排気ガス浄化用触媒装置
【課題】上流側触媒3と下流側触媒5とを備える排気ガス浄化用触媒装置において、空燃比が急激にリーンになる状況でも、排気ガス温度の高低に拘わらず、HC、CO及びNOxを効率良く浄化できるようにする。
【解決手段】上流側触媒3のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材としてRhドープCeZr系複合酸化物とRh担持CeZr系複合酸化物とを含有し、下流側触媒5のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材としてはRhドープCeZr系複合酸化物のみを含有し、上記両Rh含有触媒層の酸素吸蔵放出材含有量は、上流側触媒3の方が下流側触媒5よりも少なく、上流側触媒3の上記RhドープCeZr系複合酸化物は下流側触媒5の上記RhドープCeZr系複合酸化物よりも、ピーク粒径が小さい粒度分布をもつ。
【解決手段】上流側触媒3のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材としてRhドープCeZr系複合酸化物とRh担持CeZr系複合酸化物とを含有し、下流側触媒5のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材としてはRhドープCeZr系複合酸化物のみを含有し、上記両Rh含有触媒層の酸素吸蔵放出材含有量は、上流側触媒3の方が下流側触媒5よりも少なく、上流側触媒3の上記RhドープCeZr系複合酸化物は下流側触媒5の上記RhドープCeZr系複合酸化物よりも、ピーク粒径が小さい粒度分布をもつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気ガス浄化用触媒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンと電動モータとを駆動源として併用するハイブリッド式自動車によれば、環境負荷となるエミッションの低減が図れるが、エンジンの排気ガスをさらに効率良く浄化することも重要である。従来より、エンジンを理論空燃比近傍で運転するときは、HC(炭化水素)、CO及びNOx(窒素酸化物)を同時に浄化することができる三元触媒が用いられ、その触媒金属としては、Pt、Pd、Rh等が採用されている。
【0003】
この三元触媒は、エンジンから排出される排気ガスの空燃比がリーン状態或いはリッチ状態なると、上記HC、CO及びNOxの浄化性能が低下する。そこで、三元触媒には、触媒周囲がリーンになると酸素を吸蔵し、リッチになると酸素を放出するCe含有酸化物よりなる酸素吸蔵放出材を含ませることが行なわれている。つまり、この酸素の吸蔵・放出によって触媒周囲の空燃比をストイキ近傍にコントロールし、排気ガス浄化性能の低下を防止するものである。また、このCe含有酸化物単独では酸素吸蔵放出量にも限界があるので、このCe含有酸化物の表面に酸素の吸蔵を促進する成分を担持することもなされている。その成分は、例えばPt、Pd、Rh等である。
【0004】
すなわち、Pt、Pd及びRhは、HC及びCOの酸化、並びにNOxの還元を促進する触媒金属としてだけでなく、三元触媒が浄化性能を発揮し易くなるように、酸素吸蔵放出材と相俟って触媒周囲の空燃比をコントロールする成分としても機能するようされている。しかし、それらは稀少資源であることから、その使用量を少なくしながら、高い排気ガス浄化性能を発揮するように触媒を構成することが求められる。
【0005】
ところで、エンジンの排気通路における排気ガス流れの上流側と下流側とにそれぞれ三元触媒を配置してなる排気ガス浄化用触媒装置は一般に知られている。例えば、排気マニホールド下流端に結合される所謂直結触媒と、該直結触媒よりも排気ガス流れ下流側の自動車床下に配置される所謂床下触媒とによって排気ガスを浄化するというものである。この触媒装置の場合、上流側の直結触媒は、排気ガスの熱によって速やかに活性を呈する温度になるから、エンジン始動時等に排出される温度が比較的低い排気ガスの浄化に有効である。一方、エンジンから高温の排気ガスが比較的多量に排出される頃には、下流側の床下触媒も活性を呈する温度になっているから、直結触媒と床下触媒との協働によって排気ガスが効率良く浄化されることになる。
【0006】
このような上流側と下流側の両触媒で構成される触媒装置については、例えば、特許文献1〜3に記載されている。このうち、特許文献1には、RhドープCeZr系複酸化物を上流側触媒の酸素吸蔵放出材に採用することによって、該上流側触媒の酸素吸蔵材を下流側触媒の酸素吸蔵材よりも同温度下における酸素吸蔵量が多い構成とすることが記載されている。これは、排気ガス浄化性能の向上及び耐熱性の確保を図りながら、装置の小型化ないしはレイアウト性の向上を図ることを課題とするものである。上流側触媒の酸素吸蔵放出材の性能を高めることによって、排気ガスの空燃比が大きな振幅で変動する場合でも良好な排気ガス浄化性能が得られるようにされている。
【0007】
一方、特許文献2には、RhドープCeZrNd複酸化物の表面にRhを担持したものを下流側触媒の酸素吸蔵放出材として採用し、上流側触媒には、RhドープCeZrNd複酸化物よりも酸素吸蔵能が低い酸素吸蔵放出材を採用することが記載されている。これは、RhドープCeZrNd複酸化物の表面に担持されているRhが、空燃比の変動に伴って当該複酸化物から放出される活性酸素によって酸化され、触媒活性の高い還元状態に戻らなくなることを問題にするものである。すなわち、Rh担持RhドープCeZrNd複酸化物を上流側触媒ではなく下流側触媒に配置し、上流側触媒をスリップして下流側に流れるHCやCOを還元剤として、RhドープCeZrNd複酸化物表面に担持されているRhを高活性状態に維持するというものである。また、下流側触媒にPtを担持した活性アルミナを設け、これによって、上記HCを酸化させて還元力の強いCO等に転化し、Rhの賦活(還元)を図るようにされている。
【0008】
特許文献3には、RhドープCeZrNd複酸化物とPt担持アルミナとを組み合わせることにより、排気ガスがリーンである状態が続いたときの、RhドープCeZrNd複酸化物のRhの酸化をPt担持アルミナによって抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−291918号公報
【特許文献2】特開2008−62156号公報
【特許文献3】特開2006−35043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1〜3に記載の触媒装置の構成を採用すると、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ特性の向上(ライトオフ温度を下げること)や高温浄化性能の向上が顕著であり、排気ガスの空燃比が変動する場合でも高い浄化率が得られる。しかし、自動車の運転においては、減速時の燃料カットによって排気ガスの空燃比が急激にリーンになることがあり、そのとき、NOxの浄化が悪くなる。
【0011】
そこで、本発明は、上流側触媒と下流側触媒とを備える排気ガス浄化用触媒装置において、空燃比が急激にリーンになる状況でも、排気ガス温度の高低に拘わらず、HC、CO及びNOxを効率良く浄化できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、上流側触媒の触媒層においては、酸素の吸蔵放出が比較的低温から発現するようにし、上流側触媒の触媒層での排気ガスの浄化に伴って発生する触媒反応熱を下流側触媒の昇温に利用するようにした。
【0013】
すなわち、ここに提示する排気ガス浄化用触媒装置は、エンジンの排気通路における排気ガス流れの上流側と下流側とに配置された2つの触媒を有し、
上記上流側触媒及び下流側触媒各々は、担体上にRhを含有する触媒層を備え、
上記上流側触媒のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材として、Ce及びZrを含有し且つRhを固溶してなるRhドープCeZr系複合酸化物と、Ce及びZrを含有し且つ表面にRhを担持してなるRh担持CeZr系複合酸化物とを含有し、
上記下流側触媒のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材としては、Ce及びZrを含有し且つRhを固溶してなるRhドープCeZr系複合酸化物のみを含有し、
上記上流側触媒及び下流側触媒各々のRh含有触媒層の酸素吸蔵放出材含有量は、上流側触媒の方が下流側触媒よりも少なく、
上記上流側触媒のRh含有触媒層が酸素吸蔵放出材として含有するRhドープCeZr系複合酸化物は、上記下流側触媒のRh含有触媒層が酸素吸蔵放出材として含有するRhドープCeZr系複合酸化物よりも、ピーク粒径が小さい粒度分布をもつことを特徴とする。
【0014】
ここに、上流側触媒及び下流側触媒各々のRh含有触媒層は、共に酸素吸蔵放出材としてRhドープCeZr系複合酸化物を含有する。そのRhドープCeZr系複合酸化物の粒度分布に関し、上流側触媒の方が下流側触媒よりもピーク粒径が小さいということは、上流側触媒のRhドープCeZr系複合酸化物は、下流側触媒のRhドープCeZr系複合酸化物よりも、排気ガスとの接触機会が多いということである。よって、上流側触媒のRh含有触媒層では、排気ガス温度が低いときでも、RhドープCeZr系複合酸化物による酸素の吸蔵・放出が比較的活発に行なわれる。
【0015】
従って、上流側触媒のRh含有触媒層では、酸素吸蔵放出材含有量が下流側触媒よりも少ないにも拘わらず、自動車の減速時のような排気ガスの空燃比が急激にリーン化する状況において(このときは排気ガス温度も低い)、NOxの還元及びHC、COの酸化が効率良く進む。そして、そのことによって発生する触媒反応熱により、下流側触媒のRh含有触媒層の温度が高くなり、この下流側でも、排気ガスの浄化が進み易くなる。しかも、上流側触媒のRh含有触媒層の酸素吸蔵放出材含有量が少ないから、触媒の熱容量を小さくすることができ、よって、触媒の早期昇温、ひいては排気ガス浄化性能の向上に有利になり、コスト低減にも有利になる。
【0016】
好ましいのは、下流側触媒のRhドープCeZr系複合酸化物は、550nm以上1200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつ構成とし、上流側触媒のRhドープCeZr系複合酸化物は、上流側触媒の上記酸素吸蔵放出材よりも、小さな粒径範囲(例えば、100nm以上300nm以下の粒径範囲)にピークを有する粒度分布をもつ構成とすることである。
【0017】
好ましい実施形態では、上記下流側触媒は、担体上に上記Rh含有触媒層のみを備え、該Rh含有触媒層は、上記酸素吸蔵放出材としてのRhドープCeZr系複合酸化物に加えて、活性アルミナの表面にPtを担持してなるPt担持アルミナを含有することを特徴とする。
【0018】
すなわち、Ptは主としてHCやCOの酸化に働き、Rhは主としてNOxの還元に働くところ、Rhは空燃比リーンの排気ガスに晒されると、酸化されてその触媒機能が低下する。一方、空燃比がリッチになると、それだけRhまわりでは還元剤として働くHCやCOが多くなるものの、Rhの雰囲気温度が低いときには、Rhの還元が図れない。
【0019】
これに対して、Ptは、空燃比がリーンからリッチに切り換わってもHCやCOを酸化浄化する働きがあり、その触媒反応熱によってRhの雰囲気温度が高くなるとともに、当該触媒反応によって部分酸化した活性の高いHCが生成される。このため、酸化された状態になっているRhが排気ガス中のHCやCO、さらには部分酸化HCによって還元され易くなり、その活性が維持され、NOxの還元に有利になる。
【0020】
しかも、下流側触媒は、担体上にRh含有触媒層のみを備える構成とすることにより、その熱容量を小さくすることができる。よって、上流側触媒で発生する触媒反応熱による下流側触媒の早期昇温を図る上で有利になり、RhドープCeZr系複合酸化物とPt担持アルミナとの協働による排気ガスの効果的な浄化に有利になる。
【0021】
また、好ましい実施形態では、上記上流側触媒のRh含有触媒層は、上記酸素吸蔵放出材としてのRhドープCeZr系複合酸化物及びRh担持CeZr系複合酸化物に加えて、活性アルミナにZr、La及びアルカリ土類金属を含有するZrLa系複合酸化物が担持され該ZrLa系複合酸化物にRhが担持されてなる触媒成分を含有することを特徴とする
すなわち、活性アルミナは耐熱性が高く且つ比表面積が大きいことから、Rhを高分散状態で担持することができ、触媒活性の向上に有利になるが、触媒層が高温に晒される状態が度重なると、年月の経過と共に、Rhがアルミナに固溶して失活していく。これに対して、上述の活性アルミナにZrLa系複合酸化物が担持され、該ZrLa系複合酸化物にRhが担持されてなる触媒粒子の場合、ZrLa系複合酸化物を介してRhを活性アルミナに高分散に担持させることができるだけでなく、Rhが活性アルミナに固溶することがZrLa系複合酸化物によって妨げられ、上記失活の防止に有利になる。
【0022】
しかも、ZrLa系複合酸化物上のRhは、排気ガスの空燃比がリーンからリッチに変わっても、それほど還元されずに適度に酸化された状態を保つ。すなわち、ZrLa系複合酸化物にRhを担持させると、このZrLa複酸化物とRhとの間にLa−O−Rhの結合が形成され、RhはLaの働きによって酸化状態をとり易くなると考えられる。その結果、Rhが還元されるとHCやCOの酸化には不利になるところ、リッチになっても、ZrLa複酸化物上のRhが適度に酸化された状態を保つから、HC酸化能やCO酸化能の低下が少なくなる。また、このようにリッチになってもHCやCOが酸化されることから、その酸化と同時にNOxの還元も進むことになり、NOxの還元浄化に有利になる。
【0023】
そうして、上記ZrLa系複合酸化物は、上記Zr及びLaに加えてアルカリ土類金属を含有するから、排気ガス成分の吸着・浄化が効率良く進み、その浄化に有利になる。すなわち、Zr及びLaは酸化物が塩基性を示すが、アルカリ土類金属はそれらよりも強い塩基性を示す。そのため、当該ZrLa系複合酸化物には強さが異なるバリエーションに富んだ塩基性サイトが形成され、排気ガス成分の吸着・浄化が効率良く進む。
【0024】
上記アルカリ土類金属としては、ZrO2に固溶し易いMg、Ca及びSrが好ましく、塩基性が強いSrが特に好ましい。さらにまた、これらアルカリ土類金属は二種以上を含有させてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上流側触媒のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材として、RhドープCeZr系複合酸化物とRh担持CeZr系複合酸化物とを含有し、下流側触媒のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材としてはRhドープCeZr系複合酸化物のみを含有し、上流側触媒及び下流側触媒各々のRh含有触媒層の酸素吸蔵放出材含有量は、上流側触媒の方が下流側触媒よりも少なく、上流側触媒の上記RhドープCeZr系複合酸化物は、下流側触媒の上記RhドープCeZr系複合酸化物よりも、ピーク粒径が小さい粒度分布をもち、排気ガスとの接触機会が多い。従って、自動車の減速時のような排気ガスの空燃比が急激にリーン化する状況において、上流側触媒のRh含有触媒層では、NOxの還元及びHC、COの酸化が効率良く進み、その酸化・還元に伴って発生する反応熱によって、下流側触媒のRh含有触媒層の温度が高くなり、この下流側でも、排気ガスの浄化が進み易くなる。しかも、上流側触媒の熱容量を小さくすることができ、触媒の早期昇温、ひいては排気ガス浄化性能の向上に有利になり、コスト低減にも有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る排気ガス浄化用触媒装置の構成図である。
【図2】同装置の上流側触媒の構成図である。
【図3】同装置の下流側触媒の構成図である。
【図4】2種類の酸素吸蔵放出材の粒度分布を示すグラフ図である。
【図5】2種類の酸素吸蔵放出材の酸素吸蔵速度の経時変化を示すグラフ図である。
【図6】3種類の酸素吸蔵放出材の酸素吸蔵速度を示すグラフ図である。
【図7】酸素吸蔵放出量測定装置の構成図である。
【図8】酸素吸蔵放出量の測定におけるサンプル前後のA/F及びサンプル前後のA/F差の経時変化を示すグラフ図である。
【図9】酸素吸蔵放出量の測定における触媒前後のA/F差の経時変化を示すグラフ図である。
【図10】3種類の上側触媒層の酸素放出量の温度特性を示すグラフ図である。
【図11】EUモード(排気ガス試験における自動車の走行モード)の一部を示すグラフ図である。
【図12】実施例及び比較例のエミッション排出量を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0028】
図1に示す本発明に係る排気ガス浄化用触媒装置の構成において、1は自動車のエンジン、2は排気マニホールド、3は排気マニホールド2の下流端に直結された上流側触媒、4は上流側触媒3より自動車後方に延びる排気管、5は自動車の床下位置において排気管4に設けた下流側触媒である。すなわち、上流側触媒3及び下流側触媒5は、エンジン1の排気通路における排気ガス流れの上流側と下流側とに分かれて配置されている。
【0029】
図2は上流側触媒3の構成を模式的に示す。同図において、6はハニカム担体のセル壁であり、このセル壁6に上側触媒層7と下側触媒層8とが積層されていて、上側触媒層7の表面がハニカム担体6の排気ガス流路を形成している。
【0030】
上側触媒層7は、Rh含有触媒層であって、Rh担持CeZrNd複合酸化物(Rh/CZN)11、Rh担持ZrLa系複合酸化物被覆アルミナ(Rh/Z/A)12、及び活性アルミナ(Al2O3)13を含有し、さらに粒子径が他の触媒粒子に比べて相対的に小さいRhドープCeZrNdY複合酸化物(RhドープCZNY)14を含有する。
【0031】
ここに、上側触媒層7では、Rh担持CeZrNd複合酸化物11及びRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14が、Rhを担持又は含有する酸素吸蔵放出材として用いられており、さらに、後者のRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14はバインダ材としての役割も果たしている。RhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14は、共沈法によって調製したRhドープCeZrNdY複合酸化物(大粒子)をさらに湿式粉砕して粒子径を小さくしたものであり、この点は後述する。
【0032】
下側触媒層8は、Pd含有触媒層であって、CeZrNd複合酸化物(CZN)15、Pd担持CeZrNd複合酸化物(Pd/CZN)16、及びPd担持活性アルミナ(Pd/A)17を含有し、さらにジルコニアバインダ(ZrO2)18を含有する。ここに、下側触媒層8のCeZrNd複合酸化物15及びPd担持CeZrNd複合酸化物16も酸素吸蔵放出能を有する。
【0033】
図3は下流側触媒5の構成を模式的に示す。ハニカム担体のセル壁6に形成された単一の触媒層19とを備え、該触媒層19の表面がハニカム担体6の排気ガス流路を形成している。この触媒層19は、Rh及びPtを含有する触媒層であって、RhドープCeZrNd複合酸化物の表面にRhを担持してなるRh担持RhドープCeZrNd複合酸化物(Rh/RhドープCZN)20と、活性アルミナの表面にPtを担持してなるPt担持アルミナ(Pt/A)21とを含有し、さらにジルコニアバインダ(ZrO2)18を含有する。ここに、触媒層19ではRh担持RhドープCeZrNd複合酸化物20がRhを担持・含有する酸素吸蔵放出材として用いられている。
【0034】
Rh担持RhドープCeZrNd複合酸化物20は、上流側触媒3の上側触媒層7のRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14よりもピーク粒径が大きな粒度分布をもつRhドープCeZrNd複合酸化物(大粒子)にRhを担持したものである。
【0035】
上記触媒装置の特徴の一つは、上流側触媒3の上側触媒層7に、酸素吸蔵放出材及びバインダ材として、RhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14を採用した点にある。このRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)の調製法は次のとおりであり、共沈法と湿式粉砕法を用いている。
【0036】
すなわち、硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸イットリウム6水和物と硝酸ロジウム溶液とをイオン交換水に溶かす。この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、共沈物を得る。この共沈物を遠心分離法で水洗した後、空気中において150℃の温度で一昼夜乾燥させ、粉砕した後、空気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行なうことにより、RhドープCeZrNdY複合酸化物(大粒子)の粉末を得る。
【0037】
上記RhドープCeZrNdY複合酸化物(大粒子)の粉末にイオン交換水を添加してスラリー(固形分25質量%)とし、このスラリーをボールミルに投入して、0.5mmのジルコニアビーズによって粉砕する(湿式粉砕;約3時間)。以上により、粒径が小さくなったRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)の粉末が分散したゾルを得る。このゾルを上流側触媒3の上側触媒層7の酸素吸蔵放出材及びバインダ材として用いている。
【0038】
<酸素吸蔵放出材の粒度分布>
図4はRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14(図4では「Rhドープ小粒子」と記している。)及びRh担持CeZrNd複合酸化物11(図4では「Rh担持」と記している。)の粒度分布(頻度分布)を示す。粒度分布の測定には、株式会社島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた。
【0039】
RhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14は、100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有し、Rh担持CeZrNd複合酸化物11は550nm以上1200nm以下の粒径範囲にピークを有する。RhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14の場合、累積分布10質量%粒径が109nm、累積分布50質量%粒径が184nm、累積分布90質量%粒径が287nmである。すなわち、累積分布10質量%粒径は100nm以上であり、累積分布90質量%粒径は300nm以下である。Rh担持CeZrNd複合酸化物11の場合、累積分布10質量%粒径が576nm、累積分布50質量%粒径が848nm、累積分布90質量%粒径が1160nmである。すなわち、累積分布10質量%粒径は550nm以上であり、累積分布90質量%粒径は1200nm以下である。上記湿式粉砕前のRhドープCeZrNdY複合酸化物(大粒子)もRh担持CeZrNd複合酸化物11と同様の粒度分布をもつ。
【0040】
<酸素吸蔵速度>
酸素吸蔵放出材としてのRhドープCeZrNdY複合酸化物(大粒子)とこれを湿式粉砕したRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)とについて、熱エージング(大気雰囲気,1000℃×24時間)後、酸素過剰雰囲気での酸素吸蔵速度を測定した。測定にあたっては、ガラス管内に一定量入れられた粉末試料(酸素吸蔵放出材と活性アルミナとを10:90の質量比で混合したもの)の温度を500℃に保ち、定常的に排気しながら、5msのO2パルスを60秒毎に発生させ、これを数サイクル行なった後、今度はO2パルス発生から30秒遅れで10msのCOパルスを発生させていくようにした。その間、質量分析計によって各サイクルにおけるマスナンバー32の信号強度(O2量)の経時変化を計測するようにした。そして、COパルス前の信号強度の経時変化と、COパルス後の信号強度の経時変化とを求めた。この場合、COパルス前とCOパルス後の両信号強度に差を生じているのは、その試料が酸素を吸蔵したことによるものである。よって、COパルス前の信号強度からCOパルス後の信号強度を差し引くと、酸素吸蔵量が得られ、これから、酸素吸蔵速度(単位時間、単位量当たりの吸蔵量)を求めることができる。なお、試料では、実際には酸素を吸蔵しながら、先に吸蔵した酸素の放出も行なわれているから、ここでいう酸素吸蔵速度は見かけの酸素吸蔵速度である。
【0041】
図5はRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)(図5では「Rhドープ小粒子」と記している。)及びRhドープCeZrNdY複合酸化物(大粒子)(図5では「Rhドープ大粒子」と記している。)の酸素吸蔵速度の経時変化を示す。酸素吸蔵速度は小粒子の方が大粒子よりも大きくなっている。
【0042】
Rh担持CeZrNdY複合酸化物(「Rh担持」)についても同様に酸素吸蔵速度の測定を行なった。図6はRhドープCeZrNdY複合酸化物(「Rhドープ小粒子」)、RhドープCeZrNdY複合酸化物(「Rhドープ大粒子」)及びRh担持CeZrNdY複合酸化物(「Rh担持」)各々の、測定開始から0.5秒間の平均酸素吸蔵速度を示す。Rh担持CeZrNdY複合酸化物(「Rh担持」)の酸素吸蔵速度はRhドープCeZrNdY複合酸化物(「Rhドープ大粒子」)よりもさらに小さくなっている。
【0043】
<実施例1>
上流側触媒3にセル壁厚さ3.5mil(8.89×10−2mm)、1平方インチ(645.16mm2)当たりのセル数600のセラミックス製ハニカム担体(容量約1L)を用い、下流側触媒5にセル壁厚さ4.5mil(11.43×10−2mm)、1平方インチ(645.16mm2)当たりのセル数400のセラミックス製ハニカム担体(容量約1L)を用い、次のように触媒装置を構成した。
【0044】
−上流側触媒3の上側触媒層7−
Rh担持CeZrNd複合酸化物11として、CeZrNd複合酸化物(CeO2:ZrO2:Nd2O3=10:80:10(質量比))にRhを蒸発乾固法で担持させたものを採用した。担体1L当たりの含有量は70g(そのうちのRhが0.304g)である。粒度分布は先に説明した図4に示す「Rh担持」のとおりである。上記CeZrNd複合酸化物の調製には共沈法を採用した。
【0045】
Rh担持ZrLa系複合酸化物被覆アルミナ12として、ZrLaSr複合酸化物被覆アルミナにRhを蒸発乾固法で担持させたものを採用した。ZrLaSr複合酸化物被覆アルミナは、ZrとLaとSrを含有するZrLaSr複合酸化物が活性アルミナの表面に担持されてなるものであり、次のようにして調製した。すなわち、硝酸ジルコニウム、硝酸ランタン及び硝酸ストロンチウムの混合溶液に活性アルミナ粉末を分散させ、これにアンモニア水を加えて沈殿を生成した。得られた沈殿物を濾過、洗浄し、200℃で2時間保持する乾燥、並びに500℃に2時間保持する焼成を行なうことにより、ZrLaSr複合酸化物被覆アルミナ粉末を得た。その組成は、ZrO2:La2O3:SrO:Al2O3=38:2:1.5:58.5(質量比)である。担体1L当たりのRh担持ZrLaSr複合酸化物被覆アルミナの含有量は30g(そのうちのRhが0.107g)である。
【0046】
活性アルミナ13として、La2O3を4質量%含有するものを採用した。担体1L当たりの含有量は10gである。
【0047】
RhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14として、CeZrNdY複合酸化物(CeO2:ZrO2:Nd2O3:Y2O3=10:80:5:5(質量比))にRhがドープされたものを採用した。その調製法は先に説明したとおりである。また、粒度分布は図4に示す「Rhドープ小粒子」のとおりである。担体1L当たりの含有量は12g(そのうちのRhが0.006g)である。このRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)のゾルを当該上側触媒層7ではバインダとして用いている。
【0048】
−上流側触媒3の下側触媒層8−
CeZrNd複合酸化物15として、共沈法によって調製した組成がCeO2:ZrO2:Nd2O3=23:67:10(質量比)であるものを採用した。担体1L当たりの含有量は20gである。Pd担持CeZrNd複合酸化物16として、共沈法によって調製したCeZrNd複合酸化物(CeO2:ZrO2:Nd2O3=23:67:10(質量比))にPdを蒸発乾固法で担持したものを採用した。担体1L当たりの含有量は35g(そのうちのPdが0.194g)である。Pd担持活性アルミナ17として、La2O3を4質量%含有する活性アルミナにPdを蒸発乾固法で担持したものを採用した。担体1L当たりの含有量は45g(そのうちのPdが1.889g)である。また、担体1L当たりのジルコニアバインダ18の含有量は10gである。
【0049】
−下流側触媒5の触媒層19−
Rh担持RhドープCeZrNd複合酸化物20として、RhドープCeZrNd複合酸化物(大粒子)にRhを蒸発乾固法によって担持させたものを採用した。RhドープCeZrNd複合酸化物(大粒子)は、CeZrNd複合酸化物(CeO2:ZrO2:Nd2O3=23:67:10(質量比))にRhがドープされたものであり、共沈法によって調製した。湿式粉砕は行っていない。従って、Rh担持RhドープCeZrNd複合酸化物20の粒度分布は図4に示す「Rh担持」と同様である。担体1L当たりの含有量は112g(そのうちRhのドープ量が0.006g、Rhの担持量が0.035g)である。
【0050】
Pt担持アルミナ(Pt/A)21として、La2O3を4質量%含有する活性アルミナにPtを蒸発乾固法で担持したものを採用した。担体1L当たりの含有量は50g(そのうちのPtが0.050g)である。また、担体1L当たりのジルコニアバインダ18の含有量は18gである。
【0051】
実施例の上流側触媒3及び下流側触媒5の各成分の担体1L当たりの含有量は表1に示すとおりである。上流側触媒の上側触媒層の酸素吸蔵放出材(Rh担持CeZrNd複合酸化物及びRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子))の担体1L当たりの合計含有量は82gであって、下流側触媒の触媒層の酸素吸蔵放出材(Rh担持RhドープCeZrNd複合酸化物)の担体1L当たりの含有量112gよりも少ない。
【0052】
【表1】
【0053】
<比較例>
上流側触媒3の上側触媒層7について、RhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14に代えてアルミナバインダ(担体1L当たりの含有量10g)を採用し、Rh担持CeZrNd複合酸化物11の担体1L当たりの含有量を82g(そのうちのRhが0.310g)となるように変更し、さらに、活性アルミナ13の含有量を零とする他は実施例と同様に触媒装置を構成した。比較例の上流側触媒3及び下流側触媒5の各成分の担体1L当たりの含有量は表2に示すとおりである。
【0054】
【表2】
【0055】
<酸素吸蔵放出量について>
実施例の上流側触媒の上側触媒層のみ、実施例の下流側触媒の触媒層のみ、及び比較例の上流側触媒の上側触媒層のみをそれぞれ担体上に形成した供試材(触媒層は単層)を準備し、担体容量約25mLのコアサンプルを切り出し、これをモデルガス流通反応装置に取り付け、酸素吸蔵放出量の測定を行った。図7は、酸素吸蔵放出量を測定するための試験装置の構成を示す。同図において、符号31はサンプル32を保持するガラス管であり、サンプル32はヒータ33によって所定温度に加熱保持される。ガラス管31のサンプル32よりも上流側には、ベースガスN2を供給しながらO2及びCOの各ガスをパルス状に供給可能なパルスガス発生装置34が接続され、ガラス管31のサンプル32よりも下流側には排気部38が設けられている。ガラス管31のサンプル32よりも上流側及び下流側にはA/Fセンサ(酸素センサ)35,36が設けられている。ガラス管31のサンプル保持部には温度制御用の熱電対39が取付けられている。
【0056】
測定にあたっては、ガラス管31内のサンプル温度を所定値に保ち、ベースガスN2を供給して排気部38から排気しながら、図8に示すようにO2パルス(20秒)とCOパルス(20秒)とを交互に且つ間隔(20秒)をおいて発生させることにより、リーン→ストイキ→リッチ→ストイキのサイクルを繰り返すようにした。ストイキからリッチに切り換えた直後から、図9に示すように、サンプル前後のA/Fセンサ35,36によって得られるA/F値出力差(前側A/F値−後側A/F値)がなくなるまでの時間における、当該出力差をO2量に換算し、これをサンプルのO2放出量(酸素吸蔵放出量)とした。このO2放出量を350℃から500℃までの50℃刻みの各温度で測定した。
【0057】
結果を図10に示す。実施例の方が、比較例よりも350〜500℃の温度領域(特に350℃)において酸素吸蔵放出量が多くなっており、低温から酸素吸蔵放出が起こりやすくなっている。即ち、実施例の上流側触媒の上側触媒層は、酸素吸蔵放出材量(Rh担持CeZrNd複合酸化物とRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)とを合わせて82g/L)が下流側触媒の触媒層の酸素吸蔵放出材(Rh担持RhドープCeZrNd複合酸化物112g/L)よりも少ないにも拘わらず、酸素吸蔵放出量が下流側触媒の触媒層よりも多くなっていることが分かる。これは、実施例の上流側触媒の上側触媒層に含まれる酸素吸蔵放出材に担持されているRhが下流側触媒に含まれる酸素吸蔵放出材に担持されているRhよりも多いことに加え、次に説明する酸素吸蔵放出材の粒径の違いによるその総表面積の差が大きく影響している。
【0058】
<酸素吸蔵放出材の比表面積>
実施例の上流側触媒の上側触媒層に酸素吸蔵放出材として用いているRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)と、Rh担持CeZrNd複合酸化物、或いは下流側触媒の触媒層に酸素吸蔵放出材として用いているRh担持RhドープCeZrNd複合酸化物とは、その粒子径(粒度分布)が相異なる。この粒子径の違いが酸素吸蔵放出材と排気ガスとの接触にどのように影響するかを調べた。
【0059】
ここに、酸素吸蔵放出材と排気ガスとの接触機会は、一般にはBET法で比表面積を測定することによって評価される。しかし、この方法で得られる比表面積の値には、多孔質の場合、細孔での吸着現象の影響が強く現れてしまい、粒子径の違いによる接触機会の評価には適さない。
【0060】
そこで、RhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)、Rh担持CeZrNd複合酸化物及びRh担持RhドープCeZrNdY複合酸化物各々に対して、大気雰囲気で1300℃の温度に4時間保持する加熱処理を行ない、各々の細孔の影響を小さくして(細孔をかなり潰して)BET比表面積を測定した。また別に、それらの比表面積(細孔を考慮しない理論値)を、それらの粒度分布に基き、且つ球形粒子であるという仮定の基に計算で求めた。
【0061】
表3は上記2つの方法で得た、実施例の上流側触媒の上側触媒層の酸素吸蔵放出材(Rh担持CeZrNd複合酸化物70g/L及びRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)12g/L)、比較例の上流側触媒の上側触媒層の酸素吸蔵放出材(Rh担持CeZrNd複合酸化物82g/L)、並びに実施例及び比較例の下流側触媒の触媒層の酸素吸蔵放出材(Rh担持RhドープCeZrNd複合酸化物112g/L)各々の比表面積及び総表面積を示す。また、表3には、ハニカム担体の触媒層担持面の単位面積当たりの酸素吸蔵放出材含有量も併せて示している。
【0062】
【表3】
【0063】
表3によれば、実施例の上流側触媒の上側触媒層の酸素吸蔵放出材は、その総量(82g/L)が下流側触媒の触媒層の酸素吸蔵放出材量(112g/L)よりも少ないにも拘わらず、総表面積は大きくなっている。これは、上流側触媒の酸素吸蔵放出材の一部に比表面積が大きなRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)を用いているためである。このことから、上流側触媒の上側触媒層の酸素吸蔵放出材は、全体としてみれば、下流側触媒の触媒層の酸素吸蔵放出材に比べて、排気ガスとの接触機会が多くなっていることがわかる。
【0064】
また、同表3において実施例と比較例とを比べると、実施例では上述の如く上流側触媒の上側触媒層の酸素吸蔵放出材は、その総量(82g/L)が下流側触媒層の酸素吸蔵放出材量(112g/L)よりも少ないにも拘わらず、総表面積は大きくなっている一方、比較例の上流側触媒の上側触媒層の酸素吸蔵放出材は、その総量(82g/L)が下流側触媒層の酸素吸蔵放出材量(112g/L)よりも少なく、且つ総表面積も小さい。これは、図10に示したように、酸素吸蔵放出材の比表面積の大きい実施例の方が低温から酸素吸蔵放出能が発揮できることの裏付けになっている。
【0065】
<EUモードにおける減速時のNOx浄化率>
実施例及び比較例について、EUモード(欧州の排気ガス試験の自動車走行モード)における減速時のNOx浄化率を測定した。図11はEUモードの一部を示す。この場合、減速時は図11に丸印を付けた「23秒〜28秒」、「85秒〜96秒」、「155秒〜163秒」及び「177秒〜188秒」の各区間である。
【0066】
結果を表4に示す。実施例と比較例とを比べると、実施例は減速時のNOx浄化率が高くなっている。特にエンジン始動から時間があまり経過していない時、すなわち、排気ガス温度が低い時のNOx浄化率に大きな差が出ている。
【0067】
【表4】
【0068】
このように実施例のNOx浄化率が高くなっているのは、上流側触媒の上側触媒層においてRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)を酸素吸蔵放出材として用い、そのことによって、上流側触媒では、下流側触媒に比べて、酸素放出量が多くなり、且つ酸素吸蔵放出材と排気ガスとの接触機会も多くなったためと考えられる。
【0069】
<EUモードでのエミッション排出量>
実施例及び比較例のEUモードでのエミッション(HC、CO及びNOx)の排出量を測定した結果を図12に示す。同図から、実施例に係る触媒構成によれば、NOx浄化だけでなく、HC及びCOの浄化に関しても高い性能を発揮することがわかる。
【符号の説明】
【0070】
1 自動車のエンジン
2 排気マニホールド
3 上流側触媒
5 下流側触媒
7 上流側触媒の上側触媒層(Rh含有触媒層)
8 上流側触媒の下側触媒層
19 下流側触媒の触媒層(Rh含有触媒層)
【技術分野】
【0001】
本発明は排気ガス浄化用触媒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンと電動モータとを駆動源として併用するハイブリッド式自動車によれば、環境負荷となるエミッションの低減が図れるが、エンジンの排気ガスをさらに効率良く浄化することも重要である。従来より、エンジンを理論空燃比近傍で運転するときは、HC(炭化水素)、CO及びNOx(窒素酸化物)を同時に浄化することができる三元触媒が用いられ、その触媒金属としては、Pt、Pd、Rh等が採用されている。
【0003】
この三元触媒は、エンジンから排出される排気ガスの空燃比がリーン状態或いはリッチ状態なると、上記HC、CO及びNOxの浄化性能が低下する。そこで、三元触媒には、触媒周囲がリーンになると酸素を吸蔵し、リッチになると酸素を放出するCe含有酸化物よりなる酸素吸蔵放出材を含ませることが行なわれている。つまり、この酸素の吸蔵・放出によって触媒周囲の空燃比をストイキ近傍にコントロールし、排気ガス浄化性能の低下を防止するものである。また、このCe含有酸化物単独では酸素吸蔵放出量にも限界があるので、このCe含有酸化物の表面に酸素の吸蔵を促進する成分を担持することもなされている。その成分は、例えばPt、Pd、Rh等である。
【0004】
すなわち、Pt、Pd及びRhは、HC及びCOの酸化、並びにNOxの還元を促進する触媒金属としてだけでなく、三元触媒が浄化性能を発揮し易くなるように、酸素吸蔵放出材と相俟って触媒周囲の空燃比をコントロールする成分としても機能するようされている。しかし、それらは稀少資源であることから、その使用量を少なくしながら、高い排気ガス浄化性能を発揮するように触媒を構成することが求められる。
【0005】
ところで、エンジンの排気通路における排気ガス流れの上流側と下流側とにそれぞれ三元触媒を配置してなる排気ガス浄化用触媒装置は一般に知られている。例えば、排気マニホールド下流端に結合される所謂直結触媒と、該直結触媒よりも排気ガス流れ下流側の自動車床下に配置される所謂床下触媒とによって排気ガスを浄化するというものである。この触媒装置の場合、上流側の直結触媒は、排気ガスの熱によって速やかに活性を呈する温度になるから、エンジン始動時等に排出される温度が比較的低い排気ガスの浄化に有効である。一方、エンジンから高温の排気ガスが比較的多量に排出される頃には、下流側の床下触媒も活性を呈する温度になっているから、直結触媒と床下触媒との協働によって排気ガスが効率良く浄化されることになる。
【0006】
このような上流側と下流側の両触媒で構成される触媒装置については、例えば、特許文献1〜3に記載されている。このうち、特許文献1には、RhドープCeZr系複酸化物を上流側触媒の酸素吸蔵放出材に採用することによって、該上流側触媒の酸素吸蔵材を下流側触媒の酸素吸蔵材よりも同温度下における酸素吸蔵量が多い構成とすることが記載されている。これは、排気ガス浄化性能の向上及び耐熱性の確保を図りながら、装置の小型化ないしはレイアウト性の向上を図ることを課題とするものである。上流側触媒の酸素吸蔵放出材の性能を高めることによって、排気ガスの空燃比が大きな振幅で変動する場合でも良好な排気ガス浄化性能が得られるようにされている。
【0007】
一方、特許文献2には、RhドープCeZrNd複酸化物の表面にRhを担持したものを下流側触媒の酸素吸蔵放出材として採用し、上流側触媒には、RhドープCeZrNd複酸化物よりも酸素吸蔵能が低い酸素吸蔵放出材を採用することが記載されている。これは、RhドープCeZrNd複酸化物の表面に担持されているRhが、空燃比の変動に伴って当該複酸化物から放出される活性酸素によって酸化され、触媒活性の高い還元状態に戻らなくなることを問題にするものである。すなわち、Rh担持RhドープCeZrNd複酸化物を上流側触媒ではなく下流側触媒に配置し、上流側触媒をスリップして下流側に流れるHCやCOを還元剤として、RhドープCeZrNd複酸化物表面に担持されているRhを高活性状態に維持するというものである。また、下流側触媒にPtを担持した活性アルミナを設け、これによって、上記HCを酸化させて還元力の強いCO等に転化し、Rhの賦活(還元)を図るようにされている。
【0008】
特許文献3には、RhドープCeZrNd複酸化物とPt担持アルミナとを組み合わせることにより、排気ガスがリーンである状態が続いたときの、RhドープCeZrNd複酸化物のRhの酸化をPt担持アルミナによって抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−291918号公報
【特許文献2】特開2008−62156号公報
【特許文献3】特開2006−35043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1〜3に記載の触媒装置の構成を採用すると、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ特性の向上(ライトオフ温度を下げること)や高温浄化性能の向上が顕著であり、排気ガスの空燃比が変動する場合でも高い浄化率が得られる。しかし、自動車の運転においては、減速時の燃料カットによって排気ガスの空燃比が急激にリーンになることがあり、そのとき、NOxの浄化が悪くなる。
【0011】
そこで、本発明は、上流側触媒と下流側触媒とを備える排気ガス浄化用触媒装置において、空燃比が急激にリーンになる状況でも、排気ガス温度の高低に拘わらず、HC、CO及びNOxを効率良く浄化できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、上流側触媒の触媒層においては、酸素の吸蔵放出が比較的低温から発現するようにし、上流側触媒の触媒層での排気ガスの浄化に伴って発生する触媒反応熱を下流側触媒の昇温に利用するようにした。
【0013】
すなわち、ここに提示する排気ガス浄化用触媒装置は、エンジンの排気通路における排気ガス流れの上流側と下流側とに配置された2つの触媒を有し、
上記上流側触媒及び下流側触媒各々は、担体上にRhを含有する触媒層を備え、
上記上流側触媒のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材として、Ce及びZrを含有し且つRhを固溶してなるRhドープCeZr系複合酸化物と、Ce及びZrを含有し且つ表面にRhを担持してなるRh担持CeZr系複合酸化物とを含有し、
上記下流側触媒のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材としては、Ce及びZrを含有し且つRhを固溶してなるRhドープCeZr系複合酸化物のみを含有し、
上記上流側触媒及び下流側触媒各々のRh含有触媒層の酸素吸蔵放出材含有量は、上流側触媒の方が下流側触媒よりも少なく、
上記上流側触媒のRh含有触媒層が酸素吸蔵放出材として含有するRhドープCeZr系複合酸化物は、上記下流側触媒のRh含有触媒層が酸素吸蔵放出材として含有するRhドープCeZr系複合酸化物よりも、ピーク粒径が小さい粒度分布をもつことを特徴とする。
【0014】
ここに、上流側触媒及び下流側触媒各々のRh含有触媒層は、共に酸素吸蔵放出材としてRhドープCeZr系複合酸化物を含有する。そのRhドープCeZr系複合酸化物の粒度分布に関し、上流側触媒の方が下流側触媒よりもピーク粒径が小さいということは、上流側触媒のRhドープCeZr系複合酸化物は、下流側触媒のRhドープCeZr系複合酸化物よりも、排気ガスとの接触機会が多いということである。よって、上流側触媒のRh含有触媒層では、排気ガス温度が低いときでも、RhドープCeZr系複合酸化物による酸素の吸蔵・放出が比較的活発に行なわれる。
【0015】
従って、上流側触媒のRh含有触媒層では、酸素吸蔵放出材含有量が下流側触媒よりも少ないにも拘わらず、自動車の減速時のような排気ガスの空燃比が急激にリーン化する状況において(このときは排気ガス温度も低い)、NOxの還元及びHC、COの酸化が効率良く進む。そして、そのことによって発生する触媒反応熱により、下流側触媒のRh含有触媒層の温度が高くなり、この下流側でも、排気ガスの浄化が進み易くなる。しかも、上流側触媒のRh含有触媒層の酸素吸蔵放出材含有量が少ないから、触媒の熱容量を小さくすることができ、よって、触媒の早期昇温、ひいては排気ガス浄化性能の向上に有利になり、コスト低減にも有利になる。
【0016】
好ましいのは、下流側触媒のRhドープCeZr系複合酸化物は、550nm以上1200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつ構成とし、上流側触媒のRhドープCeZr系複合酸化物は、上流側触媒の上記酸素吸蔵放出材よりも、小さな粒径範囲(例えば、100nm以上300nm以下の粒径範囲)にピークを有する粒度分布をもつ構成とすることである。
【0017】
好ましい実施形態では、上記下流側触媒は、担体上に上記Rh含有触媒層のみを備え、該Rh含有触媒層は、上記酸素吸蔵放出材としてのRhドープCeZr系複合酸化物に加えて、活性アルミナの表面にPtを担持してなるPt担持アルミナを含有することを特徴とする。
【0018】
すなわち、Ptは主としてHCやCOの酸化に働き、Rhは主としてNOxの還元に働くところ、Rhは空燃比リーンの排気ガスに晒されると、酸化されてその触媒機能が低下する。一方、空燃比がリッチになると、それだけRhまわりでは還元剤として働くHCやCOが多くなるものの、Rhの雰囲気温度が低いときには、Rhの還元が図れない。
【0019】
これに対して、Ptは、空燃比がリーンからリッチに切り換わってもHCやCOを酸化浄化する働きがあり、その触媒反応熱によってRhの雰囲気温度が高くなるとともに、当該触媒反応によって部分酸化した活性の高いHCが生成される。このため、酸化された状態になっているRhが排気ガス中のHCやCO、さらには部分酸化HCによって還元され易くなり、その活性が維持され、NOxの還元に有利になる。
【0020】
しかも、下流側触媒は、担体上にRh含有触媒層のみを備える構成とすることにより、その熱容量を小さくすることができる。よって、上流側触媒で発生する触媒反応熱による下流側触媒の早期昇温を図る上で有利になり、RhドープCeZr系複合酸化物とPt担持アルミナとの協働による排気ガスの効果的な浄化に有利になる。
【0021】
また、好ましい実施形態では、上記上流側触媒のRh含有触媒層は、上記酸素吸蔵放出材としてのRhドープCeZr系複合酸化物及びRh担持CeZr系複合酸化物に加えて、活性アルミナにZr、La及びアルカリ土類金属を含有するZrLa系複合酸化物が担持され該ZrLa系複合酸化物にRhが担持されてなる触媒成分を含有することを特徴とする
すなわち、活性アルミナは耐熱性が高く且つ比表面積が大きいことから、Rhを高分散状態で担持することができ、触媒活性の向上に有利になるが、触媒層が高温に晒される状態が度重なると、年月の経過と共に、Rhがアルミナに固溶して失活していく。これに対して、上述の活性アルミナにZrLa系複合酸化物が担持され、該ZrLa系複合酸化物にRhが担持されてなる触媒粒子の場合、ZrLa系複合酸化物を介してRhを活性アルミナに高分散に担持させることができるだけでなく、Rhが活性アルミナに固溶することがZrLa系複合酸化物によって妨げられ、上記失活の防止に有利になる。
【0022】
しかも、ZrLa系複合酸化物上のRhは、排気ガスの空燃比がリーンからリッチに変わっても、それほど還元されずに適度に酸化された状態を保つ。すなわち、ZrLa系複合酸化物にRhを担持させると、このZrLa複酸化物とRhとの間にLa−O−Rhの結合が形成され、RhはLaの働きによって酸化状態をとり易くなると考えられる。その結果、Rhが還元されるとHCやCOの酸化には不利になるところ、リッチになっても、ZrLa複酸化物上のRhが適度に酸化された状態を保つから、HC酸化能やCO酸化能の低下が少なくなる。また、このようにリッチになってもHCやCOが酸化されることから、その酸化と同時にNOxの還元も進むことになり、NOxの還元浄化に有利になる。
【0023】
そうして、上記ZrLa系複合酸化物は、上記Zr及びLaに加えてアルカリ土類金属を含有するから、排気ガス成分の吸着・浄化が効率良く進み、その浄化に有利になる。すなわち、Zr及びLaは酸化物が塩基性を示すが、アルカリ土類金属はそれらよりも強い塩基性を示す。そのため、当該ZrLa系複合酸化物には強さが異なるバリエーションに富んだ塩基性サイトが形成され、排気ガス成分の吸着・浄化が効率良く進む。
【0024】
上記アルカリ土類金属としては、ZrO2に固溶し易いMg、Ca及びSrが好ましく、塩基性が強いSrが特に好ましい。さらにまた、これらアルカリ土類金属は二種以上を含有させてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上流側触媒のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材として、RhドープCeZr系複合酸化物とRh担持CeZr系複合酸化物とを含有し、下流側触媒のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材としてはRhドープCeZr系複合酸化物のみを含有し、上流側触媒及び下流側触媒各々のRh含有触媒層の酸素吸蔵放出材含有量は、上流側触媒の方が下流側触媒よりも少なく、上流側触媒の上記RhドープCeZr系複合酸化物は、下流側触媒の上記RhドープCeZr系複合酸化物よりも、ピーク粒径が小さい粒度分布をもち、排気ガスとの接触機会が多い。従って、自動車の減速時のような排気ガスの空燃比が急激にリーン化する状況において、上流側触媒のRh含有触媒層では、NOxの還元及びHC、COの酸化が効率良く進み、その酸化・還元に伴って発生する反応熱によって、下流側触媒のRh含有触媒層の温度が高くなり、この下流側でも、排気ガスの浄化が進み易くなる。しかも、上流側触媒の熱容量を小さくすることができ、触媒の早期昇温、ひいては排気ガス浄化性能の向上に有利になり、コスト低減にも有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る排気ガス浄化用触媒装置の構成図である。
【図2】同装置の上流側触媒の構成図である。
【図3】同装置の下流側触媒の構成図である。
【図4】2種類の酸素吸蔵放出材の粒度分布を示すグラフ図である。
【図5】2種類の酸素吸蔵放出材の酸素吸蔵速度の経時変化を示すグラフ図である。
【図6】3種類の酸素吸蔵放出材の酸素吸蔵速度を示すグラフ図である。
【図7】酸素吸蔵放出量測定装置の構成図である。
【図8】酸素吸蔵放出量の測定におけるサンプル前後のA/F及びサンプル前後のA/F差の経時変化を示すグラフ図である。
【図9】酸素吸蔵放出量の測定における触媒前後のA/F差の経時変化を示すグラフ図である。
【図10】3種類の上側触媒層の酸素放出量の温度特性を示すグラフ図である。
【図11】EUモード(排気ガス試験における自動車の走行モード)の一部を示すグラフ図である。
【図12】実施例及び比較例のエミッション排出量を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0028】
図1に示す本発明に係る排気ガス浄化用触媒装置の構成において、1は自動車のエンジン、2は排気マニホールド、3は排気マニホールド2の下流端に直結された上流側触媒、4は上流側触媒3より自動車後方に延びる排気管、5は自動車の床下位置において排気管4に設けた下流側触媒である。すなわち、上流側触媒3及び下流側触媒5は、エンジン1の排気通路における排気ガス流れの上流側と下流側とに分かれて配置されている。
【0029】
図2は上流側触媒3の構成を模式的に示す。同図において、6はハニカム担体のセル壁であり、このセル壁6に上側触媒層7と下側触媒層8とが積層されていて、上側触媒層7の表面がハニカム担体6の排気ガス流路を形成している。
【0030】
上側触媒層7は、Rh含有触媒層であって、Rh担持CeZrNd複合酸化物(Rh/CZN)11、Rh担持ZrLa系複合酸化物被覆アルミナ(Rh/Z/A)12、及び活性アルミナ(Al2O3)13を含有し、さらに粒子径が他の触媒粒子に比べて相対的に小さいRhドープCeZrNdY複合酸化物(RhドープCZNY)14を含有する。
【0031】
ここに、上側触媒層7では、Rh担持CeZrNd複合酸化物11及びRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14が、Rhを担持又は含有する酸素吸蔵放出材として用いられており、さらに、後者のRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14はバインダ材としての役割も果たしている。RhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14は、共沈法によって調製したRhドープCeZrNdY複合酸化物(大粒子)をさらに湿式粉砕して粒子径を小さくしたものであり、この点は後述する。
【0032】
下側触媒層8は、Pd含有触媒層であって、CeZrNd複合酸化物(CZN)15、Pd担持CeZrNd複合酸化物(Pd/CZN)16、及びPd担持活性アルミナ(Pd/A)17を含有し、さらにジルコニアバインダ(ZrO2)18を含有する。ここに、下側触媒層8のCeZrNd複合酸化物15及びPd担持CeZrNd複合酸化物16も酸素吸蔵放出能を有する。
【0033】
図3は下流側触媒5の構成を模式的に示す。ハニカム担体のセル壁6に形成された単一の触媒層19とを備え、該触媒層19の表面がハニカム担体6の排気ガス流路を形成している。この触媒層19は、Rh及びPtを含有する触媒層であって、RhドープCeZrNd複合酸化物の表面にRhを担持してなるRh担持RhドープCeZrNd複合酸化物(Rh/RhドープCZN)20と、活性アルミナの表面にPtを担持してなるPt担持アルミナ(Pt/A)21とを含有し、さらにジルコニアバインダ(ZrO2)18を含有する。ここに、触媒層19ではRh担持RhドープCeZrNd複合酸化物20がRhを担持・含有する酸素吸蔵放出材として用いられている。
【0034】
Rh担持RhドープCeZrNd複合酸化物20は、上流側触媒3の上側触媒層7のRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14よりもピーク粒径が大きな粒度分布をもつRhドープCeZrNd複合酸化物(大粒子)にRhを担持したものである。
【0035】
上記触媒装置の特徴の一つは、上流側触媒3の上側触媒層7に、酸素吸蔵放出材及びバインダ材として、RhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14を採用した点にある。このRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)の調製法は次のとおりであり、共沈法と湿式粉砕法を用いている。
【0036】
すなわち、硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸イットリウム6水和物と硝酸ロジウム溶液とをイオン交換水に溶かす。この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、共沈物を得る。この共沈物を遠心分離法で水洗した後、空気中において150℃の温度で一昼夜乾燥させ、粉砕した後、空気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行なうことにより、RhドープCeZrNdY複合酸化物(大粒子)の粉末を得る。
【0037】
上記RhドープCeZrNdY複合酸化物(大粒子)の粉末にイオン交換水を添加してスラリー(固形分25質量%)とし、このスラリーをボールミルに投入して、0.5mmのジルコニアビーズによって粉砕する(湿式粉砕;約3時間)。以上により、粒径が小さくなったRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)の粉末が分散したゾルを得る。このゾルを上流側触媒3の上側触媒層7の酸素吸蔵放出材及びバインダ材として用いている。
【0038】
<酸素吸蔵放出材の粒度分布>
図4はRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14(図4では「Rhドープ小粒子」と記している。)及びRh担持CeZrNd複合酸化物11(図4では「Rh担持」と記している。)の粒度分布(頻度分布)を示す。粒度分布の測定には、株式会社島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた。
【0039】
RhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14は、100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有し、Rh担持CeZrNd複合酸化物11は550nm以上1200nm以下の粒径範囲にピークを有する。RhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14の場合、累積分布10質量%粒径が109nm、累積分布50質量%粒径が184nm、累積分布90質量%粒径が287nmである。すなわち、累積分布10質量%粒径は100nm以上であり、累積分布90質量%粒径は300nm以下である。Rh担持CeZrNd複合酸化物11の場合、累積分布10質量%粒径が576nm、累積分布50質量%粒径が848nm、累積分布90質量%粒径が1160nmである。すなわち、累積分布10質量%粒径は550nm以上であり、累積分布90質量%粒径は1200nm以下である。上記湿式粉砕前のRhドープCeZrNdY複合酸化物(大粒子)もRh担持CeZrNd複合酸化物11と同様の粒度分布をもつ。
【0040】
<酸素吸蔵速度>
酸素吸蔵放出材としてのRhドープCeZrNdY複合酸化物(大粒子)とこれを湿式粉砕したRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)とについて、熱エージング(大気雰囲気,1000℃×24時間)後、酸素過剰雰囲気での酸素吸蔵速度を測定した。測定にあたっては、ガラス管内に一定量入れられた粉末試料(酸素吸蔵放出材と活性アルミナとを10:90の質量比で混合したもの)の温度を500℃に保ち、定常的に排気しながら、5msのO2パルスを60秒毎に発生させ、これを数サイクル行なった後、今度はO2パルス発生から30秒遅れで10msのCOパルスを発生させていくようにした。その間、質量分析計によって各サイクルにおけるマスナンバー32の信号強度(O2量)の経時変化を計測するようにした。そして、COパルス前の信号強度の経時変化と、COパルス後の信号強度の経時変化とを求めた。この場合、COパルス前とCOパルス後の両信号強度に差を生じているのは、その試料が酸素を吸蔵したことによるものである。よって、COパルス前の信号強度からCOパルス後の信号強度を差し引くと、酸素吸蔵量が得られ、これから、酸素吸蔵速度(単位時間、単位量当たりの吸蔵量)を求めることができる。なお、試料では、実際には酸素を吸蔵しながら、先に吸蔵した酸素の放出も行なわれているから、ここでいう酸素吸蔵速度は見かけの酸素吸蔵速度である。
【0041】
図5はRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)(図5では「Rhドープ小粒子」と記している。)及びRhドープCeZrNdY複合酸化物(大粒子)(図5では「Rhドープ大粒子」と記している。)の酸素吸蔵速度の経時変化を示す。酸素吸蔵速度は小粒子の方が大粒子よりも大きくなっている。
【0042】
Rh担持CeZrNdY複合酸化物(「Rh担持」)についても同様に酸素吸蔵速度の測定を行なった。図6はRhドープCeZrNdY複合酸化物(「Rhドープ小粒子」)、RhドープCeZrNdY複合酸化物(「Rhドープ大粒子」)及びRh担持CeZrNdY複合酸化物(「Rh担持」)各々の、測定開始から0.5秒間の平均酸素吸蔵速度を示す。Rh担持CeZrNdY複合酸化物(「Rh担持」)の酸素吸蔵速度はRhドープCeZrNdY複合酸化物(「Rhドープ大粒子」)よりもさらに小さくなっている。
【0043】
<実施例1>
上流側触媒3にセル壁厚さ3.5mil(8.89×10−2mm)、1平方インチ(645.16mm2)当たりのセル数600のセラミックス製ハニカム担体(容量約1L)を用い、下流側触媒5にセル壁厚さ4.5mil(11.43×10−2mm)、1平方インチ(645.16mm2)当たりのセル数400のセラミックス製ハニカム担体(容量約1L)を用い、次のように触媒装置を構成した。
【0044】
−上流側触媒3の上側触媒層7−
Rh担持CeZrNd複合酸化物11として、CeZrNd複合酸化物(CeO2:ZrO2:Nd2O3=10:80:10(質量比))にRhを蒸発乾固法で担持させたものを採用した。担体1L当たりの含有量は70g(そのうちのRhが0.304g)である。粒度分布は先に説明した図4に示す「Rh担持」のとおりである。上記CeZrNd複合酸化物の調製には共沈法を採用した。
【0045】
Rh担持ZrLa系複合酸化物被覆アルミナ12として、ZrLaSr複合酸化物被覆アルミナにRhを蒸発乾固法で担持させたものを採用した。ZrLaSr複合酸化物被覆アルミナは、ZrとLaとSrを含有するZrLaSr複合酸化物が活性アルミナの表面に担持されてなるものであり、次のようにして調製した。すなわち、硝酸ジルコニウム、硝酸ランタン及び硝酸ストロンチウムの混合溶液に活性アルミナ粉末を分散させ、これにアンモニア水を加えて沈殿を生成した。得られた沈殿物を濾過、洗浄し、200℃で2時間保持する乾燥、並びに500℃に2時間保持する焼成を行なうことにより、ZrLaSr複合酸化物被覆アルミナ粉末を得た。その組成は、ZrO2:La2O3:SrO:Al2O3=38:2:1.5:58.5(質量比)である。担体1L当たりのRh担持ZrLaSr複合酸化物被覆アルミナの含有量は30g(そのうちのRhが0.107g)である。
【0046】
活性アルミナ13として、La2O3を4質量%含有するものを採用した。担体1L当たりの含有量は10gである。
【0047】
RhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14として、CeZrNdY複合酸化物(CeO2:ZrO2:Nd2O3:Y2O3=10:80:5:5(質量比))にRhがドープされたものを採用した。その調製法は先に説明したとおりである。また、粒度分布は図4に示す「Rhドープ小粒子」のとおりである。担体1L当たりの含有量は12g(そのうちのRhが0.006g)である。このRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)のゾルを当該上側触媒層7ではバインダとして用いている。
【0048】
−上流側触媒3の下側触媒層8−
CeZrNd複合酸化物15として、共沈法によって調製した組成がCeO2:ZrO2:Nd2O3=23:67:10(質量比)であるものを採用した。担体1L当たりの含有量は20gである。Pd担持CeZrNd複合酸化物16として、共沈法によって調製したCeZrNd複合酸化物(CeO2:ZrO2:Nd2O3=23:67:10(質量比))にPdを蒸発乾固法で担持したものを採用した。担体1L当たりの含有量は35g(そのうちのPdが0.194g)である。Pd担持活性アルミナ17として、La2O3を4質量%含有する活性アルミナにPdを蒸発乾固法で担持したものを採用した。担体1L当たりの含有量は45g(そのうちのPdが1.889g)である。また、担体1L当たりのジルコニアバインダ18の含有量は10gである。
【0049】
−下流側触媒5の触媒層19−
Rh担持RhドープCeZrNd複合酸化物20として、RhドープCeZrNd複合酸化物(大粒子)にRhを蒸発乾固法によって担持させたものを採用した。RhドープCeZrNd複合酸化物(大粒子)は、CeZrNd複合酸化物(CeO2:ZrO2:Nd2O3=23:67:10(質量比))にRhがドープされたものであり、共沈法によって調製した。湿式粉砕は行っていない。従って、Rh担持RhドープCeZrNd複合酸化物20の粒度分布は図4に示す「Rh担持」と同様である。担体1L当たりの含有量は112g(そのうちRhのドープ量が0.006g、Rhの担持量が0.035g)である。
【0050】
Pt担持アルミナ(Pt/A)21として、La2O3を4質量%含有する活性アルミナにPtを蒸発乾固法で担持したものを採用した。担体1L当たりの含有量は50g(そのうちのPtが0.050g)である。また、担体1L当たりのジルコニアバインダ18の含有量は18gである。
【0051】
実施例の上流側触媒3及び下流側触媒5の各成分の担体1L当たりの含有量は表1に示すとおりである。上流側触媒の上側触媒層の酸素吸蔵放出材(Rh担持CeZrNd複合酸化物及びRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子))の担体1L当たりの合計含有量は82gであって、下流側触媒の触媒層の酸素吸蔵放出材(Rh担持RhドープCeZrNd複合酸化物)の担体1L当たりの含有量112gよりも少ない。
【0052】
【表1】
【0053】
<比較例>
上流側触媒3の上側触媒層7について、RhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)14に代えてアルミナバインダ(担体1L当たりの含有量10g)を採用し、Rh担持CeZrNd複合酸化物11の担体1L当たりの含有量を82g(そのうちのRhが0.310g)となるように変更し、さらに、活性アルミナ13の含有量を零とする他は実施例と同様に触媒装置を構成した。比較例の上流側触媒3及び下流側触媒5の各成分の担体1L当たりの含有量は表2に示すとおりである。
【0054】
【表2】
【0055】
<酸素吸蔵放出量について>
実施例の上流側触媒の上側触媒層のみ、実施例の下流側触媒の触媒層のみ、及び比較例の上流側触媒の上側触媒層のみをそれぞれ担体上に形成した供試材(触媒層は単層)を準備し、担体容量約25mLのコアサンプルを切り出し、これをモデルガス流通反応装置に取り付け、酸素吸蔵放出量の測定を行った。図7は、酸素吸蔵放出量を測定するための試験装置の構成を示す。同図において、符号31はサンプル32を保持するガラス管であり、サンプル32はヒータ33によって所定温度に加熱保持される。ガラス管31のサンプル32よりも上流側には、ベースガスN2を供給しながらO2及びCOの各ガスをパルス状に供給可能なパルスガス発生装置34が接続され、ガラス管31のサンプル32よりも下流側には排気部38が設けられている。ガラス管31のサンプル32よりも上流側及び下流側にはA/Fセンサ(酸素センサ)35,36が設けられている。ガラス管31のサンプル保持部には温度制御用の熱電対39が取付けられている。
【0056】
測定にあたっては、ガラス管31内のサンプル温度を所定値に保ち、ベースガスN2を供給して排気部38から排気しながら、図8に示すようにO2パルス(20秒)とCOパルス(20秒)とを交互に且つ間隔(20秒)をおいて発生させることにより、リーン→ストイキ→リッチ→ストイキのサイクルを繰り返すようにした。ストイキからリッチに切り換えた直後から、図9に示すように、サンプル前後のA/Fセンサ35,36によって得られるA/F値出力差(前側A/F値−後側A/F値)がなくなるまでの時間における、当該出力差をO2量に換算し、これをサンプルのO2放出量(酸素吸蔵放出量)とした。このO2放出量を350℃から500℃までの50℃刻みの各温度で測定した。
【0057】
結果を図10に示す。実施例の方が、比較例よりも350〜500℃の温度領域(特に350℃)において酸素吸蔵放出量が多くなっており、低温から酸素吸蔵放出が起こりやすくなっている。即ち、実施例の上流側触媒の上側触媒層は、酸素吸蔵放出材量(Rh担持CeZrNd複合酸化物とRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)とを合わせて82g/L)が下流側触媒の触媒層の酸素吸蔵放出材(Rh担持RhドープCeZrNd複合酸化物112g/L)よりも少ないにも拘わらず、酸素吸蔵放出量が下流側触媒の触媒層よりも多くなっていることが分かる。これは、実施例の上流側触媒の上側触媒層に含まれる酸素吸蔵放出材に担持されているRhが下流側触媒に含まれる酸素吸蔵放出材に担持されているRhよりも多いことに加え、次に説明する酸素吸蔵放出材の粒径の違いによるその総表面積の差が大きく影響している。
【0058】
<酸素吸蔵放出材の比表面積>
実施例の上流側触媒の上側触媒層に酸素吸蔵放出材として用いているRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)と、Rh担持CeZrNd複合酸化物、或いは下流側触媒の触媒層に酸素吸蔵放出材として用いているRh担持RhドープCeZrNd複合酸化物とは、その粒子径(粒度分布)が相異なる。この粒子径の違いが酸素吸蔵放出材と排気ガスとの接触にどのように影響するかを調べた。
【0059】
ここに、酸素吸蔵放出材と排気ガスとの接触機会は、一般にはBET法で比表面積を測定することによって評価される。しかし、この方法で得られる比表面積の値には、多孔質の場合、細孔での吸着現象の影響が強く現れてしまい、粒子径の違いによる接触機会の評価には適さない。
【0060】
そこで、RhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)、Rh担持CeZrNd複合酸化物及びRh担持RhドープCeZrNdY複合酸化物各々に対して、大気雰囲気で1300℃の温度に4時間保持する加熱処理を行ない、各々の細孔の影響を小さくして(細孔をかなり潰して)BET比表面積を測定した。また別に、それらの比表面積(細孔を考慮しない理論値)を、それらの粒度分布に基き、且つ球形粒子であるという仮定の基に計算で求めた。
【0061】
表3は上記2つの方法で得た、実施例の上流側触媒の上側触媒層の酸素吸蔵放出材(Rh担持CeZrNd複合酸化物70g/L及びRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)12g/L)、比較例の上流側触媒の上側触媒層の酸素吸蔵放出材(Rh担持CeZrNd複合酸化物82g/L)、並びに実施例及び比較例の下流側触媒の触媒層の酸素吸蔵放出材(Rh担持RhドープCeZrNd複合酸化物112g/L)各々の比表面積及び総表面積を示す。また、表3には、ハニカム担体の触媒層担持面の単位面積当たりの酸素吸蔵放出材含有量も併せて示している。
【0062】
【表3】
【0063】
表3によれば、実施例の上流側触媒の上側触媒層の酸素吸蔵放出材は、その総量(82g/L)が下流側触媒の触媒層の酸素吸蔵放出材量(112g/L)よりも少ないにも拘わらず、総表面積は大きくなっている。これは、上流側触媒の酸素吸蔵放出材の一部に比表面積が大きなRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)を用いているためである。このことから、上流側触媒の上側触媒層の酸素吸蔵放出材は、全体としてみれば、下流側触媒の触媒層の酸素吸蔵放出材に比べて、排気ガスとの接触機会が多くなっていることがわかる。
【0064】
また、同表3において実施例と比較例とを比べると、実施例では上述の如く上流側触媒の上側触媒層の酸素吸蔵放出材は、その総量(82g/L)が下流側触媒層の酸素吸蔵放出材量(112g/L)よりも少ないにも拘わらず、総表面積は大きくなっている一方、比較例の上流側触媒の上側触媒層の酸素吸蔵放出材は、その総量(82g/L)が下流側触媒層の酸素吸蔵放出材量(112g/L)よりも少なく、且つ総表面積も小さい。これは、図10に示したように、酸素吸蔵放出材の比表面積の大きい実施例の方が低温から酸素吸蔵放出能が発揮できることの裏付けになっている。
【0065】
<EUモードにおける減速時のNOx浄化率>
実施例及び比較例について、EUモード(欧州の排気ガス試験の自動車走行モード)における減速時のNOx浄化率を測定した。図11はEUモードの一部を示す。この場合、減速時は図11に丸印を付けた「23秒〜28秒」、「85秒〜96秒」、「155秒〜163秒」及び「177秒〜188秒」の各区間である。
【0066】
結果を表4に示す。実施例と比較例とを比べると、実施例は減速時のNOx浄化率が高くなっている。特にエンジン始動から時間があまり経過していない時、すなわち、排気ガス温度が低い時のNOx浄化率に大きな差が出ている。
【0067】
【表4】
【0068】
このように実施例のNOx浄化率が高くなっているのは、上流側触媒の上側触媒層においてRhドープCeZrNdY複合酸化物(小粒子)を酸素吸蔵放出材として用い、そのことによって、上流側触媒では、下流側触媒に比べて、酸素放出量が多くなり、且つ酸素吸蔵放出材と排気ガスとの接触機会も多くなったためと考えられる。
【0069】
<EUモードでのエミッション排出量>
実施例及び比較例のEUモードでのエミッション(HC、CO及びNOx)の排出量を測定した結果を図12に示す。同図から、実施例に係る触媒構成によれば、NOx浄化だけでなく、HC及びCOの浄化に関しても高い性能を発揮することがわかる。
【符号の説明】
【0070】
1 自動車のエンジン
2 排気マニホールド
3 上流側触媒
5 下流側触媒
7 上流側触媒の上側触媒層(Rh含有触媒層)
8 上流側触媒の下側触媒層
19 下流側触媒の触媒層(Rh含有触媒層)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路における排気ガス流れの上流側と下流側とに配置された2つの触媒を有する排気ガス浄化用触媒装置において、
上記上流側触媒及び下流側触媒各々は、担体上にRhを含有する触媒層を備え、
上記上流側触媒のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材として、Ce及びZrを含有し且つRhを固溶してなるRhドープCeZr系複合酸化物と、Ce及びZrを含有し且つ表面にRhを担持してなるRh担持CeZr系複合酸化物とを含有し、
上記下流側触媒のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材としては、Ce及びZrを含有し且つRhを固溶してなるRhドープCeZr系複合酸化物のみを含有し、
上記上流側触媒及び下流側触媒各々のRh含有触媒層の酸素吸蔵放出材含有量は、上流側触媒の方が下流側触媒よりも少なく、
上記上流側触媒のRh含有触媒層が酸素吸蔵放出材として含有するRhドープCeZr系複合酸化物は、上記下流側触媒のRh含有触媒層が酸素吸蔵放出材として含有するRhドープCeZr系複合酸化物よりも、ピーク粒径が小さい粒度分布をもつことを特徴とする排気ガス浄化用触媒装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記下流側触媒は、担体上に上記Rh含有触媒層のみを備え、該Rh含有触媒層は、上記酸素吸蔵放出材としてのRhドープCeZr系複合酸化物に加えて、活性アルミナの表面にPtを担持してなるPt担持アルミナを含有することを特徴とする排気ガス浄化用触媒装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記上流側触媒のRh含有触媒層は、上記酸素吸蔵放出材としてのRhドープCeZr系複合酸化物及びRh担持CeZr系複合酸化物に加えて、活性アルミナにZr、La及びアルカリ土類金属を含有するZrLa系複合酸化物が担持され該ZrLa系複合酸化物にRhが担持されてなる触媒成分を含有することを特徴とする排気ガス浄化用触媒装置。
【請求項1】
エンジンの排気通路における排気ガス流れの上流側と下流側とに配置された2つの触媒を有する排気ガス浄化用触媒装置において、
上記上流側触媒及び下流側触媒各々は、担体上にRhを含有する触媒層を備え、
上記上流側触媒のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材として、Ce及びZrを含有し且つRhを固溶してなるRhドープCeZr系複合酸化物と、Ce及びZrを含有し且つ表面にRhを担持してなるRh担持CeZr系複合酸化物とを含有し、
上記下流側触媒のRh含有触媒層は、酸素吸蔵放出材としては、Ce及びZrを含有し且つRhを固溶してなるRhドープCeZr系複合酸化物のみを含有し、
上記上流側触媒及び下流側触媒各々のRh含有触媒層の酸素吸蔵放出材含有量は、上流側触媒の方が下流側触媒よりも少なく、
上記上流側触媒のRh含有触媒層が酸素吸蔵放出材として含有するRhドープCeZr系複合酸化物は、上記下流側触媒のRh含有触媒層が酸素吸蔵放出材として含有するRhドープCeZr系複合酸化物よりも、ピーク粒径が小さい粒度分布をもつことを特徴とする排気ガス浄化用触媒装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記下流側触媒は、担体上に上記Rh含有触媒層のみを備え、該Rh含有触媒層は、上記酸素吸蔵放出材としてのRhドープCeZr系複合酸化物に加えて、活性アルミナの表面にPtを担持してなるPt担持アルミナを含有することを特徴とする排気ガス浄化用触媒装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記上流側触媒のRh含有触媒層は、上記酸素吸蔵放出材としてのRhドープCeZr系複合酸化物及びRh担持CeZr系複合酸化物に加えて、活性アルミナにZr、La及びアルカリ土類金属を含有するZrLa系複合酸化物が担持され該ZrLa系複合酸化物にRhが担持されてなる触媒成分を含有することを特徴とする排気ガス浄化用触媒装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−152696(P2012−152696A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14331(P2011−14331)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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