説明

接合用パイプ材の接合部及びこの接合部の加工方法

【課題】 接合力強い接合用パイプ材の接合部及びこの接合部の加工方法を提供する。
【解決手段】断面円形の鉄製接合用パイプ材Aの接合部1は、前記接合用パイプ材A端部に設けるもので、前記端部に相対するように設けた2箇のくちばし部2,2と、このくちばし部2,2間をそれぞれ被接合用パイプ材の外周に沿うような凹んだ円弧状に伸びるように、前記端部縁を接合用パイプ材A内側に折り曲げた接合凹部3,3とからなる。また、前記接合部1の加工方法は、中間加工と仕上げ加工との2工程で行い、中間加工では、相対する一対のくちばし部2,2間部分に、円弧状に形成された断面円弧部3a,3aとを成型し、仕上げ加工において、前記断面円弧部3a,3aを変形して、前被接合用パイプ材Bの外周に対応して凹んだ円弧状に伸びるように、接合用パイプ材A内側に折り曲げ成型して接合凹部3,3を成型するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の被接合用パイプ材に対して直交する方向からその端部を接合するための接合用パイプ材の接合部及びこの接合部の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接合用パイプ材の接合部は、被接合用パイプ材の外周形状に対応するよう円弧状にカットしたものが一般的である(特許文献1参照。)。そして、両パイプ材の接合にあたっては、被接合用パイプ材と接合用パイプ材の各中心線が互いに直角になるようにして円筒状の被接合用パイプ材外周に接合用パイプ材端部の接合部を当接した状態でアーク溶接するというものである。
【0003】
【特許文献1】特許第2696714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の接合用パイプ材の接合部は、カットの際に切り屑が発生してその処分に手間と費用がかかるとともに、このカットをカット刃で行う場合は、使用するカット刃の交換頻度が高いため経費がかさむという問題がある。また、前記従来の接合部は接合用パイプ材の厚みに対応する切断面の溶接面積が小さいためパイプ材の用途によっては、接合力不足となる場合があるほか、前記アーク溶接の際に前記切断縁が溶け落ち易いという問題もあった。
【0005】
本発明は、前記各問題を解消することを課題とし、該課題を解決した接合用パイプ材の接合部及びこの接合部の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の目的を達成するために、請求項1に記載の接合用パイプは、接合用パイプ材端部と同じ高さで相対する2箇のくちばし部と、これらくちばし部間部分をそれぞれ被接合用パイプ材の外周に対応して凹んだ円弧状に伸びるように、前記端部縁を接合用パイプ材内側に直角に折り曲げた接合凹部とからなるものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、接合用パイプの接合部の加工方法は、接合用パイプ材端部と同じ高さで相対する2箇のくちばし部と、各くちばし部間部分に、断面円形の円弧状に形成された断面円弧部とを成型する中間加工の後、前記各くちばし部間をそれぞれ被接合用パイプ材の外周に対応して凹んだ円弧状に伸びるように、前記断面円弧部を接合用パイプ材内側に直角に折り曲げ成型して接合凹部を成型するという仕上げ加工を行うというものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、接合用パイプの接合部の加工方法は、請求項2記載の両断面円弧部の各端部間の最大幅長と接合用パイプ材外周の直径の比が60/100〜65/100であるというものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の接合用パイプ材の接合部は、製造に際して、従来のもののように切り屑が発生しないので、切り屑の処分に手間と費用がかからないとともに、前記カット刃の交換も必要ないうえ、直角に折り曲げた接合凹部の面積、すなわち溶接面積が大きいので、接合力が強いほか、アーク溶接の際に接合用パイプ材の縁部が溶け落ちることがないという効果を奏する。
【0010】
請求項2に記載の接合部の加工方法は、各くちばし部間部分に円弧状に形成された断面円弧部とを成型した後、仕上げ加工によって前記断面円弧部を折り曲げ成型するので、接合凹部を容易に成型できるという効果を奏する。
【0011】
両断面円弧部の縁部間の最大幅長(L1)と接合用パイプ材外周の直径(L0)の比を60/100〜65/100とするので、直角折り曲げ部をもつ接合凹部を確実に成型できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の好適な実施形態を図1〜図16に基づいて詳細に説明する。ここにおいて、図1は接合パイプ材の接合端部の正面図、図2は同じく側面図、図3は同じく平面図、図4は図1のA−A線断面図、図5は図2のB−B線断面図、図6は接合パイプ材を被接合パイプ材に当接した溶接前の状態を示す側面図、図7は中間加工を施した接合用パイプ材の接合端部の平面図、図8は図7のC−C線断面図、図9は図7のD−D線断面図、図10は中間加工用金型の側面図、図11は図10のE−E線断面図、図12は図10のF−F線断面図、図13は仕上げ加工用金型の側面図、図14は図13のG−G線断面図、図15は図13のH−H線断面図、図16はスェージング装置の正面図である。
【0013】
図1〜図6に示すように、断面円形の鉄製接合用パイプ材Aの接合部1は、前記接合用パイプ材A端部に設けるもので、相対位置する2箇のくちばし部2,2と、このくちばし部2,2間をそれぞれ被接合用パイプ材の外周に沿うような凹んだ円弧状に伸びるように、前記端部縁を接合用パイプ材A内側に折り曲げた接合凹部3,3とからなるものである。
【0014】
前記接合部1の加工方法は、中間加工用型金4を用いる中間加工と、仕上げ加工用金型5を用いる仕上げ加工とからなるが、これら加工を説明する前に前記中間加工用金型4と前記仕上げ用金型5を順次説明する。
【0015】
図10〜図12に示すように、中間加工用金型4は、一端側の大径部6に、前記接合用パイプ材Aの外径に対応した内径をもつパイプ挿入可能なパイプ受入れ凹部7を設ける。このパイプ受入れ凹部7は、その奥端近傍の内面に断面円弧に形成した円弧面成型部8と、前記円弧面成型部8の互いに相対する位置に、接合用パイプ材Aの接合部1のくちばし部2,2を形成するための一対の逃げ溝9,9を有する。また、前記円弧面成型部8の奥端には、延長して断面形状が直線となるテーパー状の傾斜面8aと設け、パイプ受け入れ凹部7は、中間加工用金型4他端側の小径部10に設けた中央孔11に連通するものである。
【0016】
図13〜図15に示すように、仕上げ用金型5は、一端側の大径部12に、接合用パイプ材Aの外径に対応した内径をもつパイプ受入れ凹部13を設けるとともに、前記パイプ受入れ凹部13を径方向に貫通するように丸棒状の仕上げ成型部14を設ける。この仕上げ成型部14外周面は、接合用パイプ材Aの接合部1の接合凹部3に対応するように形成する。また、パイプ受入れ凹部13は、仕上げ加工用金型5他端側の小径部15に設けた中央孔16に連通している。
【0017】
次に、図1〜図5、図7〜図9及び図16に基づいて前記加工方法を加工工程順に説明するが、この説明の前にこれら加工に使用する公知のスェージング装置17を説明する。図16に示すように、スェージング装置17は、基台上に、中間加工用金型受け18a及び仕上げ加工用金型受け18bを備えた金型取り付け部18と、この金型取り付け部18と対向するように配置し、一対のパイプ受け19a,19bを備えたパイプ取り付け部19とを備える。前記パイプ取り付け部19は、前記金型取り付け部18に対して接離移動するとともに、その水平方向に伸びる中心軸上を回転して、各パイプ受け19a,19bの上下位置を変え得るように構成してある。
【0018】
以下に、前記スェージング装置17を用いた接合用パイプ材Aの加工方法を加工工程を追って説明する。
【0019】
(第1加工工程)
スェージング装置17の金型取り付け部18の中間加工用金型受け18aに中間加工用金型4を、また仕上げ加工用金型受け18bに仕上げ加工用金型5を各取り付ける一方、パイプ取り付け部19のパイプ受け19a(上側)に接合用パイプ材Aを取り付ける。
【0020】
(第2加工工程:中間加工)
スェージング装置17を作動させて、前記パイプ取り付け部19を前記金型取り付け部18に向けて移動させ、前記中間加工用金型4の前記パイプ受入れ凹部7内に前記パイプ受け19aに取り付けられた接合用パイプ材A端部を圧入する。図7〜図9に示すように、この圧入により、接合用パイプ材A端部の、互いに対向する逃げ溝部9,9に突入した部分はくちばし部2,2に成型され、前記くちばし部2,2間部分は、円弧面成型部8で円弧に形成されて断面円弧部3a,3aが成型される。図7に示すように、両断面円弧部3a,3aの各端部間の最大幅長(L1)と接合用パイプ材Aの外径(L0)との比は、60/100〜65/100となるように形成してある。
【0021】
(第3加工工程)
スェージング装置17を初期位置に戻し、パイプ取り付け部19を回転させパイプ受け19a,19bの上下位置を入れ換え、上側位置になったパイプ受け19bに新たな接合用パイプ材Aを取り付ける。
【0022】
(第4加工工程:仕上げ加工)
前記第2加工工程と同様に、スェージング装置18を作動させ、前記中間加工用金型4には前記第3加工工程で取り付けた新たな前記接合用パイプ材Aと、前記仕上げ加工用金型5には第2加工工程で成型した接合用パイプ材Aとを、中間加工用金型4のパイプ受入れ凹部7と仕上げ加工用金型5のパイプ受入れ凹部13にそれぞれ圧入する。これら圧入によって、前記新たな接合用パイプ材Aは、中間加工済み接合用パイプ材Aとなる(第2加工工程と同じ)。一方、パイプ受入れ凹部13に圧入された前記中間加工済み接合用パイプ材Aは、両くちばし部2,2が円形棒状の仕上げ成型部14外周の両脇に位置し,前記断面円弧部3a,3aが前記仕上げ成型部14外周の前面に当接する状態で押し当てられ、前記断面円弧部3a,3aが変形して、くちばし部2,2間を円弧状に伸びるように、前記端部の円周部分を接合用パイプ材A内側に折り曲げた接合凹部3,3が成型され、前記接合部1となる。この断面円弧部3a,3aが、接合用パイプ材A内側に折れ曲がった接合凹部3,3に確実に変形するためには、第2加工工程に述べたように、断面円弧部3aの端部間の最大幅長(L1)と接合用パイプ材Aの外径(L0)との比が60/100〜65/100になることが好ましい。前記比が60/100以下の場合は、断面円弧部3aが接合用パイプ材A外周に対する立ち上がり角度が小さ過ぎて、第2加工工程において接合用パイプ材A折り曲がり基部である断面円弧部3a基部及びその近傍は正規の角度で折れ曲がるが、端部縁側は角に下り曲がって接合用パイプ材Aの端部側とは反対側に湾曲した状態のものになり易い。そして、このように、端部縁側が接合用パイプ材Aの端部側とは反対側に湾曲すると、接合凹部3と被接合用パイプ材B外周面との接合面積が小さくなって、接合力が弱くなるという不都合がある。また、前記比が65/100以上の場合は、断面円弧部3aが接合用パイプ材A外周に対する立ち上がり角度が大き過ぎて、接合用パイプ材Aの断面円弧部3a基部に大きな力がかかり、接合用パイプ材Aの径方向外側にはみ出たものになり易いという不都合がある。そして、このように、外側にはみ出たものは、見栄えが悪いだけでなく、接合したパイプ材の用途によっては使用できない場合もあるという不都合がある。
【0023】
(第5加工工程)
スェージング装置17を初期位置に戻し、パイプ受け19a(下側)から完成した接合部1をもつ接合用パイプ材Aを取り外した後、パイプ取り付け部19を回転させパイプ受け19a,19bの上下位置を入れ換え、上側位置になったパイプ受け19aに新たな接合用パイプ材Aを取り付ける。以下は、前記第4加工工程と同様の作業を順次行う。
【0024】
なお、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、例えば、被接合用パイプ材Bは、接合用パイプ材Aを同径でなくともよいほか、接合用パイプ材Aは鉄製でなくとも金属製であればよい。また、スェージング装置17はプレス機に代えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】接合パイプ材の接合端部の正面図。
【図2】同じく側面図。
【図3】同じく平面図。
【図4】図1のA−A線断面図。
【図5】図2のB−B線断面図。
【図6】接合パイプ材を被接合パイプ材に当接した溶接前の状態を示す側面図。
【図7】中間加工を施した接合用パイプ材の接合端部の平面図。
【図8】図7のC−C線断面図。
【図9】図7のD−D線断面図。
【図10】中間加工用金型の側面図。
【図11】図10のE−E線断面図。
【図12】図10のF−F線断面図。
【図13】仕上げ加工用金型の側面図。
【図14】図13のG−G線断面図。
【図15】図13のH−H線断面図。
【図16】スェージング装置の正面図。
【符号の説明】
【0026】
A 接合用パイプ材
B 被接合用パイプ材
1 接合部
2 くちばし部
3 接合凹部
4 中間加工用金型
5 仕上げ加工用金型
6 大径部
7 パイプ受入れ凹部
8 円弧面成型部
8a 傾斜部
9 逃げ溝
10 小径部
11 中央孔
12 大径部
13 パイプ受入れ凹部
14 仕上げ成型部
15 小径部
16 中央孔
17 スェージング装置
18 金型取り付け部
18a 中間加工用金型受け
18b 仕上げ加工用金型受け
19 パイプ取り付け部
19a パイプ受け
19b パイプ受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の被接合用パイプ材に対して直交する方向から端部を接合する円筒状の接合用パイプ材の接合部であって、接合用パイプ材端部に相対するよう設けた2箇のくちばし部と、これらくちばし部間部分をそれぞれ被接合用パイプ材の外周に対応して凹んだ円弧状に伸びるように、前記端部縁を接合用パイプ材内側に折り曲げた接合凹部とからなる接合用パイプ材の接合部。
【請求項2】
請求項1記載の接合用パイプ材の接合部の加工方法であって、接合用パイプ材端部に相対する2箇のくちばし部と、各くちばし部間部分に、円弧状に形成された断面円弧部とを成型する中間加工の後、前記各くちばし部間をそれぞれ被接合用パイプ材の外周に対応して凹んだ円弧状に伸びるように、前記断面円弧部を接合用パイプ材内側に折り曲げ成型して接合凹部を成型するという仕上げ加工を行うことを特徴とする接合用パイプ材の接合部の加工方法。
【請求項3】
請求項2記載の断面円弧部の各端部間の最大幅長(L1)と接合用パイプ材外周の直径(L0)の比が60/100〜65/100であることを特徴とする接合用パイプ材の接合部の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−248088(P2009−248088A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94821(P2008−94821)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(302049932)京葉ベンド株式会社 (2)
【Fターム(参考)】