説明

排気ターボ過給機のスラスト軸受の冷却装置

【課題】スラスト軸受の温度の上昇を抑えて、該スラスト軸受の寿命を延長し得る、排気ターボ過給機のスラスト軸受の冷却装置を提供する。
【解決手段】排気ターボ過給機のスラスト軸受の冷却装置において、前記スラスト軸受は、負荷側に配置されるテーパーランド部と反負荷側に配置されるテーパーランド部の位相を円周方向にずらし、前記負荷側のテーパーランド部と反負荷側のテーパーランド部とを、前記負荷側のテーパーランド部を前記反負荷側のテーパーランド部で冷却するように設置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスにより駆動される排気ターボ過給機の排気タービンとコンプレッサとの間に作用するスラスト荷重を、スラスト軸受で支承するように構成されたスラスト軸受の冷却装置を備えた排気ターボ過給機のスラスト軸受装置の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、一般的な排気ターボ過給機の主要部の軸線方向の断面図である。図9において、1は排気タービン、2はコンプレッサで、該排気タービン1とコンプレッサ2とはタービン軸3にて一体に結合されている。前記タービン軸3は中央よりの2箇所をジャーナル軸受4,4で軸受箱3に支承されている。
前記排気ターボ過給機においては、前記タービン軸3に、排気タービン1の軸方向力とコンプレッサ2の軸方向力との差であるスラスト荷重Sが図の右方(排気タービン1の方向)に向けて作用する(図9の左方に向けて作用する場合もある)。
【0003】
このスラスト荷重Sは、内周をタービン軸3に固定されたコンプレッサ側スラストカラー5と、内周をタービン軸3に固定されたタービン側スラストカラー6にて受圧し、このスラスト荷重Sを、前記2つのスラストカラー5、6に挟持され外周を軸受箱3に固定されたスラスト軸受7で支承している。
【0004】
図10は前記スラスト軸受7の平面概念図である。
該スラスト軸受7は、コンプレッサ側スラストカラー5に接触するテーパーランド型軸受が、給油口に連通されるテーパー部52と該テーパー部52に連設されるランド部51とよりなるテーパーランド部50を有し、またタービン側スラストカラー6に接触するテーパーランド型軸受が、給油口に連通されるテーパー部62と該テーパー部62に連設されるランド部61とよりなるテーパーランド部60を有し、かかる2つのテーパーランド型軸受により構成されている。この2つのテーパーランド型軸受からなるスラスト軸受7を、前記軸受箱3で支承している。
また、図10に示すように、前記テーパーランド部50とテーパーランド部60とは、テーパー部52、62及びランド部51、61が同一に配置されている。100aは過給機の中心である。
【0005】
また、特許文献1(特開2006−77803号公報)及び特許文献2(特開2003−232340号公報)には、前記スラスト軸受を、給油口に連通されるテーパー部と該テーパー部に連設されるランド部とよりなるテーパーランド部を有するテーパーランド型軸受から構成した技術が示されている。
【特許文献1】特開2006−77803号公報
【特許文献2】特開2003−232340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる排気ターボ過給機のスラスト軸受7は、通常テーパーランド型軸受が採用されている。一方で、排気ターボ過給機の使用環境は、排気ガス規制によってDPF(ディーゼル、パチキュレート、フィルター)の採用が必須となっている。それに伴い排気タービン1の出口圧力が上昇し、圧力のバランスが変化して、スラスト荷重Sが増加する傾向にあり、これにより前記スラスト軸受7に掛かる荷重が増加し、スラスト軸受7の寿命が低下する傾向にある。
【0007】
従って、前記スラスト軸受7に掛かる荷重の増加により、スラスト軸受7の温度が上昇し、かかるスラスト軸受7の温度上昇が、スラスト軸受7の寿命の低下の大きな要素となっている。
【0008】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、スラスト軸受の温度の上昇を抑えて、該スラスト軸受の寿命を延長し得る、排気ターボ過給機のスラスト軸受の冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる目的を達成するもので、排気ターボ過給機の排気タービンとコンプレッサとの間に作用するスラスト荷重を、内周をタービン軸にそれぞれ固定されたタービン側スラストカラー及びコンプレッサ側スラストカラーを介して、前記2つのスラストカラーに挟持され外周を固定されたスラスト軸受で支承し、該スラスト軸受は、給油口に連通されるテーパー部と該テーパー部に連設されるランド部とよりなるテーパーランド部を有するテーパーランド型軸受に形成され、該テーパーランド部と前記タービン側スラストカラー及びコンプレッサ側スラストカラーを摺接させて、該スラスト荷重を支承するように構成された排気ターボ過給機のスラスト軸受装置において、
前記スラスト軸受は、負荷側に配置されるテーパーランド部と反負荷側に配置されるテーパーランド部の位相を円周方向にずらし、前記負荷側のテーパーランド部と反負荷側のテーパーランド部とを、該負荷側のテーパーランド部を前記反負荷側のテーパーランド部で冷却するように設置したことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
かかる発明において、具体的には次のように構成する。
(1)前記負荷側のテーパーランド部と反負荷側のテーパーランド部とを、前記負荷側のテーパーランド部のランド部に前記反負荷側のテーパーランド部のテーパー部が対応するように設置し、該反負荷側のテーパー部で負荷側のランド部を冷却するように設置する(請求項2)。
(2)前記負荷側のテーパーランド部と反負荷側のテーパーランド部とのテーパーランド部の数を、該反負荷側のテーパーランド部の数が負荷側のテーパーランド部よりも多くなるように構成する(請求項3)。
(3)前記反負荷側のテーパーランド部に変えて多数の角型断面の溝が円周方向に連続したステップ軸受に構成するとともに、前記負荷側は前記テーパーランド部に構成する(請求項4)。
【0011】
また、本発明は、前記排気ターボ過給機のスラスト軸受装置の冷却装置において、
前記スラスト軸受は、負荷側のテーパーランド部及び反負荷側のテーパーランド部のランド部に対応する内部に、前記負荷側及び反負荷側のテーパーランド部のテーパー部に連通するオイル孔を形成し、該オイル孔に導入されるオイルにより、前記各ランド部を冷却するように構成されたことを特徴とする(請求項5)。
【0012】
また、本発明は、前記排気ターボ過給機のスラスト軸受装置の冷却装置において、
前記テーパーランド型軸受のテーパー部の底部近傍の表面粗度を他の部分よりも粗く形成し、冷却作用を向上させたことを特徴とする(請求項6)。
【0013】
また、本発明は、前記排気ターボ過給機のスラスト軸受装置の冷却装置において、
負荷側に配置される負荷側のテーパーランド部と、反負荷側に配置される反負荷側のテーパーランド部とを備え、該反負荷側のテーパーランド部の外周部に該テーパーランド部からのオイルの漏れを遮蔽するシュラウドを設けたことを特徴とする(請求項7)。
【0014】
また、本発明は、前記排気ターボ過給機のスラスト軸受装置の冷却装置において、
前記負荷側に配置される負荷側のテーパーランド部と、反負荷側に配置される反負荷側のテーパーランド部とを備え、前記スラスト軸受の内周に対応する前記負荷側のテーパーランド部の外周面に、該外周面に沿った複数の油溝を形成した特徴とする(請求項8)。
【0015】
また、本発明は、前記タービン側スラストカラーまたはコンプレッサ側スラストカラーのうち少なくとも前記負荷側のテーパーランド部に対応するスラストカラーの内周に、円周方向に沿って複数のオイル溝を形成し、該オイル溝を通ったオイルを前記テーパーランド部に供給するように構成された特徴とする(請求項9)。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スラスト軸受は、負荷側に配置されるテーパーランド部と反負荷側に配置されるテーパーランド部の位相を円周方向にずらし、該負荷側のテーパーランド部と反負荷側のテーパーランド部とを、該負荷側のテーパーランド部を該反負荷側のテーパーランド部で冷却するように設置する(請求項1)。
【0017】
具体的には、負荷側のテーパーランド部と反負荷側のテーパーランド部とを、前記負荷側のテーパーランド部のランド部に前記反負荷側のテーパーランド部のテーパー部が対応するように設置し、該反負荷側のテーパー部で負荷側のランド部を冷却するように設置したので(請求項2)、肉厚の厚い負荷側のテーパーランド部のランド部に、反負荷側のテーパーランド部のテーパー部が膨出して薄肉となるので、該テーパー部によって高温のランド部を冷却することができる。
【0018】
また、負荷側のテーパーランド部と反負荷側のテーパーランド部とのテーパーランド部の数を、該反負荷側のテーパーランド部の数が負荷側のテーパーランド部よりも多くなるように構成すれば(請求項3)、荷重が少なくオイル量が多くなる反負荷側のテーパーランド部の数を、高荷重でオイル量の少ない負荷側のテーパーランド部よりも多くなるように構成したことにより、反負荷側のオイルで、負荷側のテーパーランド部を冷却することができる。
【0019】
また、反負荷側のテーパーランド部に変えて多数の角型断面の溝が円周方向に連続したステップ軸受に構成するとともに、前記負荷側は前記テーパーランド部に構成すれば(請求項4)、反負荷側を多数の角型断面の溝が円周方向に連続したステップ軸受に構成したので、オイルの保持量が多くなり、かかるオイルにより、高荷重でオイル量の少ない負荷側のテーパーランド部を、効果的に冷却することができる。
【0020】
また、スラスト軸受は、負荷側のテーパーランド部及び反負荷側のテーパーランド部のランド部に対応する内部に、前記負荷側及び反負荷側のテーパーランド部のテーパー部に連通するオイル孔を形成したので(請求項5)、かかる負荷側及び反負荷側のテーパー部に連通するオイル孔に通流するオイルにより、負荷側及び反負荷側のテーパーランド部のランド部を、効率よく冷却することができる。
【0021】
また、前記テーパーランド型軸受のテーパー部の底部近傍の表面粗度を他の部分よりも粗く形成することにより(請求項6)、表面粗度の粗くなることによる、乱流の形成によって、該表面粗度の粗い部分の熱伝達率が向上し、冷却効果を向上することができる。
【0022】
また、負荷側に配置される負荷側のテーパーランド部と反負荷側に配置される反負荷側のテーパーランド部とを備え、該反負荷側のテーパーランド部の外周部に該テーパーランド部からのオイルの漏れを遮蔽するシュラウドを設けたので(請求項7)、反負荷側のオイルの漏れをシュラウドにより遮断し、その分のオイルを負荷側に廻すことにより、負荷側の温度を下げることができる。
【0023】
また、負荷側に配置される負荷側のテーパーランド部と反負荷側に配置される反負荷側のテーパーランド部とを備え、スラスト軸受の内周に対応する負荷側のテーパーランド部の外周面に、該外周面に沿った複数の油溝を形成したので(請求項8)、負荷側のテーパーランド部の外周面に沿った複数の油溝に、反負荷側からオイルを貯め、このオイルが前記油溝を通して負荷側のテーパーランドに流れるので、負荷側のテーパーランド部の温度が下がり、冷却効果を向上することができる。
【0024】
また、前記タービン側スラストカラーまたはコンプレッサ側スラストカラーのうち少なくとも前記負荷側のテーパーランド部に対応するスラストカラーの内周に、円周方向に沿って複数のオイル溝を形成し、該オイル溝を通ったオイルを前記テーパーランド部に供給するように構成されたので(請求項9)、前記負荷側のテーパーランド部に対応するスラストカラーの内周のオイルが前記オイル溝を通って、前記負荷側のテーパーランド部に供給されることとなって、負荷側のテーパーランド部の温度をさげることができる。
【0025】
本発明によれば、以上のような各形態によって、スラスト軸受の温度の上昇を抑えることができて、該スラスト軸受の寿命を延長することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0027】
図9は、本発明が適用される排気ターボ過給機の主要部の軸線方向の断面図である。
かかる排気ターボ過給機においては、タービン軸3に、排気タービン1の軸方向力とコンプレッサ2の軸方向力との差であるスラスト荷重Sが図の右方(排気タービン1の方向、図9の左方に向けて作用する場合もある)に向けて作用している。
このスラスト荷重Sは、内周をタービン軸3に固定されたコンプレッサ側スラストカラー5と、内周をタービン軸3に固定されたタービン側スラストカラー6にて受圧し、このスラスト荷重Sを、前記2つのスラストカラー5、6に挟持され外周を軸受箱3に固定されたスラスト軸受7で支承している。
本発明は、かかるスラスト荷重を受圧するスラスト軸受装置の冷却構造に関するものである。
【実施例1】
【0028】
図1は前記本発明の第1実施例に係るスラスト軸受の平面概念図である。
図1において、スラスト軸受7は、コンプレッサ側スラストカラー5に接触するテーパーランド型軸受が、給油口に連通されるテーパー部52と該テーパー部52に連設されるランド部51とよりなるテーパーランド部50を有している。
またタービン側スラストカラー6に接触するテーパーランド型軸受が、給油口に連通されるテーパー部62と該テーパー部62に連設されるランド部61とよりなるテーパーランド部60を有し、かかる2つのテーパーランド型軸受により構成されている。
この2つのテーパーランド型軸受からなるスラスト軸受7を、前記軸受箱3で支承している。
ここで、コンプレッサ側スラストカラー5に変えて、タービン側スラストカラー6に接触するテーパーランド型軸受が負荷側の場合もあるが、以下の説明ではコンプレッサ側スラストカラー5に接触するテーパーランド型軸受を負荷側、タービン側スラストカラー6に接触するテーパーランド型軸受を反負荷側として説明する。
【0029】
図1において、この実施例においては、前記スラスト軸受7は、負荷側に配置されるテーパーランド部50と反負荷側に配置されるテーパーランド部60の位相を円周方向にずらし、前記負荷側のテーパーランド部50と反負荷側のテーパーランド部60とを、前記負荷側のテーパーランド部50を前記反負荷側のテーパーランド部60で冷却するように設置している。
具体的には、負荷側のテーパーランド部50と反負荷側のテーパーランド部60とを、前記負荷側のテーパーランド部50のランド部51に前記反負荷側のテーパーランド部60のテーパー部62が対応するように設置し、図1のように円周方向にずれTを形成し、該反負荷側のテーパー部62で負荷側のランド部51を冷却するように設置している。
【0030】
従って、係る第1実施例によれば、肉厚の厚い負荷側のテーパーランド部50のランド部51に、反負荷側のテーパーランド部60のテーパー部62が膨出して薄肉となるので、該テーパー部62によって高温のランド部51を冷却することができる。
これにより、スラスト軸受7の温度の上昇を抑えることができて、該スラスト軸受7の寿命を延長することができる。
【実施例2】
【0031】
図2は前記本発明の第2実施例に係るスラスト軸受の平面概念図である。
この第2実施例においては、負荷側のテーパーランド部50と反負荷側のテーパーランド部60とのテーパーランド部の数を、該反負荷側のテーパーランド部60の数が負荷側のテーパーランド部50よりも多くなるように構成している。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0032】
かかる第2実施例によれば、荷重が少なくオイル量が多くなる反負荷側のテーパーランド部60の数を、高荷重でオイル量の少ない負荷側のテーパーランド部50よりも多くなるように構成したことにより、反負荷側のテーパーランド部60のオイルで、負荷側のテーパーランド部50を冷却することができる。
これにより、スラスト軸受7の温度の上昇を抑えることができて、該スラスト軸受7の寿命を延長することができる。
【実施例3】
【0033】
図3は前記本発明の第3実施例に係るスラスト軸受の平面概念図である。
この第3実施例においては、スラスト軸受7は、前記第1実施例及び第2実施例のおける反負荷側のテーパーランド部60に変えて、多数の角型断面の溝64及びランド部63が円周方向に連続したステップ軸受65に構成するとともに、前記負荷側は前記第1実施例及び第2実施例と同様なテーパーランド部50に構成する。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0034】
かかる第3実施例によれば、反負荷側を多数の角型断面の溝64及びランド部63が円周方向に連続したステップ軸受65に構成したので、ステップ軸受65におけるオイルの保持量が多くなり、かかるオイルにより、高荷重でオイル量の少ない負荷側のテーパーランド部50を、効果的に冷却することができる。
これにより、スラスト軸受7の温度の上昇を抑えることができて、該スラスト軸受7の寿命を延長することができる。
【実施例4】
【0035】
図4は本発明の第4実施例に係るスラスト軸受の平面概念図である。
この第4実施例においては、スラスト軸受7は、負荷側のテーパーランド部50のランド部51及び反負荷側のテーパーランド部60のランド部61に対応する内部に、前記負荷側のテーパーランド部50のテーパー部52及び反負荷側のテーパーランド部60のテーパー部62から、横方向のオイル孔59に及び該オイル孔59に連通する縦方向のオイル孔58を、各テーパーランド部50,60毎に、交互に形成する。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0036】
かかる第4実施例によれば、負荷側及び反負荷側のテーパー部52,62に連通するオイル孔59,58に、前記テーパー部52,62内のオイルが通流することにより、負荷側及び反負荷側のテーパーランド部50,60のランド部51,61を、背部から効率よく冷却することができる。
これにより、スラスト軸受7の温度の上昇を抑えることができて、該スラスト軸受7の寿命を延長することができる。
【実施例5】
【0037】
図5は本発明の第5実施例に係るスラスト軸受の片側平面概念図である。
この第5実施例においては、前記テーパーランド型軸受のテーパー部52の底部近傍(図5のW部)の表面粗度を他の部分よりも粗く形成している。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
かかる第5実施例によれば、W部の表面粗度の粗くなることによる乱流の形成によって、該表面粗度の粗い部分の熱伝達率が向上し、冷却効果を向上することができる。
【実施例6】
【0038】
図6は本発明の第6実施例に係るスラスト軸受の一部側面上視図である。
この第6実施例においては、負荷側に配置される負荷側のテーパーランド部50と反負荷側に配置される反負荷側のテーパーランド部60とを備え、該反負荷側のテーパーランド部60の外周部に該テーパーランド部60らのオイルの漏れを遮蔽するシュラウド73を設けている。61はランド部である。
かかる第6実施例によれば、反負荷側のオイルの漏れをシュラウド73により遮断し、その分のオイルを負荷側50に廻すことにより、負荷側の温度を下げることができる。
これにより、スラスト軸受7の温度の上昇を抑えることができて、該スラスト軸受7の寿命を延長することができる。
【実施例7】
【0039】
図7(A)は本発明の第7実施例に係るスラスト軸受近傍の要部断面図である。(B)は(A)のZ部拡大図である。
この第7実施例においては、負荷側に配置される負荷側のテーパーランド部50と反負荷側に配置される反負荷側のテーパーランド部60とを備え、スラスト軸受7の内周に対応する負荷側のテーパーランド部50の外周面74に、該外周面74に沿った複数の油溝8を形成している。前記油溝8はねじ溝でも良い。
【0040】
かかる第7実施例によれば、負荷側のテーパーランド部50の外周面74に沿った複数の油溝8に、反負荷側からのオイルを貯め、このオイルが前記油溝8を通して負荷側のテーパーランド50に流れるので、負荷側のテーパーランド部50の温度が下がり、冷却効果を向上することができる。
これにより、スラスト軸受7の温度の上昇を抑えることができて、該スラスト軸受7の寿命を延長することができる。
【実施例8】
【0041】
図8(A)は本発明の第8実施例に係るコンプレッサ側スラストカラーの正面図である。(B)は(A)のY−Y断面図である。
この第8実施例においては、タービン側スラストカラーまたはコンプレッサ側スラストカラーのうち少なくとも前記負荷側のテーパーランド部50に対応するスラストカラー5の内周に、円周方向に沿って複数のオイル溝9を形成し、該オイル溝9を通ったオイルを前記テーパーランド部50に供給するように構成している。
【0042】
かかる第8実施例によれば、前記負荷側のテーパーランド部50に対応するスラストカラー5の内周のオイルが前記オイル溝9を通って、前記負荷側のテーパーランド部50に供給されることとなって、負荷側のテーパーランド部50の温度を下げることができる。
これにより、スラスト軸受7の温度の上昇を抑えることができて、該スラスト軸受7の寿命を延長することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、スラスト軸受の温度の上昇を抑えて、該スラスト軸受の寿命を延長し得る排気ターボ過給機のスラスト軸受の冷却装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施例に係るスラスト軸受の平面概念図である。
【図2】本発明の第2実施例に係るスラスト軸受の平面概念図である。
【図3】本発明の第3実施例に係るスラスト軸受の平面概念図である。
【図4】本発明の第4実施例に係るスラスト軸受の平面概念図である。
【図5】本発明の第5実施例に係るスラスト軸受の片側平面概念図である。
【図6】本発明の第6実施例に係るスラスト軸受の一部側面上視図である。
【図7】(A)は本発明の第7実施例に係るスラスト軸受近傍の要部断面図である。(B)は(A)のZ部拡大図である。
【図8】(A)は本発明の第8実施例に係るコンプレッサ側スラストカラーの正面図である。(B)は(A)のY−Y断面図である。
【図9】本発明が適用される排気ターボ過給機の主要部の軸線方向の断面図である。
【図10】従来技術を示す図1対応図である。
【符号の説明】
【0045】
1 排気タービン
2 コンプレッサ
3 タービン軸
5 コンプレッサ側スラストカラー
6 タービン側スラストカラー
7 スラスト軸受
8 油溝
9 オイル溝
50,60 テーパーランド部
51,61 ランド部
52,62 テーパー部
65 ステップ軸受
73 シュラウド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ターボ過給機の排気タービンとコンプレッサとの間に作用するスラスト荷重を、内周をタービン軸にそれぞれ固定されたタービン側スラストカラー及びコンプレッサ側スラストカラーを介して、前記2つのスラストカラーに挟持され外周を固定されたスラスト軸受で支承し、該スラスト軸受は、給油口に連通されるテーパー部と該テーパー部に連設されるランド部とよりなるテーパーランド部を有するテーパーランド型軸受に形成され、該テーパーランド部と前記タービン側スラストカラー及びコンプレッサ側スラストカラーを摺接させて、該スラスト荷重を支承するように構成された排気ターボ過給機のスラスト軸受装置において、
前記スラスト軸受は、負荷側に配置されるテーパーランド部と反負荷側に配置されるテーパーランド部の位相を円周方向にずらし、前記負荷側のテーパーランド部と反負荷側のテーパーランド部とを、該負荷側のテーパーランド部を前記反負荷側のテーパーランド部で冷却するように設置したことを特徴とする排気ターボ過給機のスラスト軸受の冷却装置。
【請求項2】
前記負荷側のテーパーランド部と反負荷側のテーパーランド部とを、前記負荷側のテーパーランド部のランド部に前記反負荷側のテーパーランド部のテーパー部が対応するように設置し、該反負荷側のテーパー部で負荷側のランド部を冷却するように設置したことを特徴とする請求項1記載の排気ターボ過給機のスラスト軸受の冷却装置。
【請求項3】
前記負荷側のテーパーランド部と反負荷側のテーパーランド部とのテーパーランド部の数を、該反負荷側のテーパーランド部の数が負荷側のテーパーランド部よりも多くなるように構成したことを特徴とする請求項1記載の排気ターボ過給機のスラスト軸受の冷却装置。
【請求項4】
前記反負荷側のテーパーランド部に変えて多数の角型断面の溝が円周方向に連続したステップ軸受に構成するとともに、前記負荷側は前記テーパーランド部に構成したことを特徴とする請求項1記載の排気ターボ過給機のスラスト軸受の冷却装置。
【請求項5】
排気ターボ過給機の排気タービンとコンプレッサとの間に作用するスラスト荷重を、内周をタービン軸にそれぞれ固定されたタービン側スラストカラー及びコンプレッサ側スラストカラーを介して、前記2つのスラストカラーに挟持され外周を固定されたスラスト軸受で支承し、該スラスト軸受は、給油口に連通されるテーパー部と該テーパー部に連設されるランド部とよりなるテーパーランド部を有するテーパーランド型軸受に形成され、該テーパーランド部と前記タービン側スラストカラー及びコンプレッサ側スラストカラーを摺接させて、該スラスト荷重を支承するように構成された排気ターボ過給機のスラスト軸受装置において、
前記スラスト軸受は、負荷側のテーパーランド部及び反負荷側のテーパーランド部のランド部に対応する内部に、前記負荷側及び反負荷側のテーパーランド部のテーパー部に連通するオイル孔を形成し、該オイル孔に導入されるオイルにより、前記各ランド部を冷却するように構成されたことを特徴とする排気ターボ過給機のスラスト軸受の冷却装置。
【請求項6】
排気ターボ過給機の排気タービンとコンプレッサとの間に作用するスラスト荷重を、内周をタービン軸にそれぞれ固定されたタービン側スラストカラー及びコンプレッサ側スラストカラーを介して、前記2つのスラストカラーに挟持され外周を固定されたスラスト軸受で支承し、該スラスト軸受は、給油口に連通されるテーパー部と該テーパー部に連設されるランド部とよりなるテーパーランド部を有するテーパーランド型軸受に形成され、該テーパーランド部と前記タービン側スラストカラー及びコンプレッサ側スラストカラーを摺接させて、該スラスト荷重を支承するように構成された排気ターボ過給機のスラスト軸受装置において、
前記テーパーランド型軸受のテーパー部の底部近傍の表面粗度を他の部分よりも粗く形成し、冷却作用を向上させたことを特徴とする排気ターボ過給機のスラスト軸受の冷却装置。
【請求項7】
排気ターボ過給機の排気タービンとコンプレッサとの間に作用するスラスト荷重を、内周をタービン軸にそれぞれ固定されたタービン側スラストカラー及びコンプレッサ側スラストカラーを介して、前記2つのスラストカラーに挟持され外周を固定されたスラスト軸受で支承し、該スラスト軸受は、給油口に連通されるテーパー部と該テーパー部に連設されるランド部とよりなるテーパーランド部を有するテーパーランド型軸受に形成され、該テーパーランド部と前記タービン側スラストカラー及びコンプレッサ側スラストカラーを摺接させて、該スラスト荷重を支承するように構成された排気ターボ過給機のスラスト軸受装置において、
負荷側に配置される負荷側のテーパーランド部と、反負荷側に配置される反負荷側のテーパーランド部とを備え、該反負荷側のテーパーランド部の外周部に該テーパーランド部からのオイルの漏れを遮蔽するシュラウドを設けたことを特徴とする排気ターボ過給機のスラスト軸受の冷却装置。
【請求項8】
排気ターボ過給機の排気タービンとコンプレッサとの間に作用するスラスト荷重を、内周をタービン軸にそれぞれ固定されたタービン側スラストカラー及びコンプレッサ側スラストカラーを介して、前記2つのスラストカラーに挟持され外周を固定されたスラスト軸受で支承し、該スラスト軸受は、給油口に連通されるテーパー部と該テーパー部に連設されるランド部とよりなるテーパーランド部を有するテーパーランド型軸受に形成され、該テーパーランド部と前記タービン側スラストカラー及びコンプレッサ側スラストカラーを摺接させて、該スラスト荷重を支承するように構成された排気ターボ過給機のスラスト軸受装置において、
前記負荷側に配置される負荷側のテーパーランド部と、反負荷側に配置される反負荷側のテーパーランド部とを備え、
前記スラスト軸受の内周に対応する前記負荷側のテーパーランド部の外周面に、該外周面に沿った複数の油溝を形成した特徴とする排気ターボ過給機のスラスト軸受の冷却装置。
【請求項9】
排気ターボ過給機の排気タービンとコンプレッサとの間に作用するスラスト荷重を、内周をタービン軸にそれぞれ固定されたタービン側スラストカラー及びコンプレッサ側スラストカラーを介して、前記2つのスラストカラーに挟持され外周を固定されたスラスト軸受で支承し、該スラスト軸受は、給油口に連通されるテーパー部と該テーパー部に連設されるランド部とよりなるテーパーランド部を有するテーパーランド型軸受に形成され、該テーパーランド部と前記タービン側スラストカラー及びコンプレッサ側スラストカラーを摺接させて、該スラスト荷重を支承するように構成された排気ターボ過給機のスラスト軸受装置において、
前記タービン側スラストカラーまたはコンプレッサ側スラストカラーのうち少なくとも前記負荷側のテーパーランド部に対応するスラストカラーの内周に、円周方向に沿って複数のオイル溝を形成し、該オイル溝を通ったオイルを前記テーパーランド部に供給するように構成された特徴とする排気ターボ過給機のスラスト軸受の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−127428(P2011−127428A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43664(P2008−43664)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】