説明

排水処理装置及び排水処理方法

【課題】被処理水を生物処理した後、生物処理水中の菌体や生物代謝物を含む溶解性物質や懸濁性物質を除去するために凝集剤を添加して凝集処理するに当たり、凝集剤の添加量を低減した上で良好な処理水を得る。
【解決手段】被処理水を生物的に処理する生物反応槽1と、生物反応槽1から流出する生物処理水に凝集剤を添加して凝集反応を行う凝集反応槽2A,2Bと、凝集反応槽2Bから流出する凝集処理水を固液分離する加圧浮上分離装置3とを備えた排水処理装置。凝集反応槽2Aに曝気手段を設け、曝気による撹拌で凝集性を高めると共に、後段の加圧浮上分離性を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水処理装置及び排水処理方法に係り、特に、被処理水を生物処理した後、生物処理水中の菌体や生物代謝物を含む溶解性物質や懸濁性物質を除去するために凝集剤を添加して凝集処理を行うに当たり、凝集剤の添加量を低減した上で良好な処理水を得る排水処理装置及び排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性排水の処理方法として、生物処理法が広く採用されている。そして、生物処理水中の懸濁物質や溶解性物質等の汚染物質を除去するために、或いは排水量が多い場合には水回収のために、生物処理水を凝集処理すること、更には、凝集処理後に膜処理することも行われている。
【0003】
例えば、特開2005−238152号公報には、有機物含有水を生物処理し、生物処理水に凝集剤を添加して凝集処理し、凝集処理水を固液分離し、分離水を濾過装置で濾過し、濾過水を更に逆浸透膜分離装置で膜分離処理する方法が記載されている。また、この方法において、固液分離手段として浮上分離装置も記載されている。固液分離手段としての加圧浮上分離装置は沈殿槽に比べて設置スペースが小さくて足りる利点がある。
【0004】
生物処理水を凝集処理する際に、凝集作用促進のために添加する凝集剤(無機凝集剤)は、ランニングコストに直結する要素であるために、その添加量の低減が望まれているが、生物処理水の凝集処理では、溶存有機物(S−TOC)、特に、生物代謝物の凝集処理が困難であり、通常、大量の凝集剤が必要とされている。
【0005】
特に近年、水資源のリサイクルが重要視されるようになり、排水の回収が行われるようになってきているが、排水として排出された水を生物処理後に再利用可能な水準に高度に浄化するためには、大量の凝集剤を必要とする。このため、生物処理水の凝集処理における凝集剤の添加量低減は大きな課題となってきている。
【0006】
なお、凝集剤の添加量低減方法として、高分子凝集助剤を併用する等の方法も提案されているが、助剤添加のためのコストがかかることから、より平易で安価な方法が求められているのが現状である。
【特許文献1】特開2005−238152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、被処理水を生物処理した後、生物処理水中の菌体や生物代謝物を含む溶解性物質や懸濁性物質を除去するために凝集剤を添加して凝集処理するに当たり、凝集剤の添加量を低減した上で良好な処理水を得ることができる排水処理装置及び排水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討した結果、生物処理後の菌体及び生物代謝物等を凝集処理するに当たり、凝集反応槽における撹拌の際に空気曝気を実施し、次いで凝集処理水を加圧浮上分離することにより、凝集剤の添加量を低減することができることを見出した。また、凝集反応系内の水を更に最適なpH領域に調整し、酸化剤を併用することで処理水質は更に向上することを見出した。
【0009】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とするものである。
[1] 被処理水を生物的に処理する生物反応槽と、該生物反応槽から流出する生物処理水に凝集剤を添加して凝集反応を行う凝集反応槽と、該凝集反応槽から流出する凝集処理水を固液分離する加圧浮上分離装置とを備えた排水処理装置において、前記凝集反応槽に曝気手段を設けたことを特徴とする排水処理装置。
[2] [1]において、前記凝集反応槽内の水のpHを3〜6に調整するためのpH調整剤添加手段を有することを特徴とする排水処理装置。
[3] [1]又は[2]において、前記凝集反応槽に酸化剤を添加する酸化剤添加手段を有することを特徴とする排水処理装置。
[4] [1]〜[3]のいずれか1項において、前記加圧浮上分離装置から流出する加圧浮上分離水を固液分離する濾過装置を有することを特徴とする排水処理装置。
[5] 被処理水を生物的に処理する生物反応工程と、該生物反応工程から流出する生物処理水に凝集剤を添加して凝集反応を行う凝集反応工程と、該凝集反応工程から流出する凝集処理水を固液分離する加圧浮上分離工程とを備えた排水処理方法において、前記凝集反応工程における凝集反応を曝気下に行うことを特徴とする排水処理方法。
[6] [5]において、前記凝集反応工程の水にpH調整剤を添加して、該水のpHを3〜6に調整することを特徴とする排水処理方法。
[7] [5]又は[6]において、前記凝集反応工程の水に酸化剤を添加することを特徴とする排水処理方法。
[8] [5]〜[7]のいずれか1項において、前記加圧浮上分離工程から流出する加圧浮上分離水を固液分離する濾過工程を有することを特徴とする排水処理方法。
【発明の効果】
【0010】
生物処理水中の菌体や生物代謝物を含む溶解性物質や懸濁性物質、特に生物代謝物の凝集処理は困難であり、従来においては多量の凝集剤を必要としていたが、本発明によれば、生物処理水を凝集処理するに当たり、凝集処理時の撹拌を曝気(通常、空気)によって行うことと凝集フロックの分離を加圧浮上分離で行うこととを組合わせて処理することにより、凝集性及び固液分離性を改善することができ、これにより、凝集剤添加量の削減を図った上で、良好な処理水を得ることができる。
【0011】
本発明によるこのような効果の作用機構の詳細は明らかになっていないが、以下のように考察される。
【0012】
生物処理後の水には、水中に分散して存在する菌体や溶存する高分子有機物(例えばタンパク質等)が存在するが、特に凝集処理と濾過を組み合わせた装置において、その濾過水質に大きな影響を及ぼすのはタンパク質であると考えられる。生物処理槽で見られる発泡のように、タンパク質の一部には空気との親和性を有するものが存在する。本発明においては、無機凝集剤によりタンパクが荷電中和され粗大化したような状態で空気曝気されると、粗大化したタンパクが気泡と絡まったような状態になると考えられる。その結果、凝集反応槽の後段で加圧浮上法により固液分離すると、さらに微細気泡がからまることにより、分離性が向上すると考えられる。
【0013】
また、特に鉄系凝集剤においては、pHが弱酸性〜弱アルカリ性域においては三価の鉄が凝集に有効であるが、例えば塩化第二鉄(三価鉄)系凝集剤を用いた場合でも凝集剤中に若干の割合で二価鉄が存在する。そこで、凝集反応槽で曝気を行うと、このような二価の鉄は酸化され凝集に有効な三価鉄となる。また、凝集反応槽に次亜塩素酸などの酸化剤を添加するとさらに酸化効果が増大する(請求項3,7)。また、タンパク質の多くは弱酸性域に等電点を有するため、pHが酸性領域(例えばpH3〜6)ほど水への解離がなくなり凝集効果が高まると考えられる(請求項2,6)。
【0014】
このような作用機構により、本発明によれば、少ない凝集剤添加量で高水質の処理水が得られ、
(1) 凝集剤添加量の低減による凝集剤コストの低減、更には中和剤コスト及び汚泥処理費の削減が図れる。
(2) 凝集フロックの加圧浮上分離性の向上、それによる加圧浮上分離装置の通水速度の向上による設置スペースの削減が図れる。
(3) 凝集剤添加量の低減と加圧浮上分離による分離水の水質向上による、後段処理効率の改善、即ち、後段に濾過装置を設けた場合に、その濾過装置の逆洗頻度の低減、更にその後段に逆浸透(RO)膜分離装置を設けた場合に、そのRO膜のファウリング防止を図ることができる。
といった効果のもとに、効率的な水回収、再利用を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の排水処理装置及び排水処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
[排水]
本発明において、処理対象となる排水は、通常生物処理される有機物含有排水であれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、電子産業排水、化学工場排水、食品工場排水などが挙げられる。例えば、電子部品製造プロセスでは、現像工程、剥離工程、エッチング工程、洗浄工程などから各種の有機性排水が多量に発生し、しかも排水を回収して純水レベルに浄化して再使用することが望まれているので、これらの排水は本発明の処理対象排水として適している。
【0017】
このような有機性排水としては例えば、イソプロピルアルコール、エチルアルコールなどを含有する有機性排水、モノエタノールアミン(MEA)、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)などの有機態窒素、アンモニア態窒素を含有する有機性排水、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの有機硫黄化合物を含有する有機性排水が挙げられる。
【0018】
[生物処理]
排水を生物処理するための生物反応槽としては、有機物の分解効率に優れるものであれば良く、既知の好気性又は嫌気性生物処理方式の生物反応槽が使用できる。例えば、活性汚泥を槽内に浮遊状態で保持する浮遊方式、活性汚泥を担体に付着させて保持する生物膜方式などを採用することができる。また、生物膜方式では固定床式、流動床式、展開床式など任意の微生物床方式でよく、更に担体として、活性炭、種々のプラスチック担体、スポンジ担体などがいずれも使用できる。
【0019】
浮遊方式では、処理水から活性汚泥を分離する固液分離手段が必要であり、生物処理反応槽の後段に沈殿槽、膜分離装置などの固液分離手段を設ける。他の方式では生物処理反応槽内に活性汚泥を維持することから、このような固液分離手段を省略することができる。
【0020】
担体としてはスポンジ担体が好ましく、スポンジ担体であれば微生物を高濃度に維持することができる。スポンジ素材としても特に限定されないが、エステル系ポリウレタンが好適である。担体の投入量としても特に制限はないが、通常、生物反応槽の槽容量に対する担体の見掛け容量で10〜50%程度とすることが好ましい。
【0021】
好気性状態で微生物的に有機物を分解する好気性生物反応槽としては、槽内に酸素(空気)を供給するための散気管、曝気機などの酸素ガス供給手段が設けられた曝気槽を用いることができる。
【0022】
一方、嫌気性状態で微生物的に有機物を分解する嫌気性生物反応槽としては、担体や粒状汚泥を保持した嫌気槽を用いることができる。
【0023】
生物反応槽は、好気性生物反応槽又は嫌気性生物反応槽の1槽式でも、好気性生物反応槽及び/又は嫌気性生物反応槽の多槽式でもよく、また、1槽式で槽内に仕切り壁を設けてもよい。
【0024】
[凝集処理]
本発明においては、排水を生物反応槽で生物処理して得られる生物処理水の凝集処理に当たり、生物処理水に凝集剤を添加すると共に、曝気による撹拌を行う。
【0025】
<凝集槽>
凝集処理に用いる凝集反応槽(以下「凝集槽」と称す。)は1槽のみでも良く、2層以上の凝集槽を多段に設けたものであっても良い。
【0026】
凝集処理設備は一般に凝集剤を被処理水に十分に接触させるための急速撹拌槽と凝集フロックを成長させる緩速撹拌槽で構成される。本発明に係る曝気による撹拌は急速撹拌槽で行い、次の緩速撹拌槽では曝気を用いない撹拌によりフロックの安定成長化を図ることが望ましい。従って、2槽以上の凝集槽を多段に設ける場合、前段の凝集槽を空気曝気槽とし、後段の凝集槽を機械撹拌槽とすることが好ましい。
【0027】
空気曝気槽における空気曝気量には特に制限はなく、凝集剤が十分に撹拌される程度以上であれば良い。この空気曝気槽は機械撹拌を併用したものであっても良い。
【0028】
<凝集剤>
凝集処理に用いる凝集剤としては、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄などの鉄系凝集剤、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム系凝集剤が例示できるが、凝集効果の面からは鉄系凝集剤が好ましい。これらの無機凝集剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0029】
無機凝集剤の添加量は、生物処理水の性状や水質にもよるが、通常50〜300mg/L程度とすることが好ましい。
【0030】
また、排水の性状に応じて有機凝集剤、浮上助剤を併用することでさらに凝集処理水の水質向上や加圧浮上分離性の向上効果が得られることがある。この場合、有機凝集剤は無機凝集剤添加工程の前段で添加しても良く、後段で添加しても良く、また無機凝集剤の添加工程に添加しても良い。
【0031】
有機凝集剤の添加量は、生物処理水の水質や有機凝集剤の使用形態によっても異なるが、通常の場合、1〜10mg/L程度とすることが好ましい。
【0032】
<pH調整>
凝集処理時のpHは、曝気撹拌を行う凝集槽において、pH3〜6であることが好ましく、このようにpH酸性領域に調整することにより凝集処理効果を高めることができる。特に鉄系凝集剤を用いた場合は、pH5.5以下での曝気撹拌による混合が効果的であり、アルミニウム系凝集剤を用いた場合はpH5.5以下に曝気撹拌により混合させた後、再度pH6.0以上に調整すると効果的である。
【0033】
凝集処理設備が2槽以上の凝集槽で構成される場合、曝気撹拌を実施する凝集槽の少なくとも一つの凝集槽でpH3〜6に調整し、他の凝集槽は排水性状と適用凝集剤種に合わせてpH3〜6以外のpHに調整するようにしても良い。
【0034】
pH調整には塩酸(HCl)、硫酸(HSO)等の酸や、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリが適宜用いられる。
【0035】
<酸化剤>
前述の如く凝集処理工程においては酸化剤を添加することが好ましく、これにより、より一層良好な凝集処理結果を得ることができる。
【0036】
酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、過硫酸ナトリウム等の1種又は2種以上を用いることができ、その添加量は生物処理水の水質や凝集処理条件によっても異なるが、通常1〜10mg/L程度とすることが好ましい。
【0037】
[加圧浮上分離]
凝集処理水は次いで加圧浮上分離を行って、生成した凝集フロックを固液分離する。
【0038】
この加圧浮上分離には通常の加圧浮上分離装置を用いることができる。
【0039】
本発明では凝集処理において曝気を行うことにより凝集処理水の加圧浮上分離性が改善されることにより、加圧浮上分離時の通水LVを通常の加圧浮上分離処理における通水LVである4〜7hr−1から10〜20hr−1に高めることができ、処理効率の向上、装置の小型化による設置スペースの削減を図ることができる。
【0040】
[濾過]
加圧浮上分離で得られた分離水は更に濾過装置で濾過することが好ましい。この濾過装置としては、砂、アンスラサイト等の濾材を充填した充填層型濾過器、精密濾過(MF)膜、限外濾過(UF)膜などの膜を用いた膜濾過器等を用いることができる。
【0041】
本発明によれば、凝集処理時に曝気を行うことによる加圧浮上分離性の改善で、良好な水質の加圧浮上分離水が得られることから、この濾過装置の目詰まりを防止して濾過装置の逆洗頻度を低減し、処理効率の向上を図ることができる。
【0042】
[RO膜処理]
加圧浮上分離水、又はこれを濾過して得られる濾過処理水は、更にRO膜分離装置に通水してRO膜処理しても良く、RO膜処理による脱イオン処理で高純度水を得ることができる。
【0043】
この場合、RO膜処理に先立ち、加圧浮上分離水中の残留SSを除去するために加圧浮上分離水を前述の濾過装置に通し、濾過処理するのが好ましい。ただし、加圧浮上分離水を直接RO膜処理しても良い。
【0044】
RO膜分離装置としては、既存の任意の装置を使用することができる。
【0045】
本発明では、少ない無機凝集剤添加量で良好な加圧浮上分離水を得ることができ、又、その濾過処理水はFI値が低く、これをRO膜分離装置に給水することができるので、RO膜分離装置のファウリングによる膜フラックスの低下を抑制して、長期間安定して処理水(透過水)を得ることができる。
【0046】
なお、FI値とは、水をRO膜分離装置に通水して脱イオン処理する際のRO膜分離装置への給水の水質がRO膜処理に適しているか否かを判断する指標として用いられるものである。水中の溶存有機物やSSの量は概ね同等であっても、これをRO膜処理すると膜フラックスが早期に低下するときとそうでないときがあり、そのような場合、RO給水のFI値では差が生じている。
【0047】
FI値は、後述の実施例における水質評価で記載するように所定の孔径を有するメンブレンフィルタに試料水を通水して所定量を濾過するに要する時間を計測する操作を行って、初期の所要時間と、所定時間通水後の所要時間とから求めることができ、膜汚染、膜目詰まりを起こし易いか又は起こし難い水質かを判定するのに用いられる。一般に、FI値5以下の水質でもRO給水として許容されることがあるが、通常、FI値4以下の水質であることが望まれている。従って、本発明では、生物処理水を凝集処理及び加圧浮上分離処理し、好ましくは更に濾過処理してFI値4以下の水を得、これをRO膜処理することが好ましい。
【0048】
[その他の処理]
更に、本発明では、加圧浮上分離装置の後段で、上記以外のその他の処理を併用しても良い。例えば、残留溶解性有機物を除去するために、活性炭塔を設けて活性炭による吸着処理を行っても良い。
【0049】
この場合、活性炭塔は濾過装置の後段であって、RO膜分離装置の前段に設けることが好ましい。
【0050】
[処理装置]
以下に図面を参照して本発明の排水処理装置の一例を説明する。
【0051】
図1〜5は、本発明の排水処理装置の一例を示す系統図であり、1は生物反応槽、2,2A,2B,2Cは凝集槽、3は加圧浮上分離槽、4は濾過装置、5はRO膜分離装置、6は活性炭塔を示す。
【0052】
図1の排水処理装置においては、排水は生物反応槽1で生物処理された後、曝気手段を設けた第1凝集槽2Aにおいて、無機凝集剤(例えば鉄系凝集剤)、酸化剤及び酸が添加されて急速撹拌下にpH3〜6の条件で凝集処理された後、撹拌機が設けられた第2凝集槽2Bに導入されて有機凝集剤とアルカリが添加されてpH5〜8の条件で緩速撹拌下に凝集処理され、凝集処理水は次いで加圧浮上分離槽3で加圧浮上分離され、分離水は更に濾過装置4で濾過され濾過水が処理水として取り出される。
【0053】
図2に示す装置は、図1において、濾過装置4の後段に更にRO膜分離装置5を設けたものであり、図1の装置と同様にして得られた濾過処理水が更にRO膜分離装置5で脱イオン処理された後処理水として取り出される。
【0054】
図3の装置は、図2の装置において、濾過装置4とRO膜分離装置5との間に活性炭塔6を設け、また、第1凝集槽2Aで無機凝集剤(例えばアルミニウム系凝集剤)及び酸化剤と、酸又はアルカリを添加し、第2凝集槽2Bで酸又はアルカリのみを添加するようにしたものであり、図1の場合と同様に凝集処理、加圧浮上分離処理、濾過処理された水が、活性炭塔6で残留溶解性有機物が除去された後、更にRO膜分離装置5で脱イオン処理され、処理水として取り出される。
【0055】
図4に示す装置は、図2の装置において、凝集槽を1槽のみとし、曝気手段を設けた凝集槽2において、無機凝集剤と、酸化剤と、酸又はアルカリを添加してpH弱酸性条件下に凝集処理した後、加圧浮上分離槽3で加圧浮上分離処理した後、濾過処理、RO膜分離処理を行って処理水が取り出される。
【0056】
図5に示す装置は図1の装置において、凝集槽を3槽としたものであり、生物処理水は機械撹拌手段を設けた第1凝集槽2Aで有機凝集剤と酸又はアルカリが添加されてpH5〜7の条件下に凝集処理され、次いで第2凝集槽2Bにて曝気撹拌下に無機凝集剤、及び酸化剤と、酸又はアルカリが添加されてpH3〜6条件下に凝集処理され、更に第3凝集槽2Cにおいて機械撹拌下に酸又はアルカリが添加されてpH6〜8の条件下に凝集処理され、凝集処理水は加圧浮上分離処理、次いで濾過処理されて処理水が取り出される。
【0057】
なお、図1〜5に示す装置は、本発明の排水処理装置の一例であって、本発明は何ら図示の方法に限定されるものではなく、前述の如く凝集槽や後段の処理装置において、他の様々な態様を採用することができる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0059】
実施例1〜4
図1に示す装置により、本発明に従って有機性排水の処理を行った。処理した有機性排水の水質、用いた生物反応槽及び凝集槽等の仕様及び運転条件は下記の通りであり、2400L/日の処理量で処理を行った。
【0060】
このときの処理水の水質評価を、加圧浮上分離槽の分離水を採取して、0.45μmフィルターに2.1kg/cmの加圧条件で濾過したときの濾過時間から以下のようにして算出されるFI値と、濾過装置の濾過継続時間(濾過装置が閉塞に到り逆洗を必要とするまでの濾過継続可能時間)で評価し、結果を表1に示した。
【0061】
なお、前述の如く、RO膜分離装置への通水基準はFI値4以下であり、FI値4以下の処理水が得られることが望ましい。
FI={(1−T/T15)/T15}100
:初期500ccの濾過に要する時間(sec)
15:濾過継続15min後の500ccの濾過に要する時間(sec)
【0062】
[有機性排水水質]
BOD:1000mg/L
【0063】
[生物反応槽]
槽容量:2400L
曝気量:200L/min
担体:3mm角のスポンジを見掛け容量で槽容量の50%添加
【0064】
[第1凝集槽]
槽容量:50L
無機凝集剤:38重量%塩化第二鉄水溶液を200mg/L(FeCl換算量)添加
酸化剤:次亜塩素酸ナトリウムを表1に示す量添加
槽内pH:表1に示す通り(HCl又はNaCl添加により調整)
空気曝気量:20L/min
【0065】
[第2凝集槽]
槽容量:50L
有機凝集剤:ポリアクリルアミド部分加水分解物を0.5mg/L添加
槽内pH:表1に示す通り(HCl又はNaOH添加により調整)
撹拌機:平羽40mm×200mm,60rpmのパドル撹拌
【0066】
[加圧浮上分離槽]
槽:直径130mmの円筒形浮上分離槽
加圧水比:30%
通水LV:10m/hr
【0067】
[濾過装置]
濾過方式:重力式2層濾過
濾過LV:5.6m/hr
【0068】
比較例1
実施例1において、第1凝集槽の撹拌手段を空気曝気ではなく、第2凝集槽と同様のパドル撹拌としたこと以外は同様にして処理を行い、処理結果を表1に示した。
【0069】
比較例2
比較例1において、第1凝集槽における無機凝集剤添加量を表1に示すように増量したこと以外は同様にして処理を行い、処理結果を表1に示した。
【0070】
【表1】

【0071】
表1より次のことが明らかである。
【0072】
即ち、第1凝集槽で機械撹拌を行った比較例1では処理水のFI値が高く、処理水の水質が劣る。また濾過継続時間も実施例1〜4に比べて短い。無機凝集剤添加量を多くした比較例2では、FI値は改善されるものの十分ではなく、また、凝集フロックの形成及びそのフロックの泡との親和性の両方が不十分のために加圧浮上分離性が悪いことから、濾過継続時間は非常に短いものとなる。
【0073】
これに対して、第1凝集槽で空気曝気を行った実施例1〜4ではいずれも良好な結果が得られており、特に、酸化剤を添加した場合(実施例3)、更に、第1凝集槽のpHを酸性領域とした場合(実施例1,2)では、良好な結果が得られている。
【0074】
実施例5
実施例1において、第1凝集槽に添加する無機凝集剤としてPAC(ポリ塩化アルミニウム)を用い、その添加量を250mg/Lとすると共に、第1凝集槽及び第2凝集槽のpHを表1に示す値としたこと以外は同様にして処理を行い、処理結果を表2に示した。
【0075】
比較例3
実施例5において、第1凝集槽の撹拌手段を空気曝気ではなく、第2凝集槽と同様のパドル撹拌としたこと以外は同様にして処理を行い、処理結果を表2に示した。
【0076】
【表2】

【0077】
表2より、無機凝集剤としてPACを用いた場合にも、空気曝気による本発明の効果が得られることが分かる。なお、実施例5と比較例3との対比において、実施例5はFI値においては比較例3よりも良好であり、濾過継続時間も比較例3の場合よりも長い。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の排水処理装置の実施の形態を示す系統図である。
【図2】本発明の排水処理装置の他の実施の形態を示す系統図である。
【図3】本発明の排水処理装置の別の実施の形態を示す系統図である。
【図4】本発明の排水処理装置の別の実施の形態を示す系統図である。
【図5】本発明の排水処理装置の別の実施の形態を示す系統図である。
【符号の説明】
【0079】
1 生物反応槽
2 凝集槽
2A 第1凝集槽
2B 第2凝集槽
2C 第3凝集槽
3 加圧浮上分離槽
4 濾過装置
5 RO膜分離装置
6 活性炭塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を生物的に処理する生物反応槽と、
該生物反応槽から流出する生物処理水に凝集剤を添加して凝集反応を行う凝集反応槽と、
該凝集反応槽から流出する凝集処理水を固液分離する加圧浮上分離装置と
を備えた排水処理装置において、
前記凝集反応槽に曝気手段を設けたことを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記凝集反応槽内の水のpHを3〜6に調整するためのpH調整剤添加手段を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記凝集反応槽に酸化剤を添加する酸化剤添加手段を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記加圧浮上分離装置から流出する加圧浮上分離水を固液分離する濾過装置を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項5】
被処理水を生物的に処理する生物反応工程と、
該生物反応工程から流出する生物処理水に凝集剤を添加して凝集反応を行う凝集反応工程と、
該凝集反応工程から流出する凝集処理水を固液分離する加圧浮上分離工程と
を備えた排水処理方法において、
前記凝集反応工程における凝集反応を曝気下に行うことを特徴とする排水処理方法。
【請求項6】
請求項5において、前記凝集反応工程の水にpH調整剤を添加して、該水のpHを3〜6に調整することを特徴とする排水処理方法。
【請求項7】
請求項5又は6において、前記凝集反応工程の水に酸化剤を添加することを特徴とする排水処理方法。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか1項において、前記加圧浮上分離工程から流出する加圧浮上分離水を固液分離する濾過工程を有することを特徴とする排水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−130526(P2007−130526A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323791(P2005−323791)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】