説明

接着剤浸漬塗布装置及び接着剤浸漬塗布方法

【課題】ワークに接着剤を浸漬により塗布する際に、十分な膜厚を確保しつつ液溜まりを解消して塗装ムラを抑制することができる接着剤浸漬塗布装置及び接着剤浸漬塗布方法を提供する。
【解決手段】ワークWを第1の下塗り槽21に搬送して接着剤Sを浸漬により塗布した後、乾燥室40に搬送して接着剤Sを乾燥させ、第1の下塗り槽21で下塗りしたワークWを第2の下塗り槽22に搬送して接着剤Sを浸漬により塗布した後、乾燥室40に搬送して接着剤Sを乾燥させ、接着剤Sの下塗りを行う。さらに、第2の下塗り槽22で下塗りしたワークWを第1の上塗り槽23に搬送して接着剤Sを浸漬により塗布した後、乾燥室40に搬送して接着剤Sを乾燥させ、第1の上塗り槽23で上塗りしたワークWを第2の上塗り槽24に搬送して接着剤Sを浸漬により塗布した後、乾燥室40に搬送して接着剤Sを乾燥させて接着剤Sの上塗りを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに接着剤を浸漬により塗布するための接着剤浸漬塗布装置及び接着剤浸漬塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴムで被覆される機械部品としてのワークには、ゴムとの接着性を良好にするため、その表面に接着剤が塗布されている。この接着剤は、下塗り用の第1液と上塗り用の第2液とからなり、ワークに第1液を浸漬により塗布して乾燥させた後、第2液を浸漬により塗布して乾燥させ、ゴムを被覆して加硫を行うようにしている(例えば、特許文献1〜6参照)。
【特許文献1】特開2006−314933号公報
【特許文献2】特開平5−185001号公報
【特許文献3】特開平5−185002号公報
【特許文献4】特開平5−269417号公報
【特許文献5】実開平2−125778号公報
【特許文献6】特許第3107902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、ワークに接着剤を浸漬により塗布するにあたっては、ワークの表面に塗布ムラを生じさせないことが重要である。このような塗布ムラの主な原因として、接着剤槽の液面から引き上げられたワークの表面に接着剤が部分的に溜まり、塗布厚みが不均一になる液溜まりが知られている。このような液溜まりが生じると、ワーク表面が部分的に乾燥不十分となり、ゴムとの接着力が低下するという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワークに接着剤を浸漬により塗布する際に、十分な膜厚を確保しつつ液溜まりを解消して塗装ムラを抑制することができる接着剤浸漬塗布装置及び接着剤浸漬塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するため、本発明は、ワークに接着剤を浸漬により塗布する際に、下塗り作業と上塗り作業とをそれぞれ2回ずつに分けて行うようにした。
【0006】
具体的に、本発明は、ワークを接着剤に浸漬させて塗布するための接着剤浸漬塗布装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0007】
すなわち、請求項1の発明は、前記ワークを保持して搬送方向の下流側に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の搬送経路上に配設され、前記ワークを浸漬するための接着剤が貯留された接着剤槽と、
前記搬送手段の搬送経路上で且つ前記接着剤槽の上方に配設され、前記ワークを乾燥させる乾燥手段とを備え、
前記接着剤槽は、下塗り用の接着剤が貯留された第1及び第2の下塗り槽と、上塗り用の接着剤が貯留された第1及び第2の上塗り槽とを有し、各下塗り槽及び上塗り槽が前記ワークの搬送方向下流側に向かって順に配設され、
前記搬送手段は、
前記ワークを前記第1の下塗り槽に搬送して接着剤を浸漬により塗布した後、前記乾燥手段に搬送して接着剤を乾燥させ、
前記第1の下塗り槽で下塗りした前記ワークを前記第2の下塗り槽に搬送して接着剤を浸漬により塗布した後、前記乾燥手段に搬送して接着剤を乾燥させ、
前記第2の下塗り槽で下塗りした前記ワークを前記第1の上塗り槽に搬送して接着剤を浸漬により塗布した後、前記乾燥手段に搬送して接着剤を乾燥させ、
前記第1の上塗り槽で上塗りした前記ワークを前記第2の上塗り槽に搬送して接着剤を浸漬により塗布した後、前記乾燥手段に搬送して接着剤を乾燥させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項1に係る発明によれば、第1及び第2の下塗り槽を用いてワークに接着剤を下塗りする作業を2回に分けて行い、さらに、第1及び第2の上塗り槽を用いてワークに接着剤を上塗りする作業を2回に分けて行うようにしたから、下塗り作業及び上塗り作業をそれぞれ1回のみ行う場合に比べて、接着剤の膜厚を十分に確保することができる。
【0009】
また、下塗り作業及び上塗り作業をそれぞれ2回ずつに分けて行うようにすれば、1回の塗布作業で塗布する接着剤の膜厚は薄くて済むため、各々の接着剤槽に貯留させる接着剤の成分濃度を薄めに調合することができる。すなわち、ワークの表面に接着剤が部分的に溜まって塗布厚みが不均一になることを抑制でき、液溜まりによる製品品質の劣化を抑制できる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、
前記搬送手段は、前記ワークを前記第1の下塗り槽に搬送する前に前記乾燥手段に搬送して、該ワークに対して予熱を与えるように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、ワークを第1の下塗り槽に搬送する前にワークに予熱を与えるようにしたから、ワークを第1の下塗り槽に搬送して接着剤を塗布すると、予熱によって接着剤の乾燥が促進されるため、ワーク表面に液溜まりが生じることを抑制できる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、
前記接着剤槽は、前記ワークを浸漬する接着剤本槽と、該接着剤本槽に並設させた接着剤予備槽とを有し、
前記接着剤予備槽には、冷却水を流通させて貯留された接着剤を冷却する冷却配管が設けられ、
前記接着剤本槽と接着剤予備槽とは、該接着剤予備槽に貯留された接着剤を該接着剤本槽側に循環する循環手段を介して接続されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、接着剤予備槽に貯留された接着剤を冷却水で冷却して温度調整し、この温度調整された接着剤を循環手段で接着剤本槽に循環するようにしたから、接着剤本槽に貯留された接着剤の温度調整を行うことができるとともに、塗布作業で消費された接着剤を補給して接着剤本槽の液面を一定に維持することができる。
【0014】
具体的に、ワークに塗布された接着剤の乾燥を促進するためにワークを加熱して、この加熱されたワークが接着剤本槽に浸漬されると、接着剤本槽に貯留された接着剤の温度が上昇して接着剤の特性が変化するおそれがあるが、接着剤予備槽で温度調整された接着剤を接着剤本槽に供給すれば、接着剤本槽を最適な温度に保つことができる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3において、
前記循環手段は、前記接着剤本槽の底部から液面に向かって接着剤を流動させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、循環手段により、接着剤本槽の底部から液面に向かって接着剤を流動させるから、接着剤本槽に貯留された接着剤が撹拌されることとなり、接着剤の成分が分離して接着剤本槽の底部に沈殿することを抑制できる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1項において、
前記接着剤槽を、前記ワークを該接着剤槽内の接着剤に浸漬させるための搬送経路上の浸漬位置と、該ワークを接着剤の液面上方で通過させるための搬送経路外の退避位置とに昇降移動させる昇降手段を備え、
前記昇降手段は、前記搬送手段の搬送動作が停止してから所定時間経過後に、前記接着剤槽を浸漬位置から退避位置に移動させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、昇降手段により、搬送手段の搬送動作が停止してから所定時間経過後に、接着剤槽を浸漬位置から退避位置に移動させるから、ワークに塗布されている接着剤が接着剤槽内で溶け出すことを抑制することができる。すなわち、装置が緊急停止した場合等に、ワークが接着剤槽に浸かったままの状態で放置しておくと、ワークに既に塗布されている接着剤が溶け出してしまうおそれがあるが、本発明では、搬送手段の搬送動作が停止した後、所定時間経過後にワークを接着剤槽から取り出すことで、ワークに塗布されている接着剤が溶け出す前にワークを引き上げることができる。
【0019】
請求項6の発明は、ワークを接着剤に浸漬させて塗布するための接着剤浸漬塗布方法を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0020】
すなわち、請求項6の発明は、前記ワークを下塗り用の接着剤に浸漬させて下塗りした後、接着剤を乾燥させる第1の下塗り工程と、
前記第1の下塗り工程で下塗りした前記ワークを下塗り用の接着剤に浸漬させてさらに下塗りした後、接着剤を乾燥させる第2の下塗り工程と、
前記第2の下塗り工程で下塗りした前記ワークを上塗り用の接着剤に浸漬させて上塗りした後、接着剤を乾燥させる第1の上塗り工程と、
前記第1の上塗り工程で上塗りした前記ワークを上塗り用の接着剤に浸漬させてさらに上塗りした後、接着剤を乾燥させる第2の上塗り工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、ワークに接着剤を下塗りする作業を2回に分けて行い、さらに、ワークに接着剤を上塗りする作業を2回に分けて行うようにしたから、下塗り作業及び上塗り作業をそれぞれ1回のみ行う場合に比べて、接着剤の膜厚を十分に確保することができる。
【0022】
また、下塗り作業及び上塗り作業をそれぞれ2回ずつに分けて行うようにすれば、1回の塗布作業で塗布する接着剤の膜厚は薄くて済むため、使用する接着剤の成分濃度を薄めに調合することができる。すなわち、ワークの表面に接着剤が部分的に溜まって塗布厚みが不均一になることを抑制でき、液溜まりによる製品品質の劣化を抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
このように、本発明によれば、第1及び第2の下塗り槽を用いてワークに接着剤を下塗りする作業を2回に分けて行い、さらに、第1及び第2の上塗り槽を用いてワークに接着剤を上塗りする作業を2回に分けて行うようにしたから、下塗り作業及び上塗り作業をそれぞれ1回のみ行う場合に比べて、接着剤の膜厚を十分に確保することができる。
【0024】
また、下塗り作業及び上塗り作業をそれぞれ2回ずつに分けて行うようにすれば、1回の塗布作業で塗布する接着剤の膜厚は薄くて済むため、各々の接着剤槽に貯留させる接着剤の成分濃度を薄めに調合することができる。すなわち、ワークの表面に接着剤が部分的に溜まって塗布厚みが不均一になることを抑制でき、液溜まりによる製品品質の劣化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
<装置構成>
図1は、本発明の実施形態に係る接着剤浸漬塗布装置の構成を示す正面図である。図1に示すように、この接着剤浸漬塗布装置1は、ワークWを供給するワーク供給部5と、ワーク供給部5で供給されたワークWを保持して搬送方向の下流側に搬送する搬送部10と、ワークWを浸漬するための接着剤Sが貯留された接着剤槽20と、ワークWを乾燥させる乾燥室40(乾燥手段)と、接着剤Sを塗布した後のワークWを回収するワーク回収部50とを備えている。
【0027】
前記接着剤浸漬塗布装置1は、本体フレーム2を組み合わせて構成された本体部3を有し、本体部3は水平方向に延びる中間フレーム2aにより上側の乾燥室40と下側の収容室4とに区画されている。この収容室4には、接着剤槽20とワーク回収部50とが配設されている。
【0028】
前記ワーク供給部5は、複数個のワークWを収容して1個ずつ整列させて搬送経路上のワーク供給位置に位置付け、搬送部10に対してワークWを供給するものであり、本体部3の収容室4の図1において左側に配設されている。また、収容室4の右側には、装置の動作を制御する制御ボックス6が配設されている。
【0029】
前記搬送部10は、ワーク供給部5で供給されたワークWを保持して搬送方向の下流側に搬送するものであり、本体部3内に配設された複数のローラ11a〜11eと、各ローラ11a〜11eに巻き掛けられた搬送ベルト12と、搬送ベルト12に取り付けられワークWを保持する保持部15とを備えている。
【0030】
前記複数のローラ11a〜11eは、乾燥室40内の上方位置に配設された乾燥位置ローラ11aと、収容室4内の接着剤槽20の上方位置に配設された接着位置ローラ11bと、搬送ベルト12を回転駆動させる駆動ローラ11cと、搬送ベルト12にテンションを与えるテンションローラ11dと、収容室4内の下方位置で幅方向両端に配設された下側搬送ローラ11eとで構成されている。
【0031】
図2は保持部の構成を示す正面図、図3は保持部の構成を示す側面図である。図2及び図3に示すように、保持部15は、半割円筒状のワークWを円弧部分が上方を向くように保持して搬送ベルト12の回転に伴って移動し、ワークWを搬送方向の下流側に搬送するものであり、ワークWを保持する保持バー16と、保持バー16の両端に配設されたガイドバー17と、保持バー16及びガイドバー17が取り付けられた保持本体部18と、保持本体部18を搬送ベルト12に支持する支持軸19とを備えている。
【0032】
前記保持バー16は、上端部が保持本体部18に取り付けられる一方、下端部が図2において左方向に直角に折り曲げられてワークWを保持する水平部16aが形成されている。水平部16aの先端部は斜め上方に折り曲げられて、ワークWが水平部16aから離脱しないようになっている。この保持バー16は、保持本体部18の幅方向に間隔をあけて計8本配設されている。
【0033】
また、前記ガイドバー17は、8本の保持バー16を2本ずつの組とするように保持バー16の間に配設されている。すなわち、2本の保持バー16でワークWを保持しつつ、この2本の保持バー16の両端からワークWが離脱しないようにガイドバー17が配設された構成となっている。具体的に、ガイドバー17は、上端部が保持本体部18に取り付けられる一方、図2において上端部から下端部にかけて「逆くの字」に折れ曲がり、下端部がワークWとオーバーラップするように配設されている。
【0034】
また、前記保持バー16及びガイドバー17の断面形状は菱形状に形成されており、この菱形の頂点部でワークWを保持又はガイドするようになっている。これにより、保持バー16及びガイドバー17とワークWとの接触面積を少なくすることができ、接着剤槽20にワークWを浸漬させたときに、ワークW表面全体に満遍なく接着剤Sが浸漬されるため好ましい。
【0035】
なお、前記保持部15は、搬送ベルト12の周方向に所定の間隔をあけて複数取り付けられており、ワークWに対する接着剤Sの塗布作業が連続して行えるようになっている。
【0036】
図1に示すように、前記接着剤槽20は、搬送部10の搬送経路上に配設され、ワークWを浸漬するための接着剤Sを貯留するためのものであり、計4つの接着剤槽で構成されている。具体的に、搬送方向の上流側から、下塗り用の接着剤Sが貯留された第1の下塗り槽21及び第2の下塗り槽22と、上塗り用の接着剤Sが貯留された第1の上塗り槽23及び第2の上塗り槽24とが、搬送方向の下流側に向かって順に配設されている。
【0037】
このように、本発明では、第1及び第2の下塗り槽21,22を用いてワークWに接着剤Sを下塗りする作業を2回に分けて行い、さらに、第1及び第2の上塗り槽23,24を用いてワークWに接着剤Sを上塗りする作業を2回に分けて行うようにしたから、下塗り作業及び上塗り作業をそれぞれ1回のみ行う場合に比べて、接着剤の膜厚Sを十分に確保することができる。
【0038】
また、下塗り作業及び上塗り作業をそれぞれ2回ずつに分けて行うようにすれば、1回の塗布作業で塗布する接着剤Sの膜厚は薄くて済むため、各々の接着剤槽20に貯留させる接着剤Sの成分濃度を薄めに調合することができる。すなわち、ワークWの表面に接着剤Sが部分的に溜まって塗布厚みが不均一になることを抑制でき、液溜まりによる製品品質の劣化を抑制できる。
【0039】
前記第1及び第2の下塗り槽21,22は載置台25上に載置され、第1及び第2の上塗り槽23,24は、第1及び第2の下塗り槽21,22とは異なる載置台25に載置されている。この載置台25,25の下面には、接着剤槽20を昇降移動させる昇降部26が取り付けられている。
【0040】
ここで、前記第1及び第2の下塗り槽21,22、並びに第1及び第2の上塗り槽23,24の違いは、貯留されている接着剤Sの成分濃度のみであるため、以下、何れか1つの接着剤槽20についてのみ説明を行う。
【0041】
図4は接着剤槽の構成を示す正面図、図5は接着剤槽の構成を示す側面図である。図4及び図5に示すように、この接着剤槽20は、ワークWを浸漬する接着剤本槽30と、接着剤本槽30に並設させた接着剤予備槽35とを備えている。
【0042】
前記接着剤本槽30は、ワークWの搬送経路上に配設され、搬送部10で搬送されたワークWを浸漬させて接着剤Sを塗布するためのものであり、底部が逆台形状に形成されている。この接着剤本槽30の底部には、両端が下方に向かって折り曲げられた噴出パイプ31が取り付けられている。
【0043】
また、前記噴出パイプ31の両端部は、後述する循環ポンプ37(循環手段)の流入配管39と接続されており、循環ポンプ37から循環された接着剤予備槽35内の接着剤Sが、パイプ外周面にあけられた複数の噴出孔32,32、・・・から噴出するようになっている。具体的に、この噴出孔32は、主にパイプ外周面の下方から幅方向両側に拡がるようにあけられており、循環ポンプ37から循環された接着剤Sが接着剤本槽30の底部から液面に向かって流動するようになっている。これにより、接着剤本槽30に貯留された接着剤Sが撹拌されることとなり、接着剤Sの成分が分離して接着剤本槽30の底部に沈殿することを抑制できる。
【0044】
また、前記接着剤本槽30の側壁上部で且つ接着剤予備槽35との間には、接着剤Sの液面を若干高くするためのガイド板33が設けられている。さらに、ガイド板33を囲んで接着剤予備槽35側に突出し、ガイド板33を乗り越えて接着剤本槽30から溢れ出す接着剤Sを接着剤予備槽35側に送り込むガイドノズル34が設けられている。
【0045】
このような構成とすれば、噴出パイプ31から接着剤本槽30に供給する接着剤Sの分量を多めに設定して、接着剤Sが接着剤本槽30の底部から液面に向かって流動する流れを作り出すことができ、接着剤Sの成分が分離して接着剤本槽30の底部に沈殿することを抑制する上でさらに有利となる。
【0046】
前記接着剤予備槽35は、ワークWの搬送経路上から外れた位置で且つ接着剤本槽30に並設されている。この接着剤予備槽35内には、冷却水を流通させて貯留されている接着剤Sを冷却する冷却配管36が配設されている。この冷却配管36の一端部は、接着剤予備槽35の側壁上部に接続されて外部から冷却水が供給されるようになっている。そして、この冷却配管36は、接着剤予備槽35の側壁内周面に沿って螺旋状に巻回され、接着剤予備槽35の底部近傍で他端部が上方に折れ曲がって接着剤予備槽35の側壁上部に接続され、外部に冷却水を排水するようになっている。このような構成とすれば、冷却配管36に冷却水を流通させることで、接着剤予備槽35に貯留されている接着剤Sの温度調整を行うことができる。
【0047】
また、前記接着剤予備槽35の図5において左側には、接着剤予備槽35の接着剤Sを接着剤本槽30に循環させる循環ポンプ37が配設されている。この循環ポンプ37には、接着剤予備槽35の側壁下部に接続された流出配管38が接続される一方、接着剤本槽30の噴出パイプ31に接続された流入配管39が接続されている。これにより、接着剤予備槽35に貯留された接着剤Sを、循環ポンプ37を介して接着剤本槽30に循環することができる。
【0048】
このような構成とすれば、接着剤本槽30に貯留された接着剤Sの温度調整を行うことができるとともに、塗布作業で消費された接着剤Sを補給して接着剤本槽30の液面を一定に維持することができる。具体的に、ワークWに塗布された接着剤Sの乾燥を促進するために乾燥室40でワークWを加熱して、この加熱されたワークWが接着剤本槽30に浸漬されると、接着剤本槽30に貯留された接着剤Sの温度が上昇して接着剤Sの特性が変化するおそれがあるが、接着剤予備槽35で温度調整された接着剤Sを接着剤本槽30に供給すれば、接着剤本槽30を最適な温度に保つことができる。
【0049】
また、前記接着剤本槽30及び接着剤予備槽35は、載置台25の下面に取り付けられた昇降部26により昇降移動するようになっている。この昇降部26は、例えばエアシリンダや油圧シリンダ等で構成することができ、接着剤本槽30を、ワークWを接着剤本槽30内の接着剤Sに浸漬させるための搬送経路上の浸漬位置と、ワークWを接着剤Sの液面上方で通過させるための搬送経路外の退避位置とに昇降移動させるように構成されている。
【0050】
このような構成とすれば、例えば、搬送部10の搬送動作が停止してから所定時間経過後に、接着剤本槽を浸漬位置から退避位置に移動させることで、ワークWに塗布されている接着剤Sが接着剤本槽30内で溶け出すことを抑制できる。すなわち、装置が緊急停止した場合等に、ワークWが接着剤本槽30に浸かったままの状態で放置しておくと、ワークWに既に塗布されている接着剤Sが溶け出してしまうおそれがあるが、本発明では、搬送部10の搬送動作が停止した後、所定時間経過後にワークWを接着剤本槽30から取り出すことで、ワークWに塗布されている接着剤Sが溶け出す前にワークWを引き上げることができる。
【0051】
図1に示すように、前記乾燥室40は、接着剤槽20で浸漬により接着剤Sを塗布したワークWを加熱して接着剤Sを乾燥させるためのものであり、乾燥用の温風を生成するヒータ41と、乾燥室40内で温風を循環させる循環ダクト42とを備えている。
【0052】
前記乾燥室40は、ワークWの搬送経路上に設けられており、第2の下塗り槽22、並びに第1及び第2の上塗り槽23,24でワークWに塗布された接着剤Sを乾燥させるときはもちろん、ワークWを第1の下塗り槽21に搬送する前にもワークWに対して予熱を与えるようにしている。このようにすれば、ワークWを第1の下塗り槽21に搬送して接着剤Sを塗布すると、予熱によって接着剤Sの乾燥が促進されるため、ワークW表面に液溜まりが生じることを抑制できる。
【0053】
図6は、ワーク回収部の構成を示す図1のA矢視図である。図6に示すように、このワーク回収部50は、保持部15で保持しているワークWを引っ掛けて排出する排出部51と、ワークWを収容する収容箱52と、排出部51で排出したワークWを収容箱52まで滑らせて搬送する傾斜板53とを備えている。
【0054】
前記排出部51は、保持部15が下降する際に保持バー16及びガイドバー17が通過するように先端を枝分かれさせた排出爪51aと、排出爪51aで回収したワークWを傾斜板53まで滑らせて搬送する搬送板51bとを有している。
【0055】
そして、前記保持部15が排出部51を通過する際に、保持バー16及びガイドバー17は排出爪51aの隙間を通過するが、ワークWは排出爪51aを通過できずに引っ掛かかり、搬送板51b上を滑り落ちて傾斜板53に搬送されるようになっている。さらに、傾斜板53上をワークWが滑り落ちて、ワークWが収容箱52に収容されるようになっている。
【0056】
なお、本実施形態では、排出部51で回収したワークWを傾斜板53上を滑らせることで収容箱52に収容するようにしたが、搬送ベルト等を用いてワークWを強制的に収容箱52まで搬送するようにしても構わない。
【0057】
<接着剤浸漬塗布方法の処理手順>
次に、上述の接着剤浸漬塗布装置1を用いた接着剤浸漬塗布方法の処理手順について説明する。まず、図1に示すように、搬送部10の搬送ベルト12を搬送方向に回転駆動させて保持部15を移動させ、ワーク供給部5のワーク供給位置を通過させることで、ワークWを保持バー16で引っ掛けて保持する。
【0058】
次に、ワークWを乾燥室40内に搬送し、ワークWに対して予熱を与える。予熱を与えたワークWを第1の下塗り槽21に搬送して接着剤Sを浸漬により塗布する。その後、乾燥室40にワークWを搬送してワークW表面に塗布した接着剤Sを乾燥させる。
【0059】
そして、第1の下塗り槽21で下塗りしたワークWを第2の下塗り槽22に搬送して接着剤Sを浸漬により塗布する。その後、乾燥室40に搬送してワークW表面に塗布した接着剤を乾燥させる。
【0060】
次に、第2の下塗り槽22で下塗りしたワークWを第1の上塗り槽23に搬送して接着剤Sを浸漬により塗布する。その後、乾燥室40に搬送して接着剤Sを乾燥させる。
【0061】
そして、第1の上塗り槽23で上塗りしたワークWを第2の上塗り槽24に搬送して接着剤Sを浸漬により塗布する。その後、乾燥室40に搬送して接着剤Sを乾燥させる。
【0062】
次に、接着剤Sの塗布作業が完了したワークWをワーク回収部50まで搬送し、ワークWを保持した保持部15を排出部51の排出爪51aの隙間を通過させることで、ワークWを排出爪51aに引っ掛けて回収して収容箱52に収容する。
【0063】
以上のように、本実施形態に係る接着剤浸漬塗布装置1によれば、ワークWに接着剤Sを下塗りする作業を2回に分けて行い、さらに、ワークWに接着剤Sを上塗りする作業を2回に分けて行うようにしたから、下塗り作業及び上塗り作業をそれぞれ1回のみ行う場合に比べて、接着剤Sの膜厚を十分に確保することができる。
【0064】
また、下塗り作業及び上塗り作業をそれぞれ2回ずつに分けて行うようにすれば、1回の塗布作業で塗布する接着剤Sの膜厚は薄くて済むため、使用する接着剤Sの成分濃度を薄めに調合することができる。すなわち、ワークWの表面に接着剤Sが部分的に溜まって塗布厚みが不均一になることを抑制でき、液溜まりによる製品品質の劣化を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明は、ワークに接着剤を浸漬により塗布する際に、十分な膜厚を確保しつつ液溜まりを解消して塗装ムラを抑制することができる接着剤浸漬塗布装置及び接着剤浸漬塗布方法を提供することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態に係る接着剤浸漬塗布装置の構成を示す正面図である。
【図2】保持部の構成を示す正面図である。
【図3】保持部の構成を示す側面図である。
【図4】接着剤槽の構成を示す正面図である。
【図5】接着剤槽の構成を示す側面図である。
【図6】ワーク回収部の構成を示す図1のA矢視図である。
【符号の説明】
【0067】
1 接着剤浸漬塗布装置
10 搬送部(搬送手段)
20 接着剤槽
21 第1の下塗り槽
22 第2の下塗り槽
23 第1の上塗り槽
24 第2の上塗り槽
26 昇降部(昇降手段)
30 接着剤本槽
35 接着剤予備槽
36 冷却配管
37 循環ポンプ(循環手段)
40 乾燥室(乾燥手段)
W ワーク
S 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを接着剤に浸漬させて塗布するための接着剤浸漬塗布装置であって、
前記ワークを保持して搬送方向の下流側に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の搬送経路上に配設され、前記ワークを浸漬するための接着剤が貯留された接着剤槽と、
前記搬送手段の搬送経路上で且つ前記接着剤槽の上方に配設され、前記ワークを乾燥させる乾燥手段とを備え、
前記接着剤槽は、下塗り用の接着剤が貯留された第1及び第2の下塗り槽と、上塗り用の接着剤が貯留された第1及び第2の上塗り槽とを有し、各下塗り槽及び上塗り槽が前記ワークの搬送方向下流側に向かって順に配設され、
前記搬送手段は、
前記ワークを前記第1の下塗り槽に搬送して接着剤を浸漬により塗布した後、前記乾燥手段に搬送して接着剤を乾燥させ、
前記第1の下塗り槽で下塗りした前記ワークを前記第2の下塗り槽に搬送して接着剤を浸漬により塗布した後、前記乾燥手段に搬送して接着剤を乾燥させ、
前記第2の下塗り槽で下塗りした前記ワークを前記第1の上塗り槽に搬送して接着剤を浸漬により塗布した後、前記乾燥手段に搬送して接着剤を乾燥させ、
前記第1の上塗り槽で上塗りした前記ワークを前記第2の上塗り槽に搬送して接着剤を浸漬により塗布した後、前記乾燥手段に搬送して接着剤を乾燥させるように構成されていることを特徴とする接着剤浸漬塗布装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記搬送手段は、前記ワークを前記第1の下塗り槽に搬送する前に前記乾燥手段に搬送して、該ワークに対して予熱を与えるように構成されていることを特徴とする接着剤浸漬塗布装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記接着剤槽は、前記ワークを浸漬する接着剤本槽と、該接着剤本槽に並設させた接着剤予備槽とを有し、
前記接着剤予備槽には、冷却水を流通させて貯留された接着剤を冷却する冷却配管が設けられ、
前記接着剤本槽と接着剤予備槽とは、該接着剤予備槽に貯留された接着剤を該接着剤本槽側に循環する循環手段を介して接続されていることを特徴とする接着剤浸漬塗布装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記循環手段は、前記接着剤本槽の底部から液面に向かって接着剤を流動させるように構成されていることを特徴とする接着剤浸漬塗布装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうち何れか1項において、
前記接着剤槽を、前記ワークを該接着剤槽内の接着剤に浸漬させるための搬送経路上の浸漬位置と、該ワークを接着剤の液面上方で通過させるための搬送経路外の退避位置とに昇降移動させる昇降手段を備え、
前記昇降手段は、前記搬送手段の搬送動作が停止してから所定時間経過後に、前記接着剤槽を浸漬位置から退避位置に移動させるように構成されていることを特徴とする接着剤浸漬塗布装置。
【請求項6】
ワークを接着剤に浸漬させて塗布するための接着剤浸漬塗布方法であって、
前記ワークを下塗り用の接着剤に浸漬させて下塗りした後、接着剤を乾燥させる第1の下塗り工程と、
前記第1の下塗り工程で下塗りした前記ワークを下塗り用の接着剤に浸漬させてさらに下塗りした後、接着剤を乾燥させる第2の下塗り工程と、
前記第2の下塗り工程で下塗りした前記ワークを上塗り用の接着剤に浸漬させて上塗りした後、接着剤を乾燥させる第1の上塗り工程と、
前記第1の上塗り工程で上塗りした前記ワークを上塗り用の接着剤に浸漬させてさらに上塗りした後、接着剤を乾燥させる第2の上塗り工程とを備えたことを特徴とする接着剤浸漬塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−136780(P2009−136780A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316035(P2007−316035)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】