説明

排気煙生成が低減する低灰分又は無灰2サイクル潤滑油

【課題】排気煙生成が低減する低灰分又は無灰2サイクル潤滑油の提供。
【解決手段】100℃にて少なくとも6.5mm2/s(cSt)の動粘度及び少なくとも85のJASO M342排気煙指数を有する低灰分2サイクル潤滑油組成物であって、(a)400〜2200の数平均分子量及びポリマー中の二重結合の合計数に基づいて少なくとも60モル%の末端ビニリデン含量を有する、ポリブテン、ポリイソブチレン又はポリブテンとポリイソブチレンの混合物からなる群より選ばれたオレフィン系不飽和ポリマー 15〜35質量%;(b)25℃において1〜5cP.の粘度を有する通常液体の炭化水素溶媒又は鉱油溶媒 20〜30質量%;(c)2サイクル油用の添加剤パッケージ 1〜5質量%; 及び(d)100℃にて4〜15mm2/s(cSt)の粘度を有する鉱油若しくは合成油又はそれらの混合物;を含む前記組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2サイクル(two-cycle)油として有用な潤滑剤組成物に関する。より詳細には、本発明は、無灰であるか又は比較的少量の金属清浄剤を含有するが、陸上装備のガソリンを燃料にする2サイクルエンジン、例えば、オートバイエンジン、原動機付き自転車エンジン、スノーモービルエンジン、芝刈機エンジン等のための、特定の排気煙生成試験基準や粘度要求を満たす油を提供することを特徴とする2サイクル油に関する。
【背景技術】
【0002】
2サイクル(two-stroke-cycle)ガソリンエンジンは、現在、小さな50cc未満のエンジンから500ccを超える高性能エンジンまでにわたる。このような高性能エンジンの開発によって、新しい2サイクル油の基準及び試験方法の必要性が生じてきた。
従来の2サイクルエンジンは、燃料と潤滑剤を混合するとともにその混合組成物がエンジンを通過することを可能にすることにより潤滑されるものである。より新しい2サイクルエンジンは、排気を減少させる直接燃料噴射の使用を必要とするものである。いずれにせよ、油はエンジンを通過し、燃焼させられる。燃料と適合する様々な種類の2サイクル油が当該技術分野において記述されてきた。典型的には、そのような油は、油が2サイクルエンジンにおける使用を可能にする工業規格試験に合格するために、種々の添加剤成分を含有する。
燃料節約と環境清浄度に対する世界的な要求は、粘度及び煙生成についてますます厳しい規格を満たすように2サイクル油の製造業者を駆り立ててきた。多くの場合、これらの新しい規格は、通常、より多額な費用のかかる出発物質を使って新しい改良された2サイクル油を製造することにより満たされている。従って、燃料節約と環境清浄度に対する新しい規格を満たす代替的出発物質が求められている。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、高反応性ポリイソブチレンポリマー、溶媒及び潤滑油ベースストックを特定の割合で適切な量の2サイクル潤滑油添加剤パッケージと用いることにより、JASO(日本自動車規格機構) M342排気煙指数試験を上回る、適切な粘度特性の低灰分又は無灰2サイクルエンジンオイルを得ることができるという発見に基づくものである。HR-PIBとしても知られる高反応性ポリイソブチレンポリマーは、PIBとしても知られる通常のポリイソブチレンと比較して、より多くの末端ビニリデン二重結合を含有し、異なる製造法によって製造される。HR-PIBを含有する2サイクル油は、通常の2サイクル油の有用且つ効率の良い代替物である。
一態様においては、本発明は、100℃において少なくとも6.5mm2/s(cSt)の動粘度及び少なくとも85のJASO M342 排気煙指数を有する低灰分2サイクル潤滑油組成物である。その組成物は、
(a)400〜2200の数平均分子量及びポリマー中の二重結合の合計数に基づいて少なくとも60モル%の末端ビニリデン含量を有する、ポリブテン、ポリイソブチレン又はポリブテンとポリイソブチレンの混合物からなる群より選ばれる、オレフィン系(orefinically)不飽和ポリマー 15〜35質量%;
(b)25℃において1〜5cP.の粘度を有する、通常液体の炭化水素溶媒又は鉱油溶媒 20〜30質量%;
(c)2サイクル油用の添加剤パッケージ 1〜5質量%; 及び
(d)100℃にて4〜15mm2/s(cSt)の粘度を有する、鉱油若しくは合成油又はそれらの混合物;
を含んでいる。
他の態様においては、本発明は、100℃における少なくとも6.5mm2/s(cSt)の動粘度及び少なくとも85のJASO M342排気煙指数を有する無灰2サイクル潤滑油組成物である。その組成物は、
(a)400〜2200の数平均分子量及び末端ビニリデンとして少なくとも60モル%の二重結合を有するポリブテン、ポリイソブチレン又はポリブテンとポリイソブチレンの混合物である、反応性ポリブテンポリマー 6〜12質量%;
(b)25℃において1〜5cP.の粘度を有する通常液体の炭化水素溶媒又は鉱油溶媒 18〜30質量%;
(c)2サイクル油用の金属を含まない添加剤パッケージ 14〜25質量%; 及び
(d)100℃にて4〜15mm2/s(cSt)の粘度を有する、鉱油若しくは合成油又はそれらの混合物;
を含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
本発明に有用な高反応性ポリブテンポリマー(以後、“HR-PIB”と呼ぶ)としては、二重結合の全モルに基づいて、少なくとも60モル%の末端ビニリデン含量を有する、Mn 400〜2200、好ましくは約800〜1500、例えば、約1000の、ポリブチレン、ポリイソブチレン又はそれらの混合物が含まれる。末端ビニリデン含量は、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも85%である。以下の発行特許: 米国特許第4,152,499号; 同第5,962,604号、同第6,562,913号、同第6,683,138号、同第6,710,140号は、そのまま、特に、高反応性ポリイソブチレンの製造法に関する教示について本願明細書に含まれるものとする。HR-PIBは、他の供給源もあるが、商品名Glissopal[R](BASF製)及びUltravis[R](BP-Amoco製)として市販されている。
本発明に有用な溶媒は、25℃において1〜5 cP.、好ましくは1.2〜2 cP.の粘度を有する通常液体の天然又は合成の炭化水素溶媒又は鉱油溶媒である。溶媒の引火点は約60〜120℃の範囲であるべきであり、本発明の2サイクル油の引火点は70℃より高い。典型例としては、パラフィン系、イソパラフィン系及びナフテン系の脂肪族炭化水素溶媒又は鉱油溶媒が挙げられる。溶媒は、2サイクル油の性能に悪影響を与えない基である限りは、炭素と水素以外の官能基を含有していてもよい。ExxonMobil Chemical Companyから“Exxsol D80”として販売されている鉱油や、Shell Chemicalsから“Shellsol D70”として販売されている鉱油が好ましい。
本発明は、更に、第3成分として、1以上の通常の2サイクル潤滑油添加剤を含有する添加剤パッケージを各々質量で、低灰分油については1〜5%で、無灰油については14〜25%で含むことができ、前記添加剤は、特定の用途のためにこのような潤滑油に通常含まれる添加剤のいずれであってもよい。無灰パッケージについては、金属添加剤が本質的には存在しない。
本発明の添加剤パッケージ成分のための通常の添加剤としては、腐食防止剤、酸化防止剤、摩擦改質剤、分散剤、消泡剤、摩耗防止剤、流動点降下剤、金属清浄剤、防錆剤、潤滑剤等が含まれる。割合(%)は全て活性成分に基づく質量によるものである。
【0005】
好ましい低灰分添加剤パッケージは、(i)潤滑油中0.2〜5wt.%、好ましくは1〜3wt.%の量で存在するポリイソブテニル(Mn 400〜2500、好ましくはMn 約950)スクシンイミド又は別の油溶性アシル化窒素含有潤滑油分散剤と(ii)金属フェネート、スルホネート又はサリチレート油溶性清浄添加剤を含んでいる。この清浄剤は、潤滑油中0.1〜2wt.%、好ましくは0.2〜1wt.%の金属清浄添加剤の量で存在する、全塩基価200以下の中性金属清浄剤又は過塩基性金属清浄剤である。金属は、好ましくはカルシウム、バリウム又はマグネシウムである。中性カルシウムサリチレートが好ましく、潤滑油中約0.5〜1.5wt.%の量で存在することができる。
好ましい無灰添加剤パッケージは、潤滑油中に無灰潤滑油分散剤を約5.5〜17wt.%、好ましくは9〜15wt.%の範囲で含み、下記に開示される無灰分散剤の1つ以上を用いることができる。
本発明に有用な分散剤としては、潤滑油に添加される場合、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンでの使用時に沈着物の形成を減少させるために有効であることが知られている窒素含有無灰分散剤が含まれる。これらの無灰分散剤は、分散されるべき粒子と会合することができる官能基を有する油溶性ポリマー長鎖骨格を有する。典型的には、アミン、アミンアルコール又はアミド極性部分が、しばしば架橋基を介してポリマー主鎖に結合している。無灰分散剤は、例えば、長鎖炭化水素で置換されたモノカルボン酸及びポリカルボン酸又はそれらの無水物の油溶性塩、エステル、アミノエステル、アミド、イミド及びオキサゾリン; 長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体; ポリアミン部分が直接的に結合した長鎖脂肪族炭化水素; 及び、長鎖置換フェノールとホルムアルデヒド及びポリアルキレンポリアミンとを縮合することによって形成されたマンニッヒ縮合生成物からなる群より選ぶことができる。
【0006】
分散剤を製造するために用いることができるポリイソブチレンポリマーは、一般的には、約400〜3000ダルトンの炭化水素鎖をベースとしている。ポリイソブチレンの製造方法は公知である。ポリイソブチレンは、後述されるように、ハロゲン化(例えば、塩素化)することによって、熱“エン”反応を介して熱的に反応させることによって、又は触媒(例えばペルオキシド)を用いてフリーラジカルグラフト化することによって、官能性を持たせることができる。
官能性を持たせた油溶性ポリマーの炭化水素骨格鎖はまた、一価アルコールや多価アルコールのようなヒドロキシ化合物によって、又は芳香族化合物、例えば、フェノールやナフトールによって誘導体化することもできる。好ましい多価アルコールとしては、アルキレン基が炭素原子2〜8個を含有するアルキレングリコールが含まれる。他の有用な多価アルコールとしては、グリセロール、グリセロールのモノオレエート、グリセロールのモノステアレート、グリセロールのモノメチルエーテル、ペンタエリスリトール、ジペンタエリトリトール、及びそれらの混合物が含まれる。エステル分散剤は、また、不飽和アルコール類、例えば、アリルアルコール、シンナミルアルコール、プロパルギルアルコール、1-シクロヘキサン-3-オール、オレイルアルコールから誘導することもできる。無灰分散剤を得ることができるアルコールの更に他の種類としては、オキシ-アルキレンやオキシ-アリーレンを含むエーテル-アルコール類が含まれる。これらのエーテル-アルコール類は、150個までのオキシ-アルキレン基を組込むことができ、そのアルキレン基は炭素原子1〜8個を含有する。エステル分散剤は、コハク酸のジエステル類又は酸-エステル類、例えば、部分的にエステル化されたコハク酸、また、部分的にエステル化された多価アルコール類又はフェノール類、例えば、遊離アルコール又はフェノール性ヒドロキシ基を有するエステルであってもよい。エステル分散剤は、例えば、米国特許第3,381,022号に記載されるいくつかの既知の方法のいずれか1つによって調製することができる。
好ましい部類の分散剤は、上述するようなMn 400〜2200の高反応性ポリイソブチレンのスクシンイミドを含んでいる。これらの分散剤は、典型的には、ポリイソブテニルコハク酸無水物とアルキレンポリアミン、例えば、トリエチレンテトラミン又はテトラエチレンペンタミンとを反応させることによって調製される。
【0007】
別の種類の高分子量無灰分散剤は、マンニッヒ塩基縮合生成物を含んでいる。一般的には、これらの生成物は、例えば、米国特許第3,442,808号に開示されるように、約1モルの長鎖アルキル置換モノ又はポリヒドロキシベンゼンと、約1〜2.5モルの1又は複数のカルボニル化合物(例えば、ホルムアルデヒドとパラホルムアルデヒド)と約0.5〜2モルのポリアルキレンポリアミンとを縮合することによって調製される。このようなマンニッヒ塩基縮合生成物は、ベンゼン基上の置換基としてのメタロセン触媒重合のポリマー生成物を含むことができ、あるいは、米国特許第3,442,808号に記載される同様の様式によりコハク酸無水物上に置換したそのようなポリマーを含有する化合物と反応させることもできる。
腐食防止剤は、0.01〜3wt.%、好ましくは0.01〜1.5wt.%の量で潤滑油に存在させることができ、リン硫化炭化水素やリン硫化炭化水素とアルカリ土類金属酸化物又は水酸化物とを反応させることによって得られる生成物によって例示される。
酸化防止剤は、潤滑油中に0.01〜5wt.%、好ましくは0.01〜1.5wt.%の量で存在させることができる。適切な酸化防止剤としては、好ましくはC5-C12アルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、例えば、カルシウムノニルフェノールスルフィド、バリウムt-オクチルフェノールスルフィド、ジオクチルフェニルアミンが含まれる。また、油溶性の硫化又はリン硫化炭化水素や抗酸化性の銅化合物、例えば、C10-C18油溶性脂肪酸の銅塩も含まれる。
摩擦改質剤は、潤滑油中に0.01〜3wt.%、好ましくは0.01〜1.5wt.%の量で存在させることができ、脂肪酸エステル及びアミド、二量化脂肪酸のグリセロールエステル、コハク酸エステル又はそれらの金属塩が含まれる。
潤滑油流動向上剤としても知られる流動点降下剤は、油中に0.01〜2wt.%、好ましくは0.01〜1.5wt.%の量で含まれてもよい。適切な流動点降下剤は、C8-C18又はC14フマル酸ジアルキル酢酸ビニルコポリマー類であり、ポリメタクリレートやワックスナフタレンが好ましい。
泡制御は、ポリシロキサンタイプの消泡剤、例えば、シリコーン油やポリジメチルシロキサンによっても得ることができ、アクリレートポリマーもまた、適切である。これらは、潤滑油中に0.01〜5wt.%、好ましくは0.01〜1.5wt.%の量で用いられる。
【0008】
摩耗防止剤は金属部分の摩耗を減少させ、その代表的な物質は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリール二リン酸亜鉛、硫化イソブチレンである。これらは、潤滑油中に0.01〜5wt.%の量で用いることができる。
本発明に有用な潤滑剤としては、様々な油溶性物質が含まれる。一般的には、これら潤滑剤は、潤滑油中に1〜20wt.%、好ましくはl〜7質量%の量で用いられる。潤滑剤としては、ポリオールエーテルやポリオールエステル、例えば、C5-C15モノカルボン酸のポリオールエステル、特にペンタエリトリトールトリメチロールプロパン、それらの酸のネオペンチルグリコール合成潤滑油(synlube)エステル、ここで、エステルの粘度はl00℃において少なくとも9mm2/s(cSt)であり、好ましくは、石油から潤滑油留分の調製の結果として形成される蒸留残査から得られる非常に粘稠な鉱油留分であるブライトストックのような天然油が含まれる。
本発明の潤滑組成物は、通常、潤滑粘度、即ち、100℃において約4〜15、好ましくは12〜15mm2/s(cSt)の粘度の油を含んでおり、100℃にて6.5〜14mm2/s(cSt)の範囲のKVを有する完成品の2サイクル油を提供する。
これら潤滑粘度の油は、天然油又は合成油であり得る。このような油の混合物もまた、しばしば有用である。油のブレンドは、そのブレンドの最終粘度が100℃において4〜15mm2/s(cSt)である限り、用いることができる。
天然油としては、好ましくは潤滑鉱油、例えば、液体石油やパラフィン系、ナフテン系又は混合パラフィン-ナフテン系タイプの溶媒処理潤滑鉱油又は酸処理潤滑鉱油が含まれる。石炭又はシェールから得られる潤滑粘度の油もまた、有用なベースオイルである。
合成潤滑油としては、炭化水素油、例えば、重合オレフィン、共重合(interpolymerized)オレフィン、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド、その誘導体、類似体、同族体が含まれる。
炭素原子5個未満のオレフィンやその混合物を重合することによって製造された油が、典型的な合成ポリマー油である。これらのポリマー油を調製する方法は、例えば、米国特許第2,278,445号; 同第2,301,052号; 同第2,318,719号; 同第2,329,714号; 同第2,345,574号; 同第2,422,443号によって示されているように、当業者にとって周知である。
【0009】
アルキレンオキシドポリマー類(例えば、末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等によって改変されているホモポリマー、インターポリマー及びそれらの誘導体)は、本発明の目的に好ましい既知の部類の合成潤滑油を構成し、特にアルカノール燃料と組合せの使用に好ましい。これらは、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合によって調製される油、それらポリオキシアルキレンポリマーのアルキルエーテルやアリールエーテル(例えば、平均分子量が1000のメチルポリプロピレングリコールエーテル、分子量が500〜1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量が1000〜1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテル等)又はそれらのモノカルボン酸エステルやポリカルボン酸エステル、例えば、酢酸エステル混合C3-C8脂肪酸エステル、又はテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルによって例示される。
別の適切な部類の合成潤滑油としては、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸2量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸等)と種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等である)とのエステル類が挙げられる。これらのエステルの具体例としては、ジオクチルアジペート、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジ-n-ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼラート、ジイソデシルアゼラート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエイコシルセバケート、リノール酸2量体の2-エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸と、2モルのテトラエチレングリコールと2モルの2-エチルヘキサン酸等とを反応させることによって形成される複合体エステル等が挙げられる。好ましいエステルは、100℃において5〜12mm2/s(cSt)の粘度を有し得る。
合成油として有用なエステルとしては、また、C5〜C18モノカルボン酸とポリオールとポリオールエーテル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール等から製造されるものも含まれる。
【0010】
上に開示された種類の、天然或いは合成の、未精製油、精製油及び再精製油(また、これらのいずれか2以上の混合物)を、本発明の潤滑剤組成物に使用し得る。未精製油は、天然の供給源又は合成的供給源から更なる精製処理を行わずに直接得られるものである。例えば、乾留(retorting)操作から直接得られるシェール油、一次蒸留から直接得られる石油、又はエステル化プロセスから得られ更なる処理を行われずに用いられるエステル油が、未精製油である。精製油は、1以上の特性を改善するために1以上の精製工程で更なる処理を行われていることを除き、未精製油と類似している。このような数多くの精製技術、例えば、溶剤抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、ろ過、パーコレーション等が当業者に既知である。再精製油は、既に運転に使用された精製油を得るために用いられるのと同様のプロセスによって得られる。このような再精製油は、再生油又は再処理油としても知られ、しばしば、使用済添加剤や油分解生成物を除去する技術によって更に処理される。
本発明の潤滑油組成物は、このような2サイクルエンジンに用いられる燃料と自由に混合する。このような潤滑油と燃料との混合物は、更に、本発明の実施態様を含んでいる。2サイクルエンジンに有用な燃料は、当業者に周知であり、一般に、炭化水素石油留出燃料のような通常液体の燃料、例えば、ASTM規格D-439-73によって規定される自動車ガソリンの大部分を含む。このような燃料は、また、アルコール、エーテル、有機金属ニトロ化合物等の非炭化水素物質を含有することができる。例えば、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ニトロメタンと、植物や鉱物の供給源、例えばトウモロコシ、アルファシェールや石炭から得られる液体燃料とは、本発明の範囲内である。このような燃料混合物の例は、ガソリンとエタノール、ディーゼル燃料とエーテル、ガソリンとニトロメタンの組合せ等である。ガソリンが好ましい。ガソリンは、l0%蒸留点が60℃〜90%蒸留点が約205℃のASTM沸点を有する炭化水素の混合物を意味する。無鉛ガソリンが特に好ましい。
本発明の潤滑剤は、1質量部の潤滑油につき約20〜250質量部の量の燃料、更に典型的には1質量部の油につき約30〜100質量部の量の燃料と混合して用いられる。
本発明は以下の実施例によって更に説明されるが、この実施例は本発明をより良く伝えるために示されるものであって、決して本発明の範囲を制限するものではない。割合(%)は質量によるものである。
【実施例】
【0011】
下記の表において“本発明”と表示された反応性HR-PIBを含有する本発明の油と、下記の表において“従来”と示された通常のポリイソブチレンを含有する通常の油をJASO M345試験法JASO M340、M341、M342、M343に従って評価した。これらは、日本自動車技術者協会(JSAE)によって確立された2サイクルガソリンエンジン油のためのエンジン試験である。1994年7月1日より、2サイクルエンジンに用いられる油は、日本自動車規格機構(JASO)によって公表されたJASO-M345規格に従って分類されている。JASOは、1994年4月にJASO M345規格を公表し、2004年にそれらを更新した。“EGD清浄性”は、標準的なJASO M34l清浄性試験(1時間)手順を更に改変した規格であり、試験は3時間行われる。これは、ISO(国際標準化機構)によって採用された更に厳しい基準である。“FC”は、更新前のJASO M345規格の最高性能基準であった。2004年における更新によって、ISO-EGDに類似するFD分類が設けられた。この試験の結果を下記の表に示す。
【0012】


【0013】
この表のデータを検討することにより、HR-PIBを含有する低灰分2サイクル油の粘度及び排気煙指数の性能は、対応する量のPIBを含有する通常の低灰分2行程サイクル(two-stroke)油とほとんど同じであることが明らかにされる。従って、このデータは、HR-PIBが低灰分2行程サイクル油の配合及び製造にとってPIBの有用な代替物であることを証明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃にて少なくとも6.5mm2/s(cSt)の動粘度及び少なくとも85のJASO M342排気煙指数を有する低灰分2サイクル潤滑油組成物であって、
(a)400〜2200の数平均分子量及びポリマー中の二重結合の合計数に基づいて少なくとも60モル%の末端ビニリデン含量を有する、ポリブテン、ポリイソブチレン又はポリブテンとポリイソブチレンの混合物からなる群より選ばれたオレフィン系不飽和ポリマー 15〜35質量%;
(b)25℃において1〜5cP.の粘度を有する通常液体の炭化水素溶媒又は鉱油溶媒 20〜30質量%;
(c)2サイクル油用の添加剤パッケージ 1〜5質量%; 及び
(d)100℃にて4〜15mm2/s(cSt)の粘度を有する鉱油若しくは合成油又はそれらの混合物;
を含む前記組成物。
【請求項2】
100℃にて少なくとも6.5mm2/s(cSt)の動粘度及び少なくとも85のJASO M342排気煙指数を有する無灰2サイクル潤滑油組成物であって、
(a)400〜2200の数平均分子量及びポリマー中の二重結合の合計数に基づいて少なくとも60モル%の末端ビニリデン含量を有するポリブテン、ポリイソブチレン又はポリブテンとポリイソブチレンの混合物からなる群より選ばれたオレフィン系不飽和ポリマー 6〜12質量%;
(b)25℃において1〜5cP.の粘度を有する通常液体の炭化水素溶媒又は鉱油溶媒 18〜30質量%;
(c)2サイクル油用の、金属を含まない添加剤パッケージ 14〜25質量%; 及び
(d)100℃にて4〜15mm2/s(cSt)の粘度を有する鉱油若しくは合成油又はそれらの混合物;
を含む前記組成物。
【請求項3】
反応性ポリブテンのMnが800〜1500である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
溶媒の粘度が25℃において1.2〜2 cP.である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項5】
鉱油若しくは合成油又はそれらの混合物の粘度が100℃において12〜15 mm2/s(cSt)である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項6】
添加剤パッケージが、高反応性ポリイソブチレンポリマーから製造されたスクシンイミド分散剤を含んでいる、請求項1又は2記載の組成物。

【公開番号】特開2006−348297(P2006−348297A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165796(P2006−165796)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(500010875)インフィニューム インターナショナル リミテッド (132)
【Fターム(参考)】