説明

排気物質の処理方法及び希少金属の回収方法

【課題】本発明は、酸化チタンを用いて自動車等の排気ガスや排気粒子物質又は電気・電子機器廃棄物の分解処理法を提供することを課題とする。さらには、該処理方法による排気物質中の微量物質又は電気・電子機器廃棄物の希少金属の回収方法を提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも粒子状物質(PM)を含む排気物質又は希少金属含む電気・電子機器廃棄物を、300〜600℃の範囲で加熱した酸化チタンと接触させて処理することを特徴とする処理方法による。また、排気物質又は電気・電子機器廃棄物を酸化チタンに接触させることで、排気物質中の微量物質又は電気・電子機器廃棄物中の希少金属を酸化チタンに吸着させて、回収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子物質等を含む自動車等の排気物質を、酸化チタンを用いて処理する方法に関する。さらには、該処理方法による排気物質中の微量物質の回収方法に関する。加えて、電気・電子機器廃棄物中の希少金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータリゼーションにより、自動車等から大量の排気ガスや排気粒子物質が空中に散布されている。特に窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(Particulate Matter、以下「PM」ともいう。)の問題は深刻であり、自動車から排出されるNOxやPMの低減を図るため、「自動車から排出される窒素酸化物および粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」等も規定されており、国や各自治体においても環境改善に向けた取り組みが検討されている。
【0003】
日本では、ガソリンはディーゼル車と比べて著しい燃費の向上が図られた。しかしながらディーゼルエンジンにおいては、今なお大量の煤が大気中に散布され、年間総排出量は約86万トンにも及ぶと推計される。ディーゼル車をはじめとする自動車からの排気ガスが要因となり、大都市圏を中心とする大気汚染問題は依然深刻である。また、東京都ではディーゼルエンジンの煤を処理する機器の取り付けを義務付けたが、費用がかかるために十分実施されていないともいわれている。自動車等の排気ガス規制は、昭和41年頃から年々強化されてきが、ブルドーザ、ショベルカー、フォークリフト、トラクターなど、工事現場や工場、倉庫、農場で活躍する特殊自動車のうち、公道を走行しない特殊自動車(以下、オフロード車という)についても、更なる対策が必要と考えられる。
【0004】
ディーゼルの煤は、細菌の菌体成分と一体となって、呼吸器系に対して極めて強い障害を起こすことが報告されている。また、同時に発生する粒子状物質(ナノ粒子)は、動物実験において妊娠中マウスが暴露すると、胎児の脳内や精巣に集積が認められて、粒子状物質の毒性について極めて強い危惧が抱かれている。
【0005】
また、ディーゼル、ガソリン車を問わず、揮発性有機化合物(VOC)ガスが同時に発生していることも知られている。したがって、これら自動車からの排気ガス、特にディーゼルからの排気ガスの処理についてはさらなる技術的な対応が求められている。また、トンネル内や交通の渋滞する地域での一括した排ガス処理も必要と考えられている。
【0006】
現在VOC処理技術としては燃焼酸化法、吸着法、活性汚泥法、プラズマ分解法などがあり、酸化チタンなどの光触媒作用による分解、および貴金属触媒などによる触媒燃焼は最終的に二酸化炭素と水までVOCを分解することから有効な処理方法に挙げられる(非特許文献1)。
【0007】
近年、光触媒としてアナターゼ型酸化チタン(TiO2)が多く用いられ、空気中の有機ガスを強い酸化作用で分解することができる。アナターゼ型酸化チタンは化学的に安定な化合物であり、光触媒作用が半永久的に持続されること、吸光係数が大きく近紫外線による光活性が高いこと、硬度が高く、耐摩耗性があること、薄膜状では無色透明にできること、人体や環境に対して無害であること、粉末やゾルが比較的安価に入手できることなどの特徴がある(非特許文献2)。
【0008】
さらに排気ガス浄化装置や排気ガス浄化に用いる触媒については、数多く報告されている(特許文献1〜3)。
【0009】
このように酸化チタンの光触媒能を用いてVOCや排気ガスを分解させることは数多く報告されているが、酸化チタンの高温下における触媒機能に関する報告は少ない。
【非特許文献1】電力中央研究所報告、(通号03015)、1〜10、巻頭1〜4 2004/7
【非特許文献2】Fine chemical, 27(11) 5-12 (1998)
【特許文献1】特開2006−341201号公報
【特許文献2】特開2006−272116号公報
【特許文献3】特開2006−205006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、酸化チタンを用いて自動車等の排気ガスや排気粒子物質の分解処理法を提供することを課題とする。さらには、該処理方法による排気物質中の微量物質の回収方法を提供することを課題とする。加えて、電気・電子機器廃棄物中の希少金属の回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、酸化チタンを300〜600℃の範囲で加熱させて、自動車等の排気ガスや排気粒子物質等の排気物質を該加熱した酸化チタンに接触させて処理する分解方法により、上記課題を達成しうることを見出し、本発明を完成した。さらには、排気物質を酸化チタンに接触させることで、排気物質中の微量物質を酸化チタンに吸着させて、微量物質を回収することができる。加えて、破砕した電気・電子機器廃棄物中の希少金属を酸化チタンに接触させることで、希少金属を回収することができる。
【0012】
すなわち本発明は以下よりなる。
1.少なくとも粒子状物質(PM)を含む排気物質を、300〜600℃の範囲で加熱した酸化チタンと接触させて処理することを特徴とする排気物質の処理方法。
2.粒子状物質(PM)が、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、鉛(Pb)、ストロンチウム(Sr)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、アンチモン(Sb)、コバルト(Co)、ヒ素(As)、カドミウム(Cd)、リン(P)、スカンジウム(Sc)、臭素(Br)、トリウム(Tn)、モリブデン(Mo)、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、セレン(Se)、ユウロピウム(Eu)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、インジウム(In)、錫(Sn)、テルル(Te)、バリウム(Ba)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、イリジウム (Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、タリウム(Tl)およびビスマス(Bi)からなる元素のうち、少なくとも2以上を含む、前項1に記載の処理方法。
3.排気物質が、さらに、炭化物、窒素酸化物(NOx)および有機物のいずれか1種以上を含む前項1または2に記載の処理方法。
4.酸化チタンが顆粒体であり、比表面積が35〜100m/gであることを特徴とする前項1〜3のいずれか1に記載の処理方法。
5.顆粒体の酸化チタンの大きさが、顆粒体における粒子径の最も長辺部の長さが、2〜10mmである前項4に記載の処理方法。
6.酸化チタン1gに対して、排気物質を含む気体体積が0.3〜25ml/分の割合で接触させることを特徴とする前項1〜5のいずれか1に記載の処理方法。
7.前項1〜6のいずれか1に記載の処理方法により、排気物質から、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、鉛(Pb)、ストロンチウム(Sr)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、アンチモン(Sb)、コバルト(Co)、ヒ素(As)、カドミウム(Cd)、リン(P)、スカンジウム(Sc)、臭素(Br)、トリウム(Tn)、モリブデン(Mo)、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、セレン(Se)、ユウロピウム(Eu)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、インジウム(In)、錫(Sn)、テルル(Te)、バリウム(Ba)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、イリジウム (Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、タリウム(Tl)およびビスマス(Bi)の元素で示される物質のいずれか1種または2種以上を回収する微量物質の回収方法。
8.排気物質から、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe) 、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、カリウム(K)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、バリウム(Ba)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、ストロンチウム(Sr) およびリチウム(Li) の元素で示される物質のいずれか1種または2種以上を回収する前項7の微量物質の回収方法。
9.少なくとも希少金属を含む電気・電子機器廃棄物を、300〜600℃の範囲で加熱した酸化チタンと接触させて処理することを特徴とする電気・電子機器廃棄物の処理方法。
10.前記希少金属は、Be(ベリリウム)、Sr(ストロンチウム)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、トリウム(Th)、ビスマス(Bi)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、セレン(Se)、テルル(Te)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、レニウム(Re)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、からなる元素のうち、少なくとも1以上を含む、前項9に記載の処理方法。
11.前項10に記載の処理方法により、電気・電子機器廃棄物から、Be(ベリリウム)、Sr(ストロンチウム)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、トリウム(Th)、ビスマス(Bi)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、セレン(Se)、テルル(Te)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、レニウム(Re)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)の元素で示される物質のいずれか1種以上を回収する希少金属の回収方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の分解方法によれば、特に300〜600℃の間で、排気物質に含まれる炭化物、窒素酸化物(NOx)および/または粒子状物質(PM)等の多くの物質が分解される。したがって、内燃機関の余熱を利用した装置として利用でき、例えばディーゼル等の排気物質に含まれる炭化物、窒素酸化物(NOx)および/または粒子状物質(PM)が、揮発性有機化合物(VOC)と同時に分解される。さらに、本処理方法に使用する装置の大型化により、例えば大型内燃機関や使う場所、企業、トンネルの排気ガスや、閉所における排気ガスを大量に放出することなく処理することが期待される。さらに、バッチ系で酸化チタンの加熱による分解処理を行う場合は、酸化チタンの表面が磨耗するため、触媒の被毒物質に対して対応可能である。また、吸着された物質を、磨耗した酸化チタンと同時に回収することもできる。排気物質中の粒子状物質(PM)又は電気・電子機器廃棄物には、例えば銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)等に例示される多種の貴重なレアメタルも含まれる場合があり、同時に回収することができる。これにより、排気物質又は電気・電子機器廃棄物の処理による環境改善のみならず、回収した貴重なレアメタルを有効活用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明における少なくとも粒子状物質(PM)を含む排気物質とは、例えばディーゼル機関、ガス機関、ガソリン機関やガスタービン機関、装置、施設、乗り物等から発する排気物質が挙げられる。このような機関、装置、施設、乗り物として、具体的には、交通手段や、例えば工事現場や工場、倉庫、農場で活躍する特殊乗り物、各種工場、工事やこれらに含まれる装置等が挙げられる。このような装置として、エンジン、内燃機関、焼却炉、ボイラ等が挙げられる。
【0015】
本発明における電気・電子機器廃棄物とは、一般的な家電製品であるテレビ、ビデオ、洗濯機、冷蔵庫等、オフィス機器であるパーソナルコンピュター、プリンター、スキャナ等、産業工作機等から得られる廃棄物である。さらに、本発明の電気・電子機器廃棄物は、酸化チタンに接触させる前に破砕しておくことが好ましい。
【0016】
本発明の処理方法で処理される対象物質は、上記例示した装置から排出される排気物質であり、具体的にはガソリン車やディーゼル車等から排出される排気物質が挙げられる。かかる排気物質には、少なくとも粒子状物質(PM)が含まれており、さらには窒素酸化物(NOx)、炭化物および有機物から選択される少なくとも1種以上が含まれる。
【0017】
ここにおいて、粒子状物質(PM)とは固体および/または液体の粒のことをいい、特に限定されるものではないが、工場などから排出される煤塵や、物の粉砕などによって発生する粉塵、ディーゼル車等の排出物質に含まれ黒煙等が例示される。その他、土ぼこりが飛び散るなどの自然現象によるものも挙げられる。
【0018】
粒子状物質(PM)のうち、粒径10μm以下の小さいものを特に浮遊粒子状物質(SPM)という場合もある。粒子が小さいため大気中に長期間とどまり、肺や気管などに沈着しやすく、呼吸器への影響があるといわれている。本発明の粒子状物質(PM)には、浮遊粒子状物質(SPM)も含まれる。この浮遊粒子状物質(SPM)は、環境基準から考えて1mあたりの量が少ないことが好ましい。浮遊粒子状物質(SPM)の中でも、ディーゼル車等の排出物質に含まれる粒子については、以前から発がん性が疑われているほか、最近では、花粉症との関連が懸念されている。
【0019】
本発明において粒子状物質(PM)を構成する物質には、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、鉛(Pb)、ストロンチウム(Sr)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、アンチモン(Sb)、コバルト(Co)、ヒ素(As)、カドミウム(Cd)、リン(P)、スカンジウム(Sc)、臭素(Br)、トリウム(Tn)、モリブデン(Mo)、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、セレン(Se)、ユウロピウム(Eu)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、インジウム(In)、錫(Sn)、テルル(Te)、バリウム(Ba)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、イリジウム (Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、タリウム(Tl)およびビスマス(Bi)からなる元素のうち、少なくとも2以上を含む物質が挙げられる。特に好適には、チタン(Ti)、ナトリウム(Na)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)の元素のうち、少なくとも2以上を含む物質が挙げられる。
【0020】
本発明において窒素酸化物(NOx)とは、窒素の酸化物の総称をいい、具体的には一酸化窒素 (NO)、二酸化窒素 (NO2)、亜酸化窒素(一酸化二窒素)(N2O)、三酸化二窒素(N2O3)、四酸化二窒素 (N2O4)、五酸化二窒素 (N2O5) などが挙げられる。化学式の NOx から「ノックス」ともいう。特に、大気汚染物質である一酸化窒素と二酸化窒素の混合物が代表的である。
【0021】
本発明において炭化物とは、いわゆる当業者が定義しうる物質であり、特に限定されない。例えば、加熱によって有機物質が分解され、炭素に富んだ物質をいう。
【0022】
本発明において有機物とは、特に揮発性有機化合物(VOC)をいい、具体的にはトルエン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、酢酸エチル、デカン、メタノール、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、n-ブタン、イソブタン、トリクロロエチレン、イソプロピルアルコール、酢酸ブチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、n-ヘキサン、n-ブタノール、n-ペンタン、cis-2-ブテン、イソブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラクロロエチレン、シクロヘキサン、酢酸プロピル、trans-2-ブテン、エチルセロソルブ、ウンデカン、ノナン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-メチルペンタン、エチレングリコール、2-メチル-2-ブテン、エチルシクロヘキサン、テトラリン、メチルアミルケトン、メチルn-ブチルケトン、クロロメタン、ベンジルアルコール、シクロペンタノン、2-メチル-1-ブテン、n-ヘプタン、ビシクロヘキシル、N,N-ジメチルホルムアミド、trans-2-ペンテン、cis-2-ペンテン、スチレン、N-メチル-2-ピロリドン、エチルセロソルブアセテート、ベンゼン、イソホロン、シクロヘキサノン、エタノール、メチルシクロペンタン、酢酸ビニル、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルブタン、2,2-ジメチルブタン、メチルシクロヘキサン、イソプロピルセロソルブ、1 ,2-ジクロロエタン、塩化ビニル、テトラフルオロエチレン、エチルベンゼン、クメン、クロロエタン、トリクロロエタン、アクリロニトリル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、n-プロピルブロマイド、メタクリル酸メチル、1 ,3-ブタジエン、1 ,1-ジクロロエチレン、2 ,4-ジメチルペンタン、酸化プロピレン、クロロホルム、臭化メチル、ジペンテン、1-ヘプテン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、塩化アリル、アクリル酸、イソプレン、アセトアルデヒド、1 ,2-ジクロロプロパン、メチルセロソルブアセテート、エチレンオキシド、o-ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、ギ酸メチル、トリエチルアミン、3-メチルヘプタン、フェノール、ナフタレン、アクリル酸メチル、シクロヘキシルアミン、ホルムアルデヒド、エピクロロヒドリン等が挙げられる。
【0023】
本発明における希少金属(レアメタル)とは、Be(ベリリウム)、Sr(ストロンチウム)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、トリウム(Th)、ビスマス(Bi)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、セレン(Se)、テルル(Te)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、レニウム(Re)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、からなる元素のうちいずれかを意味する。
【0024】
本発明の分解方法に使用する酸化チタンの製造方法は特に限定されるものではない。なお、使用する酸化チタンは、好適にはアナターゼ型の酸化チタン(TiO2)である。種々の製法による酸化チタンのなかでも、例えば、チタン酸化物のゾルを乾燥して酸化チタンゲルとし、この酸化チタンゲルを450〜850℃の範囲の温度で焼成して得られる酸化チタンが排気物質を含む気体の分解触媒としてすぐれた性能を有する。
【0025】
本発明において、酸化チタンは顆粒体としたものを使用するのが好適である。顆粒体を形成するために酸化チタンのみならず、アルミナとシリカから選ばれる少なくとも1種と酸化チタンとの混合物とすることができる。本発明における酸化チタンは、上記混合物を含むものとする。
【0026】
本発明の分解方法において、酸化チタンは300〜600℃の範囲で加熱することができる。好ましくは300〜530℃であり、より好ましくは、450〜500℃であり、さらに好ましくは480〜500℃であり、最も好ましくは約500℃である。最も好適な温度は、上述の温度であるが、エンジン、内燃機関、焼却炉、ボイラ等の内燃機関に本発明の処理方法に使用する処理装置が設置される場合に、処理装置が過熱されていて、例えば800℃になっている場合も考えられる。このような場合には、過熱された状態の処理装置の温度を利用して、排気物質を処理することができる。
または、電気・電子機器廃棄物の分解では、プラスチック等が含まれている場合があるので、該プラスチックの気化熱を利用して電気・電子機器廃棄物を処理することができる。
【0027】
なお、加熱温度とは、酸化チタンと排気物質を含む気体又は電気・電子機器廃棄物を反応させるための反応装置内の酸化チタン温度であり、その酸化チタンの温度を保つための装置の設定温度を指す。すなわち、設定温度を500℃としても、反応装置内の酸化チタン顆粒体温度の振れ範囲は設定温度からプラス・マイナス約30℃となる。
【0028】
既に知られているように、酸化チタンは光触媒としての機能も有しているので、排気物質を含む気体又は電気・電子機器廃棄物を分解するに際して、酸化チタンを紫外線等の光照射の下で加熱し、触媒能を発揮させてもよい。しかしながら、本発明の排気物質を含む気体又は電気・電子機器廃棄物の分解方法では、光照射を必要とすることなく、加熱により酸化チタンの触媒能を発揮させて排気物質を含む気体又は電気・電子機器廃棄物を分解しうる点が、最大の特徴点である。
【0029】
本発明の分解方法において、加熱した酸化チタン1gに対して、排気物質を含む気体の体積を0.3〜25ml/分の割合で接触させることができる。使用する酸化チタンの量は、処理装置の大きさにより異なり、適宜決定することができる。例えば、小規模の施設で使用する場合は、小規模の処理装置でよく、大規模の施設で処理する場合は、大規模の処理装置が必要となる。したがって、使用する酸化チタンと処理する排気物質を含む気体の体積は、装置の規模により適宜選択することができる。具体的には、例えば加熱した酸化チタン200〜300gに対して、排気物質を含む気体を体積が125〜5000ml/分、好ましくは250〜1000ml/分、より好ましくは250〜500ml/分で接触させて処理することができる。
【0030】
本発明における酸化チタンの顆粒体の形状は、酸化チタンと温度との関係において排気物質を含む気体又は電気・電子機器廃棄物を分解しうる形状であればよく、特に限定されないが、より効果的に排気物質を含む気体又は電気・電子機器廃棄物を分解するためには、比表面積が35〜100m/g、好ましくは35〜80m/gである。これは、比表面積が大きいほど排気物質を含む気体又は電気・電子機器廃棄物との接触面が大きくなり、分解効率を上げることができる。しかし、比表面積が大きすぎると耐熱性が弱くなり、かつ顆粒体が崩れやすく粉末化しやすくなる。また、粉末化することにより、排気物質を含む気体処理の際、装置内での目詰まりが生じる可能性もある。
【0031】
なお、酸化チタンの顆粒体からなる触媒の比表面積の測定方法は、自体公知の方法を利用することができるが、本発明ではBET法を使用して測定する。詳しくは、以下の通りである。該BET法は,粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法である。例えば、比表面積測定装置は、2300形 自動測定装置(島津製作所(株)製造元)を使用することができる。
【0032】
排気物質を含む気体処理の際の装置内での目詰まりが生じることを回避することを考慮して、酸化チタンの大きさは、顆粒体における粒子径の最も長辺部の長さが、2〜10mmであることが好ましい。該酸化チタンの大きさは、2〜10mmの間である大きさの粒子を使用しても良いし、またこの範囲で粒度を分布させても良いし、適宜任意に選択して使用すれば良い。ここで、最も長辺部の大きさで顆粒体の大きさを特定したのは、顆粒体の形状は、一辺の大きさのみで特定できる球形や立方形の形状ではないからである。長辺部が、上記の範囲から選択される大きさの顆粒体であれば、装置内での目詰まりを可能な限り回避しながら分解処理することが可能と考えられる。顆粒体の大きさは、使用する酸化チタンと処理する排気物質を含む気体の体積は、装置の規模により適宜選択することができる。
【0033】
本発明において、酸化チタンは、気体である排気物質を含む気体と接触させる場合は、プラスチック等の固形物を処理する場合と比較して、酸化チタンゲルの焼成物の磨耗率は低いと考えられる。しかし、回転筒として撹拌状装置とする場合もあり、さらに磨耗率を低下させるために、予めエッジ処理を行っても良い。このような酸化チタンを用いることにより、高効率で分解することができるのみならず、望ましい形状を保って、その高い触媒効率を長時間にわたって維持することができる。ただし、本発明において、処理を継続することにより、酸化チタンの顆粒体の粒子が磨耗し、粉末状の酸化チタンが生じ、上記の範囲外の大きさの酸化チタンが生じることを否定するものではない。
【0034】
なお、本発明の酸化チタンまたは酸化チタン混合物の顆粒体の摩耗率は自体公知の測定方法により行うことができる。例えば摩耗率測定装置を用いて以下の方法で測定をすることができる。200mlメスシリンダーで酸化チタンの顆粒体150mlを計量し、重量を記録した後、試料容器に全量を投入し、300rpmで30分間上記攪拌機を用いて攪拌した後、試料容器から試料を取り出し、全量を目開き0.5mmの篩に移し、この篩を通過した試料の重量を測定する。ここに、試料の摩耗率Aは、目開き0.5mmの篩を通過した試料の重量をWとし、測定に供した試料の重量をW0とするとき、A=(W/W0)×100(%)である。
【0035】
従って、本発明によれば、上述したような加熱酸化チタンの触媒を用いることによって、長時間にわたって排気物質を高効率にて分解することができる。また、吸着された物質を、磨耗した酸化チタンと同時に回収することもできる。その結果、排気物質中の粒子状物質(PM)に含まれるカルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、鉛(Pb)、ストロンチウム(Sr)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、アンチモン(Sb)、コバルト(Co)、ヒ素(As)、カドミウム(Cd)、リン(P)、スカンジウム(Sc)、臭素(Br)、トリウム(Tn)、モリブデン(Mo)、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、セレン(Se)、ユウロピウム(Eu)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、インジウム(In)、錫(Sn)、テルル(Te)、バリウム(Ba)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、イリジウム (Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、タリウム(Tl)およびビスマス(Bi)からなる元素で示される物質のいずれか1種または2種以上を回収する微量物質を回収することができる。特に好適には、チタン(Ti)、ナトリウム(Na)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)の元素で示されるいずれかの物質も回収することができる。本発明は、これらの元素で示される物質のいずれか1種または2種以上を回収する微量物質の回収方法にも及ぶ。
【0036】
従って、本発明によれば、上述したような加熱酸化チタンの触媒を用いることによって、長時間にわたって電気・電子機器廃棄物を高効率にて分解することができる。また、吸着された物質を、磨耗した酸化チタンと同時に回収することもできる。その結果、電気・電子機器廃棄物中の希少金属であるBe(ベリリウム)、Sr(ストロンチウム)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、トリウム(Th)、ビスマス(Bi)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、セレン(Se)、テルル(Te)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、レニウム(Re)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、又はニッケル(Ni)も回収することができる。本発明は、これらの元素で示される物質のいずれか1種または2種以上を回収する希少金属の回収方法にも及ぶ。
【0037】
排気物質中の粒子状物質特に希少元素(希少金属を含む)又は電気・電子機器廃棄物中の希少金属の回収方法としては、自体公知の方法を利用することができる。なお、以下を例示するが、特に限定されない。
(1)一般の希少元素の場合には、回収した酸化チタンを酸等で溶媒抽出した後に、電解採取法(例:SX-EW法)等により回収する。または、回収した酸化チタンを高温で溶解した後に、各種の希少元素を精錬工程により回収する。
(2)粒子状物質が白金族元素の場合には、陰イオンの形にした後に、アニオン交換樹脂に吸着させて回収する。
(3)粒子状物質が希土類の場合には、気相錯体を形成させて化学気相輸送反応により、回収する。
(4)粒子状物質がインジウムの場合には、回収した酸化チタンを塩酸で溶媒抽出した後に、置換析出法、続いて電解精製により回収する。
(5)粒子状物質がパラジウムの場合には、回収した酸化チタンを含む塩酸水溶液にカフェインを投入することによって、パラジウムをカフェインの有機金属錯体として選択的に凝集・沈殿させた後に回収する。
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
1)処理装置
触媒相は固定床方式を採用し、触媒容器の容量は170mlであった。酸化チタン触媒量は総量で200g(崇比重約1.2)であり、空隙率約64%であった。以下の方法で調製した排気ガスを、試料導入部にポンプを用いて気体流量:約1L/分の流速で導入した。
【0040】
2)酸化チタン触媒
酸化チタン触媒として、アナターゼ型酸化チタン触媒(堺化学工業(株)SSP-G Lot.051108)を用いた。
【0041】
3)処理化合物
独立行政法人国立環境研究所から購入した自動車排出粒子標準試料(No.8)(http://www.nies.go.jp/labo/crm/vehicle.html)を用いた。自動車排出粒子標準試料は、大気浮遊粒子状物質の化学分析を行う際に、本試料を用いて分析値および分析方法の正確さが評価できることを目的として作製された環境標準試料である。本標準試料は高速道路トンネル内の静電集塵器に捕集された物質から調製した天然物試料であり、元素組成は自動車排出粒子の典型的なものと考えられる。自動車排出粒子標準試料は元素含有量に関する標準試料であり、現時点では、16元素(カルシウム、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、亜鉛、マグネシウム、鉛、ストロンチウム、銅、クロム、ニッケル、バナジウム、アンチモン、コバルト、ヒ素、カドミウム)に対して保証値(Certified value)および14元素(リン、スカンジウム、臭素、トリウム、モリブデン、セシウム、ルビジウム、銀、セリウム、サマリウム、セレン、ユウロピウム、ランタン、ルテチウム)に対して参考値(Reference value)が定められている。
【0042】
4)処理条件
上記標準物質0.36gを酸化チタン触媒20gに混入し、触媒中央のTIC部分にセットした。室温から徐々に昇温し、反応ガスをガス分析計(ホリバ製)を用いて測定した。このとき、時刻毎の温度を記録し、測定終了後の反応ガス組成グラフに温度を記入し、温度と燃焼状態を考察した。
上記標準物質0.36gを炭素換算処理すると、30mMで完全燃焼するとした場合のCO量は670mlとなる。約10分間で、燃焼すると考えてCO濃度は6.7%と考えられた。各試験途中で、COやCO濃度が高すぎたり、発熱が大きく温度コントロールができない場合は、更に転化する標準物質の量を減量した。
【0043】
上記試験は、計4回行った。
1回目:上記標準物質3gを酸化チタン触媒30gに混入し、触媒中央のTIC部分にセットした。このときの全触媒量は200gであった。450℃以上で激しく燃焼させた。発熱により550℃となった。
2回目:上記標準物質0.36gを酸化チタン触媒20gに混入し、触媒中央のTIC部分にセットした。このときの全触媒量は163gであった。460℃以上で激しく燃焼させた。
3回目:上記標準物質0.36gを酸化チタン触媒20gに混入した。全触媒量161gに、8gの触媒を追加したことにより全触媒量は163gであった。一気に加熱せず、450℃から燃焼を開始し、約18分かけて燃焼させた。終了時の温度は480℃であった。
4回目:全触媒量163g中20gに上記標準物質0.37gを酸化チタン触媒20gに混入し、触媒中央のTIC部分にセットした。徐々に加温した。
【0044】
5)試験結果・考察
上記処理条件に従い、徐々に加温処理した際、200℃、300℃それぞれの段階において炭酸ガスの発生が増加した。このことから、各温度によって分解される物質が混入されていることが推測された。さらに、450℃を越えた段階で、一気にCO、COが増加し、標準試料中の成分が分解した。したがって、酸化チタンを450℃程度に加熱した場合、ほぼ瞬時に上記標準試料に含まれる各物質は分解された。
【実施例2】
【0045】
上記実施例により燃焼処理した後の酸化チタン触媒を回収したものを試料とし、定性分析を行った。試料Iは煤が付着していない酸化チタンであり、試料IIは煤が付着した酸化チタンである。なお、定性分析方法は、上記試料をフッ化水素酸、硫酸で溶解し、溶解残渣をろ過した後にICP発光分光分析装置を用いて測定した。
【0046】
上記測定結果を以下の表1に示す。
これにより、試料Iではチタンの他、ナトリウムが確認され、その他カルシウム、鉄、マグネシウムが微量検出された。また、試料IIでは、チタンの他、アルミニウム、カルシウム、クロム、鉄、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、ニッケルおよび亜鉛が確認され、その他バリウム、マンガン、モリブデン、ストロンチウムが微量検出された。これにより、排気物質中に含有可能性のある上記物質が、酸化チタンの加熱により酸化チタンに吸着し、排気物質から除去されたと考えられる。さらには、排気物質から、上記物質が回収可能であることが確認された。
【0047】
【表1】

【実施例3】
【0048】
上記実施例2の方法と同様な方法により、リチウムの定性分析を行った。
【0049】
上記測定結果を図6に示す。
これにより、排気物質中のリチウムが、酸化チタンの加熱により酸化チタンに吸着し、排気物質から除去されたと考えられる。さらには、排気物質から、リチウムが回収可能であることが確認された。
【実施例4】
【0050】
破砕した電気・電子機器廃棄物である液晶を加熱した酸化チタンに混入して、分解処理した。分解処理した後の酸化チタン触媒を回収したものを試料とし、定性分析を行った。なお、定性分析方法は、上記試料をフッ化水素酸、硫酸で溶解し、溶解残渣をろ過した後にICP発光分光分析装置を用いて測定した。
【0051】
上記測定結果を以下の表2に示す。
試料ではチタンの他、アルミニウム、バリウム、鉄、マンガン、ナトリウム、ジルコニウムが検出された。
これにより、電気・電子機器廃棄物中に含有される上記物質が、酸化チタンの加熱により酸化チタンに吸着し、電気・電子機器廃棄物から除去されたと考えられる。よって、電気・電子機器廃棄物から、希少金属が回収可能であることが確認された。
【0052】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0053】
上記詳述したように、本発明の分解方法によれば、300〜600℃の間で、排気物質に含まれる炭化物、窒素酸化物(NOx)、有機物および/または粒子状物質(PM)等の多くの物質が分解される。したがって、内燃機関の余熱を利用した装置として利用でき、例えばディーゼル等の排気物質に含まれる窒素酸化物(NOx)および/または粒子状物質(PM)が、VOCガスと同時に分解される。さらに、本処理方法に使用する装置の大型化により、例えばトンネルの排気ガスや、閉所における排気ガスを大量に放出することなく処理することが期待される。さらに、バッチ系で酸化チタンの加熱による分解処理を行う場合は、酸化チタンの表面が磨耗するため、触媒の被毒物質に対して対応可能である。また、吸着された物質を、磨耗した酸化チタンと同時に回収することもできる。その結果、排気物質中の粒子状物質(PM)に含まれる微量物質、例えばレアメタルも同時に回収することができる。
さらには、電気・電子機器廃棄物に含まれる希少金属(レアメタル)の回収もすることができる。
本発明の方法により、環境問題の対応策として貢献することができ、さらには微量物質特に希少金属を有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の処理方法に使用する装置の概略図である。(実施例1)
【図2】1回目の試験結果を示す図である。(実施例1)
【図3】2回目の試験結果を示す図である。(実施例1)
【図4】3回目の試験結果を示す図である。(実施例1)
【図5】4回目の試験結果を示す図である。(実施例1)
【図6】リチウムの定性測定結果を示す図である。(実施例3)
【符号の説明】
【0055】
1 下段ヒータつなぎパイプ
2 シーズヒーター
3 パージ流量計
4 スポットヒーター
5 真空ポンプコンプレッサー(ダイアグラム式)
6 温調コントローラ ポンプ用
7 温調コントローラ チタンユニット用
8 トランス
A 自動車排出粒子標準試料を含む気体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも粒子状物質(PM)を含む排気物質を、300〜600℃の範囲で加熱した酸化チタンと接触させて処理することを特徴とする排気物質の処理方法。
【請求項2】
粒子状物質(PM)が、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、鉛(Pb)、ストロンチウム(Sr)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、アンチモン(Sb)、コバルト(Co)、ヒ素(As)、カドミウム(Cd)、リン(P)、スカンジウム(Sc)、臭素(Br)、トリウム(Tn)、モリブデン(Mo)、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、セレン(Se)、ユウロピウム(Eu)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、インジウム(In)、錫(Sn)、テルル(Te)、バリウム(Ba)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、イリジウム (Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、タリウム(Tl)およびビスマス(Bi)からなる元素のうち、少なくとも2以上を含む、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
排気物質が、さらに、炭化物、窒素酸化物(NOx)および有機物のいずれか1種以上を含む請求項1または2に記載の処理方法。
【請求項4】
酸化チタンが顆粒体であり、比表面積が35〜100m/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の処理方法。
【請求項5】
顆粒体の酸化チタンの大きさが、顆粒体における粒子径の最も長辺部の長さが、2〜10mmである請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
酸化チタン1gに対して、排気物質を含む気体体積が0.3〜25ml/分の割合で接触させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の処理方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1に記載の処理方法により、排気物質から、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、鉛(Pb)、ストロンチウム(Sr)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、アンチモン(Sb)、コバルト(Co)、ヒ素(As)、カドミウム(Cd)、リン(P)、スカンジウム(Sc)、臭素(Br)、トリウム(Tn)、モリブデン(Mo)、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、セレン(Se)、ユウロピウム(Eu)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、インジウム(In)、錫(Sn)、テルル(Te)、バリウム(Ba)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、イリジウム (Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、タリウム(Tl)およびビスマス(Bi)の元素で示される物質のいずれか1種または2種以上を回収する微量物質の回収方法。
【請求項8】
排気物質から、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe) 、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、カリウム(K)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、バリウム(Ba)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、ストロンチウム(Sr) およびリチウム(Li) の元素で示される物質のいずれか1種または2種以上を回収する請求項7の微量物質の回収方法。
【請求項9】
少なくとも希少金属を含む電気・電子機器廃棄物を、300〜600℃の範囲で加熱した酸化チタンと接触させて処理することを特徴とする電気・電子機器廃棄物の処理方法。
【請求項10】
前記希少金属は、Be(ベリリウム)、Sr(ストロンチウム)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、トリウム(Th)、ビスマス(Bi)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、セレン(Se)、テルル(Te)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、レニウム(Re)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、からなる元素のうち、少なくとも1以上を含む、請求項9に記載の処理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の処理方法により、電気・電子機器廃棄物から、Be(ベリリウム)、Sr(ストロンチウム)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、トリウム(Th)、ビスマス(Bi)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、セレン(Se)、テルル(Te)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、レニウム(Re)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)の元素で示される物質のいずれか1種以上を回収する希少金属の回収方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−194684(P2008−194684A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9898(P2008−9898)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(504177284)国立大学法人滋賀医科大学 (41)
【出願人】(000202420)草津電機株式会社 (10)
【Fターム(参考)】