説明

排出物処理用移動体

【課題】 排出物が発生する現場(たとえば病院)において、排出物の輸送効率の向上、処理トータル時間を短縮する。
【解決手段】 所定の医療排出物が入ったプラスチック容器である排出物容器を溶融処理するための溶融処理装置(20)を搭載したトラック(10)である。前記溶融処理装置(20)は、前記排出物容器を溶融させるための溶融油を蓄えるとともに当該排出物容器を投入可能な処理空間を備えた処理タンク(21)と、 その処理タンク(21)内の溶融油の温度を所定温度に保つための加熱器(25)と、 その加熱器(25)および前記処理タンク(21)との間で溶融油の量を調整装置(26)とを備える。処理タンク(21)は、油化処理装置の内釜を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油化処理が可能な排出物や廃棄物を、その発生場所、集積場所などに出向いて処理することができる移動体に関する技術である。
ここで、油化処理が可能な排出物、廃棄物とは、一般の廃棄プラスチック、廃棄発泡スチロール、FRPなどである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック、発泡スチロールなどの処理は、焼却、埋め立てなどによっていた。焼却処理の場合は、被処理物の多くがプラスチックで占められているため、焼却炉の寿命が短くなる他、ダイオキシン発生を防止しなければならないなど問題がある。
また、排出物や廃棄物をその発生場所や集積場所にて処理することは、安全性や悪臭などの周辺環境への影響、処理スペース確保などが制限条件となっており、難しかった。
【0003】
さて、本出願人は、「プラスチック、廃棄、油化、車、載」というキーワードをアンド条件にて検索し、特許文献1を含めた7件の公開公報を抽出した。
【0004】
【特許文献1】特開2001−334244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1を含め、抽出した7件の技術いずれによっても、排出物や廃棄物を発生場所、集積場所などに出向いて滅菌、減容、油化などの処理することができるという技術的課題を解決できるものは無かった。
【0006】
ここで、請求項1から請求項9に記載の発明の目的は、油化処理が可能な排出物や廃棄物を、その発生場所、集積場所などに出向いて処理する技術を確保でき、排出物の輸送効率の向上できる排出物処理用移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、油化が可能な所定の排出物を溶融処理するための溶融処理装置(20)を搭載した移動体(10)に係る。
すなわち、前記溶融処理装置(20)は、前記排出物を溶融させるための溶融油を蓄えるとともに当該排出物容器を投入可能な処理空間を備えた処理タンク(21)と、 その処理タンク(21)内の溶融油の温度を所定温度に保つための加熱器(25)と、 前記処理タンク(21)内の溶融油の量を調整する調整装置(26)と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
(用語説明)
「移動体」とは、代表的には車両のことであり、これには、別の請求項で特定するような「荷台を備えたトラック」の他、自らは動力源を備えずに他の車両によって牽引されるコンテナ車両をも含む。
【0009】
「処理タンク(21)内の溶融油である所定温度」とは、処理タンクにおける「処理」の段階(目的)および処理対象によって異なる。処理が油化あるいは油化の前処理を目的としているのであれば摂氏200〜270度、減容滅菌を目的としているのであれば摂氏170〜220度となる。ただし、減容滅菌であっても長時間の処理によってある程度の油化処理となる。たとえば処理対象物がポリカーボネートである場合に油化処理を行うためには摂氏270度が必要となる。
「溶融油」とは、引火点が比較的高く、油化処理に適した油である。より具体的には、所定の排出物(プラスチックなど)の液相のものよりも比重が軽く、且つ、その引火点および発火点が廃棄物たるプラスチックの融解点よりも高い油である。例えば、大豆油、菜種油、オリーブ油、落花生油などの植物油、である。
【0010】
(作用)
本発明に係る移動体(10)が、排出物容器が排出される現場に移動する。そして、移動体(10)の運転手などの作業者が、油化が可能な所定の排出物を処理タンク(21)に投入する。このとき、処理タンク(21)の処理空間には、溶融油が所定の排出物を処理するための所定温度となった溶融油が貯留している。したがって、投入された所定の排出物は、溶融油に浸ることで溶融が開始される。
溶融が開始されると溶融油の温度が下がるが、加熱器(25)および調整装置(26)によって処理タンク(21)内の溶融油の温度は所定温度に保たれる。そのため、所定の排出物が加熱され、滅菌、除菌されつつ溶融される。
移動体(10)が移動しながら油化処理を行えば、最終的な処理時間を短縮できる。また、油化処理が完全に行われなくても溶融すれば体積が減る排出物も多く、排出物をそのまま運搬するよりも減要されるので、運搬効率を向上させることができる。
【0011】
(請求項2)
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の排出物処理用移動体を限定したものである。
すなわち、前記所定の排出物は、所定の医療排出物とし、その所定の医療排出物は、プラスチック容器である排出物容器に入れられていることを特徴とする。
【0012】
(用語説明)
「所定の医療排出物」とは、所定の医療排出物とは、使い捨てにされる注射器、薬剤が入っていた容器、点滴チューブなど、特に医療現場で発生する各種の排出物(感染性の医療排出物)である。更には、滅菌処理を必要とする排出物を主に想定している。
「排出物処理容器」は、処理タンク(21)に用いられる溶融油にて油化処理が可能な材質にて成型された樹脂容器である。蓋付きポリバケツなど、熱可塑性樹脂成型品であることが一般的である。
【0013】
(作用)
医療排出物に対する溶融温度は、医療排出物からの感染症を防ぐための滅菌に必要な温度よりも十分高く、溶融が開始されれば滅菌時間も十分に確保できる。したがって、本請求項に係る発明を実施することによる感染症の危険性は著しく低いと考えられる。
また、排出物容器に入っている非処理物は、注射器、ガーゼなど空気を多く含んでいる。このため、排出物容器の溶融が進めば、注射器などに入っていた空気が処理タンク(21)から出るので、著しく体積が減少する。このため、排出物容器をそのまま輸送することに比べ、極めて多くの排出物容器を輸送できることとなる。
【0014】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の廃棄物処理用移動体を限定したものである。
すなわち、前記処理タンク(21)は、廃棄プラスチック等を油化処理する油化プラントにおける油化装置に用いる内釜としたことを特徴とする。
【0015】
(用語説明)
「油化プラントにおける油化装置」とは、熱分解油化装置などとも言われる。鉄鋼などで作製されるいわゆる内釜に対して、その底面や側面をバーナーの炎で加熱するのが「外釜」と呼ばれる。例えば、耐火煉瓦によって組まれている
【0016】
(作用)
請求項3記載の発明においては、処理タンク(21)は、廃棄プラスチック等を油化処理する油化プラントにおける油化装置に用いる内釜である。このため、その処理タンク(21)をそのまま、油化プラントにおける油化装置に入れることができる。
また、車両に積み込む前には、油化装置においてその内釜である処理タンク(21)に対して所定量の溶融油を満たし、加熱して溶融油が所定温度になったら、車両に積み込む。こうすることで、前記加熱器(25)および前記調整装置(26)が作動する時間を抑制できる。
処理タンク(21)内に多くの排出物を収容した後には、本請求項に係る移動体が油化プラントに戻り、その油化プラントおける油化装置に戻すことができる。それにより、本請求項に係る移動体による油化処理が不完全であっても、油化プラントにおける完全な油化処理が可能である。
【0017】
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3に記載の廃棄物処理用移動体を限定したものである。
すなわち、前記処理タンク(21)には、その内部空間を形成する内面に沿って上部から下部側に移動可能な内蓋(22)と、 その内蓋(22)を上下動させるための内蓋上下動機構(23)と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
「内蓋上下動機構(23)」とは、内蓋(22)を必要に応じて上下動させることができる機構である。たとえば、リンク機構、ラックアンドピニオン、チェーン式などがある。
【0019】
(作用)
排出物容器を処理タンク(21)に投入した直後には、排出物容器の中には空気が多く含まれているので溶融油に対して浮いてしまう。そのため、排出物容器の溶融が進まず、多くの排出物容器を投入することができない。そのため、内蓋(22)およびその内蓋(22)を上下動させるための内蓋上下動機構(23)によって、投入した排出物容器を押し下げ、排出物容器の溶融を促進させる。その結果、早く多くの排出物容器を投入することができるようになる。
【0020】
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の排出物処理用移動体を限定したものである。
すなわち、前記処理タンク(21)には、その内部空間に連通する排気管(21b)を備え、 その排気管(21b)には、前記処理タンク(21)における内部空間から排出されるガスを除菌する除菌フィルタを備えたことを特徴とする。
【0021】
(作用)
投入された排出物容器は、溶融油に浸ることで溶融が開始され、内部を占めていた多くの空気が処理タンク(21)内に充満し、やがて排気管(21b)を介して処理タンク(21)の外に出る。その際、処理タンク(21)の外に出る空気は、溶融油からもたらされる熱に、十分にさらされていない可能性がある。そのため、除菌が不十分であることが予想される。しかし、排気管(21b)には除菌フィルタが備えられているので、処理タンク(21)における内部空間から排出されるガスを除菌することができる。
【0022】
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の排出物処理用移動体を限定したものであり、
前記排気管(21b)には、前記処理タンク(21)における内部空間から排出されるガスの脱臭を行う脱臭装置を備えたことを特徴とする。
【0023】
脱臭装置を備えているので、処理タンク(21)の外に出されるガスは脱臭されており、周囲の環境への影響を最小限とすることができる。
【0024】
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の排出物処理用移動体を限定したものである。
すなわち、移動体(10)は、少なくとも左右の側面および上面を囲ったコンテナボックス(12)を荷台(11)に備えるトラックとする。
また、前記加熱器(25)に用いる熱エネルギを供給するための発電装置(27)を前記コンテナボックス(12)の外に搭載し、 前記コンテナボックス(12)には、前記溶融処理装置(20)における少なくとも前記処理タンク(21)および前記調整装置(26)を配置するとともに、 前記処理タンク(21)は、前記コンテナボックス(12)において、前記調整装置(26)よりもトラックの運転席から遠い位置に配置したことを特徴とする。
【0025】
(作用)
移動体(10)をトラックとしたので、運転手がいれば排出物容器が排出される現場、例えば病院に移動できる。また、処理タンク(21)は、コンテナボックス(12)においては、処理タンク(21)が加熱器(25)よりもトラックの運転席から遠い位置に配置されている。すなわち、処理タンク(21)は、コンテナボックス(12)における後方に位置する。このため、コンテナボックス(12)における排出物容器の処理タンク(21)への投入作業をする作業者の動線が、処理タンク(21)がコンテナボックス(12)における後方に位置していない場合に比べて短くて済む。
排出物を処理タンク(21)に収納した後は、移動体の総重量が増える。しかし、増えた総重量のうち、処理タンク(21)において増えた体積は調整装置(26)に油として回収する。したがって、増加した重量の一部が処理タンク(21)よりも前方に位置する調整装置(26)に分散されるので、車両全体の重量バランスを調整することになり、移動体の運転安定性に寄与する。
【0026】
(請求項8)
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の排出物処理用移動体を限定したものである。
すなわち、前記コンテナボックス(12)における上面を覆う上面パネル(12a)には、前記処理タンク(21)が配置された位置にその処理タンクへの排出物容器の投入を可能とするためのタンク用投入口(12b)を備え、 そのタンク用投入口(12b)の下方に位置する前記処理タンク(21)には、前記タンク用投入口(12b)と前記処理タンク(21)における内部空間に連通するタンク上部投入口(21a)を備えたことを特徴とする。
【0027】
(作用)
排出物容器の処理タンク(21)への投入作業は、まず、コンテナボックス(12)の上面パネル(12a)に備えられたタンク用投入口(12b)を開ける。更に、タンク上部投入口(21a)を開ける。すると、前記タンク用投入口(12b)と前記処理タンク(21)における内部空間に連通するので、投入作業が行いやすい。
投入作業が終了したときには、処理タンク(21)の内部空間の温度を下げないようにするため、タンク用投入口(12b)およびタンク用投入口(12b)を閉じる。
【0028】
(請求項9)
請求項9に記載の発明は、請求項7から請求項8のいずれかに記載の排出物処理用移動体を限定したものである。
すなわち、前記処理タンク(21)を前記コンテナボックス(12)から移動させるためのタンク移動機構を備えたことを特徴とする。
【0029】
(作用)
タンク移動機構を備えているので、油化プラントにおける油化装置に戻す場合など、移動が必要な際に便利である。
【発明の効果】
【0030】
請求項1から請求項9に記載の発明によれば、油化処理が可能な排出物や廃棄物を、その発生場所、集積場所などに出向いて処理する技術を確保でき、排出物の輸送効率の向上させることができる排出物処理用移動体を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図1から図4を参照させながら、本願発明の実施形態について説明する。図1から図3は、本実施形態に係るトラックを概略的に示した図である。
このトラックは、所定の医療排出物が入ったプラスチック容器である排出物容器を溶融処理するための溶融処理装置(20)を搭載した移動体(10)である。そして、六面を囲ったコンテナボックス(12)を荷台(11)に備えるとともに、前記加熱器(25)に用いる熱エネルギを供給するための発電装置(27)を運転席および前記コンテナボックスの間に搭載している。
前記溶融処理装置(20)は、前記排出物容器を溶融させるための溶融油を蓄えるとともに当該排出物容器を投入可能な処理空間を備えた処理タンク(21)と、 その処理タンク(21)内の溶融油の温度を所定温度に保つための加熱器(25)と、 その加熱器(25)および前記処理タンク(21)との間で溶融油の量を調整するための調整装置(26)とを備えている。調整装置(26))には、回収タンク(26a)、ポンプ(26b)、配管、弁などが含まれる。
【0032】
「所定の医療排出物」とは、使い捨てにされる注射器、薬剤が入っていた容器、点滴チューブなど医療現場にて出される排出物である。
「排出物処理容器」は、処理タンク(21)に用いられる溶融油にて油化処理が可能な材質にて成型された樹脂容器である。蓋付きのポリバケツなどでもよいが、医療排出物を安全に収納して保持できるという条件を満たす必要がある。
【0033】
「処理タンク(21)内の溶融油である所定温度」とは、処理タンクにおける「処理」の段階(目的)によって異なる。本実施形態では、処理が油化あるいは油化の前処理を目的としており、摂氏200〜270度としている。
「溶融油」とは、排出物処理容器およびその排出物処理容器内の廃棄物(プラスチック)の液相のものよりも比重が軽く、且つ、その引火点及び発火点が当該プラスチックの融解点よりも高い油であり、本実施形態では、大豆油を採用した。因みに、大豆油と同様の不乾性植物油であるオリーブ油は、比重0.91、引火点225℃、発火点343℃である。一方、処理対象の一つであるポリスチロールの融解点は160〜180℃、比重は1.0〜1.3であって、いずれも上記の要件を満たしている。
本実施形態では、溶融油として、約3000リットルを処理タンク(27)に蓄えることとしている。また、調整装置(26)の回収タンク(26a)には、2880リットルの体積を確保しており、処理過程で増えた溶融油を回収できる。
【0034】
(内釜)
処理タンク(21)は、廃棄プラスチック等を油化処理する油化プラントにおける油化装置に用いる内釜である。これを図4に示す。「油化プラントにおける油化装置」とは、熱分解油化装置などと言われる。鉄鋼などで作製されるいわゆる内釜に対して、その底面や側面をバーナーの炎で加熱するのが「外釜」と呼ばれる。
この内釜となる処理タンク(21)における上部のフランジ部を、円筒形をなす処理タンク固定材(24)が支えることで、処理タンク(21)の底を浮かせた状態で保持する。処理タンク固定材(24)は、断熱効果のある素材を採用している。
【0035】
処理タンク(21)が廃棄プラスチック等を油化処理する油化プラントにおける油化装置に用いる内釜であるので、その処理タンク(21)をそのまま、油化プラントにおける油化装置に入れることができる。そのため、トラック(10)に積み込む前には、油化装置においてその内釜である処理タンク(21)に対して所定量の溶融油を満たし、加熱して溶融油が所定温度になったら、トラック(10)に積み込む。こうすることで、前記加熱器(25)および前記調整装置(26)が作動する時間を抑制できる。
処理タンク(21)内に多くの排出物容器を収容した後には、そのトラックによって油化プラントに戻り、その油化プラントおける油化装置に戻すことができる。
【0036】
前記処理タンク(21)は、その内部空間を形成する内面に沿って上部から下部側に移動可能な内蓋(22)と、その内蓋(22)を上下動させるためのリンク機構(23)とを備えている。前記の内蓋(22)は、処理タンク固定材(24)をコンテナボックス(12)の上面後方に設けたスライド蓋(12a)の真下付近に位置している。
排出物容器を処理タンク(21)に投入した直後には、排出物容器の中には空気が多く含まれているので溶融油に対して浮いてしまう。そのため、排出物容器の溶融が進まず、多くの排出物容器を投入することができない。そのため、内蓋(22)およびその内蓋(22)を上下動させるためのリンク機構(23)によって、投入した排出物容器を押し下げ、排出物容器の溶融を促進させる。その結果、早く多くの排出物容器を投入することができるようになる。
なお、上部投入口(21a)の真下には、内蓋(22)に内蓋開口部(22a)を備えてあり、内蓋開口部(22a)が開くことで、排出物容器の投入の際に内蓋(22)が邪魔にならない。
【0037】
前記処理タンク(21)には、前記処理タンク(21)における内部空間に連通する排気管(21b)を備える。また、その排気管(21b)には、前記処理タンク(21)における内部空間から排出されるガスを除菌する除菌フィルタを備えている。この除菌フィルタは、脱臭効果もある。
【0038】
投入された排出物容器は、溶融油に浸ることで溶融が開始され、内部を占めていた多くの空気が処理タンク(21)内に充満し、やがて排気管(21b)を介して処理タンク(21)の外に出る。その際、処理タンク(21)の外に出る空気は、溶融油からもたらされる熱に、十分にさらされていない可能性がある。そのため、除菌が不十分であることが予想される。しかし、排気管(21b)には除菌・脱臭装置(21c)が連結され、その中には除菌フィルタが備えられているので、処理タンク(21)における内部空間から排出されるガスを除菌することができる。なお、除菌とともに脱臭処理も実行されるので、トラック(10)が処理を実行している場所の周囲に対する影響を最小限に抑えることができる。
【0039】
前記コンテナボックス(12)には、前記溶融処理装置(20)における少なくとも前記処理タンク(21)および前記加熱器(25)を配置する。また、前記処理タンク(21)は、前記コンテナボックス(12)において、前記加熱器(25)よりもトラックの運転席から遠い位置に配置している。
【0040】
移動体(10)はトラックであるので、運転手がいれば排出物容器が排出される現場、例えば病院に移動することができる。
コンテナボックス(12)においては、処理タンク(21)が加熱器(25)よりもトラックの運転席から遠い位置に配置されている。すなわち、処理タンク(21)は、コンテナボックス(12)における後方に位置する。このため、コンテナボックス(12)における排出物容器の処理タンク(21)への投入作業をする作業者の動線が、処理タンク(21)がコンテナボックス(12)における後方に位置していない場合に比べて短くて済む。
なお、発電装置(27)は、軽油発電方式であるため運転中に排気ガスを出すので、コンテナボックス(12)の外に位置させた方がよいからである。この発電装置(27)の能力は、50アンペアである。
【0041】
コンテナボックス(12)は六面を囲っており、処理タンク固定材(24)にも断熱材が含まれているので、暖めた処理タンク(21)であっても冷めにくい。
前記コンテナボックス(12)における上面を覆う上面パネル(12a)には、前記処理タンク(21)が配置された位置にその処理タンクへの排出物容器の投入を可能とするためのタンク用投入口(12b)を備える。また、そのタンク用投入口(12b)の下方に位置する前記処理タンク(21)には、前記タンク用投入口(12b)と前記処理タンク(21)における内部空間に連通するタンク上部投入口(21a)を備えている。
【0042】
排出物容器の処理タンク(21)への投入作業は、まず、コンテナボックス(12)の上面パネル(12a)に備えられたタンク用投入口(12b)を開ける。更に、タンク上部投入口(21a)を開ける。すると、前記タンク用投入口(12b)と前記処理タンク(21)における内部空間に連通するので、投入作業が行いやすい。
投入作業が終了したときには、処理タンク(21)の内部空間の温度を下げないようにするため、タンク用投入口(12b)およびタンク用投入口(12b)を閉じる。
【0043】
記述してきた実施形態に係る医療排出物処理用の移動体(10)が、排出物容器が排出される現場、例えば病院に移動する。そして、移動体(10)の運転手などの作業者が、排出物容器を処理タンク(21)に投入する。このとき、処理タンク(21)の処理空間には、溶融油が排出物容器を処理するための所定温度となった溶融油が貯留している。したがって、投入された排出物容器は、溶融油に浸ることで溶融が開始される。
溶融が開始されると溶融油の温度が下がるが、加熱器(25)および調整装置(26)によって処理タンク(21)内の溶融油の温度は所定温度に保たれる。そのため、処理タンク(21)に投入された排出物容器を丸ごと加熱することができ、除菌されつつ溶融される。
【0044】
溶融温度は、医療排出物からの感染症を防ぐための滅菌に必要な温度よりも十分高く、溶融が開始されれば滅菌時間も十分に確保できる。したがって、本発明を実施することによる感染症の危険性は著しく低い。
また、排出物容器に入っている非処理物は、注射器、ガーゼなど空気を多く含んでいる。このため、排出物容器の溶融が進めば、注射器などに入っていた空気が処理タンク(21)から出るので、著しく体積が減少する。このため、排出物容器をそのまま輸送することに比べ、極めて多くの排出物容器を輸送できることとなる。
【0045】
本実施形態に係るトラック(10)が図4に示すような油化プラントに戻る際には、後方に位置する処理タンク(21)と前方に位置する回収用タンク(26a)とに重量が分散されるので、運搬におけるトラック(10)への負担が軽減される。
図示は省略するが、トラック(10)にタンク移動機構を備えていれば、油化プラントにおける油化装置に戻す場合など、移動が必要な際に便利である。
油化プラントにおける油化装置に処理タンク(21)が内釜として戻されれば、そのまま油化処理を続行することができる。したがって、トラック(10)の溶融処理装置(20)による油化処理が不完全であっても、この油化プラントにおける完全な油化処理が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本願発明は、医療排出物に限らず、油化処理可能な廃棄物の運送業、油化処理などのリサイクル業などにおいて用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】トラックを概略的に示した側面図である。
【図2】トラックを概略的に示した平面図である。
【図3】トラックを概略的に示した斜視図である。
【図4】油化プラントにおける油化装置の主要部を示す側面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 トラック 11 荷台
12 コンテナボックス 12a スライド蓋
20 溶融処理装置
21 処理タンク 21a 上部投入口
21b 排気管 21c 除菌・脱臭装置
22 内蓋 22a 内蓋開口部
23 リンク機構
24 処理タンク固定材
25 加熱器
26 調整装置 26a 回収タンク
26b ポンプ
27 発電装置
30 油化装置 31 外釜



【特許請求の範囲】
【請求項1】
油化が可能な所定の排出物を溶融処理するための溶融処理装置を搭載した移動体であって、
前記溶融処理装置は、前記排出物を溶融させるための溶融油を蓄えるとともに当該排出物容器を投入可能な処理空間を備えた処理タンクと、
その処理タンク内の溶融油の温度を所定温度に保つための加熱器と、
前記処理タンク内の溶融油の量を調整する調整装置と、を備えたことを特徴とする排出物処理用移動体。
【請求項2】
前記所定の排出物は、所定の医療排出物とし、その所定の医療排出物は、プラスチック容器である排出物容器に入れられていることを特徴とする請求項1に記載の排出物処理用移動体。
【請求項3】
前記処理タンクは、廃棄プラスチック等を油化処理する油化プラントにおける油化装置に用いる内釜としたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の排出物処理用移動体。
【請求項4】
前記処理タンクには、その内部空間を形成する内面に沿って上部から下部側に移動可能な内蓋と、
その内蓋を上下動させるための内蓋上下動機構と、を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の排出物処理用移動体。
【請求項5】
前記処理タンクには、その内部空間に連通する排気管を備え、
その排気管には、前記処理タンクにおける内部空間から排出されるガスを除菌する除菌フィルタを備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の排出物処理用移動体。
【請求項6】
前記排気管には、前記処理タンクにおける内部空間から排出されるガスの脱臭を行う脱臭装置を備えたことを特徴とする請求項5に記載の排出物処理用移動体。
【請求項7】
移動体は、少なくとも左右の側面および上面を囲ったコンテナボックスを荷台に備えるトラックとし、
前記加熱器に用いる熱エネルギを供給するための発電装置を前記コンテナボックスの外に搭載し、
前記コンテナボックスには、前記溶融処理装置における少なくとも前記処理タンクおよび前記調整装置を配置するとともに、
前記処理タンクは、前記コンテナボックスにおいて、前記調整装置よりもトラックの運転席から遠い位置に配置したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の排出物処理用移動体。
【請求項8】
前記コンテナボックスにおける上面を覆う上面パネルには、前記処理タンクが配置された位置にその処理タンクへの排出物容器の投入を可能とするためのタンク用投入口を備え、
そのタンク用投入口の下方に位置する前記処理タンクには、前記タンク用投入口と前記処理タンクにおける内部空間に連通するタンク上部投入口を備えたことを特徴とする請求項7に記載の排出物処理用移動体。
【請求項9】
前記処理タンクを前記コンテナボックスから移動させるためのタンク移動機構を備えた請求項7から請求項8のいずれかに記載の排出物処理用移動体。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−252986(P2007−252986A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77476(P2006−77476)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(506094426)
【出願人】(506095548)
【Fターム(参考)】