説明

接合装置および接合方法ならびに電池

【課題】治具等の設置が困難な場所を溶接する場合であっても、容易な方法でスパッタの発生を抑制すると共に、接合面積を確保することを目的とする。
【解決手段】レーザ光の導波路となる中空ツール2に、先端ほど径が細くなる環状ノズル3を設け、狭く深い部分を溶接する際に、環状ノズル3を溶接部分に挿入し、中空ツール2を通って環状ノズル3から溶接部分にレーザ光1を照射することにより、レーザ光1が直接照射される溶接部分が溶融接合すると共に、環状ノズル3がレーザ光1の照射を受けて加熱されることにより環状ノズル3と接触する溶接部分が熱拡散接合することにより、治具等の設置が困難な場所を溶接する場合であっても、容易な方法でスパッタの発生を抑制すると共に、接合面積を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治具の設置が困難な箇所にて接合を行う接合装置および接合方法ならびにそれらを用いて製造された電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の接合方法について、図7および図10を用いて説明する。
図7は電池の構造を示す図であり、図7(a)は縦断面図、図7(b)は底面図である。図10は従来の接合方法を説明する図である。
【0003】
従来から図7に示すような円筒型リチウム電池の円筒缶76と負極の電極7の接合方法として、広く抵抗溶接機によるスポット溶接が使用されている。
この原理は、ニッケルないし、ニッケルメッキされた銅クラッド材を、ニッケルメッキされた深絞り円筒形状の鉄缶(以下円筒缶76と略す)の内面底で、長い棒状のタングステン電極で挟み込み、大電流を流して接触部の接触抵抗による発熱で接合界面の金属を溶解して溶接するものである。しかし、接触部を大電流でショートさせるのでスパッタを皆無にするのは困難である。そのため、タングステン電極には積層構造の薄膜電極が接合されるが、スパッタ混入により正極板と負極板とが内部短絡して急激な温度上昇が発生する恐れがあり、信頼性の確保が困難であった。
【0004】
スパッタを削減する有効な上記抵抗溶接以外の方法について図10を用いて説明する。
この方法は、図10に示すように、金属片91aと93を筒状治具で押えて、レーザ光Aを照射することにより接合界面を溶解し、金属片91aと93とを接合する方法である。しかしこの方法では、樹脂や低融点金属であれば接合ができるが、ニッケル等融点が1000℃を超える金属を接合する場合は、熱が筒状治具に多く奪われ、融点を超えることは困難であり、高融点材料の接合には不向きである。万一接合できたとしても温度勾配により中心部のみで接合し、接合した面積が小さいので接合部の電気抵抗が高く、大電流を流す必要のあるEVやHEVでは発熱で本来のリチウム電池の高密度・大電流の能力を十分活かすことができなかった。しかも、スパッタが発生した場合、治具上方に空間が空いている為、スパッタが外へ飛び出して品質の低化を招くという問題点も残る。
【0005】
さらに、円筒缶リチウム電池の場合は、積層電極が巻いてあるため、円筒缶中心部に3mm径程度の穴しかあいておらず、そもそも押え治具を設置するのは物理的に困難である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
よって現在は殆どが抵抗溶接機で生産されているが、抵抗溶接機の溶接棒は毎日数回頻繁に交換する必要があると共に、スパッタ発生をなくすこともできず、後の充放電検査工程でスパッタによる不良を見つけることでしか対応できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−220164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するために、治具等の設置が困難な場所を溶接する場合であっても、容易な方法でスパッタの発生を抑制すると共に、接合面積を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の接合方法は、レーザ光の導波路を備える中空ツールと、前記中空ツールの先端に設けられて内壁が内向きのテーパ形状である中空の環状ノズルとを有し、前記環状ノズルを接合対象に接触させた状態で中空ツールを介して前記接合対象に前記レーザ光を照射することにより、前記レーザ光が直接照射される箇所を熱伝導型溶接し、前記環状ノズルの内壁に前記レーザ光が照射されて前記環状ノズルが加熱されることにより、前記接合対象の前記環状ノズルが接する部分を熱拡散接合することを特徴とする。
【0010】
また、前記レーザ光の照射により、前記接合対象の前記レーザ光が直接照射される箇所が前記接合対象の融点以上沸点以下の温度で液状化し、前記接合対象の前記環状ノズルが接する部分が前記接合対象の融点以下の温度で軟化することが好ましい。
【0011】
また、前記環状ノズルがセラミックス製であることが好ましい。
また、前記環状ノズルの前記接合対象と接触する面に凹凸を有することが好ましい。
また、前記凹凸を前記環状ノズルの内壁から外壁にわたって溝が形成されるように形成することが好ましい。
【0012】
また、前記導波路が光ファイバであっても良い。
また、前記中空ツールと前記光ファイバの間に隙間を設けることが好ましい。
さらに、本発明の接合方法は、レーザ光の導波路を備える中空ツールと、前記中空ツールの先端に設けられて内壁が内向きのテーパ形状である中空の環状ノズルとからなる接合装置を用いて接合対象を接合する接合方法であって、前記環状ノズルの先端を前記接合対象に圧接させる圧接工程と、前記中空ツールを介して前記環状ノズルから前記接合対象に前記レーザ光を照射する照射工程とを有し、前記レーザ光が直接照射される箇所を熱伝導型溶接し、前記環状ノズルの内壁に前記レーザ光が照射されて前記環状ノズルが加熱されることにより、前記接合対象の前記環状ノズルが接する部分を熱拡散接合することを特徴とする。
【0013】
また、前記照射工程が、第1のレーザパワーの第1のレーザ光を照射することにより前記接合対象を加熱する第1の照射工程と、前記第1のパワーよりパワーが大きく、前記第1のレーザ光より波長の短い第2のレーザ光で前記接合対象を接合する第2の照射工程とからなることが好ましい。
【0014】
また、前記第2のレーザ光の照射により、前記接合対象の前記第2のレーザ光が直接照射される箇所が前記接合対象の融点以上沸点以下の温度で液状化され、前記接合対象の前記環状ノズルが接する部分が前記接合対象の融点以下の温度で軟化されることが好ましい。
【0015】
また、前記照射工程中に、前記接合対象に不活性ガスを流すことが好ましい。
また、前記照射工程中に、前記接合対象の前記環状ノズルが圧接される面の裏面を加熱することが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の電池は、円筒缶と、前記円筒缶内に内蔵される積層電極と、前記円筒缶内に前記円筒缶低部を露出して形成される中空部と、前記円筒缶低部に前記接合方法で接合される電極とを有することを特徴とする。
【0017】
以上により、治具等の設置が困難な場所を溶接する場合であっても、容易な方法でスパッタの発生を抑制すると共に、接合面積を確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
レーザ光の導波路となる中空ツールに、先端ほど径が細くなる環状部を設け、狭く深い部分を溶接する際に、環状ノズルを溶接部分に挿入し、中空ツールを通って環状ノズルから溶接部分にレーザ光を照射することにより、レーザ光が直接照射される溶接部分が溶融接合すると共に、環状ノズルがレーザ光の照射を受けて加熱されることにより環状ノズルと接触する溶接部分が熱拡散接合することにより、治具等の設置が困難な場所を溶接する場合であっても、容易な方法でスパッタの発生を抑制すると共に、接合面積を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の接合方法の工程を説明する断面図
【図2】本発明の中空ツールの構成例を示す図
【図3】本発明の環状ノズルの構成例を示す図
【図4】本発明のレーザパルスを制御する接合方法を説明する図
【図5】本発明のレーザパルスを制御する接合方法を説明するレーザパワー遷移図
【図6】本発明の環状ノズルの先端に凹凸を形成する場合の構成例を示す図
【図7】電池の構造を示す図
【図8】本発明の接合形状を説明する概略底面図
【図9】本発明の接合形状例を示す概略底面図
【図10】従来の接合方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、円筒缶電池の底部に電極を接合する場合の様に、開口部の面積が狭く深さの深い凹部等の底部に溶接を施す接合方法および接合装置に関するものである。このような場所においては、接合に際し、押さえ治具等を設けることができないので、レーザ光を接合箇所に照射するためのレーザ光導波路となる光ファイバ等を備える中空ツールと、中空ツールの先端に設けられ、先端に向かうにつれて中空部分の面積が狭くなる環状ノズルとを備える接合装置を用いて接合を行う。具体的には、接合箇所に環状ノズルが接触するように、中空ツールを凹部底部まで挿入し、中空ツールを介してレーザ光を接合箇所に照射することによって接合を行う。このような方法で接合を行うことにより、接合箇所のレーザ光が直接照射される箇所は熱伝導型溶接がなされる。同時に、環状ノズル内壁にレーザ光が照射されることにより、環状ノズルが加熱され、環状ノズルに接する接合箇所が環状ノズルの加圧と熱により熱拡散接合がなされる。このように、治具等の設置が困難な場所を溶接する場合であっても、接合箇所を環状ノズルで覆うことにより容易な方法でスパッタの発生を抑制すると共に、接合箇所が熱伝導型溶接と熱拡散接合とにより2重に接合されるため、接合面積を確保することができる。
【0021】
まず、本発明の概略を主に円筒缶電池を例に説明する。
本発明の基本的な原理は、熱に弱い積層電極の中央部の僅かな空間をカテーテルのようにくぐり、円筒缶電池の様に底の深いテール部にノズル先端を当て、光ファイバ等を介し出射されたレーザ光を封じ込めて熱伝導型溶接ないし熱拡散接合することによりスパッタの発生を完全に封じ込める方式である。
【0022】
更に、電気自動車(EV)やハイブリッドカー(HEV)用途等、接合抵抗を減らす必要がある製品を接合する場合は、ノズル先端にも低輝度ロングパルスレーザをあてることにより予熱した後、高輝度短パルスに切り替え、ノズル押え部で重ね合わせた金属界面で熱拡散接合させると共に、レーザ直接照射面では熱伝導型溶接を行うことにより、スパッタを積層電極内に発生させずに高品質で安定した接合を実現するばかりでなく、接合面積を大きくしてEVやHEVに必要な大電流を流せるように、電池自体の性能を向上させることができる。
【0023】
例えば、本発明に係わる接合方法は、レーザ光をほぼ平行に透過させる中空ツールの加圧部材の先端に先が尖ったノズルの環状面を設け、第2部材である鉄缶等の円筒缶内部のテール部に接触させて載置された第1部材である電極板にノズルの環状面を接触させ、環状面内部を通過するレーザ光で直接第1部材を加熱すると共に、先端の環状面は先が内側に開口が小さくなっている為、環状面にレーザ光があたり、レーザ光を一部吸収して発熱して伝熱で電極板を加熱と加圧で変形させて、第1部材である電極板と第2部材である円筒缶の内部テール部とを接合する。直接レーザ光が照射される面の反対面の接合界面ではレーザ溶接による熱伝導型溶接または熱拡散接合となり、周囲の加圧部では熱拡散接合され、接合態様および接合箇所が2重になっているので、キーホール型による接合に比べ、接合面積を大きくでき、大電流が必要なEVやHEV用電池の性能を大きく向上させることができる。
【0024】
また、中空の加圧部材である中空ツール内でレーザ照射されるので、スパッタや金属粒子を中空の加圧部材内に閉じ込めることができ、周囲の積層電極内にこれらのスパッタや金属粒子が入りショートを起こす危険性をなくすことができ、極めて安全で信頼性が高い接合が実現できる。
【0025】
なお、加圧部材の先端はレーザを適度に吸収して発熱する中空のセラミックスを用いることにより耐摩耗性や耐久性が向上するので好ましい。
本発明に係わる他の接合方法としては、中空ツールで電極を加圧した状態で、第1部材である電極のレーザ照射面と、中空ツールの先端部のレーザ光部分吸収部を、低輝度でロングパルスである第1のレーザ光で電極が溶融直前の温度まで加熱しておき、1m秒から100m秒程度の高輝度で短パルスのレーザパワーに切り替えることにより、電極と円筒缶との接触面の融点を瞬時で超えて熱伝導型のレーザ溶接をさせることも可能である。また、中空ツール先端の加圧環状面の電極の反対面の接合界面では、融点に達していなくても加圧力により熱拡散接合ができる。
【0026】
こうして2重の大きな面積の電極接合ができるので、EVやHEV用として大電流が流せる高品質な高性能電池を提供することができる。
また、中空ツールの先端加圧部に菊座の様な複数の凹凸部を設けることにより、本接合方式で接合された電極は回転モーメントに対して強い接合が実現できるので振動等に強い信頼性の高い電池を提供することができる。
【0027】
また、中空ツール内に窒素等の酸化防止ガスやアルゴン等の不活性ガスを流しながら電極を加圧すると、加圧により密閉される直前までこれらのガスが流れていることにより、密閉された空間は極めて酸素含有量の低い状態となるため、接合箇所の酸化を防止することができる。よってニッケルメッキされた鉄製の円筒缶の電極接合では酸化不十分な鉄が表面にでないため、電池内の溶液での腐食を防止でき信頼性の高い電池を提供できる。
【0028】
また、中空ツール内のテーパ部まで光ファイバにてレーザ光を導波すると、中空ツールの曲がりの影響を受けずに、よりロバストな接合装置が実現できる。ここで光ファイバと中空ツールは円筒が作成し易いが、光ファイバをHカットする等により、レーザ照射面で対象な2つの空間からでてくる不活性ガスが衝突する構造にしておくことができ、より不活性ガス純度の高い状態となるのでニッケル電極とニッケルメッキされた鉄缶の接合部にニッケルで覆われた状態をしっかりと築くことができるので、電池内の溶液での腐食を防止でき信頼性の高い電池を提供できる。
【0029】
また、電極と円筒缶テールとの接合部の反対の面を予熱または同時加熱すると、より短時間で高い接合品質を得ることができる。
なお、レーザで裏面をアシスト加熱する場合は照射面で対象な2つの空間からでてくる不活性ガスが衝突する構造にしておくと、より不活性ガス純度の高い状態となるので円筒缶の表面はニッケルメッキダメージを無くせるので、外的腐食に強い信頼性の高い電池を提供できる。
【0030】
さらに、前記接合方法で接合することにより、第2部材である円筒缶の中には積層電極が内蔵されていて、円筒缶の中心軸には、積層電極が無い空間になっていて、積層電極に接続された電極と、円筒缶の底部が2重の接合痕がある電池を形成することができ、通常の抵抗溶接より接合面積が広い為、EVやHEV用として大電流が流せる高品質な高性能電池を提供することができる。
【0031】
以下、本発明の接合方法および電池について、円筒缶電池の底部に電極を溶接する場合を例に図1〜図9を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の接合方法の工程を説明する断面図、図2は本発明の中空ツールの構成例を示す図、図3は本発明の環状ノズルの構成例を示す図、図4は本発明のレーザパルスを制御する接合方法を説明する図、図5は本発明のレーザパルスを制御する接合方法を説明するレーザパワー遷移図、図6は本発明の環状ノズルの先端に凹凸を形成する場合の構成例を示す図、図8は本発明の接合形状を説明する概略底面図、図9は本発明の接合形状例を示す概略底面図である。
【0032】
まず、図1を用いて本発明の接合工程を時系列に説明する。ここでは、レーザ光として同輝度を維持する矩形波を用いた場合を例に説明する。
以下の説明においては、円筒缶電池の内部底面である円筒缶テール部6に電極7を溶接する際に、円筒缶電池の積層電極の隙間から中空ツール2を挿入し、環状ノズル3を円筒缶テール部6上に載置した電極7に接触させ、中空ツール2を介してレーザ光1を電極7に照射することによって、円筒缶テール部6に電極7を接合する方法を例に説明する。
【0033】
図1(a)に示すように、レーザ光1をほぼ平行で透過させる中空ツール2に設けられた先が尖った環状ノズル3は、中空部分の内壁が内側に狭まるようにテーパを施した形状であり、レーザ光1の内の環状ノズル3に直接照射される一部のレーザ光4によって加熱される。円筒缶テール部6上に電極7を載置しておき、中空ツール2の内部を流れている不活性ガス8が電極7の電極表面9に吹きつけられている。なお、実際のレーザ照射は中空ツール2が電極7に接触あるいは加圧された後に行われる。
【0034】
また、円筒缶テール部6を低熱伝導性の支持台10で支持し、不活性ガス8がカウンタブローで吹きつけられる加圧部の反対側の面12に、さらにアシストレーザ光13を照射し、円筒缶テール部6を予熱ないしアシスト加熱しても良い。アシスト加熱する場合は、不活性ガスによる酸化を抑制できるため、円筒缶テール部6の裏表面のニッケルメッキダメージを無くせるので、外的腐食に強い信頼性の高い電池を提供できる。
【0035】
図1(b)は中空ツール2の環状ノズル3が電極7に接触した状態であり、接触部5は、電極7が環状ノズル3で囲まれて密閉状態になり高純度な不活性ガス雰囲気になる。
図1(c)は加圧状態でレーザ光1を照射し続けて、電極7から円筒缶テール部6にわたり溶融部14が形成された状態を示す。この時中空ツール2の先端の環状ノズル3で加圧された電極7の環状面15の反対面は中空ツール2の環状ノズル3がレーザ光4により加熱されるため、環状ノズル3による加圧と加熱により接合されて熱拡散接合部16が形成される。
【0036】
図1(d)は、レーザ照射を終えて中空ツール2と電極7とを分離した状態を示しており、溶融固化部17と熱拡散接合部16とで円筒缶テール部6と電極7とが接合されている。なお、中空ツール2の加熱と加圧によりくぼみ等の変形19が観察されることがある。
【0037】
図2(a)は、中空ツール2の形態例を示す断面図である。この形態例では、中空ツール2の導波路が光ファイバ21で構成され、コア23を通ってレーザ光が照射される。光ファイバ21の内部は、コア23の周辺の一部に中空部を設け、Nガス26が通過するようにしている。例えば、中空部は、コア23を挟んで対向する光ファイバ21の周辺の一部を切断面が互いに平行となるように2箇所でHカットされてなる。そして、Hカットされた部分である中空部をNガス26が通過する構成にしている。このように、中空ツール2を光ファイバ21を用いて形成した場合でも、中空部を形成することによりNガス26等を供給しながら接合することができる。
【0038】
図2(b)は中空ツール2の別の形態例を示す側面図である。
中空ツール2の先端にレーザ光の吸収率の高いSiC等の耐熱セラミックス製のノズル20を高温用接着材18で接着していて、中空ツール2の内部には高温耐熱の光ファイバ21がテーパ部22まで挿入されている。この光ファイバ21のコア23から出射されるレーザ光の内、直接電極7を加熱する直接加熱ビーム24とノズル20の筒の内壁を加熱し、伝熱で電極7を間接的に加熱するビーム25で電極7が加熱されている。
【0039】
さらに、図2(b)に示すように、ノズル20として、耐熱性が高くレーザ光を部分吸収して電極7を融点近くまで加熱でき、同時に導電性を有する銅タングステンのような導電性金属を用いた場合は、ノズル20で加圧する時に、銅などの通電性の支持台10とステンレスや銅等の中空ツール間に電圧27をかけて接触抵抗による熱で加熱アシストしても良い。
【0040】
図3はさらに別形態の実施例の側面図であり、中空ツール2の先端に環状ノズルとしてBN等の耐熱・レーザ光透過性セラミックスでできたノズル31を取り付け、ノズル31にレーザ光を集光する凸レンズ30を設けることにより、光ファイバ21のコア部23から出射したレーザ光32を集光ビーム33にしてNiや銅、アルミ等の電極7をより効率的に加熱溶融させる。
【0041】
なお、このレーザ光透過性セラミックノズル31は部分的にレーザ光32を吸収して電極7の融点近傍まで高温に加熱されるため、中空ツール2で加圧することにより、電極7と円筒缶テール部6を熱拡散接合することができる。
【0042】
次に、図4,図5を用いて接合方法の例を示す。
図4はレーザパワーP(W)の波形制御により、より効果的に接合できる過程を示す。
図4はノズル20で電極7を加圧した状態を示し、図5はノズル20を介して照射するレーザ光1のレーザパワーの時間遷移を示す。
【0043】
電極7のレーザ照射面40と、ノズル20の先端部のレーザ光部分吸収部41には、まず、図5に示す低輝度のレーザパワーP1でロングパルスである第1のレーザ光46を照射し、電極7のレーザ照射面40の加熱部42と円筒缶の伝熱部43を溶融直前の温度まで時間t1をかけて予熱する。この時、ノズル20の先端部で加圧されている加圧電極部44は、レーザ光1で加熱されたノズル先端にあるレーザ光部分吸収部41からの伝熱で融点近くまで同じ時間t1をかけて温度上昇される。
【0044】
次に、数m秒程度の短時間t2で第1のレーザ光46より波長の短い高輝度のレーザパワーP2の第2のレーザ光47に切り替えることにより、電極7において、電極7と円筒缶テール部6との接触面にある加熱部42と伝熱部43は、電極7の形成材料の融点を超えて沸点を超えない温度で液状化し、電極7と円筒缶テール部6とが熱伝導型のレーザ溶接がなされる。その際、中空ツール先端部で加圧されている加圧電極部44の反対面の接合界面45では、電極7が電極7の形成材料の融点以下の温度で軟化し、加圧力により電極7と円筒缶テール部6とが熱拡散接合される。
【0045】
このように、照射するレーザ光1のレーザパワーを制御することにより、あらかじめ低輝度のレーザ光46で接合箇所を予熱させておくことにより、実際の接合を高輝度レーザ光で瞬時に行うことができると共に、熱伝導型溶接と熱拡散接合との2重の大きな面積の電極接合ができるので、EVやHEV用として大電流を流すことのできる高品質な高性能電池を提供することができる。
【0046】
次に、環状ノズルの先端の構成例について図6を用いて説明する。
図6は第1の実施例の接合方法において、加圧部を凸凹にして回転モーメントに対して強い接合を実現した例を示す。
【0047】
図6(a)に側面図、図6(b)に底から見た図を示し、中空ツール2の先端加圧部60を菊座の様な複数の凹凸を有する構成に加工している。つまり、環状ノズルの電極7と接触する先端加圧部60に1または複数の凹凸を形成する構成を例示している。
【0048】
図6(c)は先端加圧部60で接合した電極7の上面図である。くぼみ部61は先端加圧部60に形成された凸部で加圧されることによって形成された接合部表面外観であり、接合界面63は熱拡散接合される。平面部62は凹部で加圧された部位である。
【0049】
なお、先端加圧部60の平面部62の反対側の接合界面63は必ずしも全ては熱拡散接合されていなくても溶接と2重の接合原理で接合されている為、信頼性の高い接合を実現している。
【0050】
また、平面部62と電極7の間には接合終了まで隙間があった方が良い場合がある。その場合とは、電極7のレーザ照射面である溶融部14から発生する金属蒸気64が流速の無い閉鎖空間では、金属蒸気64の自由分子運動で拡散するため、中空ツール2内に光ファイバ21や、セラミックレンズ機能を備えたノズル先端部31(図3参照)に金属蒸気64が付着することがあるとレーザ透過率が低下するが、その付着防止に有効であるからである。即ち、図2のようにノズル先端20を完全に電極7に押し当てて、完全に閉じてしまうとNガスやアルゴンガス雰囲気ではあるが、流速が無くなる為、気化した金属蒸気64が自由分子運動で拡散し、光ファイバ21のコア23からの出口65に付着して、出口65にダメージを起こすことがある。
【0051】
これに対して、上記のように先端加圧部60に凹凸を形成し、先端加圧部60の内壁から外壁にわたって溝を形成することにより、凹凸の凸部を電極7に加圧接触させながら、溝となる凹部の底を電極7から離間させることも可能となるため、平面部62と電極7の間に形成される僅かな隙間66から、高圧・低流量の不活性ガス67が接合中も流れ出るようにすることができ、出口65への金属蒸気64の付着を防止して、ダメージを防ぎ、安定した高品質の接合を維持することができる。
【0052】
また、本接合方式で接合された電極7は、くぼみ部61が接合箇所にアンカー効果をもたらせ、円筒缶回転モーメントに強い接合が実現できるので、振動等に強い信頼性の高い電池を提供することができる。
【0053】
そして、中空ツール2内に不活性ガス8を流しながら電極7を加圧すると、これらの不活性ガス8が流れていることにより、密閉された空間は極めて酸素含有量の低い状態となり酸化を防止できる。よってニッケルメッキされた鉄製の円筒缶テール部6の電極接合では酸化不十分な鉄が表面にでないため、電池内の溶液での腐食を防止でき信頼性の高い電池を提供できる。
【0054】
本発明の接合方法を用いて形成した電池の構成について、図7〜図10を用いて説明する。
図7に本発明の接合方法で接合された接合体の1実施例として電池の構造を示す。
【0055】
本発明の電池は、円筒缶76の中に積層電極70が内蔵されており、円筒缶76の中心軸71近傍では積層電極70が無い空間が形成される構造である。図8は円筒缶76の底部72から積層電極70に接続された電極7を除去した概念図であり、溶融部75とドーナッツ型熱拡散接合部73の2重の接合痕がある電池である。なお図9に別の2重の接合痕を示す。これは図6で示した凸凹が形成されたノズル先端形状によって作られ、溶融部75と凹型熱拡散接合部74とが形成されている。
【0056】
これらの接合体は通常の抵抗溶接より接合面積が広い為、EVやHEV用として大電流が流せる高品質な高性能電池を提供することができる。
上記においては、円筒缶電池のテール接合をカテーテルの様なレーザ導波管を差し込んで加圧して接合する実施例で説明したが、同様なテール接合する形状であれば、電池に限らず金属や非金属がガラスや樹脂等材料を選ばずに加圧接合や熱接合できることは自明である。
【0057】
例えば、原子炉のような長い配管にもカテーテルのように入り込み、光ファイバでレーザエネルギーを供給して、補強板を接合することもできる。
また円筒缶に限らず、深絞りケースの内面テール部に電極や他の部品を加圧と加熱して接合することもできる。
【0058】
また、電極やケースにロウ材を塗っておいて加圧と加熱で接合できることも自明である。例えば、リチウム電池のアルミ缶底部にNiリードを接合する際に、あらかじめアルミ缶底部とNiリードとの間にアルミロウ材を塗っておき、その状態で加圧,加熱することによりアルミ缶底部とNiリードとを接合することができる。
【0059】
なお、他の銅箔等の積層箔電極にも有効である。
ここで、上記に例示した各実施例は互いに組み合わせて用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、治具等の設置が困難な場所を溶接する場合であっても、容易な方法でスパッタの発生を抑制すると共に、接合面積を確保することができ、治具の設置が困難な箇所にて接合を行う接合装置および接合方法ならびにそれを用いた電池等に関する。
【符号の説明】
【0061】
1・・・レーザ光
2・・・中空ツール
3・・・環状ノズル
4・・・一部のレーザ光
5・・・接触部
6・・・円筒缶テール部
7・・・電極
8・・・不活性ガス
9・・・電極表面
10・・・支持台
12・・・加圧部の反対の面
13・・・アシストレーザ光
14・・・溶融部
15・・・環状面
16・・・熱拡散接合部
17・・・溶融固化部
18・・・高温接着剤
19・・・くぼみ変形部
20・・・ノズル
21・・・光ファイバ
22・・・テーパ部
23・・・コア
24・・・直接加熱ビーム
25・・・間接加熱ビーム
26・・・Nガス
27・・・電圧
30・・・凸レンズ
31・・・ノズル
32・・・レーザ光
33・・・集光ビーム
40・・・レーザ照射面
41・・・レーザ光部分吸収部
42・・・加熱部
43・・・伝熱部
44・・・加圧電極部
45・・・接合界面
46・・・第1のレーザ光
47・・・第2のレーザ光
60・・・先端加圧部
61・・・くぼみ部
62・・・平面部
63・・・接合界面
64・・・金属蒸気
65・・・出口
66・・・隙間
67・・・高圧・低流量の不活性ガス
70・・・積層電極
71・・・中心軸
72・・・円筒缶の底部
73・・・ドーナッツ型熱拡散接合部
74・・・凹型熱拡散接合部
75・・・溶融部
76・・・円筒缶
80・・・積層箔電極
81・・・大電流電源
82・・・部分溶融部
91a・・・金属片
93・・・金属片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の導波路を備える中空ツールと、
前記中空ツールの先端に設けられて内壁が内向きのテーパ形状である中空の環状ノズルと
を有し、前記環状ノズルを接合対象に接触させた状態で中空ツールを介して前記接合対象に前記レーザ光を照射することにより、前記レーザ光が直接照射される箇所を熱伝導型溶接し、前記環状ノズルの内壁に前記レーザ光が照射されて前記環状ノズルが加熱されることにより、前記接合対象の前記環状ノズルが接する部分を熱拡散接合することを特徴とする接合装置。
【請求項2】
前記レーザ光の照射により、前記接合対象の前記レーザ光が直接照射される箇所が前記接合対象の融点以上沸点以下の温度で液状化し、前記接合対象の前記環状ノズルが接する部分が前記接合対象の融点以下の温度で軟化することを特徴とする請求項1記載の接合装置。
【請求項3】
前記環状ノズルがセラミックス製であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の接合装置。
【請求項4】
前記環状ノズルの前記接合対象と接触する面に凹凸を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の接合装置。
【請求項5】
前記凹凸を前記環状ノズルの内壁から外壁にわたって溝が形成されるように形成することを特徴とする請求項4記載の接合装置。
【請求項6】
前記導波路が光ファイバであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の接合装置。
【請求項7】
前記中空ツールと前記光ファイバの間に隙間を設けることを特徴とする請求項6記載の接合装置。
【請求項8】
レーザ光の導波路を備える中空ツールと、前記中空ツールの先端に設けられて内壁が内向きのテーパ形状である中空の環状ノズルとからなる接合装置を用いて接合対象を接合する接合方法であって、
前記環状ノズルの先端を前記接合対象に圧接させる圧接工程と、
前記中空ツールを介して前記環状ノズルから前記接合対象に前記レーザ光を照射する照射工程と
を有し、前記レーザ光が直接照射される箇所を熱伝導型溶接し、前記環状ノズルの内壁に前記レーザ光が照射されて前記環状ノズルが加熱されることにより、前記接合対象の前記環状ノズルが接する部分を熱拡散接合することを特徴とする接合方法。
【請求項9】
前記照射工程が、
第1のレーザパワーの第1のレーザ光を照射することにより前記接合対象を加熱する第1の照射工程と、
前記第1のパワーよりパワーが大きく、前記第1のレーザ光より波長の短い第2のレーザ光で前記接合対象を接合する第2の照射工程と
からなることを特徴とする請求項8記載の接合方法。
【請求項10】
前記第2のレーザ光の照射により、前記接合対象の前記第2のレーザ光が直接照射される箇所が前記接合対象の融点以上沸点以下の温度で液状化され、前記接合対象の前記環状ノズルが接する部分が前記接合対象の融点以下の温度で軟化されることを特徴とする請求項9記載の接合方法。
【請求項11】
前記照射工程中に、前記接合対象に不活性ガスを流すことを特徴とする請求項8〜請求項10のいずれかに記載の接合方法。
【請求項12】
前記照射工程中に、前記接合対象の前記環状ノズルが圧接される面の裏面を加熱することを特徴とする請求項8〜請求項11のいずれかに記載の接合方法。
【請求項13】
円筒缶と、
前記円筒缶内に内蔵される積層電極と、
前記円筒缶内に前記円筒缶低部を露出して形成される中空部と、
前記円筒缶低部に請求項8〜請求項12の接合方法で接合される電極と
を有することを特徴とする電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−255420(P2011−255420A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32695(P2011−32695)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】