媒AB9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例17とした。
【0046】
<比較例18>
上記触媒ABを800℃で6時間大気中でエージングをしたものを触媒ACとした。この触媒AC9.5mgを0.5mgのPMと混合乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕し、タイトコンタクト化したものを比較例18とした。
【0047】
<比較例19>
上記触媒ABを850℃×6Hrで大気中でエージングをしたものを触媒ADとした。この触媒AD9.5mgを0.5mgのPMと乳鉢および乳棒にて粒径2μm以下に粉砕混合し、タイトコンタクト化したものを比較例19とした。
【0048】
以上の実施例1〜7および比較例1〜19の試料の成分、担体の種類、担体に担持されている金属の種類、および担体の結晶構造を表1に示す。また、以上の試料に対してPMの燃焼試験を実施し、PMの発熱特性(DTA)を調査した。燃焼試験では、セイコーインスツルメンツ社製、EXSTER6000TG/DTAを使用し、10mgの試料を試験装置に装填し、乾燥空気を空間速度(SV)が60000h−1となる流量で供給し、かつ乾燥空気の温度を20℃/minで昇温させた。各試料の発熱特性を図1〜図8に示すとともに、PMの燃焼における発熱量がピークになる際の温度を表1に併記する。
【0049】
【表1】
【0050】
図1にPMのみからなる試料(比較例1)、0.76wt%Pt/Al2O3+PM(5wt%)からなる試料(比較例2)、およびペロブスカイト型複合酸化物のLaMnO3+PM(5wt%)(比較例3)の燃焼特性を示す。PMのみからなる試料の燃焼ピーク温度は668℃である。これに対し、0.76wt%Pt/Al2O3+PM(5wt%)(比較例2)のような貴金属系材料では、最初のピークは247℃、2回目のピークは561℃とピークが二つに分かれる。それぞれの燃焼ピークは発生ガス分析から最初のピークが有機成分、2回目のピークがsootに由来することが判っている。このことから、貴金属系材料は、有機成分の燃焼には効果があるが、sootに関してはそれほど低温で燃焼できないことが判る。これらのメカニズムに関しては、HCガスと同様に活性種表面での酸化反応であるためsootより熱的に不安定な有機成分は早期に活性種への解離吸着が起こりやすいことが推定される。また、これらPtやPd等の貴金属系触媒の場合、性能は貴金属量の影響をほとんど受けない。
【0051】
一方、LaMnO3+PM(5wt%)(比較例3)のような遷移金属系複合酸化物では、貴金属系材料のように燃焼ピークの分離をほとんど起こさない。このような複合酸化物においては有機成分は早期燃焼せず、sootとともに燃焼する。また、複合酸化物の場合は貴金属系材料とは異なり、sootの燃焼は比較的低温で可能である。このため遷移金属系複合酸化物はsoot燃焼に対して効果的といえる。これらのメカニズムに関しては、複合酸化物の価数変化に伴う酸素放出能に依存していると考えられるため、酸素放出しない低温側での有機成分の燃焼はなく、燃焼がsootと同時に起こる。つまり酸素放出能が高いほど低温でPMを燃焼することが可能となる。
【0052】
ところで、現状の内燃機関から排出される排気ガス温度は200℃〜450℃と低いことから、有機成分は貴金属系材料を用いることで排ガス温度域内での燃焼は十分に可能であるが、sootの燃焼は上記触媒材料などによりいくらか低温で燃焼可能であり、効率を多少高めることはできるが、やはり再生処理等を行わずして排ガス温度域で連続燃焼することは難しい。
【0053】
この点、本発明は、酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持することにより、複合酸化物の酸素放出能を向上させることができ、PM燃焼特性を向上させることに成功したものである。図2に10wt%Ag/LaMnO3+PM(5wt%)(実施例1)の燃焼特性を示す。図2から判るように、実施例1では、比較例3と比べPM燃焼特性が低温化していることがわかる。表1に示すように、PM燃焼ピーク温度は、454℃から417℃へと大幅に低温化している。これは、酸素放出能を持つ複合酸化物にAgを担持したことによる効果と考えられる。
【0054】
表1に示す比較例4のPM燃焼ピーク値から判るように、Ag2Oは、PMに対して非常に高活性である。Ag2Oは還元剤としてのPMと接触することで酸化反応を起こすと考えられる。しかしながら、Ag2Oは揮発する特性を有しているため耐熱性の観点では単独で用いることができない。
【0055】
本発明のように複合酸化物にAgを担持することにより、AgはAgもしくはAg2Oとして存在すると考えられる。反応により還元されたAgは複合酸化物に担持されていることにより効果的に作用する。つまり、還元されたAgの揮発を抑制しつつ、Agは再び活性化するために複合酸化物の価数を変化させ、強制的に酸素を取り込もうとする。これらを繰り返すことにより、触媒全休の酸素放出能を高め、その結果、PM燃焼温度を低温化することができると推察される。言い換えれば、酸素放出能を有する複合酸化物に、PMに対して活性の高いAgを担持することにより、複合酸化物の酸素放出能をより低温で引き出すことが可能となったといえる。
【0056】
Ag担持複合酸化物のメカニズムによれば、酸素過剰雰囲気(リッチ状態)においては酸素を吸収保持し、酸素濃度が低下すると(リーン状態)、酸素を放出する性質をもつ。排気ガス中に過剰酸素が含まれているときには排気ガス中の含炭素浮遊微粒子を捕集し、排気ガス中の酸素濃度が低下、あるいは触媒上に含炭素浮遊微粒子が堆積して周囲の酸素濃度が低下すると、活性酸素を放出して触媒上の含炭素浮遊微粒子を燃焼させることが可能である。
【0057】
ここで、酸素放出能がない複合酸化物(比較例5)、酸素放出能を有する単独酸化物およびその物理混合酸化物(比較例6〜8)についてそれぞれAgを担持した場合の性能を図3により比較する。比較例5はPM燃焼ピーク値が521℃と性能は悪く、この性能はAgのみによると考えられる。比較例6,7もそれぞれPM燃焼ピーク値が468℃、435℃と実施例1と比べて性能が劣るが、これは担体である単独酸化物の酸素放出能が低いためと考えられ、さらにこれらを物理混合した比較例8はPM燃焼ピーク値が445℃であり、それほど燃焼温度を低温化することができていない。
【0058】
ディーゼル排気ガス温度域でのsootの燃焼を考えた場合、酸素放出能を持たない複合酸化物、酸素放出能の低い単独酸化物および単独酸化物の物理的な組み合わせでは期待する性能を得ることができない。よって酸素放出能を有する複合酸化物を用いることが重要と考えられる。
【0059】
ここで、酸素放出能を有する酸化物の定義について具体的に説明する。まず、He雰囲気での酸素の昇温脱離試験(TPD)と水素による酸素の昇温還元試験(TPR)において、脱離開始温度あるいは脱離がピークに達する温度を脱離し易さとし、ピーク面積を放出量とする。これら脱離し易さおよび放出量を放出能とし、特に、複合酸化物などのような酸化物が雰囲気の変化によって価数変化を引き起こし、酸化物中の酸素が吸放出されるものを酸素放出能を有する酸素放出能を有する複合酸化物と定義する。
【0060】
図13に、La2O3、MnO2、LaMnO3、およびLaAlO3の酸素放出能をO2−TPDで測定した結果を示す。図13において横軸は温度、縦軸は酸素離脱量であり、He雰囲気中での熱的な酸素の離脱し易さを示している。La2O3は360℃付近で酸素を放出するが、ピーク面積は小さく、酸素放出量は少ない。一方、MnO2は400℃付近から酸素放出を開始し、そのまま高温になるに従って放出量が多くなる。また、これらの複合酸化物であるペロブスカイト構造のLaMnO3では、酸素放出開始温度がさらに低下し、250℃付近からとなる。これらに対してLaAlO3では、全温度域において酸素放出能を持たないことが判る。
【0061】
このように、各酸化物、複合酸化物は酸素放出能を持つものと持たないものがあり、また、それぞれの酸素放出能は異なる。ここで、MnO2は600℃付近から酸素放出能が大幅に向上しているのに対して、La2O3は600℃以上で酸素放出能を持たない。これから比較例6,7の結果を考慮すると、PM燃焼特性に600℃以上の酸素放出能が寄与していないことが推測される。これは、触媒における酸素の放出量よりは、低温での酸素の離脱し易さ、つまり、酸素脱離エネルギーがPM燃焼において重要なファクターとなっているからと推測される。以上から、He雰囲気での昇温脱離試験(TPD)において、600℃以下で酸素脱離開始するものを酸素放出能を有する、と定義することができる。
【0062】
次に、酸素放出能を有する複合酸化物にAg以外の貴金属を担持した場合(特許文献4)について検討する。図4はLaMnO3にPtおよびPdを担持した場合(比較例9,10)の燃焼特性を示すものである。図4から、特許文献4に記載のものでは、実施例1と比べ性能が劣ることが判る。
【0063】
PM活性において、貴金属元素ではAgは特異的に性能が高いと言える。複合酸化物との相互作用を考えた場合、比較例3からの性能向上効果という観点では、より複合酸化物の価数変化を引き出すことが可能なのはAgであると考えられるが、メカニズムに関しての詳細は不明である。
【0064】
次に、複合酸化物へのAgの添加方法を変えた場合について述べる。比較例11は複合酸化物にAgを固溶した場合(特許文献1)であり、比較例12は複合酸化物にAgを固相反応させた場合(特許文献3)である。その結果を図5に示す。図5から、比較例11および12は、実施例1と比べて性能が悪いことがわかる。まず、比較例11に関しては、同じAg量(10wt%)であっても、LaMnO3の結晶構造にAgが固溶しているために活性種が埋没し、還元剤となるPMと接触することができずに上記したようなAgの価数変化を引き出すことができない。このため、実施例1のようにAgを担持した場合と比べ性能が劣ると考えられる。比較例12に関しては、耐熱性がないため活性種が揮発してしまい、LaMnO3のみの性能となっていると考えられる。よって実施例1のように、LaMnO3の最表面に活性種を露出しつつ、複合酸化物との相互作用により酸素放出能を低温化する必要があり、さらにAgの擬集および揮発を抑制するため、複合酸化物へのAgの添加は、担持でなくてはならないと考えられる。
【0065】
次に、ペロブスカイト構造のほかにも酸素放出能を持つ複合酸化物でのAg担持効果を確認した。比較例13はルチル型複合酸化物、比較例14はデラフォサイト型複合酸化物、比較例15はスピネル型複合酸化物、比較例16は単純な元素を混合しただけの複合酸化物である。これらにAgを1wt%担持したものが実施例2〜5となるが、その結果を図6および表1に示す。図6及び表1から、どの複合酸化物でもAgを担持したことによりPM燃焼ピーク温度が低温化していることが判る。よって、酸素放出能をもつあらゆる結晶構造、あらゆる元素で構成された複合酸化物にAgを担持することによりPM燃焼特性を向上させることができると言える。
【0066】
次に、Ag担持複合酸化物における耐熱性の観点でエージング処理(大気中)を行った結果について図7および図8を参照して説明する。図7において、比較例17および19は、CeO2にAgを担持した場合のエージング処理前(特許文献2)と850℃のエージング処理後の結果を示すものである。CeO2は酸素放出能では非常に優れた酸化物であることが広く知られているため、酸素放出能の高いCeO2へのAg担持も効果があると考えられる。比較例17では、エージング前はPM燃焼ピーク温度が388℃と良好な性能を示している。しかし、比較例17にエージングを施した比較例19では、PM燃焼ピーク温度が445℃と大幅に劣化している。これはベース酸化物であるCeO2の熱的構造破壊およびAg凝集および揮発によるものと推測される。これに対し、図8に実施例1と実施例7を対比して示すように、10wt%Ag/LaMnO3のエージング前後でのPM燃焼特性は変化しないことがわかる。これは複合酸化物の構造形成温度が600℃〜1000℃の高温であるためにエージング温度域で構造破壊が起きない上、複合酸化物とAgの相互作用によりAgの凝集および揮発が起こりにくいためと推察される。
【0067】
図9は、Ag/CeO2およびAg/LaMnO3のエージング前、800℃および850℃のエージング処理後の燃焼特性(実施例1,6,7、比較例17,18,19)の比較を示す。図9において横軸は大気中でのエージング処理温度であり、各例のエージング前における処理温度は、試料を調整した際の焼成温度を用いた。図9から、エージング条件によってはAg/Ce02は性能が劣化して実用排ガス温度域で十分にPMを燃焼できなくなることが判る。よって、耐熱性を有する複合酸化物へのAg担持でなければ期待する性能を発揮することができない。
【0068】
このように、本発明は、今後さらなる大排気量/高出力ENGを想定した場合の高耐熱条件においても、排気レイアウトに左右されることなく、自動車の床下はもちろんエンジン直下での使用にも耐えうるものである。
【0069】
<実施例8>
(触媒粉末の調整)
実施例1で用いた触媒Bの粉末を調整し、酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持した触媒を必要量調整した。この場合の最終焼成温度は700℃とした。
【0070】
所定量の硝酸パラジウムと硝酸白金を含有する水溶液を調整した。この水溶液とγアルミナとをナスフラスコに入れ、ロータリーエバポレータにて含浸担持を行った。得られた生成物を200℃で1時間乾燥した後、700℃で2時間の焼成を行い、NO2生成触媒粉末としてのPt/Al2O3を調整した。
【0071】
(DPFへの担持)
上記Ag担持複合酸化物粉末、水、SiO2ゾル、アルミナボールを容器に入れ、ボールミルにて湿式粉砕を一晩行い、触媒スラリーとした。この触媒スラリーにDPFを浸漬した後に引き上げ、エアーブローで余剰スラリーを除去した。次いで、DPFを200℃で2時間乾燥し、DPFの重量を測定を行った。触媒がDPFに所定量担持されるまでこの操作を繰り返した後、700℃で2時間の焼成を行った。こうして、DPFの表面の下層にAg担持複合酸化物層を形成した。
【0072】
上記NO2生成触媒粉末、水、SiO2ゾル、アルミナボール、および造孔剤として粒子径が1μmのでんぷんを容器に入れ、ボールミルにて湿式粉砕を一晩行い、触媒スラリーとした。この触媒スラリーにDPFを浸漬した後に引き上げ、エアーブローで余剰スラリーを除去した。次いで、DPFを200℃で2時間乾燥し、DPFの重量を測定を行った。触媒がDPFに所定量担持されるまでこの操作を繰り返した後、700℃で2時間の焼成を行った。こうして、DPFの表面の上層にNO2生成触媒層を形成した。
【0073】
(酸化触媒のハニカム担持)
表2に示す酸化物触媒粉末、水、SiO2ゾル、アルミナボールを容器に入れ、ボールミルにて湿式粉砕を一晩行い、触媒スラリーとした。この触媒スラリーにコージェライトハニカムを浸漬した後に引き上げ、エアーブローで余剰スラリーを除去した。次いで、コージェライトハニカムを200℃で2時間乾燥し、コージェライトハニカムの重量を測定を行った。触媒がコージェライトハニカムに所定量担持されるまでこの操作を繰り返した後、700℃で2時間の焼成を行った。
【0074】
【表2】
【0075】
(コンバータ作製)
図16に本実施例で作製したコンバータ20を示す。このコンバータ20には、排ガスの流れの上流側から、上記のようにして酸化触媒を担持したコージェライトハニカム21と、上記のようにして下層にAg担持複合酸化物層、上層にNO2生成触媒層を形成したDPF22が設けられている。この実施例では、コージェライトハニカム21の容量は1L、DPF22の容量は2Lとした。
【0076】
<比較例20>
DPFにNO2生成触媒層を形成しなかった以外は実施例8と同じ条件で図16に示すコンバータ20を作製した。
【0077】
<比較例21>
DPFにAg担持複合酸化物層を形成せずにDPFに直接NO2生成触媒層を形成した以外は実施例8と同じ条件で図16に示すコンバータ20を作製した。
【0078】
<比較例22>
DPFにNO2生成触媒層を形成する際に造孔剤を用いなかった以外は実施例8と同じ条件で図16に示すコンバータ20を作製した。
【0079】
<比較例23>
DPFに触媒を担持させなかった以外は実施例8と同じ条件で図16に示すコンバータ20を作製した。
【0080】
(評価方法)
上記のようにして作製したコンバータ20を用い、実用条件に近い評価が可能なエンジンベンチテストを実施した。図17は、テストレイアウトを示すもので、2.2Lのディーゼルエンジン30の直下の位置にコンバータ20を配置し、運転試験を行った。
【0081】
(低温連続燃焼性能)
コージェライトハニカム21の直前の排ガス温度が350℃程度となる条件で8時間ディーゼルエンジン30の運転を続けた。運転終了後のコンバータ20の重量増加量をPM堆積量とした。その結果を図18に示す。図18に示すとおり、実施例8ではPM堆積量が最も少なかったことから、運転中に排出されるPMを最も良く燃焼除去したことが分かる。
【0082】
(強制再生性能)
DPF22の直前の排ガス温度が150℃程度となる条件でディーゼルエンジン30の運転を続けてPMを堆積させた。次いで、DPF22の直前の排ガス温度が600℃程度となる条件でディーゼルエンジン30の運転を行い、コンバータ20の強制再生を行った。強制再生では、ポストインジェクションにより燃料添加を行い、酸化触媒を担持したコージェライトハニカム21での燃焼反応熱でDPF22を目的温度まで上昇させ、所定時間毎に停止して重量測定を行った。そして、PMの燃焼が終了するまでの時間を測定し、その結果を図19に示した。図19に示すとおり、600℃における強制再生では、再生終了までに要する時間が実施例8で格段に短く、再生時の燃焼速度が最も速いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の排ガス浄化触媒および排ガス浄化装置は、排ガスに含まれるPMを低温で浄化することが可能であるとともにPMの燃焼速度が速く、今後さらなる大排気量/高出力ENGを想定したディーゼルエンジンにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との他の関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との他の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との他の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との他の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との他の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との他の関係を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例における供給空気温度とPMの発熱量との他の関係を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例における加熱温度(耐熱温度)とPM燃焼ピーク時の温度との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の実施形態における触媒コンバータを示す正面図である。
【図11】本発明の実施形態における触媒コンバータを示す側断面図である。
【図12】本発明の実施形態における触媒コンバータを示す一部拡大側断面図である。
【図13】本発明における酸素放出能を説明するためのグラフである。
【図14】本発明の実施例におけるDPFの一部を示す断面図である。
【図15】排ガス中のPMの粒度分布を示すグラフである。
【図16】実施例で作製したコンバータを示す側面図である。
【図17】実施例におけるテストレイアウトを示す側面図である。
【図18】実施例における低温燃焼でのPMの堆積量を示すグラフである。
【図19】実施例における強制再生での再生時間を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排出ガスに含まれるカーボンを主成分とする粒子状物質を浄化するための排ガス浄化触媒であって、酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持したことを特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項2】
前記複合酸化物は、ペロブスカイト型、スピネル型、ルチル型、デラフォサイト型、マグネトプランバイト型、フルオライト型、およびイルメナイト型から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
前記複合酸化物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、遷移金属、貴金属の中から選択される2以上の元素の組み合わせからなり、原子の価数を変化させて酸素の吸収及び放出を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
内燃機関から排出される排出ガスに含まれるカーボンを主成分とする粒子状物質を捕集可能なフィルタの内部に、請求項1〜3のいずれかに記載の排ガス浄化触媒が塗布されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項5】
内燃機関から排出される排出ガスに含まれるカーボンを主成分とする粒子状物質を捕集可能なフィルタの内部に、請求項1〜3のいずれかに記載の排ガス浄化触媒と、排ガス中に含まれるNOをNO2に変換するNO2生成触媒が同時に担持されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記排ガス浄化触媒と前記NO2生成触媒が、前記フィルタの内部の基材上において下層に前記排ガス浄化触媒、上層に前記NO2生成触媒の構成で塗布されていることを特徴とする請求項5に記載の排ガス浄化装置。
【請求項7】
前記NO2生成触媒は、Pt,Pd,Rhから選ばれる1種または2種以上の元素が高比表面積担持体上に担持されてなることを特徴とする請求項5または6に記載の排ガス浄化装置。
【請求項8】
前記高比表面積担持体は、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシアから選ばれる1種または2種以上からなることを特徴とする請求項7に記載の排ガス浄化装置。
【請求項9】
前記NO2生成触媒の層中に、気孔を有することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の排ガス浄化装置。
【請求項10】
前記気孔の大きさが平均で1μm以上であることを特徴とする請求項9に記載の排ガス浄化装置。
【請求項11】
前記フィルタは、多孔質の耐火性セラミックスからなるウォールフロータイプのフィルタであることを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の排ガス浄化装置。
【請求項1】
内燃機関から排出される排出ガスに含まれるカーボンを主成分とする粒子状物質を浄化するための排ガス浄化触媒であって、酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持したことを特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項2】
前記複合酸化物は、ペロブスカイト型、スピネル型、ルチル型、デラフォサイト型、マグネトプランバイト型、フルオライト型、およびイルメナイト型から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
前記複合酸化物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、遷移金属、貴金属の中から選択される2以上の元素の組み合わせからなり、原子の価数を変化させて酸素の吸収及び放出を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
内燃機関から排出される排出ガスに含まれるカーボンを主成分とする粒子状物質を捕集可能なフィルタの内部に、請求項1〜3のいずれかに記載の排ガス浄化触媒が塗布されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項5】
内燃機関から排出される排出ガスに含まれるカーボンを主成分とする粒子状物質を捕集可能なフィルタの内部に、請求項1〜3のいずれかに記載の排ガス浄化触媒と、排ガス中に含まれるNOをNO2に変換するNO2生成触媒が同時に担持されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記排ガス浄化触媒と前記NO2生成触媒が、前記フィルタの内部の基材上において下層に前記排ガス浄化触媒、上層に前記NO2生成触媒の構成で塗布されていることを特徴とする請求項5に記載の排ガス浄化装置。
【請求項7】
前記NO2生成触媒は、Pt,Pd,Rhから選ばれる1種または2種以上の元素が高比表面積担持体上に担持されてなることを特徴とする請求項5または6に記載の排ガス浄化装置。
【請求項8】
前記高比表面積担持体は、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシアから選ばれる1種または2種以上からなることを特徴とする請求項7に記載の排ガス浄化装置。
【請求項9】
前記NO2生成触媒の層中に、気孔を有することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の排ガス浄化装置。
【請求項10】
前記気孔の大きさが平均で1μm以上であることを特徴とする請求項9に記載の排ガス浄化装置。
【請求項11】
前記フィルタは、多孔質の耐火性セラミックスからなるウォールフロータイプのフィルタであることを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の排ガス浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−296518(P2007−296518A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96317(P2007−96317)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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