説明

接合システムおよび接合方法

【課題】両被接合物の相互間の電気的接続を実現するに際して、樹脂層を設けることを必ずしも要することなく、両被接合物の接合強度を良好に確保することが可能な接合技術を提供する。
【解決手段】この接合システムは、Au(金)、Cu(銅)およびAl(アルミニウム)のいずれかで構成される接合部分PT1とSi(シリコン)、SiO(二酸化シリコン)およびガラスのいずれかで構成される接合部分PT2とをその接合表面にそれぞれ有する2つの被接合物91,92を接合する。当該接合システムは、2つの被接合物91,92の各接合表面に対してエネルギー波による親水化処理を行い、その後、2つの被接合物91,92における接合部分PT1同士を接触させ且つ2つの被接合物91,92における接合部分PT2同士を接触させた状態で2つの被接合物91,92を加圧し接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの被接合物を接合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、2つの物体のうち一方の物体に設けられたAu(金)バンプと他方の物体に設けられたAu(金)パッドとを接合する技術が存在する。これにより、2つの物体の相互間において電気的接続が実現される(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−308140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようにAu(金)バンプとAu(金)パッドとを接合することのみによって2つの物体を接合する場合には、必ずしも十分な強度を得ることができない。
【0005】
そのため、上記特許文献1においては、Au(金)バンプとAu(金)パッドとが接合されるとともに樹脂層(アンダーフィル樹脂層あるいは接着剤層)が設けられることによって、接合後の強度が確保されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、樹脂層を設けることを要するなどの問題が存在する。
【0007】
また、このような状況は、Cu(銅)−Cu(銅)の接合等においても同様に生じる。
【0008】
そこで、この発明は、両被接合物の相互間の電気的接続を実現するに際して、樹脂層を設けることを必ずしも要することなく、両被接合物の接合強度を良好に確保することが可能な接合技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、請求項1の発明は、Au(金)、Cu(銅)およびAl(アルミニウム)のいずれかで構成される第1の接合部分とSi(シリコン)、SiO(二酸化シリコン)およびガラスのいずれかで構成される第2の接合部分とをその接合表面にそれぞれ有する2つの被接合物を接合する接合システムであって、前記2つの被接合物の各接合表面に対してエネルギー波による親水化処理を行う第1の表面活性化処理手段と、前記2つの被接合物における前記第1の接合部分同士を接触させ且つ前記2つの被接合物における前記第2の接合部分同士を接触させた状態で前記2つの被接合物を加圧することによって、前記2つの被接合物を接合する接合手段と、を備える接合システムであることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明に係る接合システムにおいて、前記2つの被接合物は、第1の被接合物と第2の被接合物とを有し、前記第1の被接合物の前記第1の接合部分における第1の基準面からの接合方向の厚さと前記第2の被接合物の前記第1の接合部分における第2の基準面からの接合方向の厚さとの和は、前記第1の被接合物の前記第2の接合部分における前記第1の基準面からの接合方向の厚さと前記第2の被接合物の前記第2の接合部分における前記第2の基準面からの接合方向の厚さとの和よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る接合システムにおいて、前記接合手段は、前記2つの被接合物を180℃以下の温度にまで昇温した状態で、当該2つの被接合物を接合することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明に係る接合システムにおいて、前記親水化処理は、酸素プラズマを用いて実行されることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4の発明に係る接合システムにおいて、前記親水化処理は、窒素ラジカルをも用いて実行されることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかの発明に係る接合システムにおいて、前記親水化処理の前に、エネルギー波を用いた物理的な表面活性化処理を前記各接合表面に対して施す第3の表面活性化処理手段、をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項6の発明に係る接合システムにおいて、前記物理的な表面活性化処理は、Ar(アルゴン)プラズマによる表面活性化処理を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は、Au(金)、Cu(銅)およびAl(アルミニウム)のいずれかで構成される第1の接合部分とSi(シリコン)、SiO(二酸化シリコン)およびガラスのいずれかで構成される第2の接合部分とをその接合表面にそれぞれ有する2つの被接合物を接合する接合システムであって、前記2つの被接合物の各接合表面に対してエネルギー波による親水化処理を行う表面活性化処理装置と、前記2つの被接合物における前記第1の接合部分同士を接触させ且つ前記2つの被接合物における前記第2の接合部分同士を接触させた状態で前記2つの被接合物を加圧することによって、前記2つの被接合物を接合する接合装置と、前記表面活性化処理装置で前記親水化処理が施された前記2つの被接合物を前記接合装置に大気搬送する搬送装置と、を備える接合システムであることを特徴とする。
【0017】
請求項9の発明は、Au(金)、Cu(銅)およびAl(アルミニウム)のいずれかで構成される第1の接合部分とSi(シリコン)、SiO(二酸化シリコン)およびガラスのいずれかで構成される第2の接合部分とをその接合表面にそれぞれ有する2つの被接合物を接合する接合方法であって、a)前記2つの被接合物の各接合表面に対してエネルギー波による親水化処理を行うステップと、b)前記2つの被接合物における前記第1の接合部分同士を接触させ且つ前記2つの被接合物における前記第2の接合部分同士を接触させた状態で、前記2つの被接合物を加圧することによって、前記2つの被接合物を接合するステップと、を備える接合方法であることを特徴とする。
【0018】
請求項10の発明は、Au(金)、Cu(銅)およびAl(アルミニウム)のいずれかで構成される第1の接合部分とSi(シリコン)、SiO(二酸化シリコン)およびガラスのいずれかで構成される第2の接合部分とをその接合表面にそれぞれ有する2つの被接合物を接合する接合方法であって、a)前記2つの被接合物の各接合表面に対してエネルギー波による親水化処理を行うステップと、b)前記親水化処理が施された前記2つの被接合物を接合装置へと大気搬送するステップと、c)前記接合装置において、前記2つの被接合物における前記第1の接合部分同士を接触させ且つ前記2つの被接合物における前記第2の接合部分同士を接触させた状態で前記2つの被接合物を加圧することによって、前記2つの被接合物を接合するステップと、を備える接合方法であることを特徴とする。
【0019】
請求項11の発明は、Au(金)、Cu(銅)およびAl(アルミニウム)のいずれかで構成される第1の接合部分とSi(シリコン)、SiO(二酸化シリコン)およびガラスのいずれかで構成される第2の接合部分とをその接合表面にそれぞれ有する2つの被接合物を接合する接合方法であって、a)前記2つの被接合物の各接合表面のうち少なくとも前記第1の接合部分に対して物理的な表面活性化処理を行うステップと、b)前記2つの被接合物の各接合表面のうち少なくとも前記第2の接合部分に対してエネルギー波による親水化処理を行うステップと、c)前記2つの被接合物における前記第1の接合部分同士を接触させ且つ前記2つの被接合物における前記第2の接合部分同士を接触させた状態で前記2つの被接合物を加圧することによって、前記2つの被接合物を接合するステップと、を備え、前記ステップc)における接合時の両被接合物における面平均接合圧力は、150MPa(メガパスカル)よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1ないし請求項11に記載の発明によれば、両被接合物の相互間の電気的接続を実現するに際して、樹脂層を設けることを必ずしも要することなく、2つの被接合物に関する接合強度を良好に確保することが可能である。
【0021】
特に、請求項2に記載の発明によれば、第1の接合部分での接合方向厚さの合計値は第2の接合部分での接合方向厚さの合計値よりも大きいので、第1の接合部分には、比較的大きな接合圧力(接触圧)が作用する。そのため、第1の接合部分において強固な接合を得ることができる。また、第2の接合部分は比較的小さな接合圧力でも良好に接合される。このように、2つの接合部分において適宜に荷重を分散させることによって、総合的に比較的小さな力で2つの被接合物を適切に接合することが可能である。
【0022】
また特に、請求項8および請求項10に記載の発明によれば、親水化処理が施された2つの被接合物が接合装置に大気搬送されるので、大気搬送後の当該接合装置において効率的に接合動作を実行することが可能である。
【0023】
また特に、請求項11に記載の発明によれば、比較的低い接合圧力での接合が可能であり、良好な接合強度を比較的容易に実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】接合装置(接合システム)を示す図である。
【図2】接合装置を示す図である。
【図3】上下2つの被接合物の詳細構成を示す断面図である。
【図4】上側の被接合物に対してArプラズマ処理が施される様子を示す断面図である。
【図5】下側の被接合物に対してArプラズマ処理が施される様子を示す断面図である。
【図6】上側の被接合物に対して親水化処理等が施された様子を示す断面図である。
【図7】下側の被接合物に対して親水化処理等が施された様子を示す断面図である。
【図8】両被接合物の接触開始状態を示す図である。
【図9】両被接合物が2つの接合部分の双方にて接触している様子を示す図である。
【図10】Si−O−Siの結合を示す図である。
【図11】実施形態に係る動作を示すフローチャートである。
【図12】Au−Auの接合界面の撮影画像を示す図である。
【図13】Si−Siの接合界面の撮影画像を示す図である。
【図14】Cu−Cuの接合界面の撮影画像を示す図である。
【図15】Al−Alの接合界面の撮影画像を示す図である。
【図16】変形例に係る接合システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
<1.装置概要>
図1および図2は、本発明の実施形態に係る接合装置(接合システムとも称される)1を示す縦断面図である。当該接合装置1は、2つの両被接合物91,92を接合する装置である。なお、図1および図2においては、便宜上、XYZ直交座標系を用いて方向等を示している。
【0027】
接合装置1は、減圧下のチャンバ(真空チャンバ)2内で、被接合物91と被接合物92とを対向させて加圧および加熱し、両被接合物91,92を接合する装置である。
【0028】
また、当該接合装置1は、2つの被接合物91,92を接合する前に、当該両被接合物91,92の表面を活性化させる表面活性化処理(後述)をも行う。そのため、この接合装置1は、表面活性化装置であるとも表現される。
【0029】
この接合装置1は、両被接合物91,92の処理空間である真空チャンバ2を備える。真空チャンバ2は、排気管6と排気弁7とを介して真空ポンプ5に接続されている。真空ポンプ5の吸引動作に応じて真空チャンバ2内の圧力が低減(減圧)されることによって、真空チャンバ2は真空状態にされる。また、排気弁7は、その開閉動作と排気流量の調整動作とによって、真空チャンバ2内の真空度を調整することができる。
【0030】
また、真空チャンバ2には、吸気管3と吸気弁4aとガス切換弁4bとが接続されている。吸気弁4aを開放するとともにガス切換弁4bを用いて複数の供給元を切り換えることによって、複数の種類のガス(たとえば、アルゴンガス、酸素ガス、水ガス等)が吸気管3を通じて選択的に真空チャンバ2に供給される。
【0031】
また、両被接合物91,92のうち上側の被接合物92は、ヘッド22(より詳細にはその先端部に設けられた静電チャックあるいは機械式チャック等)によって保持される。同様に、下側の被接合物91は、当該ステージ12(より詳細にはその先端部に設けられた静電チャックあるいは機械式チャック等)によって保持される。
【0032】
ステージ12に保持された被接合物91はステージ12内の下部電極12dに電気的に接続されている。真空チャンバ2がアルゴンガスで満たされた状態において、当該下部電極12dに交番電圧が印加されると、被接合物91の接合表面がアルゴンイオンによりエッチングされて洗浄され表面活性化される。すなわち、アルゴンを用いたプラズマ処理(後述)が施される。同様に、ヘッド22に保持された被接合物92はヘッド22内の上部電極22dに電気的に接続されている。真空チャンバ2がアルゴンガスで満たされた状態において、当該上部電極22dに交番電圧が印加されると、被接合物92の接合表面がアルゴンイオンによりエッチングされて洗浄され表面活性化される。
【0033】
また、当該各電極12d,22dは、酸素プラズマによる親水化処理(後述)にも用いられる。具体的には、真空チャンバ2が酸素ガスで満たされた状態において、下部電極12dに交番電圧が印加されると、被接合物91の接合表面が酸素イオンにより洗浄されるとともに表面活性化される。同様に、上部電極22dに交番電圧が印加されると、被接合物92の接合表面が酸素イオンにより洗浄されるとともに表面活性化される。詳細には、酸素プラズマ中の酸素イオンが両被接合物91,92の接合表面に向かって比較的強い衝突力で衝突することにより、両被接合物91,92の表面層が酸素イオンと入れ替わってOH基が付着しやすい状態となる。このようにして、両被接合物91,92の接合表面は酸素イオン等によって親水化処理され、OH基で表面活性化される。
【0034】
また、ヘッド22は、当該ヘッド22に内蔵されたヒータ22hによって加熱され、ヘッド22に保持された被接合物92の温度を調整することができる。同様に、ステージ12は、当該ステージ12に内蔵されたヒータ12hによって加熱され、ステージ12上の被接合物91の温度を調整することができる。また、ヘッド22は、当該ヘッド22に内蔵された空冷式の冷却装置等によって当該ヘッド22自身を室温付近にまで急速に冷却することもできる。ステージ12も同様である。
【0035】
これらのヘッド22およびステージ12は、いずれも、真空チャンバ2内において、移動可能に設置されている。
【0036】
ステージ12は、スライド移動機構14(図2参照)によってX方向に移動(並進移動)可能である。ステージ12は、図2における比較的左側の待機位置(位置PG1付近)と比較的右側の接合位置(ヘッド22直下の位置PG2付近)との間でX方向において移動する。スライド移動機構14は高精度の位置検出器(リニアスケール)を有しており、ステージ12は高精度に位置決めされる。
【0037】
ヘッド22は、アライメントテーブル23によってX方向およびY方向(水平平面に平行な2つの並進方向)に移動(並進移動)されるとともに、回転駆動機構25によってθ方向(Z軸に平行な軸周りの回転方向)に回転される。ヘッド22は、位置認識部28による位置検出結果等に基づいてアライメントテーブル23および回転駆動機構25によって駆動され、X方向、Y方向、θ方向におけるアライメント動作が実行される。このように、鉛直方向(Z方向)に垂直な平面に沿った各方向(X方向、Y方向、θ方向)(端的に言えば水平方向)において、ステージ12とヘッド22とが相対的に移動することによって、ステージ12に保持された被接合物91とヘッド22に保持された被接合物92とが水平方向においてアライメントされる。
【0038】
また、接合装置1は、被接合物91,92の水平位置(詳細にはX,Y,θ)を認識する位置認識部28を備えている。上述のアライメント動作は、位置認識部28による位置認識結果等に基づいて実行される。
【0039】
さらに、ヘッド22は、Z軸昇降駆動機構26によってZ方向に移動(昇降)される。ステージ12とヘッド22とがZ方向に相対的に移動することによって、ステージ12に保持された被接合物91とヘッド22に保持された被接合物92とが接触し加圧されて接合される。なお、Z軸昇降駆動機構26は、複数の圧力検出センサ(ロードセル等)29,32(32a,32b,32c)により検出された信号に基づいて、接合時の加圧力を制御することも可能である。
【0040】
<2.被接合物>
図3は、この実施形態における接合対象である両被接合物91,92の詳細構成を示す断面図である。なお、図3等においては、図示の都合上、パッド93およびバンプ94(後述)が誇張して示されている。
【0041】
両被接合物91,92は、ここでは半導体ウエハ(シリコンウエハ)である。
【0042】
当該両被接合物91,92は、それぞれ、その接合表面に2種類の接合部分PT1,PT2を有する。
【0043】
被接合物91の接合部分PT1には、パッド(電極)93が設けられており、被接合物92の接合部分PT1には、バンプ(電極)94が設けられている。パッド93およびバンプ94は、それぞれ、Au(金)で形成されている。換言すれば、被接合物91,92の接合部分PT1は、それぞれ、Au(金)で構成されている。パッド93とバンプ94とが接合されることによって、被接合物91と被接合物92とが電気的に接続される。すなわち、両被接合物91,92の相互間の電気的接続が実現される。
【0044】
また、被接合物91の接合部分PT2(部分95とも称する)はSi(シリコン)で構成されている。同様に、被接合物92の接合部分PT2(部分96とも称する)も、Si(シリコン)で構成されている。部分95と部分96とが接合されることによって、両被接合物91,92が強固に接合される。
【0045】
また、両被接合物91,92の接合部分PT2には表面平滑化処理が施されており、接合部分PT1には表面平滑化処理が施されていない。その結果、両被接合物91,92の接合部分PT2の表面粗さは、両被接合物91,92の接合部分PT1の表面粗さよりも小さい。たとえば、接合部分PT1の表面粗さ(Ra)は百数十nm(ナノメートル)であり、接合部分PT2の表面粗さ(Ra)は10nm(ナノメートル)である。このように両被接合物91,92の接合部分PT2には表面平滑化処理が施されており、親水化処理された接合部分PT2同士は、比較的小さな接合圧力で接合することが可能である。たとえば、0.01MPa(メガパスカル)程度の接合圧力を加えることによって、接合部分PT2同士は接合され得る。なお、もう一方の接合部分PT1同士は、たとえば、150MPa(メガパスカル)程度の接合圧力を加えることによって、良好に接合され得る。
【0046】
なお、接合部分PT2の表面平滑化処理においては、例えば、接合部分PT2の表面粗さ(Ra)が100nm(ナノメートル)以下となるように平滑化されることが好ましく、接合部分PT2の表面粗さ(Ra)が10nm(ナノメートル)以下となるように平滑化されることがさらに好ましい。
【0047】
また、平面視(上面視)における両被接合物91,92の接合部分PT2の合計面積(総面積)ST2は、両被接合物91,92の接合部分PT1の合計面積(総面積)ST1よりも大きい。接合部分PT2の合計面積ST2は、接合部分PT1の合計面積ST1に比べて非常に大きく、例えば合計面積ST1の数百倍程度である。
【0048】
また、パッド93とバンプ94との合計高さH1は、部分95と部分96との合計高さH2よりも微少量ΔH(例えば、ΔH=数μm(マイクロメートル)〜数十μm(マイクロメートル)程度)大きい(図3参照)。合計高さH1は、基準面F1からのパッド93の高さ(接合方向厚さ)h3と基準面F2からのバンプ94の高さ(接合方向厚さ)h4との合計値(H1=h3+h4)であり、合計高さH2は、基準面F1からの部分95の高さh5(図3ではh5=0)と基準面F2からの部分96の高さh6との合計値(H2=h5+h6)である。ここで、合計高さH1は、接合部分PT1における2つの被接合物91,92の接合方向厚さh3,h4の合計値(和)であるとも表現される。同様に、合計高さH2は、接合部分PT2における2つの被接合物91,92の接合方向厚さh5,h5の合計値(和)であるとも表現される。また、厚さh3は、被接合物91の接合部分PT1における基準面F1からの接合方向の厚さ(平均厚さ)であるとも表現され、厚さh4は、被接合物92の接合部分PT1における基準面F2からの接合方向の厚さ(平均厚さ)であるとも表現される。同様に、厚さh5は、被接合物91の接合部分PT2における基準面F1からの接合方向の厚さ(平均厚さ)であるとも表現され、厚さh6は、被接合物92の接合部分PT2における基準面F2からの接合方向の厚さ(平均厚さ)であるとも表現される。
【0049】
なお、バンプ94として先鋭バンプが用いられる場合には、特に、当該先鋭バンプの先端部分が潰されて接合されるため、Au(金)の表面において新生面が表出し易く、良好な接合が実現され易い。また、この場合には、先鋭バンプの先端部の比較的大きな潰れ量を考慮して、値ΔHは、比較的大きな値(例えば数十μm(マイクロメートル))に設定されることが好ましい。
【0050】
<3.動作>
図11は、この実施形態に係る動作を示すフローチャートである。図11を参照しながら、この実施形態に係る動作について説明する。
【0051】
まず、ステップS11において、両被接合物91,92の接合表面に対して、エネルギー波による表面活性化処理が施される。ここでは、アルゴンプラズマ処理が行われる。
【0052】
具体的には、接合装置1は、真空ポンプ5(図1参照)を動作させつつ排出弁7での排気流量と吸気弁4aでの吸入流量とをコントロールすることによって、真空チャンバ2内を一定の真空度に保ちながらプラズマ反応ガス(Ar(アルゴン)ガス)で満たす。
【0053】
そして、Ar(アルゴン)ガスで満たされた真空チャンバ2内を一定の真空度に保ちつつ、上部電極22dに交番電源プラズマ電圧を印加することによって、プラズマを発生させる(図4参照)。これにより、被接合物92の接合表面にAr(アルゴン)イオンが衝突し、被接合物92の接合表面に付着した有機物等が除去されて被接合物92の接合表面が洗浄され、被接合物92の接合表面が活性化される。
【0054】
同様に、Ar(アルゴン)ガスで満たされた真空チャンバ2内を一定の真空度に保ちつつ、下部電極12dに交番電源プラズマ電圧を印加することによって、プラズマを発生させる(図5参照)。これにより、被接合物91の接合表面にAr(アルゴン)イオンが衝突し、被接合物91の接合表面に付着した有機物等が除去されて被接合物91の接合表面が洗浄され、被接合物91の接合表面が活性化される。
【0055】
ステップS11のアルゴンプラズマ処理が終了すると、真空チャンバ2内のアルゴンガスが排出され、ステップS12に進む。
【0056】
ステップS12においては、両被接合物91,92の接合表面に対して、エネルギー波による親水化処理(ここでは、酸素プラズマを用いた親水化処理)が実行される。
【0057】
具体的には、今度は(アルゴンガスではなく)酸素ガスを真空チャンバ2内に供給して上部電極22dおよび下部電極12dに交番電源プラズマ電圧を印加して、酸素プラズマを発生させる。これにより、図6および図7に示すように、酸素プラズマによる親水化処理が両被接合物91,92の各接合部分PT2に対して施される。図6および図7の断面図には、酸素プラズマによる親水化処理が各接合部分PT2に施された結果、Si(シリコン)表面にOH基(水酸基)が付着している様子が示されている。これにより、後述するように、両被接合物91,92が接合される際には、その接合表面において、OH基同士の結合が実現され、さらにはSi−0−Siの共有結合が実現される。
【0058】
なお、「エネルギー波による親水化処理」とは、プラズマ、イオンビーム、原子ビーム等のエネルギー波により、接合表面等にOH基を付着させることにより、当該接合表面等を親水性にする処理である。
【0059】
このようにして、両被接合物91,92の主に接合部分PT2に対して、親水化処理による表面活性化処理等が行われる。
【0060】
また、ステップS12においては、水ガスも供給され、両被接合物91,92の接合表面に対して水分子を付着させる処理も促進される。水ガスとしては、水分(水分子)を含む不活性ガス(窒素ガス等)などが用いられる。
【0061】
特に、両被接合物91,92の接合部分PT1においては、表面活性化処理が施された接合表面(Au(金))に水分子を吸着させる水分子吸着処理が行われる。なお、Au(金)は、酸化しにくいため、酸素プラズマ処理が施されても、安定な状態を維持することが可能である。
【0062】
上記のステップS11(図4および図5),S12(図6および図7)においては、両被接合物91,92は未だ接触していない。
【0063】
その後、ステップS13において、両被接合物91,92の接合処理等が実行される。
【0064】
まず、両被接合物91,92は、水平方向(X方向、Y方向およびθ方向)において位置合わせ(アライメント)される。このアライメント動作は、位置認識部28による位置認識結果に基づいて実行される。
【0065】
つぎに、Z軸昇降駆動機構26の駆動によって、ヘッド22が下降され、両被接合物91,92が接近していく。
【0066】
上述したように、パッド93とバンプ94との合計高さH1(=h3+h4)は、部分95と部分96との合計高さH2(=h5+h6)よりも大きい(図3参照)。
【0067】
そのため、この接近動作に応じて、まず両被接合物91,92の接合部分PT1同士が(接合部分PT2同士よりも先に)接触する(図8参照)。なお、図8は、両被接合物91,92の接触開始状態を示す断面図である。
【0068】
その後、さらにヘッド22が下降され、両被接合物91,92がさらに接近すると、接合部分PT2においても両被接合物91,92が接触する(図9)。すなわち、部分95と部分96との接触も発生する。なお、図9は、両被接合物91,92が2つの接合部分PT1,PT2の双方にて接触している様子を示す断面図である。
【0069】
この結果、両被接合物91,92は、2種類の接合部分PT1,PT2で接触した状態で加圧される。このとき、上述したようにパッド93とバンプ94との合計高さH1は、部分95と部分96との合計高さH2よりも大きいため、接合用の力のうち比較的大きな成分の力が接合部分PT1に作用する。一方、接合用の力のうち比較的小さな成分の力が接合部分PT2に作用する。また、接合部分PT1の面積は微小であり、接合部分PT1には比較的大きな圧力PR1が作用する。一方、接合部分PT2には比較的小さな圧力PR2が作用する。
【0070】
また、ステップS13においては、さらに両被接合物91,92に対する加熱処理が実行される。たとえば、両被接合物91,92は所定温度TH1(ここでは180℃)にまで昇温(加熱)される。なお、温度TH1は、室温(25℃程度)以上且つ180℃以下の範囲内の値であることが好ましく、150℃以上且つ180℃以下の範囲内の値であることがさらに好ましい。
【0071】
ステップS13における加圧処理(詳細には加圧加熱処理)により、両被接合物91,92の接合部分PT1においては、水分子が接合表面から除去され、Au−Auの強固な接合(共有結合)が実現される。図12は、Au−Auの接合界面の撮影画像を示す図である。Au(金)とAu(金)とは図12に示すように強固に結合される。なお、水分子は、比較的小さな強度でAu(金)に付着しているため、水分子とAu(金)との付着状態は、比較的小さなエネルギーで解除され得る。具体的には、比較的低温の温度TH1で加熱することによって、水分子を除去することができる。
【0072】
また、両被接合物91,92の接合部分PT2においては、まず、被接合物91のOH基(水酸基)と被接合物92のOH基(水酸基)との結合(水素結合)が生じ、その後、当該水素結合による仮接合部分から水分子が放出され、Si−O−Siの強固な結合(共有結合)(図10参照)が実現される。接合部分PT2においても、比較的低温の温度TH1で加熱することによって、水分子を放出させることができる。図13は、Si−Siの接合界面の撮影画像を示す図である。SiとSiとは図13に示すように強固に結合される。
【0073】
このようにして、両被接合物91,92の接合部分PT1同士を接触させ且つ両被接合物91,92の接合部分PT2同士を接触させた状態で、両被接合物91,92を加圧し且つ加熱することによって、両被接合物91,92が接合される。このような工程を経ることによって、各種のデバイス(半導体デバイス等)が生成(製造)される。
【0074】
以上のように、上記のような接合動作によれば、両被接合物91,92の相互間の電気的接続を実現するに際して、樹脂層を設けることを必ずしも要することなく、2つの被接合物91,92に関する接合強度を良好に確保することが可能である。
【0075】
より具体的には、まず、エネルギー波を用いた物理的な表面活性化処理(アルゴンプラズマ処理)が施される(ステップS11)。この物理的な表面活性化処理においてはアルゴンイオン等によるエッチング力(物理的な力)が作用し、接合表面の不純物(有機物等)は良好に除去される。特に、Au(金)で構成される接合部分PT1においては、表面活性化処理が良好に施される。また、Ar(アルゴン)原子は原子量が大きいため、Arプラズマを用いることにより接合部分PT1の表面活性化処理を非常に効率良く行うことができる。
【0076】
つぎに、エネルギー波を用いた親水化処理による表面活性化処理が施される(ステップS12)。この親水化処理は、上述の酸素プラズマ処理によって実現される。特に、Si(シリコン)で構成される接合部分PT2においては、OH基(水酸基)が良好に付着する。すなわち、親水化処理による表面活性化処理が良好に施される。
【0077】
その後、2つの被接合物91,92における接合部分PT1同士および接合部分PT2同士がそれぞれ互いに接触した状態で、2つの被接合物91,92が加圧され且つ加熱される。したがって、2つの被接合物91,92における接合部分PT1同士および接合部PT2同士が強固に接合される。
【0078】
また特に、接合部分PT1での接合方向厚さの合計値H1は接合部分PT2での接合方向厚さの合計値H2よりも大きいので、接合部分PT1には、比較的大きな接合圧力(接触圧)が作用する。そのため、接合部分PT1において強固な接合を得ることができる。なお、接合部分PT1においては、大きな接合圧力によって、バンプ94が若干量潰されてパッド93に接合される。また、接合部分PT2には表面平滑化処理が施されており、親水化処理された接合部分PT2同士は、比較的小さな接合圧力(例えば0.01MPa(メガパスカル))で良好に接合することが可能である。より具体的には、仮に接合部分PT2における接合圧力(例えば0.01MPa)が接合部分PT1での接合圧力(例えば150MPa)よりも非常に小さい(例えば、1/10000程度)としても、接合部分PT2同士は良好に接合される。さらに、接合部分PT2の総面積ST2は接合部分PT1の総面積ST1よりも大きいので、接合部分PT2においても強固な接合を得ることができる。
【0079】
たとえば、50μm(マイクロメートル)四方のパッド93が被接合物91内に1万個形成されるとすると、合計面積ST1は、0.00025m(平方メートル)(ST1=50×10(−6)×50×10(−6)×10000=2.5×10(−4))であり、微小である。一方、部分PT2は、被接合物91(たとえば8インチウエハ(総面積:π×0.1×0.1=3.1×10(−2)(平方メートル))の多くの部分に設けられ、合計面積ST2は、比較的大きな値を有する。そして、このような場合には、Z軸昇降駆動機構26を下降駆動して両被接合物91,92を接合する際に、比較的小さな力を加えることによって、両接合部分PT1,PT2に適宜の力を分配して加えることができる。例えば、接合部分PT1において、2.5×10(−4)×150×10(+6)=3.8×10(+3)N(ニュートン)程度の力を作用させるとともに、接合部分PT2において、3.1×10(−2)×0.01×10(+6)=3.1×10(+2)N(ニュートン)程度の力を作用させることができる。このように、2種類の接合部分PT1,PT2に対して合計で例えば1000kgf(約10KN(キロニュートン))以下の比較的小さな力(例えば、4.1×10(+3)N(ニュートン)程度の力)を加えることによって、両被接合物91,92を良好に接合することができる。換言すれば、比較的小さな面平均圧力(接合圧力の接合面内での平均値)(例えば、0.13MPa程度(=4.1×10(+3)/(3.1×10(−2)))を加えることによって、両被接合物91,92を良好に接合することができる。
【0080】
なお、これに対して、Au(金)で構成される接合部分PT1の接合面積のみを大きくして接合強度を高めようとすると、非常に大きな力を加えることが求められる。より詳細には、仮に、第1の接合部分と第2の接合部分との双方においてAu(金)を用いて両被接合物91,92を広い接触面積で接合する場合を想定すると、150MPa程度の圧力を当該接合部分に作用させることを要するため、非常に大きな荷重(例えば約100MN(メガニュートン))(すなわち10KN(キロニュートン)の約1万倍の力)を作用させることが求められる。そして、このような力を作用させるためには、非常に大がかりな装置を要することになる。
【0081】
一方、上記実施形態によれば、2つの接合部分PT1,PT2において適宜に荷重を分散させるとともに、比較的広い接合部分PT2を比較的低い接合圧力で接合することなどによって、総合的に比較的小さな力(たとえば1000kgf(約10KN(キロニュートン))程度)でも2つの被接合物を適切に接合することが可能である。特に、接合部分PT2においては、親水化処理された接合部分PT2同士が非常に小さな接合圧力で接合されるため、接合に要する力の増大を抑制することができる。
【0082】
このように、上記実施形態によれば、第1の接合部分にAu(金)を用いて電気的接続を実現するとともに、第2の接合部分にSi(シリコン)を用いた面接合を行うことによって接合強度の向上等を実現することが可能であるとともに、非常に小さな接合荷重(換言すれば、面平均圧力)で両被接合物91,92を接合することができる。詳細には、例えばAu(金)の接合のみだけで接合する場合には、150MPa程度の接合圧力を有するのに対して、上記実施形態において2種類の接合部分PT1,PT2を設けることなどによれば、少なくとも上記の150MPaよりも小さな面平均圧力(たとえば、10MPa以下あるいは1MPa以下)で両被接合物91,92を良好に接合することが可能である。特に、接合強度を確保しつつ電気的接続を実現するに際して、このような低荷重(換言すれば、小さな面平均圧力)での接合処理は従来においては実現困難であると考えられていたものであり、本実施形態に係る技術は非常に大きな意義を有している。さらに、Si(シリコン)を用いた面接合を第2の接合部分にて行うことによれば、電気接続部(Au(金)等)を含む電子回路部等の封止を実現することも可能である。封止の種類としては、大気封止(大気雰囲気中での封止)、真空封止(真空雰囲気中での封止)、ガス封入封止(特定ガスを封入して行う封止)等が例示される。
【0083】
また、上記のような動作によれば、真空チャンバ2内の圧力を超高真空状態(例えば、10−8Pa(パスカル))程度にまで低減することを要しない。すなわち、接合環境に関する制約が少ない。なお、接合部分PT2においては親水化処理等によりOH基が付着しており、接合部分PT1においても水分子が付着しているので、当該親水化処理等の後の接合動作は、低真空状態あるいは大気圧中でも実行可能である。
【0084】
<4.変形例等>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
【0085】
たとえば、上記実施形態においては、接合部分PT1がAu(金)で構成される場合を例示したが、これに限定されない。具体的には、接合部分PT1がCu(銅)で構成される場合にも上記の思想を適用することができる。なお、図14は、Cu−Cuの接合界面の撮影画像を示す図である。図14に示すように、Cu(銅)−Cu(銅)の強固な接合が実現される。
【0086】
同様に、接合部分PT1がAl(アルミニウム)で構成される場合にも上記の思想を適用することができる。なお、図15は、Al−Alの接合界面の撮影画像を示す図である。図15に示すように、Al(アルミニウム)−Al(アルミニウム)の強固な接合が実現される。
【0087】
また、上記実施形態においては、接合部分PT2がSi(シリコン)で構成される場合を例示するが、これに限定されず、接合部分PT2は、SiO(二酸化シリコン)あるいはガラスなどで構成される場合にも、上記の思想を適用することができる。これによれば、接合部分PT2においては被接合物91と被接合物92とを電気的に良好に絶縁した状態で、両被接合物91,92を強固に接合することが可能である。
【0088】
また、被接合物91の接合部分PT1と被接合物92の接合部分PT1とは互いに同じ材料で構成されることを要さず、被接合物91の接合部分PT1と被接合物92の接合部分PT1とは互いに異なる材料で構成されてもよい。たとえば、一方の被接合物91の接合部分PT1がAu(金)であり、他方の被接合物92の接合部分PT1がCu(銅)であってもよい。同様に、被接合物91の接合部分PT2と被接合物92の接合部分PT2とは互いに同じ材料で構成されることを要さず、被接合物91の接合部分PT2と被接合物92の接合部分PT2とは互いに異なる材料で構成されてもよい。たとえば、一方の被接合物91の接合部分PT2がSi(シリコン)であり、他方の被接合物92の接合部分PT2がSiO(二酸化シリコン)であってもよい。
【0089】
また、上記実施形態においては、両被接合物91,92として半導体ウエハを用いる場合を例示したが、これに限定されない。例えば、両被接合物91,92の一方が半導体ウエハであり、他方は半導体チップであってもよい。すなわち、チップ・オン・ウエハによる半導体製造工程において、上記の思想を適用するようにしてもよい。あるいは、両被接合物91,92の双方が半導体チップであってもよい。すなわち、チップ・オン・チップによる半導体製造工程において、上記の思想を適用するようにしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態においては、エネルギー波を用いた物理的な表面活性化処理(ステップS11)として、Ar(アルゴン)プラズマ処理を行う場合を例示したが、これに限定されない。例えば、Ar(アルゴン)プラズマ処理に代えて、Arイオンビーム処理あるいはAr原子ビーム処理等を、エネルギー波を用いた物理的な表面活性化処理として行うようにしてもよい。具体的には、ビーム照射部(原子ビーム照射装置あるいはイオンビーム照射装置等)を用いて、イオン化された特定物質(Ar(アルゴン)等)を電界で加速し両被接合物91,92の接合表面に向けて当該特定物質を放出することにより、両被接合物91,92の接合表面を活性化するようにしてもよい。
【0091】
また、上記実施形態においては、酸素プラズマ処理(ステップS12)の前に、Ar(アルゴン)プラズマ処理(ステップS11)を行う場合を例示したが、これに限定されない。
【0092】
例えば、Ar(アルゴン)プラズマ処理(エネルギー波を用いた物理的な表面活性化処理)(ステップS11)を行うことなく、酸素プラズマ処理(エネルギー波を用いた親水化処理を伴う表面活性化処理)(ステップS12)を行うようにしてもよい。この場合には、Si(シリコン)、SiO(二酸化シリコン)、あるいはガラスで構成される接合部分PT2においては、上記と同様に、親水化処理が施され、2つの被接合物における接合部分PT2同士が接触した状態で、2つの被接合物91,92が加圧される。したがって、2つの被接合物91,92における接合部分PT2同士は強固に接合される。また、この場合には、Au(金)あるいはCu(銅)で構成される接合部分PT1においても酸素プラズマ処理が施されることにより、その接合表面の不要物(有機物等)が除去されるとともにその接合表面に対する表面活性化処理が施される。そして、2つの被接合物91,92における接合部分PT1同士が接触した状態で、2つの被接合物91が加圧される。したがって、2つの被接合物91,92における接合部分PT1同士も強固に接合される。このようにして、両被接合物91,92に関する接合強度を良好に確保することが可能である。
【0093】
また、上記実施形態においては、エネルギー波による親水化処理(ステップS12)として、酸素プラズマ処理を例示したが、これに限定されない。例えば、酸素プラズマによる親水化処理に代えて、窒素プラズマによる親水化処理を、エネルギー波による親水化処理として行うようにしてもよい。あるいは、酸素プラズマによる親水化処理に代えて、アルゴン(Ar)プラズマによる親水化処理を、エネルギー波による親水化処理として行うようにしてもよい。
【0094】
また、上記実施形態においては、エネルギー波を用いた親水化処理として、プラズマ処理(酸素プラズマ処理)を行う場合を例示したが、これに限定されない。例えば、プラズマ処理に代えて、ビーム照射処理を行うようにしてもよい。詳細には、Arイオンビーム処理あるいはAr原子ビーム処理等を行うようにしてもよい。
【0095】
また、上記実施形態においては、酸素プラズマ処理(ステップS12)後に接合動作を行う場合を例示したが、これに限定されない。例えば、酸素プラズマ処理後に、反応ガスを窒素ガスに入れ替えるとともに電源等を変更することによって、窒素ラジカルによる表面活性化処理(親水化処理)をさらに行うようにしてもよい。そして、窒素ラジカル処理後に両被接合物91,92を接合するようにしてもよい。なお、窒素ラジカルは電気的に中性であるので電極への電圧印加により発生する電界によって加速されず、被接合物の接合表面を破損させることなく、当該接合表面の表面活性化処理を効率よく行うことができる。
【0096】
また、上記実施形態においては、酸素プラズマによる親水化処理中(ステップS12)において水ガスをさらに供給して接合表面に水を付着させる場合を例示したが、これに限定されない。例えば、酸素プラズマによる親水化処理後に、水ガスを供給するようにしてもよい。あるいは、水ガスを供給せずに真空チャンバ2内に残留している水分を用いて接合表面に水を付着させるようにしてもよい。
【0097】
また、上記実施形態においては、単一の装置1内で表面活性化処理から接合動作までを実行する場合を例示したが、これに限定されない。
【0098】
たとえば、図16に示すような接合システム1Bを用いて、両被接合物91,92を接合するようにしてもよい。この接合システム1Bは、表面活性化装置120と接合装置140と搬送装置150とを備える。接合システム1Bにおいては、まず、2つの被接合物に対する表面活性化処理(親水化処理等)が或る装置(表面活性化装置)120内で実行される。その後、当該2つの被接合物が大気中(あるいはガス雰囲気内)にて他の装置(接合装置)140まで搬送装置(搬送ロボット等)150を用いて搬送され、当該他の装置(接合装置)140にて当該2つの被接合物が接合される。なお、このような大気搬送等が上記のステップS12とステップS13との間に実行される場合には、ステップS12にて、水分子の付着処理が接合部分PT1,PT2に対して施されることが好ましい。
【0099】
このように、或る表面活性化装置120から別の接合装置140にまで大気搬送等した後に当該接合装置140で接合することによれば、当該接合装置(接合専用の接合装置)140を用いて非常に高速に(たとえば数秒〜数十秒に1個の割合で)接合動作を実行することが可能である。すなわち、このような変形例に係る接合システム1Bは、接合動作を効率的に実行することが可能であり、大量生産に適している。特に、チップ・オン・チップ、あるいは、チップ・オン・ウエハによる半導体製造工程においてこのような思想を適用することによれば、大量生産を好適に行うことが可能である。
【符号の説明】
【0100】
1,1B 接合システム
2 真空チャンバ
12 ステージ
12d,22d 電極
22 ヘッド
23 アライメントテーブル
28 位置認識部
91,92 被接合物
93 Auパッド
94 Auバンプ
PT1,PT2 接合部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Au(金)、Cu(銅)およびAl(アルミニウム)のいずれかで構成される第1の接合部分とSi(シリコン)、SiO(二酸化シリコン)およびガラスのいずれかで構成される第2の接合部分とをその接合表面にそれぞれ有する2つの被接合物を接合する接合システムであって、
前記2つの被接合物の各接合表面に対してエネルギー波による親水化処理を行う第1の表面活性化処理手段と、
前記2つの被接合物における前記第1の接合部分同士を接触させ且つ前記2つの被接合物における前記第2の接合部分同士を接触させた状態で前記2つの被接合物を加圧することによって、前記2つの被接合物を接合する接合手段と、
を備える接合システム。
【請求項2】
請求項1に記載の接合システムにおいて、
前記2つの被接合物は、第1の被接合物と第2の被接合物とを有し、
前記第1の被接合物の前記第1の接合部分における第1の基準面からの接合方向の厚さと前記第2の被接合物の前記第1の接合部分における第2の基準面からの接合方向の厚さとの和は、前記第1の被接合物の前記第2の接合部分における前記第1の基準面からの接合方向の厚さと前記第2の被接合物の前記第2の接合部分における前記第2の基準面からの接合方向の厚さとの和よりも大きいことを特徴とする接合システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の接合システムにおいて、
前記接合手段は、前記2つの被接合物を180℃以下の温度にまで昇温した状態で、当該2つの被接合物を接合することを特徴とする接合システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の接合システムにおいて、
前記親水化処理は、酸素プラズマを用いて実行されることを特徴とする接合システム。
【請求項5】
請求項4に記載の接合システムにおいて、
前記親水化処理は、窒素ラジカルをも用いて実行されることを特徴とする接合システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の接合システムにおいて、
前記親水化処理の前に、エネルギー波を用いた物理的な表面活性化処理を前記各接合表面に対して施す第2の表面活性化処理手段、
をさらに備えることを特徴とする接合システム。
【請求項7】
請求項6に記載の接合システムにおいて、
前記物理的な表面活性化処理は、Ar(アルゴン)プラズマによる表面活性化処理を含むことを特徴とする接合システム。
【請求項8】
Au(金)、Cu(銅)およびAl(アルミニウム)のいずれかで構成される第1の接合部分とSi(シリコン)、SiO(二酸化シリコン)およびガラスのいずれかで構成される第2の接合部分とをその接合表面にそれぞれ有する2つの被接合物を接合する接合システムであって、
前記2つの被接合物の各接合表面に対してエネルギー波による親水化処理を行う表面活性化処理装置と、
前記2つの被接合物における前記第1の接合部分同士を接触させ且つ前記2つの被接合物における前記第2の接合部分同士を接触させた状態で前記2つの被接合物を加圧することによって、前記2つの被接合物を接合する接合装置と、
前記表面活性化処理装置で前記親水化処理が施された前記2つの被接合物を前記接合装置に大気搬送する搬送装置と、
を備える接合システム。
【請求項9】
Au(金)、Cu(銅)およびAl(アルミニウム)のいずれかで構成される第1の接合部分とSi(シリコン)、SiO(二酸化シリコン)およびガラスのいずれかで構成される第2の接合部分とをその接合表面にそれぞれ有する2つの被接合物を接合する接合方法であって、
a)前記2つの被接合物の各接合表面に対してエネルギー波による親水化処理を行うステップと、
b)前記2つの被接合物における前記第1の接合部分同士を接触させ且つ前記2つの被接合物における前記第2の接合部分同士を接触させた状態で、前記2つの被接合物を加圧することによって、前記2つの被接合物を接合するステップと、
を備える接合方法。
【請求項10】
Au(金)、Cu(銅)およびAl(アルミニウム)のいずれかで構成される第1の接合部分とSi(シリコン)、SiO(二酸化シリコン)およびガラスのいずれかで構成される第2の接合部分とをその接合表面にそれぞれ有する2つの被接合物を接合する接合方法であって、
a)前記2つの被接合物の各接合表面に対してエネルギー波による親水化処理を行うステップと、
b)前記親水化処理が施された前記2つの被接合物を接合装置へと大気搬送するステップと、
c)前記接合装置において、前記2つの被接合物における前記第1の接合部分同士を接触させ且つ前記2つの被接合物における前記第2の接合部分同士を接触させた状態で前記2つの被接合物を加圧することによって、前記2つの被接合物を接合するステップと、
を備える接合方法。
【請求項11】
Au(金)、Cu(銅)およびAl(アルミニウム)のいずれかで構成される第1の接合部分とSi(シリコン)、SiO(二酸化シリコン)およびガラスのいずれかで構成される第2の接合部分とをその接合表面にそれぞれ有する2つの被接合物を接合する接合方法であって、
a)前記2つの被接合物の各接合表面のうち少なくとも前記第1の接合部分に対して物理的な表面活性化処理を行うステップと、
b)前記2つの被接合物の各接合表面のうち少なくとも前記第2の接合部分に対してエネルギー波による親水化処理を行うステップと、
c)前記2つの被接合物における前記第1の接合部分同士を接触させ且つ前記2つの被接合物における前記第2の接合部分同士を接触させた状態で前記2つの被接合物を加圧することによって、前記2つの被接合物を接合するステップと、
を備え、
前記ステップc)における接合時の両被接合物における面平均接合圧力は、150MPa(メガパスカル)よりも小さいことを特徴とする接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図16】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−119717(P2011−119717A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247508(P2010−247508)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(304019355)ボンドテック株式会社 (36)
【出願人】(503177074)
【Fターム(参考)】