説明

接着剤組成物並びにこれを用いたカバーレイフィルム及びフレキシブル銅張積層板

【課題】接着物が高温環境下に長時間置かれても接着性が低下することの無い接着剤組成物を提供する。また、FPC用に使用した場合、ポリイミドフィルムに対して優れた接着強さを発現し、耐熱老化性及びはんだ耐熱性に優れた接着剤組成物を提供する。
【解決手段】ポリウレタン樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、トリアジン環を有するフェノール樹脂(C)及びフェノキシ樹脂(D)を含有する接着剤組成物であって、前記ポリウレタン樹脂(A)の融点が30〜150℃であることを特徴とする接着剤組成物。前記エポキシ樹脂(B)が、一分子中に2個のエポキシ基を有する樹脂(b1)と、多官能エポキシ樹脂(b2)の混合物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤組成物に関し、特にフレキシブルプリント配線板(以下、「FPC」ともいう)用接着剤として好ましく使用することができるものに関する。FPC用接着剤として一般に求められる配線基板への接着性、はんだ耐熱性に加えて、長期高温環境下にさらされても接着強さの低下が小さい接着剤組成物に関する。また、接着後の基板の反りなど、製品外観上の不具合が生じることのない接着フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高密度化等の多様化に伴い、フレキシブル回路基板あるいはフレキシブル印刷配線板の需要が増大している。そのような情勢の中でフレキシブル印刷回路基板の製造においても高集積化、多層化が進んでいる。
フレキシブル銅張積層板は、可とう性のある絶縁性ベースフィルムの片面又は両面に接着剤層を介して銅箔を貼り合わせた構造であり、絶縁性ベースフィルムの基材としては、高耐熱性、高信頼性を有するポリイミドフィルムを使用することが多い。更に、このフレキシブル銅張配線板は、レジスト層形成、露光、現像、エッチング、レジスト層剥離などの工程を経て、銅箔に導電性回路を形成したFPCとなる。
これらFPCには、導電性回路の保護や絶縁性を目的として、フレキシブル銅張積層板の絶縁性ベースフィルムと銅箔とを貼り合わせるための接着剤、カバーレイ用接着剤や層間接着剤等の接着剤や、半導体封止剤等が広く用いられている。
従来、絶縁ベースフィルムと金属、絶縁ベースフィルム同士、金属同士等の接着に用いられるものとして、エポキシ樹脂と高い反応性を有する熱可塑性樹脂とを含有する種々の接着剤が提案されている。例えば、特許文献1にはカルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム/エポキシ樹脂系接着剤が提案されている。また、特許文献2ではグリシジル基含有エラストマー/エポキシ樹脂系接着剤が提案されている。また、特許文献3ではカルボキシル基含有エチレンアクリル系エラストマー/エポキシ樹脂系接着剤が提案されている。また、特許文献4では、酸価を有するポリエステルアミド樹脂/エポキシ樹脂系接着剤が提案されている。特許文献5では、酸価を有するポリエステルポリウレタン樹脂/エポキシ樹脂系接着剤が提案されている。特許文献6では、ナイロン/エポキシ樹脂系接着剤が提案されている。これらの先行技術文献に示されている接着剤は、ゴムやエラストマー成分のカルボキシル基とエポキシ樹脂との反応性を利用し、速やかな硬化反応を実現し、かつ、接着性に優れているため、一般的に広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−49427号公報
【特許文献2】特開2001−354936号公報
【特許文献3】特開平7−235767号公報
【特許文献4】特開平2006−152015号公報
【特許文献5】特開平2005−244139号公報
【特許文献6】特開2000−188451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1から6に開示される接着剤では、構成要素であるゴムやエラストマーとポリイミド樹脂との接着性が不十分であり、はく離がおきやすいことが問題として挙げられる。また、ポリイミド/接着剤/銅箔からなる積層板を150℃あるいは200℃の高温環境にさらした場合、数十時間後には接着性が大きく低下することが問題となっている。更に、ポリイミドなどの絶縁フィルムに接着剤を塗布・乾燥した接着剤付きのカバーレイフィルムとして、保管や輸送を行うことに際し、保管中や輸送中の熱履歴により接着剤の硬化反応が進行する問題がある。硬化反応が進行したカバーレイフィルムを銅箔に加熱接着した場合、樹脂の流れ出し性が悪いため、回路溝への埋まり込みが不十分となるので回路の絶縁性が保持できなくなる。また、銅箔との密着性も悪くなることから、はく離接着強さの低下やはんだリフロー炉での加熱工程において剥がれや膨れが発生する問題があった。この現象は、接着剤を構成するゴム又はエラストマー成分中のカルボキシル基、エポキシ基やアミド基が、エポキシ樹脂と比較的低温でも反応が進行することに由来し、加熱接着時の溶融粘度が高すぎる状態になったことが原因である。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するものであり、その目的は接着物が高温環境下に長時間置かれても接着性が低下することの無い接着剤組成物を提供することにある。また、FPC用に使用した場合、ポリイミドフィルムに対して優れた接着強さを発現し、耐熱老化性及びはんだ耐熱性に優れた接着剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、トリアジン環を有するフェノール樹脂及びフェノキシ樹脂を使用することにより、接着剤の耐熱老化性が向上することを見出した。また、本発明の接着剤組成物をFPCに用いた場合、ポリイミドフィルムに対する接着性、耐熱老化性及びはんだ耐熱性に優れることを見出した。更に、前記接着剤組成物がメラミン樹脂を含む場合は、接着した積層体が吸湿した状態でもはんだ耐熱性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
なお、本発明において、吸湿条件下におけるはんだ耐熱性を「吸湿はんだ耐熱性」という。
【0007】
すなわち、本発明に係る接着剤組成物は以下の通りである。
1.ポリウレタン樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、トリアジン環を有するフェノール樹脂(C)及びフェノキシ樹脂(D)を含有する接着剤組成物であって、前記ポリウレタン樹脂(A)の融点が30〜150℃であることを特徴とする接着剤組成物。
2.上記エポキシ樹脂(B)が、一分子中に2個のエポキシ基を有する樹脂(b1)と、多官能エポキシ樹脂(b2)の混合物であることを特徴とする上記1に記載の接着剤組成物。
3.上記一分子中に2個のエポキシ基を有する樹脂(b1)と、上記多官能エポキシ樹脂(b2)のエポキシ当量比(b1/b2)が、0.1〜4.0であることを特徴とする上記2に記載の接着剤組成物。
4.上記エポキシ樹脂(B)の含有量が、上記ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対して20〜500質量部であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
5.上記トリアジン環を有するフェノール樹脂(C)の水酸基当量が、上記エポキシ樹脂(B)1.0当量に対して、0.1〜2.0当量であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。
6.上記フェノキシ樹脂(D)の含有量が、上記ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対して30〜300質量部であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の接着剤組成物。
7.更に、メラミン樹脂(E)を含むことを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の接着剤組成物。
8.上記メラミン樹脂(E)の含有量が、上記ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対して20〜40質量部であることを特徴とする上記7に記載の接着剤組成物。
9.上記1〜8のいずれかに記載の接着剤組成物が、ポリイミドフィルムの片面に塗布されていることを特徴とするカバーレイフィルム。
10.上記1〜8のいずれかに記載の接着剤組成物で、ポリイミドフィルムの少なくとも片面に銅箔を貼り合わせてなることを特徴とするフレキシブル銅張積層板。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る接着剤組成物は、以上の様に、30〜150℃に融点を有するポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、トリアジン環を有するフェノール樹脂及びフェノキシ樹脂を含有する。そのため、接着物が高温環境下に長時間置かれても、接着強さを維持することができる。また、FPCに用いた場合には、ポリイミドフィルム等に対しての高い接着強さを発現し、耐熱老化性及びはんだ耐熱性に優れる。本発明の接着剤組成物が、更にメラミン樹脂を含む場合には、接着した積層体が吸湿した状態でもはんだ耐熱性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
○接着剤組成物
本発明に係る接着剤組成物は、ポリウレタン樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、トリアジン環を有するフェノール樹脂(C)及びフェノキシ樹脂(D)を含有するものであり、それぞれの樹脂は以下の通りである。
【0011】
本発明に使用されるポリウレタン樹脂(A)について詳細を説明する。本発明に使用されるポリウレタン樹脂は、ポリイミドなどの絶縁フィルムと銅箔の接着強さを高める役割を担っている。本発明に使用されるポリウレタン樹脂は、各種ポリオールとポリイソシアネートから構成され、融点が30℃から150℃の結晶性を有するポリウレタン樹脂である。
【0012】
本発明に使用される結晶性ポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分としては、公知の任意の化合物を使用することができる。例えば、ポリエーテル系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリカプロラクトン系ジオール、ポリカーボネート系ジオール、ひまし油、アクリルポリオール、ポリブタジエンジオールなどが挙げられる。好ましくはポリエーテル系ジオール及びポリエステル系ジオールである。
【0013】
ポリエーテル系ジオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどを挙げることができる。ポリエステル系ジオールとしては、ポリオールと多塩基酸の縮合反応により生成されるものであり、ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオールなどを用いることができる。多塩基酸成分としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸などを用いることができる。
【0014】
本発明に使用されるポリウレタン樹脂を構成するポリイソシアネート成分としては、公知の任意の化合物を用いることができる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族系ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族系ジイソシアネートが挙げられる。好ましくは、芳香族系ポリイソシアネートである。
【0015】
本発明で用いられるポリウレタン樹脂(A)の融点は30〜150℃であり、結晶性を有するものである。当該融点は35〜120℃であることが好ましく、40℃〜90℃であることがより好ましい。融点が30℃に満たない場合は、カバーレイの銅箔貼り合わせ工程の加熱接着時における接着剤組成物の溶融粘度が低くなり、加熱接着時の樹脂の流れ出し性が大きくなりすぎる。そのため、接続接点部分に樹脂が覆ってしまい、通電が不十分となる。一方、融点が150℃を超える場合は、銅箔貼り合わせ工程の加熱接着時の樹脂の溶融粘度が高すぎるため、回路埋まり込み性が悪くなり、絶縁信頼性が低下する。
融点を持たない非晶性ウレタン樹脂を用いた場合は、耐熱老化性に優れる接着剤組成物を得ることはできない。
【0016】
本発明で用いられるポリウレタン樹脂(A)の酸価は5mgKOH/g以下であることが好ましく、本発明で使用されるポリウレタン樹脂は、カルボキシル基によるエポキシ樹脂との反応性が実質的に少ないことを特徴としている。すなわち本発明の接着剤組成物が熱硬化処理され十分に反応が完結し、接着剤全体が架橋構造を形成した後においても、本発明で使用されるポリウレタン樹脂中のカルボキシル基による架橋構造は形成されていないことを意味する。そのエポキシ樹脂との反応性の指標として、酸価が5mgKOH/g以下であることが好ましく、3mgKOH/g以下であることがより好ましく、1mgKOH/g以下であることが更に好ましい。酸価が5mgKOH/gを超えるポリウレタン樹脂を使用すると、ポリウレタン樹脂とエポキシとの反応が比較的低温で起こりやすくなるので、接着剤を塗布したカバーレイの保管及び輸送中の熱履歴により、架橋反応が進行する場合がある。そのため、そのカバーレイの銅箔貼り合わせ工程の加熱接着時に樹脂の溶融粘度が高くなり過ぎるので、回路溝への埋まりこみが不十分となり回路の絶縁性が保持できなくなる。また、銅箔との密着性も悪くなることから、接着強さが低下する。
【0017】
本発明で用いられるポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、50000〜500000であることが好ましく、100000〜300000であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)がこの範囲にあれば、接着性及び耐熱老化性に優れる接着剤組成物を得ることができる。
【0018】
次に本発明で用いられるエポキシ樹脂(B)について説明する。
本発明で使用されるエポキシ樹脂(B)は、接着剤硬化物の耐熱性と高い接着性を発現するための役割を担っている。
エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、又はそれらに水素添加したもの;オルトフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−ヒドロキシ安息香酸グリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ソルビトールのポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールのポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定するものではない。また、フェノールノボラックエポキシ樹脂、o−クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂も用いることができる。
【0019】
更に、エポキシ樹脂の例として難燃性を付与した臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0020】
本発明に係る接着剤組成物においては、トリアジン環を有するフェノール樹脂との反応で架橋構造を形成し、高い耐熱性を発現させるために、エポキシ樹脂としては一分子中に2個以上のエポキシ基を有するものを用いるのが好ましい。エポキシ基が1個のエポキシ樹脂を用いた場合、トリアジン環を有するフェノール樹脂との架橋度が低いために十分なはんだ耐熱性が得られない場合がある。
更に、エポキシ樹脂は、一分子中に2個のエポキシ基を有する樹脂(b1)と、多官能エポキシ樹脂(b2)の混合物であることが好ましい。前記エポキシ樹脂(b1)のみでは、トリアジン環を有するフェノール樹脂との架橋度がまだ低いために十分なはんだ耐熱性及び吸湿はんだ耐熱性が得られない場合がある。一方、前記多官能エポキシ樹脂(b2)のみでは、硬化物の架橋密度が高くなりすぎる傾向がある。その結果、柔軟性が発現しなくなる場合や、被着体への接着性が不十分になる場合がある。前記混合物であれば、初期接着性、耐熱老化性により優れる接着剤組成物を得ることができる。前記エポキシ樹脂(b1)とエポキシ樹脂(b2)の組み合わせとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とフェノールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とグリシジルアミン系エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂とグリシジルアミン系エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、本発明において、多官能エポキシ樹脂とは、一分子中に3個以上のエポキシ基を有するものをいう。
【0021】
また、前記一分子中に2個のエポキシ基を有する樹脂(b1)と、多官能エポキシ樹脂(b2)の質量比(b1/b2)は、20/80〜95/5であることが好ましく、40/60〜90/10であることがより好ましく、50/50〜90/10であることが更に好ましい。前記樹脂(b1)の割合が20に満たないと、硬化物の架橋密度が高くなりすぎ、初期接着性が低くなる場合がある。一方、前記樹脂(b1)の割合が95を超えると、はんだ耐熱性及び吸湿はんだ耐熱性が不十分な場合がある。
【0022】
前記一分子中に2個のエポキシ基を有する樹脂(b1)と、多官能エポキシ樹脂(b2)のエポキシ当量比(b1/b2)は、0.1〜4.0であることが好ましく、0.1〜3.0であることがより好ましく、0.2〜2.0であることが更に好ましい。前記当量比が0.1に満たないと、硬化物の架橋密度が高くなりすぎ、初期接着性が低くなる場合がある。一方、前記当量比が4.0を超えると、はんだ耐熱性及び吸湿はんだ耐熱性が不十分な場合がある。
【0023】
本発明の接着剤組成物におけるポリウレタン樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との含有割合はポリウレタン樹脂(A)100質量部に対し、エポキシ樹脂(B)が20〜500質量部の範囲内で含有することが好ましい。より好ましくは、エポキシ樹脂が30〜300質量部であり、更に好ましくは50〜200質量部である。エポキシ樹脂の含有割合が20質量部未満では硬化処理後の接着剤の弾性率が低くなるため、十分な耐熱性が得られなくなる。一方、エポキシ樹脂の含有割合が500質量部を超えた場合には、ポリウレタン樹脂の含有比率が少なくなるため、絶縁フィルムや銅箔などとの接着強さが低下する。
【0024】
次に本発明で使用されるトリアジン環を有するフェノール樹脂(C)について説明する。
本発明で使用されるトリアジン環を有するフェノール樹脂(C)は、例えば、特開平11−21419号公報に記載された方法により製造することができる。具体的には、フェノール類、アミノ基含有トリアジン環を有する化合物及びアルデヒド類を縮合反応させて得ることができる。トリアジン環を有するフェノール樹脂(C)としては、例えば、一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0025】
【化1】

【0026】
トリアジン環を有するフェノール樹脂(C)は、エポキシ樹脂との反応により架橋構造を形成するため、接着剤の耐熱性を向上させる効果がある。また、銅との接着性向上の役割を担っている。更に、トリアジン環を有するフェノール樹脂(C)を用いれば、特異的に耐熱老化性が高いものが得られる。
【0027】
本発明で使用されるエポキシ樹脂(B)とトリアジン環を有するフェノール樹脂(C)の当量比は、エポキシ当量1.0に対して、トリアジン環を有するフェノール樹脂の水酸基当量は0.1〜2.0の範囲内で含有するのが好ましい。より好ましくは0.2〜1.5であり、更に好ましくは0.3〜1.0である。トリアジン環を有するフェノール樹脂の当量比が0.1未満では硬化処理後の接着剤の弾性率が低くなるため、十分な耐熱特性が得られなくなる場合がある。一方、トリアジン環を有するフェノール樹脂の当量比が2.0を越えると、硬化処理後の接着剤の弾性率が高くなるため、絶縁フィルムや銅箔などとの接着強さが低下する場合がある。
【0028】
次に本発明で使用されるフェノキシ樹脂(D)について説明する。
本発明で使用されるフェノキシ樹脂(D)は、接着剤の初期接着性及び耐熱老化性を向上させる効果がある。
フェノキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールS型フェノキシ樹脂及びリン系フェノキシ樹脂等が挙げられる。上記フェノキシ樹脂の末端構造は限定されず、ヒドロキシル基やグリシジル基のものを用いることができる。また、分子量についても任意のものを用いることができる
が、Mwが30000〜100000のものが好ましい。Mwがこの範囲内であれば、被着体への接着性が良好であり、耐熱老化性にも優れる。
【0029】
フェノキシ樹脂(D)の含有量は、ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対し、30〜300質量部であることが好ましく、100〜250質量部であることがより好ましい。フェノキシ樹脂の含有量がこの範囲内であれば、接着性及び耐熱老化性に優れる接着剤組成物を得ることができる。
【0030】
本発明の接着剤組成物には、更に、メラミン樹脂(E)を含むことができる。メラミン樹脂はポリウレタン樹脂(A)、フェノキシ樹脂(D)等と反応することにより、硬化物中の非架橋成分を架橋させる役割を果たす。この架橋により、高温下での硬化物の弾性率が向上し、優れた吸湿はんだ耐熱性を得ることができる。
メラミン樹脂(E)の含有量は、ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対して、20〜40質量部であることが好ましく、25〜35質量部であることがより好ましい。メラミン樹脂の含有量が前記範囲内であれば、吸湿はんだ耐熱性に優れる接着剤組成物を得ることができる。
【0031】
本発明の接着剤組成物には、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、トリアジン環を有するフェノール樹脂、フェノキシ樹脂及びメラミン樹脂以外に接着性向上や溶液特性の改善等、種々の目的で、本発明の目的を損なわない範囲で任意に添加剤を配合することが可能である。例えば、メラミン樹脂の硬化促進剤、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー及びゴムなどの樹脂成分、ポリウレタン樹脂の硬化剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、充填剤、染料等が挙げられる。また、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、カーボンブラック、シリカ等のフィラー成分を添加し、分散させることも可能である。前記の添加剤は、原料の溶剤への溶解時あるいは溶解後に添加することが可能である。
【0032】
上記メラミン樹脂の硬化促進剤の例としては、リン酸、パラトルエンスルホン酸及びその誘導体、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、三フッ化ホウ素、安息香酸、1,2−ベンゼンジカルボン酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸等が挙げられる。
【0033】
上記樹脂成分の例としては、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、アクリルエチレンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンαオレフィンゴム、エチレン酢酸ビニルエラストマー、ポリエステルウレタンエラストマー、ポリエーテルウレタンエラストマー、ポリカーボネートウレタンエラストマー、スチレンブタジエンスチレンエラストマー、スチレンイソプレンスチレンエラストマー、スチレンエチレンブチレンスチレンエラストマー、スチレンエチレンプロピレンスチレンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリルスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリアセタール、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、尿素樹脂などが挙げられる。また、これら樹脂を変性して、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基、チオール基などを付与したものが挙げられる。
【0034】
ポリウレタン樹脂の硬化剤の例としては、ポリイソシアネート化合物、多価カルボン酸化合物及びその酸無水物などが挙げられる。
【0035】
カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトシキシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤などが挙げられる。
【0036】
酸化防止剤の例としては、2,6−ジ−o−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ペンタエリスリチル−テトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのフェノール系酸化防止剤、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3'−ジチオプロピオネートなどのイオウ系酸化防止剤、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、亜リン酸トリイソデシルなどのリン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0037】
紫外線吸収剤の例としては、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3',5'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、フェニルサリシレートなどのサリシレート系紫外線吸収剤、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどのシアノアクリレート系紫外線吸収剤、2−エトキシ−2'−エチルオキザリックアシッドビスアニリドなどのアキザリックアニリド系紫外線吸収剤、ビス−〔2,2,6,6−テトラメチル−4−ピぺリジニル〕セバケート、ビス−〔N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピぺリジニル〕セバケート〕などのヒンダード系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0038】
難燃剤の例としては、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ビス(テトラブロモフタルイミド)エタンなどの臭素系難燃剤、トリフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェートなどの芳香族リン酸エステル系難燃剤、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)などの芳香族縮合リン酸エステル、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェートなどの含ハロゲンリン酸エステル系難燃剤、赤リンなどの赤リン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモンなどの無機系難燃剤、シリコン系難燃剤、ホウ素系難燃剤などが挙げられる。
【0039】
本発明において、必須成分としてポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、トリアジン環を有するフェノール樹脂及びフェノキシ樹脂とを含む接着剤組成物を、前記メラミン樹脂及び任意の添加剤と共に、通常、溶剤に溶解して溶液型接着剤として用いられる。
溶剤の具体的な例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル系溶剤、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤が挙げられる。
また、溶液型接着剤として用いる場合の樹脂濃度としては、20〜60質量%が好ましく、より好ましくは25〜45質量%である。樹脂濃度がこの範囲であれば、調製したときに均一溶液であり、また、溶液粘度も適性で、可とう性フィルムへ塗工する際に均一な塗膜を形成させることができる。
【0040】
本発明の接着剤組成物が用いられるFPCは、下記カバーレイフィルムとフレキシブル銅張積層板とを貼り合わせてなるものである。
○カバーレイフィルム
カバーレイフィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム等が挙げられる。本発明にとって好ましいフィルムは、その膜厚が12〜75μmのものであり、フィルムの片面もしくは両面に、コロナ放電処理、低温プラズマ処理、サンドブラスト処理等の表面処理を行ったものも用いることができる。
【0041】
○フレキシブル印刷配線板
フレキシブル印刷配線板とは、上記カバーレイフィルムと同様の可とう性フィルムと銅箔とを接着剤を用いて、ロール圧着や熱プレス等の方法により貼り合わせた後、所望の回路パターンに銅箔層がエッチングされたものである。
【0042】
本接着剤組成物を用いて可とう性フィルムと銅箔とを貼り合わせる方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
1)接着剤溶液を可とう性フィルムに塗布し、乾燥させて接着剤層を形成し、その上に銅箔を貼り合わせて加熱することにより両基材間の接着剤層を硬化させる。
2)接着剤溶液を銅箔に塗布し、乾燥させて接着剤層を形成し、その上に可とう性フィルムを貼り合わせて加熱することにより両基材間の接着剤層を硬化させる。
3)接着剤溶液を離型性フィルムに塗工し、乾燥させて接着剤層を形成する。ついで該接着剤層と可とう性フィルムとを貼り合わせて、前記離型性フィルムを剥がし、露出した接着剤層と銅箔とを貼り合わせた後に加熱することにより両基材間の接着剤層を硬化させる。
4)接着剤溶液を離型性フィルムに塗工し、乾燥させて接着剤層を形成する。ついで該接着剤層と銅箔とを貼り合わせて、前記離型性フィルムを剥がし、露出した接着剤層と可とう性フィルムとを貼り合わせた後に加熱することにより両基材間の接着剤層を硬化させる。
【0043】
前記離型性フィルムとしては、離型処理を施したPETフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン離型処理紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、TPXフィルム、フッ素系樹脂フィルム等が挙げられる。
【0044】
接着剤溶液を塗工する方法としては、刷毛塗り、浸漬塗布、スプレー塗布、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコーター塗布、カーテン塗布等の方法により塗工する。塗工後の乾燥膜厚としては1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは10〜50μmの膜厚である。基材に塗工された接着剤溶液は好ましくは40〜250℃、より好ましくは70〜170℃の温度で熱風乾燥、遠赤外線加熱、高周波誘導加熱等の炉を通して加熱乾燥される。両基材を重ね合わせた接着剤層の硬化方法としては、80〜250℃の温度で熱風乾燥、遠赤外線加熱、高周波誘導加熱等の炉を通して加熱する方法が用いられる。その中でも加熱プレス機による加圧下での加熱方法が高い接着性を得るために好ましい。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0046】
1.評価方法
接着剤組成物に含まれる成分、及び接着した積層体の評価方法は、以下の通りである。
1−1.融点
示差走査熱量計を用いて−100〜200℃まで10℃/分の昇温速度で測定を行い、結晶融解に伴う吸熱ピークが見られた温度を融点とした。融点を有しないポリウレタン樹脂は、吸熱ピークが観察されなかった。
【0047】
1−2.酸価
ポリウレタン樹脂1gをメチルエチルケトン40mlに溶解し、京都電子工業社製自動滴定装置「AT−510」にビュレットとして同社製「APB−510−20B」を接続したものを使用した。滴定試薬としては0.01mol/Lのベンジルアルコール性KOH溶液を用いて電位差滴定を行い、樹脂1gあたりのKOHのmg数を算出した。
【0048】
1−3.重量平均分子量(Mw)
ゲル浸透クロマトグラフ装置(型式名「HLC−8120」、東ソー社製)を用いて、下記の条件によりMwを測定し、標準ポリスチレンにより換算した。
<測定条件>
カラム:TSKgel SuperMultipore HZ−M 4本(東ソー社製)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
【0049】
1−4.はく離接着強さ
接着剤溶液を厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ社製、商品名「カプトン100EN」)に乾燥後の膜厚が25μmになるように塗布し、80℃で2分間乾燥した後に更に150℃で2分間乾燥した。次いで、厚さ35μmの圧延銅箔を貼り合わせて、80℃、0.3MPa、0.5m/分の条件でラミネートした。更に、このポリイミドフィルム/接着剤層/銅箔の積層体を170℃、1.5MPaの条件下で1分間加熱圧着し、その後170℃で2時間の加熱養生を行った。
上記積層体を10mmの幅に裁断して、ポリイミドフィルムを銅箔から剥がすときのはく離接着強さを23℃の温度条件下で引張り試験機にて測定した(単位;N/mm)。このとき、引張り速度は50mm/分とした。また、このときの測定値を初期はく離接着強さとした。
【0050】
1−5.耐熱老化性
耐熱老化試験(1):上記積層体を、200℃で50時間の加熱処理を施し、10mm幅に裁断した。次に、ポリイミドフィルムを銅箔から剥がすときのはく離接着強さを23℃の温度条件下で引張り試験機にて測定した(単位;N/mm)。このとき、引張り速度は50mm/分とした。このときの測定値を200℃における熱老化後のはく離接着強さとした。
耐熱老化試験(2):上記積層体を、150℃で1000時間の加熱処理を施し、10mm幅に裁断した。次に、ポリイミドフィルムを銅箔から剥がすときのはく離接着強さを23℃の温度条件下で引張り試験機にて測定した(単位;N/mm)。このとき、引張り速度は50mm/分とした。このときの測定値を150℃における熱老化後のはく離接着強さとした。
【0051】
1−6.はんだ耐熱性
上記積層体を20mm四方に裁断したものを、23℃、50%RHの恒温室に1日間放置した後、ポリイミドフィルムの面を上にして、260℃で溶融したはんだ浴に60秒間浮かべて、試験片の状態変化を観察した。
○:試験前の状態と全く変化無し
×:試験片表面全体に膨れ、剥がれが発生
【0052】
1−7.吸湿はんだ耐熱性
上記積層体を20mm幅に裁断したものを、40℃、80%RHの恒温恒湿機に3日間放置した後、ポリイミドフィルムの面を上にして、260℃で溶融したハンダ浴に60秒間浮かべて、試験片の状態変化を観察した。
○:試験前の状態と全く変化無し
×:試験片表面全体に膨れ、剥がれが発生
【0053】
2.接着剤組成物の製造
○実施例1
ポリウレタン樹脂(メルキンサ社製 商品名「パールボンド508」)100質量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製 商品名「jER4004P」)120質量部、ナフタレン骨格エポキシ樹脂(DIC社製 商品名「HP−4700」)20質量部、トリアジン環を有するフェノール樹脂(DIC社製 商品名「フェノライトLA−1356」)30質量部[水酸基当量/エポキシ当量=0.8]、フェノキシ樹脂(新日鐵化学社製 商品名「YP−50EK35」)160質量部、メラミン樹脂(三和ケミカル社製 商品名「MX750」)30質量部、及び硬化促進剤;トリメリット酸1質量部を、溶剤;メチルエチルケトン700質量部に溶解した。次いで以下に示す方法により、接着剤組成物を作製し、上記方法により各種試験を行った。その結果を表1に示す。
【0054】
○実施例2〜9、比較例1〜3
表1及び2に記載の組成について、実施例1と同様な方法で接着剤組成物を得た。次いで実施例1と同様の方法により接着剤積層体を作製し、実施例1と同様の方法により各種試験を行った。その結果を表1及び2に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
表1及び2における略号は、以下のものを示す。
・ポリウレタン樹脂a−1:メルキンサ社製 商品名「パールボンド508」(融点75℃、酸価0.3mgKOH/g、Mw230000)
・ポリウレタン樹脂a−2:住化バイエル社製 商品名「デスモコール400」(融点50℃、酸価0mgKOH/g、Mw230000)
・ポリウレタン樹脂a−3:住化バイエル社製 商品名「デスモコール530」(融点75℃、酸価0mgKOH/g、Mw190000)
・ポリウレタン樹脂x:DIC社製 商品名「パンデックスT−5102M」(融点を有しない非晶性樹脂、酸価0mgKOH/g、Mw110000)
・エポキシ樹脂b1−1:ジャパンエポキシレジン社製 商品名「jER4004P」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量880g/当量)
・エポキシ樹脂b1−2:ジャパンエポキシレジン社製 商品名「jER828」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量189g/当量)
・エポキシ樹脂b2:DIC社製 商品名「HP−4700」(ナフタレン骨格エポキシ樹脂、エポキシ当量163g/当量)
・フェノール樹脂c−1:トリアジン環を有するフェノール樹脂、DIC社製 商品名「フェノライトLA−1356」(水酸基当量146g/当量、窒素含有量19%)
・フェノール樹脂c−2:トリアジン環を有するフェノール樹脂、DIC社製 商品名「フェノライトLA−1398」(水酸基当量135g/当量、窒素含有量22%)
・フェノール樹脂y−1:トリアジン環を有しないフェノール樹脂、DIC社製 商品名「フェノライトKA−1165」(水酸基当量119g/当量)
・フェノール樹脂y−2:トリアジン環を有しないフェノール樹脂、DIC社製 商品名「TD−2090」(水酸基当量105g/当量)
・フェノキシ樹脂:新日鐵化学社製 商品名「YP−50EK35」(Mw70000)
・メラミン樹脂:三和ケミカル社製 商品名「MX750」
・硬化促進剤:トリメリット酸、松垣薬品工業社製、商品名「F−TMA」
【0058】
3.接着剤組成物の評価
上記表1及び2の結果から、本発明の接着剤組成物は初期接着性が良好であり、耐熱老化性及びはんだ耐熱性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の接着剤組成物は、ポリイミドフィルム、PETフィルム等の樹脂フィルムや銅、アルミニウム等の金属箔の接着に使用することができる。特に、FPCやフレキシブルフラットケーブル等の接着に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、トリアジン環を有するフェノール樹脂(C)及びフェノキシ樹脂(D)を含有する接着剤組成物であって、前記ポリウレタン樹脂(A)の融点が30〜150℃であることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
上記エポキシ樹脂(B)が、一分子中に2個のエポキシ基を有する樹脂(b1)と、多官能エポキシ樹脂(b2)の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
上記一分子中に2個のエポキシ基を有する樹脂(b1)と、上記多官能エポキシ樹脂(b2)のエポキシ当量比(b1/b2)が、0.1〜4.0であることを特徴とする請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
上記エポキシ樹脂(B)の含有量が、上記ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対して20〜500質量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
上記トリアジン環を有するフェノール樹脂(C)の水酸基当量が、上記エポキシ樹脂(B)1.0当量に対して、0.1〜2.0当量であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
上記フェノキシ樹脂(D)の含有量が、上記ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対して30〜300質量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
更に、メラミン樹脂(E)を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
上記メラミン樹脂(E)の含有量が、上記ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対して20〜40質量部であることを特徴とする請求項7に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の接着剤組成物が、ポリイミドフィルムの片面に塗布されていることを特徴とするカバーレイフィルム。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の接着剤組成物で、ポリイミドフィルムの少なくとも片面に銅箔を貼り合わせてなることを特徴とするフレキシブル銅張積層板。

【公開番号】特開2012−67292(P2012−67292A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182732(P2011−182732)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】