説明

接合装置および接合方法

【課題】接着層を介した部材同士の接続信頼性を向上する。
【解決手段】上型11は、上加熱加圧部17を有する。下型12は、上下動可能な下加熱加圧部17と、上下方向に延在する支持ピン24とを有する。上加熱加圧部16、17には、クランプ面16a、17aが形成されている。支持ピン24は、下加熱加圧部17が上動することで相対的にクランプ面17aから退避し、下動することで相対的にクランプ面17aから突出する。支持ピン24がクランプ面17aから突出した状態で、支持ピン24は、ワークWを支持する。支持ピン24がクランプ面17aから退避した状態で、下加熱加圧部17は、支持ピン24から受け取ったワークWをクランプ面17aで載置したままクランプ面16aに押し当ててクランプする。上加熱加圧部16および下加熱加圧部17は、ワークWをクランプしたまま加熱加圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合装置および接合方法に関し、特に、基板に複数の電子部品を一括で接合する接合装置および接合方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2000−100837号公報(特許文献1)には、複数の半導体素子(半導体チップ)を一連のリードフレームに実装する装置において、リードフレームに半導体素子を順次に仮熱圧着し、仮熱圧着された半導体素子を一括して本熱圧着する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−100837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子部品(例えば半導体チップ)を基板(例えば配線基板)に実装する場合、電子部品の接続端子(例えば接続バンプ)と基板の接続端子(例えば接続パッド)は、確実に電気的に接続されている必要がある。また、接続端子間を保護し、電気的に分離するために、電子部品と配線基板との間には絶縁樹脂を設けて接続信頼性を確保する必要がある。なお、接続バンプとしては、例えば、はんだバンプ、金バンプなどの金属バンプが用いられ、また、接続パッドとしては、例えば、銅またはその合金などの金属パッドが用いられる。また、絶縁樹脂としては、例えば、NCF(Non Conductive Film)やNCP(Non Conductive Paste)の接着層が用いられる。
【0005】
例えば、接着層を介して基板上に電子部品が仮接合されたワークに対して、基板と電子部品とを本接合する場合、基板の金属パッドと電気的に接続される電子部品の金属バンプを溶融するまで加熱した後、加圧する必要がある。
【0006】
しかしながら、金属バンプが溶融するまでの時間と、接着層が硬化するまでの時間によっては、金属バンプと金属パッドとが電気的に接合(接続)される前に接着層が硬化してしまい、接続不良を起こす恐れもある。また、加熱時間が長くなると、接着層によっては予め混入している微細な空気が加熱により膨張あるいは発泡して、接続不良を引き起こすことも想定される。
【0007】
本発明の目的は、接着層を介した各部材の接続信頼性を向上することのできる技術を提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。本発明の一実施形態における接合装置は、接着層を介して積層された複数の部材を含むワークを、上型と下型とで挟み込んで各部材を接合する接合装置であって、前記上型は、前記ワークを加熱加圧する第1加熱加圧部を有し、前記下型は、前記ワークを加熱加圧する上下動可能な第2加熱加圧部と、前記第2加熱加圧部が上動することで相対的に前記第2加熱加圧部のクランプ面から退避し、前記第2加熱加圧部が下動することで相対的に前記第2加熱加圧部のクランプ面から突出する支持部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。この一実施形態によれば、接着層を介した各部材の接続信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態における動作中の接合装置を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に続く動作中の接合装置を模式的に示す断面図である。
【図3】図2に続く動作中の接合装置を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の接合装置の変形例を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態における動作中の接合装置を模式的に示す断面図である。
【図6】図5に続く動作中の接合装置を模式的に示す断面図である。
【図7】図6に続く動作中の接合装置を模式的に示す断面図である。
【図8】図7に続く動作中の接合装置を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態における動作中の接合装置を模式的に示す断面図である。
【図10】図9に続く動作中の接合装置を模式的に示す断面図である。
【図11】図10に続く動作中の接合装置を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明の一実施形態における製造工程中の半導体装置を模式的に示す断面図である。
【図13】図12に続く製造工程中の半導体装置を模式的に示す断面図である。
【図14】図13に続く製造工程中の半導体装置を模式的に示す断面図である。
【図15】本発明の一実施形態における接合技術の効果を説明するための図である。
【図16】図15に示す効果と比較説明するための図である。
【図17】本発明の一実施形態における接合技術の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0012】
(実施形態1)
本実施形態における接合装置は、接着層を介して積層された複数の部材を含むワークを、上型と下型とで挟み込んで各部材を接合するものである。図12および図14にそれぞれクランプ前およびクランプ後のワークWを示す。図12に示すワークWは、絶縁層8から露出する複数の接続パッド5(例えば銅パッド)と対応する複数の接続バンプ6(例えばはんだバンプ)とが位置合わせされて、配線基板2上に接着層4(例えばNCFまたはNCP)を介して電子部品3が仮接合されている。図14に示すワークWは、配線基板2の複数の接続パッド5と対応する電子部品3の複数の接続バンプ6とが電気的に接続されて、配線基板2上に接着層4を介して電子部品3が接合(フリップチップ接合)されている。
【0013】
図1などを参照して本実施形態における接合装置1Aを説明する。接合装置1Aは、配線基板2に複数の電子部品3が実装(電気的に接続)された半導体装置7(図14参照)を製造する半導体製造装置でもある。
【0014】
接合装置1Aは、上下方向に対向して配置され、ワークWを挟み込む上型11および下型12を含んで構成されている。本実施形態では、上型11が図示しない可動プラテンの中央部に固定して組み付けられ、下型12が図示しない固定プラテンの中央部に固定して組み付けられている。固定プラテンおよび可動プラテンは、それぞれの外周部で複数のタイバーによって接続されており、固定プラテンがタイバーに固定され、可動プラテンがタイバーで摺動されるように構成されたものである。なお、可動プラテンは、公知の昇降機構(電動モータやボールねじなどで構成された機構)により昇降可能(上下動可能)となっている。
【0015】
この固定プラテンと可動プラテンにより、上型11および下型12が離間して型開きした状態で、ワークWが下型12上に供給(搬入)される(図1参照)。また、上型11および下型12が近接して型締めした状態では、密閉空間31(チャンバ)が形成され(図2参照)、ワークWが挟み込まれる(図3参照)。なお、上型11を固定プラテン、下型12を可動プラテンに固定して組み付け、上型11に対して下型12を昇降するようにしても良い。
【0016】
このような接合装置1Aは、上型11および下型12の間に供給されたワークWをフローティング支持する支持機構10と、ワークWを加熱加圧する加熱加圧機構13と、クランプされたワークWを内包する空間をシールするシール機構14と、シールされた密閉空間を圧縮するチャンバ圧調整機構15とを備えている。支持機構10、加熱加圧機構13およびシール機構14は、上型11、下型12で構成され、チャンバ圧調整機構15は、上型11および下型12の外部に構成されている。
【0017】
まず、接合装置1Aの加熱加圧機構13について具体的に説明する。図1に示すように、上型11は、下型12側に設けられ、ワークWを加熱加圧する上加熱加圧部16(第1加熱加圧部)を有している。また、下型12は、上型11側に設けられ、ワークWを加熱加圧する上下動可能な下加熱加圧部17(第2加熱加圧部)を有している。すなわち、加熱加圧機構13は、それぞれが熱を発する上加熱加圧部16と下加熱加圧部17とが近接して、加熱加圧する機構である。
【0018】
上加熱加圧部16は、例えば合金工具鋼からなるブロックであり、ヒータ18(熱源)を内部に有している。下加熱加圧部17は、例えば合金工具鋼からなるブロックであり、ヒータ19(熱源)を内部に有している。ヒータ18により熱を帯びた上加熱加圧部16と、ヒータ19により熱を帯びた下加熱加圧部17とによりクランプされたワークWが加熱される。また、上加熱加圧部16に対して下加熱加圧部17が近接して、上加熱加圧部16と下加熱加圧部17との間に供給されたワークWがクランプされて加圧される(図3参照)。
【0019】
ヒータ18、19は、加熱能力を向上するために、上加熱加圧部16、下加熱加圧部17の内部にそれぞれ設けられると共に、図1の紙面垂直(奥行き)方向に延在するように設けられている。ヒータ18、19の加熱能力は、上加熱加圧部16、下加熱加圧部17などの部材が有する熱容量を考慮し、電子部品3の接続バンプ6(はんだ)を溶融する温度であって、かつ、接着層4(NCFまたはNCP)を加熱硬化する温度を、クランプされたワークWに加えられることが必要である。例えば、はんだの融点は250〜260℃程度であり、またNCFやNCPは200℃〜260℃程度で所定時間が加わることで硬化する。
【0020】
また、上加熱加圧部16および下加熱加圧部17は、ワークWを挟み込んでクランプする(加圧する)のでクランパ部(加圧手段)でもある。このため、上加熱加圧部16の下型12側の面がクランプ面16aとなり、下加熱加圧部17の上型11側の面がクランプ面17aとなって形成されている。
【0021】
上型11において、例えば合金工具鋼からなる上ベース21は、図示しない可動プラテンに固定して組み付けられている。この上ベース21下に、上加熱加圧部16が固定して組み付けられている。この上加熱加圧部16(クランプ面16a)より下側に、例えば合金工具鋼からなる固定スペーサ部22(スペーサ部)が固定して組み付けられている。この固定スペーサ部22は、ワークWを上加熱加圧部16と下加熱加圧部17とでクランプするために、ワークWの厚さに応じて調整して設けられるものであり、ワークWの厚さによっては不要な場合もある。
【0022】
下型12において、例えば合金工具鋼からなる下ベース23は、図示しない固定プラテンに固定して組み付けられている。この下ベース23上に、例えば合金工具鋼からなるピン状の支持ピン24(支持部)が起立して複数並んで組み付けられている。なお、支持ピン24には、下型12からの熱が支持ピン24を介してワークWに伝わるのを抑制するために熱伝導率が低い材質が好ましく、セラミックスや耐熱ガラスのような材質を用いることもできる。
【0023】
また、下ベース23上には、支持ピン24が貫通する孔がワークに応じた任意の間隔で設けられると共に、一端側のピン頭で支持ピン24を抜け止め(固定)する、例えば合金工具鋼からなる固定部25が固定して組み付けられている。このように設けられた複数の支持ピン24は長さが同じであり、それら他端側でワークWが支持(載置)される。
【0024】
また、下ベース23の上方に、下加熱加圧部17が下型12内で上下動可能に組み付けられている。この下加熱加圧部17には、厚さ方向に貫通するように固定部25と同様の間隔で複数の貫通孔が形成されており、この複数の貫通孔のそれぞれに複数の支持ピン24が挿入して設けられている。このため、下加熱加圧部17が上下動する場合、下加熱加圧部17は支持ピン24で摺動する。下加熱加圧部17と固定部25とは、それぞれが熱膨張しても支持ピン24の摺動が円滑に行えるように、熱膨張係数が同じ材質で構成されるのが好ましい。なお、上述した複数の貫通孔を支持ピン24よりも十分に大きく成形しておけば、熱膨張係数が異なる材質を用いることもできる。
【0025】
この下加熱加圧部17は、例えば合金工具鋼からなるロッド状の支持ロッド26の一端で固定して組み付けられて、複数の支持ロッド26で支持される。互いに組み付けられた下ベース23と固定部25には、厚さ方向に貫通して連通するように所定間隔で複数の貫通孔が形成されており、この複数の貫通孔のそれぞれに複数の支持ロッド26が挿入して設けられている。これら支持ロッド26の他端は、断熱材27を介して例えば合金工具鋼からなるロッド昇降部28に固定して組み付けられている。このロッド昇降部28は、図示しない上下方向に昇降可能な昇降機構と固定して組み付けられている。この昇降機構により下加熱加圧部17を上下動する場合、支持ロッド26は下ベース23および固定部25の貫通孔内で摺動する。
【0026】
また、下加熱加圧部17を複数の支持ロッド26でフローティング支持することで、下加熱加圧部17の熱を昇降機構側(ロッド昇降部28側)へ放散させ難くしている。また、支持ロッド26とロッド昇降部28との間に断熱材27を設けることで、より熱の放散をさせ難くしている。
【0027】
次に、接合装置1Aの支持機構10について具体的に説明する。図1に示すように、下型12は、下加熱加圧部17を上下方向に貫通するように延在して設けられた支持ピン24を複数有している。支持ピン24は、下加熱加圧部17が上動することで相対的にクランプ面17aから退避してこの面の下方に移動し(図3参照)、下加熱加圧部17が下動することで相対的にクランプ面17aから突出する(図2参照)ものである。
【0028】
複数の支持ピン24は、下ベース23上に、例えばマトリクス状に平面配置され、ワークWが載置される支持プレート29を支持する。すなわち、下型12は、下加熱加圧部17および支持ピン24より上側に設けられたワークWを支持する支持プレート29を有している。ここで、各支持ピン26は、支持プレート29が自重によって撓んで高さが不均一にならないように均等な間隔で配置されている。この支持プレート29を用いてワークWを支持することで、クランプ時にワークWを上加熱加圧部16(固定スペーサ部22)と平行に配置することができる。なお、支持プレート29は、剛性が高く撓みが少ない基板(例えばセラミック基板)を配線基板2として用いた場合には省略することができる。
【0029】
支持機構10は、支持ピン24が下加熱加圧部17のクランプ面17aから突出した状態で、支持プレート29を介してワークWを支持する(図1、図2参照)。また、支持機構10は、下加熱加圧部17が上動して支持ピン24を相対的にクランプ面17aから退避させて(引っ込めて)、支持ピン24から下加熱加圧部17へ支持プレート29を介してワークWを受け渡す(図3参照)。すなわち、下加熱加圧部17へ受け渡されたワークWは、支持プレート29を介してクランプ面17a上に載置されることとなる。
【0030】
このような支持機構10は、上型11および下型12の間に供給されたワークWが支持ピン24から下加熱加圧部17へ受け渡されるまでは、ワークWを支持ピン24によってフローティング支持している。このため、上加熱加圧部16や下加熱加圧部17が熱を帯びていた場合であっても、ワークWは、これらとは接せずにフローティング支持されているので、加熱されることが抑制される。すなわち、ワークWの配線基板2と電子部品3とを接着(仮接合)している接着層4の硬化の進行を抑制することができる。このような支持ピン24は、断熱用ピンであるともいえる。
【0031】
加熱加圧機構13では、図3に示すように、支持ピン24がクランプ面17aから退避した状態で、下加熱加圧部17が支持ピン24から受け取ったワークWを支持プレート29を介してクランプ面17aで載置したままクランプ面16aに押し当ててクランプする。そして、上加熱加圧部16および下加熱加圧部17がワークWをクランプしたまま加熱加圧する。すなわち、下加熱加圧部17が、ワークWをクランプした状態でさらに上動してワークWを上加熱加圧部16に強く押し付けることで、上加熱加圧部16と下加熱加圧部17とで加熱加圧して、ワークWの各部材(配線基板2、電子部品3)を接合する。
【0032】
このように、ワークWを上加熱加圧部16と下加熱加圧部17で挟み込んでクランプすることで、接着層4を介して積層された配線基板2および電子部品3を含むワークWを急速に加熱することができる。
【0033】
このような接合装置1Aでは、温度によって溶融する接続バンプ6と、加熱の総量に応じて溶融及び硬化する接着層4とが含まれるようなワークWであっても、接着層4が熱により硬化する前に、短時間で接続バンプ6を溶融させて接続パッド5と接続バンプ6とを接合させ、その後、接着層4を硬化させることができるので、配線基板2と電子部品3との接続信頼性を向上することができる。以下では、図15および図16を参照して、接合装置1Aによる効果について具体的に説明する。図15および図16において、横軸を時間t、左縦軸を粘度η、右縦軸を温度Tとして、ワークWの温度T、接着層4の粘度ηn、接続バンプ6の粘度ηbを示している。
【0034】
図15に示すように、加熱された接着層4は、時間tに対して下に凸の放物線を描くように粘度ηnが変化する。この接着層4においては、所定の熱量が加えられた時点で粘度ηnが最も下がり、その前後で溶融した接続バンプ6の接合が行える程度に粘度が下がった状態となる。この状態を、図15では粘度ηnが破線を下回る範囲として示している。この破線を下回る範囲において、溶融させた電子部品3の接続バンプ6と配線基板2の接続パッド5とを接合することで、接着層4を介した配線基板2および電子部品3同士の接続信頼性を向上することができる。
【0035】
ところで、図16に示すように、配線基板2の温度Tを短時間で昇温させることができない場合、接着層4の粘度ηnの低くなるタイミングが、接続バンプ6の粘度ηbの低くなるタイミングよりも早くなってタイミングを合わせることができない。具体的には、接着層4の粘度ηnが破線を下回る範囲で接続バンプ6の粘度ηbが低くなっていない。このような場合は、配線基板2の接続パッド5と電子部品3の接続バンプ6との電気的接続が確実に行われない恐れも生じる。しかしながら、接合装置1Aによれば、ワークWの温度Tを素早く短時間で昇温させることができる。これにより、接着層4の粘度ηnが低くなるタイミングと、接続バンプ6が溶融して粘度ηbが低くなるタイミングとを合わせることができる。
【0036】
次に、接合装置1Aのシール機構14について具体的に説明する。図1に示すように、シール機構14は、上加熱加圧部16および下加熱加圧部17の周囲に設けられ、ワークWが内包される空間をシールする上シールブロック32および下シールブロック33を有している。
【0037】
下シールブロック33は、例えば合金工具鋼からなる筒状のブロックであり、下ベース23上の外周部で固定して組み付けられている。下ベース23および下シールブロック33により、下型12では上型11側に開口する凹形状の箱部37が形成される。この下型12が有する箱部37内で下加熱加圧部17および支持ピン24が収納される。また、下シールブロック33の上シールブロック32側の縁部には、シール部材34(例えばOリング)が設けられている。
【0038】
また、上シールブロック32は、例えば合金工具鋼からなる筒状のブロックであり、上ベース21下の外周部で固定して組み付けられている。すなわち、上ベース21および上シールブロック32により、上型11では下型12側に開口する凹形状の箱部36が形成される。この上型11が有する箱部36内で上加熱加圧部16が収納される。また、上シールブロック32の下シールブロック32側の縁部は、シール部材34と対向するように設けられている。
【0039】
また、接合装置1Aでは、下ベース23の貫通孔23aにおいて、支持ロッド26を摺動させるため、貫通孔23aと支持ロッド26との僅かな隙間を設ける必要がある。このため、シール機構14は、下ベース23の貫通孔23aと支持ロッド26との間をシールするシール部材35(例えばOリング)を有している。
【0040】
上ベース21および下ベース23が近接することで、箱部36の縁部と箱部37の縁部とが接して内部に密閉空間31が形成される(図2参照)。密閉空間31でワークWを内包することで、上加熱加圧部16や下加熱加圧部17でワークWをより急速に加熱することができる。また、本実施形態では、下ベース23および下シールブロック33がその内部にヒータ38(加熱部)を有している。これにより、密閉空間31で内包されたワークWをより急速に加熱することができる。
【0041】
また、下型12の下シールブロック33は、下加熱加圧部17の外周面に沿って設けられた内壁面33aを有している。この内壁面33aは下シールブロック33に設けられたヒータ38によって加熱される。したがって、ヒータ38で加熱された内壁面33aで案内されて下加熱加圧部17が上下動する。ここで、下加熱加圧部17と下シールブロック33及びこれを設けた下ベース23は、同一部材(例えば合金工具鋼)で構成されているので、熱膨張係数が同じである。このため、下型12内の各部が均一な温度状態とすることで下加熱加圧部17と下シールブロック33は同程度に膨脹するので、下加熱加圧部17の上下動をスムーズに行うことができる。
【0042】
次に、接合装置1Aのチャンバ圧調整機構15について具体的に説明する。図2に示すように、チャンバ圧調整機構15は、上シールブロック32に形成されたエア路39を通じて、シールされた密閉空間31に圧縮空気を導入する圧縮機41(例えばコンプレッサ)を有している。
【0043】
密閉空間31では、上加熱加圧部16や下加熱加圧部17からの輻射熱によって接着層4(図12参照)が加熱されて、場合によっては接着層4内でボイドが発生して接着層4が膨脹し、電子部品3を配線基板2から引き離すおそれが生じる場合がある。そこで、密閉空間31を圧縮空間とすることでボイドの発生を抑制することができる。また、接合装置1Aは、圧縮空間において配線基板2に複数の電子部品3を一括して接合する構成であるため、ボイドの発生を抑制して一様の圧力を加えながら加熱を行うことができる。したがって、配線基板2上に接着層4を介した複数の電子部品3の接続信頼性を向上することができる。
【0044】
なお、チャンバ圧調整機構15は、圧縮機41の代わりに、シールされた密閉空間31を減圧する減圧機(例えば真空ポンプ)が接続されても良い。減圧することで、接着層4内の微細な空気を除去することができるからである。また、密閉空間31内に浮遊する微細な埃などの異物や接着層4の硬化反応や処理に影響を及ぼす酸化物などを積極的に除去することもできる。また、チャンバ圧調整機構15は、たとえば減圧して接着層4内の空気を排除した後に圧縮空間とするように減圧機と圧縮機41を併用することで、相乗的効果を得ることができ、配線基板2上に接着層4を介した複数の電子部品3の接続信頼性をより向上することができる。
【0045】
次に、本実施形態における接合装置1Aを用いて、配線基板2上に複数の電子部品3を一括で接合する接合方法と共に、これにより製造される半導体装置7の製造方法について図1〜図3および図12〜図14を参照して説明する。図1などは、動作中の接合装置1Aを模式的に示す断面図であり、図12などは、動作中の接合装置1AにおけるワークWを明確にするために、図1などに示すワークWの要部を拡大して示している。
【0046】
本実施形態の接合方法は、概略すると、接着層4を介して積層された配線基板2および電子部品3を含むワークWを、上加熱加圧部16を有する上型11と、上下動可能な下加熱加圧部17および上下方向に延在する支持ピン24を有する下型12とで挟み込んで各部材を接合する工程を含んでいる。
【0047】
まず、図12に示すように、配線基板2の複数の接続パッド5と対応する各電子部品3の複数の接続バンプ6とを対向して位置合わせして、配線基板2上に接着層4を介して積層された複数の電子部品3を含んでなるワークWを準備する。また、接合装置1Aで説明した、上加熱加圧部16を有する上型11と、下加熱加圧部17および支持ピン24を有する下型12とを準備する。
【0048】
ワークWは、接着層4が接着された配線基板2に対して、公知のフリップチップボンダを用いて、接着層4側から複数の電子部品3がマトリクス状に位置合わせされて、仮接合(仮圧着)されている。配線基板2は、例えばガラスエポキシ基板であり、その内部に配線パターンが形成されており、また絶縁層8から露出する接続パッド5が形成されている。また、電子部品3は、例えば半導体チップやチップコンデンサであり、接続バンプ6としてはんだバンプが用いられている。なお、本実施形態では、接続バンプ6(はんだバンプ)を溶融して、接続パッド5と接合する。
【0049】
続いて、図1に示すように、上型11と下型12とが離間した状態で、図示しない搬送装置によって下型12にワークWを載置する。具体的には、下型12において、下加熱加圧部17のクランプ面17aから突出した支持ピン24でワークWを支持する。
【0050】
続いて、図2に示すように、上型11と下型12とを近接させることで、箱部36の縁部(上シールブロック32の縁部)と箱部37の縁部(下シールブロック33の縁部)とがシール部材34を介して接して密閉空間31を形成する。その後、圧縮機構15によりシールされた密閉空間31に圧縮空気を導入して圧縮空間を形成する。圧縮空間は、例えば密閉空間31のシールが解除されるまでの間形成しておくことができる。ただし、密閉空間31は空気の発泡防止や積極的な空気の排出のため、少なくとも接着層4が硬化されるまで形成されるのが好ましい。
【0051】
なお、密閉空間31を形成後、圧縮空間が形成される前に、エア路39を通じて減圧機(例えば真空ポンプ)でシールされた密閉空間31を減圧しても良い。減圧することで、接着層4内の微細な空気や、ワークWが内包される密閉空間31内の異物(浮遊物)を除去することができる。これにより、配線基板2および電子部品3を含む半導体装置7に異物などの混入を防止することができる。
【0052】
続いて、図3に示すように、図2に示した状態から下加熱加圧部17を上動させて、突出している支持ピン24を相対的に下加熱加圧部17のクランプ面17aから退避させて支持ピン24からクランプ面17aにワークWを受け渡して載置する。次いで、さらに下加熱加圧部17を上動させて、載置されているワークWを上加熱加圧部16のクランプ面16aに押し当ててクランプする。次いで、上加熱加圧部16と下加熱加圧部17とでワークWをクランプしたまま加熱加圧する。
【0053】
上加熱加圧部16および下加熱加圧部17は予め加熱されているため、下加熱加圧部17は支持ピン24からワークWを受けたときから、また上加熱加圧部16は下加熱加圧部17によりワークWを当てられたときから、ワークWを直接的に加熱し始める。上加熱加圧部16および下加熱加圧部17で両側から挟まれて加熱されたワークWは、急速に加熱され始める。なお、予め加熱された上加熱加圧部16や下加熱加圧部17からの輻射熱によって、密閉空間31内の温度は上昇しているため、間接的にワークWは加熱されていることとなる。
【0054】
図15で示したように、ワークWの温度Tが急速に上昇すると、急速に接続バンプ6が溶融する。すなわち、接続バンプ6の粘度ηbが急速に低下する。接着層4の粘度ηnが、図15で示した破線を下回る範囲であれば、接着層4は溶融状態であるため、溶融させた接続バンプ6と接続パッド5とを押し当てて確実に接合することができる。すなわち、接着層4を介した配線基板2および電子部品3同士の接続信頼性を向上することができる。
【0055】
このように接合装置1Aを用いて、配線基板2上で接着された複数の電子部品3を含むワークWに対してクランプして、各部材を一括で接合することができる。また、配線基板2に電子部品3が実装された半導体装置7が製造される。
【0056】
本実施形態のように、加熱と同時に加圧を行うことで、接続パッド5および接続バンプ6の接合時には接続バンプ6は溶融しているので、接続パッド5および接続バンプ6を容易に接合(圧着)することができる。また、配線基板2に電子部品3を実装するまで圧縮空間を維持しておくことで、接着層4に微細な空気が含まれていたとしても、微細な空気を圧縮して微小化させることで、配線基板2と電子部品3との間を接着層4で高品質にアンダーフィルすることができる。これにより、ワークWに設けられた接続パッド5と接続バンプ6との接続不良を低減させると共に、配線基板2と電子部品3の接続信頼性を向上することができる。
【0057】
次いで、ワークWの接合が完了した後に圧縮機構15による加圧を停止し、下加熱加圧部17を下動させて、載置されているワークWを上加熱加圧部16のクランプ面16aから離す。続いて、図2に示すように、図3に示した状態から下加熱加圧部17を下動させて、下加熱加圧部17のクランプ面17aから支持ピン24を突出させてワークWを支持ピン24へ受け渡す。次いで、図1に示すように、上型11と下型12とを離間させることで上下の箱部36、37で構成された密閉空間31を開き、図示しない搬送装置によって下型12からワークWを搬出することで1個のワークWの接合のための動作が終了する。この場合、支持ピン24でワークWを支持させた後で所定時間維持することで接続バンプ6の温度を下げて硬化させてから搬出してもよい。
【0058】
なお、支持ロッド26がロッド昇降部28に固定される構成に限られず、複数の支持ロッド26を個別に昇降動作させてもよい。例えば、下加熱加圧部17の下面内でバランス良く支持する、少なくとも3本以上の各支持ロッド26に対して、図4に示すように、個別に昇降駆動可能な駆動部28aを設けることもできる。この場合、各駆動部28aの駆動量や各支持ロッド26直上位置におけるクランプ面17aの高さなどに基づいて、クランプ面16aに対するクランプ面17aの姿勢を制御することができる。これにより、ワークWのクランプを開始する際の両クランプ面16a、17aの隙間を極めて正確に均一な状態にすることができる。このため、ワークWを均一にクランプすることができるため、電子部品3に対して横方向への力が加えられずに良好な接合を行うことができる。また、ワークWが大型化しても全体を均一な圧力でクランプすることができるので、大型のワークWであっても良好な接合を行うことができる。
【0059】
(実施形態2)
図5などを参照して本実施形態における接合装置1Bを説明する。前記実施形態1では、支持部として、下ベース23に固定した支持ピン24を用いたが、本実施形態では、固定せずに上下動可能な可動支持ピン41およびその関連部材を用いている点のみが相違する。以下では、その相違点を中心に説明する。
【0060】
接合装置1Bの下型12において、下ベース23の上方では、下加熱加圧部17が上下動可能に組み付けられている。この下加熱加圧部17には、厚さ方向に貫通するように所定間隔で複数の貫通孔が形成されており、この複数の貫通孔のそれぞれに複数の可動支持ピン41が挿入して設けられている。
【0061】
複数の可動支持ピン41は、下ベース23の厚さ方向に所定間隔で形成された複数の貫通孔23bにそれぞれ挿入して設けられている。これら可動支持ピン41の一端は、下加熱加圧部17から突き出て、ワークWを載置することができる。これら可動支持ピン41の他端は、例えば合金工具鋼からなるピン昇降部42に固定して組み付けられている。このピン昇降部42は、図示しない上下方向に昇降可能な昇降機構と固定して組み付けられている。この昇降機構により可動支持ピン41を上下動する場合、可動支持ピン41が下ベース23および下加熱加圧部17で摺動する。
【0062】
このように、本実施形態では、ワークWを上加熱加圧部16へ押し付ける下加熱加圧部17と同様に上下動可能な可動支持ピン41を設けて、その可動範囲を下加熱加圧部17より狭い範囲としている。これにより、上加熱加圧部16に接する手前まで下加熱加圧部17によらずワークWを近接させることができるので、接着層4の硬化の進行を直前まで抑制することができる。上加熱加圧部16と下加熱加圧部17とでワークWが加熱加圧し始めの状態では、接着層4は完全に硬化する前であるため、加熱により溶融させた接続バンプ6と接続パッド5とを押し当てて確実に接合することができる。すなわち、接着層4を介した配線基板2および電子部品3同士の接続信頼性を向上することができる。
【0063】
ところで、可動支持ピン41が摺動するため、下ベース23の貫通孔23bとの僅かな隙間でエア路が形成される場合もある。このため、シール機構14は、下ベース23の貫通孔23bと可動支持ピン41との間をシールするシール部材43(例えばOリング)を有している。これにより、密閉空間31が形成でき(図6参照)、密閉空間31で内包されたワークWを急速に加熱することができる。
【0064】
次に、本実施形態における接合装置1Bを用いて、配線基板2上に複数の電子部品3を一括で接合する接合方法と共に、これにより製造される半導体装置7の製造方法について図5〜図8を参照して説明する。
【0065】
まず、図5に示すように、上加熱加圧部16を有する上型11と、下加熱加圧部17および可動支持ピン41を有する下型12とを準備する。次いで、上型11と下型12とが離間した状態で、図示しない搬送装置によって下型12にワークW(図12参照)を載置する。具体的には、下型12において、下加熱加圧部17のクランプ面17aから突出した可動支持ピン41でワークWを支持する。
【0066】
続いて、図6に示すように、上型11と下型12とを近接させることで、箱部36の縁部(上シールブロック32の縁部)と箱部37の縁部(下シールブロック33の縁部)とがシール部材34を介して接して密閉空間31を形成する。その後、圧縮機構15によりシールされた密閉空間31に圧縮空気を導入して圧縮空間を形成する。
【0067】
続いて、図7に示すように、ワークWが上加熱加圧部16に接する手前まで下加熱加圧部17と共に可動支持ピン41を上動させる。上加熱加圧部16に接する手前まで下加熱加圧部17によらずワークWを近接させることができるので、接着層4の硬化の進行を直前まで抑制することができる。
【0068】
続いて、図8に示すように、図7に示した状態から下加熱加圧部17を上動させて可動支持ピン41を相対的に退避させて、可動支持ピン41から下加熱加圧部17へワークWを受け渡す。その後、さらに下加熱加圧部17を上動させてワークWを上加熱加圧部16に押し当てると共に、上加熱加圧部16と下加熱加圧部17とで加熱しながら、ワークWの各部材を接合する。上加熱加圧部16と下加熱加圧部17とでワークWが加熱加圧し始めの状態では、接着層4は完全に硬化する前であるため、加熱により溶融させた接続バンプ6と接続パッド5とを押し当てて確実に接合することができる。すなわち、接着層4を介した配線基板2および電子部品3同士の接続信頼性を向上することができる。
【0069】
このように接合装置1Bを用いて、配線基板2上で接着された複数の電子部品3を含むワークWに対してクランプして、各部材を一括で接合することができる。また、配線基板2に電子部品3が実装された半導体装置7が製造される。
【0070】
(実施形態3)
図9などを参照して本実施形態における接合装置1Cを説明する。前記実施形態1、2では、スペーサ部として、上ベース21に固定した固定スペーサ部22を用いたが、本実施形態では、固定せずに上下動可能な可動スペーサ部44およびその関連部材を用いている点のみが相違する。以下では、その相違点を中心に説明する。
【0071】
本実施形態における上型11は、上加熱加圧部16より下側に設けられる上下動可能な可動スペーサ部44を有している。すなわち、可動スペーサ部44は、上ベース21の下方において、上下動可能に組み付けられている。
【0072】
可動スペーサ部44は、例えば合金工具鋼からなるブロックであり、ワークWと当接する面(図10参照)に沿って等間隔に配置された複数の冷却管路47が内部に形成されている。この冷却管路47は、外部に設けられた図示しない冷却源で冷却された液体または気体の冷媒をその内部に通過させることで可動スペーサ部44を冷却可能となっている。すなわち、可動スペーサ部44は、冷却機能を有している。また、可動スペーサ部44は、ワークWと当接する面(図10参照)に沿って等間隔に配置された複数のヒータ48(熱源)を有している。すなわち、可動スペーサ部44は、加熱機能を有している。
【0073】
なお、可動スペーサ部44では、冷却機能と加熱機能は同時に使用するものではないため、冷却管路47およびヒータ48を交互に配置して、当接したワークWに対してそれぞれの機能が十分に発揮し、プレートを薄くして熱容量を減少し温度の昇降速度を向上させることができるようにしている。しかしながら、可動スペーサ部44の下面における温度を均一化するためにプレート内において冷却管路とヒータを上下に並べる構成を採用することもできる。例えば、クランプ面に近い位置に冷却管路を並べその上方にヒータを並べる構成を採用することもできる。
【0074】
この可動スペーサ部44は、例えば合金工具鋼からなるロッド状の支持ロッド45の一端で固定して組み付けられて、複数の支持ロッド45で支持される。互いに組み付けられた上ベース21と上加熱加圧部16には、厚さ方向に貫通して連通するように所定間隔で複数の貫通孔が形成されており、この複数の貫通孔のそれぞれに複数の支持ロッド45が挿入して設けられている。
【0075】
これら支持ロッド45の他端は、例えば合金工具鋼からなるロッド昇降部46に固定して組み付けられている。このロッド昇降部46は、図示しない上下方向に昇降可能な昇降機構と固定して組み付けられている。この昇降機構により可動スペーサ部44を上下動する場合、支持ロッド45は上ベース21および上加熱加圧部16で摺動する。なお、上ベース21とロッド昇降部46との間に伸びバネを追加して、可動スペーサ部44の昇降の調整を行うこともできる。
【0076】
本実施形態では、可動スペーサ部44は、ワークWを冷却するために、冷却管路47による冷却機能を有し、上加熱加圧部16と接した状態で冷却機能が停止し、上加熱加圧部16から離間した状態で、支持ピン24で支持されているワークWを冷却する。すなわち、上加熱加圧部16および下加熱加圧部17からワークWを離間させたときに、加熱されているワークWを可動スペーサ部44で冷却することができる。これにより、例えば、例えば、強制的にワークWを冷却することができ、図17に示すように、接続バンプ6を素早く凝固させることができる。
【0077】
可動スペーサ部44の冷却機能により、短時間で接着層4を完全に硬化させると共に、接続パッド5や接続バンプ6の接合箇所も冷却させることで、接合箇所およびその周辺の緊密化を図ることができる。すなわち、接着層4を介した配線基板2および電子部品3同士の接続信頼性を向上することができる。具体的には、ワークWをクランプしたままで、接着層4及び接続バンプ6の温度を下げることで、接続パッド5に接続された接続バンプ6の凝固(硬化)を促進すると共に、接着層4の温度をガラス転移点よりも低くすることができる。これにより、電気的な接続をより確実に行うことができ、接着層4のシュリンクに起因するワークWの反りを防止することができる。また、ワークWの冷却に要する時間を短縮することができ、装置の処理速度を向上することもできる。
【0078】
ところで、支持ロッド45が摺動するため、上ベース21の貫通孔21aとの僅かな隙間でエア路が形成される場合もある。このため、シール機構14は、上ベース21の貫通孔21aと支持ロッド45との間をシールするシール部材49(例えばOリング)を有している。これにより、密閉空間31が形成でき(図10参照)、密閉空間31で内包されたワークWを急速に加熱することができる。
【0079】
次に、本実施形態における接合装置1Cを用いて、配線基板2上に複数の電子部品3を一括で接合する接合方法と共に、これにより製造される半導体装置7の製造方法について図9〜図11を参照して説明する。
【0080】
まず、図9に示すように、上加熱加圧部16および可動スペーサ部44を有する上型11と、下加熱加圧部17および可動支持ピン41を有する下型12とを準備する。次いで、上型11と下型12とが離間した状態で、図示しない搬送装置によって下型12にワークW(図12参照)を載置する。具体的には、下型12において、下加熱加圧部17のクランプ面17aから突出した可動支持ピン41でワークWを支持する。
【0081】
次いで、上型11と下型12とを近接させることで、箱部36の縁部と箱部37の縁部とがシール部材34を介して接して密閉空間31を形成した後、圧縮機構15によりシールされた密閉空間31に圧縮空気を導入して圧縮空間を形成する(図6参照)。次いで、ワークWが上加熱加圧部16に接する手前まで下加熱加圧部17と共に可動支持ピン41を上動させる(図7参照)。
【0082】
続いて、図10に示すように、下加熱加圧部17を上動させて可動支持ピン41を相対的に退避させて、可動支持ピン41から下加熱加圧部17へワークWを受け渡す。次いで、冷却機能を停止した可動スペーサ部44が上加熱加圧部16に接した状態で、下加熱加圧部17をさらに上動させてワークWを可動スペーサ部44に押し当ててクランプする。次いで、上加熱加圧部16と可動スペーサ部44を介した下加熱加圧部17とでワークWをクランプしたまま加熱加圧して、各部材(配線基板2および電子部品3)を接合する。
【0083】
続いて、図11に示すように、下加熱加圧部17を下動させて退避している支持ピン41を突出させて、ワークWを下加熱加圧部17から受け渡して支持ピン41で支持させると共に、ワークWに接したまま可動スペーサ部44を下動させて上加熱加圧部16からワークWを離間させる。次いで、可動スペーサ部44と接して支持ピン41で支持されたワークWを、冷却機能により冷却する。
【0084】
可動支持ピン41でフローティング支持されたワークWを冷却するので、短時間で接着層4を完全に硬化させると共に、接続パッド5や接続バンプ6の接合箇所も冷却させることができ、接合箇所およびその周辺の緊密化を図ることができる。すなわち、接着層4を介した配線基板2および電子部品3同士の接続信頼性を向上することができる。
【0085】
このように接合装置1Cを用いて、配線基板2上で接着された複数の電子部品3を含むワークWに対してクランプして、各部材を一括で接合することができる。また、配線基板2に電子部品3が実装された半導体装置7が製造される。
【0086】
また、可動スペーサ部44を上動させて冷却されたワークWと離間させると共に、冷却機能を停止した後、可動スペーサ部44が有する加熱機能より可動スペーサ部44を加熱させながら上加熱加圧部16に押し当てることもできる。これにより、上加熱加圧部16の加熱温度の低下を抑制した状態で、次のワークWを受け入れることができるので、ワークWを急速に加熱することができ、前述したように、接着層4を介した配線基板2および電子部品3同士の接続信頼性を向上することができる。
【0087】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0088】
例えば、前記実施形態1〜3では、接着層を介して積層された第1および第2部材として、それぞれ配線基板および半導体チップを含むワークについて説明したが、さらに第3、第4、・・・の部材が積層されたワークに対しても適用することができる。例えば、第1部材として配線基板、第2および第3部材としてそれぞれ半導体チップが接着層を介して積層されたワークに対しても適用することができる。
【0089】
また、例えば、前記実施形態1〜3では、配線基板2(第1部材)の接続パッド5と電子部品3(第2部材)の接続バンプ6とが接していない状態のワークW(図12参照)を準備し、このワークWをクランプして配線基板2に複数の電子部品3を一括で接合して半導体装置7(図14参照)を製造する場合する場合について説明した。これに限らず、配線基板2の接続パッド5と電子部品3の接続バンプ6とが接した状態のワークW(図13参照)を準備し、このワークWをクランプして配線基板2に複数の電子部品3を一括で接合して半導体装置7(図14参照)を製造しても良い。
【0090】
また、例えば、前記実施形態1〜3では、加熱により電子部品3の接続バンプ6が溶融する場合について説明した。これに限らず、配線基板2の接続パッド5を溶融させても、また、配線基板2の接続パッド5と電子部品3の接続バンプ6とも溶融させても、配線基板2と電子部品3とを接合することができる。
【0091】
また、例えば、前記実施形態1〜3では、ワークWを下型12に載置する場合について説明した。これに限らず、上型11においてワークWを吸着や爪による把持で支持する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0092】
1A、1B、1C 接合装置
2 配線基板
3 電子部品
4 接着層
11 上型
12 下型
16 上加熱加圧部(第1加熱加圧部)
16a クランプ面
17 下加熱加圧部(第2加熱加圧部)
17a クランプ面
24 支持ピン(支持部)
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着層を介して積層された複数の部材を含むワークを、上型と下型とで挟み込んで各部材を接合する接合装置であって、
前記上型は、前記ワークを加熱加圧する第1加熱加圧部を有し、
前記下型は、前記ワークを加熱加圧する上下動可能な第2加熱加圧部と、前記第2加熱加圧部が上動することで相対的に前記第2加熱加圧部のクランプ面から退避し、前記第2加熱加圧部が下動することで相対的に前記第2加熱加圧部のクランプ面から突出する支持部とを有することを特徴とする接合装置。
【請求項2】
請求項1記載の接合装置において、
前記支持部は、上下動可能であり、
前記支持部の可動範囲が、前記第2加熱加圧部の可動範囲より狭いことを特徴とする接合装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の接合装置において、
前記上型は、前記第1加熱加圧部より下側に設けられた上下動可能なスペーサ部を備え、
前記スペーサ部は、冷却機能を有し、前記第1加熱加圧部と接した状態で前記冷却機能が停止し、前記第1加熱加圧部から離間した状態で、前記支持部で支持されている前記ワークを冷却することを特徴とする接合装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の接合装置において、
前記下型は、前記第2加熱加圧部および前記支持部より上側に設けられた前記ワークを支持するプレートを有することを特徴とする接合装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の接合装置において、
前記下型は、前記第2加熱加圧部の外周面に沿って設けられた内壁面と、前記内壁面を加熱する加熱部を有することを特徴とする接合装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の接合装置において、
前記上型は、前記下型側に開口する凹形状の第1箱部を有し、
前記下型は、前記上型側に開口する凹形状の第2箱部を有し、
前記第1箱部内で前記第1加熱加圧部が収納され、
前記第2箱部内で前記第2加熱加圧部および前記支持部が収納され、
前記第1箱部の縁部と前記第2箱部の縁部とが接して内部に形成された密閉空間に対して、圧縮する圧縮機または減圧する減圧機の少なくともいずれか一方が接続されていることを特徴とする接合装置。
【請求項7】
接着層を介して積層された複数の部材を含むワークを、第1加熱加圧部を有する上型と、上下動可能な第2加熱加圧部および上下方向に延在する支持部を有する下型とで挟み込んで各部材を接合する接合方法であって、
(a)前記第2加熱加圧部のクランプ面から突出した前記支持部で前記ワークを支持する工程と、
(b)前記第2加熱加圧部を上動させて、突出している前記支持部を相対的に前記第2加熱加圧部のクランプ面から退避させて前記支持部から前記第2加熱加圧部のクランプ面に前記ワークを載置する工程と、
(c)さらに前記第2加熱加圧部を上動させて、載置されている前記ワークを前記第1加熱加圧部のクランプ面に押し当ててクランプする工程と、
(d)前記第1加熱加圧部と第2加熱加圧部とで前記ワークをクランプしたまま加熱加圧する工程と、
を含むことを特徴とする接合方法。
【請求項8】
請求項7記載の接合方法において、
前記(b)工程では、前記第2加熱加圧部と共に前記支持部も、前記ワークが前記第1加熱加圧部に接する手前まで上動することを特徴とする接合方法。
【請求項9】
請求項7または8記載の接合方法において、
前記上型は、前記第1加熱部加圧部より下側に設けられ、前記ワークを冷却する冷却機能を有する上下動可能なスペーサ部を有し、
(e)前記(d)工程後、前記第2加熱加圧部を下動させて退避している前記支持部を突出させて、前記ワークを前記第2加熱加圧部から前記支持部で支持させると共に、前記ワークに接したまま前記スペーサ部を下動させて前記第1加熱加圧部から前記ワークを離間させる工程と、
(f)前記(e)工程後、前記スペーサ部と接して前記支持部で支持された前記ワークを、前記冷却機能により冷却する工程と、
を含むことを特徴とする接合方法。
【請求項10】
請求項9記載の接合方法において、
(g)前記(f)工程後、前記スペーサ部を上動させて冷却された前記ワークと離間させると共に、前記冷却機能を停止した後、前記スペーサ部が有する加熱機能より前記スペーサ部を加熱させながら前記第1加熱加圧部に押し当てる工程、
を含むことを特徴とする接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−231080(P2012−231080A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99610(P2011−99610)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】