説明

接合方法および接合体

【課題】多孔質体で構成された部材を備え、接合強度に優れた接合体を提供すること、当該接合体を製造することができる製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の接合体1は、多孔質体で構成された第1の部材21と、第2の部材22と、第1の部材21と前記第2の部材22とを接合する接合材3とを備えている。接合材3は、シリコーン材料を含有し、エネルギーの付与により接着性が発現し、この接着性により、第1の部材21と第2の部材22とを接合するものである。接合材3は、触媒としての機能を有する物質を含有するものであるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法および接合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つの部材を接合する場合において、エポキシ系接着剤等の接着剤を用いた方法が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、接合すべき部材が、多孔質体で構成されたものである場合、従来の方法では、十分な接合強度が得られない場合があった。
【0003】
【特許文献1】特表2008−509809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、多孔質体で構成された部材を備え、接合強度に優れた接合体を提供すること、当該接合体を製造することができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合体は、多孔質体で構成された第1の部材と、
第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材とを接合する接合材とを備え、
前記接合材は、シリコーン材料を含有し、エネルギーの付与により接着性が発現し、この接着性により、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合するものであることを特徴とする。
これにより、多孔質体で構成された部材を備え、接合強度に優れた接合体を提供することができる。
【0006】
本発明の接合体では、前記接合材は、連続孔を有する多孔質体であることが好ましい。
これにより、例えば、接合体をフィルター等に、好適に適用することができる。また、接合体の軽量化等を図ることができる。
本発明の接合体では、前記接合材は、触媒としての機能を有する物質を含有するものであることが好ましい。
これにより、例えば、接合体をフィルター、触媒反応装置等に、好適に適用することができる。
【0007】
本発明の接合体では、前記第2の部材は、多孔質体で構成されるものであることが好ましい。
これにより、例えば、接合体をフィルター等に、好適に適用することができる。また、接合体の軽量化等を図ることができる。
本発明の接合体では、前記第1の部材および前記第2の部材は、互いに空孔率が異なるものであることが好ましい。
これにより、第1の部材および第2の部材に、それぞれ、異なる機能をもたせることができる。より具体的には、上記のような構成にすることにより、接合体がフィルターである場合、第1の部材と第2の部材とにおいて、異なる物質をより好適に分離・除去させることができ、長期間にわたって、フィルターの除去・分離能の低下や、目詰まりの発生を好適に防止することができる。すなわち、フィルターの長寿命化を図ることができる。
【0008】
本発明の接合体では、前記第2の部材は、緻密質体で構成されるものであることが好ましい。
本発明においては、多孔質体と緻密質体との接合体においても、接合強度を十分に優れたものとすることができる。
本発明の接合体では、前記第1の部材および前記第2の部材は、互いに異なる材質で構成されたものであることが好ましい。
これにより、第1の部材および第2の部材に、それぞれ、異なる機能をもたせることができる。より具体的には、上記のような構成にすることにより、接合体がフィルターである場合、第1の部材と第2の部材とにおいて、異なる物質をより好適に分離・除去させることができ、長期間にわたって、フィルターの除去・分離能の低下や、目詰まりの発生を好適に防止することができる。すなわち、フィルターの長寿命化を図ることができる。また、接合体が触媒反応装置である場合、第1の部材と第2の部材とにおいて、異なる触媒反応を進行させることができ、多段階の化学反応を進行させ、目的とする化学物質またはその中間体を合成したり、複数種の化学物質またはその中間体を合成したり、複数種の好ましくない化学物質(例えば、危険物質)を、化学反応(分解反応を含む)により、好ましい化学物質(安全な物質等)に変換すること等ができる。
【0009】
本発明の接合体では、前記接合材は、膜状をなす接合膜であることが好ましい。
これにより、接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止することができる。
本発明の接合体では、前記接合膜の平均厚さは、10nm〜5mmであることが好ましい。
これにより、接合体の寸法精度が低下するのを防止しつつ、第1の部材と第2の部材との接合強度を十分に優れたものとすることができる。また、接合体が、多孔質体で構成された接合膜(接合材)を備えるフィルターである場合、接合膜(接合材)に、物質を分離・除去する機能を好適に持たせることができる。また、接合体が、多孔質体で構成された接合膜(接合材)を備える触媒反応装置である場合、接合膜(接合材)において、触媒反応を好適にさせることができる。
【0010】
本発明の接合方法は、多孔質体で構成された第1の部材および第2の部材を用意し、前記第1の部材および前記第2の部材の少なくとも一方に、シリコーン材料を含有する液状材料を付与し、液状被膜を形成する工程と、
前記液状被膜を乾燥して、前記第1の部材および前記第2の部材の少なくとも一方に、前記接合膜を得る工程と、
前記接合膜にエネルギーを付与することにより、前記接合膜に接着性を発現させ、当該接合膜を介して前記第1の部材と前記第2の部材とが接合された接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、多孔質体で構成された部材を備え、接合強度に優れた接合体を製造することができる製造方法を提供することができる。
【0011】
本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、シラノール基を有することが好ましい。
これにより、液状被膜を乾燥させて接合膜を得る際に、隣接するシリコーン材料が有する水酸基同士が結合することとなり、得られる接合膜の膜強度が優れたものとなる。
本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、シラノール基を有するシリコン原子にフェニル基が結合したものであることが好ましい。
これにより、液状被膜を乾燥させて接合膜を得る際に、シラノール基の反応性がより向上し、隣接するシリコーン材料が有する水酸基同士の結合がより円滑に行われるようになり、得られる接合膜の膜強度が特に優れたものとなる。
【0012】
本発明の接合方法では、前記接合膜を介して前記第1の部材と前記第2の部材とを接触させた後、前記接合膜に前記エネルギーを付与することにより、前記接合膜を得ることが好ましい。
これにより、多孔質体としての接合膜を効率よく形成することができるとともに、製造される多孔質体において、第1の部材と第2の部材との位置ずれが発生してしまうのをより確実に防止することができる。
【0013】
本発明の接合方法では、前記接合膜に前記エネルギーを付与して、前記接合膜の表面付近に接着性を発現させた後、前記接合膜を介して前記第1の部材と前記第2の部材とを接触させることにより、前記接合体を得ることが好ましい。
これにより、例えば、第1の部材、第2の部材が、前記エネルギーが透過、伝導しにくいものであっても、好適に接合膜を活性化させることができ、効率よく接合体を製造することができる。
【0014】
本発明の接合方法では、前記液状材料は、発泡剤を含むものであることが好ましい。
これにより、容易かつ確実に、接合膜を多孔質体として形成することができる。
本発明の接合方法では、前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合膜の表面を効率よく活性化させることができる。また、接合膜中の分子構造を必要以上に切断しないので、接合膜の特性が低下してしまうのを避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明の接合体について説明する。
<接合体>
図1は、本発明の接合体の一例を示す縦断面図である。
図1に示す接合体1は、第1の部材21と、第2の部材22と、これらの間に介在する接合膜(接合材)3とを備えている。
第1の部材21および第2の部材22は、接合膜3を介して互いに接合されるものである。第2の部材、接合膜は、多孔質体で構成されたものであっても、緻密質体で構成されたものであってもよいが、以下の説明では、第1の部材21に加え、第2の部材22および接合膜3も、多孔質体で構成された場合について中心的に説明する。
【0016】
[第1の部材]
第1の部材21は、多孔質体で構成されたものである。
多孔質体としては、例えば、粉末焼結体、有機高分子材料で構成された発泡体、スポンジ等が挙げられる。なお、本発明において、多孔質体とは、上記のようなものに加え、メッシュ、網状体、織物、紙、不織布等を含む概念である。
【0017】
第1の部材21の構成材料は、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリブテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料(有機高分子材料)、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼、インジウム錫酸化物(ITO)、ガリウムヒ素のような金属系材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのようなシリコン系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、MgAl、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイト、活性炭のような炭素系材料、セルロース、ヘミセルロース、リグニン等の天然高分子材料、後に詳述するような触媒として機能する物質またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
【0018】
第1の部材21は、第2の部材22と同じ材質で構成されたものであってもよいが、第2の部材22とは異なる材質で構成されたものであるのが好ましい。これにより、第1の部材21および第2の部材22に、それぞれ、異なる機能をもたせることができる。より具体的には、上記のような構成にすることにより、接合体1がフィルターである場合、第1の部材21と第2の部材22とにおいて、異なる物質をより好適に分離・除去させることができ、長期間にわたって、フィルターの除去・分離能の低下や、目詰まりの発生を好適に防止することができる。すなわち、フィルターの長寿命化を図ることができる。また、接合体1が触媒反応装置である場合、第1の部材21と第2の部材22とにおいて、異なる触媒反応を進行させることができ、多段階の化学反応を進行させ、目的とする化学物質またはその中間体を合成したり、複数種の化学物質またはその中間体を合成したり、複数種の好ましくない化学物質(例えば、危険物質)を、化学反応(分解反応を含む)により、好ましい化学物質(安全な物質等)に変換すること等ができる。
【0019】
第1の部材21は、多孔質体で構成されたものであればよく、独立孔(第1の部材21の内部に独立して存在し、外部に連通していない空孔)を有するものであってもよいが、連続孔(外部に連通する空孔)を有するものであるのが好ましい。これにより、例えば、接合体1をフィルター等に、好適に適用することができる。また、接合体1の軽量化等を図ることができる。
【0020】
第1の部材21の空孔率は、特に限定されないが、第2の部材22の空孔率とは異なるものであるのが好ましい。これにより、第1の部材21および第2の部材22に、それぞれ、異なる機能をもたせることができる。より具体的には、上記のような構成にすることにより、接合体1がフィルターである場合、第1の部材21と第2の部材22とにおいて、異なる物質をより好適に分離・除去させることができ、長期間にわたって、フィルターの除去・分離能の低下や、目詰まりの発生を好適に防止することができる。すなわち、フィルターの長寿命化を図ることができる。以下の説明では、第1の部材21の空孔率が、第2の部材22の空孔率よりも大きい場合について、中心的に説明する。
【0021】
第1の部材21の空孔率の具体的な値は、特に限定されないが、10〜90vol%であるのが好ましく、15〜80vol%であるのが好ましい。
また、第1の部材21における空孔の平均の大きさは、特に限定されないが、第2の部材22における空孔の平均の大きさとは異なるものであるのが好ましい。これにより、第1の部材21および第2の部材22に、それぞれ、異なる機能をもたせることができる。より具体的には、上記のような構成にすることにより、接合体1がフィルターである場合、第1の部材21と第2の部材22とにおいて、異なる物質をより好適に分離・除去させることができ、長期間にわたって、フィルターの除去・分離能の低下や、目詰まりの発生を好適に防止することができる。すなわち、フィルターの長寿命化を図ることができる。
【0022】
[第2の部材]
第2の部材22は、多孔質体で構成されたものである。
第2の部材22の構成材料としては、例えば、第1の部材21の構成材料として例示したものを用いることができる。
第2の部材22は、独立孔(第2の部材22の内部に独立して存在し、外部に連通していない空孔)を有するものであってもよいが、連続孔(外部に連通する空孔)を有するものであるのが好ましい。これにより、例えば、接合体1をフィルター等に、好適に適用することができる。また、接合体1の軽量化等を図ることができる。
第2の部材22の空孔率の具体的な値は、特に限定されないが、5〜70vol%であるのが好ましく、7〜60vol%であるのが好ましい。
【0023】
[接合膜(接合材)]
接合膜(接合材)3は、シリコーン材料を含有するものである。接合膜3を構成するシリコーン材料については、接合体の製造方法(接合方法)の説明において、詳細に述べる。接合膜(接合材)が、後に詳述するようなシリコーン材料を含有するものであることにより、多孔質体で構成された第1の部材21と、第2の部材22(特に、多孔質体で構成された第2の部材22)との接合強度を、優れたものとすることができる。これにより、接合体1は、耐久性、信頼性に優れたものとなる。
【0024】
接合膜3は、多孔質体で構成されたものである。
接合膜3は、独立孔(第2の部材22の内部に独立して存在し、外部に連通していない空孔)を有するものであってもよいが、連続孔(外部に連通する空孔)を有するものであるのが好ましい。これにより、例えば、接合体1をフィルター等に、好適に適用することができる。また、接合体1の軽量化等を図ることができる。
【0025】
接合膜(接合材)3の空孔率は、特に限定されないが、第1の部材21および/または第2の部材22の空孔率とは異なるものであるのが好ましい。これにより、接合膜3に、第1の部材21、第2の部材22とは、異なる機能をもたせることができる。より具体的には、上記のような構成にすることにより、接合体1がフィルターである場合、接合膜3において、第1の部材21、第2の部材22で分離・除去される物質とは異なる物質をより好適に分離・除去させることができ、長期間にわたって、フィルターの除去・分離能の低下や、目詰まりの発生を好適に防止することができる。すなわち、フィルターの長寿命化を図ることができる。
接合膜3の空孔率の具体的な値は、特に限定されないが、7〜85vol%であるのが好ましく、10〜75vol%であるのが好ましい。
【0026】
また、接合膜3における空孔の平均の大きさは、特に限定されないが、第1の部材21における空孔の平均の大きさ、および/または、第2の部材22における空孔の平均の大きさとは異なるものであるのが好ましい。これにより、接合膜3に、第1の部材21、第2の部材22とは、異なる機能をもたせることができる。より具体的には、上記のような構成にすることにより、接合体1がフィルターである場合、接合膜3において、第1の部材21、第2の部材22で分離・除去される物質とは異なる物質をより好適に分離・除去させることができ、長期間にわたって、フィルターの除去・分離能の低下や、目詰まりの発生を好適に防止することができる。すなわち、フィルターの長寿命化を図ることができる。
接合膜3は、触媒としての機能を有する物質を含有するものであるのが好ましい。これにより、例えば、接合体1をフィルター等に、好適に適用することができる。
【0027】
触媒としての機能を有する物質としては、例えば、TiO、ZnO、Nb、WO、SnO、ZrO、SrTiO、KTaO、Ni−KNb17、CdS、ZnS、CdSe、GaP、CdTe、MoSe、WSe、ルテニウムトリスビピリジル等のRu錯体、Co錯体、Rh錯体、ポルフィリン誘導体、アルミナ、シリカゲル、モレキュラーシーブ、セライト、チタノシリケート、Ni、Pd、Pt、Rh、Ir、活性炭、NI、Cu−Cr−Ba−CaO、Cu−Ba−CrO、Cu−CrO、ネラーNi、PtO、TiCl−Zn−Cu、[Pd(PPh3]、PdCl、CuCl、Mn(OCOCH、Co(OCOCH、Pd(OCOCH、OsO、RuO、CuCl、SeO、[HRh{P(C]、[RhCl{P(C]、[RhCl{P(C]、IrCl、(n−C、Ba(OH)、TiCl、Sn(OSOCF、(n−CSnF、CuBr・SMe、P(C、Fe(CO)、Mo(CO)、Cr(CO)、Co(CO)、HPtCl・6HO、[Pt{P(C]、[PtCl(C]、[RhH(CO){P(C]、[RhCl(CO)]CuCl、PdCl、CuCl、Hg(OCOCH、ZnCl、[Co(CO)][Pd(NCCH](BF、プロリン、SnCl・5HO、[Pd{P(C]、BF・O(CHCH、CuI、AlCl、[PdCl{P(C]、FeCl、CoBr、Ni(CHCOCHCOCH、[NiCl{P(C]、PPh、CaCl、LiCl、NiBr、CuBr、Ni(CO)、CuO、AgO、Co(CO)、WCl、[Mo(CO)(COH)]、[Mo(CO)(NH]、[(C)WCl]、AlCl(CHCH)、(CH、(CBF、Al(C、TiCl、MoCl、MoCl−Sn(C、WCl−Sn(C、[Mo(CO)]−CCl、[W(CO)]−CCl、[(CHN]HF、RuCl等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
接合膜3の平均厚さは、特に限定されないが、10nm〜5mmであるのが好ましく、50nm〜2mmであるのが好ましく、100nm〜800μmであるのが好ましい。接合膜3の平均厚さが前記範囲内の値であることにより、接合体1の寸法精度が低下するのを防止しつつ、第1の部材21と第2の部材22との接合強度を十分に優れたものとすることができる。また、接合体1が、多孔質体で構成された接合膜(接合材)3を備えるフィルターである場合、接合膜(接合材)3に、物質を分離・除去する機能を好適に持たせることができる。また、接合体1が、多孔質体で構成された接合膜(接合材)3を備える触媒反応装置である場合、接合膜(接合材)3において、化学反応(触媒反応)を好適に進行させることができる。
次に、接合方法(接合体の製造方法)について説明する。
本発明の接合方法を説明するのに先立って、本発明の接合方法で用いることのできる液滴吐出装置の一例について説明する。
【0029】
<液滴吐出装置>
図2は、本発明の接合方法で用いることのできる液滴吐出装置を示す斜視図、図3は、図2に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
図2に示すように、本工程で用いる液滴吐出装置500は、接合膜3を形成する際に用いる液状材料35を保持するタンク501と、チューブ510と、チューブ510を介してタンク501から液状材料35が供給される吐出走査部502とを備える。吐出走査部502は、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)514を備える液滴吐出手段503と、液滴吐出手段503の位置を制御する第1位置制御装置504(移動手段)と、接合膜3を形成する第1の部材21または第2の部材22(以下、これらを総称して「部材21、22」とも言う。)を保持するステージ506と、ステージ506の位置を制御する第2位置制御装置508(移動手段)と、制御手段512とを備えている。タンク501と、液滴吐出手段503における液滴吐出ヘッド514とは、チューブ510で連結されており、タンク501から液滴吐出ヘッド514に液状材料35が圧縮空気によって供給される。
【0030】
制御手段(制御装置)512は、例えば、演算部やメモリー等を内蔵するマイクロコンピュータやパーソナルコンピュータ等のコンピュータで構成されており、制御手段512には、図示しない操作部からの信号(入力)が、それぞれ、随時入力される。
また、制御手段512は、操作部からの信号等に基づき、予め設定されたプログラムに従って、液滴吐出装置500の各部の作動(駆動)をそれぞれ制御する。
【0031】
第1位置制御装置504は、制御手段512からの信号に応じて、液滴吐出手段503をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置制御装置504は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段503を回転させる機能も有する。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。第2位置制御装置508は、制御手段512からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ506を移動させる。さらに、第2位置制御装置508は、Z軸に平行な軸の回りでステージ506を回転させる機能も有する。
【0032】
ステージ506は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ506は、液状材料35を付与して接合膜3を形成する部材21、22をその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
上述のように、液滴吐出手段503は、第1位置制御装置504によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ506は、第2位置制御装置508によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置504および第2位置制御装置508によって、ステージ506に対する液滴吐出ヘッド514の相対位置が変わる(ステージ506に保持された部材21、22と、液滴吐出手段503とが相対的に移動する)。
【0033】
制御手段512は、液状材料35を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
液状材料35を部材21、22上に供給する際には、液滴吐出ヘッド514と部材21、22とを相対的に走査しつつ、部材21、22上に液状材料35を吐出する。すなわち、第2位置制御装置508の作動により、部材21、22が保持されているステージ506をY軸方向に移動させ、液滴吐出手段503の下を通過させつつ、液滴吐出手段503が備える液滴吐出ヘッド514のノズル518から液状材料35の液滴(インク滴)31を吐出して、部材21、22上の膜形成領域41に付与する(着弾させる)。以下、この動作を「塗布走査(液滴吐出ヘッド514と部材21、22との主走査)」と言うことがある。
そして、この液状材料35を部材21、22上に供給する工程においては、通常は、前記塗布走査(走査)を複数回行うようになっている。なお、前記塗布走査の回数は、1回でもよいことは言うまでもない。
【0034】
本実施形態では、液滴吐出ヘッド514は、図3(a)および(b)に示すように、インクジェットヘッドで構成されている。すなわち、本実施形態で説明する液滴吐出装置は、インクジェット装置である。
液滴吐出ヘッド514は、振動板526と、ノズルプレート528とを備えている。振動板526と、ノズルプレート528との間には、タンク501から、チューブ510および孔531を介して供給される液状材料35が常に充填される液だまり529が位置している。
【0035】
また、振動板526と、ノズルプレート528との間には、複数の隔壁522が位置している。そして、振動板526と、ノズルプレート528と、1対の隔壁522とによって囲まれた部分がキャビティ(インク室)520である。キャビティ520はノズル518に対応して設けられているため、キャビティ520の数とノズル518の数とは同じである。キャビティ520には、1対の隔壁522間に位置する供給口530を介して、液だまり529から液状材料35が供給される。
【0036】
振動板526上には、それぞれのキャビティ520に対応して、振動子524が位置する。振動子524は、駆動素子としてのピエゾ素子(圧電素子)524Cと、ピエゾ素子524Cを挟む1対の電極524A、524Bとを含む。この1対の電極524A、524Bとの間に駆動電圧(信号)を印加する(与える)ことで、ピエゾ素子524Cの振動に追従して振動板526が振動することにより、対応するノズル518から液状材料35が液滴31として吐出される。
【0037】
この場合、前記駆動電圧(例えば、駆動電圧の大きさ等)を調整することにより、ノズル518から吐出される液状材料35の吐出動作1回当りの吐出量(液滴量)を調整することができるようになっている。
なお、ノズル518からZ軸方向に液状材料35が吐出されるように、ノズル518の形状が調整されている。
【0038】
制御手段512は、複数の振動子524のそれぞれに互いに独立に駆動電圧を印加するように構成されていてもよい。つまり、ノズル518から吐出される液状材料35の吐出動作1回当りの吐出量が、制御手段512からの信号、すなわち、駆動電圧に応じてノズル518毎に制御されてもよい。また、制御手段512は、塗布走査の間に吐出動作を行うノズル518と、吐出動作を行わないノズル518とを設定することでもできる。
なお、1つのノズル518と、ノズル518に対応するキャビティ520と、キャビティ520に対応する振動子524とを含んだ部分により吐出部が構成される。この吐出部は、1つの液滴吐出ヘッド514において、ノズル518の数と同じ数だけ存在することとなる。
【0039】
上記のような液滴吐出装置500を用いて、部材21、22上に液状材料を液滴31として供給することにより、部材21、22の接合面(上面)23、24の所望の位置に液状材料を供給することができる。これにより、膜形成領域41の形状に対応して部材21、22上に液状被膜30を、ひいては接合膜3を確実に形成することができる。すなわち、部材21、22に、所定形状にパターニングされた液状被膜30(接合膜3)を確実に形成することができる。
【0040】
なお、本発明では、液滴吐出ヘッド514は、駆動素子として、ピエゾ素子の代わりに静電アクチュエータを用いるものでもよい。また、液滴吐出ヘッド514は、駆動素子として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して液状材料35を吐出するバブルジェット方式(「バブルジェット」は登録商標)の構成であってもよい。
さらに、本実施形態の液滴吐出装置500は、吐出走査部502に隣接して設けられたUVランプ(紫外線照射ランプ)550を備えている。UVランプ550には、制御手段512が接続されており、制御手段512は、操作部からの信号等に基づき、予め設定されたプログラムに従って、UVランプ550の作動(駆動)を制御する。
【0041】
かかるUVランプ550を備えていることから、部材21、22上に形成された接合膜3に紫外線を照射して、その表面付近に接着性を発現させることができる。より具体的には、部材21、22上に接合膜3を形成した後に、第2位置制御装置508の作動によりY軸方向に沿ってステージ506を移動させて、ステージ506上の部材21、22をUVランプ550の下方に位置させる。そして、この位置で、UVランプ550を用いて、部材21、22上に設けられた接合膜3に、紫外線を照射してエネルギーを付与することにより、その表面付近に接着性を発現させることができる。また、接合膜3の形成に用いる液状材料35が発泡剤を含むものである場合、部材21、22上に形成された接合膜3に紫外線を照射して、接合膜3を多孔質体で構成されたものとすることができる。
以下、本発明の接合方法について説明する。
【0042】
<接合方法>
以下に述べる実施形態の接合方法は、多孔質体で構成された第1の部材21および第2の部材22を用意し、第1の部材21および第2の部材22の少なくとも一方に、シリコーン材料を含有する液状材料35を、液滴吐出法を用いて液滴31として供給することにより、所定形状にパターニングされた液状被膜30を形成する工程と、液状被膜30を乾燥して、第1の部材21および/または第2の部材22に、前記所定形状にパターニングされた接合膜3を得る工程と、接合膜3を介して第1の部材21と第2の部材22とを接触させる工程と、接合膜3にエネルギーを付与することにより、接合膜3に接着性を発現させ、この接合膜3を介して第1の部材21と第2の部材22とが接合された接合体1を得る工程とを有するものである。かかる方法によれば、多孔質体で構成された第1の部材21を、接合膜3を介して、第2の部材に、高い寸法精度で強固に接合することができ、信頼性の高い接合体1を提供することができる。また、液滴吐出法を用いて、所定形状にパターニングされた液状被膜30を形成するため、位置選択的に高い寸法精度で強固に接合することができる。さらに、第1の部材21上に液状材料を供給する際に、液滴吐出法を用いて接合面23、24に液状材料を所定形状となるように位置選択的に供給することから、液状材料35に無駄が生じるのを確実に防止することができる。また、液状材料35を、液滴吐出法を用いて部材上に供給するが、液滴吐出法によれば、部材上に微細な形状に液状被膜30を形成し得ることから、特に優れた寸法精度で接合膜3を形成することができる。
【0043】
なお、本明細書中で、「所定形状」とは、接合膜3による接合を必要とする部位に対応した形状のことを言い、以下に述べる実施形態では、後述する接合面23、24の膜形成領域41に対応した形状のことを言う。
上記のように、液状材料35は、第1の部材21および第2の部材22の少なくとも一方に、液滴31として供給されるものであるが、以下の説明では、第1の部材21上に選択的に液状材料35を付与する場合について代表的に説明する。すなわち、以下の説明では、所定形状にパターニングされた接合膜3を、第2の部材22上に形成することなく、第1の部材21上に選択的に形成して、接合膜3を介して第1の部材21と第2の部材22とを接合する方法について代表的に説明する。
以下、本発明の接合方法の第1実施形態を、工程ごとに詳述する。
【0044】
<<第1実施形態>>
図4および図5は、本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図4および図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[1]まず、第1の部材21と第2の部材22とを用意する。なお、図4(a)では、第2の部材22を省略している。
【0045】
また、第1の部材21および第2の部材22は、それぞれ、その表面に、Niめっきのようなめっき処理、クロメート処理のような不働態化処理、または窒化処理等を施したものであってもよい。
また、第1の部材21の熱膨張率と第2の部材22の熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。これらの熱膨張率がほぼ等しければ、第1の部材21と第2の部材22とを接合した際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られる接合体1において、剥離を確実に防止することができる。
【0046】
なお、後に詳述するが、第1の部材21の熱膨張率と第2の部材22の熱膨張率が互いに異なる場合でも、後述する工程において、第1の部材21と第2の部材22とを接合する際の条件を最適化することにより、これらを高い寸法精度で強固に接合することができる。
また、2つの部材21、22は、互いに剛性が異なるのが好ましい。これにより、2つの部材21、22をより強固に接合することができる。
【0047】
また、各部材21、22の形状は、それぞれ、接合膜3を支持する面を有するような形状であればよく、例えば、板状(層状)、塊状(ブロック状)、棒状等とされる。
次に、必要に応じて、第1の部材21の接合面23に形成される接合膜3との密着性を高める表面処理を施す。これにより、接合面23を清浄化および活性化され、接合面23に対して接合膜3が化学的に作用し易くなる。その結果、後述する工程において、接合面23上に接合膜3を形成したとき、接合面23と接合膜3との接合強度を高めることができる。
【0048】
この表面処理としては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。
なお、表面処理を施す第1の部材21が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
【0049】
また、表面処理として、特にプラズマ処理または紫外線照射処理を行うことにより、接合面23を、より清浄化および活性化することができる。その結果、接合面23と接合膜3との接合強度を特に高めることができる。
また、第1の部材21の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第1の部材21の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
【0050】
このような材料で構成された第1の部材21は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合している。したがって、このような酸化膜で覆われた第1の部材21を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、第1の部材21の接合面23と接合膜3との接合強度を高めることができる。なお、この場合、第1の部材21の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜3を形成する膜形成領域41に位置する接合面23付近が上記のような材料で構成されていればよい。
【0051】
一方、第1の部材21と同様、第2の部材22の接合面24(後述する工程において、接合膜3と密着する面)にも、必要に応じて、あらかじめ接合膜3との密着性を高める表面処理を施してもよい。これにより、接合面24を清浄化および活性化する。その結果、後述する工程において、接合面24と接合膜3とを密着させ、これらを接合したとき、接合面24と接合膜3との接合強度を高めることができる。
【0052】
この表面処理としては、特に限定されないが、前述の第1の部材21の接合面23に対する表面処理と同様の処理を用いることができる。
また、第1の部材21の場合と同様に、第2の部材22の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3との密着性が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第2の部材22の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
【0053】
すなわち、このような材料で構成された第2の部材22は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合(露出)している。したがって、このような酸化膜で覆われた第2の部材22を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、第2の部材22の接合面24と接合膜3との接合強度を高めることができる。
なお、この場合、第2の部材22の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜3と接合する領域において、接合面24付近が上記のような材料で構成されていればよい。
【0054】
また、第2の部材22の接合面24に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、第2の部材22の接合面24と接合膜3との接合強度を十分に高くすることができる。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような各種官能基、各種ラジカル、開環分子または、2重結合、3重結合のような不飽和結合を有する脱離性中間体分子、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基や物質、または、これらの基が脱離してなる終端化されていない結合手(未結合手、ダングリングボンド)が挙げられる。
【0055】
このうち、脱離性中間体分子は、開環分子または不飽和結合を有する炭化水素分子であるのが好ましい。このような炭化水素分子は、開環分子および不飽和結合の顕著な反応性に基づき、接合膜3に対して強固に作用する。したがって、このような炭化水素分子を有する接合面24は、接合膜3に対して特に強固に接合可能なものとなる。
また、接合面24が有する官能基は、特に水酸基が好ましい。これにより、接合面24は、接合膜3に対して特に容易かつ強固に接合可能なものとなる。特に接合膜3の表面に水酸基が露出している場合には、水酸基同士間に生じる水素結合に基づいて、接合面24と接合膜3との間を短時間で強固に接合することができる。
【0056】
また、このような基や物質を有するように、接合面24に対して上述したような各種表面処理を適宜選択して行うことにより、接合膜3に対して強固に接合可能な第2の部材22が得られる。
このうち、第2の部材22の接合面24には、水酸基が存在しているのが好ましい。このような接合面24には、水酸基が露出した接合膜3との間に、水素結合に基づく大きな引力が生じる。これにより、最終的に、第1の部材21と第2の部材22とを特に強固に接合することができる。
なお、上記のような表面処理は、必要に応じて行えばよく、例えば、特に高い接合強度を必要としない場合には、省略することができる。
【0057】
[2]次に、シリコーン材料を含有する液状材料35を、前述した液滴吐出装置500を用いた液滴吐出法により、液滴31として第1の部材21の接合面23上に供給する。これにより、図4(a)に示すような接合面23の膜形成領域41に、接合面23の非膜形成領域42に供給することなく、液滴31を選択的に供給することができる。その結果、図4(b)に示すように、第1の部材21上に、膜形成領域41の形状、すなわち所定形状にパターニングされた液状被膜30が形成される。
【0058】
ここで、本実施形態では、接合面23の膜形成領域41に液状材料を選択的に供給する方法として、液滴吐出装置500を用いて液状材料35を液滴31として供給する液滴吐出法が用いられる。
液滴吐出法を用いて、液状材料を位置選択的に供給することにより、部材上にレジスト層を形成して、これをマスクとして用いて膜をパターニングする場合と比較して、接合膜3を形成するまでの時間の短縮および製造コストの削減を図ることができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、液滴吐出法は、液滴吐出ヘッド514としてインクジェットヘッドを備えるインクジェット法が用いられる。インクジェット法によれば、目的とする領域(位置)に、液状材料を液滴31として、優れた位置精度で供給することができる。また、ピエゾ素子524Cの振動数および液状材料の粘度等を適宜設定することにより、液滴31のサイズ(大きさ)を、比較的容易に調整できることから、液滴31のサイズを小さくすれば、たとえ膜形成領域41の形状が微細なものであったとしても、膜形成領域41の形状に対応した液状被膜30を確実に形成することができる。
【0060】
液状材料の粘度(25℃)は、通常、0.5〜200mPa・s程度であるのが好ましく、3〜20mPa・s程度であるのがより好ましい。液状材料の粘度をかかる範囲とすることにより、液滴の吐出をより安定的に行うことができるとともに、微細な形状の膜形成領域41を描画し得る大きさの液滴31を吐出することができる。さらに、この液状材料で構成される液状被膜30を次工程[3]で乾燥させた際に、接合膜3を形成するのに十分な量のシリコーン材料を液状材料中に含有したものとすることができる。
【0061】
また、液状材料の粘度をかかる範囲内とすれば、具体的には、液滴31の量(液状材料の1滴の量)を、平均で、0.1〜40pL程度に、より現実的には1〜30pL程度に設定し得る。これにより、接合面23に供給された際の液滴31の着弾径が小さなものとなることから、微細な形状の接合膜3をも確実に形成することができる。
さらに、接合面23の膜形成領域41に供給する液滴31の供給量を適宜設定することにより、形成される接合膜3の厚さの制御を比較的容易に行うことができる。
【0062】
また、液滴31として吐出される液状材料は、前述のようにシリコーン材料を含有するものであるが、シリコーン材料単独で、液状をなし目的とする粘度範囲である場合、シリコーン材料をそのまま液状材料として用いることができる。また、シリコーン材料単独で、固形状または高粘度の液状をなす場合には、液状材料として、シリコーン材料の溶液または分散液を用いることができる。
【0063】
シリコーン材料を溶解または分散するための溶媒または分散媒としては、例えば、アンモニア、水、過酸化水素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等を用いることができる。
【0064】
シリコーン材料は、液状材料中に含まれ、次工程[3]において、この液状材料を乾燥させることにより形成される接合膜3の主材料として構成するものである。
ここで、「シリコーン材料」とは、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物であり、通常、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる化合物のことを言い、主鎖の一部から突出する分枝状の構造を有するものであってもよく、主鎖が環状をなす環状体であってもよく、主鎖の末端同士が連結しない直鎖状のものであってもよい。
例えば、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物において、オルガノシロキサン単位は、その末端部では下記一般式(1)で表わされる構造単位を有し、連結部では下記一般式(2)で表わされる構造単位を有し、また、分枝部では下記一般式(3)で表わされる構造単位を有している。
【0065】
【化1】

[式中、各Rは、それぞれ独立して、置換または無置換の炭化水素基を表し、各Zは、それぞれ独立して、水酸基または加水分解基を表し、Xはシロキサン残基を表し、aは0または1〜3の整数を表し、bは0または1〜2の整数を表し、cは0または1を表す。]
【0066】
なお、シロキサン残基とは、酸素原子を介して隣接する構造単位が有するケイ素原子に結合しており、シロキサン結合を形成している置換基のことを表す。具体的には、−O−(Si)構造(Siは隣接する構造単位が有するケイ素原子)となっている。
このようなシリコーン材料において、ポリオルガノシロキサン骨格は、分枝状をなすもの、すなわち上記一般式(1)で表わされる構造単位、上記一般式(2)で表わされる構造単位および上記一般式(3)で表わされる構造単位で構成されているのが好ましい。この分枝状をなすポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物(以下、「分枝状化合物」と略すこともある。)は、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる化合物であり、主鎖の途中でオルガノシロキサン単位の繰り返しが分枝するとともに、主鎖の末端同士が連結しないものである。
この分枝状化合物を用いることにより、後の工程において、液状材料中に含まれるこの化合物の分枝鎖同士が互いに絡まり合うようにして接合膜3が形成されることから、得られる接合膜3は特に膜強度に優れたものとなる。
【0067】
なお、上記一般式(1)〜上記一般式(3)中、基R(置換または無置換の炭化水素基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部が、I)フッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子、II)グリシドキシ基のようなエポキシ基III)メタクリル基のような(メタ)アクリロイル基IV)カルボキシル基、スルフォニル基のようなアニオン性基等で置換された基等が挙げられる。
【0068】
加水分解基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基等が挙げられる。
また、シリコーン材料(分枝状化合物)は、その分子量が、1×10〜1×10程度のものであるのが好ましく、1×10〜1×10程度のものであるのがより好ましい。分子量をかかる範囲内に設定することにより、液状材料の粘度を上述したような範囲内に比較的容易に設定することができる。
【0069】
このようなシリコーン材料(分枝状化合物)は、シラノール基を有するものであるのが好ましい。すなわち、上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位において、各基Zは水酸基であるのが好ましい。これにより、次工程[3]において、液状被膜30を乾燥させて接合膜3を得る際に、隣接するシリコーン材料(分枝状化合物)が有する水酸基同士が結合することとなり、得られる接合膜3の膜強度が優れたものとなる。さらに、第1の部材21として、前述したように、その接合面(表面)23から水酸基が露出しているものを用いた場合には、シリコーン材料(分枝状化合物)が備える水酸基と、第1の部材21が備える水酸基とが結合することから、シリコーン材料(分枝状化合物)を物理的な結合ばかりでなく、化学的な結合によっても第1の部材21に結合させることができる。その結果、接合膜3は、第1の部材21の接合面23に対して、強固に結合したものとなる。
【0070】
また、シラノール基が有するシリコン原子に連結している炭化水素基は、フェニル基であるのが好ましい。すなわち、基Zが水酸基である上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rは、フェニル基であるのが好ましい。これにより、シラノール基の反応性がより向上するため、隣接するシリコーン材料(分枝状化合物)が有する水酸基同士の結合がより円滑に行われるようになる。
【0071】
さらに、シラノール基が存在しないシリコン原子に連結している炭化水素基は、メチル基であるのが好ましい。すなわち、基Zが存在しない上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rは、メチル基であるのが好ましい。このように、基Zが存在しない上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rがメチル基である化合物は、比較的入手が容易で、かつ安価であるとともに、後工程[4A]において、接合膜3に接合用エネルギーを付与することにより、メチル基が容易に切断されて、その結果として、接合膜3に確実に接着性を発現させることができるため、シリコーン材料(分枝状化合物)として好適に用いられる。
以上のことを考慮すると、シリコーン材料(分枝状化合物)としては、例えば、下記一般式(4)で表わされる化合物が好適に用いられる。
【0072】
【化2】

[式中、nは、それぞれ独立して、0または1以上の整数を表す。]
【0073】
さらに、上述したシリコーン材料(分枝状化合物)は、比較的柔軟性に富む材料である。そのため、後の工程において、接合膜3を介して第1の部材21に第2の部材22を接合して接合体1を得る際に、例えば、第1の部材21と第2の部材22との各構成材料が互いに異なるものを用いる場合であったとしても、各部材21、22間に生じる熱膨張に伴う応力を確実に緩和することができる。これにより、最終的に得られる接合体1において、剥離が生じるのを確実に防止することができる。
【0074】
また、シリコーン材料(分枝状化合物)は、耐薬品性に優れているため、薬品類等に長期にわたって曝されるような物品に好適に適用することができる。具体的には、例えば、触媒反応装置に接合膜3を適用すれば、触媒反応装置全体としては、目的の化学反応を進行させつつも、接合膜3自体が化学反応により劣化してしまうことは確実に防止される。また、シリコーン材料(分枝状化合物)は、耐熱性にも優れていることから、高温下に曝されるような物品にも好適に適用することができる。
【0075】
また、液状材料35は、上記以外の成分を含むものであってもよい。例えば、液状材料35は、発泡剤を含むものであってもよい。これにより、後の工程で接合膜3を発泡させ、多孔質体で構成された接合膜3を容易かつ確実に得ることができる。特に、連続孔を有する多孔質体で構成された接合膜3を容易かつ確実に得ることができる。また、液状材料35が発泡剤を含むものであることにより、接合膜(接合材)3を構成する多孔質体の条件(例えば、空孔率、空孔径等)を容易かつ確実に調製することができる。
【0076】
発泡剤としては、例えば、アゾ化合物、ニトロソ化合物、ヒドラジン誘導体、アゾ化合物、重炭酸塩等が挙げられる。発泡剤のより具体的な例としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)、バリウムアゾジカルボキシレート(Ba/AC)、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
また、液状材料35は、発泡剤の発泡性を向上させる発泡助剤を含むものであってもよい。これにより、後の工程で、より穏やかな条件で、多孔質体で構成された接合膜3を得ることができる。また、後の工程で、より短時間で、多孔質体で構成された接合膜3を得ることができるため、接合体1の生産性を特に優れたものとすることができる。発泡助剤としては、例えば、サリチル酸等の有機酸系化合物、尿素等の尿素系化合物等を用いることができる。
また、液状材料35は、発泡剤と反応する成分(反応成分)を含むものであってもよい。例えば、液状材料35が、発泡剤として炭酸水素ナトリウム等を含む場合、反応成分として、有機酸、無機酸等の酸性物質を含むものであってもよい。
【0078】
また、このような反応成分、発泡剤のうち少なくとも一方は、液状材料35中において、カプセル化された状態(核部としての反応成分または発泡剤の表面に、被膜が設けられた構造)で含まれていてもよい。これにより、液状材料35の保存時においては、これらが反応してしまうことが確実に防止され、かつ、後のエネルギーを付与する工程で確実に反応するものとすることができる。このような場合、カプセルの被膜材料(シェル材料)としては、後のエネルギーを付与する工程で加えられるエネルギー(エネルギー線、熱、圧力等)で、溶融、分解するものや、圧潰可能、圧砕可能なものを好適に用いることができる。
【0079】
[3]次に、第1の部材21上に供給された液状材料、すなわち、接合面23の膜形成領域41に選択的に形成された液状被膜30を乾燥する。これにより、膜形成領域41の形状(所定形状)に対応してパターニングされた接合膜3が形成される。
液状被膜30を乾燥させる際の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
また、乾燥させる時間は、0.5〜48時間程度であるのが好ましく、15〜30時間程度であるのがより好ましい。
【0080】
かかる条件で液状被膜30を乾燥させることにより、後工程[5]において、エネルギーを付与することにより接着性が好適に発現する接合膜3を確実に形成することができる。また、シリコーン材料として前記工程[2]で説明したようなシラノール基を有するものを用いた場合には、シリコーン材料が有するシラノール基同士を、さらには、シリコーン材料が有するシラノール基と第1の部材21が有する水酸基とを、確実に結合させることができるため、形成される接合膜3を膜強度に優れ、かつ第1の部材21に対して強固に結合したものとすることができる。
【0081】
さらに、乾燥させる際の雰囲気の圧力は、大気圧下であってもよいが、減圧下であるのが好ましい。具体的には、減圧の程度は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。これにより、接合膜3の膜密度が緻密化して、接合膜3をより優れた膜強度を有するものとすることができる。
以上のように、接合膜3を形成する際の条件を適宜設定することにより、形成される接合膜3の膜強度等を所望のものとすることができる。
【0082】
[4]次に、接合面23の膜形成領域41に形成された接合膜3の表面32に対してエネルギーを付与する(図4(d)参照)。
接合膜3にエネルギーを付与すると、この接合膜3では、表面32付近の分子結合の一部が切断し、表面32が活性化されることに起因して、表面32付近に第2の部材22に対する接着性が発現する。
【0083】
このような状態の第1の部材21は、第2の部材22と、化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
ここで、本明細書中において、表面32が「活性化された」状態とは、上述のように接合膜3の表面32の分子結合の一部、具体的には、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基が切断されて、接合膜3中に終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態の他、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、接合膜3が「活性化された」状態と言うこととする。
【0084】
接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法を用いて付与するものであってもよいが、例えば、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、接合膜3をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、接合膜3をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。これにより、接合膜3の表面を効率よく活性化させることができる。また、接合膜3中の分子構造を必要以上に切断しないので、接合膜3の特性が低下してしまうのを避けることができる。
【0085】
上記の方法の中でも、接合膜3を加熱する方法を用いることにより、接合膜3(液状材料35)が発泡剤を含むものである場合において、接合膜3に接着性を発現させるとともに、効率よく接合膜3中に気泡を発生させることができる。これにより、多孔質体で構成された接合膜3を確実に得ることができる。
接合膜3を加熱する場合、本工程での処理温度は、80〜190℃であるのが好ましく、100〜170℃であるのがより好ましい。これにより、接合膜3の接着性を効果的に発現させることができるとともに、より確実に接合膜3を多孔質体で構成されたものとすることができる。また、第1の部材21の変質・劣化を確実に防止することができる。
【0086】
また、上記の方法の中でも、接合膜3にエネルギー線を照射する方法を用いた場合、接合膜3に対して、接着性を発現させるためのエネルギーを比較的簡単に効率よく付与することができるとともに、接合膜3の発泡も促進することができる。
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザ光のような光、X線、γ線のような電磁波、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。
【0087】
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい。かかる範囲内の紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜3中の骨格をなす分子結合が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、接合膜3から表面32付近の分子結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜3の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜3に接着性を確実に発現させることができる。
【0088】
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、分子結合の切断を効率よく行うことができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、エネルギー線として紫外線を用いる場合には、前述した液滴吐出装置500がUVランプ550を備えていることから、前記工程[2]から本工程[4]までを液滴吐出装置500を用いて行うことができる。
【0089】
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、126〜200nm程度とされる。
また、UVランプ550を用いる場合、その出力は、接合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプ550と接合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
【0090】
また、紫外線を照射する時間は、接合膜3の表面32付近の分子結合を切断し得る程度の時間、すなわち、接合膜3の表面付近に存在する分子結合を選択的に切断し得る程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、1秒〜30分程度であるのが好ましく、1秒〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
【0091】
一方、レーザ光としては、例えば、エキシマレーザのようなパルス発振レーザ(パルスレーザ)、炭酸ガスレーザ、半導体レーザのような連続発振レーザ等が挙げられる。中でも、パルスレーザが好ましく用いられる。パルスレーザでは、接合膜3のレーザ光が照射された部分に経時的に熱が蓄積され難いので、蓄積された熱による接合膜3の変質・劣化を確実に防止することができる。すなわち、パルスレーザによれば、接合膜3の内部にまで蓄積された熱の影響がおよぶのを、防止することができる。
【0092】
また、パルスレーザのパルス幅は、熱の影響を考慮した場合、できるだけ短い方が好ましい。具体的には、パルス幅が1ps(ピコ秒)以下であるのが好ましく、500fs(フェムト秒)以下であるのがより好ましい。パルス幅を前記範囲内にすれば、レーザ光照射に伴って接合膜3に生じる熱の影響を、的確に抑制することができる。なお、パルス幅が前記範囲内程度に小さいパルスレーザは、「フェムト秒レーザ」と呼ばれる。
【0093】
また、レーザ光の波長は、特に限定されないが、例えば、200〜1200nm程度であるのが好ましく、400〜1000nm程度であるのがより好ましい。
また、レーザ光のピーク出力は、パルスレーザの場合、パルス幅によって異なるが、0.1〜10W程度であるのが好ましく、1〜5W程度であるのがより好ましい。
さらに、パルスレーザの繰り返し周波数は、0.1〜100kHz程度であるのが好ましく、1〜10kHz程度であるのがより好ましい。パルスレーザの周波数を前記範囲内に設定することにより、表面32付近の分子結合を選択的に切断することができる。
【0094】
なお、このようなレーザ光の各種条件は、レーザ光を照射された部分の温度が、好ましくは常温(室温)〜600℃程度、より好ましくは200〜600℃程度、さらに好ましくは300〜400℃程度になるように適宜調整されるのが好ましい。これにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇するのを防止して、表面32付近の分子結合を選択的に切断することができる。
また、接合膜3に照射するレーザ光は、その焦点を、接合膜3の表面32に合わせた状態で、この表面32に沿って走査されるようにするのが好ましい。これにより、レーザ光の照射によって発生した熱が、表面32付近に局所的に蓄積されることとなる。その結果、接合膜3の表面32に存在する分子結合を選択的に脱離させることができる。
【0095】
また、接合膜3に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、中でも、大気雰囲気(特に、露点が低い雰囲気下)中で行うのが好ましい。これにより、表面32付近にオゾンガスが生じて、表面32の活性化がより円滑に行われることとなる。さらに、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
【0096】
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜3に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による第1の部材21の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜3で切断される分子結合の量を調整することが可能となる。このように切断される分子結合の量を調整することにより、第1の部材21と第2の部材22との間の接合強度を容易に制御することができる。
【0097】
すなわち、表面32付近で切断される分子結合の量を多くすることにより、接合膜3の表面32付近に、より多くの活性手が生じるため、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。一方、表面32付近で切断される分子結合の量を少なくすることにより、接合膜3の表面32付近に生じる活性手を少なくし、接合膜3に発現する接着性を抑えることができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
【0098】
また、上記の方法を組み合わせて行ってもよい。例えば、本工程は、接合膜3を加熱しつつ、接合膜3にエネルギー線(特に、上述したような紫外線)を照射する方法を用いてもよい。これにより、例えば、接合膜3の接着性をより効果的に発現させることができる。また、より短時間で接合膜3を多孔質体で構成されたものとすることができるため、接合体1の生産性が向上する。また、接合膜3にエネルギー線を照射しないで加熱する方法、接合膜3を加熱しないでエネルギー線を照射する方法に比べて、加熱温度を低くしたり、エネルギー線の照射強度を弱いものとすることができる。このため、例えば、第1の部材21の変質・劣化をより確実に防止することができる。
【0099】
[5]次に、接合膜3と第2の部材22とが密着するように、第1の部材21と第2の部材22とを貼り合わせる(図5(e)参照)。これにより、前記工程[4]において、接合膜3の表面32に第2の部材22に対する接着性が発現していることから、接合膜3と第2の部材22の接合面24とが化学的に結合する。その結果、第1の部材21と第2の部材22とが、膜形成領域41において選択的に形成された接合膜3により部分的に接合され、図5(f)に示すような接合体1が得られる。
【0100】
上記のような接合方法によれば、従来の接合方法では、十分な接合強度を確保するのが困難であった多孔質体で構成された部材(第1の部材)が強固に接合された接合体を得ることができる。また、このようにして得られる接合体1では、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、2つの部材21、22が接合されている。このため、接合体1は短時間で形成することができ、かつ、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
【0101】
また、このような接合方法によれば、高温(例えば、700℃以上)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された第1の部材21および第2の部材22をも、接合に供することができる。
また、接合膜3を介して第1の部材21と第2の部材22とを接合しているため、部材21、22の構成材料に制約がないという利点もある。
以上のことから、本発明によれば、第1の部材21および第2の部材22の各構成材料の選択の幅をそれぞれ広げることができる。
また、第1の部材21の熱膨張率と第2の部材22の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
【0102】
具体的には、第1の部材21と第2の部材22との熱膨張率の差にもよるが、第1の部材21および第2の部材22の温度が25〜50℃程度である状態下で、第1の部材21と第2の部材22とを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、第1の部材21と第2の部材22との熱膨張率の差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、接合体1における反りや剥離等の発生を確実に抑制または防止することができる。
【0103】
また、この場合、具体的な第1の部材21と第2の部材22との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。
また、本実施形態によれば、第1の部材21と第2の部材22とを接合する際に、これらが対向する面全体を接合するのではなく、接合膜3が選択的に形成された膜形成領域41において接合する。この接合の際、接合膜3を形成する膜形成領域41の大きさを適宜設定することのみで、接合される領域を簡単に選択することができる。これにより、例えば、第1の部材21と第2の部材22とが接合する接合膜3の面積や形状を制御して、接合体1の接合強度を容易に調整することができる。
【0104】
また、第1の部材21と第2の部材22とが接合する接合膜3の面積や形状を適宜設定することにより、接合膜3に生じる応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、第1の部材21と第2の部材22との間で熱膨張率差が大きい場合でも、部材21、22を確実に接合することができる。
さらに、本実施形態にかかる接合方法によれば、非膜形成領域42では、図5(f)に示すように、第1の部材21と第2の部材22との間に、接合膜3の厚さに相当する距離(高さ)の空間3Cが形成される。膜形成領域41の形状を適宜調整することにより、空間3Cを所望のパターンを有するものとして形成することができる。また、空間3Cを有するものとすることにより、例えば、接合膜3の空孔率が比較的低いものであっても、接合体1についての流体の透過性(第1の部材21、接合膜3、第2の部材22の重ね合わせ方向についての流体の透過性)を確実に確保することができる。その結果、接合体1がフィルターや触媒反応装置として用いられる場合において、その機能を十分に発揮させることができる。
【0105】
ここで、本工程において、第1の部材21と第2の部材22とを接合するメカニズムについて説明する。
例えば、第2の部材22の接合面24に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、第1の部材21に形成された接合膜3と、第2の部材22の接合面24とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接合膜3の表面32に存在する水酸基と、第2の部材22の接合面24に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、第1の部材21と第2の部材22とが接合されると推察される。
【0106】
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、第1の部材21と第2の部材22との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、第1の部材21と第2の部材22とがより強固に接合されると推察される。
また、第1の部材21の接合膜3の表面や内部、および、第2の部材22の接合面24や内部に、それぞれ終端化されていない結合手すなわち未結合手(ダングリングボンド)が存在している場合、第1の部材21と第2の部材22とを貼り合わせた時、これらの未結合手同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成されることとなる。これにより、接合膜3と第2の部材22とが特に強固に接合される。
【0107】
なお、前記工程[4]で活性化された接合膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[4]の終了後、できるだけ早く本工程[5]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[4]の終了後、60分以内に本工程[5]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、第1の部材21と第2の部材22とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
【0108】
換言すれば、活性化させる前の接合膜3は、シリコーン材料を乾燥させて得られた接合膜であるため、化学的に比較的安定であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜3は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような接合膜3を備えた第1の部材21を多量に製造または購入して保存しておき、本工程の貼り合わせを行う直前に、必要な個数のみに前記工程[4]に記載したエネルギーの付与を行うようにすれば、接合体1の製造効率の観点から有効である。
以上のようにして、図5(f)に示す接合体(本発明の接合体)1を得ることができる。
【0109】
このようにして得られた接合体1は、第1の部材21と第2の部材22との間の接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する接合体1は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。また、本発明の接合方法によれば、第1の部材21と第2の部材22とが上記のような大きな接合強度で接合された接合体1を効率よく作製することができる。
なお、接合体1を得る際、または、接合体1を得た後に、この接合体1に対して、必要に応じ、以下の3つの工程([6A]、[6B]および[6C])のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
【0110】
[6A] 図5(g)に示すように、得られた接合体1を、第1の部材21と第2の部材22とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、第1の部材21の表面および第2の部材22の表面に、それぞれ接合膜3の表面がより近接し、接合体1における接合強度をより高めることができる。
また、接合体1を加圧することにより、接合体1中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、接合体1における接合強度をさらに高めることができる。
【0111】
なお、この圧力は、第1の部材21および第2の部材22の各構成材料や各厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、第1の部材21および第2の部材22の各構成材料や各厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、接合体1の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、第1の部材21および第2の部材22の各構成材料によっては、各部材21、22に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、接合体1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
【0112】
[6B] 図5(g)に示すように、得られた接合体1を加熱する。
これにより、接合体1における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体1を加熱する際の温度は、室温より高く、接合体1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、接合体1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。また、このような処理を行うことにより、多孔質体で構成された接合膜3の空孔率、厚さ等を容易かつ確実に調整することができる。
【0113】
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[6A]、[6B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図5(g)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、接合体1の接合強度を特に高めることができる。
【0114】
[6C] 得られた接合体1に紫外線を照射する。
これにより、接合膜3と第2の部材22との間に形成される化学結合を増加させ、接合体1の接合強度を特に高めることができる。
このとき照射される紫外線の条件は、前記工程[4]に示した紫外線の条件と同等にすればよい。
【0115】
また、本工程[6C]を行う場合、第1の部材21および第2の部材22のうち、いずれか一方が透光性を有していることが必要である。そして、透光性を有する部材側から、紫外線を照射することにより、接合膜3に対して確実に紫外線を照射することができる。
以上のような工程を行うことにより、接合体1における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
【0116】
<<第2実施形態>>
次に、本発明の接合方法の第2実施形態について説明する。
図6、図7は、本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図6および図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、接合方法の第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態にかかる接合方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0117】
本実施形態にかかる接合方法では、接合膜3を介して第1の部材21と第2の部材22とを重ね合わせた状態で、接合膜3に対して接着性を発現させるエネルギーを付与する。すなわち、接合膜3に対して接着性を発現させるエネルギーを付与する工程と、接合膜3を介して第1の部材21と第2の部材22とを重ね合わせる(密着させる)工程との順番を入れ換えた以外は、前記第1実施形態と同様である(図6(d)、図7(e)参照)。
【0118】
[1’]まず、前記工程[1]と同様の第1の部材21と第2の部材22とを用意する(図6(a)参照)。
[2’]次に、前記工程[2]と同様に、液滴31として第1の部材21の接合面23上に供給し、液状被膜30を形成する(図6(b)参照)。
[3’]次に、前記工程[3]と同様に、液状被膜30を乾燥し、接合膜3とする(図6(c)参照)。
【0119】
[4’]次に、接合膜3と第2の部材22とが密着するように、第1の部材21と第2の部材22とを接触させる(重ね合わせる)(図6(d)参照)。この状態においては、接合膜3に接着性が発現していない。このため、第1の部材21と第2の部材22との間で、位置ずれが生じても、容易に位置合わせをし直すことができる。したがって、接合体1の製造の歩留まりを向上させることができる。
【0120】
[5’]次に、第1の部材21と第2の部材22とが重ね合わされた状態で、接合膜3にエネルギーを付与することにより、接合体1が得られる(図7(e)、(f)参照)。このように、第1の部材21と第2の部材22とが重ね合わされた状態で接合膜3にエネルギーを付与することにより、エネルギーの付与に伴い発生する気泡を、空孔の形成に効率よく利用することができ、多孔質体で構成された接合膜(接合材)3を効率よく形成することができる。特に、エネルギーを付与される接合膜3が、発泡剤を含まないもの、または、その含有率が比較的少ない場合であっても、接合膜3の活性化に伴い発生するガスにより、好適に接合膜3を多孔質体で構成されたものとすることができる。また、空孔率の比較的高い接合膜(接合材)3であっても容易に形成することができる。また、発泡に伴う圧力により、第1の部材と接合膜との密着性、第1の部材と接合膜との密着性を特に優れたものとすることができ、接合体1の耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0121】
なお、図示の構成では、第2の部材22側からエネルギーを付与するものとなっているが、エネルギーの付与方向は逆でもよい。例えば、エネルギーの付与を、エネルギー線の照射により行う場合、第1の部材21側から照射してもよい。
なお、以上のようにして得られた接合体1に対して、必要に応じ、前記第1実施形態で説明した工程[6A]、[6B]および[6C]のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
【0122】
例えば、図7(g)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱することにより、接合体1の各部材21、22同士がより近接する。これにより、各接合膜3の界面における水酸基の脱水縮合や未結合手同士の再結合が促進される。その結果、接合膜3の一体化がより進行し、最終的には、ほぼ完全に一体化される。
以上、本発明の接合体および接合方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0123】
例えば、本発明の接合方法では、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程を追加してもよい。
また、前述した実施形態では、シリコーン材料を含有する液状材料を第1の部材上に付与する場合について代表的に説明したが、例えば、第1の部材の代わりに、第2の部材上に液状材料を付与してもよい。また、第1の部材および第2の部材の両方に、液状材料を付与してもよい。これにより、例えば、比較的厚みの大きい接合膜(接合材)であっても、容易に形成することができる。
【0124】
また、前述した実施形態では、液滴吐出法により、部材(第1の部材および/または第2の部材)上に液状材料を供給するものとして説明したが、部材上への液状材料の供給方法は、これに限定されないことは言うまでもない。
また、前述した実施形態では、液状被膜30を乾燥した後に、エネルギーを付与するものとして説明したが、液状被膜30を乾燥する前に(溶媒・分散媒を含む接合膜に対して)、エネルギーを付与してもよい。これにより、エネルギーの付与に伴い発生する気泡を、空孔の形成に効率よく利用することができ、多孔質体で構成された接合膜(接合材)3を効率よく形成することができる。また、空孔率の比較的高い接合膜(接合材)3であっても容易に形成することができる。
【0125】
また、本発明の接合体は、フィルター(分離装置、浄化装置)、触媒反応装置以外のものに適用可能であることは言うまでもない。
また、上述した実施形態では、第2の部材が多孔質体で構成された場合について中心的に説明したが、第2の部材は緻密質体であってもよい。このように、多孔質体で構成された(第1の部材)と、緻密質体で構成された部材(第2の部材)とが接合された接合体に適用した場合であっても、本発明によれば、接合強度を十分に優れたものとすることができる。
【0126】
また、上述した実施形態では、膜状の接合材(接合膜)が、第1の部材と第2の部材とを接合する形態について中心的に説明したが、接合材は、膜状をなすものでなくてもよい。例えば、図8に示すように、本発明の接合体1は、第1の部材21、第2の部材22のうち少なくとも一方が、複数個の粒子状の部材であり、これらが接合材3中に分散した構成(海島構造)をなすものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の接合体の一例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の接合方法で用いることのできる液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図3】図2に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【図4】本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図5】本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図6】本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図7】本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図8】本発明の接合体の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0128】
1……接合体 21……第1の部材 22……第2の部材 23、24……接合面 3……接合膜(接合材) 30……液状被膜 31……液滴 32……表面 35……液状材料 3C……空間 41……膜形成領域 42……非膜形成領域 500…液滴吐出装置 501…タンク 502…吐出走査部 503…液滴吐出手段 504…第1位置制御装置 506…ステージ 508…第2位置制御装置 510…チューブ 512…制御手段 514…液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド) 518…ノズル 520…キャビティ 522…隔壁 524…振動子 524A、524B…電極 524C…ピエゾ素子 526…振動板 528…ノズルプレート 529…液だまり 550…UVランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質体で構成された第1の部材と、
第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材とを接合する接合材とを備え、
前記接合材は、シリコーン材料を含有し、エネルギーの付与により接着性が発現し、この接着性により、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合するものであることを特徴とする接合体。
【請求項2】
前記接合材は、連続孔を有する多孔質体である請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記接合材は、触媒としての機能を有する物質を含有するものである請求項2に記載の接合体。
【請求項4】
前記第2の部材は、多孔質体で構成されるものである請求項1ないし3のいずれかに記載の接合体。
【請求項5】
前記第1の部材および前記第2の部材は、互いに空孔率が異なるものである請求項4に記載の接合体。
【請求項6】
前記第2の部材は、緻密質体で構成されるものである請求項1ないし3のいずれかに記載の接合体。
【請求項7】
前記第1の部材および前記第2の部材は、互いに異なる材質で構成されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の接合体。
【請求項8】
前記接合材は、膜状をなす接合膜である請求項1ないし7のいずれかに記載の接合体。
【請求項9】
前記接合膜の平均厚さは、10nm〜5mmである請求項8に記載の接合体。
【請求項10】
多孔質体で構成された第1の部材および第2の部材を用意し、前記第1の部材および前記第2の部材の少なくとも一方に、シリコーン材料を含有する液状材料を付与し、液状被膜を形成する工程と、
前記液状被膜を乾燥して、前記第1の部材および前記第2の部材の少なくとも一方に、前記接合膜を得る工程と、
前記接合膜にエネルギーを付与することにより、前記接合膜に接着性を発現させ、当該接合膜を介して前記第1の部材と前記第2の部材とが接合された接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合方法。
【請求項11】
前記シリコーン材料は、シラノール基を有する請求項10に記載の接合方法。
【請求項12】
前記シリコーン材料は、シラノール基を有するシリコン原子にフェニル基が結合したものである請求項10または11に記載の接合方法。
【請求項13】
前記接合膜を介して前記第1の部材と前記第2の部材とを接触させた後、前記接合膜に前記エネルギーを付与することにより、前記接合膜を得る請求項10ないし12のいずれかに記載の接合方法。
【請求項14】
前記接合膜に前記エネルギーを付与して、前記接合膜の表面付近に接着性を発現させた後、前記接合膜を介して前記第1の部材と前記第2の部材とを接触させることにより、前記接合体を得る請求項10ないし12のいずれかに記載の接合方法。
【請求項15】
前記液状材料は、発泡剤を含むものである請求項10ないし14のいずれかに記載の接合方法。
【請求項16】
前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項10ないし15のいずれかに記載の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−292020(P2009−292020A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147243(P2008−147243)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】