説明

排水処理装置及びその運転方法

【課題】窒素分を効果的に除去しながら効率よく排水処理を行える排水処理装置及びその運転方法を提供する。
【解決手段】無終端水路(ディッチ11)に循環流発生手段(水流発生装置12)及び酸素供給手段(曝気装置13)を設けて好気域14と無酸素域15とを形成し、好気域の上流側に設けた上流側溶存酸素計23で測定した上流側溶存酸素濃度に基づいて酸素供給手段を制御する酸素供給量制御手段26と、好気域の下流側に設けた下流側溶存酸素計24で測定した下流側溶存酸素濃度に基づいて循環流発生手段を制御する流速制御手段27とを設けるとともに、循環液中のアンモニア及び硝酸の濃度を測定するアンモニア/硝酸濃度測定手段で測定したアンモニア濃度及び硝酸濃度に基づいて酸素供給量制御手段の上流側酸素濃度目標値及び流速制御手段の下流側酸素濃度目標値を調節する目標値制御手段28を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理装置及びその運転方法に関し、詳しくは、無終端水路を用いた生物学的排水処理方法によって窒素の除去を含む排水の浄化処理を行う排水処理装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的な排水処理を行う方法として、オキシデーションディッチ法が広く知られている。このオキシデーションディッチ法は、無端状に形成したディッチ(無終端水路)内の水を循環させながら一部で曝気することにより、ディッチ内に好気域と無酸素域とを形成し、有機物の分解だけでなく、好気域での硝化反応と無酸素域での脱窒反応とによって窒素分も除去するようにしている。
【0003】
オキシデーションディッチ法は、大規模処理場に比べて日間変動が大きい小規模処理場に適しているが、日間変動によってディッチ内における負荷が大きく変動するため、負荷に応じてディッチ内の流速や酸素供給量(曝気量)を調節し、前記好気域と無酸素域とのバランスを適正に保つことが重要となる。このため、好気域の上流側と下流側との適当な位置に溶存酸素計(DO計)をそれぞれ設置し、各DO計の測定値(DO値)に基づいて循環液の流速及び酸素の供給量をそれぞれ調節することにより、いわゆる二点DO制御によって好気域と無酸素域とのバランスを適正に保つようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、排水中の窒素分(アンモニア性窒素、硝酸性窒素)の除去については、アンモニア性窒素濃度と硝酸性窒素濃度とを測定して曝気ロータの回転数を調節することによって両者の濃度差を一定の範囲内に制御したり(例えば、特許文献2参照。)、好気性領域と嫌気性領域との比を制御するとともに硝酸性窒素濃度とアンモニア性窒素濃度との比を制御したり(例えば、特許文献3参照。)、アンモニア性窒素濃度と硝酸性窒素濃度とを測定して曝気運転と非曝気運転とを切り替えたり(例えば、特許文献4参照。)するなどの提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−52804号公報
【特許文献2】特開平8−1184号公報
【特許文献3】特開平8−323384号公報
【特許文献4】特開2005−715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された方法では、流入アンモニア負荷の大きな変動に対して、最適な処理性能を得るためには各DO計の設定値の変更が必要になる。また、特許文献2〜4に記載された方法では、アンモニア性窒素濃度と硝酸性窒素濃度とを測定して制御するようにしているが、いずれの方法も制御が極めて困難であり、制御できたとしても、窒素分を十分に除去することは困難である。
【0007】
そこで本発明は、前記二点DO制御の長所を活かしながら窒素分を効果的に除去することができる排水処理装置及びその運転方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の排水処理装置は、無終端水路に循環流発生手段及び酸素供給手段を備え、該酸素供給手段の下流側の好気域と、該好気域の終端から前記酸素供給手段に至る無酸素域とを形成し、前記好気域における上流側と下流側とに、循環液中の溶存酸素濃度を測定する上流側溶存酸素計及び下流側溶存酸素計をそれぞれ設け、前記上流側溶存酸素計で測定した上流側溶存酸素濃度に基づいて前記酸素供給手段による酸素の供給量を制御する酸素供給量制御手段と、前記下流側溶存酸素計で測定した下流側溶存酸素濃度に基づいて前記循環流発生手段による循環液の流速を制御する流速制御手段とを設けるとともに、循環液中のアンモニア及び硝酸の濃度を測定するアンモニア/硝酸濃度測定手段を設け、該アンモニア/硝酸濃度測定手段で測定したアンモニア濃度及び硝酸濃度の少なくともいずれか一方の濃度に基づいて前記酸素供給量制御手段の上流側酸素濃度目標値及び前記流速制御手段の下流側酸素濃度目標値を調節する目標値制御手段を設けたことを特徴としている。
【0009】
また、本発明の排水処理装置の運転方法は、前記排水処理装置の運転方法であって、前記酸素供給量制御手段は、測定した上流側溶存酸素濃度があらかじめ設定した上流側酸素濃度目標値となるように前記酸素供給手段による酸素の供給量を制御し、前記流速制御手段は、測定した下流側溶存酸素濃度があらかじめ設定した下流側酸素濃度目標値となるように前記循環流発生手段による循環液の流速を制御し、前記目標値制御手段は、測定したアンモニア濃度があらかじめ設定した前記アンモニア濃度下限値を下回るときには、前記上流側酸素濃度目標値及び前記下流側酸素濃度目標値をそれぞれ低い値に調節し、測定したアンモニア濃度があらかじめ設定したアンモニア濃度上限値を上回るときには、前記上流側酸素濃度目標値及び前記下流側酸素濃度目標値の少なくともいずれか一方を高い値に調節し、測定したアンモニア濃度が前記アンモニア濃度上限値以下で、かつ、測定した硝酸濃度があらかじめ設定した硝酸濃度上限値を上回るときには、前記上流側酸素濃度目標値及び前記下流側酸素濃度目標値の少なくともいずれか一方を低い値に調節することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、測定したアンモニア濃度や硝酸濃度に基づいて酸素供給量制御手段の上流側酸素濃度目標値及び流速制御手段の下流側酸素濃度目標値を調節することにより、アンモニア性窒素や硝酸性窒素を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の排水処理装置の一形態例を示す説明図である。
【図2】目標値を下げる制御の説明図である。
【図3】目標値を上げる制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本形態例に示す排水処理装置は、生物学的排水処理方法によって窒素の除去を含む排水の浄化処理を行うディッチ11に循環流発生手段である一組の水流発生装置12と酸素供給手段である曝気装置13とを設け、ディッチ11内に矢印Fで示す方向の循環流を形成することにより、曝気装置13から所定の距離までの間に好気域14を、この好気域14の終端から曝気装置13までの間に無酸素域15をそれぞれ所定のバランスで形成するようにしている。
【0013】
好気域14の下流部には、出口流路16を介して最終沈殿池17が設けられ、無酸素域15の上流部には原水流入経路18が設けられるとともに、該原水流入経路18の途中には嫌気槽19が設けられている。さらに、最終沈殿池17には、分離した上澄み水が流出する処理水流出経路20と、沈降分離した汚泥を嫌気槽19に返送する返送汚泥経路21と、汚泥の一部を余剰汚泥として抜き取る汚泥抜出経路22とが設けられている。前記嫌気槽19は、該嫌気槽19に流入した原水と返送汚泥経路21から返送された汚泥とを混合して嫌気状態に所定時間保持する。
【0014】
また、前記好気域14における循環液流れ方向上流側と下流側とには、循環液中の溶存酸素濃度を測定する上流側溶存酸素計(DO1)23と、下流側溶存酸素計(DO2)24とがそれぞれ設けられるとともに、ディッチ11内の適宜な位置、好ましくは、出口流路16の近傍には、循環液中のアンモニア(アンモニア性窒素)及び硝酸(硝酸性窒素)の濃度を測定するアンモニア/硝酸濃度測定手段25が設けられている。
【0015】
さらに、前記上流側溶存酸素計23で測定した上流側溶存酸素濃度に基づいて前記曝気装置13による酸素の供給量を制御する酸素供給量制御手段26と、前記下流側溶存酸素計24で測定した下流側溶存酸素濃度に基づいて前記一組の水流発生装置12による循環液の流速を制御する流速制御手段27と、アンモニア/硝酸濃度測定手段25で測定したアンモニア濃度及び硝酸濃度に基づいて前記酸素供給量制御手段26の上流側酸素濃度目標値及び前記流速制御手段27の下流側酸素濃度目標値を調節する目標値制御手段28とが設けられている。
【0016】
原水流入経路18から嫌気槽19に流入した原水は、最終沈殿池17から返送汚泥経路21を通って返送された汚泥と混合した混合液となり、嫌気槽19で嫌気状態に保持された後、ディッチ11の無酸素域15に流入して循環液に合流し、無酸素域15で無酸素状態に保持されることにより硝酸性窒素の脱窒が行われ、循環液中から窒素が除去される。
【0017】
循環液は、水流発生装置12を経て曝気装置13を通過する際に、ブロワBから圧送されて循環液中に噴出した空気と接触することにより、液中に酸素を取り込んで好気性状態となり、好気域14を流れながら有機物の分解やアンモニア性窒素の硝化が行われ、循環液中から有機物及びアンモニア性窒素が除去される。
【0018】
好気域14の終端部を流れる循環液の一部は、出口流路16を通って最終沈殿池17に抜き出され、最終沈殿池17で循環液の固液分離が行われる。最終沈殿池17で分離した上澄み液は、処理水流出経路20から放流され、沈殿した汚泥の一部は汚泥抜出経路22から余剰汚泥として抜き取られ、残りの汚泥は、返送汚泥経路21を通って前記嫌気槽19に返送される。また、最終沈殿池17に抜き出されなかった循環液は、溶存酸素の減少によって無酸素状態となり、無酸素域15の上流部分で嫌気槽19からの前記混合液と合流してディッチ11内を循環する。
【0019】
前記酸素供給量制御手段26は、測定した上流側溶存酸素濃度があらかじめ設定した上流側酸素濃度目標値となるように前記曝気装置13による酸素の供給量を制御する。例えば、流入原水の負荷の変動により、上流側溶存酸素濃度が上流側酸素濃度目標値として設定された適正範囲を下回った場合は、酸素不足状態であるから、曝気装置13による曝気量を増大させて上流側溶存酸素濃度が適正範囲に入るように制御し、適正範囲を上回った場合は、酸素過剰状態であるから、曝気装置13による曝気量を減少させて上流側溶存酸素濃度が適正範囲に入るように制御する。
【0020】
また、前記流速制御手段27は、測定した下流側溶存酸素濃度があらかじめ設定した下流側酸素濃度目標値となるように前記水流発生装置12の回転速度を制御する。例えば、流入原水の負荷の変動により、下流側溶存酸素計24で測定した下流側溶存酸素濃度が下流側酸素濃度目標値として設定された適正範囲を超えて高濃度になった場合は、水流発生装置12を減速して循環液の流速を低下させることにより、下流側溶存酸素濃度が適正範囲に入るように制御し、下流側溶存酸素濃度が適正範囲を下回って低濃度になった場合は、水流発生装置12を増速して循環液の流速を上昇させることにより、下流側溶存酸素濃度が適正範囲に入るように制御する。
【0021】
そして、前記目標値制御手段28は、アンモニア/硝酸濃度測定手段25で測定したアンモニア濃度があらかじめ設定したアンモニア濃度下限値を下回るときには、前記上流側酸素濃度目標値及び前記下流側酸素濃度目標値の少なくともいずれか一方、好ましくは双方を低い値に調節し、測定したアンモニア濃度が前記アンモニア濃度上限値を上回るときには、前記上流側酸素濃度目標値及び前記下流側酸素濃度目標値の少なくともいずれか一方、好ましくは双方を高い値に調節する。
【0022】
すなわち、目標値制御手段28は、アンモニア/硝酸濃度測定手段25で測定したディッチ11内の循環液のアンモニア濃度がアンモニア濃度下限値を下回るときには、図2に示すように、酸素供給量制御手段26の上流側酸素濃度目標値Aを、該上流側酸素濃度目標値Aよりも低い溶存酸素濃度とした目標値ALに下げたり、前記流速制御手段27の下流側酸素濃度目標値Bを、該下流側酸素濃度目標値Bよりも低い溶存酸素濃度とした目標値BLに下げたりする。
【0023】
これにより、酸素供給量制御手段26は、上流側溶存酸素計(DO1)23で測定した上流側溶存酸素濃度が上流側酸素濃度目標値ALとして設定された適正範囲を上回っていると判断したときには、曝気装置13による曝気量を減少させて上流側溶存酸素濃度が上流側酸素濃度目標値ALの適正範囲に入るように制御する。
【0024】
同様に、流速制御手段27においても、下流側溶存酸素計(DO2)24で測定した下流側溶存酸素濃度が下流側酸素濃度目標値BLとして設定された適正範囲を上回っていると判断したときには、水流発生装置12を減速して循環液の流速を低下させることにより、下流側溶存酸素濃度が下流側酸素濃度目標値BLの適正範囲に入るように制御する。
【0025】
このように、酸素供給量制御手段26の上流側酸素濃度目標値及び流速制御手段27の下流側酸素濃度目標値の少なくともいずれか一方を目標値AL,BLに下げて制御することにより、ディッチ11内の循環液における溶存酸素濃度が全体的に低く制御されることになり、好気域14の領域が減少して無酸素域15の領域が増大する。これにより、硝化菌によるアンモニアの酸化作用が抑制されて循環液のアンモニア濃度が徐々に上昇する。また、過剰な溶存酸素によって硝化菌が自己酸化分解することを防止できるとともに、曝気装置13及び水流発生装置12の消費動力を低減することができる。
【0026】
逆に、アンモニア/硝酸濃度測定手段25で測定したディッチ11内の循環液のアンモニア濃度がアンモニア濃度上限値を上回るときには、図3に示すように、酸素供給量制御手段26の上流側酸素濃度目標値Aを、該上流側酸素濃度目標値Aよりも高い溶存酸素濃度とした目標値AHに上げたり、前記流速制御手段27の下流側酸素濃度目標値Bを、該下流側酸素濃度目標値Bよりも高い溶存酸素濃度とした目標値BHに上げたりする。
【0027】
これにより、酸素供給量制御手段26は、測定した上流側溶存酸素濃度が上流側酸素濃度目標値AHとして設定された適正範囲を下回ったと判断したときには、曝気装置13による曝気量を増加させて上流側溶存酸素濃度が上流側酸素濃度目標値AHの適正範囲に入るように制御する。
【0028】
同様に、流速制御手段27においても、測定した下流側溶存酸素濃度が下流側酸素濃度目標値BHとして設定された適正範囲を下回ったと判断したときには、水流発生装置12を増速して循環液の流速を上昇させることにより、下流側溶存酸素濃度が下流側酸素濃度目標値BHの適正範囲に入るように制御する。
【0029】
このように、酸素供給量制御手段26の上流側酸素濃度目標値A及び流速制御手段27の下流側酸素濃度目標値Bの少なくともいずれか一方を目標値AH,BHに上げて制御することにより、ディッチ11内の循環液における溶存酸素濃度が全体的に高く制御されることになり、好気域14の領域が増大して無酸素域15の領域が減少する。これにより、硝化菌によるアンモニアの酸化作用が促進され、アンモニアが亜硝酸や硝酸に変化することで循環液のアンモニア濃度が徐々に低下する。
【0030】
いずれの制御の場合も、アンモニア/硝酸濃度測定手段25で測定したアンモニア濃度が、アンモニア濃度下限値以上になったり、アンモニア濃度上限値以下になったりした場合は、前記上流側酸素濃度目標値及び前記下流側酸素濃度目標値をあらかじめ設定した元の目標値A,Bに戻すことにより、あらかじめ設定された通常の制御を行うことにより、効率よく排水処理を行うことができる。
【0031】
さらに、アンモニア/硝酸濃度測定手段25で測定したアンモニア濃度が、アンモニア濃度下限値以上、アンモニア濃度上限値以下であって、アンモニア濃度が適正な範囲に入っている場合でも、アンモニア/硝酸濃度測定手段25で測定した硝酸濃度があらかじめ設定した硝酸濃度上限値を上回るときには、前記上流側酸素濃度目標値及び前記下流側酸素濃度目標値の少なくともいずれか一方を低い目標値AL,BLに調節する。これにより、前記同様に、曝気装置13による曝気量が減少したり、水流発生装置12が減速したりすることで無酸素域15の領域が増大し、無酸素域15における脱窒反応が促進され、徐々に硝酸濃度が低下する。この場合も、硝酸濃度が硝酸濃度上限値以下になったら上流側酸素濃度目標値及び下流側酸素濃度目標値を元の目標値A,Bに戻す。
【0032】
このように、循環液中のアンモニア濃度をアンモニア濃度下限値とアンモニア濃度上限値との間の一定の濃度範囲に制御するとともに、循環液中硝酸濃度を硝酸濃度上限値以下に制御するために、アンモニア濃度及び硝酸濃度に基づいて酸素供給量制御手段26の上流側酸素濃度目標値及び流速制御手段27の下流側酸素濃度目標値をそれぞれ調節するようにしているので、酸素供給量制御手段26と流速制御手段27とによってディッチ11内の溶存酸素濃度を確実に制御することができ、好気域14と無酸素域15との比率をアンモニア濃度や硝酸濃度に応じて最適な比率に制御することができる。
【0033】
すなわち、従来のように、測定した硝酸性窒素濃度とアンモニア性窒素濃度とに基づいてこれらの濃度を直接的に制御する場合に比べて、好気域14と無酸素域15とのバランスが大きく崩れたりすることがないので、ディッチ11から最終沈殿池17に抜き出される循環液の状態も安定し、循環液中に含まれる窒素分の濃度も安定し、排水処理効率の向上を図れるとともに、消費動力の低減も図ることができる。
【0034】
さらに、放流水中のアンモニア濃度を極力低く抑える必要がある場合には、前記アンモニア濃度上限値を低くするだけで確実な制御を行うことが可能であり、同様に、放流水中の硝酸濃度を極力低く抑える必要がある場合には、前記硝酸濃度上限値を低くするだけで確実な制御を行うことが可能である。また、放流水中の窒素分を極力低く抑える必要がある場合には、アンモニア濃度と硝酸濃度との和を全窒素濃度として演算し、あらかじめ設定したアンモニア濃度と硝酸濃度との比率に基づいて上流側酸素濃度目標値及び下流側酸素濃度目標値をそれぞれ調節することで全窒素濃度が最小となるように制御することも可能であり、全窒素濃度が規制値以下となる条件で好気域14の領域を小さくすることにより、酸素供給手段である曝気装置13のブロワB及び循環流発生手段である水流発生装置12のモータの消費電力を削減することができる。
【0035】
なお、制御用の上限値や下限値、目標値は、複数段階設定することが可能であり、目標値を二段階以上で上下することもでき、目標値に対する適正範囲の幅も任意に設定することができる。また、アンモニア濃度の測定値に対して上流側酸素濃度目標値及び下流側酸素濃度目標値をそれぞれ連続的に変化させることも可能である。
【0036】
前記アンモニア/硝酸濃度測定手段は、アンモニアイオン及び硝酸イオンを1本のセンサーで同時に測定可能なものを用いることが好ましいが、アンモニア用、硝酸用をそれぞれ用いることもできる。また、循環流発生手段及び酸素供給手段も、ディッチの構成や処理水量などの条件に応じて任意のものを用いることができる。さらに、原水の状態や処理目標によっては嫌気槽を省略することもでき、嫌気槽に代えて好気槽を設置することも可能である。
【符号の説明】
【0037】
11…ディッチ、12…水流発生装置、13…曝気装置、14…好気域、15…無酸素域、16…出口流路、17…最終沈殿池、18…原水流入経路、19…嫌気槽、20…処理水流出経路、21…返送汚泥経路、22…汚泥抜出経路、23…上流側溶存酸素計(DO1)、24…下流側溶存酸素計(DO2)、25…アンモニア/硝酸濃度測定手段、26…酸素供給量制御手段、27…流速制御手段、28…目標値制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無終端水路に循環流発生手段及び酸素供給手段を備え、該酸素供給手段の下流側の好気域と、該好気域の終端から前記酸素供給手段に至る無酸素域とを形成し、前記好気域における上流側と下流側とに、循環液中の溶存酸素濃度を測定する上流側溶存酸素計及び下流側溶存酸素計をそれぞれ設け、前記上流側溶存酸素計で測定した上流側溶存酸素濃度に基づいて前記酸素供給手段による酸素の供給量を制御する酸素供給量制御手段と、前記下流側溶存酸素計で測定した下流側溶存酸素濃度に基づいて前記循環流発生手段による循環液の流速を制御する流速制御手段とを設けるとともに、循環液中のアンモニア及び硝酸の濃度を測定するアンモニア/硝酸濃度測定手段を設け、該アンモニア/硝酸濃度測定手段で測定したアンモニア濃度及び硝酸濃度の少なくともいずれか一方の濃度に基づいて前記酸素供給量制御手段の上流側酸素濃度目標値及び前記流速制御手段の下流側酸素濃度目標値を調節する目標値制御手段を設けたことを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の排水処理装置の運転方法であって、前記酸素供給量制御手段は、測定した上流側溶存酸素濃度があらかじめ設定した上流側酸素濃度目標値となるように前記酸素供給手段による酸素の供給量を制御し、前記流速制御手段は、測定した下流側溶存酸素濃度があらかじめ設定した下流側酸素濃度目標値となるように前記循環流発生手段による循環液の流速を制御し、前記目標値制御手段は、測定したアンモニア濃度があらかじめ設定した前記アンモニア濃度下限値を下回るときには、前記上流側酸素濃度目標値及び前記下流側酸素濃度目標値をそれぞれ低い値に調節し、測定したアンモニア濃度があらかじめ設定したアンモニア濃度上限値を上回るときには、前記上流側酸素濃度目標値及び前記下流側酸素濃度目標値の少なくともいずれか一方を高い値に調節し、測定したアンモニア濃度が前記アンモニア濃度上限値以下で、かつ、測定した硝酸濃度があらかじめ設定した硝酸濃度上限値を上回るときには、前記上流側酸素濃度目標値及び前記下流側酸素濃度目標値の少なくともいずれか一方を低い値に調節することを特徴とする排水処理装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−143696(P2012−143696A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3089(P2011−3089)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000230571)日本下水道事業団 (46)
【出願人】(504174180)国立大学法人高知大学 (174)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【Fターム(参考)】