説明

接合方法および接合体

【課題】高い成膜精度でパターニングされた接合膜を用いて2つの基材が備える端子同士を電気的に接合することができる接合方法、かかる接合方法で接合された接合膜を備える接合体を提供すること。
【解決手段】本発明の接合方法は、転写用基材、第1の端子221を備える第1の基材22、第2の端子231を備える第2の基材23を用意する工程と、転写用基材に、シリコーン材料と導電性粒子38とを含有する液状材料を塗布・乾燥して所定形状にパターニングされた接合膜3を得る工程と、接合膜3を介して転写用基材と第1の基材22とを接合させた後これら同士を離間することにより、接合膜3を第1の基材22に転写する工程と、第1の基材22と第2の基材23とを接合することにより、これら同士が接合された仮接合体1’を得る工程と、仮接合体1’を加圧して導電性粒子38を介して第1の端子221と第2の端子231とが電気的に接続された接合体1を得る工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法および接合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上に所定形状にパターニングされた膜を形成する方法として、膜の構成材料を含有する液状材料を、所定形状となるように塗布法を用いて基板上に塗布することによりパターニングされた液状被膜を形成し、この液状被膜を乾燥することにより、所定形状にパターニングされた膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような液状材料を用いてパターニングされた膜を形成する形成方法は、2つの基板が備える導電性の端子同士を電気的に接合するために、熱または光硬化性樹脂と導電性粒子とを含有する接合膜を、基板が備える端子上に所定形状に形成する場合にも適用し得る。
しかしながら、このような端子上に液状材料を塗布する方法では、基板に対する液状材料の濡れ性によっては、所定形状に塗布された液状被膜が基板上で濡れ広がり、その結果、形成される膜のパターニング精度が低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−289226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高い成膜精度でパターニングされた接合膜を用いて2つの基材が備える端子同士を電気的に接合することができる接合方法、かかる接合方法で接合された接合膜を備える接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合方法は、シリコーン材料と導電性粒子とを含有する液状材料に対する撥液性を少なくとも表面付近に有する転写用基材と、接合膜を介して互いに電気的に接合する、第1の端子を備える第1の基材、および、第2の端子を備える第2の基材とを用意する第1の工程と、
前記転写用基材の前記撥液性が付与されている面側に、前記液状材料を塗布して、所定形状にパターニングされた液状被膜を形成した後、乾燥することにより、前記所定形状にパターニングされた接合膜を得る第2の工程と、
前記接合膜にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に接着性を発現させ、当該接合膜を介して前記転写用基材と前記第1の基材とを接合させた後、前記転写用基材と前記第1の基材とを離間することにより、前記接合膜を前記転写用基材から前記第1の基材に転写する第3の工程と、
転写された前記接合膜にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に接着性を発現させ、当該接合膜を介して前記第1の基材と前記第2の基材とを接合することにより、これら同士が接合された仮接合体を得る第4の工程と、
前記仮接合体を前記接合膜の厚さ方向に加圧することにより、当該接合膜を介した前記第1の基材と前記第2の基材との接合を維持するとともに、前記接合膜中の前記導電性粒子を介して前記第1の端子と前記第2の端子とを電気的に接続することにより接合体を得る第5の工程とを有することを特徴とする。
これにより、高い成膜精度でパターニングされた接合膜を介して、第1の基材が備える第1の端子と第2の基材が備える第2の端子とを電気的に接合することができる。
【0007】
本発明の接合方法では、前記第1の端子と前記第2の端子とは、前記第1の基材と前記第2の基材とを、これら端子同士が対向するように重ね合わせたとき、互いに重なる位置に設けられていることが好ましい。
かかる構成の第1の基材と第2の基材とを、本発明の接合方法を用いて接合することにより、接合膜を介して第1の端子と第2の端子とを電気的に接続することができる。
【0008】
本発明の接合方法では、前記所定形状は、第3の工程において、前記接合膜を前記第1の基材に転写したとき、前記第1の端子の形状に対応した形状をなしていることが好ましい。
これにより、第1の端子に対応して設けられた接合膜を用いて、第1の端子と第2の端子とを電気的に接続することができる。
【0009】
本発明の接合方法では、前記第2の工程において、前記第1の基材の前記接合膜を介して前記第2の基材と接合する側の面のほぼ全面に、前記導電性粒子を含有しない接合膜を形成することが好ましい。
これにより、接合膜同士間での接合をより強固なものとすることができる。
本発明の接合方法では、前記第2の工程において、前記第2の基材の前記接合膜を介して前記第1の基材と接合する側の面のほぼ全面に、前記導電性粒子を含有しない接合膜を形成することが好ましい。
これにより、接合膜同士間での接合をより強固なものとすることができる。
【0010】
本発明の接合方法では、前記第2の工程において、前記液状皮膜は、前記液状材料を液滴吐出法を用いて液滴として供給することにより形成されることが好ましい。
液滴吐出法によれば、より高い成膜精度で接合膜を形成することができる。
本発明の接合方法では、前記液滴吐出法は、圧電素子による振動を利用して前記液状材料を、インクジェットヘッドが備えるノズル孔から液滴として吐出するインクジェット法であることが好ましい。
インクジェット法によれば、目的とする領域(位置)に、液状材料を液滴として、優れた位置精度で供給することができる。また、圧電素子の振動数および液状材料の粘度等を適宜設定することにより、液滴のサイズ(大きさ)を、比較的容易に調整できることから、液滴のサイズを小さくすれば、たとえ所定形状が微細なものであったとしても、この形状に対応した液状被膜を確実に形成することができる。
【0011】
本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、その主骨格がポリジメチルシロキサンで構成され、この主骨格が分枝状をなしていることが好ましい。
これにより、シリコーン材料の分枝鎖同士が互いに絡まり合うようにして接合膜が形成されることから、得られる接合膜は特に膜強度に優れたものとなる。
本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、前記ポリジメチルシロキサンが有するメチル基の少なくとも1つがフェニル基で置換されていることが好ましい。
これにより、接合膜をより膜強度に優れたものとすることができる。
【0012】
本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、シラノール基を複数個有することが好ましい。
これにより、シリコーン材料が有する水酸基とポリエステル樹脂が有する水酸基とを確実に結合させることができ、シリコーン材料とポリエステル樹脂とが脱水縮合反応することにより得られるポリエステル変性シリコーン材料を確実に合成することができる。
さらに、液状被膜を乾燥させて接合膜を得る際に、隣接するシリコーン材料が有するシラノール基に含まれる水酸基同士が結合することとなり、得られる接合膜の膜強度が優れたものとなる。
【0013】
本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、ポリエステル樹脂と脱水縮合反応させることにより得られたポリエステル変性シリコーン材料であることが好ましい。
これにより、接合膜をより膜強度に優れたものとすることができる。
本発明の接合方法では、ポリエステル樹脂は、飽和多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応により得られるものであることが好ましい。
これにより、基材粒子の構成材料や導電膜の構成材料を適宜選択することにより、導電性粒子の形状、大きさ(平均粒径等)、物性(導電性、密度等)等の調整が容易となる。
【0014】
本発明の接合方法では、前記導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電膜とを有するものであることが好ましい。
これにより、導電性粒子の平均粒径が小さ過ぎることに起因して、液状材料中において導電性粒子が凝集してしまうのを防止することができる。また、導電性粒子の平均粒径が大き過ぎて、圧縮しなくても液状被膜中で導電性粒子同士や導電性粒子と各基材とが接触する確率が高くなるのを防止することができる。
【0015】
本発明の接合方法では、前記導電性粒子の平均粒径は、0.3〜100μmであることが好ましい。
これにより、導電性粒子の平均粒径が小さ過ぎて、液状材料中において導電性粒子の凝集が生じることを防止することができる。また、導電性粒子の平均粒径が大き過ぎて、圧縮しなくても接合膜中で、導電性粒子同士や、導電性粒子と、第1の端子または第2の端子とが接触する確率が高くなるのを防止することができる。
【0016】
本発明の接合方法では、前記接合膜の平均厚さは、0.5〜500μmであることが好ましい。
これにより、接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、第1の基材と第2の基材とをより強固に接合することができる。
本発明の接合方法では、前記第3の工程および第4の工程において、前記接合膜に対する前記エネルギーの付与は、前記接合膜にプラズマを接触させることにより行われることが好ましい。
これにより、接合膜を、極めて短時間(例えば、数秒程度)で活性化させることが可能であり、結果として、接合体を短時間で製造することができる。
【0017】
本発明の接合方法では、前記プラズマの接触を、大気圧下で行うことが好ましい。
大気圧下で行われるプラズマの接触、すなわち、大気圧プラズマ処理によれば、接合膜の周囲が減圧状態とならないので、プラズマの作用により、例えば、接合膜を構成するポリエステル変性シリコーン材料が含んでいるポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基を切断、除去して、接合膜の表面付近に接着性を発現させる際に、この切断が不要に進行するのを防止することができる。
【0018】
本発明の接合方法では、前記プラズマの接触は、互いに対向する電極間に電圧を印加した状態で、これらの間にガスを導入することにより、プラズマ化された前記ガスを前記接合膜に供給することによりなされることが好ましい。
これにより、容易かつ確実に、接合膜にプラズマを接触させ、接合膜の表面付近に接着性を確実に発現させることができる。
【0019】
本発明の接合方法では、前記第1端子および前記第2の端子には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されていることが好ましい。
これにより、接合膜を形成するために、各端子の表面を特に最適化することができる。
本発明の接合体は、前記第1の基材と前記第2の基材とが、本発明の接合方法により形成された接合膜を介して接合されているとともに、前記第1の端子と第2の端子とが前記導電性粒子を介して電気的に接続されてなることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い接合体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】転写用基材上に液状材料を塗布する際に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【図3】本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図4】本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図5】本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図6】接合膜にプラズマを接触させる際に用いる大気圧プラズマ装置を示す概略図である。
【図7】本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図8】本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図9】本発明の接合体が適用された透過型液晶表示装置を示す上面図である。
【図10】図9に示す液晶表示装置が備える液晶パネルの分解斜視図である。
【図11】図9中A−A線断面図である。
【図12】図9中B−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の接合方法および接合体を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明の接合方法および接合体を説明するのに先立って、本発明の接合方法で液状材料を供給する際に用いられる液滴吐出装置の一例について説明する。
<液滴吐出装置>
図1は、転写用基材上に液状材料を塗布する際に用いる液滴吐出装置を示す斜視図、図2は、図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【0022】
図1に示すように、本工程で用いる液滴吐出装置500は、後述する接合膜3を形成する際に用いる液状材料35を保持するタンク501と、チューブ510と、チューブ510を介してタンク501から液状材料35が供給される吐出走査部502とを備える。吐出走査部502は、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)514を備える液滴吐出手段503と、液滴吐出手段503の位置を制御する第1位置制御装置504(移動手段)と、後述する接合膜3を形成する転写用基材21を保持するステージ506と、ステージ506の位置を制御する第2位置制御装置508(移動手段)と、制御手段512とを備えている。タンク501と、液滴吐出手段503における液滴吐出ヘッド514とは、チューブ510で連結されており、タンク501から液滴吐出ヘッド514に液状材料35が圧縮空気によって供給される。
【0023】
制御手段(制御装置)512は、例えば、演算部やメモリー等を内蔵するマイクロコンピュータやパーソナルコンピュータ等のコンピュータで構成されており、制御手段512には、図示しない操作部からの信号(入力)が、それぞれ、随時入力される。
また、制御手段512は、操作部からの信号等に基づき、予め設定されたプログラムに従って、液滴吐出装置500の各部の作動(駆動)をそれぞれ制御する。
【0024】
第1位置制御装置504は、制御手段512からの信号に応じて、液滴吐出手段503をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置制御装置504は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段503を回転させる機能も有する。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。第2位置制御装置508は、制御手段512からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ506を移動させる。さらに、第2位置制御装置508は、Z軸に平行な軸の回りでステージ506を回転させる機能も有する。
【0025】
ステージ506は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ506は、液状材料35を付与して接合膜3を形成する転写用基材21をその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
上述のように、液滴吐出手段503は、第1位置制御装置504によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ506は、第2位置制御装置508によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置504および第2位置制御装置508によって、ステージ506に対する液滴吐出ヘッド514の相対位置が変わる(ステージ506に保持された転写用基材21と、液液滴吐出手段503とが相対的に移動する)。
【0026】
制御手段512は、液状材料35を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
液状材料35を転写用基材21上に供給する際には、液滴吐出ヘッド514と転写用基材21とを相対的に走査しつつ、転写用基材21上に液状材料35を吐出する。すなわち、第2位置制御装置508の作動により、転写用基材21が保持されているステージ506をY軸方向に移動させ、液滴吐出手段503の下を通過させつつ、液滴吐出手段503が備える液滴吐出ヘッド514のノズル518から液状材料35の液滴(インク滴)31を吐出して、転写用基材21上の膜形成領域41に付与する(着弾させる)。以下、この動作を「塗布走査(液滴吐出ヘッド514と転写用基材21との主走査)」と言うことがある。
そして、この液状材料35を転写用基材21上に供給する工程においては、通常は、前記塗布走査(走査)を複数回行うようになっている。なお、前記塗布走査の回数は、1回でもよいことは言うまでもない。
【0027】
本実施形態では、液滴吐出ヘッド514は、図2(a)および(b)に示すように、インクジェットヘッドで構成されている。すなわち、本実施形態で説明する液滴吐出装置は、インクジェット装置である。
液滴吐出ヘッド514は、振動板526と、ノズルプレート528とを備えている。振動板526と、ノズルプレート528との間には、タンク501から、チューブ510および孔531を介して供給される液状材料35が常に充填される液だまり529が位置している。
【0028】
また、振動板526と、ノズルプレート528との間には、複数の隔壁522が位置している。そして、振動板526と、ノズルプレート528と、1対の隔壁522とによって囲まれた部分がキャビティ(インク室)520である。キャビティ520はノズル518に対応して設けられているため、キャビティ520の数とノズル518の数とは同じである。キャビティ520には、1対の隔壁522間に位置する供給口530を介して、液だまり529から液状材料35が供給される。
【0029】
振動板526上には、それぞれのキャビティ520に対応して、振動子524が位置する。振動子524は、駆動素子としてのピエゾ素子(圧電素子)524Cと、ピエゾ素子524Cを挟む1対の電極524A、524Bとを含む。この1対の電極524A、524Bとの間に駆動電圧(信号)を印加する(与える)ことで、ピエゾ素子524Cの振動に追従して振動板526が振動することにより、対応するノズル518から液状材料35が液滴31として吐出される。
【0030】
この場合、前記駆動電圧(例えば、駆動電圧の大きさ等)を調整することにより、ノズル518から吐出される液状材料35の吐出動作1回当りの吐出量(液滴量)を調整することができるようになっている。
なお、ノズル518からZ軸方向に液状材料35が吐出されるように、ノズル518の形状が調整されている。
【0031】
制御手段512は、複数の振動子524のそれぞれに互いに独立に駆動電圧を印加するように構成されていてもよい。つまり、ノズル518から吐出される液状材料35の吐出動作1回当りの吐出量が、制御手段512からの信号、すなわち、駆動電圧に応じてノズル518毎に制御されてもよい。また、制御手段512は、塗布走査の間に吐出動作を行うノズル518と、吐出動作を行わないノズル518とを設定することでもできる。
【0032】
なお、1つのノズル518と、ノズル518に対応するキャビティ520と、キャビティ520に対応する振動子524とを含んだ部分により吐出部が構成される。この吐出部は、1つの液滴吐出ヘッド514において、ノズル518の数と同じ数だけ存在することとなる。
上記のような液滴吐出装置500を用いて、転写用基材21上に液状材料35を液滴31として供給することにより、転写用基材21の接合面(上面)210の所望の位置に液状材料35を供給することができる。これにより、膜形成領域41の形状に対応して転写用基材21上に液状被膜30を、ひいては接合膜3を確実に形成することができる。すなわち、転写用基材21に、所定形状にパターニングされた液状被膜30(接合膜3)を確実に形成することができる。
【0033】
なお、液滴吐出ヘッド514は、駆動素子として、上述したピエゾ素子の代わりに静電アクチュエータを用いるものでもよい。また、液滴吐出ヘッド514は、駆動素子として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して液状材料35を吐出するバブルジェット方式(「バブルジェット」は登録商標)の構成であってもよい。
【0034】
本発明の接合方法において、以上のような液滴吐出装置を用いて、所定形状にパターニングされた接合膜を転写用基材21上に形成することができ、この転写用基材21上に形成された接合膜3を、第1の基材22上に、このものが備える第1の端子221に対応するように転写した後、この接合膜3で第1の基材22と第2の基材23とを接合することにより、これら基材22、23が備える第1の端子221と第2の端子231とを電気的に接続することができる。
【0035】
以下、本発明の接合方法について説明する。
<接合方法>
本発明の接合方法は、シリコーン材料と導電性粒子38とを含有する液状材料35に対する撥液性を少なくとも表面付近に有する転写用基材21と、接合膜3を介して互いに電気的に接合する、第1の端子221を備える第1の基材22、および、第2の端子231を備える第2の基材23とを用意する第1の工程と、転写用基材21の前記撥液性が付与されている面210側に、液状材料35を塗布して、所定形状にパターニングされた液状被膜30を形成した後、乾燥することにより、前記所定形状にパターニングされた接合膜3を得る第2の工程と、接合膜3にエネルギーを付与することにより、接合膜3の表面付近に接着性を発現させ、接合膜3を介して転写用基材21と第1の基材22とを接合させた後、転写用基材21と第1の基材22とを離間することにより、接合膜3を転写用基材21から第1の基材22に転写する第3の工程と、転写された接合膜3にエネルギーを付与することにより、接合膜3の表面付近に接着性を発現させ、この接合膜3を介して第1の基材22と第2の基材23とを接合することにより、これら同士が接合された仮接合体1’を得る第4の工程と、仮接合体1’を接合膜3の厚さ方向に加圧することにより、接合膜3を介した第1の基材22と第2の基材23との接合を維持するとともに、接合膜3中の導電性粒子38を介して第1の端子221と第2の端子231とを電気的に接続することにより接合体1を得る第5の工程とを有するものである。
【0036】
かかる方法によれば、転写用基材21の目的とする領域に対して高い成膜精度で前記所定形状にパターニングされた、シリコーン材料を原材料とする接合膜3を形成することができ、この接合膜3を第1の基材22に転写することができるため、この接合膜3の表面付近に発現した接着性により、2つの基材22、23同士を強固に接合することができる。
【0037】
また、各基材22、23が備える第1の端子221および第2の端子231に対応して接合膜3が形成され、この接合膜3に含まれる導電性粒子38を介して、これら端子221、231同士が電気的に接続される。そのため、各基板22、23に、それぞれ、複数個の端子221、231が設けられている場合には、隣接する端子221、231同士間で短絡が生じるのを確実に防止することができる。
【0038】
以下、この本発明の接合方法の第1実施形態を、工程ごとに詳述する。
<<第1実施形態>>
図3〜図5は、本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)、図6は、接合膜にプラズマを接触させる際に用いる大気圧プラズマ装置を示す概略図である。なお、以下の説明では、図3〜図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0039】
本実施形態の接合方法は、転写用基材21上に、所定形状にパターニングされて形成した接合膜3を、第1の基材22が備える第1の端子221に対応するように第1の基材22上に転写した後、第1の基材22と第3の基材23とを接合膜3を介して接合するとともに、第1の基材22が備える第1の端子221と第2の基材23が備える第2の端子231とを接合膜3(導電性粒子38)を介して電気的に接続する接合方法である。
【0040】
[1]まず、表面付近に撥液性を有する転写用基材21と、接合膜3を介して互いに電気的に接合する第1の端子を備える第1の基材22、および、第2の端子を備える第2の基材23とを用意する(第1の工程)。
転写用基材21は、表面付近に撥液性を有するものであれば、如何なる構成のものであってもよく、例えば、図3(a)に示すように、母材212の上面に、撥液性を有する撥液膜211が設けられたものが挙げられる。
【0041】
また、撥液膜211は、フッ素系材料で構成される膜や、フッ素原子を含有するカップリング剤で構成される単分子膜等が挙げられる。
フッ素系材料のうち、フッ素系有機材料の具体例としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、パーフルオロエチレン−プロペン共重合体(FEP)およびエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。一方、フッ素系無機材料の具体例としては、例えば、フッ化チタン酸カリウム、ケイフッ化カリウム、フッ化ジルコン酸カリウムおよびケイフッ酸等が挙げられる。
【0042】
また、フッ素原子を含有するカップリング剤としては、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0043】
母材212の構成材料としては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリブテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼、インジウム錫酸化物(ITO)、ガリウムヒ素のような金属系材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのようなシリコン系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、MgAl、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイトのような炭素系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
【0044】
また、第1の基材22は、第2の基材23が備える第2の端子231に対応するように、第1の端子221が形成されていればいかなる構成のものであってもよいが、例えば、母材に所定パターンの配線が形成されこの配線の端部に第1の端子221が設けられており、この第1の端子221が第1の基材22の一方の面側から露出しているものが挙げられる。
【0045】
さらに、第2の基材23は、第1の基材22が備える第1の端子221に対応するように、第2の端子231が形成されていればいかなる構成のものであってもよいが、例えば、母材に所定パターンの配線が形成されこの配線の端部に第2の端子231が設けられており、この第2の端子231が第2の基材23の一方の面側から露出しているものが挙げられる。
【0046】
なお、第1の基材22および第2の基材の母材としては、それぞれ、前述した転写用基材21が備える母材212で挙げた構成材料のうち絶縁性の材料で構成されているものが挙げられる。
さらに、第1の基材22の母材の構成材料と第2の基材23の母材の構成材料とは、それぞれ同じでも、異なっていてもよい。
【0047】
また、第1の基材22の母材の熱膨張率と第2の基材23の母材の熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。これらの熱膨張率がほぼ等しければ、第1の基材22と第2の基材23とを接合した際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られる接合体1において、剥離を確実に防止することができる。
なお、後に詳述するが、第1の基材22の母材の熱膨張率と第2の基材23の母材の熱膨張率が互いに異なる場合でも、後述する工程において、第1の基材22と第2の基材23とを接合する際の条件を最適化することにより、これらを高い寸法精度で強固に接合することができる。
【0048】
また、2つの基材22、23の母材は、互いに剛性が異なるのが好ましい。これにより、2つの基材22、23をより強固に接合することができる。
さらに、各基材22、23の母材の形状は、それぞれ、接合膜3を支持する面を有するような形状であればよく、例えば、板状(層状)、塊状(ブロック状)、棒状等とされる。
【0049】
なお、本実施形態では、図3〜5に示すように、各基材22、23の母材がそれぞれ板状をなしている。これにより、各基材22、23の母材は撓み易くなり、2つの基材22、23を重ね合わせたときに、互いの形状に沿って十分に変形し得るものとなる。このため、2つの基材22、23を重ね合わせたときの密着性が高くなり、最終的に得られる接合体1における接合強度が高くなる。
【0050】
また、各基材22、23の母材が撓むことによって、接合界面に生じる応力を、ある程度緩和する作用が期待できる。
この場合、各基材22、23の母材の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜10mm程度であるのが好ましく、0.1〜3mm程度であるのがより好ましい
第1の端子221と第2の端子231とは、後述するように、それぞれ、第1の基材22と第2の基材とを重ね合わせて接合膜3を介して接合した際に、これら同士(本実施形態では、2つずつ設けられた端子221、231同士)が互いに対応するように、すなわち、互いに重なり合うように、各基材22、23の一方の面から突出して設けられている。
【0051】
また、配線および端子221、231の構成材料としては、それぞれ、導電性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、金、銀、モリブデン、タンタルまたはこれらを含む合金等の金属材料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾールまたはこれらの誘導体等の電子導電性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルブチラール、ポリビニルカルバゾール、酢酸ビニル等のマトリックス樹脂中に、イオン性物質を分散させたイオン導電性高分子材料、インジウム錫酸化物(ITO)、フッ素ドープした錫酸化物(FTO)、錫酸化物(SnO)、インジウム酸化物(IO)等の導電性酸化物材料のような各種導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、第1の端子221の構成材料と第2の端子231の構成材料とは、それぞれ同じでも、異なっていてもよい。
【0052】
次に、必要に応じて、第1の端子221および第2の端子231の表面に接合膜3との密着性を高める表面処理を施す。これにより、第1の端子221および第2の端子231の表面が清浄化および活性化され、第1の端子221および第2の端子231に対して接合膜3が化学的に作用し易くなる。その結果、後述する工程において、第1の端子221および第2端子231に対して接合膜3を接合したとき、第1の端子221および第2端子231と接合膜3との接合強度を高めることができる。
【0053】
この表面処理としては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。特に、表面処理として、プラズマ処理または紫外線照射処理を行うことにより、第1の端子221および第2の端子231を、より清浄化および活性化することができる。その結果、第1の端子221および第2の端子231と接合膜3との接合強度を特に高めることができる。
なお、上記のような表面処理は、必要に応じて行えばよく、特に高い接合強度を必要としない場合には、省略することができる。
【0054】
[2]次に、転写用基材21の撥液膜211が形成されている面側に、シリコーン材料と導電性粒子38とを含有する液状材料35を塗布して、所定形状にパターニングされた液状被膜30を形成した後、乾燥することにより、前記所定形状にパターニングされた接合膜3を得る(第2の工程)。
以下、本工程について詳述する。
【0055】
[2−1]まず、シリコーン材料と導電性粒子38とを含有する液状材料35を、例えば、前述した液滴吐出装置500による液滴吐出法を用いて液滴31として、転写用基材21の撥液膜211が形成されている側の面である接合面210上に供給する。
これにより、図3(a)に示すような接合面210の膜形成領域41に、接合面210の非膜形成領域42に供給することなく、液滴31を選択的に供給することができる。その結果、図3(b)に示すように、転写用基材21上に、膜形成領域41の形状、すなわち所定形状にパターニングされた液状被膜30が形成される。
【0056】
なお、本明細書中で、「所定形状」とは、接合膜3による接合を必要とする部位に対応した形状のこと、すなわち、次工程[3]において、接合膜3を第1の基材23に転写したとき、接合膜3が第1の端子の形状に対応した形状をなしていることを言い、本実施形態では、転写用基材21の膜形成領域41に対応した形状のことを言う。
ここで、本実施形態では、接合面220の膜形成領域41に液状材料を選択的に塗布(供給)する方法として、液滴吐出装置500を用いて液状材料35を液滴31として供給する液滴吐出法が用いられる。
【0057】
液滴吐出法を用いて、液状材料を位置選択的に供給することにより、液状材料に無駄が生じるのを確実に防止することができる。また、例えば、基板上にレジスト層を形成して、これをマスクとして用いて膜をパターニングする場合と比較して、接合膜3を形成するまでの工程数の削減、時間の短縮および製造コストの削減を図ることができる。
さらに、本実施形態では、液滴吐出法は、液滴吐出ヘッド514としてインクジェットヘッドを備えるインクジェット法が用いられる。インクジェット法によれば、目的とする領域(位置)に、液状材料を液滴31として、優れた位置精度で供給することができる。また、ピエゾ素子524Cの振動数および液状材料の粘度等を適宜設定することにより、液滴31のサイズ(大きさ)を、比較的容易に調整できることから、液滴31のサイズを小さくすれば、たとえ膜形成領域41の形状が微細なものであったとしても、膜形成領域41の形状に対応した液状被膜30を確実に形成することができる。
【0058】
液状材料の粘度(25℃)は、通常、0.5〜200mPa・s程度であるのが好ましく、3〜20mPa・s程度であるのがより好ましい。液状材料の粘度をかかる範囲とすることにより、液滴の吐出をより安定的に行うことができるとともに、微細な形状の膜形成領域41を描画し得る大きさの液滴31を吐出することができる。さらに、この液状材料で構成される液状被膜30を次工程[2−2]で乾燥させた際に、接合膜3を形成するのに十分な量のシリコーン材料と導電性粒子38とを液状材料35中に含有したものとすることができる。
【0059】
また、液状材料35の粘度をかかる範囲内とすれば、具体的には、液滴31の量(液状材料の1滴の量)を、平均で、0.1〜40pL程度に、より現実的には1〜30pL程度に設定し得る。これにより、接合面220に供給された際の液滴31の着弾径が小さなものとなることから、微細な形状の接合膜3をも確実に形成することができる。
さらに、接合面220の膜形成領域41に供給する液滴31の供給量を適宜設定することにより、形成される接合膜3の厚さの制御を比較的容易に行うことができる。
【0060】
また、本発明では、液状材料35が液滴31として塗布(供給)される接合面210には撥液性が付与されている。これにより、接合面210上に塗布された液滴31は、接合面210上に供給された際に、接合面210上での濡れ広がりが的確に抑制または防止された状態で供給される。そのため、液状被膜30は、優れたパターニング精度で、膜形成領域41の形状を維持した状態で接合面210上に形成されることとなる。
【0061】
液状被膜30の接合面210に対する濡れ性は、例えば、液状被膜30の接合面210に対する接触角で表すことができ、その接触角は、好ましくは80〜110°程度、より好ましく85〜100°程度とされる。かかる関係を満足するように液状材料35の種類および撥液膜211の種類を適宜選択することにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0062】
また、液滴31として吐出される液状材料35は、前述のようにシリコーン材料と導電性粒子38とを含有するものであるが、シリコーン材料と導電性粒子38との混合物単独で、液状をなし目的とする粘度範囲である場合、この混合物をそのまま液状材料35として用いることができる。また、シリコーン材料単独で、固形状または高粘度の液状をなす場合には、液状材料35として、シリコーン材料の溶液または分散液に導電性粒子38を分散させたものを用いることができる。
【0063】
シリコーン材料を溶解または分散するための溶媒または分散媒としては、例えば、アンモニア、水、過酸化水素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等を用いることができる。
【0064】
シリコーン材料は、液状材料35中に含まれ、次工程[2−2]において、この液状材料を乾燥させることにより形成される接合膜3の主材料として導電性粒子38とともに含まれるものである。接合膜3に、このシリコンーン材料が含まれることにより、次工程[3]および後工程[4]においてエネルギーを付与した際に、接合膜3は、その表面で接着性を発揮するものとなる。
【0065】
ここで、「シリコーン材料」とは、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物であり、通常、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、その主骨格が少なくとも1つのシラノール基を備える化合物のことを言い、主鎖の途中から枝分かれする分枝状の構造を有するものであってもよく、主鎖が環状をなす環状体であってもよく、主鎖の末端同士が連結しない直鎖状のものであってもよい。
例えば、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物において、オルガノシロキサン単位は、その末端部では下記一般式(1)で表わされる構造単位を有し、連結部では下記一般式(2)で表わされる構造単位を有し、また、分枝部では下記一般式(3)で表わされる構造単位を有している。
【0066】
【化1】

[式中、各Rは、それぞれ独立して、置換または無置換の炭化水素基を表し、各Zは、それぞれ独立して、水酸基または加水分解基を表し、Xはシロキサン残基を表し、aは1〜3の整数を表し、bは0または1〜2の整数を表し、cは0または1を表す。]
【0067】
なお、シロキサン残基とは、酸素原子を介して隣接する構造単位が有するケイ素原子に結合しており、シロキサン結合を形成している置換基のことを表す。具体的には、−O−(Si)構造(Siは隣接する構造単位が有するケイ素原子)となっている。
このようなシリコーン材料において、ポリオルガノシロキサン骨格は、分枝状をなすもの、すなわち上記一般式(1)で表わされる構造単位、上記一般式(2)で表わされる構造単位および上記一般式(3)で表わされる構造単位で構成されているのが好ましい。この分枝状をなすポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物(以下、「分枝状化合物」と略すこともある。)は、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる化合物であり、主鎖の途中でオルガノシロキサン単位の繰り返しが分枝するとともに、主鎖の末端同士が連結しないものである。
【0068】
この分枝状化合物を用いることにより、次工程[2−2]において、液状材料35中に含まれるこの化合物の分枝鎖同士が互いに絡まり合うようにして接合膜3が形成されることから、得られる接合膜3は特に膜強度に優れたものとなる。
なお、上記一般式(1)〜上記一般式(3)中、基R(置換または無置換の炭化水素基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部が、I)フッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子、II)グリシドキシ基のようなエポキシ基III)メタクリル基のような(メタ)アクリロイル基、IV)カルボキシル基、スルフォニル基のようなアニオン性基等で置換された基等が挙げられる。
【0069】
基Zが加水分解基である場合、この加水分解基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基等が挙げられる。
また、分枝状化合物は、その分子量が、1×10〜1×10程度のものであるのが好ましく、1×10〜1×10程度のものであるのがより好ましい。分子量をかかる範囲内に設定することにより、液状材料35の粘度を上述したような範囲内に比較的容易に設定することができる。
【0070】
このような分枝状化合物は、その化合物中において、シラノール基(水酸基)を複数有するものであるのが好ましい。すなわち、上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位において、基Zを複数有しており、これらの基Zが水酸基であるのが好ましい。これにより、分枝状化合物が有する水酸基とポリエステル樹脂が有する水酸基とを確実に結合させることができ、後述する、分枝状化合物とポリエステル樹脂とが脱水縮合反応することにより得られるポリエステル変性シリコーン材料を確実に合成することができる。さらに、次工程[2−2]において、液状被膜30を乾燥させて接合膜3を得る際に、シリコーン材料すなわち分枝状化合物中に残存しているシラノール基に含まれる水酸基同士が結合することとなり、得られる接合膜3の膜強度が優れたものとなる。
【0071】
また、シラノール基が有するシリコン原子に連結している炭化水素基は、フェニル基であるのが好ましい。すなわち、基Zが水酸基である上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rは、フェニル基であるのが好ましい。これにより、シラノール基の反応性がより向上するため、隣接する分枝状化合物が有する水酸基同士の結合がより円滑に行われるようになる。また、分枝状化合物中のメチル基の少なくとも1つをフェニル基に置換して、得られる接合膜3中に、フェニル基が含まれる構成とすることにより、接合膜3をより膜強度に優れたものとし得るという利点も得られる。
【0072】
さらに、シラノール基が存在しないシリコン原子に連結している炭化水素基は、メチル基であるのが好ましい。すなわち、基Zが存在しない上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rは、メチル基であるのが好ましい。このように、基Zが存在しない上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rがメチル基である化合物は、比較的入手が容易で、かつ安価であるとともに、後工程
[3]および後工程[4]において、接合膜3にエネルギーを付与することにより、メチル基が容易に切断されて、その結果として、接合膜3に確実に接着性を発現させることができるため、分枝状化合物(シリコーン材料)として好適に用いられる。
以上のことを考慮すると、分枝状化合物としては、例えば、下記一般式(4)で表わされる化合物が好適に用いられる。
【0073】
【化2】

[式中、nは、それぞれ独立して、0または1以上の整数を表す。]
【0074】
さらに、上述した分枝状化合物は、比較的柔軟性に富む材料である。そのため、後工程
[5]において、接合膜3を介して第1の基材22と第2の基材23とを接合して接合体1を得る際に、例えば、第1の基材22と第2の基材23の各構成材料が互いに異なるものを用いる場合であったとしても、各基材22、23間に生じる熱膨張に伴う応力を確実に緩和することができる。これにより、最終的に得られる接合体1において、剥離が生じるのを確実に防止することができる。
さらに、上記のようなシリコーン材料は、ポリエステル変性シリコーン材料であるのが好ましい。
【0075】
ここで、本明細書中において、「ポリエステル変性シリコーン材料」とは、シリコーン材料と、ポリエステル樹脂とを脱水縮合反応させることにより得られたものである。
また、「ポリエステル樹脂」とは、飽和多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応により得られるものを言い、1分子中に少なくとも2つの水酸基を備えるものが好適に用いられる。
【0076】
このようなポリエステル樹脂を、上述したシリコーン材料と縮合反応させると、ポリエステル樹脂が有する水酸基とシリコーン材料が有するシラノール基(水酸基)とが脱水縮合反応し、これにより、シリコーン材料にポリエステル樹脂が連結されたポリエステル変性シリコーン材料が得られる。
飽和多塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸およびアジピン酸等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、飽和多塩基酸と多価アルコールとをエステル化反応させる際の、それぞれの含有量は、飽和多塩基酸が有するカルボキシル基よりも多価アルコールが有する水酸基よりも多くなるように設定する。これにより、合成されるポリエステル樹脂は、その1分子中において、少なくとも2つの水酸基を備えるものとなる。
【0078】
このようなポリエステル樹脂は、その分子中に、フェニレン基を有しているのが好ましい。かかる構成のポリエステル樹脂を含有するポリエステル変性シリコーン材料を用いて接合膜3を形成すると、形成される接合膜3は、ポリエステル樹脂中にフェニレン基が含まれることに起因して、特に優れた膜強度を発揮するものとなる。
【0079】
以上のことを考慮すると、ポリエステル樹脂としては、例えば、下記一般式(5)で表わされる化合物が好適に用いられる。
【0080】
【化3】

[式中、nは、0または1以上の整数を表す。]
【0081】
上記のようなポリエステル樹脂をポリエステル変性シリコーン材料が備えているものであるとすると、ポリエステル変性シリコーン材料は、通常、螺旋構造をなしているポリオルガノシロキサン骨格から、ポリエステル樹脂が露出するような状態で存在していることとなる。そのため、次工程[2−2]において、液状被膜30を乾燥させて接合膜3を得る際に、隣接するポリエステル変性シリコーン材料が備えるポリエステル樹脂同士が互いに接触する機会が増大することとなる。その結果、ポリエステル変性シリコーン材料中において、ポリエステル樹脂同士が絡まり合ったり、これらが備える水酸基同士が脱水縮合して化学的に結合したりするため、得られる接合膜3の膜強度を確実に向上させることができる。
【0082】
また、後工程[4]において、接合膜3を介して第1の基材22と第2の基材23とを接合した際に、第1の基材22が備える第1の端子221と接合膜3との界面および第2の基材23が備える第2の端子231と接合膜3との界面において、ポリエステル樹脂が備えるケトン基と、各端子221、231が備える水酸基との間で水素結合が生じることから、かかる結合によっても、接合膜3は、第1の端子221および第2の端子231に対して、強固に接合されたものとなる。
【0083】
導電性粒子38は、液状材料35中に含まれ、次工程[2−2]において、この液状材料を乾燥させることにより形成される接合膜3の主材料としてシリコーン材料とともに含まれるものである。接合膜3に、この導電性粒子38が含まれることにより、後工程[5]において第1の基材22と第2の基材23とを接合膜3の厚さ方向に加圧した際に、接合膜3中に含まれる導電性粒子38を介して、第1の端子221と第2の端子231とは、互いに電気的に接続されたものとなる。
【0084】
この導電性粒子38は、少なくとも表面付近が導電性材料により構成されたものである。具体的には、この導電性粒子38としては、例えば、I:その全体が導電性材料によって構成されたものや、II:導電性を有さない基材粒子と、この基材粒子の表面を被覆するように設けられた導電膜とにより構成されたものが挙げられる。このうち、導電性粒子38を後者の構成とすることにより、導電性粒子38の形状、大きさ(平均粒径等)、物性(導電性、密度等)等の調整が容易となることから、好ましく用いられる。
【0085】
基材粒子の構成材料としては、特に限定されないが、各種金属材料、各種セラミックス材料、各種樹脂材料等が挙げられる。このうち、特に、樹脂材料を用いるのが好ましい。樹脂材料は一般にシリコーン材料の比重に近いため、導電性粒子38は、液状材料35中において沈降したり浮上したりし難くなるため、この液状材料35で、均一に分散された状態で存在することとなる。したがって、後工程[5]において、第1の基材22と第2の基材23とを接合膜3の厚さ方向に加圧した際に、接合膜3中に含まれる導電性粒子38を介して、第1の端子221と第2の端子231とを、確実に電気的に接続されたものとすることができる。
【0086】
また、樹脂材料が一般的に柔軟性に富む材料であるため、かかる材料で構成された基材粒子、ひいては、この基材粒子を備える導電性粒子38は、圧縮力を付与することにより、容易に扁平状に変形するものとなる。これにより、後工程[5]において、第1の基材22と第2の基材23とを接合膜3の厚さ方向に加圧した際に、第1の端子221および第2の端子231に対する導電性粒子38の接触面積を大きくすることができる。その結果、得られる接合体1における、接合膜3を介した第1の端子221と第2の端子231との間における導電性の向上を図ることができる。
【0087】
さらに、導電性粒子38が柔軟性を有することにより、仮に、導電性粒子38の粒径が不均一であったとしても、粒径の大きな導電性粒子38が変形することによって、接合膜3の厚さ方向に対する粒径のバラツキを補完することができる。また、第1の端子221の表面および第2の端子231の表面に凹凸がある場合でも、この凸部に位置する導電性粒子38が変形することによって、各端子221、231と導電性粒子38とを確実に接触させることができる。
【0088】
また、導電性粒子38の導電膜の構成材料としては、前述した第1の端子221および第2の端子231の構成材料で挙げたのと同様の導電性材料を用いることができるが、特に、Ni、Cu、またはAuを主材料とする導電性材料が好ましく用いられる。これらの導電性材料は、導電性に優れているため、導電性の高い導電性粒子38が得られ、端子221、231間の導電性を高めることができる。
【0089】
なお、導電性粒子38の具体的な形態としては、Ni粒子や、Auめっき処理が施されたNi粒子、Auめっき処理が施されたCu粒子、Auめっき処理が施された樹脂製粒子等が挙げられる。
また、導電性粒子38の粒子形状は、特に限定されず、例えば、球状、扁平状、針状、不定形状等のいずれでもよい。
【0090】
導電性粒子38の平均粒子径は、特に限定されないが、0.3〜100μm程度であるのが好ましく、1〜50μm程度であるのがより好ましい。導電性粒子38の平均粒径が前記下限値より小さいと、液状材料35中において導電性粒子38が凝集し易くなり、導電性粒子38を均一に分散させるのが困難となるおそれがある。一方、導電性粒子38の平均粒径が前記上限値を超えると、第1の基材22と第2の基材23とを接合膜3の厚さ方向に加圧しなくても接合膜3中で各導電性粒子38同士や、導電性粒子38と端子221、231とが接触する機会が多くなり、接合膜3に意図しない導電性が発現するおそれがある。
【0091】
[2−2]次いで、転写用基材21上に供給された液状材料、すなわち、接合面210の膜形成領域41に選択的に形成された液状被膜30を乾燥する。これにより、図3(c)に示すように、膜形成領域41の形状(所定形状)に対応してパターニングされた接合膜3が形成される。
液状被膜30を乾燥させる際の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
【0092】
また、乾燥させる時間は、0.5〜48時間程度であるのが好ましく、15〜30時間程度であるのがより好ましい。
かかる条件で液状被膜30を乾燥させることにより、次工程[3]および後工程[4]において、エネルギーを付与することにより接着性が好適に発現する接合膜3を確実に形成することができる。また、シリコーン材料として前記工程[2−1]で説明したようなシラノール基を有するもの、または、ポリエステル変性シリコーン材料を用いた場合には、これらの材料が有するシラノール基同士を、確実に結合させることができるため、形成される接合膜3を膜強度に優れたものとすることができる。
【0093】
さらに、乾燥させる際の雰囲気の圧力は、大気圧下であってもよいが、減圧下であるのが好ましい。具体的には、減圧の程度は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。これにより、接合膜3の膜密度が緻密化して、接合膜3をより優れた膜強度を有するものとすることができる。
【0094】
以上のように、接合膜3を形成する際の条件を適宜設定することにより、形成される接合膜3の膜強度等を所望のものとすることができる。
接合膜3の平均厚さは、0.5〜500μm程度であるのが好ましく、1〜200μm程度であるのがより好ましい。供給する液状材料の量を適宜設定して、形成される接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、第1の基材22と第2の基材23とを接合した接合体1の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、より強固に接合することができる。
【0095】
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合体1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
また、接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、後工程[5]において、仮接合体1’を接合膜3の厚さ方向に加圧した際に、接合膜3中に含まれる導電性粒子38同士がその厚さ方向で確実に接触することとなるため、この接合膜3(導電性粒子38)を介して第1の端子221と第2の端子231とを電気的に接続することができる。
【0096】
さらに、接合膜3の平均厚さをかかる範囲とすることにより、接合膜3がある程度弾性に富むものとなることから、後工程[4]において、第1の基材22と第2の基材23とを接合する際に、接合膜3と接触させる第2の端子231にパーティクル等が付着していても、このパーティクルを接合膜3で取り囲むようにして接合膜3と第2の端子231とが接合することとなる。そのため、このパーティクルが存在することによって、接合膜3と接合面230との界面における接合強度が低下したり、この界面において剥離が生じたりするのを的確に抑制または防止することができる。
【0097】
[3]次に、接合膜3にエネルギーを付与することにより、接合膜3の表面付近に接着性を発現させ、この接合膜3を介して転写用基材21と第1の基材22とを接合させた後、転写用基材21と第1の基材22とを離間することにより、接合膜3を転写用基材21から第1の基材22に転写する(第3の工程)。
なお、接合膜3は、第1の基材22が備える第1の端子の形状に対応して所定形状にパターニングして転写用基材21上に形成されているので、本工程[3]において、接合膜3を転写用基材21から第1の基材22に転写した際には、図4(c)に示すように、第1の端子221に付着した状態で転写される。
【0098】
以下、本工程について詳述する。
[3−1]まず、接合面210の膜形成領域41に形成された接合膜3の表面32に対してエネルギーを付与する。
接合膜3にエネルギーを付与すると、この接合膜3では、表面32付近の分子結合の一部が切断し、表面32が活性化されることに起因して、表面32付近に第1の基材22に対する接着性が発現する。
【0099】
このような状態の接合膜3は、第1の基材22が備える第1の端子221と、化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
ここで、本明細書中において、表面32が「活性化された」状態とは、上述のように接合膜3の表面32の分子結合の一部、具体的には、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基が切断されて、接合膜3中に終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態の他、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、接合膜3が「活性化された」状態と言うこととする。
【0100】
接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法を用いて付与するものであってもよいが、例えば、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、接合膜3をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、接合膜3をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。これにより、接合膜3の表面を効率よく活性化させることができる。
【0101】
これらの中でも、接合膜3に対するエネルギーの付与は、図3(d)に示すように、特に、接合膜3をプラズマに曝す方法を用いるのが好ましい。
ここで、接合膜3にエネルギーを付与する方法として、接合膜3をプラズマに曝す方法が好ましく用いられる理由を説明するのに先立って、エネルギー線として紫外線を選択し、接合膜3に紫外線を照射する場合における問題点について説明する。
【0102】
A:まず、接合膜3の表面32の活性化に長時間(例えば、1分〜数十分)を要する。また、紫外線照射を短時間にした場合、第1の基材22と第2の基材23とを接合する工程において、その接合に長時間(数十分以上)を要する。すなわち、接合体1を得るのに長時間を要する。
B:また、紫外線を用いた場合、この紫外線は、接合膜3を厚さ方向に透過し易い。このため、基材(本実施形態では、転写用基材21)の構成材料(例えば、樹脂材料)等によっては、基材の接合膜3との界面(接触面)において劣化が生じ、接合膜3が基材から剥離し易くなる。
【0103】
さらに、紫外線は、接合膜3の厚さ方向に透過する際に、接合膜3全体に作用し、その全体において、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基が切断、除去される。すなわち、接合膜3中における有機成分の量が極端に低下し、その無機化が進行する。このため、有機成分の存在に起因する接合膜3の柔軟性が全体として低下し、得られる接合体1では、接合膜3の層内剥離が生じ易くなる。
【0104】
C:さらに、接合された接合体1を、第1の基材22を第2の基材23から剥離して、各基材22、23をそれぞれ分別してリサイクルや再利用に用いる場合、この操作は、接合体1に対して、剥離用エネルギーを付与することにより各基材22、23同士を剥離し得る。このとき、例えば、接合膜3中に残存するメチル基(有機成分)がポリジメチルシロキサン骨格から切断、除去され、切断された有機成分がガスとなる。このガス(ガス状の有機成分)は、接合膜3にへき乖を生じさせ、接合膜3が分割される。
【0105】
しかしながら、紫外線を照射した場合、前述のように、接合膜3全体の無機化が進行するため、剥離用エネルギーを付与した場合でも、ガスになる有機成分が極めて少なく、接合膜3にへき乖が生じ難いという問題がある。
これに対して、接合膜3の表面32をプラズマに曝した場合では、接合膜3の表面32付近において、選択的に、この接合膜3を構成する材料の分子結合の一部、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基が切断される。
【0106】
なお、このプラズマによる分子結合の切断は、プラズマの荷電に基づく化学的な作用のみならず、プラズマのペニング効果に基づく物理的な作用によって引き起こされるため、極めて短時間で生じる。したがって、接合膜3を、極めて短時間(例えば、数秒程度)で活性化させることが可能であり、結果として、接合体1を短時間で製造することができる。
【0107】
また、プラズマは、接合膜3の表面32に選択的に作用し、その内部にまで影響を及ぼし難い。このため、分子結合の切断は、接合膜3の表面32付近で選択的に生じる。すなわち、接合膜3は、その表面32付近で選択的に活性化される。しかがって、紫外線を用いて接合膜3を活性化させる場合の不都合(前述したようなBおよびCの不都合)が生じ難い。
【0108】
このように、接合膜3の活性化にプラズマを用いることにより、接合体1において、接合膜3の層内剥離が生じ難く、第1の基材22を第2の基材23から剥離する場合には、この剥離操作を確実に行うことができる。
また、紫外線照射により接合膜3を活性化させる場合、照射する紫外線の強度に依存する接合膜3の活性化の程度の変化が極めて大きい。このため、第1の基材22と第2の基材23との接合に適した程度に接合膜3を活性化させるには、紫外線照射の厳密な条件管理が必要である。また、厳密な管理をしない場合、得られる接合体1間における、転写用基材22と第1の基材22との接合強度のバラつきが生じる。
【0109】
これに対して、プラズマにより接合膜3を活性化させる場合、接触させるプラズマの濃度に依存する接合膜3の活性化の程度の変化は穏やかである。したがって、第1の基材22と第2の基材23との接合に適した程度に接合膜3を活性化させるのに、プラズマを発生させる条件を厳密に管理する必要がない。換言すれば、接合膜3の活性化にプラズマを用いる場合、接合体1の製造条件の許容範囲が広い。また、厳密な管理をしなくとも、得られる接合体1間において、第1の基材22と第2の基材23との接合強度のバラつきが生じ難い。
【0110】
さらに、紫外線照射により接合膜3を活性化させる場合、接合膜3の活性化すなわち接合膜3中の有機物の脱離に伴って、接合膜3自体が収縮(特に、膜厚の低下)するという問題がある。接合膜3が収縮した場合、第1の基材22と第2の基材23とを高い接合強度で接合することが困難となる。
これに対して、プラズマにより接合膜3を活性化させる場合、前述したように、接合膜3の表面付近が選択的に活性化されるため、接合膜3の収縮はないか極めて少ない。したがって、接合膜3を比較的薄く形成した場合であっても、第1の基材22と第2の基材23とを高い接合強度で接合することができる。また、この場合、高い寸法精度の接合体1を得ることができるとともに、接合体1の薄型化を図ることも可能である。
【0111】
以上のように、プラズマにより接合膜3を活性化させる場合には、紫外線により接合膜3を活性化させる場合に比べて、多くのメリットがある。
また、接合膜3に対するプラズマの接触は、減圧下で行うようにしてもよいが、大気圧下において行うのが好ましい。すなわち、接合膜3を大気圧プラズマで処理するのが好ましい。大気圧プラズマ処理によれば、接合膜3の周囲が減圧状態とならないので、プラズマの作用により、例えば、ポリエステル変性シリコーン材料のポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基を切断、除去する際(接合膜3の活性化の際)に、この切断が不要に進行するのを防止することができる。
【0112】
かかる大気圧下におけるプラズマ処理は、例えば、図6に示す大気圧プラズマ処理装置を用いて行うことができる。
図6は、大気圧プラズマ装置の構成を示す概略図である。
図6に示す大気圧プラズマ装置1000は、接合膜3が形成された転写用基材21(以下、単に「被処理基板W」と言う。)を搬送する搬送装置1002と、搬送装置1002の上方に設置されたヘッド1010とを備えている。
この大気圧プラズマ装置1000では、ヘッド1010が備える印加電極1015と対向電極1019との間に、プラズマが発生するプラズマ発生領域pが形成される。
【0113】
以下、各部の構成について説明する。
搬送装置1002は、被処理基板Wを積載可能な移動ステージ1020を有している。この移動ステージ1020は、搬送装置1002が有する移動手段(図示せず)の作動により、x軸方向に移動することができる。
なお、移動ステージ1020は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属材料で構成されている。
【0114】
ヘッド1010は、ヘッド本体1101と、印加電極1015と、対向電極1019とを有している。
ヘッド1010には、移動ステージ1020(搬送装置1002)の上面とヘッド1010の下面1103との間隙1102に、プラズマ化された処理ガスGを供給するガス供給流路1018が設けられている。
【0115】
ガス供給流路1018は、ヘッド1010の下面1103に形成された開口部1181で開口している。また、図6に示すように、下面1103の左側には、段差が形成されている。これにより、ヘッド本体1101の左側部分と移動ステージ1020との間隙1104が、間隙1102よりも小さく(狭く)なっている。このため、プラズマ化された処理ガスGが間隙1104に入り込むのを抑制または防止されて、x軸正方向に優先的に流れるようになっている。
【0116】
なお、ヘッド本体1101は、例えば、アルミナ、石英等の誘電体材料で構成されている。
ヘッド本体1101には、ガス供給流路1018を挟むように、印加電極1015と対向電極1019とが対抗して設置され、これにより一対の平行平板型電極が構成されている。これらのうち、印加電極1015は高周波電源1017に電気的に接続され、対向電極1019は接地されている。
【0117】
これら印加電極1015および対向電極1019は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属材料で構成されている。
このような大気圧プラズマ装置1000を用いて、被処理基板Wをプラズマ処理する場合、まず、印加電極1015と対向電極1019との間に電圧を印加して、電界Eを発生させる。この状態で、ガス供給流路1018に、処理ガスGを流入させる。このとき、ガス供給流路1018に流入した処理ガスGは、電界Eの作用により放電してプラズマ化される。このプラズマ化された処理ガスGは、下面1103側の開口部1181から、間隙1102内に供給される。これにより、プラズマ化された処理ガスGが被処理基板Wに設けられた接合膜3の表面32に接触して、プラズマ処理が施される。
【0118】
かかる大気圧プラズマ装置1000を用いることにより、容易かつ確実に、接合膜3にプラズマを接触させ、接合膜3を活性化させることができる。
ここで、印加電極1015と移動ステージ1020(被処理基板W)と間の距離、すなわち、間隙1102高さ(図6中、h1で示す長さ)は、高周波電源1017の出力や、被処理基板Wに施すプラズマ処理の種類等を考慮して適宜決定されるが、0.5〜10mm程度であるのが好ましく、0.5〜2mm程度であるのがより好ましい。これにより、接合膜3にプラズマを接触させて、接合膜3をより確実に活性化させることができる。
【0119】
また、印加電極1015と対向電極1019との間に印加する電圧は、1.0〜3.0kVp−p程度であるのが好ましく、1.0〜1.5kVp−p程度であるのがより好ましい。これにより、印加電極1015と移動ステージ1020と間に電界Eをより確実に発生させることができ、ガス供給流路1018に供給された処理ガスGを確実にプラズマ化させることができる。
【0120】
高周波電源1017の周波数(印加する電圧の周波数)は、特に限定されないが、10〜50MHz程度であるのが好ましく、10〜40MHz程度であるのがより好ましい。
処理ガスGの種類としては、特に限定されないが、例えば、ヘリウムガス、アルゴンガスのような希ガス、酸素ガス等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、処理ガスGには、希ガスを主成分とするガスを用いるのが好ましく、特にヘリウムガスを主成分とするガスを用いるのが好ましい。
【0121】
すなわち、処理に用いるプラズマは、ヘリウムガスを主成分とするガスをプラズマ化したものであるのが好ましい。ヘリウムガスを主成分とするガス(処理ガスG)は、プラズマ化の際にオゾンを発生させ難く、このため、接合膜3の表面32のオゾンによる変質(酸化)を防止することができる。その結果、接合膜3の活性化の程度が低下するのを抑制すること、すなわち、接合膜3を確実に活性化させることができる。さらに、ヘリウムガスのプラズマは、前述したペニング効果が極めて高く、接合膜3の活性化を短時間でかつ確実に行うことができる観点からも好ましい。
【0122】
この場合、ヘリウムガスを主成分とするガスのガス供給流路1018への供給速度は、1〜20SLM程度であるのが好ましく、5〜15SLM程度であるのがより好ましい。これにより、接合膜3の活性化の程度を制御し易くなる。
また、このガス(処理ガスG)中のヘリウムガスの含有量は、85vol%以上が好ましく、90vol%以上(100%も含む)がより好ましい。これにより、前述した効果をさらに顕著に発揮させることができる。
また、移動ステージ1020の移動速度は、特に限定されないが、1〜20mm/秒程度であるのが好ましく、3〜6mm/秒程度であるのがより好ましい。このような速度でプラズマを接合膜3に接触させることにより、短時間であるにもかかわらず、接合膜3を十分かつ確実に活性化させることができる。
【0123】
[3−2]次に、図4(a)に示すように、第1の基材22が備える第1の端子221と接合膜3とが密着するように、接合膜3を介して転写用基材21と第1の基材22とを貼り合わせる。これにより、図4(b)に示すように、前記工程[3−1]において、接合膜3の表面32に第1の端子221に対する接着性が発現していることから、接合膜3と第1の基材22が備える第1の端子221とが化学的に結合する。
【0124】
ここで、本工程において、第1の基材22が備える第1の端子221と接合膜3とを接合するメカニズムについて説明する。
例えば、第1の端子221の表面に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、転写用基材21に形成された接合膜3と、第1の端子221とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接合膜3の表面32に存在する水酸基と、第1の端子221の表面に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、第1の基材22と第1の端子221とが接合されると推察される。
【0125】
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、接合膜3と第1の端子221との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、接合膜3と第1の端子221とがより強固に接合されると推察される。
また、転写用基材21の接合膜3の表面や内部、および、第1の端子221の表面や内部に、それぞれ終端化されていない結合手すなわち未結合手(ダングリングボンド)が存在している場合、転写用基材21と第1の基材22とを貼り合わせた時、これらの未結合手同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成されることとなる。これにより、接合膜3と第1の端子221とが特に強固に接合される。
【0126】
なお、前記工程[3−1]で活性化された接合膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[3−1]の終了後、できるだけ早く本工程[3−2]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[3−1]の終了後、60分以内に本工程[3−2]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、接合膜3を介して転写用基材21と第1の基材22とを貼り合わせたとき、接合膜3と第1の端子221との間に十分な接合強度を得ることができる。
【0127】
換言すれば、活性化させる前の接合膜3は、シリコーン材料を乾燥させて得られた接合膜であるため、化学的に比較的安定であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜3は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような接合膜3を備えた転写用基材21を多量に製造または購入して保存しておき、必要な個数のみに前記工程[3−1]に記載したエネルギーの付与を行うようにすれば、後述する接合体1の製造効率の観点から有効である。
【0128】
[3−3]次に、転写用基材21と第1の基材22とを離間する。
ここで、前述したように、接合膜3は、転写用基材21が備える撥液膜211上に形成されているため、転写用基材21との結合強度は極めて低い。これに対して、接合膜3は、第1の基材22が備える第1の端子221に対して化学的に結合しているため、第1の基材22(第1の端子221)との結合強度は、接合膜3と転写用基材21との接合強度と比較して極めて高くなる。
そのため、転写用基材21と第1の基材22とを離間すると、接合膜3は、転写用基材21と接合する接合面210から剥離するため、図4(c)に示すように、転写用基材21から第1の基材22に転写される。
【0129】
[4]次に、転写された接合膜3にエネルギーを付与することにより、接合膜3の表面付近に接着性を発現させ、この接合膜3を介して第1の基材22と第2の基材23とを接合することにより、これら同士が接合された仮接合体1’を得る(第4の工程)。
なお、第2の端子231は、第1の基材22と第2の基材23とを、第1の端子221と第2の端子231とが対向するように重ね合わせたとき、第1の端子221と重なる位置に設けられているので、本工程[4]において、第1の基材22と第2の基材23とを接合膜3を介して接合した際には、図4(b)に示すように、第1の端子221上に付着した接合膜3に接合されることとなる。
【0130】
以下、本工程について詳述する。
[4−1]まず、転写用基材21から第1の基材22に転写された接合膜3に対してエネルギーを付与する。
ここで、接合膜3は、転写用基材21から第1の基材22に転写されているため、転写用基材21と接合していた側の面が、第1の基材22上で露出していることとなる。
【0131】
接合膜3は、エネルギーが付与されると、その表面付近の分子結合の一部が切断し、表面が活性化されることに起因して、接着性が発現するものである。そのため、本工程にように、一度、他の基材(本実施形態では、転写用基材21)と接合していた面に対しても、再度、エネルギーを付与することにより、この面に接着性を発現させることができる。
接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法を用いて付与するものであってもよいが、前記工程[3−1]で説明したのと同様に、図4(d)に示すように、特に、接合膜3をプラズマに曝す方法を用いるのが好ましい。
【0132】
[4−2]次に、第1の基材22に形成された接合膜3と第2の基材23が備える第2の端子231とが密着するように、接合膜3を介して第1の基材22と第2の基材23とを貼り合わせる(図5(a)参照)。これにより、前記工程[4−1]において、接合膜3の表面に第2の端子231に対する接着性が発現していることから、接合膜3と第2の基材23が備える第2の端子231とが化学的に結合する。その結果、第1の基材22と第2の基材23とが、膜形成領域41において選択的に形成された接合膜3により部分的に接合され、すなわち、第1の端子221と第2の端子231とが所定形状にパターニングされた接合膜3により接合され、その結果、図5(b)に示すような仮接合体1’が得られる。
ここで、本工程において、接合膜3と第2の基材23が備える第2の端子231とは、前記工程[3−2]で説明した接合膜3と第1の基材22が備える第1の端子221とが接合するメカニズムと同一のメカニズムにより接合される。
【0133】
[5]次に、仮接合体1’を接合膜3の厚さ方向に、すなわち、第1の基材22と第2の基材23と離間距離が接近するように加圧する(第5の工程)。
これにより、図5(c)に示すように、接合膜3を介した第1の基材22と第2の基材23との接続が維持されるとともに、接合膜3中の導電性粒子38を介して第1の端子221と第2の端子231とが電気的に接続されることとなり、その結果、第1の基材22と第2の基材23とが、接合膜3により強固にかつ電気的に接続された接合体1が形成される。
【0134】
ここで、仮接合体1’を接合膜3の厚さ方向に加圧することにより、導電性粒子38を介して第1の端子221と第2の端子231とが電気的に接続されるのは、以下に示す原理によるものである。
すなわち、仮接合体1’を接合膜3の厚さ方向に加圧すると、第1の端子221と第2の端子231とが接近することに起因して、接合膜3の厚さが薄くなる。そのため、接合膜3中に含まれる導電性粒子38同士が厚さ方向で接触し、さらに、第1の端子221および第2の端子231の表面も、導電性粒子38と接触することから、第1の端子221と第2の端子231とが導電性粒子38を介して電気的に接続される。
【0135】
なお、導電性粒子38を介した第1の端子221と第2の端子231との電気的な接続は、複数個の導電性粒子38を介してこれら端子221、231同士が電気的に接続されていてもよいし、図5(c)に示すように、1つの導電性粒子38を介して端子221、231同士が電気的に接続されていてもよい。
仮接合体1’を加圧する際の圧力は、第1の基材22および第2の基材23の各構成材料や各厚さ、第1の端子221および第2の端子231の各構成材料や各厚さ、導電性粒子38の構成材料や平均粒子径等の条件に応じて、適宜調整されるが、具体的には、好ましくは0.2〜100MPa程度、より好ましくは1〜50MPa程度に設定される。
【0136】
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。
かかる条件で、仮接合体1’を接合膜3の厚さ方向に加圧すれば、第1の端子221と第2の端子231とを導電性粒子38を介して電気的により確実に接続することができる。
【0137】
なお、仮接合体1’を接合膜3の厚さ方向に加圧する際には、この仮接合体1’を加熱するのが好ましい。
これにより、仮接合体1’を加圧することにより得られた接合体1に対して、接合膜3の厚さ方向への加圧を解除した際に、接合膜3が加圧前の形状に復元することなく、接合膜3に加圧後の形状をほぼ維持させることができる。すなわち、導電性粒子38を介した第1の端子221と第2の端子231との電気的な接続を確実に維持することができる。
【0138】
接合体1を加熱する温度は、室温より高く、接合体1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、接合体1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜3の厚さ方向への加圧を解除したとしても接合膜3に加圧後の形状をほぼ維持させることができる。
以上のように本発明の接合方法では、接合体1は、撥液膜211を有する転写用基材21上に予め接合膜3を形成し、この接合膜3を第1の基材22に転写した後、接合膜3を介して第1の基材22と第2の基材23とを接合・加圧することにより得られる構成となっている。そのため、転写用基材21上での液状材料の濡れ広がりが的確に防止または抑制されることから、膜形成領域41の形状が微細なものであったとしても、膜形成領域41の形状に対応した接合膜3を形成することができる。そして、接合膜3を転写用基材21から第1の基材22に転写できることから、この接合膜3を介して第1の基材22と第2の基材23とが、第1の端子221と第2の端子231とにおいて電気的に接合された接合体1を確実に得ることができる。
【0139】
また、接合膜3は、図5(c)に示すように、対向する第1の端子221と第2の端子231とに対応するように設けられている。すなわち、隣接する第1の端子221(第2の端子231)に対応する接合膜3同士は、別個に設けられている。これにより、異方性導電フィルム(ACF)や異方性導電ペースト(ACP)等で構成される接合膜を用いて、隣接する第1の端子221(第2の端子231)同士を跨いで、一括して、対向する第1の端子221と第2の端子231とを電気的に接合する場合のように、前記接合膜内でマイグレーションが生じ、これに起因して、隣接する第1の端子221(第2の端子231)同士間で短絡が生じてしまうのを確実に防止することができる。
【0140】
また、かかる構成の接合体1では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、2つの端子221、231が接合されている。このため、接合体1は短時間で形成することができ、かつ、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
【0141】
また、このような接合方法によれば、高温(例えば、700℃以上)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された第1の基材22および第2の基材23をも、接合に供することができる。
また、第1の基材22の熱膨張率と第2の基材23の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
【0142】
具体的には、第1の基材22と第2の基材23との熱膨張率の差にもよるが、第1の基材22および第2の基材23の温度が25〜50℃程度である状態下で、第1の基材22と第2の基材23とを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、第1の基材22と第2の基材23との熱膨張率の差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、接合体1における反りや剥離等の発生を確実に抑制または防止することができる。
また、この場合、具体的な第1の基材22と第2の基材23との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。
【0143】
以上のようにして、図5(b)に示す接合体(本発明の接合体)1を得ることができる。
このようにして得られた接合体1は、第1の基材22と第2の基材23との間の接合強度が4MPa(40kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する接合体1は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。また、本発明の接合方法によれば、第1の基材22と第2の基材23とが上記のような大きな接合強度で接合された接合体1を効率よく作製することができる。
【0144】
また、接合膜3の厚さ方向での体積抵抗率は、1×10Ω・cm以下であるのが好ましく、1×10Ω・cm以下であるのがより好ましい。これにより、接合膜3を介して第1の端子221と第2の端子231との間を確実に導通させることができる。また、本発明の接合方法によれば、このような優れた導電性を発現する接合膜3を効率よく作製することができる。
【0145】
<<第2実施形態>>
次に、本発明の接合方法の第2実施形態について説明する。
図7、図8は、本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図7、図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、接合方法の第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態にかかる接合方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0146】
本実施形態にかかる接合方法では、転写用基材21の接合面(表面)210の膜形成領域41に接合膜3を形成する他に、第1の基材22の第1の端子221が設けられている接合面220のほぼ全面、および、第2の基材23の第2の端子231が設けられている接合面230のほぼ全面に、導電性粒子38を含有しない液状材料を用いて接合膜3’を形成する。そして、第1の基材22および第2の基材23がそれぞれ備える接合膜3’の表面付近に接着性を発現させ、これら接合膜3’同士を、転写用基材21から転写された接合膜3を介して接触させる。これにより、第1の基材22と第2の基材23とを、第1の端子221と第2の端子231において接合させることにより仮接合体1’を得る。その後、この仮接合体1’を加圧して、導電性粒子38を介して第1の端子221と第2の端子231とを電気的に接続させることにより接合体1を得る。
【0147】
以下、各工程について説明する。
[1’]まず、前記工程[1]と同様の転写用基材21、第1の基材22および第2の基材23を用意する。
[2’]次に、前記工程[2]で説明したのと同様にして、転写用基材21の接合面220の膜形成領域41に所定形状にパターニングされた接合膜3を形成する。
【0148】
さらに、シリコーン材料を含有する液状材料、すなわち前記工程[2]で用いた液状材料35から導電性粒子38を除いた液状材料を用いて、第1の基材22の第1の端子221が設けられている側の面である接合面220のほぼ全面に、導電性粒子38を含有しない接合膜3’を形成する。また、第2の基材23の第2の端子231が設けられている側の面である接合面230のほぼ全面にも、第1の基材22と同様に、導電性粒子38を含有しない接合膜3’を形成する。
【0149】
なお、第1の基材22および第2の基材23に対する、導電性粒子38を含有しない接合膜3’の形成は、シリコーン材料と導電性粒子38とを含有する液状材料35に代えて、シリコーン材料を含有する液状材料を用い、前記工程[2]で説明したのと同様の方法により行うことができる。
【0150】
第1の基材22および第2の基材23に形成された接合膜3’の平均厚さは、可能な限り薄く設定され、具体的には、好ましくは0.1〜10μm程度、より好ましくは0.5〜5μm程度に設定される。これにより、次工程[3’]および後工程[4’]において、接合膜3’にエネルギーを付与した際に、その表面付近に確実に接着性を発現させることができる。また、後工程[5’]において、仮接合体1’を接合膜3の厚さ方向に加圧した際に、導電性粒子38を介して第1の端子221と第2の端子231とを確実に電気的に接続することができる。
【0151】
[3’]次に、図7(a)に示すように、第1の基材22の接合面220側に形成された接合膜3’にエネルギーを付与することにより、第1の基材22に形成された接合膜3’の表面付近に接着性を発現させる。
そして、図7(b)に示すように、転写用基材21に形成された接合膜3と、第1の基材22に形成された接合膜3とを介して転写用基材21と第1の基材22とを接合させた後、転写用基材21と第1の基材22とを離間することにより、転写用基材21に形成されていた接合膜3を転写用基材21から第1の基材22に転写する(図7(c)参照。)。
【0152】
本実施形態のように、転写用基材21に設けられた接合膜3の他に、第1の基材22にも接合膜3’を設ける構成とすることにより、接合膜3と接合膜3’との間での接合がより強固なものとなるため、転写用基材21に接合されていた接合膜3を、より確実に転写用基材21から剥離することができる。
【0153】
なお、第1の基材22に形成された接合膜3’にエネルギーを付与する方法としては、前記工程[3]で説明したのと同様の方法を用いることができ、接合膜3をプラズマに曝す方法が特に好ましく用いられる。
また、接合膜に対するエネルギーの付与は、第1の基材22に形成された接合膜3’ばかりでなく転写用基材21に形成された接合膜3に行うようにしてもよい。さらに、第1の基材22に形成された接合膜3’へのエネルギーの付与を省略して、転写用基材21に形成された接合膜3に対して単独で行うようにしてもよい
【0154】
[4’]次に、図8(a)に示すように、第2の基材23の接合面230側に形成された接合膜3’にエネルギーを付与することにより、第2の基材23に形成された接合膜3’の表面付近に接着性を発現させる。
そして、図8(b)に示すように、第1の基材22に転写された接合膜3と、第2の基材23に形成された接合膜3’とを接触させて、これら同士を接合させることにより、第1の基材22と第2の基材23とが、2つの接合膜3’と1つの接合膜3とを介して接合された接合体1’を得ることができる。
【0155】
本実施形態のように、第1の基材22に転写された接合膜3の他に、第2の基材23のも接合膜3’を設ける構成とすることにより、接合膜3と接合膜3’との間での接合がより強固なものとなるため、得られた接合体1’は、より優れた接合強度を有するものとなる。
また、接合膜に対するエネルギーの付与は、第2の基材23に形成された接合膜3’ばかりでなく第1の基材22に転写された接合膜3に行うようにしてもよい。さらに、第2の基材23に形成された接合膜3’へのエネルギーの付与を省略して、第1の基材22に転写された接合膜3に対して単独で行うようにしてもよい。
【0156】
[5’]次に、前記工程[5]で説明したのと同様にして、仮接合体1’を接合膜3の厚さ方向に、すなわち、第1の基材22と第2の基材23と離間距離が接近するように加圧する。
これにより、図8(c)に示すように、接合膜3、3’を介した第1の基材22と第2の基材23との接続が維持されるとともに、接合膜3中の導電性粒子38を介して第1の端子221と第2の端子231とが電気的に接続されることとなり、その結果、第1の基材22と第2の基材23とが、接合膜3、3’により強固にかつ電気的に接続された接合体1が形成される。
【0157】
本実施形態では、第1の端子221と第2の端子231との間には、接合膜3の他に、2つの接合膜3’が介在するが、仮接合体1’に対する加圧により、接合膜3および接合膜3’ともに押し潰されることとなる。そのため、最終的には、接合膜3中に含まれる導電性粒子38同士が厚さ方向で接触することから、前記第1実施形態と同様に、第1の端子221と第2の端子231とが導電性粒子38を介して電気的に接続されることとなる。
【0158】
以上のようにして接合体1を得ることができる。
なお、本実施形態では、第1の基材22および第2の基材23の接合面(表面)220および接合面230の双方に接合膜3’を形成する場合について説明したが、かかる場合に限定されず、接合面(表面)220および接合面230の何れか一方に前記接合膜3’を形成するようにしてもよい。
以上のような前記各実施形態にかかる接合方法は、種々の基材(部材)が備える端子同士を接合するのに用いることができる。すなわち、本発明の接合体は、種々の部材が備える端子同士が接合膜を介して接合されたものに適用できる。
【0159】
以下では、本発明の接合体を透過型液晶表示装置に適用した場合の実施形態について説明する。
<液晶表示装置>
ここでは、図9は、透過型液晶表示装置を示す平面図、図10は、図9に示す透過型液晶表示装置が備える液晶パネルの分解斜視図、図11は、図9中A−A線断面図、図12は、図9中B−B線断面図である。なお、各図では、図が煩雑になるのを避けるため、一部の部材を省略している。また、以下の説明では、図9中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」と言い、図10〜図12中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0160】
各図に示す透過型液晶表示装置(以下、単に「液晶表示装置」と言う)401は、液晶パネル(表示パネル)402と、液晶パネル402を駆動するための複数のドライバICパッケージ403と、2つの入力用配線基板405と、バックライト(光源手段)406とを有している。この液晶表示装置401は、バックライト406からの光を液晶パネル402に透過させることにより画像(情報)を表示し得るものである。
【0161】
液晶パネル402は、互いに対向して配置された下基板407と上基板408とを有し、これらの下基板407と上基板408との間には、表示領域を囲むようにしてシール材409(図11参照)が設けられている。
そして、これらの下基板407、上基板408およびシール材409により画成される空間には、電気光学物質である液晶が収納され、図10および図11に示すように、液晶層410が形成されている。
【0162】
下基板407および上基板408は、それぞれ、例えば、各種ガラス材料、各種樹脂材料等で構成されている。
下基板407は、その上面(液晶層410側の面)に、マトリックス状(行列状)に配置された複数の画素電極411と、X方向に延在する信号電極412とが設けられ、1列分の画素電極411の各々が1本の信号電極412に、それぞれ、TFD素子やTFT素子のようなスイッチング素子413を介して接続されている。
また、下基板407の下面には、偏光板414が設けられている。
【0163】
一方、上基板408の下面(液晶層410側の面)には、複数の帯状をなす走査電極415が設けられている。これらの走査電極415は、信号電極412とほぼ直交するY方向に沿って、互いに所定の間隔をおいてほぼ平行に配置され、かつ、画素電極411の対向電極となるように配列されている。
画素電極411と走査電極415とが重なる部分(この近傍の部分も含む)が1画素を構成し、これらの電極間において、各画素毎に液晶層410の液晶が駆動、すなわち、液晶の配向状態が変化する。
【0164】
ここで、下基板407は、図9に示すように、平面視で上基板408の外縁より外側(図9中、左側および上側)へ張り出した張出領域(額縁)407Aを有している。
この張出領域407Aの上面には、信号電極412および走査電極415に連続する配線パターン422が形成されている。
各走査電極415の下面には、それぞれ、赤(R)、緑(G)、青(B)の有色層(カラーフィルター)416が設けられ、これらの各有色層416がブラックマトリックス417によって仕切られている。
【0165】
また、上基板408の上面には、前記偏光板414と偏光軸が異なる偏光板418が設けられている。
このような構成の液晶パネル402では、バックライト406から発せられた光は、偏光板414で偏光された後、下基板407および各画素電極411を介して、液晶層410に入射する。液晶層410に入射した光は、各画素毎に配向状態が制御された液晶により強度変調される。強度変調された各光は、有色層416、走査電極415および上基板408を通過した後、偏光板418で偏光され、外部に出射する。これにより、液晶表示装置401では、上基板408の液晶層410と反対側から、例えば、文字、数字、図形等のカラー画像動画および静止画の双方を含む)を視認することができる。
【0166】
図9および図11に示すように、各ドライバICパッケージ403は、それぞれ、駆動用配線パターン419が設けられた可撓性基板420と、該可撓性基板420内に収納され、駆動用配線パターン419と電気的に接続されたドライバIC421とを有している。
ドライバIC421は、信号電極412および走査電極415に供給すべき駆動信号を生成する機能を有するものであり、半導体チップで構成されている。
【0167】
また、図12に示すように、駆動用配線パターン419は、配線パターン422に対応するようにストライプ状に設けられ、駆動用配線パターン419の各配線419aの一端部が、それぞれ、配線パターン422の各配線422aと接続(接合)されている。
各入力用配線基板405は、それぞれ、入力用配線パターン423を有するプリント配線基板であり、電源用ICや制御用ICが実装された回路基板(図示せず)からの信号(画像信号等)を、その入力用配線パターン423を介して、各ドライバIC421に伝達する。
各入力用配線パターン423は、各駆動用配線パターン419に対応するように設けられ、入力用配線パターン423の各配線の一端部は、それぞれ、駆動用配線パターン419の各配線419aと接続(接合)されている。また、入力用配線パターン423の各配線の他端部は、それぞれ、回路基板が有する各配線と接続されている。
【0168】
このように構成された液晶表示装置401の駆動系では、回路基板からの信号が、各入力用配線パターン423および各駆動用配線パターン419を介して各ドライバIC421に入力され、これら各ドライバIC421によって信号電極412および走査電極415に供給すべき駆動信号が生成される。信号電極側のドライバIC421(図9中Y方向に沿って並列するドライバIC421)によって生成された駆動信号は、駆動用配線パターン419および信号電極412を介してスイッチング素子に供給される。スイッチング素子は、供給された駆動信号に応じて画素電極411に電流を供給する。また、走査電極415側のドライバIC421(図9中X方向に沿って並列するドライバIC421)によって生成された駆動信号は、駆動用配線パターン419を介して走査電極415に供給される。これにより、画素電極411と走査電極415との間で、各画素毎に、液晶層410の液晶が駆動、すなわち、液晶の配向状態が変化する。
【0169】
以上のような液晶表示装置において、図11に示すように、配線パターン422が設けられた張出領域407Aと、駆動用配線パターン419が設けられたドライバICパッケージ403とを接合する際、および、入力用配線基板405とドライバICパッケージ403とを接合する際に、本発明の接合方法が適用されている。
換言すれば、接合膜3を介した張出領域407AとドライバICパッケージ403との接合体、接合膜3を介した入力用配線基板405とドライバICパッケージ403との接合体のうち、少なくとも1箇所に本発明の接合体が適用されている。
【0170】
この場合、張出領域407A上に、配線パターン422の形状に対応した接合膜を転写用基板から転写し、この接合膜3を介して、張出領域407Aの配線パターン422が設けられている側の面と、ドライバICパッケージ403が有する可撓性基板420の駆動用配線パターン419が設けられている側の面とを接合することにより、これら同士が接合された接合体を得ることができる。
【0171】
なお、本実施形態では、例えば、図12に示すように、配線パターン422が備える各配線422aと、駆動用配線パターン419と備える各配線419aとの間の接合が、対応する配線422a、422a毎に設けられた接合膜3を介して行われており、これにより、配線422a、422a同士が、接合膜3を介して接合されるとともに電気的に接続される。このように、本実施形態では、接合膜3が配線422a、422a毎に別個に設けられているので、マイグレーションの発生に起因する、隣接する配線422a、422a同士間での短絡の発生を確実に防止することができる。
【0172】
以上、本発明の接合方法および接合体を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の接合方法では、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程を追加してもよい。
また、本発明の接合体は、液晶表示装置以外のものに適用可能であることは言うまでもない。具体的には、本発明の接合体は、例えば、メモリのような半導体素子、水晶発振子のような圧電素子、太陽電池のような光電変換素子、マイクロミラーのようなMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)部品、圧力センサ、加速度センサのようなセンサ部品、有機EL素子、電気泳動表示素子のような表示素子用部品等の各種部材と搭載基板との接合体に適用することができる
【実施例】
【0173】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
まず、転写用基材として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板の表面にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜が形成されたものを用意し、さらに、第1の基材および第2の基材として、それぞれ、ストライプ状の配線パターンが設けられたガラス基板を用意した。そして、第1の基材および第2の基材の配線パターンが形成されている側の面に対して、対して酸素プラズマによる下地処理を行った。
なお、各ガラス基板の寸法は、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmとした。また、ストライプ状の配線パターンは、各ガラス基板上から突出するように形成された銅薄膜であり、その寸法は、配線の幅および配線間のピッチともに200μmとした。
【0174】
次に、シリコーン材料として、ポリエステル変性シリコーン材料を含有する溶液(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル・ジャパン合同会社製、「XR32−A1612」)を用意し、この溶液中に、導電性粒子として金メッキが施されたポリスチレン粒子(平均粒径:5μm)を、最終的に得られる接合膜中での含有率が10wt%となるように分散させることにより、液状材料を調製した。そして、この液状材料を、前述した液滴吐出装置500を用いて、転写用基材の配PTFE膜が形成されている側の面に、5pLの液滴として供給することにより、ガラス基板上に形成された配線パターンの形状に対応した液状被膜を形成した。
【0175】
次に、この液状被膜を、200℃で、1時間乾燥・硬化させることにより、転写用基材上に、接合膜(平均厚さ:約20μm、接合膜の幅:210μm、接合膜間のピッチ:180μm)を形成した。
次に、転写用基材上に形成された接合膜に、図6に示す大気圧プラズマ装置を用いて、以下に示す条件でプラズマを接触させた。これにより、接合膜を活性化させて、その表面に接着性を発現させた。
【0176】
<プラズマ処理条件>
・処理ガス :ヘリウムガスと酸素ガスとの混合ガス
・ガス供給速度:10SLM
・電極間距離 :1mm
・印加電圧 :1kVp−p
・電圧周波数 :40MHz
・移動速度 :1mm/秒
【0177】
次に、配線パターンの形状に対応して形成された接合膜のプラズマを接触させた面と、第1の基材が備える配線パターンの表面とが接触するように、転写用基材と第1の基材とを重ね合わせることにより、接合膜と配線パターンとを接合させた。
次に、転写用基材と前記第1の基材とを離間することにより、接合膜を転写用基材から第1の基材上に転写させた。
【0178】
次に、第1の基材上に転写された接合膜に、図6に示す大気圧プラズマ装置を用いて、上記に示した条件と同様にしてプラズマを接触させた。これにより、再度、接合膜を活性化させて、その表面に接着性を発現させた。
次に、接合膜のプラズマを接触させた面と、第2の基材が備える配線パターンの表面とが接触するように、第1の基材と第2の基材とを重ね合わせることにより、接合膜と配線パターンとを接合させて、第1の基材と第2の基材とが接合膜を介して接合された仮接合体を得た。
次に、得られた仮接合体を、接合膜の厚さ方向、すなわち第1の基材と第2の基材との離間距離が接近するように、加圧(50MPa)しつつ、常温(25度前後)で20秒間維持して、接合膜中に含まれる導電性粒子を厚さ方向で接触させることにより、各基材が備える配線パターン同士を電気的に接続させた。
【0179】
以上の工程を経ることにより、第1の基材に設けられた配線パターンと第2の基材に設けられた配線パターンとが、接合膜中に含まれる導電性粒子を介して電気的に接続された接合体を得た。
そして、この接合体の第1の基材と第2の基材との間の接合強度を、QUAD GROUP社製、「ロミュラス」を用いて測定したところ、4MPa以上であった。
なお、配線毎に対応させて形成した各接合膜は、各配線間のピッチにおいて、互いに接合することなく、得られた接合体において、それぞれ独立して形成されていた。
【0180】
(実施例2)
第1の基材として、ストライプ状の配線パターンが設けられたガラス基板に代えて、ストライプ状の配線パターンが設けられたステンレス鋼基板を用意し、第2の基材として、ストライプ状の配線パターンが設けられたガラス基板に代えて、ストライプ状の配線パターンが設けられたポリイミド基板を用意した以外は、前記実施例1と同様にして、接合体を得た。
本実施例2においても、前記実施例1と同様に、接合体の第1の基材と第2の基材との間の接合強度が4MPa以上であり、さらに、配線毎に対応させて形成した各接合膜は、各配線間のピッチにおいて、互いに接合することなく、得られた接合体において、それぞれ独立して形成されていた。
【0181】
(実施例3)
第1の基材および第2の基材の配線パターンが設けられている側の面のほぼ全面にも、転写用基材上に接合膜を形成した液状材料から導電性粒子を除いた液状材料を用いて接合膜(0.5μm)を形成し、このような接合膜が形成された第1の基材および第2の基材を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、接合体を得た。
本実施例3においても、前記実施例1と同様に、接合体の第1の基材と第2の基材との間の接合強度が4MPa以上であった。さらに、配線毎に対応させて形成した各接合膜は、各配線間のピッチにおいて、互いに接合することなく、得られた接合体において、それぞれ独立して形成されていた。
【符号の説明】
【0182】
1……接合体 1’……仮接合体 21……転写用基材 22……第1の基材 23…第2の基材 210、220、230……接合面 211……撥液膜 212……母材 221……第1の端子 231……第2の端子 3、3’……接合膜 30……液状被膜 31……液滴 32……表面 35……液状材料 38……導電性粒子 3C……空間 41……膜形成領域 42……非膜形成領域 500…液滴吐出装置 501…タンク 502…吐出走査部 503…液滴吐出手段 504…第1位置制御装置 506…ステージ 508…第2位置制御装置 510…チューブ 512…制御手段 514…液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド) 518…ノズル 520…キャビティ 522…隔壁 524…振動子 524A、524B…電極 524C…ピエゾ素子 526…振動板 528…ノズルプレート 529…液だまり 530…供給部 531…孔 401……液晶表示装置 402……液晶パネル 403……ドライバICパッケージ 405……入力用配線基板 406……バックライト 407……下基板 407A……張出領域 408……上基板 409……シール材 410……液晶層 411……画素電極 412……信号電極 413……スイッチング素子 414……偏光板 415……走査電極 416……有色層 417……ブラックマトリックス 418……偏光板 419……駆動用配線パターン 419a、422a……配線 420……可撓性基板 421……ドライバIC 422……配線パターン 423……入力用配線パターン 1000……大気圧プラズマ装置 1002……搬送装置 1010……ヘッド 1101……ヘッド本体 1102、1104……間隙 1103……下面 1015……印加電極 1017……高周波電源 1018……ガス供給流路 1019……対向電極 1181……開口部 1020……移動ステージ E……電界 G……処理ガス p……プラズマ発生領域 W……被処理基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン材料と導電性粒子とを含有する液状材料に対する撥液性を少なくとも表面付近に有する転写用基材と、接合膜を介して互いに電気的に接合する、第1の端子を備える第1の基材、および、第2の端子を備える第2の基材とを用意する第1の工程と、
前記転写用基材の前記撥液性が付与されている面側に、前記液状材料を塗布して、所定形状にパターニングされた液状被膜を形成した後、乾燥することにより、前記所定形状にパターニングされた接合膜を得る第2の工程と、
前記接合膜にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に接着性を発現させ、当該接合膜を介して前記転写用基材と前記第1の基材とを接合させた後、前記転写用基材と前記第1の基材とを離間することにより、前記接合膜を前記転写用基材から前記第1の基材に転写する第3の工程と、
転写された前記接合膜にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に接着性を発現させ、当該接合膜を介して前記第1の基材と前記第2の基材とを接合することにより、これら同士が接合された仮接合体を得る第4の工程と、
前記仮接合体を前記接合膜の厚さ方向に加圧することにより、当該接合膜を介した前記第1の基材と前記第2の基材との接合を維持するとともに、前記接合膜中の前記導電性粒子を介して前記第1の端子と前記第2の端子とを電気的に接続することにより接合体を得る第5の工程とを有することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記第1の端子と前記第2の端子とは、前記第1の基材と前記第2の基材とを、これら端子同士が対向するように重ね合わせたとき、互いに重なる位置に設けられている請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記所定形状は、第3の工程において、前記接合膜を前記第1の基材に転写したとき、前記第1の端子の形状に対応した形状をなしている請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記第2の工程において、前記第1の基材の前記接合膜を介して前記第2の基材と接合する側の面のほぼ全面に、前記導電性粒子を含有しない接合膜を形成する請求項1ないし3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項5】
前記第2の工程において、前記第2の基材の前記接合膜を介して前記第1の基材と接合する側の面のほぼ全面に、前記導電性粒子を含有しない接合膜を形成する請求項1ないし4のいずれかに記載の接合方法。
【請求項6】
前記第2の工程において、前記液状皮膜は、前記液状材料を液滴吐出法を用いて液滴として供給することにより形成される請求項1ないし5のいずれかに記載の接合方法。
【請求項7】
前記液滴吐出法は、圧電素子による振動を利用して前記液状材料を、インクジェットヘッドが備えるノズル孔から液滴として吐出するインクジェット法である請求項6に記載の接合方法。
【請求項8】
前記シリコーン材料は、その主骨格がポリジメチルシロキサンで構成され、この主骨格が分枝状をなしている請求項1ないし7のいずれかに記載の接合方法。
【請求項9】
前記シリコーン材料は、前記ポリジメチルシロキサンが有するメチル基の少なくとも1つがフェニル基で置換されている請求項8に記載の接合方法。
【請求項10】
前記シリコーン材料は、シラノール基を複数個有する請求項1ないし9のいずれかに記載の接合方法。
【請求項11】
前記シリコーン材料は、ポリエステル樹脂と脱水縮合反応させることにより得られたポリエステル変性シリコーン材料である請求項1ないし10のいずれかに記載の接合方法。
【請求項12】
ポリエステル樹脂は、飽和多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応により得られるものである請求項11に記載の接合方法。
【請求項13】
前記導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電膜とを有するものである請求項1ないし12のいずれかに記載の接合方法。
【請求項14】
前記導電性粒子の平均粒径は、0.3〜100μmである請求項1ないし13のいずれかに記載の接合方法。
【請求項15】
前記接合膜の平均厚さは、0.5〜500μmである請求項1ないし14のいずれかに記載の接合方法。
【請求項16】
前記第3の工程および第4の工程において、前記接合膜に対する前記エネルギーの付与は、前記接合膜にプラズマを接触させることにより行われる請求項1ないし15のいずれかに記載の接合方法。
【請求項17】
前記プラズマの接触を、大気圧下で行う請求項16に記載の接合方法。
【請求項18】
前記プラズマの接触は、互いに対向する電極間に電圧を印加した状態で、これらの間にガスを導入することにより、プラズマ化された前記ガスを前記接合膜に供給することによりなされる請求項16または17に記載の接合方法。
【請求項19】
前記第1端子および前記第2の端子には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし18のいずれかに記載の接合方法。
【請求項20】
前記第1の基材と前記第2の基材とが、請求項1ないし19のいずれかに記載の接合方法により形成された接合膜を介して接合されているとともに、前記第1の端子と第2の端子とが前記導電性粒子を介して電気的に接続されてなることを特徴とする接合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−232394(P2010−232394A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77813(P2009−77813)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】