説明

排気ガス還流装置

【課題】閉弁状態においてシートとバルブとの間へ噛み込んだ異物を除去することができる排気ガス還流装置を提供すること。
【解決手段】EGRガスを導入する導入口12と、EGRガスを吸入空気に混入すために吸気系に排出する排出口13と、導入22口12と排出口13とを連通する連通路14とが形成されたハウジング11と、連通路14に設けられたシート15と、シート15に当接または離間するバルブ20と、バルブ20を可動させるステッピングモータ30とを有するEGRバルブ10において、ステッピングモータ30の駆動中に、ステッピングモータ30の駆動力をバルブ20に伝達するように、第1ホルダ部材40および第2ホルダ部材50を介してステッピングモータ30とバルブ20とを連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出される排気ガスの一部を吸気系に戻す排気ガス還流装置に関する。より詳細には、シートとバルブとの間への異物の噛み込みによる性能低下を防止することができる排気ガス還流装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンシステムには、エンジンから排出される排気ガスの一部を吸気系に戻すために排気系と吸気系とを連通する排気還流通路が設けられている。そして、排気還流通路には、排気ガスの還流量等を制御するための排気ガス還流装置が配置されている。この排気ガス還流装置として、近年、モータ(例えばステッピングモータ)によってバルブを上下動させ、その開度を制御するようにしたものが多く使用されている。
ここで、排気ガス還流装置では、閉弁(全閉)状態におけるガス漏れ量を最小限に抑えることが必要である。閉弁状態においてガス漏れ量が多いと、エンジンが停止したり、エンジンの再始動性が悪化したりという性能低下を招くおそれがあるからである。
【0003】
このため、排気ガス還流装置には閉弁状態におけるガス漏れ量を最小限に抑える対策が施されている。そのうちの1つとして、例えば、特開平10−169515号公報に開示された排気ガス環流装置がある。この排気ガス還流装置では、バルブボディに形成された排気ガス還流用の通路穴にガス量を調節するためのバルブ装置を配置し、該バルブを駆動機構により開閉制御してなる排気ガス還流制御弁において、前記バルブ装置は、弁体と係合する弁座部材をカップ状に形成すると共に、そのカップ状部材の底面側に第1のオリフィスを形成した弁座を設け、更に上部開口端をバルブ軸ガイド部材を介して前記バルブボディの通路穴内に挟み固定することにより、シール性を向上させてガス漏れ量を最小限に抑えるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−169515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した排気ガス還流装置では、弁座(シート)とバルブとの間へ異物が噛み込むと、閉弁状態においてバルブがシートに当接しなくなり(バルブが全閉にならなくなり)、ガス漏れ量が増大してしまうという問題があった。このようにバルブが全閉にならなくなるのは、弾性体(スプリング)の付勢力によってバルブをシートに当接させるようになっているからである。そして、閉弁状態においてガス漏れ量が増大してしまうと、排気ガス還流制御の不良が発生してエンジン性能が低下してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、閉弁状態においてシートとバルブとの間へ噛み込んだ異物を除去することができる排気ガス還流装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係る排気ガス還流装置は、エンジンから排出される排気ガスを導入する導入口と、排気ガスの一部を吸入空気に混入するためにエンジンの吸気系に排出する排出口と、前記導入口と前記排出口とを連通する連通路とが形成されたハウジングと、前記連通路に設けられたシートと、前記シートに当接または離間するバルブと、前記バルブを前記弁座に当接させる方向に付勢する弾性体と、前記バルブを可動させるアクチュエータとを有する排気ガス還流装置において、前記アクチュエータの作動中のみ、前記アクチュエータと前記バルブとを連結する連結手段を有することを特徴とする。
【0008】
この排気ガス還流装置では、アクチュエータがバルブを可動させることにより、バルブをシートに当接または離間させて連通路が遮断または開放される。これにより、導入口から導入される排気ガスが排出口から吸気系に排出される。このとき、アクチュエータの動作を制御することにより、バルブの開閉時期や開度を制御して排気ガス還流制御が行われる。
【0009】
そして、この排気ガス還流装置では、アクチュエータの作動中にアクチュエータとバルブとを連結する連結手段を有している。このため、バルブが可動している間は、連結手段によって、アクチュエータとバルブとが連結されている。従って、バルブを全閉にする際に、シートとバルブとの間に異物が噛み込んでも、アクチュエータの動作力によってバルブがシートに当接するように可動させられる。このバルブの動作により、シートとバルブとの間に噛み込んだ異物は、噛み切られたり押し潰されたり等して、シートとバルブとの間から除去される。その結果、バルブはシートに当接して全閉になるため、閉弁状態においてガス漏れ量を最小限に抑えることができ、性能低下を防止することができる。
【0010】
本発明に係る排気ガス還流装置においては、前記連結手段は、コッタ状部材を介して前記バルブに装着されるとともに前記弾性体を受ける弾性体受け部が形成され、前記弾性体の付勢力を前記バルブに伝達する第1ホルダ部材と、前記第1ホルダ部材を介して前記アクチュエータの動作力を前記バルブに伝達する第2ホルダ部材と、を備えていることが望ましい。
【0011】
ここで、アクチュエータとバルブとを直に連結する(常時連結している)と、バルブのコッタ部におけるフレッティング摩耗によって、連結部が破損するおそれがある。ところが、この排気ガス環流装置では、連結手段を第1ホルダ部材と第2ホルダ部材とにより構成して、アクチュエータとバルブとを直に連結せずに、アクチュエータが作動する際だけ第1ホルダ部材および第2ホルダ部材を介してアクチュエータとバルブとを円滑に連結することができる。このため、バルブのコッタ部におけるフレッティング摩耗を抑制することができ、連結部が破損することを防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る排気ガス還流装置においては、前記第2ホルダ部材は、前記第1ホルダ部材の前記弾性体受け部の外周に係合可能なL字形状の係合爪を備えていることが望ましい。
【0013】
これにより、弁開方向へバルブを可動させる場合には、第2ホルダ部材が第1ホルダ部材に当接し第1ホルダ部材を介してバルブにアクチュエータの駆動力が伝達される結果、弾性体の付勢力に抗してバルブがシートから離間する。逆に、弁閉方向へバルブを可動させる場合には、第2ホルダ部材の係合爪が第1ホルダ部材の弾性体受け部の外周に係合し第1ホルダ部材を介してバルブにアクチュエータの駆動力が伝達される結果、弾性体の付勢力以上の力によりバルブをシートに当接させることができる。
従って、バルブを全閉にする際に、シートとバルブとの間に異物が噛み込んでも、アクチュエータの動作力により、シートとバルブとの間に噛み込んだ異物が噛み切られたり押し潰されたり等してシートとバルブとの間から確実に除去される。その結果、バルブはシートに当接して全閉になるため、閉弁状態においてガス漏れ量を最小限に抑えることができ、性能低下を防止することができる。
【0014】
また、本発明に係る排気ガス還流装置においては、前記アクチュエータがステッピングモータであり、前記ステッピングモータの回転運動を前記バルブの軸方向における直線運動に変換して前記バルブに駆動力を付与する伝達部材を有し、前記伝達部材に前記第2ホルダ部材が固定され、前記第1ホルダ部材の前記弾性体受け部の外周に径外方向に突出する凸部が形成され、前記第2ホルダ部材に前記凸部が位置する長穴が形成されており、前記凸部は所定角度の遊びが設けられた状態で前記長穴内に配置されていることが望ましい。
【0015】
この排気ガス還流装置では、伝達部材によりステッピングモータの回転運動が直線運動に変換される。これにより、伝達部材に固定された第2ホルダ部材が第1ホルダ部材を介してバルブを可動させ、バルブをシートに当接または離間させて連通路が遮断または開放される。その結果、導入口から導入される排気ガスが排出口から吸気系に排出される。このとき、ステッピングモータの動作を制御することにより、バルブの開閉時期や開度を制御して排気ガス還流制御が行われる。
【0016】
そして、この排気ガス還流装置では、第1ホルダ部材に形成された凸部が第2ホルダ部材に形成された長穴内に所定角度(例えば、5〜15度程度)の遊びが設けられた状態で配置されている。一方、伝達部材とステッピングモータとの連結部においても、長穴と凸部の遊びと同程度の遊びが存在する。このため、バルブを全閉する際に、シートとバルブとの間に異物が噛み込むと、ステッピングモータは回転しているが、伝達部材の上下方向への移動が一時的に停止するため、伝達部材が微少に揺動する。このとき、伝達部材に固定された第2ホルダ部材も微少に揺動することになる。そして、第2ホルダ部材の長穴内に第1ホルダ部材の凸部が位置してるため、第2ホルダ部材の微少な揺動により凸部が長穴端部に当接し、第1ホルダ部材が微動する。その結果、バルブも微動する。このバルブの微動により、シートとバルブとの間に噛み込んだ異物がずれてシートとバルブとの間から除去される。よって、バルブはシートに当接して全閉になるため、閉弁状態においてガス漏れ量を最小限に抑えることができ、性能低下を防止することができる。
【0017】
また、本発明に係る排気ガス還流装置においては、前記シートのうち前記バルブに当接する当接部は、異物を噛み切り可能な噛み切り形状をなしていることが望ましい。
【0018】
この排気ガス還流装置でも、アクチュエータがバルブを可動させることにより、バルブをシートに当接または離間させて連通路が遮断または開放される。これにより、導入口から導入される排気ガスが排出口から吸気系に排出される。このとき、アクチュエータの動作を制御することにより、バルブの開閉時期や開度を制御して排気ガス還流制御が行われる。
【0019】
そして、この排気ガス還流装置では、シートのうちバルブに当接する当接部が、異物を噛み切り可能な噛み切り形状をなしているので、バルブを全閉にする際にシートとバルブとの間に異物が噛み込んだとしても、その異物はシートとバルブとに挟まれて噛み切られてシートとバルブとの間から除去される。その結果、バルブはシートに当接して全閉になるため、閉弁状態においてガス漏れ量を最小限に抑えることができ、性能低下を防止することができる。
【0020】
ここで、バルブの開閉を繰り返していると、シートのバルブに対する当接部が摩耗してくる。そうすると、シートとバルブとの間に噛み込んだ異物をうまく噛み切れないるおそれがある。
【0021】
そこで、前記噛み切り形状は、所定の角度を維持可能な鋭利形状であることが好ましい。
噛み切り形状をこのような形状にすることにより、シートのバルブに対する当接部が摩耗しても所定の角度を維持して鋭利形状を保つことができる。これにより、シートのバルブに対する当接部が摩耗しても、シートとバルブとの間に噛み込んだ異物を噛み切ることができる。従って、バルブを全閉にする際、シートとバルブとの間に噛み込んだ異物が確実に除去されるので、バルブはシートに完全に当接して全閉になるため、閉弁状態においてガス漏れ量を最小限に抑えることができ、性能低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る排気ガス還流装置によれば、上記した通り、閉弁状態においてシートとバルブとの間へ異物が噛み込んでもその異物を除去することができるため、シートとバルブとを確実に当接させてガス漏れ量を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の流体用レギュレータを具体化した最も好適な実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態に係る排気ガス還流装置は、EGRガスをエンジンの吸気系に戻すためのEGRバルブである。
【0024】
そこで、実施の形態に係るEGRバルブについて、図1〜図3を参照しながら説明する。図1は、実施の形態に係るEGRバルブの閉弁状態における概略構成を示す断面図である。図2は、第1ホルダ部材の概略構成を示す図であり、(a)は第1ホルダ部材の平面図、(b)は第1ホルダ部材の断面図である。図3は、第2ホルダ部材の概略構成および第1ホルダ部材との配置位置関係を示す図であり、(a)は上方から見た図であり、(b)は側面から見た図である。
【0025】
本実施の形態に係るEGRバルブ10には、図1に示すように、ハウジング11と、ハウジング11内に摺動可能に設けられたバルブ20と、バルブ20を上下動させるアクチュエータとしてのステッピングステッピングモータ30とが備わっている。ハウジング11には、EGRガスが導入される導入口12と、EGRガスが排出される排出口13と、導入口12と排出口13とを連通する連通路14とが形成されている。導入口12は、バルブ20より上流側で下方に向かって開口しており、排出口13はバルブ20より下流側でバルブ20より上方に位置し横方向に向かって開口している。そして、連通路14の途中に、バルブ20が当接または離間するシート15が形成されている。
【0026】
バルブ20は、ステッピングモータ30側(上方)に延設されたバルブ軸21を有している。バルブ軸21の端部にはコッタ状部材35を介して第1ホルダ部材40が装着されている。第1ホルダ部材40は、図2(a)(b)に示すように、カップ状の部材であり、その中心にコッタ状部材35が嵌合する嵌合穴43が形成され、上部には径外方向に張り出した円板状のスプリング受け部41が形成されている。このスプリング受け部41の外周部には、径外方向に突出した凸部42が形成されている。そして、第1ホルダ部材40のスプリング受け部41とハウジング11との間にスプリング21が配設され、スプリング22により第1ホルダ部材を介してバルブ20が上方に付勢されている。これにより、ステッピングモータ30に通電されていない状態では、バルブ20はシート15に当接して全閉状態になっている。
【0027】
ステッピングモータ30は、周知のように、コイル31およびロータ32を備えている。そして、ロータ32にねじ棒33が連結されている。これにより、ねじ棒33は、ロータ32とともに回転する。このねじ棒33には、ストローク部材34が螺合している。正確には、ねじ棒33とストローク部材34とは少しの遊び(ガタ)を持って結合している。そして、ストローク部材34は、ねじ棒33の回転によって上下方向に移動するようになっている。なお。ねじ棒33とストローク部材34とが、本発明の伝達部材に相当するものである。
【0028】
このストローク部材34の下端部に、第2ホルダ部材50が固定されている。第2ホルダ部材50は、図3(a)に示すように平面視で略長方形状をなし、図1に示すように両端部がL字形状に形成された係合爪51が設けられている。そして、係合爪51の側面には、図3(b)に示すように長穴52が形成されている。この長穴52内には、第1ホルダ部材40の凸部42が角度θ(本実施の形態では約8°)の遊びを持って配置されている。また、第2ホルダ部材は、図1に示すように全閉時において、第1ホルダ部材40と接触しないように配置されている。
【0029】
これにより、第1ホルダ部材40と第2ホルダ部材50とによって、ステッピングモータ30(ねじ棒33およびストローク部材34)とバルブ20(バルブ軸21)とを直に連結せずに、ステッピングモータ30が作動する際だけ第1ホルダ部材40および第2ホルダ部材50を介してステッピングモータ30とバルブ20とを円滑に連結することができるようになっている。このため、バルブ可動時にバルブ軸21のコッタ部におけるフレッティング摩耗を抑制することができ、その部分の破損を防止することができる。
【0030】
そして、ステッピングモータ30を正回転させると、ストローク部材34および第2ホルダ50が下方へ動く。そうすると、第2ホルダ部材50が第1ホルダ部材40に当接するとともに、ストローク部材34の下端部がバルブ軸21の上端部に当接し、その状態でスプリング22の付勢力に抗してバルブ20が下方に押されシート15から離間する。逆に、ステッピングモータ30を逆回転させると、ストローク部材34および第2ホルダ部材50が上方へ動く。そうすると、バルブ20は第1ホルダ部材40を介してスプリング21により上方に持ち上げられてシート15に当接する。このようにして、バルブ20がシート15に対して当接または離間して連通路14が遮断または開放される。
【0031】
続いて、上記した構成を有するEGRバルブ10の動作について、図4および図5を参照しながら説明する。図4は、バルブがシートから離間している状態を示す説明図である。図5は、ステッピングモータによりバルブを引き上げた状態を示す説明図である。
説明する。
【0032】
まず、エンジンから排出された排気ガスの一部がEGRガスとして導入口3からEGRバルブ10内に導入される。
そして、EGRガスをエンジンの吸気系に還流させる場合、ステッピングモータ30を正回転させると、ロータ32に連結されているねじ棒33が正回転する。このねじ棒33の正回転によって、ストローク部材34および第2ホルダ部材50が下方へ移動する。その結果、図4に示すように、第2ホルダ部材50が第1ホルダ部材40が当接するとともに、ストローク部材34の下端部がバルブ軸21の上端部に当接し、その状態でスプリング22の付勢力に抗してバルブ20が下方に押されシート15から離間する。これにより、連通路14が開放されて導入口12と排出口13とが連通するので、EGRガスがEGRバルブ10から排出されてエンジンの吸気系に還流される。
【0033】
その後、エンジンの吸気系へのEGRガスの還流を停止する場合には、ステッピングモータ30を逆回転させる。そうすると、ロータ32に連結されているねじ棒33が逆回転する。このねじ棒33の逆回転によってストローク部材34および第2ホルダ部材50が上方へ移動する。このとき、スプリング22の付勢力によって、第1ホルダ部材40も上方へ移動する。その結果、バルブ20が上方へ移動してシート15に当接する(図1に示す状態)。これにより、連通路14が遮断されて導入口12と排出口13とが連通しなくなるので、EGRガスがEGRバルブ10から排出されなくなってエンジンの吸気系への還流が停止する。
【0034】
ここで、EGRバルブ10では、スプリング22の付勢力によってバルブ20がシート15に当接した後、図5に示すように、ストローク部材34および第2ホルダ部材50がさらに上方へ移動して、第2ホルダ部材50の係合爪51が第1ホルダ部材40に係合する。これにより、第1ホルダ部材40を介してバルブ20にステッピングモータ30の駆動力が伝達されるため、スプリング21の付勢力以上の力によってバルブ20をシート15に当接させることができる。
【0035】
そして、バルブ20を閉弁方向に可動させているときに、シート15とバルブ20との間に異物が噛み込むと、ステッピングモータ30は回転しているが、ストローク部材34の移動が一時的に停止する。ここで、第1ホルダ部材40に形成された凸部42が第2ホルダ部材50に形成された長穴52内に角度θの遊びが設けられた状態で配置されているとともに、ねじ棒33とストローク部材34の間にも、長穴52と凸部42の遊びと同程度の遊びが存在している。このため、ストローク部材34および第2ホルダ部材50が微少に揺動する。そして、第2ホルダ部材50の長穴内52に第1ホルダ部材40の凸部42が位置してるため、第2ホルダ部材50の微少な揺動により凸部42が長穴52の端部に当接して第1ホルダ部材40が微動する。その結果、バルブ20も微動する。このバルブ20の微動により、シート15とバルブ20との間に噛み込んだ異物がずれる。
【0036】
このような状態で、ステッピングモータ30の駆動力によってバルブ20が引き上げられるため、シート15とバルブ20との間に噛み込んだ異物が除去される。このとき、異物が除去されない場合には、ステッピングモータ30の駆動力によってバルブ20がさらに引き上げられるため、異物が噛み切られたりあるいは押し潰されたりする。
【0037】
このように、本実施の形態に係るEGRバルブ10では、エンジンの吸気系へのEGRガスの還流を停止する際に、シート15とバルブ20との間に異物が噛み込んでも、その異物をシート15とバルブ20との間から確実に除去することができる。このため、バルブ20をシート15に確実に当接させることができるので、閉弁状態におけるガス漏れ量を最小限に抑えることができる。
【0038】
ここで、シート15のうちバルブ20に当接する当接部を、異物を噛み切り可能な噛み切り形状にするとよい、特に。噛み切り形状は、所定の角度を維持可能な鋭利形状であることが好ましい
【0039】
こうすることにより、バルブ20を全閉にする際にシート15とバルブ20との間に噛み込んだ異物を、確実に噛み切ってシート15とバルブ20との間から除去することができる。また、バルブ20の開閉が繰り返し行われ、シート15のバルブ20に対する当接部が摩耗しても、噛み切り形状は、所定の角度を維持可能な鋭利形状であるので、シート15のバルブ20に対する当接部が摩耗しても所定の角度を維持して鋭利形状を保つことができる。これにより、シート15のバルブ20に対する当接部が摩耗しても、シート15とバルブ20との間に噛み込んだ異物を確実に噛み切ることができる。
【0040】
以上、詳細に説明した通り、本実施の形態に係るEGRバルブ10によれば、スプリング22の付勢力によってバルブ20がシート15に当接した後、ストローク部材34および第2ホルダ部材50がさらに上方へ移動して、第2ホルダ部材50の係合爪51が第1ホルダ部材40に係合するので、第1ホルダ部材40を介してバルブ20にステッピングモータ30の駆動力が伝達され、スプリング21の付勢力以上の力によってバルブ20をシート15に当接させることができる。
【0041】
また、EGRバルブ10では、第1ホルダ部材40に形成された凸部42が第2ホルダ部材50に形成された長穴52内に角度θの遊びが設けられた状態で配置されているとともに、ねじ棒33とストローク部材34の間にも、長穴52と凸部42の遊びと同程度の遊びが存在しているので、ストローク部材34および第2ホルダ部材50が微少に揺動する。そして、第2ホルダ部材50の長穴内52に第1ホルダ部材40の凸部42が位置してるため、第2ホルダ部材50の微少な揺動により凸部42が長穴52の端部に当接して第1ホルダ部材40が微動する。その結果として、バルブ20も微動する。このバルブ20の微動により、シート15とバルブ20との間に噛み込んだ異物をずらすことができる。このとき、ステッピングモータ30の駆動力によってバルブ20が引き上げられるため、シート15とバルブ20との間に噛み込んだ異物を確実に除去することができる。
【0042】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施の形態に係るEGRバルブの閉弁状態における概略構成を示す断面図である。
【図2】第1ホルダ部材の概略構成を示す図であり、(a)は第1ホルダ部材の平面図、(b)は第1ホルダ部材の断面図である。
【図3】第2ホルダ部材の概略構成および第1ホルダ部材との配置位置関係を示す図であり、(a)は上方から見た図であり、(b)は側面から見た図である。
【図4】バルブがシートから離間している状態を示す説明図である。
【図5】ステッピングモータによりバルブを引き上げた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
10 EGRバルブ
11 ハウジング
12 導入口
13 排出口
14 連通路
15 シート
20 バルブ
21 バルブ軸
30 ステッピングモータ
31 コイル
32 ロータ
33 ねじ棒
34 ストローク部材
35 コッタ状部材
40 第1ホルダ部材
41 スプリング受け部
42 凸部
50 第2ホルダ部材
51 係合爪
52 長穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出される排気ガスを導入する導入口と、排気ガスの一部を吸入空気に混入するためにエンジンの吸気系に排出する排出口と、前記導入口と前記排出口とを連通する連通路とが形成されたハウジングと、前記連通路に設けられたシートと、前記シートに当接または離間するバルブと、前記バルブを前記弁座に当接させる方向に付勢する弾性体と、前記バルブを可動させるアクチュエータとを有する排気ガス還流装置において、
前記アクチュエータの作動中に前記アクチュエータと前記バルブとを連結する連結手段を有することを特徴とする排気ガス還流装置。
【請求項2】
請求項1に記載する排気ガス還流装置において、
前記連結手段は、
コッタ状部材を介して前記バルブに装着されるとともに前記弾性体を受ける弾性体受け部が形成され、前記弾性体の付勢力を前記バルブに伝達する第1ホルダ部材と、
前記第1ホルダ部材を介して前記アクチュエータの動作力を前記バルブに伝達する第2ホルダ部材と、
を備えることを特徴とする排気ガス還流装置。
【請求項3】
請求項2に記載する排気ガス還流装置において、
前記第2ホルダ部材は、前記第1ホルダの前記弾性体受け部の外周に係合可能なL字形状の係合爪を備えていることを特徴とする排気ガス還流装置。
【請求項4】
請求項3に記載する排気ガス還流装置において、
前記アクチュエータがステッピングモータであり、
前記ステッピングモータの回転運動を前記バルブの軸方向における直線運動に変換して前記バルブに駆動力を付与する伝達部材を有し、
前記伝達部材に前記第2ホルダ部材が固定され、
前記第1ホルダ部材の前記弾性体受け部の外周に径外方向に突出する凸部が形成され、
前記第2ホルダ部材に前記凸部が位置する長穴が形成されており、
前記凸部は所定角度の遊びが設けられた状態で前記長穴内に配置されていることを特徴とする排気ガス還流装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載するいずれか1つの排気ガス還流装置において、
前記シートのうち前記バルブに当接する当接部は、異物を噛み切り可能な噛み切り形状をなしていることを特徴とする排気ガス還流装置。
【請求項6】
請求項5に記載する排気ガス還流装置において、
前記噛み切り形状は、所定の角度を維持可能な鋭利形状であることを特徴とする排気ガス還流装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−309115(P2007−309115A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136390(P2006−136390)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】