説明

接合方法

【課題】Au−Si共晶接合の接合信頼性を高めることができる接合方法を提供する。
【解決手段】2枚の基板1,2をAu−Si共晶接合により接合する接合方法であって、第1のシリコン基板10を用いて形成された第1の基板1と第2のシリコン基板20を用いて形成された第2の基板2とを用意する。接合装置のチャンバ内で第1の基板1のAu膜13と第2の基板2の第2のシリコン基板20とが接触するように両基板1,2を重ね合わせて荷重を印加した状態で、両基板1,2をAu−Siの共晶温度よりも高い規定温度まで昇温する昇温過程、両基板1,2の加熱温度を上記規定温度に所定時間だけ保持する温度保持過程、両基板1,2を室温まで降温させる降温過程を順次行うようにし、降温過程では、両基板1,2を上記規定温度から急速冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、MEMS技術、ウェハレベルパッケージング技術を利用するデバイス(例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、光スキャナ、赤外線センサなど)の製造方法が各所で研究開発されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ここにおいて、上記特許文献1には、この種のデバイスの一例として、図6に示すように、第1のシリコン基板10’を用いて形成され一表面側にセンサ素子(図示例では、可動ゲートMOSトランジスタ)3’が形成された第1の基板1’と、第2のシリコン基板20’を用いて形成され第1の基板1’の上記一表面側に接合された第2の基板2’とを備えたセンサ装置(加速度センサ)が記載され、図7に示すように第1の基板1’と第2の基板2’とをウェハレベルで接合してから個々のセンサ装置に分割するようにしたセンサ装置の製造方法が記載されている。
【0004】
図6に示した構成のセンサ装置は、第1の基板1’の上記一表面側におけるセンサ素子3’の形成領域の周囲に枠状(矩形枠状)のポリシリコン薄膜14’が形成される一方、第2の基板2’における第1の基板1’との対向面側においてポリシリコン薄膜14’に対応する部位に枠状凸部(脚部)21’が突設され、枠状凸部21’の先端面にAu膜24’が形成されている。しかして、上記特許文献1では、製造時に第1の基板1’と第2の基板2’とを接合する接合工程において、第1の基板1’のポリシリコン薄膜14’と第2の基板2’のAu膜24’とを接触させてAu−Si共晶接合により接合している。
【0005】
また、上記特許文献1には、ポリシリコン薄膜14’の表面(Si表面)の自然酸化膜に起因した接合不良の発生を防止するための手段として、接合直前にフッ酸により自然酸化膜を除去する方法や、接合直前にエッチングガスとしてCF系ガスを利用して自然酸化膜を除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−316497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の製造方法において、第1の基板1’と第2の基板2’との接合直前にフッ酸により自然酸化膜を除去する方法を採用する場合には、フッ酸により自然酸化膜をエッチングした後の水洗工程や乾燥工程などを行っている間や大気に曝されている間に形成されてしまう自然酸化膜や、接合表面(Si表面、Au表面)の微細な凹凸によるマイクロラフネス(マイクロラフネスの目安としては、例えば、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)で規定されている算術平均粗さRaなどがある)に起因してボイドが発生してしまい、接合信頼性が低下してしまう。
【0008】
また、接合直前にエッチングガスとしてCF系ガスを利用したドライエッチングにより自然酸化膜を除去する方法を採用する場合には、接合表面(Si表面)のマイクロラフネスが大きくなり、ボイドが発生しやすくなる可能性がある。また、レジストをマスクとしてドライエッチングを行った場合には特に、接合表面にコンタミネーション(レジスト残渣など)が発生しやすく、コンタミネーションによりマイクロラフネスが大きくなる可能性がある。コンタミネーションについては、エッチング時間を長くしたり、イオンの加速電圧を大きくすれば除去することができるが、マイクロラフネスが大きくなってしまう。また、レジストなどのカーボン系のコンタミネーションを除去する手段として、Oプラズマ処理やOラジカル処理が一般的に用いられるが、接合表面に薄いシリコン酸化膜が形成されてしまう。
【0009】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、Au−Si共晶接合の接合信頼性を高めることができる接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、2枚の基板をAu−Si共晶接合により接合する接合方法であって、2枚の基板を重ね合わせて荷重を印加した状態で、2枚の基板をAu−Siの共晶温度よりも高い規定温度まで昇温する昇温過程、2枚の基板の加熱温度を前記規定温度に所定時間だけ保持する温度保持過程、2枚の基板を室温まで降温させる降温過程を順次行うようにし、降温過程では、2枚の基板を前記規定温度から急速冷却することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、2枚の基板をAu−Si共晶接合により接合する際の降温過程で2枚の基板をAu−Siの共晶温度よりも高い規定温度から急速冷却することにより、ボイドを低減することができ、Au−Si共晶接合の接合信頼性を高めることができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記昇温過程および前記温度保持過程では、前記2枚の基板の雰囲気を真空雰囲気とし、前記降温過程では、前記2枚の基板の雰囲気を不活性ガス雰囲気とすることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、前記降温過程における前記2枚の基板の雰囲気が真空雰囲気である場合に比べて降温速度を速めることができ、ボイドを低減できる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明では、Au−Si共晶接合の接合信頼性を高めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態の接合方法の説明図である。
【図2】同上の接合方法の説明図である。
【図3】実施例の接合方法により接合した2枚の基板からなる構造体に関し、(a)は超音波像、(b)は(a)の要部を拡大した超音波顕微鏡像図、(c)は断面SEM像図である。
【図4】比較例の接合方法により接合した2枚の基板からなる構造体に関し、(a)は超音波像、(b)は(a)の要部を拡大した超音波顕微鏡像図、(c)は断面SEM像図である。
【図5】Au−Si共晶接合におけるボイド発生の推定メカニズムの説明図である。
【図6】従来例のセンサ装置の概略断面図である。
【図7】同上のセンサ装置の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に説明する本実施形態の接合方法は、2枚の基板をAu−Si共晶接合により接合する接合方法であって、図1(a)に示すように、第1のシリコン基板10を用いて形成された第1の基板1と、第2のシリコン基板20を用いて形成された第2の基板2とを用意し、これら2枚の基板1,2を図1(b)のように重ね合わせてAu−Si共晶接合により接合する。
【0017】
ここにおいて、第1の基板1は、第1のシリコン基板10の一表面側および他表面側それぞれにシリコン酸化膜からなる絶縁膜11a,11bが形成されており、第1のシリコン基板10の上記一表面側で絶縁膜11aの表面側に枠状(本実施形態では、矩形枠状)のAu膜13が形成され、絶縁膜11aとAu膜13との間にTi膜からなる密着膜12が形成されている。なお、密着膜12の材料はTiに限らず、例えば、Cr、Zr、Ptや、それらの合金でもよい。
【0018】
一方、第2の基板2は、第2のシリコン基板20の一表面および他表面それぞれが露出している。
【0019】
なお、第1の基板1および第2の基板2の構造は特に限定するものではなく、第1の基板1と第2の基板2とを接合して形成するデバイス(例えば、熱型赤外線センサ、加速度センサなど)の構造に応じて適宜設計すればよく、Au−Si共晶接合も、Au膜13と第2のシリコン基板20とを接触させて行う場合に限らず、Au膜13と第2のシリコン基板20の一表面側に絶縁膜などを介してシリコン膜を形成して、第1の基板1のAu膜13と第2の基板2のシリコン膜とを接触させて行ってもよい。
【0020】
Au膜13の成膜方法としては、スパッタ法、蒸着法、めっき法などがある。ただし、スパッタ法では一般的にArプラズマを利用するため、Au膜13中にArが取り込まれてしまう。このため、第1の基板1と第2の基板2とで構成される気密パッケージの内部空間の雰囲気を真空雰囲気とする熱型赤外線センサなどのデバイスの製造時において、Au−Si共晶接合の際にAu膜13中のArが放出されてしまい、気密空間の所望の真空度(例えば、1Pa以下の真空度)を確保できなくなってしまう懸念がある。ここにおいて、スパッタ法により成膜したAu膜13、蒸着法により成膜したAu膜13それぞれについて、Au膜13中に意図せずにドーピングされたArの量を二次イオン質量分析法(Secondary ion mass spectroscopy:SIMS法)により分析した結果、前者のAu膜13中のArの量が、後者のAu膜13のArの量よりも3桁程度多いことが確認された。そこで、気密パッケージの内部空間の雰囲気を真空雰囲気とするデバイス(以下、真空封止デバイスと称する)の製造時に本実施形態の接合方法を適用する場合には、Au膜13を蒸着法やめっき法により成膜することが好ましい。ただし、めっき法の場合は、蒸着法によりシード層を成膜してから、めっきを行うことが好ましい。
【0021】
また、真空封止デバイスの製造方法において本実施形態の接合方法を適用する場合には、第1の基板1と第2の基板2との接合前に、第1の基板1と第2の基板2との互いの対向面の一方の適宜部位に層状のゲッタ(図示せず)を形成しておくことが好ましい。ここで、ゲッタの材料としては、例えば、Zrの合金やTiの合金などからなる非蒸発ゲッタを採用すればよい。なお、周知のように、Arのような不活性ガスは、ゲッタでは吸着できない。
【0022】
以下、接合方法について具体的に説明する。
【0023】
まず、上述の第1の基板1と第2の基板2を用意し、接合前の前処理を行う。前処理としては、例えば、両基板1,2のうち接合表面がSi表面である第2の基板2の接合表面の自然酸化膜をフッ酸系溶液(HF希釈液、BHFなど)によりウェットエッチングすることで除去し、水洗、乾燥を行うようにしており、この前処理を行った後に直ちに第1の基板1および第2の基板2を図示しない接合装置のチャンバ内に導入する。第2の基板2の前処理は、ウェットエッチングに限らず、例えば、酸素を含まないフッ素系ガス(例えば、CF、CHF、SFなど)をエッチングガスとして用いたドライエッチングや不活性ガスイオン(Arガスイオン)のスパッタ効果におるスパッタエッチングでもよく、これらの場合も前処理を行った後に直ちに第1の基板1および第2の基板2を図示しない接合装置のチャンバ内に導入し、チャンバ内の雰囲気を所望の雰囲気(例えば、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気など)とする。なお、第2の基板2の前処理をドライエッチングやスパッタエッチングにより行う場合には、上記接合装置として、ドライエッチング用あるいはスパッタエッチング用のチャンバと接合用のチャンバとを備えたマルチチャンバの接合装置を用いて第2の基板2を大気に曝すことなく搬送できるようにすれば、前処理の後に自然酸化膜が形成されるのを抑制することができる。また、接合前の前処理として、第1の基板1のAu膜13の接合表面を清浄化するために、有機溶剤などによる洗浄を行って、水洗、乾燥を行うようにしてもよい。また、第2の基板2の前処理については、自然酸化膜を除去する前、OプラズマやOラジカルによる有機物除去を行ってもよい。
【0024】
上記接合装置のチャンバ内に導入した第1の基板1と第2の基板2とを図1(a)のように対向させた後、図1(b)のように両基板1,2を重ね合わせて荷重を印加する。そして、図2(b)に示すように両基板1,2に荷重を印加した状態で、両基板1,2を室温T0(25℃程度)からAu−Siの共晶温度(363℃)よりも高い規定温度T1(例えば、400℃)まで昇温する昇温過程、両基板1,2の加熱温度を規定温度T1に所定時間だけ保持する温度保持過程、両基板1,2を規定温度T1から室温T0まで降温させる降温過程を順次行うようにし、降温過程において、両基板1,2を規定温度T1から急速冷却する。なお、上記接合装置のチャンバ内に両基板1,2を導入した後に、Arイオンビームなどを照射することにより互いの接合表面を清浄化するようにしてもよい。
【0025】
ところで、両基板1,2に荷重を印加するにあたっては、第1の基板1を上記接合装置の上記チャンバ内のステージ上に設置し、上記チャンバ内で上記ステージに対向するホルダに保持された第2の基板2を第1の基板1に重ね合わせて、第2の基板2における第1の基板1側とは反対側から所定荷重P1を印加する。所定荷重P1の値は、数MPa以上が好ましく、各基板1,2が破壊されない荷重であればよく、例えば、2MPa〜100MPa程度の範囲で適宜設定すればよい。なお、所定荷重P1を印加する加圧手段としては、例えば、エア圧を利用したエアシリンダを採用すればよいが、これに限らず、所定荷重P1を印加できるものであればよい。
【0026】
2枚の基板1,2を加熱する加熱手段としては、ヒータ(抵抗加熱ヒータ、ランプヒータなど)などを用いればよく、マイクロコンピュータなどからなる制御装置により、予め設定された昇降温プロファイルに基づいてヒータへの入力電力を制御することによって、昇温速度および降温速度を制御することができ、規定温度に対応する目標値に対してオーバーシュートしたりアンダーシュートしたりして振動し、目標値の許容範囲(例えば、400±4℃)内に入るまでの時間を短くすることができる。
【0027】
昇温過程の昇温期間H1における昇温速度は、例えば、3℃/min〜60℃/min程度の範囲で適宜設定すればよい。
【0028】
温度保持過程の温度保持期間H2の長さ、つまり、上記所定時間は、例えば、30分〜2時間程度の範囲で適宜設定すればよい。
【0029】
降温過程の降温期間H3における降温速度は、加熱手段による加熱を停止して自然に温度を下げるとき(自然冷却)の降温速度に比べて速い値に設定する必要があり、例えば、20℃/minに設定すればよいが、20℃/min以上に設定することが好ましい。
【0030】
降温速度を制御する手段としては、例えば、加熱手段を構成するヒータがあるが、降温速度を自然冷却の速度よりも速くするには、チラーを用いた水冷での冷却手段、上記ステージの下側に配置されたヒータの上や下にクーリングプレートを設置し冷却水を流して冷却する手段、上記ステージ下のクーリングプレートにエアを流して冷却する手段、上記ステージ下のクーリングプレートに圧縮エアを流して冷却する手段(圧縮エアの圧力により降温速度を制御し、降温速度を速める場合には、圧力を高くし、遅くする場合には、圧力を低くする)、不活性ガス(NガスやArガス)を上記チャンバ内に導入してパージすることにより冷却する手段(導入するガスの流量や圧力により降温速度を制御する)、上記チャンバの周りにガスや冷却水を流して上記チャンバ全体を冷却する手段、液体窒素により上記ステージや上記チャンバを冷却する手段などの1つ、あるいは、当該1つとヒータとを併用してもよい。
【0031】
ここにおいて、第2の基板2の接合表面(Si表面)の自然酸化膜を除去する前処理としてウェットエッチングを行い、昇温過程および温度保持過程での2枚の基板1,2の雰囲気を真空雰囲気(0.4Pa)、所定荷重P1を5MPa、規定温度T1を400℃、降温速度を20℃/minもしくは1℃/minとして平面サイズが8.4mm□の両基板1,2を接合した試料を2種類の昇温速度(3℃/min、60℃/min)について3つずつ作成し、Au−Si共晶接合により形成されたAuSi共晶からなる接合部16の評価を超音波顕微鏡および走査型電子顕微鏡(Scanning electron microscope:SEM)により評価した結果の一例を図3および図4に示す。なお、各試料の作成時の昇温速度の制御はヒータへの入力電力の制御により行い、降温速度の制御は、上記ステージの下に流す圧縮エアによる冷却とヒータへの入力電力の制御とにより行った。
【0032】
図3は、昇温速度を60℃/min、降温速度を20℃/minとした試料に関する結果を示し、図4は、昇温速度を60℃/min、降温速度を1℃/minとした試料に関する結果を示している。また、図3および図4それぞれについて、(a)は超音波顕微鏡像図を示し、(b)は(a)において一点鎖線で囲んだ領域の拡大像図を示し、(c)は断面SEM像図を示している。また、図3および図4それぞれの(a),(b)では、黒い部分が接合部(接合領域)16であり、白い部分が非接合領域であり、超音波顕微鏡像図および断面SEM像図から、降温速度を1℃/minとした場合には、ボイドが発生しているのに対して、降温速度を20℃/minとした場合には、ボイドが発生していないことが確認された。
【0033】
また、規定の接合面積(Au膜13の接合表面の面積)に占める非接合領域の面積をボイド面積率として評価した結果を下記表1に示す。なお、下記表1では、同じ条件で作成した3つの試料のボイド面積率の平均値を記載してある。
【0034】
【表1】

【0035】
上述の図3,4および表1の結果から、降温速度を速くすることにより、ボイドを低減できることが確認された。なお、表1の結果では、昇温速度を遅くすることによっても、ボイド面積率が低くなり接合信頼性が向上している。
【0036】
ここで、Au−Si共晶接合におけるボイド発生の推定メカニズムについて図5を参照しながら説明するが、図5では、接合前のSi表面(図示例では、第2のシリコン基板20の一表面における接合表面)の一部に自然酸化膜21が形成されている場合を示してある。
【0037】
第1の基板1と第2の基板2とを重ね合わせて接触させた状態では、互いの接合表面の表面粗さに起因して、接合表面同士が接触している接触部と、接触していない非接触部とが存在し、両基板1,2を加圧するとともに加熱することにより、図5(a)のように接触部の自然酸化膜21が破られ、その後、溶融が開始して図5(b)のように接触部分においてAuとSiが積極的に反応し(図5(b)中においてクロスハッチングを施した部位は反応が起こっている部位を示している)、図5(c)中に矢印で示すように、AuSi共晶の結晶粒15の成長が起こり、過剰反応部へ周辺のAu−Siが移動することにより、ボイド17が発生するものと推察される。ここにおいて、降温過程での降温速度が遅い場合には、AuSi共晶の結晶粒15が粗大化し、粗大化の過程において過剰反応部で優先的に成長が起こり、それに伴いAuSiが移動してボイド17が増加するものと推察される。これに対して、降温過程の降温速度を速めて急速冷却することにより、AuSi共晶の結晶粒15の粗大化が抑制され、ボイド17の発生が抑制されるものと推察される。
【0038】
以上説明した本実施形態の接合方法によれば、2枚の基板1,2をAu−Si共晶接合により接合する際の降温過程で2枚の基板1,2をAu−Siの共晶温度よりも高い規定温度から急速冷却することにより、ボイドを低減することができ、Au−Si共晶接合の接合信頼性を高めることが可能となる。
【0039】
また、上述の接合方法において、昇温過程および温度保持過程では、2枚の基板1,2の雰囲気を真空雰囲気とし、降温過程では、2枚の基板1,2の雰囲気を不活性ガス雰囲気とすれば、降温過程における2枚の基板1,2の雰囲気が真空雰囲気である場合に比べて降温速度を速めることができ、ボイドを低減できる。
【0040】
なお、第1の基板1と第2の基板2は、チップレベルで接合してもよいし、ウェハレベルで接合してもよく(第1の基板1を多数個取りできるウェハと第2の基板2を多数個取りできるウェハとを接合することでウェハレベルパッケージ構造体を形成してもよく)、後者の場合は、接合後に、個々のチップサイズパッケージのサイズにダイシングすればよい。また、第1の基板1と第2の基板2とを接合して得られるデバイスを外部回路と電気的に接続するためには、例えば、第1の基板1と第2の基板2との一方に貫通配線を設けたり、第1の基板1と第2の基板2との互いの対向面の一部が露出するようにして当該露出部位に、第1の基板1と第2の基板2とで囲まれた内部空間に配置されている電気要素と電気的に接続される外部接続電極を設けたりすればよい。
【符号の説明】
【0041】
1 第1の基板
2 第2の基板
10 第1のシリコン基板
11a 絶縁膜
13 Au膜
20 第2のシリコン基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の基板をAu−Si共晶接合により接合する接合方法であって、2枚の基板を重ね合わせて荷重を印加した状態で、2枚の基板をAu−Siの共晶温度よりも高い規定温度まで昇温する昇温過程、2枚の基板の加熱温度を前記規定温度に所定時間だけ保持する温度保持過程、2枚の基板を室温まで降温させる降温過程を順次行うようにし、降温過程では、2枚の基板を前記規定温度から急速冷却することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記昇温過程および前記温度保持過程では、前記2枚の基板の雰囲気を真空雰囲気とし、前記降温過程では、前記2枚の基板の雰囲気を不活性ガス雰囲気とすることを特徴とする請求項1記載の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−152583(P2011−152583A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17326(P2010−17326)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】