説明

接着剤系

本発明は、タンパク質とアセトアセトキシ基を有する1以上のポリマー(P)とを含んでいる接着剤系に関する。本発明は、積層された木質製品を製造する方法およびパーティクルボードを製造する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤系に、および木質製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルムアルデヒドに基づいた樹脂、たとえばフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂および尿素−ホルムアルデヒド樹脂が、バインダーとして木質製品の製造に広く使用されている。このような木質製品の例は、接着剤で一緒に接着された層を含んでいる複合材製品、たとえば合板、積層されたフローリング製品、およびたとえば家具に使用されるベニア製品である。さらなる例は、ボード製品、たとえばパーティクルボード、チップボードおよびファイバーボードであり、これらの場合、木材チップおよび/または木材繊維が、バインダーと一緒にプレスされてボードを形成する。
【0003】
ホルムアルデヒドに基づいた樹脂を硬化すると、木質製品の製造の間およびまたその後の該製品の使用の間の双方に、ホルムアルデヒドが放出されることがある。屋内空気へのホルムアルデヒドの放出は、健康上の理由から多年にわたる重大な懸念事である。
【0004】
ホルムアルデヒドに基づいた樹脂を含有する従来技術の接着剤に対する代替物として適したものにする十分な結合強さおよび全般的な最終製品品質を示すところの、ホルムアルデヒドを含まない木材用接着剤への需要が増加している。
【0005】
耐水性および結合強さは、一般に木質製品に求められる品質を反映する重要な特性である。一般に、特定の最終製品について確立された基準を満たすために要求される特定の品質パラメータが存在する。たとえばパーティクルボードは、たとえば内部結合力、厚さ膨張率および吸水率に関する特定の基準を満たす必要があり、他方、積層されたフローリング製品は、たとえば層剥離に関する特定の基準を満たす必要がある。
【0006】
数十年前に、タンパク質に基づいた接着剤が合板の製造に使用されたが、ホルムアルデヒドに基づいた樹脂によってその優れた性能の故に置き換えられた。最近、異なったタイプのタンパク質に基づいた接着剤が提案されている。特許文献1、2および3は、大豆タンパク質に基づいた接着剤組成物を開示している。タンパク質に基づいた接着剤のさらなる例は、非特許文献1に開示されている。特許文献4は、大豆タンパク質単離物に基づいた接着剤を開示している。特許文献5は、大豆タンパク質単離物を含んでいる接着剤組成物を開示している。特許文献6および7は、パーティクルボードを形成するために使用される、大豆タンパク質単離物を含んでいる接着剤組成物を開示している。非特許文献2は、木材用接着剤中におけるアセトアセチル化されたポリビニルアルコールを開示しているが、何らかのタンパク質と組み合わされたものではない。特許文献8、9、および10は、アセトアセチル化されたポリビニルアルコールを木材用接着剤に使用する方法を開示しているが、何らかのタンパク質と組み合わされたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/113700号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0037906号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0089418号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0005251号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0166796号明細書
【特許文献6】米国特許第6,790,271号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0234156号明細書
【特許文献8】米国特許第4,350,788号明細書
【特許文献9】米国特許第4,687,809号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2005/0197441号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Liら、「硬化剤として1,3−ジクロロ−2−プロパノールを用いる、大豆に基づいた接着剤」、Wood and Fiber Science、2004年、第36巻(第2号)、186〜194ページ
【非特許文献2】Moriら、「・・・木材製品用のハネムーン型接着剤」、J.of applied polymer science、2004年、第91巻、2966〜2972ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらに代わるべき、高い結合強さおよび高い製品品質を示す、タンパク質に基づいた木材用接着剤の必要性が依然として存在する。
【0010】
したがって、本発明は、たとえば耐水性に関して優れた接着強さおよび製品品質を示す、タンパク質に基づいた接着剤組成物を提供する。また、木質製品を製造する方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、タンパク質とアセトアセトキシ基を有する1以上のポリマー(P)とを含んでいる接着剤系を提供する。
【0012】
「接着剤系」は、本明細書では木材用接着剤を形成し、かつそのように機能する2以上の成分の組み合わせを意味する。「接着剤」の語は、本明細書では「バインダー」の語も包含する。
【0013】
本発明は、木質材料の1以上の片上に、タンパク質とアセトアセトキシ基を有する1以上のポリマー(P)とを含んでいる接着剤系を施与すること、そして該片をある材料の、好ましくは木質材料の1以上のさらなる片と接合することを含む、木質製品を製造する方法にも関する。
【0014】
タンパク質と1以上のポリマー(P)との重量比は、好適には約1:2〜約100:1、好ましくは約1:1〜約100:1、より好ましくは約1:1〜約20:1、最も好ましくは約2:1〜約10:1である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1の実施態様では、接着剤系は接着剤組成物を含んでいる。
【0016】
接着剤組成物は、好適には約1〜約99重量%、好ましくは約3〜約75重量%、最も好ましくは約5〜約50重量%のタンパク質を含んでいる。
【0017】
接着剤組成物は、好適には約0.1〜約99重量%、好ましくは約1〜約80重量%、より好ましくは2〜約50重量%、さらにより好ましくは約2〜約25重量%、最も好ましくは約5〜約15重量%の1以上のポリマー(P)を含んでいる。
【0018】
接着剤組成物中の固形分含有量は、好適には約10〜約95重量%、好ましくは約20〜約75重量%、最も好ましくは約30〜約50重量%である。
【0019】
1の実施態様では、接着剤系は、タンパク質および1以上のポリマー(P)を別々に分けられた成分として含んでおり、これらは好ましくは接着工程におけるこれらの実際の使用まで分けられたままでいる。接着剤系の別々の成分は、接着工程における実際の使用の短時間前に混合され、それによって本発明の接着剤組成物を形成することもできる。「短時間」とは、本明細書では好適には約1時間未満、好ましくは約30分間未満、最も好ましくは約15分間未満を意味する。
【0020】
本発明の方法の1の実施態様では、接着剤系は別々に分けられた成分として木質材料の1以上の片上に施与され、該別々に分けられた成分のうちの1の成分がタンパク質を含んでおり、かつさらなる成分が1以上のポリマー(P)を含んでいる。
【0021】
タンパク質を含んでいる成分は、タンパク質の溶液もしくは分散物を含んでいることができ、またはタンパク質を乾燥物質として含んでいることができる。該タンパク質の溶液または分散物は、好ましくは水性である。1以上のポリマー(P)を含んでいる成分は、好適には溶液もしくは分散物、好ましくは水性の溶液もしくは分散物、または固形物質の状態である。接着剤系の分けられた成分として、ポリマー(P)は、好適には約0.1〜約99重量%、好ましくは約1〜約80重量%、より好ましくは約2〜約50重量%、さらにより好ましくは約2〜約25重量%、最も好ましくは約3〜約15重量%のポリマー(P)を含んでいる水性組成物中に存在する。
【0022】
接着剤系の分けられた成分として木質材料の1以上の片上に施与されるときは、好ましくは第一の成分が施与されそして第二の成分が施与されることを含む接着剤系の成分の逐次的な施与が行われる。
【0023】
本発明の方法の1の実施態様では、施与された第一の成分は、タンパク質を溶液かあるいは分散物として、または乾燥物質として含んでおり、そして施与された第二の成分は、1以上のポリマー(P)の溶液または分散物を含んでいる。
【0024】
本発明の方法の1の実施態様では、施与された第一の成分は、1以上のポリマー(P)の溶液または分散物を含んでおり、そして施与された第二の成分は、タンパク質を溶液かあるいは分散物として、または乾燥物質として含んでいる。
【0025】
本発明の方法の1の実施態様では、施与された第一の成分は、1以上のポリマー(P)を固形物質として含んでおり、そして施与された第二の成分は、タンパク質を溶液かあるいは分散物として、または乾燥物質として含んでいる。
【0026】
本発明の方法の1の実施態様では、固形物質としての1以上のポリマー(P)と乾燥物質としてのタンパク質との混合物が施与される。
【0027】
本発明の方法の1の実施態様では、溶液または分散物である第一の施与される成分は、施与後に、かつ第二の成分が施与される前に乾燥される。この場合、該第一の施与される成分は、好ましくは1以上のポリマー(P)の溶液または分散物である。
【0028】
好適なタンパク質の例は、たとえば、ミルク(カゼイン)、大豆、ジャガイモ、トウモロコシ、小麦、米、エンドウ豆等に由来する天然タンパク質、すなわち非変性タンパク質、および変性タンパク質である。好適な大豆タンパク質製品の例は、大豆タンパク質濃縮物、大豆ミール(粕)、大豆タンパク質加水分解物および大豆タンパク質単離物を含む。好ましくは、タンパク質は大豆タンパク質単離物(SPI)である。タンパク質は、好適にはタンパク質ミールまたはタンパク質単離物のような製品の形で本発明に使用されるために用意される。タンパク質ミールまたはタンパク質単離物中のタンパク質含有量は、好適には約30〜約100重量%、好ましくは約50〜約100重量%、最も好ましくは約70〜約100重量%である。
【0029】
タンパク質12重量%を含んでいる水性組成物は、好適には約500〜約5,000,000mPa・秒、好ましくは約1,000〜約2,000,000mPa・秒、より好ましくは約50,000〜約1,500,000mPa・秒、最も好ましくは約100,000〜約1,000,000mPa・秒の(Brookfield粘度計、12rpm、スピンドル4、20℃における)粘度を有する。
【0030】
1以上のポリマー(P)は、好適には約1,000〜約5,000,000g/モル、好ましくは約10,000〜約2,000,000g/モルの重量平均分子量を有する。
【0031】
1以上のポリマー(P)中のアセトアセトキシ基の含有量は、好適には約0.05〜約50モル%、好ましくは約1〜約30モル%、最も好ましくは約5〜約20モル%である。
【0032】
1以上のポリマー(P)は、好ましくはアセトアセチル化されたポリビニルアルコール(AAPVA)を含んでいる。
【0033】
接着剤系は、好適にはさらにアミノ基またはアミド基を有する1以上のポリマー(P1)を、好ましくは別に分けられた成分としてまたはタンパク質成分と混合された状態で含んでいる。アミド基は好ましくはペンダントのアミド基である。
【0034】
「アミド基」の語は、本明細書ではホルムアミド基を包含する。
【0035】
1以上のポリマー(P1)は、好ましくは1級アミノ基またはホルムアミド基を含んでいる。好ましくは、該1以上のポリマー(P1)はポリビニルアミン、ポリビニルホルムアミド、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルホルムアミド)、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミンまたはポリアミドアミンを含んでいる。最も好ましくは、1以上のポリマー(P1)はポリビニルアミンまたはポリエチレンイミンを含んでいる。
【0036】
1以上のポリマー(P1)は、好適には約1,000〜約5,000,000g/モル、好ましくは約10,000〜約2,000,000g/モルの重量平均分子量を有する。
【0037】
接着剤系の別に分けられた成分として、ポリマー(P1)は、好適にはポリマー(P1)約0.1〜約99重量%、好ましくは約1〜約80重量%、より好ましくは約2〜約50重量%、さらにより好ましくは約2〜約25重量%、最も好ましくは約3〜約15重量%を含んでいる水性組成物中に存在している。
【0038】
1以上のポリマー(P1)を含んでいる水性組成物は、さらに無機または有機塩を含んでいてもよい。1以上のポリマー(P1)の一部が、イオン荷電、好ましくはカチオン荷電していてもよい。水性組成物中の該塩の負の対イオンの量は、好適には0〜約50重量%、好ましくは約1〜約30重量%、最も好ましくは約2〜約20重量%である。
【0039】
タンパク質、ポリマー(P)および任意的なポリマー(P1)をそれぞれ含んでいる接着剤系の1以上の成分は、またはタンパク質およびポリマーならびに任意的なポリマー(P1)を含んでいる接着剤組成物は、さらに添加剤およびフィラー、たとえばカオリンを含んでいることができる。
【0040】
本発明の方法の1の実施態様では、接着剤組成物は施与後に乾燥され、そしてその後に水、または1以上のポリマー(P)を含んでいる水性組成物、または1以上のポリマー(P1)を含んでいる水性組成物を添加することによって活性化される。
【0041】
1の実施態様では、接着剤系はタンパク質、1以上のポリマー(P)および1以上のポリマー(P1)を別々に分けられた成分として含んでおり、これらは接着工程におけるこれらの実際の使用まで分けられたままである。接着剤系の別々の成分は、接着工程における実際の使用の短時間前に混合されて、それによって本発明の接着剤組成物を形成してもよい。「短時間」の語は、本明細書では好適には約1時間未満、好ましくは約30分間未満、最も好ましくは約15分間未満を意味する。
【0042】
本発明の方法の1の実施態様では、接着剤系は別々に分けられた成分として木質材料の1以上の片上に施与され、該別々に分けられた成分のうちの1の成分がタンパク質を含んでおり、かつさらなる成分が1以上のポリマー(P)を含んでおり、かつなおもさらなる成分が1以上のポリマー(P1)を含んでいる。タンパク質を含んでいる成分はタンパク質の溶液もしくは分散物を含んでいることができ、またはタンパク質を乾燥物質として含んでいることができる。1以上のポリマー(P)を含んでいる成分は好適には溶液または分散物である。1以上のポリマー(P1)を含んでいる成分は好適には溶液または分散物である。
【0043】
本発明の方法の1の実施態様では、施与された第一の成分はタンパク質と1以上のポリマー(P)との溶液または分散物を含んでおり、これは、1以上のポリマー(P1)の溶液または分散物を含んでいる第二の成分の施与前に乾燥される。
【0044】
本発明の方法の1の実施態様では、施与された第一の成分はタンパク質と1以上のポリマー(P1)との溶液または分散物を含んでおり、これは、1以上のポリマー(P)の溶液または分散物を含んでいる第二の成分の施与前に乾燥される。
【0045】
本発明の方法の1の実施態様では、施与された第一の成分は1以上のポリマー(P)の溶液または分散物を含んでおり、これは、タンパク質と1以上のポリマー(P1)との溶液または分散物を含んでいる第二の成分の施与前に乾燥される。
【0046】
本発明の方法の1の実施態様では、施与された第一の成分は1以上のポリマー(P1)の溶液または分散物を含んでおり、これは、タンパク質と1以上のポリマー(P)との溶液または分散物を含んでいる第二の成分の施与前に乾燥される。
【0047】
接着剤組成物中のタンパク質および1以上のポリマー(P)および任意的な1以上のポリマー(P1)の量は、好適には1000g/モル以上の分子量を有する成分の少なくとも75重量%、同様に好適には約75〜約100重量%、好ましくは少なくとも85重量%、同様に好ましくは約85〜約100重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%、同様に最も好ましくは約95〜約100重量%を構成する。
【0048】
本発明はさらに、本発明に従う接着剤系を、木質材料の片を接着して木質製品を形成するために使用する方法に関する。
【0049】
本発明の1の実施態様では、木質材料の片はシートまたはラメラである。この場合に、木質製品は好適には積層されたフローリング材、ベニアフローリング、ベニア家具材、合板、ウォールパネル、ルーフパネルまたは積層されたビームである。
【0050】
本発明の1の実施態様では、木質材料の片は木材チップまたは木材粒子、たとえばチップ、削りくず、フレーク、おがくずまたは任意の類似した微細化された木質材料である。この場合に、木質製品は好適にはチップボード、パーティクルボードもしくはファイバーボード、または配向性ストランドボードである。
【0051】
本発明に使用されるべき木材粒子の湿分含有量は、好適には約0〜約20重量%、好ましくは約1〜約10重量%、より好ましくは約1.5〜約5重量%である。
【0052】
木材粒子と接着剤系との重量比は、乾燥重量として計算されて、好適には約100:1〜約1:1、好ましくは約50:1〜約2:1、より好ましくは約30:1〜約2.5:1、最も好ましくは約15:1〜約3:1である。
【0053】
本発明に従う方法は、好適には木質材料の1以上の片を本発明に従う接着剤系に接触させる段階、プレスしそれによって木質材料の片をさらなる木質材料と接合する段階を含む。プレスは好適には高められた温度で行われる。木質材料は任意のタイプおよび形態の木質材料、たとえばチップ、繊維、シート、ラメラ、ベニア、片等であることができる。本発明の方法は、好適には本発明に従う接着剤組成物を木質材料の表面上に施与し、それに続いてプレスすることを含む。プレス温度は、どの木質製品が製造されることを意図されているかに依るが、好適には約50〜約250℃、好ましくは約70〜約200℃である。パーティクルボード、チップボードおよびファイバーボード製品の場合、プレス温度は好ましくは約100〜約225℃、最も好ましくは約150〜約200℃である。積層される製品、たとえば合板、積層されるフローリングまたはベニアフローリング製品の場合、プレス温度は好ましくは約70〜約175℃、最も好ましくは約90〜約160℃である。
【0054】
プレス時間およびプレス温度は関連しており、その故に、より低いプレス温度は一般により長いプレス時間を要求する。製造されるべき木質製品もまた正に、好適なプレス温度およびプレス時間を決める。プレス時間は、好適には少なくとも約10秒間、同様に好適には約10秒間〜約60分間、好ましくは少なくとも約30秒間、同様に好ましくは約30秒間〜約30分間、最も好ましくは少なくとも約1分間、同様に好ましくは約1〜約15分間である。
【0055】
本発明の方法の1の実施態様では、積層された製品を製造するときに、本発明の方法は好適には本発明に従う接着剤組成物を、接合部が約0.1〜約500g/mの当初に施与された量を含んでいるように表面上に施与することを含む。施与される量は、製造されるべき製品に依存し、プレス成形されるベニアの場合、好ましくは約50〜約200g/m、積層されるフローリング材の場合、好ましくは約100〜約160g/mである。好適な上限もまた、溶液を施与されるのがどちらのタイプの木質材料であるかに依る。接着剤組成物は、接合されるべき表面の片方または双方上に施与されることができる。双方の表面上に施与されるならば、各表面上に施与される量の合計は、特定の接合部全体について好まれる量に対応する。
【0056】
本発明の方法の他の実施態様では、積層された製品を製造するときに、本発明の方法は好適には本発明に従う接着剤系を、タンパク質および1以上のポリマー(P)の別々に分けられた成分として表面上に施与することを含む。好適には、タンパク質およびポリマー(P)の双方は水性組成物として施与される。あるいは、タンパク質および1以上のポリマー(P)は、接合されるべく意図されている別々の表面上に施与されることができる。表面の片方または双方上に施与される接着剤系の合計量は、接合部が約0.1〜約500g/mの当初に施与された量を含んでいるような量である。施与される量は、製造されるべき製品に依存し、プレス成形されるベニアの場合、好ましくは約50〜約200g/m、積層されるフローリング材の場合、好ましくは約100〜約160g/mである。好適な上限もまた、溶液を施与されるのがどちらのタイプの木質材料であるかに依る。
【0057】
本発明の方法の他の実施態様では、パーティクルボード、チップボードまたはファイバーボードおよび類似した製品を製造するときに、本発明の方法は好適には本発明に従う接着剤系を、タンパク質および1以上のポリマー(P)の別々に分けられた成分として木材チップ上に施与することを含む。
【0058】
パーティクルボード、チップボードまたはファイバーボードおよび類似した製品の製造において別々に施与されるときに、タンパク質は乾燥形態でまたは水性組成物中に存在する状態で施与されることができる。好ましくは、タンパク質は乾燥形態で施与される。1以上のポリマー(P)は固体としてまたは水性組成物として施与されることができる。1以上のポリマー(P)が好ましくは最初にチップに添加され、それに続いてタンパク質が添加される。
【0059】
1の実施態様では、パーティクルボード、チップボードまたはファイバーボードおよび類似した製品の製造において、1以上のポリマー(P)は水性組成物として施与され、それに続いてタンパク質が乾燥形態で添加される。
【0060】
1の実施態様では、パーティクルボード、チップボードまたはファイバーボードおよび類似した製品の製造において、1以上のポリマー(P)は乾燥形態のタンパク質と同時に固体として施与される。
【0061】
本発明は、木質製品を製造する方法によって得られることができる木質製品にも関する。
【0062】
木質製品は、好適にはパーティクルボード、チップボードまたはファイバーボード製品である。あるいは、木質製品は好適には積層された製品、たとえば合板、積層されたフローリングまたはベニアフローリング製品である。
【0063】
本発明に従って造られたパーティクルボード、チップボードまたはファイバーボード製品は、乾燥重量として計算されて好適には約1〜約20重量%、好ましくは約3〜約15重量%のタンパク質含有量を有する。
【0064】
本発明に従って造られたパーティクルボード、チップボードまたはファイバーボード製品は、乾燥重量として計算されて好適には約0.5〜約10重量%、好ましくは約1〜約5重量%の、アセトアセトキシ基を含んでいるポリマー含有量を有する。
【0065】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。部およびパーセントは、他様に明示されない限り、それぞれ重量部および重量パーセントに関する。
【実施例1】
【0066】
15×15cmの別々のパーティクルボード上に異なった組成物を施与し、それに続いて5日間乾燥することによって、ベニア製品が造られた。乾燥された接着層はそれから再び湿らされ、それに続いて該ボード上に0.6mmのブナノキの層がベニア接合された。集成物が130℃において1分間プレスされた。(チゼルによる)繊維引裂け率が試験された。
【0067】
試験された組成物は以下の通りである。
1)大豆タンパク質単離物(SPI)(Solae社からのSupro(商標)500E)14g、水100ml
2)大豆タンパク質単離物(SPI)(Solae社からのSupro(商標)500E)8g、アセトアセチル化されたポリビニルアルコール溶液(AAPVA)(日本合成化学工業社からのGohsefimer(商標)Z−220)(5重量%)50g
3)大豆タンパク質単離物(SPI)(Solae社からのSupro(商標)500E)8g、アセトアセチル化されたポリビニルアルコール溶液(AAPVA)(日本合成化学工業社からのGohsefimer(商標)Z−220)(10重量%)50g
【表1】

【実施例2】
【0068】
2重量%の湿分含有量を有する木材チップ864gを、アセトアセチル化されたポリビニルアルコール(AAPVA)(日本合成化学工業社からのGohsefimer(商標)Z−220)約11重量%の水性溶液205gと混合し、それに続いて大豆タンパク質単離物(SPI)(Food Partner社からのPrisolate(商標)601EM)約85gを混ぜ込むことによって、パーティクルボードが製造された。該SPIはタンパク質含有量>90重量%および乾燥内容量94重量%を有していた。このチップ混合物が30×30cmのシートへと成形され、185℃において3分間プレスされ、そして16mm厚さのボードへとプレス成形された。一連の圧力は、30秒間160kg/cm、2.5分間40kg/cm、そして最後の30秒間は圧力なしであった。引張強さ(内部結合、IB)、厚さ膨張率(TSW)および吸水率(ABS)が測定された。
【0069】
上記と同じ様式で、2重量%の湿分含有量を有する木材チップ994gを、大豆タンパク質単離物(Solae社からのSupro(商標)500E)約85gと混合することによって、さらなるパーティクルボードが製造された。該SPIはタンパク質含有量>90重量%および乾燥内容量94重量%を有していた。引張強さ(内部結合、IB)が測定された。
【表2】

【実施例3】
【0070】
2重量%の湿分含有量を有する木材チップ50.7gをそれぞれ、約16.5重量%の水性溶液として存在している、アセトアセチル化されたポリビニルアルコール(AAPVA)(日本合成化学工業社からのGohsefimer(商標)Z−220)1gと混合し、それに続いて様々な量の大豆タンパク質単離物(SPI)(Solae社からのSupro(商標)500E)を混ぜ込むことによって、より小さい規模でパーティクルボードが製造された。該SPIはタンパク質含有量>90重量%および乾燥内容量94重量%を有していた。SPIを含まない参照例およびAAPVAを含まない参照例も調製された。このチップ混合物が10mm厚さのボードへとプレス成形された。プレスは9kg/cmおよび180〜185℃において5分間なされた。5×5cmの片を2の金属ブロックの表面上に接着し、そしてそれらを引き剥がすことによって、内部結合強さ(IB)が測定された。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質とアセトアセトキシ基を有する1以上のポリマー(P)とを含んでいる接着剤系。
【請求項2】
タンパク質と1以上のポリマー(P)との重量比が約1:2〜約100:1である、請求項1に従う接着剤系。
【請求項3】
タンパク質と1以上のポリマー(P)との重量比が約1:1〜約20:1である、請求項1または2に従う接着剤系。
【請求項4】
接着剤組成物を含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項に従う接着剤系。
【請求項5】
接着剤組成物が、約5〜約30重量%のタンパク質を含んでいる、請求項4に従う接着剤系。
【請求項6】
接着剤組成物が、約3〜約15重量%の1以上のポリマー(P)を含んでいる、請求項4または5に従う接着剤系。
【請求項7】
タンパク質および1以上のポリマー(P)を別々に分けられた成分として含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項に従う接着剤系。
【請求項8】
1以上のポリマー(P)が、アセトアセチル化されたポリビニルアルコールを含んでいる、請求項1〜7のいずれか1項に従う接着剤系。
【請求項9】
アミノ基またはアミド基を有する1以上のポリマー(P1)を含んでいる、請求項1〜8のいずれか1項に従う接着剤系。
【請求項10】
1以上のポリマー(P1)が、ポリビニルアミンを含んでいる、請求項1〜9のいずれか1項に従う接着剤系。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に従う接着剤系を木質材料の1以上の片上に施与すること、そして該片をある材料の1以上のさらなる片と接合することを含む、木質製品を製造する方法。
【請求項12】
接着剤系が、接着剤組成物として木質材料の片上に施与される、請求項11に従う方法。
【請求項13】
接着剤組成物が施与後に乾燥され、そして後に水、または1以上のポリマー(P)を含んでいる水性組成物、またはアミノ基もしくはアミド基を有する1以上のポリマー(P1)を含んでいる水性組成物を添加することによって活性化される、請求項12に従う方法。
【請求項14】
接着剤系が、別々に分けられた成分として木質材料の片上に施与され、該別々に分けられた成分のうちの1の成分がタンパク質を含んでおり、かつ他の成分が1以上のポリマー(P)を含んでいる、請求項11に従う方法。
【請求項15】
施与された第一の成分が、タンパク質の溶液または分散物を含んでおり、そして施与された第二の成分が、1以上のポリマー(P)の溶液または分散物を含んでいる、請求項14に従う方法。
【請求項16】
施与された第一の成分が、1以上のポリマー(P)の溶液または分散物を含んでおり、そして第二の成分が、タンパク質を溶液かあるいは分散物として、または乾燥物質として含んでいる、請求項14に従う方法。
【請求項17】
施与された第一の成分が、施与後に、かつ第二の成分が施与される前に乾燥される、請求項15または16に従う方法。
【請求項18】
接着剤系が、アミノ基またはアミド基を有する1以上のポリマー(P1)を別に分けられた成分として含んでいる、請求項11および14〜17のいずれか1項に従う方法。
【請求項19】
1以上のポリマー(P1)が、ポリビニルアミンを含んでいる、請求項13または18に従う方法。
【請求項20】
片が、シート、ラメラおよびベニアのうちの1以上である、請求項11〜19のいずれか1項に従う方法。
【請求項21】
木質製品が、積層されたフローリング材、ベニアフローリング、ベニア家具材、合板、ウォールパネル、ルーフパネルまたは積層されたビームである、請求項20に従う方法。
【請求項22】
片が、木材チップまたは木材粒子である、請求項11〜19のいずれか1項に従う方法。
【請求項23】
木質製品が、チップボード、パーティクルボードもしくはファイバーボード、または配向性ストランドボードである、請求項22に従う方法。
【請求項24】
請求項11〜22のいずれか1項に従う方法によって得られることができる木質製品。
【請求項25】
請求項1〜10のいずれか1項に従う接着剤系を、木質材料の片を接着して木質製品を形成するために使用する方法。

【公表番号】特表2009−538960(P2009−538960A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513103(P2009−513103)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050383
【国際公開番号】WO2007/139503
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】